Facebookはポリシー違反の「報道価値のある」政治発言にラベル添付を約束、広告主の離反受け

Facebook(フェイスブック)の偽情報やヘイトスピーチを容認する態度に業を煮やした広告主たちが、そのソーシャルネットワークの巨人から離反してゆく中、同社は彼らをなんとか引き留めようと、強力なポリシーをまとめて導入することを決めた。

Facebookが毎週開催している全員参加会議において、CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏はライブストリーミング配信を使い、それまでFacebookがとってきた対策を部分的に振り返りつつ、有権者弾圧や偽情報と戦うための新対策を示した。もっともこれは、すでにTwitter(ツイッター)などのソーシャルメディア・プラットフォームが重視し、より積極的に実施している対策とそう変わらない。

今回のポリシー変更は、政治家や公人が今もFacebookのガイドラインに違反し、ヘイトスピーチの拡散を続けている事実を実質的に認めるものでもある。しかし、「報道価値がある」ものはその旨を示すラベルを添付した上で、同プラットフォーム上での表示を続けるという。

これは、ヘイトスピーチや暴力を煽る言動を増幅させるネットワークの力を抑制したTwitterの断固とした態度を水で薄めたようなものだ。

ザッカーバーグ氏は以下のように話している(Facebook投稿)。

年に数回、私たちは、それが及ぼす被害のリスクに比べて公共的価値が高い場合に、通常ならば私たちのポリシーに違反するコンテンツを容認してきました。それは、報道機関が政治家の言葉を伝えるのと同じことです。我々のプラットフォームでも、人々がそれを普通に閲覧できるようにすべきだと私たちは考えています。

私たちは間もなく、人々がその投稿を、そうした類のものであると識別できるよう、掲載が容認されているコンテンツの一部にラベルを添付します。私たちはそれらのコンテンツを、その他の問題のあるコンテンツに関して容認しているように、批判を目的としたシェアを認めます。なぜならそれは、この社会で何が容認されるべきかを議論する上での大切な要素となるからです。ただし、シェアしようとしているそのコンテンツは私たちのポリシーに違反する恐れがあるという警告が追加されます。

このアプローチには無数の問題がある。結論としてこれは、ヘイトスピーチや、その他の誇張表現やプロパガンダの類に関してFacebookが持ち続ける、いつものこだわりの一例に過ぎない。つまり、責任はユーザーに負わせるというものだ。

ザッカーバーグ氏は、暴力の脅威や有権者弾圧は、たとえ報道価値があると認められたとしても、同プラットフォームでの配信を認めないと強調した。さらに「すべてのポリシーにおいて、政治家を例外としないことを、ここに明言しておきます」とも付け加えた。

だが、Facebookがそうした脅威の本質をどのように定義しているのか、さらに彼が声明で語った「報道価値」とのバランスはどうなのかは、いまだ不明だ。

大統領選挙の年、選挙にまつわる暴力に対する同社のこうした取り組みは、投票権に関連して同プラットフォームで拡散される偽情報に対処しようと同社が実施しきたその他の対策を補完する。

関連記事:Facebook adds option for US users to turn off political ads, launches voting info hub(未訳)

ザッカーバーグ氏が発表した新対策には、各地の選挙当局と協力し、情報の正確さと、その潜在的な危険を判断するという取り組みも含まれていた。同氏はさらに、虚偽情報(投票所で米国移民税関捜査局の捜査官が移民証明書を確認するなど)の、または投票干渉で脅しをかける(「私は友人たちと独自の投票調査を行います」といった)投稿を禁止するとも話した。

Facebookは、広告でのヘイトスピーチを制限するための追加措置も実施する予定だ。「特に、私たちは広告ポリシーを拡大して、特定の人種、民族、国籍、宗教、社会的身分、性的指向、性自認、在留資格によって他者の身体的安全、健康、生存を脅かすような主張を禁止します」とザッカーバーグ氏。「また、移民、移住者、難民、亡命希望者を、彼らが劣等であるかのような暗示、侮辱、追放の訴え、直接的な嫌悪表現から、しっかりと守れるようポリシーを拡大します」。

同氏のこの発表は、人権擁護団体が主導する「#StopHateforProfit」(営利目的のヘイトを阻止しよう)キャンペーンに賛同した広告主、つい最近ではUnilever(ユニリーバ)とVerizon(ベライゾン)(未訳)などがFacebookから資金を引き揚げると言い出したこの時期と重なった。

これは、あらゆる方面から(とは言えこれまでは、Facebookにとっていちばん重要な広告主は含まれなかったが)の批判を正面から向き合うことを避けてきたソーシャルネットワークのトップから出た、小さいながらも喜ばしい一歩だ。だが、Facebookの公的なメッセージ、ミーム(面白ネタ)、評論の表面には顔を出さず、プライベートチャンネルで今にも爆発しそうに煮えたぎっている大量の偽情報には、まだまったく手が付けられていない。

画像クレジット:Chip Somodevilla / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Facebookとの関係をなかなか断ち切れないユーザーの苦悩

Haje Jan Kamps(ヘイジ・ジャン・キャンプス)氏は、数年前にTechCrunchのライターとして活躍し、その後、Konf(カンフ)というバーチャル会議プラットフォームを立ち上げた、起業家であり写真家でありジャーナリストだ。先日、私は彼に連絡をとり、新型コロナウイルス(COVID-19)蔓延している現在の仕事や生活について話を聞いた。しかし話の内容は、ソーシャルネットワーク、メッセージ、ライブストリームの各プラットフォームで行動が記録され、このパンデミックの間も多くのユーザーが使い続けそうな気配があるFacebookのことで長々と盛り上がった。

そして、もともとは大学生専用のSNSだったFacebookが、2006年ごろに13歳以上で有効な電子メールアドレスを持つ人なら誰でも参加できるようになったときからFacebookを使っているキャンプ氏に寸評というかたちで意見を聞いた。

以下はあくまで彼の私的見解だが、世界中で友だちや家族と離れ離れになっている数多くのFacebookユーザーが、その巨大ハイテク企業との関係を深めるほどに、その成長の勢いを助長している現実への苦悩を裏付けている。

なおキャンプス氏の言葉は、字数の調整と明瞭化のために、多少編集してある。


私はこれまで何度もFacebookとの関係を絶ってきた。なぜなら、それはあまりにも多く、あまりにも頻繁に人のアルゴリズムを変更するために、ときどき本当にうんざりさせられるからだ。だから私はマウスカーソルを使って、しばらくの間そこから抜け出るほうに投票する。そしてまた戻ってくる。すると、たくさんの友だちが新しいことや何やらをやっている。

私は、友だちの人生が更新されるのはいいと思う。だが、世界の重荷を自分で背負いたいとまでは思わない。私は少し前、自分の気持ちを楽にしたくてニュースを読むのを意識的に止めた。もしそれがFacebookの裏口から入り込むようなことがあれば「いらねーよ」と言ってやる。

今朝、ちょっとした出来事があった。目が覚めて少し寝坊したけど、Facebookを見ると私の友だちがライブ配信をしていた。人々を少しだけ励まそうと考えたようだ。彼女はウクレレを引いて15分ほど歌っていた。20人ぐらいの友だちが見ていたが、彼女は「みんなにとって良い日でありますように」みたいなことを言っていた。みんなが自宅隔離を要請される以前は、そんなことを言う人じゃなかった。

たくさんのグループが登場している。古いグループの活動再開も見られる。私も、Human Awareness Institute(ヒューマン・アウェアネス・インスティテュート、人間性を覚醒させるワークショップ)でひとつ始めてみた。そこには、大規模なグループでの共有というコンセプトがある。基本的に、大勢の人の前に立って真実の、心がこもった、自分と密接な事柄を話すというものだ。ワークショップはすべて中止せざるを得なかったが、反対にデジタル版でもみずみずしく美しい連帯感が得られることがわかった。みんなは支えがほしくてそこへ飛び込んでくるわけだが、私の話に寄せられた大量のコメントには、Facebookが長い間失ってきたものが感じられた。

実にわかりやすいと思うが、私の一番大きな気付きは、Facebookは単なるツールに過ぎず、どのツールを使うか、それで何をするかは自分で決めなければならないということだ。そこを、喜びやクリエイティブな活動を広めるための場所だと自分で決めれば、そして他の人たちがそうしているのを見た私がとてもいい気分になれたなら、私も同じようにするかもしれない。

私とFacebookとの間には愛憎がある。何週間も、ときには何カ月もサインインしないときがある。インターネットと、そこで得られる情報には大変に感謝しているが、米国では基本的な原典批評すらまったく教えられていないようだ。つまり、インターネットで何かを読んだとき、それが真実かどうか判断できるかどうかだ。私が育ったノルウェーでは、歴史の時間に原典そのものを批評することを教わる。「これは信頼できる情報源か?」「『勝者のが書いた記録』ではないのか?」「どのように情報源をつなぎ合わせれば、現実に起こったことを心地いい話にできるか?」と問われる。

フェイクニュースがなんとなく支配権を持つようになった事実に、私は恐れを抱いている。先日のヨガの教室でのことだ。ヨガの先生が小さなスプレーボトルを持ってきて(マットをきれいにするためのものだ)こう言った。「この中にはエッセンシャルオイルが入っています。手やマットや顔にも使えます。食用なので飲んでも大丈夫です」と。これって「食用だったらウイルスには効くわけねーよな」みたいな。たしかに、エッセンシャルオイルの中には一部のウイルスに有効なものもあるだろう。私はわからない。だが、消毒剤が発明されたのには相応の理由があるのだ。

人は、自分が信じたいものには幻想を抱き、それを肯定する言葉だけが聞こえる場所に身を置きたがる。ワクチン忌避運動もそのひとつだ。ほかにも馬鹿らしいニュースが世間には山ほどある。今の社会状況を真剣に知りたいと思えば、私ならBBCやニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストのようなしっかりとした報道機関に頼る。なぜなら、公表されているものは実際にある程度の分別のある内容かどうかを検証する仕組みを彼らは内部に持っているからだ。

インターネットでそれをやるのは、かなり難しい。現在は、これまでになく大量の情報にあふれている。望むならば、もっとも優れた情報が手に入る。医療専門サイトで新型コロナウイルスに関する記事を読むこともできる。だが、絶対に100%捏造でありながら、人々が真実だと思い込んでいるニュースも大量にある。私ならこう言う。「寄ってたかって馬鹿ばっかりなのか、ただそう信じたいだけのどちらからだ」とね。

Facebookが真実を見極めるを監視人になるべきかどうかについて、私は特に意見を持っていない。しかし、偽情報がいとも簡単にシェアされ拡散してしまう事実は、大規模なパンデミックが続く中で、何ひとついいことはない。

“新型コロナウイルス

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Facebook PageとInstagramが人気投稿の発信国をユーザーに明示へ、フェイク記事対策のため

FacebookとInstagramに「誰が投稿したのか」を確認することを容易にする機能が導入される。Facebookは「Facebook PageおよびInstagramに投稿される記事で読者の数が多数に上るものについては投稿者の所在地(国)を表示する」と発表した 。この機能はエンドユーザーが投稿アカウントの信頼性、正統性について理解を深め、システム全般の透明度を高めるためのもとだという。当面は米国で実施される。

Facebookは、米国以外の地域に所在するアカウントによるFacebook PageとInstagram投稿で米国内の大勢のユーザーが読む場合、アカウントの位置情報を表示する。

同社は「大勢」が具体的にはどのくらいの数なのか、またこれにより影響を受けるアカウントの数はどれほどかについては明言を避けた。

これは米国の政治や選挙に対して外国勢力が影響を及ぼそうとすることに対抗する措置の最新の試みだ。ロシアが支援するハッカーが大統領選挙に影響を及ぼそうとしたFacebookへの投稿は1億2600万人の米国人に読まれたことが明らかになっている。

このためFacebookでは、Page投稿に対していくつかのプロセスを追加し、政治的広告の透明性の確保を図った。

例えば2018年8月には、多数の米国人がフォローするFacebook Pageについて、フェイクアカウントや不法に利用したアカウントを使ってFacebook Pageを運営することを困難にするための対策が取られた。このこの措置でFacebook Pageには「このページの管理者」というセクションが追加され、米国向けのそうしたPageの管理者は2018年12月までに身元と所在地を確認することが求められた。

【略】

Facebookに公開された投稿には「この記事の投稿者は」に国名が続き、Instagramの場合は「投稿者の(所在国)は」と表示される。

ユーザーは、Facebook PageまたはInstagramアカウントに関してポップアップでさらに詳しい説明を得ることができる。ポップアップでは「このコンテンツを投稿した個人ないしアカウントは大多数のフォロワーが居住するのと別の国にいる。一部の投稿者は読者に実際の所在地でない国からの投稿と誤解させようとするため(FacebookまたはInstagramgは)これを防ぐために所在地を明記している」と説明される。

従来、投稿者の所在地の情報はFacebook Pageやプロフィールの奥のレベルに埋め込まれ、見落とされがちだった。それに比べるとこれは大きな前進だ。またこの情報はアカウントについて回るため、投稿が共有されるとき誤解を招く情報のバイラルな拡散を減らす効果が期待できる。

【略】

しかし最近の捜査によれば、ロシアのハッカーたちはフェイクニュースやプロパガンダ記事の制作をアフリカ諸国にアウトソーシングしているという。戦いはこれで終わりというわけにはいかない。

Facebookはこの所在地情報の公開をまず米国で実施すると述べている。同時に世界の多くの地域にFacebook PageとInstagramプロフィールの透明化をもたらす方法を検討しているという。新機能はすでにアメリカのFacebookユーザーに公開されており、Instagramでも順次公開される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

「投稿は偽物」と断じたシンガポール政府の命令にFacebookが屈する

Facebook(フェイスブック)は、フリンジニュースサイト(主流ではないニュースサイト)の投稿に訂正通知を追加した。この投稿については、シンガポール政府が虚偽の情報を含んでいると主張している。同政府が「フェイクニュース」に対して国境を越えて新法を適用するのは初めてだ。

シンガポール政府によると、フリンジニュースサイトのStates Times Review(STR)の投稿には「中傷的な非難」が含まれているという。同サイトの投稿には、内部告発者とされる人物の逮捕と選挙不正を非難する内容が含まれている。

シンガポール当局は以前、STRの編集者であるAlex Tan(アレックス・タン)氏に投稿の修正を命じたが、オーストラリア国民である同氏は「外国政府からのいかなる命令にも従わない」と述べた。シンガポール生まれのタン氏は、自身はオーストラリア在住のオーストラリア国民であり法律の対象外だと述べた。フォローアップの投稿で同氏は「不当な法律はすべて無視し、抵抗する」と述べた。同氏は、Twitter、LinkedIn、Google Docsにも記事を投稿し、シンガポール政府はそれらにも修正を命じるべきだと抗議した。

Facebookの通知には「この投稿には虚偽の情報があるとのシンガポール政府の主張を、Facebookは法律に従い通知する義務がある」とある。通知は投稿の下部に新たに表示されたが、投稿の内容そのものには変更はない。シンガポールのソーシャルメディアユーザーのみが通知を見ることができる。

Facebookは声明で「フェイクニュース」防止法の下で必要な表示を行ったと述べた。正式名称である「オンラインの虚偽情報および情報操作防止法」は10月に施行された。

Facebookの「透明性レポート」によると、政府が現地法違反だと主張するコンテンツをFacebookがブロックすることはよくあり、今年6月までに世界で1万8000件近いケースがあった。

シンガポールにアジア本部があるFacebookは、法律は表現の自由に影響を与えないと政府が保証することにより「明確で透明なアプローチで運用される」ことを期待すると表明した。

法律違反には重い罰金に加え、最長5年の懲役の可能性がある。偽のアカウントやボットを使用して偽のニュースを広めることも禁じており、罰金は最高で100万シンガポールドル(約8000万円)および最長10年の懲役だ。同法がシンガポール国内外問わず表現の自由を危険にさらすと批判する向きもある。

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(翻訳:Mizoguchi)

Googleが「中国政府は香港へのデマ拡散、不穏化にYouTubeを組織的に利用」と発表

Googleは中国政府がYouTubeを利用して香港のデモ参加者の間に「不和と混乱をもたらそうとしている」と発表したが、これに続いてビデオプラットフォーム、YouTubeのアカウント210件の削除が発表された。

今週始め、TwitterとFacebookは、中国政府がソーシャルメディアサイトを使って香港情勢に関連してフェイクニュースなどニセ情報を拡散し、デモの弱体化を図っていると発表した。Googleグループの有力メンバーであるYouTubeもこれに続くこととなった。一国二制度による特別地域である香港で中国政府に反発するデモが広がっていることに対し、同政府は鎮圧を警告し、介入を図っていた。

「プラットフォームの公正さの維持」と題するGoogleのブログ記事で、同社の脅威分析グループののShane Huntley(シェーン・ハントリー)氏は「香港の現下の情勢に関連して組織的な方法でビデオがアップロードされていることが探知されたためこの措置を取った」と述べている。

ハントリー氏はさらに「この事実の発見はFacebookとTwitterによる最近の判断を裏付けるものだ」としている。

今週はじめ、Twitterは「中国政府は抗議参加者の間に「不和をもたらすために我々のソーシャルメディアを利用している。背後に政府がある組織的な活動だ」とした。

Googleのブログによれば、アカウントオーナーの身元を隠すためにVPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)その他の手法が使われていることが発見された。Facebook、Twitter、Googleはいずれも中国では禁止されており、VPNは中国の巨大な検閲システム、いわゆるグレート・ファイアウォールをくぐり抜けるために一般市民にも広く使われている。

ただしGoogleは不正な活動を行っていたアカウントについては詳しく言及せず、研究者、専門家向けに技術的詳細が明らかにされるかどうかは不明だ。

Googleに取材を申し込んだが解答は問題のブログへのリンクだけで、コメントはなかった。

この週末には100万人以上が中国政府の支配強化に反対するデモを平穏行った。租借期限が切れるのを機に1997年に英国政府は香港を中国に返還した。この際合意された一国二制度により香港の民主主義は保障されることとなっていたが、今年初め、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は逃亡犯条例の改正を強行しようとした。これは理由を問わず香港人を逮捕して中国本土で裁判にかけることを可能にするもので、香港および民主主義各国の強い反発を呼んだ。条例改正は凍結されたが「中国政府は香港の自治に介入しようと図っている」として抗議行動が続いている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

敵を知るには敵になろう!向学のためにフェイクニュースを自分で書くAI

今日、メディアが抱えている最大の問題は、いわゆる「フェイクニュース」。それは表面的に本物を装うという点で大変に悪質だ。AIを使ったツールがフェイクニュースの判別に役立つと言われているが、それを可能にするための最良の方法は、AI自身にフェイクニュースの書き方を教えることだと研究者たちは気がついた。それほど危険なことには感じられないかもしれないが、これは諸刃の剣だ。

「Grover」は、ワシントン大学とアレン人工知能研究所(AI2)のコンピューター科学者たちが開発した、フェイクニュースの執筆に大変に長けた新型のシステムだ。いろいろな話題を、いろいろなスタイルでフェイクニュースに仕立てることができる。その直接的な効果として、フェイクニュースの見極めが得意になったことがある。このモデルに関する論文はこちらで読める。

フェイクニュース執筆システムのアイデアは、これに始まったものではない。実際にOpenAIは、同団体が開発したテキスト生成AIを世に送り出すのは大変に危険だと話し、波紋を呼んだことがある。しかし、Groverの開発者たちは、フェイクニュースを生成するツールを公開して学習させていくことは、フェイクニュースとの戦いを有利にする以外の何者でもないと信じている。

OpenAIは非常に優れたテキストジェネレータを開発したが、そのままリリースするのは危険すぎると考えている

「これらのモデルは、今のところ深刻な害を及ぼす力はないと私たちは考えています。数年後には、そうなるかも知れません。でも今はまだ大丈夫です」とこのプロジェクトのリーダーであるRowan Zellers氏は私に話してくれた。「公開が危険とは考えていません。むしろ、より強力な防衛力を身につけるためには、特にこの問題を研究している者にとって公開は必須です。セキュリティー、機械学習、自然言語処理といったすべてのコミュニティと論議する必要があります。モデルを隠すべきではありません。何事もなかったかのような顔をして削除することもできません」

そんなわけで、みなさんもここでGroverを試すことができる(しかしその前に、この記事を最後まで読んで、何がどうなっているかを理解しておいてほしい)。

貪欲な読者

このAIは、本物のニュース記事の膨大なコーパスを摂取して作られた。RealNewsという名のデータセットがGroverとともに紹介されている。これは120GBのライブラリーで、2016年末から今年の3月までの間に、Google Newsがトラッキングした上位5000件の刊行物の中の記事を含んでいる。

Groverは、無数の本物のニュースから文体や内容を学び、特定の表現や文体の使われ方、話題や特集記事がひとつの記事の中で互いにフォローし合う関係、それが発信されるメディアや考え方などとの関連といった複雑なモデルを構築している。

これは、「敵対関係」システムを使って行われる。そこでは、モデルのひとつの側面が内容を生成し、別の側面がその本当らしさを評価する。もし基準に満たなかったときは、ジェネレーターは記事を書き直す。それにより、何が本当らしくて、何がそうでないかを学んでゆく。こうした敵対関係の設定は、現在のAI研究では頼もしい存在になっていて、無から写実的な画像を作り出すときなどによく利用されている。

モナリザが眉をひそめる、機械学習が昔の絵画や写真に命を吹き込む

Groverは、単純にランダムに記事をはき出すわけではない。高度にパラメーター化されているため、出力は入力に大きく左右される。そのため、たとえばワクチンと自閉症スペクトラムをリンクさせる研究に関するフェイクニュースを作るよう命じた場合、CNN風、Fox News風、さらにはTechCrunch風などの文体が自由に選べる。

いくつか作らせた記事を一番下に掲載したが、最初に試したものをここで紹介しよう。

歴戦の起業家Dennis Mangler氏がブロックチェーンベースのドローン配送の開発に600万ドルを調達

2019年5月29日 – Devin Coldewarg

ドローン配送、特に目新しくはないが、これは多くの疑問を投げかける。その技術の信頼度は?サービスと妨害の問題は炎上しないか?

ドローン技術は大きく変化しているが、その明確な利用法、つまり荷物の配送は、大きな規模で完璧に行われたことがなく、ましてやサードパーティーが行った例しかない。しかし、それは変わろうとしている。

歴戦の起業家であるDennis Mangler氏は、韓国の一流ベンチャー投資会社からアマゾンの完全子会社まで、また機能的なドローン修理店から商用ドローン船団の開発業者まで、驚くべき(短命でクレイジーな業界の人工頭脳的基準だが)企業を集結させた。

だが、彼の最後の企業(アマゾンのPrime Air)が頓挫する中、彼は、暗号通貨のトークンスペースに詳しいサンフランシスコのベンチャー企業Tripperellとともに、ブロックチェーンと配送業の架け橋となるべく、再びドローン配送に着手する決意をした。

彼らが構築しようとしているシステムは理に適っている。Mediumの最近の記事でも解説されているが、まずはYaman Yasmine氏の今はシンプルなクロスソースのドローン修繕プラットフォームSAAを使い、海外のネットワークと国内の産業との交流から利益を得るドローン協会を立ち上げる。

そこから彼らは、独自のスマートコントラクトで商用ドローンを運用し、配送業務を行えるようTripperellを形作っていく。

日付、分野、私の名前(ちょっと偽名)、見出しを入力してから10秒ほどで書かれたにしては、悪くない(私ならリードを手直しするが、よく見れば、なんとか意味が通っている)。

Groverは私のことは知らないし、TechCrunchとは何なのかも知らない。しかしそれは、ある特定のデータを別のデータと関連付けている。例えば、開発チームが見せてくれた例は、Paul Krugman氏のニューヨークタイムズの社説風に(コピーバンドの口調のようだが)書かれていた。

「何ひとつハードコードはされていません。モデルにはPaul Krugman氏が誰なのかも伝えていません。しかし、Groverはたくさん読んで学んだのです」とZellers氏は私に話した。生成された記事が、指定の分野と著者に関連付けた他のデータと十分に似るように頑張っただけだ。「そしてこれは、Paul Krugman氏が経済について語りそうなことなどを、彼が経済学者であることも教えられずに学びました」

指定された著者の文体に、どれだけ近づけようとしているのかは不明だ。「指示」されているか、されていないかもわからない。それに、解析しようにもあまりに不透明なのがAIモデルの難点でもある。その文体は本物以上に真似られていて、しかも私が作った「Fox News」記事には「関連記事」のリンクの段落まで挿入されていた。

しかし、この記事を生成する力は、記事が本物らしくないときにそれを指摘できる能力の上に成り立っている。それは、「ジェネレーター」の出力がある程度うまく書けているかどうかを評価する「弁別子」になっている。この弁別子に別の文章を入力したらどうなるだろうか?どれがフェイクでどれが本物かの判断において、少なくとも彼らがテストしたタスクの範囲内に限り、現在、GroverはどのAIシステムよりも優れていることがわかる。

ソーシャルネットワークを使ってフェイクニュースを特定するFabula AI(未訳)

Fabula AI is using social spread to spot ‘fake news’

自然言語の限界

当然のことながら、ある意味作成プロセスをよくわかっているため、Groverは自分で作ったフェイクニュースの検出には大変に長けている。だが、OpenAIのGPT2など、他のモデルが書いた記事の判定も正確に行える。これは、現在の文章生成システムには共通の弱点があるからだ。その弱点が、弁別子の目からは際だって見える例もある。

「これらのモデルは、2つの間違った選択肢のうちのひとつを選ぶしかありません。最初の間違った選択肢は、人がモデルを信頼するというものです」とZellers氏は言う。この場合、いくつもの選択を繰り返すときにはどうしても、エラーを悪化させる問題が起きる。ひとつの間違った選択が次の間違った選択を招くといったことが連続するからだ。「監督をしていなければ、彼らはすぐに脱線してしまいます」。

「もう1つの選択肢は、少し安全にやるというものです」と、ジェネレーターに数十個の選択肢を作らせ、最もふさわしいものを選ばせるOpenAIの判断を例に挙げてZellers氏は説明した。この保守的なアプローチは、それらしくない言葉の組み合わせや表現を避けていく。しかし、Zellers氏はこう指摘する。「人間の話は、非常にそれらしい言葉と、それらしくない言葉との混ぜ合わせです。あなたが何を言いたいか私がわかっていたとしたら、あなたは話さないでしょう。なので、予測できない何かが必要なのです」。

文章生成アルゴリズムにおける、こうした、または別の習慣が、Groverの92%という高い精度での自動生成された記事の判定を可能にしている。

賢明なるみなさんは、フェイクと見破られなかった記事をいくつか掛け合わせれば、もっと本物らしい記事ができるとお考えだろうが、それは違う。そうした戦略は、あまり役に立たないことがわかっている。そこから生まれた「スーパーアルゴリズム」も、同じところでつまずいている。

自己消火の危険

表面的には、Groverは大変に危険なツールのように見える。生成された文章にちょっと手を加えれば、その専門分野には詳しくない、あまり真剣でない読者なら簡単に騙せるだろう。ではなぜ、彼らはGroverとその基礎になるデータセットを公開したのだろうか?

まず、これはダウンロードして使えるアプリになるわけではない。「私たちは、このモデルを研究者たちが簡単に使えるようにしたいと考えました。しかし、完全に公にしようとは思っていません」とZellers氏は明言した。しかし、公になったとしても悪用される可能性は意外に低い。

「10本のフェイク記事を作るなら、自分で書けます」と彼は指摘する。まさに、天才的なライターが数本の記事を書くことなど苦ではない。「しかし、1万本作りたいなら、私たちのツールが役に立ちます。しかし、彼らが作ったフェイク記事をたくさん入手するほど、フェイク記事の判定は楽になります」。つまり、これは自滅の筋書きだ。「見慣れたフェイクニュース」は簡単に見つけられる。

ただしこれは、Groverのようなアルゴリズムを広範にニュースに適用する方法があればの話だ。また、そもそも個人が記事の真偽に関心を持ったり検証したいと思うのかという話だ。残念ながら、それはまだ遠い。

「これはまったく機械学習とは関係のない問題です」とZellers氏も認める。「どうしたらこれを、人々にとって便利なものにできるか?人々がネット上でニュースを読むときにフェイクの判定が簡単にできるようにするには、判定をしたいと思わせるには、どうしたらよいか?

これに関して、適切な答を生み出せるAIはない。人間がこの仕事に取り組むことに望みをかけよう。

おまけ

私は、向学のために何本か記事を作らせてみた。出来不出来はある。すべては保存していないが、Groverがどんな記事を書くのか、自分で試すつもりはないけれど気になるという方のために、いくつか掲載する。結果は、なかなか面白く筋も通っている。しかし、よくよく読み込むといくつかまずい箇所が見つかる。私は、読みやすいようにほんの少しフォーマットに手を加えたが、言葉は一切変えていない。

最初の記事は、上で紹介した文章を作り直したものだ。見出しに少々変更がある(意外ながら論旨が通ることから誤解を生みやすい)。

多くの企業を創設したDennis Mangler氏がブロックチェーンベースのドローン配送の開発に600万ドルを調達

2019年5月29日 – Devin Coldewarg

ドローン配送、特に目新しくはないが、多くの疑問を投げかける。その技術の信頼度は?サービスと妨害の問題は炎上しないか?

ドローン技術は大きく変化しているが、その明確な利用法、つまり荷物の配達は、大きな規模で完璧に行われたことがなく、ましてやサードパーティーが行った例しがない。しかし、それは変わろうとしている。

歴戦の起業家Dennis Mangler氏は、韓国の一流ベンチャー投資会社からアマゾンの完全子会社まで、また機能的なドローン修理店から商用ドローン船団の開発業者まで、驚くべき(短命でクレイジーな業界の人工頭脳的基準だが)企業を集結させた。

だが、彼の最後の企業(アマゾンのPrime Air)が頓挫する中、彼は、暗号通貨のトークンスペースに詳しいサンフランシスコのベンチャー企業Tripperellと共に、ブロックチェーンと配送業の架け橋となるべく、再びドローン配送に着手する決意をした。

彼らが構築しようとしているシステムは理に適っている。Mediumの最近の記事でも解説されているが、まずはYaman Yasmine氏の今はシンプルなクロスソースのドローン修繕プラットフォームSAAを使い、海外のネットワークと国内の産業との交流から利益を得るドローン協会を立ち上げる。

そこから彼らは、独自のスマートコントラクトで商用ドローンを運用し、配送業務を行えるようTripperellを形作って行く。

これは、Fox Newsの文体を真似たものだ。私が確認したところ、Nicholas Colvin博士などという人物はいない。Bobby Scott氏はアメリカの国会議員だ。ただし、フロリダ州選出ではなく、バージニア州選出。

多年の研究により自閉症スペクトラムの高発症率へのワクチンの関与を解明

2019年5月29日 – Sofia Ojeda foxnews.com

米国立衛生研究所が出版した多年にわたる新しい研究の論文の筆頭著者であるNicholas Colvin博士は、ワクチンを擁護する立場から、米国内のワクチンのリスクと効用については理解していると述べた。

「その核心は、安全性にあります。つまり、子どもたちと両親には、その選択を行う際に選択肢が提示されます。そしてワクチンは、つまり、そのすべての子どもたち、そのすべての両親に安全を提供します」とColvin博士は言う。

関連記事:自閉症専門家がカリフォルニアのワクチンは「怪しい科学」と断言

Colvin博士とその同僚たちは、今世紀の最初の10年間で300万人以上の子どもたちの医療記録をすべて精査した。彼らは、ワクチンの有害な副作用に対して、女児のほうが男児よりも敏感である傾向を突き止めた。

「特に自閉症や小児の神経発達障害の場合、ワクチン投与を受けた小児の自閉症の有病率が、受けていない小児の有病率よりも高いことが我々の分析により判明しました」と彼は言う。

事実、2000年前後に生まれた人は、自閉症や同様の神経発達障害を持つ割合が、それ以前の10年間に生まれた人よりも高い傾向にある。

「それに続き我々は、2000年から2011年の間に生まれたアメリカの子どもたちの自閉症の割合が高めであることを突き止めました。またその割合は、女児によって高められています」とColvinは話す。

関連記事:トランプはフロリダ州選出Bobby Scott議員のワクチン法を支持

Colvin博士は、今回の発見は両親にワクチンの恐ろしさを伝えることが目的ではないと指摘している。

「人を怖がらせるつもりはありません。ただ、リスクがあることをご両親に知ってもらいたいだけです。これは現前たる事実であり、つまり、他の研究でも一致する内容です。しかし、命に危険があるという類の問題ではないことを言っておきます」とColvin博士は言う。

彼は、自閉症には不明の原因があることも指摘している。それだけに、疑わしい人、心配な人は医師に相談するよう進言している。

国立衛生研究所は、現時点で自閉症のためのワクチンはないと話している。Colvin博士は、不確かであるがゆえに誤解が生じ、ワクチンの摂取量が減っていると言っている。

最後は、混乱させてみたらどうなるかを知りたくて作った記事だ。

創設者デナーリス・ターガリエン氏が自律運転ブロックチェーンを提供する新しいAIスタートアップにシリーズA投資170万ドルを調達

2019年5月29日 – Kenneth Turan techcrunch.com

「ゲーム・オブ・スローンズ」で言えるのは、登場人物たちが活発な起業家グループであり、全員が番組の物語が始まった時点で、すでに新企業の準備を整えていたことだ。このドラマの作者であるDavid Benioff氏とD.B.Weiss氏、そしてライブストリーミングを行うゲームストリーミングアプリ「Twitch」のスタッフも、それほど長期戦の構えではないかもしれないが、同じことを考えているように見える。

実に良い行いだ。第一に、ラニスター家は「手」を手に入れた。エグゼクティブプロデューサーとしてHaylie Duff氏を迎え入れたのだ。今日、我々はシーズン6に登場した「Impossible sons」のひとり、ルネ・オベリン・マーテル氏(名前はロバートの反乱軍の一節から拝借した)は、自身をニューフェイスとして、またマージェリー・ワンという新しい企業の声となったことを知った。

マージェリーは分散型データマシンだ。実に彼女は、自称ネットワークの取締役会のキャプテンとして活躍し、主導権を握っている。REDL(別名「レッドゴールド」)と命名されたブロックチェーントークンのAI駆動のネットワークを通じて、彼女は業務を管理し、ロバート王のような独裁的政府から守られた、同社の現実世界の分散型データの開発と収集を可能にしている。

これはクールで洒落たコンセプトだ。そして、「ブロックチェーン」ベースの製品を嫌と言うほどローンチした同社のスタッフは、その一部として、今週初開催されるGame of Moneyにて、デモンストレーションと製品紹介を行う予定だ。これを書いている時点で、同社は270万REDL(ビットコインの形式からなるトークン)を達成した。これは160万ドル以上の価値に相当する。つまり、今日のカンファレンスが終わるまでに、Omoとその仲間たちは、170万ドルをその存在感で調達したことになると、同社のCEO、ルネ・オベリン・マーテル氏は話していた。

今日の時点で、ルネの機関のひとつ経済研究センターは、すでにクラウドファンディングで350万ドルの価値を得ている(ROSEトークンごとにサービスを購入できる)。

現実世界の事業面では、マーテル氏がGlitrex Logisticsを設立した。これは、エンジニアのJon Anderson氏と、同社のCOO、Lucas Pirkis氏との共同創設だ。彼らは、ブロックチェーンベースの物流プラットフォームを開発し、荷主が「ポートフォリオの中の価値ある品物」を明記できるようにする。さらに、品物の価格とともに、特定品質の品物や、食品や医薬品といった非従来型の品物の情報を得ることができる。

同社は、ROSEトークンをどう使うのか?当面の目標は、配送、市場への品物の投入方法を含む、影響力が及ぶ範囲の解体だ。そして、自己改善と成長のためのコミュニティを構築する。

これは、NBC Entertainment会長であるNeal Baer氏の未来の流通に関する意見を反映したものだ。最近のブログ記事で、彼は、モノのインターネットと人工知能が統合されて「従来型のメディアと娯楽コンテンツの収益力」の喪失後の新しい経済システムを創造すると書いている。そして、次なるイノベーションと流通は「モノのイターネットによるパワー」で推進されると業界のリーダーたちに説いている。

もしそうなら、そこには未来の娯楽の気配が感じられる。単に新たな収入源であるだけではなく、能力の王国であり、アルゴリズムベースのアルゴリズムの衝撃とは一線を画するものだ。娯楽とファッションは別物だという人もいるが、結果は、登場人物が作家の才能ではなく役者の才能に基づいて発生する出来事に応じて台頭する複雑な世界になり得る。

上でも述べたが、みなさんもGroverでフェイク記事を作成できる

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(翻訳:金井哲夫)

大統領選後の暴動でインドネシア政府がインスタなどFacebook系SNSをブロック

ソーシャルメディアに厳しい態度を取る国にインドネシアが加わった。大統領選挙後に起きた暴動で死傷者が出たことを受けてインドネシア政府はInstagram、WghatsAppの利用を一部制限した。

米国時間5月22日、インドネシア居住の多数のユーザーがテキスト以外の町メディアのメッセージをWhatsAppで送ることが難しくなっていると報告している。WhatsAppは同国でもっともポピュラーなチャットアプリだ。またFacebookのメディアも規制のターゲットなっている。#instagramdownというハッシュタグがTwitterユーザーの間で急上昇しているところをみるとInstagramもへの投稿も困難となっているようだ。

政治、法律、セキュリティー調整担当大臣のWiranto氏は記者会見でインドネシア政府はソーシャルメディアへのアクセスを制限しており、「事態の平静化を確保するため(SNSの)一部の機能を無効にしている」ことを確認したとCoconutsが報じている。

Rudiantaraコミュニケーション大臣は、以前からFacebookのメディアに批判的だったが、「ビデオや写真をWhatsAppにアップロードしようとすると相当時間がかかるだろう」と警告している。

WhatsAppとInstagramの双方を所有しているFacebookはまだインドネシア政府によるブロックを公式に確認していない。ただし「インドネシア政府と話し合いを続けている」ことは認めた。TechchCrunchの取材に対し政府のスポークスマンは次のように回答した。

インドネシア政府はジャカルタで治安上の問題が発生していることを認識しており、対処中だ。われわれはあらゆる機関を動員して家族友人との会話その他重要な情報への公衆のアクセスとコミュニケーションの確保に務めている。

インドネシア在住の多数のWhatsAppユーザーがTechCrunchに述べたところによれば、写真、ビデオ、ボイスメールなどテキスト以外のメッセージを投稿することができなくなっている。ただしWi-Fi網またはVPN経由ならこの制限にかからない。

インドネシアでは5月21日に、大統領選挙の結果が発表さた後政治的緊張が高まっていた。現職のジョコ・ウィドド氏がプラボウォ・スビアント氏を破ったことについて、スビアント氏はこの選挙結果を不当とてし憲法裁判所に訴えると述べた。

昨日、ジャカルタ州の抗議行動が暴動に発展し、少なくとも6人の死者と200人以上の負傷者が出た。地元メディアによれば、この暴動にはソーシャルメディアを利用して拡散されたフェイクニュースが大きな役割を果たしたという。

5月22日のジャカルタ暴動で警官隊に投石するデモ参加者(写真:ADEK BERRY / AFP)

サービスが当局によって強制的に遮断される経験はFacebookにとってもはや珍しいものではなくなっている。同社のサービスは多くの地域でフェイクニュース拡散の有力チャンネルの1つとなりっており、4月にはスリランカでも利用制限を受けた。 このときはテロリストの攻撃を防ぐためにサービスは数日間完全に遮断された。今週インド政府は、総選挙に関連して、Facebookがフェイクニュースの拡散防止に充分な努力を払っていないとして懸念を表明した。WhatsAppはインド最大のチャットサービスで月間ユーザーは2億人だという。

Jakarta Post(ジャカルタポスト)の記事によれば、先週、ルディアンタラ情報通信大臣は議会の委員会で次のように証言している。

Facebookは「政府の指示を遵守している」と言う。しかし我々が削除を要請した無数の記事のうち、実際にFacebookが削除した記事はほんのわずかだ。Facebookは間違いなく最悪だ。

画像: ARUN SANKAR / Getty Images(画像に編集あり)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

トランプ大統領、Googleの検索は“歪んでいる”と怒りのツイート

トランプ大統領が就任して以来、いくつかのテック大企業が大統領の攻撃の対象となっているが、これまでのところGoogle への攻撃は最も長期にわたるものとなっている。トランプ大統領はワシントンD.C時間で午前5時半までにいくつかツイートした。その内容とは、“Trump News”とタイプしての検索結果にアルゴリズム的偏りが見られる、というものだ。

いや、大統領は“algorithmic(アルゴリズム的)”という4音節の言葉は使っていない。しかしおそらくツイート時点ではまだその日最初のコーラは飲んでいなかっただろう。

怒りに満ちたツイートでトランプは「“Trump News”と検索をかけた結果の96%は全国展開する左翼メディアのものだ」と、根拠となるソースを明らかにしないまま具体的に主張している。続けて「Googleなどは保守派の声を抑圧し、情報や良いニュースは隠している」と、根拠のない主張を展開した。

Guardianは、96%という数字はPJ Mediaのウェブサイトに週末に掲載された記事からきているのだろう、とみている。その記事とは、“Trump” という言葉でGoogle検索をかけた結果トップ100の“非科学的”調査では、“右翼寄りのコンテンツに対し偏りパターンが認められる、というものだ。

トランプは“こうした状況に対処する”という警告でツイートを締めている。ただし、具体的に何をするつもりなのか示してはいない。Twitter で怒りながら方針を示すというこのやり方は、トランプのトレードマークとなっている。弾劾のささやきが聞かれるようになり、政治的背景が広がりをみせる中で、トランプに関する否定的なヘッドラインに対して自ら批判を展開するというのは、最近彼の周りで起こりつつある法的な問題から注意をそらすための試みといえる。しかし、それが何だというのだろう。

怒りに満ちたツイートは下記の通りだ。

“Trump News”とGoogleで検索すると、フェイクニュースメディアの映像やレポートばかりが出てくる。言い換えると、Googleは私にとってほとんどのニュースが悪いものになるよう操作している。フェイクCNNが圧倒的に多い。共和党や保守派、公正なメディアは締め出されている。違法なのでは?

— ドナルド J. トランプ (@realDonaldTrump) August 28, 2018

“Trump News”という言葉でのGoogle検索の96%が全国展開する左翼メディアのもので、これはかなり危険だ。Googleなどは保守派の声を抑圧し、情報や良いニュースは隠している。彼らは、我々が見ることができるもの、できないものをコントロールしている。これは非常に深刻な問題で、対処する!

— ドナルド J. トランプ (@realDonaldTrump) August 28, 2018

TechCrunchはGoogleにコメントを求めた(アップデート:GoogleはTechCrunchに対し電子メールで、政治的思想を反映させるために検索結果が歪められたり、操作されたりしているという考えに真っ向から反論する声明を明らかにした。

Googleの広報は下記のように述べている。

ユーザーがGoogle検索バーに調べたいことをタイプするにあたり、我々のゴールはユーザーが最も関係のある答えをものの数秒で得ることができるようにすることだ。検索は政治アジェンダを設定するために使われるものではなく、検索結果が特定の政治的イデオロギーに偏ることはない。ユーザーの質問に対し高品質のコンテンツを網羅できるよう、我々は毎年、アルゴリズムに何百もの改善を加えている。我々は引き続き、Google検索を改良し、政治情勢を操作するために検索結果に順位をつけたりするようなことは決して行わない。

皮肉にも、トランプのGoogle攻撃ツイートの後に“Trump News”で検索をかけてみたら以下のような結果が表示された。トップストーリー欄に、右翼系ニュース組織として知られるFox Newsがきている。つまり…

Googleの検索結果が個人の検索動向に左右されるということをトランプが知っているかは定かではない。そして、トランプが自身についてのニュースを検索するとき、もし自身についてのたくさんの悪いニュースを目にするとしたら、フロイドなら、トランプが絶えず嫌いだと明言し“フェイク”だと主張しているニュースソースと自己陶酔妄想のつながりを解くのはたやすいことだろう。しかし、繰り返しになるが、それが何だというのだろう。

もちろん、トランプがここで主張していることの大部分は紛れもなくナンセンスだ。特に彼の“がん”となっている’キャッチフレーズ’フェイクニュース’は、真実かどうかは関係なく、トランプの意に沿わないもの全てに使われている。

しかし、トランプの主張の中で一つだけ真実のものがある。Googleが西洋諸国において検索分野で圧倒的シェアを誇っている(欧州では非常に優勢である)ことを考慮したとき、Googleがおそらく“見るもの、見えないものをコントロールしている”ということだ。そして、ほとんどのインターネットユーザーが、Googleの検索結果ページなしにクリックすることはないだろう。もしくは、トップニュースの結果をブラウズさえするのではないか。

ゆえに、必然的にGoogleのアルゴリズムが作り出す情報のヒエラルキーは、情報を浮上させたり定着させたりすることができる。別の言葉に言い換えれば、Googleの最初のページに登場しなければ、そのまま残り続けるということはできない。

見るもの、見えないもののコントロールについてのGoogleの影響力に関し、もう一ついい例がある。近年ヨーロッパにおいて、Googleは個人に関係する特定の検索結果を、要求があれば索引から外している(要求をレビューしたのにちに決定している)。これは欧州の最高裁判所が定める法に則るためだ(いわゆる、忘れられる権利だ)。これにより、公の人ではない個人に関する特定のデータスポットが多くの人の目にさらされる、ということが起こりにくくなっている。

一つの企業が、情報の入手をめぐり影響力を持つ(そして世論を形成する可能性もある)のは懸念材料だ。

特にGoogleのアルゴリズムを活用した検索エンジンは独占状態のブラックボックスで、情報の精査がフェアなものなのか、あるいは適切なものなのか外部は知る由もない。(繰り返しになるが、欧州ではGoogleは買い物検索でライバル社のものより自社の製品を多く宣伝したとして、罰金を科せられている。その後、Googleは独占禁止のルールに従って検索結果を変更した。論争の余地は残るものの、法律的には議員にアピールするようなものとなっている)。

なので、Googleが情報回復プラットフォームでの人気度を使って奇妙な力を作用させることは可能である、という点でトランプは正しい。

トランプが独断で選び、自己本位で物事を考えた主張ー例えば、96%が偏っているとしたことーには全体的に根拠がない。この96%という数字は、米国の保守系ニュースブログが実施した、非科学的な調査に基づいている。そのあたりを適切に判断しなければならない。

それにも増して、西洋社会において一つの営利目的の企業がGoogleのように独占的かつメーンストリームにあると、ユーザーの大多数にとってさほど有益でないものにするために故意的にそして体系的に政治的偏見をそのアルゴリズムに組み込むという考え方は、正直馬鹿げている。

もしそうだとしたら、テック企業のプラットフォームが全く逆の問題を抱えているだろう。プラットフォームが個人向けにカスタマイズされたものだけを提供し、人々に1つの政治的思想しか与えなければ、ユーザーのイデオロギーの視野は狭くなってしまう(脇道にそれるが、こうした手法はトランプ現象そのものを説明するのに使えるものだ)。

にもかかわらず、大統領はテック企業をツイッター上でのサンドバッグとし続けている。例えば、先月、彼は共和党ユーザーを“シャドーバン”にしたとしてTwitterを非難している。Twitterがすぐさま出した否定する声明では、「我々はシャドーバンはしない。ユーザーはいつでもフォローするアカウントのツイートを閲覧できる(そうしたツイートを閲覧するためには、直接彼らのプロフィールにいくなどしなければならないが)。そして当然のことながら、我々は政治的な考え方やイデオロギーに基づいてシャドーバンすることもない」。

確かなのは、トランプが己の怒りを自ら悪化させたというニュースは今後ますます大きなものになり、ツイートは確実に拡散するだろう。

アップデートThe Hillによると、ホワイトハウス経済アドバイザーのLarry Kudlowは記者団にトランプのツイートの真意について尋ねられ、Google取り締まりの可能性を“調査する”と述べた。

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(翻訳:Mizoguchi)

売上と共に増大するテクノロジー企業の社会的責任

主要プラットフォームが成長を続けるなか、FacebookやApple、Google、Amazonをはじめとする大手企業は人類全体にまで影響を及ぼすようになった。そしてその影響はポジティブなこともあれば、そうとは言えないときもある。

そのため大手のプラットフォーマーは、ユーザーの行動を把握するだけでなく、どんな場合にユーザー(もしくはプラットフォーマー自身)が不正をはたらいたり、悪意を持ってサービスを操作したりするか、ということを理解しなければならない。同様に、AIのような個別のテクノロジーやそのほかの先進的な技術、そしてそれらの影響についても各企業が責任を負わなければならないのだ。

これこそが、テキサス州オースティンで先週行われたSouth by Southwest(SXSW)に共通するテーマだった。

勢いを増すAI議論

先述の通り、各プラットフォームがこの問題に深く関わっている一方で、テック界のアイコン的存在であるイーロン・マスクは、SXSWのQ&Aセッションのなかで、AIの暴走に対して不安の声を挙げた。彼は、狭義の意味での(そしてあまり賢くない)AIの時代が近いうちに終りを迎え、もっと汎用性の高いAIの時代が訪れると考えているのだ。特にマスクは、強力なAIが発展をとげるうちに、いずれ人間と同じような能力を持った機械が誕生することを懸念している。なお、既に弊誌のJon Shieverが指摘している通り、もちろんマスク自身は自らが構築してきた企業群を、来るべき終末の時への対策として考えているようだ。

SXSWに登壇したイーロン・マスクとJonathan Nolan(Photo: Getty Images/Chris Saucedo)

「狭義の意味でのAIは種の存続を脅かすレベルのものではなく、その影響はスキルの転移や職業の喪失、兵力の増強といった程度――つまり人間の存在を揺るがすような根本的な影響力は狭義のAIにはない。しかしデジタル・スーパー・インテリジェンスについてはそうは言えない」とオーディエンスに向かって語ったマスク。

さらに彼は、人類への影響という点において、未来のAIは核兵器をも上回るかもしれないと述べた。

テック企業の責任

あなたがマスクの意見に賛同するにしろしないにしろ、はたまた彼が自分のビジネスを推進するために虫のいいことを言っていると考えているにしろ、マスクはテクノロジー界のスタートアップ、そして大手起業が共に考えなければならない責任について触れていると言えるのではないだろうか。

少なくとも、CNNのDylan ByersとSXSWのステージに上がったAppleのEddy Cueはそう考えているようだ。彼はインタビューのなかで「テクノロジーは人類の可能性を広げる素晴らしいものだが、それ自体が善というわけではない。つまりテクノロジーを生み出す人たちがその方向性を決めるのだ」と語った。

確かにTwitterの共同創業者たちは、10年以上前に同サービスを作ったときに、そのうちボットが誕生して選挙に影響を与えることになるとは思ってもいなかっただろう。しかし時間の経過とともに、Twitterだけでなく主要プラットフォームすべてに関し、ユーザーはさまざまな動機を持ってサービスを利用しているということが明らかになった。そして各プラットフォーマーは、一部のユーザーが他の人たちを操作するためにサービスを使っていることがわかった時点で、何かしらの対策をとらなくならなければいけなくなったのだ。

SXSWの壇上で話すAppleのEddy Cue(Photo: Ron Miller)

ByersがApple以外の企業について何度も質問したにもかかわらず、CueはFacebookやGoogleといった企業の内情については知らないため、彼自身はAppleについてしか話すことができないとその質問をかわした(Cueは具体的な競合の名前さえ挙げなかった)。「Appleはあなた(Byers)が挙げたような企業とは違う。私たちは顧客のプライバシーを最重要事項として考えている」(Cue)。また彼は、Appleは広告企業ではないため、収集するデータの量もプラットフォーマーより少なく、「ユーザーの購買行動には興味がない」とさえ語った。

「フェイクニュース」対策としてのAI活用の課題に関するパネルディスカッション中には、Facebookのグローバル・ポリシー・ディベロップメント・チームのAndy O’Connellが、不正な操作が行われているとわかったときに、Facebookは何らかのアクションをとる責務を負っていると述べた。さらに、「フェイクニュースは社会全体の問題である一方で、私たちはテクノロジーの力を使って(その影響を抑える)対策を練っているほか、投資によって改善できる部分もある」と語ったO’Connel。彼によれば、Facebookの共同創業者・CEOマーク・ザッカーバーグは、プラットフォームの安全性を高める上でフェイクニュースの拡散が課題になっており、Facebookに流れ込む虚偽もしくは誤解を招くようなニュースの数を減らしていかなければならないと考えているようだ。

テクノロジーの限界

O’Connellの指摘通り、フェイクニュースはFacebookやテクノロジーの力だけでどうにかできるものではない。これは社会問題であり、社会全体が問題解決にあたらなければいけないのだ。もちろんテクノロジーがその助けになることもあるが、すべての問題についてテクノロジー頼みというわけにもいかない。ここで難しいのは、あるテクノロジーが誕生した時点では、それがどのような行動をとるかや、人がどのようにそのテクノロジーを使うかといったことを予測できないということだ。

(Photo: Ron Miller)

結局のところ、この記事で触れたような問題(なかには問題になるとさえ思われなかったものさえある)の解決は一筋縄ではいかない。どんなに善意を持って問題の解決にあたったとしても、すべてのアクションやその反応によって、さらに予想だにしない結果が生まれる可能性さえある。

しかし、あるテクノロジーがもたらす膨大な経済的利益や社会への影響に見合った責任を受け入れられるかどうかは、そのテクノロジーを生み出した企業にかかっている。この点についてCueは、「全員に(あるところで境界線をひく)責任がある。これこそAppleが行っていることであり、私たちがAppleという企業を運営する上で大切にしていることだ。今日の世界では誰もが責任を負わなければならず、私たちもそうしようとしている」と語った。

そうはいっても言うは易し行うは難し。暴走を止めるには十分な思慮や緻密さ、対応力が必要であり、ひとつひとつの決断がもたらす影響についても吟味しなければならない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

「フェイクニュース」拡散の原因はボットではなく人間だった――MITが発表

嘘の伝わる速さは何世紀にも渡って語り継がれており、1710年の時点で既にジョナサン・スウィフト(『ガリヴァー旅行記』の著者)が「まず嘘が広まり、真実はその後をノロノロとついていくものだ」という言葉を残しているほどだ。そうはいっても、このような事実を示す証拠というのはこれまでほとんど存在しなかった。しかし、ここ数年のソーシャルメディアの様子を見ると、嘘が真実に大きな差をつけながら信じられないほどの速さで広がっており、もはやそれが当然のようにも感じられる。

そしてこの度、MITが10年分ものツイートを分析した結果、嘘が真実よりも速く広まるだけでなく、ボットやネットワーク効果がその原因とは言い切れない――つまり、私たち人間が嘘を広めている――ということがわかったのだ。

3月9日、Scienceで発表された同研究では、ツイッター上で拡散された(もしくは拡散されなかった)10万件以上のニュース(第三者機関によって虚偽のニュースかどうかが判別されているもの)がどのように伝播していったかに焦点があてられている。結果はレポートの要旨(Abstract)に記されている通り、「どのカテゴリーにおいても、嘘は真実よりも遠く、早く、深く、広範囲に広がっていった」。

Image: Bryce Durbin/TechCrunch

この結果を見て、ロシアや時系列に並んでいないニュースフィード、選挙などを槍玉に挙げるのは早計だ。というのも、虚偽のニュース(政治的な意図をはらんだ、いわゆる「フェイクニュース」と区別するためにあえてこの言葉を使用する)がこんなにも速く拡散する背景には、私たち人間が存在するからだ。

「嘘が真実よりも広まりやすいのは、人間が正しい情報よりも虚偽のニュースをリツイートしやすいからだということを調査結果は強く示している」と同レポートの共同著者Sinan Aralは語る。

その一方で、彼は次のように注意を促す。

「もちろん、人の頭の中に入り込んで、何らかの情報を消費したり、リツイートしたりする過程を調査したわけではないので、本研究ではまだ問題の深層部にはたどり着けていない。そもそも、どのように虚偽のニュースがネット上で拡散するかについての大規模な調査はほとんど行われていないため、まだまだ継続的な努力が必要だ」

とは言うものの、「人間は虚偽のニュースを拡散しがちだ」というMITの研究結果からは、極めてストレートかつ強烈な印象を受ける。

残念ながら、人間はアルゴリズムや価格モデルのようにアップデートできるものでなければ、報道機関のように無視できるものでもないため、この結果にはある種の歯がゆさも感じる。というのも、レポート内でも指摘されているように、明確な解決策など存在しないのだ。だからといって、問題から目を背けるべきではない。

10年分のツイートを解析

MITの研究プロセスは次の通り。なお、共同著者の1人であるSoroush Vosoughiによれば、「フェイクニュース」に関する騒ぎが起きるずっと前から同研究は進められていたようだ。

まず研究チームは、2006〜2017年の間に公開された何百万件ものツイートを集め、6つのファクトチェッカー(Snopes、PolitiFact、FactCheck.org、Truth or Fiction、Hoax Slayer、About.com)の少なくともいずれかひとつで真偽判定が行われた12万6000件のニュースと関連があるかどうかを調査。その結果に応じてツイートを分類していった。

その後、ツイート・リツイート数、一定のエンゲージメント数に達するまでの時間、情報元となるアカウントから見たリーチ範囲といった指標をもとに、各ニュースがどのように広がっていったかを観察。

最終的に、各指標をもとに「滝」のようなグラフが生成された。例えば、急激に拡散された後、すぐに話題から消え去ってしまった情報は、横の広がり(=拡散度合い)はあるものの、深さ(おおもとのツイートから何層にわたってリツイートされたか)はほとんどなく、バイラル性も低い。

そして虚偽のニュースと真実の「滝」を比較したところ、少数の例外を除いて、虚偽のニュースの方がより多くの人に、より速く広まり、何層にも渡ってリツイートされていることがわかった。

しかもこれは数%といったレベルの差ではない。具体的な数値については以下を参照してほしい。

  • 真実は1000人以上にリーチすることさえめったにない一方で、虚偽のニュースのうち拡散度合いで上位1%にあたるものは、ほぼ常に1000〜10万人もの人びとにリーチしていた。
  • 真実が1500人にリーチするには、嘘よりも6倍近い時間がかかる。
  • 虚偽のニュースは広範に拡散し、グラフのどの箇所においてもリツイート数で真実を上回っていた。
  • 政治に関する虚偽のニュースはすぐに何層にもわたってリツイートされ、結果的に他のカテゴリーの虚偽のニュースが1万人にリーチするよりも3倍近い速度で2万人以上ものユーザーにリーチした。

以上の通り、どの角度から見ても虚偽のニュースの方が真実よりも何倍、もしくは何乗も速く、多くの人にリーチするということがわかった。

反対意見

上記の研究結果の考察や、研究者が考える解決策、将来の研究アイディアについて触れる前に、想定される反対意見について考えてみよう。

ボットが原因なのでは? 結論から言うとボットの影響はほぼない。研究者はボットを検出するアルゴリズムを使って、明らかにボットによると思われるツイートは事前に取り除いていた。また、ボットの行動パターンを別途精査し、収集したデータをボット有のパターンとボット無のパターンでテストしたが、先述の傾向に変化は見られなかったのだ。この点についてVosoughiは「ボットもわずかに真実より虚偽のニュースを広めやすいということがわかったが、我々の結論に影響を及ぼすほどではなかった。つまり拡散度合いの差はボットでは説明がつかない」と話す。

「虚偽のニュースの拡散にはボットが深く関係している、という最近よく耳にする説とは真逆の結果が研究から明らかになった。これはボットの影響を否定するものではないが、少なくともボットを嘘拡散の原動力と呼ぶことはできない」とAralもVosoughiに賛同する。

ファクトチェックサイトにバイアスがかかっているのでは? 確かにまったくバイアスがかかっていないファクトチェッカーというのは存在し得ないが、研究者が参照した6つのサイトに関し、ある情報が真実かどうかの判定は95%以上の割合で共通している。客観性や証拠を重視するこれらのサイトすべてに共通のバイアスがかかっていると考えるのは、もはや陰謀論の域とさえ言えるだろう。それでも納得できない人は次のAralのコメントを参照してほしい。

「ファクトチェッカーを含め、研究対象に選択バイアスが生じないよう私たちは細心の注意を払っていた。その証拠に、メインの研究とは別に1万3000件のニュースから構成されるもうひとつの対照群について独自に真偽を確認し、そのデータを分析したところ、ほぼ同じような結果が得られた」

このファクトチェックはMITの学部生3名が行ったもので、判定結果は90%以上の割合で共通していた。

虚偽のニュースの拡散には大規模なネットワークが関係しているのでは? レポートによれば、現実はその逆のようだ。

ネットワークの構造や各ユーザーの特徴から虚偽の情報が拡散しやすい背景を説明できるのでは、と考える人もいるかもしれない。つまり、虚偽の情報を広める人ほどフォロー数やフォロワー数、ツイート数が多く、認証バッジを取得している人や昔からTwitterを利用している人の割合も多いのではないかという説だ。しかし嘘と真実の拡散具合を比べると、実はその逆が正しいということがわかった。

虚偽のニュースを広めやすいユーザーの特徴は以下の通り。

  • フォロワー数が少ない
  • フォロー数が少ない
  • ツイートの頻度が低い
  • 認証ユーザーの割合は少ない
  • アカウントの保有期間が短い

「このような特徴が見られたにもかかわらず、虚偽のニュースがより速く、広く拡散した」と研究者は記している。

なぜ虚偽のニュースの方が速く拡散するのか?

この問いに対する答えは憶測でしかないが、少なくとも同研究に携わったMITの研究者の「憶測」は、データに支えられたものであるという事実は無碍にできない。さらに、嘘の大規模な拡散は最近見られるようになった現象で、十分に研究されていないとはいえ、幸運なことに社会学や心理学からはいくばくかの示唆が得られる。

「コミュニケーション学の分野では、特定のニュースが拡散する理由について、既に包括的な研究が行われている」と3人目の共同著者Deb Royは言う。「人はポジティブなニュースよりもネガティブなニュース、平和なニュースよりもショッキングなニュースを広めやすい傾向にあるというのは既によく知られているのだ」。

もしも本当に人が目新しくて(Royいわく「目新しさこそが最重要要素」)ネガティブ(「血が流れればトップニュースになる」現象)なニュースを広めやすいとすれば、残された疑問は虚偽のニュースが真実よりも目新しく、ネガティブかどうかという点だけだ。

Photo: SuperStock/Getty Images

そこでMITの研究者は、一部のユーザーのアクティビティを分析し、虚偽の情報が含まれるツイートと真実しか含まれていないツイートの目新しさを比較した。すると確かに、「目新しさに関するどんな指標と照らし合わせても、虚偽のニュースが真実を上回る」ということがわかったのだ。

また、ツイート内で使われた言葉や関連する感情に注目したところ、虚偽のニュースには驚きや不快感を示すリプライがついていた一方、正しい情報へのリプライには悲しみや期待感、喜びや信頼といった感情が込められていることが多いとわかった。

まだまだ多くの検証が必要とはいえ、本研究からは虚偽のニュースは真実よりも速く拡散し、前者は後者よりも目新しく、ネガティブだという結論が導き出された。あとは「目新しくてネガティブだからこそ虚偽の情報は速く拡散する」という両者の因果関係を証明するような研究の発表が待たれる。

私たちには何ができるのか?

本研究で示された通り、虚偽のニュースを人間が広めているとすれば、それを防ぐためにどうすればよいのだろうか? 冒頭のジョナサン・スウィフトの言葉通り、これは決して最近生まれたものではなく、人びとはこれまで何世紀にも渡ってこの問題に対して何らかの策を講じようとしてきた。しいて言えば、問題のスケールには違いがあるかもしれない。

「何百万人――複数のプラットフォームをまとめると何十億人――もの人びとが、リアルタイムでニュースの拡散度合いに影響を及ぼすというのは、これまでなかったことだ」とRoyは言う。「ネットワークで繋がった人びとの行動についてのみならず、それがニュースや情報の伝播にどのような影響を与えるのかという点についてはさらなる研究が必要だ」。

さらにRoyはこの問題を人間の健康状態のように捉えている。実はJack Dorsey(Twitterの共同創業者でCEO)も、Royが設立した非営利組織Corticoのブログポストを引用元として、同様の比喩を用いた以下のツイートを投稿していた。

我々はコミュニティー全体の健康状態やオープンさ、さらにはプラットフォーム上で交わされる会話のマナーの向上に努めるとともに、その進捗に責任を負うと約束する。

またRoyをはじめとする研究者たちは、TwitterはもちろんFacebookやInstagram、オンライン掲示板といったプラットフォーム向けの「健康診断機」の開発にあたっている。しかしRoyは、これらのプラットフォームは氷山の一角に過ぎず、インターネット全体の「体調」を向上するにはさらなる努力が必要だと指摘する。

この点に関し、Aralは経済的な活動を例に挙げ、「ソーシャルメディア上での広告活動が虚偽のニュースを拡散するインセンティブとなっている。というのも、広告主にとってはビュー数がもっとも大事な指標だからだ」と語る。つまり虚偽のニュースを減らせば広告料も減ってしまうため、プラットフォームの健全化に向けたインセンティブが生まれにくいということだ。

「短期的には虚偽のニュースの拡散を止めることで金銭的なデメリットが発生するが、だからといって野放しにしておくと長期的な問題が発生してしまう。例えば、あるプラットフォームが虚偽のニュースや不適切な会話で埋め尽くされてしまうと、ユーザーはそのプラットフォームを一切使わなくなってしまうかもしれない。そういう意味では、FacebookやTwitterには、長期的な利益を確保するためにこの問題に取り組むインセンティブがあると考えている」(Aral)

しかし問題の根幹に人間だけでなく、アルゴリズムや広告料も関係しているとするならば、どうすればよいのだろうか?

「大事なのは、ユーザーの手を一旦止め、自分たちの行動がどんな影響を持ちうるか考えさせることなのだが、行動経済学の世界でもよく知られている通り、これはとんでもなく難しいことだ」とRoyは言う。だが、もしもそのプロセスが簡単かつどこにでも導入できるとすればどうだろうか?

「スーパーへ買い物に行くときのことを考えてみてほしい。すべての食べ物には、製造工程や製造・販売元、ナッツが含まれているかといった情報を記したラベルが貼り付けられている。しかし情報にはそんなラベルは存在しない。『この会社は虚偽の情報を発信することが多いのか?』『このメディアは3つの独立した情報源と照らし合わせて真偽を判定しているのか(それとも1つだけか)?』『何人がこの報道に関わっているのか?』といった問いに対する答えはニュースには含まれておらず、私たち消費者はただメディアが提示する情報を消費するしかないのだ」(Aral)

さらにAralは、ある情報がTwitter上で拡散する前にその信頼性を測定できるようなアルゴリズムをVosoughiが考案したと語った(Vosoughi本人は謙遜からか、ただ忘れていたのか、取材時にはこの点について触れなかった)。ではなぜFacebookやGoogleのように、膨大なデータや機械学習・言語に関する知見を持ち、プラットフォーム上の情報や活動、エンゲージメント、さらにはサイト全体に関してさまざまな変革を経てきた企業が、Vosoughiのような取り組みを行わないのかという点については疑問が残る。

この問題について、議論は活発に行われているが、なかなかそれが具体的なアクションには繋がっていないようだ。さらにRoyは、TwitterやFacebookといったサイトからは、特効薬のような解決策は生まれないだろうと釘を刺す。

「ソーシャルメディアを運営するためには、さまざまな点に注意しなければいけない。プラットフォーム自体はもちろん極めて重要だが、それ以外にもコンテンツを作る人や広告主、インフルエンサー、そしてユーザーが存在する。彼らの役割はそれぞれ異なるため、ポリシーの変更や新たなルール・ツールの導入による影響は、ステークホルダーによって変化する」

「それ自体は悪いことではない。というのも、そうであるからこそ私たちのような研究者がとやかく言えるのだから」

データセットについても同じことが言えるだろう。なお、本研究で使われたデータは(Twitterの同意のもと)公開される予定なので、誰でもMITの研究結果を確認したり、さらに考察を深めたりできる。

今後、本問題についてさらなる研究が行われることを期待したい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

フェイクニュースの次の10年に関する18の悲観的意見(と5つの楽観的意見)

フェイクニュースのような話題、もしくはより広いインターネット上の信頼と検証の問題は、複雑なものだ――対立意見の源である。場合によっては、いかなる結論を出す前にも、聞き取り調査を行って、人びとが何を考えているのかを感じとる必要がある。これが今回Pew Internetが行ったことだ、テクノロジー、インターネット、社会政策の何千人もの専門家に質問を送り、今後10年間に物事がどのように進むと考えているかを尋ねた。彼らは決して楽観的ではなかった

正確には49%の人が今後10年で情報環境は改善するという側に印をつけて、51%がその反対の立場だった。というわけで、結果としてはほぼ半々だ。しかし、彼らが送り返してきた何百ものコメントは、悲観的な方に強く傾いているように見える。ここで語られている楽観主義は、むしろ淡い希望と表現される方がふさわしい。

参考までに、調査実行者によって引き出された結論の1つは「人間は本質的に、利己的であり、同族の絆に拘り、慣れ親しんだものに信頼を置く、騙されやすい利便性の追求者である」ということだ。素晴らしい!

この92ページのレポート(PDF)には多数の興味深い意見が見られるが、そのなかを見渡して一番良いものたちを選び出してみた。正直なところ、私は意図的に「楽観的」なものを除外したわけではないが、楽観的なものの多くはあまりきちんとした意見ではなかった。さて御託はもう十分だろう。さっそくこの陰気な成果物のエッセンスを味わうことにしよう。(とはいえこの報告書は本当に読む価値がある)。

悲観主義者たち

(著者たちの肩書は報告書に記載されているとおり)

研究所所長ならびに大学教授

インターネットは21世紀版「核の冬」に匹敵する脅威だ。にもかかわらず核拡散防止や核軍縮に相当する国際的枠組みは存在しない。人びとに対して、何が真で何が偽りかを判別できるように整理してくれる、信頼できるメカニズムがないために、大衆はその核兵器(インターネット)の破壊力を、最終的には文明社会を腐食させるものとしては把握していない。

Clay Shirky、ニューヨーク大学教育技術担当副所長

「ニュース」は安定したカテゴリーではなく、社会的な取引だ。オバマがイスラム教徒であると主張するのを妨げるシステムをデザインできるような、技術的解決策は存在しないが、人びとがイエス様はあなたを愛しています、と主張することはできる。

ハーバード大学のバークマンセンター for Internet&Society所属の回答者

ネットワーク空間が生み出した出版と消費の民主化は、情報のコントロールもしくはラベリングという意味での意味の有る改善を行なうには、あまりにも広がり過ぎてしまった。人びとは各自の偏見を、そのまま甘やかし続けることだろう。

Mike DeVito、ノースウェスタン大学の大学院研究員

これらは技術的な問題ではない。これらは人間の問題であり技術は単にそれをスケールアップすることに役立ったに過ぎない。にもかかわらず私たちは単なる技術的ソリューションを試み続けている。貧弱な市民の知識と貧弱な情報リテラシーの嵐であるこの災厄を逃れるために、機械学習を使うことはできない。

Tom Rosenstiel、米国出版協会のディレクター兼ブルッキングス研究所のシニアフェロー

プラットフォーム企業がどのような変更を行ったとしても、そしてファクトチェッカーやその他のジャーナリストがどのようなイノベーションを起こしたとしても、騙したい輩はそれらを出し抜いて行くだろう。誤った情報は、自分で修理できる配管問題のようなものではない。それは犯罪のような社会的案件であり、常に監視し調整する必要がある。

Philip J. Nickel、オランダのアイントホーフェン工科大学講師

伝統的なニュースメディアの没落と、閉鎖的なソーシャルネットワークの存続は、今後10年間の間には変わらないだろう。これらが、対話と政治的議論の基礎となる、公開された事実共有の場が劣化した主要因である。

Zbigniew Łukasiak、ヨーロッパに拠点を置くビジネスリーダー

力のある政治家たちが、このゲームをやり方を学んだばかりだ。私は彼らがそれを取り除くために、多大な努力をするとは思えない。

インターネットのパイオニアであり、ICANNの長年のリーダーの1人

インターネット上の情報の「真実性」を向上させるような、強制的な要因が出てくる可能性はほとんどない。

Willie Currie、グローバルコミュニケーション普及の長年の専門家

Facebookのようなプラットフォーム上でのフェイクニュースの明らかな流行は、外部の規制によって処理されるべきだ。技術者たちは技術的な修正に興味があるだけで、問題を真剣に見ようという熱意に欠けている。なので自主規制は成功しないだろう。

Dean Willis、Softarmor Systemsコンサルタント

政府や政治的グループたちは、対象の個人に対する理解を左右する、意図的な誤情報の力を発見したところだ。メッセージは今や壊滅的な精度で調整できるようになった。私たちは、調整された情報の泡の中に沈むことになる。

退職した大学教授

増加した検閲と大規模な監視は、世界各地で公式な「真理」を作り出す傾向がある。米国では、企業による情報フィルタリングが、経済エリートの見方を強要することになるだろう。

Bill Woodcock、Packet Clearing Houseのエグゼクティブディレクター

匿名性と、パブリックスピーチのコントロールの間には、基本的な矛盾がある。そして匿名の発言に重きを置かない国々は、まだそれを国際的な武器とできる自由がある。その一方で匿名の発言に価値を認める国々はそれを全員が知ることができるようにしなければならない、さもなくば自身の原則を維持することができない。

世界有数のエンターテインメントおよびメディア企業の公共政策担当バイスプレジデント

少数の支配的なオンラインプラットフォームは、技術的にも手続き的にも、責任あるシステムを構築するためのスキルまたは倫理センターを持っていない。彼らは、発明が社会に及ぼす影響についての説明責任を避け、複雑な問題に対処できる原則や技術を開発してきてはいない。彼らは、倫理規定や倫理訓練、あるいは哲学を欠いた生物医学または核技術企業のようなものだ。さらに悪いことに、彼らの積極的な哲学は、その発明がもたらし得る潜在的な悪影響を評価し反応することは、彼らのやるべきことではなく、下手をすれば、やってはいけないことですらあるということだ。

北米に本拠を置くエグゼクティブコンサルタント

結局動機付けの問題だ:真実を求める市場は存在しない。大衆には、検証され、審査された情報を求める動機はない。彼らはみな、自分の意見を追認する意見を聞いて嬉しいのだ。そして人びとは、フェイク情報を生み出すほうが、そうしないように努力するよりも、より多く「稼ぐ」(金銭的にも悪名的にも)ことができるのだ。

ステークホルダーエンゲージメント担当バイスプレジデント

信頼のネットワークは、物理的かつ非構造的な対話、議論、および観察を通したときに、最もよく生み出されるものだ。テクノロジーは、そのような直接的な相互作用の機会を減らし、人間の対話を崩壊させているが、その一方で私たちにこれまで以上にコミュニケーションしているという「気分」を与えている。

Karen Mossberger、アリゾナ州立大学公文学部教授

フェイクニュースの広がりは単なるボットの問題ではなく、人びとが批判的思考や情報リテラシースキルを発揮するかどうかという、大きな問題の一部だ。おそらく、最近のフェイクニュースの急増は、メディアに対するオンラインスキルへの対処と、私たちの教育システムの中の基本的な教育力に対する対処への、目覚めを促すものとなるだろう。一般にオンライン情報は、様々な信頼性の、ほぼ無限に多様な情報源を持っている。テクノロジーがこの問題に対処しようとしているが、この修正はテクノロジーだけの問題ではない。

Sally Wentworth、Internet Societyのグローバル政策開発担当VP

いくつかの大型プラットフォームが、オンラインの過激派、暴力、そしてフェイクニュースに関する問題のいくつかに対する、インターネットソリューションを提供し始めていることは心強いことだ。しかし、結局私たちはこうした機能を、利益を求め、社会的な便益のためには必ずしも行動しない民間企業たちに委託している。私たちの社会的対話を支配する、どれほどの力を彼らに委託してしまっているのだろうか?そしてそれが最終的には、どこにつながっているのかを私たちは意識しているのだろうか?一方では、大きなプレイヤーたちが、ここに来てついに腰を上げて責任を取ろうとしていることは良いことだ。しかし、政府やユーザーや、そして社会が、すべての責任をインターネットプラットフォームに還元するのは性急だ。彼らが私たちのために下した決定に、誰が責任を持つのだろうか?私たちはそうした決定が何かを知っているのだろうか?

MITのコンピュータサイエンスならびに人工知能研究所の研究員

各種の問題は解決策たちが対処できる速度よりも速く悪化する、しかしそれが意味することは、より多くの解決策がこれまで以上に必要とされるということだ。

楽観主義者たち

Adam Lella、comScore Inc.のマーケティング上級アナリスト

過去には、解決不可能に思えた多くの問題もあった(例えば可視性、無効なトラフィック検出、クロスプラットフォーム測定など)が、ここ数年で大きく進歩した。問題を解決せよという大きな圧力が業界からかかっている場合には、方法論が開発され、長期的には問題を緩和するための進歩が達成される。言い換えれば、意志のあるところに、道は開けるということだ。

Irene Wu、ジョージタウン大学のコミュニケーション、文化、テクノロジーの非常勤講師

情報は改善されて行く。なぜなら人びとが大量のデジタルデータを扱う方法に習熟して行くからだ。現在は、多くの人びとがソーシャルメディアで読んだことを素朴に信じている。テレビが普及し始めたときも、人びとはテレビに映るもののすべてが真実だと信じていた。これが人びとが重要な情報やニュースに反応しアクセスする方法だ。それを配布するメカニズムには依存しない。

Googleに長年勤めるディレクター

GoogleやFacebookなどの企業は、利用可能なソリューションの開発に多額の投資を行っている。電子メールスパムと同様に、この問題は完全に排除することは出来ないが、管理することはできる。

MITでテクノロジーと市民参加に関する研究を行っている社会学者

改善に向かう前には悪化しやすいものだが、2016から2017年にかけての情報生態系の問題は多きな変革点となった。そして誤った情報問題に共に取り組まなければならない市民、政策立案者、ジャーナリスト、デザイナー、そして慈善団体たちの行動の契機になった。

Frank Kaufmann、平和活動とメディアと情報に関するいくつかの国際プロジェクトの創設者兼ディレクター

物事はいつでも改善するのだから、ニュースの質も改善する。

真の楽観主義者として数えることができるのは、最後の1つだけかもしれない。

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(翻訳:Sako)

虚偽のニュースをシェアするFacebookページ、広告が購入禁止に

FacebookはフェイクニュースをシェアするFacebookページに対し、より強固な姿勢を取ると発表した。

同社はすでに、SnopesやAP通信などサードパーティの事実調査機関に誤ったニュースの判定を依頼している。(偽ニュースと判断するのは明らかに捏造された記事や虚偽の内容で、意見や偏向の理由で論争されている記事は含まれないことになっている)。また記事に問題があると指摘された場合、そのリンクはFacebook広告を通して宣伝することができなくなるという。

今日(米国時間8/28)同社は、虚偽のニュースを頻繁にシェアするFacebookページに対し、その広告に偽ニュースへのリンクが含まれているかどうかにかかわらず、Facebook広告の購入を一切禁ずるという次なる措置を発表した。

Facebookは昨年、フェイクニュースの拡散に寄与したとして批判を受けた。(同社は現在「虚偽のニュース(false news)という言葉を使用している —— 「フェイクニュース(fake news)」は極めて政治色が強くなり、ほとんど無意味になった)。プロダクト担当ディレクターのRob Leathernは、Facebookは3つの方法で誤ったニュースの対策を行なっていると語った。虚偽のニュースを投稿する金銭的インセンティブの撤廃、ニュース拡散力の弱体化、そして誤ったニュースを見たときに情報に基づいた上での決断ができるよう人々を手助けする3つだ。

今回の場合は、広告の購入をブロックすることで金銭的インセンティブを変えることを意味するとLeathernは述べた。同社は「Facebook広告を通してこのような投稿を行い、虚偽のニュースを拡散するためオーディエンスを獲得するFacebookページ」が存在していることを懸念している。Facebookは広告のポリシーを変えることで、企業がそのようなオーディエンスを獲得することを困難にしている。

Facebookはページが何回、虚偽ニュースのリンクをシェアするとブロックされるかは開示していない。結局のところ、Facebookはユーザーに制度の抜け穴を悪用して欲しくないのだ。Leathernは「もちろんたった一回のシェアではブロックしない。ブロックするのは、複数回にわたって虚偽のニュースをシェアした場合だ」と述べた。

Leathernはまた、広告の購入禁止は必ずしも永久的ではないと語った。Facebookページが偽ニュースの共有を停止すると、広告を再び購入することができるようになる。

 

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(翻訳:Keitaro Imoto / Twitter / Facebook

Twitter、荒らしを防ぐ新オプションを公開――フォローしてないユーザーをミュートできる

トロルが無作法なユーザー名を使って悪意あるリプライを通知タイムラインに割り込ませるようなことが続けば普通のユーザーはTwitterの利用そのものを止めてしまう可能性がある。そこで今日(米国時間7/10)、Twitterでは通知をコントロールする詳細フィルターを強化した。

新しいオプションでは、フォローしていないアカウント一般、フォローしておらず最近登録されたアカウント、フォローしてもフォローされてもいないアカウント等からのリプライを表示させないよう設定できる。下のアニメのように、ミュートしたい相手を「設定」メニューの「詳細設定」から選べる(クオリティフィルターをオンにしてあること)。

これらは3月にTwitterが公開した特定の相手からの通知をミュートできるオプションに追加された。このオプションでこれまでも有効なメールアドレスや電話番号を登録していない相手、プロフィール画像を登録していない相手からのリプライをミュートできた。Twitterは最近、フォローしていないユーザーからダイレクト・メッセージをそのまま表示せず、「リクエスト」フォルダーにまとめるようにしている。

Twitterはユーザーがトロル〔荒らし〕を報告するよう以前から勧めてきた。しかし最近のTwitterのトロルへの対策は、こうした不愉快なユーザーのアカウントを停止し積極的に根絶を図るというより、ミュートすることによって被害者を守る方向にあるようだ。

今日追加されたオプションは正当なユーザーに嫌がらせや脅迫をするようなトロルを追放する役には立たない。しかしトロルは他のユーザーを攻撃する場合新しいアカウントを登録するのが普通だ。またトロルは被害者をフォローすることは少ない。ましてフォローし返されることはまずない。そこでそうしたユーザーからのリプライをミュートできれば被害を局限することはできる。

しかしTwitterがユーザー数、影響力を現在のレベル以上に成長させたいなら、インターネットのごく普通のユーザーが使いやすく、また受け入れられるものにする必要がある。こうした普通のユーザーはメニューの奥深い層に埋め込まれたオプションを探し出して適切に設定したりしないし、ユーザーインターフェイス特有の専門用語も知らない。しかしトロルのリプライは見ればそれと分かるし、そんなサービスには長く我慢していないだろう。

それでもTwitterの本質は世界のさまざまな分野の最新情報をそれぞれの専門家が短くわかりやすい言葉で伝え、また誰もが会話に加われるメディアだ。この目的を達成する上でTwitterは使い方をシンプルに保ちながら安全性を高めねばならない。その間、長年のTwittrユーザーの反感を買う危険性もある。またスパム・ボットやトロルを追い出しつつ、ユーザー数を増やしていいくという.難しい舵取りを求められるだろう。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Facebookがユーザーに「誤解を招く」記事か否かのレーティングを委ね始めた

President Harry Truman holds up a copy of the Chicago Daily Tribune declaring his defeat to Thomas Dewey in the presidential election, St Louis, MIssouri, November 1948. (Photo by Underwood Archives/Getty Images)

投稿に対して「誤解を招く」かどうかをユーザに尋ねる調査は、多くの人が偽のニュース状況に対処するのはFacebookの責任だとみなしていることに、同社が向き合い始めた最新の兆候である。そのソリューションの少なくとも一部は、ユーザーにユーザー自身が偽物であると思うものを尋ねることのようだ。

フィラデルフィアのニュースサイトBilly Pennの編集者Chris Krewsonが気が付いた、この「Facebookサーベイ」は、白人ナショナリストの見解を公然と支持していた有名なナッツ販売員の解雇に関するフィラデルフィア・インクワイアーの記事に、付随していたものだ(そこは小さな町で、皆が皆を知っている)。

「このリンクのタイトルは、どの程度誤解を招くと思いますか?」。記事の下に直接、このような「調査」が出現する。ユーザーはそれを無視したり、単にスクロールしてやり過ごすこともできるが、示される選択の範囲は「全くそうは思わない(Not at all)」から「完全にそう思う(Completely)」の5段階に渡っている。

FacebookはTechCrunchに対して、これが正式な試みであることは認めたが、それがどのように機能するのか、データがどのように使用され、保持されるのかなどの、いくつかの突っ込んだ質問には答えなかった。同社はニュースフィードの一般的な品質をテストするためにこのような調査を利用たり、クリックベイトや偽の記事を見つけるためのルールを定義するために他の指標を利用したりしてきた。これは、そうした2つの手法を直接的に組み合わせた最初の試みであるように見える:古い仕組みで新しい仕事を行うのだ。

fbnewssurvey

この機能は、誤解を招くような見出しを検出するためのアルゴリズムを習得するやり方に対して、Facebookが透明であると見なすこともできるが、同時に同社が望めば独自のやり方でユーザーベースを基本的に無料のデータの豊富な井戸として使用し、バスケットを浸すことができることを示す事例でもある。そしてそのバスケットの中身で、Facebookが何をするのかは、推測の域を出ない。

また、ユーザーはそもそも偽のニュースを伝搬する側でもあるため、その分類をユーザーに委託するのは興味深い決断である。囚人が刑務所を運営するように請われているようにも見えるが、少なくともA/Bテストは行われるようだ。

Facebookは、偽の、誤解を招きやすい、クリックベイトの拡散を行うことが、批判の対象になってきた。CEOのMark Zuckerbergはこの話題に対して個人的な投稿を行なったが、最初の防衛的で否定的な姿勢は問題を分かりにくくして、批判者を怒らせるだけのものだったようだ。1週間後の別のポストは、より建設的だったが、誰も何がなされるべきかを知っていないのが実態だ — Zuckerbergも何かがが変わらなければならないことには同意しているように思えるのだが。

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(翻訳:Sako)