規格外・余剰農産物の売却先をオンラインで農家とつなぎ食品ロスの削減を目指すFull Harvest

年間約40%の食料が廃棄されており、食料廃棄は世界で2兆6000億ドル(約294兆円)規模の問題になっている。Full Harvest(フルハーベスト)は、この問題は流通の問題であり、農産物のサプライチェーンをデジタル化することで解決できると考えている。

サンフランシスコに拠点を置く同社の農産物企業間取引市場は、農産物の買い手と売り手が、わずか数クリックで余剰または規格外の作物の取引を迅速に成立させる手段を提供する。農家にとっては新たな収入源となる。

創業者でCEOのChristine Moseley(クリスティン・モズレー)氏はTechCrunchに対し、生産者の大半はいまだにペンや紙、ファックスを使ってビジネスを行っていると語る。

「これは最も重要な産業の1つです。私たちはこの産業を自動化し、オンライン化することで、これまで解決されていなかったことを解決したかったのです」とモズレー氏は付け加えた。「例えば、売買には膨大な事務処理が必要ですが、オンボーディングプロセスを自動化することで、これまで数週間かかっていた作業が数分で済むようになります」。

そこでFull Harvestは、マッチングアルゴリズムや可視性を備えたスポットマーケットプレイスなど、バイヤーがサプライヤーの在庫を確認できる技術の開発に奔走した。また、第三者による監査・検証プロセスを構築し、一貫した仕様を提供することで、本来は救われるはずだが、廃棄されてしまう農産物の平均量を減らすことに成功した。拒否率は、業界平均10%に対し、同社は1〜2%だとモズレー氏はいう。

過去2年間で、Full Harvestの食品廃棄物削減効果は5倍になり、同社はこの勢いを維持するために追加資本を求めることになった。

同社は米国時間12月17日、シリーズBで2300万ドル(約26億円)の資金調達を発表した。Telus Venturesがこのラウンドをリードし、新規投資家からRethink Impact、Citi Impact、Doon Capital、Stardust Equity、Portfolia Food & AgTech Fund、および既存投資家からSpark Capital、Cultivian Sandbox、Astia Fund、Radicle Growthが参加した。今回の投資の一環として、Telusの投資ディレクターであるJay Crone(ジェイ・クローン)氏がFull Harvestの取締役に就任した。

Full Harvestを取材するのは久しぶりだ。TechCrunchは2016年、同社の旅が始まったときに紹介し、2017年に200万ドル(約2億2600万円)を調達した時に再び紹介した。2018年にはシリーズAで850万ドル(約9億6000万円)を追加で調達した。追加の資金調達をあわせると、現在の調達総額は3450万ドル(約39億円)だ。

同社は、Danone North America、SVZ、Tanimura & Antleなど、食品・飲料、加工業界や生産者業界のビッグネームと取引している。

「より持続可能なビジネスを構築することの重要性は、特に食品・飲料分野の企業にとって、かつてないほど明白になっています」とDanone North Americaのギリシャヨーグルト・機能性栄養食品担当副社長であるSurbhi Martin(スルビ・マーティン)氏は話した。「Full Harvestを通じてオンラインで農産物を調達し、通常であれば廃棄されてしまうような果物を当社の製品用に調達することで、より持続可能な食品を求める消費者の要望に応えています」。

Full Harvestのビジネスモデルは、同社のマーケットプレイスで行われるすべての取引の1%を取るというものだ。2020年から2021年にかけて、サプライチェーンに透明性を持たせた結果、売り上げは3倍になったとモズレー氏はいう。2018年当時、Full Harvestの従業員は約8人だったが、現在は35人にまで増えている。また、同社はカナダを含め地理的にも拡大した。

モズレー氏は、新しい資金で技術開発に投資する他、2022年には技術および製品チームの規模を3倍にし、北米での進出地域を引き続き拡大し、農産物の入手可能性、価格、仕様、持続可能性、品質、予測サポートなどのデータと市場インサイトの提供を進めるつもりだ。

食品廃棄物に取り組み、ベンチャーキャピタルから資金を調達しているのは、Full Harvestだけではない。2021年に限っても、企業から次のような発表があった。

このようにプロデュースの分野で技術革新を進めている企業もあるが、モズレー氏は、Full Harvestのユニークな点は、その専門性が持続可能な製品側にあることと、農産物サプライチェーンのデジタル化のリーダーとしての実績があることで、その両面で先行していると話す。

次は、物流技術に関する提携を確保し、さらなるスケールアップと提供可能なSKUの拡大を図る。

「これまで業界ではオフラインだったプロセスの自動化をある程度完了し、当社のテクノロジーとユーザーエクスペリエンスは大きく向上しました」とモズレー氏は付け加えた。

画像クレジット:Max / Unsplash

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

AIで食料品の消費と廃棄の習慣を学習し、食品廃棄物の削減を支援する「Nosh」

創業者のSomdip Dey(ソムディップ・デイ)氏がマンチェスター大学のコンピュータサイエンス修士課程に在籍していたとき、彼の両親がひどい交通事故に遭ってしまった。彼は自分の全財産をインドの両親に送金して治療費を援助したが、彼もその後、多くの人が直面する問題に直面した。もし1週間給料が支払われなかったら、どうやって食べていけばいいのだろう?

「幸い、夏休みが始まった頃だったので、多くの学生が引っ越しをしていて、多くが未開封の食べ物を文字通り捨てていました。必要としている人に利用してもらえるかもしれない廃棄物があまりにも多いことに気がついたのです」とデイ氏は回想している。

そのおかげで、彼は危機的な状況下でも、食いつなぐことができた。しかし、AI研究者であるデイ氏は、テクノロジーを使って食品廃棄物を減らし、空腹の人々に食事を提供する方法を考えるようになった。彼は修士課程を終え、エセックス大学の博士課程に進むと、共同創業者のSuman Saha(スマン・サハ)氏とともに「Nosh Technologies(ノッシュ・テクノロジーズ)」という会社を立ち上げた。

Noshのアプリは、AndroidとiOSで約1万3000人のユーザーに利用されており、ユーザーが食料品の賞味期限を記録することで、買ったものが腐る前にリマインドしてくれる。

このアプリは、AIを使ってユーザーの消費と廃棄の習慣を学習し、ユーザーが廃棄を減らして食料品店でお金を節約できるような分析レポートを毎週作成してくれる。このアプリでは、バーコードや食料品のレシートも直接スキャンすることができるが、ユーザーが手動でデータを入力することもできる。そして、ユーザーの食在庫と冷蔵庫の中身がアプリに読み込まれると、在庫を無駄にする前に使い切ることができる既存のレシピをオンラインで検索することもできる。

デイ氏は、将来的にはプレミアムサービスを提供したいと考えている。プレミアムサービスでは、家にある食材に基づいて新しいパーソナライズされたレシピを生成するAIへのアクセスが可能になる。

「現在のユーザーからは、このアプリを使うことで、無駄にしていたかもしれない毎月40~50ポンド(約6000〜7500円)近くの食料を節約できたという報告を受けています」とデイ氏はTechCrunchに語った。

Somdip Dey(ソムディップ・デイ)氏(画像クレジット:Nosh)

TechCrunch Disrupt(テッククランチ・ディスラプト)のStartup Alley(スタートアップ・アレイ)の一環として、Noshは最新の機能を発表したが、これはデイ氏の会社設立時のインスピレーションにまさに沿ったものだ。その中には、アプリと連動したブログ「Nosh Daily(ノッシュ・デイリー)」や、レストランがすぐに腐ってしまいそうな食品を割引価格で販売できる「Nosh Shop(ノッシュ・ショップ)」などが含まれる。

10%のサービス料を徴収することで、Noshは収益を上げることができる。現在、プレシード資金として3万3000ポンド(約490万円)を調達したばかりで、従業員は9名だ。デイ氏によると、このサービス料のうち、約3%が食品廃棄物対策のための慈善団体に寄付されるとのことだ。

同じくヨーロッパに拠点を置く「To Good To Go(トゥ・グッド・トゥ・ゴー)」は、Nosh Shopと同じ目標を達成するために、最近3110万ドル(約34億3700万円)を調達した。しかし、デイ氏によると、NoshはレストランがTo Good To Goよりも高い価格で食材を販売できることで差別化を図っているという。そうすれば、より良い利益が得られるので、より多くのレストランがアプリを利用する(その代わり、食品廃棄物を減らす)動機になる。To Good To Goでは食品を3分の1の価格で販売しているが、Nosh Shopでは、廃棄されようとしている食品を元の価格の70%まで値下げすることができる。

これはレストランにとっては助かるかもしれないが、割引より安い金額でその食品を買うかどうかは、消費者の判断に委ねられる。Nosh Shopは、まずイギリスの一部の地域で展開される予定だ。

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画像クレジット:Nosh

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Akihito Mizukoshi)