過去35年の秀逸なテック業界広告を振り返る

先週、 Association of Independent Commercial Producers(コマーシャル制作者協会)は今年の最優秀マーケティング動画を発表し、Appleの“Welcome Home”がコマーシャル部門で優秀広告賞に選ばれた。映画「Her」や「Being John Malkovich」を手がけたSpike Jonzeによるもので、このミュージカルショートフィルムは、若い女性FKA Twigsがタフな1日を終えて誰もいない家に帰ってくるところから始める。「何か(私が)好みの曲をかけて」とSiriにいうと、彼女のいる現実の空間が、 HomePodから流れるAnderson .Paakの曲““Til It’s Over””の世界へと変わっていく。

2月に発売された直後は賛否が渦巻いたHomePodだが、Jonzeは素晴らしいビジュアル(ほとんどがCGIではない)と魅力的な振り付けでこの製品に命を吹き込んだ。これを観ると、過去35年に注目を浴びたテック企業のコマーシャルはどんなのがあっただろうか、私たちのテクノロジーに対する考え方はどう変わったのか、と考えずにはいられない。我々のお気に入りを紹介しよう。

“1984” (“1984年”)

変化の激しいテック企業の広告について語るとき、これ抜きには始められない。1984年のスーパーボウルで流したこの広告はRidley Scott(1979年にAlien を監督)によるもので、Macintoshのパーソナルコンピューターを世界に初めて紹介した。この広告では、PCコンシューマリズムと、1980年から George Orwellが描いたディストピアの‘1984’にかけての無機質な企業のオフィスの関係を明らかに描いている。

コマーシャルでは、ビッグブラザー(編集部注:George Orwellの小説「1984年」に出てくる監視者のこと)が、誰とも区別がつかないような労働者の集団に催眠術のように話しかけているときに、手に槌を持った女性が光を伴いながら集団の中を駆け抜ける。そして女性は、スクリーンの中でパーソナルコンピューティングについて語っているビッグブラザーに向かってアスリートのように槌を投げる。そして最後はこう結ばれる。Macintoshの登場で1984年は“1984年”のようにはならないだろう。

“Dude, You’re Getting a Dell” (Dellのコンピューターはいかが?)

Macintoshの動画ほどコンセプトが詰まっているわけではないのは明らかだが、このコマーシャルキャペーンは2000年代初めに注目を集めた。Stevenという名前の登場人物ー典型的なお気楽ティーンエージャーが、家族のためにDellのコンピューターを買うよう、親子を巧みに誘惑するというものだ。このDellの人気CMにより主演のBen Curtisの評判も高まった。Curtisは最近だと2017年にオフブロードウェイの舞台The Crusade of Connor Stephensに出演している。

“Get a Mac” (Macを手に入れよう)

白状すると、私はこのコマーシャルが大好きだ。Appleのサイト閲覧にハマっている人と同じように。このキャンペーンは2006年から2009年までの4年間展開され、スーツを着たJohn HodgmanがPC役で、パーカを着たJustin LongがMac役だ。コマーシャルではこの2つのコンピューターが(文字通り)会話をするのだが、他のコンピューターにはないようなMacの特徴( iMovieや Time Machine、そしてWindowsも使えることなど)を際立たせる。

Macはリラックス、そしてクリエイティブに登場するのでーAppleが顧客に伝えるときには全てにおいてそうなのだが、その他のPCは弱点が明らかという状態となる。2010年にAdweekは21世紀初の10年ではこのキャンペーンが最高、と発表した。

“Can You Hear Me Now?” (いま聞こえてる?)

パソコン以外のコマーシャルでは、この有名なVerizonのキャンペーンも語らずにはいられない。2002年から2011年にかけて放映されたこのコマーシャルは、Verizonのジャケットを着て大きなメガネをかけたTest Manという人物が登場し、Verizonのネットワークの強度をテストするためにあちこちに足を運ぶという設定だ。コマーシャルではたえず携帯電話を片手に “can you hear me now?” (いま聞こえてる?)と言っている。2002年にTest ManはEntertainment Weeklyから“最もミステリアスなピッチマン”賞を受賞している。

このVerizonのキャンペーンは10年近く前に終了しているが、このキャラクターは最近復活した。Sprintのコマーシャルでだ。この裏切り行為には胸が痛む。

“Parisian Love”

次に紹介するコマーシャルでは、もしかしたらティッシュの用意が必要かもしれない。このミニマリストなコマーシャルは2010年のスーパーボウルで放映された。カップルのラブストーリーで、出会いや結婚、子どもの誕生などを描いているが、すべてGoogle検索のウィンドウで描写されている。このコマーシャルはスーパーボウルで放映されたコマーシャルで最も人気だったものの1つで“Google 5”として知られる何人かの広告デザインを学ぶ学生によってデザインされた。AdAgeによると、このコマーシャルのコンセプトは、Googleの任務内容にある“Google検索についてどんなところが好きか、人々に思い起こさせる”という記述や、GoogleクリエイティブラボVP、Robert Wongの“最も良い結果というのは、検索結果ではなく人生に現れる”という格言にインスピレーションを得ている。

テクノロジーに対する考えに変化をもたらした広告、何か抜けはないだろうか。コメントで教えてほしい。

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(翻訳:Mizoguchi)