山手線31番目の駅「シン・秋葉原駅」が3月25日11時開業、新規駅開業時の記念入場券を「入場記念NFT」として無料配布

JR東日本(東日本旅客鉄道)、ジェイアール東日本企画HIKKYは、オリジナルの共同運営バーチャル空間「Virtual AKIBA World」(VAW。バーチャル アキバ ワールド)を3月25日11時よりオープンし、「バーチャル秋葉原駅」を開業する。これに向け、VAWで展開するコラボレーションやコンテンツを3月23日に発表した。

Virtual AKIBA World(VAW。バーチャル アキバ ワールド)概要

  • 開業日時:3月25日11時(開業まではティザーサイトとなっており、VAWWにアクセスできない)
  • サイトURL:https://jrakiba.vketcloud.com/VAW/
  • メンテナンス:隔週木曜10~15時
  • 利用料:無料

また山手線31番目の駅であるバーチャル秋葉原駅開業記念として、「入場記念NFT」(1枚予定)を無料配布する。従来より駅が新規開業する際に発行している記念入場券を、史上初の「デジタル上の駅開業」であることからNFTのデジタル入場券で発行する。この受け取りには、「LINE」および「LINE BITMAX Wallet」への登録が必要となっている。配布時期は、5月中旬頃予定。記念グッズであるため実在するJR秋葉原駅への入場には使用できないほか、LINEが提供しているNFTマーケットプレイスや、その他のNFTマーケットプレイスを通じた出品は不可。参加方法は、3月25日より公式サイトと公式Twitterで公開する。

JR東日本がバーチャル空間「シン・秋葉原駅」3月25日11時開業、新規駅開業時の記念入場券を「入場記念NFT」として無料配布

コラボレーションするのは、「シン・ゴジラ」「シン・エヴァンゲリオン劇場版」「シン・ウルトラマン」「シン・仮面ライダー」の4作品によって構成されたプロジェクト「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」。コラボ期間中は「バーチャル秋葉原駅」から「シン・秋葉原駅」と呼称を変更。さらに、バーチャル空間では各キャラクターが描かれたVAWオリジナルデザインのグラフィックで来場者を迎える。また5月13日公開予定のシン・ウルトラマンより、ウルトラマンの3D立像をVAWに設置。来場者同士で集まり記念撮影を行なえる。

セレクトショップ「BEAMS」とのコラボでは、シン・秋葉原をテーマとした期間限定の店舗装飾やVAWオリジナルTシャツの受注販売、オリジナルノベルティを配布。対象店舗は新宿駅新南口NEWoMan2Fの「ビームスニューズ」「ビームス大宮」「ビームス立川」。期間は3月25日~4月7日。VAW内のシン・ウルトラマン3D立像を撮影し対象店舗のスタッフに提示すると、先着順でオリジナルノベルティをプレゼントするそうだ。

JR東日本がバーチャル空間「シン・秋葉原駅」3月25日11時開業、新規駅開業時の記念入場券を「入場記念NFT」として無料配布

アトレ秋葉原でもコラボ展開を行なう。VAWオリジナルコラボビジュアルで館内装飾の実施するほか、キャンペーン期間中に商品を500円(税込)以上購入するごとにシン・秋葉原駅オリジナルキャラクターカードをランダムでプレゼント。このカードはシン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバースの4作品からなり、1種ずつすべて揃えるとVAWオリジナルデザインのグラフィックが現われる。配布期間は4月1日~15日。

JR東日本がバーチャル空間「シン・秋葉原駅」3月25日11時開業、新規駅開業時の記念入場券を「入場記念NFT」として無料配布

ラジオ局「文化放送」のA&Gゾーンとも連携する。VAW内に文化放送ブースを展開するほか、A&G番組のパーソナリティーやスタッフ、リスナーがVAWの特徴である「オフ会ルーム」を使用してのVR交流を行なう予定。

JR東日本がバーチャル空間「シン・秋葉原駅」3月25日11時開業、新規駅開業時の記念入場券を「入場記念NFT」として無料配布


©TTITk
© TOHO CO., LTD. ©カラー ©2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©円谷プロ ©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

スマートフォンで3Dスキャン&データ編集が行えるスマホアプリ「WIDAR」を手がけるWAGOが1.1億円のシード調達

3Dを活用するための技術開発・提供を行うWOGOは3月22日、シードラウンドとして、第三者割当増資による1億1000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、Coral Capital。

また、スマートフォンで3Dスキャン&3D編集が行えるアプリ「WIDAR」(Android版iOS版)の正式版を3月5日にリリースしたことを明らかにした。

調達した資金により、同アプリの編集ツールの追加リリースを継続的に行う。また、コミュニティー機能を充実させ、3Dデータの蓄積とともに、これらデータが素材として活用されるようなコラボ制作の流れを作り出し、3Dコンテンツ作成のハードルを下げる。さらに、3Dデータの活用を促進し、メタバースにより多くのコンテンツを供給することを実現すべく、データの外部接続APIの開発と提供も図る。

WIDARは、スマートフォンのカメラ機能でスキャンした対象を3Dモデル化し、編集できるアプリ。3D編集機能は、初回リリースとして複数データ配置機能、背景変更機能と動画像出力機能をアプリ内に新規追加した。また、自身の作品を投稿できるコミュニティー画面を用意し、3Dデータが共有、再利用されていく土台を用意した。

現在、メタバース市場の成長と同時に、バーチャル空間のゲームも盛り上がっている。また、モバイルデバイスの高性能化が進み、個人がスマホで手軽に3Dコンテンツを作り出せる下地も整いつつある。

ただ、メタバース向けコンテンツ創出において利用されている「Blender」などの既存3D制作ツールは、プロ向けであることから、一般的なユーザーには難易度が高いという状況にある。

その中でWOGOは、2021年にはアプリのベータ版をリリース。3Dスキャンの実装をスマホに落とし込んだ。さらにWIDAR正式版では、3D編集機能を搭載。これにより、従来3D制作ツールでは数時間かかっていたゼロから形状を構築する作業が、WIDARでは3Dスキャンと編集の組み合わせにより10分程度に短縮させたという。

WOGOは、東京大学情報理工学系研究科所属のメンバーを中心として、2021年1年に設立されたスタートアップ。「3D制作の民主化」をビジョンとして掲げており、WIDARによって3Dコンテンツ作成のハードルを引き下げ、創出された3Dデータの活用を促進しメタバースへ多くのコンテンツ供給を目指している。

MetaがVRヘッドセット発売から3年近く経ちようやく基本的な保護者向け管理ツールを追加

Meta(当時はFacebook)が最初にVRヘッドセットをリリースしたのは2019年5月だったが、ここにきてようやくMeta Questに保護者向け管理ツールを追加する。

Metaは2021年に驚きのリブランドをして以来、VRへの投資は社名変更の価値があったことを証明しようとしていると注目されている。しかし米国政府の最上層部が安全性を重要視する中で、Metaはさまざまな保護者向け管理ツールを公開することで子どもたちにとってより安全なプラットフォームにしようと取り組んでいる。

Meta Quest 2は2021年の年末商戦で販売数を大きく伸ばし、クリスマス後の2週間でOculus Questのモバイルアプリはおよそ200万回ダウンロードされたと推計される。しかしMetaのヘッドセットが普及するにつれ、ペアレンタルコントロール機能の欠如が問題視されるようになった。英国個人情報保護監督機関はこのヘッドセットがオンラインでの子どもの安全規定に違反している恐れがあるとして圧力を強めている。

画像クレジット:Meta

現在、Questヘッドセットではデバイスへのアクセスに関してパスコードなどのロック解除パターンを設定することができる。Metaによれば、4月にこの機能を拡張して特定のアプリに適用できるようにするという。つまり、保護者が共有使用しているヘッドセットで子どもに特定のゲームをプレイさせたくないなら、そのアプリ専用のロック解除コードを設定できるようになる。

同社は5月には、IARC(International Age Rating Coalition、国際年齢評価連合)がその年齢層には不適切とみなしたアプリを10代がダウンロードできないように自動でブロックする機能を追加する予定だ(QuestのプロフィールがFacebookアカウントと関連づけられて年齢が判断される)。ティーンが保護者のログイン情報と関連づけられているアカウントを使用している場合は、この保護機能は動作しないかもしれない。

今後数カ月かけて、MetaはQuestのペアレンタルコントロールを強化していく方針だ。Oculusのモバイルアプリで保護者はペアレントダッシュボードにアクセスし、このダッシュボードで子どものアカウントとリンクする。

Metaはさらに、ツールや保護者向けリソースを集めたファミリーセンター公開した。

画像クレジット:Meta

Metaはブログ記事でアカウントのリンクに関し「プロセスを開始するのはティーンで、保護者とティーンの双方がエクスペリエンスに同意する必要があります」と記している。

モバイルアプリにVR管理ツールを含めるのは、VRヘッドセットよりもモバイルアプリの操作に慣れている保護者にとってはスマートな方法だ。保護者はこのモバイルダッシュボードでティーンのアカウントに対し、例えば全年代向けアプリのダウンロードを事前に承認するというようにレーティングをもとに子どもがダウンロード可能なアプリを管理できる。ティーンが有料アプリを購入したい時に、保護者はそのリクエストを承認または拒否する設定もある。ウェブブラウザや、ヘッドセットをPCのVRゲームに接続するLinkアプリといった特定のアプリを子どもが利用できないようにブロックする機能もある。さらに、保護者が子どものスクリーンタイム、フレンドリスト、ダウンロード済みアプリを見ることもできる。

Questヘッドセットは13歳以上のユーザーを対象にしているが、もちろん13歳未満の子どもも必然的にバーチャルリアリティを利用するようになるだろう。ただし13歳以上のティーンであっても、MetaのソーシャルVRアプリである「Horizon Worlds」や「Horizon Venues」など一部のアプリには年齢制限がかけられている。

「Horizon Worlds」のウェルカムプラザだけは人間のモデレーターがいるが、モデレーターはメタバースでのセルフィーの撮り方に関する質問をするユーザーのサポートに忙しいようだ。

「Horizon Worlds」はすでにコンテンツモデレーションシステムの不備を悪用されている。BuzzFeedによれば、Qアノンの陰謀説のようなFacebookやInstagramで禁止されているコンテンツが満載のテスト用のワールドを作っても、Metaのコンテンツモデレーションシステムはガイドラインに違反していないと判断したという。このプラットフォームでセクハラや痴漢行為に遭ったと報告しているユーザーもいる。この種のハラスメントは残念ながらテキストベースのウェブのフォーラムでも起きるが、没入型の不慣れなバーチャルワールドではことさら強烈に感じられることもあるだろう。これまでMetaはこうした行為を抑制するための試みとして、オプションで他人との距離を一定以上に保つ個人境界機能を導入した。

TechCrunchはMetaに対し、多くのユーザーがすでに子どもたちがこのプラットフォームをうろついていると報告し、Quest Storeのアプリのレビューでは行儀の悪い子どもたちにつきまとわれたという苦情が散見されることから、18歳未満のユーザーが「Horizon Worlds」などのアプリを利用できないようにする方法についてコメントを求めた。

Metaの担当者はTechCrunchに対し「現時点では長いジャーニーの第一歩を踏み出したところであり、今後さらにオプションを増やしていく予定です」と述べた。Metaはアプリごとのロック解除パターンは解決策としてあり得るとしているが、これは保護者に知識と予見があれば18歳以上向けのプラットフォームを子どもが使えないようにするだけのものだ。Metaは「保護者とティーンが当社のプラットフォームに対して何を必要としているかをさらに把握しながら、保護者向け管理ツールの機能を引き続き開発し拡張していきます」と述べた。

結局のところ、ペアレンタルコントロールは保護者とティーンがそれをきちんと使って初めて効果を発揮する。しかし、こうしたガードレールの設置はMetaにできる最低限のことだ。

画像クレジット:Meta / Facebook

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Kaori Koyama)

マーク・ザッカーバーグ氏、InstagramにNFTを近々導入すると発言

Meta(メタ)は、メタバースの中で暗号資産をマイニングして欲しいと思っている。

SXSWで行われた対談で、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が、Instagram(インスタグラム)にNFT(非代替性トークン)を「近いうちに」導入する予定であることを明らかにした。MetaのCEOで創業者のザッカーバーグ氏は詳細について多くを語らなかったが、Instagramのチームが技術的な課題を解決すれば、アプリにNFTを統合することが可能になると示唆した。

ザッカーバーグ氏はShark Tank(シャーク・タンク)のDaymond John(デイモンド・ジョン)氏との対談で「近いうちにNFTをInstagramに導入することに取り組んでいます」と述べた。「今日ここでは、正確な発表はできませんが、今後数カ月の間に、お手持ちのNFTを取り込めるようにして、できれば環境の中でNFTの鋳造(ミント)もできるようにしたいと思っています」。

2021年12月には、Instagramの責任者であるAdam Mosseri(アダム・モッセリ)氏が、より多くの人々にこの技術を提供することを目標に、NFTを「積極的に探求」していることを認めていた。モッセリ氏はInstagramのストーリーで「私たちが遊べるおもしろい場所だと思うし、できればクリエイターを助けたいのです」と語っている。

計画はすでに始まっていた。2021年の夏、Instagramは「Creator Week」(クリエイターウィーク)という招待制のバーチャルサミットを開催したが、その招待状にはイベントが「NFTクリエイターのためのプライベートイベント」だと書かれていたのだ。

InstagramのNFTへの関心は、親会社であるMetaの、デジタル商品で満たされ利益を生み出す、相互接続された仮想世界の大きなビジョンと一致している。ザッカーバーグ氏は「Metaverse(メタバース)でアバターが着ている服がNFTとしてマイニングされ、異なる場所へ持ち運べるようになればいいと思います」と語った。

今回のNFTの計画は、Metaの計画を追ってきた人たちにとっては、それほど大きな変化ではないが、この技術を嫌うクリエイターにとっては、この統合は大いなる悩みのタネになるだろう。

Twitterは2022年初めに、プレミアムユーザーがNFTプロフィール写真を使えるようにした。この統合はMetaが今回示唆したものよりも簡単なものだ。しかしJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏の暗号資産宣伝と、Twitter上での既存NFTコミュニティの間では、そのNFT機能はInstagramのものよりも親しみを持たれているだろう。

また、Metaがこれまで提供した暗号世界での実績は、控えめ目に言っても不完全だ。中央銀行や規制当局の逆風にさらされた同社は、独自の暗号資産に関する壮大な計画を縮小し、業界を揺るがすイノベーションという当初の宣言とは似ても似つかぬものにした。

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画像クレジット:Alexander Koerner/Getty Images/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:sako)

メタバースの内と外で生まれるビジネスは「インターネット」の進化をなぞる?

今、国内ではメタバースが熱い。「Oculus」(現在は、ブランド名が「Meta」に変更されている)が2018年から販売しているスタンドアロンVRゴーグルのおかげで、高価なPCや接続に関する複雑な知識なしに、メタバースの世界に入れるようになったからだ。また、マスメディアで報道されるようになったことも要因だろう。

早くからメタバース(当初はVRと呼ばれていたが)に着目し、今やメタバースに住んでいると言っても過言ではないShiftallのCEO岩佐琢磨氏は、自社でメタバース関連のアイテムを開発している。

そんなメタバース界の当事者である岩佐氏には、メタバースの楽しさや、他国との温度感の差、メタバース内での生活を快適にするアイテムなどについて聞いてきた。3回目となる今回は、メタバースとそれにまつわる今後のビジネスなどについて話を伺った。

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メタバースでの滞在時間が長くなることで生まれる新ビジネス

人は実生活において、住まいの居心地を良くしたり、人に会うときには好印象を持ってもらうためきれいな身なりをするように心がけるものだ。そのために、より快適な家を求めたり、家具を買ったりするし、美容院に行く、流行の服を買うといった消費が発生する。

同様に、メタバース内で生活する人が増えれば、その空間(ワールド)や自分(アバター)をより良いものにしたいというニーズが生まれ、そこにビジネスも生まれる発生する。

「すでに、経済活動が行われています」と岩佐氏はいう。「例えばアバター作家といった職業も誕生しています。しかもそのビジネスは国境を超えたものです。現在、日本のメタバースシーンで人気を博しているアバターは、日本だけでなく韓国のクリエイターによるものも多いです。現在のところ、まだメタバースに足を踏み入れている人の数は決して多くはありませんが、今後、その人数は増えていくでしょう。自分を表現するアバターはとても大切なものです。そこで1つ5000円のアバターでも購入されることは十分に考えられます。それを全世界規模で、例えば100万人が買うようになったらかなりの経済規模になります」。

また、ワールドにはもっとビジネスチャンスがありそうだ。

「今後、ホームページを持つように企業はそれぞれワールドを持つようになるかもしれません。またイベントを開催するときなどに特設ページを用意するように、企業がメタバースでイベントを行う際、そのイベントごとにコンセプトや雰囲気が違うワールドが必要になると思います」と岩佐氏はいう。

それはたとえば人気コミックを販売している出版社が、昔の日本を舞台にした作品と海を舞台にした作品でそれぞれイベントを行いたいと考えた場合、それぞれのイメージに合った会場を用意するのと似ている。

「今後、ホームページ以上に多様なワールドが必要とされ、作られていくのではないかと思います。そのため、ワールドを作ることができる人へのニーズが高まり、経済が回っていく日は遠くないでしょう」と岩佐氏は語る。

このようにメタバース内でのビジネスで暮らして人たちが登場する時期はまったくわからないというが、すでにアバタービジネスをグループで行っている人たちが出始めていることから「数万人から数十万人規模の人が、メタバースの世界の中で作ったもので生活できるようになるのには、そう長い時間がかからないのではないか」と岩佐氏は予測している。

NFTがメタバース内のビジネスとして成り立たない理由

また「メタバース」と同じく新しい技術としてNFTも注目を集めている。ブロックチェーン技術を使ったNFTなどのサービスは、デジタルで作られたもう1つの世界であるメタバースと親和性が高いのではないかと漠然と考えていた。

しかし、岩佐氏は「NFT×メタバースは現時点ではあまり相性が良くない」とバッサリ否定する。それぞれのユーザーと事業者がお互いに異質な存在になっているというのがその理由だ。

「NFTで売買したデータ、それ自体はいくらでもコピーできます。ただ、NFTであればその正当な所有権が誰にあるのか、というトランザクションの履歴をチェーンの上に保存でき、それを改ざんできないという特性があるだけです」という。

つまり、NFTアートを購入した場合、買った本人は権利を持っているということで自尊心が満たされ、さらにその権利を売って儲けることもできるだけだともいえる。

「メタバースの中で大切なことは、絵の所有権ではなく絵そのもの。ワールドにそれを飾ることに価値があるのです。すばらしい絵が飾られているすばらしい空間があることに意味があります」と岩佐氏は語る。飾る絵を選び、用意することが重要なのだ。NFTアートである必要はないのだ。

また、現在のところVRChatを提供しているプラットフォームSteamは、暗号資産やNFTを全面的に禁止している。これは余計なトラブルを避けるためのルールでもあるのだろうが、暗号資産、NFTがメタバースで現状、その成長に必要なものではない、ユーザーに強く求められているものではないということでもあるだろう。

求められるであろうガジェット

メタバースを巡るビジネスは、その中だけのものにとどまらない。

例えば前回の記事で紹介した、メタバース内での生活をより快適にするためのガジェットとしてShiftallはヘッドマウントディスプレイ「MeganeX」や、自分の動きを自在にトラッキングしてくれる「HaritoraX」、また仮想空間の温度をリアルに感じられるようにするウェアラブルデバイス「Pebble Feel」を開発、提供する。

メタバースを楽しむために開発されたアイテム。左上から時計回りに「MeganeX」、音漏れを防ぐBluetoothマイク「mutalk」「Pebble Feel』

「ヘッドマウントディスプレイ、コントローラー、トラッキングデバイスが、現時点でのハードウェア3大デバイスでしょう」と岩佐氏。「ただ、今後はもっとさまざまな分野のものが増えてくると考えている」と語る。

「CES 2022 では、メタバース内で触れられたときに、その触覚を感じるスーツのようなものが発表されていました。そうしたハプティクススーツとHaritraXのようなトラッキングデバイスがセットになったようなものが出てくるかもしれません。

現時点では、ヘッドセットの下に表情をセンシングするフェイシャルトラッカーデバイスを装着して現実の表情とアバターの表情を同期させている人もいます。デバイスの形状や種類は、どんどん変化していくのではないでしょうか」(岩佐氏)

そのような中で、VRChatがOpenSound Control(以下、OSC)という新しいプロトコルに対応したことが発表された。OSCは、オーディオ機器と音楽パフォーマンス向けのコントローラーを接続するためのプロトコルだが、その他の機器との接続にも利用可能でアイデア次第でこれまでなかった機器をメタバースの世界につなげることができる。

「例えば、脈波センサーを付けて、脈拍が上がったら、アバターの顔を赤くする、現実世界の室温が25℃を超えたらアバターが上着を脱ぐ。逆に、アバターが靴を脱ぐ操作をしたら、エアコンの温度を2℃下げるなど現実世界側を操作することも可能になります」と岩佐氏。

VRChatがOSCに対応したことで、脈波センサーを付けて、脈拍が上がったらアバターの顔を赤くするといったことも可能になる

また、コミニケーションをとる上で壁となる言語についても、OSCを使ってText to Speachで話す、外部ツールに話す内容をいったん投げて翻訳させるといったこともすでにできるようになる。とはいえ「まだまだ翻訳ツールには改善の余地があるため、言語ごとに人が集まっているのが現状。時間の経過とともに解決されるのではと期待している」とのこと。

電子工作が得意な人たちが、すでにさまざま操作を個人的にテストしているが、今後、それらのアイデアが製品化することも十分考えられる。

Metaをはじめとするテック企業が新しいビジネスのフィールドとして新サービスをスタートさせることも多いが、まだまだ始まったばかりの「メタバース」。今後、その体験を現実のものに近づける(もしくは現実では不可能なことを可能にする)新たなガジェットや新サービスが発表されていくだろう。

現在、私たちの周りに当たり前のように存在するインターネットと同様に、メタバースももっと身近なものになり生活の一部になる可能性は大きい。特にコロナ禍で人と人との距離感が変わった今、遠く離れていても目の前にいるかのように他人とコミュニケーションがとれるメタバースは加速度的に進化していくかもしれない。

そしてそれにともなって、そこで生きる、生活の糧を得る人も生まれてくる。インターネット黎明期、まずそこにアクセスしホームページで情報を公開したり得たりすることだけで興奮していたが、現在そこは、eコマースをはじめとしたビジネスの舞台にもなっている。メタバースでもまた同様のことが起こることが予想される。新しい世界は、また新しい可能性に満ちている。

NICT、カメラ1台で動作や表情も再現可能な自分のデジタルツイン・3Dアバターを構築する技術「REXR」開発

NICT、カメラ1台で動作や表情も再現可能な自分のデジタルツイン・3Dアバターを構築する技術「REXR」開発

細やかな表情の変化を様々な方向から再現した3Dアバター

情報通信研究機構(NICT)は3月14日、たった1台のカメラの画像から自分のデジタルツインとなる3Dアバターをモデリングし、細かい表情や動作も三次元的にリアルに表現できる技術「REXR」(レクサー。Realistic and Expressive 3D avatar)を開発したと発表した。メタバースなどでのコミュニケーションで、アバター同士の深い相互理解が実現する可能性がある。同研究は、NICT ユニバーサルコミュニケーション研究所 先進的リアリティ技術総合研究室のMichal Joachimczak氏、劉珠允氏、安藤広志氏によるもの。

メタバースやMR(複合現実)で自分の分身となる3Dアバターは、現状ではあらかじめ用意されたCGキャラクターを使用することが多く、微妙な表情や動作の表現は難しい。自分自身のリアルな3Dモデルを作ろうとすれば、何台ものカメラやセンサーを使って体中をキャプチャーするといった大がかりなシステムが必要となる。NICTは、複数のAIモジュールを組み合わせることで、それをたった1台のカメラで可能にした。

まずは、カメラの前で1回転した画像からリアルな全身モデルを構築する。モデルができれば、後はカメラの前で動くことで、その表情や姿勢が推定されてモデルに反映される。時間ごとに変化する動作や表情が、3Dアバターに三次元的に再現され、どの方向からでも見られるようになる。

コミュニケーションの最中にわずかに顔に生じる表情の変化「微表情」(micro-expressions)や動作を忠実に再現できるため、アバターを通しての「深い信頼関係の構築やシビアなビジネス交渉」もリモートで可能になるとNICTは話す。今後は3Dアバターの三次元形状の正確さや動きの滑らかさといった精度の向上と、リアルタイム対応を可能にする技術開発を進めてゆくとのことだ。この技術の活用、実証実験、普及の際の倫理的、法的、社会的課題については、超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(URCF)のXR遠隔コミュニケーションWGなどと連携して取り組むとしている。

「東京ガールズコレクション」の世界観を完全再現した公式ファッション・メタバース「バーチャルTGC」が正式公開

「東京ガールズコレクション」の世界観を完全再現した公式ファッション・メタバース「バーチャルTGC」が正式公開IMAGICA EEX(イマジカ イークス)と、ファッションフェス「東京ガールズコレクション」(TGC)を企画・制作するW TOKYOは3月14日、TGC公式メタバース「バーチャルTGC」の本格ローンチを発表した。両社共同開発のもと2021年β版として公開していたもので、本日Android版iOS版アプリを公開した(開発プラットフォームはLUDUS)。3月21日開催の「東京ガールズコレクション 2022 SPRING/SUMMER」をバーチャル空間でも体験できるとしており、生配信などを行う予定。

バーチャルTGCは、従来リアル会場で公開していたファッションショーやアーティストライブの熱狂、話題のアイテムを試用できるブースなど、TGCの世界観を3Dバーチャル空間に再現したというもの。また、バーチャル空間ならではのアトラクションやスペシャルイベントなど、様々なコンテンツを追加した「リアルより楽しいかもしれない」メタバースアプリとしている。「東京ガールズコレクション」の世界観を完全再現した公式ファッション・メタバース「バーチャルTGC」が正式公開

空間内では、「ロビーエリア」「ステージエリア」「VIPラウンジ」の3エリアを用意。ロビーエリアでは、ブースやSNS映えスポット、アトラクションなど様々な体験コンテンツを設置。ステージエリアには巨大スクリーンが設置され、リアル会場のバーチャルTGC専用カメラによる独自アングル映像で、臨場感の高いスペシャルパブリックビューイング(生配信)を実施するという。またVIPラウンジは、空間内に隠された5つの鍵を集めると入室可能になる。VIPラウンジ限定のイベントも開催。「東京ガールズコレクション」の世界観を完全再現した公式ファッション・メタバース「バーチャルTGC」が正式公開

ユーザーは、今季のトレンドを取り入れた、ファッション・メタバースならではのスタイリングやヘアスタイルのアバターから好みのものを選択して参加可能。また今回より、細かく顔のパーツをカスタマイズでき、自分だけのオリジナルアバターを作れるようにした。「東京ガールズコレクション」の世界観を完全再現した公式ファッション・メタバース「バーチャルTGC」が正式公開

毎日のログインや巨大迷路クリア、ブースに設置されたガチャなどで入手できる「デジタルコイン機能」を新たに追加。集めたデジタルコインはロビーエリアに設置されたITEM SHOPで使用可能。アバターの洋服やアクセサリーなどを購入できる。「東京ガールズコレクション」の世界観を完全再現した公式ファッション・メタバース「バーチャルTGC」が正式公開

「アニメとコミックとゲーム」好きのためのバーチャルソーシャルアプリ「MEW」が米国でコミックファンを魅了

MEWの北京のオフィス。社員たちはアニメとコミックとゲーム(ACG)のファン

Raven Gao(レイヴン・ガオ)氏は、メタバースの波に乗るために「MEW」というバーチャルのソーシャルプラットフォームをつくったのではなかった。彼はTencentにいた人と一緒に、2019年半ばにMEWを作り始めたが、それは彼自身のような、人付き合いがヘタで内向的な者のための、バーチャルな安息所を作りたかったからだ。

MEWのインターフェースを初めて見た人は、戸惑うかもしれない。しかしこのアプリ独特の言葉遣いやグラフィクスは、「アニメと漫画とゲーム(ACG)」好きたちのサブカルチャーに明確にアピールするものだ、とガオ氏はいう。キュートなアニメ風の画像と柔らかい色遣いがアプリを飾り、コマンドボタンの言葉はACGファンにとっておなじみの用語だ。たとえば「signup」(ユーザー登録をする)ではなくて「create your traveling file(あなたの旅のファイルを作る)」となっている。ユーザーは、他のユーザーが管理しているDiscordに似たデザインの「本拠地」と呼ばれる関心別のハブで対話をする。MEWという名称は「Members of the Excellent World(すばらしい世界の仲間たち)」の略だが、ファンタジー好きたちの仲間意識が溢れている。

MEWの最初のバージョンは2020年の半ばにローンチされ、その広がりは今でも大きくはない。毎日のアクティブユーザーは数万人だが、滞在時間は平均100分間と長い。ゲームや映画やアニメなど、自分の関心のハブに住み着くことになるが、自己改善やフットボールなど、作品の固有名詞ではなく普遍的な話題もある。

シリコンバレーのMakers Fundが2020年初めにガオ氏に関心を示したが、当時中国の投資家たちの多くは、この創業者のことをTencentのような大手がすでに支配する業界で新たなソーシャルネットワークを作ろうとしている「変人」だと考えていた。2021年にはメタバースが米国でも中国でもブームになり、MEWの親会社であるTrophにも、突然自国の投資家たちが殺到した。

Trophは2021年末に、中国の5Y CapitalとZoo Capitalから資金を調達し、資金の調達総額が1000万ドル(約11億7000万円)ほどになったが、同社はこれまで資金の額を発表していない。

MEWアプリのスクリーンショット

現在、バーチャルな世界とメタバースを作るというスタートアップが氾濫している。しかしながら、それらの一部はリアル世界を模倣する、バターを使ったソーシャルプラットフォームであるにすぎない。そして、それら以外は少しソーシャルな部分があるゲームにすぎないとガオ氏はいう。

対照的にMEWでは、自分のオンラインにおける分身を誠実、正直かつ快適に生きることが求められる。

共同創業者のQiang Li(チャン・リ)氏は、中国のPC時代に最も人気のあったソーシャルネットワークであるTencentのQQに5年間在籍し、メッセンジャーのiPad版のフロントエンドチームを率いていた。現在でもQQは、ゲーム化された機能を多く持ち、中国の若者の間で大きな人気を誇っている。

MEWはまだマネタイズを始めていないが、ガオ氏は、広告やサブスクリプションや寄付といった従来のソーシャルネットワークにおける一般的な収益化のではない方法をとりたいと考えている。ユーザーを巻き込み、収入を共有するような方法が彼の狙いだ。

「ユーザーが私たちのプロダクトに貢献できて、報酬をシェアできる方式を探求したい」とガオ氏いう。

そのようなインセンティブの仕組みとして、当然ブロックチェーンがその候補として思い浮かぶが、ガオ氏によると、短期的にはコインの発行やブロックチェーンの採用はしないという。

Trophの2022年における目標は米国進出で、中国と同じく、ゲームやアニメのファンの心を捉えたいとのこと。現在、中国に約30名のスタッフがいるが、米国のスタッフは現地で精力的に雇いたいという。

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

海外旅行予約アプリ「NEWT」を運営する令和トラベル、旅行販売を行う「NEWTメタバース支店」を期間限定オープン

海外旅行予約アプリ「NEWT」(ニュート)を提供する海外旅行代理店の令和トラベルは3月10日、海外旅行をより身近に感じてもらうため同社初となる店舗「NEWTメタバース支店」をメタバース上に期間限定でオープンすることを発表した。会場は、バーチャルSNS「cluster」のクラスターが開催するゲームクリエイターフェス「ClusterGAMEJAM 2022 in SPRING」。

NEWTメタバース支店は、バーチャル空間でリアルの海外旅行を販売する「完全バーチャル旅行代理店」。店舗まで物理的な距離を移動することなく、全国どこからでも気軽に参加できる。

販売商品例としては、20万円から(大人/1名/諸税込)の「ホノルル5泊7日」、12万円から(大人/1名/諸税込)の「バンコク3泊5日」ほか、ユーザーの要望を受け店舗スタッフが最適なプランを作成するなどの対応も行う。

「NEWTメタバース支店」店舗情報

  • 店舗名:NEWT(ニュート)メタバース支店
  • 接客期間:
    3月11日20時~22時(最終受付21時30分)
    3月17日20時~22時(最終受付21時30分)
    店舗自体は、プレイベント期間を含め3月11日から27日まで設置される
  • 会場:ClusterGAMEJAM 2022 in SPRING

アクセスするには、まずclusterのアプリをダウンロード。インストールおよびアカウント作成後、ClusterGAMEJAM 2022 in SPRINGの会場となるワールドに移動する。

2021年4月設立の令和トラベルは、「あたらしい旅行を、デザインする。」をミッションに掲げ、海外旅行における新しい体験・社会価値の提供を目指すデジタルトラベルエージェンシー。旅行業界における予約や管理業務のDXを最大化し、これまでになかった「かんたん・おトク・えらべる・あんしん」な海外旅行ツアーやアプリを提供する。

メタバース・現実世界で企業・個人を問わず収入を得られるプラットフォームを開発するSuper Massive Globalが1.1億円調達

メタバース・現実世界で企業・個人を問わず収入を得られるプラットフォームを開発するSuper Massive Globalが1.1億円調達

メタバース空間・現実世界でNFTを誰もが活用し価値を発揮できるプラットフォーム開発を目指すSuper Massive Global(スーパー マッシブ グローバル)は3月10日、シードラウンドとして、第三者割当増資による1億1000万円の資金調達を2月18日に行ったことを発表した。引受先はCBCなど合計8社。2021年にZero-Tenなどから2回にわたる資金調達を受けており、累計調達額は2億5000万円となった。今回調達した資金は、プラットフォーム開発とパートナー企業との業務環境の整備にあてる。

2020年9月設立のSuper Massive Globalは、「バーチャルと現実の境界線を無くす」ことをビジョンに掲げるスタートアップ企業。同社は、国境や人種・性別・文化、そして空間を超えて企業とユーザーといった誰もが楽しく生活をしながら収入や権利を持つことができる「Play to Earn」という世界観の実現を目指しているという。

そのために、メタバース空間内でNFTを発行し、現実世界また誰でも活用可能とすることで、企業・個人どちらも収入を得られる新たなプラットフォームの開発を進めている。

JR秋葉原駅を再現した世界初のメタバース・ステーション「Virtual AKIBA World」が3月25日11時頃オープン

世界初のメタバース・ステーションとなる「Virtual AKIBA World」が3月25日にオープン、スマホから体験可能

「Virtual AKIBA World」外観(画像は開発中のもの)

VRイベント「バーチャルマーケット」など、VRサービスの開発ソリューションを提供するHIKKYは3月8日、業務提携を結んでいる東日本旅客鉄道(JR東日本)、ジェイアール東日本企画(jeki)とともにオリジナルのバーチャル空間「Virtual AKIBA World」(VAW。バーチャルアキバワールド)を発表した。開業日時は3月25日11時頃(メンテナンスは隔週木曜10時~15時)。利用料は無料。PC・スマートフォンで体験可能。

VAW(バウ)は、世界的なコンテンツ集積地である秋葉原駅とその周辺をバーチャル上に再現した、オリジナルの空間。改札を通過したり電車に乗ったり秋葉原駅周辺を歩いたりなどを体験できる。来訪者同士のコミュニケーションも楽しめるという。

またVAWは、HIKKYが独自開発した技術「Vket Cloud」により、アプリなどのダウンロードを行うことなく、URLリンクをクリックするだけでスマホから手軽にアクセスできる。JR東日本の強みである駅や車両というリアルの場から、QRコードなどを介してバーチャル空間にシームレスに遷移でき、リアルとバーチャルが融合したかのような感覚が得られるとしている。

JR秋葉原駅を再現した世界初のメタバース・ステーション「Virtual AKIBA World」が3月25日開業

バーチャル空間でのホーム、車両と広告イメージ。「共創」の第一歩として、NTTドコモとVAW内での連携を開始する。さらに、今後のXR領域の発展に向けた取り組みを推進

JR東日本との連携により、リアルの駅空間でXRの世界観を体験できるスペースを造成することも予定している。リアルとバーチャルの融合を加速させ、両方のユーザーの往来を活性化しクライアントにバーチャル上での広告展開と販売機会の提供を行っていく。例えば、リアル空間に出稿した駅広告がバーチャル空間ではよりダイナミックに表現されたり、バーチャル空間で購入した商品がリアル空間でシームレスに受け取れたりと、JR東日本だからこそ実現できる新しい日常の創造を目指す。

VAW開業時には、ほかにも以下のような様々な展開を予定している。

山手線31番目の駅「シン・秋葉原駅」

日本を代表する「ヒーロー」4作品によって構成された企画「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」(SJHU)とコラボレーションし、コラボ期間中はバーチャル秋葉原を「シン・秋葉原駅」と呼称。バーチャル空間上にVAWオリジナルデザインのグラフィックと各キャラクターが登場し、来場者を出迎える。

秋葉原駅(リアル)に、バーチャル空間への「ゲートウェイ」設置

秋葉原駅改札内の1F改札内イベントスペースに、「VAWゲートウェイ」を期間限定で設置。中央のLEDパネルにはVAWの期待感を高める動画が流れ、横に設置されたQRコードからVAWへアクセス可能となる。設置期間は3月25~31日。

利用者同士のコミュニケーションスペース 「オフ会ルーム」

VAWの機能として、入場者同士がコミュニケーションを取れる空間「オフ会ルーム」を実装する。仲間とルームを作成したり、オンラインの飲み会の代わりとしてVAWで集合したりと、リアルで集まっているかのような感覚が味わえる。

VAW内の機能拡充とともに、限定入場券をNFTで配布する計画も

VAWは、機能を拡充し、限定入場券をNFTで配布するほか、来訪者同士の交流の深度化やイベントの活性化を図るという。将来的にはバーチャル空間内でのお買い物体験や、購入した商品を駅で受け取れるなど、リアルのサービスとの連動によるこれまでにない体験の実現を目指すとしている。

画像クレジット:
©TTITk「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」コラボ VAWオリジナルキービジュアル

【コラム】メタバースで優先されるべき課題は「責任あるAI」

最近のBloomberg Intelligence(ブルームバーグ・インテリジェンス)の調査によると、メタバースには8000億ドル(約92兆円)の市場規模があるそうだ。実際にメタバースとは何なのか、ということについては、多くの人が議論しているところではあるが、これだけの金と好奇心に取り巻かれているものだから、誰もが話題にしたがるのも当然だろう。

メタバースではAIが、特に私たちが他者とコミュニケーションを取る際に、重要な役割を果たすことは間違いない。私たちはこれまで以上に他者とつながりを持つようになるだろうが、政府や規範、倫理規定に縛られないAIは、邪悪な影響をもたらす可能性がある。元Google(グーグル)CEOのEric Schmidt(エリック・シュミット)氏が最近問いかけたように「誰がルールを決めるのか?」ということだ。

AIの影響を理解する

AIアルゴリズムは、偏向のある人間によって作られるため、作成者の思考パターンや偏見に従うように作られることがあり、しかも、それが増殖していくことがある。AIが性差別を生み出す、例えば、女性よりも男性に大きなクレジットカードの限度額が与えられたり特定の民族がより不当な差別を受ける傾向にあることは、我々がこれまで見てきたとおりだ。より公平な、繁栄するメタバースを作るためには、偏向を生み出し、それを永続させるダークなAIのパターンに対処する必要がある。しかし、誰がそれを決定するのだろう? そして、人間はどうやって偏向を回避できるのだろうか?

この「野放しのAI」を緩和するための解決策は、すべての組織で倫理基準を策定することだ。私たちの見解では、ダークAIのパターンは侵略的になる可能性が高い。ほとんどのAIは倫理的な監視なしに開発されているが、メタバースではこれを変えなければならない。

AIをメタバースにおけるメッセージの翻訳に活用する

私は、1人の熱心な語学学習者として、また、AIと人間を使って人々をグローバルにつなぐ会社の創設者として、誰もが複数の言語を話すスーパーポリグロットになれるという可能性に胸を踊らせている。だが、さらに興味があるのは、そのAIがどのように機能するかを理解することだ。

メタバースでは、多くのユーザーが各々の言語でコミュニケーションすることになるだろうが、AIによる言語翻訳が利用できる可能性もある。しかし、AIを使った言語テクノロジーは、我々が注意しなければ、偏向を永続させてしまうおそれがある。その言語AIが、倫理的であるようにきちんと訓練されていることも、確認する必要がある。

例えば、ジョーのアバターがミゲルのアバターと話したがっているが、ジョーとミゲルは同じ言語を話さないという状況を想像してみよう。AIは彼らのメッセージをどのように翻訳するのだろうか? そのまま言葉を直訳するのだろうか? それとも、文字通りに訳すのではなく、メッセージを受け取った人が理解できるように、その人の意図に沿った翻訳をするのだろうか?

人間と機械の境界線を曖昧にする

メタバースでは、いかに私たちが「人間的」かということが重要になるだろう。企業は言語テクノロジーを使って、会話を異なる言語にすばやく翻訳することで、オンラインコミュニティ、信頼、インクルージョンの創出に役立つことができる。

しかし、私たちが選ぶ言葉に気をつけなければ、テクノロジーは偏見を生み、不作法な行動を許すことにもなりかねない。どのようにかって?あなたは3歳児がAlexa(アレクサ)に話しかけているのを聞いたことがあるだろうか?それはとても「感じが良い」とは言えない。人は、自分がやり取りしている相手が本物の人間ではなくテクノロジーであるとわかると、礼儀正しくする必要を感じなくなる。だから顧客は、チャットボットやAmazon(アマゾン)のAlexa、電話の自動応答などに対して失礼な態度を取るのだ。それはさらにエスカレートしてしまう可能性がある。理想とする世界は、言語のためのAIが、人間を正確に表現するために必要なニュアンスや共感を捉えるようになり、それによってメタバースが人間とテクノロジーがともに栄える場所となることだ。

メタバースの非人間的なAIは、ネガティブにもなりかねない。適切な言語は、リアルで感情的なつながりと理解を生み出すことができる。AIを活用した言語運用によって、適切なメッセージはブランドを人間的に感じさせるために役立つ。ブランドが瞬時に多言語でコミュニケーションできるようにするための技術は、極めて重要なものになるだろう。顧客の信頼は母国語によって築かれると、私たちは考えている。しかし、ボーダーレスでバーチャルな社会は、どうやって母国語を持つことができるだろうか? そして、そんな環境は、どうやって信頼を生み出すことができるのだろうか?

先述したとおり、メタバースは企業にとって、バーチャルな世界で露出を増やすことができる大きな可能性を秘めている。人々はすでにバーチャル・ファッションにかなりの大金を投じるようになっており、この傾向は間違いなく続くだろう。ブランドは、実際に会って交流するよりも本物らしい、あるいはそれ以上に魅力を感じられるような、オンライン体験を作り出す方法を見つける必要がある。これは越えるのが大変な高いハードルだ。スマートな言語コミュニケーションは、そのために欠かせないものとなるだろう。

メタバースが最終的にどのようなものになるかは、誰にもわからない。しかし、AIがある集団に他より過度な影響を与えたり、AIが自社製品の人間性を失わせた、なんてことで記憶される企業には誰もなりたくないはずだ。AIは良い意味でパターンを予測する能力がどんどん向上するだろう。しかし、野放しにしておくと、AIはメタバースにおける私たちの「生き方」に深刻な影響を与える可能性がある。だからこそ、責任あるAI、倫理的なAIのための倫理が必要なのだ。

AIが、言語やチャットボット、あるいはブランドの仮想現実に多用されていくと、それによって顧客が信頼や人間らしさの感情を失う機会も増えるのだ。私たちがメタバースで平和に「生きる」ことができるように、AIの研究者や専門家が企業と協力して、責任あるAIの枠組みに解決を見出すことが求められている。

編集部注:本稿を執筆者Vasco Pedro(ヴァスコ・ペドロ)氏はAIを利用して人間が編集を行う翻訳プラットフォーム「Unbabel(アンバベル)」のCEO。

画像クレジット:japatino / Getty Images

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(文:Vasco Pedro、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アニメーションと音声で写真に生命を吹き込む、MyHeritageとD-IDが提携し故人が話す動画が作成可能に

2021年、家系調査サービスのMyHeritageが、故人の顔写真を動画化できる斬新な「ディープフェイク」機能を導入して話題になった。TikTokのユーザーたちはいち早くその技術に反応して、動画を投稿し、自分が会ったこともない親戚やまだその死を悲しんでいる故人を蘇らせて、「ディープノスタルジア」と呼んだ。今日まで、1億枚以上の写真がこの機能で動画になった。そしてその機能が進化した。米国時間3月3日、MyHeritageはパートナーのD-IDとともに「ディープノスタルジア」を拡張した「ライブストーリー」機能をローンチした。写真の人物を生き返らせるだけでなく、彼らに話をさせるのだ。

MyHeritageが技術をライセンスしたD-IDはテルアビブのスタートアップで、AIとディープラーニング利用した再現動画の技術で特許を取得している。

D-IDの技術は、APIを通じて開発者に提供され、メディア、教育、マーケティングなど、さまざまなライセンシーに利用されています。例えばWarner Bros.(ワーナー・ブラザーズ)は、D-IDを利用して、ユーザーが映画の予告編をアニメーション写真でパーソナライズできるようにしたり、ハリー・ポッター展のために協力した。Mondelēz International、広告代理店のPublicis、Digitas Vietnamは、地元の祭りのマーケティング活動でD-IDと提携している。インドの短編動画アプリJoshは、顔アニメーションの技術をクリエイティブツールとして統合した。また、非営利団体や政府も、さまざまな啓発キャンペーンにこの技術を利用している。

MyHeritageは、こライブストーリーでD-IDの最新AI技術をユーザー向けに利用している。この機能を使うためには、ユーザーはまず無料でMyHeritageのアカウントを無料で作成することができ、その技術を何度か無料で試用できる。その後は、有料のサブスクリプションでライブストーリーを無制限に利用できる。

本技術で先祖の人生を物語にしたり、それを本人に語らせることもできる。それを可能にするのが、D-IDの特許取得技術Speaking Portrait Technology(肖像発話技術)だ。アップロードされた写真をもとにナレーション入りの動画を作り、それを合成音声生成装置にかける。語られるストーリーは、ユーザーが提供したテキストだ。

 

言葉と唇の動きが同期するためにD-IDは、人が話している動画のデータベースでニューラルネットワークを訓練した。言語は、どんな言語でもよいというが、MyHeritageは10種ほどの方言や、性による声の違いを含む31言語をサポートしている。

D-IDの共同創業者でCEOのGil Perry(ギル・ペリー)氏によると「優秀な技術であるためドライバービデオは不要です」という。つまり、本物の人物の動きを動画で撮影し、それを静止画像にマップする処理は不要だ。「テキストと写真があれば、その人が話している動画ができ上がります」という。「ただし、まだ完璧な技術ではありません。現状は、本当に良質なリップシンクらしいものを作ったにすぎません」とのこと。

そうやって作成されたライブストーリーは、それを見たり、友だちと共有したり、ソーシャルメディアに投稿することができる。テキストを編集し、さらに話をカスタマイズし、別の声を選んだり、自分が録音したオーディオをアップロードしてもいい。

画像クレジット:D-ID

D-IDの長期的な展望は、この技術をメタバースの環境で使うことだ。メタバースであれば顔だけでなく、デジタルアバターを動画にできるし、体全体の動きを3Dで表現できる。ペリー氏はユーザーが自分の幼児期や家族、歴史的人物の写真をアップロードして、それらをメタバースで動かし、会話をさせることもできると考えている。

「子どもたちがAlbert Einstein(アインシュタイン)と会話して、彼の話を聞いたり、彼に質問したりすることもできるでしょう。しかも彼は疑問に答えてくれます。さらにユニバーサル翻訳であれば、アインシュタインはユーザーの母国語で会話することもできるはずです」。

もちろんそんな技術は何年も先のことだが、実現するとすれば、それらはディープノスタルジーやライブストーリーのような、今日開発したコンセプトに基づいて作られることとなる。

MyHeritageとD-IDはそれぞれ、この技術を別々のやり方でデモする独自のアプリを世に送り出す。D-IDによると、それは数週間後だという。

MyHeritageのライブストーリー機能は本日、米国時間3月3日、家族史テクノロジーのカンファレンスRootsTechで発表された。デスクトップとモバイルウェブ、MyHeritageのモバイルアプリで利用できる。

MyHeritageの創業者でCEOのGilad Japhet(ギラッド・ジャフェ)氏は、ライブストーリーのローンチに関する声明で次のように述べている。「最新機能で、MyHeritageは今後もオンライン家族史の世界をビジョンとイノベーションの両方でリードし続けることになります。AIを利用して歴史的な写真に新しい命を吹き込むことはユニークな機能であり、何百万もの人が先祖や愛する故人との感情的な結びつきを掘り起こし一新することができます。家系の本質は家族史の表現と保存にあり、私たちは世界に向けて家系の楽しさと魅力を伝えていきたい」。

D-IDは、Sella Blondheim(セラ・ブロンドハイム)氏とEliran Kuta(エリラン・クタ)氏が創業。現在、チームは32名で今後は米国や英国、シンガポール、そしてイスラエルでそれぞれ現地の人数を増やし、社員数を倍増したいと考えている。

画像クレジット:D-ID

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

すみっコぐらしがメタバース化、エンタメ特化型メタバースVARKがすみっコ世界に飛び込めるイベントを3月23日から開催

すみっコぐらしがメタバース化、エンタメ特化型メタバースVARKがすみっコ世界に飛び込めるイベントを3月23日から開催VARKは3月1日、エンターテインメント特化型メタバース「VARK」において、イベント「すみっコぐらし~いっしょにすごそうまほうの島~」を開催すると発表した。サンエックスよりライセンス許諾を受け、イマジニアと共同で実施する。開催期間は、3月23日11時から9月30日17時まで(予定)。VRチケットは、VARKアプリ内で購入できる。

同イベントでは、VARKアプリ内に出現する「まほうのとびら」をくぐることで、ユーザーの姿が「ほこり」のキャラクターになり、「すみっコぐらし島」に遊びに行くことができる。キャラクターたちが住む世界に飛び込む感覚を得ながら、各エリアではすみっコたちと触れ合える様々なイベントが展開される。

VR空間内にアクセスするためには、VR用デバイスMeta Quest2が必要。またVARKアプリ(Android版iOS版)を利用することで、VRヘッドセットがなくてもすみっコぐらし島を体験可能。各施設への入場は有料だが、無料で楽しめる体験エリアも用意されている。

すみっコぐらし島。VARKの広場から「まほうのとびら」をくぐるとすみっコぐらしの世界に入ることができる

すみっコぐらし島。VARKの広場から「まほうのとびら」をくぐるとすみっコぐらしの世界に入ることができる

喫茶すみっコ。BGMが流れる店内で食事を注文。すみっコたちと喫茶空間を楽しめる

喫茶すみっコ。BGMが流れる店内で食事を注文。すみっコたちと喫茶空間を楽しめる

キャンプ。キャンプファイヤーを囲んで「ぺんぎん?」が奏でるアコーティスティックギターの音色を楽しんだり、特別なイベントに参加できる。

キャンプ。キャンプファイヤーを囲んで「ぺんぎん?」が奏でるアコーティスティックギターの音色を楽しんだり、特別なイベントに参加できる

バーチャル空間のイメージは、公式サイトおよびVARK公式Twitterにて順次公開予定。

ファッションデザインと制作の合理化を目指すCalaの新しいモバイルアプリ

ニューヨークを拠点とするCala(カラ)は、ファッションデザインと制作のための新しいCalaモバイルアプリのローンチを発表した。企業やインフルエンサーにデジタルファッションデザインのインターフェースを提供する同社は、新しいアプリは製品制作とサプライチェーン管理のプロセスを合理化するために設計されたものだという。

2016年に立ち上げられたCalaは、コラボレーション、デザイン、製造などを可能にしながら、ファッションブランドや小売業者に、ファッションデザインとサプライチェーンのプロセスの各ステップを助けるオールインワンプラットフォームを提供することを目指している。Calaのパートナーネットワークには13カ国60以上の工場が含まれており、顧客はニーズにあうメーカーと繋がることができる。

Cala の CEO で共同設立者のAndrew Wyatt(アンドリュー・ワイアット)氏は TechCrunch のインタビューで、ファッション業界の製品作成プロセスはスケッチから始まることが多いが、このステップ以降は、開発と生産に関わるすべてがモバイルで行われると語っている。同社は、開発・生産プロセスをより迅速かつ容易にすることを目的として、新しいアプリをリリースするとのことだ。Calaの新しいアプリでは、ユーザーがデザインやコレクションを見たり作成したりできる他、デザインのインスピレーションをアップロードして文脈に応じたコメントを追加できるツールも含まれている。また、コメント、写真、ファイルの添付により、チーム間でアプリを通じてコミュニケーションをとることができる。また、アプリには通知センターがあり、重要な情報のみを表示し、ユーザーに多数の通知を浴びせないように設計されている。

「このアプリのターゲット層は、ファッションブランドで働く人たちです」と、ワイアット氏は語った。「年間10万ドル(約1148万円)以上の商品を扱っているブランドにフォーカスしています。私たちは、3-5人のチームでも、50人のチームでも、サプライチェーンをより効果的に運営する手助けができます」。

この新しいアプリケーションは、Apple App Storeでダウンロードできる。ワイアット氏は、Cala のモバイルウェブユーザーの80%以上がAppleデバイスを使用していると指摘し、それが iOSの発売を優先させた理由であると述べた。同社は、Androidでもこのアプリを提供する予定だが、現時点では、そのスケジュールは未定であると述べている。

画像クレジット:Cala

米国時間3月1日の発表の中で、Calaはデザインプロセスに3Dプロトタイピング機能を追加することも明らかにした。この新機能により、ユーザーはデザインの3D画像をリクエストすることで、フィット感や素材感をリアルに確認することができるようになる。Calaによると、この機能はサンプルを注文するよりも時間的に効率的な代替案として機能し、またデザインの最終決定にも役立つという。

「世界は間違いなく、3Dデザインとオンデマンド生産の世界に向かっており、我々はその最前線に立つことができると思っています」と、ワイアット氏は語った。「また、私たちには、物理的な製品を購入すると、metaverse(メタバース)で使用できるデジタルツインが手に入るという明確な未来が見えています。これが、私たちが3Dデザインを学んでいるもう1つの理由です。現在、3Dデザインは時間の節約になり、ブランドが開発面でより持続可能なものになるのに役立っています」。

Calaは、発売当初、オンデマンドのカスタムフィット3Dボディスキャンシステムで市場への進出を果たした。ワイアット氏によると、それ以来、Calaはファッションブランドの中核的なサプライチェーンパートナーであることに重点を置くようになり、ここ数年、小規模なファッションブランドやインフルエンサーと協力して、テクノロジーを使って物理的な製品を作り、顧客に販売するプロセスを合理化するソリューションを作り始めた。

Calaの直近の資金調達ラウンドは2020年7月で、Maersk Growth(マースク・グロース)とReal Ventures(リアル・ベンチャーズ)の共同主導で300万ドル(約3億4400万円)のシードラウンド拡張を実施した。同社は2018年にReal Venturesが主導する最初のシードを行った。この2つのラウンドにより、同社の資金調達総額は700万ドル(約8億400万円)に達した。

画像クレジット:Cala

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

ザッカーバーグ氏、音声コマンドでバーチャルワールドを作るデモを披露

Meta(メタ、旧Facebook)は、音声コマンドだけでバーチャルワールドでモノをつくったり、持ち込んだりできるAIシステムのプロトタイプを披露した。同社は「Builder Bot(ビルダー・ボット)」と呼ばれるそのツールを、メタバースの中で新しい世界を作るAIの可能性を見せるための「実験的コンセプト」だと考えている。MetaのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、米国時間2月23日に行われたイベント「Meta AI:Inside the Lab(メタ・エーアイ:インサイド・ザ・ラボ)」で、事前録画されたデモを通じてそのプロトタイプを紹介した。

動画内でザッカーバーグ氏は、バーチャルワールドのパーツを組み立てるプロセスを、実際にやりながら説明した。彼は「let’s go to a park(公園へ行こう)」というプロンプトから始めた。するとボットが、緑の草原と樹木のある公園の3D風景を作る。ザッカーバーグが「actually, let’s go to the beach(では、砂浜に行ってみよう)」というと、ボットは現在の風景を砂と水からなる新しい風景に置き換える。次に同氏は雲を追加したいと述べ、すべてAIが生成していると説明した。そしてザッカーバーグ氏は、ひつじ雲のほうがいい、と言って風景を変えた。これはボイスコマンドが具体的な指示を出せることを示すためだ。

 

彼が海の上の特定の場所を指して「あそこに島を作ろう」というとボットが島を作った。続いてザッカーバーグ氏は、木々とレジャーシートを追加するなどいくつかのコマンドを発した。さらにカモメとクジラの音も加えた。ある時彼は、水中翼船まで追加した(彼のお気に入りのホビーの1つで、流行語にもなった)。

ビデオ全体を通じて、Builder Botはボイスコマンドを使って3Dオブジェクトを作り、風景に配置しているように見えた。Metaはプロトタイプを発表したブログ投稿で、このツールは「メタバースの創造性を加速します」というが、技術の詳細は明らかにしていない。

画像クレジット:Meta

この技術が成功すれば、他のVRワールドやプラットフォームにも影響を与える可能性がある。例えばゲームプラットフォームのRoblox(ロブロックス)は、 最近音声機能のテストを開始し、独自の開発プラットフォームを提供している。いつかこうした会社が、Metaのプロトタイプで見られたようなテクノロジーを導入して、世界を創造する同じような体験を実現すればおもしろい。

しかし現段階は、Builder Botの作る世界は、外観も機能もかなりシンプルだ。また、コマンドを声に出してオブジェクトを呼び出すのは最初は楽しいかもしれないが、もっと複雑な3D環境を作る方法としてスケーラブルな方法とはいえない。どちらかといえば、子どもがバーチャルワールドを作る入門レベルの練習場所として楽しいかもしれない(しかし、残念ながらMetaはすでに、同社のバーチャル環境が子どもにとって安全な場所ではないかもしれないことを証明している)。

Metaによるこのプロトタイプの発表は、同社がメタバースに数十億ドル(数千億円)を投資している中の出来事だ。2022年2月初め、MetaはReality Labs(リアリティー・ラボ)部門の財務状況を初めて発表し、2021年100億ドル(約1兆1500億円)以上の赤字だったことを明かした。2022年も損失は増えるばかりと予測していると同社が述べているところを見ると、Metaにはメタバースを作るためにつぎ込む無限の資金があるようで、他の小さな会社より先に成功する時間は十分あるに違いない。同社のメタバースへの莫大な投資は、今後も我々はメタバースを宣伝するためのプロトタイプをたくさん見るであろうことも示唆している。

真の「メタバース」は未だに存在していないが、このバズワードはザッカーバーグ氏とMetaによってこの1年間数多く使われ、2021年の企業ブランド変更のきっかけにもなった。ザッカーバーグ氏は以前、メタバースについて投資家に次のように説明した。「デジタル空間で人々とともにいられるバーチャル環境です。それは見ているだけではなく自分がその中にいる、一種の具現化されたインターネットのようなものです」。

Metaは同日のイベントで他にもいくつか発表を行った。AIを利用したチャットボットAIシステムカードツール、および and a 万能音声翻訳機だ。この翻訳機は話し言葉が主のものを含むあらゆる言語の同時通訳を行うもので、既存の翻訳システムを超えるだろうと同社は言っている。Metaによると、世界人口の20%は、既存の翻訳ツールが対応していない言語を話しており、同社は新しい機械学習技術を駆使してこれを解決する計画だ。

画像クレジット:Meta

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ウェルネスとデジタルサイケデリックのXRプラットフォームTrippが世界最大のVR瞑想コミュニティEvolVRを買収

カリフォルニアに拠点を置く「ウェルネスとデジタルサイケデリックのXRプラットフォーム」、Tripp(トリップ)は買収による成長路線を継続し、世界最大のVR瞑想コミュニティであるEvolVR(エボルVR)を買収した。これは2021年のPsyAssist(サイアシスト)の獲得に続くものだ。PsyAssistは、サイケデリック体験を続けるために使うモバイルアプリである。今回の買収によって同社は、ポケモンGOメーカー、Niantic(ナイアンティック)の新しいツールキットであるNiantic Lightship(ナイアンティックライトシップ)の立ち上げパートナーの一員として、拡張現実(AR)体験に取り組んでいることが明らかになった。

EvolVR(創設者はユニテリアンユニバーサリストの牧師および瞑想インストラクター)は、VRで活動する世界初・世界最大の瞑想コミュニティであると主張しており、4万人を超える人がVRマスクを着けて瞑想に入っているとのことだ。Trippも負けてはいない。同社は、350万を超えるウェルネスセッションを行ってきたと主張している。「瞑想術、フロー誘発ゲーム、バイノーラル音声と呼吸のエクササイズ」を組み合わせて、不可思議な感覚を吹き込み、ユーザーの感じ方を変えるのだ。こうしたセッションは、リラックスと調和に役立つように考案されているが、サイケデリック体験の促進に使用することもできる。

コミュニティを重視する組織を買収して支持者の規模を拡大すれば成長を大きく促進できるが、当然ながら、すべてのコミュニティが「買われる」ことに賛成であるとは限らない。特に、買い手が移行期間に荒っぽいことをすればそうである。TrippのCEO兼創業者であるNanea Reeves(ナネア・リーブス)氏と話して、買収の背景が少しわかった。また、高揚感を得られるVR・瞑想・スピリチュアリティ・サイケデリックのマッシュアップとして次に来るものを知ることもできた。

Trippという名前について尋ねないわけには行かなかった。名前の由来は?サイケデリックとの関係は?

「体験としては、サイケデリックというよりVRです。Oculusの開発キットが初期段階の頃、誰もが四六時中VR体験をしていました。ヘッドセットを外して、『すごい、まさにTrippだ!』と言ってました。ある現実があってそれに気づくという体験をして、それから別の現実も体験することには、何かがあります。もちろん、薬物を使ってもそういう体験はできますが、VRにはそれ自体にそういうメカニズムがあります。そこから名前がひらめきました」とリーブス氏は説明している。

TrippのCEO兼創業者ナネア・リーブス氏(画像クレジット:Tripp)

「先方が当社のサイケデリックな面について知ったのは、当社が消費者向け製品を発売した後でした。私たちがしていることにサイケデリックコミュニティから大きな関心が寄せられ、ケタミンを使うクリニックなどでは当社の消費者向け製品がオーガニックな方法で採用されていることがわかりました。私たちは、それを臨床分野への進出の機会と見ることにしました。(苦痛緩和ケアやサイケデリック療法において)臨床展開に取り組む方法はいくつかあると思います。不安を和らげる治療に備える方法や治療後のサポート方法に大いに力を入れていきたいと思います」。

「当社には、別の取り組みと、サイケデリックなメンタルヘルスの手順を対象としたPsyAssistというアプリケーションバンドルがあります。当社はこれらの分野で支援を行うことができます。2022年の前半に、現時点ではケタミン限定のパイロット試験をいくつか行う予定です」。

「私たちと消費者の最も意味深い関わり合いのいくつかは、人生の終わりに臨んで当社の製品を使用する人との関わり合いであることがわかりました。そうした人にメリットがあった、つまり自分が身体的に経験していることから気持ちを紛らすことができたというだけではありません。家族や世話をする人も、Trippの体験を通してストレスを解消できました。当社のツールキットやアプリがさまざまな点でどのように役立ったか報告してくれるユーザーのフィードバックを見ると、起業家としてそれ以上求めるものはありません。努力によって実際に人々の状況が良くなっていることがわかるからです」。

EvolVRの買収

同社はMayfield(メイフィールド)が取りまとめたラウンドで400万ドル(約4億6200万円)を調達し、その後2021年6月にサイケデリックライフサイエンスを重視する投資会社Vine Ventures(バインベンチャーズ)とMayfieldが取りまとめたラウンドで1100万ドル(約12億7000万円)を調達した。同社は、変革的な体験を実現するために臨床分野とコミュニティ構築を並行して追求することを計画している。EvolVRの買収は明らかに、その課題の中のコミュニティ分野である。

Trippは、2022年の終わり頃にAR製品を発売するために、ナイアンティックライトシップのプラットフォームに取り組んでいる(画像クレジット:Tripp)

「私は、EvolVRのコミュニティについていくつか気づいたことがあります。私はよくVRで人に会っていましたが、彼らはJeremy(ジェレミー)[Nickel(ニッケル)氏、EvolVRの創設者]の話をずっとしていることがよくありました。それがアバターのグループでの瞑想を強制することになるとは思いませんでしたが、私は続けて、特にパンデミックの時期に彼らの瞑想をいくつか試してみました。彼らが案内付きの瞑想体験をしているのが気に入りました。私と一緒に瞑想体験をしている別の人がいるのを感じました」とリーブス氏は説明している。「Electronic Arts(エレクトロニックアーツ)にいたとき、私はゲーム中毒のコミュニティの状況や、彼らが女性に優しくないことがわかりました。EvolVRでは、瞑想グループのリーダーが安心できる場を作っているのがわかりました。彼らは、私が良い印象を受けるようにグループをリードする方法を心得ていました。誰かが煽っても、効果はありませんでした。メタバースが拡大するときも、嫌がらせを無視できる場があることは大切です。私たちは、そうした配慮の行き届いた落ち着ける場を作って、自分自身と他の人とのつながりを深めるお手伝いができます」。

「ジェレミーと私は(買収を)内密にしてきました。彼は、コミュニティの人たちは買収を喜ぶだろうと思っています。私たちは、ジェレミーの14人の瞑想リーダーと意思の疎通を図る必要があります。彼らも私たちの傘下に入るからです。私たちは、配慮の行き届いたメタバースとはどのようなものか、考える努力をしています」。

買収の結果、EvolVRはどう変わるか?

「私はこの買収を記念したいと思っています。2つのコミュニティが一緒になって、アンビエント音楽のDJイベントとローンチパーティーを開くことを考えていました。私たちは、本当にクールなことをしようと思ってわくわくしています」とリーブス氏は語る。「プログラミングの観点からは、単なるグループ瞑想の枠を超えたいと思っています。サウンド入浴を手がけたいと考えています。呼吸法も手がける予定です。アンビエント音楽の『エクスタティックダンス』で体を動かすイベントを行う方法についてアイデアがいくつかあります。VRの抽象的な概念を使ってコミュニティとの調和をサポートするすばらしい機会があります。VRの申し分のない使用事例です。不名誉なことは避けて、自分の家でこっそりできます。きまりの悪い思いをすることはあまりなく、それでいてメリットがあります」。

Trippのプラットフォームを試してみた。慣れるのに少しかかりますが、とてもリラックスできる。写真は私ではない(画像クレジット:Tripp)

「(Trippの)支持者の幅広さにとても満足しています。私たちの支持者の大多数はミレニアル世代で、X世代がとても大きな2番目の世代です。支持者の約8パーセントは65歳以上です。VRはまだ共有のデバイスで、家族全体で使われています。例えば宿題をする前に集中力を高めるのに役立つよう子どもにTrippを使わせているという声もあります。ゆくゆくは、ほとんどの人がデータに対応したヘッドマウントディスプレイを使うようになることを期待しています。理想では、感情的な健全性を管理するお手伝いをしたいと思っています。そこから、依存症ケアや苦痛緩和ケアのような使用事例を対象にすることができます。実際のところ、主なメリットは、その時その時の感じ方に力を作用させるのに役立つということです」。

「音声だけの現行世代の瞑想アプリで、人々はますます快適に解決策を探していると思います。それを次のレベルに持っていくお手伝いができると思います。そうすれば、そのレベルのあり方を体験できます。私の目標を挙げるとすれば、必要な時に利用できるセルフケアの決まったツールキットを継続的に提供することです」。

今回の買収は現金と株式の組み合わせだったが、Trippは取引の詳細を開示していない。

画像クレジット:Tripp

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

メタのVRプラットフォームHorizon Worlds、2021年12月正式公開から月間ユーザー数が10倍の30万人に

MetaのVRプラットフォームHorizon Worlds、2021年12月正式公開から月間ユーザー数が10倍の30万人に米Meta(メタ:旧Facebook)のVRプラットフォーム「Horizon Worlds」が、昨年12月から月間ユーザー数が10倍の30万人にまで成長していることが、海外テックメディアのThe Vergeによって報告されています。

2021年10月に社名の変更と、VR技術を活用した「メタバース」への注力を発表していたMeta。またこれにともない、VRヘッドセット/プラットフォーム「Oculus」もMetaへと変更されています。

またMetaは2019年から、3DアバターによるVR「Facebook Horizon」をベータ版として展開していました。さらに昨年12月上旬からはアメリカとカナダにてHorizon Worldsとして、正式にサービスをローンチしています。

そして同社チーフプロダクトオフィサーであるChris Cox(クリス・コックス)氏によれば、Horizon Worldsの月間ユーザー数は現在は30万人まで拡大しているとのこと(Horizon Workroomsは含まない)。またそのワールドも1万個作成され、クリエイター向けフェイスブックグループは2万個以上に増えていることも報告されています。

Horizon Worldsでは先日、パーソナルスペースを強化しハラスメントを防止する機能が導入されました。また2022年後半には、Horizon Worldsをモバイル向けに展開することも明かされています。

ベータ版が終了し公式サービスになったことでのユーザー数の増加も加味する必要はありそうですが、それでもMetaによるメタバースへの取り組みは、一部では好調は滑り出しをみせているといってよさそうです。

(Source:the VergeEngadget日本版より転載)

自らもメタバースの住人で専用デバイスも開発、Shiftall岩佐氏に聞く「メタバース周りの現状」

Shitallは2022年1月、CESでVRヘッドセット「MeganeX」、ウェアラブル冷温デバイス「Pebble Feel」、メタバース対応音漏れ防止機能付きマイク「mutalk」を発表した。

「メタバース」というキーワードが飛び交っている。デジタルにおける新たなフロンティア、コロナ禍で閉鎖的な現在を生活的にもビジネス的にも変えてくれるかもしれない「メタバース」に大きな注目が集まっている。

Facebookが社名を「Meta」に変更し、メタバースという単語をちりばめることでアピールする新サービス、アプリが昨秋以降、急増していく中で、2022年春における「実際のところ」はどうなのだろうか?

作りたいものを作る!Shiftall(シフトール)のCEO岩佐琢磨氏は、新卒でPanasonicに勤めていたが、独自製品をスピード感を持って開発したいという想いを持って同社を退職。ハードウェアスタートアップCerevoを立ち上げた。

先に開催されたCESでも新製品を発表し、理想や概念ではなく実務として「メタバース」に取り組んでいる​​岩佐琢磨氏。

「当事者」である岩佐氏に、日本そして海外でのメタバースの現状やShiftallがそれにどのように関係してくるのか。また、考えるメタバースの楽しさ、ビジネス、将来について話を伺った。

日本と海外でのメタバースに対する温度差

2018年に、PCレス、ゴーグル単体でVRを楽しめるOculus Goが発売され、2019年に6軸センサー搭載のOculus Quest、2020年にその後継モデルとなるOculus Quest 2(現MetaQuest)が発売されても、一部の人たちを熱心なユーザーは生んだものの、それ以上、一般層にまで浸透しなかったVR。

しかし、Questを販売しているFacebookが、社名をMetaへ変更され「VR」ではなく「Metaverse(メタバース)」という言葉が使われ始めてから、ITと親しいウェブメディアだけでなく、マスメディアでも取り上げられるようになり、盛り上がっている。

そのような状況において、2022年1月に米国で行われた世界最大級の電子機器の見本市CESに参加した岩佐氏は「メタバース関連のアイテムに、あまり盛り上がりが見られなかった」という。

「例年、多くのブースを出す中国から企業が参加できなかった点が大きい。また、メディカル分野のスタートアップが多い韓国からの出展が多かったことなどから、ヘルステックやメディテックが目立っていました。メインはオートモーティブ関連の出展でした」。

国内の報道を日常的に見ていると「メタバース関連がメインではないのか」と感じてしまうが、岩佐氏は「例年に比べて、VRやAR関連の出展は増えていたけれども、現地(米国・ラスベガス)はそれほどヒートアップしていませんでした。日本国内と海外で、メタバースに対する温度感の差が激しい印象です」と語る。

メタバース界隈とインターネット黎明期の共通点

メタバースに関する岩佐氏の話で興味深い点は、同氏がインターネット黎明期とメタバースの現状に共通点を見出していることだ。

「今、ごく一部の人たちがVRChatの中でわいわいと楽しく過ごしています。それって国内でインターネット接続が一般化して、ホームページを作って情報を発信するようになった人が登場し始めた1997~98年の感覚に似ています。HTMLタグを駆使してホームページを作って、CGIを組んでカウンター作ったり『キリ番ゲット』などとインターネットというサービスを楽しんでいたときのノリに近いものが、現在のメタバースにはあります」と岩佐氏はいう。

当時、そのノリに対して、周囲から「何が楽しいんだろうか」と冷ややかな目がよせられることもあったが、現在、メタバース世界を楽しんでいる人たちに対する目もそれに近いものがあるという。

やがて、ホームページをWYSIWYGで作れるホームページ・ビルダーが登場し、わざわざホームページを作らなくても簡単にブログを始められる仕組みが生まれ、女子高生たちはかわいらしいアバターをアメーバピグの中で作っていくようになる。

そしてYouTube、Instagram、ブログ、TikTokなど、人気配信者(ブロガー、ティックトッカーなど呼び方はそれぞれ)が、やがてインフルエンサーと呼ばれ社会に対する影響力が大きくなっていく。

メタバースでも同じように、HTMLタグよろしくBlenderやUnityで手作りしている状況だが、pixivが提供しているVRoid(ブイロイド)のように、マウス操作だけで髪の毛を伸ばしたり、目を大きくしたりできるツールが登場してきており「ワールドすら、近いうちにそれほど知識がなくてもGUIベースで誰もが作れるようになるのではないかと考えている」と岩佐氏は考えている。実際、取材後の2月15日にクラスターは、誰でも簡単に自分の想像したメタバース空間を創造できる新機能「ワールドクラフト」のリリースを発表している。

「ブログから始めて起業したり、有名になった人が生まれたように、メタバース上のワールドを舞台にして人気になり、稼ぐ人が生まれてくるときが来ると思います。すでにその兆しは見えています。堀江さんや三木谷さんが、『これからはホームページでビジネスが回る。数兆円規模の市場になる』と予測したときと同じフェーズに、メタバースもさしかかっています」と岩佐氏はいう。世界を変えるような、次なるビジネスの芽がすでにメタバースの世界に誕生し始めようとしている。

そしてそれを裏づける出来事も生じている。

ShitallのCEO岩佐琢磨氏

調達金額でわかる加速する注目度

2021年、メタバースをめぐる資金調達の流れを振り返ってみたい。中国のVRヘッドセットメーカーPico Technologyが約40億円を調達したのが3月のことだ。Epic Gamesは4月に約1000億円、ソーシャルVRサービスを提供するVRChatは6月に約80億円を調達した。

そして、Pico Technologyは、8月にTikTokを運営するByteDanceに約840億円で買収される。それだけの価値があると認められたわけだ。

岩佐氏は「2021年7月以前と8月以降では、参入してきた人(企業)に変化が見られる」という。

というのも、それまでは多くても調達額は数十億円程度だったが、数百億円、数千億円という話が聞かれるようになったからだ。

Nianticが11月にARメタバースに355億円を調達。VRイベント「バーチャルマーケット」を提供するHIKKYもは2月8日にシリーズAで70億円を調達、12月には韓国ネイバー傘下のメタバースプラットフォームZepeto(ゼペット)が、ソフトバンクグループから約171億円を調達している。すでに、KDDIの資本が入っているクラスターもあり、3大キャリアがそれぞれメタバースに関連した武器を持っている状態だ。「年末近くにはソーシャルVR「Rec Room』が約164億円の調達に成功しています。どうも札束で殴り合いをしているように感じます」岩佐氏はいう。

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メタバースへのアプローチは2種類

岩佐氏が語る「メタバース」は、あくまでも「VRの世界で、コミュニケーションを取るVR SNS」を対象にしている。「『フォートナイト』も『どうぶつの森』もメタバースだと主張する人がいますが、メタバースという言葉が乱用されているのではないでしょうか。他者とコミュニケーションを取るために、VRゴーグルをかぶって入る空間がメタバースだと感じています」。

その上で「『メタバース』に対して2つのアプローチがあることを認識している」と岩佐氏はいう。1つ目がゲームからのアプローチとなる。「他者とコミュニケーションを取れるSNS要素があることを理由に、『フォートナイト』や『Roblox』などは、自分たちもメタバースだと称しています。ゲームをしていない時間でもその空間にとどまれるような工夫もしている、と」。

そして2つ目のアプローチはSNSとなる。「VRChatはSNSからのアプローチ。ゲームもできるけど、バーチャル空間でも現実世界と同じように過ごすことを目指しており、いろいろな試みがなされています。決して朽ちないけれども、もう用済みになってしまった『廃墟』巡りをしたり、誕生日パーティーを開いたり、メタバースの中にお墓を作ったり……。リアルのようでいて、リアルではない楽しさがあります」と岩佐氏は語る。

さらに岩佐氏は「瞬時に世界中の人とつながれるから、国境がないように考えるかもしれないけれど、アバターのデザイン、コミュニケーションの取り方、人との距離などで、国民性が出ます。その様子を見るのも、メタバースの楽しみ方の1つですね」という。

メタバースの世界にいる状態なのに、現実世界においても布団で寝てしまうこともあるという岩佐氏。それほど長くいるのに必要なものをShitallで生み出してきた。次回は「メタバース住民必見」のメタバース向け製品を紹介したい。

HIKKY、5年以内に世界100都市をメタバース化する「パラリアルワールドプロジェクト」発足

大規模VRイベント「バーチャルマーケット」をはじめVRサービスの開発ソリューションを提供するHIKKYは2月17日、5年以内に世界100都市をメタバース化しオープンメタバース上で提供する「パラリアルワールドプロジェクト」の発足を発表した。実在する都市のメタバース化・パラリアル化を通じて、人々の創造力がより一層発揮される社会の実現を目指す。

HIKKYが提唱するパラリアルとは、「パラレルワールド」(並行世界)と「リアル」(現実世界)を合わせた造語で、リアルとメタバースに並行して存在することを指すという。パラリアルワールドプロジェクトでは、現実世界に実在する都市をメタバース上の都市として解釈し直すことで、現実の良さとメタバースならではの表現を両立させ、新たな都市をデザインする。

HIKKYは2021年、渋谷と秋葉原をVRイベント「バーチャルマーケット2021」においてメタバース上で再現した。ここで使われたパラリアル渋谷とパラリアル秋葉原の常設化を皮切りに、2022年度中には大阪とニューヨークをメターバス化してパラリアルの都市として再現する。その後5年以内に世界100都市をメタバース化し「誰もが自由に解釈し、自由に利用できるパラリアル都市」をオープンメタバースの場で提供することを目指す。


メタバース空間への出店、メタバース都市のイベント・広告ジャック

パラリアルワールドでは、パラリアル都市にメタバース店舗を設けることが可能。出店する店舗は、実在の店舗を模したデザイン以外にも、物理法則を無視したメタバースならではのデザインも採用できる。また、都市全体を丸ごとジャックするような超大型イベントについても、機材や時間、人員といった要因にとらわれずに開催可能。

VR法人HIKKY、5年以内に世界100都市をメタバース化する「パラリアルワールドプロジェクト」発足

メタバース観光地とメタバース旅行

物理的な距離の影響を受けないメタバースでは、家から出ずに遠く離れた観光地を訪れることも可能。パンデミックや震災の影響を受けやすい観光業界の支援を目的としているという。

パラリアルワールドの未来

同社は、パラリアルワールドの未来として、メタバース空間上行政手続きを行えるようにすることで移動・行列などから高齢者層など人々を開放することや、どこからでもアクセス可能なメタバースの特徴を活かし教育の地域格差やパンデミック時に失われる教育機会の補填といった教育問題の課題解決を挙げている。