創業者が資金調達中にメンタルヘルスを管理する10の方法

編集部注:本稿の著者Adonica Shaw(アドニカ・ショー)氏は、健康とウェルネスに焦点を当てたプロフェッショナルな女性のためのソーシャルメディアプラットフォーム「Wingwomen」の創設者。

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パンデミック渦中、起業家のメンタルヘルスやストレスマネジメントが広く議論されるようになった。しかし多くのベテラン起業家にとってこの話題は未だタブーなトピックとなっている。世の中がニューノーマルに向かおうとしている今、創業者や投資家、メンタルヘルス専門家らは、パンデミック前には問題視されていなかったメンタルヘルスを今後考慮する必要があるのではないかという疑問を抱き始めている。

筆者もその1人である。実際、パンデミック前から問題だったのである。さらにいうと、起業家がリスクを受け入れる傾向にあるというのも、メンタルヘルスを助長させる原因だ。

「起業家は自分の仕事にさまざまな弱さを抱え込んでいますが、避けることのできないリスクとそれが相まって、リスクがうまくいかなかった際に悪化することがあります」。カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部の精神医学臨床教授であり、Econa(エコナ)の創設者であるMichael Freeman(マイケル・フリーマン)氏はそう話す。「そして実際、ほとんどの場合はうまくいかないため、傷つき、精神的な症状を感じたり、下降線をたどったりしやすくなるのです。その逆も同様で、うまくいっているときはうまくいっているときで、別の種の精神衛生上の問題が発生しやすくなります」。

それでは、例えば資金調達中に困難な状況に陥ったとき、起業家はこのような問題にどう対処し、どのようにして精神を研ぎ澄ませてそれを維持すれば良いのだろうか。

答えはシンプル、予防と認識の2つである。予防という点では、起業家のメンタルヘルスにおける違いを受け入れ、起業家のメンタルヘルスの優れた能力を称え、ダウンサイドを防ぐライフスタイルを取り入れることに尽きるとフリーマン氏はいう。

「あらゆる医療に同様のことが言えますが、メンタルヘルスにおいても、ほんの少しの予防は多大な治療に値します」とフリーマン氏。「起業家がメンタルヘルスの問題を予防したいなら、まずライフスタイルのリスク要因を評価することから始める必要があります」。

フリーマン氏によると、起業家がメンタルヘルスをサポートする方法は5つあるという。

  1. 睡眠をとる。睡眠の最も重要な役割は、脳をリチャージし、日中に起きていられるようにすることである。心と体を回復させるということには非常に大きな予防効果がある。目を開けていられないようではプレゼンなどできるはずがない。
  2. 運動をして汗をかくこと。起業家は最低でも1日45分間の運動をすべきであり、かつそのうち週2回は汗をかくほどの激しい運動であるべきだ。運動は健康に良いだけでなく、実行機能も高めてくれる。つまり集中力を高め、物事を成し遂げる能力を高めてくれるのだ。また、自身の気持ちをコントロールできるようになるため、たとえVCに自分のアイデアをめった斬りにされようと、電話をきってから落ち込むことがなくなる。資金調達の際にイエスかノーどちらを得られるかは、明確な思考能力が左右するだろう。
  3. ビジネスとは関係のない友人を得て、維持する。起業家は時に孤独な職業でもある。仕事とは別に友人や愛する人とのコミュニティを持つといい。また、人間関係が仕事のモヤモヤと混合してしまわないように気を付けたい。人間関係を維持し、仕事が大変な時には彼らが心の支えとなるような関係が理想である。
  4. 健康的かつ戦略的に食べる。多くの起業家はその道のりの中で、貧困生活を体験することがあるだろう。限られたリソースの中でプレッシャーにさらされているとき、ジャンクフードやファストフードを食べるのは間違ったトレードオフに他ならない。認知機能にも悪く、その他多くの健康上の影響がある。
  5. メンタルヘルスに関する懸念には、数カ月ではなく数週間単位で対処する。懸念事項を迅速に管理しない場合、好まざる結果に繋がってしまうことがある。「メンタルヘルスの症状が長引くと【略】より深刻なメンタルヘルスの状況につながる可能性があります」とフリーマン氏は述べている。「個人的な悪影響としては、より深刻なメンタルヘルス問題の発生、社会的な人間関係の崩壊、仕事上でのパフォーマンス低下などが挙げられます。ビジネス面では、倒産、従業員の流出、戦略的提携パートナーとの関係悪化、潜在的な投資家の喪失などが考えられます」。

認識に関しては、自分のストレスレベルを悪化させ、資金調達を成功させる能力に悪影響を与える可能性のある要因を理解し、それに応じた計画を立てることから始めるといい。ストレスレベルを上昇させる要因には、資金調達前の経済的状況や健康状態、性別、人種、業界のあり方、制度上の障壁、さらには市民権を得ているか否かなどが含まれる。

「有色人種、移民、女性の起業家はガラスの天井に対する懸念が非常に多い」とフリーマン氏はいう。「資金調達中のメンタルヘルス悪化の要因にもなります。【略】何らかの形で除け者にされてきたグループの人々は、メンタルヘルスの観点からだけでなく全体的に見ても、克服するのが困難な異なるハードルを抱えています」。

SaaSプラットフォームのMixtroz(ミクストロズ)の共同設立者であるKerry Schrader(ケリー・シュレイダー)氏は、こういったことがどのように資金調達に影響するかをよく知っている。同氏と同氏の娘であるAshlee Ammons(アシュリー・アモンズ)氏は最終的に100万ドル(約1億1000万円)以上の資金を集めることができたが「次の黒人女性」になるかもしれないというプレッシャーは相当のものだったという。

「100万ドル以上の資金を調達した37番目と38番目の黒人女性、というプレッシャーにとらわれるのをやめました」と同氏はいう。「もし私たちが成功しなかったら、他の黒人女性が資金調達できない原因になるのではないかと考えてしまいました。しかし正直なところ、私たちはそのような余分なストレスを排除することにし、人々に支持されるような収益性の高いビジネスを行うことに集中したのです。そして失敗したときには、白人男性と同じように、次のチャンスと資金を得れば良いと考えることにしました。もちろんそれが普通に得られるものではないということは分かっていましたが」。

シュレイダー氏によると、資金調達活動中におけるメンタルヘルスの管理方法に関する情報はほとんどなく、同親娘はさまざまな方法を試した結果、納得のいく方法を見つけることができたという。

同氏の経験をもとに、起業家が資金調達をしながらメンタルヘルスを管理する方法についてさらに5つ紹介したい。

  • カウンセラーやセラピストに相談して、ストレスレベルをコントロールする。セラピーについて、精神的に打ちのめされた時の対処法という考え方から、生き生きと生活するための予防的な方法という考え方に起業家らはゆっくりとシフトしてきているという。「私はBetterHelp(ベターヘルプ)を活用して資金集め中に誰かと話すようにしました」とシュレイダー氏は振り返る。「第三者に伝えることで、何でも言えるようになりました。プライベートで気持ちを吐き出すことで、投資家との会話もより効果的に伝えることができるようになりました。資格を持った専門家に相談してから、『私はあなたに助けてもらっている』という考え方から『私にはエキサイティングなチャンスがあるので、あなたには早期に投資してもらいたい』という考え方に変えることができました。カウンセリングはとても役に立ちました」。
  • 出口を用意しておく。目標設定は物事を軌道に乗せるためのすばらしい方法だが、有限の終着点を設定しなければ、決して成功できないような錯覚に陥ることもある。「当初、私たちはあるマイルストーンに到達しなかった場合、どのような行動を取るかという基準を置くようにしました。失敗するかもしれないと恐れるのではなく、ビジネスを終了して自分のキャリアに戻る時のルールを決めたのです。共同出資者との間で合意された『終了』の条件を設定するというのは私の精神衛生上すばらしいことでした。そして数年後の今、私たちはまだ戦っていますし、ほぼ正気も保っています」。
  • チームを頼る。1人で戦うことはできない。スタートアップを前進させ、自分の健康を守るためにチームを積極的に活用すべきである。「友人や家族からの資金調達を終えた直後に、私は乳がんと診断されました。資金調達をしながら放射線治療、手術、治療を受けていましたし、病院のベッドからもプレゼンをしました。しかし資金集めをしているときに、終わりなどありません。それがきっかけで、娘がフルタイムで取り組んでくれることになりました。家族として、長期的に成功するためには、お互いに助け合う必要があるということを実感しました」とシュレイダー氏は話す。
  • 計画に柔軟性を持たせる。起業したばかりの頃は、どうしても決められたプランに集中してしまいがちになる。しかし、著名な起業家たちの経歴を見てみると、彼らは必要に応じて方向転換を行い、常に学びを得ているということが分かる。「資金調達時には、週単位、日単位、さらには1時間単位で計画が変更され、それに常に対応しなければならない時期がありました」とシュレイダー氏は振り返る。「それは飛行機を買い、操縦を学び、燃料補給のための格納庫を同時に探すようなものだと私は思っています。好きなだけ計画を整理しようとすることはかまいませんが、どの程度計画ができるかなど計り知れません」。
  • お金のためにどの程度のストレスに対応できるか考える。当然のことながら、資金調達は小切手を確保することが目的だ。しかし起業家の中には、資金を得るために不可能な条件を飲んでしまう者もいる。資金調達の場に足を踏み入れる前に、自分の限界を知っておくことが大切だ。「自分が優位に立っていると感じている場合、人はどれだけ多くのものを得られるか試してみるものです。自分の理由を忘れてはいけません。自分を見失わずにできることがわかったら、やってみたら良いでしょう」とシュレイダー氏はいう。「そして覚えておいて欲しいのは、たとえ起業家であっても断るという選択肢は常にあるということです。特に、断るという決断が自分の正気を守ることにつながるのであれば、なおさらです」。

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カテゴリー:その他
タグ:メンタルヘルスストレスプレッシャー健康コラム

画像クレジット:Massonstock / Getty Images

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(文:Adonica Shaw、翻訳:Dragonfly)