建設・土木の生産支援サービスのフォトラクションが5.7億円調達、AI導入で業務効率向上を目指す

建設・土木の生産支援サービス「Photoruction」を開発・運営するフォトラクションは5月27日、総額5.7億円を調達したことを明らかにした。第三者割当増資による調達で、引受先はスパークス・グループ(未来創生2号ファンド)、DBJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、個人投資家。

Photoructionは、建設工事現場の写真管理サービスとしてスタート。現在では図面・工程管理などの写真管理以外にサービスを拡充しているほか、3次元CAD(BIM)ビューワーや各種基幹システムとも連携している。建設業で行われている業務のほとんどすべてで利用できるのが大きな特徴だ。

社内に建設業出身者のカスタマーサクセス担当を置き、利用する機能を工事工程に併せて段階的に提案するといったきめ細かいサポートも実施している。同サービスによって蓄積したデータを、各社の基幹システムや同社の建設特化のAIエンジン「aoz cloud」(アオズ クラウド)と連携させることで、一部の業務自動化なども可能とのこと。

同社によると、2020年4月現在でPhotoructionを使っている建設プロジェクトは5万件を超えているとそうだ。クライアントは、スーパーゼネコンから町の工務店まで規模はさまざまで、さらにはアジア諸国を中心に海外工事現場での施工管理にも利用されている。ANDPAD(アンドパッド)などの競合サービスに比べると後発だが、同社代表の中島貴春氏をはじめ、建設業出身のスタッフが開発やサポートに携わっていることから、1カ月程度の試用期間を経て実導入するケースが多いとのこと。

実際にPhotoructionを導入しているのは、戸建やリフォームを除く、比較的規模の大きい建造物を扱っている建設会社が多いそうだ。具体的には、オフィスやマンション、学校、工場、病院など新築の大規模建築が中心となっている。

海外では、日系企業が海外で受注した大規模建築での利用実績があり、シンガポール、ジャカルタ、ベトナムなど東南アジアを中心に使われているそうだ。一方で同社は「今後各国に本格導入するにはローカライズが必要だと感じている」とのこと。「どのようにローカライズすべきかというノウハウも蓄積してきたので、今後はタイミングを見て世界の建設業へも導入を進めていきたい」と説明する。

今回調達した資金は、Photoructionの開発体制や顧客サポート体制の強化、認知度の向上のためのマーケティング、aoz cloudを活用した「Photoruction Eye」という建設BPO(Business Process Outsourcing)の立ち上げなどに投下される。建設BPOとは、企業内の業務プロセスの一部を一括して外部委託すること。Photoructionに蓄積されている5万件超の建設プロジェクトをaoz cloudが各社別に解析・最適化することで、定型業務の自動化や省力化が可能になる。

同社はDropboxとのソリューション共同開発や、あいおいニッセイ同和損保との保険サービスの開発、戸建検査大手のバーンリペアとの協業など、事業会社とのアライアンスも進めており、将来的には事業会社との資本提携などを視野に入れてサービスの拡充を目指す意向だ。

建設業のための写真管理アプリ「Photoruction」を運営するコンコアーズが1億円を調達

CONCORE’S(コンコアーズ)は、建設現場向けの業務改善プラットフォーム「Photoruction(フォトラクション)」を提供しているスタートアップだ。コンコアーズは本日、総額1億円となる第三者割当増資を実施した。引受先は、ジェネシア・ベンチャーズ、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、個人投資家、既存株主のプライマルキャピタルだ。また、調達と同時にフォトラクションの正式版リリースも発表している。

フォトラクションは専用アプリから建設現場の状況をスマホで撮影し、管理できるようにするサービスだ。撮影した写真には工種や種別などの情報を登録する。撮影場所は予め取り込んでおいた図面の場所をプロットして登録する。

Photoructionアプリ

フォトラクションでは写真を撮影者、場所、日時、工事内容などの項目別にフィルタリングすることが可能だ。また、写真はアルバムにまとめ、印刷用にPDFやエクセルでダウンロードしたり、他のユーザーと共有したりすることができる。

建設現場では現場監督らが建設途中の様子を撮影し、記録を取っているとコンコアーズの代表取締役CEOを務める中島貴春氏は説明する。施工が完了すると内部の構造などがどうなっているか分からなくなるため、記録と報告のための写真を残すのだ。例えば、渋谷ヒカリエのような大型の建設現場では、建物が完成するまでに15万枚以上の写真を撮影するという。

これまで現場監督は黒板にチョークで必要事項を書き込み、デジカメで撮影した後、パソコンに取り込んで報告書を作成したり、職人に変更や指示を伝える書類を作成したりしていた。フォトラクションは現場監督がすでに持っているスマホから現場を撮影し、簡単に写真を整理できるようにすることで、こうした作業の非効率を解消する。

中島氏は前職で大手建設会社に勤めていたそうだ。「現場の業務が分かるので、求められている機能を先回りして作ることができます」と中島氏は話す。例えば、建設現場には電波が届かない場所もあるので、アプリはオフラインでも使えるようにした。また、建設現場の写真には機密情報も含まれている。端末を紛失した場合でも情報漏洩を防ぐため、遠隔からアプリ内のデータを消す機能も実装しているそうだ。

今回の資金調達はサービス開発に充てる予定だ。フォトラクションは建設現場での写真整理を切り口としたサービスだが、今後は図面や工程表管理といった建設現場の他の業務にも対応していく予定だという。また、手で入力しなくとも写真の撮影場所を正確に特定したり、図面をより賢く理解できるAIの開発も進めると中島氏は話している。

コンコアーズは2016年3月に創業し、2016年12月にはプライマルキャピタルから1500万円を調達している。

今年に入ってから建設現場向けのチャットアプリ「stacc」小柳建設がマイクロソフトのAR端末「Microsoft HoloLens」の活用を進めるといった建設業でのITニュースを紹介した。建設業界でも少しつづテクノロジーが浸透し、人々の働き方を変えつつあるのかもしれない。