【コラム】米国で増えている暗号資産市長

Bitcoin(ビットコイン)をはじめとする暗号資産の価格は、2021年に急騰した。パンデミックの時代、この分野では暗号資産で大富豪になったという話もよく聞く。

暗号資産といえば、元々は民間セクターの話である。ビットコインやその他の暗号資産プロジェクトは、非中央集権的で政府の金融政策の影響を受けない変更不能なデジタル通貨を作ることを意図して始まったものだ。

しかし、この市場の価値が2兆ドル(約230兆円)を超えた近年、公的機関も暗号資産に注目するようになった。初期の規制を導入した国、全面的に禁止した国、大規模な導入を行った国など、対応も国によってさまざまである。

自国の不換紙幣を印刷する国家政府と地方自治体とでは、暗号資産に対する見方は大きく異なり、最近では、暗号資産をこの新しい産業が持つ技術的、財政的、経済的発展の可能性を活用する機会と見る都市も増えている。

確かに、市役所でビットコイン、ブロックチェーン、NFT(非代替性トークン)といった言葉を聞くことはあまりない。しかし、マイアミ、タンパ、ニューヨーク、ジャクソン(テネシー州)などの4都市ではこれらの言葉を耳にすることも増えてきた。というのも、市長が自身の給与の一部をビットコインで受け取ることに合意するなど、暗号資産の分野に参入するためのきっかけを示したからだ。

都市のイノベーションに関する多くのストーリーがそうであるように、このストーリーも1人の市長が話題を先導し、他の市長たちに挑戦状を叩きつけることから始まる。今回のケースでは、マイアミ市長のFrancis Suarez(フランシス・スアレス)氏が、次の給料をビットコインで受け取るとツイートしたことに対抗して、次期ニューヨーク市長のEric Adams(エリック・アダムス)氏が複数回の給料をビットコインで受け取ると発言している。

スアレス氏は次のように話す。「教育は、暗号資産にまつわる恐怖や誤解を払拭するための最良の方法であり、アダムス市長と私の発言の根本は教育を狙ったものです。私たちが真っ先に水に飛び込む姿を見れば、おそらく他の人々も自信を持って水に足をつけることができるでしょう」。

1人目の市長は注目すべきで、2人目の市長はその模倣だろう。しかし、3人以上の市長がビットコインの勢いに乗るのであれば、これは明らかにトレンドといえる。

ジャクソンは人口約7万人。Scott Conger(スコット・コンガー)市長は、同市が選出した市長の中では最も若い部類に入るが、この友好的な挑戦に参加し、給与をビットコインで受け取ると発言した。コンガー氏とスアレス氏は、これについてツイッターでやりとりをしている。コンガー氏はジャクソンという小さな都市で、暗号資産分野のイノベーションを起こしてきた。

これに負けじとフロリダ州の別の市長も参入してきた。タンパの Jane Castor(ジェーン・キャスター)市長は、コンガー氏のツイートからわずか数日後、タンパで開催された暗号資産カンファレンスで、給料をビットコインで受け取ることを発表したのだ。最近、新興技術都市のトップに選ばれたタンパは、フロリダ州内の技術系雇用の25%を占め、暗号資産という新興分野と親和性が高い。

コンガー氏は、スアレス氏の行動は大都市だけに当てはまるものではなく、あらゆる規模のコミュニティで通用すると指摘する。彼は、大都市で起きているテクノロジーや暗号資産に関する興味深い出来事を観察し、それがジャクソンのような(小さな)都市にはどのように反映されるかを考え、(優れた市長なら当然だが)ジャクソンの経済発展の可能性に目を向けた。

彼は次のように話す。「マイアミや大都市に限定される必要はありません」「ジャクソンにはそのチャンスがあります。ジャクソンは、テネシー州で家庭にギガビットの光ファイバーを導入した最初の都市です。新しい技術をいち早く取り入れるのは当然でしょう?」。

ジャクソンでは超高速のインターネットサービスが普及しており、ハイテク企業の獲得競争に大きく貢献している。コンガー氏は、この結果としてジャクソンに暗号資産や分散型金融(DeFi)の企業が増えるはずだ、と考える。

「場所は存分にあります」とコンガー氏。小売業界が縮小し、既存の企業が使用する物理的な空間が減る中、彼はチャンスを見出している。「DeFi、暗号、技術系の企業が生まれれば、彼らには事業を行う場所が必要になります」。

この小さなコミュニティの利点を強調し、コンガー氏は次のように付け加える。「人口7万人の都市で十分なのに、なぜ数百万人の都市に行く必要があるのでしょうか」。

経済発展を重視する姿勢は、4人の市長だけでなく、暗号資産の世界を知ることとなった他の地域のリーダーたちも共通していて、彼らはそれぞれの都市で雇用の未来について考えている。マイアミでは、暗号資産分野における市長の取り組みの中核にそれが見て取れる。

スアレス氏は次のように話す。「マイアミは共通のテーマの上に成り立っています。マイアミに来る人たちは、自国の政府に取り残されたり、さらにひどいケースでは迫害されたりすることに嫌気がさし、より良い生活を求めてここに来ています。そしてお返しにとこの街をもっと良いものにしてくれます」「マイアミムーブメントは、質の良い、高収入の仕事をこの街にもたらしています。私は、マイアミの将来を見据え、次世代のリーダーたちをこの街から輩出したいと考えています」。

人材の誘致と定着に力を入れているのは、国内の多くの都市でも同じである。マイアミは、テクノロジー、金融、(そしてこの記事で紹介するようにその両方が融合した)暗号資産といったあらゆる分野を成長させることを目指している。

「マイアミムーブメントは、パンデミックなどの数々の要因で人々がマイアミに集まったことに起因するものですが、成長中の金融やテック部門への支援は何十年も前から行っています 」とスアレス氏。「多くの人が思っているほど『突発的』なものではありません。この街にイノベーションと成長を呼び込むことは、すべてのマイアミの住人にとって大きな利益となります」。

金融の分野で長年の優位性を持ち、テック部門も引き続き強化されているニューヨークのような都市が、暗号資産の分野で何ができるかは想像することしかできない。同様に、何年も前から成長を続けるタンパも、テック系の人材を惹きつける力と経済的なポテンシャルがますます高まっている。暗号資産分野が成熟するにつれて、興味深い違いが見えてくるかもしれない。

メタバースで重要なポジションを取る最初の都市は?最初に自治体のNFTを導入する都市は?このデジタル分野の成長に取り組む市長たちのリーダーシップが現場レベルで発揮されれば、その答えはすぐに出るはずだ。

編集部注:本稿の執筆者Brooks Rainwater(ブルックス・レインウォーター)氏は、Center for City Solutions and Applied Research at the National League of Citiesのディレクター。

画像クレジット:Alexander Spatari / Getty Images

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(文:Brooks Rainwater、翻訳:Dragonfly)

マイアミ市が電動キックボードのパイロットプログラム中止をすぐに撤回

米国時間11月29日、フロリダ州マイアミ市委員会は、安全の懸念から一時的に禁止していた電動キックボードのパイロットプログラムを再開させることを決定した。Lime(ライム)、Bird(バード)、Hlebiz(ヘルビズ)、Spin(スピン)などの会社が提供するシェア電動キックボードは、1月15日から新しい厳格な安全基準に沿ってマイアミの路上に帰ってくる。

新プログラムは、運営者および利用者にいくつかのルールを課すことをCBS Miamiが伝えている。利用者はヘルメットを着用し、歩道で時速10マイル(16km)の速度制限を守らなくてはならない。並走は禁止され、1つのブロックに運営者は2社のみ(以前は4社だった)、利用者は18歳以上に限られる。

11月18日、マイアミ市議会は2018年以来実施されていた電動キックボードのパイロットテストを、歩道での走行および混雑した路上での不慣れな利用者の危険を理由に中止する投票を行い、4対5で中止が決まった(先のThe StationでTechCrunchは、他にもっとずっと危険で環境に優しくない車両が走る街から、控えめなキックボードを追い出すことのかすかな偽善を指摘した)。

11月19日深夜までに、マイクロモビリティ運営者たちは、車両の利用を停止し、午後5時までに、市が没収する前に収容しなければならなかった。

電動キックボードパイロット擁護派は、プログラムは自転車専用道路の建設に使用された240万ドル(約2億7000万円)の収益をもたらしただけでなく、最初と最後の1マイル移動手段を市民に提供することで、自動車利用全般と排出量を減少させてきたことを指摘した。

市委員会は11月29日、3対1で中止の撤回を決議した。

「変化はやってくる。遅かれ早かれ。規制すればいい」とAlex Diaz de la Portilla(アレックス・デ・ラ・ポーティラ)委員は述べ、警察官が速度制限などのルールを執行することもできることを付け加えたことをWPLG Local 10は伝えた。

「このニュースは、安全、安価で持続的な移動手段として長年電動キックボードに頼ってきたマイアミ市民を安心させるでしょう」とLimeの政府交渉担当シニアマネージャーであるBruno Lopes(ブルーノ・ロペス)氏が声明で語った。「今後、市の委員やFrancis Suarez(フランシス・スアレス)市長と密に連携して、利用者と歩行者両方の安全を優先する恒久的プログラムを構築することを楽しみにしています。特に期待しているのが、Limeや他の運営者が支払う数百万ドルの電動キックボード費用を、今後も市が自転車専用道路の建設に投資することです。これはあらゆる道路利用者の安全を確保する最も確実な方法です」。

画像クレジット:City of Miami

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

サイケデリック療法とテックが融合したメンタルヘルスソリューションのNUE Life Health

NUE Life Healthは、サイケデリックセラピーなどの治療法と、グラフデータベース駆動型アプリを組み合わせた「次世代のメンタルウェルネスソリューション」を開発している米国の遠隔医療スタートアップだ。

マイアミを拠点とするこのスタートアップは、Jack Abraham(ジャック・アブラハム)氏(Atomic Ventures、Hims)、Shervin Pishevar(シャービン・ピシェバー)氏(元Sherpa Ventures、UBER)、Martin Varsavsky(マーティン・バーサフスキー)氏(Prelude Fertility、Overture)、Jon Oringer(ジョン・オリンジャー)氏(Shutterstock、Pareto Holdings)、James Bailey(ジェームス・ベイリー)氏(Multidisciplinary Assoc. for Psychedelic Studiesのキャップストーン・サポーター)、Christina Getty(クリスティーナ・ゲティ)氏などの投資家から出資を受け、330万ドル(約3億6000万円)のシードラウンドを実施した。上述の投資家は全員が、最近シリコンバレーからマイアミへ移住したグループの一員だ。

NUE Life Healthは現在、カリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州で事業を展開しており、今後は全米に拡大する予定だ。このプラットフォームでは、市場で最も即効性のある抗うつ剤とされるケタミン療法を自宅で行い、音楽療法やデータ主導のアプローチと組み合わせて提供する。

NUE Lifeによると、ボルチモアのジョンズ・ホプキンス大学やインペリアル・カレッジ・ロンドンで行われたMDMAとシロシビンを用いた心理療法に関する研究では、これらが精神疾患の治療において「安全な代替法」であることを示しているようだという。

NUE LifeのCEOであるJuan Pablo Cappello(フアン・パブロ・カッペロ)氏は次のように述べている。「当社は、ケタミン療法やサイケデリック療法を単に変化のためのカタリストとしてとらえています。患者さんのリセットを支援することは重要ですが、NUE Lifeでは、サイケデリック療法の効果が薄れた後も、メンバーがデジタルプラットフォームを通じてコミュニティやつながりを見つけることができるよう支援していきます」。

NUE Life Healthのデジタルプラットフォームは「ナレッジグラフとAIを活用して、患者さんのケアを総合的に考え、エビデンスに基づいた個別の治療法を提供します」と、共同設立者兼CTOのDemian Bellumio(デミアン・ベルミオ)氏は述べている。同社のエンタープライズHIPPA準拠のヘルスプラットフォームは、2021年の晩夏にサービス開始を予定している。

NUE Life Healthの共同設立者であり、投資家でもあるクリスティーナ・ゲティ氏はこう語った。「米国では女性の5人に1人が抗うつ剤に頼って1日を過ごしており、1日に22人の退役軍人が自殺で亡くなっていることを考えると、これまでとは異なる種類のメンタルウェルネス企業を立ち上げなければならないと思いました」。

NUE Lifeは、MindMedやATAIなどのサイケデリック医療のプレイヤーが上場を果たしている中で登場した。

ベルミオ氏の説明によるとこのプラットフォームは、患者の詳細な「ナレッジグラフ」を作成する。これにより、統合精神医学と呼ばれるアプローチを用いて、患者のメンタルヘルス状態を診断・治療するために、患者を全体的に理解することができる。そしてAIアルゴリズムを導入し、どの治療法を使うべきか、どのサプリメントを飲むべきか、治療中にどの音楽を聴くべきかなど、パーソナライズされた提案を行う。独自の音楽ストリーミングサービスも、このサービスの一部となる予定だ。

ベルミオ氏はかつて、Accenture(Knowledge Graph Center of Excellenceを2年間運営)やNEORISに在籍していた際に、グラフデータベースに取り組んでいた。この手法は、United Healthcare(ユナイテッドヘルス・グループ)の「Connected Healthcare」プラットフォームでも採用されている。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:NUE Life Health遠隔医療メンタルヘルスマイアミ資金調達

画像クレジット:NUE Life Health app

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

元Googleのエンジニアによる自動運転ロボットがマイアミで料理配達業務を開始

自動運転とロボット工学のスタートアップ企業Cartken(カートケン)は、駐車場やコミュニティセンターを運営するスタートアップ企業のREEF Technology(リーフ・テクノロジー)と提携し、マイアミのダウンタウンの街路に自動運転の配達ロボットを導入すると発表した。

今回の発表により、Cartkenは正式にステルスモードから脱却した。Googleで日の目を見なかったBookbot(ブックボット)の開発に携わっていたエンジニア達が2019年に設立したこの会社は、自動運転とAIを搭載したロボットや、それを使った配送業務などに関して、市場で通用する技術の開発に取り組んでいたが、これまで事業内容は伏せられていた。Cartkenの歩道用自動運転ロボットが大規模に展開されるのは、これが初めてのこととなる。

関連記事:Googleが開発を中止した自律動作する運搬用電動6輪車ロボ、スピンオフのCartkenから復活へ

このCartkenが開発したREEFブランドの電動ロボットは、数カ月のテスト期間を経た後、現在はマイアミのダウンタウンにおける半径3/4マイル(約1.2キロメートル)の地域に住む人々に、デリバリー専用キッチンから料理のオーダーを届けている。スパゲッティなど温かい料理の熱を逃がさないように断熱された荷室を備えたこのロボットは、あらかじめ設定された物流拠点に配置されており、料理の準備が完了すると指示を受けて配達に向かう。

「私たちは、いかにマイアミが未来に向けて先行しているかを示したいと思っています」と、REEFの最高技術責任者であるMatt Lindenberger(マット・リンデンバーガー)氏は、TechCrunchに語った。「これは技術の可能性を示す絶好のチャンスです。当社がマイアミで大きな存在感を示していることに加え、新型コロナウイルス感染流行の沈静化にともなう路上の混雑が相まって、この技術がどのように機能するかを示すことができる非常に良い環境が整っています」。

リンデンバーガー氏によると、マイアミはスタート地点として最適な場所だが、これはほんの始まりに過ぎず、REEFの他のラストマイルデリバリー事業にも、Cartkenのロボットは利用できる可能性があるという。現在、マイアミで稼働しているのは2台のレストラン料理配達ロボットだけだが、今後は同地区の内外で採用を拡げ、フォートローダーデールや、さらにはダラス、アトランタ、ロサンゼルス、最終的にはニューヨークなど、同社が事業を展開する他の大都市にも拡大する計画だという。

街中にロボットが存在することが、いわゆる「フォース・マルチプライヤー」の役割を果たし、サービスの質を維持しながら、コスト面の効率に優れた方法で、規模を拡大していけることを、リンデンバーガー氏は期待している。

「ポストコロナの世界では現在、配達が爆発的に増加しており、今後もそれが続くと予想されます。そのため、このような非接触・ゼロエミッションの自動化技術は、非常に重要です」と、リンデンバーガー氏は述べている。

Cartkenのロボットは、機械学習とルールベースのプログラミングを組み合わせ、起こりうるあらゆる状況に対応するという。それは単に、安全に停止して助けを求めるということも含まれると、CartkenのCEOであるChristian Bersch(クリスチャン・バーシュ)氏はTechCrunchに語った。REEFでは、必要に応じてロボットを遠隔操作するために管理者を現場に配置しているが、これは2017年にフロリダ州で自動運転の配送ロボットの運用を認めた法律に盛り込まれている注意事項である。

「結局のところ、この技術は自動運転車と非常によく似ています」と、バーシュ氏はいう。「ロボットは環境を見て、歩行者や街灯のような障害物を回避する計画を立てます。もし未知の状況が発生したら、ロボットは急に止まることができるので、安全にその状況からロボットを助け出すことが可能です。しかし、重要なのは、誰かが急にロボットの前に飛び出したような事態が発生した場合、遠隔操作では不可能なほど一瞬で反応できるレベルの自律性をロボットに持たせることです」。

REEFは地図上でロボットの活動エリアを特定し、Cartkenはロボットが必要とする特定の状況を考慮ながら、都市に合わせて設定を調整する。これにより、ロボットは配達先の住所を指定されると、人間の配達員と同じように動き、業務を遂行することができる。このロボットにはLTE回線が搭載されており、常に位置情報を更新しているので、REEFは配達部隊のマネジメント機能に組み込むことができる。

将来的には、Postmates(ポストメイツ)、UberEats(ウーバーイーツ)、DoorDash(ドアダッシュ)、GrubHub(グラブハブ)など、REEFが提携している主要なフードデリバリープラットフォームでも、ロボットによる配達を顧客が選択できるようにしたいと、リンデンバーガー氏は語る。顧客はロボットが到着するとテキストメッセージを受信し、家の外に出てロボットと会うことができる……ようになる予定だが、現在はまだこの技術は完成していない。

現状では、ロボットは道路までしか行くことができないため、人間の配達員が料理を受け取って、直接ドアまで運ぶというサービスを、多くの顧客が希望する。

また、集合住宅に住んでいる場合は、ロボットが建物の中に入って注文主の部屋まで辿り着くことは難しい。まだ多くの顧客が直接ロボットと対面できる準備は整っていない。

「これは暫定的なステップです。しかし、我々にとって、他に制限を設けることなく、技術を迅速に現実に移すための道筋でした」と、リンデンバーガー氏は語る。「どんな新しい技術でもそうですが、段階を踏んで進めていくことが大事です。今、私たちが踏み出して成功させた非常に重要なステップは、一定の半径内にロボットを派遣し、そこにちゃんと到着できると分かることです。これは開発の過程において、それだけでも非常に大きなステップであり、最終段階に向けてどのような課題があるかを知ることができます。そうすれば、私たちはCartkenと協力し、最後の課題の解決に向けた取り組みを始めることができます。このような自動化が可能になっただけでも、大きな一歩です」。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Cartkenマイアミロボット配達フードデリバリー自動運転 / 自律運転

画像クレジット:REEF Technologies

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

マイアミのAsteyaが小企業オーナーやギグワーカー向け「収入保険」商品を発売、保険に人間らしさをもたらす

フロリダ州マイアミ拠点のAsteya(アステヤ)は小企業オーナーやギグワーカーを対象とした就業不能保険のスタートアップだ。このほど1000万ドル(約10億9000万円)のシードラウンドを終えて開業した。共同ファウンダーでCEOのAlex Williamson(アレックス・ウィリアムソン)氏は、元Bumbleの最高ブランド責任者で、Asteyaを「収入保険」のスタートアップと称している。

発表は2021年2月のBumbleのIPOに続くもので、Bumbleの元幹部たちは、現金を手にしたら自分たちで次のユニコーンを設立できると考えていたのだろう。

Bumble在籍中、ウィリアムソン氏は治療休暇を取得した。「Bumbleが私の医療休暇に対してあれほど寛容でなかったら、就業不能保険が必要だったでしょう」と彼女は語った。

関連記事:マッチングサービスBumbleが1株43ドルでIPO

Alex Williamson氏 画像クレジット:Asteya

同氏によると、米国の雇用主の51%が従業員向けに不就業保険をかけている。残りの49%では、労働者は自分に何かが起きても保護されない。昨今の移り変わりの激しい環境に働く人々は、その多くが中小企業オーナーとギグワーカー、フリーランスだ。Asteyaが最初のプロダクトでターゲットにするのがこのカテゴリーだ。同社は、月額6ドル(約650円)からのかけ金で、最大50万ドル(約5450万円)の一括払い補償を提供する。

病気になり、回復するまで休暇を取る必要があるとき、家賃をどうやって払おうか、その他の定常的支払いをどうするかを心配することは、それ自体が苦痛である。

「財務状態が不安定になると、助けを求めることに集中できなくなります」とウィリアムソン氏がTechCrunchに語った。

就業不能保険に入っていない人が病気になったときは、国に就業不能申請することができる。大きな違いは、就業不能保険は直ちに支払いが行われることで、国の就業不能補償は政府の承認が下りてからしか支払われず、手続きは煩雑で数カ月かかるといわれている。自分で申請しようとした人の多くが承認を得られず、結局弁護士を使う結果になる。そして、その支払金額は、月額数百ドル(数万円)から数千ドル(数十万円)にすぎず、承認されてから6カ月経ってから始まる。

申し込み、そして承認されるまで、Asteyaの就業不能保険では数分しかかからない、と同社はいう。他の多くのスタートアップと同じく、Asteyaは官僚的しがらみで知られる分野に手間いらずのアプローチを持ち込むことで、保険に人間らしさをもたらす機会を見据えている、とウィリアムソン氏は語った。

一般に女性は就業不能保険の保険料が男性と比べて著しく高いため、企業にとって雇用が高くつくことになり、女性求職者にとって不必要な困難が加わる。ニューヨーク州とマサチューセッツ州は、2019年にそのような保険契約を違法とした数少ない州であり、Asteyaはそれに倣い、最初の商品をジェンダーニュートラルにした、とウィリアムソン氏は語った。

同社はManaging General Agent(MGA、総代理店)および仲介のライセンスを保有しており、このMGAライセンスを通じて、保険契約書はすべて保険大手のMunich Re(ミュンヘン再保険)およびLloyd’s of London(ロイズ・オブ・ロンドン)を経由して発行される。簡単にいえば、もしスタートアップが成功しなくても、あなたの補償は影響を受けない。

ウィリアムソン氏の人脈と創業メンバーを考えれば、開業前に資金を揃えられたこともうなづける。そしてBumbleのファウンダーでCEOのWhitney Wolfe Herd(ホイットニー・ウルフ・ハード)氏は、エンジェル投資家でもある。

調達ラウンドには、他にI2BF Venters、CapitalFactory、Cap Meridian Ventures、Northstar.vc、Atrum、およびエンジェル投資家のGeeta Sankappanavar(ジータ・サンカッパナバー)氏らが参加した。

同社は今後に向けて、長期就業不能者向けの商品や、既往症のある人たちを対象にした商品を計画している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Asteya保険マイアミ

画像クレジット:Asteya

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Nob Takahashi / facebook

全米で100万人の教師が使うマイアミのデジタル学習プラットフォームNearpodをRenaissanceが買収

マイアミに本拠地を置くEdTechスタートアップのNearpodが、教育技術を開発するグループ、Renaissance Holding Corp.に買収されることになった。取引はまだ成立していないが、Renaissance社の最高製品責任者であるTodd Brekhus(トッド・ブレクサス)氏は、米国時間2月19日午後のインタビューで、「両当事者によって署名された最終的な契約に合意しました」と述べている。買収のニュースは2月18日にYahoo!ファイナンス(米国)に最初にリークされ、TechCrunchに対して同社内部の情報源が2月19日朝に確認した。ブレクサス氏によると、Renaissanceは取引が終了した後も買収価格を公表する予定はないという。

Nearpodは、幼稚園から高校3年生まで(K-12)の教師が教室でビデオ、クイズ、質問、その他の活動で満たされたインタラクティブなスライドを作成するために使用するEdTechプラットフォームを提供している。生徒たちはどのようなデバイスを使ってもリアルタイムで授業に参加することができ、生徒が自分のペースで進める学習モードもある。パンデミックに対応して、Nearpodは現在、リモート学習も提供している。

この1年は、Nearpodにとって忙しいものだった。2012年に3人のアルゼンチン人起業家によって設立された同社は現在、パンデミックが本格化してきた2020年初頭にCEOとして就任したPep Carrera(ペップ・カレラ)氏が率いる。Crunchbaseによると、同社はこれまで3000万ドル(約31億6000万円)以上のベンチャーキャピタルを調達しており、直近では2017年に同社がシリーズBを調達した際にTechCrunchが報じた

Renaissanceはしばらくの間Nearpodに注目していたと、以前EdTech企業の創業者でもあったブレクサス氏は語った。「我々(Renaissance)は、教育現場における教師エンゲージメントやレッスン配信とつながりを深めたいと考えていました。Nearpodは非常に優れた方法でそれを実現しています」。

カレラ氏がRenaissanceのCEOであるChris Bauleke(クリス・バウレケ)氏に直属することになる点を除いては、カレラ氏とチーム全体はこれまで通り業務を続けるという。「我々のミッションを継続するとともに、Renaissanceのミッションとの融合を目指していきます」と同氏は語った。

マイアミで育ち、2020年にミシガン州からNearpodを率いるために戻ってきたカレラ氏は、激動の1年を過ごした。以前のインタビューで同氏は、「仕事に就いた最初の日に、(ダニアビーチ近くの)オフィスに車で向かう途中、運転しながら電話で経営陣と話して、パンデミックのためにオフィスを閉鎖する必要があると判断しました。それが3月のことでした」と語っていた。Nearpodは現在、約290人の従業員を雇用しており、そのほとんどがダニアビーチの本社で勤務している。

カレラ氏は、同社をイグジットに導くために彼が起用されたのかどうかについてははっきりと確認しなかったが、創業者たちは、教師・生徒たちのようなユーザー層に向けてより良いサービスを提供するために、いくつかの成長オプションを検討していると述べた。

パンデミックはリモートワークをめぐり同社に多くの疑問を投げかけてきたが、カレラ氏のリーダーシップのも下、Nearpodは2020年に爆発的な成長を遂げた。当初Nearpodは主に教室での使用を想定して設計されていたが、同社のチームはそれをリモート学習プラットフォームに変換することができ、K-12遠隔教育の先駆けとなった。

Nearpodは50州すべてで使用されており、1800以上の学区で使用されている。2020年だけでも100万人以上の教師が利用し、1日に200万~300万人の生徒がオンラインで学習するなど、同社は約50%の成長を遂げている。2020年12月のインタビューで、カレラ氏は、現在発生している資金はすべて会社の成長を促進するために投入されており、それはこれまで有機的だったと語った。Nearpodはマーケティングに広告費をほとんど使っていない。本当のマーケティングは口コミによるものだと同氏はいう。

教師はNearpodを使って、授業中に生徒の携帯端末にデジタルカリキュラムを配信する(画像クレジット:Nearpod)

カレラ氏はNearpodに参加する前は、ProQuest Booksの社長として、大学院生、研究者、図書館員のために書籍の取得、管理、配信を効率的かつインパクトあるものにする革新的なソフトウェアを提供するチームを率いていた。また、ProQuest以前にも、社長兼COOとしてIngram Conte Groupのデジタル学習部門であるVitalSource Technologiesを6年間で10倍に成長させ、世界で年間2000万人以上の学習者にサービスを提供した。

VCがこの分野に多額の資金を投じたことで、EdTechのM&A活動は加速している。筆者の同僚であるNatasha Mascarenhasが最近言及したように、EdTechのM&Aはこの分野の大量統合につながっている。今回の買収でNearpodは、ここ数カ月で撤退したSymbolabやWoot Mathのような他の多くのEdTech企業の仲間入りをすることになる。

【更新(米国時間2月19日)】Renaissanceの最高製品責任者であるトッド・ブレクサス氏へのインタビューと、同社についての追加情報を更新した。

カテゴリー:EdTech
タグ:Nearpod買収マイアミ

画像クレジット:Danny Lehman / Getty Images

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:TechCrunch Japan)

マイアミは次のシリコンバレーにはならない、次のシリコンバレーは不要だからだ

本稿の著者であるLaura González-Estéfani(ローラ・ゴンサレス-エステファニ)氏は、世界の起業家エコシステムをより多様で国際的なものにし、公正な資本の利用を可能にするためにデザインされた国際的な事業者主導のベンチャーアクセラレーションモデルであるTheVentureCityの創設者でCEO。

ーーー

創設者や投資家が西海岸からテキサス州やフロリダ州へと押し寄せていることは、市場で何十年にもわたって展開されている大きな動きの先駆けである。

スタートアップの未来は、分散化されたグローバルなエコシステムにある。富と知識が集中しておらず、共有され、開かれている。そこには資本ではなくネットワークがある。

マイアミは幸先の良いスタートを切った。

情勢を整理しよう。マイアミはすでに世界で最も有名な(伝統的でない)スタートアップハブの1つに位置づけられており、2020年にはテック界の大手がフロリダに拠点を移す動きが見られた。マイアミのFrancis Suarez(フランシス・スアレズ)市長は、非常に人気のあるツイッターのキャンペーンでこの流入に拍車をかけている。

マイアミはすでに世界で最も有名な(伝統的でない)スタートアップハブの1つに位置づけられており、2020年にはテック界の大手がフロリダに拠点を移す動きが見られた。

これはグローバル志向の事業家たちがすでに知っている事実の表れだ。世界はマイアミが将来のハイテクハブの先駆者となることを待っている。この都市は、ラテンアメリカに関心のある米国のスタートアップのための出発点であるだけではなく、西半球に進出したいグローバルなスタートアップの戦略的な足がかりとなっている。

世界中で、起業家にとって国際的な機会が拡大している。新興市場の起業家にとって、人生を変えるような製品を生み出すためのより大きな接続性と可能性が存在する。

こうした起業家たちは、どこで存在感を発揮したいと考えるだろうか?グローバルな投資家と起業家のネットワークの中心であり、真のメルティングポットであり、成熟市場と新興市場が交差するところではないだろうか。

現在、マイアミに注目が集まっているのはそのためだ。しかし、マイアミは、近々この世界的なトレンドの一部となりそうな数ある都市の中の最初の都市にすぎない。

ここでは、なぜマイアミがスタートアップエコシステムの新しいグローバルグリッドの先頭に立っているのかを解説する。

1.グローバルテクノロジーはもはや一極集中しておらず、世界中に分散している

世界の主要なスタートアップエコシステムの3分の2は北米以外の地域にある。それだけでなく、専門家の70%はテクノロジーの影響力がシリコンバレーから分散しつつあると考えている。Bloomberg Innovation Indexでは、米国は2013年のトップから2020年には第9位に転落したが、欧州とアジアではテクノロジーに関する知識と影響力が成長しており、上海やベルリンなどの都市ではその勢いが増している。

同様にマイクロビジネスも増加傾向にあり(すでに世界中で新たなビジネスが生まれている)、郵便番号のあるビジネスは減っていくだろう。

つまり大企業やVC企業がシリコンバレーや米国の外へ進出してきても、同様のM.O.を構築しようとしているわけではなく、シリコンバレーだけが唯一のM.O.ではないことを示している。新しいM.O.はボーダレスでつながっている、インクルーシブなネットワークだ。これは投資家により遠く離れたビジネスチャンスへの拡大されたアクセスを与える。起業家は会社を設立するために最も便利な場所を選ぶことができ、膨大な経費を節約すると同時に、より多くの専門知識を共有できる。

2.グローバル企業は新興のハブで生み出すことができる

新興市場のスタートアップは概して、米国のスタートアップが受けられる資金のほんの一部しか受け取っていない。つまり、資金が底をついたときには、生き残るための最も革新的な解決策を考え出さなければならないという大きなプレッシャーにさらされることになる。

こうした現地の起業家を支援するには、地域のソリューションが必要であるという事実がある。医療から物流に至るまで、これらの垂直市場の課題にはすべて、国内のインフラストラクチャとサービスに関する知識が必要になる。

ここでの可能性は大きい。新興市場は世界で最も人口の多い国であり(中国、インド、ブラジル、メキシコ、ナイジェリアなど)、言語や接続性の壁は徐々に崩れつつあり、モバイルインターネットの利用は急増している

投資家はすでにアジアからラテンアメリカに至るまでの新興市場の巨大な価値に注目しており、その注目は特に米ドルの価値が下がるにつれて高まっている。Pitchbookによると、ちょうど2020年第4四半期にラテンアメリカへのVC投資は2019年第4四半期に比べて93%成長した。

これは新興のハイテクハブにとって何を意味するだろうか?第1に、数が増え、より分散され、より多くの資金を持つようになるだろう。第2に、実証された牽引力を持つサービスを米国の顧客に提供する新興市場のスタートアップの流れが強まるだろう。

これらの企業が開発し、国内の何百万人ものユーザーを対象にテストする革新的な製品は、米国だけでなく、同じようなニーズを持つ他の新興市場でも肥沃な市場を見つけることができる。このような企業の多くは、本社に技術チームを置きながら、戦略的な事業基盤として米国を利用したいと考えている。

これは創設者、アクセラレーター、投資家、サポート組織が、歴史的に国際化を経験しており、世界中にコネクションを持っているからだ。では、これらの外国企業はどこに着地するだろうか?デンバーやオースティンに興味を持つだろうか。あるいは国際的なハブとして有名になったばかりの都市であろうか。

マイアミは、海外のスタートアップが米国と同じようなトレンドを持つ新興市場との両方にアクセスできる場所である。同市は成熟市場と新興市場の間のインターセクションに位置するように大きく前進し、インクルーシブな(人口の半分は外国生まれである)エコシステムを作り、個人主義よりもコラボレーションを優先し、新規参入を奨励する。したがって、これは多様性のあるスタートアップ都市の(実用的な)モデルになるだろう。

3.お金は後からついてくる

シリコンバレーからの「脱出」が話題になっている中、このハブが常に堅調であったのは重要な機能である資本へのアクセスのためだと指摘する向きもある

しかし投資家は最良の機会を追う。つまり、テクノロジーへの投資はますますグローバル化することになる。簡単にいえば、シリコンバレーに富が集中していることは、世界中で高まるテクノロジーの需要と相容れない。シリコンバレーは滅びることはないが、市場規模は大きくなっている。そして、より多くの資本がすでに新興のテクノロジーハブに向かっている。

その兆候として、米国のベンチャーキャピタル大手が新興地域に進出していることが挙げられる。たとえばSequoia(セコイア)は最初のヨーロッパオフィスを開設し、SoftBank(ソフトバンク)はラテンアメリカに数十億ドル(数千億円)を投資している。

これは米国の投資家がマイアミのような世界的な機会に容易にアクセスできる地域を好むことを意味している。2020年、マイアミ地域へのVCによる投資はパンデミック中であるにも関わらず22億ドル(約2300億円)を超えた(スペイン全国で約1460億円だったことと対照的だ)。それだけでなく、新興市場の投資家からの資金調達も増えている。

ラテンアメリカでは、現地の資金提供者が有望な企業の支援に大きな役割を果たしている。2019年、ラテンアメリカに投資された記録破りの46億ドル(約4810億円)のVC投資のほぼ40%が、少なくとも1人のラテンアメリカの投資家との共同投資によるものであった。そして我々が見た限りでは、地域の投資家は米国を拠点とする組織にますます資金を提供している。

彼ら(そして同様の人々)が求めているのは、地域や外国の起業家とつながるエコシステムを確立し、市場を越えたパートナーシップを育むことだ。

マイアミのような場所はこうしたネットワークの拠点となる必要がある。南フロリダではすでに500 Startups(500スタートアップス)、Plug & Play(プラグ アンド プレイ)、TheVentureCity(ザ・ベンチャーシティ)など、グローバルなマインドを持つアクセラレーターやスタートアッププログラムを展開している。また、Ocean Azul(オーシャン・アズール)、Endeavor Catalyst(エンデバー・カタリスト)、Starlight Ventures(スターライト・ベンチャーズ)、Level VC(レベルVC)などの国際的なネットワークを持つVC企業に加えて、現在はソフトバンクが参加している。

4.マイアミはスタートアップの将来のニーズに対してより有利な場所にある

最後に、マイアミが国際的なコネクタースタートアップハブの米国におけるパイオニアであることを強調したい。

スタートアップは、より少ない費用で多くのものを5年に1度のペースで構築し、初日から国際的に展開することで、より多くの市場で製品をすぐにテストすることができる。これは世界レベルの接続性があれば実現可能であり、国境を越えて常に外に目を向けている環境にいることにつながっていく。

またタイムゾーンが南米の大部分と同じであり、ロンドンからわずか5時間遅れであることも便利だ(サンフランシスコがタイムゾーンを共有するのは、米国のその他の地域とバンクーバーだけである)。

成功を追い求めて生まれ育った土地を離れる人は、歓迎されることを望んでいる。彼らは、市長が「Cafecito(カフェシート、1杯のコーヒーほどの会話)」のために喜んで彼らに会い、他の創設者たちが彼らの到着を心から熱心に支持していることを評価している。成功するためにコネクション、資金、バックグラウンドが必要になりがちな、物価の高い都市には移り住みたくないと考えている。

マイアミは、グローバルなスタートアップハブの将来を映し出している。次のシリコンバレーにはならないだろう。なぜなら、次のシリコンバレーは不要だからだ。地球上のあらゆる場所で起業家の世界が繁栄するにつれ、新興市場の企業が米国やヨーロッパの市場を席巻し、その拠点となる都市が国際的なネットワークに参入していくことになるだろう。

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(文:ゲストライター、翻訳:Dragonfly)

新しいムーブメントが巻き起こる中、マイアミを目指すスタートアップが急増

マイアミは長い間、寒さを嫌う人々や政治や経済が混乱状態にある南米諸国の人々の避難場所だった。しかし、2020年には、サンフランシスコやニューヨークからの投資家や創設者、テック関連従事者たちが大勢移り住んだ。これには、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行も一部後押しとなった。さらにそうした移住者たちは、新規移住者を歓迎する方策の市政府、低い税率、快適な気候、より手頃な価格の住宅供給、活動的なライフスタイル、そして会社の繁栄に役立つ多様性といった利点のある移転先を探していたのである。

TechCrunchの見解では、投資家たちは強気のマイアミ推しだ。マイアミ在住の8人の投資家へのアンケートでは、マイアミが長所とチャンスに溢れた、成長が期待できるマーケットであると強調されている。

最近の注目すべき事柄は、SoftBank(ソフトバンク)のCEOで、長きに渡るマイアミ推進者のMarcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏が、マイアミ拠点、またはマイアミへ拠点移転予定のスタートアップを支援する1億ドル(約105億3555万円)のファンドを設立すると発表したことだ。

関連記事:ソフトバンクがマイアミ拠点のスタートアップ向けに104.7億円のファンドを設立

「マイアミはスタートアップの新しい中心地となるべく、増え続けるニーズに応え、急速に発展しています。マイアミは魅力的な投資市場であり、注目を浴びつつある『エルダーテック(高齢者を対象にしたテック)』からバイオテックに至るまで、移民やマイノリティなどさまざまな人たちの事業欲を高め、起業するための唯一無二の機会を提供しています」と、クラウレ氏はファンド設立の発表直前にTechCruchに語った

クラウレ氏はマイアミがテックの聖地となり得る可能性に早いうちから気づいていた。同氏は1997年にグローバルワイヤレス企業のBrightstar(ブライトスター)を創設した。そして2013年にはSoftBank(ソフトバンク)が同社の過半数の株式を12億6000万ドル(約1327億4793万円)で買い取った。クラウレ氏の弟のMartin(マーティン)氏もまたテック起業家で、現在、マイアミを拠点としたスペイン語再教育のスタートアップ、Aprende Institute(アプレンデ・インスティチュート)の創設者兼CEOを務めている。

マイアミとクラウレ氏はこれまで円満な関係を築いてきた。そのため、クラウレ氏とソフトバンクが、この地へ情熱的なほどに傾倒していたとしても何ら不思議はない。

「ソフトバンクは、フィンテックからアグリテック、教育分野に至るまで、さまざまな分野のテクノロジー企業へ投資しています」と、クラウレ氏はいう。「ソフトバンクはこれらの分野のデジタルトランスフォーメーションを担う起業家や会社に投資しています。2020年以来、私たちはそうした起業家たちが拠点を置く都市について、その勢力図に大きな変化が起きていることを認識しています。起業家が多く集まる地域は、長い間シリコンバレーとニューヨーク市が二強でした。しかし、今では、ダラスのオースティン、そしてもちろんマイアミにも起業家が多く集まってきています。これは市長のSuarez(スアレス)氏のたゆまぬ努力によるところが大きく、マイアミはイノベーションとテック産業の最前線に立っています」。

「マイアミで突如台頭する多くのビジネスが、自然と当社の求める投資対象と合致するんです」とクラウレ氏は続ける。「Latam Fund(レータム・ファンド)を通して、私たちはラテンアメリカ地域を重視する会社に投資しています。VCコミュニティ内に長い間くすぶっている多様性とインクルージョンの問題に本気で取り組むため、黒人やラテン民族、アメリカ先住民の起業家に焦点を当て、1億ドル(約105億3555万円)のOpportunity Fund(オポチュニティ・ファンド)を立ち上げました。これまでのところ、700社以上を査定し、マイアミで台頭しているヘルスケア、SaaS(サース)、フィンテック、ゲームなど多岐に渡る分野で約20件の投資を行い、合計2000万ドル(約21億711万円)を投入しています」。

2020

Crunchbase(クランチベース)のデータによれば、2020年のマイアミ地区への投資は約19億ドル(約2001億7545万円)で、2010年の約8950万ドル(約94億2932万円)と比べると21倍にもなる。2020年は突出した取引がいくつかあった良い年だった。REEF Technology(リーフ・テクノロジー)は7億ドル(約737億4885万円)、ShipMonk(シップモンク)は2億9000万ドル(約305億5310万円)、さらにMagic Leap(マジック・リープ)が3億5000万ドル(約368億7443万円)の資金調達に成功した。だが、それでも2019年に南フロリダ州を拠点とするスタートアップへ投資された記録的金額、23億9000万ドル(約2501億8520万円)にはおよばなかった。2010年にはわずか12社のマイアミを拠点とする企業が地元以外からの外部ファンドを得た。2020年にその数は70社に跳ね上がり、これはこの地域におけるテック関連事業の順調な増加を意味する。

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新型コロナウイルス感染症の世界的大流行とリモートワークがマイアミへの移住希望者の心を揺さぶる中、シリコンバレーからマイアミへの拠点移動を勧めるツイートに対するFrancis Suarez(フランシス・スアレス)マイアミ市長の非公式なコメントがその流れに拍車をかけた。「何かお手伝いできることがありますか?」という同氏のこのメッセージは世界中を駆け巡り、マイアミのテックライフについて尋ねる返信が相次いだ。

1万1000人のメンバーを誇るフロリダ州最大級の非営利テック団体Refresh Miami(リフレッシュ・マイアミ)は、「マイアミの教育機関」や「人気のあるコワークスペース」についてなど、新しい地域へ移り住む際に出てくる質問に答えるべく「マイアミへの移住ガイド」をまとめた。

新しい居住者の中には、まず、この地の水が合うかどうかを仮住まいを移動しながら試している人もいるが、大半はすでに住居を購入し、仕事場を構え、彼らの次のスタートアップのために人材の獲得へ動いている。また、人材探しを行いながら、ここでの友人作りも忘れてはいない。

最近のマイアミを語る際に、Keith Rabois(キース・ラボイス)氏の存在は欠かせない。サンフランシスコから派手な脱出劇を行った、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)の共同出資者で、PayPal(ペイパル)の元幹部の1人だ。ラボイス氏は、2900万ドル(約30億5531万円)のマイアミビーチにある豪邸(維持管理にスキューバダイバーを必要とするほど大きな海水水族館つき)購入というド派手な演出で、マイアミでも注目を集めた。同氏はマイアミに移住して以来、最も発言力のある、熱心なリクルーターの1人に数えられ、マイアミのテックの未来のために活動している。マイアミ拠点の会社を設立し、公にはまだ何の会社かは発表していないものの、人材獲得に動いていることを遠回しにTwitter(ツイッター)で伝えている。

他の有名どころを挙げるとすれば、金融業界の巨人Blackstone(ブラックストーン)が近日マイアミに新しいオフィスを構え、テック業種で215人を募集していると発表した。すでに何人かの才能溢れる地元リソースを採用したようだ。そして、もちろん、シリコンバレーの世界的なイノベーションプラットフォームであり、先週マイアミのダウンタウンへオフィスを開けることを発表した、Plug and Play(プラグ・アンド・プレイ)は外せない。それ以外にも、最近移転してきたベンチャーキャピタルたちは、周囲に先駆けてチャンスを掴むという、ベンチャーキャピタルの強みを発揮している。そうした先駆者には、Shutterstock(シャッターストック)のJon Oringer(ジョン・オリンジャー)氏、Blumberg Capital(ブルームバーグ・キャピタル)のDavid Blumberg(デイビッド・ブルームバーグ)氏、Andreessen Horowitz(アンドレッセン・ホロウィッツ)のChris Dixon(クリス・ディクソン)氏、Alpaca(アルパカ、投資先企業にClassPass)やClassWallet(クラスウォレット)を含む)のDavid Goldberg(デイビッド・ゴールドバーグ)氏、FFNYのMaya Baratz Jordan(マヤ・バラッツ・ジョーダン)氏、Gilt(ギルト)ならびにGlamsquad(グラムスクオッド)の共同創設者として知られるAlexandra Wilkis Wilson(アレキサンドラ・ウィルキス・ウィルソン)氏、Facebook(フェイスブック)で活躍後、4年前にマイアミに拠点を移しThe Venture City(ザ・ベンチャー・シティ)を立ち上げたLaura González-Estéfani(ローラ・ゴンザレス・エステファニ)氏などが挙げられる。なお、ザ・ベンチャー・シティはマイアミ本社でアクセラレーターおよびベンチャーファンドとしてサービスを提供するほか、サンフランシスコとマドリッドにもオフィスを構えている。

なぜ、マイアミ?

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行は多くの人にとって、人生に何を求めているのか改めて考えるきっかけとなった。私たちは、今の仕事、法外な値段の狭小住宅、さらに脆弱な行政機能に満足していてよいのだろうか。

マイアミは国際的で、多様性があり、ビジネスでは主に英語とスペイン語が話される多言語な場所だ。多くの人がこの街に魅力を感じているのは、都会的なスタイルがあり、毎年12月に行われるArt Basel Miami Beach(アート・ベーゼル・マイアミ・ビーチ)を筆頭に、洗練されたアートや文化という側面を持っているからだ。また、ニューヨークやロンドンのほとんどの有名レストランがマイアミに出店していて、そのマイアミ店の場合は通常広いアウトドアの席も用意されているのだ。著名なZaha Hadid(ザハ・ハディド)氏の手によるビル群、Arquitectonica(アーキテクトニカ)、Raymond Jungles(レイモンド・ジャングルズ)による庭園など、建築の魅力も引けを取らない。ブロードウェイの大人気演目「Hamilton(ハミルトン)」のチケットが、あまりの人気にニューヨークやロンドンで2倍の値段で売り出されていた時、マイアミのAdrienne Arsht Center(エイドリアン・アルシュト・センター)ではわずかな料金で同演目を観ることができた。私の知人の中には2回も観劇した人もいる。

多くの人はマイアミや他の海沿いの街は、海が最高だという。そして、オーダーメイドのメガヨットを所有していないからといって、日焼けを諦めなくても大丈夫だ。マイアミに拠点を置くスタートアップBoatsetter(ボートセッター)では、他の人のボートをレンタルできるので、ぜひ同社のサービスを利用してみてほしい。Biscayne Bay(ビスケーン湾)で物思いにふけりながらパドルを漕ぐ方がお好みなら、PADL(パドル)もお勧めである。このスタートアップは、パドルボートを普及させることを目的に最近マイアミに設立された。

マイアミはいつも楽しく、駆け引きに満ちているところだ。マイアミのテック業界における初期の起業家の1人で、事業売却に成功したManny Medina(マニー・メディナ)氏(同氏は2012年にデータセンター事業TerremarkをVerizonへ約1474億9770万円で売却した)は2013年、毎年開催のテック会議、eMerge Americas(イーマージ・アメリカズ)を始めた。この会議を通してマイアミは、北米と南米アメリカを繋げるテックの中心地としての地位を密かに確立してきた。2019年までに40カ国、400社から1万6000人以上の参加者が集まった。マイアミには町の中心部まで15分以内の場所に、世界的な規模の空港がある。この戦略的な地理配置や、空港への便利なアクセスは、他のほとんどの都市にない強みである。それでも疑問は残る。マイアミは新たなテックの中枢となり得るのか。

マイアミは、テックの中枢となるべく確かに正しい道を歩んでいる。マイアミの未来について強気な見通しを立てている投資家もいるが、まだ結論づけるには早すぎると慎重な投資家もいる。

マイアミで今、注目を集めているのはヘルスケア、プロップテック(不動産テック)、フィンテック、エルダーテック(高齢者を対象にしたテック)、物流などだ。注目に値する売却劇(イグジット)を紹介しよう。Chewyの買収(チューウィ、2017年に同社の約3529億4093万円の巨額買収額はeコマース市場の売却記録を塗り替えた)、資金調達に長けたYellowPepper(イエローペッパー)のVisa(ビザ)による買収(取引条件は未公開)、そして2020年の極めつけとして、2億ドル(約210億7110万円)のAscyrus Medical(アスサイラス・メディカル)と3200万ドル(約33億7138万円)のCareCloud(ケアクラウド)の買収がある。

今後買収される可能性のある企業にはNearpod(ニアポッド)、マジック・リープ、Ultimate Software(アルティメット・ソフトウェア)、シップモンク、CarePredict(ケアプレディクト)、MDLIVE(エムディーライブ)、 Papa(パパ)、Caribu(カリブ)、Brave Health(ブレイブ・ヘルス)、REEF(リーフ)などがある。さらにニューカマーにはUpsideHōm(アップサイドホーム)、HealthSnap(ヘルススナップ)、Domaselo(ドマセロ)、Secberus(セクべラス)、Marco Financial(マルコ・フィナンシャル)、Birdie(バーディー)、Kiddie Kredit(キディ・クレディット)、ConciergePad(コンシェルジュパッド)、そしてSustalytics(サスタリティックス)などが控えている。

マイアミは昔から、うなるほど金がある裕福な都市として知られてきた。しかし、これまで、その金は不動産のような、より安全で馴染み深い投資先に投入されてきた。思いつきで10万ドル(約1050万円)ものお金を投資して、それをどうでもいいことだと思うような投資家は現在でも滅多にいない。マイアミ地元の投資家の多くは投資先の選択に慎重で、取引に長けた、他の地域の投資家が投資したラウンドに追随して投資することを好む。そのため、地元の起業家たちは投資元を求めて、国中を駆け回らなくてはいけないといつも愚痴をこぼしていた。だが、今は、ベンチャーキャピタルから多くの資金がこの街に流れ込んできている。これまでよりも資金調達が容易になるに違いない。

マイアミの稀有な価値は、マイアミの人々と、その人々が持つ気質にある。マイアミには、物事を築きあげて成長させ、他者を受け入れるようとする気質を持った人たちがいるのである。「コミュティには歓迎ムードがあり、移住者のために喜んで時間を割いて対応してくれます。こんなにすばらしい歓待を私は今まで経験したことがありません」と、Quixotic Ventures(キクソティック・ベンチャーズ)のMark Kingdon(マーク・キングドン)氏はいう。ここ数年、新規移住者の歓迎を推進してきた団体組織には、Knight Foundation(ナイト・ファンデーション)、 Endeavor(エンドーヴァー)、Miami Angels(マイアミ・エンジェルズ、エンジェル投資を行うフロリダ最大のコレクティブ・インベストメント・ファンド)、リフレッシュ・マイアミ(スタートアップへ情報やイベントを提供し、コミュニティ作りを行う団体)、Venture Cafe(ベンチャーカフェ。週1回開催のイノベーター向け教育プログラム)、500 Startups(ファイブ・ハンドレッド・スタートアップス)やThe Venture City(ザ・ベンチャー・シティ)などがある。

マイアミでは、スペイン起源のコーヒー文化が残るように、この地の多様性は文化に深く浸透している。地元のテックコミュニティはこれまでどおり、今後もマイアミのテック業界の最前線で、多様性、インクルージョン、男女平等を守り抜いていく決意をしている。最近のMiami Tech Manifest(マイアミ・テック宣言)は地元コミュニティのメンバーが草案した。この宣言は、マイアミのテック業界が世界に対して、物事に向き合う自分たちの姿勢を示したものである。女性が世界を動かすにはまだ至っていない(議論の余地があるものの)。しかし、少なくともマイアミのテック業界では女性が大きな原動力となっており、マイアミに多くの人材を呼び込んでいる。

マイアミのテック業界はまだ世界へ飛び立とうとしている時期にあり、地元の企業や新興企業がこれまでの主要なテックハブの間違いや失敗から学び、別のやり方で発展していく余地がある。多くの人にとって夢とは、現在同地のテックコミュニティが目標と掲げ、築きあげようとしている「すべての人のためのマイアミ」を維持しながら、同時にサンフランシスコやニューヨーク市のような経済的な繁栄を享受することだ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:マイアミ

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Dragonfly)

ソフトバンクがマイアミ拠点のスタートアップ向けに104.7億円のファンドを設立

新興のスタートアップハブであるフロリダ州マイアミが、新たなパトロンを得た。Softbank(ソフトバンク)だ。日本の多国籍コングロマリットは、同社の複数のファンドから集めた1億ドル(約104億7000万円)を、マイアミ拠点のスタートアップに投資する計画を米国時間1月28日に発表した。ちなみに、SoftBankの50億ドル(約5235億8000万円)のラテンアメリカファンドもマイアミに本社を構える。

プロジェクトはSoftBank CEOのMarcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏が指揮する。このファンドは、マイアミ在住あるいはマイアミに移転予定の企業を支援する。

SoftBankによる出資は、シリコンバレーの通過儀礼的な意味合いがあり、同社の関わりはマイアミの成長が本物であることを他の投資家にも示すものだ。この非課税の安息地は、その成長シーンに参加しようとしている全米の投資家とファウンダーの集団を引き寄せている。移転組には、Founders FundのKeith Rabois(キース・ラボイス)氏、Blumberg CapitalのDavid Blumberg(デビッド・ブルンバーグ)氏、Andreessen HorowitzのChris Dixon(クリス・ディクソン)氏、Craft VenturesのDavid Sacks(デビッド・サックス)氏らがいる。

マイアミのFrancis Suarez(フランシス・スアレス)市長はTwitter(ツイッター)で、技術者たちにマイアミへの移住を勧め、この都市をスタートアップ震源地に変えようとするさまざまな取り組みを推進している。

Career KarmaのファウンダーであるRuben Harris(ルーベン・ハリス)氏は2018年以来、テック業界への人材勧誘でスアレス市長に協力している。

「SoftBankが行動を起こしたことで、他のファンドがこの例に倣うことが予想されます。これは人種だけでなく社会経済や性別の面から見ても多様化の大きな成果です」とハリス氏は語った。同氏はマイアミへの移住を考えている。現在Career Karmaは、VCファンドと協力して古いノートパソコンをReskill Americaプログラムに寄贈し、マイアミの新興労働者の訓練に役立てようとしている。

マイアミ拠点の非営利投資シンジケートであるFunction(ファンクション)のMonica Black
モニカ・ブラック)氏は、SoftBankの参入について「地域のスタートアップに流れる資金の額が増えてシリーズA以降の段階への成長を後押しするだけでなく、共同出資者として他の機関VCを引きつけます」と期待を寄せる。歴史的に、地域のスタートアップがシリコンバレーやニューヨークのファンドから資金を調達するのは難しい、と彼女はいう。例外はPapa(パパ)で、2020年9月に1800万ドル(約18億8000万円)を調達した同社は、高齢者をSound Ventures(サウンド・ベンチャーズ)やCannan(カナン)のバーチャルコンパニオンとつなぐサービスを提供している。

マイアミ拠点のファンドであるANIMO VenturesのファウンダーNico Berardi(ニコ・ベラルディ)氏は、SoftBankの新たな取り組みを、サンフランシスコのFounders Fundがマイアミにオフィスを開設するという最近のニュースと結びつけた。

「どちらも象徴的な出来事で、象徴は重要だと私は思います」とベラルディ氏はいう。「彼らはここに旗を立てて、ここは将来有望なシーンだと宣言しています」。同氏の16社のポートフォリオ企業の中で、マイアミに拠点を置くのは1社だけだとベラルディ氏はいう。この地に移動する投資家が増えれば増えるほど、多くの人材を引き寄せることができる、とベラルディ氏は楽観している。

「次はマイアミでやろう、というファウンダーを何千人も呼び込むことができると私は期待しています」と同氏は語った。

関連記事:すべてのスタートアップの脳内にある2021年の大問題

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Softbank Groupマイアミ

画像クレジット:John Coletti / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

シリコンバレーに広がる冷笑主義に対抗する方法はSubstack、Clubhouseそしてマイアミ脱出だ

映画「Field of Dreams(フィールド・オブ・ドリームス)」ではないが「それを作れば人はやってくる」というのがスタートアップの信念だ。しかし残念ながら本当に人が来るまでの道のりには、何もかも否定しようとするシニシズム(冷笑主義)が満ちることになる。

今年だけでもテクノロジービジネスでは何百万回ものギャンブルがあった。そうした賭けの一部にはベンチャーキャピタルの投資の決断も含まれていた。また地域を選ぶ賭けもあった。サンフランシスコの未来に賭けるのがいいだろうか?それとも他のテクノロジーハブの成長に賭けるべきか?プロダクトに新機能をリリースするべきか、既存機能のブラッシュアップに時間を割くべきか?今の会社に賭けるか、新しい会社を探すか?

2020年の締めくくりとして、こうした賭けの結果について成績表を作ってみよう。このビジネス全体を通してその未来に熱狂な支持を集めることに成功したのは「メディア、特にオーディオメディア、米国のある有名大都市」の3つだけだった。

具体的にいえば、ニュースレター配信のSubstack、ソーシャルメディアのClubhouse、そして新興テクノロジーハブのマイアミだ。もちろんまだ先物買いではある。どれも夢を実現するまでにはまだまだ距離がある。Substackは、テキストベースのジャーナリズムを再建しようと試みている。Clubhouseは、対話可能な音声ベースのソーシャルプラットフォームとしてラジオを活性化するつもりだ。マイアミはこれまでスタートアップ育成の巨大なエコシステムがなかった場所にもサンフランシスコ、ニューヨーク、ボストンに匹敵するテクノロジーハブを建設できるという賭けだ。

こうしたオプティミズム(楽観主義)は脅威、失敗、障害の可能性を仔細にいい立てる人々からあらゆる否定を浴びている。

現在のテクノロジー業界を覆う否定的な空気は、パンデミックを筆頭に業界を絶え間なく襲った悪いニュースに疲れたための一時的な倦怠感に過ぎないといいいたいところだ。しかしここに底流するシニシズムは新型コロナウイルスがトレンドトピック入りするはるか以前から業界に深く浸透していた。

今までにないほど、多くのスタートアップが資金を調達している(評価額も上昇を続けている!)し、買収や上場によって「出口」を得たスタートアップの数も2020年12月初めの時点で過去数年間で最高だ。

それでも悲観的分析は根強い。そのほとんどをは、テクノロジー業界を覆うある種の不安から生じている。Substackはテクノロジーの不安とメディアの不安が重なる部分に位置するので特に目立つ。テクノロジー側からの批判は、「あんなものはただのメールサービスだ!」と要約できる。誰もがSubstackのようなサービスならこの10年、誰でも構築できたはずだ。そう思えるだけにSubstackの単純さと巨大な評価額は脅威だ。

事実、もともとのコンセプトが単純なだけにSubstack的な試みは何度もあった。しかし単純さは他の多くの成功した消費者向けスタートアップに共通するDNAだ。なるほどSubstackのテクノロジーの本質は電子メールだ。StripeにCMSエディターをプラスしたメール配信サービスともいえる。有能なエンジニアはコンセプト版でよいなら1日で書ける。ところが誰もやらなかった。そこでスタートアップの世界では疑いと不安が始まる。

メディアの観点からはどうだろう?ニュースも出版も過去数年間はひどい状態だった。当然のことながら、マスコミのシニシズムはひどく強いものとなっている(もともとジャーナリストというのは楽観的なことを口にしない人種だ)。マスコミ側の批判の大部分は「Substackは数年前からあったのにマスコミの崩壊を止めるのに少しも役立たたなかった」と要約される。

そのうちに助けになるかもしれないが、大きな影響を与えるようなサービスが出現するには時間がかかる。スタートしたばかりの企業がマスコミを完全に再構築する可能性さえあると見られるているという事実が、まさにSubstack(や類似のスタートアップ)を賭けるべき対象として魅力あるものにしているのだ。Substackは今すぐに解雇された数万人のジャーナリストに再び職を与えたり、ニュース報道や出版ビジネス内の不平等を是正したり、フェイクニュースを追放したりすることはできない。しかしこのペースで成長し機能の構築が続くとしたら、10年後にはできるかもしれない。

現在すでに完璧でないといって対象を否定するシニシズムは、2020年のスタートアップビジネスに流れる奇妙な動きの1つだ。1人か多くて数人の起業家と少数の社員のスタートアップが、創立初日に完璧なプロダクトをリリースし、欠点が表面化する以前にそれを是正しているなどと期待するのは道理に合わない。スタートアップが提供するプロダクトが過早にもてはやされ、プロダクトの真価を理解している少数が理解しない多数の渦の中に飲み込まれているという方が実際に近いだろう。

このパターンはClubhouseの場合にもはっきりしている。幸いにしてTechCrunchでは、おおむね避けるのに成功してきたシニシズムの側面があらわになっている。Clubhouseは新しいダイナミクスを備えた新しいソーシャルプラットフォームだ。もちろん数年先にどうなっているかは誰に断言はできない。投資家、ユーザーはもちろん、(彼なりのビジョンはあるだろうが)創立したPaul Davison(ポール・デイヴィソン)でさえ確たることはいえないだろう。先週、Clubhouseが主催した「Lion King(ライオン・キング)」のライブミュージカルイベントには数千人が参加した。Clubhouseがそうした存在になるとは誰ひとり予想していなかったはずだ。

SubstackにもClubhouseにも解決すべき課題は多々ある。当然だ。しかし創立後日が浅いスタートアップとしてとしては、市場の地形を探り、プラットフォームにユーザーを引き込むために決定的となる機能を発見し、最終的には成長の方程式を見つけねばならない。コンテンツがユーザー投稿であるということは特に安全性と信頼性における問題を生む。成長の過程で問題を発見しなかったスタートアップなど、これまで設立されていない。重要な質問は「このスタートアップには問題が発見されたときにそれを即座に修正することができるリーダーシップを持っているか?」だ。私の見たところ(現実のお金を投じてはいないが、これも賭けだが)答えはイエスだ。

リーダーシップについて語るならマイアミのFrancis Suarez(フランシス・スアレズ)市長を抜きにするわけにはいかない。スアレズ市長の「マイアミはスタートアップを手助けする用意がある」というツイートはシリコンバレー信者はの愛好家や根っからの悲観主義者の間に途方ないばかげた騒動を引き起こした。

Keith Rabois(キース・ラボイス)氏をはじめとする何人かのベンチャーキャピタリストや起業家はサンフランシスコから脱出してマイアミに移れというトレンドのパイオニアとなっている。地元のビジネスと連携して、それまでになかったより良いエコシステムを構築しようとしている。ここで賭けられているのは場所だ。スタートアップとテクノロジーのハブをシニシズムに覆われた既存の場所の外に明るく楽観的な場所を見つけることができるという賭けだ。

マイアミに対するシニシズムは、10年前よりもさらに正当化されにくくなっている。サンフランシスコ、ニューヨーク、ボストンとそれらの周辺はもちろん米国のハイテクスタートアップのメッカだ。しかしシアトルはもちろん、この10年でソルトレイク、ポートランド、シカゴ、オースティン、デンバー、フィラデルフィアなどの都市が着々と得点を挙げている。マイアミは550万人が暮らす大都市であり、米国最大の経済圏の1つだ。マイアミも成功するかもしれないと考えるのは的外れではない。改革のきっかけとしては、たとえばラボイス氏のようなベンチャーキャピタリストの移住が十分だったかもしれない。

シニシズムから意味あるものが生まれた例はない。「そんなことできっこない」という態度がスタートアップを作った試しはない。こういうシニシズムへの反発が人を起業家にするきっかけとなったことならあるかもしれない。

意味のあるもの作るには、時間がかかる。最初のプロダクトを手にしてから育て上げてるに時間が必要だ。スタートアップのエコシステムを構築し自立したものにするにももちろん時間がかかる。重要なことは、成功のためには個人の力では不十分だという点だ。人々のチーム、コミュニティとメンバーの並外れた努力が必要だ。未来というのは決定論的に固定されたものではない。努力によって変化する可塑性に富んだ存在だ。賭けの報酬は大きい。我々は後ろ向きにあれこれの問題や欠陥を指摘するのを止めて「どんな未来を作りたいのか?」と自問すべきだろう。私は何に賭けたいのかが一番重要なポイントだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook