ブリヂストンが自動運転シャトルのMay Mobilityに少数株主として出資

タイヤメーカー大手のBridgestone(ブリヂストン)は、米ミシガン州に拠点を置く自動運転シャトルのスタートアップ、May Mobility(メイ・モビリティ)に少数持分出資を行い、自律走行車のスタートアップにまた1つ投資することになった。

ブリヂストンはこれまでにも、スウェーデンの自律型貨物輸送技術のスタートアップであるEinrideと協力し、自動運転EVトラック輸送のための持続可能なモビリティソリューションを模索したり、自動運転トラックによる長距離輸送スタートアップのKodiak Roboticsに出資してきた。

ブリヂストンは最近、カーケアサービスに特化したラストマイル配送プラットフォームのYoshi、およびタイヤセンサーとデータ管理企業のTyrataとの提携も発表している。他の最近の戦略的投資と同様に、ブリヂストンはMay Mobilityの株式をどれだけ保有しているかは明らかにしていない。

ブリヂストンとMay Mobilityのパートナーシップにより、後者は2022年後半にブリヂストンのタイヤ摩耗予測モデリング技術を同社の車両に搭載する予定だ。ブリヂストンのインホイールセンサーと予測アルゴリズムが、タイヤの空気圧、温度、トレッドの摩耗など、タイヤの健康状態を監視し、最終的にMay Mobilityの総所有コストの削減とAV車両の安全性の向上に貢献すると、Mayの広報担当者は述べている。また、今回の統合により、ブリヂストンはAVの運用に関する知見を得ることで、同社の主力タイヤ製品の改良につなげることができる。

ブリヂストンの米国子会社であるBridgestone Americas(ブリヂストンアメリカスインク、BSAM)のモビリティソリューション&フリートマネジメント社長、Brian Goldstine(ブライアン・ゴールドスティン)氏はこう述べている。「ブリヂストンの予知保全に関する知見を統合する今後の計画は、May Mobilityの車両がより安全、効率的、持続可能な形で運用されることを保証するものです」。

また、May Mobilityは、ブリヂストンが2021年に買収したクラウド型フリートモビリティソリューション「Azuga」を活用することで、業績の向上が期待される。Azugaは、フリート管理、カメラインテリジェンス、ルートプランニング機能をMay Mobilityにもたらす。

May Mobilityは、Waymo(ウェイモ)やCruise(クルーズ)のようなロボタクシーではなく、公共交通機関の補強を目的とした低速AVを、広島を含む5都市で運用している。2021年は、テキサス州アーリントン、ミシガン州アナーバーとグランドラピッズで、交通技術企業のViaと共同でオンデマンドの自動運転シャトルサービスを開始した。

同社は2022年初め、車両をハイブリッドのLexus(レクサス)SUVからハイブリッドのToyota(トヨタ)シエナミニバンに変更する計画で、8300万ドル(約99億1700万円)のシリーズCを調達した。この資金は、Mayが米国と日本で事業を拡大し、黒字化するために使用される予定だという。

またブリヂストンは、Mayの事業拡大を支援するため、同社のAVサービスやメンテナンスサポートを、BSAM傘下のFirestone Complete Auto Care、Tires Plus、Hibdon Tires Plus、Wheel Worksブランドの店舗や、ブリヂストンのモバイルサービス会社であるFirestone Directを通して提供する予定だ。

May MobilityのCEOであるEdwin Olson(エドウィン・オルソン)氏は、声明でこう述べている。「ブリヂストンの全国2200店舗を利用した車両運行・サービスにより、May Mobilityは全米で比類ないスケールアップを実現できます。このコラボレーションは、安全で持続可能なモビリティソリューションをグローバルに提供するという、我々の共通のミッションに基づくものです」。

画像クレジット:May Mobility

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Den Nakano)

トヨタ、BMW、ブリヂストンの迷い、環境に配慮したモビリティは必要だがそのコストは誰が払う?

国連が採択したSDGsや、ESG投資に注目が集まる中、自動車業界にも環境への配慮が求められるようになってきた。フロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」においても、今後のモビリティを考える上で「循環型経済」がテーマとして挙げられている。同サミットでは、トヨタ・ダイハツ・エンジニアリング&マニュファクチャリング上級副社長兼一般財団法人トヨタ・モビリティ基金アジア・パシフィック地区担当プログラムディレクターのPras Ganesh(プラス・ガネシュ)氏、BMW Groupサーキュラーイニシアチブ担当役員のIrene Feige(アイリーン・フェージュ)氏、ブリヂストンGサステナビリティ推進部門長の稲継明宏氏、フロスト&サリバンヴァイスプレジデントのVijayendra Rao(ヴィジャンドラ・ラオ)氏が対談。フロスト&サリバンでアジア太平洋地区モビリティ部門担当アソシエイト・パートナーを務めるVivek Vaidya(ヴィヴェック・ヴァイジャ)氏をモデレーターとなり、循環型経済の重要性や実現可能性について語った。

本記事はフロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる

循環型経済は何から手をつけるべきか

対談はヴァイジャ氏の「循環型経済にはどんな意味があるか?」という問いから始まった。

ガネシュ氏は「循環型経済は、トヨタで30年以上テーマとなっています。二酸化炭素の削減には部分的なアプローチではなく、より大きな視点での全体的なアプローチが必要です」という。さらに同氏は、トヨタが持続可能な社会の実現に貢献するための新たなチャレンジ「トヨタ環境チャレンジ2050」を2015年に発表したことに触れ「循環型経済はトヨタにとっては新しいものではありません」と強調した。

では、循環型経済を実現するにあたり、何から着手すべきなのか。

稲継氏は「循環型経済はブリヂストンにとって、ビジネス機会だと捉えています。そこで重要になるのが資源の効率化です。当社のパートナーと協力し、必要なエコシステムを構築する必要があります」と話す。

一方、ガネシュ氏は車両寿命とリサイクルに注目すべきだと考える。車両寿命は地域ごとに差があり、アジアの車両寿命は10〜20年だという。同氏は「現状、使わなくなったクルマをリサイクルに出すよりも、売り払った方が所有者にとって得なことが多い。それでは循環が進まないので、政府のサポートを得ながら、リサイクルを促進したり、リサイクルしやすいように車体を分解しやすいデザインにしていくことが重要です」という。

フェージュ氏は、使用する材料を減少させるためのエコシステムの見直しの必要性を重要視している。同氏は「着手しやすいのは、金属の再利用です。もちろん、再利用品であれ、新品であれ、質が高くなければいけないのは大前提ですが、今後のクルマの生産では金属を再利用し、新品の金属を使用する際には、それを正当化するような仕組みが必要です」と語る。

リサイクルの壁

ヴァイジャ氏の次の質問は「循環型経済を考えた時、EV(電気自動車)はどういう意味を持つのか?」だった。

フェージュ氏は「持続可能性はEVによってもたらされます」と断言。車体やバッテリーの分解・再利用を視野に入れ、サプライチェーン全体を見直さなければいけないと見ている。

ガネシュ氏もリサイクルの重要性を認め「バッテリーのリサイクルモデルができ上がれば、クルマの価格を下げることに繋がります」と話す。しかし、同氏はリサイクルには壁もあると考える。例えば、アジアではほこりや湿度の関係で、バッテリーの再利用に限界がある。さらに、リサイクルに関わるテクノロジーはまだ発展途上で、変化が多い。生産からリサイクルまでのプロセスを最初から考えなければいけないという。

稲継氏は「ブリヂストンにとっては、クルマに関わるリサイクルというと、タイヤのリサイルを意味します。そしてタイヤリサイクルはビジネスだと捉えています。リサイクルとは、資源の循環ですので、やはりパートナーとの協力関係の構築と、エコシステムの見直しが鍵ですね」という。

循環型経済へのマイルストーン

ここまでで循環型経済に向けた課題が見えてきた。しかし、実現までのマイルストーンはどう設定していけば良いのか。

ガネシュ氏は先述の「トヨタ環境チャレンジ2050」を挙げ、トヨタは循環型経済の実現目標を2050年に定めていることに言及した。同時に、実現のために考えなければいけないことは多いとも語る。

同氏は「実現には戦略が不可欠です。例えば、カーボンニュートラルはどれくらいの規模でやるのか?トヨタだけでやるのか?政府と組むのか?何か他の組織と協力するのか?など考えなければいけません。トヨタには26カ国 / 地域に50の海外製造事業体があります。それぞれの国にはそれぞれの状況があります。つまり、カーボンニュートラルは一度やっておしまいではなく、それぞれの国でそれぞれの段階で進めなければいけません」と話す。

一方フェージュ氏は「カーボンニュートラルはBMWのゴールです」という。マイルストーンとしては、使用する金属の見直しや、市場の金属供給の精査がまず必要だという。

では、日本のモビリティにおけるカーボンニュートラルのマイルストーンはどうなのだろうか。

ガネシュ氏は、日本政府のサポートが強いことを指摘する。天然資源にそれほど恵まれていない日本では、循環型経済は喫緊の課題であるため、政府の支援も受けやすいという。

稲継氏は「日本の政府とコラボレーションするということは、規制のあり方を考えることでもあり、重要なことです」とガネシュ氏を補足した。

誰がコストを払うべきか

循環経済を実現するには、リサイクル技術の開発や、これまでと異なるプロセスを組み込むことでコストが発生する。ヴァイジャ氏は「こうしたコストや、コストによる自動車価格への影響はどうするべきなのでしょうか」と他の参加者に質問した。

稲継氏は「エコシステム全体でコストを分かち合う必要があると思います」と回答。

フェージュ氏は「素材の再利用で全体プロセスにかかるコストは下げられると思います。新品の素材でも再利用の素材でも、同じ質を担保することが課題となります」と答えた。

ガネシュ氏は「循環型経済のために自動車の価格が変動したら、その変動分を調整しないといけません。では誰が調整するのか?政府でしょうか?顧客でしょうか?自動車メーカーでしょうか?」と問題を提起。さらに、循環型経済は素材の再利用でコストが下がる可能性もあると指摘し「循環型経済で増加したコスト」と「循環型経済で下げられたコスト」のバランスがしばらく変化し続けるだろうと予測する。

さらに、同氏は発展途上国での循環型経済実現はより難しいであろうとも考える。そういった地域では、ロジスティクス用の車両を農業用に作り替えるなどして、1台のクルマに対し1回目の使い方、2回目の使い方、といったふうに複数回の用途を考えることが着手しやすいと指摘した。

「ただし、顧客がこういった車の使い方を望んでいるのか?お金を払いたいのか?というのも考えないといけません」とガネシュ氏は最後に付け加えた。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタBMWブリヂストン循環型経済二酸化炭素リサイクル電気自動車

ブリヂストンが自動運転トラックKodiakに出資、タイヤ技術と車両運行管理システムに焦点を当てる戦略的提携も

タイヤメーカー大手のBridgestone(ブリヂストン)は、スマートタイヤ技術のテストと開発を目的とした広範なパートナーシップの一環として、シリコンバレーを拠点に長距離トラックの自動運転技術を開発しているスタートアップ企業のKodiak Robotics(コディアック・ロボティクス)に、少数株主として出資することを発表した。

取引条件は明らかにされていないが、Kodiak Roboticsの共同設立者でCEOを務めるDon Burnette(ドン・バーネット)氏は、これは直接的な金銭出資であると、TechCrunchに語った。また、このパートナーシップの一環として、Bridgestone Americas, Inc.(ブリヂストン・アメリカス・インク、ブリヂストンの米国グループ会社)のCTOであるNizar Trigui(ニザール・トリギィ)氏が、オブザーバーとしてKodiakの取締役会に参加する。

この提携は単なる出資だけにとどまらない。両社はブリヂストンのタイヤ技術と車両運行管理システムの進化に焦点を当てた戦略的パートナーシップも締結している。Kodiakはテストプログラムの一環として、ダラスとヒューストン間の貨物輸送に使用される自動運転トラックに、ブリヂストンのセンサー付きタイヤと車両運行管理システムを使用する。同社は2021年5月、自動運転トラックによる貨物輸送をサンアントニオまで拡大すると発表。カリフォルニア州のマウンテンビュー周辺でも、自動運転トラックのテストを行っている。

年間10万から15万マイル(約16万〜24万km)の距離を走るセミトラックでは、タイヤを常にモニタリングしてその正常な状態を保つことが、トラック輸送の安全性には不可欠であるとバーネット氏は語り、それは人間が運転する場合でもコンピューターが運転する場合でも変わらないと付け加えた。

「自動運転システムの安全性は、最終的には、加速や減速、操舵の際に道路に接するタイヤを操作する能力にかかっています」と、バーネット氏は述べている。「タイヤが期待どおりの性能を発揮してくれると信頼できなければ、限界領域の安全性は必然的に保証されません」。

Kodiakはブリヂストンのスマートタイヤを使用して、空気圧や温度をモニターし、さらに車両の運動性や操縦性に影響を与えるホイールの負荷を測定する。Kodiakが収集したデータをブリヂストンと共有することで、ブリヂストンはタイヤの化学的特性を向上させるためにそれを利用することができる。だが、自動運転技術をてがける企業は、さらなる付加価値をタイヤメーカーにもたらすことができると、バーネット氏は強調する。Kodiakの自動運転トラックには独自のセンサーが搭載されており、タイヤがどのように使用されているかを正確に理解するための膨大な走行データを収集することができるのだ。

「Kodiakのような自動運転技術プロバイダーは、トラックがどのように運転されているかという生のデータをすべて持っています」と、バーネット氏はいう。「どのような力が発生し、どのように操舵され、どのくらいブレーキが踏まれたかということを、私たちはリアルタイムで把握しています。だから、これまでブリヂストンのような企業が集めることができなかった豊富なデータを収集することができるのです」。

これによりブリヂストンは、タイヤの最終的な寿命をより正確に予測できる予測モデルを構築することが可能になり、さらには路上でタイヤに問題が発生する可能性がある場合には警告を発することもできるようになる。「Kodiakが本当に興味を持っているのは、まさにそこなのです」と、バーネット氏は付け加えた。

今回のニュースに先立ち、Kodiakは2021年5月に、韓国の財閥であるSKグループと提携し、同社の自動運転技術をアジアで展開する可能性を検討していくと発表した。SKグループとの提携の最終的な目的は、Kodiakの自動運転技術を同地域で販売・流通させることにある。Kodiakは、人工知能マイクロプロセッサーや高度な緊急ブレーキシステムなど、SKグループが持つ製品、部品、技術を、自社の自動運転システムにどのように利用できるかを検討する。両社はまた、アジアの顧客向けに車両運行管理サービスを共同で提供することにも合意している。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:ブリヂストン自動運転トラックKodiak Robotics

画像クレジット:Kodiak Robotics

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)