バイオテック研究者はVCに縛られない大自然での起業を目指す

シリコンバレーの神話は、会社創設者を英雄視する物語がほとんどだ。しかし歴史的に見て、バイオ系企業を起業した科学者が率先して代表になる例は極めて少ない。

新薬の開発は時間を要し、リスキーで費用もかかる。大きな臨床的失敗は当たり前のことだ。そのため、バイオでは非常に高度な専門の知識と経験が求められる。しかし同時に、改変細胞、遺伝子治療、デジタル治療といった新医療の飛躍的進歩により、その価値を生み出す潜在力は、これまでになく大きくなっている。

こうした革新的医療には、会社創設者、会社の設立、事業そのもののまったく新しいモデルが付随している。そこでは、科学者、起業家、そして投資家が、それぞれバイオ系企業をどのように立ち上げるべきかを再考し再発明する必要がある。

過去においては、バイオテック向けのベンチャー投資会社が、専門知識、バイナリーオプションのリスク、独自の「会社創設」モデルによる桁外れの機会の組み合わせを調整していた。このモデルにも、もちろん科学者でもある創業者(サイエンティフィックファウンダー)はいるのだが、実質的に出資し会社を作るのはベンチャー投資会社だ。つまり、科学の進歩といまだ満たされていない医療上の需要とのマッチング、知的財産のライセンシング、アーリーステージのCEOなど重要な役割を果たすパートナーや経験豊富な経営チームの手配など何から何までを、ビジョンの実現のために引き受ける。

画像提供:PASIEKA/SCIENCE PHOTO LIBRARY/Getty Images

これは、拘束状態で生まれ育てられるスタートアップと言うこともできる。早い時期に手厚い世話や食事を与えることで、確実に大きく育つようにする。ここでは、サイエンティフィック・ファウンダーは、経験豊富な「新薬ハンター」として患者のベッドの脇で機材を操り新たな発見を追求しつつ、助言者としての役割を担うことが多い(通常は大学での本業を続け、新しい知識を身につけ新発見を探る)。

このモデルの最大の目的は、非常に挑戦的な大仕事のリスクを低減させるために適切な専門家をテーブルに着かせることにある。新薬の作り方を生まれつい知っている人間など、1人もいないからだ。

しかし、このモデルを進化させたエコシステムは、それ自体が進化している。計算生物学や生体工学といった新しい分野は、生物学、工学、コンピューター科学を専門とする創設者という新種を生み出した。当然の流れとして、そうした人たちはすでに、専門家としてこの生まれたばかりの分野を牽引している。そうした進歩が、業界に改革をもたらし、注文生産への強い依存態勢から新薬開発を解放する。そこでは、1つの新薬の成功と失敗から得た細かい知識が次の薬のために蓄積され、工学と同じく何度でもやり直しがきく、組み立てブロック式のアプローチが実現する。

遺伝子治療を例にとってみよう。ある病気の患者の特定の細胞に遺伝子を届ける方法を習得すれば、別の病気の患者の別の細胞に別の遺伝子を届けることは格段に簡単になる。つまり、革新的な治療法という恩恵であることに留まらず、新しいビジネスモデルにも可能性が開けるということだ。業界全体にこの遺伝子デリバリー能力を提供できたとしたら、どうだろう。GaaS(Gene-delivery As A Service、サービスとしての遺伝子デリバリー)だ。

創設者はアイデアさえあればいい。それをテストするための費用も変化している。実験を開始するために、まずは完全な研究室を作らなければならない時代は終わった。AWSが技術系企業の創設までの時間を短縮し簡便化したのと同じように、共有研究スペースやウェットラボアクセラレーターのようなイノベーションが、バイオ系スタートアップの旅立ちに必要な資金と時間を大幅に削減した。今では、創設チーム(そして投資家)が早い時期に確信を得られる「キラー実験」が、100万ドル単位ではなく、数千ドル単位で可能になった。

これらはすべてサイエンティフィックファウンダーが行えるようになり、彼らには、会社設立を代行するベンチャー投資家に依存することなく、自力でバイオ系企業を創設するという選択肢が手に入った。すでに、そうしている企業は多い。そのような創設者が立ち上げた新世代のバイオ系企業は、野生児と言ってもいい。現実には楽ではない。周りはジャングルだ。そのため、失敗を繰り返し、素早く学び、本能を磨き、生き残るための技を身につける必要がある。だがその代わりに、改革の力を秘めた工学ベースのバイオプラットフォームにより、生き残った子どもたちはライオンにまで成長できる。

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今日のバイオ系スタートアップには、どちらがよいのだろう。あらゆるリスクと報酬が待つ大自然の中に生まれるか、拘束されて育つか。

「拘束下で育つ」モデルでは、確実性と安全性が約束される。ベンチャー投資家が作ったバイオ系企業は、すぐにでも蓄えと信頼を得ることができる。創設資金は基本的に保証されている。名だたる科学者、企業家、顧問を魅了し、革新的で身軽な態勢、潤沢な資金と広範なサポートネットワークがバランス良く揃ったに環境で彼らをおびき寄せる。私は、そうした企業の初期の役員になれて大変に幸運だった。業界の権威といっしょに仕事ができて、国際クラスのバイオ系企業の作り方に精通した彼らに学べる機会に恵まれた。その複雑な構成要素となる基礎から応用分野におよぶ研究、臨床研究を一から学ぶことができた。ただし、それらには代償がある。

ベンチャー投資家には大きな負担となるため、サイエンティフィックファウンダーの取りぶんは、通常はとても小さい。創設者でCEOになった人間ですら所有権は5%止まりだ。こうした企業には、メディアの注目を集める5000万ドル(約52億6000万円)以上の投資が行われるが、資本は小出しにされる。つまり、予定の目標を達成するごとに施されるのだ。しかし、物事は予定通りに進まないものだ。小出しにされる資本は、セイフティーネットというわけなのだが、目標を達成できなければ、そのネットに体を絡め取られてしまう。

一方、大自然に生まれた場合は、安全性と自由の駆け引きとなる。代わりに会社を作ってくれる人はいない。自分が責任者となり、自分でリスクを負う。私は新卒生となって、ハーバード大学の遺伝子学者のGeorge Church(ジョージ・チャーチ)氏と共同で会社を設立した。自力での起業だ。資金繰りは潤沢どころか飢餓状態だ。しかし、新しいことに挑戦できる自由があり、ヘビメタの野生児オジー・オズボーンの塩基配列を読み取るといった(非)管理実験も行えた。

それはゲノム学革命の開拓時代であり、初代のバイオテック企業の多くがその実験を模倣した。どれも、ベンチャー投資家からの搾取はされていない。それらの企業はみな、闘志溢れる企業家と科学者CEOが作り上げたものだ。たとえば有機化学者でVertex Pharmaceuticalsの創設者であるJoshua Boger(ジョシュア・ボガー)氏は、1989年から新薬開発の新しい方法を実現しようと研究を開始した。それがBarry Werth(バリー・ワース)氏の著書「The Billion-Dollar Molecule」とその続編「The Antidote」に、失敗や不安の末のスリル満点の栄光の物語として取り上げられた。結果として彼の努力は、HIV、C型肝炎、嚢胞性線維症の治療法につながっている。

今日、私たちはバック・トゥー・ザ・フューチャーの時期に来ている。業界は次第に、この新種の科学者企業家によって前に推し進められるようになった。体外診断の会社GeneWEAVEのDiego Rey(ディエゴ・レイ)氏と、臨床研究所のCounsylのRamji Srinivasan(ラムジ・スリニバッサン)氏は、病気の診断方法の変革に尽力し、それぞれの会社を大手ライバル企業にみごとに売却した。

Y CombinatorやIndieBioといった人気のアクセラレーターは、こうした創設者表現型に勢いづけられたバイオ系企業で満ちあふれている。Y Combinatorで最初のバイオ系企業で今はユニコーン企業となったGinkgo Bioworksは、Jason Kelly(ジェイソン・ケリー)氏とMITの生体工学部のクラスメート3人、そして元MIT教授で合成生物学のレジェンドであるTom Knight(トム・ナイト)氏とで設立された。この会社は、業界を広範囲にわたって崩壊させるためのプログラム生物学の革新的な方法を開発しているが、「バイオテックのバークシャー」と彼らが名付けた革新的な複合企業ビジネスモデルの先駆けともなっている。

Ginkgoと同じように、Alec Nielsen(アレク・ニールセン)氏とRaja Srinivas(ラジャ・スリニバス)氏はスタートアップAsimovを設立した。MITで生体工学の博士号を取得した直後から、遺伝子回路で細胞をプログラムするという野心的な研究を行っている。そして、ボガーと同様に、機械学習で知られるスタンフォード大学教授であるDaphne Koller(ダフネ・コラー)氏も、Instiroの創設者でCEOとして新薬開発の改革に取り組んでいる。

薬の作り方と同じく、会社の作り方を生まれつき知っている人間はいない。しかし、この新しい世界では、これらの技術を持つ創設者たちは、それぞれの分野での深い専門性を備えているため、経験豊富な会社経営者よりもアイデアの迷路をうまく歩く能力がある。工学ベースのプラットフォームは、前代未聞の生産性を発揮するまったく新しいアプリケーション、新たな革新の機会、画期的なビジネスモデル、バイオ系企業の新しい作り方を生み出す可能性を秘めている。月並みなシナリオは、もう過去のものだ。

自分の会社を興そうとする創設者は、それでも、企業設立のための面倒な仕事の準備や手伝いをしてくれる投資家が必要だ。しかしそれは、支援、指導、ネットワークへのアクセスを通しての話だ。ここで紹介した新世代の創設者のように、今のバイオ系投資家も、新しい約束を再考(そして再評価)しつつ、得がたい先人の知恵に感謝する必要がある。言い換えれば、バイオ系投資家も学際的になれということだ。さらに、異なる種類のリスクに慣れることも大切だ。つまり、新しい成長途中の分野で、実績のない創設者を支援することだ。そして会社創設者として荒野でチャンスを掴もうと考えるあなたは、自分のことを理解し、信頼し、支援し、そして何より一緒に大きな夢を見てくれる投資家を探すことだ。

【編集部注】著者のホーヘイ・コンデイはAndreessen Horowitzの無限責任パートナー。生物学、コンピューター科学、工学が交わる分野の投資を担当している。

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(翻訳:金井哲夫)

Facebookの新暗号通貨プラットフォーム「Libra」を解剖する

米国時間6月18日、Facebookは独自の暗号通貨、Libraを発表した。プロジェクトの内容はTechCrunchの今月始めの予測とほぼ一致していた。LibraはFacebookが構築しようとしている新しい金融システムの一環となるものだ。

Libraを利用したウォレット・サービスのためにCalibraという子会社も設立された。またMastercard、PayPal、Visa、Uber、Andreessen Horowitz、Creative Destruction Labなど有力企業が提携先となっている。

FacebookのLibraイニシアティブは革新的、野心的である一方で大きなリスクもはらんでいる。実はLibraには先行する試みがあり、これと比較することがFacebookのビジョンを理解するために役立つとおもう。

ここで考えているのは英国ロンドン発のモバイルチャットサービスのKikと、そのソーシャルネットワークを利用した仮想通貨のkikkinだ。KinについてTechCrunchの読者に一番よく知られているのは、SEC(米証券取引委員会)に訴追を受けていることだろう。SECはKikが2017に実施したICO(暗号通貨による資金調達)を違法としている。KikはこのICOで1億ドルを調達したが、公衆からの資金調達に必要な認可をSECから得ていなかった。

KikのCEOであるTed Livingston(テッド・リビングストン)氏によれば「Kikが暗号通貨は通貨の一種でありSECの管轄外と考えているのに対し、SECは管轄内の証券の一種と考えていることによる」のが根本的な対立点だという。両者の主張の法的当否は別として(仮に通貨だとしてもKikには法定通貨を発行する権限がないのは明らかだ)、KinはFacebookが独自の暗号通貨を作った背景、仕組み、将来構想を理解するために役立つ。

Creative Destruction Labのイベントで先週、リビングストン氏は「我々には資金が必要だった」と語った。Kinはこの極めて差し迫った問題に対する回答だった。Kikではいくつか異なったマネタイズを試してきた。ひとつはCardsモデルで、これはモバイルメッセージアプリ内にHTML5で書かれたツールやゲームが利用できるエコシステムだ。これは中国のWeChatモデルに近い。

Kikは英国発のメッセージアプリとして大成功した(ただし子供を狙う犯罪者に愛用されているという指摘もあった)とはいえ、規模はFacebookとはかけ離れている。そのためFacebookのように安定した広告収入を得ることはできなかった。 LivingstonのCEOの回想によれば、2011年にKik はBitcoin(ビットコイン)を知り、「これが我々が探していたビジネスモデルかもしれない」と考えたのだという。

リビングストン氏は「ユーザーのコミュニティに自然な形で簡単、迅速に価値を交換できるため暗号通貨はKinのプラットフォームにとって大きな意味があると気づいた」と語った。Kinのコミュニティはクッキングなどメンバーの得意分野の知識を交換する場になっていたので、支払い手段として暗号通貨は適していた。

KikにとってカギとなったのはKinを利用することがユーザーにもデベロッパーにも利益となるようなモデルを構築できるかどうかだった。Kikやデベロッパーには当然ながらkinの普及を図る動機があったが、ユーザーがKinを利用したくなる動機とは別のものだった。リビングストン氏よれば、暗号通貨でサービス提供者とユーザーとの利益を調整するのは広告モデルのビジネスとは決定的に違うという。このため両者のインセンティブがまったく噛み合わないケースが出てくるのはわれわれもたびたび見てきた。

SECによる訴追も含めKinの将来については不確定な要素が多いが、上で述べた問題はすべてLibraにも当てはまる。両者の違いは規模だ。Facebookは成熟した大企業であり、それ自身の巨大な経済圏を持っている。Kikは暗号通貨を資金調達手段として利用した。これはすぐにも資金が必要だったからだ(そこでICOに飛びついた)。

Kikにはビッグネーム企業多数をプラットフォームに参加させ、自力で市場の構造そのものを変えるような力はなかった。見切り発車してコミュニティーに活用されることをデモし、投資家やパートナーが後から参加してくることに望みをつないだ。、

これに対し、FacebookはKikが持っていなかったものをすべて持っている。企業規模と市場支配力はプロジェクトのスタート当初から大企業をパートナーとして参加させるのに十分であり、背に腹は代えられない資金調達の必要にも迫られていない。もしプロジェクトが失敗しても機会損失というコスト生じるだけだ。また今後も相当期間、広告ビジネスからの安定した収入が見込める。

しかし根本的なレベルではFacebookとKikの暗号通貨プロジェクトは極めて似ている。 暗号通貨による決済プラットフォームは広告モデル以上にユーザーに利益をもたらし長期にわたって維持可能なビジネスモデルとなるという認識だ。

現在のところFacebookのLibraは広告ビジネスに対するリスクヘッジという意味が強い。これがFacebookの生き残りをかけたコミットメントに変わるときに真価が問われることになるのだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

急成長中のビデオブロガー収益化サービス「Patreon」が魅力的なメンバーシッププランを発表

ビデオクリエーター、ユーチューバーの収益化の切り札となりつつあるPatreonは3月19日、 一連のメンバーシップ・プランを発表した。

これには提供される機能に応じて3種類の料率が設定されている。Liteプランではビデオグラファーの収入の5%がPatreonの手数料となる。最高料率のPremiumの場合は12%だが、既存のメンバーには割引がある。

TechCrunchが数週間前にスタートさせた有料会員制ニュース、Extra Crunchの記念すべき最初の記事がPatreonに関する調査報道だった。今回の発表はExtra Crunchのメディア担当コラムニスト、Eric Peckhamの考察に沿ったものとなった。PeckhamはPatreonのビジネスモデルについて次のように述べていた。

Patreonの最大の問題は、料金体系が魅力的過ぎることだ。(PatreonのCEO) Jack Conteは、Patreonの現在の料金体系は、同社が維持可能な運営を行うのに十分な収益性がないことを認め、 「手数料の率が低すぎるのだ。われわれは何か考え出す必要がある」と述べている。Patreonの料率はビデオブロガーがファンから収益を得るサービスを提供する他のサイトよりもStripeのような単純なオンライン決済プラットフォームに近い。私が取材したベンチャーキャピタリスト(出資者もそうでない者もいる)からの批判もこの点に集中していた。

明らかにPatreonには新たな収入源が必要だ。当然だが、 同社はその準備を進めている。高い手数料率と引き換えにビデオクリエーターに新たな機能を提供するプランを開発しているという。Conte「料金にふさわしい価値を提供するプラン」と語っている。

PeckhamのExtra Crunchの記事でも、Patreonが新料金プランを発表することは予期されていた。しかし5%、8%、12%という今回発表されたプランは、やはり驚くほど低い率だ。ライバルの料率ははるかに高く30%にもなる。新プランでもPatreonの手数料はライバルのサービスと比べて非常に安い。

そうではあるがメンバーから得る手数料はそれよりはるかに収益性が高い他のサービスへの単なる足掛かりなのだろう。Extra Crunchの記事の結論も同様であり、Peckhamはこう述べている。

新しいプランが中規模のビデオグラファーの関心を集め、Patreon自身のプラットフォームにせよ、Memberfulプラットフォームを通じたものにせよ、メインストリームでトップシェアをもたらすことができるなら、同社の他のサービスはきわめて収益性の高いビジネスとなる。私の取材に対して、Jack Conteは「会員制料金プランはPatreonのビジネスにとっていわば第一幕だ。われわれはビデオクリエーターをターゲットとする多様なビジネスを準備している。単に会員になる以上の価値を生むサービスだ。今後10年でわれわれはそれを実現していく」と述べた。

PeckhamはPatreonがビデオグラファーに提供できる付加価値サービスとしてローンなどの金融機能や健康保険の販売などを挙げている。将来こうした事業を軌道に乗せる助けになるなら現在の低すぎる手数料率も十分にペイすることになる。

今やPatreonはビデオグラファーのエコシステムの中心的存在となりつつある。PeckhamはPatreonの創立過程プロダクトビジネスモデル事業戦略ライバル出口戦略など一連の記事をExtra Crunchに書いている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

あなたのビジネスの財務のツボを理解しよう

【編集部注】著者のHaje Jan Kampsは、ハードウェアのスタートアップならびに各実現技術に注力するベンチャーキャピタル企業Boltの、ポートフォリオ担当ディレクターである。以前はTechCrunchのスタッフライターを務めていた。

Birdのような電動スクーターのライドシェアリング会社は、どのように収益を上げれば良いのだろうか?

もし米国の特定の都市に住んでいるのなら、電動スクーターがそこら中の歩道を走っているところを見ずに済ませるのは難しい。電動スクーターのライドシェアリングサービスは、非常に安価なものでもある:まず乗り始めるのに1ドルを支払い、1分ごとに15セントずつ支払いが加算される。しかし、電動スクーターそのものは安価ではなく、共有ネットワークの物流はとてつもなく複雑である。

ハードウェアのスタートアップ向けのベンチャーキャピタルで働く人間としては、先のような疑問が浮かぶのは当然である。

このような会社はどうすれば収益を上げることができるのだろうか?

本記事では、カリフォルニア州サンタモニカに拠点を置く電動スクーターのライドシェアリング会社であるBirdの、基本的なユニット経済を詳しく見ていくことにする。いかなるスタートアップにとってもキーとなるツボの理解と扱いが重要であることを示す、とても単純なモデルとテストを示そう。実際にそれらのツボはビジネスの浮沈を左右するのだ。

スクーターの開発

2人の若い恋人たちが、1対の電動キックスクーターを愛おしげに眺めている。ありふれた光景だ。

BirdはMi Electric Sc​​ooterをプラットフォームのベースとして使用しているようだ。Miの推奨小売価格は499ドルだが、Birdが一括購入割引を受けて、スクーターを300ドル前後で購入していると仮定しても間違いではないだろう。

スクーターの基本コストに加えて、Birdはスクーターをシェアリングエコノミー単位にするためのモジュールを必要としている。それには多額のコストは不要である。ボックス内に収納されたParticle 3G資産トラッカーと、スクーターのパワーマネージメントに対応するためのカスタムコードがさらに必要とされるものだ。まあこれは1ユニットあたり80ドルとしよう。スクーター1台あたりの調達コストは380ドルである。これに最終組立手数料として20ドルを積むことにしよう。

私の封筒裏の計算(概算という意味)では、Birdのすぐに路上で使える準備の整ったスクーターのコストは、1台400ドルである。

スクーターの配備

スクータースタートアップのScootは電動スクーターを扱っている。それらは電動Razerキックスクーターというよりも、オートバイに似たものだ。

電動スクーター企業が直面する最大の問題の1つが、分散充電である。Scootは、サンフランシスコ周辺に散在する大規模な充電ステーションのネットワークを構築することでこの問題を解決した。非常に大きなインフラへの投資だが、スクーターの確実な利便性のためには必要なことである。だが、充電のためには充電ステーション持って行かなければならないScootの車両とは異なり、Birdのスクーターはユーザーのアパートやオフィス内に簡単に持ち込んで、「壁のコンセント」という名の、簡便で実質的に無限に存在する分散充電ネットワークを利用することができる。

これはBirdにとって有利な充電戦略を生み出した。スクーターを充電した人に対してBirdが1台あたり5ドルを提供する程だ。このことがエレガントなユーザーエクスペリエンスを生み出し、財務モデル上の1つのツボとなっている。

2つの財務モデルの話

財務モデルの構築の際には、多くの前提条件が想定される。これは週末に何本かのビールを飲みながら集められたものだが、全ての創業者たちがそのアイデアを検討する際に行うべき「素早く荒い」(quick and dirty)計算の一例である。ここからスプレッドシートを辿ることができる。もし内容を変更して実験してみたいなら、シートを複製して自分の数字を入力することができる。

両方のモデルに対して、以下のことを仮定する。

訳注:Scooter acquisition cost (スクーター調達コスト)、Cost per service(1回の保守費用)、Services per week(1週当たりのサービス回数 … なのだが、下で紹介されているスプレッドシートをみると週に2回ではなく、14日に1回すなわち1週間当り0.5回として計算されている)。

私たちは、スクーターの平均寿命、1日に顧客が使う平均回数、そして充電に関するいくつかの指標を使って、その影響がどのように粗利益に影響するのかを見ていくことにする。

モデル1:おっと、これはマズそうだ

最初のモデルを使って、これらのダイナミクスを眺めてみよう:

  • スクーター1台あたりの平均寿命(乗車回数) – 300 【Scooter usable life(rides)】
  • 1日あたりのスクーターあたりの平均乗車回数 – 5 【Rides per day per scooter】
  • 平均乗車時間 – 25分 【Avg ride duration】
  • 利用者が充電する割合:50% 【% of charges by users】

もしこれらの仮定が正しければ、スクーター自身の損益分岐点に達するには220乗車(44日)かかることになる。

400回の乗車(スクーターが償却される)が行われた時点で、同社は147ドルの粗利を得ており、粗利率(Gross margin)は比較的貧弱な10.3%となる。

こう言っても構わないだろう:特に持続可能なビジネスのようには見えない。

モデル2:より楽観的な見通しだ

しかし、それをはるかに魅力的なビジネスにするために、多くの仮定を変更する必要はない。

Birdが各スクーターの寿命を延ばし、平均的な乗車距離を短くし、1日の平均乗車回数を増やし、消費者に充電の労を押し付けることができたとしたらどうなるだろうか?

これらのダイナミクスを見てみよう:

  • スクーター1台あたりの平均寿命(乗車回数) – 500
  • 1日あたりのスクーターあたりの平均乗車回数 – 7
  • 平均乗車時間 – 20分
  • 利用者が充電する割合:75%
非常に異なる結果だ。ここで注意してほしいのは、Birdは、スクーターを充電するためのそれぞれのコスト(消費者が充電するのは5ドル、Birdが充電するのは20ドル)は削減していないものの、顧客に充電を促して全体の充電コストを削減する方法を見つけたということだ。

これらの4つの変数を変更することで、損益分岐点に達するにはわずか165乗車(24日)で済むことになる。そしてスクーターの生涯利益は813ドルとなり、粗利は41%に達する。

比較を容易にするために、財務モデル1と2を並べて表示する。

さて、こうしたユニット経済は理にかなっているだろうか?

投資家たちは確かにそう考えるようだ。2月にBirdはシリーズAで1500万ドルを調達した。そしてそのわずか1ヶ月後に同社はシリーズBで1億ドルを調達したのだ。Birdのような会社は、(モデル1のような)10.3%の粗利率ではこの先苦労することになるだろうが、もしその数字がモデル2に近いものなら、Birdが始めたものが魅力的なビジネスであることを見て取るのは簡単だ。

ツボを見つけるために変数を分離する

Birdの場合、3つのツボが財務モデルに劇的に影響することを知って驚いたかもしれない:平均乗車時間、充電費用、そしてスクーターあたりの使用可能寿命だ。変数を分離し、数字と戯れて、どれが主要なツボであるか把握しよう。

上のモデル2を出発点として、1度に1つの変数を操作することで探求を進めてみよう:

乗車時間(Ride Length)

乗車時間(Ride Length)は粗利率(Gross margin)に影響を与えるものの、その影響は思ったほど大きいものではない。

スクーターの利用可能回数(Scooter usable life)

スクーターの耐久性は、特にスクーターが早々と故障する場合には、かなりの影響を与える。

充電コスト

スクーターを充電するコストは粗利に大きな影響を与える。よってそれは焦点を当てる価値があるだろう。

ツボを押す:スーパースクーター

もしツボを知ることができたなら、それを少し押してみることは楽しい。たとえばBirdの利益を最大化しようと思うなら、利用者になるべく長く乗って貰うようにしたくなるかもしれない。しかしどうやって?人々の通勤経路はおそらく比較的固定されていて、その通勤ルートを変更することはできない。とはいえ上の例で見たように、充電コストはビジネス全体に大きな影響を与えている。それを解決するためのより良い方法を見つけることができたらどうだろう?

モデル3:スーパースクーター

例えば市場には別のスクーターがあるとしよう、スーパースクーターという名前だとする。交換可能なバッテリーを備えメーカー希望小売価格は1000ドルだ。

このスクーターの初期調達コストは大きいが、より堅牢である。乗車可能回数は500回ではなく1000回だ。交換可能なバッテリーパックを使用することで、Birdのサービス係は、スクーターを再配備するために街を走り回っているバンの後ろに設置された充電ラックから、バッテリーを取り出して、すぐに交換することが可能だ。

たとえばBordの「再充電」コストが1台1日あたり3ドルまで下がるものとしよう。これはモデル1、モデル2における利用者による充電よりもさらに安い。このことは、利用者による充電の必要性を完全に取り除くことになる。

これに加えて、Birdは自社製の資産トラッカーを発明したとしよう。市販品を利用するときには80ドル必要だったが、これは1ユニット30ドルで製造できるとする。しかも製造業者がそのトラッカーを彼らの工場で組込んでくれるという。このことで最終組立作業に必要だった20ドルも不要になる。

上記の変更を適用することで、スクーターあたりの粗利は2467ドルとなり、損益分岐点に達するのは34日、粗利率は62%となる。言い換えれば、もしそのようなスクーターが市場にあるのなら、考えるまでもない:できるだけ早く全スクーターを交換したい筈だ。

3つのモデルの比較からわかることは、スクーターの寿命を伸ばし、充電コストを下げることで(モデル3)、スクーターに対する粗利にたいして非常に大きな影響があるということだ。

モデルを構築して、あなたのツボを知るべし

当然だが、ここでの説明では財務モデルをひどく単純化している。もしBirdのビジネス全体をモデル化したいと思うなら、顧客獲得コスト、顧客生涯価値、離脱率、なかなか手に入らないスーパースクーターのR&Dコストなどなどを考慮する必要がある。モデルはみるみる複雑になるものの、実際のビジネスを始める前に、さまざまな変数がどのような影響を与えるのかを探求することが可能になる。これはとても重要なことだ。

あなたのビジネスが何であれ、仮定する条件のすべてを含むビジネスモデルを構築し、変数を変えて耐圧試験を行い、ツボを見つけよう。それらを特定できたら、MVP(必要最小限機能製品)を作り、仮定する条件をより詳細にテストしよう。本格的に立ち上げて、マーケティングや遂行に多くの資金を投入する前に、早期に実験を行い何が効果的であるか(そして何がそうでないか)についての良いデータを得ることは、本当に重要である。中には指数関数的効果を持つものもあるだろう ―― 良くも悪くも。


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(翻訳:Sako)

オンデマンドサービスが万能ではない理由

delivery

【編集部注】執筆者のAjay Prakashは、洗濯代行サービスRinseのCEO。同社はモバイルアプリ経由の注文をもとに、利用者の自宅やオフィスを訪れて洗濯物の集荷・返却を行うサービスを提供している。

私ともう一人の共同ファウンダーであるJamesが、2013年にモバイルベースの洗濯代行サービスをはじめた頃、”オンデマンド”企業が世に出始めた。

当時、VCは次のUberをみつけるのに躍起になり、さまざまな企業が考えうる全ての分野でオンデマンドサービスをリリースしようとしていた(これらの企業は「◯◯のUber」という呼び名で知られているかもしれない)。今日の状況を見てみると、中にはオンデマンドモデルで成功を収めた企業も存在する一方で、経営に苦しんでいる企業の数の方が多いようだ。ここ数ヶ月で言えば、潤沢な資金を調達し素晴らしいチームがいるにも関わらず、人員を削減したり、会社をたたんだりする企業の姿も見られる。そんな中、なぜこのようなことが起きているのかという疑問が当然浮かんでくる。

単刀直入に言えば、その答えは”オンデマンド”が顧客のニーズを解決するための万能な手段ではないということだ。

”スマートスケジューリング” VS ”オンデマンド”

Uberは急を要する重要な問題を解決している。タクシーが必要なときというのは、その瞬間にタクシーが必要だということだ。Uberはオンデマンドのサービスを提供することで、この問題を解決し、顧客の差し迫った需要を満たしているのだ。しかし、消費者向けサービスは、習慣的な問題への対策であることがほとんだ。

家の掃除や洗濯、洗車といったタスクは、一般的に予測可能なパターンで繰り返し発生する。そのため、このようなタスクに対するサービスにおいて、オンデマンドモデルは不適当かつ非効率的なのだ。

消費者向けサービスの事業を立ち上げるとき(もしくはこの場合に限ってはどの事業でも)、顧客のニーズにフォーカスし、自社のサービスにとらわれないというのが重要になってくる。最近の問題は、新たに設立されたスタートアップのほとんどが、消費者の問題に対する解決策は全てオンデマンドでなければならないと思い込んでしまっていることだ。しかしほとんどの場合、繰り返し起きる問題には、”スマートスケジューリング”のアプローチをとった方が良い。

最も基本的な意味として、スマートスケジューリングとは、一定の間隔で発生する顧客のニーズに合わせたサービスを構築することを指す。掃除や洗濯の代行サービスであれば、その間隔は1、2週間ほどだろう。

洗車や倉庫への荷物の移動といった他のサービスであれば、ニーズの発生する間隔がもっと開くかもしれないが、発生時期に関わらず、スピードよりも品質を重視することで、ほとんどの場合顧客満足度は向上する。

以下に、”オンデマンド”よりも”スマートスケジューリング”の方が有効だと思われるいくつかの分野について説明している。

ハウスクリーニング
2013年の”オンデマンド”ハウスクリーニング業界では、Handy、Homejoy、Execが幅を利かせていた。投資家やメディアがこの業界にはかなり興味を持っていたと同時に、”オンデマンド”経済における有名なサービス停止の事例もこの分野で発生した。

この業界の顧客についてしっかり観察すると、彼らのニーズが慢性的かつ繰り返し発生していることがわかる。つまりハウスクリーニング業界では、オンデマンドよりもスマートスケジューリングの方が有効なのだ。実際のところ、前述の例の中で唯一現存するHandyを見てみると、彼らのサービスはオンデマンドではないことがわかる。Handyのサービスに登録する際に、顧客は毎週か隔週のプランを選ぶようになっているほか、登録日から数日後にデフォルトのスタート日が設定されている。

貸し倉庫
貸し倉庫も、過去数年の間に投資家の興味をひいていた分野だ。Clutter、Makespace、Omniといった企業が外部から資金を調達し、さまざまな方法で家の中に溢れたものを貸し倉庫に預けるサービスを考案しようとしていた。Omniは、”オンデマンドの保管・デリバリー”サービスというブランディングで、定期的なアプローチをとっていたClutterとは違った角度からサービスを提供していた。

第三者の立場から言えば、家にある荷物をどこかに預けるというのは、問題としては大きいが急を要することは滅多にない。

洗車
オンデマンド洗車サービスは、数年前にCherryがローンチし、資金を調達し、その後すぐにサービスを停止した頃は人気の業界だった。その全てがRinseの設立前に起きたが、それから約4年が経った今でも、オンデマンドで洗車サービスを提供している企業は存在する(Washos、Squeegy、Wypeなど)。

私は彼らのターゲットではない(しばらくの間洗車しなければと思っているが何もしていない)が、洗車でオンデマンドのサービスが必要になるケースはかなり稀のように感じる。さらに、洗車が必要なタイミングは繰り返し発生するもの、購買頻度は限られている。

消費者が抱える大きな問題は他にもある

より広い意味での”オンデマンド”経済で、めんどくさがりな人や富裕層をターゲットとするスタートアップの話を聞くことがある。実際にそういった人をターゲットにする企業は存在するかもしれないが、現実にはもっと大きな問題を抱えている消費者が残っている

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

「複雑さの頂点」を乗り越えよう

Different colored wires coming together to create a ball in mid air on white background

【編集部注】Tom GoodwinHavas Mediaの戦略イノベーション担当のシニア副社長。

実質的にほぼすべての会社はデジタルへの転身方法を誤っている。まるでそれがチャンスではなく、厄介事であるかように、我々は距離を置いて、それを視界の端に置いている。もし会社を成功させるなら、これまでに目にした最も素晴らしいツールキットを使って、可能性の周りに再構築を行う必要がある。

ここで、テクノロジーが私たちの生活とビジネスに及ぼしてきた膨大な変化の話をしよう。私たちはこれまでに起きた大規模な変化を称賛している。アプリケーションからフライトを予約して、携帯電話からタクシーに支払い、そして店舗を提供するタブレットの中で買い物をすることができる。しかし私たちは実現されたこと、変化したことを賛美しているだけで、本当に可能だったこと、まだ起きていない変化を称賛しているわけではない。私は、私たち皆が自分たちの無為を反省すべきときだと思っている − より真剣に考えて、より大きいリスクをとり、そして新しい世界を受け入れるべき時だ。

テクノロジーは中心にも周縁にも適用することができる。そして歴代の経営者たちは、意識的にせよ無意識的にせよ、それを新しいユニットの中やイノベーション研究室や、様々な方法で周縁に小さくばら撒いてきた。新規なものは、実際のところ軽んじられてきたのである。まるでそれが彼らを脅かす考えであるかのように。新しい考えは上手くやりすごすための何かであり、その周りに考えを巡らせるためのコアではなかったのだ。彼らのビジネスを未来に向けて推し進めるために可能性を解き放つことではなく、まるで引退に向かう緩やかな下降が彼らの目的であるかのようだ。

私たちがAirbnb、Uber、Facebook、Amazon、Snapchat、Slack、TeslaもしくはBlue Apronといったものを称賛するとき、話題となるのは、彼らがビジネスのコアに如何に新しいテクノロジーと振る舞いを取り入れたかということだ ‐ 彼らは初めからテクノロジーを取り入れたのだ。

彼らのために新しいテクノロジーは、働くための新しいカンバスと、熱情とともに描くことできる新しい道具を提供したのだ。そうした企業は、世の中を善くするべく、テクノロジーの時代に育ち、CEOやマネジメントチームによって率いられている(彼らは知っているもの全てにチャレンジを挑ませる子供たちを持っていることが多い)。あなたが世間一般の通念が実際にどれぐらい間違っているか悟るのは、あなたが7歳の子供にタブレットの上で、なぜ実際は「TVを見て」いるのではないのかという理由を説明しているときだ。

より真剣に考えて、より大きいリスクをとり、そして新しい世界を受け入れるべき時だ。

マクルーハンの「我々は道具を形づくる、そして次に道具が我々を形づくる」という言葉は正しかった。しかし私たちの多くがこの言葉の後半に抵抗した。私たちは新しいコードを使って新しいチームが作った新しいアプリケーションを使って、私たちのフライトを予約することができる、それにもかかわらずデスクトップのウェブサイトは大惨事のように見える。会社内の組織間の軋轢を公にし、うまく動作しないシステムと顧客の要望を反映しないレガシーなシステムとパッチを表しているのだ。

私たちが空港に到着すると、ことはもっと悪くなる。私たちは担当者が青いDOSのようなスクリーンに向かって果てしなくタイピングする音を聞かされる。あなたのフライトを変更するのに、15分間のタイプと数本の電話が必要だ。これは、ひび割れを新しいビジュアルデザインで覆い隠し、過去に作られたプラットフォームに依存しつつ拡張が行われた、ハイブリッドであることを意味している。

あなた自身に問いかけるべき疑問はこれだ:「もし自分の会社を今作るなら ‐ 人々がどのようにテクノロジーを使い、デバイスが何を可能にするかを知っていて、人々が(単にミレニアル世代だけではなく)どのように振る舞い今日と明日の生活から何を期待しているかを知っている今なら ‐ それは現在あるものに似通っているだろうか?」

ホテルの受付は大きいデスクトップコンピュータを置くような大きい据え付けのユニットだろうか?レンタカー会社はその場所に位置するままだろうか?それは35種類の車を用意するだろうか?システムは今のように動くのだろうか?小売り店舗に、あるいは「クラスでのベスト」であるロジスティクスとウェブサイトのどちらに投資すべきだろうか?ミレニアル世代がソーシャルメディアの方を好むとき、コールセンターに大規模に投資するべきだろうか?患者の記録やその他のものを、紙の上に記録したいだろうか?注文を処理するためにFAXを必要とするだろうか?
あなたのデータは10の異なったサーバー上に保持されるだろうか?あなたのすべてのスタッフはデスクトップコンピュータを持っていて、キュービクルで働いて、そしてそれぞれが机の上に電話を置いているだろうか?

会社を受け継ぎ未来を作り出す新しい世代が、現在のCEO世代と交代するとき、巨大な変化が訪れる。考慮するべき組織的な原則の1つはこれだ:「私たちは古い考えとやり方を、最高の技術で粉飾しようとしているのだろうか?それとも現在可能なものの周りに新しいやりかたとシステムを打ち立てようとしているのだろうか?」

新しい技術と新しいシステムと考えが、あなたの会社をどのように変容させ、それを軸にどのように機能するかを考えよう。

自分たちの考えの中に閉じこもるのは容易だ。もしアカウントマネージャーにタブレットを与えて、それで仕事をやれと言っても、それは無理だろうと私たちは考えてしまう。彼らはパワーポイントを作り、週報をエクセルで用意する必要があるからだ。私たちはタスクレベルで運用することに慣れている、しかしワークフローを管理しアイデアを伝達していくことこそが彼らの仕事だと私たちが気付いたならば、リアルタイムオンラインダッシュボード、共有ワークスペース、そしてクラウドでホストされたプレゼンテーションが、ただその機能を果たすだけでなく、仕事を何倍も容易にすることに気がつくだろう。

私たちは「複雑さの頂点」 − 古いものと新しい世界システムのハイブリッド − に居る。Slackを使い、電子メールを送る。請求書を送るために、果てしなくJavaをダウンロードする。会議でWhatsAppを使い、オフィスで電子メールを使う。一体いくつのファイル共有システムが?一体いくつの会議電話ソフトウェアの形式が?さらにいくつのアドオンが?

もしあなたが、まだ2、3年以上働くつもりなら、そしてもしあなたの目標が違いを生み出し、ビジネスを未来へ推し進めることであって、安楽な引退に向かっているのではないのなら、私はあなたに1つの提案をしたい:「新しい技術と新しいシステムと考えが、あなたの会社をどのように変容させ、それを軸にどのように機能するかを考えよう」

もしたやすく手に入ること、反射的に手に入ることばかりに手出しするのなら、あなたはあなたの会社、あなたの株主、そしてあなたの従業員を混乱の被害を受けやすいままにしておくという意味で、実際に害を為しているのだ。未来を再構成するか、ただ待っているのか ‐ 私の答は明らかだ。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: PM IMAGES/GETTY IMAGES

自動車メーカーには安定したスタートアップパートナーが必要だ

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ネット接続された自動運転車の未来を分析しているTU-Automotiveが最近、自動車メーカーとスタートアップの関係に焦点をあてたWebセミナーを開催した。Hyundai Venturesのベンチャーキャピタリスト兼マネージャーのSK Kim、ならびにAutotech CouncilのエグゼクティブディレクターであるLiz Kertonが、身軽な新しい企業と100年を超える歴史を持つ企業との協業の課題についての講演を行った。

Kimは言う「私たちのビジネスモデルは100歳になります、そして売るものは1つだけ:車です」。スタートアップは市場とその内部のニーズに対応するために、次々に進化するビジネスモデルを採用している。そして彼らが売ることができるものの数を制限するのは、彼らの想像力とミッションだけである。

そこに最初の課題が存在している:動きの速い21世紀の中でスタートアップが機能することを許している敏捷性が、自動車の巨大企業の目には不安定なものとして映るのだ。「(自動車メーカーは)十分に安定し、誰もが短いものではないと知っている自動車会社のプロダクト開発サイクルに付き合えるだけの、十分な資金を持つ会社を見つける必要があります」とKertonは言う。

単に1、2年のファンディングだけでは不十分だと、彼女は付け加えた。なぜなら1台の車をスケッチからショウルームへと持ち込むだけでも、それ以上の期間を必要とするからだ。1台の車を開発するのに5から7年が必要であることにKimは注意を促した。一方電話の開発には1年、アプリの開発には数週間から数ヶ月しかかからない。そして1度車がショウルームを出たら、路上に20年は留まり続けるという事実がある。「あなたの技術パートナーには脱落して欲しくないでしょう」とKerton。

スタートアップは早期の収入の確保のために素早い投資決定と契約を望む、とKimは述べた。「それが彼らが生き残るための唯一の方法だから」と続ける。しかし、自動車側の慎重でゆっくりとしたペースの投資や開発と、スタートアップが期待するタイムラインを連動させようとすることは「どちらにとってもフラストレーションなのです」とKimは語った。

だとすると一体なぜ老舗の自動車会社が、成り上がり(upstart)、もとい、スタートアップ(startup)と協業したがるのだろうか?Kimが主だった3つの理由を教えてくれた:自動車会社はイノベーションを起こすためのテクノロジーパートナー、柔軟性を取り込むためのビジネスパートナー、そして輸送の不確かで予測できない未来を探求することを恐れないパートナーを必要としている。大胆な動きをとることは、大手自動車メーカーが得意とする分野ではないからだ。

Kimは言う「自動車製造は、高度に規制された製品を扱う、高度に規制されたビジネスなのです」。こうした理由から、スタートアップがそのプロダクトのマーケットもしくは潜在的パートナーの対象として自動車産業だけに集中するのは危険である。Kimは、スタートアップは、まず何かを他の分野向けに開発してから、自動車分野に進出する方が良いだろうと助言した。その戦略はパートナーシップにおける双方のリスクを、実際に結ばれる際に低めることだろう。

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(翻訳:Sako)