人気店の商品をアプリで注文・駅でまとめて受け取り、PICKSと阪急阪神が大阪梅田に受取特化店舗オープンへ

テイクアウトの事前注文&決済サービス「PICKS(ピックス)」を開発するDIRIGIOは9月2日、阪急阪神グループのライフデザイン阪急阪神と提携し、アプリから事前注文した商品をまとめて受け取れる受取特化型店舗「TORiCLO(とりクロ)」を開始することを明らかにした。

阪急電鉄の大阪梅田駅に実店舗を開設し、10月1日より運営する計画。まずは阪急阪神沿線などで店舗を展開する人気のベーカリーショップ12店の商品が対象になるという。

駅周辺のお店の商品を一箇所でまとめて受け取り

使い方は通常のテイクアウトアプリと同様でとてもシンプル。ユーザーはPICKSを使ってTORiCLOに登録されている店舗の中から好きな商品を選び、受け取り日時を指定した上で事前注文・決済をする。後はその時間に合わせてTORiCLOに行くだけ。注文番号を伝えれば店頭でサクッと商品を受け取れる仕組みだ。

ユーザーにとっての大きなメリットは「店内で商品を探す手間やレジに並ぶ手間から解放されること」と「わざわざ複数店舗をまわらずに済むこと」だろう。

EC感覚で自身のPCやスマホから欲しい商品を選択しておけば、店舗に行ってから欲しい商品をあちこち探す必要はない。事前注文・決済制だから当日レジでの決済も不要。「いざ店舗に行ったら商品が売り切れていた」なんて問題とも無縁だ。

またTORiCLOの場合は1店舗だけでなく周辺の複数店舗が対象になるため、駅の反対側にあるような店舗の商品もまとめて受け取ることが可能。各店舗に足を運ぶのに比べ、時間も手間も大幅に削減できる。

スタート時は注文の締切日時が「受取日の3日前の午前中」とのことなので(10月4日に受け取りたい場合、10月1日の午前中に注文しておく必要がある)、もう少し直前に注文できるようになるとさらに使い勝手のいいサービスになりそうだ。

なお両社では今後パンだけでなく、スイーツや惣菜など取扱商品を増やしていく予定だという。

「TORiCLO」阪急大阪梅田駅店は中央改札のすぐ近く(中央改札外)にあり、アクセスの良さが大きな特徴。10月1日の12時から受取を開始し、営業時間は12時〜21時の予定だ。

小売の新たなスタイルとして注目集める「BOPIS」

近年小売における新しい流れの1つとして「BOPIS(ボピス)」という概念が注目を集めている。

これはBuy Online Pick-up In Storeを略したもので、大雑把に紹介すると「商品をオンラインで購入して、実店舗で受け取る」というもの。大手スーパーのウォルマートや大手家電量販店のBestBuyなど、米国では様々な業種の店舗がこの仕組みを通じた新たな購買体験を提供し始めている。

該当店舗の商品をあらかじめオンラインで注文しておき、当日は店内の専用カウンターなどでスムーズに受け取るというのが典型例で、感覚としては「商品の取り置き」をよりスマートにしたものに近い。好きな時間にオンライン上でゆっくり商品を選ぶことができ(在庫も確保できる)、店頭で決済や商品を探す手間がないのは大きな特徴だ。

また同じ商品をECで購入する場合と比べると、送料がかからない分トータルの料金を安くできる可能性もある。

店舗側にとっても既存顧客の利便性向上や新規顧客を獲得する施策としてだけでなく、来店頻度を高めてもらうことで関係性を深めるきっかけにもなる。商品を取りに来た時の「ついで買い」による顧客単価の向上も期待できるだろう。

今回のTORiCLOはまさにこのBOPISに特化した実店舗だ。DIRIGIOがこれまで展開してきたPICKSを軸に、ライフデザイン阪急阪神と組んで駅周辺に店舗を構える複数店の商品を集めたプラットフォームとして展開する。

DIRIGIO代表取締役CEOの本多祐樹氏は従来PICKSで取り組んできた飲食店のテイクアウトに限らず「他の小売にも同様のニーズがあり、BOPISが今までにない購買体験として日本でも広がっていくのではないか」と可能性を感じているという。

「日本の場合、特に主要都市に関しては駅を中心として周辺に様々な店舗や住宅がある構造になっている。そのため今回のような駅に開設された受取型の店舗はもちろん、周辺の実店舗であっても生活動線の中で比較的簡単に接触しやすく、モノを受け取りやすい環境なのではないか。BOPISは日本にもすごくフィットした仕組みであり、EC化が加速し物流や実店舗運営の課題が露見する中で、新しい店舗のあり方になるとも考えている」(本多氏)

DIRIGIOではこれまで飲食店のテイクアウトを便利にするモバイルオーダー&ペイプラットフォーム「PICKS」を展開。今回のTORiCLOでもこの基盤を用いる

今回の取り組みは阪急阪神グループにとって昨年スタートした同グループの「事業提案制度」の第1号案件という位置付けでもある。両社でタッグを組み、まずは大阪梅田駅周辺からTORiCLOによる購買体験を浸透させていく計画だ。

テイクアウトの不便を解消する事前注文・決済アプリ「PICKS」が7000万円を調達

DIRIGIOの経営陣と投資家陣。写真右から4番目が代表取締役CEOの本多祐樹氏

商品を注文して受け取るためだけに何分、時には何十分も行列に並ぶ。人気のコーヒーチェーンやオフィス街におけるランチタイムの飲食店、フードトラックなどではよく見かける光景かもしれない。

この課題を解決するための仕組みとして注目を集めるのが「モバイルオーダー&ペイ」だ。簡単に言えばスマホアプリから事前にオーダーと決済を済ませておくだけで、行列に並ぶことなくパパッと商品を受け取れるというもの。特に海外ではスターバックスやマクドナルドを始め、様々なシーンで活用が進む。

今回紹介する「PICKS(ピックス)」はまさに飲食店がテイクアウト商品のモバイルオーダー&ペイを簡単に導入できるサービスであり、顧客を行列から解放する仕組みだ。

このPICKSを手がけるDIRIGIOは3月4日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資と日本政策金融公庫からの資本制ローンにより、総額で7000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

DIRIGIOでは調達した資金を活用して組織体制やオペレーションの強化を進める計画。なお今回同社に出資した投資家陣は以下の通りだ。

  • iSGSインベストメントワークス
  • 赤坂優氏
  • 有安伸宏氏
  • Japan Angel Fund
  • 西川順氏(既存株主)
  • Klab Venture Partners(既存株主)

DIRIGIOは2016年7月創業。2018年5月に西川順氏とKLab Venture Partnersより数千万円の資金調達を実施している。

待ち時間を解消、店舗の販促や注文の手間も減らす

PICKSは顧客と店舗の双方が抱えるテイクアウト時の課題を解決するアプリだ。

顧客向けにはテイクアウトの事前注文・決済を数タップでできるiOSアプリを提供。アプリにはPICKSを導入する店舗と各店舗のテイクアウトメニューが並び、注文後は指定した時間に店頭にいけばサクッと商品を受け取ることができる。

店舗側のアプリでは、スマホから3タップで注文の管理が可能。注文があった際にはスマホに通知が届くので、オーダー確認後に受付をタップするだけ。ダッシュボードからはPICKS経由の売上管理のほか、メニューの微調整なども簡単にできる。iPad端末など専用の機器を導入する手間もなく、使い慣れたスマホとPCでテイクアウトを始められるのが特徴だ。

DIRIGIO代表取締役CEOの本多祐樹氏は飲食店でテイクアウトを活用する際の課題として「販促チャネル」「注文チャネル」「待ち時間」の3つをあげ、これらをPICKSで解決していきたいと話す。

「店舗としては売上に繋がるか、顧客体験の向上に繋がるかが大切。(コンシューマー向けの)アプリを通じて顧客との接点を作り、集客にしっかりコミットしていく。またアプリで注文から決済までが完結する仕組みを作ることで、電話やFAXに比べて注文時の双方の負担が減るし、行列によるストレスや機会損失なども解消される」(本多氏)

2018年5月のローンチ時にも紹介した通り、PICKSはかつて本多氏がアルバイトをしていた飲食店でテイクアウトの注文を受けた際に感じた“非効率な部分”を改善すべく、立ち上げたプロダクトだ。現在の契約店舗数は170店舗を超え、都内の人気店を中心に北海道や沖縄など地方での導入も進んでいるという。

導入店舗は「すでにテイクアウトをやっていて人気があるので、業務効率化が必須」「これから本格的にテイクアウトを始めるにあたり、なるべく効率よくやりたい」という大きく2タイプ。現在は初期費用や月額の利用料などは無料で展開しているが、ゆくゆくは「売上の数パーセント」のような形で手数料収入から収益をあげる計画だ。

本多氏によると、そもそもテイクアウトの人気店が導入しているケースが多いこともあってユーザーの継続率も高いそう。翌月の継続率はだいたい35〜40%で推移していて、1オーダー当たりの単価は1600円ほどだという。

中食の注目度が高まる中で、インフラとなる存在目指す

冒頭でも触れた通り、モバイルオーダー&ペイの文化は日本よりも海外の方が先行している。スタートアップ界隈でも昨年Ritualが7000万ドルを調達したり、フードデリバリー企業のGrubhubが1億5000万ドルでTapingoを買収したりと大型のニュースが続いた。

日本でも近年ようやくこの波が本格化しつつある。昨年11月にスターバックスコーヒージャパンがLINEとタッグを組んで国内でもモバイルオーダー&ペイのテストを開始する方針を発表しているほか、マクドナルドの一部店舗でもこの仕組みが取り入れられた。

スタートアップ界隈でも「O:der(オーダー)」を展開するShowcase Gigの取り組みは何度か紹介しているし、サブスク型という違いはあれど「POTLUCK」などもこの領域に関連するサービスと言えるだろう。

特に日本国内では2019年10月に消費税の増税が実施される際、中食は軽減税率の対象となり税率が8%となることが予定されている(外食は10%)。そんな背景もあり、近年ライフスタイルの変化や食に対するニーズの多様化によって注目されていた中食市場が、一層拡大するという見方もある。

実際のところ、本多氏の話ではローンチと現在で飲食店のテイクアウトへの考え方が変わったと感じているそう。「(大手企業などに対して)以前はこちらから提案してもあまり興味を持ってもらえなかったが、今ではオーガニックで先方から問い合わせをもらえるケースが増えた」という。

今後はプロダクトの拡充とともにオペレーションの強化に取り組み、導入店舗数を拡大していく方針。並行してPICKSのプラットフォームを用いた企業との共同事業も予定しているようで、飲食店のテイクアウトを軸にしつつ、別のシーンにもモバイルオーダー&ペイの仕組みを展開する考えだ。

「世の中のインフラとなるような、テイクアウトプラットフォームを作るのが目標。アプリからストレスなくテイクアウトを利用できる体験をもっと広げていきたい」(本多氏)

Jリーグクラブが屋台の行列を事前注文・キャッシュレス決済で解消へ

モバイルオーダー&ペイプラットフォーム「O:der(オーダー)」などを手がけるShowcase Gigは2月21日、石川ツエーゲン運営のプロサッカークラブ「ツエーゲン金沢」のホームスタジアム(石川県西部緑地公園陸上競技場)に隣設するスタジアムグルメ街「ツエーゲン茶屋街」において、2019年開幕戦より順次O:derを導入すると明かした。

ツエーゲン茶屋街はツエーゲン金沢のホームゲーム開催日のみにオープン。石川ならではの食材を使ったスタジアムグルメや、グッズなどの物販屋台が立ち並んでいる。

Showcase Gigいわく、ツエーゲン茶屋街では混雑時、およそ1時間の待ち時間が発生するという。その大きな原因の一つはやり取りに手間がかかる“現金”だろう。ツエーゲン茶屋街での支払い方法は現金支払いのみ。支払い時の小銭を探す手間などが生じ、待ち時間は増幅しているそうだ。

だが、Showcase Gigが提供するスマホアプリO:der(iOS/Android対応)を利用すれば、利用者は試合観戦前にスタジアムグルメの注文・決済を済ませることができる。要するに、各出店前の行列に並ぶことなく、キャッシュレスかつスムーズな受け取りが可能となる。

店舗側では口頭による注文受付や会計業務のオペレーション軽減ができるほか、店舗スタッフの業務効率化が図れるため、売上アップも見込める。

このサービスは、3月17日に石川県西部緑地公園陸上競技場で開催される、2019シーズン明治安田生命J2リーグ第1節「ツエーゲン金沢 vs FC町田」の試合当日より開始。

利用するにはまず、来店前にO:derへアクセス。商品を選択後、受取時間を指定。購入確定画面に進み決済し、指定時間に店頭にて受け取る。

Showcase Gigは2月1日、ユーシーシーフードサービスシステムズが運営する上島珈琲店の大手町フィナンシャルシティ店をキャッシュレス化したと発表。JR東日本スタートアップと九州旅客鉄道との資本業務提携を発表している同社は、1月にはJR東日本グループ運営の首都圏駅ナカ9店舗でモバイルオーダーの実証実験を開始している。

O:derはPOSレジやデジタルサイネージなど、従来の端末とも連携可能なモバイルオーダー&ペイプラットフォームで、全国のおよそ1200店舗の飲食・小売店舗が同プラットフォームを活用したサービスを利用している。