首輪型猫用バイオロギングデバイス「Catlog」がのべ約3億件の行動データ蓄積、水飲みラベルの実装も予定

RABOは9月25日、首輪型猫用バイオロギングデバイスCatlog(キャトログ)の販売開始およびリリースから1周年を迎え、Catlogが保有する猫の行動データがのべ約3億件を突破したことを明らかにした。これら行動データを基に近日中に7つ目となる新しい行動ラベル「水飲み」を追加することも明らかになった。

同製品は、加速度センサーをはじめとする各種センサーを内蔵し、現在3000匹の猫で利用されている。同社ではセンサーが取得した数字をAIが解析することで、現在の猫の状態を把握している。

具体的には、寝ているのか、歩いているのか、走っているのか、くつろいでいるのか、毛繕いしているのか、食事をしているのかの6種類の猫の行動を、専用のスマホアプリで遠隔から確認できるのが特徴だ。

首輪(ペンダント)とは別料金となるが、利用スタイルに応じて月額無料と有料のプランを用意。無料プランは、今日の猫、前日のみ猫日誌、当日を含む週のみ猫グラフのデータを閲覧できるのみ。有料プランは、「みまもりプラン」の月額380円と「親バカプラン」の月額580円を2種類を用意している。みまもりプランで参照できるデータは無料プランと同じだが、付加機能として「飼い主追加」機能を利用可能だ。親バカプランでは、参照できるデータが無制限となる。

付加機能については、現在は両プランとも飼い主追加機能しか利用できないが、近日中にみまもりプランでは「行動ラベル」、親バカプランではそれに加えて「他猫比較機能」が搭載される予定だ。ちなみに有料プラン加入者の88%は親バカプランを選んでいるとのこと。

また同社では1周年を記念し、「猫鈴ゴールド」「キトンブルー」のペンダントに加え、「黑猫ブラック」「白猫ホワイト」の2つの新色を投入。本日より公式ストアでの予約販売を開始する。ペンダントの通常価格は税別1万4800円。初回購入のみとなるが、月額有料プラン「猫バカプラン」の継続加入を条件として税別9800円で購入することも可能だ。

なお同社はアニコムグループとの共同研究などで、病気が疑われるような行動(痒み、嘔吐、けいれん、長期的な活動量の低下など)を検出するための機能開発も進めている。将来的には、未病レベルの行動を検知・通知する「次世代の疾病予測モデルの確立」を目指すという。

ペットテックのシロップが2億円調達、データを軸に飼い主とペットに最適な情報提供へ

保護犬猫のマッチングサイト「OMUSUBI」やペットライフメディア「ペトこと」を展開するシロップは1月29日、複数の投資家を引受先より総額2億円を調達したことを明らかにした。今回の投資家にはジェネシアベン チャーズ、セレス、コロプラネクスト、三浦崇宏氏(GO代表取締役)のほか、社名非公開の上場企業や匿名の個人投資家も含まれる。

シロップは2015年設立のペットテックスタートアップ。今回調達した資金を活用して人材採用を強化するとともに、蓄積したデータなども活用して既存事業のサービス拡充を進める計画だ。

なお同社では昨年4月に既存投資家やチュートリアル・徳井義実氏ら複数の個人より8000万円を調達。それ以前にも複数回に渡って数千万円規模の調達を実施済み。今回も含めると累計調達額は約3.5億円となった。

ペット版Pairs「OMUSUBI」は会員1万人突破

現在シロップの事業の軸となっているのは冒頭で触れた2つのサービスだ。

保護犬猫と飼い主をつなぐOMUSUBIは「ペット版のPairs」と言えばわかりやすいだろう。仕組み自体は非常にシンプルなマッチングサービスではあるが、保護団体の完全審査制を取り入れ、密なカスタマーサポート体制を構築することで譲渡トラブル回避や譲渡率向上を目指してきた。

審査済みの登録保護団体数は昨年4月から約2倍に増え、100団体を突破。会員数も1万人を突破している。

大きなアップデートとしては昨年8月にデータレコメンド機能「相性度診断」を追加。ユーザーからライフスタイルや好きなタイプなどの嗜好データを収集し、犬や猫のプロフィールデータと照合して相性度を可視化する仕組みを導入したところ、月間応募件数が2倍以上になったという。

「犬や猫は100種類以上いて種別の特徴や性質はそれぞれ異なる。それを度外視してしまうことがミスマッチにも繋がるが、事前に全てを把握することは難しいのでデータを活用してマッチングをサポートしている。たとえば最初は何となく猫を希望していたが、嗜好データなどを踏まえると実は犬の方が相性が良く、実際にマッチングに至ったケースもある」(シロップ代表取締役の大久保泰介氏)

現在は保護犬猫を対象にしているが、ゆくゆくはそれ以外の犬猫と飼い主のマッチングにも広げていくことを検討しているそうだ。

このOMUSUBIが人とペットとの“出会い方”を変えるサービスであるのに対し、ペトことはメディアを通じてペットの“育て方”を変える。獣医師などペットの専門家150名以上が執筆・監修している点が1つの特徴で、オススメのお出かけスポットやグッズから、獣医療や栄養知識まで幅広いコンテンツを提供。最大時のMAUは160万人だ。

ビジネスの観点ではタイアップ広告やOMUSUBIと連動したソーシャルグッド・SDGs文脈のプロモーションのほか、記事経由での宿泊施設の予約やAmazonでのグッズ購入によるアフィリエイトも一定の規模に達しているというのは前回も紹介した通り。現在は正式展開に向けて準備中ではあるものの、昨年にはフード領域の新サービスとしてドッグフードのD2C「PETOKOTO FOODS」を開発した。

昨年9月にベータ版をスタートしたものの、事前予約申し込みが600名を超えるなど継続的な安定供給が難しくなったため販売体制の構築に向けて中断。まずは限定的に販売を再開し、春頃を目処に規模を拡大していく計画だという。

データ活用で飼い主とペットに最適化した情報を提供へ

大久保氏が今後の注力ポイントにあげていたのが、前回に引き続きデータの活用だ。特にペトことにおいては春頃からデータを用いたパーソナライズ機能を実装する予定。「蓄積されてきた飼い主やペットのデータを活用するフェーズ」(大久保氏)に差し掛かり、ユーザーごとにマッチした情報を配信していく。

まずは情報(記事コンテンツ)とフードが中心。ペトことで得られたデータから最適なカロリー量を提案し、フードを定期配送することでペットの健康をサポートできる仕組みを作りたいという。

今回調達した資金もペトことの情報コンテンツの拡充や開発強化、D2Cフードの体制強化に向けた人材採用に投資をしていく計画。また少し先の話にはなるが、OMO文脈の取り組みとしてリアルなドッグカフェを開設するような構想も大久保氏の中にはあるようだ(まずはポップアップ型で)。

「ペトことを使えば自分とペットに最適化された情報が出てくるという体験を作っていく。いずれは自分たちに合ったキャンプ場がレコメンドされ、その予約まで一気通貫でできるようにしたいと考えている。ペットライフにおいて点となる機能をどんどん増やしながら、それらをデータを軸につなぎ合わせて線にしていきたい」

「社内のメンバーは全員が犬や猫の飼い主で思いは強い。『人が動物と共に生きる社会をつくる』というミッションを掲げているが、犬・猫自身や飼い主を含む動物を好きな人だけでなく、苦手な人も支え合える社会を作るのが目標。信念を持って取り組んでいきたい」(大久保氏)

「自分も何かできないか」という想いが強かった——チュートリアル徳井氏がスタートアップに出資したワケ

昨日紹介したように、お笑いコンビ・チュートリアルの徳井義実氏がペットテック企業のシロップに“エンジェル投資家”として参画した。

最近ではスタートアップがテレビCMを実施することなども増えてきているから、芸能人とスタートアップがコラボレーションすること自体はそこまで珍しくないのかもしれない。徳井氏自身もかつて家計簿アプリを展開するマネーフォワードのテレビCMに出演していたことがある。

ただ、テレビ番組を始め様々なメディアで活躍する芸能人が自ら出資してスタートアップと関わる事例は、アメリカはまだしも日本ではまだまだ少ないだろう。

徳井氏にとっても投資家としてスタートアップに加わるのは今回が初めてのこと。人気芸人である同氏がなぜシロップに投資をしたのか、その背景やこれからの取り組みについて紹介したい。

動物番組に関わる中で感じた“楽しさ”と“違和感”

動物番組に関わる中で感じた「ある種の違和感」や、自分もペットのためにもっとできることがあるんじゃないかという「もどかしさ」。今回の出資の背景には、徳井氏が以前から抱えていたというそんな想いが関わっているようだ。

最初の出会いは、徳井氏がシロップのペットライフメディア「ペトこと」の取材を受けた約1年前にさかのぼる。

その記事でも明かされているように、徳井氏は現在2匹の猫を飼っているだけでなく、昔から身の回りに動物がいる生活をずっと送ってきた。仕事でもペットのエピソードをバラエティで披露したり、猫好きとして番組に出演したりするのはもちろん、約4年ほど動物番組のMCを勤めた経験もある。

そんな徳井氏にとって動物番組に関わることは当然やりがいのある仕事であったが、その一方でどこかしっくりこない感覚も持っていたそうだ。

「動物番組ではどうしても“ペットの素晴らしさ”や“ペットとの暮らしの楽しさ”を紹介する方向に行きがちだけど、一緒に暮らしていれば必ずしも楽なことばかりじゃない。一面だけを伝えていることに対して、『時には大変なこともあんねんけどな』とある種の違和感を抱えていたんです」(徳井氏)

その点でシロップの動物に対する考え方には共感できる部分が多いと感じていたという。特に犬や猫の目線に立って考えながらも、必要以上にストイック・ヒステリックになりすぎず「人間も動物も無理なく、継続的に付き合えるような温度感」を大事にしている点が、徳井氏の感覚と近かったようだ。

シロップは「人が動物と共に生きる社会をつくる」をミッションに掲げるペットテックスタートアップ。飼い主向けのペットライフメディア「ペトこと」、保護犬猫と飼いたい人をマッチングする「OMUSUBI」を運営している

LINEで出資の打診をしたところ、1時間で承諾の返答

ペットに対する考え方が似ていると思っていたのは、シロップ代表取締役の大久保泰介氏も同様だ。

「共に暮らす犬や猫は商品ではないし、かといって人間と同じでもない。その捉え方のバランスが難しい部分ですが、根本的な部分で考え方がかなり近いと感じました。だからこそ仲間に入って欲しいと思ったし、徳井さんの発信力だけでなく『人を笑顔にする力』や斬新な発想力を借りながら、面白いことができないかとメッセージを送ったんです」(大久保氏)

写真右はシロップ代表取締役の大久保泰介氏。

ペトことでの取材から約1年。その間は特に両者で連絡を取り合うこともなかったが、実際に大久保氏から「出資してもらえないか」とLINEでメッセージを送ったところ、1時間も経たないうちに徳井氏から承諾する旨の返信があったそう。もちろん契約面の細かい調整などは別で行ったというけれど、かなりのスピード感だ。

「4年ぐらいやっていた動物番組が終わってからも、SNSに『猫を保護しているのでなんとか助けてもらえませんか』『◯◯のペットショップが倒産して行き場を失っている犬猫がいます』と連絡を頂くことが多くて。それでも変に間違った情報を発信すると却って問題が生じてしまうし、動物の命にも関わるので中途半端な対応もできない。だから基本的には応じないようにしていたのですが、どこかで『自分にできることがあったんじゃないかな』と気にかかる部分がありました」

「そんなもどかしい気持ちがあった時に声をかけてもらい、これはもう『やれ』ということなのかなと思ったんです。テレビに出て動物の話をしている立場でもあるので、何か動物に恩返しができればという考えもあって。もともと(シロップの)考え方には共感していたし、縁も感じたので何か一緒にやってみたいなと」(徳井氏)

自分としてはあまり「投資」という感覚を持っていない

そのような経緯だったから、徳井氏の中では「ビジネスライクには考えていないし、あまり『投資!』という感覚も持っていない」そう。純粋に、SNSなどを活用しながらシロップの想いや取り組みを少しでも多くの人に届けていきたいという。

徳井氏は今回の出資を機にシロップのCAT(Chief adoption, TOKUI)に就任している。「adopt」(アダプト)は保護犬・保護猫に関して使う際、「里親になる」ことを指す。日本に保護犬猫から迎える文化をつくることで、犬や猫、そして共に暮らす人達のペットライフをより豊かにするべく、今後共同で情報発信やサービス開発に取り組む計画だ。

「イメージとしては広報担当のような役割。もちろん芸人としての顔が本業なのでそことのバランスはあるけれど、力になれることがあれば積極的にチャレンジしていきたいと思っています。発信力のある一般の飼い主として、飼い主の目線で企画を考えたり、情報を届けていきたいです」(徳井氏)

まずは共同プロジェクトの第1弾として、読者参加型の連載小説「徳井義実の『猫と女』」をペトこと上でスタートする。

これは猫と一緒に写っている女性の写真1枚を読者から募集し、徳井氏がその女性と猫の物語を妄想する短編読み切りの連載小説企画。水面下では他にもいろいろなアイデアが出ているようで、今後も徳井氏×シロップならではの企画が次々と生まれていきそうだ。

出資をすることで踏み込んでやれることもある

少し余談になるけれど、昨今、海外では芸能人がスタートアップに投資する「セレブ投資」が珍しくなくなってきた。有名どころだと共同で立ち上げたベンチャーファンドを通じてAirBnbやUberなどに投資をしている俳優のアシュトン・カッチャーのほか、レオナルド・ディカプリオジャスティン・ビーバーらも新興企業への投資経験がある。

日本だとお笑い芸人ではロンドンブーツ1号2号の田村淳氏がBASEやProgateなどに出資。最近ではサッカーの本田圭佑氏が投資家としてスタートアップの資金調達記事に名前を連ねることも増えてきた。

徳井氏は以前から“家電芸人”として新しい機器の情報をバラエティ番組で紹介したり、AIの仕組みを解説する教養番組で司会を勤めたりもしている。だから今回の話を聞いた時、もしやこれからエンジェル投資をバリバリやっていくのかと思ったのだけど、今のところはそういう訳でもないようだ。

「ものすごく自分が興味があったり、ちょうどやりたいと感じることであればあり得ると思いますが、現時点ではあまり積極的にやっていこうとは考えていません。やっぱり芸人としてネタを考えること、創作をすることに少しでも多くの時間を使いたいんですよね」(徳井氏)

「(それでも今回シロップに出資を決めたのは)それだけ自分としても『何かやりたい』という想いが強く、考え方に共感できたから。出資をするということは責任も生じるし覚悟もいりますが、そうすることで一歩踏み込んでやれることもあるんじゃないかなと思うんです」(徳井氏)

徳井氏自身が広報担当のような役割を担いたいと話し、CATに就任しているように、今回の取材を通して「1人のメンバーとしてシロップの考え方を多くの人に届けていきたい」という気持ちが強いのだと感じた。

日本のスタートアップ界隈も起業家・投資家ともに色々な人が関わるようになり、エンジェル投資の形も多様化してきている。今回の徳井氏のケースのように、今後さらにスタートアップコミュニティの輪が広がっていきそうだ。

ペットテックのシロップがチュートリアル徳井氏らから資金調達、ペット領域でD2Cコマースの展開も

写真右からシロップ代表取締役の大久保泰介氏、チュートリアル徳井義実氏

ペットテック領域で2つの事業を展開するシロップは4月23日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資と融資を合わせ、総額で8000万円を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドには既存投資家であるFFGベンチャービジネスパートナーズ、ミラティブCFOの伊藤光茂氏、エウレカ共同創業者の西川順氏、獣医師の佐藤貴紀氏に加えて、新規の投資家としてお笑いコンビのチュートリアル・徳井義実氏ら3名の個人投資家が参加している。

過去に調達した金額も含めると、シロップの累計調達額は約1億5000万円。今回の8000万円については前回資金調達を行った2017年12月以降、複数回に分けて集めたものとのことだ。

これまで保護犬猫と飼いたい人をマッチングする「OMUSUBI」とペットライフメディア「ペトこと」を運営してきたシロップ。今後は人材採用を強化しながら両サービスのアップデートを進めるほか、新たなチャレンジとして5月〜6月を目処にD2C事業もスタートする。

また個人投資家として加わった徳井氏は同社の広報担当のような役回りで、共に情報発信やサービス開発に取り組むそう。まずは第1弾として4月24日より読者参加型の連載小説をペトこと上で展開する予定だという。

徳井氏によるとスタートアップに出資するのは今回が初めてとのこと。出資の背景や今後の取り組みについては本人に直接話を聞くことができたので、そちらは明日詳しく紹介したい。

ペット版のPairsと飼い主向けメディアを展開

前回も紹介した通りシロップは「蓄積したデータを用いて、個々の犬猫に最適な情報や商品を提供するペットライフ・プラットフォーム」の構築を目指しているスタートアップだ。

その軸となるのが現在運営するOMUSUBIとペトこと。位置付けとしてはOMUSUBIが人とペットとの“出会い方”を変える役割、そしてペトことが“ペットの育て方”を変える役割を担う。

保護団体と保護犬猫を飼いたいユーザーを繋ぐOMUSUBIの特徴は「保護団体の完全審査制を採用していること」と「転職エージェントのように密なカスタマーサポートを実施していること」の2点だ。譲渡トラブル回避や譲渡率向上のために、保護団体の現地調査や資格調査、運営状況調査などを実施しつつ、お迎えコンシェルジュとしてユーザーのサポートを手厚くすることで細かいニーズを汲み取る。

シロップ代表取締役の大久保泰介氏によると、従来は「例えば1人暮らしはNGなど、条件が厳しいことで応募が入っても実際に譲渡される確率は10〜20%くらいだった」そう。OMUSUBIの場合は上述した特徴などによって、この割合を43%まで高めているという。

現在は募集団体の数が全国で50団体を超え、募集数も増加傾向にあるとのこと。ユーザー側にも主に検索エンジンやソーシャルメディア経由でリーチしていて、2年間で約150件のマッチングを実現。累計応募数は前年比で258%増加、累計譲渡数も160%増加するなど「まだまだ数は小さいが、徐々に成果に結びついてきた」(大久保氏)状況だ。

もう一方のペトことは飼い主向けにお出かけやアウトドアといったライフスタイル系の情報から、獣医療のように専門性の高いトピックまで、幅広いコンテンツを提供するペットライフメディア。「信頼性にこだわっていて、獣医師でも“がん専門医”など領域に特化した専門家が執筆段階から関わっている」(大久保)のがウリで、直近では月間約160万UU、400万PVほどの規模に成長している。

大久保氏の話では記事を読んだユーザーが次のアクションとして、コンテンツ経由でペットと泊まれる宿泊施設を予約したり、グッズをAmazonで購入する事例が多いそう。1ヵ月の流通総額(記事経由の購入金額 / 2019年1月時点)は約9000万円になるという。

蓄積してきたデータやナレッジを活かして事業を加速

今後シロップでは、これまで蓄積してきたデータやコンテンツをもっと活用することで、事業をさらに加速させる方針だ。

OMUSUBIでは以前から大久保氏が「ペット版のPairs」を目指すと言ってきたように、データを用いたレコメンドマッチングの強化に向けてリニューアルを実施する。

「従来は見た目の好みで選びがちだったが、応募者と向き合う中で『前に飼っていた犬と同じ名前だから』『シュナウザーが好きなので(雑種でも)タイプが似ているから』など、様々な要素でマッチングできる可能性があることがわかった。データを上手く使うことで、今までは気づかなかった犬猫との出会いのチャンスを提供し、ペットショップに行かずとも正しくペットを迎えられる窓口を作りたい」(大久保氏)

現在のOMUSUBI。今後は犬猫と飼い主の相性度がスコアリングされる機能を実装し、データを活用したマッチングを実現する計画だ

具体的には飼い主がユーザー登録時に簡単な質問に回答すると、サービス上の犬猫との相性度が表示される機能を実装。そのスコアに基づいて犬猫をレコメンドしていく仕組みを構築する。

「犬猫の種類は300種を超えていて、それぞれがどんな性格で、どのような育て方をするのが適切なのか分からないことがミスマッチを引き起こしている。それが最終的には飼育放棄に繋がり、保護犬猫が増える原因にもなっていた。自分に合った犬猫と出会えるシステムを作ることで、結果的には殺処分問題の解決などにも繋げていきたい」(大久保氏)

OMUSUBI同様にぺトことでもデータの活用を進める。直近ではペットと一緒に行けるスポットを検索できる機能やマイページ機能、各ユーザーごとにパーソナライズしたレコメンド機能などを実装予定。中長期的にはライフログやコミュニティ機能を加えるほか、獣医療など新たな領域にも進出していく計画だという。

D2Cに進出、「ペットライフスタイル企業」として拡大へ

OMUSUBIとペトことに続く「新しい領域」という意味では、5〜6月ごろにリリースを予定しているD2C事業がまさにそうだろう。

1.5兆円のペット市場の中でコマースは半分近くの7200億円を占める重要な領域。今までは大量販促型の生産モデルが基本で、ホームセンターやペットショップといったオフラインの小売店舗でペット用品を購入するケースが多かったが、若い飼い主も増えオンラインでの購買体験のニーズも高まっている。

大久保氏は前回もコマース領域での事業展開については言及していて、ペトことを通じて厳選したグッズを販売する取り組み(販売はBASEを活用)にも着手済み。今後はメディアで蓄積したデータやニーズを基にペトことブランドでオリジナル商品を手がけつつ、自分たちで作らないものはパートナーとタッグを組みながら販売していくモデルを検討しているそうだ。

ペトことの「GOODS」カテゴリではシロップが厳選したグッズが販売されている

「第1弾として、まずはオンラインとも相性の良いフードから始める予定。既存事業が地固めできてきた中でD2Cコマースをしっかり育てていきたい」(大久保氏)

現在シロップの収益源となっているのはOMUSUBIとペトことで連動した広告(アドセンス、タイアップ、アフィリエイト)だが、ゆくゆくはコマースが大きな柱になることを見込んでいる。

加えて大久保氏の頭の中には、国内の1.5億円市場に留まらず事業を広げていく構想があるようだ。成長市場であるアジアへのサービス展開はもちろん、国内でも新たな可能性が見え始めているという。

「ペット市場だと1.5兆円だが、『ペットを飼っている人のライフスタイル』という文脈では電力や保険、自動車、アウトドア、住宅といった周辺の市場も関わってきて、より大きなポテンシャルがある。実際(15才未満の)子供よりペットの数の方が多くなっていることもあり、自分達のクライアントにもこれまでペット市場に入っていなかったような企業が増えた。ペット企業ではなく、ペットライフスタイル企業としてさらなるチャレンジをしていきたい」(大久保氏)