生産者から直接届く果物サブスク「食べチョクフルーツセレクト」リニューアル、1人暮らしでも楽しめるレギュラーコース新設

生産者から直接届く果物サブスク「食べチョクフルーツセレクト」がリニューアル、1人暮らしにもおすすめのレギュラーコース新設

産直通販サイト「食べチョク」(Android版iOS版)を運営するビビッドガーデンは3月16日、旬の果物が生産者から直接届く定期便「食べチョクフルーツセレクト」をリニューアルしたことを発表。これまでの「プレミアムコース」に加え「レギュラーコース」を新設し、料金プランが選べるようになった。

食べチョクフルーツセレクトは、食べチョクが厳選した高品質のフルーツをユーザーが毎月選択できる果物の定期便。今回のリニューアルで、3人以上で暮らす家庭に合った量のプレミアムコース(月額4480円から。送料込・税込)と、単身世帯や2人暮らしの家庭でも楽しめる量のレギュラーコース(月額3780円から。送料込・税込)のどちらかを選択できるようになった。新設されたレギュラーコースは、量は少なめ・低価格で、フルーツの品質はプレミアムコースと同等。ビビッドガーデンは、ライフスタイルに合わせて旬のフルーツが届く生活を楽しんでもらいたいという。

  • 生産者直送で、新鮮なフルーツが届く:一般的には早めに収穫して出荷されることが多いフルーツ。一方食べチョクでは、生産者直送だからこそ、畑で食べごろの直前まで熟されたフルーツが届く
  • 毎月2〜3つのフルーツの中から好みのフルーツを選べる:例えば、4月のフルーツはいちご、不知火、マスクメロンの中から選択可能。夏にはパイナップル、秋にはシャインマスカットなども選べる
  • 季節ごとにいちばん旬のフルーツが届く:食べチョクに登録している全国6700軒の生産者の中から、その時期で旬のおいしいフルーツを選んで届けるという
価格は、レギュラーコース月額3780円から(送料込・税込)、プレミアムコース月額4480円から(送料込・税込)

価格は、レギュラーコース月額3780円から(送料込・税込)、プレミアムコース月額4480円から(送料込・税込)

トマトが熟れる際の遺伝子発現を深層学習で予測、遺伝子編集で果実のデザインも可能に

トマトが熟れる際の遺伝子発現を深層学習で予測、遺伝子編集で果実のデザインも可能に

岡山大学は3月8日、AIを使ってトマトが熟れるときに重要となる遺伝子の働きを予測する技術を開発したと発表した。また、「説明可能なAI」(XAI。Explainable AI)と呼ばれる技術を用いてAIの判断の根拠を探ることで、重要なDNA配列の特定も可能にした。その配列を編集すれば、果実の特徴に関する緻密なデザインも可能になると期待される。

果実の色や甘さや香りなどは、数万にもおよぶ遺伝子発現(遺伝子の働き)の組み合わせによって決まる。遺伝子発現は、プロモーターと呼ばれる領域に転写因子というタンパク質が結合して調整されているが、プロモーターのDNA配列には複数のパターンがあり、遺伝子発現は転写因子の複雑な組み合わせによって変化する。そのため、全ゲノム配列の情報がわかっていても、予測はきわめて難しいという。

そこで、岡山大学学術研究院環境生命科学学域(赤木剛士研究教授、増田佳苗氏、桒田恵理子氏)、農業・食品産業技術総合研究機構筑波大学大学院生命環境系九州大学大学院システム情報科学研究院からなる共同研究グループは、深層学習を用いた遺伝子発現の予測と、そこで重要となるDNA配列の特定を試みた。まずは、分子生物学で標準的に使われるモデル植物シロイヌナズナの、転写因子が結合するDNA配列情報のデータベースをAIに学習させ、3万4000以上あるトマトの全遺伝子のプロモーターの転写因子が結合するポイントを予測させた。次に、トマトが熟れる過程の全遺伝子発現パターンを学習させることで、遺伝子発現の増減を予測するAIモデルを構築することができた。

さらに、「説明可能なAI」を用いて、そのモデルで「AIが判断した理由を可視化」することで、予測した遺伝子発現の鍵となるDNA配列を「1塩基レベル」で明らかにする技術を開発した。このDNA配列を改変した遺伝子をトマトに導入すると、AIによる予測と同じ結果が得られた。つまり、トマトのゲノム情報の複雑な仕組みをAIが正確に読み解いたことになる。

この技術は、トマトの食べごろの予測に限らず、果実の色、形、おいしさ、香りなど、様々な特徴に関する遺伝子の発現予測にも応用できるという。また、予測した遺伝子の発現に重要なDNA配列を特定する技術を使えば、遺伝子編集により最適な遺伝子発現パターンを人工的に作り出して、自由に果実のデザインができるようになるとも研究グループは話している。

スムージーやスティックで野菜や果物が摂れるKenckoが約11.4億円調達

植物由来でミキサーを使わないスムージーを提供するKencko(ケンコー)が、新しいカテゴリーに進出するために1000万ドル(約11億4000万円)の資金をシリーズAで調達した。

今回のラウンドは、既存の投資家であるSiddhi Capitalが主導し、Next View Ventures、Riverside Ventures、Silas Capital、Cheyenne Ventures、Shilling Capital、Indico Capital、Mission Point、Gather Ventures、Nextblue Venturesなど、既存および新規の投資家が参加した。今回の投資により、Kenckoの資金調達総額は1350万ドル(約15億4000万円)を超えた。

TechCrunchがKencko(日本語で「健康」を意味する)を最後に取り上げたのは、同社が340万ドル(約3億9000万円)のシードラウンドを実施した2019年のことだった。当時、同社は6種類のフレーバーのフルーツドリンクを販売しており、さらに2つの新商品を発売する準備をしていた。

現在は、オーガニックスムージーには10数種類のフレーバー、ガムドロップには4種類のフレーバーを用意している。フリーズドライ技術により、1食分のグミキャンディのようなスティックで2.5食分の野菜と果物を摂取することができる。精製された砂糖や甘味料、人工的な素材は一切使用していない。

Kenckoは、2030年までには70億ドル(約7971億6000万円)の規模になるといわれる競争の激しい世界の健康 / ウェルネス市場の中で、独自のニッチな位置を占めている。他の企業もベンチャーキャピタルを引きつけているが、例えば毎日の栄養補給を目的とした粉末飲料AG1を開発したAthletic Greens(アスレチック・グリーンズ)は、米国時間1月25日に1億1500万ドル(約131億円)の新たな資金調達を発表し、プレマネー評価額を12億ドル(約1366億6000万円)に引き上げた。

今回の投資のニュースとともに、Kenckoは2月下旬に発売される最新のボウル型加熱式製品を発表した。

共同創業者でCEOのトマス・フローズ氏(画像クレジット:Kencko)

Kenckoは、そのままでは廃棄されてしまう野菜や果物を転用することにも力を入れており、2021年1年間で1000万本以上のフリーズドライのスムージーを出荷することができたが、同社によればこれは約660トンの生鮮食品に相当するそうだ。また、2022年には完全なカーボンニュートラルを目指している。

共同創業者でCEOのTomás Froes(トマス・フローズ)氏は、TechCrunchにメールで、創業からわずか3年で年平均500%以上の成長を遂げていると語った。2021年末のKenckoの会員数は約36万人で、2020年比で173%の伸びを示している。

フローズ氏は、新たな資金を、Kenckoのサプライチェーンおよび自社製造の拡大・最適化に投入したいと考えている。社員数はちょうど100名を超えたところで、今後12カ月間でチームを倍にする予定だ。

フローズ氏は「今回の増資によって、会員の方々にとって手間のかからない栄養補給の機会である『Kencko moments』を増やすことができるでしょう」と付け加えた。「私たちは、より多くの人々が日々の果物や野菜の摂取量を増やすことで、より健康的な生活へと移行できるよう、今後も努力していきます。私たちはエキサイティングな新製品を数多く開発しており、2022年中には実店舗での販売を開始できたらと思っています」。

画像クレジット:Kencko

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(文:Christine Hall、翻訳:sako)

垂直農法スタートアップInfarmがカタールに果物の栽培センターを計画

欧州の垂直農法企業であるInfarm(インファーム)は今週、シリーズDラウンドで2億ドル(227億円)を調達したことを発表した。カタール投資庁(QIA)の主導した今回のラウンドは、2020年の1億7000万ドル(約193億円)の資金調達に続くもので、これにより社の資金調達総額は6億ドル(約680億円)を超えた。評価額も10億ドル(1134億円)を「大きく」超え、欧州初の垂直農法ユニコーン企業としての地位を確立している。

関連記事:垂直農業ネットワークの構築継続に向けInfarmが株式と負債で170億円超を調達、日本の紀ノ国屋でも買える

「気候変動に強い垂直農法でグローバルな農業ネットワークを構築することは、Infarmの中核的な使命です。だからこそ、今回の資金調達を発表できることに私たちは興奮しています」と、共同創業者兼CEOのErez Galonska(エレツ・ガロンスカ)氏はリリースの中で述べている。「今回の戦略的な投資は、当社の急速なグローバル展開を支え、研究開発を強化するものです。それによって私たちは、欧州、アジア、北米、中東の消費者の近くで、より多くの種類の作物を栽培できるようになります。それは、近い将来、果物と野菜のバスケット全体を栽培し、高品質な生産物を手頃な価格ですべての人に提供するという当社の野望を達成するための新たな一歩です」。

今回調達した資金の多くは、米国、カナダ、日本、欧州などを視野に入れたInfarmの国際的な事業拡張計画に充てられる。また、同社はアジア太平洋地域や中東へのさらなる拡大も予定している。

QIAが今回のラウンドに参加したことが、後者の大きな原動力になることは間違いない。今回の提携の一環として、同社はカタールにトマトやイチゴなどの果物を栽培するための栽培センターを設立する計画を発表した。制御された屋内環境で比較的容易に栽培できることから、これまで主流であった葉物野菜やハーブの栽培からの脱却を目指している多くの垂直農法企業にとって、果物は強力な後押しとなっている。

「責任ある長期投資家として、QIAの目的は将来の世代のために価値を創造することです。私たちは、垂直農法を、世界のあらゆる地域の食糧安全保障を向上させる手段であると考えています」と、QIAのMansoor bin Ebrahim Al-Mahmoud(マンスール・ビン・エブラヒム・アル・マフムード)氏は、同じリリースで述べている。「私たちは、Infarmと協力してカタールに同社初の栽培センターを開発し、カタールの食糧安全保障と経済の多様化に貢献できることを楽しみにしています」。

垂直農法は確かにこの地域にとって理に適っている。生産者は、標準的な農法よりもはるかに少ない水で、気候制御された建物内で作物を生産する能力を得られるからだ。2018年には、Crop One(コープ・ワン)が、UAEに13万平方フィートの農業施設を開設すると発表している。もちろん今後、このような懸念は、1つの地域に留まるものではなくなるだろう。

画像クレジット:Infarm

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ジャックフルーツを使った代替肉の普及を目指すjack & annie’sが約26.3億円調達

jack & annie’sの創業者アニー・リュウ氏(画像クレジット:jack & annie’s)

ジャックフルーツ(パラミツ)を原料にするサステナブルな代替肉ブランドJack & annie’sが、米国時間12月14日に2300万ドル(約26億3000万円)のシリーズBの調達を発表した。

ラウンドはCreadevとDesert Bloomがともにリードし、Wheatsheafと既存の投資家Beta AngelsおよびInvestEcoが参加した。同社の創業者でCEOのAnnie Ryu(アニー・リュウ)氏は、TechCrunchに対して、以前のラウンドは発表しなかったし、これまでの総調達額も公表しないが、今回は「これまでのラウンドの合計より大きい」と語った。

ジャックフルーツの製品化のアイデアを思いついたのは10年前、リュウ氏がハーバードの医学部大学院の学生時代だった。彼女は弟と一緒に会社を起こし、インドでジャックフルーツを知った。

リュウ氏はこの果実が干ばつに強くて収量も多いことを知ったが、現地の人たちが好きなだけ食べても70%が未使用であることもわかった。世界の健康が研究テーマだったリュウ氏は、この果実の利用量を増やすことで地域の貧困を終わらせたいと考えた。今日では彼女のブランドは1000戸の農家と協力して、彼らの収入の10〜40%を提供している。

その後、リュウ氏は「ジャックフルーツ最大のサプライチェーンの開拓」を始めた。最初に作ったブランドは2015年に厚い果肉を利用し、コクのあるフレーバーでタンパク質や食物繊維など栄養価も高かった食品を提供した。現在、The Jackfruit Co.は約10種類の製品を、主にベジタリアン向けに販売している。当初はWhole Foodsが販路だったが、その後、拡大している。

2020年にローンチしたjack & annie’sは、リュウ氏によれば「とても親しみやすい」ブランドだという。同社は10種類の冷凍食品をそぼろやミートボール、ナゲットなどの原料として売っている。小売価格は、冷凍製品が4.99〜5.99ドル(約570〜約680円)、冷蔵製品が6.99ドル〜7.99ドル(約800〜910円)となっている。

ジャックフルーツを原料とする植物性の代替肉食品を扱う企業がいくつか登場している。2020年はシンガポールのKaranaが170万ドル(約1億9000万円)を調達して、植物性の豚肉代替食をこの果実で開発している。UptonのNaturalsThe Very Good Butchers、そしてNative Forestなども、この果実を使った代替肉食品を作っている。

関連記事:ジャックフルーツで人工肉を作るシンガポール拠点のKaranaが1.8億円調達

しかしリュウ氏のブランドは1年足らずで1500ほどのリテイラーに広がり、その中にはWhole FoodsやSprouts、Meijer、Wegman’s、Hannaford、Target、Giantなどもいる。同社はまた、植物性代替肉の冷凍製品では3番めに大きいブランドだ。また自然食品の流通チャネルでは同社は、SPINS Natural Channelによると、10月3日までの12週でナゲットのトップだった、とリュウ氏はいう。

同社の売上は前年比で倍増というペースを続けており、今度の資金はパートナーシップの構築の継続と、新たなイノベーション、各店におけるシェルフスペースの拡大、総流通量の拡大に投じられる。

リュウ氏によると「ジャックフルーツはビーフやポーク、チキン、シーフードなどのようにしやすため、これまで行ってきたことは氷山の一角にすぎないでしょう。リーダーとしてやるべきことは、多くの顧客のイノベーションパートナーであることです。彼らがジャックフルーツの肉のような食感を利用し、素性がわかる良質な原料だけで美味しい製品やメニューを開発しているときは、私たちがボウルダーにあるR&Dセンターを利用して協力することができます」という。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

東京農工大学が日本で初めて果樹工場から冬季生産のブルーベリーを出荷、伊勢丹新宿店で発売

東京農工大学は12月3日、日本ガスコムの植物工場を使ったブルーベリーの通年生産システムで、これまで不可能とされていた冬季生産のブルーベリー果実の出荷を成功させた。2021年12月から伊勢丹新宿店で発売される。

ブルーベリーは春夏秋冬を通して開花、結実、休眠を繰り返す。そのため日本では、ブルーベリーが出荷できるのは夏の4カ月ほどの間に限られ、後の季節は輸入に頼らざるをえない。そこで東京農工大学の荻原勲名誉教授らによる研究グループは、2011年に農工大キャンパス内に建設した「先進植物工場研究施設」において、春夏秋冬それぞれの環境を再現した部屋を作り、ブルーベリーのライフサイクルを短縮化させ、連続開花結実の研究を行った。それにより、通年での果実の収穫が可能になり、収穫量も4〜5倍に増えた。また、1本の木で花・未熟果・成熟果が混在する「四季なり」の様相も見せ、長期にわたる出荷も可能となった。この「連続開花結実法」は、2021年に特許を取得している。

研究グループは、この技術を社会実装するために、日本ガスコムが2021年6月に設立した6000m2の植物工場での実験を行ったところ、9月に開花が認められ、11月には果実が成熟した。品種によって大きさや糖度は異なるものの、大粒で高糖度の果実が収穫できたので、伊勢丹新宿店で販売されることとなった。ただし、初年度は出荷量に制限があるため、店頭に並ばないこともあるとのことだ。

【ロボティクス】パンデミックの影響、看護支援ロボットDiligent Robotics CEOとの興味深い話

筆者はここ数日、大きなプロジェクトに関わっていた(詳細については近日公開予定)ため、残念ながら最新ニュースにしばらく目を通しておらず、ロボティクスに関する今週の大きなニュースについてまったく把握していなかった。そこで、このコラムでその遅れを少し取り戻したいと思う。

そのニュースを取り上げる前に、少し別の話を紹介しよう。筆者は、パンデミックの期間中にユニークな経験をした興味深いロボティクス企業と対談する機会があった。

Diligent Robotics(ディリジェント・ロボティクス)がシリーズAを発表したとき、世界はそれまでとはまったく違ってしまったと言っていいだろう。2020年3月は今からそれほど遠い昔ではないが、現在に至るまでパンデミックによって世界中の医療機関は非常に大きな負担を強いられ続けており、その影響がこれほどまでに広範囲かつ長期間に及ぶとはほとんど誰も予想していなかった。病院スタッフの過労と人手不足の傾向は、新型コロナウイルス感染症の流行以前にも見られたが、流行後にはその傾向が顕著になり、同社の看護支援ロボットMoxi(モキシー)の需要が急激に増加した。

2020年実施された1000万ドル(約11億円)の資金投入がディリジェントの成長に貢献したことは間違いないが、同社は在宅勤務に移行する際に誰もが遭遇する課題に対処しながら、生産能力を高めるという難しいタスクに取り組んでいた。

2017年にVivian Chu(ヴィヴィアン・チュー)氏とともにディリジェントを設立した、Interactive Computing at Georgia Tech(ジョージア工科大学インタラクティブ・コンピューティング学部)のAndrea Thomaz(アンドレア・トマス)准教授は筆者たちと今週会い、2020年経験したユニークな課題と機会について話してくれた。

ロボティクス業界とディリジェントが、パンデミックによって受けた影響の度合いは?

さまざまな業界で労働市場が実に劇的に変化した。これはロボティクス業界とディリジェントの両方に言えることだが、この劇的な変化は、多くの従業員が退職しようとしていること、すなわち何か別のことを始めようとしていることと関係しているように思える。そして実際、多くの人が職を変えている。この傾向はあらゆる技術的な職業に見られ、我々の業界や医療業界で多くの事例が上がっている。とにかく、多くの人が何か別のことを始めようと考えている。パンデミックが始まる前も労働力に関する課題はあったが、今やそれが危機的なレベルになりつつある。

技術的な仕事に就きたいと思う人は常に少ないが、技術的な仕事の需要は常に高い。これはある意味、危機的な状況と言えるだろう。

この傾向はパンデミック前から始まっていた。パンデミックでそれが顕著になったに過ぎない。この傾向は、医療保険改革法(オバマケア)に端を発している。より多くの人が医療を受けられるようになったということは、病院に行って医療を受けられる人が増えたことを意味する。これが高齢化と相まって、必要な医療を提供するスタッフのさらなる不足を引き起こしている。

パンデミック発生の時点でロボットを採用していた病院の件数と、需要がその後どのように急増したかという観点から、需要を把握することはできるか?

我々はまだその情報を公開していない。来年の前半までには、その規模についてより具体的な数値を発表できるだろう。ただし、四半期ごとにロボットの出荷台数を2倍に増やしていることは確かだ。

そのようなロボットの運用に至るプロセスはどのようなものか?

これは、病院市場に関して非常に興味深いテーマであると考えている。このプロセスは、倉庫や製造における従来の自動化とは異なる。ロボットを運用する環境では、看護師や臨床医が働いている。ロボットは、そのような環境で人と一緒に作業をしなければならない。我々は、まず初めにワークフローを評価する。つまり、その環境で現在どのように業務が行われているかを評価するのだ。

画像クレジット:Diligent Robotics

パンデミックは企業の成長にどのような影響を与えたか?

パンデミック前は、製品の市場適合性が満たされていた。我々の研究開発チームの作業は、製品に変更をわずかに加えるだけの非常に小規模なものだった。製品を顧客に見せて価値を示すだけでよかった。しかし現在は契約の締結と納入が重要で、最短期間で導入し、耐久性を最大限高めることを考えることが必要だ。特にハードウェアの面では、製造プロセスと信頼性に関してどのように設計すべきかが大切だ。現在、当社のロボットが現場で1年以上稼働しており、以前と比べて信頼性が高まっている。今や、ロボティクスのロングテール現象が起こりつつあり、今後が楽しみだ。

パンデミックによって、ロボティクスの分野で驚くべき機能や需要が生まれたか?

当社の顧客のどの現場でも「そのロボットはコーヒーを持ってこられるようになるか」と看護師は口を揃えていう。モキシーがロビーのStarbucks(スターバックス)に行き、みんなのためにコーヒーを買ってくることを看護師たちは期待している。自分たちはスターバックスに行って並ぶ時間がないから、時間の節約になるというわけだ。実現できないわけではないが、積極的に試してみようとは考えていない。

つまり、モキシーにエスプレッソマシンを搭載する計画はないということか?

その計画が来年のうちに実現することはないだろう。

近い将来、資金をさらに調達する予定はあるか?

現在、増資の計画中だ。今のところ順調だが、顧客からの需要が非常に高まっているため、チームを増強してロボットの出荷台数を増やすのは、やぶさかではない。

現時点では米国市場に注力するつもりか?

当面はその予定だ。当社では、世界的に展開する戦略について検討を始めている。2022年中に当社の製品が世界中に行き渡るとは考えていないが、すでに多くの引き合いが来ている。現在、販売パートナーを選定中だ。世界各地のクライアントから、1カ月に何件も問い合わせが来ている。今のところ、それらのクライアントと積極的に進めているプロジェクトはない。

画像クレジット:Tortoise / Albertsons

資金調達とコーヒーの配達については、別の機会に取り上げよう。今週は、配送関連で注目の話題がいくつかあるので紹介しよう。まず、過去に何度も取り上げたTortoise(トータス)だが、同社のリモート制御による配達ロボットのチームに追い風が吹いてきた。米国アイダホ州を拠点とするKing Retail Solutions(キングリテールソリューションズ)との取引によって、ラストワンマイル配送用に500台を超えるトータスのロボットが米国内の歩道に導入される。

CEOのDmitry Shevelenko(ドミトリー・シェベレンコ)氏は「未来の姿がニューノーマルになるというこの新しい現実に、誰もが気づき始めている。ラストワンマイル配送で時給20ドル(約2300円)稼ぐスタッフを動員しても、想定されるどんな状況でも消費者の期待に応え続けるということはできない。単純計算は通用しないのだ」と語る。

先に、Google(グーグル)のWing(ウィング)は、同社による提携を発表した。ウィングは、オーストラリアの小売店舗不動産グループであるVicinity Centres(ビシニティ・センターズ)と提携し、ドローンを使用した配達プログラムの範囲をさらに拡大する。ウィングは、10万件の配達を達成したという先日の発表に続き、オーストラリアのローガン市にあるグランドプラザショッピングセンターの屋上からの配達件数が、過去1カ月間に2500件に達したと発表した。

ローガン市の住民は、タピオカティー、ジュース、寿司を受け取ることができる。今や美容と健康に関する製品まで配達できるようになった。ウィングは「一般的な企業の建物には屋上があるため、当社の新しい屋上配達モデルによって、ほんの少しの出費とインフラ整備だけで、さらに多くの企業がドローン配達サービスを提供できるようになる」と語る。

画像クレジット:Jamba / Blendid

ジュースといえば(といっても、まとめ記事で筆者がよく使う前振りではない)、米国サンフランシスコのベイエリアを拠点とするスムージーロボットメーカーのBlendid(ブレンディド)は先に、Jamba(ジャンバ)のモールキオスク2号店に同社の製品を導入すると発表した。このキオスクは、米国カリフォルニア州ロサンゼルス郡のダウニー市のモールに今週オープンした。ちなみにダウニー市は、現在営業しているMcDonald’s(マクドナルド)の最も古い店舗がある都市でもある(Wikipediaより)。

これは時代の波だろうか。それとも何かのトリックだろうか。答えはどちらも「イエス」だ。

ジャンバの社長であるGeoff Henry(ジェフ・ヘンリー)氏はプレスリリースで「Jamba by Blendid(ジャンバ・バイ・ブレンディド)のキオスク1号店オープン後に、Stonewood Center(ストーンウッド・センター)に試験的にキオスク2号店をオープンして、モールの買い物客に新鮮なブレンドスムージーを販売できることをうれしく思います。ジャンバ・バイ・ブレンディドでは最新の非接触式食品提供技術を採用しているため、当社の現地フランチャイズ店は、ジャンバ好きのファンにスムージーを簡単に提供できます」と述べている。

画像クレジット:Abundant Robotics

ここで、フルーツに関するビジネスの果樹園サイドに注目しよう。Robot Report(ロボットレポート)に今週掲載された記事には、Wavemaker Labs(ウェーブメーカーラボ)が今夏に廃業したAbundant Robotics(アバンダント・ロボティクス)のIPを取得したことが紹介されている。残念ながら、アバンダントのリンゴ収穫ロボットが復活するわけではなさそうだ。どうやら、ウェーブメーカーのポートフォリオスタートアップ企業であるFuture Acres(フューチャー・エーカーズ)のロボティクスシステムに、このIPが組み込まれるようだ。

最後に、アームに搭載されたRFアンテナとカメラを使用して紛失物を探す、MITが研究しているロボットを簡単に紹介しよう。以下はMITの発表からの引用文だ。

このロボットアームは、機械学習を使用して対象物の正確な位置を自動で特定し、対象物の上にある物を移動させ、対象物をつかみ、目標とする物体を拾い上げたかどうかを確認する。RFusionにはカメラ、アンテナ、ロボットアーム、AIが包括的に統合されており、どんな環境でも的確に機能する。特別な設定は不要だ。

画像クレジット:Diligent Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)