ロシアの検索大手Yandex、メディア事業からの撤退を検討中と投資家に説明

ロシアのインターネット大手Yandex(ヤンデックス)は、同社のメディア製品について「戦略的オプション」を模索していると投資家に語った。その中には、ニュースアグリゲーターのYandex Newsや、ユーザー生成コンテンツの推薦とブログの「インフォテインメント」プラットフォームであるZenの売却の可能性も含まれている。

このディスクロージャーは、米国時間3月16日に報じた、YandexがYandex NewsとZenの売却に向けて協議中であるという情報筋の話を裏付けるものだ。

この動きは、ウクライナ侵攻開始以来、ロシア国家による表現の自由に対する規制が強化されていることによるリスクと関連していると、情報筋は指摘する。この中には、ロシア軍に関する「偽」情報(クレムリンが好む「特別軍事作戦」という表現ではなく、ウクライナでの「戦争」に言及するなど)を流した者に長期の禁錮刑を科す恐れがある新しい法律が含まれている。

Yandexは中央ヨーロッパ時間3月18日、投資家向けの声明の中で、「ニュースアグリゲーションサービスとインフォテインメントプラットフォームのZenについて、売却を含むさまざまな戦略的オプションを検討します」と記している。

「当社は、その他のテクノロジー関連事業および製品(検索、広告、自動運転、クラウドなど)、トランザクションサービス(ライドヘイリング、eコマース、ビデオ / オーディオ、ストリーミングなど)の開発に注力する意向です」と同社は付け加えた。

Yandexの広報担当者は、Yandex NewsとZenの売却について協議中であることを確認した。

「ニュースアグリゲーションサービスとインフォテインメントプラットフォームのZenについて、売却を含むさまざまな戦略的オプションを検討していることを確認します」と同担当者は述べた。

同社はメディア製品の買い手候補について公のコメントを出していないが、内情に詳しい情報筋は先に、ロシアのソーシャルメディア大手VKが有力候補だと話していた。

Yandexは投資家向けの将来予測に関する声明で、売却プロセスが「初期段階にある」ことを示唆し「買い手の特定、許容できる条件の交渉、取引の締結に成功する保証はない」とも投資家に警告している。

オランダに籍を置くロシア企業である同社は、時価総額が68億ドル(約8106億円)だった2月25日に取引を停止している。

画像クレジット:Alexander RyuminTASS / Getty Images(Image has been modified)

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Den Nakano)

ロシアの「グーグル」Yandex、メディア事業から撤退か

プーチン政権はウクライナでの戦争に関するロシア国内の情報共有について締め付けを続けており、その影響でFacebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Twitter(ツイッター)と同じくメディア分野の主要プレイヤーでもあるロシア国内のハイテク大手がメディア資産の再編に着手している。

現地時間3月15日のロシアの報道では、往々にして「ロシアのGoogle」と呼ばれる同国の大企業Yandex(ヤンデックス)がメディア部門の売却交渉に入っており、ロシアのソーシャルネットワーキング大手VKが買い手候補に挙がっていると報じている。

この件に詳しい情報筋はTechCrunch に、ニュースアグリゲータのYandex Newsと、レコメンダーエンジンと連携したブログプラットフォームのYandex Zenを含むメディア部門の売却交渉が「最終段階」にあることを認めている。今後あり得る売却の時期については確認できなかった。Yandexは報道についてのコメントを拒否した。

この噂は、欧州連合(EU)内部でYandexに制裁を加えるよう圧力がかかっている中でのものだ。ニュース部門はすでに、Yandexの主要幹部(現在は元)Tigran Khudaverdyan(ティグラン・フダヴェルディヤン)氏に関連した制裁を通じて、EU規制当局から目をつけられている。

フダヴェルディヤン氏は3月15日、ロシアのウクライナへの正当な理由なき侵攻に関してEUの制裁を受ける個人リストに加えられた。EUは、Yandexのニュース事業の元責任者であるLev Gershenzon(レフ・ゲルセンゾン)氏の告発を引用し、Yandex Newsがプーチン政権のプロパガンダを広める役割を担っていることを強調した(ゲルセンゾン氏は現在ベルリンを拠点としていて、LinkedInのプロフィールによると2013年にYandexを退社している)。

この発表に続いて、今度はYandexから別の発表があった。フダヴェルディヤン氏は、Yandex NV(オランダに本拠を置き、NASDAQで株式公開しているYandexの親会社)の副CEOおよび取締役を退任する(取締役会は、同氏がEUの制裁対象者となったことを知り「ショックを受け、驚いている」と述べている)。

EUは「我々は、政権に実質的な収入源を提供している経済部門に関与しているオリガルヒ(新興財閥)や政権所属のエリート、その家族、著名なビジネスパーソンをさらに制裁リストに追加している」と述べた。「この制裁は、プーチン大統領のウクライナ人に対する戦争にともなう誤情報やプロパガンダにおいて主導的な役割を担っている人々も対象としている。我々のメッセージは明確だ。ウクライナへの侵攻を可能にした者は、その行動の代償を払うことになる」。制裁対象者への罰則は、資産の凍結や欧州への渡航禁止などだ。

フダヴェルディヤン氏が制裁対象個人リストに加えられた理由は2つある。1つは、プーチン政権とその対ウクライナの戦争をほう助したと考えられるYandexと、そのニュース部門の経営監督を行ったこと。もう1つは、2月24日にクレムリンで行われたオリガルヒとロシア高官の会合にフダヴェルディヤン氏が出席し、差し迫った制裁の影響について話し合ったことだ。

Yandex NVは2月25日に取引を停止したが、その時の時価総額は68億ドル(約8110億円)だった。

「ティグラン・フダヴェルディヤンは、機械学習によるインテリジェントな製品とサービスを専門とする、ロシアを代表するテクノロジー企業であるYandexの執行役員だ」と、EUは公式通知で述べている。「Yandexの元ニュース部門責任者は、同社がウクライナでの戦争についてロシア人から『情報を隠すための主要な役割』を担っていると非難した」とある。

EUはまた、Yandexの検索エンジンのユーザーが検索結果に基づいてウクライナに関するより広範なニュースを読むことを抑止しているとほのめかす製品決定にも言及し、こう書いている。「さらに同社は、ロシア政府がロシアメディアの掲載内容に関して脅迫した後、同社の検索エンジンでウクライナに関するニュースを探しているロシア人ユーザーに対して、インターネット上の信頼できない情報について警告している」。

さらに、2月24日に西側制裁の影響について話し合う会議にフダヴェルディヤン氏が出席したという事実そのものが「同氏がウラジーミル・プーチンに近いオリガルヒの内輪メンバーの1人であり、ウクライナの領土保全、主権、独立、またウクライナの安定と安全を損ねたり脅かす行動や政策を支持または実行している」ことを示していると指摘した。

これに加え、Yandexの幹部として、フダヴェルディヤン氏はロシアのテック分野でトップ幹部の1人であり、EUは「クリミア併合とウクライナの不安定化に責任を負うロシア連邦政府にかなりの収入源を提供している経済部門」の1人だと説明している。

フダヴェルディヤン氏が役職から離れることが現実的な動きなのかは明らかではない。同氏はもう国際的に活動できないのか、あるいはYandexがEUの直近の非難から経営陣を遠ざけようとするためにこれを行ったのか。

同社に関してはここ数週間、国際的にさらに孤立するような動きがいくつもある。NASDAQ市場での取引停止に加え、投資家のEsther Dyson(エスター・ダイソン)氏とスタンフォード大学の経済学者Ilya Strebulaev(イリヤ・ストレブラエフ)氏という、国際的に知名度の高い長年にわたる2人の取締役が3月初めに取締役を辞任した。Yandexは、財務的にも制裁の範囲に関しても同社は安全な状態にあると主張している。

いずれにせよ、ニュース事業を完全に切り離すことは、Yandexをすべてのドラマから遠ざける1つの方法といえるかもしれない。

その点では、VKは興味深い買い手となるだろう。VKの創業者 Pavel Durov(パーヴェル・ドゥロフ)氏が会社のトップから追い出されようとしていたときのことを思い出して欲しい。クレムリンにつながる企業が支配するMail.ruがソーシャルメディアのプラットフォームを支配下に置いた後(現在はVKを所有している)、政府がすでにビジネスにおいて強い役割を果たしているとドゥロフ氏が考えたことが内部紛争の一因だった。当時クリミア半島に集中していたウクライナでの紛争勃発が転機となった、とドゥロフ氏は当時述べた。

Yandexは長年にわたり、国際的な事業展開に意欲を燃やしてきた。実際には、ロシア語圏の国々への進出や、トルコでの事業展開が主なものだった。同社は、法律に則って事業を行わなければならないと主張しているプーチンのロシア内で開発されている「中立的」なプラットフォームであるという姿勢を維持しようとしてきた。

しかし、現在のロシアの体制下で、Yandexあるいはどの企業も中立であり続けることができるかどうかは疑問だ。

中立の幻想

オンラインに適用される法的規制には、大規模なニュースアグリゲーターに適用されるメディアライセンス規則が含まれる。つまり、Yandex Newsは国のメディア規制当局が監督する公式登録に記載されたニュースソースしか表示できないため、本質的に「中立」はまだ政府の公式監査人によって認定されたものだ。独立系メディアも、その過程で締め出される。その最新例が、調査報道サイト「Bellingcat」(ウクライナに対する戦争について報道し、プーチンのプロパガンダに長年苦しめられてきた)の国内での禁止だ。

Yandex NewsとZenの売却計画に詳しい情報筋はTechCrunchに、Yandexは5年も前にメディア部門の売却を検討していたと語った。しかし、これらの製品と他のYandexの資産との統合をほどくことの複雑さが、メディア部門からの撤退に向けた動きを先送りした可能性が高いという。

それ以来、プーチン政権はロシアのメディアに対する規制を強化し、2021年はニュースアグリゲーターに外国のメディアソースを「外国のエージェント」とラベル付けすることを要件とするなど、規制強化の動きは明らかだ。

TechCrunchの情報筋によると、ウクライナに関する言論を制限する新しい規制が導入された後、Yandexのこの分野からの撤退の決定が最終的に加速したという。ロシア議会は2022年3月初め、ロシア軍に関する「虚偽」情報を広めたとみなされた人に最高で15年の懲役刑を科すという新しい法律を承認した。

この法律は、Yandex Zenのようなプラットフォームのブロガーに明白なリスクをもたらすだけでなく、テックプラットフォーム自体にも、そのアルゴリズムが制裁対象コンテンツを拡散させていると見なされた場合リスクをもたらす。

RTBが報じたように、Yandexは近年、ニュースの選別アルゴリズムについてロシアの政治家たちから注目されていて、トップニュースの結果に影響を与えたと非難されている(同社は繰り返し否定している)。

Yandexは最近、Zenプラットフォームにいくつかの変更を加えた。おそらく、そうした政治的リスク、そしていまや法的リスクを少なくするための措置で、開かれたオープンインターネットからコンテンツを取り込んでいたオープンレコメンデーションモデルから、購読ベースのコンテンツのみを推薦するように変更したが、これはレコメンデーションによる収入に依存しているブロガーの怒りを買った。

しかし、TechCrunchの情報筋は、Yandexが中立性を主張しながらメディア領域で事業を継続することが実行可能だとはもはや考えておらず、代わりに、メディアの影響をそれほど大きく受けない検索やその他のテックに焦点を当てたサービスに力を注ぐことを示唆した。

「このような規制への対処は、技術的なものだけでなく非常に難しい仕事です」と売却計画に詳しい情報筋は付け加えた。

検索大手の同社は、広告収入からの多角化を図るため、他にもさまざまなサービスや事業を行っている。クラウドやeコマースサービス、翻訳技術、自動運転車技術、さらに配車やフードデリバリーサービスなどだ。

ある人は、Yandexがテックにもっと集中するためにメディアをあきらめ「事業を再構築する方法を再調査」する必要があり、クレムリンの管理強化や対ロ制裁が強まる国際情勢に適応しようとしていると語った。

VKの参入

ロシアのソーシャルメディア大手VKが、Yandexのメディア資産を購入する可能性があると言われている

TechCrunchの情報筋3人はVKがYandexのメディア事業買収を交渉している企業の1社であることを認め、VK内部の情報筋によると、同社は2021年もYandexと取引の可能性を議論していたという。

「2021年、Yandex NewsとZenの買収について議論しました。しかし、Yandexが売却を望んでいるため、今が買収する良い機会です」とこの情報筋は匿名を条件に話した。

別の情報筋は、VKを現時点でのYandex NewsとZenの「最も近い」買い手候補とし「Yandexにとって時間が重要だ」と述べ「数カ月以内に」取引が行われる可能性も示唆した。

TechCrunchは、VKがYandex NewsとZenの買収を交渉しているという噂についてVKに公式コメントを求めたが、本稿執筆時点で回答はない。

VKはすでに、同社の消費者向けソフトウェア製品群の中にニュース製品を持っており、インターネットポータル「Mail.ru」を通じてニュースコンテンツを表示している。

VKの関係者は、Instagram(インスタグラム)がロシア市場から締め出されたことで生じたソーシャル分野の空白でYandex Zenが成長する可能性を指摘し、ビジネスの観点からすれば、欧米の大手ソーシャルメディアへの規制は、トラフィックを獲得できるため喜ばしいことだと述べている。

「我々はロシア、ベラルーシ、および他のロシア語圏の国々で唯一のメディアかつソーシャル(プレイヤー)になりたいのです」と情報筋は付け加えた。

Yandexとは異なり、VKは国際的な事業を拡大する野心を表明しておらず、成長努力を地元市場に集中している(ただし、Yandexが国際的に大きく成長する見込みは、欧米のロシアに対する制裁が強化されるにつれて低くなる可能性がある)。

一方、Yandex検索は、プーチン政権が好まないウェブサイトやアプリをすべてブロックし、ユーザーに提供できるコンテンツを制限できるインターネット規制の下で運営しなければならない(実際、そうなっている)。

例えば2021年9月、Yandexは政府の禁止措置に従うため、獄中のクレムリン批判者Alexei Navalny(アレクセイ・ナヴァルニー)氏が作成した戦術的投票アプリを検索結果から排除することを余儀なくされた。

また、ロシアの裁判所は、Yandexがキーワード検索システムで「スマート投票」というフレーズを使用することを禁止した。つまり、そのフレーズに関連するコンテンツを提案することはできない。だが、Yandexは判決を不服として控訴した。

クレムリンの規制と欧米の制裁がロシア経済に打撃を与え続ければ、技術系人材の流出につながる可能性がある。ITコミュニティは、数千人のテックワーカーが個人的なリスクを冒して最近の公開嘆願書で戦争反対の意志を公にしたように、最も外向きでグローバルなつながりを持つプロフェッショナルの 1 つであることを考えると特にそうだ。

そのため、クレムリンが自国のテック企業に対する業務上の制限をどこまで強化するかという問題がある。強化すれば、企業全体が海外に移ることもあるかもしれない(Telegramの創業者ドゥロフ氏が自身の会社だったVKをロシアに残したように)。

クローンの攻撃

国際的な事業展開を目指すロシアのハイテク企業は、ロシアが世界からますます孤立していく中で、選択肢を考えているに違いない。すでにクレムリンの勢力圏に完全に組み込まれている企業もあれば、制裁によって外国人が残した空白にローカル成長の新たな機会を見出そうとしている企業もある。

1つだけはっきりしていることは、ウクライナでのロシアの戦争が、ロシア国内のデジタル経済のあり方に大きな影響を及ぼしているということだ。

西側諸国は、ウクライナ侵攻を受けてプーチン政権に圧力をかけるための重要な手段として、テクノロジーをターゲットにしている。ウクライナのハッカー集団「IT Army」のような草の根活動が、ロシアの多くの機関や企業のウェブサイトやインターネット事業を組織的に狙ってダウンさせる一方で、米国とEUはロシアの銀行や企業幹部、その他Internet Research Agencyとして知られる悪名高い企業などの団体に制限を加えている。

欧米の制裁ではロシアの決済が崩壊し、サービス撤退を求めるかなりの圧力が強まったため、多くの外国のハイテク大手がロシアから撤退した。

活動の変化の一部は、ロシア自身によって起こった。Facebook、Instagram、Twitterなどの主要ソーシャルメディアプラットフォームは、ロシアのインターネットおよびメディア検閲機関であるRoskomnadzorによってブロックまたは制限されており、プーチン政権はデジタル情報領域に対する支配を強めている。

欧米の大手ハイテク企業に対する制限の必然的な帰結として、そのギャップを埋めるためにロシア企業が参入する機会が生まれるということがある。

例えば、ロイターは3月16日、InstagramのクローンであるRossgram(ロスグラム)が地元の起業家によって立ち上げられ、3月28日に開始予定だと報じた。ロイターは、この構想のPRディレクターがソーシャルネットワークVKontakteに投稿した文章を引用ている。「我々の開発者グループはすでに準備ができており、我々の同胞に愛される人気のソーシャルネットワークのロシア版アナログを作成する機会を逃さないことにした」。

一方、戦略イニシアチブ機関(これ自体はロシア政府が設立した非営利団体)が設立したベンチャーファンドのIIDFは、ロシアから撤退したり、事業を禁止されたりしているサービスを代替したり、真似したりする、すでに存在するか構築されているテックサービスの登録を開始した。この登録は、IIDFのアクセラレータという形で行われているため、そのギャップを埋めるために、新しいスタートアップに資金を提供するプログラムも展開していることが想像できる。

画像クレジット:Lilyana Vynogradova / Shutterstock

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(文:Natasha Lomas、Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

Instagramがロシア国営メディアをシェアしたユーザーに警告、ロシアとウクライナのユーザーのフォローリストを非表示に

Instagram(インスタグラム)は米国時間3月8日、ロシア政府のプロガンダを弱体化し、ウクライナとロシア全体のユーザーのプライバシーを保護する一連の手段を講じることを発表した。

同社は、ロシア政府関連メディアによる投稿のランクを下げる措置を開始した。これらの報道機関の発信した記事は他のニュース源のコンテンツよりも下に置かれるようになる。該当するアカウントから発信された記事をシェアしようとしたユーザーには、ポップアップが表れ「ロシアの国家支配下にあるメディア」を拡散しないようにというメッセージが表示される。

「Instagramは、この投稿を作成したアカウントが部分的あるいは完全にロシア政府の編集管理下にあると確信しています」とメッセージに書かれている。

画像クレジット:Instagram

ロシア国家メディアに関連付けられたドメインを指し示すリンクスタンプのある記事をシェアしようとしたユーザーも同じ扱いを受ける。ロシア国家支配下アカウントのコンテンツは、Instagramがアルゴリズムで収集した発見エリア(リールや発見タブなど)には表れなくなる。検索結果にも表示されない、とInstagramは言っている。

ロシアのウクライナ侵攻に関する国家主導の誤情報拡散を防ぐInstagramによる行動は、Facebook(フェイスブック)の同様の取り組みを追従している。Facebookは、ロシア国家メディアを警告ラベルとランク下げによって埋没させる同様の試みを先週発表した。当時、Meta(メタ)のセキュリティポリシー責任者Nathaniel Gleicher(ナサニエル・グレイチャー)氏は、警告ラベルの付加は「数日以内」に実施すると言っていた。

関連記事:フェイスブックとInstagramがロシア国営メディアの情報拡散を抑制、紛争地域のIGユーザーに暗号化DM提供へ

Instagramは、ウクライナとロシアを拠点とするユーザーの一部に対して、新たなプライバシー対策も実施する。これらの国の個人アカウントは、フォロー中およびフォロワーのリストをプライベートに設定し、友達リストを隠すことが可能になる。実世界の社会的つながりを覆い隠すことで、新たな保護レイヤーが追加される。

以前、InstagramとFacebookの親会社であるMetaは、ウクライナとロシアの成人ユーザー全員に暗号化されたDMの利用を可能にし、コンテンツとアクティビティの一括削除を容易にすると発表した。

関連記事:Instagram、ダイレクトメッセージ暗号化機能をウクライナとロシアで提供

画像クレジット:LIONEL BONAVENTURE / Contributor / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ツイッター、ロシアでのサービス完全復旧を目指す

Twitter(ツイッター)のサービスは引き続きロシアで部分的にアクセス可能だが、同社は米国時間3月7日、同国のユーザーが同社のサービスに「ますますアクセスしにくくなっている」という報道を認識していることを認め、現在調査中で完全なアクセス回復に取り組んでいると明らかにした。

「ロシアでTwitterにアクセスしにくくなっているという報道を承知しています。調査を行っており、サービスへのアクセスを完全に回復するために取り組んでいます」とTwitterの広報担当者はTechCrunchに語った。

ロシア国内のある情報筋は、3月5日からTwitterのウェブサイトにアクセスできなくなったと語ったが、モバイルアプリはまだ使えるとも述べた。

プーチン政権がウクライナ侵攻をきっかけに情報の自由な流れを締め付け続けていて、Twitterのサービスがロシアの通信規制当局Roskomnadzorによってブロックされたとの報道が3月4日にあった。

しかしTwitterはその際、ウクライナ侵攻が始まって以来、そして一部のロシア人が街頭で戦争に抗議した後、同社のサービスに影響を与えているスロットルに対する大きな変化は見られないと述べた

Twitterのラインは現在、部分的なブロックの暗黙の確認に発展している。

ロシアがウクライナでの戦争に関して情報空間の掌握を強化しようとしているのは間違いない。

また3月4日にはロシア議会が、軍に関する「フェイク」情報を報道すると最高で15年の禁固刑に処するという、フリーのジャーナリストを標的にした強硬な新法を可決した

同日、ロシア政府はFacebook(フェイスブック)へのアクセスを遮断すると発表した。これに対しFacebook / Metaの社長であるNick Clegg(ニック・クレッグ)氏は、自社のソーシャルネットワークはむしろ「信頼できる情報」のプロバイダーだという考えを示した。

しかし、クレッグ氏の皮肉な主張は、Metaがプラットフォーム上で広がるロシアのプロパガンダを発見したと発表してわずか数日後に行われた。同社は2月28日、偽情報でウクライナの人々を狙うロシアから操作されるFacebookとInstagramの約40のアカウントページグループのネットワークを取り締まったと発表したが、まさに国家が支援する「協調的な不正な行動」(別名:偽情報)がFacebookでホストされた最新の事例だった。もちろん、白黒はっきりさせることはできない。

(特に悪名高い例として、2016年の米国の選挙を標的としたロシア政府による選挙干渉の大規模な拡散を可能にしたFacebookの広告ターゲットプラットフォームの役割も参照して欲しい)

ウクライナ侵攻後、Facebookはロシア国内で平和を求める人々の声を増幅するためにも利用されてきた。例えば、地元のITワーカーがFacebookを使って反戦の請願書を広め、同国のテックコミュニティから数千の署名を集めることに成功した。

ロシア国内の情報筋によると、ロシアでは3月7日現在、Facebookにまだアクセスすることができる。しかし、Facebookアプリ経由ではアクセスできるが、ウェブではできない。

ロシアのインターネットを世界のインターネットから技術的に切り離し、VPNなどへのアクセスをブロックする(あるいは、ロシア人が.ruドメイン以外にアクセスすることを違法とする)など、より思い切った措置を取らない限り、ロシアが欧米のソーシャルメディアへのアクセスを完全にブロックするというのは疑わしいように思われる。モバイルアプリやVPN、あるいはTorを使用するなど、ウェブドメイン上のブロックに対する回避策があるからだ。

数年前、ロシアのTelegram(テレグラム)アプリをブロックする試みはほとんど失敗に終わったが、これは、モバイルアプリをブロックすることの技術的な難しさの一端を示すものだ。

しかし、ロシア人が外部の情報源に容易にアクセスできる能力を低下させ、一方で電波を国家統制のプロパガンダで溢れさせることは、あまりにも多くの市民に同じような効果をもたらすかもしれない。

ロシア議会が3月4日に採択した強硬なコンテンツ法案は、別のソーシャルネットワークTikTok(ティクトック)が従業員とユーザーに対する懸念を理由に、同国のユーザーが新しいコンテンツを投稿する機能を迅速に停止させるきっかけにもなった。つまり、プーチン政権は、ネット上の物語をよりコントロールするために、複数の手段を用いている。

また、2015年以降、ロシアは国家的なインターネットを構築するプロジェクトに取り組んでいて、まだそれを実現できていないとしても、デジタル情報空間を完全にコントロールできるようにしたいという野心を持っていることがうかがえる。

ウクライナでの戦争は、ロシアが自立したデジタル「セグメント」を作る取り組みを強力に推し進める可能性がある。2019年にプーチン大統領が示したように、西側がロシアのグローバルインターネットへのアクセスを否定するリスクを議論している(ただし、内部の技術開発も西側の制裁で大きな打撃を受ける可能性がある)。

2022年になってプーチン大統領は、ロシア人が完全にコントロールできない西側のウェブセグメントにアクセスすることを否定しようとし、検閲の取り組みが強化され、戦争態勢に入った。

ここ数日、欧州もプーチン大統領のウクライナでの侵略戦争を受け、ロシアのプロパガンダに対する独自の対応策を強化している。EUの議員たちは、ロシア政府の支援を受けた国営メディア、Russia Today (RT)とSputnikを前例のない禁止措置とすることに同意した

この禁止令は、TwitterやFacebookなどのオンラインプラットフォームと、従来の放送メディア(衛星放送など)を対象としている。

EUは、RTとSputnikの禁止令はロシアがウクライナ戦争を続ける限り続くとし、プーチン大統領がEUとその加盟国に対するプロパガンダをやめるまで解除しないとも明記している。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

ツイッターによるロシア国営メディアRT(旧ロシア・トゥデイ)のEU限定ジオブロックは不安定なスタート

Twitter(ツイッター)は、ウクライナ侵攻後に欧州連合(EU)がロシアに科した制裁措置の一環として現地時間3月2日に発効したRT(旧ロシア・トゥデイ)とSputnikのEU全域での禁止を、不本意ではあるが遵守していると主張した。

Twitterの広報担当者は、今週報道陣の要請に応じて出した声明の中で、次のように述べている。

欧州連合(EU)の制裁は、EU加盟国において特定のコンテンツを控えることを法的に要求するものであり、当社はこれに従います。EU圏外における当社のグローバルな取り組みとしては、サービス全体にわたってこの種の国営メディアコンテンツを排除し、ラベルを通じて重要な文脈を提供することに引き続き重点を置いていきます。当社は、特に危機の時代において、自由でオープンなインターネットを引き続き提唱していきます。

しかし、TwitterがEUにおけるRTのコンテンツ配信を禁止する法的命令を実際にどの程度遵守しているかははっきりしない。

RT禁止令が発効して以来、欧州の一部のユーザーがロシア政府につながっているメディアの認証済みTwitterアカウントにアクセスしようとすると「アカウント保留中」という通知を目にしたと報告している一方で(以下の最初のスクリーンショット参照)、TechCrunchは、ジオブロック(特定の地域からの視聴の制限)を回避するためにVPNを使用しなくても、EU域内からRTのアカウントを閲覧できることを発見した(2つ目のスクリーンショット参照)。

EUにおけるTwitterの禁止措置対応をテストするために、フランスのユーザーがRTの認証済みTwitterアカウントを閲覧しようとしたときの状況は以下の通りだ。

フランスのTwitterユーザーがRTの認証済みTwitterアカウントにアクセスしようとしたときに目にした画面(スクリーンショット:TechCrunch)

しかし、3月3日にスペインからまったく同じことを試してみたところ、RTのアカウントへのアクセスはブロックされず、個々のツイート(国営メディアが同日朝にツイートした以下のものなど)も見ることができた。Twitterの「アカウント保留」通知は、EUの他の国でも表示され、スペインはその禁止措置の実施対象国に入っているにもかかわらずだ…。

スペインのTwitterユーザーは、まだRTのアカウントにアクセスできる(スクリーンショット:TechCrunch)

本稿執筆時点では、TechCrunchに協力したスペインのテスターは、TwitterのモバイルアプリやモバイルウェブからRTにアクセスすることがまだできた。

つまり、Twitterは今回、EUの制裁に違反しているように見える。

この問題が、スペインにおけるTwitterの禁止実行に、あるいはEU全体(加盟国は27カ国)に、どれほど広く(あるいは限定的に)存在するかは明らかではない。

さらなる「漏れ」も否定できない。特に、制裁が発効した直後はそうだろう。Twitterのコンプライアンスに問題があるのではないか、というのがここでの1つの解釈だ(更新:この読者からの指摘のように、ブロックは位置情報ではなく、ユーザーが申告した国に基づいていて、ユーザーがTwitterの設定で国を変更するだけで回避することができる、という解釈もある)。

英国ではRTのTwitterアカウントにアクセスすることができる。しかし、TwitterはEUの禁止令を遵守するために可能な限り狭い範囲での実施を選択し、これは意図的なものだ。それに、英国はもはやEU加盟国ではない。

英国は、RTのコンテンツをオンラインプラットフォームで配信することを禁止する同等の命令を国内で出していない。少なくとも現時点においてはそうだ。メディア規制当局のOfcomが現在、RTが同国の放送コードに違反していないかどうかを調査している(Ofcomはまた、オンライン安全法案の成立に先立ち、次期インターネットコンテンツ規則を監督する役割を大幅に拡大する準備を進めていて、将来的にオンラインコンテンツのモデレーションの決定に確実に関与することになる)。

EUの禁止命令を受けてTwitterがRTをジオブロックしている国のリストには、アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン、スイスも含まれていない。これらの国はヨーロッパに位置し、欧州自由貿易圏に属しているが、EUには加盟していない。

つまり、ここでもTwitterは、汎EU的な制裁を可能な限り狭く実施することを選択している。

この対応はApple(アップル)、Google(グーグル)とは対照的だ。2社は今週初め、それぞれのモバイルストアでRTのアプリへのアクセスをブロックしていると発表し、Appleはすべての国際マーケットでそうしている(ロシアを除く)。

Googleはそこまではしなかったが、Twitterよりも若干広範なジオブロックを実施した。また、前述のEUに加盟していない欧州諸国(英国、アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン、スイス)とEU諸国、ウクライナでのアプリへのアクセスもブロックしている。

マイクロソフトは2月28日「ロシアの国家的プロパガンダの露出を減らす」ため、WindowsアプリストアからRTニュースアプリを削除し、Microsoft Startプラットフォーム(MSN.comを含む)からRTとSputnikのコンテンツを一掃すると発表した。

そのため、ロシア国営メディアに対するTwitterの狭い範囲でのEUに限定したブロックは、流れから大きく外れているように見え始めている。

とはいえ、同社の主力製品はリアルタイムの情報サービスであり、そのため同社は検閲よりもむしろラベル付けやコンテキスト化を好む(そして今週初め、同社はロシアメディアにリンクするツイートにもラベルを付けると発表した)。

さらに、Twitterの声明が示唆するように、同社のネットワークは危機的状況下で特に大きな役割を果たすことができる。したがって、戦争中であっても、その中核となる実用性を低下させたくないという気持ちは理解できる。

同時に、ロシアのウクライナ侵攻によって、RTが発信する文脈は容赦無く変化している。そして、それを踏まえてTwitterが方針を見直したかどうかははっきりしない。

私たちは今、ロシアによる欧州の主権国家に対する侵略戦争を目撃しており、そこでは外国を標的としたプロパガンダが重要な戦略的役割を担っている。

だからこそ、EUの指導者たちはウクライナ侵攻によって、外国の情報操作に従事し、明らかにプーチン政権と結びついている2つの主要な国営チャンネルであるRTとSputnikを通じてプーチンのプロパガンダを自由に流し続けることを認めるのは危険だと非常に迅速に判断した。

それにもかかわらず、Twitterは(法的に)できる限り中立的でありたいと考えているようだ。

スペイン(EU加盟国)でテスターが遭遇した問題について尋ねられたTwitterは、RTのコンテンツをブロックできていない理由についての説明を避け、EUの制裁に「従うつもりだ」と述べた以前の声明に言及するにとどめた。

さらに質問をすると、Twitterの広報担当者は次のように答えた。「我々は禁止措置を実行しました」。

そうした説明から察するに、今回確認された問題は、禁止措置の不完全な実施例であり、Twitterが意図的に破ったわけではないようだ。そしておそらく、禁止令が法的効力を持つようになってからあまり時間が経っていないことも関係しているのだろう(EUの委員長は週末に警告を発していたが)。

できるだけ多くのツイートが流れることを好むと長い間表明してきた同社の姿勢を考慮すると、法的な禁止措置のいい加減な実行は、Twitterのずさんな実行に対する「バグではなく機能」の程度を意味しているのかもしれない。

TechCrunchは、このバグについて明確にするためにTwitterに圧力をかけた。しかし、指摘した問題に関して何度問い合わせても、明確な回答は得られなかった。

代わりにTwitterの広報担当者は、「country withheld content」(CWC)ページへのリンクと「どの国がどのような問題についてコンテンツの差し止めを求めているかについての最新の透明性レポートからのデータ / 説明」なるものへのポインタをTechCrunchに送ってきて「これが取り組み状況を理解する一助になれば」と付け加えた。

広報担当者が強調したテキストの塊(下部参照)は、Twitterがコンテンツへのアクセスを制限している国が現在20カ国であることを示している。つまり、行間を読むなら、それは遵守すべき非常に多くの異なる国別の命令があり、同社が完璧に実行するのに苦労していることを示唆しようとしている可能性がある。

そして3月2日、クレムリンにつながりのあるメディアに対するEUの禁止令が施行される前にEU当局は、コンテンツをデジタルで配信する可能性のある最後のメディアまで遮断することの難しさを考慮し、オンライン制裁の実施にある程度の進歩性を期待していることを示唆した(とはいえ、特定の地域の認証済みアカウントをブロックすることは、実際にはそれほど難しいことではないはずだ)。

TechCrunchが気づいたEUの禁止措置の実行に関するTwitterの問題の具体的な説明がどんなものであれ、1つだけはっきりしていることがある。それは、政策の実施に関する新たな失敗を見逃すことがあまりにも簡単だということだ。

私たちは現在、法的要求に応じて20カ国でCWCを使用しています。アルゼンチンオーストラリアブラジルカナダフランスドイツインドアイルランドイスラエル日本オランダニュージーランドロシアシンガポール韓国スペイントルコ英国です。この報告対象の期間中、Twitterはインドネシアで初めてコンテンツを保留にしました。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

EUによるロシア国営メディア「ロシア・トゥデイ」と「Sputnik」への禁止令が発効

EU(欧州連合)がRussia Today(ロシア・トゥデイ、RT)とSputnik(スプートニク)に対する禁止令を正式に採択し発効した。メディア規制当局は今後、その遵守状況を監視することになる。EU各国の監視当局は、プラットフォームがロシア政府とつながりのあるメディア企業のコンテンツの配信を続けているということがわかれば、罰金を科す可能性がある。

RTおよびSputnikとそれらの子会社の配信に対する広範な制裁であり、TechCrunchが以前報じたように、従来の放送チャンネル(衛星放送など)だけでなく、オンラインプラットフォームやアプリも対象としている。

現時点では、2社に属するジャーナリスト個人は制裁の対象外だが(RTの編集長はすでに制裁の対象)、この法的文書には迂回防止条項が含まれており、両チャンネルに対する規制を回避しようとしているとみなされた場合などは、最終的に個人がターゲットになる可能性がある。

EU当局者によると、この意味するところは、インターネットプロバイダーは、RTやSputnikのコンテンツが自分たちのプラットフォームに表示されないように積極的な措置を取ることが期待されているということだ。

つまり、根本的には、単に公式チャンネルを禁止するだけでは十分ではないかもしれないということだ。他のユーザーやアカウントが制裁対象のコンテンツをアップロードした場合、ソーシャルメディアやその他のテックプラットフォームには、禁止措置回避行為を防ぐためにさらなる措置を取ることが期待されるかもしれない。

EU当局によると、ソーシャルメディアネットワークやビデオストリーミングサービスに加え、原則としてインターネットサービスプロバイダーも対象となる。

さまざまなデジタル配信チャンネルがあることから、欧州委員会関係者は、両チャンネルの地域配信を直ちにすべて終了させることが困難であることを認めており、ある程度の「漏れ」は予想されると示唆している。ただし、法的には、禁止事項の遵守はもはや当然のことだということも強調している。

EUは、RTとSputnikに対する制裁は期限付きだと述べているが、実際のところ制裁解除には条件が付されているため、少なくともロシアのウラジーミル・プーチン現大統領がクレムリンにいる間は、制裁解除を想像することは困難だ。

というのも、欧州委員会は、制裁解除には、ロシアがウクライナでの侵略をやめ、EUとその加盟国に対するプロパガンダをやめる必要があると定めているからだ。そして、多くのメディア関係者は、RTのようなチャンネルの第一の目的は、まさに反欧米のプロパガンダを制作・増幅することだと指摘する。

なぜEUはRTとSputnikを特別視しているのか。EUは、RTとSputnikを親クレムリンの道具箱の中の重要な偽情報ツールであり、プーチン大統領が西側に不安定化を引き起こす「情報戦争」を展開するために利用していると見ているからだ。

例えば、欧州委員会関係者は、RTとSputnikに与えられている巨額の国家予算(2021年には推定13億ユーロ=約1668億円)などの国家支援について言及し、また、これらのチャンネルの編集の独立性に対する疑念を指摘している。

また、欧州委員会関係者らは、この規制は慎重にバランスをとっているとしている。すなわち、対象としているのは、ロシアが国家として対外的な情報操作や干渉を行うために利用している手段であり、それらの手段の中でも最も際立っておりその責任も明らかな2つだということを強調した。

そしてその主張を裏付けるように、欧州委員会関係者らは一例として、ロシアの「偽情報とプロパガンダのエコシステム」におけるRTとSputnikの役割を分析した米国務省の報告書を引き合いに、この2つの組織は明らかにプーチン大統領のプロパガンダマシンに「不可欠であり、力を与えている」部分だと主張している。

EUの対応、すなわち両メディアの配信を対象とした制裁措置は、意見を検閲するものではない、とも主張している。

さらに、欧州委員会は、過去1年間におけるロシア国内の独立系メディアに対する大規模な弾圧を取り上げ、とりわけ政府に批判的と見られる独立系メディアやジャーナリスト個人の口を封じるために、強硬な国内法、特に「外国の代理人」に関する法律が用いられていると指摘し、プロの記者に対するロシアの脅威を容認できないとしている。

欧州委員会の確固たるメッセージはこうだ。ロシアのウクライナ侵攻によって、欧州委員会の評価は不可逆的に変わってしまった。プーチン大統領のプロパガンダ機関に対するEUの寛容はもう終わった。

EUのUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)委員長は、制裁措置の正式な採択を表明した際の声明で、次のように述べた。「この戦時下においては、言葉が重要です。自由で独立した国に対するこの非道な攻撃をめぐり、大規模なプロパガンダと偽情報を目の当たりにしています。私たちは、クレムリンの擁護者たちが、プーチンの戦争を正当化する有害な嘘を流したり、私たちの連合に分裂の種をまくことを許しません」。

また、EUのJosep Borrell(ジョゼップ・ボレル)外務上級代表は、別の採択を支持する声明の中でこう付け加えた。「クレムリンによる組織的な情報操作と偽情報は、ウクライナへの攻撃における作戦ツールとして利用されています。また、EUの公序良俗と安全保障に対する重大かつ直接的な脅威でもあります。今日、私たちはプーチンの情報操作作戦に対して重要な一歩を踏み出し、EUにおけるロシア国営メディアの蛇口を閉めようとしています。私たちはすでに、Margarita Simonyan(マルガリータ・シモニャン)編集長を含むRTの経営陣に制裁を加えており、この組織がEU内で行っている活動も対象とするのは当然のことです」。

フォン・デア・ライエン委員長は現地時間2月27日、欧州連合(EU)が「欧州における(ロシアの)有害な偽情報を禁止するためのツールを開発している」と述べたことから、欧州委員会の担当者は、今後さらに規制が強化されるか聞かれたものの、特定の政策についてのコメントを避けた。

しかし、欧州委員会関係者らは、民主化行動計画やオンライン偽情報の拡散に対処するための行動規範など、EUが何年にもわたり策定してきたさまざまな施策を挙げた上で、EUは、状況認識や回復力の強化といった分野を含む、一貫した一連の政策アプローチと施策を構築しつつあり、特に外国の情報操作をターゲットとする意向だと付け加えた。

RTとSputnikに対する制裁は、こうした幅広い戦略の一環だとEU当局者らは付け加えた。

RTとSputnikに対する制裁の法的根拠は、欧州委員会によると、共通外交・安全保障政策規則(第29条)に基づく欧州理事会の全会一致による決定と、制限的措置を定めた欧州連合機能条約第215条だ。

情報への自由なアクセスはEU憲章に明記されている基本的権利だ。しかし、欧州委員会は、これらの対象措置はいかなる法的異議にも耐えられると確信していると述べている。

EUの既存のメディアに関する規則は、今回の制裁措置と並行して通常通り運用されることをEU当局者は確認した。

制裁を受ける6社は、RT-ロシア・トゥデイ・英語版、RT-ロシア・トゥデイ・UK、RT-ロシア・トゥデイ・フランス、RT-ロシア・トゥデイ・ドイツ、RT-ロシア・トゥデイ・スペイン語版、そしてSputnikだ。

画像クレジット:picture alliance / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルがPlayストアからロシア国営メディアアプリを削除、EU禁止措置が迫るなか

Reuters(ロイター)によると、Google(グーグル)はApple(アップル)に続き、同社のPlayモバイルアプリストアからRT(旧ロシア・トゥデイ)とSputnik(スプートニク)のアプリを削除した。

クレムリンとつながりのあるこれら2つのメディアは、ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧州連合(EU)で制裁を受けていた。

ロシア国営メディアのアプリに対するPlayストア禁止措置がEUに限定されたものかどうかは、すぐには明らかでない。両社に対する禁止措置は、本日(米国時間3月2日)から施行される予定だ。

Googleはこれ以前に、ウクライナ政府の要請により、同国ではRT Newsアプリを禁止していた。

【更新】グーグルの広報担当者は、今回のブロックは「ヨーロッパ」に限定されているとしている。

声明の中で、Googleは次のように述べた。

我々がこれまでに説明していた、レコメンデーションを減らし、収益化を一時停止し、ロシア国営メディアのリーチを制限する取り組みと一貫して、ロシアのニュースチャンネルRTとSputnikのモバイルアプリは、ヨーロッパ全域のPlayストアで利用できなくなりました。当社のチームは迅速な行動を取るために、24時間体制で状況を監視し続けます。

Googleは、EU加盟国および英国、ウクライナ、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスで、これらのアプリがブロックされていることを確認した。

Apptopiaのデータによると、Android版のRT Newsアプリはこれまでに全世界で750万回インストールされており、iOS版の250万インストールよりもはるかにフットプリントが大きい。Android版のSputnik Newsアプリは全世界で289万ダウンロードと、これもiOS版のインストール数96万を上回る数字である。

関連記事:アップル、ロシア国営メディアアプリを世界のApp Storeで入手不可能に

先に報じたように、EUによるRTとSputnikの法的禁止は、オンラインプラットフォームを含む全配信経路を対象とするものだ。そして、RT、Sputnikおよびその子会社に対して、プラットフォーム大手が行動を起こすための厳しい期限を設定している。

EU加盟国の中には、3月初めにドイツ語版RTの放送を禁止したドイツのように、自国内でロシア国営メディアを一足先に禁止しているところもあるが、汎EU制裁の導入により、まもなく地域全体でより広範な包括的禁止が行われることになる。

EUの制裁措置の発効に先立ち、米国時間3月1日、GoogleはRTとSputnikのYouTubeチャンネルをブロックすることを発表した。

ただし、その措置においては、同社は全世界で両社のアカウントを停止するのではなく、法的制裁が適用されるEU域内でそれらYouTubeチャンネルへのアクセスをジオブロックしているのみだ。

そのため、Googleはロシアのプロパガンダを部分的にしかブロックしていないという批判にさらされている。

また、Googleは他のプラットフォームと比較して、ウクライナ危機への対応がやや遅かったように見受けられる。

Appleは1日、ロシア以外のすべての市場において、iOSのApp StoreからRTとSputnik Newsアプリを削除することを確認した。

一方、Microsoft(マイクロソフト)もすでにWindowsアプリストアからRTを排除し、同社の検索エンジンBing(ビング)で両ニュースソースをランキングから外したという一連の措置を2月28日に発表している。

他のテック企業もウクライナ侵攻を受け、必死にロシア国営メディアに対する規制を打ち出そうとしている。Twitter(ツイッター)は今週初め、ロシア政府系メディアのコンテンツへのリンクを含むツイートにフラグを立て、コンテンツ自体の可視性を下げるラベリングポリシーを拡大した。

Twitterは、欧州の指導者たちから、アカウント自体をブロックしていないことに対する批判を受けていた。しかし同社は1日、Reutersに対し、EUの制裁措置が発効した際にはそれに従うと述べ、次のように付け加えた。「欧州連合の制裁によりおそらく、EU加盟国において特定のコンテンツを表示制限することが法的に要求されることになるでしょう」。

今週初めに発表されたさらなる限定的措置として、Facebook(フェイスブック)は、TikTok(ティックトック)と同様に、EU域内でRTとSputnikをジオブロックしていると発表した。

先週木曜日に始まったロシアのウクライナ侵攻以来、欧州の政治指導者と欧州委員会の議員たちは、欧州委員長が日曜日にロシアの「有毒なメディアマシン」と表現したものに対処するため、主流のテックプラットフォームに対して高レベルの圧力をかけており、同委員長はそれをRTとSputnikに対する「未曾有の」制裁とも表現している。

欧州委員会の評価では、クレムリンとつながりのある2つのメディアは、プーチンの戦争マシンの重要な戦略的要素であるとされている。

【編集部注】この記事は、Googleからのコメントを追加して更新された。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Den Nakano)

アップル、ロシア国営メディアアプリを世界のApp Storeで入手不可能に

ウクライナへの侵攻を受けたロシアに対し、さらなる措置を取るようテック企業に対する圧力が高まっているが、Apple(アップル)は米国時間3月1日、ロシア以外のすべての市場において、クレムリンに拠点を置くメディア、RT News(ロシア・トゥデイ)とSputnik NewsをApp Storeから削除することを確認した。この変更は、EUや世界各地でこの2つの国営メディアに対して取られた他の措置に続くものだ。

Microsoft(マイクロソフト)はここ数日、WindowsのアプリストアでRT Newsを禁止し、検索エンジンBingの両ニュースソースのランクを下げた。Google(グーグル)は、キエフの政府による要請により、ウクライナでRT Newsアプリを禁止した。Rokuは同社のストリーミングプラットフォームでRT Newsを禁止。Twitterは、両メディアのツイートに警告のフラグを立て、ランク付けを解除した。Facebookは、TikTokと同様に、EU圏内ではサイトへのアクセスを制限し、利用できないようにしている。そしてGoogleもYouTubeからそれらを削除した。

AppleがRT NewsとSputnik NewsをグローバルのApp Storeから引き上げたのは、ウクライナのMykhailo Fedorov(ミハイロ・フョードロフ)副首相からの要請を受けたもので、同副首相はAppleのTim Cook(ティム・クック)CEOにロシアでのデバイス販売の停止とApp Storeへのアクセスの完全遮断を求める書簡を書いている

アプリ情報企業Sensor TowerとApptopiaのデータによると、ロシアの2つのメディアアプリは昨日の時点で、全世界において数百万回もダウンロードされていた。

Sensor Towerによると、米国のApp Storeでは、2月28日の時点で、RT NewsはNewsカテゴリで42位、Sputnikは85位にランクインしていたとのこと。また、iOS向けRT Newsの全世界でのインストール数は、直近の7日間で7日前と比較して241%増加した。そして、iOS向けSputnikのインストールは同期間に163%増加したと同社は指摘している。

しかし、2つのアプリストアの情報会社は、ロシアのアプリの足跡について異なる推定値を報告している。

Sensor Towerは、RT Newsが2013年5月の発売以来、世界中で570万回インストールされ、そのうち170万回はiOSのApp Storeでインストールされたと報告している。Sputnikは2015年3月のリリース以来、全世界で200万インストールされ、そのうち約47万がiOSでのものとなる。

一方、Apptopiaのデータでは、アプリがより広い範囲に及んでいたことを示しています。RT Newsは全世界で総インストール数1000万、そのうちiOSは250万だった。また、Sputnik Newsは385万ダウンロードされ、そのうち96万ダウンロードがiOSだった。

両社ともApp Storeのデータに直接アクセスできないため、正確な数字は不明だ(本当のインストール数はAppleとアプリのパブリッシャーだけが知っている)。その代わり、両社は統計モデルを用いて推定値を算出している。

ロシア・ウクライナ戦争に関連するアプリで影響を受けたのは、ニュースサイトだけではない。Googleの同様の措置を受けて、Appleはウクライナ国民に対する安全対策および予防措置として、ウクライナの「マップ」でのトラフィックとライブインシデントの両方を無効にしたとのこと。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Katsuyuki Yasui)

YouTube、欧州でロシア政府系メディアRTとスプートニクのチャンネルをジオブロッキング

Google(グーグル)は、ロシアの戦争プロパガンダを封じるよう欧州地域議員からの圧力を受け、YouTubeが欧州でロシア政府系メディアのRT(旧ロシア・トゥデイ)とSputnik(スプートニク)をジオブロックすると発表した。

米国時間3月1日、ジオブロッキングを発表したツイートで、Googleの欧州ポリシーチームは「ウクライナで進行中の戦争のため、RTとSputnikに結びついているYouTubeチャンネルを欧州全域でブロックします。直ちに有効となります」と書いている。

我々は欧州委員会にYouTubeの発表に対するコメントを求めている。

TechCrunchが先に報じたように、EUは昨夜、RT、Sputnikおよびその子会社に対する禁止措置が、オンラインプラットフォームを含むすべての全配信経路を対象とすることを確認した。

欧州委員会のThierry Breton(ティエリー・ブルトン)委員(域内市場担当)は現地時間2月28日、GoogleおよびYouTubeのCEOとビデオ通話を行い、両社の取り組みを強化するよう求めていた。

YouTubeは、ロシア政府系メディア2社による何千ものビデオをホストしており、昨日触れたように、RTチャンネルのマーケティングは「YouTubeで最も視聴されているニュースネットワーク」であると謳っている。

今、RTのYouTubeチャンネルを閲覧しようとする欧州の人々は「このチャンネルはお住まいの国では視聴できません」というメッセージに遭遇する。

スクリーンショット:Natasha Lomas/TechCrunch

28日には、Facebook(フェイスブック)、Microsoft(マイクロソフト)、TikTok(ティックトック)、Twitter(ツイッター)が似たような制限を発表した。

しかし、Googleはその対応を検討するのに他社よりも少し時間がかかった。テック巨人は、この遅れについて説明をしていない。

今朝、ジオブロッキングを発表したツイートの中で、Googleはこうも警告している。「完全なシステム立ち上げには時間がかかります。当社のチームは迅速な行動を取るために、24時間体制で状況を監視し続けます」。

つまり同社は、クレムリンとつながりのあるチャンネルの一部のコンテンツは、システムの「立ち上げ」に伴い、短期的には引き続きアクセス可能であり続けることが予想される、と示唆しているようだ。

YouTubeはRTとSputnikのアカウントを禁止したり停止したりするのではなく、ジオブロックをかけるだけなので、ロシアのプロパガンダはもちろん欧州の外では広がり続け、ロシア国内でもまだ利用できる。

だが、このような妥協策を選んだのはGoogleだけではない。

Facebookの親会社であるMeta(メタ)とTikTokも、ロシア政府系メディアのアカウントを完全に停止または禁止するのではなく、ジオブロックすることを選択した。

TwitterとMicrosoftも、それぞれのプラットフォームのニュアンスの違いを反映して、微妙に異なる方法を取った。両社は国家の支援を受けたRTとSputnikのコンテンツの可視性を減らす措置を取ると述べ、実質的にそれらメディアのリーチの自由度を制限している。

Twitterは28日さらに、ラベル表示ポリシーを拡大し、ロシア国家関連メディアへのリンクがあるツイートには通知を追加し、ユーザーに「stay informed(情報に注意 / 情報源を知りましょうという意)」と警告している。

後者がソーシャル(またはブロードキャスト)ネットワークというよりも情報ネットワーク寄りであることを考えると、ラベリングとコンテキストを加えることは適切な対応と思われる。ただし、EUがこれからRTとSputnikを禁止することで、ウェブプラットフォーム各社がさらなる対応を迫られるかはまだわからない。

画像クレジット:Chris Ratcliffe/Bloomberg via Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Den Nakano)

ツイッターがロシア国営メディアにリンクするツイートを特別にマーク、リーチの制限狙い

Twitter(ツイッター)は米国時間2月28日、ロシア政府がウクライナへの侵攻を続けていることを踏まえ、ロシア政府と結びついた偽情報の拡散を防ぐための新たな措置を発表した。

同社は、ロシア政府とつながりを持つメディアからのリンクを含むツイートに、その関連性を示すラベルを追加することを開始する。このラベルにはオレンジ色の感嘆符が付き、Twitterユーザーに「stay informed(情報に注意 / 情報源を知りましょうという意)」と警告している。

Twitterはまた、これらのニュース組織が幅広いオーディエンスにリーチする能力を弱めるため、プラットフォーム上でロシア国営メディアの可視性を低下させることを開始する予定だ。

ロシア政府とつながりのあるツイートに対する変更は、直ちに展開される。Twitterによると、今後数週間のうちに、他の「政府系メディアアカウント」についても同様のラベルを追加する予定だという。

「ロシアのウクライナ侵攻に関して、人々がTwitterで信頼できる情報を探している中、当社は自分たちの役割を理解し、真剣に受け止めています」とTwitterのサイトインテグリティ責任者であるYoel Roth(ヨエル・ロス)氏はツイートで述べている。「我々の製品は、あなたが見ているコンテンツの背後に誰がいるのか、そして彼らの動機や意図が何であるかを簡単に理解できるようにするべきです」とも。

Twitterは2年前に国営メディアのアカウントにラベルを付け始めたが、これらのタグはアカウントのプロフィールページに表示され、ツイート自体のラベルほどには目につかない。

同社は政府系メディアのアカウントによる広告を許可していない。これは、中国政府とつながりのある多数のアカウントが香港での抗議デモに関するプロパガンダを拡散したことを受けて、2019年に実施した変更だ。

ロス氏は、ロシアのウクライナ侵攻が始まった数日前から、ロシア政府系のメディアにリンクするツイートが1日4万5千件以上見られるようになったと付け加えた。同氏はこの新しいラベルを、Twitter上の会話に「有用なコンテキストを加える」方法であり、グローバルな選挙やパンデミックに関するツイートで同社が行っている取り組みと一致するもの、と位置付けた。

関連記事:ウクライナがロシアにハッキングで対抗する「IT部隊」を募集し反撃、テックリーダーにも参加を呼びかけ

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Den Nakano)

Apple News、初のデイリーローカルニュースレターをベイエリアの読者向けに配信開始

Apple News(アップル・ニュース)は、初のデイリーローカルニュースレターをベイエリア向けに導入した。他の都市への提供拡大も積極的に検討している。ベイエリアのデイリーローカルニュースレターは、日刊の地方紙を思わせるもので、地元ニュース、スポーツ、政治、食事などの分野にわたって主な最新ニュースを掲載している。これらの記事はSan Francisco Chronicle(サンフランシスコ・クロニクル)、SF Gate(SFゲート)、Eater SF(イーターSF)、KQED、The Oaklandside(オークランドサイド)など、数多くの出版物から編集されたものだ。

このニュースレターに掲載される記事はすべて、アルゴリズムによって選択されるのではなく、Apple Newsの編集者によって監修されている。これは、クリックベイトのような価値の低いコンテンツの再循環を減らすためだ。Apple Newsは、このベイエリア向けニュースレターを、地域における1日の終わりのダイジェストとして、注目すべきニュースや身の回りで起こっていることに関する情報を伝えるものだと考えている。デイリーローカルニュースレターは、より多くの読者に全米のニュースを配信するApple Newsのデイリーニュースレターに追加される。

Twitter(ツイッター)のRevue(レヴュー)買収や、Facebook(フェイスブック)のニュースレタープラットフォーム「Bulletin(ブレティン)」など、多くのテクノロジー系企業がニュースレターをサービスの一環として追加している時期に、アップルはこのサービスを開始した。ニュースレタープラットフォームのトップ企業であるSubstack(サブスタック)がシリーズBの時点で6億5000万ドル(約743億円)の評価を受けたことでも、旧来型のニュースメディアの市場規模が大きいことがわかる。これには、新聞社のウェブサイトの使い勝手が低下していることも、少なくとも部分的な原因になっている。

もしアップルがより多くのデイリーローカルニュースレターを展開することになれば、いくつかの市場から選ばれることになるだろう。現在、Apple Newsはサンフランシスコ、ベイエリア、ニューヨーク、ヒューストン、ロサンゼルス、サンディエゴ、サクラメント、マイアミ、シャーロット、サンアントニオ、ワシントンD.C.という11の市場でローカルニュースを提供している。アップルは、今後さらに多くの都市でローカルニュース機能を開始する予定だと述べている。

アップルがローカルニュース機能に力を入れるということは、Flipboard(フリップボード)やSmartNews(スマートニュース)のような、米国の何千もの都市でローカルニュースを提供している他のニュースアグリゲーターサービスとのさらなる競争に、目を向けていることを示している。

関連記事:スマートニュースのローカルニュース機能が米国6000以上の都市で利用可能に

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】DAOはメディアに革命をもたらすのか、それとも金持ちの遊び場を作るだけだろうか?

2021年11月に、ConstitutionDAOという何千人もの暗号資産ファンを擁する仮想フラッシュモブが、米国憲法の初版の1つを購入するために約4500万ドル(約51億8000万円)をクラウドファンディングした。オークションには敗れたが、彼らはすでに、ニュースレター会社MorningBrewが配布した絵文字入りのスウェットシャツのラインを立ち上げていた。

ソーシャルメディアに無数のミームを氾濫させ、クラウドファンドへの参加を呼びかけたこの動きは、今やベンチャーキャピタル界で大流行している自立型分散組織(DAO、Decentralized Autonomous Organization)の一例にすぎない。Bitcoin Core(ビットコイン・コア)のようなオープンソースプロジェクトと同様に、DAOプロジェクトには自発的な参加者と受動的なフォロワーの両方が含まれており、その多くは有償のコアコントリビューターによって管理されている。コントリビューターに報酬を支払うためにどのように資金が集められるかは、プロジェクトによって大きく異なる。

他にも、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が支援するFriends with Benefits(FWB)など、複数のDAOプロジェクトが6億ドル(約692億円)を超える資産を運用している。DJやイベントコーディネーターの経験を持つFWBのリードオーガナイザーAlex Zhang(アレックス・ザング)氏は、2021年5月に収益性の高いDAOを統括しており、同クラブでは現在、奨学金プログラムを設けて四半期ごとに最大40人の奨学生を受け入れているという。このプログラムは最長3年間の資金提供を受けている(それ以外の場合はフルメンバーとして約8000ドル[約92万円]を要する)。

人々は、アイデアが即座に資金調達につながるか、立ち消えとなるかを確認する目的で自発的にDAOを開始することも多く、また暗号資産に関する試みを行うためのよりソーシャルな方法を含む、さまざまなネットワーキングの機会のためにDAOに参加することもある。ここで話を戻すと、これらのDAOの多くは、基本的に暗号資産を利用するメディア企業である。DAOと、The Informationのような(フィアットの)サブスクリプションファンドによる組織の間には、重複する部分も数多くあるが、主な違いは、FWBがジャーナリズムのイベントではなくパーティーを開くことだ。

手短にいえば、FWBは投資家の友人たちのグループで、2020年9月に資金をプールし、自分たちのクラブに入ってトークンを買いたいと望むEthereum(イーサリアム)ファンを募ったものだ。その後、マイアミ、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルスでトークン保有者のための独占パーティーを開いた。ザング氏によると、FWBには現在、2000人の正会員に加えて、より安価な読み取り専用または地域限定のメンバーシップを持つ少数のファン集団が含まれているという。

「ZINE(個人やグループで制作する出版物)のようなマルチメディア資産を作成する編集・コンテンツチームを組織し、他の形式のコンテンツにも確実に移行しています。近々ラジオ局を立ち上げ、さまざまなDJをブックする予定です」とザング氏は語る。「私たちはサブスクリプション料金モデルから資産保有に移行しつつあります」。

特に有名なDAOとしては、ジャーナリストのDaisy Alioto(デイジー・アリオト)氏とKyle Chayka(カイル・チェイカ)氏が創設したニュースレターDAOプロジェクトDirt、Uniswap(ユニスワップ)のようなツールのユーザーのための暗号資産取引DAO、さらにFWBやPleasrDAOなどの暗号資産ソーシャルクラブが挙げられる。PleasrDAOのようなアートに特化したDAOは、JPEGからレアなアルバムまでのあらゆるものを含むアートコレクション収集のために数百万ドル(数億円)を集め、分配している。

PleasrDAOの共同創設者であり、2014年のEthereumトークンの最初の販売に参加したJamis Johnson(ジャミス・ジョンソン)氏は、次のように述べている。「DAOの会員総数は74人です。他のDAOと同様に、絶え間ない浮き沈みがあります。フルタイムの従業員として専任のオペレーターが在籍しており、約5人ほどになると思います。主なコミュニケーション手段はTelegram(テレグラム)です」。

これまでのところDAO参加者のほとんどは、さまざまなDAOにわたり、Ethereumの共同創設者Joe Lubin(ジョー・ルービン)氏のポートフォリオに属するMetaMask(メタマスク)、Gitcoin(ギトコイン)、Gnosis(グノーシス)、Infura(インフラ)といった企業に依存している。特にMetaMaskは現在、月間アクティブユーザー1000万人を擁しているという。また、Gitcoin DAOは6億4300万ドル(約741億円)を超える資産を持つと推定されている。

GitHubがスポンサーとなった調査によると、2021年時点で、DAO参加者422人のうち33%がFWBのようなDAOから月に1000〜3000ドル(約11万5000~約34万6000円)を受け取っている。回答者は主に、2020年以前からEthereumプロジェクトに深く関わっていた若い男性だった。現在のDAO参加者のほとんどが富裕層の暗号資産ファンだとしても、それはこのムーブメントのより広範なゴールではない。

FWBの投資家であり、The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)がSubstack(サブスタック)やPatreon(パトレオン)、暗号ブログプラットフォームMirror(ミラー)といったクリエイターエコノミー企業の背後にいる「It Girl」投資家と呼ぶLi Jin(リー・ジン)氏の言葉を借りれば、DAOの目指すところは「暗号資産への新規参入者のためのフロントドア」になることだ。

その一方で、一部の機関はすでにDAOを受け入れており、ビジネスを行っている。ConstitutionDAOはSotheby’s(サザビーズ)に入札し、PleasrDAOは希少なWu-Tang Clan(ウー・タン・クラン)のアルバムをUnited States Department of Justice(米国司法省)から直接購入した。ワイオミング州は2022年に入り、DAOを州として初めて独自の法制度として認めている。ただし、申請手続きはまだ難しく、制約が課される可能性もある。

DAO MastersとFWBのメンバーであり、環境に焦点を当てたEcoDAOの創設者であるDavid Phelps(デイヴィッド・フェルプス)氏は、現時点で少なくともDAOムーブメントにより、人々の慈善活動への寄付が促されていると述べている。実際、このスペースには、奨学金プログラムやさまざまな慈善活動への数百万ドル(数億円)の寄付があふれている。

「ドルのエコトークンをリリースすれば、私たちはすべて問題なく支払いを受けることができるでしょう」とフェルプス氏は語り、自らのDAOの試みに言及した。先住民の土地改革と熱帯雨林の再生のための慈善事業に、これまでのところ3万7000ドル(約427万円)余りが集まっている。「ですが当面の目標は、アーティストたちが互いに支え合い、生涯にわたって収入を得られるような持続可能なエコノミーを作ることです」。

参加するには費用がかかり、困難がともなうかもしれないが、DAOムーブメントはすでに「ステータスを寄付に結びつけ、人々にパーティーの支払いを促し、意義のある大義にお金を再配分する」ことで価値を高めることを促進していると同氏は付け加えた。

しかし、このきらびやかな部屋の中の象は、Ethereumのベテランであっても、これらの数百万ドル規模の暗号資産クラブのメンバーがどのように税金を支払うかを誰も認識していないことを意味する。DAOムーブメントに関わっている中産階級の参加者たちの多くは、彼らが数千ドル(約数十万円)もの税金をため込んでいることに気づいていない。

「私たちは多くの請負業者や開発者、DAOのために働いている人々が税金申告の要件を知らないのを目の当たりにしてきました」と、Gordon Law(ゴードン・ロー)の税理士Andrew Gordon(アンドリュー・ゴードン)氏は話す。「通常、こうした事業者は1099(米国税庁の個人事業主向けの申請書)を発行する必要があります。社会保障番号なしでどうやって発行するのでしょうか?1099を提出しないと罰則が科せられます」。

さらにゴードン氏は、こうしたDAOの多くはフリーランスのコントリビューターやオペレーターに、ドルやその他の通貨ではなく独自のメンバーシップトークンで支払っていると付け加えた。これはトークンの「公正な市場価値を決定する責任は納税者に帰する」ことを意味する、とゴードン氏。DAOが自動的にNFT(非代替性トークン)をメンバーに贈与する場合、これは納税義務についての疑問を提起するかもしれない。2022年の納税シーズンが到来したとき、これらのデジタル資産の価格が急落すると、一部のDAOコントリビューターは支払い能力を超える税金を支払う義務を負う可能性がある。

  1. nath112-084

    FWB Paris party(画像クレジット:Alex Zhang)
  2. Screen-Shot-2021-11-19-at-12.06.22-PM

    FWB Paris party(画像クレジット:Alex Zhang)
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    FWB Paris party(画像クレジット:Alex Zhang)

「受け取った暗号資産が、受け取った時点での公正な市場価値に基づいて課税されることを知らなかった人から、電話がかかってくることがよくあります」とゴードン氏は続ける。「NFTとの関係でさらに複雑化する点は、評価の問題【略】最低価格と平均市場価格のどちらがその価値になるのでしょうか」。

すでに多くの若者たち、前述のDAOに参加する余裕がない人たちが、これらの試みを模して独自のものをローンチしている。Shannon Li(シャノン・リー)氏のケースもそうだ。

同氏は2018年に大学を卒業した後、パンデミックの初期には嫌だった仕事を辞め、それ以来コーディングのブートキャンプに参加している。現在独自のDAOを作っているが、それは人気の高いDAOの会費を払う余裕がなく、自分が応募した無料のオポチュニティにも反応がなかったからだ。こうして同氏は、トークンなしで開始することで、法的リスクを巧みに軽減することに成功した。

「DAOの最大の懸念は、実際には合法性と弁護士費用です」とリー氏は言い、DAOトークンの中には証券として規制されるものもあるかもしれないと指摘した。「このことは、トークンの販売が流通市場で行われるサービスではなく、サービス・フォー・サービスのDAOを作成したいと思う大きな理由です」。

リー氏は、女性のための暗号資産教育コンテンツに焦点を当てた80人で構成されるDiscord(ディスコード)サーバー、WEKrypto DAOを立ち上げた。最終的には、DAOにトークンゲートのグループチャットとNFTのイベントチケットを導入する計画だ。今のところ、ブートストラップ段階では「暗号資産についてもっと学び、他の人たちも利用できるように公開し、願わくば共有学習のジャーニー上で関係を築いていく」ことに注力している。

このムーブメントが、ルービン氏やVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏のようなEthereumの創設者たちによって育まれ、サポートされた企業を超えて成長するにつれて、DAOのエコシステムがどのようになるかはまだわからない。(すでに一部の人たちは、Bitcoin[ビットコイン]やSolana[ソラナ]のようなブロックチェーンを使いながら、同様のDAOのコンセプトを実装し始めている。)明るい面としては、FWBやIndex CoopのようなDAOにより、このムーブメントの多様性を改善するための多くの取り組みが始まっていることだ。

「私たちのコミュニティは、参加できなかったアーティストやクリエイター、その他の人たちに報いるために、1万8000のトークンを使ったフェローシッププログラムを立ち上げました」とザング氏はFWBについて語っている。「私たちは、普遍的な基本的資産の所有権を提供しています。この世界で何かを創造しているのであれば、その価値の一部を手に入れることができるはずです」。

今日でも、DAOたちが使っているツールは実験的なものだという見方が依然として大勢を占めている。Awesome People Ventures(オーサム・ピープル・ベンチャーズ)の創設者で、PartyDAOを含む複数のDAOのメンバーであるJulia Lipton(ジュリア・リプトン) 氏は、広く使われているGnosis Safe(グノーシス・セーフ)ウォレットに数百万ドル相当のデジタル資産を保有することは依然として「リスクを感じ」、DAO実験の技術面を完成させるには「途方もない時間」を要することが多いと述べている。技術的な問題に加えて、中間層のユーザーにとっては取引手数料が法外に高い場合もあるという。

「先は長いです。税金や規制だけでなく、DAO全般に関しても、未知のものが山ほどあります。コミュニティの所有権という概念については、まだ完全には解明されていません。私たちはこれらのプロジェクトをすべてA/Bテストし、公の場で実験を行ってきました」とリプトン氏は語る。

リプトン氏がDAO Mastersの設立に協力したのはそのためである。何十万ドル(何千万円)もの資金をクラウドファンディングして、新規参入者がDAOに関わるオポチュニティ、スキル、リスクについて学べるように支援した。

「私が最も情熱を注いでいることの1つは、価値の創造が価値の帰属と分配に結びつくことです。うすればより公正で公平なシステムを作ることができるでしょうか?」とリプトン氏はいう。

最終的には、DAOムーブメントの主要なインサイトは、他の方法では難解なメタバースに属しているという感覚に対して、人々がどれだけのお金を払おうとしているかということかもしれない。DAOのメンバーは、受動的なオーディエンスではなく、トライブ(同じ志を持つ人々の集まり)である。そのため、彼らは自分たちが代表されていると感じるメディアや体験に対して(お金か労働力のどちらかで)喜んで支払う。

あらゆる暗号資産トレンドと同様に、この帰属意識は金持ちになるという希望によって増幅される。DAOの参加者の中には、表立ったコメントは控えたものの、参加者自身のスタートアップやDAOに投資する可能性のある投資家とネットワークを作りたいと考えてDAOに参加していることを強調する向きもあった。

それは、Andreessen Horowitzの投資家ネットワークで埋め尽くされたDAOに所属することの魅力の一部だ。ジン氏は自身もこの巨大ファームの出身であり「(FWBの創設者である)Trevor McFedries(トレヴァー・マクフェドリーズ)氏とは何年来の友人」であると語っている。またザング氏は、マクフェドリーズ氏がFWBに招かれるずっと前から個人的な友人だったという。DAOのメンバーは、彼らの友人を定期的に高額な雇用や投資のオポチュニティに招待する。これらの暗号クラブに参加することは、いくつかの点で、アイビーリーグの友愛会に匹敵する。

一方、FWBの投資家であるジン氏は、Twitter(ツイッター)やポッドキャストで、クリエイターがより直接的にユニバーサルベーシックインカム(UBI)の恩恵を受けられるようになることへの期待を率直に語っている。ニュースレターのDirt(ダート)やForefront(フォアフロント)のライターたちのプログラムのようなDAOのその他の実験は、DAOの将来の可能性を垣間見せてくれる。それは、お互いのベンチャー支援によるグループチャットに投資している裕福な友人たちだけにとどまらない。

Forefrontのライターへの支払い能力は1稿当たり400ドル(約4万6200円)ほどで、数百人のトークン保有者を抱えるコミュニティの成長に支えられているが、目につくものではない。税金の問題やEthereumの取引手数料を考慮しても、その価格は一部の主要な従来型の小売店が最近ライターに支払っている額と変わらない。DAOのアドボケートたちが、より公平で分散化されたメディアのエコシステムを目指していると信じていることは明らかだ。コンプライアンスモデルが出現して初めて、リスクと責任がこれらのネットワークにどのように分散されるかが明らかになる。

「DAOは潜在的に、労働市場が機能する新しい方法と新たな経済的インセンティブを解き放ちます」とリプトン氏は語る。「コミュニティのトークンが長期的にどうなるかはまだ結論が出ていませんが、コミュニティの所有権という概念は残るでしょう」。

情報開示・著者はKomorebi CollectiveDes Femmes DAOの2つのDAOプロジェクトの創設メンバーである。

画像クレジット:Andrii Yalanskyi / Getty Images

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(文:Leigh Cuen、翻訳:Dragonfly)

ニューヨーク・タイムズがスポーツメディアThe Athleticを約637億円で買収

The New York Times Company(ザ・ニューヨーク・タイムズ・カンパニー)が、スポーツメディアのThe Athletic(ザ・アスレティック)を5億5千万ドル(約637億円)で買収することで合意したとThe Informationが報じている

数カ月間、憶測が飛び交っていたこの買収では、一時はThe AthleticのCEO、Alex Mather(アレックス・マザー)氏がAxios(アクシオス)に合併を持ちかけたが、実現には至らなかった。今回の買収で、The New York Timesは購読ビジネスを強化しようとしている。同社の購読者数は2021年に800万人を突破し、2025年までに購読者数を1000万人に増やすという目標を上回る勢いだ。

2016年に設立されたThe Athleticは、2021年11月時点の購読者が120万人で、購読費は年間約72ドル(約8300円)だ。しかし、The Athletic単体ではまだ黒字ではなく、2023年まで黒字を見込めていなかった。同社は600人のスタッフを抱え、2019年から2020年にかけて1億ドル(約115億円)近くを費やしたが、同時期の収益は約7300万ドル(約84億円)にとどまった。

The New York TimesによるThe Athleticの買収は、多くの媒体が統合を経験している最近のメディア業界の傾向と一致している。直近では、BuzzFeed(バズフィード)が上場前にComplex(コンプレックス)とHuffPost(ハフポスト)を買収した。しかし、メディア関係者はこうした潮流の変化に懐疑的だ。例えばBuzzFeedがHuffPostを買収した後、190人のHuffPost社員のうち47人を解雇し、HuffPostカナダ部門をすべて閉鎖してさらに23人が職を失った。パンデミック発生時、多くのメディア企業同様に、The New York TimesThe Athleticも従業員を解雇した。

パンデミックの前から、この業界では常に脅威となっていた突然の解雇や給与カットから身を守るために、組合契約を求めるメディア労働者が増えている。さらに過激なアプローチをとるジャーナリストもいる。2019年末に、Deadspin(デッドスピン)のスタッフ全員が経営陣への不満から同サイトを辞め、労働者が所有するメディア企業Defector(ディフェクター)を立ち上げた。Defectorは初年度に320万ドル(約3億7000万円)の収益を上げ、運営コストは300万ドル(約3億4000万円)だった。

The Athletic買収に比べるとはるかに小規模な取引だが、The New York Timesは2016年に製品レビューサイトのWirecutter(ワイヤーカッター)を3000万ドル(約34億円)で買収している。しかし、ここ数カ月、Wirecutterと親会社の間には大きな緊張があった。2年間にわたるスローペースの組合契約交渉の末、経営陣が感謝祭前に合意しなかったため、Wirecutterのスタッフはブラックフライデーとサイバーマンデーを含む5日間連続のストライキを実施した。その後、The New York Timesがストライキ中の給与を差し止めたことを受けて、Wirecutter組合は全米労働関係委員会に不当労働慣行の苦情を申し立てた。12月14日までに、The NewsGuild of New Yorkが代表を務める組合はThe New York Timesと合意に達し、賃上げと労働条件の改善を確保した。しかし、The New York Timesは、反組合的な行動に対する監視の目を今も向けられている。

買収のニュースが流れた後「やあ、@TheAthletic、私たちの友人@nyguildに会って欲しい」とWirecutter組合はツイートしている。

The Athleticの購読がどう変わるのか、買収によってスタッフがどのような影響を受けるのかについては、まだ言及がない。

画像クレジット:samchills / Flickr under a CC BY 2.0license.

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】2人のFBI捜査官が私の家にきた、米国における法的要求と報道の自由について

2020年8月、予告なしに2人のFBI捜査官が私の家の玄関先にやってきて、前年に掲載したTechCrunchの記事について質問したいと言ってきた。

記事の内容は、あるハッカーがグアテマラのメキシコ大使館のサーバーから、ビザや外交官パスポートを含む数千件の書類を持ち出したというものだった。そのハッカーによると、脆弱なサーバーについてメキシコ当局に連絡したが無視されたため、大使館のファイルへのリンクをツイートしたという。「返事がない場合は公開する」とハッカーは言っていた。

関連記事:ハッカーがメキシコ大使館の文書を大量にネット公開

私は取材時の常套手段として、ニューヨークのメキシコ領事館にコメントを求めた。広報担当者によると、メキシコ政府はこの問題を「非常に深刻」に受け止めているとのことだった。私たちは記事を公開し、それで終わったように思えた。

1年後、FBIが私の家のドアをノックしてきた。終わったというのは間違いだったようだ。私は捜査官との会話を断り、ドアを閉めた。

私たちが記事を発表した後、メキシコ政府は外交ルートを通じて米国司法省にハッキングの調査あるいはハッカーの特定への協力を依頼した。私がそのハッカーと接触したことで、メキシコ政府は私を関係者としたに違いない。それで1年後に訪問してきたのだろう。

訪問の1カ月後、メキシコ政府はFBIに対し書面による質問リストを提出し、私たちに回答を求めてきたが、その多くはすでに記事の中で回答されているものだった。私たちの司法省への回答は、すでに発表した内容以上のものではなかった。

報道者に対する法的要求は珍しいことではない。メディア業界で働く上での職業病と考える人もいる。要求は脅しの形で行われることも多く、ほとんどの場合、ジャーナリストや報道機関に記事の撤回を迫り、場合によっては記事の公開前に中止させる。特にサイバーセキュリティを扱うジャーナリストは明るく元気な見出しではあまり知られておらず、企業や政府は自らのセキュリティ対策の不備を恥ずかしい見出しで報じられるのを避けようとするため、法的な脅迫を受ける傾向がある。

例えば、米国ミズーリ州のMike Parson(マイク・パーソン)知事とSt. Louis Post-Dispatch(セントルイス・ポスト・ディスパッチ)紙との間で最近起きた対立を見て欲しい。知事は、この新聞社の記者が州の教育局のウェブサイトに何千もの社会保障番号が掲載されているのを発見した後、違法なハッキングを行ったと訴えた。この記者は、社会保障番号が流出した3人に確認を取った上で、州にセキュリティの不備を速やかに報告し、データが削除されるまで記事の公開を保留していた。

パーソン知事は、この報道が州のハッキング法に違反しているとし、法執行機関と州検察官に同紙の調査を命じ「州に恥をかかせようとしている」と主張した。これに対し法律家や議員、さらにはパーソンの所属する政党のメンバーまでもが、倫理的にまったく問題のない行為であると認められた新聞社を非難した知事を嘲笑した。パーソンは、自身の政治活動委員会が費用を負担した動画の中でまたもや非難し、いくつかの誤った主張をした他、新聞社を「フェイクニュース」呼ばわりした。2021年11月初め、教育局は、最終的に62万人以上の州の教育者に影響を与えた過失について謝罪した。

違法性や不適切性の主張は、悪意のあるハッカーに悪用される前に流出した個人情報やセキュリティ上の欠陥を発見して公開するセキュリティ研究者に対して広く用いられる戦術だ。独立系ジャーナリストと同様に、セキュリティ研究者も単独で活動していることが多く、たとえ彼らの活動が完全に合法的であり、将来起こりうる最悪のセキュリティ事故を防ぐのに役立ったとしても、彼らは裁判の高額な訴訟費用を恐れて法的な脅しに応じるしかない。彼らに経験豊富で意欲的なメディア法務チームがついているとは限らない。

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これまでにも不当な法的要求を断ったことはあったが、仕事をしているだけで連邦捜査官が玄関先にやってくるというのは、私にとっては初めての経験だ。違法行為があったとは聞いていないが、もし私がメキシコの地を踏んだ場合、メキシコがどのような見解を示すかわからないのは不安だ。

しかし、最もダメージが大きいのは、紙面に載らない法的な脅しや要求だ。法的な要求には本来、口封じの効果がある。時には成功することもある。ジャーナリズムにはリスクがつきものであり、報道局が常に勝つとは限らない。法的な脅しは、放置すると仕事をすることが法的に有害となるため、セキュリティ研究とジャーナリズムの両方に対する萎縮効果がある。これは、世界の情報量の減少、そして時には安全性の低下にもつながる。

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Dragonfly)

【TC Tokyo 2021レポート】ポッドキャストとVCの表裏一体で活躍するハリー・ステビングス氏は世界中の有望企業に目を向ける

先に開催された「TechCrunch Tokyo 2021」。「海外スタートアップトレンド解説」のセッションには、10万人以上のリスナーを持つ世界最大の独立系VCポッドキャスト「The Twenty Minute VC」の創設者でホストのHarry Stebbings(ハリー・ステビングス)氏が登場した。モデレーターは米国を中心にスタートアップやテクノロジー、VCに関する最新トレンドなどを配信する「Off Topic」を運営している宮武徹郎氏が務めた。

冒頭でステビングス氏を「ポッドキャストのホスト」と紹介した。同氏のポッドキャストには多数のVCや起業家がゲストとして出演し、特に起業家に人気がある。しかし同氏にはポッドキャストのホスト以外にもう1つ、「20VC」というマイクロVCを立ち上げた投資家の顔もある。VCポッドキャストのホストとして人脈を広げ情報を集めて発信し、自身も投資をする同氏は「20VCをメディア性のある一流金融機関に育てたい」と言う。このセッションでは、メディアとVCの両面から同氏に話を聞いた。

VCを目指す道のりは50ドルを投じたポッドキャストから始まった

ステビングス氏は、Facebookの創業を描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」でファンドのシーンを見て「VCに一目惚れした」という。18歳の時にロンドンでベンチャー投資家を目指してポッドキャストの「The Twenty Minute VC」を開始。つまりポッドキャスト配信者からVCになったのではなく、VCを目指してポッドキャストを始めたのだ。

ポッドキャストを始める際に投じた金額は50ドル(約5600円)。マイクに40ドル(約4500円)、ドメインに10ドル(約1100円)を支払って配信を始めた。その後7年間で、3000回の配信、ダウンロード数は1億8000万回を超え、月間では2500万回のポッドキャストへと成長した。そしてVCとしては、2021年6月にファンド2社で1億4000万ドル(約159億円)の資金を調達した。

ポッドキャストとVCという戦略について、同氏は次のように語った。「投資家が乱立しているため、優れた投資先の獲得にはブランド戦略が欠かせません。VCは上場株取引とは違います。いい株を選ぶだけではなく、取引に勝つ力が必要です。だからブランド力は欠かせないのです。そして取引では人間関係も重要です。ポッドキャストは親密で深い関係性を築けます。だからこそブランド構築と差別化を念頭に置き、番組を立ち上げて熾烈な競走を勝ち抜こうとしたのです」。

ガイ・カワサキ氏出演で弾みがついた

そうは言っても、いきなりブランド力のあるポッドキャストになるはずはない。宮武氏は「あなたは米国IT業界とのつながりは薄かったはずなのに、初回のGuy Kawasaki(ガイ・カワサキ)氏をはじめとする出演許可はどのように取り付けたのですか?」と尋ねた。

これに対しステビングス氏は「コネはありませんでしたね。VCにもIT起業家にも、知人は皆無でした。そこでガイ氏の本を3冊読んでから、依頼のメールを出しました。『287ページにはどんな意味が? 294ページの具体例は?』と。すると、いい着眼点だと返事が来てぜひ話したいと言われたので『では番組でお話を』と。世間に認められるにはそれで充分でした。それ以降の方々にはガイ氏との実績を上げて出演交渉をしました。うまく弾みがつきましたね。こんなふうに初回にガイ氏をお呼びできてとても嬉しかったです」と答えた。その後はガイ氏をはじめとする出演者に次のゲストを推薦してもらい、人脈を築いている。

人気ポッドキャストの秘訣は品質への意識と念入りな準備

宮武氏が番組の人気を高める苦労を質問すると、ステビングス氏は品質への意識を挙げた。出演の売り込み依頼に応じたことは一度しかなく、収録したものの出来が悪くお蔵入りにした回もあるという。「依頼に応じてもそれで質が上がるとは思えない。ポッドキャストは僕の製品です。出演者と僕自身のためにも最高の番組だけを目指しているのです」(ステビングス氏)。

番組の品質のためにはもちろん準備が必要で、「事前に膨大な調査をしています。関係者にも話を聞きますね。この準備が鋭い質問の礎となり、人脈も深まります。だから念入りに調査をするのが大切です。誰よりも入念にね」と同氏は説明する。

「僕は世界の一流起業家と働くためにメディアを使う」

セッションはこの後、ステビングス氏のベンチャー投資家としての意見に話が及んだ。

ラストワンマイルの食品配達市場について同氏は、欧米では顧客獲得費の高騰、運転手の高額な人件費、注文額の低さという重大な課題があるのに対し、新興国市場ではこうした課題はないとした上で、「この分野では現金が企業を守るため、資金力が潤沢なGopuffが米国を、Getirが英国を制するでしょう」と述べた。

新興国市場の話が出たことから「あなたの投資範囲は世界中に及びますが、強く関心を寄せる地域はありますか?」と宮武氏に問われ、同氏は次のように述べた。

「僕は世界中の優れた起業家に投資します。いま注目すべきは、世界中に人材が分散していることです。勢いはコロナ禍で増している。僕は世界の一流起業家と働くためにメディアを使います。メディアは僕の事業の看板なので極力大きくしたい。番組の力で20VCの存在感を高めるのです。だから地理的な好みはありません。Zoomの世界ではそれがいっそう重要です。これまでは地域による優位性がありましたが、今はZoomで誰にでも会える。ラテンアメリカが良い例です。ラテンアメリカでの出資先獲得競争は激しさを増すばかりです。状況は一変しますよ。業界を根底から革新する、世界の一流企業を支援できます。僕は事業の地域性を重視しませんが、他の方はそうではないようです。事業の成長に地域との関連性を見出して『やはり重要だ』と思うとしても、その関連性を証明する明白な証拠はなく、正解の可能性も、思い違いの可能性もあります。だから僕はただ、世界の一流企業を峻別する転換点に立っていたい。必ずパートナーに選ばれるようにね。頼もしい協力者でありたい。それだけが僕には重要です」。

起業家から雑談を持ちかけられると嬉しい

ステビングス氏のポッドキャストでは一問一答で番組を締める。それにならって宮武氏も、このセッションの最後に短い質問をいくつかした。「助言者から得たアドバイスは?」という質問に対し、ステビングス氏は以下の3つを挙げた。

「交渉において公平さに勝る武器はない。公平でいれば後ろめたさと無縁なので、交渉中も強い自分を保てます」

「限界を人に測らせないこと。限界がわかるのは自分だけです。しかも自分自身でさえ実力を侮りがちだ。粘り強く頑張ること」

「最後の大切な教えは、どんな時も状況はさほど悪くないこと。強く前を見て歩きましょう」

そして「投資家になって良かったと思うこと」については「僕はかなり顔の広い人間だと思います。知り合いが多く、人の話に耳を傾ける。だから夜中に起業家から電話があって雑談を頼まれると嬉しいですね。起業家が僕を頼ってくれる。僕は彼らの戦友だ。そうやって彼らを支えます」と、ポッドキャストとVCの両面で活躍する同氏ならではの答えが返ってきた。

TechCrunch Tokyo 2021は、12月31日までアーカイブ視聴が可能だ。現在、15%オフになるプロモーションコードを配布中だが、数量限定なのでお早めに。プロモーションコード、およびチケット購入ページはこちらのイベント特設ページからアクセス可能だ。

AIアプリケーションのためのストリーミングデータベースを構築するActiveloopが約5.7億円調達

Y Combinatorの2018年夏季から巣立ったActiveloopは、メディアに特化した人工知能アプリケーションのために特別に設計されたデータベースを開発している。米国時間11月2日、同社は 468 CapitalとCM Venturesがリードする500万ドル(約5億7000万円)のシード投資を発表した。これにはTribe CapitalとShasta Ventures、およびテクノロジー業界のさまざまなエンジェルたちが参加した。

同社の創業者でCEOのDavit Buniatyan(ダビット・ブニアティヤン)氏によると、同社は彼がプリンストン大学で行っていた研究から生まれた。そのとき彼は、AIのユースケースのために特別に設計された、画像や動画など非定型データのストリーミングデータベースが必要だと感じていた。同社はこの度、商用プロダクトのアルファバージョンを立ち上げている。

「私たちのAIのためのデータベースは、具体的には、データを極めて効率的に保存し、これを機械学習のアプリケーションや、コンピュータービジョン、音声処理、NLP(自然言語処理)などのモデルの訓練へストリーミングするレイターです」とブニアティヤン氏は説明している。

実用面では、ビデオやオーディオなどのデータをマシンが理解できる数学的表現に変換するためのオープンソースのAPIだ。さらにそのAPIでデータの異なるバージョンを追跡でき、そして最終的にはそれを、Amazon S3のようなにリポジトリに保存できる。

データがストリーミングで入手できれが、データサイエンティストやデベロッパーはこれまでのようにすべてのデータを手元のノートパソコンにダウンロードする必要もなく、それをモデルが使うために送ることもできる。Netflixでムービーを自分のところへストリーミングするのと同じで、自分のローカルマシンには何もダウンロードしない。

Activeloopの画像データベース(画像クレジット:Activeloop)

彼によると、このオープンソースプロジェクトには55名のコントリビューターがいて、コミュニティのメンバーはおよそ700名いる。そのプログラムはこれまでに30万回ダウンロードされた。

彼がデータをストリーミングしようと思いついたのは、プリンストンの神経科学研究所で大量のデータを扱っていたときだ。彼は、ファイルでは大きすぎると悟った。それをダウンロードするのは非実用的であり、むしろストリーミングするやり方を思いついて、それがActiveloopのベースになった。

現在、社員は15名だが、5〜6名の高度な技術者を求めている。彼が同社を創るときには、人材のダイバーシティをできるかぎり心がけた。たとえばエンジニアリング担当の副社長は女性だ。最近ではエチオピア出身のエンジニアを雇用しようとしたが、彼は結局断った。ブニアティヤン氏によれば、有能な人材であれば性別や人種や国籍などはまったく関係ないし、気にもしないという。

「人の出自や生まれつきなどはどうでもいい。重要なのは、我が社のミッションに貢献してくれるかだけです。私はこの会社をインパクトのある企業に育てたいので、そのための人材が欲しいのです」。

APIはオープンソースだが、この度アルファをリリースした商用プロダクトは、ストリーミングデータへのSQLクエリなど、いろいろな機能が加わっている。それらはオープンソースプロダクトにはない。同社はまだ売上を計上していないが、2022年の第1四半期には商用バージョンをリリースしたい意向だ。

画像クレジット:Activeloop

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Apple News、さらに米国の3都市でローカルニュース提供開始

Apple Newsは、ローカルニュースの対象地域をシャーロットとマイアミとワシントンD.C.に広げた。ローカルニュースのこの拡大によってユーザーは「Axios Charlotte」「Charlotte Observer」「Eater Miami」「Miami Herald」「DCist」「Washingtonian」「Washington Post」などのメディアにアクセスできるようになる。


ローカルニュースはApple Newsの編集者たちが整理・選択し、レストランの開店や不動産価格の動向、重要な政策決定など、多様な話題を扱う。

Apple Newsが選択整理されたローカルニュースを最初に立ち上げたのは、2020年のベイエリアとヒューストン、ロサンゼルス、ニューヨークそしてサンフランシスコだった。そして2021年前半には、サクラメントやサンアントニオ、サンディエゴなどが追加された。

Appleによると、今後もローカルニュースの対象都市は増えていく。明らかにこの巨大テクノロジー企業は、FlipboardSmartNewsといったすでに何千もの米国の都市をカバーする他のニューズアグリゲーターとさらに競合していくつもりだ。

関連記事:スマートニュースのローカルニュース機能が米国6000以上の都市で利用可能に

Apple Newsのローカルへの拡張は、AppleがFitness+と同社のApple One Premierのサブスクリプションのバンドルを11月3日にさらに17カ国(オーストリア、ブラジル、コロンビア、フランス、ドイツ、インドネシア、イタリア、マレーシア、メキシコ、ポルトガル、ロシア、サウジアラビア、スペイン、スイス、アラブ首長国連邦)に拡張していくタイミングで行われた。

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ミズーリ州知事が州のデータ漏えいを報じた地元ジャーナリストを告訴すると脅迫

米国ミズーリ州のMike Parson(マイク・パーソン)知事は、州ウェブサイトの深刻なセキュリティ障害を報道したジャーナリストを告訴すると脅したことで前代未聞の非難を浴びている。

先にSt. Louis Post-Dispatch(セントルイス・ポスト・ディスパッチ)紙のJosh Renaud(ジョシュ・ルノー)記者は、 州の初等中等教育局(DESE)のウェブサイトが、10万人を超える教員の社会保障番号(SSN)を露出したことを報じた。問題のSSNは同サイトのウェブページのHTMLソースコード経由で発見が可能で、インターネット接続のある人なら誰でも、ページで右クリックして「ページのソースを表示」を選ぶだけで個人情報を見ることができる。多くの人にとって、ページのソースコードはキーボードの「F12」キーを押すだけで見える。

Post-Dispatch紙はウェブサイトを修正するよう州当局に脆弱性を通知し、州に修正する時間を十分与えるために記事の公開を遅らせた。その後教育局は「教員検索機能は直ちに無効化」され、脆弱性はすでに修正されたことを正式発表した

それで終わるはずだった。当局責任者であれば、不具合を発見して公表前に警告してくれたことについて同紙に感謝するのが一般的だが、ミズーリ州の共和党州知事マイク・パーソン氏は、脆弱性を発見したジャーナリストを「ハッカー」呼ばわりし、新聞社が欠陥を発見したのは「州当局を辱める」ためだったと語った。

「ハッカーとは情報やコンテンツを不正にアクセスする連中です。この人物は自分のやったことの許可を得ていません」と米国時間10月14日の記者会見で知事は語った。「この人物は被害者ではありません。新聞社は州当局に逆らい、教員たち個人情報を漏洩させることで州をはずかしめ自分たちの報道機関の見出しを飾ろうとしたのです」。

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「私たちのシステムをハッキングする者やそれを幇助する者に対して州は断固として法的措置をとります」と、パーソン氏は言った。さらに知事は本件を郡検察庁に送致した。

当然のことながら、Post-Dispatch紙の記事に対する知事の反応(および「ハッカー」という用語に対する明らかに誤解)は批判を噴出させ、彼自身の党内からも避難を浴びた。共和党のTony Lovasco(トニー・ロバスコ)議員はTwitter(ツイッター)に「知事室がウェブテクノロジーおよびセキュリティ脆弱性の報告に関する業界標準手続きを根本的に理解していないことは明らかです」と指摘し「ジャーナリストがデータ・プライバシーに関して責任を持って警告を発することは犯罪的ハッキングではありません」と付け加えた。

Ron Wyden(ロン・ワイデン)上院議員もパーソン氏の発言を非難するツイートをした。「ジャーナリズムは犯罪ではありません。サイバーセキュリティ研究も同様です。真のリーダーは報道が政府の失敗を暴露したときに攻撃犬を放ったりせず、真摯に問題を修正するものです」。

サイバーセキュリティ業界も直ちにパーソン氏の発言に介入した。ハッカーでSocialProof Security(ソーシャルプルーフ・セキュリティ)CEOのRachel Tobac(ラチェル・トバック)氏は次のようにツイートした。「公共機関の提供するツールで誰でもキーボードのF12を押すだけで個人情報が漏洩されるようなら、そこにあるのはハッキング状態ではなく、重大なデータ漏えい問題です」。

Post-Dispatch紙はパーソン氏の発言を真に受けることもなく、ルノー記者を支持する立場をとっている。同紙は、自社の記者は「自らの発見を教育局に報告することで、州当局が露見や悪用を防げるようする責任ある行動をとったのです」と語った。

「ハッカーとは、悪意や犯罪の意図をもってコンピューターセキュリティを破る人々のことです。今回の行動に、ファイアーウォールやセキュリティの侵害も、悪意も一切ありません」と同紙が声明で語った。「教育局がこれを『ハッキング』と称することで自らの失敗への批判をかわそうとすることに根拠はありません」。

もちろん、パーソン知事は、州がセキュリティ脆弱性を発見、修正するのを手助けしたその犯罪とされる行為の「責任」がPost-Dispatch紙にあると主張しているものの、米国最高裁判所が最近のVan Buren(ヴァン・ビューレン)事件の判決で、本来見ることのできないファイルや情報をアクセスした者は法に違反していると裁定したことを踏まえると、ルノー氏が最終的に有罪判決を受ける可能性は低い。

しかし、もし州当局が法的措置に出れば、訴えがジャーナリズムやセキュリティ研究を萎縮させ、セキュリティ欠陥を発見して当事者に報告したセキュリティ研究者が法的脅威や攻撃に直面する問題がさらに拡大しかねない。

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画像クレジット:Evgenii Bobrov / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ビデオコンテンツの配布と広告業務をコンテンツプロバイダに代わってSaaS化するAmagiが倍々ゲームの好調

メディアテクノロジーのAmagiが金曜日(米国時間9/10)に、1億ドルの資金を調達して、同社が放送やコネクテッドTVにクラウドからSaaSで提供している技術を、今後もさらに開発していくことを発表した。

この投資ラウンドでは、AccelとAvataar VenturesおよびNorwest Venture Partnersが既存の投資家Premji Investと歩を揃え、投資にはEmerald MediaとMayfield Fundが保有する株式の買い上げが含まれていた。また、Nadathur Holdingsが既存の投資家としてとどまる。Amigaの共同創業者でCEOのBaskar Subramanian氏によると、今回の投資で同社の調達総額は1億5000万ドルになる。

バンガロールで創業したAmagiはクラウドブロードキャストとターゲット広告のソフトウェアを提供し、それにより顧客は、自分が作ったコンテンツを、テレビ放送と、Roku ChannelやSamsung TV Plus、Pluto TVのようなストリーミングテレビで配布して収益化できる。同社はすでにそのプラットホーム上で、40か国あまりの2000以上のチャンネルをサポートしている。

Subramanian氏は曰く、「ビデオは管理が難しい技術だ。大きなファイルに対して大量のコンピューティングが必要になる。Amagiは、技術知識ゼロのコンテンツオーナーがその複雑なワークフローとスケーラブルなインフラストラクチャを単純化できるようにする。私たちが望むのは、プラグインをもっと容易にして、広告のターゲティングと収益化を開始することだ」。

その結果、Amagiの顧客は従来的な配布モデルに比べて営業コストを最大40%節約でき、広告のインプレッションを5ないし10%上げている。

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今回の新たな投資は、同社が急成長を経験しているときにやってきた。たとえばSubramanian氏によると、合衆国では過去数年間で30倍に成長している。Amigaのオーディエンス数は20億あまりに達するが、最大の市場は合衆国だ。また、ラテンアメリカとヨーロッパにも今後の成長ポテンシャルがある。

さらに昨年は売り上げが136%伸び、顧客数は前年比で44%増えた。新しい顧客にはNBCUniversalなどが含まれる。Subramanian氏によると、東京オリンピックのNBCとUSA TodayとABS-CBNの放送はAmagiのプラットホームで行われた。

ますます多くのビデオコンテンツがコネクテッドTV向けに行われるという変化により、氏によるとその市場は今や500億ドルに膨れ上がっている。そこで同社は新たな資金を当市場向けの営業の拡大とR&Dに投じて、同社のプロダクトパイプラインとM&Aの商機に投資していきたいという。同社はまだ、買収を一度もしていないそうだ。

Amagiはニューデリーにおけるブロードキャスト事業に加えて、バンガロールにはイノベーションセンター、ニューヨークとロサンゼルスとロンドンにはオフィスがある。

Subramanian氏は曰く、「消費者のビヘイビアとインフラストラクチャのニーズが臨界量に達し、新しい企業が次世代のメディアをどんどん持ち込んでいる。そして私たちは、そんな成長の大きな部分を占めている。変化が早いのはスポーツだが、今後はニュースやイベントも最大の成長分野になるだろう」。

Accelのパートナー、Shekhar Kirani氏によると、AmagiのエンタープライズSaaSへのアプローチはユニークである。それは、業界の500億ドル規模の変化がビデオコンテンツで起きていて、そこに対して彼は、支出の半分がコネクテッドTVのプラットホームへ急速に移行していくと見ているからだ、という。

ViacomやNBCUniversalなど、レガシー企業の一部は自分のストリーミングプラットホームを作っているが、そこではNetflixやAmazonがマーケットリーダーだ。しかしこの遷移を可能にしているAmagiのようなSaaS企業はまだ多くない。

Kirani氏がSubramanian氏に会った5年前には、Amagiはすでに資金状態が良好だったが、Kirani氏はそのプラットホームの大きな将来性に惹かれて、同社の成長を助けたいと願った。同社は人びとの時間を節約し、新しいコンテンツプロバイダーたちが、彼らのコンテンツをより早く配布できるようにしているから、追い風の吹く時間が今後も長い、と彼は信じている。

Kirani氏はこう付言した: 「Amagiは新しいカテゴリーを作りつつあり、今後の成長も早いだろう。同社はすでに成長中であり、業績は各年倍増している。SaaSとしてのさまざまな評価指数も驚異的だ。それは同社が、コンテンツプロバイダを世界中のいかなるオーディエンスにも結びつけているからだ」。

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文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Amagiの創業者たち、左からKA Srinivasan、Srividhya Srinivasan、Baskar Subramanian/Amagi

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