パンデミック下で成長する多種多様なフェムテック企業、従業員への福利厚生としても注目が集まる

女性の健康とウェルネスを支える技術「フェムテック」。McKinsey & Companyによると、2021年のフェムテック領域の資金調達総額は、25億ドル(約2830億円)に到達し、過去最高を記録した。

The dawn of the FemTech revolutio Published by McKinsey & Company(2022/2/14)


女性の健康とウェルネスに特化したVCであるCoyote Venturesと、フェムテック領域の情報配信やスタートアップサポートを行うNPO団体であるFemtech Focusの予測によれば、フェムテック市場は2027年までに1兆1860億ドル(約138兆円)の市場規模にまで成長するという。

そんなフェムテック業界だが、その注目領域も変化している。Crunchbaseによると、過去5年間は妊娠と子育てがVCの資金調達の最大のシェアを占めていたが、2021年に最も投資を集めたのは、プライマリ・ケアや予防医療領域だった。不妊や更年期など、困った時に頼るフェムテックから、すべての女性が常に自分の健康を守るために必要不可欠な技術になりつつあることがわかる。

欧米での盛り上がりを受け、日本でも注目が集まる領域だが、今回は、パンデミック後も続くと予測されるフェムテック業界のトレンドと注目領域について解説する。

新型コロナの影響で広まった手軽にできる自宅検査・治療

パンデミックによって、病院に行きづらくなったことを受け、遠隔医療や自宅検査キットが注目を集めた。これまで当たり前に診察や検査のために病院に行っていた人々が、パンデミックによって自宅でもできるという便利さを経験した。安全に病院に行けるようになっても、人々がこの便利さを捨てるとは考えにくい。実際に、2021年のMcKinsey & Companyの調査によると、調査対象の消費者の約40%が、今後も遠隔医療を利用すると回答しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前の遠隔医療利用者の11%から上昇している。

膣内マイクロバイオーム検査キットEvvy

Evvyは、膣内のマイクロバイオームの状態を分析し、健康状態の把握とライフスタイル改善アドバイスなどを提供する。General Catalyst、Box Groupなどから500万ドル(約5億7000万円)を調達している。

筆者も2021年末実際に試してみた。下記のように、検査キットが送られてくる。採取は簡単で、インストラクションを見ながら3分程度で終わった。

画像クレジット:Evvy

箱には「The female body shouldn’t be a medical mystery(女性の身体は、医療で解明できないミステリーであるべきではない)」と記されており、現状研究段階ではあるものの、マイクロバイオーム分析を通して女性の不調を改善したいという気概が感じられた。

次に、オンラインで質問に回答する。生理サイクル、健康の悩み、感染症歴や今回の検査で知りたいことなどを回答する。10分ほどの割と長い質問票だった。


​​採取したサンプルを送付すると、2週間ほどで結果がメールで送られてくる。結果を解説してくれるマイクロバイオーム専門家とのビデオコールも追加コストなしでリクエストできる。ビデオコールでは、自分の悩みを伝え、結果を見ながら改善方法などを教えてくれた。結果を見てもどのように実生活に活用すれば良いのか、わかりにくかったので、マイクロバイオーム初心者の筆者からするとありがたかった。

ユーザーは、3カ月ごとの定期検査のサブスクリプションモデルと1回のみの検査キット購入が選べる。定期的に検査することで、自分の健康状態を見てみたかったので、筆者はサブスクリプションを選択した。

細菌性腟症などの感染症は、一度なると再発しやすい。実際、一部のユーザーは、膣内感染症の再発を防ぐためのヒントを求めてEvvyにたどり着く。また、早産、不妊の可能性や予防法をマイクロバイオームから知りたいというユーザーもいる。

筆者が最も注目しているのは、同社のビジョンだ。まだ研究段階のマイクロバイオームだが、同社は今後、膣内マイクロバイオームと不妊、子宮頸がん、早産などとの関連を調査し解明するというビジョンを持っている。マイクロバイオームから自分の身体の状態を把握するという未来がくるのかもしれない。

カップルの唾液から遺伝疾患リスクを解明する出生前唾液検査キット

画像クレジット:Orchid ウェブサイトより

Orchidは、パートナー両方の唾液サンプルを送付するだけで60億ものゲノムを解析し、子どもが遺伝性疾患を発症するリスクが高いかどうかを判定する唾液検査キットを提供している。2021年4月、シードラウンドで450万ドル(約5億3000万円)を調達。遺伝子キットを開発、販売する23 and Meの創業者も出資​​している。

対象となる遺伝性疾患は、乳がん・前立腺がん・心臓病・心房細動・脳卒中・1型糖尿病・2型糖尿病・炎症性腸疾患・統合失調症・アルツハイマー病の10種類。唾液を送ると、カップル向け、女性・男性の各パートナー向けの3種類のレポートが送付される。

子どもを作る前に、遺伝リスクを検査するというアプローチをとる同社。心配な結果が出たとしても、遺伝カウンセラーと、リスクを最小限に抑える方法などを相談できる。

2020年にシリーズDラウンドで1億2100万ドル(約143億円)の大型調達を発表したSema4も、出生前検査・遺伝性がん検査を手がける企業だ。同社は、2020年フェムテック領域の中で最大額を調達した企業だった。

テレヘルスユニコーンRoが買収、精子分析・保存キット

画像クレジット:Ro

フェムテックではないが、精子を自宅で採取し、分析結果を送ってくれるサービスを提供するDadiを紹介する。同社は、2022年3月にテレヘルスユニコーンのRoに買収されている。米国の国保健社会福祉省によると、不妊症の約3分の1は男性の不妊症に関連しているため、精液の分析と保存は重要な不妊治療サービスだ。自宅で精子を採取した後、採取キットと保存カプセルの両方が、温度変化や提携ラボへの輸送中の障害などから精子を保護・保存するように設計されている。サンプルの分析が完了すると、精子の数、濃度、運動性の評価を含む個人別の報告書が送付される。また、採取した精子は提携ラボで冷凍保存される。

Roは、コアビジネスである勃起不全治療テレヘルスプラットフォームから、テレヘルス全体へ事業拡大を進めるため、過去12カ月に3社(Workpath, Kit, Modern Fertility)を買収している。

成功の鍵は、丁寧なインストラクションと行動に落とし込める分析結果表示

ここまで自宅検査のスタートアップを解説してきた。筆者自身、自宅検査を複数試して感じたのは、自宅検査ビジネスをグロースさせる上で重要なのは「わかりやすい検査のインストラクション」と「ユーザーが行動に落とし込める分析結果を提示する」という点だ。家庭で正しく検査するためには、動画や簡単なイラストなどで、わかりやすいインストラクションが必要だ。

また、検査を受けて良かったと感じてもらうためには、明日からできる行動の変化を促す分析結果を提示することが重要だろう。自分の状態を把握するだけでは、一度きりの購入で終わってしまう。消費者は「xxのサプリを毎日飲む」「○○の栄養素を避ける」「有酸素運動を30分する」など改善のための方法を知りたいのだ。

この満足感が、安定的な収益を達成するためのサブスク顧客獲得に繋がる。現状、専門カウンセラーとのビデオコールを提供し、テスト結果を解説することでこの部分を補う企業が出てきている。専門家たちは、医学的・生物学的な専門知識がない一般消費者をガイドする役割を担っている。ここでの問題点は、スケールだ。ユーザー数が増えるごとに、専門家の数を増やさなければいけない状況では、スケールは難しい。技術を活用し、ある程度自動化をしながら満足度も担保するようなサービスが、今後伸びていくと考える。

人材獲得戦争時代、さらに重要視される企業の充実した福利厚生

米国では現在、労働者が大量に仕事を辞めている。この現象は、大規模離職を意味する「グレイト・レジグネーション(大退職時代)」と呼ばれ、メディアで頻繁に報道されている。​​Fortuneが2000人以上の米国人労働者を対象に行った調査によると、80%が新しい仕事に就くことを考える際に柔軟なスケジュールが重要であると回答している。また、約70%の労働者がリモートワークの選択肢を重要視している。優秀な人材プールを惹きつけるためには、働きやすい環境を作ることが必須だ。そのため、企業は、福利厚生にこれまで以上に投資している。

パンデミックで完全リモートを経験した労働者たちは、今後も働きやすさを求めている。この流れは、B to B to E(Employee)モデルと呼ばれるかたちで、企業向けに福利厚生としてのソリューションを提供するフェムテック企業にとって追い風となる。

働く親のための福利厚生プラットフォーム​​

画像クレジット:Cleoウェブサイトより

従業員は、Cleoを通して、育休からの復職時に悩みを相談できる専門家や、子どもの健康の専門家、助産師や産後うつ専門家などにアクセスできる。同社は、Pinterest、Uber、Upwork、Salesforceなどを含む、55カ国以上の100社を超える多様な企業に導入されている。​​実際、産休・育休後の復職率は、全米での平均が60%であるのに対し、Cleo会員は92%と改善している。

妊娠・出産のサポートから始まった同社のサービスだが、現在は、5歳から12歳の子どもを対象とするCleo Kids、ティーンエイジャーの子どもを対象とするCleo Teensにも拡大している。

多様なニーズに応える福利厚生の変化

画像クレジット:Carrot Fertilityウェブサイトより

これまで対面での不妊治療を中心に提供してきた福利厚生プロバイダーも、パンデミックを受け、そのサービス提供内容と方法をユーザーの求める形に変化させている。

企業の従業員向けに不妊治療を提供するCarrot Fertilityは、SlackやBox groupなど北米、アジア、ヨーロッパ、南米、中東の50カ国以上で、約200社の企業​​を顧客に抱える。これまで約135億円($115M)を調達している。同社は、パンデミックで通院を避けたい患者のニーズを受け、2020年8月に遠隔医療プラットフォームのCarrot at Homeを開始した。また、2021年12月には、自宅で排卵誘発ホルモンや関連バイオマーカーをモニタリングできる自宅検査キットの提供も開始している。2022年2月には、更年期障害向けのプランも追加した。

従業員それぞれのニーズが異なる点に注目し、福利厚生をパーソナライズできるプラットフォームも登場してきている。

画像クレジット:Nayyaウェブサイトより

2022年2月にシリーズCラウンドで5500万ドル(約64億円)を調達したNayyaは、企業の人事福利厚生システムに組み込んで、従業員のための福利厚生をパーソナライズするツールを提供している。

RPAを使って、従業員がプランをより良く選択し、節約する方法を見つけ、より良い支払いオプションを提供し、保険などの福利厚生を総合的にナビゲートできるようにしている。

画像クレジット:Forma

Formaは、​​裁量型福利厚生管理プラットフォームを提供している。同社も2022年2月、シリーズBラウンドで4000万ドル(約47億50000万円)を調達した。同社は、人事担当者が、従業員による福利厚生ベンダーの選定、払い戻し手続き、デジタルウォレットによるプラン利用をチェックできるようなシステムを構築している。

同社によると、企業の福利厚生は通常、企業が従業員に必要なものを決定するトップダウン・モデルで展開されており、これは雇用者と従業員の双方にとって非効率的だという。Formaの使命は、従業員ファーストの福利厚生プログラムを設計することによって、この関係を逆転させることだ。

Formaはプロバイダーと提携し、家族・人間関係、教育・キャリア、ウェルビーイング・ライフスタイル、基礎健康・保護、資産運用、仕事・パフォーマンスの6つの大きなカテゴリーで福利厚生を提供する。Formaの顧客は、社内の予算と戦略に基づいて、これらのカテゴリーから提供するものを選び、従業員に提供したい福利厚生プログラムを設計することができる。

Twitch、Stripe、Zoom、Lululemon、Palo Alto Networks、Squareなど、前年比330%の125社を顧客に抱えており、定着率は99%だという。この1年間で同社は収益を4倍に増やした。

優秀な人材を惹きつけ、繋ぎ止めるために、今後も企業の従業員への投資は、続いていくだろう。​​上記のパーソナライズ福利厚生が成功していることからも、従業員それぞれニーズが異なっており、企業がそのニーズに応えようとしている姿勢が感じられる。

編集部中:本稿の執筆者は大嶋紗季(Saki Oshima)。日本企業と海外スタートアップの新規事業創出を手がけるスクラムスタジオで、大企業とスタートアップのオープンイノベーションを支援するスタジオ事業部門に所属し、既存プログラムの運営や新規プログラムの立ち上げに従事する。各プログラムで培った日本企業とスタートアップをつなぐ経験を生かし、米国スタートアップ情報プラットフォームScrum Connect Onlineの立ち上げ、運営を担当する。欧米のフェムテックトレンドやサービスを日本語で配信。日本初のフェムテックコミュニティFemtech Community Japan創立メンバー。UCサンディエゴ大学院修了(MBA)。

 

フェムテックブランドNagiを運営するBLASTが総額1.5億円のシリーズA調達、ブランド拡大を強化

フェムテックブランドNagiを運営するBLASTが総額1.5億円のシリーズA調達、ブランド拡大を強化

フェムテックブランド「Nagi」(ナギ)を運営するBLASTは2月9日、シリーズAラウンドにおいて、とした第三者割当増資および日本政策金融公庫などからの融資を合わせ、総額1億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、赤坂優氏らが運営するエンジェルファンド、ANRI、セゾン・ベンチャーズ。調達した資金により、生理期間に限らずすべての女性たちがどんな日も自分らしく過ごせる世界の実現に向けて、Nagiブランドの拡大に取り組む。

Nagiは、吸水機能や防水機能に加え、防臭機能、制菌効果(菌を減らす効果)のある機能素材を使用した吸水ショーツ。ショーツの形は、フル、スタンダード、スリムの3タイプ。防水布を折り返す独自の積層構造を採用しており、特許出願中という。2020年5月にブランドをスタートしてから、2022年2月までで約6万枚を超えるショーツを販売したそうだ。

また日本の生地メーカーの生地を使用しており、高い技術を持つ国内の工場で生産。1枚ずつ丁寧に人の手で縫製し、パッケージ包装は、プラスチック素材を一切使わず紙素材のみを使用している。自宅でお手入れ可能で、くり返し使うことを考慮し環境にも配慮したエコフレンドリーなプロダクトになっているという。フェムテックブランドNagiを運営するBLASTが総額1.5億円のシリーズA調達、ブランド拡大を強化

2018年1月設立のBLASTは、「すべての女性たちが人生をコントロールできる世界へ」というビジョン、また「女性をエンパワーメントする」をミッションに掲げる、WOMEN EMPOWERMENT COMPANY。メディアとプロダクト、コミュニティの3軸の事業で女性のライフスタイルをエンパワーするとしている。フェムテックブランドNagiを運営するBLASTが総額1.5億円のシリーズA調達、ブランド拡大を強化

ネクイノ・南海電鉄・泉北高速鉄道、生理用ナプキン無料提供サービス導入に向け駅トイレなどで今春から実証実験開始

オンライン診察でピルを処方するアプリ「スマルナ」(Android版iOS版)などを運営するネクイノ南海電鉄泉北高速鉄道は1月28日、南海電鉄の難波駅と商業施設、泉北高速の泉ヶ丘駅などの一部女性用トイレにおいて、生理用ナプキンを無償提供する実証実験を行うと発表した。期間は2022年春から約3カ月間の予定。駅の改札内にある女性用トイレに導入するのは関西の鉄道会社では初という。

実施場所のうち、駅については難波駅3階東、難波駅3階西、泉ヶ丘駅となっている。施設は、なんばパークス3階、なんばスカイオ10階、パークスタワー7階、なんばCITY従業員用の一部女性用トイレ。

この実証実験は、ネクイノが2022年3月頃から公開する専用アプリ(無料)をダウンロードのうえ起動し、女性用トイレに設置されたディスペンサーにスマートフォンをかざしてもらう(QRコードを読み取り)ことで、生理用ナプキンを無料提供するサービスを用いて実施するもの。専用アプリは、アプリストアからの事前ダウンロードに加えて、個室トイレ内のQRコードによるダウンロードも可能。

この取り組みを通して、ネクイノ、南海電鉄、泉北高速鉄道の3社は、多様な顧客の利便性向上を目的として生理用ナプキンを提供できる環境を整備し、利用者のニーズや意見などを把握し最適な形での導入を検討するとしている。

ネクイノは、医師や薬剤師、弁護士などの医療および関連法規分野に知見を持つ人材が集まり2016年6月に設立。ITを活用したオンライン診察をはじめ、健康管理支援、未病対策など、多様なライフスタイルや健康状態に合わせて選択活用できる医療環境を生み出している。スマルナのほか、マイナンバーカードと健康保険証をリンクさせるセキュアな個人認証システム「メディコネクト」の提供も行っている。

サッカロンが生理用品のオフィス常設サービス「サニパ」提供開始、東京都渋谷区を皮切りに23区へ順次拡大

サッカロンが生理用品のオフィス常設サービス「サニパ」提供開始、東京都渋谷区を皮切りに23区へ順次拡大

ウェルネス事業を展開するサッカロンは1月19日、生理用品のオフィス常設サービス「サニパ」の提供を同日開始した。まずは東京都渋谷区近郊から先行スタートし、23区へ順次拡大する予定。生理用品の常設施設を増やし、女性の負担軽減を支援することを目標としている。

サッカロン(株)による生理用品の利用に関する調査」(対象:全国の20歳以上の女性100名。調査期間:2021年12月17日〜12月22日)によれば、女性の生理に関連する月あたりの支出は、もっとも多い37%の回答が「501円〜1000円」となっており、45%の人は金銭的負担が「とても重く感じる」または「少し重く感じる」と答えている。また、「業務中に生理用品を持っておらず困ったことがある」「生理用品を持ってトイレに向かうのが恥ずかしい」といった精神的な負担も訴えられている。こうした悩みを受け、「不均衡を軽減し、すべてのひとに公平な社会をつくる」との理念を掲げるサッカロンは、サニパによって身体的女性の負担軽減の支援を目指している。

サニパでは、女性トイレの共同スペースに生理用品が入ったディスペンサーが設置される。内容は、ナプキン2種類(普通の日用、多い日用)、タンポン2種類(普通の日用、多い日用)。自己負担なく自由に生理用品を使えるようにすることで、「企業の働きやすいオフィス実現を支援」するとサッカロンは話している。

また、ディスペンサー設置時は工事不要で、企業用のトイレ内に設置するため、各企業の意思で導入可能(設置に関するビル管理会社への相談の必要有無は、企業が契約するビル管理会社との契約に基づく必要がある)。従業員が自己負担なく自由に生理用品を使えるようにすることで、企業の働きやすいオフィス実現を支援する。サッカロンが生理用品のオフィス常設サービス「サニパ」提供開始、東京都渋谷区を皮切りに23区へ順次拡大

現在サッカロンでは、サニパの企業モニターを30社募集している。参加企業は3カ月間無料でサニパをオフィスに設置できる。応募要件は、東京都渋谷区周辺の企業であること、渋谷区周辺のオフィス一箇所に従業員数50人以上が在籍していることとなっている。詳しくは下記リンクを見ていただきたい。

https://sanipa.jp/support

閉経を遅らせ、さらにはなくすことを目指すGametoに著名投資家が出資

多くの科学者や学者が毎年、人間の寿命を延ばし、その延びた年数を生きるに値するものにしようと、具体的に取り組んでいる。寿命を延ばす手段として癌の早期発見に注力しているチームもあれば、新陳代謝の向上に取り組んでいるチームもある。

小さいながらも成長中のグループが、人口の半分に影響を及ぼす閉経に取り組んでいる。閉経は、高血圧「悪玉」コレステロール、血中脂肪の一種である中性脂肪、さらに恐ろしいことに乳がんや心臓病、骨粗しょう症のリスクの増加など、さまざまな健康症状に関係している。

女性の健康と平等の軌道を変えるために卵巣の老化を加速させる問題を解決したいと語るGameto(ガメト)は、この問題に注力している最新の企業だ。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで医学を学び、キャリアの大半を計算医学に費やしてきた同社の共同創業者でCEOのDina Radenkovic(ディーナ・ラデンコヴィッチ)氏の説明によると、卵巣は、肝臓や脳、あるいは皮膚よりもはるかに早く機能停止し、どの臓器よりも5倍も早く老化する。女性は生まれながらにして一定数の卵母細胞(未熟な女性細胞で、後に完全に成熟した卵子細胞を生み出す)を持っているが、いずれこの卵母細胞を使い果たし、その時点で卵巣は臓器として機能しなくなり、女性の生理機能を司るホルモンの分泌も停止する。

Gametoは、卵巣治療のプラットフォームを開発することで、このプロセスを遅らせられる、あるいは女性が選択すれば永遠に遅らせられるようにしたいと考えている。このプラットフォームは、まずは不妊治療のプロセスを改善するために使われるが、最終的には、ラデンコヴィッチ氏が「医学的負担」と表現する閉経を防ぐための細胞治療法の特定にも使われることが期待されている。さらに詳しい説明を求めると、ラデンコヴィッチ氏は詳細に踏み込むのは避けながらも、Gametoがすでに卵巣をサポートする細胞が卵の成熟を助け、妊娠を望む多くの女性が現在耐えている体外受精の回数を減らすことができるかどうかのテストを始めている、と説明した。

「私たちのプラットフォームを信じるに足る強力な前臨床試験の証拠があります」とラデンコヴィッチ氏は話す。同社の会長は連続起業家のMartin Varsavsky(マーティン・ヴァルサヴスキー)氏で、同氏が興した最新の会社であるPrelude Fertility(プレリュード・ファーティリティ)は全米に不妊治療センターのネットワークを構築している。

著名な投資家もGametoに賭けている。同社はFuture Venturesがリードするラウンドで2000万ドル(約23億円)を調達したばかりで、共同創業者のMaryanna Saenko(メアリーアンナ・サエンコ)氏は「閉経を迎える女性のより良い治療スタンダードのビジョンにかなり興奮しています」と話す。閉経で起こる苦痛は生物学的に必須のものではなく、特に早期の閉経にともなう多くの合併症は、現在のホルモン補充療法で完全に避けることができる。ただし、サエンコ氏はホルモン補充療法について「鈍いハンマーで、パーソナリゼーションが欠けている」と指摘する。

その他の投資家はBold Capital Partners、Lux Capital、Plum Alley、TA Ventures、Overwater Ventures、Arch Venture Partnersの共同創業者Robert Nelsen(ロバート・ネルセン)氏、23andMeのCEOのAnne Wojcicki(アン・ウォジスキ)氏だ。

Gametoは2021年のシードラウンドで、Atomic(アトミック)の創業者Jack Abraham(ジャック・アブラハム)氏、SALT Fund、FJ Labs、Coatue Managementの創業者Dan Rose(ダン・ローズ)氏、CoinbaseのCEO、Brian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏などから300万ドル(約3億4000万円)を調達した。

確かに、市場機会は巨大であり、人々が長生きしていることを考えると、その理論は非常に理に適っている。実際、他のスタートアップも閉経を遅らせることに真っ向から注力し始めている。

すでにGametoは競合相手を抱えている。ここには、女性の卵巣予備能力の減少を遅らせる薬物プログラムを作成し、Gametoと同様に女性の内分泌機能と生殖機能を分離しようとしている創業12年のCelmatix(セルマティック)が含まれる。フォーチュンによると、Celmatixは過去にビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成を受けて非ホルモン性避妊薬に取り組み、2021年初めには製薬大手Bayer(バイエル)と医薬品開発会社Evotec(エボテック)との提携を発表している。

一方、研究者たちは少なくとも数年前から、閉経を治療可能な病気として扱うという問題を検討してきた。2019年の以前の論文はこちらで閲覧できる。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

ネクイノが定額制美容皮膚科と相互送客で提携開始、2月オープン予定の婦人科領域特化クリニックのプロデュースも着手

ネクイノが定額制美容皮膚科と相互送客に関し業務提携を開始、2月オープン予定の婦人科領域特化クリニックのプロデュースも着手

オンライン診察でピルを処方するアプリ「スマルナ」(Android版iOS版)を運営するネクイノは1月7日、b technologiesがプロデュースする定額制スキンケアクリニック「HADA LOUNGE スマルナクリニック 新宿院」(新宿マルイ本館5F)において、オンラインとオフラインの垣根を超えるOMO(Online Merges with Offline)を体現するべく、相互送客に関しての連携を開始したと発表した。

ネクイノは、今回の連携を皮切りに、医療DXを推進し今後あるべき医療空間を創出するべく、オンラインとオフラインの垣根がないOMOを体現したクリニックのプロデュースを積極的に進める。第2弾として、2月に東京都内でオープン予定の婦人科領域に特化したクリニックのプロデュースに着手しているという。

スマルナは、「ココロとカラダが健康で、ワタシらしい人生を選べる世の中をつくる」というミッションの実現に向け、心理的・物理的なハードルによって医療へ十分にアクセスできない方が「医療を身近に」感じられるよう、科学的根拠に基づいた正しい情報をわかりやすく届けている。また、2021年4月に表参道で1院目をオープンした定額制の美容皮膚科「HADA LOUNGEクリニック」は、開院当初から多くの方が来院しており、来院者へのアンケートでは、サービス内容だけでなくスタッフの対応などでも評価されているという。

1人1人が健康的な毎日を過ごせるよう女性の心身のケアに努めるスマルナでは、来院者に寄り添った対応が好評を受けているHADA LOUNGEクリニックと相互送客に関して連携することで、適切なタイミングで正しい医療情報にアクセスできる環境を整え、生理や避妊・性に関する不安や悩みを軽減し、あらゆる人が健康的な毎日を過ごせるよう、科学的根拠に基づく知識や情報を提供し、婦人科の受診率やヘルスリテラシーの向上を目指している。

【TC Tokyo 2021レポート】自分をさらけ出す起業なので、肝はすわっている―ILLUMINATEハヤカワ五味氏・mederi坂梨氏にフェムテックを聞く

【TC Tokyo 2021レポート】「ILLUMINATE」ハヤカワ五味氏・「mederi」坂梨氏に聞く国内フェムテック

TechCrunch Japanは、12月2、3日に日本最大級のスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2021」をオンラインで開催した。その1日目にあたる12月2日では「フェムテック」(FemTech)セッションを設け、ILLUMINATE(イルミネート)のハヤカワ五味氏、mederi(メデリ)の坂梨亜里咲氏登壇のもと、フェムテックとはどういったものなのか、また各社のサービスについて紹介した。モデレーターは、TechCrunch Japanのライター・イベント担当およびN.FIELD代表の野中瑛里子氏。

ハヤカワ五味氏(ILLUMINATE代表取締役社長)

【TC Tokyo 2021レポート】「ILLUMINATE」ハヤカワ五味氏・「mederi」坂梨氏に聞く国内フェムテックILLUMINATE代表取締役社長のハヤカワ五味氏は、多摩美術大学在学中にランジェリーブランド「feast」やワンピースブランド「ダブルチャカ」などを立ち上げ、Eコマースを主に販売。2019年には、生理から選択を考えるプロジェクト「ILLUMINATE」を立ち上げ、活動を続けている。

ILLUMINATEでは、女性向けヘルスケアブランドの企画・販売を手がけている。「女性の身体」や「女性のライフスタイル」に徹底的に向き合ったサプリメント「チケットサプリ」を展開しており、鉄分など女性が多く摂取する必要がある栄養素、あるいは不足しがちな栄養素をとれるという。また、デリケートゾーンソープ「NODOKA」を展開している。

ハヤカワ五味氏によると、ILLUMINATEが意識しているのは「どれだけ意義がある商品であっても、おしゃれだったりかわいかったりなど、普段から家・部屋に置きやすいデザインでないと使ってもらえないこと」という。特にサプリメントは継続して使ってもらうのが難しい商品であるため、その点を大事にしているそうだ。NODOKAについては、女性自身にまず自分の体のことを知ってもらい、自分の体を大切にしてもらうことを目的とした製品としている。

坂梨亜里咲氏(mederi代表取締役)

【TC Tokyo 2021レポート】「ILLUMINATE」ハヤカワ五味氏・「mederi」坂梨氏に聞く国内フェムテックmederi代表取締役の坂梨亜里咲氏は、明治大学卒業後、ECコンサルティング会社にてマーケティングおよびECオペレーションを担当。女性向けウェブメディアのディレクター、COO、代表取締役を経験した後に、自らの4年に渡る不妊治療経験からMEDERIを設立した。「生みたいときに生める社会にしたい」との考えから、起業を決意した。

mederiは、自宅でできるもっとも身近な妊娠準備をコンセプトにプロダクトを展開。その1つ目が、妊娠・出産を望む女性向けのウーマンウェルネスブランド「Ubu」における、膣内フローラチェックキット「Ubu Check Kit」やサプリメント「Ubu Supplement」などだ。Ubuは、坂梨氏の不妊治療経験から生まれたブランドで、「普段利用していたサプリメントやこんなチェックキットがあったらいいな」と考えたものを手がけている。2つ目は、ピルについてオンライン上で産婦人科医の診療を受けられるというマッチングサービス「mederi Pill」だ。

坂梨氏も、デザインに関して海外のプロダクトを参考にしており、妊活というカテゴリーの中でもできるだけ重々しくならないように、また女性が少しでもハッピーな気持ちになれるようにこだっているという。「ユーザーの利用シーンに自然に溶け込めるプロダクト作りを心がけている」としていた。

mederi Pillは、オンラインで相談できることから、仕事で忙しく病院に行くなどなかなか相談できる時間をとれない、緊張してしまい病院に行くモチベーションがわかないという女性に評価されているそうだ。また地方では、産婦人科に行くだけで噂の元となるといったペイン(課題)がいまだにあり、それが産婦人科医のオンライン相談により解消されるという側面もある。

安定期に入ってしっかり定着してきた

昨今は「フェムテック」という言葉について聞くようになったものの、改めてここで、どういった広がり方をしているのか、どのようなソリューションが展開されているのか尋ねてみた。

「個人には、1~2年くらい前に特に盛り上がっていて、今は安定期に入ってしっかり定着してきた印象がある。海外では5年程度前には一般的に聞くようになったので、その辺りはギャップがある」(ハヤカワ五味氏)。

低用量ピルなどでも、例えばアメリカでは水泳など女性アスリートが利用するなど普及が進んでいる。

「そもそも低容量ピルでいうと、日本ではようやく1990年代終わり頃に認可された(アメリカは1960年代)。日本ではピル自体が約20年の歴史しかなく、親の世代からは大丈夫なの?と心配される。その意味では、フェムテックも歴史が浅くなりやすい」(ハヤカワ五味氏)

フェムテックの勃興が早かった国については、同氏は性教育との関連を挙げた。「性教育が早い国・しっかりしている国は、ニアリーイコールでフェムテックが盛り上がりやすいかなという側面がある。アメリカ、北欧、ニュージーランドなどは性教育が充実していて、結果的にフェムテックへのなじみがあるようだ」(ハヤカワ五味氏)。

自分自身の原体験から起業した、20~30代の女性起業家が多い

また坂梨氏は、フェムテックについて知ったのは2019年という。「不妊治療の経験をきっかけに、どんなジャンルがあるのかと調べていたら、フェムテックや様々な企業が存在することを知ってワクワクした」(坂梨氏)。国内についての盛り上がりについては、ハヤカワ五味氏同様2019年、2020年と指摘した。

国内については、「ウェルネスや月経に関するプロダクトが多い」(坂梨氏)という。この辺りは、国外との違いとして挙げられるようだ。生理が重い、不妊治療や更年期に向き合っているなどの経験があるなど「起業家も、20~40代の原体験がある女性が多い」(坂梨氏)としていた。

「更年期系に関していうと層が薄めで、起業家の人数がまだまだ少ない。起業家自身の原体験からの起業なので、ボリュームとしては20~30代の起業家が多くなっている。結果的に生理系が多くなりやすく、妊活系などもそこまで起業家はいない」(ハヤカワ五味氏)。ユーザーとしては妊娠や更年期を経験している人口が多く、ビジネスとしてはこの層を対象とした方がいいのだが、起業の原体験に基づく場合が多いので、現状では生理系のプロダクトやサービスが増えているそうだ。また早い段階で女性の課題に向き合うスタートアップが増えていくことで、「おそらく今後は、様々なプレイヤーが出てくる」(ハヤカワ五味氏)と見ているという。

一方坂梨氏は、「私自身は、早発閉経という症状で不妊になっていて、ホルモン治療を行っている。他の人よりも早く更年期を迎えると言われていて、最近は、30代で更年期に関するサービスやプロダクトを構築できるかなと考えている」としていた。

不妊治療経験から起業、自分をさらけ出す形なので肝はすわっている

原体験という話題が出たところで尋ねていたのが、坂梨氏とハヤカワ五味氏の起業のきっかけや苦労した点だ。

坂梨氏は、すでに触れたように自身の不妊治療経験から起業している。また、「女性だからということで、起業の点で苦労したことはあまりない」(坂梨氏)という。「自分のウィークポイントをさらけ出す形での起業なので、肝がすわっている方なのだと思う。ただ、BtoCのプロダクトを作っていて、どうしても投資フェーズが長くなるビジネスモデルなので、資金調達をずっと行っている初年度となり肉体的には疲れた」(坂梨氏)。

フェムテックというと、プロダクトのピッチを行う際に、女性ならではの課題(ペイン)を男性の投資家に理解してもらうのは難しそうだが、そうとも限らないという。「妊活領域では、男性の投資家でも、友人や家族などの声や男性としての経験があって、わかりやすかったようだ。不妊の原因が男性に由来することがあり、男性の投資家に共感してもらうことも多かった」(坂梨氏)。さらに「その点では、妊活領域については、女性向けだけでなく男性向け商材のアプローチも考えている」(坂梨氏)と明かしたていた。【TC Tokyo 2021レポート】「ILLUMINATE」ハヤカワ五味氏・「mederi」坂梨氏に聞く国内フェムテック

女性には自分自身をもっと知ってもらいたい、知ることが力になる

ハヤカワ五味氏は、周囲の女性の苦労に気が付いたことがきっかけという。「私は当事者ではなく、2004年から経営している会社(ランジェリーブランドのfeast)で課題があって、それが原体験になっている。女性向け下着をプロダクトとして扱っているので、ほとんどのスタッフが女性という状態だった。そんな中で、毎月同じタイミングで休む方がいる場合に、もしかして生理が重いのかなと思って尋ねてしまうとセクハラになってしまう。スタッフ側としても、同じ女性であっても上司には話しにくい。そこに課題、問題を感じた」(ハヤカワ五味氏)。

そこからさらに、「生理用品を紙袋に入れないといけないよねという風潮や、生理痛が重いけれど産婦人科に行っていない子がいるなど、いろんな課題を見つけるようになった。それが自分にとって糧や力になって、起業してやっていこう」(ハヤカワ五味氏)と思ったという。

「私自身は、生理や女性ホルモンなどで悩んだ経験があるわけではない。多少話題からずれるが、子宮頸がんの検査で引っかかったことがあって、これは病院に検査に行ったからこそ気付けたと考えている。そういった意味で、女性には、自分自身のことをもっと知ってもらいたい、知ることが力になると思う。そこが原体験としてある」(ハヤカワ五味氏)。

女性向けの検査が、「ブライダルチェック」など結婚後を前提にしたイメージに偏ってしまっている

フェムテックという話題からやや離れてしまうが、子宮頸がんワクチンについても触れていた。子宮頸がんワクチンは十分な周知がなされなかったため、接種している女性は少ない。「私くらいの世代で子宮頸がんワクチンを無料接種できるようになったものの、副作用の話がすごくフォーカスされてしまい、現在に至るまでほとんど接種されていないという状況が続いていた。しかし最近、周知に関する状況は変わってきた。子宮頸がんは20代でもかかってしまう身近ながんなので、女性はもっと恐れた方がいい」(ハヤカワ五味氏)。

一般に、がんは「がん化」してから発覚するのだが、子宮頸がんの場合は「がん化」する前に発見できる例は少なくない(子宮頸がんは、「がん化」前の状態を経過してからがんになる)。「現在であれば、子宮頸がんを引き起こすHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染をチェックできるキットもある」(ハヤカワ五味氏)。そういったキットの広まりも含め、「一般的な健康診断にも女性特有の検査をオプションとせずにまとめて扱うようにしてほしい。卵巣や不妊治療に関する検査なども行って、早い段階で知ることができるようにしてほしい」(ハヤカワ五味氏)。

「現在では、女性対象の様々な検査が『ブライダルチェック』など結婚後のものとイメージさせてしまう言葉の形で、浸透してしまっている。言葉を換えて、妊娠や不妊の可能性を含めて、早い段階で女性が自分自身のポテンシャルを把握できるようにすることが重要だと思う」(坂梨氏)。

「事業をやっていて感じるのは、我慢しなければならないという風潮が強いこと。例えば、小中学生の際に生理でもプールに入るように言われたり、自分だけが痛がっているだけかもしれないと思って我慢したりなどがある。フェムテックは、実はそんな我慢は必要ないものと知らせる、『実は、あなたは大変なことになっているよ』と女性自身に気づいてもらうきっかけになるプロダクトが多いと思う」(ハヤカワ五味氏)。【TC Tokyo 2021レポート】「ILLUMINATE」ハヤカワ五味氏・「mederi」坂梨氏に聞く国内フェムテック

また現在20~30代女性の場合、母親世代などからそんなことは言わないもの、男性に生理などについて相談しないものという価値観を示されやすく、相談相手がなかなかいない。「産婦人科にかかるタイミングや重要性なども自分では気づけない、家族にそんな女性がいても気づけないことはあるので、もう少しオープンに話せる場があるといい」(坂梨氏)。

「海外の事例では、D2Cブランドがクリニックを展開する、クリニックがアプリと連動するなど、オンラインとオフラインをシームレスに展開している事業もある。例えば、気楽にオンラインで相談できて、実際の検査は現場に行くなど、いろいろな選択肢がで出てきている」(ハヤカワ五味氏)。

「私が感銘を受けた海外企業に、テレヘルス(Telehealth。非臨床的なサービスを含む遠隔医療)を手がけるHims & Hers Health(ヒムズ・アンド・ハーズ・ヘルス)がある(男性向けのHimsと女性向けのHersを展開)。男性のAGA(男性型脱毛症)やED、女性のピルを含めて、おしゃれなパッケージと世界観を展開している。自分の体やヘルスケアについて気遣うことがおしゃれなこと、ライフスタイルの一部になるようなブランド作りをしていきたい」(坂梨氏)。

フェムテックは女性だけのものではなく、もっと色々な方が関わってくれる業界になってほしい

最後にハヤカワ五味氏と坂梨氏にそれぞれ尋ねていたのが、事業を通じて作っていきたい世界像、理想だ。

ハヤカワ五味氏は、「ブランド名としている『ILLUMINATE』には、『照らす』『明示する』といった意味がある。弊社としては、女性の選択肢、ひいては男性も含めすべての人の選択肢が照らされているような状態を作りたい。知識があるから気付けるし、その気付いたものを得られる商品・状態を作りたい。広く女性自身が障壁を感じずにすむ世界になっていくといいと思う。その先に、男性やほかのジェンダーの方の幸せも待っているのかなと思う」という。

ILLUMINATEのスタッフの半分程度は男性で、「自分自身に体験がないからこそ、周囲の女性の体験を聞くなどヒヤリングを基に意見を出している」(ハヤカワ五味氏)という。それら意見も製品に反映しており、「フェムテックは、女性だけのビジネスではないことが伝わったらいい」としていた。「商品自体の『ゼロイチ』の部分は私が責任を持つにしても、「この商品の設計は、僕でも続けない」などの意見があったりするなど、男性スタッフにも体験・UXを自分事として考えてもらっている」(ハヤカワ五味氏)。フェムテックがより魅力のある市場になることで、男女問わず様々な人がそれぞれの事業を志望するようになると見ているという。

「フェムテックというと敷居が高い、女性だけのものというイメージがあるものの、(この領域の企業では)実際には男性やそれ以外のジェンダーも働いている。フェムテックは女性だけのものではなく、もっと色々な方が関わってくれる業界になってほしいと考えている。興味がある方は、ぜひ様々な事業をチェックしてもらえるとうれしい」(ハヤカワ五味氏)。

男女ともに支え合っていける、ユニセックスで使えるプロダクトも作りたい

坂梨氏は、「『mederi』という社名は『愛でる』という言葉が由来で、もっと「愛でり合う(愛で合う)」社会にしていきたい」という。「男女で性差はあるものの、お互いの良さや足りない部分を受け入れて補い合っていくといい」としていた。「今はフェムテックという領域で展開しているが、mederiとしては、男性も視野に入れた商品展開も行っていきたい。男女ともに支え合っていける、ユニセックスで使えるプロダクトも作りたいと考えている」(坂梨氏)。ジェンダーを問わず対象とする方向性から、「ヒューマンテック」(坂梨氏)ととらえているそうだ。「女性を軸に、男性もお子さんも関わりがあることなので、様々なコミュニティに浸透するようなサービスを展開していけるといいなと思う」(坂梨氏)。

「女性が幸せなら男性も幸せだし、男性が幸せなら女性も幸せという思いから、フェムテック領域でサービスを展開している。今後は、toCだけではなく、toBの福利厚生として、男女とも等しく展開できるようなオンライン診療を用いたパッケージなども展開したい。多くの人が自分事にできるようなサービスにしたいので、注目してほしい」(坂梨氏)。

妊娠中・授乳中に安全な薬の情報を検索、産婦人科医開発「妊娠と授乳のくすり案内ボット(くすりぼ)」を相生市が提供

インターネットを通じて子どもの健康や子育てに寄り添う事業を展開するKids Public(キッズパブリック)は、妊娠中から授乳中のお母さんがいつでも気軽に薬の情報を検索できるチャットボット「くすりぼ」を開発。兵庫県相生市が住民向けサービスとして12月13日より提供を開始した。相生市の住民は、無料で利用できる。

Kids Publicは、産婦人科医や小児科医にスマートフォンから気軽に相談ができる遠隔健康医療相談サービスとして「産婦人科オンライン」と「小児科オンライン」を展開している。

くすりぼは、これらサービスに寄せられた、妊娠中から授乳中の8万件以上の相談データをもとに開発されている。様々な事情ですぐに病院にかかれない妊婦や授乳中のお母さんの、いろいろな体の症状に対して、妊娠週数、合併症、持病、産後月数、授乳状況といった本人の状況に合わせて、安心できる薬の情報が提供される。

またそれぞれの薬に関する情報は、2名以上の産婦人科専門医が作成・監修している。産婦人科専門医が文献をもとに臨床現場での知見も踏まえて作成した内容を、別の産婦人科専門医がチェックしているほか、回答文のパターンは2000種類以上にも及び、過去に例のない情報量だという。

さらに薬の情報に加えて、「セルフケアの方法」「事故判断すべきでない状況」「早期に受診したほうが良い状況」なども記載することで、安全性にも配慮している。

これらサービスは、自治体・法人・医療機関に販売されるもので、それら団体から一般にサービスが提供される形となっている。2021年6月1日から子育て支援策として産婦人科オンラインと小児科オンラインを導入している兵庫県相生市は、12月13日よりくすりぼの提供を開始した。

ネクイノがNTTコミュニケーションズおよびアーク・イノベーションとフェムテック事業で提携、2022年度内に新事業を展開

ネクイノがNTTコミュニケーションズおよびアーク・イノベーションとフェムテック事業で提携、2022年度内に新事業を展開

インターネットを用いた婦人科遠隔医療サービス「スマルナ」(Android版iOS版)を展開するネクイノは11月29日、NTTコミュニケーションズ、システム開発やコンサルティングを行うアーク・イノベーションと共同で、ヘルスケア業界向けプラットフォームを活用し、婦人科向けの高付加価値な事業展開を行うための業務提携を締結したことを発表した。「スマルナ」の利用者データを活用したフェムテック事業の拡大を検討する。

婦人科では定期検診を受ける人が少なく、女性特有の健康問題が顕著化しているという。そこでは、医療データに基づいた、個人に合わせた治療プランや予防医療が必要となるが、個人情報を含む医療データは病院間での提供が難しく、十分に活用されていない。そこでこの3社は、スマルナで取得したデータを安全に利活用することで、婦人科領域の新たな高付加価値サービスの提供を目指すことにした。

具体的には、ネクイノが利用者の同意の上で収集した問診データやオンライン診療データ、提携クリニックの治療データなどをNTTコミュニケーションズのヘルスケア業界向けプラットフォーム「Smart Data Platform for Healthcare」に蓄積し、加工・分析を行い、データの管理や匿名化などで個人情報を安全に活用し、高付加価値な事業モデルにつなげるとしている。Smart Data Platform for Healthcareでは、データの安全な保管や、本人同意の取得管理、匿名加工や秘密計算などにより、機微な個人情報の安心・安全な活用を推進する。

事業モデルの例としては、データの統計情報化による新しい保険商品の開発が挙げられている。医療関連の記録を基に、リスクの細分化や個人に合わせた商品設計が可能になるという。また、スマルナを通して医師から受診勧奨や健康アドバイスを行うことで、罹患リスクを低減し保険料の適正化が図れるとのことだ。

この提携では、3社は次のように役割分担をする。ネクイノはスマルナで取得したデータの活用、高付加価値なヘルスケアサービスの検討と提供。NTTコミュニケーションズはSmart Data Platform for Healthcareの提供。アーク・イノベーションは3社共同の事業モデルの構築と実装支援。それらを通じて、2022年度内に婦人科向け保険サービスなどの新たな事業を展開するとしている。

不妊治療可視化アプリを運営するninpathが約3000万円調達、機能改善や関連サービスを充実

不妊治療可視化アプリ「ninpath」(ニンパス。Android版iOS版)を運営するninpathは10月28日、シードラウンドでの第三者割当増資と融資による約3000万円の資金調達を発表した。引受先は、Yazawa Ventures、SFCフォーラム1号投資事業有限責任組合、個人投資家数名となっている。

ninpathは、不妊治療に関する様々な情報を、客観的なデータから把握できるようにする支援アプリ。自身の治療の記録や管理はもちろん、2020年3月にサービスを開始してから3000人を超えるユーザーから集約された情報をもとにした、治療に関する客観的なデータが得られる。これを、治療方法や治療中のさまざまな判断の参考にして、自分で治療方針を考えることができるというものだ。

ninpathでは、今後の事業展開として、アプリの改善とユーザーデータの活用の他、「メンタルを中心とした患者ケアスキームの開発」「企業の女性活躍推進支援」を掲げている。

アプリ改善とユーザーデータの活用では、アプリの利便性の向上と入力負担の軽減を行うと同時に、データドネーション(データの寄付)で不妊治療経験者が提供したデータを活用し、クリニックごとの治療事例の検索や閲覧ができるようにするサービスを準備する。

メンタルケアは、精神的な負担が大きい不妊症や不育症患者のために、「ケアを受けるきっかけ」と「適切なケアラーへつなぐ導線」を提供するというもの。年内に運用実験を行うという。

ライフプランニング支援では、企業での妊よう性や不妊治療に関する従業員向けセミナーを実施したり、休暇制度の導入、簡易検査の提供など、従業員と家族が人生設計と仕事を両立できるように支援する体制を構築するとしている。

ninpathでは、「長年の課題となっている不妊治療患者の精神的な負担を少しでも軽減していくために、医師や各企業がより包括的に患者をサポートできるような体制作りを支援し、患者が治療に集中して臨める環境構築に注力してまいります」と話している。

ネクイノがトイレで生理用ナプキンを無料で受け取れるデバイスを開発開始、2022年3月から提供スタート

ネクイノがトイレで生理用ナプキンを無料で受け取れるデバイスを開発開始、2022年3月から提供スタート

オンライン診察でピルを処方するアプリ「スマルナ」(Android版iOS版)を運営するネクイノは10月20日、女性用トイレにおいて、専用アプリをインストールしたスマートフォンをかざすだけで生理用ナプキンを受け取れるデバイスの開発をスタートしたと発表した。女性の経済的な負担軽減やジェンダーギャップ解消に向け、より本質的な女性の課題解決を目指す。2022年1月以降のβ版を用いた実証実験、同年3月からの提供開始を予定している。

ネクイノは、同事業において、トイレというプライベートな個室空間の特性を活かし、画面を通して双方向のコミュニケーション接点を実装するという。

  • 女性の課題解決に有益な情報提供:女性の生活を豊かにするために役立つ情報を届けることで、広告モデルの事業を成立させる。訴求した情報に関心が高い場合は、QRコードなどを通じて製品使用までつながるUXを提供
  • 女性の生声を社会に届ける「意見箱」:特定の課題や広告の製品に対し、YES / NOで答えられるアンケートを設け、企業の研究開発に役立つフィードバックを得ることを目指す。同機能は広告モデルのプレミアムプランとして事業化を図る

ネクイノでは、これまで教育機関との連携によるオンライン保健室×生理用品無料提供プロジェクトを実施するなど、自由に生理用品を使える環境と気軽に相談できる機会の提供を行ってきたという。生理用ナプキンは、その性質上、突如として必要となるケースを防ぐことができず、元来から解決が望まれていた大きな課題の1つとなっている。ネクイノはフェムテックを通し、女性の生き方をより豊かにすることに貢献するため、同取り組みに参画し、顕在化している女性課題に向き合い、フェムテック市場の活性化を推進する。

また同事業の本格化に向けて、ネクイノは幅広い業種の施設を運営する企業・自治体との対話を最重視するという。女性の生声を蓄積してきた商業施設や公共施設から課題共有を受け、これまでネクイノが解析してきた性に関する大量のデータを掛け合わせることで、トイレ空間における本質的で持続的な課題解決を目指す。

同プロダクトはIoTデバイスとして開発するため、クラウドを通じて持続的にサービスをアップデートしていくことが可能。トイレの利用者や、施設からのリクエストを定期的に集約し、様々な共創パートナーと本質的なサービス拡張を継続する。また、スマルナのサービス開発を通して培ってきた強みを同事業と連結させることで、よりスマートな「オンライン診察」のきっかけを提供することを視野に入れているという。

再利用可能な生理用ナプキン「LastPad」で使い捨てナプキンを廃止へ

消費者と直接的なつながりを持つオンライン販売により、近年、多くの女性関連スタートアップ(主流の定番製品よりもデザインや配慮の面で行き届いた女性衛生用品を販売していることが多い)が市場に製品を出しやすくなっている。

女性衛生用品の主流マーケットにおいてはイノベーションが欠如しており、スタートアップが力を発揮するための余地が生まれている。最近の例としては、 Thinx(生理用の吸収性パンティ)やFlex(ディスク型をしたタンポン代替品で、セックスをする際に装着する)といった企業が挙げられる。あるいは、生理痛も同時にケアしてくれるCBDタンポンを作っているDayeもこれに含まれるだろう。

そうはいっても、このカテゴリーでは、新しい製品が浸透し主流マーケットの状況に影響を及ぼすほど十分な量のイノベーションは起こっていない。店の棚で見かける主力製品は残念な気持ちになるほど見慣れた、使い捨てナプキンとタンポンである。ときにそれらがオーガニックコットンで作られていたり、控えめながらちょっと気の利いたデザインであったりすることはあるにしてもだ。

ガーディアン誌が最近報告したように、製品群の中で見られる最も顕著な変化は、おそらく生理用パンティだろう。これは近年主流店でも販売されるようになり、英国などの市場でよく売れているようだ。

平均的な薬局で、使い捨てではない商品で目にする可能性が最も高いのは月経カップだ。使用者が非常に限られているものの、これは特に新しいものではない。しかし、近年では、もともとの使用者以外からも関心が集まるようになった。これは、消費者が月経に対処するのに、従来の使い捨てナプキンではなく、他のものも試してみようという柔軟な態度を持っていることを示している。

フリーブリーディング運動(近年、やや広く取り上げられるようになった古い運動)も、少なくとも部分的には、主流の生理製品の質の悪さに対する抗議活動と見ることができる。

これらすべてが、発売間近のこの製品をかなり興味深いものにしている。再利用可能(使い捨てではない)な生理用ナプキン、LastPadを見ていこう。

画像クレジット:LastPad

まず最初に目につくのは、ナプキンの色が黒であることだろう。これは通常の貼り付け式のナプキンとは明らかに異なる点だ。LastPadを開発した企業によると、見た目や雰囲気については、高級ランジェリーメーカー(社名は明らかにされていない)と共同で開発を進めたという。

舞台裏での最も大きな変化は、このナプキンが繰り返し使用ができるようデザインされているということだ。そのため、各LastPadには、使用後折りたたんで(そして洗濯機に入れるまで)しまっておけるさまざまな色の布製ポーチがついてくる。ナプキンは洗濯機で洗うときにもポーチ中に入れたままでよいので、洗濯機から取り出して乾かすまでは、なにかする必要はない。

LastPadは、デンマークのデザイナー兼起業家であるIsabel Aagaard(イザベル・アガード)氏の発案によるものだ。同氏の会社 LastObject は、ここ3年ほど、使い捨ての衛生用品や美容製品の無駄をなくすため、綿棒やティッシュ*といった美々しいとは言えないが実用的な製品について、再利用可能な代替品のデザインを行ってきた。

LastObjectは、美容、衛生、旅行関連製品で、今までに合計で約150万個の製品を売り上げた。しかしLastPadは、同社にとって、本当の意味で女性関連製品の範疇に入る初めての製品である。

再利用可能(洗濯可能)な生理用ナプキンの登場は、再利用可能なシリコン製の綿棒やコットン製ティッシュ、化粧用パフを作るのと比べて、明らかに大きな技術的前進である。装着可能で、直接肌につける製品で、さらに生理にともなう変化しやすい厄介な性質に対応でき、繰り返しの使用に耐えうる衛生用品をデザインするのは、大変なことだからである。

これは、快適で信頼できるものでなければならないのだ(多くの使い捨てナプキンはそうではないため)。

そのため、アガード氏によると、同社はLastPadのデザインとプロトタイプ作成に2年間をかけて取り組んできたということだが、これはそれほど驚くべきことではない。そして、ついに市場への投入準備が整い、2022年2月に初期支援者に向け、出荷することを目標としてKickstarterでLastPadが公開された

アガード氏は「LastPadのプレキャンペーンでは、すばらしい手応えを得ています」とし、予想している需要の大きさについて語った。「これは当社にとって6回目のクラウドファンディングキャンペーンですが、大変好調です。ですから、私が考えていたよりも需要は大きいと思います。この製品は、初めての女性のみを対象とした製品ですし、男性が多数を占めるプラットフォームであるKickstarterで公開すべきか大変迷いましたが、結果は上々です」。

「当社がこの製品の開発を始めたのは2年前であり、長い期間を費やしてきました。これは、この製品を本当に革新的なものにしたかったためでもあります。現在は市場に手作りのものやDIYの要素を取り入れたナプキンがたくさんあります。当社は、そうした中でも、特別に革新的で、また使い捨て製品の利点がふんだんに盛り込まれた再利用可能ナプキンを作りたいと考えました」。

画像クレジット:LastPad

LastPadは3層からなっている。一番上の層は布製で、経血をすばやく真ん中の層に通過させて肌をドライな状態に保つ。真ん中の層は吸水性のある竹からできており、一番下の層は液体がもれないようTPU素材でできている。

「一番上の層は非常に細かく織られた素材で、臭いが消えるよう少し銀が含まれています。また小さなファネルも組み込まれているので経血がすばやく真ん中の層に吸収されます。濡れた感じがすると気持ち悪いため、これは非常に重要です。このナプキンはすばやく経血を吸収します。真ん中の層は100%竹からできています。竹の吸水性はすばらしく、例えば、コットンより40%吸水性に優れています。また抗菌性もあります。そして一番下の層はTPU(熱可塑性ポリウレタン)でできていて、これが漏れを防ぎます。これはビニール袋のようなものと違って快適な素材で、経血がもれないようにするためのものです」。とアガード氏は述べた。

使い捨てナプキンの場合、粘着性のある層を利用してパンティに固定するようになっているが、LastPadでは、洗濯をするという前提があるため、別の方法を取る必要があった。そのため、ナプキンの両脇に羽がついていて、パンティの股に当たる部分をこの羽根で包んで、柔らかいマジックテープで留めるようになっている。

それだけではない。ナプキンの裏側には粘着性のある細いシリコンストリップがはりめぐらされていて、ナフキンがずれるのを防いでくれる。アガード氏によると、このシリコンストリップは繰り返し洗濯しても大丈夫とのことだ(もっとも、しばらく使わないとホコリのせいで一時的に粘着性が落ちるが、濡れることですぐに元に戻る)。

「本当に大きな違いを生み出せた部分は、ナプキンの裏側です。そこにはマジックテープ付きの羽がついているのですが、このマジックテープは非常に柔らかくて、 自転車に乗っている場合でもまったく気になりまさえん。自転車に乗っても大丈夫かは大きなテストのようなものでした。またナプキンの裏側と下部に粘着性のあるシリコンストリップが付いているので、パンティの中でずれません」。

常識的に考えれば、たった1つのLastPadで生理期間を乗り切るのは無理である。洗って乾かす必要があるからである。使い捨てナプキンをLastPadに完全に置き換えようとするなら、また常に清潔なナプキンを交換用に使えるようにしておくためには複数のLastPadをセットで用意する必要がある。

しかしLastObjectの考えは、靴下やパンティを幾揃いかもっているのと同じように、洗濯をする日まで新しいものが使えるようLastPadsを幾揃いか持つということである。

LastPadsには、経血の量に応じ、サイズと厚みが異なる3種類の製品が用意されている。従って使用者は、パンティライナー、日中用、そして多量の経血に対応しなければならない夜間用など、幅広いタイプのLastPadを所有することもできる。

画像クレジット:LastPad

「開発は私が思ったほど簡単ではありませんでした。それは例えば、水と比較した場合の血液の粘土などを理解する必要があるからです。また、経血は、単なる血液とも違います。さまざまな問題があるのです。LastPadは、これらすべてを考慮した製品になっています」。とアガード氏はTechCrunchに語った。

「私たちは長い時間をかけてテストを重ねてきました。それこそがこの製品の中核です。他のLastObject製品の多くも、制作し、確認し、それを使ってみるというプロセスを経ます。しかし、LastPadについてはシリコンを取り入れたものになるまでに非常に多くの時間を費やしました。そのため、この製品は割高にもなっています。LastPadはここのオフィスですばやく縫い、テストすることができたので…そこで、私たちは常にテストを実施してきました。着用してみてどんな感じか? 異なる周期を持つ、それもさまざまな種類のパンティを着用しているさまざまな女性にテスト中の製品を届けて使用してもらうのです。テストには 本当に力を入れました」。

LastPadは3つで約60ドル(約6600円)なので、1つ20ドル(約2200円)ほどである。使い捨てナプキン1つと比べるともちろんかなり高い。しかしLastObjectは、セットを用意しているので、消費者がより多くのナプキンを購入すれば、ナプキン1つあたりのコストは少し下がる計算になる。

アガード氏によると、この製品は少なくとも240回の洗濯に耐えられる。つまり少なくとも2、3年は使用可能で、そうすることで、何百もの使い捨てナプキンが消費されるのを防ぐことができると同氏は述べた。

LastObjectではLastPadsを9つは持つことを推奨していて、その場合金額はおおよそ80ドル(約8800円)かそれ以上になる。どの使い捨てナプキンを生理期間中にどのくらい使用するかにもよるが、通常の使い捨てナプキンは、1つ20セント(約22円)に満たないので、 LastPadsが消費者にとってお金の節約になるということはないだろう。しかし、LastObjectがターゲットにしているのは、エコのために高いお金を払うことのできる十分な可処分所得を持つ消費者である。

この価格設定だと、LastPadsは月経カップ(使い捨て生理用品に対する既存の実用的代替品である)と比べても高く感じられる。月経カップは約30ドル(約3300円)(これはカップ1つの値段であり、カップは1つあればよい)で、シリコンでできているため、通常1つのカップを数年間使用することができる。

ただし、月経カップはすべての女性に適した製品ではないし、その上、カップをゆすいだり消毒したりするために清潔な水を利用する必要もある。そのため、生理のために、より多くの使い捨てではない代替品があることはよいことである。

アガース氏自身も月経カップの愛用者だとのことである。しかし、同氏は、生理用カップのユーザーにとってもLastPadはちょっとした漏れをキャッチしたり、安心感を得るために役に立つ製品であると示唆している。

一方、生理用パンティについては、はいた時に濡れた感じがして不快なのが問題だ、とアガース氏は指摘する。

LastPadの環境への貢献について話そう。再利用可能なナプキンを使用し続けるには洗濯が必要で、その洗濯には当然水や洗剤といったその他のリソースも必要である。しかし、同社は他のLastObjectno製品の場合と同様、非使い捨て製品を洗って再利用するほうが、使い捨て製品を消費して’捨てるよりも、はるかに地球に優しいと主張している。使い捨て製品の場合、継続的に生産し出荷しなければならないために二酸化炭素が発生してしまう。また、こうした使い捨て製品は廃棄後も、環境を汚染する可能性があり、プラスチックゴミ(生理用ナプキンをも含め)が大きな環境問題となっているのは周知の事実だ。

LastObjectは、この再利用可能な製品が環境に良いという同社の主張を裏付けるため、使い捨てナプキンとLastPadを使用した場合の比較をサードパーティーに依頼し、それによって得られたLCA (ライフサイクルアセスメント)を公開する予定だ。しかしアガードしはLastPadはほとんどの使い捨て製品よりはるかに優れているという自信がある。

私たちが環境への貢献について尋ねると、アガード氏は次のように述べた。「どのみち洗濯はしなければなりませんよね。LastPadsはそんなに場所をとらないので、それだけを単体で洗うのではなくて、他の洗濯ものと一緒に洗えばよいのです。冷水で洗えば、LCAレポートの評価は大変高くなると思います」。

「当社では全製品について、サードパーティによるテストを実施し、他の代替品と比較し、二酸化炭素、水、化学物質について評価しています。これを今後より具体的に行います。今…使い捨てナプキンの代替品はさまざまな形で製造されていて、それは驚くほどです。比較した結果、最低評価の製品や最高評価の製品を指摘することもできますが、当社製品は、使い捨て製品の約12倍優れています」。

「LastTissueやLastSwabについてのLCAレポートを受け取りましたが、それは私が想像していたよりもずっと優れたものでした」と同氏は付け加えた。

2021年からEUは、一部の使い捨てプラスチック製品(綿棒や使い捨てカトラリーなど)の販売禁止に踏み切った。プラスチックゴミの削減が欧州の議員の目標の1つであるためだ。日用消費財市場においては、長きにわたってプラスチック製品が好んで使用されてきたが、これが環境へ与える影響を早期に縮小しようという動きが、規制当局の間で世界規模の高まりを見せている。

しかし、使い捨て製品の中には他の使い捨て製品と比べて生活に不可欠なものがあり、政治家が、無駄で汚染にもつながる製品を全面的に禁止するのは難しい。そこで、革新的な再利用可能な代替品を開発することが、そうした使い捨て製品の使用量削減に一役買うわけである。

「最も持続可能なナプキンは、ナプキンを使用しないフリーブリーディングでしょう。でも、99%の女性はそれを受け入れることはできないと思います。ですから、どうにかしなければならないのなら、そのために解決策を作る必要があるのではないでしょうか?」とアガード氏。

LastObjectはLastPadの市場投入にKickstarteを通すことにしているが、今後どれほどの需要があるかを把握でき次第、Amazonや同社のウェブショップなど、現在同社の製品を販売している他の場を通しても販売できるよう、増産する計画であるとのことである。

現在のところ、LastObjectの再利用可能製品の主な市場はアメリカである。アガード氏は、これはLastObjectがユーザーコミュニティを構築するのにKickstarterを活用したためだと考えている。しかし、同氏は、提携する地域の販売代理店の数が増えるにつれ、ヨーロッパでも製品が売れ始めていると述べた。

では、同社はLastPadの次に何に取り組むのだろうか? 今後の製品の方向性については大いに議論しているところだと、アガード氏はいう。

「今後も美容製品に力を入れて行くと思います。取り扱うパーソナルケア製品を増やすことも考えられますが、あまりあちこちの分野には手を広げることはないと思います。個人的には、バスルームに関して面白そうなことができそうだと考えています。この分野で私たちが使う製品の研究をしているデザイナーが少ないためです。美容製品とパーソナルケア製品の両方、フロスや歯ブラシ、おむつにお尻ふきなど、全般的に考えており、心躍るイノベーションを起こせると思います。しかし…LastPadは2年の歳月をかけた製品で、結果に大変満足しています。2年のうち2カ月欠けても、現在のような製品にはならなかったでしょうから、2年かけたことはとても重要なことだったと感じています」。

画像クレジット:LastPad

編集部注:洗えるティッシュはもちろん新しいものではない。ウィキペディアにも、ポケットチーフは14世紀に君臨した英国のリチャード2世の鼻を拭くために発明されたと書かれている。しかし洗濯して繰り返し使用されていた従来の布ハンカチは、環境コストが非常に高い使い捨ての安価な消費財へと切り替えられた。社会が「循環経済」を普及させようとしている今、再利用可能な製品から使い捨て製品へというこの有害なデフォルトを逆方向に転換することで、より多くの「歴史的な製品イノベーション」がトレンドとして返り咲くのではないだろうか。

画像クレジット:LastPad

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

不規則な周期の女性の妊娠適期を検出する家庭用キット開発のOovaが1.3億円調達

Oovaは、BBG Venturesが主導し、Company Venturesが参加したシードラウンドで120万ドル(約1億3000万円)を得て、7月下旬にOova Kitを正式にローンチした。このキットは、2種類のホルモンを定量的に測定する家庭用検査を含んでおり、女性やその主治医に妊娠可能な日を提示したり、排卵の有無を判定する機能を持つ。

ニューヨークに拠点を置く同社は、2017年にCEOのAmy Divaraniya(エイミー・ディヴァラニア)氏によって設立された。ディヴァラニア氏は遺伝学を専門とする生物医学の博士号を取得している。同氏は個人的に月経不順による不妊に苦しんでおり、医師から35歳になってから再度受診するように告げられた。それでも、Divaraniyaは待つことを望まず、その時に何か行動したいと思った。

その後も、基礎体温や排卵検査薬を使って自然な妊娠の道を追求し続け、18カ月後に息子を授かった。しかしディヴァラニア氏は、利用可能なツールのすべてが「完璧な周期を持つ」女性のために作られたものであり、彼女に当てはまるものではないことを認識した。不規則な周期の女性に向けた事業に利用できる資金がない中で、同氏は、個人に合わせた非侵襲的なツールを提供し、家庭で個人的なホルモンプロファイルに対処できるようにしたいと、Oovaを立ち上げた。

エイミー・ディヴァラニア氏、Oovaの創業者でCEO(画像クレジット:Oova)

ディヴァラニア氏によると、博士課程を修了して2017年に同社を設立した後、過去4年間にわたってこの技術を可能な限り正確に機能させることに注力してきたという。Oovaの家庭用キットには、ハンドルホルダー、15個の使い捨てカートリッジ、モバイルアプリが含まれている。ユーザーは尿検査を行い、結果をスマートフォンのカメラでスキャンして、排卵確認や受胎に最適な日などの実行可能な措置を受け取る。主治医にデータを見てもらい、相談することも有効だ。

Oovaは、黄体形成ホルモンとプロゲステロンを測定し、時間をかけてホルモンを追跡する検査として、市場に出ている唯一のものであるとディヴァラニア氏は強調する。代替手段は、採血のために毎日病院に行くことであるが、それは体外受精を受ける場合に限られる、と同氏は説明する。

BBG Venturesの共同創業者でマネージングパートナーのSusan Lyne(スーザン・ライン)氏は、長い間女性の健康にフォーカスしており、他の創業者からディヴァラニア氏に会うべきだという提案を受けた。

「自分の周期を可視化することは、多くの女性にとって変革の瞬間です」とライン氏はインタビューで語った。「Oovaの科学は強力で、消費者は専門家に相談することなく自分の検査結果を理解できます。過去においてのみ個人的なホルモンプロファイルが得られるという事実は、自分が受精可能かどうかを判断するレベルに達するということでしかありません。同社のキットは定量的なものなので、昨日、今日と、それを追跡し、排卵の時期を知ることができます」。

同社の当初の目標は消費者に直接届けることだったが、パンデミックの最中に不妊治療クリニックが閉鎖を余儀なくされた後、ディヴァラニア氏は医師から電話を受け、診療所に来ることができなくなった患者をサポートするためにキットを早期にローンチするよう求められた。現在、75以上の不妊治療クリニックが同社のプラットフォームを利用している。

コンサルティング会社のPrecedence Researchによると、体外受精、遺伝子検査、卵子凍結、生殖補助などのサービスを含む世界の不妊治療テクノロジー市場は、2020年に331億ドル(約3兆6300億円)と評価され、2027年までに479億ドル(約5兆2600億円)になると予想されている。家庭用診断デジタルヘルス市場は、2027年までにそれぞれ70億ドル(約7700億円)と5510億ドル(約60兆5000億円)になると見込まれている。

他のスタートアップは、類似の不妊治療ケアをよりアクセス可能なものにすることに注力している。例えば2021年、Future Familyは900万ドル(約9億9000万円)を調達して不妊治療のコストとプロセスの透明化を実現し、デジタルヘルス企業のRoは5月にModern Fertilityを買収して、不妊検査とリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)を自社のサービスに追加した。また、Mate Fertilityは、家族計画サービスのネットワーク構築に280万ドル(約3億700万円)の資金を投入している。

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Oovaはプレシード資金で合計440万ドル(約4億8000万円)を調達した。将来の需要を満たすために、ディヴァラニア氏は新しい資金を使ってより多くの機能を追加し、ホルモン検査を市場に出す準備を進めている。同氏はまた、再ブランド化に取り組み「Oovaを単なる科学的実験にとどまらない、企業として育て上げたい」とも考えている。価格はスターターキットが159.99ドル(約1万8000円)、リフィル可能なキットがサブスクリプションで月額99.99ドル(約1万1000円)となっている。

「私たちは不妊治療からスタートしましたが、慢性疾患などの他の健康分野にも事業を拡大したいと考えています。データ利用者と臨床医が需要を牽引できるようにしたいのです」とディヴァラニア氏は付け加えた。「また、黄体形成ホルモンとプロゲステロンとともに妊孕性にとって完璧な3要素となる、エストロゲンの追加にも取り組んでいます」。

画像クレジット:Oova

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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

急成長中の排卵日予測アプリFloが評価額880億円で55億円のシリーズBをクローズ

月経周期追跡にフォーカスした排卵日予測アプリのFlo(フロー)が5000万ドル(約55億円)のシリーズBをクローズした。同社いわく、同ラウンドでの同社のバリュエーションは8億ドル(約880億円)で、投資家がフェムテックにどれほどの価値を付加しているかを強調している。

2016年創業のFloは初年に100万ドル(約1億1000万円)のシード資金を調達し、これまでの累計調達額は6500万ドル(約71億円)だ。最新ラウンドとなるシリーズBはVNV GlobalとTarget Globalが共同でリードした。

Floのユーザーベースは世界で2億人に成長した。この中の一部は同サービスの中心的な機能である月経周期追跡に加えて、より専門的なコンテンツにアクセスするのにお金を払っている。

Floアプリはユーザーに「キュレートされた」周期追跡、予測、パーソナライズされた健康に関する洞察、リアルタイムの健康アラートを提供するのに機械学習を活用している。これらは追跡されている症状、同アプリのかなりのユーザーベースによってフィードされたデータに基づいている。なので月経周期追跡アプリとして始まったFloはいま、女性に「科学に裏付けされたコンテンツ、専門家が率いるコース、正確な周期予測」を提供していて、自らを女性のための先を見越した予防医療ツールとうたっている。

しかしそれはまた、月経周期追跡など女性向けのユーティリティでますます競争が激しくなっている分野でもある。たとえば、Apple(アップル)は2019年にiOSネイティブのヘルスアプリに月経周期追跡を加えた。そのため、Floのようなフェムテックスタートアップは最近、女性ユーザーを獲得するために基本的なユーティリティを提供する以上に多くのものを展開しなければならない。

Floは現在展開するコンテンツとマーケティングの組み合わせで正しい方向に進んでいるようだ。過去12カ月でアクティブ会員ベースは4倍に増え、2021年8月には150万人に達した。そして今年末までに年間経常利益1億ドル(約110億円)の達成を目指している。

中核ビジネスモデルはサブスクベースだが、Floはアプリでフリーミアム版も提供している(基本の月経周期追跡を提供するため)。そして全バージョンでユーザーのさまざまデータを収集できる。ここにはユーザーの月経に関連するセンシティブな健康情報、受胎能力、妊娠の意向などが含まれるが、それだけではない。

iOSアプリプライバシー開示通知によると、Floは検索履歴(!)や連絡先など、さまざまな種の他のデータをユーザーに結びつける可能性がある。この開示ではまた、Floのアプリがユーザーのアクティビティをサードパーティのアプリやウェブサイトにリンクするためにユーザーの位置や購入、データ使用、IDなどの情報を追跡するかもしれないことが示されている。

Floはパーソナライズされた健康予測を提供しているため、多くのデータ収集が続くことになる。

しかし明らかに、Floアプリが収集できる一部のデータのタイプは健康というより販促に関連している。Floはこの点でプライバシーに関し過ちを犯した。

同社のユーザーデータの収集・共有への入れ込みは、2019年のウォール・ストリートジャーナル紙の報道の後、連邦取引委員会(FTC)が目をつける事態となった。同紙はFloアプリのデータ共有に関する数多くの慣行を分析し、Floがユーザーデータを非公開にすると大々的に言っていたにもかかわらず、アプリ内アクティビティをFacebook(フェイスブック)に渡していたと報じた。共有した情報はユーザーの月経期間や、妊娠の意向をいつアプリで明らかにしたか、といったものだ。

2021年1月にFloはそうした指摘をめぐって過ちを認めることなくFTCと和解した。

FTCとの和解の取り決めの一環として、Floは現在、ウェブサイト上部にこの問題に関する法的声明へのリンクがはられているバナーを表示している。声明では、2016年6月30日から2019年2月23日にかけて、Floアプリがユーザーに関連する識別番号、ユーザーの月経期間や妊娠についての情報を、分析・計算サービスのために使っているFacebook、Flurry、Fabric、Googleなどサードパーティのアドテック企業に送っていたことを説明している。

FTCとの和解でFloはまた、プライバシー慣行についての独立した調査を受け、健康に関する情報を共有する前にユーザーの承認を得ることにも同意した。Floのウェブサイトにある声明ではこの内容を繰り返していて、「許可を得ない限り」ユーザーの健康についての情報をどの企業とも共有しません、とある。

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画像クレジット: Flo

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

ウェアラブルさく乳ポンプやケーゲルトレーナーのヘルステックElvieがシリーズCで約106.4億円調達

コネクテッドさく乳ポンプやスマート骨盤底面エクササイザーを開発した女性向けヘルステックのパイオニアであるElvie(エルビー)は、今夏初め(7月)に発表したシリーズCを上積みし、1270万ポンド(約19億3100万円)を追加して、資金調達額を7000万ポンド(約106億4000万円)に引き上げた。

2013年に設立されたこの英国のスタートアップは、2019年に4200万ドル(約46億3000万円)のシリーズB、そして2017年に600万ドル(約6億6000万円)のシリーズAを調達していたが、当時はフェムテック系スタートアップが今よりずっと珍しい時代だった。女性主導のスタートアップ各社が道を切り拓き、フェムテックにかなり大きな市場があることを示したことで、女性のために(そして多くの場合は女性により)デザインされた製品は、ここにきて大きな勢いを得ており、投資家も機会を逃すまいとしている

アナリストたちは今では、フェムテック業界は2025年までに500億ドル(約5兆5130億円)の市場になると予測している。

Elvieによると、今回のシリーズCエクステンションラウンドは、食品・健康分野に特化したプライベートエクイティ企業であるBlume Equityの共同設立者がスポンサーとなっているファンドに加え、既存投資家であるIPGL、Hiro Capital、Westerly Windsからの資金も含まれている。

7月に第1トランシェ(5800万ポンド、約88億1600万円)を発表した際にElvieは、シリーズCはBGFとBlackRockが主導し、Octopus Venturesを含む既存投資家が参加したと述べていた。

このシリーズCは、地理的な拡大(新規市場への参入を含む)や、女性の人生における他の「重要なステージ」をターゲットとした製品ポートフォリオの多様化など、さらなる成長のために使用されるとのこと。

これはつまり、製品開発をサポートするための研究開発費を惜しまないということだ。物理的なガジェットとソフトウェアを融合させたコネクテッドハードウェアは、依然として強いフォーカスとなりそうだ。また、さらなる規模拡大に備えて、オペレーションとインフラを強化していく予定だ。

現段階でElvieが販売している製品は、コネクテッドケーゲル体操トレーナー、ウェアラブルさく乳ポンプ(に加え電気を使わないポンプも2つ)の4つだ。

同社が製品の面で次に何を開発していくのか、注目したいところだ。

創業者兼CEOのTania Boler(タニア・ボーラー)氏は、声明の中で次のように述べている。「Elvieは、次の成長段階へ行く準備ができています。当社はすでに事業を展開しているカテゴリーに革命を起こしていますが、新しい領域で女性のためのよりよいテクノロジー製品やサービスを生み出す、未開拓の膨大なポテンシャルがあることを知っています」。

Elvieの目標は「あらゆるライフステージにおける女性の健康のための頼れる目的地」を作ることであり、ターゲットとなる女性消費者に「洗練された、的確で、パーソナライズされたソリューション」を販売することだと同氏はいう。

Elvieは製品販売による売上を明らかにしていないが、同社のさく乳ポンプ事業は米国で過去12カ月間に倍増しており、米国のAmazo(アマゾン)ではさく乳器のSKUで最も高い収益を上げているとのこと。

また、欧州事業の成長率は前年比139%と「好調」であることも同社はアピールしている。英国市場では、過去12カ月間で前年比31%の成長を達成したという。

画像クレジット:Elvie

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Aya Nakazato)

「適正下着」開発・販売のHEAVEN Japanと大阪府立大学がAIが最適なブラジャーを提案する「AIするブラ診断」を共同開発

AIが最適なブラジャーを提案、「適正下着」開発・販売のHEAVEN Japanと大阪府立大学がウェブアプリを共同開発

ライフスタイルに合った「適正下着」の商品開発から販売までを行うHEAVEN Japanは8月31日、同社オンラインショップにおいて、ウェブ上で必要な項目を入力するだけで、自分の体型に合ったブラジャーやサイズをAIが提案するウェブアプリ「AIするブラ診断」を8月30日に公開したと発表した。AIがデータを学習し、より精度の高い提案ができるようバージョンアップを進める。

ウェブアプリは、2020年に発足した同社DXチームと大阪府立大学の佐賀准教授とで共同開発したもので、下着の知識がない初めてのユーザーでも、わかりやすく使いやすいシステムを作ることを第一に開発を進めたという。AIが最適なブラジャーを提案、「適正下着」開発・販売のHEAVEN Japanと大阪府立大学がウェブアプリを共同開発AIが最適なブラジャーを提案、「適正下着」開発・販売のHEAVEN Japanと大阪府立大学がウェブアプリを共同開発

HEAVEN Japanによると、コロナ禍によりオンラインで買い物をする機会が増えているものの、人によってさまざまである体型やバストの形にぴったりとフィットする下着をネットで選ぶことは、特に初めての方にとってはとても難しく、「どの下着を買えばいいのかわからない」「自分のサイズがわからない」といった事前の相談を多く受けているそうだ。

自分に合った下着を無料で試着できる同社「試着体感サロン」では、知識と経験の豊富なプロのフィッターがカウンセリングを行った上で最適な下着を提案。AIするブラ診断では、試着体感サロンで蓄積したデータを基にAIが解析・学習し、顧客が必要な項目を入力するだけでそれぞれの方に合った商品やサイズを提案できるようにしているという。AIが最適なブラジャーを提案、「適正下着」開発・販売のHEAVEN Japanと大阪府立大学がウェブアプリを共同開発AIが最適なブラジャーを提案、「適正下着」開発・販売のHEAVEN Japanと大阪府立大学がウェブアプリを共同開発

個人に合わせた更年期障害緩和のためのアプリを開発するVira Health

スタートアップの世界では、次々と新しいトレンドが生まれており、その多くは早すぎるということはない。なぜ、上級職に就く女性は少ないのだろうか?その理由として、更年期を迎えた女性は、一般的にリーダーシップを発揮できなくなるということが知られている。英国での調査によると、更年期は約1400万日の労働損失と100万人の早期退職の原因となっているという。実際にTechCrubchでは、従業員の健康管理によってこの問題に取り組んでいる新しいスタートアップ「Peppy(ペピイ)」について報じたばかりだ。

そして今回、Vira Health(ヴィラ・ヘルス)というスタートアップ企業が、LocalGlobe(ローカルグローブ)とMMC Ventures(MMCベンチャーズ)から150万ポンド(約2億3000万円)のシード資金を調達した。この投資ラウンドには、Hearst Ventures(ハースト・ベンチャーズ)のイケダ・メグミ氏、Elvie(エルビー)のAndrea Zitna(アンドレア・ジトナ)氏、Sophia Bendz(ソフィア・ベンズ)氏、Matt Robinson(マット・ロビンソン)氏、Simon Lambert(サイモン・ランバート)氏などのエンジェル投資家も参加した。

Andrea Berchowitz(アンドレア・バーチョウィッツ)氏とRebecca Love(レベッカ・ラブ)氏が2020年に設立したVira Healthは、個人に合わせた更年期ケアを目的とする会社だ。同社の最初の製品である「Stella(ステラ)」は、12週間の更年期障害治療計画、ヨガクラスや婦人科医とのQ&Aなどのコンテンツやバーチャルイベントを主な特長とする、更年期障害緩和のためのアプリである。

Vira Healthの共同設立者であるバーチョウィッツ氏は、次のように述べている。

女性の健康問題は、歴史的に研究や投資が十分ではなく、現在もその傾向が続いています。今こそテクノロジーを利用して、ヘルスケアにおける女性のデータの収集や使用法を改善し、このバランスを是正する好機です。今回の第1回目のシード資金調達ラウンドは、私たちのビジョンを実現するための一歩です。

LocalGlobeの投資パートナーであるRemus Brett(リーマス・ブレット)氏は次のように述べている。「更年期障害は女性の人生の大きな局面に当たりますが、現在の医療システムでは、女性が必要とする多面的かつ長期的なサポートを提供することが困難です」。

MMC Venturesの投資家であるAlexia Arts(アレクシア・アーツ)氏は、次のように述べている。「MMC Venturesにおいて、ヘルスケアは研究と投資の重要な分野です。私たちは、ヘルスケアの実践と提供の仕方を再構築するために、データ分析を取り込み、活用することに、大きな可能性を見ています。これは特に、性差によるデータの偏りがあることが立証されており、その解決が求められる女性のヘルスケアにとって大きな意義があります」。

Vira Healthを設立する以前、バーチョウィッツ氏はMcKinsey & Company(マッキンゼー・アンド・カンパニー)のアソシエイト・パートナーとして、官民を問わず女性の健康に関わる仕事をしていた他、Bill and Melinda Gates Foundation(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)の中東地域における活動を率いていた。

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カテゴリー:フェムテック
タグ:Vira Health女性更年期資金調達ヘルスケア

画像クレジット:Vira Health

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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LINEを使って「女性の一生涯の健康をサポート」するかかりつけオンライン薬局「YOJO」を展開するYOJO Technologiesは7月7日、グロービス・キャピタル・パートナーズ、ANRIを引受先とする第三者割当増資2億5000万円の資金調達を実施したことを発表した。これにより累計調達額は、融資を含めて3億9000万円となった。

順天堂医院で臨床と研究に従事していた医師の辻裕介氏(代表取締役)と、東京大学大学院農学生命科学研究科を卒業し経営共創基盤で新規事業開発などに携わっていた上野彰大氏(取締役、開発責任者)は、「患者満足度世界一の医療機関になる」というミッションを掲げて2018年にYOJO Technologiesを創業した。主に不定愁訴で悩む女性を対象に、LINEで薬剤師と相談しながら体に合った医薬品が買えるオンライン薬局「YOJO」を運営している。2021年7月7日時点で登録者数は9万人以上。20~50代の不定愁訴で悩んでいる女性が中心という。2021年2月には保険薬局の指定を受け、本格的なオンライン服薬指導による処方薬の提供も行っている。

高効率・高品質なチャットオペレーション構築

今回の資金調達の目的は3つある。1つ目は高品質なチャットオペレーションの構築。薬剤師とエンジニアが共同でCRM(顧客関係管理)ツールをすべて社内で開発し、チャット対応の効率化により薬剤師1人あたりの1日の対応者数を500人まで可能にしているという。これにさらに開発投資を行うことで、自動化の促進・返信内容のリコメンド機能などを拡充する。また顧客から継続的に得られる定量/定性データを基に、医薬品やアドバイスのパーソナライズ提案の質を自動で改善するアルゴリズム開発を行う。

処方薬をはじめとするSKU(単品管理)拡大

2つ目は、処方薬をはじめとするSKU(単品管理)の拡大。不定愁訴に悩む女性は、処方薬のほかに市販薬やサプリなどの健康食品も併用していることが多く、YOJO利用者の75%が、それらを含めた飲み合わせなどの服薬フォローを望んでいるという。これに対応すべく薬剤師を「健康パーソナルコーチ」に位置づけ、そこで重要となるSKUを拡大する。

薬剤師のリモートワーク体制を構築

3つ目は、薬剤師のリモートワークによる新しい働き方の創出。出産や子育てなどで離職を余儀なくされた薬剤師が在宅で活用できる場を提供し、薬剤師が働きやすい環境を整える。

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カテゴリー:フェムテック
タグ:オンライン薬局(用語)YOJO Technologies(企業)資金調達(用語)日本(国・地域)

妊産婦向けメンタルケアサービスを展開し女性の心に寄り添うケアを提供するFloraが約2200万円調達

妊産婦向けメンタルケアサービス「Flora」を展開し女性の心に寄り添うケアを提供するFloraが約2200万円調達

妊産婦のメンタルケアサービス「Flora」(フローラ)を展開し、思春期から更年期までの女性の心に寄り添うFloraは6月28日、Social Entrepreneur 3投資事業有限責任組合をリード投資家とし、ペイフォワード、SK Impact Fund Japanという2つのエンジェル投資家を引受先とした第三者割当増資の実施を発表。総額約2200万円を調達した。

ウクライナ出身で、従姉妹が妊娠中にうつ病を発症し、第二子を亡くし苦しむ姿を見た共同創設者でCEOのクレシェンコ・アンナ氏は、京都大学経営管理大学院在学中に「すべての妊婦さんが安心して妊活・出産・育児を迎えられる社会」を目指して2020年12月にFloraを立ち上げた。同時に「Flora妊娠アプリ」のベータ版をローンチし、2021年4月からは「助産師や心理学者などの専門知識とセラピーメソッドに基づき監修されたオンラインレッスン」の提供も開始している。

Floraは、日本で初めて、フルオンラインのグループセラピーを提供し、自社開発のコーチングメソッドで「自分で自分を大切にしていい」というメッセージを女性に発信している。「自分らしさを応援するコミュニティー」として「性や生、パートナーシップ、食生活、マインド」などを包括的にサポートするコンテンツには、特定のテーマについて講師に相談できるZoom茶話会「Floraサロン」、離乳食やマタニティーヨガなどが学べる「Floraルーム」、専門家によるレクチャーやワークショップ、AIを活用したひとりひとりに合ったセラピープログラムを提供するメンタルサポートといったサービスがある。

今回調達した資金で、サービスの拡充とプロモーション活動を行う。ただでさえ妊娠、出産、育児を行う女性への支援が脆弱な日本で、現在は新型コロナ禍の影響で妊婦が孤独に陥りやすい状況になっていると話すFloraは、サービスを通じて「孤独感のない世界」を目指すとのこと。

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カテゴリー:フェムテック
タグ:女性(用語)妊娠(用語)Flora(企業・サービス)メンタルヘルス(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

急進的なイーサリアムの起業家たちが「DIY性的暴行証拠収集キット」を再定義、支持も非難も受ける野心的なLeda Healthのプロジェクト

投資家たちは彼らを「ディスラプティブイノベーター」(古い価値を破壊し、新しい価値を創造する革新者)と称する。ノースカロライナ州司法長官のJosh Stein(ジョシュ・スタイン)氏は、彼らを「悪質な詐欺師」と表現する。一方、Leda Healthの共同創業者であるMadison Campbell(マディソン・キャンベル)氏とLiesel Vaidya(リーゼル・ヴァイディヤ)氏は、自らを性的暴行被害者の擁護者だと考えている。

Ethereum(イーサリアム)を使用して反体制的ユースケースに取り組んでいるフェミニストたちにとって、Leda Healthの性的暴行被害者のためのDIY証拠収集キットは極めて野心的なプロジェクトだ。これまでのところ16名の連邦議会議員がLeda Healthの発売予定のキット非難しており、ミシガン州のDana Nessel(ダナ・ネッセル)司法長官は「臆面もなく#MeToo運動を利用して金銭的な利益を得ようとしている」と述べている。ニューハンプシャー州ユタ州は、まだ発売前であるLeda HealthのDIYキットをほぼ禁止に近い状態にした。しかし、キャンベル氏とヴァイディヤ氏はこうした動きを受けても躊躇することはなかった。

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キャンベル氏自身も被害者であり、暴行を受けた後すぐに警察に行かない理由を知っている。彼女の場合、トラウマと格闘し、名乗り出ようとする頃には、その声は無力なものになっていただろう。

「あらゆる州において、レイプキット失われています」とキャンベル氏はいう。「性的暴行の被害者が私に連絡をしてきて、この製品は自分の人生を変えてくれるかもしれないと言ってくれたことが、私を前進させ続けている理由です」。

キャンベル氏によると、同スタートアップは2021年秋にこれらのキットの提供を開始し、複数の大学と提携してベータ版を展開する計画だという。この自宅採集キットを補完する支援サービスとして、ライセンスを受けたファシリテーターが運営するセラピーやTransformative Justice(変革的正義)グループが用意されている。

「私たちは企業間取引(Business to Business、B2B)の会社になることを計画しています。大学や企業、軍隊などのパートナー向けです」とキャンベル氏は述べた。「私たちの目標は、最終的に教育機関が学生たちを救済するための製品やサービスの費用負担を行うことです。これが有用であるかどうかを示す多くのケーススタディが必要なこと、そしてそれが難しいことはわかっています【略】説明責任や境界線についての損害を訴えた人々との修復作業を含めて、損害のサイクルを終わらせようとしています」。

医療機関への無料の治療サービスやリソースの提供から始めるのは、簡単なことのように思えるはずだ。しかし、これらのキットは法執行機関や関連診療所が管理するレイプキットよりも法廷での有効性が低いため、被害者に誤った希望を与えてしまうと批判者は主張している。一方で、毎年何万ものレイプキットが警察によって検査されない状態にある。

ヴァイディヤ氏は、Leda Healthのイーサリアムを利用したモバイルアプリは、キットに収集された証拠をタイムスタンプするブロックチェーン技術を使用して、被害者に自分のアカウントを記録する選択肢を提供し、被害者の手に力を取り戻すものだと述べている。

「承諾の証明をビジネスにするものではありません。リソースの提供をビジネスにしているだけです」とヴァイディヤ氏は続けた。

カリフォルニア州リバーサイド郡のJohn Henry(ジョン・ヘンリー)地方検事補は、この種の商品は初めてだろうと語る。理由の如何にかかわらず、すぐに法執行機関に訴えることをためらう被害者に対して、これが助けとなるかどうかを判断するのは時期尚早だという見解を同氏は示している。タイミングも重要な要素の1つだ。被害後すぐに病院に行けなかった場合、生物学的証拠を収集することはできない。

「看護師や警察は、質問すべき内容や、どこでフォローアップすべきか、どのような情報が重要なのかについて、一定の経験と訓練を積んでいます。それは一般市民が持ち合わせていない知見です。私は検察官として、法執行機関や医療関係者による陳述や追加調査を考慮していきたいと思います」とヘンリー氏は述べた。「キットが規制やベストプラクティスと相反する方法で収集されていても、容認できないものではありません。しかし、陪審員はそれを十分に勘案する必要があります【略】証拠が存在しない場合とは対照的に、ある種の証拠の有用性は存在し得ると思います。Leda Healthが良いアイデアなのか悪いアイデアなのかについて、決定的な意見を述べることは現時点ではできません」。

どのような種類のレイプキットであっても、単独では有罪判決や追放措置を導くことはできず、広範な調査の一環として使用されるツールに過ぎない。それでも、被害者が自分のデータを管理するという考えに対し、激しい反発が起きている。

「2019年に、私たちのオフィスに不法侵入がありました」とヴァイディヤ氏は語る。「また、私たちに刑務所行きを求めるソーシャルメディアへの投稿に潜在的な投資家が関わっていたことも記録しています」。

現在も2人は日常的なオンラインハラスメントを受けているとキャンベル氏は言い添えた。

「2019年以降、会議やオフィスから自宅へ帰るのにUberを使用しています。弁護士から地下鉄に乗らないようにと言われたからです。後をつけられるかもしれません」。

物議を醸しているこのキットは、目立たない箱の中にビニール袋、綿棒、説明書が入っており、すべてにQRコードが記されている。ユーザーはLeda Healthのアプリをダウンロードして情報を入力し、破れたショーツなど暴行の証拠になるものを個別のZiplocの袋に保存する。

「ブロックチェーンはアカウンタビリティ(説明責任)を創出します。こうした記録は変更できないからです」とヴァイディヤ氏はいう。「データにアクセスできるのは私とおそらくもう1名の社員だけで、データは暗号化されています【略】時間とプロセスに関するアクセスロックが存在し、法的権限による強制を受けた場合には、データにアクセスできる可能性があります」。

Leda Healthは、複雑なイーサリアムのソフトウェアサポートの大部分をブロックチェーンのスタートアップDeqodeに委託している。DeqodeのエンジニアShivam Bohare(シバム・ボハレ)氏によると、Leda Healthのシステムは、Coinbase Venturesから投資を受けたBlocknativeと、イーサリアムの共同創業者Joe Lubin(ジョー・ルービン)氏が部分的に所有するスタートアップInfuraが提供するイーサリアムのインフラサービスを利用しているという。暗号化されたデータとプロファイルは特定のユーザーアカウントにアタッチされており、セルフカストディ(自己保管・自己管理)のトークンにはアタッチされないため、このアプリのブロックチェーンのアスペクトはすべて内部で発生する。ユーザーはイーサリアムについて何も知る必要はない。

「ユーザーデータへのアクセスは、厳重な認証により保護されています」とボハレ氏は説明する。「データがクラウドにアップロードされた後は、Leda Healthの管理者からの適切な承認がない限り、ユーザー自身のデータにアクセスすることはできません」。

警察によって管理されるキットとは異なり、被害者は弁護士や当局に引き渡すまでキットを物理的に保持することができる。自身のケースが、システムの中で失われる何千ものケースに埋もれてしまうことを懸念するには及ばない。またこのDIYキットは、アプリ内に保存された記録とともに、集団セラピーセッションのような法廷外でのメディエーションにも利用できる。

「米国の裁判システムにおいて、自己収集された証拠は極めて一般的な性質のもので、許容性などの問題について定期的に分析されていることを人々は忘れがちです」と、Leda Healthで顧問弁護士を務めるJiadai Lin(ジアダイ・リン)弁護士は指摘する。

実際、カリフォルニア州モントレー郡で2020年4月、パンデミック対策として開発された暫定的なプロセスの下で、別の民間企業が提供したレイプキットが使用されたことが報告されている

「被害者は自身の身体に関する情報を自らの条件で収集する権利を持つべきであり、起業家はイノベーションに挑む姿勢を持つべきであると私は考えます」とリン氏はいう。「この製品を禁止しようとする立法上の動きは、過度に制限的なものだと思います。そのことが、Leda Healthを支援しようという気持ちをさらに強くしています」。

批評家たちは、同スタートアップの起業家的アプローチを貪欲な機会主義と評している。ハーバード大学ロースクール出身で、ハーバード法律ビジネス協会の共同会長を務めたこともあるRomeen Sheth(ローメン・シェス)氏のようなLeda Healthの投資家たちは、営利戦略がすでにこの分野で活動している非営利団体を補完すると考え、このスタートアップに投資してきた。これまでのところ、Leda Healthはおよそ200万ドル(約2億1770万円)を調達している。

「どの業界においても、ディスラプティブイノベーションは快く受け入れられるものではありません。既存の企業がその精神で活動を開始することはないでしょう」とシェス氏はいう。「私はユーザーを最優先する製品やサービスには前向きです【略】現状維持ではなく、前進への投資に関心を抱いています。Leda Healthは自らの精神を定義しています。その取り組みを通じて、性的トラウマやセクシャルハラスメントを抱えることが恥ずべきものでないことを示し、苦痛やトラウマが取り除かれることを願っています」。

キャンベル氏とヴァイディヤ氏はプロトタイプの開発を終え、Leda Healthではすでに、ライセンスを受けたセラピストが率いる性的暴行被害者支援グループの提供を開始している。

「現在2つのグループが活動中で、5月からはさらに5つのグループが活動を開始します」とヴァイディヤ氏は述べている。

好感を持つか否かは別として、ブロックチェーンに精通した起業家たちが、特に女性に対するサポートが著しく不足している現状に挑戦していることは紛れもない事実だ。

「報告不足、大量のキットの未処理、全般的なサポートサービスの欠如などを含む現状維持に関わる代償は、性的暴行被害者にとって大変大きいものです。Leda Healthは、革新的で低リスクのソリューションが存在することを実証しています」と投資家のDuriya Farooqui(ドゥリヤ・ファルーキ)氏は語る。「また、暴行被害者がすぐに通報しない理由の1つとして、レイプキットで証拠を収集する手続きが侵襲的に感じられ、それ自体がトラウマを助長する可能性があることが挙げられます。Leda Healthが望むのは、選択肢を提供することです」。

カテゴリー:フェムテック
タグ:Leda HealthEthereum

画像クレジット:Leigh Cuen

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(文:Leigh Cuen、翻訳:Dragonfly)