暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.8.16~8.22)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年8月16日~8月22日の情報をまとめた。

米ハワイ州、デジタル通貨の規制サンドボックス制度にbitFlyer USA、Geminiら12社を採択

米国ハワイ州は8月18日、暗号資産関連企業向けとなるデジタル通貨の規制サンドボックス制度の採択企業12社を発表した。ハワイ州商務・消費者省事務局の財政部門(DFI)ハワイ技術開発公社(HTDC)が共同で取り組む「デジタル通貨イノベーションラボ」が、3月より参加企業を募集していたパイロットプログラムがスタートする。

米ハワイ州、デジタル通貨の規制サンドボックス制度にbitFlyer USA、Geminiら12社を採択

同プログラムに採択されたデジタル通貨発行企業12社は、規制のサンドボックス制度を利用することで、向こう2年間、ハワイ州のデジタル通貨関連の送金者ライセンスを取得することなく、ハワイ州でデジタル通貨関連ビジネスを行える。規制のサンドボックス制度とは、地域・期間・参加者など限定のもと現行法・現行規制を一時的に適用させず技術実証などを行えるようにする取り組み。

これまでハワイ州では、暗号資産取引に関する連邦法の規制に加えて、暗号資産取引所に対し顧客から預かる暗号資産と同等の法定通貨を保有する必要があるという、消費者保護に関する厳しい規制をDFIが2017年から課していた。それによりハワイにおいて暗号資産取引所を運営していたCoinbaseを始めとする企業は、事業撤退を余儀なくされた経緯がある

パイロットプログラムでは、各企業はDFIと協力し合い、暗号資産(デジタル通貨)の早期導入を通じてハワイの経済的機会を創出することを目的に活動する。期間は、2022年6月30日を持って終了。期間終了後は、明示的な承認が与えられない限り、参加企業はすべての暗号資産取引を完了する必要がある。参加協定に従い、削減計画と出口戦略を実行することになっている。DFIは、企業が事業を継続するに価すると判断した場合は、適切なライセンスを決定することもあるとした。

なおハワイ州は、プログラムを通して得られた知見を、将来同州における暗号資産に関する法規制を決定する際の指針として活用する狙い。

LayerXらが4社共同で事故発生の自動検出と保険金支払業務自動化の実証実験開始、MaaS領域におけるブロックチェーン活用実証へ

すべての経済活動のデジタル化を推進するLayerXは8月18日、ブロックチェーン技術を活用したMaaS(マース。Mobility as a Service)領域における実証実験を開始したSOMPOホールディングス損害保険ジャパンナビタイムジャパンの3社と共同で実施するもので、保険事故発生の自動検出と保険金支払い業務を自動化する技術を実証していく。

MaaSとは、ICT(情報通信技術)を活用して、電車・バスといった公共交通機関を始め、タクシー・レンタカー・カーシェアリング・レンタサイクルなど交通手段をひとつのサービスとして捉え、モビリティ情報をクラウドで一元化し、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念。顧客の利便性を第一に考え、時刻表・経路検索・運行状況・運賃情報から支払いなど、運営会社を問わず情報を一括管理できる仕組みを目指すというもの。

MaaS社会では、保険においてもデジタル技術を活用した自動化・効率化による利便性の向上を図ることが求められると考えられる。実証実験では、MaaS社会の到来を見据え、保険の新たな顧客体験の可能性を検証する。

今回は、ナビタイムジャパンが提供する経路検索アプリケーション「NAVITIME」および「乗換NAVITIME」の利用者からテストモニターを募集。LayerXのブロックチェーン技術を活用した、保険事故発生の自動検出と保険金支払業務自動化の技術検証を主目的に、4社共同で実証実験を実施する。

具体的には、保険事故発生に「電車の運行遅延」を保険金請求事由として見立て、ブロックチェーン上でプログラムを自動的に実行できるスマートコントラクトの仕組みを活用し、保険金支払業務を自動化する。

LayerXらが4社共同で事故発生の自動検出と保険金支払業務自動化の実証実験開始、MaaS領域におけるブロックチェーン活用実証へ

今回の実験では、JR宇都宮線・高崎線・埼京線の遅延情報を自動検知し、位置情報をもとに、テストモニターのうち遅延の影響を受けたと判定された者に対して保険金に見立てたデジタルクーポン(NewDaysで使える200円クーポン)を即時に自動発行、配付する。こういったサービスが、利用者にとって受容されるサービスとなり得るかなどを検証するという。

実証実験は、SOMPOホールディングスが全体を統括し、実証実験モニターのニーズ調査を損害保険ジャパンが、モニター募集・API提供をナビタイムジャパンが、システム企画・開発をLayerXがそれぞれ担当する。

実施期間は8月18日から9月30日まで。モニター参加条件は、JR宇都宮線・高崎線・埼京線を日常的に利用し、スマートフォンで「NAVITIME」アプリからの通知を受け取れ、同実験に関する簡単なアンケートに協力できる者。応募方法は、実証実験モニター募集ページ(iPhone版Android版)にアクセスし、モニター登録手続きを行う。先着100名がテストモニターに選ばれる。なお、モニター登録数の上限に達した場合には登録は終了となる。

MaaSの現状

Maasの概念は、2016年のフィンランドで、MaaS Globalによる MaaSアプリ「Whim」のサービスから始まった。現在は、欧州からアジア・環太平洋地域(日本、韓国、米国、オーストラリア)に渡る地域においてMaaS AllianceとしてMaaS構築に向けた共通基盤を作り出す公民連携団体が活動している。MaaS Allianceには、日本からも東日本旅客鉄道(JR東日本)や日立、ソニーらが参画している。

MaaSでは、ICTにより交通機関などの経路、時刻表などのデータを検索し組み合わせ、利用者のニーズに合うサービスが提案される。このためMaaS社会においては、交通機関の運行情報や、駅の地理的情報などのデータが自由に利用できる必要があり、欧米ではオープンデータとして整備されている。日本では、2015年9月に公共交通オープンデータ協議会が設立され、「公共交通分野におけるオープンデータ推進に関する検討会」が検討を進めている。

さにら、国土交通省は2018年10月にMaaSなどの新たなモビリティサービスの全国展開を目指し、都市・地方が抱える交通サービスの諸課題を解決することを目標に、第1回「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」を開催。2019年をMaaS元年とし、日本版MaaSの展開に向けて地域モデル構築を推進していくことを決定・選定するなど、日本においてもMaaS社会の実現に向けて、さまざまな研究開発・実証実験が行われている。

ビットコインのハッシュレートが史上最高値を記録、8月16日129.075EH/sに

ビットコインのハッシュレートが史上最高値を記録、8月16日129.075EH/sに

Blockchain.comによると、ビットコイン(BTC)のマイニングにおけるハッシュレートが8月16日、129.075EH/s(エクサハッシュ)を記録し、過去最高値を更新した。先週より軒並み125EH/sを超えており、先月末から立て続けにハッシュレートが上昇している。

ハッシュレートとは、ビットコインのマイニングにおいて1秒間に行う演算回数であり、採掘速度を示す数値となる。E(エクサ)は、K(キロ)、M(メガ)、G (ギガ)、T(テラ)、P(ペタ)と続く単位のひとつ上の単位で、1EH/sは1秒間に100京回のハッシュ計算を行えるを意味し、100EH/sは、1万京回となる。

  • KH/s: 毎秒キロハッシュ。1秒間に1000回ハッシュ計算
  • MH/s: 毎秒メガハッシュ。1秒間に100万回ハッシュ計算
  • GH/s: 毎秒ギガハッシュ。1秒間に10億回ハッシュ計算
  • TH/s: 毎秒テラハッシュ。1秒間に1兆回ハッシュ計算
  • PH/s: 毎秒ペタハッシュ。1秒間に1000兆回ハッシュ計算
  • EH/s: 毎秒エクサハッシュ。1秒間に100京回ハッシュ計算

ハッシュレートは、その平均値の高さにより、マイナーが収益性を重視していることを示しており、ビットコイン価格との相関性を検討する者もいる。ビットコインの価格は、2020年8月に入って120万円を超えており、先週は一時期130万円をも超え、2020年8月下旬時点で120万円台を推移していることから、ハッシュレートの上昇は、ビットコインの価格上昇の影響と見られている。

また、ビットコインはハッシュレートが上昇することで、マイニング難易度(Difficulty)も調整するようマイニングアルゴリズムが設計されており、先月中旬にマイニング難易度も過去最高の数値を示した。その後は、調整され少しずつ難易度が下がりつつあるものの、現在も最高水準の難易度をキープしている。ビットコインは、2週間に1回(2016ブロックに1回)の頻度で、その難易度を自動調整する仕組みを備える。

ビットコインのハッシュレートが史上最高値を記録、8月16日129.075EH/sに

ハッシュレートの上昇は、PoW(Proof of Work。プルーフ・オブ・ワーク)に参加するマイナーが増加していることを意味するため、ビットコインネットワークのセキュリティ向上につながる。一方、上昇しすぎるとマイニングの際の消費電力量が上昇し、マイナーの収益性が低下することにもなる。

難易度が上がるということは、マイニングにおいて個人マイナーには不利となり、有力マイニングプールが有利になることから、中央集権的な状況になる恐れもあるため、注視していきたい。

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Casaがビットコインを保管するセルフカストディサービス提供へ

コロラドに拠点を置くビットコインセキュリティサービスプロバイダーのCasa(カーサ)は、顧客が購入したビットコインを自分で保管できるマネージドサービスを始める。Coinbase(コインベース)のような外部のカストディア(資産保管事業者)を使うのとは異なる方法だ。

Casaのセルフカストディをハッキングすることは不可能であり、ビットコインを盗むことはほぼ不可能だ」とNick Neuman(ニック・ノイマン)最高経営責任者はメールで述べた。「ビットコインをCoinbaseやその他多数の取引所に置いておくと盗難につながる。ビットコインの盗難や取引所へのハッキングには長い歴史がある」

昨年、大手仮想通貨取引所であるBinance(バイナンス)がハッキングされ、犯人は当時4000万ドル(約42億円)相当のビットコインを奪い去った(未訳記事)。

同社が新しいプロダクトによるアップグレードを提供する前は、ビットコインのトレーダーは取引所でビットコインを購入後、安全のため取引所からビットコインを移動する必要があった。ノイマン氏によると、Casaを使用すれば標準でセキュリティが確保される。

今やユーザーはビットコインをCasa経由で購入し、サービス内のウォレットに直接入金して資金を管理できるようになった。Casaは、プロセスのどのポイントでもユーザーのビットコインを管理することはない。同社によると、これにより取引所を利用するリスクを排除できる。

ドルの価値下落(Market Watch記事)と潜在的なインフレという新時代の到来により、消費者は自然と既存の金融システムの混乱を逃れて安全なアセットクラスを探すようになった」とノイマン氏は声明で述べた。「これまでは、投資家がビットコインのセルフカストディで実現されるセキュリティとコントロールを望んだ場合、複数の手続きを経て取引所に登録して預託金を差し出し、それからビットコインを自分の財布に移す必要があった。Casaがあれば、新しいユーザーがビットコインを最初に購入して保管するときに、非常にシンプルで高速なオプションが選べる」。

画像クレジット:Sarinya Pinngam / EyeEm / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

ビットコインが116万円を突破して上げ相場に突入

Bitcoin(ビットコイン)の上げ相場が戻ってきた。

米国時間7月27日、ビットコインの価格は1268.19ドル高で6カ月最高値の1万1203.90ドルに達し、1日あたりの上げ幅は12.73%だった。これは同テクノロジーに対する投資家の関心と、当局の監視強化と主要暗号通貨の値下がりによる苦難の年を終えて見直された長期的見通しへの自信の両方が復活した証だ。

暗号通貨投資家でMantis VC(有名音楽デュオのThe Chainsmokersが立ち上げた投資会社)のアドバイザーであるAlyse Killeen(アリス・キリーン)氏はビットコインの価格上昇を、ビットコインをはじめとする分散型台帳技術全般を支える基盤の安定性が強化されたことの表れだと見ている。

「インフラストラクチャーの視点だけからから見ても、ビットコインには1年前と比べてはるかに高い内在価値がある」とキリーン氏はダイレクトメッセージに書いている。「ライトニングネットワークがある、サイドチェーンもある。ビットコインにできることは1年前よりも多い」。

ライトニングネットワークとは、ビットコインの第2レイヤー技術で、ブロックチェーンのトランザクション処理能力を高め、利用者がネットワークを実際に使う能力を拡張する。

投資家の関心と価格を上昇させる能力を高めるだけではない、とキリーン氏は書いている。入手可能なビットコインの供給が減少している。これは2019年に起きたビットコイン半減期(halving)によるものだ。

また、金融機関が暗号通貨を保有するようになったことが、安全性と流用可能性に対する投資家の信頼を高めている。

ブロックチェーンの専門家で、現在Lvlでビットコインバンキングサービスの準備を進めているWilly Woo(ウィリー・ウー)氏は、これを最新の上げ相場のタイミングであるともいう。

強気の復活だ 。

代替暗号通貨がバブルと消え、ETH(イーサリアム)がDeFi(分散型金融市場)の追い風を受け、乱高下が戻り、BTCのメモリプールはピークに達し、BTCトランザクションが停滞する、いずれも今後数カ月に向けた素晴らしい兆候だ。

キリーン氏は、第3四半期か第4四半期初期に市場が上向くとも予想している。ビットコイン上の取引と活動を支援する基盤の強化、流通ビットコイン量の増加、さらには流通通貨の半減期に対する反応などが理由だ。

「今起きているのは、大手企業が購入機能と保証を提供し始めたことだ」とキリーン氏は書いた。「これはビットコインと自己管理を上向きにする。『リアルな銀行』が顧客のためにビットコインを持つようになったことで、多くの人がビットコインをお金と同じに見るようになり、自分自身が銀行であることの差別化がいっそう明確になる。

画像クレジット:Hiroshi Watanabe / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

3月12日はビットコインにとっても最悪の日

Bitcoin(ビットコイン、BTC)もかなりマズイことになっている。今月は暗号通貨(仮想通貨)だけでなく、あらゆる資産にとって試練の時だ。米国時間の3月12日、ビットコインの平均価格はわずか20分の間に15%も下落した。

画像クレジット:Chesnot/Getty Images(画像は編集済)

CoinGeckoのあちこちの取引所では、世界標準時午前10時30分には、1BTCは約7250ドル(約76万1400円)の価値があった。しかし同午前10時50分には、1BTCは6160ドル(約64万7000円)まで下がった。ビットコインの価格はその後回復せず、本稿執筆時点でも1BTCは6150ドル(約64万6000円)で取引されている。

これは単なる事故ではない。この1カ月の間、ビットコインは少しずつ下落していた。2月19日の時点では、1 BTCは1万ドル(約105万円)以上の価値があったのだ。

米国時間3月11日、WHO(世界保健機関)は新型コロナウイルス(COVID-19)の流行がパンデミック状態であることを正式に宣言した。米国は、新型コロナウイルスの拡散を防止するため、ヨーロッパから米国への入国制限を含む追加の対策を講じている。

多くの人は、暗号通貨は株式市場とは逆の相関関係があると信じていた。しかし、経済不安は暗号通貨をも傷つけることになった。現在の暗号資産の売却は不確実性から来るものだ。経済が新型コロナウイルスから回復できるかどうか不確かな状況では、リスクの高い資産の売買を続ける気にはなりにくい。

Ethereum、XRP、Bitcoin Cashなど、人気の高いほかの暗号通貨も、この24時間でそれぞれ28.3%、23.2%、31.1%下落した。言い換えれば、今はすべてが赤字で埋め尽くされている。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ビットコイン急落の原因はFacebookか?Googleか?

 画像クレジット:Blablo101/Shutterstock(画像の一部を改変)

Bitcoin(ビットコイン)と他の暗号通貨の価格は、米国時間10月23日に暴落した。ここ数カ月、Bitcoinの価値は徐々に下落しており、年初には1万ドルを超えていたものが、昨日までに2000ドル以上も下げていた。

投資家は今回の急落の原因について依然として推測を巡らせているが、昨日までは当面の底値は8000ドルくらいだろうと楽観的に考える強気の投資家もいた。

早くもその期待は覆された。今日になってBitcoinの価格は、早朝にほぼ8000ドルだったものが一気に7448.75ドルまで下落した。

今回の暴落の原因がどこにあるのか、投資家はいまだ確信が持てていない状態だ。しかしBitcoinに詳しい識者は、疑わしい2つの要因を指摘している。

1つは、Facebookの最高経営責任者であるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏の議会での証言がぱっとしなかったからというもの。これは、同社が推し進めようとしている暗号通貨Libra(リブラ)に関するものだった。

しかし、ザッカーバーグ氏の弱気な態度や、Libra自体の命運については、暗号通貨の純粋主義者はもとから冷笑していた。おそらく世界中のBitcoinに関わる人にとって、Google(グーグル)の量子コンピュータの研究室で起こったことに比べれば、大した問題ではなかったろう。

今朝Googleは、スーパーコンピュータで解くのに何年もかかる問題を量子コンピュータを使って解くことができたことを示し、量子コンピュータにおける優位を宣言した。これは理論物理学者や量子コンピュータの熱烈な支持者にとっては、確かに素晴らしいニュースだった。しかし、コンピュータの能力では解読できないのを前提として価値を保っている記録システムを信奉し、そこに何十億ドルもつぎ込んできた投資家にとってはいいニュースとは言えないものだった。

Googleの研究成果に関するニュースがFinancial Timesによるレポートなどによって、9月下旬から少しずつ漏れ伝わってきたとき、Bitcoinの専門家はそれが暗号通貨に対して問題を引き起こすという考えを否定していた。

「量子コンピュータを実用レベルにまで引き上げられるかどうか、まだわかっていません。量子ビットを追加していくには、天文学的なコストがかかるのは、まず間違いないでしょう」と、初期のBitcoinの開発者Peter Todd(ピーター・トッド)氏はTwitterに投稿した。

CoinTelegraphが取り上げたコメントによれば、Bitcoinの暗号を解読するための経済的なコストは、Alphabet(Googleの親会社アルファベット)の数十億ドルという潤沢な予算さえも、はるかに超えるものと思われる。

それはともかく、年初までは、ほぼ一年を通して着実に上昇し続けてきた暗号通貨にとって、この数カ月は暗い期間だった。もちろん、Bitcoinや近年IT業界に出回っているような暗号によって保護された他のトランザクション方式が、生き永らえられるかどうかは、そうしたオープンアーキテクチャを利用して誰もが実現可能な製品を作ることができるかどうかにかかっている。

線香花火的な流行を別とすれば、今後何が起こるのか、予断を許さない状況が続いている。

このような不確実性が影響を及ぼすのはBitcoinだけではない。実際、Coindeskの価格表が示すように、他の市場も同様に下落している。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

「世界最大」の児童ポルノサイト摘発の舞台裏

米国時間10月16日朝、米司法省はダークウェブ上で運営されていた世界最大の児童性虐待マーケットプレイスの管理者とユーザー数百人を逮捕したと発表した。私にとって、このニュースはこの2年間書きたかった結末だ。

関連記事:米司法省が世界最大のダークウェブ児童ポルノサイトを摘発

2017年11月、当時私はZDNetのセキュリティー担当エディターとしてCBS Interactive(CBSインタラクティブ)で働いていた。ハッカーグループが、大量の児童性的搾取を行っているダークウェブサイトに侵入した、と暗号化されたチャットで私にコンタクトしてきた。私は愕然とした。それまでもハッカーグループと連絡を取ったことはあったが、このような内容は初めてだった。

このハッカーグループは「Welcome to Video」という名称のダークウェブサイトに侵入し、現実世界でのサイトのIPアドレス4つを特定したと主張した。これは、かなりの児童虐待サイトを運営していると思われるサーバーとされた。ハッカーグループはまた、彼らが主張するところの、そのサイトにログインした1000もの個人IPアドレスのサンプルを含むテキストファイルを私に提供した。ハッカーたちは、ユーザーに知られることなくいかにリストを入手したかを自慢した。リストにあったユーザーの数は10万人を超えたが、ハッカーたちはそれをシェアしてはいない。

これが真実だと証明できれば、大きななダークウェブ児童虐待サイトを発見するだけでなく、その所有者、そしてビジターを特定するという点で大きな突破口を見出したことになるはずだった。

しかし当時、我々はそれを証明できなかった。編集責任者と私は、これをどう伝えられるか協議した。最大の懸念はダークウェブサイトがすでに連邦捜査の対象となっていて、記事化することで捜査を台なしにしてしまうことだった。そして我々は別の難題も抱えた。ハッカーが主張したとおりのサイトであることを証明する必要があったが、サイトにアクセスする合法的な方法がなかった。

ハッカーたちはサイトに入るために私にユーザーネームやパスワードを提供した。彼らの主張が証明できるよう、私のためだけに作ったと言った。しかしサイトでは児童虐待の映像が表示される恐れがあり、我々はいかなる理由であれ、たとえそれが報道のためでも、そしてコントロールされた状況下であっても、そのサイトにアクセスすることはできなかった。捜査を行っていた当局だけが不法コンテンツを含むサイトへのアクセスが許された。ジャーナリストは融通がきくしかなり自由だが、不法なコンテンツにアクセスする権限は持ち合わせていない。

CBSの複数の弁護士と話し合った結果、我々は合法的にアクセスできないサイトのコンテンツを証明することなしに記事化する手段はないとの結論に至った。記事化する試みはそこで終わった。しかしサイトは続いた。

弁護士が私にそうすべきではないと言えなかったことの1つは、政府への情報提供だ。これは最終的に私の決断だった。かなり異常な状況だ。サイバーセキュリティや国家安全を報じる記者として、政府は往々にして手強い相手であり、報道のための徹底的な調査や捜査の対象だった。しかしジャーナリストがただ報道し、見るだけで直接関われないという状況ではいくつかの例外がある。生命の危険や子供の虐待などがそのリストのトップにくる。ジャーナリストは、爆発準備が整った車が建物の外にあるかもしれないことを知っておきながら傍観しているわけにはいかない。そして、ダークウェブで児童虐待サイトが続けられていることを知りながら放置することなどできない。

私はよく知られているジャーナリストに倫理的なアドバイスを求めた。我々は記者同士として秘密裏に語ることで合意した。このようなシチュエーションにそれまで直面したことがなく、私はこの件に関して正しいモラル、倫理、法的サイドにいるかどうかを確かめたかった。

答えはシンプルで、想定されたものだった。私が情報のソースを守る限り、情報を当局に提供するのは正しいというものだ。ソースを守ることはジャーナリズムの基本原則だ。しかし私のソースはハッカーグループだった。ハッカーグループはダークウェブサイトそのものではなかった。結局私は、当局が情報のソースをそれほど気にかけないだろう推定した。

私はFBIに連絡をとり、特別な機関に案内された。短い電話でのやり取りの後、私はダークウェブサイトの現実世界でのロケーションにつながるはずの4つのIPアドレスと、そのサイトのユーザー1000人のリストを電子メールで送った。それからは何も起こらなかった。返信もなかった。私はフォローし、尋ねたが、当局はそのサイトが(あるいはすでに)捜査対象となれば、何かあっても言えることはほとんどないと警告した。

ハッカーたちが不満を抱いていたことを思い出す。私が記事化しないつもりだということを伝えた後は連絡はなかった。数週間が過ぎ、私が想像したり願ったりするしかなかったことについて捜査当局による進展はなく不満を募らせた。

私はハッカーがリゾルバを通じて私に提供したIPアドレスのリストを思い返す。このリストからは誰がダークウェブサイトを訪れていたか限定的な洞察が得られた。Apple(アップル)やMicrosoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)、Samsung(サムスン)、そのほか世界のいくつかの大学とともに、米陸軍情報部、米上院、米空軍、米退役軍人省のネットワークから個人がダークウェブサイトにアクセスしていた。しかしながら我々はサイトにアクセスした個人は特定できなかった。そしてダークウェブは匿名化されているので、企業ですら従業員がサイトにアクセスしていることを把握していないだろう。

彼らはどうやって捜査を進めることができるのだろう。FBIは私が提供した情報を使って潜入したのだろうかと自問した。もし捜査が行われればそれなりの時間と労力を必要とする。政府が素早く行動を取ることはまれだ。犯人が捕まるかどうか知ることはあるだろうか。

そして2年後の今日、私は答えを得た。

検挙されたダークウェブマーケットプレイスには25万本以上の児童性虐待のビデオや写真があった。捜査を受けてウェブサイトはシャットダウンされた

米検察は2018年8月に提出し、米国時間10月16日に明らかになった起訴状の中で「Welcome to Video」という名称のダークウェブサイトに、ユーザーがアップロードした性的虐待を受けている子供の画像やビデオが25万点があったとしている。政府はプレスリリースで「最大のダークネット児童ポルノウェブサイト」とした。

今朝(米国時間10月16日朝)、サイトが削除されたことが報道された後に、私は司法省のウェブサイトに掲載された資料を引っ掻き回して、アドレスバーにフルウェブアドレスがあるサイトのスクリーンショットを見つけた。同じものだった。ハッカーが私にダークウェブサイトの存在を知らせてきたとき以来初めて、私はTorブラウザにアドレスをペーストした。すると、政府の「ウェブサイトは摘発された」との警告が表示された。

起訴状によると、連邦当局はこのサイトの捜査を、ハッカーがサイトに侵入する2カ月前の2017年9月に開始した。サイトの管理者であるJong Woo Son(ジョン・ウー・ソン)は2015年から韓国の住居でサイトを運営していた。サイトへのメインのランディングページには安全上の欠陥があり、捜査当局はダークウェブサイトの一部のIPアドレスを見つけた。単純にページの右クリックでウェブサイトのソースを閲覧できた。

これは大きなエラーで、全サイトとユーザーを一連の罠に陥れた。

検察は起訴状で、IPアドレス121.185.153.64と121.185.153.45を見つけた、とした。これらのアドレスはダークウェブサイトと同じネットワークサブネットのものだった。ハッカーたちが私に真実を伝えていたことを、ようやく確認できた。彼らは確かにサイトに侵入したのだ。しかし政府がハッカーの侵入を知っていたかどうかは謎のままだ。

最近公開された起訴状にあるIPアドレスはハッカーたちが提供したIPアドレスと同じネットワークのものだった

私がFBIに連絡をとって5カ月かそこらしてから、捜査当局はダークウェブサイトを摘発して排除するための令状をとった。起訴状は、このサイトに関わった疑いのある個人を逮捕して起訴するために今日まで秘密裏にされていたと考えられる。

計337人が逮捕された。この中には前国土安全保障省特別代理人や国境警備官も含まれる。当局はかなり虐待されていた子供23人を救出することができた。

私が今朝(米国時間10月16日朝)に連邦機関に連絡を取ったところ、FBIは今回の捜査に関与していないとのことだった。米国税庁(IRS)内の金融犯罪を捜査・起訴する部署と、主に人身売買や児童売買、コンピューター犯罪などに対処する国土安全保障省の捜査部署が指揮をとった。

英国と韓国の当局が捜査に貢献した一方で、情報筋はIRSが匿名の情報を得て捜査を開始したことを明らかにした。

そこからIRSはテクノロジーを駆使してビットコインの取引を追跡した。ダークウェブサイトでは児童の性的虐待のビデオで収益を上げるためにビットコインを使用していた。コンテンツをダウンロードしたり、自分が所有する児童性的虐待のビデオをアップロードするのに、ユーザーはビットコインで支払いをしなければならなかった。当局はまた、このサイトに出資したと告訴された5カ国の24人が使用したとされるビットコインの民事没収を行った。

ハッカーグループはやり取りがなくなってから連絡してきていない。2年前にハッキングを記事化していたら当局の捜査に取り返しのつかない損害を起こしていたかもしれず、すべてを台なしにしていたことも考えられる。放置され、誰かが何かをやっていることも知らされず、憤まんやるかたない時間だった。

しかし結末を見ることができ、これに勝る喜びはない。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi)

中国はビットコインのマイニングを禁止か

仮想通貨のマイニングは中国政府の最新の標的となっている。自国の経済にとって障害となりそうなものを徐々に排除する政策の一環だ。

同国の国家発展改革委員会(NDRC)は、世界最大のビットコイン採掘市場である中国の経済を率いる計画機関だ。今週の月曜日に、促進、制限、あるいは排除を計画している分野のリストを発表した。仮想通貨の採掘とは、ビットコインやその他のデジタル通貨を、コンピューターの能力を利用して生成する活動のこと。今回、他の多くの分野とともに、当局が「排除」したいと考えているリストにノミネートされた。その理由は「安全な生産条件が欠如し、多大なリソースを浪費し、環境を汚染した」からとされている。

ビットコインの評価が2018年に急落したことはよく知られている。2017年12月の最高額2万ドルから、4000ドルを下回るまでに落ち込んだのだ。今回の中国発のニュースは、ビットコインへの楽観的な見方が回復している最中に届いた。先週には、Bitcoinの価値は、2018年の11月以降では初めて5000ドルを上回るまで急上昇していた。

今回の公式見解は、パブリックコメントを待つ改訂されたリスト、という体裁を取っていて、規制の強制力を持つものではない。当局は、仮想通貨採掘がいつまでに禁止されるのかという期限についても触れていない。このようなガイドラインは、通常は産業活動に対する中国政府の態度を反映している。このNDRCのリストは、数年ごとに改定されるものだが、規制したいとしている産業への実際の影響力は限られていると見る向きもある。

「2006年末までに排除すべきだとされたものが2011年にも存続していました。その2019年版でしょう」と、ブロックチェーンに注力するPrimitive Venturesの創立パートナーであるDovey Wan氏はツイートしている。

もしこの禁止令が実行に移されれば、採掘、生産用のツールを業界に提供することで仮想通貨の波に乗った一連の中国企業に大きな打撃を与えることになるだろう。特に、最近香港でのIPO申請が失効したばかりのBitmainは、禁止によって多大な影響を受けるはずだ。マイニング用に最適化されたハードウェアを供給するBitmainは、採掘用のハードウェアのトッププロバイダーとして広く知られている。2018年上半期の同社の収益のなんと94%が、同社の仮想通貨マイニング用ハードウェア「Antminers」によるものだった。

Bitmainの広報担当者は、このニュースに関するTechCrunchからの問い合わせに対し、コメントを拒んだ。

仮想通貨業界は、中国政府から厳しい査察を受けてきた。詐欺や投機に対する懸念のためだ。その結果、2017年には新規の仮想通貨公開が禁止されることになった。一方、環境保護主義者は、ビットコインの採掘にともなう無駄なエネルギー消費に抗議してきた。中国は昨年初めに、一部のビットコイン採掘者に対する電力供給を制限することを計画していたという話も、Bloombergの情報源から伝わっている。

中国が仮想通貨マイニングへの締め付けを検討したのは、今回が初めてではない。2018年1月、中国は地方政府に対して、ビットコインの採掘企業を廃業に追い込むよう依頼したとされる。中国の金融ニュースを出版するYicaiが入手した文書に記述されていることだ。しかし地方政府は、そのような指導に従うことに消極的だったのだろう。中国の仮想通貨マイニング活動の多くは、開発途上の内陸地域で散発的に行われている。そうした場所では、電力は余剰にあり、政府も生産活動の拡大に熱心に取り組んでいる。強大なNDRCからの新たな指令が、この業界を抑制することになるのかどうか、まだまだ予断を許さない。

画像クレジット:IvancoVlad/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Blockstreamの「ビットコイン衛星」が双方向通信をサポート、日本や中国もサービス地域に

ビットコイン関連技術にフォーカスするカナダのスタートアップ企業Blockstream社のサービス「Blockstream Satellite」がサービス内容を大幅に拡充、双方向通信に対応するとともに、アジア太平洋地域がサービス対象となった。新たに導入した対話型サービスによりトランザクション送信、つまりビットコイン支払いに対応した。またサービス地域として新たにアジア太平洋地域を追加し、日本、韓国、中国、オーストラリア、インドなどが新たにサービス対応地域に含まれるようになる。利用に必要なのはパソコン、専用ソフトウェア、USBレシーバ、小型のパラボラアンテナだけだ。

Blockstream社のSCO(Chief Strategy Officer)であるSamson Mow氏は記者に対して「大きな進歩だ。世界のどこでも、誰でも検閲を受けないブロードキャスト(ビットコインのネットワークへのトランザクション送信)が可能となる。面白い利用方法が登場するだろう」とコメントした。発表文では「山頂でも砂漠でも、晴天でコンピュータと低コストのTV用パラボラアンテナがあれば利用できる」と説明している。またBlockstream社CEOのAdam Back氏は「ビットコインのインフラの次の段階を指し示すもの。世界人口の90%がアクセス可能となった」と発表文中でコメントしている。

ビットコインの分断耐性、可用性、耐検閲性を高める

Blockstream Satelliteとは静止軌道上にある通信衛星の回線をBlockstream社が借り受けて展開するサービスで、地球上のどこからでもビットコインにアクセスできる世界を実現する狙いがある。例えば国家によるインターネットの大規模監視や遮断、大停電や自然災害によるインフラ機能不全などの状態に陥ったとしても、衛星通信を利用してビットコインのブロックチェーンの同期を続けることができる。しかも誰にも許可を得る必要はなく、誰からも監視されずに、である。

Blockstream Satelliteの最初のサービスは2017年8月に発表された。最初の段階のサービスは受信専用で、なおかつ南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカが対象でアジア太平洋地域はサービス範囲外だった。この段階では受信専用だったので、ブロックチェーン上の入金確認には利用できたが、ビットコインによる支払いのためには衛星電話のような別の手段を併用する必要があった。それでも、世界中のほとんどの地域でビットコインのブロックチェーンを同期できる点で大きな意味があるサービスだったといえる。例えばこのサービスの存在により、災害やインターネット遮断によりビットコインのブロックチェーンが分断されてしまうリスクが減り、ブロックチェーンネットワークの可用性を高める効果があった。

今回のサービス拡充では、ブロックチェーンの同期だけでなくビットコイン支払い(トランザクションの送信)にも利用可能となり、アジア太平洋地域が含まれるようになった。これはビットコインのネットワークの耐検閲性がより高まることを意味する。

Blockstream社は、さらにビットコインのレイヤー2(第2層)で高頻度少額決済を実現する技術Lightning Networkを使うことで衛星通信で送信するデータ量を1Kバイト程度まで減らすことができると語る。さらに通信の秘匿性を高めるOnion-Routing技術を併用することで、匿名性を保ったままビットコインを利用可能となる。サービス提供者であるBlockstream社を含めて誰にも送信者、送信者、メッセージ内容を秘匿することができるとしている。例えば国家による監視や弾圧が続く国の人々でも国の監視の影響を受けずにビットコインを自由に使えるようになる。今回のBlockstream Satelliteのサービス拡充は、ビットコインの出自である「サイファーパンク」の価値観を形にしたものといえるだろう。

コインチェックがNEM保有者への補償と一部仮想通貨の出金・売却再開を発表

3月12日、コインチェックは、1月26日に起きた仮想通貨NEMの不正送金に関する補償と、一部仮想通貨の出金・売却再開について発表を行った。

まず、仮想通貨NEMの不正送金に関する補償については、同日中に行うとコインチェックでは述べている。補償対象は日本時間2018年1月26日23:59:59時点でNEMを保有していた顧客で、補償金額は88.549円×同時刻での保有数。補償は日本円で行われ、顧客のCoincheckアカウントの残高に補償金額が反映される。NEMと日本円のレートは1月28日に発表されたものと同額。3月8日の同社の会見では、補償対象のNEM総数は5億2630万10XEMと発表されており、補償総額は約466億円となる。

日本円での補償にともなう課税については国税当局に同社が相談を行っており、分かり次第アナウンスが行われるという。平成29年分の確定申告には影響はない。

一方の一部仮想通貨の出金・売却再開については、同日から順次行われるという。再開される機能は一部仮想通貨の出金と売却で、入金・購入は対象外。出金再開対象となるのは、ETH、ETC、XRP、LTC、BCH、BTCの各通貨。売却再開対象はETH、ETC、XRP、LTC、BCHの各通貨(BTC売却は停止されていない)。

コインチェックでは今回の再開について「外部専門家による協力のもと技術的な安全性等の確認が完了した」ことを受けてのものだと述べている。再開は技術的な安全性等の確認が完了した機能、通貨から順次行う、としている。

また「全ての仮想通貨の入金、購入、新規登録等については、経営管理態勢及び内部管理態勢が整い次第再開する」という。コインチェックでは3月8日の金融庁による業務改善命令を受け、内部管理態勢、経営管理態勢等を抜本的に見直すとコメントしていた。

NEM不正流出から現在までの主な流れは、以下の通り。

NEM保有者への補償は来週めど――2回目の業務改善命令を受けたコインチェックが会見

580億円相当のNEMが流出した事件で金融庁から業務改善命令を受けていたコインチェック。同社は3月8日16時より、「これまでの経緯及び今後の対応」を説明するとして記者会見を開いた。

会見に先駆けてコインチェックは同日午前11時、今回のNEM流出事件に関連し、金融庁から2度目の業務改善命令を受けたことも明らかにしている。そのプレスリリースによれば、コインチェックは金融庁に対し、3月22日までに業務改善計画を書面で提出するとともに、業務改善計画の実施完了までのあいだ、1ヶ月ごとの進捗・実施状況を翌月10日までに書面で報告するとしている。

コインチェックは流出事件が発覚したあと、自社および外部のセキュリティ会社5社による調査を実施した。同社は記者会見の中で発生原因の調査結果を明らかにした。以下はその概要だ。

今回の流出事件を起こした外部の攻撃者は、コインチェック従業員の端末にマルウェアを感染させ、外部ネットワークから当該従業員の端末経由で同社のネットワークに不正にアクセス。攻撃者は、遠隔操作ツールにより同社のNEMのサーバー上で通信傍受を行いNEMの秘密鍵を窃取したという。その秘密鍵を利用した不正送金を防げなかったのは、コインチェックがNEMをホットウォレットで管理していたのが原因だ。

コインチェック取締役の大塚雄介氏によれば、同社はセキュリティ強化策の一環として、以下を実施したという。

  • ネットワークの再構築:外部ネットワークから社内ネットワークへの接続に対する入口対策の強化および、社内から外部への接続に対する出口対策の強化。
  • サーバーの再設計及び再構築:各サーバー間の通信のアクセス制限の強化、システム及びサーバーの構成の見直しを実施
  • 端末のセキュリティ強化:業務に使用する端末を新規購入し、既存端末を入れ替え
  • セキュリティ監視:社内のモニタリング強化など
  • 仮想通貨の入出金等の安全性の検証:コールドウォレットへの対応など、安全に入出金などが行える技術的な検証を進める。

また、同社はこれらの技術的なセキュリティ対応に加えて、以下のシステムリスク管理態勢の強化を図る。

  • システムセキュリティ責任者の選定と専門組織の設置
  • システムリスク委員会を設置
  • 内部監査態勢の強化
  • その他経営体制の強化

これらの対応をとったうえで、同社は「一時停止中のサービスの再開に向けて全力を挙げて取り組むとともに、金融庁への仮想通貨交換業者の登録に向けた取り組みも継続し、事業を継続する」と述べている。

また、注目されていたNEM保有者への保障については、来週中をめどに実施することを明らかにした。補償総額を算出するNEMと日本円のレートは、先日同社が発表していた1 NEM = 88.549円となる。

当初、コインチェックは保証対象のNEM総数を5億2300万XEMとしていたが、同社は本日の会見でその総数が5億2630万10XEMとなることを発表。これに先ほどのレートをかけ合わせると、補償総額は約466億円となる。

現在、コインチェックの記者会見では質疑応答が進行中だ。詳細はのちほどアップデートしてお伝えする。

仮想通貨ビジネスの自主規制へ向け、金融庁登録16社が新団体を設立へ

金融庁に登録済みの仮想通貨交換業者16社が、認定自主規制団体を目指す新団体の設置でこの2018年3月1日に合意した。2018年3月2日、JCBA会長でもあるマネーパートナーズ代表取締役の奥山泰全氏とbitFlyer代表取締役の加納裕三氏が記者会見に臨み、合意について明らかにした。2018年1月末のコインチェックへのハッキングによる仮想通貨NEMの大量盗難事件を受けて業界への規制強化、健全化への取り組みが進んでいる中、いままで遅れていた業界団体による自主規制に取り組む。

JCBA会長でもあるマネーパートナーズ代表取締役の奥山泰全氏

新団体の名称はまだ未定。会長にはマネーパートナーズ奥山氏、副会長にはbitFlyer加納氏が就任する。今後1カ月ほどかけて設立手続きを終え、数カ月以内に金融庁認定の自主規制団体となることを目指す。まず登録業者の団体として出発するが「今後登録を目指す団体にも入会してもらうようにする」(奥山氏)としている。

「仮想通貨交換業者」は2017年4月に施行された改正資金決済法(いわゆる仮想通貨法)で定めた概念だ。いわゆる仮想通貨取引所や仮想通貨販売所を日本で営むには、この仮想通貨交換業者として金融庁への登録を済ませる必要がある。金融庁による監督と、金融庁が認定した「自主規制団体」による民間業社団体による自主規制を組み合わせ、健全な仮想通貨ビジネスを展開することが、日本での仮想通貨に関する制度作りの青写真だった。

ところが、法律の施行から11カ月が経過しているというのに認定自主規制団体はまだ登場していない。仮想通貨の業界団体として、奥山氏が会長を務める日本仮想通貨事業者協会(JCBA)と、加納氏が会長を務める日本ブロックチェーン協会(JBA)の2団体が競う形となっていたためだ。JCBAにはbitFlyer、エフ・ティ・ティ、BITOCEANの3社が参加していないものの13社と多くの登録仮想通貨交換業者が参加する。一方のJBAは登録業者の参加社数は3社と少ないが、仮想通貨の法整備へ向けロビー活動を展開していた日本価値記録事業者協会(JADA)を前身とし、法制度やブロックチェーン技術への取り組みでは実績があった。そこでステークホルダーや経緯が異なる2団体を統一するのではなく、既存団体とは別に金融庁への登録を終えた業者16社が新団体を設立する形とした。記者会見では「ここで業界が一つになるターニングポイント」(加納氏)、「既存団体は存続しつづける。各団体の連携も進めたい」(奥山氏)との発言があった。

bitFlyer代表取締役の加納裕三氏

加納氏は、自主規制に関する取り組みはすでに進めていたと強調する。「日本ブロックチェーン協会(JBA)では従前より自主規制について議論を重ねている。直近では、(1)利用者管理に関する規則。(2)仮想通貨インサイダー情報管理の規則。(3)不公正取引の防止のための取引管理体制に関する規則。(4)注文管理体制に関する規則。(5)仮想通貨交換業に関与する従業員に関する規則。(6)広告等の表示および景品等の提供に関する規則。(7)仮想通貨資金決済に関する規則。(8)セキュリティに関する規則。(9)AML/CFT(マネーロンダリング防止テロ資金供与対策)に関する規則、それぞれの案を作成していた」(加納氏)。

ひとつの疑問がある。コインチェック事件のようなハッキング被害を防ぐうえで、業界団体による自主規制にはどれだけの実効性があるのだろうか。筆者の問いに対して、bitFlyer加納氏は「コインチェック事件は全容が明らかになっていないので分析はまだできていない。だが業界としてセキュリティを一定程度に高めることが必要だ。セキュリティ基準を作る必要があるが、それについて有識者と議論を進めている。コールドウォレットやマルチシグを活用していく必要があるだろう。PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard、クレジットカード業界のセキュリティ基準)のような既存の基準も見て、セキュリティを上げることができる部分は積極的に導入し顧客保護に努める。認定自主規制団体になると強力な権限を持つことになる。技術的なセキュリティについても(その権限のもと)見ていく事になるだろう」と語った。

自称「サトシ・ナカモト」のライト氏、最大110万BTCを奪ったとして元同僚の遺族から訴えられる

eng-logo-20152016年に「我こそはサトシ・ナカモトなり」と名乗り出たことで知られるオーストラリア人実業家クレイグ・ライト氏が、かつてビジネスパートナーだった故デビッド・クレイマン氏とともに所有していたビットコイン、最大110万BTCをすべて奪ったとして、クレイマン氏の遺族から訴訟を起こされました。この2人はごく初期のビットコイン開発に関わっていたとされます。

デビッド・クレイマン氏は2013年に他界しました。しかし、クレイマン氏の兄弟であるアイラ・クレイマン氏は、クレイグ・ライト氏がクレイマン氏の所有していたビットコインなどの資産をだまし取ったと訴え出ました。

Motherboardが伝えるところによると、ライト氏とクレイマン氏はごく初期のビットコイン開発に関わっており、2人で最大110万BTCを保持していたと考えられています。

訴訟内容によるとライト氏は2013年、クレイマン氏が亡くなった直後に遺族に連絡し、2人の会社W&K Info Defence Researchの経営権をライト氏が譲り受ける契約を取り交わしていたと主張、偽造サインが記された偽の契約書類を提示してクレイマン氏の資産を独占したとのこと。

アイラ・クレイマン氏はライト氏がだまし取ったビットコイン他の資産はおよそ5500億円の価値に相当するとしています。また提示された契約書類に関しても、ライト氏に問いただした際にコンピューターで偽造したことを認めたと主張しています。

ライト氏は、2016年に自身がビットコイン開発者のサトシ・ナカモトだと主張して、その名を世界に知られるところとなりました。しかしその後は自身がサトシである確たる証拠を提示するとしつつも、結局「勇気がない」として、自ら表舞台を降りています。この行動の裏にはオーストラリア政府からの税金などに関する調査などがあったと言われています。ライト氏はその後、自身の経歴詐称なども発覚したりしていましたが、依然としてビットコイン開発者の一人である可能性は否定されてはいません。

ちなみに、サトシ・ナカモトが所有すると言われるビットコインはおよそ100万BTCとされ、2人が所有していた可能性のある最大110万BTCと非常に近い値となります。サトシ所有のBTCは長らく動かされた形跡がないため、ずっと誰かの手元で寝かされている可能性が高いはず。もし本当にライト氏が110万BTCを独り占めしたのであれば、それをそのまま置いている理由も気になるところです。

Engadget 日本版からの転載。

Bitcoin、Ethereumその他ほとんど全ての暗号通貨が暴落

Bitcoinやその他の暗号通貨(仮想通貨)を持っているなら、今は目をつぶっていよう。もし投資しているなら、もうご存知のことかとは思うが、今日は暗号通貨市場全体が2桁以上下落した。

Bitcoinの価格は12月4日以来、初めて1万2000ドルを下回り15%暴落した。一方Eth​​ereumは、1000ドル近くまで20%以上下落し、Rippleは33%下落し1.23ドルになった(記事執筆時)。

価格の低下は大きな影響を与えてる。急速に人気価格チェッカーになったCoinmarketcap.comによれば、過去24時間のうち、価格トップ100の暗号通貨のうち、価格が下落しなかったのはわずか1つに過ぎない(その1つとはTetherだ)。

ビットコインが丁度1ヶ月前の12月16日に、2万ドル近くを記録したときとは大違いだ。

下落の渦中で、Ethereum、Ripple、およびそインターネットアルトコインたちの状況は、Bitcoinよりも大幅に悪いものになっている。

コイン市場総額に基くトップ10は…

11位から20位…

25位にやっと緑色が…

暗号通貨の価格に関連する他のすべてのものと同様に、この変動を起こしているものが何かは明確ではない。

昨日のブルームバーグの報道によると、中国は国内のインターネットユーザーたちが海外のBitcoin交換取引にアクセスするのを阻止する準備を進めているという。昨年中国は国内の取引所ICOを禁止している。

先週は、中央政府が中国内のbitcoinマイナーたちを追い出す動きを見せていることが明らかになった(中国のマイナーたちは、世界のマイナーの大部分を占めていると考えられている)。有力な業者は既にそれに備えて海外に展開を始めているが、そのニュースは市場を揺るがした。

韓国政府はbitcoinと暗号通貨取引に対する全面規制は計画していないと表明したが、同政府による暗号通貨規制計画をめぐる憶測は乱れ飛んでいる。

暗号がこじれて、別の(トンデモ)理論を唱える者もいる:

もちろん、こうしたことはこれまでにも起きている。こうしたニュースは見慣れたものだろう…

暗号通貨市場は、先月のクリスマス前にも大幅な下落を経験しているが、それ以降評価額は回復してきていた、これがこの世界の移ろいやすい性質の現れなのだ。そうした上昇が、今日の暴落に続いて起きる可能性はある。実際、ウォールストリートの銀行家たちが今週ボーナスを手にするため、金融市場の一部のウォッチャーたちは今週価格が急騰する可能性があると予測している。

注:著者は、ETHとBTCを含む少量の暗号通貨を所持している。

[原文へ]
(翻訳:sako)

FEATURED IMAGE: BRYCE DURBIN

「『信頼せず検証する』ブロックチェーン技術で金融インフラを見直そう」、BlockstreamのSamson Mow氏

信頼(trust)の概念を見直し、金融インフラを再定義して置き換えよう──これが、カナダBlockstream社CSO(Chief Strategic Officer)であるSamson Mow氏が、TechCrunch Tokyo2017のGuest Session「ブロックチェーン技術で『信頼』を再考する」(関連記事)で語った内容である。

抽象度が高く、スケールが大きすぎる話題だと考える人もいるだろう。非現実的な話とすら受け止める人もいるかもしれない。だが、「信頼」の概念の再定義こそが、ブロックチェーン技術に注目が集まっている理由だ。つまりSamson Mow氏はブロックチェーン技術のインパクトについて正攻法で語ったのだ。

まず所属企業とプロダクトの話から。カナダBlockstream社は2014年設立。メインオフィスはサンフランシスコにあり、45名の社員の2/3はエンジニアだ。シリーズCでは6000万ドルの資金を調達した注目のスタートアップである。政治的配慮からかMow氏は強調しなかったが、Blockstream社は、ビットコインの開発者サトシ・ナカモトにメールで助言した人物であるAdam Back社長兼共同創業者を筆頭に、ビットコインに貢献した開発者が参加していることで知られている。

そのBlockstream社の主な製品は次の3種類だ。(1) 商用のブロックチェーンプラットフォーム「Element」、(2) 仮想通貨取引所どうしで流動性を融通するのに利用できる製品「Liquid」(ビットコインと2-way peg(双方向に連動)したサイドチェーンとして作られている)、(3) モバイル環境で使えるビットコイン・ウォレットの「Green Address」である。いずれもビットコインに深く結びついた製品である。

同社は無料のサービス「Blockstream Satellite」も提供している。静止軌道に位置する通信衛星を活用し、地球上のどこでもビットコインのブロックチェーン同期を可能にすることを目指す。例えば大災害でインターネットインフラが途絶したり、政情不安によりインターネットが遮断されたりするような事態に陥っても、パラボラアンテナを建てればビットコインのブロックチェーンの同期に必要な情報を受信することができる。衛星インターネットなど送信手段と組み合わせれば、地上のどこかででもビットコイン決済を使うことができる。ただし残念ながら日本を含むアジア地域は現時点ではサービスの対象外だが、「2018年Q1までにアジアでも使えるようにする」とのことだ。

同社はオープンソース・ソフトウェアへの貢献も行っている。主な対象は、ビットコインそのもの(Bitcoin Core)、ビットコインの少額高頻度決済を可能にするLightning Network、そして最近発表したスマートコントラクト用のプログラミング言語「Simplicity」だ。Simplicityは名称が示すようにコンパクトな言語仕様をもつ。Mow氏は「Simplicityはすべての言語仕様をTシャツ1枚に載せられる」と説明する。

「信頼せず検証する」原則で金融インフラを再構築する

続けて、Samson Mow氏は、Blockstream社が掲げるスローガン「Rethink Trtust(信頼を見直そう)」について説明した。ブロックチェーン技術を、金融インフラに活用するビジョンである。

前提となるのは、世界最大規模のパブリックブロックチェーンといえるビットコインだ。ブロックチェーンは耐改ざん性を重視する技術である。そして最も大きな計算能力(ハッシュレート)に裏付けられたビットコインのブロックチェーンは、最も頑健な耐改ざん性を備える。

ブロックチェーン技術を使うと信頼(trust)の概念が変わる。Mow氏はブロックチェーンの特性を列挙する。「検証可能性、リアルタイム監査、公開された取引台帳、セキュアな暗号学的トークン、インターネット上で動作、全ノードがデータの複製を持つこと」。これらの特性を活用することで、金融インフラを合理的に再構築することができる。

ここで提示された「信頼」に関する新しい考え方を象徴的に示すスライドを引用する。「Don’t Trust. Verify.」と記されている。これは金融分野の取引にあたり会社組織や制度を信用して全面的に任せるのではなく、自動的、機械的、暗号学的に検証するアプローチを採ることで、より良いシステムを作ることができるという提案である。

ブロックチェーンによるイノベーションの中心は「信頼できる仲介者が発行したIOU(借用証書)」を用いるやり方から、「デジタルな資産」を直接交換するやり方に移行できることだ。ブロックチェーン上のトークンは、データベース上に記録された帳簿という以上に「デジタルな資産」としての意味を持つ。帳簿には偽造や改ざんの可能性があるが、ブロックチェーン上のトークンは「資産」そのものなのだ。

「どういう場合にブロックチェーンが必要なのか? 監査・検証できることが重要である場合、マルチパーティーで情報を書き込む必要がある場合、マルチパーティーがお互いを信用していない場合、データの冗長化と回復可能性が求められる場合だ」。このようにMow氏は語りかける。

これはつまり、金融インフラのように「信頼」が重要と考えられている分野でブロックチェーンは特に大きな役割を発揮できるということだ。例えば銀行のシステム、銀行間送金、証券取引所、仮想通貨取引所など、あらゆる金融インフラをより合理的に見直すことができる。金融インフラはブロックチェーンを使うことで透明になり、効率的になり、第三者が監査可能となり、即時決済が可能となり、煩雑な手続きを省略できるようになり、しかもより安全になる。「例えば、仮想通貨取引は、従来のシステムから、(ブロックチェーンの2nd Layer技術である)Lightning Network上のアトミックスワップに置き換えることが可能だ」。

このようなビジョンを語った後、Samson Mow氏はこう締めくくった。「破壊的イノベーションが、ブロックチェーン技術の分野でも起きている。世界中のインフラを再構築するチャンスだ」。

ゲーム販売のSteamがビットコイン決済を取りやめ。激しい価格変動と手数料高騰のため

eng-logo-2015ゲーム販売プラットフォームのSteamを運営するValveが、ビットコイン決済を取りやめました。理由は手数料など取引コストの高騰と価格変動が大きすぎることから。

ビットコインはこの秋頃から価格が乱高下しており、特に最近はバブルと言われるほど急上昇、12月7日朝の時点で1ビットコインあたり150万円を突破しています。とはいえ、2週間に一度と言われるマイニング難易度調整の影響やその他の要因によって急激な下落を起こすこともあり、最近では11月末に、1ビットコインあたり130万円前後から一気に100万円まで値を下げるなど、まるでジェットコースターのような値動きを繰り返しています。

Valveはビットコインの取引手数料の高騰(当初は0.2ドルだったのが最近でが20ドルに達した)や、「数日で25%もの価格下落」があったことを例にあげ、ビットコイン決済が確定するまでに価値が下がってしまった場合に支払い残が発生し、再度請求すればビットコインの取引手数料も余分にかかってしまうと説明しています。

Valveはビットコイン決済を再び導入する可能性については否定していません。ただそれにはビットコインの価格がある程度安定することが必要なのは間違いないところです。一方、他の仮想通貨(アルトコイン)での決済を導入するかについては言及がありません。

最近は日本でもビットコイン決済を始める小売店が増加しつつあります。しかし支払いにかかる経費や運用コスト、安定性が現実離れしてしまえば、ビットコイン決済を導入する意味が薄れてしまいます。

価格上昇に沸くビットコインですが、仮想”通貨”としての役割を担いきれなくなってしまえば、その価値もまた見直されるときが来るかもしれません。

Engadget 日本版からの転載。

ビットコイン、遂に1万ドルを突破

ついにこのときが来た。ビットコインの価格が1万ドルを突破したのだ。

現地時間の11月28日午前に、ビットコインはまず国際市場(通常各国の現地市場に比べて価格が数%高い)でこのマイルストーンに到達し、CoinbaseやGeminiをはじめとするアメリカの取引所でもその後1BTCが1万ドルを超えた。

なお、ビットコインは8日前に8000ドル2日前に9000ドルを突破したばかりだった。

現代の金融市場でこれほどまでに急激な値上がりを記録した資産は存在しない。参考までに、過去1年間でビットコインの価格は1258%上昇し、仮想通貨全体の価格も2174%上昇(時価総額は3160億ドルに到達)した。ちなみに、ビットコインは仮想通貨市場の時価総額の54%を占めている。

過去1年間のビットコインの値動き(出典:coinmarketcap.com)

ビットコインの世界ではちょっとした混乱が起きている。というのも、歴史上(恐らくチューリップを除いて)、ここまで短期間にこれだけ価格が上昇した資産はなかった。前例もなく、さらには「簿価」を算出する方法もないことから、このニュースをどのように理解すればいいのか誰もわかっていないのだ。

ニュースを受けて、「1兆ドル市場誕生の前兆」や「インターネット誕生以来最大のニュース」、はたまた今後ビットコインが金や米ドル、さらには全ての通貨代替物の役割を担うようになると主張する人もいれば、これは史上最大の投機バブルで、明日にでもビットコインの価値はゼロになってしまうと言う人もいる。

そして、その中間くらいのことが起きるか、全く検討もつかないという人が大半だ。今後テクノロジーがどのように発展していくかを予想するだけでも難しいため、ビットコインのように市場で取引できる流動資産の価値を自力で考えるのは至難の業だ。

つまり、ほとんどの人が「次は何が起きるのか?」という疑問を胸中に抱えている。

しかし誰もその問いには答えられない。仮想通貨の熱狂的な支持者でさえ、現在バブル状態にあり、そのうち修正局面を迎える可能性が高いと考えている。もちろん、修正幅が20%になるのか2%になるのか、さらにはそもそも修正が起きるかどうかさえ誰もわからない。とはいえ現状を考えると、具体的な数値はわからないにしても、将来的に価格が下がる可能性は大いにある。

連日ビットコインに関するニュースをTwitterやCNBCで見聞きするが、実際のところ普及率はまだ低いままだ。アメリカ国民の多くは、未だにビットコインとは何なのか、そしてビットコインで何ができて、どこで買えるのかさえ知らない。この状況はウォール街でも同じで、過去1年間で仮想通貨に特化したヘッジファンドが100以上も立ち上げられたが、機関投資家の多くは未だにビットコインへの投資を控えている。

つまり、まだビットコインは黎明期にあるとも言えるし、すでに終焉を迎えつつあるとも言える。いずれにしろ、過去1年間の仮想通貨市場がどれだけ熱狂の渦に包まれていたかを振り返る上で、このニュースはちょうどいいきっかけになりそうだ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

ビットコイン開発のど真ん中にいるBlockstreamのサムソン・モウ氏がTechCrunch Tokyoに登壇

11月16日、17日の2日間にわたって渋谷・ヒカリエで開催予定のテック・イベント「TechCrunch Tokyo 2017」の登壇者が決まりつつあるので、順次お知らせしたい。まず1人目は、ビットコインやブロックチェーン関連の開発で知られるBlockstream社のCSO(Chief Strategy Officer)、サムソン・モウ氏(Samson Mow)だ。

Blockstream CSOのサムソン・モウ氏

Bitcoin Coreほかサイドチェーン技術に取り組むBlockstream社

Blockstreamは、ビットコインそのものと言えるオープンソース・プロジェクト「Bitcoin Core」の主要開発者が所属することでも知られる2014年設立のカナダ・モントリオール拠点のスタートアップ企業だ。BlockstreamのCEOであるアダム・バック(Adam Back)博士は、ビットコインのアイデアの根幹にもある「proof-of-work」(Hashcash)を1997年に発明した暗号学者としても知られている。

Blockstreamが開発しているのはサイドチェーン関連のプロダクトだ。ビットコインのような暗号通貨を実現している実体はブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳だが、いろいろ制約がある。悪意がある犯罪者集団ですら自由に参加できてしまうネットワークであるのに、台帳の改ざん防止が暗号論的に担保されている、というのがブロックチェーンのブレークスルーだったわけだが、そこにはトレードオフがあった。トランザクション性能があがらず、スケールしないという問題だ。現在、ビットコインによる送金が確実になったと見なされるまでには6ブロックを生成する時間、1時間かそれ以上が必要だ(ビックカメラやメガネスーパーなどのビットコイン決済は少額決済を全手に0承認で即時送金しているので念のため)。

だったらビットコインのチェーンの横に、別のチェーンを接合して、そちらで処理をすればいいじゃないかというアイデアがある。「サイドチェーン」と総称されるものだ。

Blockstreamが開発する「Lightning」は、ビットコイン開発者コミュニティー全体で策定と実装が進んでいる「Lightning Network」(LN)と呼ばれるマイクロペイメントのためのサイドチェーンだ。LNは取引をするユーザー同士が専用のチャンネルを作り、そのチャンネル上で決済を行うというアイデアに基づいている。LN上の一連の決済は、チャンネルを閉じるときなどに、まとめてビットコインのチェーンに書き戻される。LNはラフな合意に基づく仕様があって、実装自体は数種類あるという極めてインターネット的な開発が進んでいる。LNを使うと0.00000001BTC(現在の価格だと0.004円)というきわめて少額の決済がデバイス間で即時に可能となる見込みで、BlockstreamもLNの1つを開発している。

Blockstreamが開発するサイドチェーンには「Liquid」というのもある。こちらは取引所間で流動性を持たせるための「ストロング・フェデレーション」と呼ぶ技術を開発しているそうだ。ビットコイン同様のビザンチン頑健性(Byzantinerobust)を持ちつつ、商用に耐えうるプライバシー(決済するアセットの種類や量が外部から分からない)を実現している、とホワイトペーパーにある。

そうそう、もう1つ、Blockstream関連でぶっ飛んだニュースが8月15日にあった。人工衛星からビットコインのブロック情報を地球上にばらまき続けることで、ネット接続のない地域でもブロックチェーンの恩恵に預かれるようにしようという試みだ。一瞬ネタなのかと思うような話だが、すでに動き出していて、ここからステータス情報をみることもできる。

で、ビットコインに何が起こっていて、今後何が起こるのか?

モウ氏が配っている「UASF」の帽子

さて、Blockstreamのサムスン・モウ氏だが、彼はUASF(User-Activated SoftFork)を強く支持するとした活動で知られている。今年夏の分裂騒動の根底にはハッシュパワーの偏りという問題があった。端的に言えば、ハードウェアに大金を突っ込めば、ビットコインのあり方や未来の方向性に対して大きな声を持ててしまうという問題だ。一部の強大なマイナーたちが自己利益最大化のためにビットコインの仕様を左右してしまうという懸念が出てきた。

個人の利用者にはもはや「投票権」はなくなっているかに思える。そこで使われたのがUASFだった。マイニングをしなくても、自分が支持する仕様(機能)を持つ実装のノードを立てることはできる。そうしたノードがネットワーク全体で増えれば、結果として参加者全体の声が反映された意思決定ができる。UASFの呼びかけは多くの共感者に支持された。それまでマイナーたちが拒否していたSegWit仕様は、こうして有効化されたのだ。ちなみにSegWitは、いまこの記事が出たのとほぼ同じタイミング(日本時間で8月24日)でビットコインのネットワーク上で稼働を始めたということで、関係者の間で、ちょっとしたパーティー気分が広がっている。SegWitは前述のLNを実装するためにも必要な技術ピースだったから、これは大きなニュースだ。

時間とともにハッシュパワーの偏りが起こって、それがコミュニティー運営にとって政治的問題に発展した。そうなる未来をビットコイン発明者のナカモト・サトシは予見できなかったのだろうか?こんなぼくの素朴な質問を来日中だったサムスン氏にぶつけたところ、

「サトシは神様じゃないからね」

という答えと苦笑いが返ってきた。ビットコインには設計・運営上の欠点がある。しかし、UASFを可能にした「version bits」と呼ばれる仕組みが考えられたのは2015年のこと、実際にBitcoin Coreに実装されてリリースされたのが2016年であることを考えると、コミュニティー運営のための仕組み自体も改善を進めていることが分かる。こうした改善は「BIP」(Bitcoin Improvement Proposals)と呼ばれる標準化されたプロセスを通して今も引き続き行われている。

プレイヤーごとに異なる思惑と欲望が交錯するビットコイン。とかく価格の暴騰と暴落ばかりが話題になりがちだが、内部ではもっとダイナミックな開発と変化が起こっている。そうした変化の渦中にいて、ビットコインの明るい未来を信じ、活発に発言をしている人物の1人がサムスン・モウ氏だ。

今後も暗号通貨やトークンエコノミーにおいて、ビットコインは基軸通貨的な役割を果たし続けることになるだろう。その来し方、現在、近未来のことを、サムスン・モウ氏には語っていただこうと考えている。今ならまだ一般チケット4万円のところ、超早割チケット1万5000円が販売中なので、以下のページから参加登録してほしい。

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Nayutaがジャフコらから1.4億円を調達、ブロックチェーン上のレイヤー2技術開発へ

福岡市に本拠を置きIoTとブロックチェーン分野に取り組むスタートアップ企業Nayutaが、ジャフコおよび個人投資家を引受先とする第三者割当増資により1億4000万円の資金を調達したことを明らかにした。調達実施日はこの2017年7月28日、出資比率は非開示。同社が外部から資本を調達するのはこれが最初である。

調達した資金は主に研究開発に振り向ける。現時点では同社のフルタイムスタッフは2名だが、Nayuta代表取締役の栗元憲一氏は「人員を増やしエンジニアを5〜6名にしたい。Biz Devの人材も採りたい」と話している。また、同社の取り組みにはハードウェア開発が関係することもあり大きめの資本が必要と判断したとのことだ。

同社が注力するのは、ビットコインを筆頭とするブロックチェーンの上に構築するレイヤー2(あるいは2nd Layer)技術だ。ブロックチェーンの上に「ペイメント専用のレイヤー(層)」を構築する試みである(下の図を参照)。現状のビットコインでは難しい「単位時間あたり取引能力の拡大」、「リアルタイムな取引」、「マイクロペイメント」を可能とする技術群を開発していく。

今までのNayutaの取り組みとしては、ビットコインのブロックチェーン上のOpen Asset Protocolを応用したスマートコンセント(発表資料(PDF))や、BLE(Bluetooth Low Energy)に基づく人流解析システム、大型放射光施設「SPring-8」の測定データの有効活用を図るためブロックチェーンを応用して構築したデータ流通インフラシステムのプロトタイプ(発表資料)などがある。この7月28日に開催した「MUFG Digital アクセラレータ」第2期のDemo Dayでは「準グランプリ」を受賞している。

レイヤー2で世界の最先端と実装を競う

レイヤー2に関連しては、ビットコインのLightning Networkが知名度も高く注目されている。Nayutaは、このLightning Networkと同様の機能を実現する層と、その上のアプリケーション層の両方を開発していく。同社が開発したビットコインの「レイヤー2」を用いる決済技術については以前TechCrunch Japanで報じている。同社はこの時点で、Lightning Networkの既存実装とは独立に、自社による実装に基づくマイクロペイメントを実現している

ブロックチェーンとレイヤー2は、どちらも必要とされる技術だ。この2017年8月には、レイヤー2プロトコル実装に必要となるSegWit仕様がビットコインのブロックチェーンでアクティベートされることが決定した。最近、いわゆる「ビットコイン分裂」の懸念が盛んに報道されたが、この騒動の実態はSegWit有効化をめぐる動きだった。SegWit仕様が使えるようになれば、レイヤー2技術の実装と応用が加速することは間違いない。

このように聞くと「すでに登場しているLightning Networkの実装を使ってその上のレイヤーを開発した方が効率的ではないか」との疑問を持つ人もいるかもしれない。この疑問に対して、同社では「レイヤー2はどの実装が標準になるのか、まだ分からない段階。Lightning Networkだけではなく、様々なパターンの技術が出てくるだろう。IoT分野に取り組む上で、自分たちで作ることでレイヤー2の技術を身につけておくことは大事だ」(栗元氏)と話す。特に大事な部分はリアルタイム性に関連する部分だ。

「IoT分野では、ほとんどのものにリアルタイム性が要求される。レイヤー2がうまく構築できれば、(リアルタイム性に欠ける)パブリックブロックチェーンでもIoT分野で新しいソリューション、ガバナンスを作っていける可能性がある」(栗本氏)。

Nayutaが狙うのは特にIoTと関連するレイヤー2分野だ。リアルタイム性を筆頭にIoT分野(あるいは組み込みシステム分野)では、技術をブラックボックスとして利用するだけでなく「中身」を把握していることが競争力につながる場合が多い。同社が自社による独自実装にこだわっている理由はそこにある。

ブロックチェーン、レイヤー2、IoTの組み合わせは世界的に見ても最先端の取り組みだ。その最先端のソフトウェアテクノロジー分野で日本のスタートアップが正面から世界との技術競争に挑む形となる。資金調達のタイミングと同時にSegWit仕様の有効化が重なったことは幸運でもあるが、競争も激しくなるだろう。今後の同社の取り組みは要注目といえる。

フィスコが10億円、ほかVC2社が仮想通貨とCOMSAのICOトークンへ直接投資を開始

テックビューロがICOソリューション「COMSA」(コムサ)を発表したことはTechCrunch Japanで8月3日にお伝えしたとおりだが、このCOMSAが作り出そうとしている「ネットワーク」にリアルマネー(法定通貨)を投資する事業会社とVCがでてきた。

COMSA発表から1週間が経過した今日8月10日、金融情報提供サービスを運営するフィスコのほか、テックビューロの既存投資家であるVCの日本テクノロジーベンチャーパートナーズ、IoT関連スタートアップに投資しているアクセラレーターのABBALabの3社が、COMSA上で流通するICOトークン(CMS:単位はCOMSA)をはじめ、ビットコイン(BTC)やNEMプロジェクトの通貨である「XEM」への直接投資を開始したことを発表した

ビットコイン、NEM、COMSA、ICOトークンへ投資

「直接投資」を噛み砕いていえば、ビットコインやNEMの仮想通貨を日本円で買っていくということだ。買うのは既存の仮想通貨だけでない。10月2日に予定されているCOMSAのトークンセールで出てくる「COMSA」という新しいトークンについても投資予定だし、COMSAというICOプラットフォームで今後でてくるICO案件で発行されるトークンについても投資を予定している。ただ、ICOによるトークンは有価証券ではないので、投資家ではなくトークン購入者というほうが現実に近いのかもしれない。

既存仮想通貨やCOMSA、COMSAを使って今後でてくるICO案件それぞれの投資金額や比率は明らかにされていない。ただ、フィスコは全体で10億円規模となる仮想通貨専門の投資ファンド「FISCO Crypto Currency Fund(仮称)」を組成するとしている。

フィスコは株式、為替、金利などの金融情報を投資家向けに提供していて、すでに仮想通貨に関する情報提供も開始しているが、仮想通貨やICO市場を既存金融市場と比べたとき「合理的な市場は形成されていない」(フィスコ代表取締役狩野仁志氏、発表文からの引用)という。

確かに現在、仮想通貨に関する情報といえば、単に誤った情報というだけでなく、根拠のない断言やあからさまな嘘、煽りも横行している状況だ。世界のICOについて言えば、トークンセールの実施主体が発行するホワイトペーパーと、そのICOによって利益を得る関係者たちの証言だけが頼りということもある。今後、もしICOが資金調達手段として既存の資本市場を補完する存在になっていくのだとしたら、信頼できる情報に対するニーズが高まることは十分に予想されるところだ。

しかし、フィスコのような情報提供者が直接投資をするプレイヤーとなることに矛盾はないのだろうか? この点について前出のフィスコ狩野氏は、情報の透明性を高めることで「合理的な金融市場形成に寄与する」という同社の使命に言及しつつ、次のようにコメントしている。

「私たちがXEMをはじめとする将来有望な仮想通貨やICOトークンへ積極的に投資することで、他の投資家に対する超過利潤を得ることに何のためらいもありません。自らがプレイヤーとなり、そのパフォーマンスを実現し、市場に示していくことは、私たちがその使命を遂行する上でもっとも効率的かつ効果的な方法論であろうと考えています。今後の私たちの投資パフォーマンスに是非ご期待頂ければと思っています」

音楽にたとえると、IPOはクラシック、ICOはロック

ICOという新しい仕組みについて日本テクノロジーベンチャーパートナーズの村口和孝氏のコメントが興味深い。かなり長いコメントだが、あまりに面白いので以下に全文を引用しよう(改段落はTechCrunch Japan編集部による)。村口氏は日本の独立系VCの草分け的存在として、日本のVCの間では最も尊敬されている人物の1人だ。

「NTVPではこれまでDeNAなど日本のスタートアップ企業に対して株式を使って、投資を長期で実現して、発展を支援してきました。音楽でいえばクラシック音楽です。20世紀の株式による資本を増加する方法であるVC投資とIPOに対し、ICOは、ロックの登場です」

「ICOは21世紀のフィンテック時代における、事業実現に向けての新しい実に有効な資本調達手段だと考えています。NTVPはこれまでの株式のガバナンスを有効な支援方法とする方法に対し、ICOではトークン市場での会社発展エコシステムにトークンホルダーとしてVCとして事業発展に関与します。そこでは、NTVPは、トークンをいかに保有し、いかにトークン発行会社のICOで実現しようとしている事業ビジョンの実現を支援するかが、ICOに関与するVCとしての役割になるでしょう。もちろん、NTVPでは、従来のIPOを狙うスタートアップ企業に対するクラシック株式投資も継続しますし、それがすべてICOのエレキギターによるロックに置き換わる訳ではありません」

「21世紀はIPOクラシックとICOロックと2つのエコシステムが互いに協調しながら経済社会のフロンティア領域において、新しい経済のスターを生み出す2つのエンジンになる日が近いと考えています。ロックが最初不良の音楽とみなされたように、社会が受け入れるには十年くらいかかるかもしれませんが、ICOからエルビスプレスリーやビートルズ、さらにはマイケルジャクソンが誕生する日も近いとNTVPでは考えています」

ICOとは何なのかということについては、『FinTechの法律』(日経BP、2016)などの共著書がある増島雅和弁護士(森・濱田松本法律事務所)が7月に発表したスライドが現状のサマリーとして参考になるので、以下、一読をオススメしたい。増島氏はテックビューロのリーガルアドバイザーも務めている。

テックビューロが開発を進めるCOMSAは、複数のブロックチェーン間のゲートウェイとなるプラットフォームだ。テックビューロ創業者で代表取締役の朝山貴生氏はTechCrunch Japanの取材のなかで、その狙いを「プライベートチェーンとパブリックチェーンの境目をなくすのが目標」と語る。

ここでパブリックチェーンと言っているのは、NEM、Ethereum、Bitcoinのブロックチェーンのこと。プライベートチェーンといってるのは個々の企業が使用するmijinのブロックチェーンのことだ。境目をなくすと言うときカギとなるのは異なるチェーン上の価値を交換可能とする「ペッグ」という手法だ。

「COMSA CORE」と呼ぶクラウド上の9台のサーバーで稼働するmijinノードで稼働するブロックチェーンがパブリックブロックチェーン同士をペッグし、「COMSA HUB」というmijinのプラグインがそれらパブリックブロックチェーンと内部勘定のプライベートなブロックチェーンをペッグする。

COMSAでペッグさせるのは、既存仮想通貨や、新規発行するICOトークンと仮想通貨などの組み合わせがある。さらに法定通貨(円や米ドル)とペッグさせることも視野に入っている、という。法定通貨とのペッグは、直接的なやり方ではなく、法定通貨とペッグした仮想通貨(TetherやZEN)を使うことで行う。法定通貨の裏付けを持ったサービス提供主体がプライベートチェーンを運用し、これをパブリックチェーンにペッグすることで、円やドルと等価のトークンを仮想的にパブリックなNEMやEthereumのブロックチェーンで扱えるようになる。このことは、パブリックチェーン上で商取引が可能になることを意味している。テックビューロの朝山氏は「実経済の資金がさらにブロックチェーン上に乗って、潤滑油になってエコシステムが回りだす」と話している。

COMSAで扱うICO案件については、COMSA自体のICOのほか、2号案件として11月中旬に東証二部上場企業のプレミアムウォーターホールディングス、3号案件として11月下旬にCAMPFIREを予定している。取り扱うICO案件について朝山氏は「10社に9社はお断りしている状況」と話していて、引き合いが多いものの採用基準自体は厳し目にしているそうだ。

MR、ドローン、音声デバイス、ビットコイン——テック業界経営者が予測する10年後のトレンド

左からスマートニュース代表取締役会長 共同CEOの鈴木健氏、ディー・エヌ・エー執行役員の原田明典氏、投資家/The Ryokan Tokyo代表取締役CEOの千葉功太郎氏、アイ・マーキュリーキャピタル代表取締役社長の新和博氏、グリー代表取締役会長兼社長の田中良和氏、gumi代表取締役社長の國光宏尚氏

この10年のテック業界を振り返れば、最も大きな変化というのは「ガラケー(フィーチャーフォン)」から「スマホ(スマートフォン)」への変化だった。では今後10年はどんな変化が訪れるのか?——6月5日〜7日にかけて兵庫県神戸市で開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe」。10周年となる本イベント、6日最初のセッション「業界トレンドの歴史と未来。これまでの10年、これからの10年」では、経営者、投資家らが今後10年のトレンドについて語り合った。

登壇者はgumi代表取締役社長の國光宏尚氏、アイ・マーキュリーキャピタル代表取締役社長の新和博氏、グリー代表取締役会長兼社長の田中良和氏、投資家/The Ryokan Tokyo代表取締役CEOの千葉功太郎氏、ディー・エヌ・エー執行役員の原田明典氏の4人。モデレーターはスマートニュース代表取締役会長 共同CEOの鈴木健氏が務めた。

経営者、投資家が振り返る「過去10年で最も衝撃だったニュース」

セッション冒頭、登壇者は自己紹介とあわせて、この10年でもっとも印象に残った、衝撃だったニュースについて語った。

原田氏が挙げるのは「アプリ回帰」というキーワード。NTTドコモからミクシィを経てDeNAで投資を担当する原田氏。かつてガラケーで流行しなかった「アプリ」が、スマホになって流行したと振り返る。「(流行の)ポイントはタッチパネル(での操作感)。過去の(ガラケーでアプリが流行らなかったという)トレンドを踏襲し過ぎて当てはめていけない」(原田氏)。続けて千葉氏は、2016年11月の「i-mode端末最終出荷」、2015年3月の「トイドローンとの出会い」を挙げる。端末最終出荷時点でも1700万人がいまだ利用していた日本独自の巨大プラットフォームの終焉、そして自身の新しい活動にも通じるドローンとの出会いこそが衝撃だったという。

原田氏と同じくNTTグループ系の出身である新氏も、ガラケーからスマホの変化が衝撃だったと語った。「いち従業員ながらも、通信キャリアが天下を取っていたつもりでいた。だがあれよあれよとスマホがやってきた。キャリアがトップだったところから、外来のハードウェアメーカーやOSがトップに移り変わったことが衝撃」と語る。グリーの田中氏は「10年前に1億円買っていれば…」と悔いつつ、「ビットコイン」の衝撃を語る。最初のビットコイン(ブロック)が登場したのは2009年、2010年頃でも1ビットコインは5円程度だったが、今では30万円前後となっている。こういったプラットフォーム(というか仮想通貨)の登場自体が非常に衝撃の大きいモノだったとした。

國光氏は2000年代後半に起こったソーシャルゲームの勃興について振り返った。当時はグリー、DeNA、ミクシィといったプラットフォーマーがしのぎを削りあい、ゲーム開発会社が資金を調達し、成長していったが、そういった経済活動自体が「日本のスタートアップの足腰を強くした」と語った。大企業や他業種からの参入者も増え、エンジニアのより一層高まったのもこの時期だろう。

セッションの様子。図はIVSで取り上げたトレンドを年代別にマッピングしたものだという

10年後、流行するデバイスは?

冒頭に書いた通り、ハードウェアで言えばガラケーからスマホ、その上によるプラットフォームの変化こそが、この10年の変化そのものと言っても過言ではない。では今後10年でどんなことが起こるのだろうか。

國光氏は、スマートフォン、ソーシャルウェブ、クラウドの掛け算で実現するプロダクトについて、「(この10年で)おいしいところが出尽くした」とした上で、最後に残っている領域として「モバイル動画」を挙げる。中国ではライブ動画での個人の活動やECが活発化している。これと同じような流れが日本でも来ると語る。

一方デバイスについては、MR(Mixed Reality)技術を取り込んだ先進的なメガネ型デバイスなどが1年以内にも登場するのではないかと予測する。「これからは、『MR、IoT、クラウドファースト』という企業が(マーケットを)塗り替えていく。わざわざスマホを見るより、目とインターネットが繋がった方が便利なのは自然な流れ。直近のGoogleやFacebookの発表を見ていると、思った以上に早く来るのでは」(國光氏)。MRデバイスについては、MicrosoftのHoloLensをはじめとして、特許を囲わずに各メーカーで作っていくという流れがあると説明。将来的にはAppleもAirPodsならぬ「AirGlass」などをリリースすれば一気にトレンドがやってくると予測する。

これに対して原田氏は、「ボイスインターネット」、つまり音声対応デバイスの時代やってくると語る。原田氏は「コンピューターが小型化する」という流れがあると勘違いしていたと振り返る。PCからスマホ、スマホから時計(スマートウォッチ)という変化が重要というのは間違い。一方で、スマートフォンの方がPCよりも機能が制限されるが、リテラシーの低い人でも使いこなしやすかった。同じように、リテラシーの低い層にどう刺さるデバイスであるかこそが重要だという。そういう観点で、次のトレンドは音声認識デバイスが作るのではないかとした。

先日ドローン特化の投資ファンドを立ち上げたばかりの千葉氏はデバイスとして「ドローン」を挙げた。ファンドの詳細はインタビュー記事を読んで欲しいが、ドローンが自動運転することで、BtoB領域のビジネスを変化させるのではないかと語った。

新氏は、劇的なデバイスの進化が起こるのではなく、10年後も現在のスマートフォンの延長線上にあるデバイスが主流ではないかと予測する。「10年前と今では、通信速度は100倍になり、ユーザーは音楽からゲームや動画を楽しむようになってきた。メールはメッセンジャーにかわり、リアルタイミング性が求められている。だが(ハードの進化については)保守的に考えていて、今より少し大きくなって、全天球カメラが付き、VR体験ができる程度のものになるのではないか」(新氏)

田中氏はこの10年で最も興味あるのは「AI」だと語る。先日のAlpha Goがトップ棋士らに勝利したというニュースを例に挙げ、「一番囲碁の強い人がAIに負けて、プロがその棋譜を読んだら『さっぱり分からない』となった。今まで僕らは『人間は(歴史を通じて)最適化されている』と言っていたが、それが違うらしいと暴露されてしまった。そうなると土台おかしいことがこれから発見されていくのではないか」と予測する。

ではスタートアップがAIの領域にチャレンジするにはどうしたらいいのか? 國光氏はGoogleやFacebookなどが提供するクラウドベースのAIを活用したプロダクトに注目しているとした。すでに画像認識や動画認識、テキスト解析、音声認識といった領域については、Googleをはじめとした企業がAIの公開を進めているところだ。これを使ってチャレンジできるビジネスがないかと問いかける。

ビットコインはナショナルカレンシーの代替となるか

ここで鈴木氏は、登壇者にFinTech領域の変化について聞いた。登壇者は連日話題を集めているビットコインやブロックチェーンをどう考えるのか。

千葉氏は「苦手な領域」としつつも、先日ビットコインが暴落したことに触れ、「(信用取引などで必要な)追証が必要ないこと」に驚いたとした上で、国家を脅かす可能性にもなりえると語った。原田氏も、ナショナルカレンシー(国が発行する通貨)の信用低下に伴う代替通貨の必要性はあるが、それをビットコインが担うかどうか分からないと語る。

田中氏は、ビットコイン隆盛の背景に、中国ではクロスボーダーの総員が難しいために、その代替手段として利用されているという事例を紹介。「これは技術ではない。世界の動きを分かっていないといけない」と語った。これに対して、通貨の研究も行っていた鈴木氏は、「結局国家は強い。揺り戻しが来るのではないか」としつつも成長の可能性を示した。