フィリピンの決済ゲートウェイPayMongoが約35.6億円のシリーズB調達、東南アジア地域での拡大狙う

PayMongoの創業者たち。CTOのJaime Hing III(ハイメ・ヒンIII)氏、CEOのFrancis Plaza(フランシス・プラザ)氏、CCOのLuis Sia(ルイス・シア)氏

マニラに拠点を置くフィンテック企業で、加盟店のデジタル決済を可能にするオンライン決済プラットフォームのPayMongo(ペイモンゴ)は、周辺地域での事業拡大を視野に入れ、シリーズBラウンドで3100万ドル(約35億5800万円)を調達したと発表した。参加した投資家には、Justin Mateen(ジャスティン・マティーン)氏のJAM Fund、ICCP-SBI Venture Partners、Lisa Gokongwei(リサ・ゴコンウェイ)氏のKaya Foundersに加え、既存投資家のGlobal Founders CapitalとSOMA Capitalが名を連ねている。今回のラウンドには、Qonto、Viva Wallet、Billie、Scalableといった欧州のフィンテック創業者らも参加したとのこと。

これでPayMongoの累計調達額は4600万ドル(約52億7900万円)弱に達した。前回の資金調達は2020年に発表された1200万ドル(約13億7700万円)のシリーズAで、米国の決済サービス大手であるStripe(ストライプ)がリードした

同社はあらゆる規模の企業を対象としているが、特に零細企業、中小企業をターゲットとしており、銀行カード、デジタルウォレット、店頭取引など、さまざまな形態の支払いを受け付けることを可能にする。同社の製品には、PayMongo決済APIやeコマースプラグインなどがある。今回調達した資金は、PayMongoの現在の決済インフラをさらに発展させ、払い出し、資金貸し出し、BNPL(後払い)、サブスクリプションや定期支払いなどの金融サービスの追加に充てられる。

PayMongoの製品ロードマップの一部には、より多様な金融サービスの運営を可能にする新しいライセンスの取得が含まれている。同時に、地域的な拡大も模索しているという。

共同創業者兼CEOのFrancis Plaza(フランシス・プラザ)氏は、TechCrunchにメールでこう語った。「まだまだフィリピンで、やるべきことがたくさんあります。現在の需要の増加に対応し、積極的な製品ロードマップを実現するために、チームの規模を2倍以上にすることを見込んでいます。それと並行して、2021年に取りかかり始めた、東南アジア地域での事業拡大に向けた初期調査と足固めを開始しました」。

フィリピンには他にも、DragonPay、PesoPay、PayMaya、Paynamicsといったデジタル決済ゲートウェイがある。プラザ氏はTechCrunchへのメールで、PayMongoは2019年に設立されて以来、SMBや高成長のスタートアップ・企業にフォーカスすることで差別化を図っていると語った。

それ以上に、当社のプラットフォームを利用している何千もの企業と協力しながら、マーチャントが簡単に支払いを受けられるだけでなく、他の金融サービスにアクセスして成長できるような、より多くの製品やサービスを構築することを目指しています」と同氏。「送金機能から、残高の保存、クレジットへのアクセスまで、そして顧客にとっての支払い方法の選択肢を広げることができます」。プラザ氏はさらに、いくつかの新しい製品やサービスを、すでに加盟店とともにベータ版としてテストしていると付け加えた。

Tinder(ティンダー)やJAM Fundの創業者であるJustin Mateen(ジャスティン・マティーン)氏は声明で次のように述べた。「PayMongoの最初の投資家の一人として、私は彼らがひと握りの企業の決済を簡素化したところから、今では何千もの加盟店が日々の業務で頼りにしている会社になるまでの道のりを見てきました。彼らの成長にワクワクするとともに、デジタル経済を通じてより大きな経済機会を生み出すチームを再びサポートできることを嬉しく思っています」。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Den Nakano)

フィリピンの環境情報プラットフォーム「Komunidad」が約1.1億円のシード資金調達

フィリピンは台風、洪水、火山、地震、干ばつなどの災害に見舞われやすい地理的条件を備えており、世界で最も災害が多い国の1つだ。Felix Ayque(フェリックス・アイク)氏は、IT業界で働いていた頃、サイクロンのレポートをまとめ、Eメールでコミュニティに警告を送る仕事を始めた。彼の仕事はその後、環境情報プラットフォーム「Komunidad(コムニダッド)」へと発展した。Komunidadは、政府や民間の情報源からデータを収集し、カスタマイズ可能な分析結果に変え、顧客が潜在的な災害に迅速に対応できるようにしてくれるものだ。

マニラとシンガポールを拠点とするこのスタートアップは、アジアでの事業拡大と2022年1月にリリースを予定しているセルフサービス版を含むプラットフォームの機能追加のために、100万ドル(約1億1000万円)のシード資金を調達したことを発表した。Wavemaker Partners(ウェイブメーカー・パートナーズ)が主導し、アジア開発銀行のベンチャー部門であるADB Ventures(ADB ベンチャーズ)が参加している。

2019年に設立されたKomunidadは、フィリピン、インド、カンボジア、ベトナムに顧客を持ち、公益事業、農業、鉱業、教育、地方自治体、ビジネスアウトソーシングセンターなど、複数のセクターにサービスを提供している。スタートアップを立ち上げる前のアイク氏は、国有のニュージーランドMetService(メットサービス)を含む複数の気象機関でIT開発者として働いていた。2013年に、少なくとも6300人の犠牲者を出した台風18号(通称スーパータイフーン・ヨランダ)がフィリピンを襲った後、コンサルタントとしてサイクロンレポートの作成を始めるようになった。

もともとこのレポートは、企業が自然災害に対してより迅速に対応できるようにするためのものだった。台風18号が襲ったのは、フィリピンでビジネス・アウトソーシングの分野が急成長していた時期で、当時多くの外国企業がフィリピンに複数のオフィスを設置していた頃だった。台風の際には、企業は通常、業務を被災していない地域のオフィスに移管する。アイク氏が最初に送ったメールは、サイクロンの可能性を手動で分析したものだった。

しかし、エネルギー供給会社をはじめとする企業が気候変動への対応を迫られる中、アイク氏のレポートに対する需要が高まっていった。Komunidadは、事業を拡大するのに十分な収益を上げるようになり、アイク氏は、気象学者、データサイエンティスト、ソフトウェア開発者、インドや東南アジアを拠点とするビジネス開発チームなどの従業員を雇用するようになった。今回の投資は、スケーラブルなプラットフォームの構築に使用される。

Komunidadのデータソースには、2015年にIBMが買収したThe Weather Company(ザ・ウェザー・カンパニー)や、ウェザーインテリジェンスプラットフォームのTomorrow.io(トゥモロー.io)などの大手企業の他、いくつかの小規模な環境・気象データプロバイダーが含まれている。

フィリピン・マンダルヨン市のプロジェクトで作成されたKomunidadダッシュボードの一例

このプラットフォームは、データを悪天候、太陽、海洋、土壌水分、大気の質など、顧客のニーズに関連するダッシュボードに変換してくる。「私たちは、関連するデータだけを持ってきて、これが最も重要なデータであると顧客に伝えるシステムインテグレーターの役割を果たしています」とアイク氏は述べている。Komunidadでは、顧客が独自の警報システムを構築することも可能だ。例えば、フィリピンでは、多くの顧客が、フィリピンで最も人気のあるメッセージングアプリの1つであるViber(バイバー)や、インターネット接続が不安定な地域に届くようにSMSを使ってアラートを送信している。

エネルギー分野の顧客には、Komunidadのツールを使って、気温に基づいて電力使用量などを予測することもできる。また、地方自治体が学校の休校を決定する際にも利用されている。パンデミックの際には、Komunidadは都市が人の密集度をモニターし、どの地域でより多くの人をコントロールする必要があるかを判断するのに役立った。

Komunidadの競争力の1つは、さまざまな分野でどのようなデータが重要であるかを理解しているということだ。例えば、Komunidadは最近、アッサム州災害管理局(ASDMA)と契約を結び、インドで最も雷が発生しやすい州の1つであるアッサム州の雷と雷雨に関する警報に焦点を当てて協働することとなった。

「すべての国がそれぞれ異なる状況を持っており、私たちのアプローチは、コミュニティに焦点を当てたものでなければならず、その上でビジネスに拡大していかなければならないということを理解しています」とアイク氏は語っている。

Komunidadの顧客は迅速に対応しなければならないため、技術的なバックグラウンドを持たない人には理解できないことが多い生のデータレポートから、わかりやすいビジュアライゼーションを作成している。例えば、シンプルな棒グラフ、緑、黄、赤の警告、6時間以内に大規模な気象・環境イベントが発生すると予想される場合は赤に変わる地図などがある。

Komunidadの資金の一部は、Wix(ウィックス)やWordPress(ワードプレス)でウェブサイトを作成するのと同様に、顧客がウィジェットをドラッグ&ドロップすることができるセルフサービス型のカスタマイズ可能なダッシュボードを来年開始するために使用される。今回の資金調達により、Komunidadは、インド、タイ、カンボジアなどでの新たなビジネスチャンスの獲得、営業チームの増強、データソースの追加などを行えるようになる。

画像クレジット:John Seaton Callahan / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

3Dプリント義足事業を展開し日本発のグローバルスタートアップを目指すインスタリムが2.4億円のシリーズA調達

3Dプリント義足事業を展開し日本発のグローバルスタートアップを目指すインスタリムが総額2.4億円のシリーズA調達

3Dプリンティングおよび機械学習(AI)技術を活用し3Dプリント義足を海外で製造販売しているインスタリムは9月30日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額2億4000万円の資金調達を完了したと発表した。引受先はインクルージョン・ジャパン、Mistletoe Japan、慶應イノベーション・イニシアティブ、三菱UFJキャピタル、ディープコア。

インスタリムは、低価格・短納期の3Dプリント義足をフィリピンで製造販売する日本発のスタートアップ。単なる試供品の提供ではなく、事業化の前提となる「カスタム量産体制」(マス・カスタマイゼーション)が構築された3Dプリンター・CAD義足事業として世界初(同社調べ)としている。このカスタム量産体制とは、ユーザー個人のニーズに応じたカスタマイズと、大量生産並みの低コストな供給を両立する生産システムを指すという。義足の提供には患者ごとの断端(切断部)の形状に合わせた製造が不可欠であるため、世界的な普及には、低コストな大量生産とパーソナライズされた受注生産を兼ね備えた提供が不可欠としている。

同社は、今回の資金調達に加えて、経済産業省による事業再構築補助金、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による課題解決型福祉用具実用化開発支援事業などの支援を得ている。

これらにより、現在のフィリピンの首都圏に限られている販売網を地方都市にも複数拠点化し全国展開する。現地製造販売体制の強化やマーケティング施策を通じたグロースの実現も図る。また、より多くの層の人々が義足を購入し就業できるよう、初期出費を抑えたサブスクリプション販売形式を新たに構築するという。

さらに、次なる展開国としてインド(予定)での事業展開を目指す。アフターコロナの情勢に対応した、測定・試着・製品提供までを完全リモートによる非対面での義足製造販売システムの開発も進めるとのこと。

従来義足は、医学知識を持った義肢装具士がユーザーごとの体に合わせ医学的に最適な形状のものを手作りしていることから、価格30~100万円と高価で、また1カ月程度の納期を要しているという。このため、障害者への社会的支援が不十分な開発途上国においては、義足を購入できない方は仕事に就くなどの社会参画が困難となっており、深刻な社会課題となっているという。

そこでインスタリムは、3DプリンティングとAI技術により約1/10の水準の価格と納期を実現し、2019年よりフィリピンで製造販売を行なっている。コロナ禍による移動制限や経済状態の悪化が続いている中でもすでに400人以上のユーザーがおり、1600人以上(2021年8月現在。同社の義足が欲しいが、現在購入できないために引き続き情報提供を希望するという切断患者を掲載したウェイティングリストの患者数)が同社の義足提供を待っている状態という。

同社は、「必要とするすべての人が、義肢装具を手に入れられる世界をつくる」というビジョンの実現に向けて、日本発のグローバルスタートアップ、SDGsスタートアップとして社会課題の解決を目指すとしている。