グーグルはChromeでのサードパーティCookieのサポートを2年以内に段階的に廃止

Google(グーグル)は米国時間1月14日、今後2年以内にChromeでのサードパーティ製Cookieのサポートを段階的に廃止する計画を発表した。こうしたCookieは、通常はウェブ上のユーザーを追跡するために使われる。そのサポートをグーグルが廃止すること自体は驚きでも何でもない。というのも、同社はすでに「プライバシーサンドボックス」など、Chromeのプライバシーに対する配慮を強化すると発表していたからだ。しかし、この攻撃的とも言えるタイムラインは初耳であり、他の業界をも巻き込んだ議論に発展する可能性もある。

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「これは、ウェブの規格を再設計するという、グーグルの戦略です。プライバシー保護を標準機能にするためです」と同社Chromeエンジニアリング担当取締役のJustin Schuh(ジャスティン・シュー)氏は述べた。「サードパーティ製のCookieについては、あれこれ取り沙汰されていますが、追跡メカニズムの1つであることは確かです。そして単に追跡メカニズムの1つなだけですが、多くの人が注目しているものであるため、特にこれを名指しで取り上げているのです」。グーグルのチームは、他にもフィンガープリンティングの防止などに取り組んでいる。

今年2月から、同社はクロスサイトトラッキングを制限するための手法も、いくつか実装する予定だ。新たなSameSite(セイムサイト)ルールを施行し、サードパーティのものとしてラベル付けされたCookieには、HTTPS接続でのみアクセスできるよう強制する。この新たなSameSiteルールについて、グーグルは過去数カ月にわたって一部のChromeユーザーでテストしてきた。そのルールは若干複雑だが、全体的な考え方としては、他の人にもCookieを使わせたい開発者は、そのことを明示的にラベル付けする必要があるというもの。

ただし、そのような措置をはるかに超え、グーグルは今後2年間でChromeからサードパーティ製Cookieのサポートを完全に削除する予定としている。しかし、それは広告業界と出版社にとって非常に大きな変化をもたらすことになる。そうした会社は、ウェブ上のユーザーを、良くも悪くも、追跡するマーケティング担当者の能力に、たいていは依存しているからだ。それに対するグーグルの解決策が「プライバシーサンドボックス」というわけ。理想的には、ユーザー自身の情報と、ユーザーのブラウジング履歴を可能な限り秘匿しながら、引き続き広告業者は関連性の高い広告を表示できるようになる。

しかし、実際にこれがどのようなものになるのか、まだよくわからない。多くのアイデアはまだ流動的なのだ。ただし、シュー氏によれば、グーグルとしてこれを単独で実行することは望んでおらず、これをウェブ規格とするためのプロセスを踏む予定だという。同氏は、来年あたりから同社が試行を開始し、広告業者と出版社には、この開発中の新しいシステムに移行を開始してもらう計画を明らかにした。

とはいえ、これは大がかりな変更となるため、グーグルが何らかの抵抗に遭遇するのは間違いないだろう。「私たちの提案すべてについて、全員が賛同しているとは言いません」とシュー氏は認めた。「しかし、いたるところで提案のいくつかは非常に好意的に受け取られています。そうでないものついては、代替案を受け入れる用意もあります。それが、プライバシーとセキュリティを重視したものであればですが。つまり、私たちが期待しているのと同じレベルの予測可能性を持っていればという条件です。というのも、私たちは現在のウェブに一時しのぎの対策を施したいとは考えていません。ウェブのアーキテクチャを修正したいのです。それ以外に選択肢はないとも考えています」。

しかしそのためには、他のブラウザーベンダーを含め、グーグル以外の企業や人も参加する必要がある。シュー氏は、その可能性について楽観的なように見える。それがユーザーにとって、最大の利益となるから、というのもあるだろう。「ウェブを分断したくありません」と彼は言う。「ブラウザーごとに異なることに対し、模索しながら個別に対応しなければならないという状況にしたくはないのです。仮に個々のブラウザーが詳細部分で違うことを選択していたとしても、一定レベルの一貫性が必要です」。

現在では、MozillaのFirefoxなど、Chromeの多くの競合ブラウザーは、多くのサードパーティCookieを単にブロックするという、かなり強行なアプローチを採っている。グーグルは、それではウェブが損なわれてしまうとして、業界に対して回避策を見つけるよう促すしかないとしている。

同社の最近のすべてのプライバシーについての提案と同様、この提案について業界がどう反応するかを見るのは興味深い。広告エコシステムにおけるグーグル自身の役割を考えると、同社はこの問題を正しく解決して、ウェブ上の広告エコシステムを健全に保つことに、経済的利害があるのは明らかだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)