メタバース化するファッションと現実を橋渡しするスニーカーマニアのためのアプリ

ファッションはメタバースへの移行期にある。

さまざまな高級レーベル、音楽そしてゲームは、バーチャルな世界で人目を引こうと躍起だ。それらに依存してきたイベントや娯楽の業界が休止を余儀なくされたパンデミック下では、バーチャルな物事が大衆文化を代表し始めている。

そこでは、これまで金と名声でしか獲得できなかったステータスシンボルの蓄積に必要なものは、富みではなく、想像力と技術力だけという環境が構築されている。

Marc Jacobs(マークジェイコブズ)Sandy Liang(サンディーリアング)Valentino(ヴァレンティノ)といった有名ブランドが任天堂の「あつまれ どうぶつの森」にデザインを提供し、ハイブベイは2020年5月末にゲームの中でファッションショーを開催する。またEpic Games(エピックゲームズ)の「フォートナイト」とSupreme(シュプリーム)などのブランドとコラボ(これはパンデミック前だが)などさまざまな交流を通じて、ファッションは、その関係性を保とうとゲーム文化に足場を築いている。

スタートアップ企業の創設者であり、そしてスポーツウェアの最大手企業の従業員としてその両方の業界で経験を積んだある起業家が、新しいアプリを立ち上げた。それは、現実とバーチャルのファッション世界の橋渡しとなるものだ。

目指しているのは一流ブランドを愛する人たちに、あこがれの製品のバーチャル版を集める場と、ポイントを貯めればそれが実際に買えるチャンスになることだ。さらにゆくゆくは、新しい才能を発掘して次世代のコラボの流れを作ろうと考えるブランドに自分を売り込み、デザイナーとして身を立てるきっかけを作る場をデザイナーの卵に提供する予定だ。

マークジェイコブズ「カブを売る? 私たちはAnimalCrossingFashionArchiveアカウントと提携してマークジェイコブズのお気に入り6点を『あつまれ どうぶつの森』に展示します。私たちのストーリーでコードをダウンロードしてください」

Agletの第1フェーズ

Adidasの元デジタルイノベーション戦略の責任者であったRyan Mullins(ライアン・ムリンズ)氏が開発したAglet(アグレット)という名のこのアプリは、限定エディションのスニーカーのデジタル版をコレクションできる場であり、将来的には、世界的デザイナーのVirgil Ablohs(バージル・アブロー)やKanye Wests(カニエ・ウェスト)を目指す人たちがメタバースのオリジナルスニーカーを作れるデザインツールにもなる。

2020年4月に、TechCrunchがムリンズ氏に話を聞いたときは、彼はドイツで足止めされていた。彼はロサンゼルスへの移住に合わせて会社を立ち上げる予定だったのだが、新型コロナウイルスの感染拡大予防対策のために旅行ができなくなり、世界の国々がロックダウンしてしまったため、計画は大きく変わってしまった。

もともとこのアプリは、スニーカーマニアのための「Pokémon GO」になるはずだった。バーチャルスニーカーの限定版ドロップ(モデル)が街のあちらこちらに現れ、プレイヤーはそこへ行き、そのバーチャルスニーカーをコレクションに加えるというものだ。プレイヤーは、さまざまな場所へ移動することでポイントを得ることができ、ポイントはアプリ内購入や店舗での割り引きに使える。

「みんなの物理的な行動を私たちがバーチャルなお金に変換して、店舗での新製品の購入に使えるようにするというものです」とムリンズ氏。「ブランドは、プレイヤーに課題を出します。自分の街で他の人たちと競い合いながらいくつかの課題をこなし、勝利すると賞品がもらえます」。

Agletは、プレイヤーが遠征の際にどのバーチャルスニーカーを着用したかに基づいてポイントを決める。バーチャルスニーカーは、エアフォース1からYEEZY、さらにはもっと高価なものやレアなものまで、幅広く用意されている。それを履いて「外を歩く」ほどポイントがもらえる。だがしばらくするとスニーカーはすり減り、新しいものと交換しなければならなくなる。つまり、こうしてアプリにハマりやすくなるのが狙いだ。

アプリ内購入に使える通貨は、1ドル(5Aglets、約108円)から80ドル(1000Aglets、約8630円)の間で好きな額を購入できる。プレイヤーは、集めたスニーカーをアプリ内のバーチャル棚に飾ったり、他のプレイヤーと交換したりもできる。

街がロックダウンされ自宅待機が要請されるようになると、ムリンズ氏と開発者たちは、そのゲームを急いで「パンデミックモード」に作り変えた。プレイヤーはマップ上を自由に移動でき、ゲームをシミュレートするというものだ。

「当初はロサンゼルス限定で、そこで人々に競い合ってもらう計画でしたが、完全に諦めました」とムリンズ氏はいう。

このアプリには、Nikeの「SNKRS」のような先例があった。4月のAgletのローンチについて書いたInputの記事によると、SNKRSでは特定の場所にユーザーを集め、さまざまなコラボを通じて限定ドロップを提供するという。

ムリンズ氏が現在Agletで考えている展開は、ゲームとスニーカー文化を糸で縫い合わせるというおもしろい試みだ。ムリンズ氏は拡張現実を利用して新タイプのショッピング体験ができる、ゲームの世界から一歩外に踏み出したものを作ろうとしている。

画像クレジット:Adidas

将来のファッションはメタバースから発掘される

「私が(Adidasで)最も誇りにしている取り組みは、MakerLab(メイカーラボ)というものです」とムリンズ氏はいう。

MakerLabは、Adidasと若い新進気鋭のデザイナーとを結び付け、同社の古典的なシルエットをベースにした限定版をデザインさせた。ムリンズ氏は、このようなコラボを可能にする場が業界の未来を切り拓き、想像を超える魅力をもたらすと考えている。

「実際のところ私は、次なるNikeはスウッシュが反転したNikeだと確信しています」とムリンズ氏。「若者たちがRoblox(ロブロックス)のバーチャル世界で何かをデザインすると、それが現実世界に飛び出してきて、NikeやAdidasが製品化するという現象が起こりつつあります」。

そうした観点に立てば、Agletのアプリはムリンズ氏が追いかける大きな理想のためのトロイの木馬に見える。デザインスタジオを作り、最高のバーチャル・デザインを陳列して、それを現実世界に持ち出すのだ。

ムリンズ氏はそれを「スマートAgletスニーカースタジオ」と呼んでいる。「そこで標準的なスタイルを元にオリジナルのスニーカーをデザインして、それを履いてゲームの中を歩く。プレイヤーにオリジナルのパーカーをデザインできるようにして、私たちがファッションデザインのYouTubeの役割を果たします」

YouTubeを例えに出したのは、そこがメイクアップアーティストから、ソーシャルメディアのストリーミング配信から見いだされたJustin Bieber(ジャスティン・ビーバー)のようなミュージシャンまで、誰もがスターになれる可能性を提供するプラットフォームだからだ。

「私はバーチャルなデザインプラットフォームを作りたいのです。若者がそこで独自のバーチャルファッションブランドを立ち上げ、ゲームの世界で販売する。そこをまず作りたいと思っています」とムリンズ氏は話す。「ビーバーが発掘されるや、YouTubeは彼がインフラ全体にアクセスできるようにしてスターに育て上げました。NikeもAdidasも、同じことをしています。いろいろなところにいる才能あるデザイナーの卵を見つけ出し、そのインフラを提供して、若いうちからプロとして活躍できるよう後押ししているのです」。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

インフルエンサーの“個人ブランド”が主流の時代へ 、D2C基盤「picki」が5つのファッションブランドを公開

「これからは個人が立ち上げたパーソナルブランドが主流になる」

そう話すのはインフルエンサーのファッションブランド作りを支援するD2Cプラットフォーム「picki」を手がけるpicki代表取締役の鈴木昭広氏だ。

同社では服作りやブランド作りのノウハウを持っていない個人でも自身のブランドを作れるように、企画から生産、物流までの工程を全面的に支援するサービスを手がける。鈴木氏の表現を借りれば「出版社が企画段階から入って作家をプロデュースするように、ブランドの企画段階から入ってインフルエンサーをプロデュースする」のがpickiの役割だ。

そのpickiは10月15日より、人気インフルエンサーが手がける5つのファッションブランドを順次リリースする。

インフルエンサーの個人ブランド作りを全面バックアップ

今回pickiが発表したのは2019年秋冬物シーズンにリリースする5ブランド。バチュラーのシーズン3に出演する中川ゆり氏を始め、田島ひかる氏、佐々木ののか氏、Rinkarin氏、anna氏の5名が各々のファッションブランドを開設する。pickiにとっても本格的なブランドのリリースは今回が初めてだ。

pickiは冒頭でも触れた通り、インフルエンサーのもの作りに伴走するプラットフォーム。社内にデザイナーを始めとしたプロフェッショナルを抱えるとともに、パートナー工場や生地店とのネットワークを活用することで商品の「企画、生産、販売、発送」をトータルでプロデュースする。

従来のアパレル産業では分業体制が進んでいたため、消費者の手に商品が届くまでの工程を複数のプレイヤーが分担していた。一方「D2Cプラットフォーム」を謳うpickiではその中間に位置していた商社やメーカー、卸売、小売店の業務をまるっと担い、消費者に直接商品を届ける。中間業者が減ればマージンも減るため、その分だけ利益率も高くなりインフルエンサーの取り分も増える構造だ。

創業者の鈴木氏は、pickiを始める前に韓国や日本でアパレルOEM会社を経営していた人物。その後「世界に挑戦できるような事業をやりたい」という思いから、約1年半の間に世界50ヶ国以上を回ったそうだ。

「海外では日本のものづくりに対する評価が高かったことに加え、ちょうどアメリカでD2Cモデルのブランドが勢いを増していた。この領域なら自分でも挑戦できると考え、2017年に日本で再び会社を立ち上げた」(鈴木氏)

最初はアパレルOEMの経験も生かしD2Cブランドの立ち上げを下請けすることからスタート。いくつかの案件に携わる中で、特に伸びていたのがインフルエンサーが立ち上げた個人ブランドだ。

わずか1週間で1000万円規模の売上を記録するブランドがいくつか生まれたほか、世の中には年商で二桁億円規模に達するようなものも登場。そういった影響から最近ではインフルエンサーによるブランド立ち上げ事例がどんどん増加していっているという。

「これまでECで売れていたのはマス向けのものが中心だったが、近年はロングテールのエッジが効いたブランドがより売れるようになってきている。その中でアパレル企業のデザイナーが1人で何十ものデザインを考えてPDCAを回していくやり方よりも、コミュニティの中心にいる人が、熱狂的なファンに対して自らデザインした商品を届けていくスタイルが広がっていくのではないかと考えるようになった」(鈴木氏)

それならばインフルエンサーが自身でブランドを作ってしまえば良いと思う人もいるだろうけど、多くのインフルエンサーは服作りやブランド立ち上げのプロではない。そこでpickiのように全体をプロデュースできるプレイヤーが求められるわけだ。

国内でもインフルエンサーのブランド立ち上げをサポートする会社はいくつかあるものの、鈴木氏によると「実は韓国から買い付けてきた商品のタグを変えて販売しているケースも多い」そう。完全にオリジナルでこだわりのブランドを作れることはpickiのウリとなっている。

ブランド作りの過程をエンタメ化しファンを巻き込む

pickiで展開するような個人ブランドにおいては、いかにファンを巻き込み熱量の高いコミュニティを築けるかが1つのポイントになる。その上で鈴木氏が重要視しているのが「ブランドを作る一連の過程自体をエンタメ化すること」だ。

ブランド作りにかける思いをまとめた記事や制作過程を追った映像をInstagramを中心としたSNSやECサイトを通じて発信したり、生地や服の型、袖の色などに対するファンの意見を各工程ごとに募ったり。服作りのストーリーをファンと一緒に作っていくことで強固なコミュニティができるという。

「よく話しているのが『7割のサンプル』を作るということ。あえて3割の余白を残すことで、ファンの人たちが一緒にものづくりに参加できる隙間を設ける。たとえばサンプルの段階で試着会を開き、着心地やボタンの色や形のような細かいデザインに対してフィードバックをもらう。そうするとファンの人たちは『この服は自分が一緒にデザインした』と感じることができ、コミュニティに対して一層愛着がわく」(鈴木氏)

鈴木氏はこの仕組みがうまく機能することで「実際に売る前から商品が売れるモデル」が成立すると話していた。

もちろん個人を軸としたコミュニティから生まれたブランドには課題もある。そのコミュニティがよっぽどの影響力を持たない限り、そこまで大きな規模には育たないという点だ。

鈴木氏もそれが1つの欠点であるとした上で「30億円などの大規模なブランドではなく、年間で1億円〜数億円売れるブランドが作れればいい」と話す。

「季節ごとに複数の型数の商品を作れば、数百〜数千人のコミュニティでも年間1億円規模は十分に目指せる。自分たちの目標はそういったニッチなブランドを100個生み出すこと。どんどんブランドを作っていけばデータが蓄積され、この領域で日本で1番データを持っている会社になる。そうすればブランド間でナレッジを横展開したり、データに基づいてコミュニティを育てていくこともできる」

「ニッチでも尖っているブランドは海外にも需要があると考えている。売れてるものをコピーして同じような商品を作ったり、他国から仕入れてきたものを自社ブランドとして海外に展開していくのは難しい。自分たちがやらなきゃいけないのは日本発の尖ったブランドを立ち上げ続けることだ」(鈴木氏)

「ブランドメイクカンパニー」としてブランド開発を加速

左からGOコピーライター 飯塚政博氏、picki代表取締役 鈴木昭広氏、GO代表取締役 三浦崇宏氏

pickiでは今年5月にサイバーエージェント・キャピタル、Coral Capital 、VOYAGE VENTURES、コルクらから6000万円の資金調達を実施したことを発表していたが、今回新たにクリエイティブカンパニーのThe Breakthrough Company GOと資本業務提携を締結したことも明かしている。

株主との連携については、たとえばpickiで最初にインフルエンサーの原体験を聞き出す際に、コルク代表取締役会長の佐渡島庸平氏直伝の質問集が使われているそう。今後はそこにGOのナレッジもプラスしながら、ファッションブランドを立ち上げたいインフルエンサーを支援する「ブランドメイクカンパニー」としてブランド作りを加速させていく計画だ。

「当初から思い描いているのは『日本のものづくりをエンタメ化して、誰もがクリエイターになれる世界』を実現すること。YouTuberが動画を作って稼げるように、個人がファッションクリエイターとしてブランドを立ち上げ稼げるような世界を作っていきたい」(鈴木氏)

「今後もファッションAIにフォーカスする」ニューロープが1億円調達

ファッション領域で人工知能による法人向けサービスを展開するスタートアップ、ニューロープは10月9日、大和企業投資、ディノス・セシール、中京テレビ、Reality Acceleratorを引受先とする第三者割当増資により、1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

画像検索から需要予測まで業界向けにAI活用

2014年設立のニューロープは、創業後、インスタグラマーと提携してコーディネートスナップを掲載する、メディアコマース「#CBK(カブキ)」をリリース。インフルエンサーマーケティングによるアパレルブランドのプロモーションなどにも取り組みながら、蓄積されたデータを活用して2015年10月からAI開発に着手し、2017年4月にはファッションに特化した人工知能「#CBK scnnr(カブキスキャナー)」をリリースした。以降、AIによるファッション画像検索、スタイリング提案、トレンド分析、需要予測など、さまざまなサービスを法人向けに提供している。

メディアコマース「#CBK」

2018年にはReality Accelerator、大和企業投資、都築国際育英財団から約5000万円を調達したニューロープ。その後、ECサイトにタグを入れると自動で類似アイテムやオススメのコーディネートが紹介できるレコメンデーション機能を充実させ、「取引先も順調に増えている」(ニューロープ代表取締役の酒井聡氏)という。

また、ファッションにおけるトレンドや需要予測などもサービスとして展開。トレンド予測では、SNS上のスナップをAIで解析し、トレンド分析を行う「#CBK forecast(カブキフォーキャスト)」を企業へ提供している。

AI解析によるトレンド分析ツール「#CBK forecast」

需要予測については、取引先から過去売上データの提供を受け、統計分析により、将来発注が予測できる推定モデルを作成。現在5社ほどの取引先とともに実証実験を行っており、今後SaaSとして製品化を進めていくという。

今後もファッションに特化、プロダクト強化に投資

酒井氏は「レコメンド、トレンド定量化、需要予測など、さまざまなプロダクトを開発・提供していく中で、純粋にリソースが足りなくなってきた」と述べ、今回の調達資金について「主にエンジニア採用に充てる」と話している。またグラフィックボード調達など、開発環境の整備にも充て、全体に「プロダクト面を強化するために投資していく」としている。

ニューロープ代表取締役 酒井聡氏

今回、株主に加わったディノス・セシールとは、昨年からECと紙のカタログを連携させる取り組みを行ってきた。「従来はたくさんの紙のカタログを配布して、縦に売上を積むスタイルが取られてきた。そこへAI技術、スナップ情報などを用いて、顧客ごとにパーソナライズしたカタログを作り、配布するという施策を昨年行ったところ、よい結果をもたらしている。これまでの協業でも実績が出ており、今後も提携していく」と酒井氏は話す。

ファッションAIの世界では、ニューラルポケット(旧ファッションポケット)やSENSY(センシー)といったスタートアップがスタイリング提案アプリやサービスを展開しているが、最近ではその多くがファッションに限らない汎用AIの領域へ移っている。酒井氏は「ニューロープは今後もファッションにフォーカスし、ファッションに特化したAIを提供していく」と語る。現在展開するファッションのレコメンド、トレンド予測、需要予測に加えて、今後は「デザイン支援や来店客分析なども手がけたい」という。

ニューロープが展開を目指すファッションの各領域

「ドメインをファッションに特化することで、営業部隊は比較的スリムにできる。その分、プロダクトは(ファッションの)バリューチェーンのいろいろなところに対応したものを開発していくつもりだ」という酒井氏。ニューロープはもともとITをバックグラウンドにしたメンバーで構成されたチームで「これからもエンジニア中心でやっていく」としつつ、ファッション業界で培われた知識を糧に「業界の人と同じ船に乗ってやっていく気持ちで、業界の発展に貢献したい」と語っている。

また「台湾やタイなどで現地企業を訪問して提案したところ、感触は悪くない。プロダクトを利用してもらえそうだ」と酒井氏は述べ、「ファッションSaaSは言語にそれほど依存しない」として、海外展開も図っていく考えだ。

オーダースーツD2C「FABRIC TOKYO」が3Dスキャン採寸の新ブランド「STAMP」を公開

オーダーメイドスーツなどのD2Cブランドを展開するFABRIC TOKYOは9月11日、招待制の新ブランド「STAMP」のティザーサイトを公開した。

STAMPは同社が運営するビジネススーツやシャツのD2Cブランド「FABRIC TOKYO」よりカジュアルなアイテムを扱う、カスタムオーダーのD2Cブランドだ。クリエイティブ・ワーカーが対象というSTAMPでは、当初、デニム製品から取り扱いを始める。ユニセックス展開でメンズ、レディースともに扱うということだ。

従来ブランドのFABRIC TOKYOでは、店舗で採寸してもらってデータを登録しておくと、必要なときにマイページから欲しいスーツやシャツが注文できるのだが、STAMPは、より“テクノロジーをフル活用した”発注スタイルを採用。無人店舗で、3Dスキャンによる採寸を行い、服を注文できるという。

FABRIC TOKYOは新ブランド立ち上げに合わせて、9月13日から29日までの期間限定で、招待制のポップアップストアを新宿マルイ本館内に開設する。ティザーサイトでメールアドレスと名前を登録して申し込むと、ポップアップストアへの招待状が順次届くので、店舗に赴き、サイズを計測。後日、計測サイズに基づき、カスタムオーダーデニムが届く、というのが注文の一連の流れになる。

FABRIC TOKYO代表取締役の森雄一郎氏によれば、今後、招待枠を徐々に広げていき、反響を見ながらリアル常設店の出店も拡大していくという。

計測データはFABRIC TOKYOとは別のデータベースに保存され、現時点では互いのブランドでの転用は考慮されていないが、森氏は「将来的にはデータ連携を見据えている」と話している。

3Dスキャンの技術について森氏は「たった数秒で全身のサイズの数万点をスキャンし、高い精度を実現している」と述べる。テクノロジーは、海外のスタートアップと共同開発したもので、「採寸の精度に関しては2年近くの試行錯誤を経て、受注生産型オーダーメイドのフィット感・満足度を担保できるレベルまで高めることができた」とのことだ。

またユーザー体験としては、FABRIC TOKYOと同様、STAMPでも店舗型にこだわるという森氏。「立ち寄れる手軽さとリアルを介すことの安心感を用意した。テクノロジーを利用していて新しいけれど、手軽さと安心感を感じるUXの実験だ」と述べている。

計測データを使ったカスタムオーダーのD2Cブランドといえば、今日ヤフーによる株式公開買い付け実施が明らかになった、ZOZOが思い浮かぶところ。ZOZOスーツと自分のスマホアプリを使ったスキャンでは、私も立ち位置の調整やエラーで何度かやり直しさせられた経験があるので、店でサクッと計測できるのであれば、買い物のついでに出向くのも悪くないな、と感じる。

同社は今年5月に丸井グループからの資金調達を発表している。8月にFABRIC TOKYOブランドで実施した「女性のためのメンズオーダースーツ採寸イベント」では1週間の予約枠がスタート前に埋まり、キャンセル待ちが出るほど反響があったそうだ。

オーダースーツをオンラインで作れる「FABRIC TOKYO」が丸井グループから資金調達

採寸データを一度保存すれば、オーダースーツやシャツをオンラインで簡単につくることができる、D2Cブランド「FABRIC TOKYO」。サービスを運営するFABRIC TOKYO(旧社名ライフスタイルデザイン)は5月23日、丸井グループから資金調達を実施したことを明らかにした。調達金額は非公開だが、10億円規模と見られる。今回の資金調達により、FABRIC TOKYOの設立以来の累計資金調達金額は20億円超となる。

FABRIC TOKYOでは、2014年に現在のサービスの前身となる「LaFabric」をローンチした。当初はオンライン上でいくつかの質問に答えると、適切なサイズが提案され、そのまま購入できるサービスとしてスタート。その後、首都圏と大阪に展開する全10店舗でいったん採寸してデータを登録し、必要になったときにマイページから欲しいスーツやシャツを注文するスタイルに変わっている。ユーザーが改めてサイズに迷うことなく、オンラインでも簡単に体に合う洋服が手に入るというのが、FABRIC TOKYOのウリだ。

FABRIC TOKYOでは、自社企画商品を自社のみで販売するD2C(Direct to Consumer)モデルを採用。オーダー情報は提携する国内の縫製工場へ即時に送信される。中間流通を通さず、受注生産型で工場と直接取引することで、高品質かつ適正価格を実現しているという。

5月21日には新機能「自動サイズマッチングテクノロジー」をリリースした。この機能を使った商品の第1弾として、採寸データをもとに自動的に“いい感じ”のサイズのポロシャツが提案される「POLO SHIRT 2019」を販売開始している。

製品は、クールビズの浸透によりポロシャツ着用ができるオフィスが増えていることから、「ビジネスシーンでもきちんと感があること」「洗濯に強くタフに着回せること」を条件にポロシャツを選びたいというユーザーの声に応えてできたものだ。

XS〜3XLと全7種類のサイズの中から、ユーザーのデータにぴったり合うサイズが自動で提案され、2種類の着丈、2種類のフィット感が選択可能。合計28のサイズラインアップ、4色から自分に合ったポロシャツをオンラインで買うことができる。

今回株主となった丸井グループは「デジタル・ネイティブ・ストア」戦略を掲げており、FABRIC TOKYOが運営するD2Cブランドの成長戦略の方向性が一致したことで出資につながった、とFABRIC TOKYO代表取締役の森雄一郎氏は述べている。

これまでにもFABRIC TOKYOの全10店舗のうち3店舗(新宿、渋谷、池袋)が、丸井グループが運営するビルに出店しており、「いずれも業績は好調で全店舗黒字化し、初期出店コストも回収済みとなっている」(森氏)とのこと。「業績は成長基調にあり、昨期(2018年12月期)の売上は前年対比約300%で着地し、今期の目標も同等としている」(森氏)

森氏は「デジタル前提社会において小売を再定義する必要があるとの思いで活動している中で、先進的な取り組みを多数行ってきた丸井グループとは相性の良さを感じている。今後はリアル店舗の出店を強化していくとともに、マーケティングや生産面・組織面での連携を行いながらD2Cブランドの運営ノウハウを双方で蓄積し、FABRIC TOKYOを国内でも有数のアパレルブランドへと成長させていく」と資本業務提携にのぞみ、コメントしている。

FABRIC TOKYOでは、首都圏中心に展開してきた店舗について、2019年4月の大阪進出を皮切りに、今年は全国網羅的に展開していく計画だという。

FABRIC TOKYOは2012年4月の設立。2018年3月に社名をライフスタイルデザインからFABRIC TOKYOへ変更している。同社はこれまでに、2015年5月にニッセイ・キャピタルから1億円を調達、2017年1月にニッセイ・キャピタルほか複数のVCと個人投資家らから4億円を調達2017年10月にはグロービス・キャピタル・パートナーズ、ニッセイ・キャピタル、Spiral Ventures Japanから7.4億円を資金調達している。

鏡の前に立つだけでプロに遠隔ファッション相談、エアークロゼットがJR東日本と協働

定額制ファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」などを展開するエアークローゼットは3月8日、JR東日本グループのスタートアップ支援会社であるJR東日本スタートアップと共同で、遠隔パーソナルスタイリングサービスの実証実験を開始する。

この取り組みにおいて、エアークローゼットはJR東日本の駅構内に本サービス専用のスペースを設置。この会場には、2017年設立のスタートアップであるミラーロイドと同社が共同開発した「パーソナルスタイリング専用のスマートミラー」が設置されている。

ユーザーはこのスマートミラーの前に立つだけで、遠隔地にいるスタイリストとリアルタイムで会話でき、そのユーザーに合ったコーディネートの相談や、ファッションチェックを受けることができる。また、会場にはタブレット端末も用意されていて、その端末でファッション診断を受ければ、その結果を基にしたスタイリング提案も受けることができる。この取り組みは、3月9日と10日にJR長野駅で、そしてJR品川駅で3月18日〜21日まで開催されている。

エアークローゼットはこれまで、ユーザーに対してパーソナライズされたスタイリング提案をし、定額制でその人に合った服を貸し出すオンラインサービスのairClosetを提供してきた。また、2016年にはユーザーとオフラインの接点を持つために実店舗の「airCloset×ABLE(エアークローゼットエイブル)」をオープン。その他にも百貨店や商業施設との共同の取り組みなどを通して、ユーザーとの“リアルな接点”を増やしてきた。

今回の取り組みもその1つで、同社は今回のような駅構内だけでなく、公共施設やコンビニなどのチェーンストアとの協業によってオフラインの接点を増やしていくという。

ファッション企業のAI活用を一気通貫で支援するLiaroが6000万円を調達

アパレル業界向けにAIソリューションを提供するLiaro(リアロ)。同社は11月2日、ディープコアとDEEP30(東​京大学松尾豊研究室からスピンアウトして設立されたVC)より総額6000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

調達した資金を活用してエンジニアを中心とする人材採用やR&Dを進める計画。より多くのアパレル企業へのサービス展開を目指す。

Liaroは学生時代から機械学習分野の研究に取り組んできた代表取締役CEOの花田賢人氏を中心に、AIエンジニアが集まるチームだ。現在はファッションテックの領域に注力して、アパレル業界向けの事業を展開している。

最近は必要とされるソリューションをSaaSのようにパッケージ化してまるっと提供するスタートアップも増えているけれど、今のところLiaroは「受託に近い」スタイル。画像認識技術を用いた商品の自動タグ付けシステムや類似商品のレコメンドエンジン、商品の紹介テキストを自動生成するシステムなど、アパレルECを中心に各社の課題に合わせて必要な機能を提供する。

たとえば商品のタグ付けに関して課題を感じているECは多い。「ユーザー側にはタグを使って商品を細かく絞り込んで検索したいニーズがあるが、それに対応するには相応のマンパワーがかかる上、ケアレスミスの問題もある」(花田氏)からだ。

リソースをかけてタグを付けたはいいものの、それが不正確だと使いづらくなってしまいかねない。Liaroの技術に興味を示す企業としては、人的なコストの削減や業務効率化はもちろん、タグのミスをなくしたいというニーズがあるという。

そもそも花田氏が事業ドメインをファッション業界でのAIテクノロジー活用に決めた背景には、アパレル業界の大きな課題でもある「在庫問題」があった。

国内だけでも9兆円もあるとされるこの市場では、約50%の商品が売れ残る前提で販売されているため、在庫だけで数兆円規模に及ぶ。花田氏が原因のひとつにあげるのが「消費者に届くまでの商流が長い」こと。作った商品が消費者にどのように消費されているのか、細かいデータが上流工程の人に伝わっていないためにテクノロジーを活かしきれていないという考えだ。

近年アパレル業界ではこの課題を解決すべく、AIを用いた取り組みが増えてきている。ただしAIを有効活用するためには、リアルタイムに大量のデータを使っていけるデータ基盤が整備されていることが前提。ここがIT企業以外にとってはかなり大きなハードルになるという。

「アルゴリズムももちろん重要ではあるが、それ以上にポイントになるのが土台となるデータ基盤を整備できるかどうか。ファッション企業がAIを活用できるように、アルゴリズムの実装からデータ基盤の開発までを一気通貫で支援していくというのが今取り組んでいる事業だ」(花田氏)

Liaroでもこれまで約1年半に渡るR&Dを通して、この“データの整備”に取り組んできた。具体的には1000万枚以上の画像を集めて、それらにきれいなタグデータを付与する作業に時間を費やしたという。

「クローリングするだけだとどうしても教師データがなかったり、あっても雑だったりする。Liaroではタグ付のためのシステムを作り、『どういう所でモデルが作りにくくなるのか』『ファッションアイテムではどのようなタグの付け方をするのが良いか』を試行錯誤しながら、現場で使えるデータを整えてきた。きれいなデータを大量に持っていることが、自分たちの特徴だと考えている」(花田氏)

写真中央がLiaro代表取締役CEOの花田賢人氏

この辺りは花田氏自身のバックグラウンドも影響しているようだ。冒頭でも触れた通り学生時代から機械学習分野の研究に取り組みながら、チームラボのレコメンドチームでエンジニアのアルバイトも経験。大規模なインフラの開発にも携わった。起業した当初はコンシューマー向けのサービスを作っていたので、当時の経験も活きているという。

今後は調達した資金も活用してエンジニアの採用やR&Dに取り組むと共に、まずはアパレルEC向けのAIソリューション展開を加速させながら成功事例を作っていく方針。ゆくゆくはAIを活用した商品の需給予測やMDのアシストにも取り組む計画だ。

「『そもそもどこで何がどれくらい売れているのか』という傾向を細かく把握できるデータ基盤を作ることで、販売機会の損失を減らしたり、配置を最適化できるような環境を提供することから始める。僕たちとしては基本的に意思決定をするのは人間だと考えているので、データを十分に活用しきれていない部分にAIを挟みこむことによって、より科学的な意思決定ができるように支援していきたい」(花田氏)

Liaroは2014年の設立。ドリコムの学生向けインキュベーションプログラムがきっかけで生まれたスタートアップだ。当初はC向けのサービスを展開するも、途中でB向けに方向転換。多くのデータが眠り、インパクトも大きいファッション業界での事業展開を決め、現在に至る。

同社ではこれまでにもイーストベンチャーズやスカイランドベンチャーズから資金調達をしている。

スマホでプロのスタイリストがコーデ提案、チャットで相談もできる「SOÉJU(ソージュ)」

自分に似合う服を、できるだけリーズナブルに着こなしたい。ファッション誌の「着まわし特集」が今でも人気企画であることからも分かるように、これは私たちの永遠の課題だ。この課題を解決するために、ファッション×テック業界でも、日々さまざまなサービスが生まれている。採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」を無料配布し、体型データに合った服をオーダーメイドできるようにした「ZOZO」。ファッションの世界にサブスクリプションモデルを取り入れた「AirCloset」。そして着まわし提案アプリやD2C(Direct to Cunsumer:製造者から消費者が直接購入できる)ブランドの数々。

オンラインスタイリングサービス「SOÉJU personal(ソージュパーソナル)」は、ライフスタイルの変わり目でもあり、体型も変化する30代、40代の女性をメインターゲットにしたファッションのサービスだ。仕事や家事に追われて、なかなか毎日のコーデまで考えている余裕がない、というこの世代の女性に「自分の体や好みにピッタリくる着こなし」や「持っている洋服の見直し方」を、プロのスタイリストがオンラインで教えてくれる。

サービス利用の流れは以下の通りだ。まずは会員登録を行い、対面、もしくはオンラインで、スタイリストによる「ファッション診断カウンセリング」を受ける。カウンセリングの費用は1時間で5000円。体型タイプやファッション志向を診断し、似合うシルエットの服を提案してもらえて、対面の場合は試着体験ができる。そして、自分のライフスタイルや希望に合わせて、スタイリストが今後のスタイリングの方向性を提案する。

その後、定期的に「オンラインパーソナルスタイリング」が受けられる。6スタイルの着こなし提案画像をスマートフォンに毎月配信するマンスリープランと、3カ月に1度のシーズンごとに配信するシーズナルプランの2種類があり、費用はそれぞれ1回の配信当たり3000円だ。

オンラインパーソナルスタイリングでは、LINE@による「スタイリスト ホットライン」も提供。チャットで日々のファッションの悩みをスタイリストに相談することができる。回答は3営業日以内にもらえるので、大切な会食や商談の前にお勧めのコーディネートが知りたい、という具合に使えそうだ。

サロンでのカウンセリング、定期的な着こなし提案では、手持ちの服も含めて相談ができる。昔買って、あまり着なくなったアイテムからも、使えるものはコーディネートに取り入れて提案してくれる、ということなので、私のようにタンスの肥やしが捨てるに捨てられず困っている、という人にもよいかもしれない。

代官山に9月22日オープンするサロン「SOÉJU代官山」

ソージュパーソナルを運営するモデラート代表取締役の市原明日香氏は、「最初のカウンセリングで展示アイテムも試着してもらいながら、着まわししやすく、投資対効果の高いスタイルを提案していく」と話す。

ソージュパーソナルは、同社が2015年10月から提供するオンラインスタイリングサービス「Let Me Know」を前身としている。9月22日にカウンセリング用のサロン開設と自社商品ブランド「SOÉJU(ソージュ)」を立ち上げるにあたってサービスをリニューアルし、9月6日、先行予約を開始した。

市原氏は、「サービスの基本的な部分はLet Me Knowと同じだが、リニューアルで、よりシックで大人っぽいスタイルの提案に集中していく」と説明している。

「これまではセレクトショップと同じく、さまざまな色味やスタイルの洋服を取りそろえてコーディネートしてきた。これからは自社ブランドのソージュで、ベーシックでシンプルなアイテムを作るので、それらを使ったスタイル提案もしていく。着まわしがきき、その分、トップスや小物のスタイリングでいろいろなバリエーションを楽しんでもらえる」(市原氏)

モデラートがソージュブランドで商品開発しているのは、ベーシックなデザインで着まわししやすい、それでいて安っぽくならない、高級感のある素材で作ったアイテムだ。第一弾商品としてワンピース、ギャザースカートとタックパンツを展開する。

試作品を取材のビデオチャット越しに見せてもらったけれども、いずれも黒のシンプルなデザインで、確かにおしゃれが苦手な私でも、仕事着として取り入れやすそうだった。ブラウスやニット、ジャケットやスカーフなどの小物で工夫すれば、1週間の着まわしも考えやすいだろう。

市原氏は「D2Cモデルを取り入れ、海外のハイブランドが使うような上質な生地を使いながら、価格は市価の3分の2程度に抑えている」と説明。ワンピースなら、デパートなどで3万円以上するものを1万8000円からと、1万円台のリーズナブルな価格で提供するという。

またモデラートでは9月6日、D2C商品の本格展開に先駆けて、Makuakeでソージュの第一弾アイテムの販売プロジェクトを開始する。アイテム購入で、ソージュパーソナルのファッション診断カウンセリングの短縮版(30分)を受けられ、ソージュのアイテムと手持ちのアイテムやおすすめのアイテムを組み合わせた3種類のコーディネート画像を後日受け取ることができる。

モデラートは2014年12月、マーケティングのコンサルティング及びクリエイティブ制作会社として設立。代表の市原氏はアクセンチュアで経営コンサルティング、ルイ・ヴィトン ジャパンでCRMに従事していた。その後、子どもの看病を経て、フリーランスとして復職するときに、ファッションについての悩みに遭遇。「一度キャリアやファッションから完全に離れてしまうと取り残されてしまう」と感じ、「自分のクローゼットに入っているアイテムをどう自分の体型・雰囲気に合わせてコーディネートするか」で日々頭を悩ませていたという。

「インフルエンサーの着こなしをまねても自分には合わないことがほとんど。自分にあったアドバイスをプロのスタイリストから継続的に受けられれば」との思いと、同じような悩みを抱える同世代の女性の声を受けて、2015年にオンラインスタイリングサービスを始めた。

2017年7月には、前身のサービス Let Me Knowが500 KOBE ACCELERATORに選出された。またモデラートは、1号ファンドが組成されたばかりのFull Commit Partnersから、5月30日に2480万円をシードラウンドで調達している。

市原氏は「調達により、D2C商品の開発を早めることができた。今後は開設するサロンの機能拡充も進めていく」と資金調達と今後の展開について話している。

モデラート代表取締役の市原明日香氏

AIでアパレル業界に変革を、ファッションポケットが2.6億円を調達

AIを用いたファッションコーデの解析技術を活用し、トレンド予測やアパレル企業向けの商品企画サービスを開発するファッションポケット。同社は8月17日、東京大学エッジキャピタルや千葉功太郎氏らを引受先とする第三者割当増資により約2.6億円を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドは同社にとってシリーズAにあたるものであり、シードラウンドからの累計調達額は3.5億円になるという。

ファッションポケットは2018年1月の設立。画像・映像解析に関連するAI技術を核に、ファッション領域において複数の事業を開発しているスタートアップだ。

たとえば8月からアパレル企業数社に提供しているAI MD(AIを活用したファッション商品企画)サービスでは、500万枚以上のコーデのデータを解析し、色や着こなしなどのトレンドを予測。その結果を商品企画に活用する。

「大企業と言われる所でも、ごく数名の担当者が何千点何万点もの商品企画を担っていたりする。業界ではヒット的中率が約50%などもとも言われ、仮に100点出せば定価で売れるのは40〜50点ほど。残りは値引きで販売するか廃棄する。大きな課題があるものの、これまでの仕組みでは解決できなかった」(ファッションポケット代表取締役社長の重松路威氏)

重松氏によるとAI MDサービスを活用して作られた洋服が2019年から実際に店頭に並び、販売されるそうだ。

また法人向けには画像・映像解析技術を用いた実店舗の顧客分析サービスも開発中。内装を気にする店舗でも設置しやすいように特別なハードウェア(カメラ)を含めたサービスで、顧客の顔や洋服、店内での行動から「どういうタイプの顧客が、店舗内でどのような行動をしているか」を解析してアパレル企業やデベロッパーに提供する。

そのほか2019年には消費者向けのサービスとして、AIを活用した新たなファッションECモールをリリースする計画もある。

ファッションポケットの代表を務める重松氏は、前職のマッキンゼー時代から様々な産業においてAIやIoTの活用、事業化の支援をしてきた。AIを商用化することで人々のライフスタイルを良くしたいという思いから起業を決断。多くの人にとって影響が大きい分野を探した結果、生活の必需品でもあり楽しさにも直結する“衣服”の分野を選んだのだという。

この半年間はビジネスサイドの体制を整えながら、CTOの佐々木雄一とともに独自で学習データの収集・仕分けを行い、同社の基盤となるアルゴリズムの開発に従事(なお佐々木氏はスイスの研究所でデータ分析を学んだ後、マッキンゼーを経て前職ではディープラーニングを製造業に提供する会社で研究開発センター長を担っていた人物)。アジア諸国を中心にデータ収集のためのネットワークも培ってきた。

ファッションポケットでは今回調達した資金を基に開発人材を中心に組織体制を強化し、学習データの整備を進める。合わせて上述したようなAIサービスの拡販、商用化に向けてプロダクト開発を加速する計画だ。

ファッションにAIを活用するということ

この夏の結婚式シーズン、僕はスーツを新調する必要に迫られた。スーツ選びに際し、冒険をしてみよう、これまで検討すらしなかった色のものを買おうと心に決めていた。その結果、僕は映画館の案内人のような、そして少しJidennaっぽいものを選んだ(編集部注:Jidennaは米国のラッパー歌手)。もし知っていたら、スーツを選ぶのにオーダーメードスーツ専門のEison Triple Threadを使っていたかもしれない。

誰かの助けを借りながらスーツをあつらえるというのはなかなか難しい。つくるときは、ボディのタイプや好み、他の関連要素も勘案しなければならない。それらのほかに、スーツ会社やデパートが取り入れていないような要素としては何があるだろうか。他社と差別化を図るために、Eison Triple Thread はFITSという顧客のライフスタイルや音楽の好みに基づいてウェブからテーラーメードを申し込めるサービスを始めた。

Eisonの創業者でCEOのJulian Eisonは、プレイグランドでよく遊ぶ子供で、彼の両親がEisonに見栄えのセンス、出歩くときはできるだけいい格好をするようにと教え込んだ。

「スタイルやカラーについて、服を着るとき僕はかなり気を使っていた」とEisonは言う。「僕はJordanを集めるような子供で、少しでも自分を格好良く見せたかった。というのも、ファッションが気になって仕方なかったから。成長するにつれ、どんどんファッションにのめり込んでいった」

プライベート・エクイティで6年間働いたが、彼はそこで売り手、買い手両サイドからのテックの流れを見ることができた。そしてEisonはファッションへの愛とテックへの興味を組み合わせることにした。2014年、Eisonはスーツを購入するのにデパートではない違う手段を自分の手でつくれないか、サンフランシスコの自宅のガレージで模索を始め、Eison Triple Threadをうみ出した。

「ビジネスを立ち上げた当時、いかに視覚化するかが主要な課題だった」とEisonは振り返る。「どうやったら体を視覚化でき、体にぴったりフィットするものを考えられるようになるか」。

スタイリッシュなデザインのスーツをオーダーメードでつくる会社は、Eison Triple Threadだけではない。Indochino、Bonobos 、Stitch FixなどはEison Triple Threadの前から事業展開しているが、いずれも目的は同じだ。だからこそ、どうやってライバルと差異を図るのか。そうした流れの中で、Eison Triple Threadが人工知能とSpotifyに行き着いたのはある意味当然のことだった。

「音楽というのは、日々の活動の中心にあるもの。国境や色などは関係なく、その人がどんなプロジェクトに携わっているのかといった普段知ることができないようなことも明らかにしていく」とEison は語る。「だから我々は本当にコアなものである音楽にこだわっている。音楽はその人の決断や選択、アイデンティティやムードにかかわっている」。

このサービスを使うには、まずユーザーは FITSシステムにSpotifyのIDでログインし、ライフスタイルに関する質問に答える。質問は、どんな産業に従事しているのか、仕事のときはどういう服装をしているか、どのような交通手段を利用しているのか、自由な時間は何をして過ごしているのか、自分自身を表す言葉は何か、といったものだ。こうした基本的な情報からデータを積み上げていく。

「ライフスタイルに関する質問は、その人のファッションや関心、好み、どんなことをするのが好きなのかといったことを把握するのが目的。それらを分析し、フィット感やスタイルについての情報を得る」。

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ユーザーがファッションに関する自分の好みなどについてできるだけ正直に答えている間に、FITSはAPIを通じてSpotifyであなたの音楽の好みを模索する。音楽のジャンルだったり、いつ音楽を聴く傾向にあるのか、どれくらいの時間聴くのかといったことなどだ。これらの作業にかかる時間はわずか15分だ。もっとも、僕のように自分を表すものを4つの選択肢の中から1つだけ選ぶのに時間がかからなければの話だが。内省的、情熱的、元気、エネルギッシュ、この4つの全てに僕は当てはまる。

クイズに全て答え終わったら、ウェブ画面はEisonが呼ぶところの“ルックス”のリストに移る。ルックスは、質問に対するあなたの回答から収集されたデータに基づいている。そのルックスは、EisonとプロダクトディレクターのDario Smithのお眼鏡にかなったものをベースに彼らが定期的に管理するイメージ・コレクションからアップされている。Eisonによると、直近ではデータベースに3000近くのイメージがあり、季節ごとに新しいものを加え、顧客に定期的に案内している。

顧客は、色のマッチングや生地の手触りを連想させるもの、その他のデータなどを含む写真のメタデータにアクセスできる。Eisonは、次のリリースでは顧客が必要な写真をアップロードすることで肌のトーンを特定できるようにする、と話す。加えて、ファッションの分布を理解するために写真メタデータを活用する。これらが使えるようになれば、アルゴリズムの精度をより高めるためにローカルのファッションやトレンドについて知見を得ることができる。

「なにがしらの数のスタイルがあるとして、それらを表現するものを持っていたい」とEisonは語る。「我々はそうしたイメージを集め、重要性や関連性に基づきながら定期的にアップすることができる」。

僕の方はというと、僕の音楽的な好みを引き出すために、バックグラウンドでSpotifyを動かしながら質問に答える。好みの音楽とは、ミュージカルのための曲(HamiltonsやRagtimes、Cabaretsなど)、Jidenna、Calle 13、Moanaからの選りすぐり(そう、その通り!)、Nathaniel Rateliff、 Night Sweats、そしてほんの少しの古い R&Bなどだ。

結果はというと、Eison databaseから引っ張ってきた幅広いレンジのスーツに身を包んだ、年代や人種、サイズが異なる25枚の写真だ(うち5枚が以下に)。僕はその写真のほとんどに興奮を覚えたが、僕の好みにしてはダブルボタンのものがやや多すぎた。それは僕のせいだと思う。しかし、そのスタイルは僕が絶対着たい、と思うものではない。もしくは、それがこのシステムのポイントなのかもしれない。自分には似合わないだろうと思い込んでいたり、着るなんて想像できないと感じている人にそうした新しいスタイルを提案する。

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提案されたものから何か1つ選ぶと、細部を詰める。ジャケットボタンの数やスタイル、ボタンホールの色、裏地の色や生地、ズボンの腰回りのスタイル、そのほかにも考えつくあらゆる点を含む。将来的には、スタイルを提案する写真に自分自身が登場するというのも可能になると僕は思う。

全ての選択が終わったら、採寸となる。自宅で自分で採寸してもいい。僕はEisonのスタジオにいたので、名誉なことにSmithがしてくれ、僕が考えもつかなかったような箇所の測定もした。たとえば、彼らは僕の姿勢や僕が腕を体側にどのように置くかといったことも考慮する。この経験で、僕は大人になってから着てきた服がなぜあまりフィットしなかったのかを理解した。

2週間後、スーツが届く。お店のラックから選んだものではなく、ライフスタイルや音楽の好みをもとに提案されたスーツだ。そのスーツはその人だけにぴったりとくる。僕のスーツもぴったりだった。しかし、それは採寸をもとにしているのだから驚きではない。ここで特別なのは、Spotifyと機械学習を活用しているということだ。FITSシステムは僕にライトグレーのスーツは避けたほうがいいとアドバイスしてくれた。これにより僕は自分のファッションにおける安全圏から足を踏み出すことになり、こうしたことがなければ着ることもなかったスーツを身にまとうことになった。

音楽ストリーミングとAIの助けを借りたスタイルというのは悪くない。

イメージクレジット: Eison Triple Thread

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(翻訳:Mizoguchi)

「服作りをもっと自由に軽やかに」CAMPFIREとワールドが新たなファッションの仕組み作りへタッグ

写真左からCAMPFIRE代表取締役社長の家入一真氏、ワールド代表取締役 社長執行役員の上山健二氏

「イメージとしてはファッション業界版のインキュベーションのような仕組みに近い。もっと自由に、軽やかに、ファッションやブランド作りに挑戦できる環境を作りたい」――CAMPFIRE代表取締役社長の家入一真氏は、これから老舗アパレル企業と始める取り組みについて、そのように話す。

このアパレル企業とは、約60年に渡ってさまざまなファッションブランドを世の中に展開してきたワールドのこと。CAMPFIREは6月1日、ファッションの領域で新たなチャレンジをしたい個人やクリエイター、企業、自治体を支援するべく、ワールドと資本業務提携を締結したことを明らかにした。

双方のノウハウをクリエイターに還元、ブランド作りの支援を

CAMPFIREではこれまで資金集めの民主化をテーマに掲げ、クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」を軸に複数のプロダクトを運営してきた。特にクラウドファンディングと相性がいい分野については領域ごとに特化型のサービスを展開。たとえば社会貢献分野の「GoodMorning」や地域に関する「CAMPFIRE×LOCAL」がそうだ。

同じようにファッションに特化したプラットフォームとして2016年10月に「CLOSS(クロス)」をスタート。コンテスト型のFashion Forwardも実施し、選ばれたブランドにはPRや流通面なども含め、ブランドを育てていくために必要なサポートも行ってきた。

「(ファッションに限らず)それぞれのジャンルにおいて僕らにできることは何かを突き詰めていくと、すでに各業界で事業を展開されている大手企業と組むという選択肢もでてきた。ワールドの上山社長と話をしていく中で『一緒にできそうなことがいろいろありそうだよね』となり、ファッションの領域で共に仕組み作りをしていくことになった」(家入氏)

具体的な取り組みについては今後詰めていく部分も多いそうだが、軸となるのはクラウドファンディングを始めとするCAMPFIREの資金調達ノウハウと、ワールドの持つファッションのアイデアを形にしていくノウハウやアセット。これらを掛け合わせてクリエイターや企業に提供し、ファッション産業全体の活性化を目指していくという。

「ファッションは受注から製造、販売までのサイクルが長いビジネス。若手のデザイナーに話を聞くと入金までの期間がながいことがネックで、資金繰りでつまずくことも多い。その点クラウドファンディングは先にお金を集められる仕組みなので、クリエイターにとって助かる部分もある。ワールドがブランド立ち上げのノウハウ面で強みを持っている一方で、僕たちはレンディングなど他の手段も含めた資金調達の仕組みを使ってクリエイターを支えたい」(家入氏)

ファッションをもっと自由で軽やかに

家入氏によると、ワールドではパターンを作るノウハウや流通、PRに至る知見まで、自社の保有する資産をオープン化し、ファッションプラットフォームの構築を進めているそう。今後はこのような双方が持つナレッジに加えて、ワールドが青山に持つスペースの提供など、リアルな場も絡めた支援を進めていく方針。この点で冒頭でも触れたように、ITスタートアップのインキュベーションに近い側面もあるという。

「さまざまな業界において、産業構造や市場、経済状況が変化する中で、高度経済成長時に作られたモデルが成り立たなくなってきている。そこで1番大変な思いをしているのは、末端にいる個人のクリエイターやアーティスト達。(彼ら彼女らが)それでも声を上げたいと思った時に、どんな支援をできるのかということが、ずっと取り組んできたテーマでもある」(家入氏)

フレンドファンディングサービスの「polca」もこのような文脈で生まれたサービスであり、幻冬舎と取り組む新しい出版のモデル作りについても同様だ。

実はCAMPFIREでもすでに新しいファッションの形が生まれてきているそう。一例として家入氏があげるのが、隔月で新たなクラウドランディングプロジェクトを立ち上げ続けているブランド「ALL YOURS」。同ブランドでは小さなコミュニティの中で熱量を高め、その中で自分たちの思いやアイデアを発信し、実現している。

家入氏は「オンラインサロンなどのファンコミュニティとも共通するような、今っぽい感じの服の作り方」と表現するが、このようなモデルがこれからどんどん広がっていくのかもしれない。

「ITスタートアップのように、少人数で作りたいものをぱっと作って、ファンに直接届けるという形がもっと増えるとおもしろいと考えている。近年、起業のイメージがだいぶライトになって、それこそバンドを組むようにスタートアップをする人たちも増えてきた。ファッションやブランド作りも同じように、もっと自由で軽やかなものにしていきたい」(家入氏)

400を超える縫製工場などと連携、衣服生産プラットフォームの「シタテル」が数億円規模の調達

衣服生産プラットフォーム「シタテル」を提供するシタテルは5月22日、既存株主やスパイラル・ベンチャーズ・ジャパンなど複数の投資家を引受先とする、第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回のラウンドはシリーズBに相当するもので、具体的な調達額は非公開だが数億円規模になるという。

シタテルへ出資した企業は以下の通りだ。

  • スパイラル・ベンチャーズ・ジャパン
  • FFGベンチャービジネスパートナーズ
  • 朝日メディアラボベンチャーズ
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • オプトベンチャーズ(既存株主)
  • 三菱UFJキャピタル株式会社(既存株主)
  • その他非公開の投資家

同社は2016年6月にシリーズAでオプトベンチャーズと三菱UFJキャピタルから数億円を調達しているほか、2014年10月にも三菱UFJキャピタル、日本ベンチャーキャピタル、リブセンスから資金調達を実施している。

シタテルは2014年3月創業の熊本県発スタートアップだ。運営する衣料生産プラットフォームでは提携する400以上の縫製工場の技術や、サプライヤーのリソースをデータベース化。グッズを制作したいファッションブランドやセレクトショップの要望と工場の稼働状況などを考慮し、適切にマッチングすることで、「小ロット・高品質・短納期」で衣服を生産できる仕組みを構築してきた。現在は7000を超えるクライアントが登録する。

また直近では受注から生産までをワンストップで管理できるECシステム「SPEC」や、メンバー制のコミュニティプラットフォーム「Weare」を公開するなど、衣服に関する新しい取り組みも行っている。

シタテルでは今回調達した資金を用いて、同社の基盤システムである「SCS(シタテル・コントロール・システム)」の強化を進めるほか、SPECや工場・サプライヤー向けのオペレーションツールの開発、Weareのコミュニティ構築に取り組むという。

スマホ撮影の写真とA4用紙で衣服の寸法を測定、AI採寸アプリ「MeasureBot」公開

近年オンライン上で個人がつながり、さまざまなモノを売買するC2Cのマーケットプレイスが拡大してきている。マザーズへの上場承認が発表された「メルカリ」はその代表的な例だろう。

C2Cマーケットプレイスで流通しているモノの中でも主要な商品となっているのが、アパレル製品だ。今や多くのユーザーがスマホを使って直接ファッションアイテムを売り買いしているが、その際に不安要素となるのが服の「サイズ」問題だった。

この問題を解決する手段として、A4用紙とスマホで撮影した写真にテクノロジーを組み合わせ、衣類のサイズを測定するというアプローチをとったのがシリコンバレー発のスタートアップOriginalが展開するブランド、Original Stitchだ。同ブランドは5月15日、AIアパレル採寸アプリ「MeasureBot」をリリースした。

MeasureBotではユーザーが採寸したい衣服の上または横にA4用紙を置き写真を撮影すると、AIが写真の中から用紙を検出して衣服との寸法比較を始める。あとは着丈や身丈をタップすれば採寸でき、自動でサイズが入力されるという仕組みだ。活用されているAI技術は米国特許を取得しているという。

同アプリは現在iOS版のみ提供。Android版は開発中とのこと。冒頭でも触れたようなC2Cマーケットプレイスにおける活用などを視野に入れていて、売り手ユーザーにとっては採寸画像を公開することでより効果的に商品を販売できる可能性もあるだろう。

運営元のOriginal Stitchは2013年12月にシリコンバレーでテストサービスを開始し、2014年4月に日本版をスタートしたオンラインカスタムシャツブランド。袖、襟、ボタンなど細かいカスタマイズが可能で、10億通りのパターンから選べることが特徴だ。

つい先日にはスマホで撮影した全身写真をもとに、肩幅や首周りなど全身40箇所の採寸ができるアプリ「Bodygram(ボディグラム)」も発表。こちらは今夏を目処にリリースする予定だという。

Amazonが次に征服を狙う業界はアパレルだ

【編集部注】著者のSunny DhillonはSignia Venture Partnersのパートナーである。

Amazonが、昨年末にトールキンの叙事詩「指輪物語」のテレビ放映権を2億5千万ドルで買収したと発表した際に、私はそれがAmazonによる「全てを支配する」単一プラットフォームへの、情け容赦ない追求姿勢を強調したものだと書いた。 そして今やAmazonは「中つ国の物語」を制作するために5億ドルもの投資を行っている。史上最高に金のかかったTVシリーズとなるのだ。ほどなくジェフ・ベゾスが、エミー賞で最高の栄誉を受け取ることになったとしても驚きはしない。

しかし、ハリウッドだけがAmazonが攻略を狙う唯一の業界ではない。アパレル業界に対してAmazonが抱く大きな野望を考えれば、ニューヨークファッションウィークで、アナ・ウィンターの隣にジェフ・ベゾスを見る日も遠くないかもしれない。

ファッション業界の800ポンド(約363キロ)のゴリラ

従来の小売業が引き続き弱り続ける中、商業ファッションブランドへの直接コマースは増え続けている。以前私は、Stitch FixWarby Parker、Everlane、そしてAllbirds などを、直販モデルで成功できることを証明した革新的企業の例として紹介した。D2C(Direct to Consumer:顧客直販)コマースの王者として、Amazonはそのファッションオペレーションを、15年にわたって調整し続けてきている。

もともとAmazonがアパレルに参入したのは2002年のことである。2009年にはオンラインシューズ販売業者のZapposを12億ドルで買収した。これはその当時史上最高額での買収だった。しかし、ファッションを支配しようとする同社の追求は、歴史的にいくつかの障害に直面してきた。その中心となる障害は、人びとはまず商品を試着したいという欲求から、オンラインでアパレルを購入することを信用していなかったこと、そしてAmazon自身がクールなブランドではないと思われていることだった。

しかし逆風は止み、いまや追い風が吹いている。アパレルのオンラインショッピングが認知され、いまや消費財部門でもっともオンライン化が進んでいる分野となった。多くの女性が衣料をオンラインで購入しているのだ。衣服をオンラインで購入する人の割合は、小売一般におけるオンラインの利用率のおよそ2倍である(17%対10%)。一方Amazonは、返品無料、より良い写真、より良い品揃えを提供する形でアパレル戦略を磨いてきた。現在同社は、取引総量としては最大のアパレル小売業者である。ミッション終了?いや、まだまだだ。

プライベートブランド「Fashion House」の開発

Amazon提供のファッション写真

かつてBonobosのCEOAndy Dunnは「他人の品物を大量に売ることは、巨額の資金を要求される利益の薄いゲームだ。結局その点でジェフ・ベゾスを打ち負かすことは難しい」と語った。これは事実だが、アパレルに関しては、Bezosは他人の品物を売るということよりも、さらに大きな野心を持っている。とはいえ、現在Amazonが中心的にやっていることは他人の品物を売ることだ。

Coresight Researchの分析によると、米国のアマゾンファッションサイトに掲載されている品物の約14%がAmazon自身によるものであり、残りの86%がサードパーティによるものだ。Amazonには、そのパイのシェアを高めるための高いインセンティブが与えられている。同社にとって、アパレルは極めて利益率の良いカテゴリだからである。過去10年を見れば、最も良いときには粗利率は40%にも達している。さらに、米国のプライムメンバーたちはAmazonでのアパレルの購入に引き込まれている。昨年はほぼ3分の2のメンバーがアパレルを購入しているのだ。

プライベートブランドが充実するにつれて、Amazonは明らかに、Amazon Essentialsブランドを通して、電池やおむつに相当する勢いでアパレルも売ろうとしているのだ。9月にはサイハイベルベットブーツ(太腿の高さまであるヴェルヴェットブーツ)の販売を開始したが、Coresightの分析によれば、Amazonはより高価格のカテゴリに注力しているという。

最近の「指輪物語」の権利取得が、若く裕福な消費者の眼をさらに惹きつける試みであり、Whole Foodsの買収がその胃袋をガッチリ掴もうという試みだとすると、Amazonはさらに彼らの衣服もおさえたいと考えているのだ。ホットなデジタルネイティブ向けのブランド(たち)を買収することは、そうしたことを達成する近道だ。Walmart は既にこの戦略を、Bonobos、Modclothなどを買収することで追求している。AmazonもEverlaneのような人気のブランドをその店舗に並べることで、同様の方策を模索しているようだ。とはいえAmazonがその「なんだかダサい」イメージを拭い去るにはそれなりの時間はかかるだろう。

ファッション(パワー)ハウスになる

Echo Lookは、Amazonがファッション世界の支配を、真剣に考えているサインの1つだ

昨年Amazonは、アパレル事業を加速し、オンラインショッピングの経験を可能な限り簡単にするようにデザインされた多くのイノベーションを投入した。たとえばPrime Wardrobeは、Stitch Fixに似たサービスである。自宅で3つ以上のアイテムを試着することが可能で、気に入らないものは料金支払い済みのラベルのついたパッケージを使って無料で送り返すことができる。

また同社は「ハンズフリーカメラ兼スタイルアシスタント」と名付けた、新しいAlexa搭載機器Echo Lookも発売した。カメラを追加したことで、機械学習と人間のスタイリストからのフィードバックを組み合わせて、所有者の衣服の選択を記録しコメントすることができる。このアドバイスは、レコメンデーションの形もとるため、Amazon Fashionの収益を伸ばす役割も果たすこともできる(特にそのプライベートブランドに関して)。

AmazonはEcho Lookのための様々な機能を、繰り返しリリースしてきている。その中にはキュレーションされたコンテンツや、クラウドソーシング(つまり人間だ!)スタイルのフィードバックも含まれている。 さらに同社は、服をデザインするためのAIアルゴリズムを作成し、仮想的に服を試着できるARミラーの特許も取得した。このようなARミラーの価値は、最近ロレアルがModiFaceを買収したことによって裏打ちされた。ModiFaceは美容ARの分野で似たようなアプリケーションを支えるテクノロジーを開発している企業だ。

これらの動きをすべて分析することで、Amazonのアパレル戦略の全貌が見えてくる。まず、衣服の売られ方を学ぶために、たくさんの服を販売する。そして、より高い粗利益を生み出すために、自分自身で作った服を売り始める。そして今では、Prime Wardrobeを用いてロックインを高め、顧客がAmazon自身の服を買わない可能性のあるポイントを潰す(もちろんその過程で個人の嗜好データは収集している)。そしてEcho Lookをデータ収集と声コマースのポータルとして利用する(おまけに、曖昧な購買要求を、自社のプライベートブランドの在庫へと誘導することも可能だ)。もしこの戦略が成功すれば、Amazonには、非常に利益率の高いセールスをもたらす深いデータの堀が与えられることになるだろう。他のファッション小売業者やブランドがそれを真似することは極めて難しいものとなる。

Beszosはこの問(「それが上手くいくと思っているのか?」)を口にする必要すらない。

Amazonは、クラウドサービス、音声アシスタント、Amazon Goに代表される実店舗、そしてもちろん「オンラインなんでもストア」としてのこれまでの役割など、ますます重要になる分野でますます支配的になっている。同社は、アパレルもこの成長するリストの項目に加える覚悟を固めている。人びとが衣料を買う方法を(またもや)変え、その顧客がますますAmazonの掌の上で買い物をするように誘導するのだ。そしてAmazon Fashionが、Amazon Studios(映像作品を作成する部門)からの何らかの手助けを得ることも表明されている。Bezosはかつて、「ゴールデングローブ賞を獲得すれば、より多くの靴を売ることに」と語った。もし彼がそのやりかたを貫くならば、Amazonはこの先何年も、両者を押し進めて行くことだろう。

[原文へ]
(翻訳:sako)

Instagram上の仮想セレブ‘Lil Miquela’のアカウントが‘政敵’にハックされた

Instagram上の仮想セレブLil Miquelaアカウントが、ハックされた。

多民族混血のファッション仕掛け人で、つねに多文化主義を主張している‘彼女’のアカウントには100万近いフォロワーがいたが、そのアカウントが、同じくInstagram上の動画アカウント“Bermuda”によってハックされた。

さあ!、戦闘開始だ!

@Lilmiquelaアカウントのハックは今朝(米国時間4/7)始まったが、しかしBermudaアバターは前からMiquelaを敵視していて、これまで、SpotifyなどMiquelaのそのほかのソーシャルアカウントをハックしてきた。

時はまさに21世紀、政治的風土が多極化している今では、文化の上でも、、そしてアバターたちのあいだでも、多元主義の支持者たちとMake America Great Again(アメリカを再び偉大に)の運動が戦いを繰り広げても意外ではない。

[画像だけを表示するとメッセージも読めます]

Lil Maquelaのアカウントの上でBermudaは、自分の人工的な人格を誇示し、トランプ派としての強力なメッセージを述べている。

Miquelaの場合は仮想アバターに対して本人がいる、という前提だが、Bermudaはきわめて露骨にシミュレーションだ。そしてその政治的見解は、Miquelaのそれと真っ向から対立している。そしてMiquelaのフォロワーたちと一連のファッション系カルチャー系マガジンは、そのオープン性と人種的平等性の訴えに賛同している。

カリフォルニア州ダウニーのブラジル系アメリカ人Miquela Sousaは彼女のInstagramアカウントを2016年に立ち上げ、それ以来、そのアカウントの外見であるMiquelaは、ネット上でもマスコミの上でもその本人性の推測(どこの誰だろう?)があちこちに登場してきた。

雑誌の表紙になったり、いろんなインタビューにも応じてきたMiquelaは、Facebookが買収した人気最大のソーシャルメディア(Instagram)の上で、セレブ、インフルエンサー、そしてカルチャーの新しい形を一貫して探求してきた。

Lil Miquelaのアカウントに近い人物によると、Instagramは正常に戻っており、コントロールも取り戻している、という。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

5万件の画像タグ手打ちからファッションAI開発へ——ニューロープが5000万円を資金調達

2014年設立のニューロープは、ファッションに特化した人工知能によるサービスを展開する、ファッション×AIのスタートアップだ。同社は3月5日、Reality Accelerator大和企業投資、都築国際育英財団を引受先とした第三者割当増資等により、約5000万円を調達したことを明らかにした。

写真右から大和企業投資 仙石翔氏、Reality Accelerator 郡裕一氏、ニューロープ代表取締役 酒井聡氏とニューロープのメンバー

ニューロープは創業後、モデルやインスタグラマー約300人と提携して、コーディネートスナップを紹介するメディア「#CBK(カブキ)」をリリースした。“モデル着用アイテムに似たアイテムが買えるメディア”という点では、2017年10月にスタートトゥデイの傘下に入ったVASILYが提供する「SNAP by IQON」(2017年3月公開)と同様だが、カブキでは当初、写真に付けるアイテムタグを、なんと全て人力で入力していたそうだ。タグ付けしたリアルなスナップのデータは5万件にも及ぶという。

その後、登録されたデータを元にして、2015年10月からディープラーニングを活用したAI開発に着手。2017年4月、ファッションに特化した人工知能をリリースした。

ファッションとAIとは実は相性がよいらしく、スタートアップによるプロダクトもいろいろ出ている。先述したSNAP by IQONもインスタグラマーのコーディネートに似たアイテムを、ディープラーニングによる画像解析で探し出して購入できるサービスだし、SENSY(旧カラフル・ボード)も人工知能がスタイリングを提案するアプリやサービスを提供している。

こうした競合サービスが多い状況について、ニューロープ代表取締役の酒井聡氏は「僕たちは2014年にガチでデータを集めるところから始めて、1年半の開発期間を経てAIをリリースした。そこは自信を持っている」と話している。

ニューロープが開発した人工知能は、機能で大きく2種類に分けられる。ひとつはファッションスナップを自動解析する「#CBK scnnr(カブキスキャナー)」。一般向けには、LINEにスナップを送信すると解析結果を教えてくれる「ファッションおじさん」として公開されている。

もうひとつはコーディネート提案AIだ。ファッションアイテムに対して、コーデすると合うアイテムを数秒で提案してくれる。カブキスキャナーの画像解析機能と併用すれば、着合わせをリコメンドすることもできる。こちらも、LINEにスナップを投稿するとコーディネートを提案してくれる「人工知能ショップ店員Mika」が公開されている。

ニューロープではこれらの人工知能をAPIとして提供し、事業を展開している。ファッションECのマガシークには、画像検索レコメンド機能を提供。マガシークのアプリで画像データを読み込むと、販売アイテムの中から写真に近いものを検索できる。オークションサービスのモバオクが運営するウェブマガジン「M/Mag」(スマートフォン版のみ)でも、掲載記事のコーデからモバオクに出品されている類似アイテムを買うことが可能になっている。

またSTYLICTIONが運営するファッションメディア「itSnapマガジン」にもAIを提供。掲載記事のスナップを解析してタグ付けを行い、複数のコマースサイトの類似アイテムをまとめて表示し、アイテムが購入されるとメディアにフィーが入る仕組みとなっている。

このほかにも「百貨店などのデジタルサイネージの前で衣装合わせをすると、コーディネート提案が表示されるといった使い方や、SNS上にある『#コーデ』タグがついた画像を分析することで、トレンド予測を行う、というような事業も検討している」と酒井氏は話している。

AIを導入する企業が増え、ニューロープのサービスも引き合いが多くなっていると酒井氏は言う。今回の調達資金の使途について、酒井氏は「API提供だけではなく、企業からの要望にも対応しているので、アプリケーションの開発にどうしてもエンジニアのリソースが取られがち。エンジニア採用にも投資し、既存AIの強化や新規AI開発など、AI自体の強化開発を進めたい」と述べていた。

ファッションレンタルのエアークローゼットが9.5億円調達、AIやデータ活用強化でサービス拡充へ

定額制ファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」などを展開するエアークローゼットは11月30日、ジャフコやホワイト急便を展開する中園ホールディングスなど複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により、9.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回の資金調達を踏まえてエアークローゼットが取り組むのは、AIの導入や蓄積してきたデータの活用だ。同社の強みでもある「プロのスタイリストによるスタイリング」をAIで補助し、選定業務の効率化を進める。加えてデータサイエンスへの投資も強化することで、ユーザーの選好情報や洋服に対するフィードバック情報などの独自データを分析。サービス基盤の拡充を目指す。

エアークローゼットの主力サービスであるairClosetは、2015年2月のサービス開始から2年9ヶ月で会員数14万人を突破。300ブランド、10万点以上にのぼる洋服の中から、スタイリストがユーザーにあったコーディネートを提案する。独自開発したスタイリング提供システムは2017年2月に特許も取得した。

また2016年10月にはスタイリストのパーソナルスタイリングを実店舗で楽しめる「airCloset×ABLE」を表参道にオープン。2017年7月にはスタイリストが選定した洋服が自宅に届き、気に入ったアイテムを購入できる「pickss」を始めるなど、「パーソナルスタイリング」の軸で事業の幅を広げている。

エアークローゼットは2016年1月にジャフコ、中園ホールディングス、寺田倉庫、セゾン・ベンチャーズらから約10億円規模の資金調達を行っていたが、今回はそれに続くラウンド。なお2015年4月にも約1億円の資金を調達している。

これまで同社はスタイリング提供システムの開発や洋服の調達、独自の管理・物流オペレーション構築への投資によってサービス基盤の整備に力を入れてきた。今後は蓄積したデータやパーソナルスタイリングのノウハウを活用しるフェーズへ突入し、スタイリング精度の向上のみならずairCloset全体のUX向上に取り組む。

 

ZOZOTOWN用の採寸ボディースーツをスタートトゥデイが無料配布(ただし送料はかかる)

ファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイは11月22日、採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」を無料配布すると発表した。初回無料、同一ユーザーの2回目以降の購入は3000円(税込)で予約申込が可能。ただし配送には、「送料自由」の試験導入結果を受けて11月1日より変更された「一律200円」の送料がかかる。発表当日の22日より予約受付を開始し、11月末ごろから順次配布される。

ZOZOSUITは、上下セットで着用し、スマートフォンをかざすことで体の寸法を瞬時に採寸できる、伸縮センサー内蔵の採寸ボディースーツ。スマートフォンとBluetooth通信で接続することで、寸法を計測し、データをZOZOTOWNアプリに保存することができる。スタートトゥデイが、ニュージーランドのソフトセンサー開発企業StretchSenseと共同で開発したという(StretchSenseには2016年6月にスタートトゥデイが出資を行っている)。

採寸データはZOZOTOWN、および同日発表され、11月末ごろスタート予定のプライベートブランド「ZOZO」での活用を予定。スタートトゥデイでは、計測した体型データの活用で、ファッションECの課題である「サイズの不安」を解消すべく、さらに商品検索機能やレコメンド機能の充実を図るとしている。なお、ZOZOで提供されるアイテムの購入には、ZOZOSUITでの事前の計測が必須となるようだ。

GoogleのVR連作ビデオ、今回はファッションべったりでスーパーモデルのクローゼットに侵入する

GoogleのDaydream用の仮想現実ビデオシリーズ、その最新作はすみからすみまでファッション、大胆なお洋服選びで知られるセレブたちのクローゼットに入り込む。

GoogleがVogue誌と共作したそのSupermodel Closets(スーパーモデルのクローゼット)と題するビデオは、モデルのワードローブへ仮想的に忍び込み、彼らの衣類を見たり、ファッション哲学を聞いたりする。

仮想現実に手出ししている企業が徐々に気づいてきたのは、360度カメラで撮ったコンテンツなら何でもおもしろい、ことはない、ということだ。激しい抗議のデモや、きれいな風景などは、360度カメラで撮るとすごい臨場感を与えるかもしれないが、Googleが学んだと思われるのは、たとえばGoogle I/OカンファレンスのキーノートをVRヘッドセットを着けてウォッチしたからといって、得られるものは何もない、ということ。

Supermodel Closetsシリーズは、Googleの最新のJump 360カメラを使って、クローゼットのような狭いスペースでも4Kの立体画像を捉えている。

モデルのクローゼットを覗くこの新シリーズがピューリッツァー賞を取るとは思われないが、VRを探検の道具として使って、めったに行けない場所に人びとを連れて行くという、VRならではのミッションをうまく強調している。KardashianやJennerたちのように、ソーシャルな共有の術を心得ている人は世の中にあまりいないし、着るものに彼らほどめちゃめちゃ凝る人たちも珍しい。VRなら、そんな珍獣たちの生活に入り込んで見物できるし、とっくに見飽きてしまっていると思っていた超有名人たちの、実はあまり知らなかった私生活を、ちらっと見ることもできるのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MITの‘生きているジュエリー’は、衣類にしがみつく小さなロボットのアシスタント

Project Kinoは、“生きているジュエリー”からヒントを得た。それは、世界各地で装飾品として着用されている、極彩色の大型甲虫やそのほかの昆虫類だ。MIT Media Labのバージョンは、それらに比べるとずっと人間的で、手のひらサイズのロボットを磁石で衣類にくっつける。チームがデモをしたのは約1年前だが、今回は車輪のついた小さなロボットにさまざまな機能を持たせた。

とは言え、今のところこのロボットのメインのお仕事は衣類の装飾だ。プロジェクトの名前は“kinetic”(運動的)という言葉に由来していて、動きのパターンをいろいろ変えられることを指している。いわばその衣類のデザインが、刻々変化するのだ。一方そのロボットの下面は、動きながら衣類の柄、色、形などを読み取る。

デザインとは関係ない機能も探究中で、最終バージョンではモジュール構造になり、ユーザーがいろんなセンサーを付け替えてさまざまな機能を楽しむ。たとえばレインコートなら、温度センサーとフードの紐の上げ下げを連動するだろう。

電話機モジュールを装着したロボットは、電話がかかってくると着用者の口元へ這い上がってくる。通知を受信すると、ユーザーの手首をタップして知らせるかもしれない。

チームのCindy Hsin-Liu Kaoはこう述べる: “ウェアラブルがパーソナルアシスタントであってもいいわよね。将来的には、ユーザーの習慣や職業を認識して、それらに合った動作をさせられる。着るものとアシスタントが一体化するのよ”。

実用化するためには、ロボットのサイズが当面の問題だ。もっともっと小さくしなければならない。また、今デモで使っている大きなやつでも、バッテリーの寿命が制約になる…充電後45分しか動かせない。今、ワイヤレス充電などの方法を検討中だ、そのシナリオでは、ロボットが自分で充電器のそばまで歩いて行き、充電が終わったらご主人の服へ戻ってくる。

昨年は、初期のバージョンを詳説したペーパーを公開した。その後は開発にデザイナーも参加し、一部のアプリケーションを強調できるようにした。Hsin-Liu Kaoによると、“気味が悪い!って言う人がとっても多かったからよ”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))