都市型温室のGotham Greensが2022年中に設置面積の倍増を計画

ニューヨークの多くの人々と同様、筆者もブルックリンで初めてWhole Foods(ホールフーズ)に設置されたGotham Greens(ゴッサム・グリーンズ)の温室に興味を惹かれた。ゴーワヌスの巨大なレンガ造りの建物の上に、4つのガラス張りの構造物がある光景は、都市型農業の背後にある考え方の非常に優れた縮図だ。

特に、既存の建物の上に建てることで、より貴重な地上の面積を独占する必要性を排除することができる。また、農場から食卓までの直接的なパイプラインという概念も説得力がある。より新鮮な農産物を確保するためだけでなく、レタスを満載したトラックを何千キロも走らせるという環境破壊的な影響を排除するという意味においても、この部分は重要だ。Gothamの温室は、垂直農法と定義できるものではないが、同じ根本的な原理をいくつか利用している。

このニューヨークの企業は今週、2022年中に温室の面積を倍増させる計画を発表した。Gothamは2022年中に、温室の生産能力を60万平方フィート(約5万5750平方メートル)から120万平方フィート(約11万1500平方メートル)まで拡大する予定だという。これにはテキサス州、ジョージア州、コロラド州で現在建設中の施設や、シカゴとロードアイランド州での拡張工事が含まれる。これらが、ニューヨーク州、ロードアイランド州、メリーランド州、イリノイ州、コロラド州、カリフォルニア州にある既存の施設に加わる。

従来の農業に比べると、温室は年間を通じて栽培できるなど、多くの利点がある。特にオランダをはじめとする欧州諸国では広く普及しており、現在は関連分野である垂直農法と並び、さらなる注目を集めている分野だ。垂直栽培は、当然ながら同じ面積でより多くの作物を栽培することができる。一方、温室はLEDに頼らず、より直接的な太陽からの光で栽培することができる。

「私たちの目標は、Gotham Greensの新鮮な野菜を、我々の温室から車で1日以内に、全米の90%の消費者に届けることです。今回の戦略的な温室拡張プロジェクトによって、私たちはこのマイルストーンにさらに近づくことができます」と、共同設立者でCEOのViraj Puri(ヴィラージ・プリ)氏は述べている。

ニューヨークのような都市部への進出が標準的であると考えると、Gothamのカリフォルニア州への進出は、当初は少々謎だった。同州では、すでに米国の農作物の13%以上が生産されているからだ。しかし、同社によれば「気候変動の影響を受けている米国の地域に、意図的に事業を拡大している」とのことだ。

画像クレジット:Gotham Greens

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

The EVERY Companyが卵由来でない卵白で作ったマカロンを米国発売、分子レベルで成分把握・人工酵母を利用し再現

The EVERY Companyが卵由来でない卵白成分で作られたマカロンを米国発売、分子レベルで成分把握・人工酵母など利用し再現

Kimberly Tsai / Business Wire

米国で、鶏卵由来でない卵白で作られたマカロンが発売されました。これは鶏卵の卵白とほぼ同じ成分ものを、人工酵母を使って作り出すmicrobial precisionと呼ばれる技術を使用しています。

この技術は牛乳や卵といった動物性食品の成分を分子レベルまで分析、それと同様のものを微生物を利用して作り出します。たとえば、今年はじめにはこの技術を使って牛乳を使わずに作り出された乳成分を使った乳製品が米国で発売されました。

The EVERY Companyと称する企業は、過去数年かけて卵白に含まれるタンパク質を人工酵母で作り出す研究をしてきました。

ニワトリを必要としない卵白が作れるということは、コストが充分に安価になればその分タマゴが必要なくなり、さらにはニワトリを飼育するための養鶏場設備が必要なくなり、そこでの活動で産生される温室効果ガスの排出を減らすことが可能になって、持続可能性が高まると考えられます。

The EVERY CompanyのArturo Elizondo CEOによると、人工酵母で作り出される卵白はその機能や性質も本物とそっくりになるため、泡立ててメレンゲにしたり、中華麺、パン、パスタ、プロテインバーに至るまで加工する際の様子なども本物と同様に、また風味を損なわずに扱えるとのこと。ただし、あくまで性質は本物の卵白と同じになるため、卵アレルギーを抱える人には不適であることに注意が必要です。

同じ方法で卵白タンパク質の生成に取り組んでいるのはThe EVERY Companyだけではなく、今年初めには、フィンランド大学の研究チームが、人工の菌類から卵白の主要な成分であるオブアルブミンの生産に成功したと発表し、この方法であれば養鶏によるタマゴの生産に比べて温室効果ガスの排出を半分に抑えることができると推定していました。

microbial precision方式の卵白成分の生産を拡大しようとすれば、さらに多くの研究や生産設備が必要になります。しかしThe EVERY Companyはそれが食品の製造方法を変える方法になると楽観的に構えており、Elizondo氏も「我々の食料システム、ひいては世界を真に変革する技術だと信じている」と述べ、将来の世界の食糧供給を様変わりさせることになると強調しました。

もし本当にこの技術が普及していくなら、将来的に養鶏業者は新たな職探しをしなければならなくなるかもしれません。一方、これから人類が目指して行くであろう月や火星などでの生活においてこの技術が利用できるようになれば、大量のニワトリを連れて行くことなく、なにかと用途の多いタマゴの成分を使った食品を現地生産できるようになるかもしれません。ただ、オムライスやタマゴかけご飯好きとしては、卵白だけでなく、タマゴの黄身の部分も作れる技術がはやく確立して欲しいところです。

ちなみに今回の鶏卵を使わないマカロンは、パリ発祥で現在はサンフランシスコとパロアルトを拠点とするフレンチマカロン専門店Chantal Guillonとの協力で作られました。Trip Advisorなどで見たところ、本場フランスの味を提供する店として非常に人気が高いとのことです。

(Source:The EVERY Company(Business Wire)。Via New AtlasEngadget日本版より転載)

Mirukuは動物ではなく植物から乳製品を生み出す

Mirukuはニュージーランドのフードテック企業で、分子農業の手法を利用して植物の細胞を小さな工場へとプログラミングし、タンパク質や脂肪、糖分など、従来は動物が作ってきた分子を生産しようとしている。

同社は2020年にAmos Palfreyman(アモス・パルフリーマン)氏とIra Bing(イラ・ビン)氏、Harjinder Singh(ハージン・ダーシン)氏そしてOded Shoseyov(オデッド・ショセヨフ)氏ら、全員が乳業や植物科学の経験があるメンバーが創業した。現在、企業や研究開発者とのパートナーシップにより、Mirukuのラボや温室で開発されており、規模を拡大し、地域横断的に実施される予定だ。

CEOのパルフリーマン氏の説明によると、同社のアプローチには植物作物の増殖と工学的手法によりその細胞を乳製品に変える工程が含まれている。これは、精密発酵のような技術を利用する同分野の競合他社とは異なっている。彼らは培養室の中で乳タンパクを醸造し、外部からの動物の細胞を利用して、培養室の中で乳のビルディングブロックを作っている。

Mirukuがそれらと違うのは、植物作物を増殖して本物の乳のビルディングブロックを植物自身の中で、太陽のエネルギーを利用して作ることだ。その意味では同社は、タンパク質を乳牛よりも効率的に生み出し、乳牛の役割をなくすことによって、畜産への依存を減らし、それにより水や土壌や環境へのダメージを抑える。

「私たちのタンパク質成分は、本物の乳製品のような味と匂いだけでなく、本物の乳製品と同等の栄養価を持つ乳製品を作ります。それらは、おいしいチーズサンドイッチを食べて消化した後に体が使うのと同じアミノ酸構成要素で体を作り、修復するのを助けます。そして、チーズケーキや上等なペコリーノチーズのようなおいしいものを作ったり焼いたりする本物の乳製品のように機能します」とパルフリーマン氏はいう。

フードテックの課題は、十分な量のタンパク質や食品原材料を作れるほどの規模を実現することにあるが、Mirukuの場合それは「植物の正しいプログラミングにより、哺乳類のタンパク質と同等の構造と機能を作り出す技術的な課題が大きい」とパルフリーマン氏は語る。

彼によると、プラントの規模拡大は単純明快だ。目的とするタンパク質を作り出せる植物を作り出せたら、その種子で生産の規模拡大はできる。それは温室用の一握りでもよいし、農場用の大量の種子でもよい。

複雑で難しいのは、特定の特徴を作り出して、それを増殖することだ。それは往々にしてエネルギーの使用量と形質のレベルとのトレードオフを要する。しかしパルフリーマン氏が信じているのは、Mirukuの計算生物学の利用と技術の経済分析で作り出される最適形質が、スケーラビリティのその部分を解決するだろうという点だ。

同社はまだ開発途上だが、パルフリーマン氏の構想では、2〜3年後には同社のプロテインが商用化されているだろう。しかし、その前にはプロトタイプと概念実証が必要だ。彼の予想では最初の製品は既存の食品企業との提携によるものになり、企業が作る食品のタンパク質成分を提供することになるだろう。

それでも、パルフリーマン氏が主張するのは、Mirukuがアジア太平洋地域では初めての、分子農業による乳製品スタートアップであることだ。同社のような企業はすでに世界各地にあって、たとえばNobell Foodsはすでに分子酪農を手がけており、NotCoClimax FoodsPerfect Dayなどは、動物を使わない技術で5000億ドル(約60兆円)の酪農市場に挑戦している。過去半年以内では、下記の各社がベンチャー資金を調達している。

  • Better Dairyは精密発酵の技術でチーズを作っている。2月に2200万ドル(約26億円)を調達
  • The EVERY Companyは、植物を使って卵を作っている。12月に1億7500万ドル(約210億円)を調達
  • Perfeggtも、植物から卵を作っている。11月に280万ドル(約3億4000万円)を調達し、3月にシードラウンドを390万ドル(約4億7000万円)に拡張した
  • Stockheld Dreameryは、さや豆の野菜からチーズを作り、9月に2000万ドル(約24億円)を調達した。

Mirukuは最初の18カ月、創業者たちの自己資金でやってきたが、このほど240万ドル(約2億9000万円)のシード資金を調達した。投資をリードしたのはMovacで、Better Bite VenturesやAhimsa Investments、Aspire Fundらが参加した。

これにより同社は、本格的に拡大できることになり、パルフリーマン氏のいう正しいパートナーを見つけて同社を顧客に結びつけ、次のラウンドのための基礎を築くことになる。パルフリーマン氏によると、次の資金調達は2023年とのこと。

新たな資金は、技術者の増員とパートナーシップの開拓、そして開発プログラムのスピードアップに充てられる。Mirukuは2022年すでに社員を増員し、パルフリーマン氏としては、毎年倍増したいのことだ。

Mirukuはすでに大手食品企業と組んで、その製品開発に協力している。また、いくつかの国で開発事業に参加し、その中には環境や気候関連の事業もある。また、生産者や調合師、そしてブランドとの協力もある。

パルフリーマン氏によると「私たち確かにアーリーステージの企業だが、すでに消費者市場に近い戦略的パートナーと一緒に急速に進歩しています。イノベーションと成長により、資本が必要になり、最初のラウンドを閉じたばかりですが、そう遠くない未来にそれによる成長を経験するでしょう」という。

画像クレジット:iStock

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

飲食店向けSaaS「delico」を手がけるフードテックキャピタルが1.4億円のシード調達、事業強化と加盟開発事業加速

飲食店向けSaaS「delico」(デリコ)をはじめ飲食店向けテック事業を展開するフードテックキャピタルは3月16日、シードラウンドとして合計1億4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、西山知義氏(ダイニングイノベーション創業者)など複数の投資家。調達した資金は、主力事業であるdelicoの開発や、加盟開発事業の成長にあてる。主にシステム開発と人材採用に充当するという。

delicoは、フードデリバリーサービスの注文一元管理サービス。コロナ禍もあって、飲食店から「各店舗の業態を増やしたい」「導入プラットフォームを増やしたい」というニーズが増えているものの、フードデリバリーごとに管理端末が必要となってしまう「タブレット地獄」や、現場・本部における管理が煩雑になるという課題により実行が難しくなっている。

delicoはその課題解決策を目指しており、1台のタブレットですべてのプラットフォームからオーダーを受注可能となる。同様に、1台の専用プリンターでオーダー伝票の印字を行え、配達スタッフへの受け渡しまでがスムーズに進められる。マネージャー機能により、一元管理された売上の可視化も可能となっており、スピード感のある業態改善などを実現する。飲食店向けSaaS「delico」を手がけるフードテックキャピタルが1.4億円のシード調達、事業強化と加盟開発事業加速

加盟開発事業は、同社がダイニングイノベーションと「七宝麻辣湯」(チーパオマーラータン)のフランチャイズ加盟開発を目的とする業務提携を行っていることから進めているもの。七宝⿇辣湯の加盟店候補先との相談窓口として、物件審査および出店に関わる事業計画の策定・加盟契約締結をサポートしている。

2020年12月設立のフードテックキャピタルは、「テクノロジーで食の未来をつくる」をミッションに掲げ、食業界のプロ、テクノロジーのプロ、ビジネスのプロが三位一体となって飲食業界を変革すべく事業を展開。テクノロジーとデザインを融合し、30年後の日本の食がより良いものになるために、食の未来を作るとしている。

ミツバチを飼わずに精密発酵と植物科学で本物のハチミツを生産するMeliBio

MeliBioは、9000年の歴史があるハチミツの生産方法を一変させようとしている。同社の生産方法はハチをいっさい使わず、精密発酵と植物科学を利用する。

ハチミツ企業の役員だったDarko Mandich(ダーコ・マンディッチ)氏と、科学者でアマチュアのシェフでもあるAaron Schaller(アーロン・シャラー)氏は、全世界で100億ドル(約1兆1878億円)のハチミツ市場にサステナビリティを導入することを狙って、2020年にサンフランシスコで同社を立ち上げた。マンディッチ氏によるとこれまでのハチミツ産業は「サプライチェーンと品質管理が破綻している、最も持続可能性を欠く農業分野」だ。

マンディッチ氏の説明によると、彼の着想はWiredの記事でハチを巣箱で飼うやり方は、これまで2万種のハチの野生在来種を断ち、ハチの集団の多様性(ダイバーシティ)を失わせてきたという指摘を読んだときに生まれた。

「食べ物を持続可能にし、もっと栄養豊富にし、ハチたちをはじめ愛すべき動物たちを犠牲にしないようにするために、食品産業を変えたい」とマンディッチ氏はいう。

ただしハチの分野ではすでにBeewiseのような企業が精密なロボットを使って巣箱を自動化したり、またハチの健康管理をするBeeHeroのような企業もある。

関連記事:IoTでミツバチの動きや健康状態をリアルタイムで追跡するBeeHeroの精密受粉プラットフォーム

イスラエルのBee-ioは、同社が特許を持つバイオ技術を用いるハチを使わないハチミツ生産方法を追究しているが、しかしマンディッチ氏によるとMeliBioは、ハチを使わずに本物のハチミツを生産する最初の企業だ。製品はニューヨークの4つのレストランでテストを行い好評だった。

MeliBioのハチのいないハチミツ生産方法は、二段階になっている。まず植物科学により、ハチがどのように植物にアクセスして、蜜をつくるために何を得ているのかを理解する。

第2段階では、分子の組成を改良して製品とその大量生産を可能にする。そこに登場するのが、精密発酵だ。この精密発酵が、目的を達成するために役に立つ有機物を特定することで、食べ物にかけるだけでなく、パンなどでオーブンで焼けるようにするなどいろいろな使い方ができるようにする。

同社はこのほど570万ドル(約6億8000万円)のシード資金を調達して、外食産業やB2Bアプリケーションへの市場拡大に努めている。マンディッチ氏によると、すでにMeliBioは30社と提携しており、製品の評価事業に参加しているという。

シードラウンドをリードしたのはAstanor Venturesで、これにSkyview CapitalやXRC Labs、Collaborative Fund、Midnight Venture Partners、Alumni Ventures、Big Idea VenturesそしてHack Venturesらが参加した。

MeliBioのチーム。左からMattie Ellis(マティー・エリス)氏、アーロン・シャラー氏、ダーコ・マンディッチ氏、Benjamin Masons(ベンジャミン・メイソン)氏(画像クレジット:MeliBio)

Astanor VenturesのパートナーであるChristina Ulardic(クリスティーナ・ウラルディック)氏は次のように述べている。「MelBioの、植物科学と精密発酵を結びつけて次世代の食品技術を開発していくアプローチはすばらしい。ハチミツの商業的な生産のサプライチェーンから負担を取り除き、授粉者のダイバーシティを回復することに、ダーコとアーロンは情熱を燃やしている。そんな彼らの最初の製品にはとても感動しました」。

新たな資金は研究開発の継続と、微生物を利用する発酵工程の規模拡大、そして4月に予定している製品の正式な立ち上げに使われる。またマンディッチ氏は、正社員を年内に現在の4名から10名に増やそうとしている。14名の契約社員は現状のままだ。

同社はまだ売上を計上していないが、マンディッチ氏は製品が発売され、大手食品企業やレストランなどとの契約が実現すれば状況も変わると信じている。

次にマンディッチ氏が構想しているのは、市場規模5000億ドル(約59兆3760億円)の原材料市場に進出して、同社の精密発酵技術で未来の市場のマーケットシェアを獲得することだ。

「私たちは科学とオルタナティブな方法を利用して野生在来種のハチの負担を減らしています。ハチミツの需要は伸びていますが、私たちの方法ならハチの生物多様性を保全することができます。米国の企業は世界中からハチミツを輸入していますが、その過程はますます複雑になっており、品質も保証されていません。本物のハチミツでないこともありえます。しかし国内生産ができればサプライチェーンを単純化でき、サプライヤーは国内だけなので、納品の遅れや品質の問題もありません。MeliBioはハチミツを1日3交替、365日の稼働で生産するため、市場の他の製品と価格でも十分競合できるでしょう」とマンディッチ氏はいう。

画像クレジット:MeliBio

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

生産者から直接届く果物サブスク「食べチョクフルーツセレクト」リニューアル、1人暮らしでも楽しめるレギュラーコース新設

生産者から直接届く果物サブスク「食べチョクフルーツセレクト」がリニューアル、1人暮らしにもおすすめのレギュラーコース新設

産直通販サイト「食べチョク」(Android版iOS版)を運営するビビッドガーデンは3月16日、旬の果物が生産者から直接届く定期便「食べチョクフルーツセレクト」をリニューアルしたことを発表。これまでの「プレミアムコース」に加え「レギュラーコース」を新設し、料金プランが選べるようになった。

食べチョクフルーツセレクトは、食べチョクが厳選した高品質のフルーツをユーザーが毎月選択できる果物の定期便。今回のリニューアルで、3人以上で暮らす家庭に合った量のプレミアムコース(月額4480円から。送料込・税込)と、単身世帯や2人暮らしの家庭でも楽しめる量のレギュラーコース(月額3780円から。送料込・税込)のどちらかを選択できるようになった。新設されたレギュラーコースは、量は少なめ・低価格で、フルーツの品質はプレミアムコースと同等。ビビッドガーデンは、ライフスタイルに合わせて旬のフルーツが届く生活を楽しんでもらいたいという。

  • 生産者直送で、新鮮なフルーツが届く:一般的には早めに収穫して出荷されることが多いフルーツ。一方食べチョクでは、生産者直送だからこそ、畑で食べごろの直前まで熟されたフルーツが届く
  • 毎月2〜3つのフルーツの中から好みのフルーツを選べる:例えば、4月のフルーツはいちご、不知火、マスクメロンの中から選択可能。夏にはパイナップル、秋にはシャインマスカットなども選べる
  • 季節ごとにいちばん旬のフルーツが届く:食べチョクに登録している全国6700軒の生産者の中から、その時期で旬のおいしいフルーツを選んで届けるという
価格は、レギュラーコース月額3780円から(送料込・税込)、プレミアムコース月額4480円から(送料込・税込)

価格は、レギュラーコース月額3780円から(送料込・税込)、プレミアムコース月額4480円から(送料込・税込)

くら寿司、「AI桜鯛」を3月11日から数量限定で全国販売―ウミトロン開発のAI搭載スマート給餌機で生育した真鯛を商品化

くら寿司、「AI桜鯛」を3月11日から数量限定で全国販売―ウミトロン開発のAI搭載スマート給餌機で生育した真鯛を商品化

「【愛媛県産】AI 桜鯛(一貫)」。販売期間は2022年3月11日~3月15日(なくなり次第終了)

ウミトロンは3月4日、AI・IoT技術を活用したスマート給餌機「UMITRON CELL」(ウミトロンセル)で育成した真鯛が、回転寿司チェーンの「くら寿司」において販売されることを発表した。「【愛媛県産】AI 桜鯛(一貫)」として、3月11日から3月15日まで数量限定で全国で取り扱う(なくなり次第終了)。価格は110円。同養殖技術で育てた魚を大手外食チェーンで商品化するのは初めての試み。

ウミトロンは、水産養殖にAIやIoT、衛星リモートセンシングなどの技術を活用することで、持続可能な水産養殖の実現に取り組むスタートアップ企業。同社のUMITRON CELLは、スマートフォンなどから生け簀の魚をリアルタイム動画で確認したり、遠隔操作での餌やり操作を行えたりできる水産養殖者向けスマート給餌機。くら寿司、「AI桜鯛」を3月11日から数量限定で全国販売―ウミトロン開発のAI搭載スマート給餌機で生育した真鯛を商品化くら寿司、「AI桜鯛」を3月11日から数量限定で全国販売―ウミトロン開発のAI搭載スマート給餌機で生育した真鯛を商品化

また、AIが魚の食欲を判定して餌量やスピードを最適化・制御できるため、水産養殖者の労働負荷削減、魚のサイズや品質を保つための給餌をはじめ、海への餌の流出を防ぐなど環境面での配慮にも貢献。現在、近畿・四国・九州地域を中心に、主に真鯛、シマアジ、サーモントラウトなどの魚種に導入されている。

くら寿司は、2010年より「漁業創生」をテーマに様々な活動を行なっており、2021年11月には業界初の水産専門会社である子会社「KURA おさかなファーム」を設立。漁業における人手不足と労働環境の改善を目指し、UMITRON CELLを導入した「スマート養殖」の実証実験として、2021年春から愛媛県内で真鯛の委託養殖を開始した。今回販売するAI桜鯛は、このスマート養殖で育てた真鯛で、大手外食チェーンでの商品化は初の試みとなる。

ウミトロンは、UMITRON CELLを活用した真鯛の委託養殖事業を、KURAおさかなファームとの協業で2021年6月頃から本格始動する予定。養殖用の稚魚や餌を委託養殖事業者に提供し、スマート養殖で寿司ネタにできる大きさまで生育してもらい、養殖した魚の全量をKURAおさかなファームが買い取る計画となっている。今後もくら寿司およびKURAおさかなファームとの協働により、クオリティの高い商品の安定供給と、養殖生産者の経営リスクや労働負荷の軽減・収入の安定化に貢献したいという。

近畿大学、大豆イソフラボンを与えチョウザメをすべてメスにすることに成功―キャビア生産の安全な効率化に期待

近畿大学、大豆イソフラボンを与えチョウザメをすべてメスにすることに成功―キャビア生産の安全な効率化に期待

近畿大学水産研究所新宮実験場(和歌山県新宮市)で飼育研究しているコチョウザメ

近畿大学は3月4日、大豆イソフラボンを含んだ飼料を与えることで、コチョウザメをすべてメスにすることに成功したと発表した。これにより、キャビアの生産の効率化と、オスの活用という問題が大きく改善される。

コチョウザメは、東ヨーロッパからロシアにかけて分布するチョウザメの一種で、チョウザメ科の中ではもっとも成長が早く、3年ほどでメスの体重は1kgに達し卵を持つようになる。コチョウザメのキャビアは「スターレット」と呼ばれ、小粒ながら稀少な品種として珍重されている。

しかしチョウザメは、オスとメスが1対1の割合で生まれるため、キャビアの生産効率が低い。そこで、近畿大学水産研究所新宮実験場の稻野俊直准教授を中心とする研究ブループは、 2021年5月から、大豆イソフラボンを用いたコチョウザメのメス化の研究を行ってきた。研究グループは、ふ化後2カ月のコチョウザメを25匹ずつ5つのグループに分け、その3つに大豆イソフラボンの一種であるゲニステインを含んだ飼料を、ゲニステインの配合量を変えて180日間与え、その後70日間にはゲニステインを含まない一般的な飼料を与えた。1つのグループには180日間女性ホルモンを含む飼料を与え、残る1つのグループには一般的な飼料を与えた。

その結果、ゲニステインを少量含む飼料のグループではメス化は見られなかったが、もっとも多く(1gあたり1000μg・マイクログラム)を含む飼料を与えたグループの中から8匹を抽出して調査した結果、コチョウザメのすべてがメス化していた。また、遺伝的にはオスでありながら卵巣を持った個体数の割合も100%だった。

研究グループは、この研究に先立ち、大豆イソフラボンを溶かした水につけナマズをメス化する実験にも成功しているが、大豆イソフラボンの経口投与でコチョウザメをメス化させたのは日本で初めてとなる。今後は、大豆由来の飼料原料によるチョウザメのメス化の研究に取り組むということだ。

宅配デリのノンピが3.4億円調達、シェフのこだわりを「冷凍で実現」したフローズンミール定期配送「nonpi A.R.U.」開始

宅配デリのノンピが3.4億円調達、シェフのこだわりを「冷凍で実現」したフローズンミール定期配送「nonpi A.R.U.」開始

日本全国に料理と飲み物を1箱にしたフードボックスをお届けする「nonpi foodbox」を展開するノンピは3月3日、総額3.4億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、テラスカイベンチャーズ、みずほキャピタル、静岡キャピタル、CRGホールディングス、ダブルシャープ・パートナーズ、MOVER&COMPANYなど、累計調達額は5.5億円となる。調達した資金は、新事業「nonpi A.R.U.」開始に伴うプロダクト開発および採用・組織体制の強化、キッチンレスの社内カフェテリア運営「nonpi LUNCH」、コミュニケーションフードデリバリー「nonpi foodbox」のサービス強化にあてる予定だ。

トップシェフが手掛けるプレミアムフローズンミール定期配送サービス「nonpi A.R.U.」

新事業「nonpi A.R.U.」は、ミシュラン星付きレストラン「Jean-Georges本店」出身の米澤文雄氏など、トップシェフが手掛けるプレミアムフローズンミール定期配送サービス。今回は、一般販売が開始される2022年6月に先駆けて、応援購入サービス「Makuake」において同サービスの利用者を3月3日から募集する。

またMakuakeでのプロジェクトは、ノンピにとって初めての挑戦という。これに合わせ、フローズンミールで絶対再現したいと考えていた米澤シェフによる3食構成セットを開発した。米澤シェフの料理は、スパイスをたくみに使い食材の良さを引き出し完成させるというもので、冷凍での再現はとても難しいそうだ。もし実現できれば従来のの冷凍食にはなかった新たな食を提供できるとして挑戦した。

米澤シェフが手がける3食構成のセット

・プラントベースハンバーグ 風味豊かなフレッシュトマトソースで
・赤魚のグリル コーンチャウダー仕立て
・チキングリル レッドカレー

質が高く環境や健康にも配慮したフローズンミール

宅配デリのノンピが3.4億円調達、シェフのこだわりを「冷凍で実現」したフローズンミール定期配送「nonpi A.R.U.」開始ノンピは、今回のミッションとして、「フローズンミールの無限の可能性を探求し、最高のジャパンクオリティを世界に届ける」を挙げている。

例えば、フランスでは冷凍食品としてピカールが著名だが、同国のような平均所得額が高い国ほどフローズンミールが受け入れられているそうだ。今後、所得が向上していくエリアでもフローズンミールは受け入れられていくだろうと、今回のプロジェクトが始まった。今回は対象を洋食に絞ったものの、今後はプレミアムフローズンミールとして、特に和食に注力していきたいという。

シェフのこだわりを「冷凍で実現」という発想で挑んだメニュー開発

宅配デリのノンピが3.4億円調達、シェフのこだわりを「冷凍で実現」したフローズンミール定期配送「nonpi A.R.U.」開始メニュー開発では、「冷凍でできるもの」を作るのではなく、最高のシェフたちのこだわりを「冷凍で実現する」という発想で挑んだ。イタリアン、アジア、和食など、今までの冷凍食品ではあまりなかった、レストランの味を常に更新していくことで飽きさせない点に留意した。マイナス1度からマイナス5度の間が、食品の劣化が最も進む温度帯といわれているが、この時間が短くなるよう急速冷凍技術を採用。また、1つ1つの食材を冷凍・解凍し、食材の性質を検査。再現性の高い食事を凍らせ、そのままレンジで温めるだけで冷凍前の状態に戻せるという。

さらに、大豆ミートなどプラントベース食材を利用した料理を採り入れたり、サトウキビなど環境に配慮した素材を使用したりと、サステナビリティも意識。すべてのメニューは500Kcal以下、保存料・合成着色料不使用と、健康にも配慮している。

1人1人の生活リズムに合わせて発送可能

今回のプレミアムフローズンミールは定期配送サービスとなっており、1人1人の生活リズムに合わせて発送可能。テレワーク中のランチに手軽においしい食事をとりたい1人暮らしの人や、共働きで食事の準備が難しいけれどおいしく健康的な夕食を用意したい子育て世代などをペルソナとして想定しているという。同プロジェクトを担当したギヨン氏は、都内でプロダクトマネージャーとして働いている2児の母。平日はあわただしく、なかなか料理に時間をかけられないため、その分おいしい食事を子供たちに食べてほしいと、同企画を開始したという。

宅配デリのノンピが3.4億円調達、シェフのこだわりを「冷凍で実現」したフローズンミール定期配送「nonpi A.R.U.」開始

リモートワーク中での利用例

なお筆者は、実際に3食セットを試食させてもらったところ、まさに開けてレンジで温めるだけでおいしい食事が楽しめる一品だった。色の豊かさにも配慮をしたとのことで、赤・黄・緑といった食欲をそそる色が各プレートごとにちりばめられている。何より、特にタンパク質系の食品の再現度が高く、これまでの冷凍食品では得難かったジューシーな肉感、そして作りたてのようなソースの旨味が特徴的に感じた。レストランの食事のような味わいを手軽に楽しみたいという方におすすめしたい。

食料供給の未来を守るため、屋内栽培をスマート化するSource.ag

アグテックスタートアップのSource.agは米国時間3月1日、温室をよりスマートにするために1000万ドル(約11億6000万円)の投資を獲得したと発表した。創業者たちは、気候変動と人口増加にともなう世界的な食糧需要の急増により、より多くの作物が屋内で収穫量を確保せざるを得ないという地平を見据えている。温室に関する記事を書いていると、種(たね)とシード資金(seed)でダジャレを書きたい誘惑に駆られるが、ここではもう1つのダジャレ、成長産業(growth industry、栽培産業)についてご報告しよう。

1000万ドルの投資ラウンドをリードしたのはAcre Venture Partnersで、E14 fundと、食品専門のベンチャーであるAstanorが参加した。他に、同社の顧客ともいえるサラダ菜栽培の国際的な協同組合Harvest Houseやトマト専門のAgrocare、ピーマン専門のRainbow Growersなどもこの投資に参加している。

同社は、温室、いわゆるハウスをよりスマートにするためのソフトウェアを開発している。同社の主張では、温室農業(ハウス栽培)は安全で信頼性があり、気候耐性のある食糧生産方式として、従来の農業の最大15倍の収量を、20分の1の水量で可能にする。Sourceがさらに独特なのは、データとAIを利用して温室の生産効率を上げ、各作付けの高い収量を維持できることだ。

AcreのマネージングパートナーであるLucas Mann(ルーカス・マン)氏は「食糧のグローバルな供給は気候変動でその希少性と難度が増しています。今後はそれがもっと苛酷なものになると思われます。そのため効率の良い大規模な栽培方式により、農業のフットプリントを軽くすることを目指さなくてはなりません。温室農業はすでに実証済みの有効なソリューションですが、イノベーションがなければ需要に応えることができません。その点でSource.agは、グローバルなスケーラビリティを実現するための重要な役割を担うことができるはずです」と語る。

資金は、製品開発の加速と商用化コラボレーションの拡張に充当される。

SourceのCEO、Rien Kamman(リエン・カンマン)氏は次のように説明する。「ひと口でハウスと言っても、いろいろなかたちや方式があり、いずれも技術的には大なり小なり進歩しています。しかしハイテクともなれば、湿度や潅水や栄養分など、人が思いつく限りのあらゆる環境要素をコントロールしたいものです。たとえばトマトは、土ではなくロックウールのようなものが最適です。そのような育て方は、農地に依存しません。しかも十分にコントロールできるため、毎日の細かい管理も可能です。農家が日々調整するパラメータは60から70ほど存在します。それにより作物の育ち方が決まるのですが、植物に何を与えるべきか、植物固有のパラメータはどれも最適状態か、わき芽かきや整枝はどこをいつやるべきかなど、毎日、正しい決定をしなければなりません。本来であればこの決定は一種の職人技になるため、これまでの農業と同じく難しいものです。1人前になるには、数十年が必要です」。

栽培の難しさは歴然としたものだが、Sourceはこれらすべての成長パラメータを監視し、それを収量の履歴データや市場価格と組み合わせて農家の体験を改善する。

「私たちのシステムには2つの側面があります。1つは、植物の現状を評価するレコメンドシステム。リソースの価格や天候などを先読みして予想、それに基づいて極めて具体的なレコメンドを農家に提供します。サステナビリティと収量を最大化するために、植物自身と温室内の気象に対して今日、明日何をすべきか、たとえば刈り込みや枝下ろしはどうすべきかなどをレコメンドします」とカンマン氏はいう。

「もう1つは、計画通りにいかないときにどうするかということです。そこで登場するのがアルゴリズムです。さまざまな制御システムと協力して、その戦略を取り、実際に最も効率的な方法で実行することを確認します」。

インドア農業はまだ相当量の人力労働を必要とし、特にトマトやキュウリ、ピーマンなど、大きく枝や蔓を張る作物は大変だ。しかし同社によると、そんな作物でもSourceは役に立つ。例えばいつどこを整枝すべきか、どれとどれを摘果すべきか教えてくれるし、植物の生長のいろいろな側面を細かく最適化できる。しかもSourceが興味深いのは、リアルタイムの価格データを利用して、熟度とその進捗の早い遅いを調整できることだ。さらに、競合する他の農家の熟度の進捗をモニターして、少ない収量を高く売ったりできるのではないかといったことも考えられる。気温や天候の条件を見ながら生産コストを抑えることも可能だろう。

同社のサービスはSaaSで提供され、料金は栽培の規模で決まる。

「農業は今、歴史の転換点にあると私たちは考えています。人類をここまで導いてきた農業は、現在、100億人もいる人類を激しい気候変動の世界へ導いてくれることはないでしょう。しかも現在、そのマーケットは巨大です。したがって、気候耐性のある食糧システムの必要性が増しているのです。数十年後のより厳しい時代には、いうまでもなくその他の伝統的農作物も屋内へと移行しているでしょう。私たちの投資家と私たちのチームを結びつけているものは、スマートインドア農業の利点が短期的なものではなく、グローバルにスケールできる知識を構築できることです」とカンマン氏はいう

同社は、プロダクトのスクリーンショットを公開することを拒否したが、「競争上の機密事項」のためだという。

画像クレジット:Source Ag

原文へ

(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hiroshi Iwatani)

熟成期間が長いハードチーズを動物性原料を使わずに作るBetter Dairyが約25.3億円を調達

Better Dairyが同社のハードチーズ製品の溶け具合をテストする様子(画像クレジット:Better Dairy)

フードテック企業のBetter Dairy(ベターデイリー)は、シリーズAで2200万ドル(約25億3000万円)の資金を確保し、熟成期間の長いハードチーズのテスト段階に向け駒を進めた。

Jevan Nagarajah(ジェヴァン・ナガラジャ)氏が2019年に設立した英国を拠点とする同社は、精密発酵を用いた動物性の原料を使わないチーズを開発するR&D段階を続けている。我々がナガラジャ氏とBetter Dairyと最初に出会ったのは、同社がHappiness Capitalが主導するラウンドで160万ポンド(約2億4600万円)のシード資金を調達した2020年にさかのぼる。

当時、彼は動物を使った酪農が「非常に持続不可能」であり、わずか1リットルの牛乳を生産するために650リットルの水を必要とすることや、そのプロセスの結果、年間17億トン以上のCO2が大気中に放出されていることを説明してくれた。

代わりに、Better Dairyは精密発酵を利用して、従来の乳製品と分子的に同じ製品を製造している、とナガラジャ氏は語った。このプロセスはビールの醸造に似ているが、最終的に得られるのは乳製品だ。

他のフードテック企業がモッツァレラチーズや乳清タンパクのような柔らかいチーズに取り組んでいるのに対し、Better Dailyはより持続可能な方法で、より複雑なプロセスであるハードチーズをターゲットにしている。

画像クレジット:Better Dairy

「ハードチーズには、動物性原料を使わないステーキを作ろうとするのと同じような制限があると考えています」とナガラジャ氏。「製薬業界向けのタンパク質の製造に30年の専門知識を持つ最高科学責任者を含むチームを作ることで、私たちは複雑なことを意識的に行えると気づいたのです」。

Happiness Capitalは、今回はRedAlpineとVorwerkとの共同リードとして、シリーズAを再び主導した。Manta Ray、Acequia Capital、Stray Dog Capitalも今回のラウンドに参加した。

乳製品分野を狙っている企業は、Better Dairyではない。Clara Foods、NotCoClimax FoodsPerfect Dayといった企業が、動物性原料不使用のチーズや乳製品に取り組んでいる。しかしナガラジャ氏は、精密発酵技術の向上を目指した今回の資金調達によって、同社が競合他社に先んじ、この分野でハードチーズを発売する最初のプレーヤーとなることができると考えている。

同社はこの資金によって従業員を8人から35人に増やし、イーストロンドンにある6千平方フィート(約557 m²)の新しい研究所とオフィススペースに投資していくという。

Better Dairyは、食感とさらには熟成について科学的に解明し、すべての構成要素を1つの製品にまとめ、賞味期限を設定できるようにすることを目指している。ナガラジャ氏は、精密発酵プロセスにより、今後18カ月ほどで単位あたりの経済性、つまり同様のクオリティの手作りチーズと同等の価格を達成できると楽観視している。

「当社のサイエンスをアップグレードするには、適切なスペースと設備が必要です」と彼は付け加えた。「動物性原料を使用せず、持続可能であることだけでなく、おいしさも重要です。味が改善すれば、(非動物性の製品を選ぶのは)人々にとって簡単な決断になり、成功の指標となります。正しい方法で製品を作ることにはメリットがあります。でなければ、(植物性製品はまずいと思う観念など)すべてを巻き戻すのに長年かかってしまうかもしれませんから」。

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Den Nakano)

Zero Acre Farmsが微生物(と約43億円)を使って植物油の代替品開発に取り組む

キャノーラ油やパーム油などの植物油は、否でも応でも私たちの食生活の主要な部分を占めるようになった。有用な物質ではあるが、体に良いとは言い難く、森林破壊の大きな原因になっている。Zero Acre Farmsは、微生物と発酵によって生産される、改良された代替品を提供することを目指す新しい企業で、その目標のために3700万ドル(約42億9600万円)を調達した。

調理に油を使うのは新しいことではないが、私たちの消費量は増えている。確かに私たちは何世紀にもわたって、オリーブ、アボカド、乳製品などの油性の食品を、脂肪として、また調理のために使用してきた。しかし、100本のトウモロコシの穂、あるいは同量の大豆、ひまわりの種などから1カップの油を絞り出すという技術革新が、その方程式を変えてしまった。

他の加工食品と同様、植物油は便利で持ち運びもできるが、体に良いということはほとんどない。フライパンの油引きに小さじ1杯、クッキーのレシピに大さじ1杯を使っても害はないが、これらの油は私たちが食べるカロリーのかなりの部分(5分の1にもなる)を占めるまでに浸透してしまっている。冷蔵庫やスナックの入った引き出し、あるいはファストフード店に行ってみると、いたるところに植物油が使われているが、それは最終的な材料として使われているわけではない。

マヨネーズは何からできているのだろうか?植物油だ。アルフレッドソース(チーズクリームソース)のとろみは何なのか?植物油だ。ポテトチップスを食べた後、指につくのは何か?ご想像のとおりだ。

体に悪いだけでなく、大量に、しかも無駄な工程を経て作られるため、大豆やパームなどの油糧作物が育つ熱帯地域の森林破壊の主な原因になっている。そしてそれを使って調理すると、有害なガスが発生することもある。要するに、植物油はナパーム弾ではなくとも、すばらしいものではない。より健康的で、より資源を必要としない代替品があればありがたい。

Zero Acreは、同じように「自然」でありながら、より健康的で環境に優しいまったく新しい油の開発に取り組んでいる。それは発酵によって行われるもので、基本的には微生物に餌を与え、微生物が出したものを収穫する。

「ビールをつくるようなものですが、エタノールをつくる代わりに、微生物が油脂を作るのです。それもたくさん」と、CEOで共同創業者のJeff Nobbs(ジェフ・ノブス)はいう。

もちろん、発酵は多くの産業でよく知られ、頻繁に利用されているプロセスである。微生物は、入力(通常は糖分やその他の基本的な栄養素)と出力(微生物の自然な傾向か遺伝子操作によって決定される)のある小さな工場のようなものだ。例えば、パン作りに使われる酵母は、二酸化炭素とエタノールを生産する。前者は生地を膨らませるのに十分な量だ。しかし、遺伝子操作された酵母は、新薬のような、より複雑な生体分子を作り出すかもしれない。

画像クレジット:Ashwini Chaudhary

この場合、微生物はエネルギーを油脂として蓄える能力を持つものが選ばれている。「こうした微生物はそれが好きで、得意なのです」とノブスはいう。

このような試みをしたのは彼らが初めてではない。C16 Biosciences(Y Combinatorの2018年夏のバッチで紹介した)は発酵によってパーム油を複製しようとしているし、Xylomeは現在のバイオ燃料生産技術に代わるものを探している。合成生物学は、いわゆる微生物を特定の目的に合わせて調整することだが、それを支えるバイオテクノロジーのインフラが進歩するにつれて、ますます実行可能になっている。

Zero Acreの場合、自分たちが市場で戦いやすくなるように工夫している。コーンビジネスやパームビジネスに対抗するのは難しい命題だ。その代わり、食料品店で倫理的な買い物をしようとする消費者をターゲットにしている。オーガニックの卵、フェアトレードのコーヒーなどを買う消費者だ。価格は高くなるが、ノッブスは、当社が社会的善の側面だけに傾いているわけではないことを注意深く指摘した。

彼は次のようにいう。「私たちは、環境に良い『だけ』の合成油をつくっているわけではないのです。これは新しいカテゴリーの油脂です。私たちはより食品に適した、人間にとってより良い組成物を作ることができるのです」。しかし、一部の代替品とは異なり、レシピの修正などは必要ないとも付け加えている。「小麦粉の代わりにアーモンド粉を使うようなものではなく、1:1の置き換えです。代替しようとしている製品の代わりに、それを使うだけなのです」。

それだけでなく、高温で変なガスを発生させないし(260度の熱に耐える生体分子を進化させる理由は植物にも動物にもないと彼は指摘した)、他の油のような加工や矯味を必要としないため、実は味もさっぱりしている。

しかし、このような合成油に多くの利点があるのなら、なぜ多くの資源を持つ他の企業は、今までこれを試みなかったのだろうか?

「もし、あなたが大企業なら、これは本当に些細なことに思えるでしょう」とノブスは説明した。油は食料品店だけでなく、ファストフードチェーンや基本的な材料として必要とする生産者に、1000ガロン(約3785リットル)のタンクで売られている。家庭用の高級食用油は、油の最大の供給源にとっては誤差のようなものなのだ。それに「私たちのメッセージは植物油は良くないものだということです」と彼は続けた。「大企業はそういうことはできません。彼らは経済的にそのように自分たちの首を絞めることはしません」。

Zero Acreのアプローチに関連して、最近、技術面でもいくつかの進歩があった。

「発酵プロセスには、温度、pH、酸素の量、餌など、たくさんの要素があります。共同創業者がジョークで言っていたように、実験室でどんな音楽を聴くのかというようなものです。些細なことが大きな効果を生みます。私たちには、そのような最適なパラメーターを見つけるためのプラットフォームがあります。まだ多くの研究が必要ですが、いくつかの進歩がありました。そして私たちはこれに対し、世界最高の生物を使っていると思います」とノブスはいう。

より変わった分子の精密発酵と比較すると、製造工程が比較的単純であるため、同社はすでに製造工程を「何千何万リットル」まで拡大し、2022年後半には消費者向けにデビューする予定だ。最終的なブランディングや包装については、まだ明らかにされなかった。公開は実際の発売に近い時期になるだろう。

この3700万ドル(約42億9600万円)のAラウンドは、継続的な研究と商業的立ち上げに充てられるもので、Lowercarbon CapitalとFifty Yearsが主導し、S2G Ventures、Virgin Group、Collaborative Fund、Robert Downey JrのFootPrint Coalition Ventures、そしてシェフのDan Barber(ダン・バーバー)が参加した。

画像クレジット:Tolgart/Zero Acre Foods

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

国内生産の食用コオロギによる商品開発・販売など手がける徳島大学発グリラスが2.9億円達、累計調達額約5.2億円に

国内生産の食用コオロギによる商品開発・販売など手がける徳島大学発グリラスが2.9億円達、累計調達額約5.2億円に

徳島大学発スタートアップ企業「グリラス」は2月28日、約2億9000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、既存株主のBeyond Next Ventures、HOXIN、産学連携キャピタルなど、新規株主のいよぎんキャピタル、近鉄ベンチャーパートナーズ、食の未来ファンド(kemuri ventures)、地域とトモニファンド(徳島大正銀行、香川銀行、フューチャーベンチャーキャピタル)。累計資金調達金額は約5億2000万円となった。

グリラスは、徳島大学における30年に及ぶコオロギ研究を基礎に、食用コオロギに関連する品種改良・生産・原料加工・商品開発・販売を一貫して国内で行うフードテック領域スタートアップ企業。徳島県美馬市の2つの廃校をそれぞれ生産拠点・研究拠点として整備し、コオロギの品種改良を目的とした研究開発から、食用コオロギの生産、食品原料や商品の開発・販売までを一貫して国内で行っている。調達した資金は、「生産体制の拡充」「研究開発の加速」「PR・広報・マーケティング活動の推進」「採用の強化」にあてる。

生産体制の拡充

現在グリラスは、同社コオロギを使用した食品原料については、他社との協業商品のほか、自社ブランド「C. TRIA」(シートリア)などに使用している。前回のラウンドでは徳島県美馬市にある廃校(旧芝坂小学校)を食用コオロギの生産拠点・食品原料への加工拠点として整備することで、既存のファームと合わせて2022年2月時点で年間10トン以上のコオロギパウダーを生産する体制を確立した。

しかし、他社との協業商品や自社ブランド商品の売り上げ拡大に対して、食用フタホシコオロギを加工した食品原料の生産が追い付いていない状況が続いているという。

この状況を受け今回のラウンドでは、調達した資金を自社の新規ファームの立ち上げと、生産パートナー制度の整備に活用することで、2023年12月時点で累計年間約60トンのコオロギパウダー生産体制を目指す。

研究開発の加速

現在の食用コオロギは、野生の品種を採取して養殖しているにとどまり、コオロギの大量生産において、品種改良による家畜化が急務となっている。また、コオロギをはじめ、昆虫は甲殻類に類似したアレルギーを引き起こす可能性があり、食用コオロギの一般化に際して数多くの課題が残されているという。

グリラスでは、これら課題をテクノロジーの力で打破すべく、2021年夏に徳島県美馬市の廃校(旧切久保小学校)を、大学で蓄積されたゲノム編集技術を用いてコオロギの高効率な品種改良を行う研究施設として整備した。現在は、高生産性コオロギの開発や、アレルゲンの少ない品種の確立などをテーマとして研究を進めているそうだ。

今回のラウンドでは、人員および設備への投資を行うことで、2023年内で上記2品種の上市を目標として研究開発を加速させる。また、コオロギの持つ独自の栄養成分や特徴を活かした商品の開発を並行して行うことで、食用コオロギの普及に寄与する。

1日に必要な栄養素の3分の1を1食で摂れるBASE FOOD提供のベースフードが20億円調達、新商品開発を加速

1日に必要な栄養素の1/3を1食で摂取できる「BASE FOOD」を提供するベースフードは2月23日、第三者割当増資10億円と融資契約10億円による総額20億円の資金調達を実施をしたと発表した。引受先は、シニフィアンとみずほキャピタルが共同運営するTHE FUND。借入先は三菱UFJ銀行、商工組合中央金庫、りそな銀行、三井住友銀行。調達した資金は、既存商品のアップデートと新商品開発の加速、人材採用の強化にあてる。

BASE FOODは、1食で1日に必要な栄養素の1/3を摂取できる「完全栄養食」(栄養素等表示基準値に基づき、脂質・飽和脂肪酸・n-6系脂肪酸・炭水化物・ナトリウム・熱量を除いて、すべての栄養素で1日分の基準値の1/3以上を含む)。全粒粉や大豆、チアシードなど10種類以上の原材料を使用しつつ、栄養バランスとおいしさを独自の配合と製法により実現。たんぱく質や食物繊維、26種類のビタミン・ミネラルなど1日に必要な33種類の栄養素を1食で摂れるという。

2016年4月設立のベースフードは「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」をミッションに掲げるフードテック領域のスタートアップ。2017年に完全栄養パスタ「BASE PASTA」をサブスクリプションサービスとして販売開始し、現在では完全栄養パン「BASE BREAD」、完全栄養クッキー「BASE Cookies」とラインナップを蓋している。2021年11月末にはシリーズ累計販売食数1500万食を突破し、2022年2月の月額定期購入者数は10万人を超えている。

Wildtypeは115億円の資金で細胞培養の「寿司用」サーモンを世に送り出せるか

サンフランシスコを拠点とし、創業6年になるWildtype(ワイルドタイプ)は、動物以外の細胞から培養したサーモンを開発している。その製品を一流レストランから食料品店まで広く普及させるため、シリーズBで1億ドル(約115億円)を調達した。

この計画が成功するかどうかはわからないが、L Catterton、Cargill、Leonardo DiCaprio(レオナルド・ディカプリオ)氏、Bezos Expeditions、Temasek、Robert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・ジュニア)氏のFootPrint Coalitionといった新しい出資者が、何に期待を膨らませているのかは容易に察しがつく。

細胞培養シーフードの一般的な主張は、野生種の保護と乱獲対策になるというものだ。表向きは、天然魚や養殖魚に含まれていることがある水銀やマイクロプラスチックなどの汚染物質がないのに、天然魚と同じ栄養を摂取できるということになっている。

利点はまだある、とWildtypeの共同創業者であるJustin Kolbeck(ジャスティン・コルベック)氏とAryé Elfenbein(アーイエ・エルフェンバイン)氏は語る。同社は、ビール工場にあるような鉄製タンクでサケの細胞を培養し、植物由来の成分でできた足場と呼ばれる構造体に細胞を入れ、細胞が魚の切り身を形成するように誘導することで「寿司グレード」のサーモンを作る方法を見出した(同社はヒレや頭を育てているわけではなく、寿司屋で目にするようなサーモンの切り身を育てているだけだと創業者らはいう)。

それぞれビジネスコンサルタントと心臓専門医だった2人は、このサーモンの仕上がりに自信を持っている。2021年、タンクのすぐそばに試食室をオープンし、シェフらがサーモンを試食し、その生産について詳しく知ることができるようにした。

計画通りに進めば、試食したシェフは、やがてWildtypeのサーモンを他のメニューと一緒に扱うようになるだろう。食料品店も同様だ。

それは目前に迫っている。Wildtypeは2021年12月、全国1230の食料品店で寿司屋を経営するSnowfox(スノーフォックス)、65軒のファストカジュアルレストランを経営するPokéworks(ポケワークス)との販売契約を発表した。この契約は「同社の製造能力が必要な規模に達した時点で、消費者がWildtypeの養殖サーモンを体験する道を開く」と発表した。

同社はA地点からB地点へ移動しようとしているが、これが今のところ難しい。

まず、Wildtypeのサーモンを従来の寿司用サーモンと同じ価格、あるいはそれ以下の価格にする試みは依然進行中だとコルベック氏とエルフェンバイン氏はいう。

また、消費者が植物性の肉と同じような熱意をもって細胞培養のシーフードを受け入れるかどうかも未知数だ。赤身の肉を食べるとがんのリスクが高まることは広く知られているが、一方で、摂取した餌が原因で一部のサケにPCB(ポリ塩化ビフェニル)やダイオキシン、水銀が含まれていることを知る人は少ない。さらに、飼料に含まれる汚染物質に関する厳しいルールが設けられたため、魚の汚染物質濃度は下がっており、米連邦政府の基準では食べても安全な水準になっている。

おそらく最も注目すべきは、同社が2019年にFDA(米食品医薬品局)との協議プロセスに入った後、現在も承認を待っているということだ。承認が下りるまでは提携予定のレストランを通じて販売することができない(賠償責任保険については、肉や魚介類の生産者の間で一般的なものに加入しているという)。

それでも、同社が興味深い理由の1つは、最大の脅威となりうるImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)が、細胞から育てたものではなく、植物由来のシーフードに取り組んでいるとしたものの、まだ何も発表していないことだ。

一方、同じ業界のより小規模なベンチャー企業は、他のシーフードに注力しているようだ。例えば、BlueNalu(ブルーナル)は、最初の培養シーフードアイテムとして培養マヒマヒを作ろうとしている。Gathered Foods(ギャザード・フーズ)は、植物由来のマグロを、シングルサーブですぐに食べられるレトルトパウチにしようと取り組んでいる。

Wildtypeの製品も迅速かつ効率的に使えると証明できるかもしれない。サーモンの可食部のみを培養するからだ(理論的には、従来シェフが魚をさばくのにかかっていた時間や無駄を省くことができる)。

さらに、同社のもう1つの主張はトレーサビリティだ。「あるものを注文したら、別のものが送られてくるということがよくあるシーフードの世界では、特に重要なことです」とエルフェンバイン氏はいう。

確かに、従業員35人のこの会社が規模を拡大し、同社のサーモンを適正価格で販売できるようになれば、その存在意義を理解するのはたやすい。

時が経てばわかる。同社は、規模を拡大するためにサーモンの成長を早めることはできないとしている。しかし、新しい拠点を開拓し、完全な自動生産システムを開発することは可能だ。

一方、細胞に与える栄養について、エルフェンバイン氏は「高級ゲータレード(スポーツドリンク)のようなもの」と表現し「食品製造用にカスタマイズされていないため、現在は高価」だと話す。同社は「細胞が生きるために必要な基本栄養素を供給するためだけに多額の投資を行っている」という。

将来それが安価になるかはわからないが、チームはいずれにしても、この挑戦に臆する様子はない。

「最終的には」とコルベック氏はいう。「とても手頃な価格で手に入れられる製品になります。最も栄養価の高い食品が最も高価であるという現状を覆したいのです」。最終目標は「鶏のもも肉よりも安い」寿司用サーモンで、それは「可能性という領域の中にある」と考えていると、同氏は付け加えた。

Wildtypeが最後に資金調達を行ったのは2019年末で、CRV、Maven Ventures、Spark Capital、Root Venturesから1250万ドル(約14億円)を調達するシリーズAラウンドを完了した。今回の資金調達により、累計調達額は1億2000万ドル(138億円)強に達した。

画像クレジット:Wildtype

原文へ

(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

植物由来肉を人工脂肪でおいしく満足できるものにするYali Bio

Yali Bioのチーム。左から3人目がCEOのユーリン・ルー氏(画像クレジット:Yali Bio)

フードテックの企業にとっては人の食習慣を変えることが重要だが、特に代替肉製品の場合は、味も匂いも食感も本物の肉のようでないと多くの人は満足しないため、なかなか難しい。

Yali Bioは、この問題を解決したと称する企業の1つで、同社はそのために、植物由来の食肉や乳製品のための人工脂肪(designer fats)を開発した。同社は現在、代替食肉の味を良くするための顧客特注の脂肪を生産するプラットフォームを作っている。

その加工技術を支えるものは、合成生物学とゲノミクスのツール、およびディープラーニングの技術で、それらによって作られる脂肪は、現在植物性の蛋白質に使われているココナッツなどの油脂よりもサステナブルだ。しかもその味や質感は、動物性脂肪を模倣している、とCEOのYulin Lu(ユーリン・ルー)氏は主張している。

ルー氏とチーフサイエンティストのPeng Xu氏は、カリフォルニアで同社を2021年に創業した。ルー氏はフードテックの前歴があり、Impossible FoodsやEat Justの躍進をこれらの企業の社員として見てきた。Peng氏は合成生物学が専門で、微生物を利用するシステムで脂質を開発してきた。

「明らかに現在は、製品の質と消費者体験が伸び悩みの段階にある。食肉は成功したブランドもあるが、そこから先がない。人びとが好む高級肉はいろいろな種類があるが、その代替製品に共通して欠けているのが製品の質を高める脂肪だ」とルー氏はいう。

彼によると、今はほとんどの植物由来の食肉が、脂肪に代わるものとしてココナッツオイルを使っているらめ、食品企業はどうしても風味添加物を使うことになり、消費者の好みに合わない製品を作っている。しかしYali Bioの技術は、非常に多種類の機能性脂肪を作ることができ「市場の鍵」を開けることができる。それまでその市場は、製品の質と消費者体験に限界があった。

顧客が必要とする脂肪を作れるようになった同社は、今度はそれらの人工的な脂肪を製品中に効率的に利用できる生産システムに取り組んでいる。これまで他社が使っていた方法の中には、動物の細胞や脂肪組織を使うものもある。

しかしYali Bioが採用したのは、微生物を利用する精密発酵という技術だ。独自の技術で微生物の菌株のライブラリを作り、それらをすべてテストした。次の段階は、発酵器の中で菌株を活動させ発酵工程をデモンストレーションするパイロット事業だ。それにより、小規模ないし中規模でも生産できることを証明する。

これらのステップをすべてこなしていくには、資本が少々必要だ。ルー氏はアクセラレーター事業を半年受講し、その間に新しい実験室を作った。そのとき同社はEssential Capitalがリードするシードラウンドで390万ドル(約4億5000万円)を調達した。このラウンドには新旧さまざまな投資家が参加し、それらはThird Kind Venture Capital、S2G Ventures、CRCM Ventures、FTW Ventures、そしてFirst-in Venturesなどだ。エンジェル投資家として、Stephanie Sher(ステファニー・シャー)氏とJohn Goldsmith(ジョン・ゴールドスミス)氏が参加した。Yali Bioのこれまでの総調達額は500万ドル(約5億8000万円)になる。

資金の一部は実験室の建設に投じられるが、他にも、合成生物学の部門や製品開発、パートナー選び、マーケティング、新規雇用などにもお金が必要だ。求める人材は、製品開発や食品科学、発酵などの方面で、年内に約12名が欲しいとのこと。

ルー氏によると、Yali Bioの技術も他の技術と同じく、本番稼働までに時間がかかる。例えば細胞培養を使う方法は7年前に最初の波が興ったが、現在でもパイロット段階の企業が少なくない。それらは、わずかな量の製品をレストランに卸している程度だ。Eat Justのようなスタートアップも、The EVERY Coのような食品メーカーも、今では細胞培養ではなく精密発酵を利用している。

ルー氏はさらに「今のチームでできることには限界があるため、もっと人を増やしてバイオテックの研究開発企業から具体的な製品のある企業に変わっていかなければなりません。精密発酵のデモを行い、他の技術よりも製品やサンプルを速く作ることができることを知ってもらいたい。その他、規制の問題や最終製品の形状、技術の複雑性といった難しいポイントはありますが、2〜3年後には製品を出したい」という。

Essential CapitalのマネージングパートナーEdward Shenderovich(エドワード・シェンデロビッチ)氏によると、代替食品への投資は初めてという投資家が多く、特に合成生物学の食品への応用という新しい技術はまだよく知られていない。

彼によると現在は第四次農業革命の前夜だという。これまでの農業はコスト低減と増産と質の向上を追ってきた。しかし、第四次はバイオの生産技術が引っ張り、サプライチェーンと価値の創造機会に大きな変化が訪れる。

「動物をベースとする農業から、バイオ生産による動物を使わない農業への移行を可能にするものなら、どんなものでも追究する価値があります。Yulinは、植物由来の発酵食品や培養食品の採用に立ちふさがる重要な難問を特定しています。培養肉の多くはタンパク質だけですが、脂肪も欲しい。脂肪は悪者扱いされてきましたが、現在、見直されつつあります」とシェンデロビッチ氏はいう。

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

革新的アプローチでバニラ栽培に挑戦するVanilla Vidaが量産へ向け約13億円調達

バニラは確かに 「世界で最も人気のフレーバー 」だ。しかし、その人気とは裏腹に、製造は非常に複雑で、多くの人が本物ではなく合成バージョンを手にすることが多い。

私たちが消費するバニラの約70%はマダガスカルで栽培されているが、最近の気象ニュースを見ると、マダガスカルはこの10日間に1つではなく、2つのサイクロンに見舞われた。これは「今」だけの問題ではなく、この地域は20年近くも嵐や劣悪な生育環に悩ませられていて、バニラの価格が1キロあたり25ドル(約2880円)から数百ドル(数万円)へと上昇する原因となっている。

Vanilla Vida(バニラ・ビダ)のCEO、Oren Zilberman(オレン・ジルバーマン)氏によると、気候変動の高まり、天然バニラビーンズの不安定な供給、バニラ栽培が労働集約的であることなどが、私たちが消費するバニラの95%が合成である理由だ。

イスラエルに拠点を置くVanilla Vidaは、革新的なアプローチでバニラの生産に挑戦している数少ない企業のひとつだ。他には、バニラを作るのにトウモロコシの繊維に含まれる酸を抽出するプロセスを開発したSpero Renewables(スピロ・リニューアルブル)や、レタスでバニラの味と香りを作り出す方法を研究しているPigmentum(ピグメンタム)などがある。

Vanilla Vidaの場合、ジルバーマン氏のルーツが農業であることから、より直接的な農業のアプローチをとっており、垂直統合とサプライチェーンの技術を開発し、天然のバニラを制御された環境で栽培できるようにしている。

同社は2019年、オランダで行われたバニラ栽培の研究実験の失敗に端を発するアイデアでスタートした。研究でうまくいった部分を取り入れ、基本的にサプライチェーン全体を破壊するために、栽培と加工の分野にもそれを応用した。

「私たちを過去よりも前進させたのは、製品の品質という顧客に価値を与える重要なマイルストーンに到達することでした」と、ジルバーマン氏はTechCrunchに語った。

2020年にイスラエル企業StraussのアクセラレーターであるThe Kitchenで正式に会社を立ち上げて以来、チームはエンゲージメントに注力し、顧客とつながってきた。それをジルバーマン氏は「初期スケール」と呼んでいる。

「良いニュースは、能力よりも需要があることですが、拡大は最も困難な部分であり、今まさに我々はそこにいます」と同氏は付け加えた。

目標は、スマートファームや空調管理された温室での高度なバニラビーン栽培方法を通じて、バニラのサプライチェーンにおける量、品質、コストの安定性をエンドツーエンドで提供することだ。

規模拡大を図るため、Vanilla VidaはOrdway Selectionsがリードし、FoodSparks、PeakBridge PartnersのNewtrition、キブツのMa’agan Michaelが参加したシリーズAラウンドで1150万ドル(約13億円)を調達した。

今回のラウンドで、Vanilla Vidaが現在までに調達した総額は約1500万ドル(約17億円)になった。ジルバーマン氏によると、倍の額を調達する機会もあったほど投資家は同社の技術に非常に期待していたが、ゆっくりと時間をかけて、会社の正しい成長を支える戦略投資家を選ぶことにした。

一方、2021年には20社超とパイロットプログラムを実施した。

「当初、Vanilla Vidaのことを知る潜在顧客はほぼ皆無でしたが、プロダクトの品質を目にしたことで、こんな高品質なものを今日まで見たことはない、という声を耳にしています」とジルバーマン氏は話した。

顧客は、同社がまだサポートできないような量を求めている。しかし、今回調達した資金によって、同社は研究開発や技術をより深く追求することができ、また、ジルバーマン氏が間もなく登場すると言う競合他社の参入の障壁をより高くすることができる、と同氏は述べた。

資金はまた、まずイスラエル、その後アメリカやヨーロッパに設ける実験施設や雇用、そして最大手の食品メーカーやフレーバーハウスである顧客との取引に使われる予定だ。

Vanilla Vidaはまだ新技術に取り組む新しいプレーヤーだが、同社は2023年に生産量を増やし、2024年か2025年からバニラのサプライチェーンに目に見える変化をもたらすとジルバーマン氏は予想している。

「施設の建設と、ウガンダやパプアニューギニアなどバニラを栽培している国の既存の農家との取り組みの継続という、2つの大きな最初の動きが同時に起こるでしょう」と同氏は付け加えた。

画像クレジット: Vanilla Vida / Vanilla beans being grown in a climate-controlled environment

[原文へ]

(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

日本酒ECの酒ストリートと菊の司酒造が共同開発した醸造アルコール添加工程を体験できる酒セット販売、エシカル・スピリッツCTOの山口氏監修

日本酒ECの酒ストリートと菊の司酒造が共同開発した醸造アルコール添加工程を体験できる酒セット販売、エシカル・スピリッツCTOの山口氏監修

日本酒ECサイトなどを展開する酒ストリートは2月12日、純米酒と焼酎を自分の手でブレンドして醸造アルコール添加の日本酒を作ることができる「すごい!!アル添(あるてん)」を数量限定で販売開始したと発表した。通信販売サイト酒ストリート公式オンラインストアで購入できる。直販価格は6480円(税込・送料込)。

同製品は、創業400年を超える老舗酒蔵・菊の司酒造と共同開発したも。ブレンドの監修は、ジン製造スタートアップ「エシカル・スピリッツ」CTOとして商品開発や蒸留などの技術責任者を務める蒸留家・山口歩夢氏が行っている。

「アル添」とは、「醸造アルコール添加またはアルコール添加の日本酒」の略称。醸造アルコールとは、サトウキビなどを原料とした糖蜜から作られた蒸留酒で、「大吟醸」「吟醸」「本醸造」といった酒の香りや味わいを深め、よりよい酒質を作るためにも使われている。酒ストリートによると、アル添のお酒は「品質が低い」「増量目的」といったネガティブなイメージが深く根付いているものの、現在国内で製造されている酒の約77%、また日本酒コンテスト「全国新酒鑑評会」では出品酒の約78%・入賞酒の約91%はアル添酒という(国税庁「清酒の製造状況等について(平成30酒造年度分)」、酒類総合研究所「平成30酒造年度 全国新酒鑑評会出品酒の分析について」より算出)。

今回発売のすごい!!アル添は、純米酒と焼酎を自分の手でブレンドし、酒に醸造アルコールを添加する工程を疑似的に体験できる商品。こだわりの日本酒と焼酎、それらをブレンドしたアル添のお酒を作ることで、おいしく楽しんでもらうために考案された。商品には計量ショットグラスとスポイトが付属。同梱のリーフレットには、山口歩夢氏によるブレンド解説とペアリングの提案、酒ストリートによるアル添の解説が掲載されており、手軽にアル添のブレンドを試すことができる。

日本酒ECの酒ストリートと菊の司酒造が共同開発した醸造アルコール添加工程を体験できる酒セット販売、エシカル・スピリッツCTOの山口氏監修

共同開発の菊の司酒造は、創業400年を超える岩手県盛岡市の老舗酒蔵。伝統的な製法と革新的な酒質を両立させる高い技術を持ち、国内外で多くの受賞歴を誇る。また同社はは日本酒だけでなく、自社で醸造・蒸留する焼酎「だだすこだん」を製造。その広範な知識と技術をもとにすごい!!アル添の共同開発に至った。

酒ストリートは、すごい!!アル添を通して日本酒の7割以上を占めるアル添酒のおいしさを多くの人に体験してもらいたいという。杜氏や蔵人の技術に触れ、アル添酒を身近に感じてもらうことで、アル添酒に対するイメージを変革したいという。

植物性由来のミールキットを配達するSplendid Spoonが約13.8億のシリーズB資金を獲得

消費者がより体に良い食品を求めるようになり、食事宅配サービス会社に多くのベンチャーキャピタルが流入している。

オンラインミールキットデリバリー市場は、2022年末までに70億ドル(約8000億円)、そして今後5年間で3倍の産業に成長するといわれている。そのため、ベンチャーキャピタルが注目し、最近、自宅料理用の食材を配達するShef(シェフ)WoodSpoon(ウッドスプーン)、ベビーフード分野のLittle Spoon(リトルスプーン)やSerenity Kids(セレニティ・キッズ)などの資金投入につながった。

このカテゴリーにいち早く飛び込んだ企業の1つが、植物性のスープやボウル、スムージーに特化した食事宅配サービスのSplendid Spoon(スプレンディッド・スプーン)である。Nicole Centeno(ニコル・センテノ)氏が同社を設立したのは2013年。当時、彼女は忙しい母親であり、厳しい仕事に就いていたため、思うように健康的な食生活を送ることができなかったという。

彼女は料理学校に通い始め、食事の準備や調理を必要としない、ヴィーガン、非遺伝子組み換え、グルテンフリーのオーガニックスープとスムージーのラインを作った。ブルックリンのマーケットで販売した後、彼女はFresh Direct(フレッシュ・ダイレクト)に製品を供給するために卸売り業者と提携し、2015年に全国展開した。

それ以来、センテノ氏と彼女のチームは消費者への直販型のサブスクリプションモデルを構築し、2018年には同社の初期の愛用者の1人であったElise Densborn(エリス・デンスボーン)を共同CEOとして採用した。

Splendid Spoonの共同CEOのNicole Centeno氏とElise Densborn氏(画像クレジット:Splendid Spoon)

「私たちはこの3年間、私たちが『筋肉』もしくは『フードテックビジネスの赤身肉』と呼ぶもの、つまり食品そのものに事業を集中してきました。そして、私たちの食品ができるだけすばらしい味になるために必要なものはすべて揃えるようにし、体にも良い新鮮な食品という約束を実現してきました」と、センテノ氏は付け加えた。

現在、同社は米国本土の全州に配送し、50以上の植物由来の食材を揃え、顧客がサブスクリプションに申し込まずにオンデマンドで買い物できる機能を備えている。同社は2020年から成長率を2倍に高め、現在までに2万人を超える登録者を抱えている。

そして最近、Splendid Spoonは1200万ドル(約13億8700万円)のシリーズB資金を確保した。このラウンドはNicoya(ニコヤ)が主導し、Danone Manifesto Ventures(ダノン・マニフェスト・ベンチャーズ)、Torch Capital(トーチ・キャピタル)、Reddit(レディット)共同創業者のAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏、Rent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)共同創業者のJennifer Fleiss(ジェニファー・フライス)氏、Tasty Bite(テイスティ・バイト)の創業者Ashok(アショック・ヴァスデヴァン)氏とMeera Vasudevan(ミーラ・ヴァスデヴァン)氏が参加した。Torchとオハニアン氏は、以前のラウンドでも投資している。センテノ氏は、2018年の非公開のシリーズAを含む、同社の総資金額を明らかにしなかった。

自身の健康のコントロールを取り戻したいという消費者行動の変化と、そのための簡単な方法への需要が、Splendid Spoonの最新の資本注入の原動力の2つだった。

「健康は、私たち消費者の原動力です」とセンテノ氏はいう。「おそらくあなたも聞いたことがあるであろう、怖い統計結果が出ています。例えば、CDCの調査によると、米国人の10人に1人しか野菜を摂取していないことが明らかになりました。現在、85%の米国人がより健康的な食生活を送ろうと努力しています。パンデミックによって、ダイレクト・ツー・コンシューマーの試みが加速され、人々は、『あれ、この食事を家に届けるのはもっと簡単じゃないか』と思えるようになり、その答えはイエスだったのです」と述べる。

センテノ氏とデンスボーン氏は、今回の資金調達で、同社の主力製品群を拡大するとともに、新製品やカテゴリー、食事プログラムを追加する予定だ。Splendid Spoonは、創業以来、デンスボーン氏が「小さいけれども強力なチーム」と呼ぶチームで活動してきたため、採用も優先事項となるだろう。

現在34人で、2021年初頭の15人から増えている。小さなチームが実際にどれほど強大かを示すために、近年Splendid Spoonに投資した1ドル(約115円)に対して、同社は15ドル(約1730円)の収益を上げたと、デンスボーン氏は付け加えた。全体として、前年比平均100%の成長を続けているのだ。

同社が次に取り組むべきことは、チームの強化に加え、サプリメントや他の食品、消費者直販以外のさまざまなチャネルでの試用機会について、戦略策定と市場参入の戦略を検討することだ。

「私たちはまだ表層しか見ていないと思っています。今後12カ月の間に、多くの創造が起こるでしょう」とセンテノ氏は語る。

画像クレジット:Splendid Spoon

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

植物性由来のミールキットを配達するSplendid Spoonが約13.8億のシリーズB資金を獲得

消費者がより体に良い食品を求めるようになり、食事宅配サービス会社に多くのベンチャーキャピタルが流入している。

オンラインミールキットデリバリー市場は、2022年末までに70億ドル(約8000億円)、そして今後5年間で3倍の産業に成長するといわれている。そのため、ベンチャーキャピタルが注目し、最近、自宅料理用の食材を配達するShef(シェフ)WoodSpoon(ウッドスプーン)、ベビーフード分野のLittle Spoon(リトルスプーン)やSerenity Kids(セレニティ・キッズ)などの資金投入につながった。

このカテゴリーにいち早く飛び込んだ企業の1つが、植物性のスープやボウル、スムージーに特化した食事宅配サービスのSplendid Spoon(スプレンディッド・スプーン)である。Nicole Centeno(ニコル・センテノ)氏が同社を設立したのは2013年。当時、彼女は忙しい母親であり、厳しい仕事に就いていたため、思うように健康的な食生活を送ることができなかったという。

彼女は料理学校に通い始め、食事の準備や調理を必要としない、ヴィーガン、非遺伝子組み換え、グルテンフリーのオーガニックスープとスムージーのラインを作った。ブルックリンのマーケットで販売した後、彼女はFresh Direct(フレッシュ・ダイレクト)に製品を供給するために卸売り業者と提携し、2015年に全国展開した。

それ以来、センテノ氏と彼女のチームは消費者への直販型のサブスクリプションモデルを構築し、2018年には同社の初期の愛用者の1人であったElise Densborn(エリス・デンスボーン)を共同CEOとして採用した。

Splendid Spoonの共同CEOのNicole Centeno氏とElise Densborn氏(画像クレジット:Splendid Spoon)

「私たちはこの3年間、私たちが『筋肉』もしくは『フードテックビジネスの赤身肉』と呼ぶもの、つまり食品そのものに事業を集中してきました。そして、私たちの食品ができるだけすばらしい味になるために必要なものはすべて揃えるようにし、体にも良い新鮮な食品という約束を実現してきました」と、センテノ氏は付け加えた。

現在、同社は米国本土の全州に配送し、50以上の植物由来の食材を揃え、顧客がサブスクリプションに申し込まずにオンデマンドで買い物できる機能を備えている。同社は2020年から成長率を2倍に高め、現在までに2万人を超える登録者を抱えている。

そして最近、Splendid Spoonは1200万ドル(約13億8700万円)のシリーズB資金を確保した。このラウンドはNicoya(ニコヤ)が主導し、Danone Manifesto Ventures(ダノン・マニフェスト・ベンチャーズ)、Torch Capital(トーチ・キャピタル)、Reddit(レディット)共同創業者のAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏、Rent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)共同創業者のJennifer Fleiss(ジェニファー・フライス)氏、Tasty Bite(テイスティ・バイト)の創業者Ashok(アショック・ヴァスデヴァン)氏とMeera Vasudevan(ミーラ・ヴァスデヴァン)氏が参加した。Torchとオハニアン氏は、以前のラウンドでも投資している。センテノ氏は、2018年の非公開のシリーズAを含む、同社の総資金額を明らかにしなかった。

自身の健康のコントロールを取り戻したいという消費者行動の変化と、そのための簡単な方法への需要が、Splendid Spoonの最新の資本注入の原動力の2つだった。

「健康は、私たち消費者の原動力です」とセンテノ氏はいう。「おそらくあなたも聞いたことがあるであろう、怖い統計結果が出ています。例えば、CDCの調査によると、米国人の10人に1人しか野菜を摂取していないことが明らかになりました。現在、85%の米国人がより健康的な食生活を送ろうと努力しています。パンデミックによって、ダイレクト・ツー・コンシューマーの試みが加速され、人々は、『あれ、この食事を家に届けるのはもっと簡単じゃないか』と思えるようになり、その答えはイエスだったのです」と述べる。

センテノ氏とデンスボーン氏は、今回の資金調達で、同社の主力製品群を拡大するとともに、新製品やカテゴリー、食事プログラムを追加する予定だ。Splendid Spoonは、創業以来、デンスボーン氏が「小さいけれども強力なチーム」と呼ぶチームで活動してきたため、採用も優先事項となるだろう。

現在34人で、2021年初頭の15人から増えている。小さなチームが実際にどれほど強大かを示すために、近年Splendid Spoonに投資した1ドル(約115円)に対して、同社は15ドル(約1730円)の収益を上げたと、デンスボーン氏は付け加えた。全体として、前年比平均100%の成長を続けているのだ。

同社が次に取り組むべきことは、チームの強化に加え、サプリメントや他の食品、消費者直販以外のさまざまなチャネルでの試用機会について、戦略策定と市場参入の戦略を検討することだ。

「私たちはまだ表層しか見ていないと思っています。今後12カ月の間に、多くの創造が起こるでしょう」とセンテノ氏は語る。

画像クレジット:Splendid Spoon

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)