TikTokはホロコーストに関する誤情報に立ち向かっているが、反ユダヤ主義は根強い

国際ホロコースト記念日の1月27日、TikTokは歴史的な大惨事と現在も続いている反ユダヤ主義の脅威についてユーザーを教育するためのポータルをDiscover(ディスカバー)ページに開設した。TikTokは、2021年も同様のポータルを設けている。

TikTokのモバイルアプリにあるDiscoverページに移動すると、国際ホロコースト記念日を示すクリック可能なバナーが表示される。このバナーは、ユダヤ人クリエイターによる3つの教育的なTikTokが集められたページに誘導する。クリエイターには、ひ孫の助けを借りてTikTokを制作した98歳のホロコースト(ナチスによるユダヤ人大虐殺)生存者が含まれる。さらに今後は、ユーザーがTikTokで「ホロコースト」や「ホロコースト生存者」などの言葉を検索すると「憎悪や誤った情報の拡散を防ぐために、信頼できる情報源を参照する」よう促すバナーが表示され、ホロコーストに関する多言語ウェブサイトへと誘導される。数カ月以内に、TikTokはホロコーストに関する動画に同様の告知を常設バナーとして追加する予定だ。TikTokは、2020年から連携しているユネスコ(国連教育科学文化機関)および世界ユダヤ人会議と協力して、こうした変更を行った。

この取り組みは、ホロコーストは起こらなかったという誤った陰謀論であるホロコースト否定に直接対処している。しかし、ユダヤ人のTikTokユーザーの中には、プラットフォーム上の反ユダヤ主義は、ホロコーストのコンテンツに関するいくつかのポップアップでは解決できない、より大きく複雑な問題だと考える人もいる。

@livschreiber

Let’s see if this gets taken down. #jewishtok #tiktokantisemitism #antisemites #greenscreenvideo

♬ Monkeys Spinning Monkeys – Kevin MacLeod & Kevin The Monkey

7万4000人のフォロワーを持つスタイリストのLiv Schreiber(リヴ・シュライバー)氏は、2021年11月にユダヤ人デートアプリ「The Lox Club」と提携して広告を出した。その1週間後、同氏は動画を投稿してから毎日、反ユダヤ的なコメントが波のように寄せられていることを紹介する動画を投稿している。

「なぜ反ユダヤ主義が許されるのか理解できません」とシュライバー氏は動画の中で語っている。「なぜ削除されないのか理解できません。TikTok、これは譲れません」。

TikTokでの反ユダヤ主義に関する会話は2021年4月に、ユーザーが鼻などを細長くするフィルターを使いながら、ユダヤ教徒の暮らしを描いたミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の「If I Were a Rich Man」を歌うというトレンドが流行したときに急増した。こうした動きは、TikTokを利用するユダヤ人にとって、ユダヤ人の鼻を誇張した風刺画やその他の有害な反ユダヤ的イメージなど、これまでの固定概念を呼び起こすものだった。

そうしたトレンドがプラットフォームに浸透する中、TikTokは2021年5月のJewish Heritage Month(ユダヤ人遺産月間)を記念するために作成した「#MyJewishHeritage」というタグを通じて、ユダヤ人クリエイターにポジティブな光を当てようと試みた。TikTokはDiscoverページでユダヤ教に関するいくつかの投稿を取り上げたが、自分のコンテンツが宣伝されたクリエイターはTikTokから何の警告も受けなかった。その結果、一部のユダヤ系クリエイターには、突然、反ユダヤ主義的なコメントが殺到した。

TikTokは、2022年の国際ホロコースト記念日ポータルに掲載されたクリエイターには報酬が支払われたと述べている。

@ezzy4prezzy

Reply to @hehehehhehe2

♬ original sound – Ezra811

「TikTokの反ユダヤ主義に関する問題は、あらゆる方面から嫌がらせを受ける羽目になることです」と、3万7000人以上のフォロワーを持ち、政治的な主張を行うTikTokユーザーのEzraはTechCrunchに語った。「極右のアカウント、荒らし者のアカウント、よくわかっておらず意図せず反ユダヤ主義のアカウント、ユダヤ人とイスラエル人を区別できない左翼のアカウントなどがあります。ですので、反ユダヤ主義の取り締まりは、多方面にわたる問題なのです」。

TikTokはプラットフォーム上の反ユダヤ主義を公に非難しているが、新しいポータルの立ち上げのような一般向けの連帯のジェスチャーは、プラットフォーム上で嫌がらせを経験したユーザーにとっては空しく響くかもしれない。また、TikTokがこの取り組みにどれくらいの時間を費やしたかも不明だ。というのも、TechCrunchがホロコースト記念日ポータルに最初にアクセスしたとき(米国東部時間午前3時のリリースから数時間後)、反ユダヤ主義的事案を名誉毀損防止同盟に報告するリンクが機能しなかったからだ。数時間後、この問題は修正されたようだ。TikTokは、リンクが機能しないままポータルを公開した理由についての問い合わせにはまだ回答していない。

TikTokで反ユダヤ主義について投稿している大学院生のStephanie Gurewitz(ステファニー・グレヴィッツ、@shachar.mg)氏は、国際ホロコースト記念日のポータルがユダヤ人に対するホロコーストの影響しか扱っていないことに驚いた。別の記念日であるYom HaShoah(ヨム・ハショア)は、ホロコーストでの600万人のユダヤ人の死を追悼する日だ。しかし、ナチスは障害者、同性愛者、ロマ民族など、社会から疎外された人々も迫害していた

グレヴィッツ氏はTechCrunchに対し「この日は、ユダヤ人のための特別な追悼の日ではなく、国際ホロコースト記念日です」と話した。「今日はホロコーストのすべての犠牲者を悼む日であり、ロマ民族については何も触れられていません。そこに欠けているものがあり、それが問題なのです」。

ユダヤ人クリエイターらは、今日も自分たちの動画に反ユダヤ的なコメントが寄せられていることに触れている。

「TikTokには偏見を持ってやってくる人がいて、それを止めるにはバナーだけでは不十分だと思う」と彼らは語った。

@shachar.mg

Ways that #antisemitism spreads undetected on TikTok #tiktokantisemitism #tiktokalgorithm #jewishtiktok Thank you @criticallens for the screenshots!

♬ Monkeys Spinning Monkeys – Kevin MacLeod & Kevin The Monkey

月間アクティブユーザー10億人のプラットフォームで、コンテンツのモデレーションを行うのは容易なことではない。しかし、ユーザーは往々にして普通のユーザに明白な手段で検知メカニズムを回避している。例えば、セクシュアリティについて話す場合でも、ガイドライン違反のフラグを立てられないように「s3xuality」と書くこともあるだろう(アダルトコンテンツは違反だが、例えば同性愛について話すのは違反ではない)。これと同じ手口は、悪意のあるユーザーが反ユダヤ的なメッセージを送るために度々使っており、TikTokはこれを検出することができない。

「私は、TikTokや他のソーシャルメディアプラットフォームが、重要な原因に注意を集めるためにできることをすることについては、本当にすべて賛成です。あの(ホロコースト記念日)ポータルを見ると、彼らが社内でそれについて行ったすべての会議のことを思い、そのことを私は感謝しています」とシュライバー氏はTechCrunchに語った。

画像クレジット:Nur Photo / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

Facebookが方針転換してホロコースト否定コンテンツを禁止へ

Facebook(フェイスブック)は米国時間10月12日に、同サイトにおけるホロコースト否定コンテンツに対する方針を大きく転換した。長年にわたり、フェイスブックは表現の自由を優先して著しく攻撃的なコンテンツを削除せず、伝統的出版社の果たしてきた責任から距離をおいている(Vox記事)ことを非難されてきた。10月12日に同社は立場を翻し、「ホロコーストを否定あるいは歪曲するいかなるコンテンツも禁止する」ようヘイトスピーチポリシーを変更した。

この決定は、オンラインヘイトスピーチ攻撃が増え続けている中、プラットフォーム全体でヘイトスピーチの蔓延と戦うフェイスブックの新たな取組みの一環であると同社は語った。

「私たちは250を超える白人至上主義団体を排除し、ポリシーを改定して武装集団とQAnon(キューアノン)に対処しました」とフェイスブックはコンテンツ担当副社長であるMonika Bickert(モニカ・ビッカート)氏が書いた発表文で説明した。「また当社は、世界中でその他の個人および団体も定期的に追放しているほか、2020年第2四半期には2250万件のヘイトスピーチを削除しました。最近当社は一年間にわたる外部専門家との協議を経て、世界やその主要な組織を動かしているとするユダヤ民族の団結力に対する反ユダヤ姿勢の投稿を禁止しました」と同社は述べている。

さらにフェイスブックは、この分野における同社の不作為が世界に与えた影響を如実に表す不穏な統計データを公表した。18~39歳の米国成人を対象とした最近の調査によると、1/4近くがホロコーストは作り話であるか、誇張されているか、あるいはよくわからないと答えたとフェイスブックは語った。

フェイスブックは、ホロコーストの研究と追悼に取り組むYad Vashem(ヤド・ヴァシェム)などの組織が、ホロコースト教育は反ユダヤとの戦いの鍵であると強調していることも指摘した。

憶えている人も多いだろうが、かつてフェイスブックのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、フェイスブックがプラットフォームに投稿された内容に介入すべきかどうか議論の一例としてホロコースト否定を取り上げた。2018年、Recodeのインタビューとその関連記事でザッカーバーグ氏は、ホロコースト否定は間違った考えであり個人的に「極めて不快」だと語ったが、フェイスブックはそのコンテンツを削除すべきではない、なぜなら「誤っている人は存在するものだから」と語った。

しかしこの問題とその賛否はフェイスブックにとって新しいものではなかった。ホロコースト否定コンテンツはこの会社にとって長年の問題であり、フェイスブックの表明する立場に反対している社員も少なくない(未訳記事)。2009年5月には、言論の自由の保護を優先し、それは否定的結果よりも重要であると主張した(未訳記事)ことさえあった。

その後フェイスブックは自社プラットフォーム上でホロコースト否定を許すだけでなく、積極的に推進した。2020年の英国拠点の反過激主義組織、Institute for Strategic Dialogue(ISD/戦略的対話研究所)の調査(The Guardian記事)でフェイスブックを検索したところ、フェイスブック上のホロコースト否定ページが候補に表示された。推奨されたリンクの中にはホロコースト修正主義者や否定主義者の書籍を販売している出版社も入っていた。

今夏、ADLおよびNAACP(全米黒人地位向上協会)やColor of Changeなどの人権擁護団体が1カ月にわたるフェイスブック広告ボイコット運動を行い、フェイスブックがヘイトスピーチ対策に力を入れ、何らかの措置をとることを促した。取組みには1000社以上の広告主が賛同(The New York Times記事)し、フェイスブックに方針転換のプレッシャーを与えた。

その後フェイスブックは、フェイスブックおよび初めてInstagramでも反ユダヤ陰謀論を全面的に禁止(Recode記事)し、一部に反ユダヤ的要素を含むQAnonの排除を開始した。しかし、ホロコースト否定の禁止までには至らなかった。

そして10月12日、ザッカーバーグ氏はフェイスブックの公開投稿で次のように述べている。

私は表現の自由の保護、およびホロコーストの恐怖を矮小化あるいは否定することによる危害という両者間の緊張に苦慮してきました。反ユダヤ暴力の増加を示すデータを見てきたことで私自身の考えが変化するとともに、ヘイトスピーチに対する当社のポリシーも変わっています。許される表現と許されないの正しい境界線を引くことは、ひと筋縄ではいきませんが、現在の世界の状況を踏まえると、これが適切なバランスだと私は信じています。

フェイスブックは、今回の決定によってプラットフォームからこの種のコンテンツが直ちに一掃されるわけではないといっている。

「こうしたポリシーの施行は一夜にしてなせるものではありません。ポリシーに反するコンテンツにはさまざまな種類があり、施行にあたって当社のレビュー担当者とシステムを訓練するための時間がしばらく必要です」とフェイスブックは説明した。

関連記事:Facebookは全プラットフォームで米国の陰謀論グループQAnonを締め出しへ

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティー
タグ:Facebookホロコーストヘイトスピーチ

画像クレジット:Jakub Porzycki/NurPhoto/ Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook