社会課題解決を目指すインパクト投資が“使命”のミッション・キャピタル、遺伝子・自動運転領域に出資

ミッション・キャピタルのマネージング・パートナー、金武偉氏

マネージング・パートナーの金武偉氏が率いるミッション・キャピタルは2月15日、社会課題解決型のインパクト投資1号ファンドにおいて、総額約2億円の投資実行を終了したと発表。出資先はアメリカ発遺伝子系ベンチャーのジェノプランならびに自動運転などの技術で知られるZMPだ。

ミッション・キャピタルは2018年8月の創業。社会課題解決型のインパクト投資を専門テーマにする独立系ファンド運営会社だ。

その代表の金氏は1979年に京都で生まれた。16歳で外交官を目指し渡米、高校と大学をアメリカで履修後、大学院留学の学費を稼ぐため、東京でゴールドマン・サックス証券に入社。一時、JP モルガン証券に転籍後、アメリカ東海岸のロースクールに通った。

卒業後はニューヨーク州で弁護士資格を取得し、サリヴァン・アンド・クロムウェル法律事務所に入所。約5年間、国際案件に携わった。その後、ユニゾン・キャピタル投資チームに参画し、日韓投資案件に従事。そして2014年、「ベンチャーの勃興」があり、以降は国内外複数のAIやIoT関連のベンチャーを経営してきた。

並大抵ならぬキャリアバックグラウンドを持つ金氏だが、「すごく勉強して必死に生きてきたわりには、味気のない人生だと思った」と感じたこともあったのだという。その上で、「自分よりも優れた人間はいるのでは。自分とは何なのか」と自問自答し、「良いことをしながらお金持ちになりたい」という結論にいたった。

2011年、金氏がまだニューヨークで弁護士をしていたころに、社会的インパクト投資が欧米ではよく知られるようになってきたのだという。

「社会問題を直接的に解決し、かつ投資家のリターンが上がるビジネスモデルを知った。ビジネスモデルとテクノロジーのイノベーションでそのようなことができるようになった。実際に社会を良くしているのに、リターンが上がる」(金氏)

「2011年以降、自分はまだ準備不足だと思い続けていた」という金氏だが、2018年に独立した後、色々なベンチャーからの誘いもあったものの、インパクト投資を「今すぐ」始めるよう周りから背中を押され、8月にミッション・キャピタルを創業した。

ミッションキャピタルは地方優良企業の内部留保資金やファミリーオフィス資産を預かり、従来型のベンチャーキャピタルおよびプライベートエクイティファンドに求められる投資利回り(IRR15〜20%)の超過を目指す、高リターン重視のインパクト投資を展開している。

「真のインパクト投資を行なっているファンドは無いと考えている。本当に良いことをやっていて、本当にリターンが上がる。それを証明してみせますよ、というのがミッション・キャピタルだ」(金氏)

金氏は「ある2つの条件」が充足している場合は投資を実行するファンドを作りたかったのだという。1つ目の条件は、会社自体が、実在する大きな社会課題を解決しに行くことが定款としてあること。2つ目は、IRRが15から20%、もしくはそれ以上であること。

「(日本では)現在、インパクト投資ではESG(環境/Environment・社会/Social、ガバナンス/Governance)SRI(社会的責任投資/Socially Responsible Investment)やCSR(企業の社会的責任/Corporate social responsibility)がごちゃまぜになってしまっている。何となく良いことをしていればインパクト投資、というのは間違っている。欧米だと、会社の存在目的自体が、実在する大きな社会問題の解決にあるべきだ、というのがインパクト投資の定義。僕はそれがやりたいと考えている」(金氏)上記に加えてリターンを上げられることが重要であり、でなければ「投資」でなく「寄付」になってしまうのでは、と同氏は加えた。

ミッション・キャピタルでは今後、引き続き、社会的インパクトと高リターンの両立を重視しつつも、将来的には国内外のソーシャルインパクトボンド(SIB)から上場株式まで、様々なインパクト投資機会を投資家へ提供して行くという。金氏は2号ファンドでは30億規模を目指す、と話していた。