App Annieが2019年のモバイルアプリをレポート、総売上13兆円超、ダウンロード2040億回

2019年のモバイルアプリの利用状況についてのレポートが発表された。ダウンロード総回数は新記録となる2040億回で対前年比6%のアップ、2016年と比較すると45%アップ。売上はアプリ本体価格、サブスクリプションなどのアプリ内課金を含めて1200億ドル(約13兆2000億円)だった。ユーザーは平均して毎日3.7時間を費やしていた。

この数字は「モバイルの現状」(State of Mobile)と題するApp Annieのレポートによるものだ。以下、いくつかのトレンドと将来予測をハイライトしてみよう。

同社によれば、2019年のモバイルアプリの利用拡大は主としてインド、ブラジル、インドネシアなどの人口の大きい新興市場の急成長によるものだという。これらの市場のダウンロード数は2016年と比較してインドが190%、ブラジルが40%、インドネシアが70%アップとなっている。中国の成長は80%だった。一方、米国におけるダウンロード数の伸びは5%と鈍化している。

しかし成熟市場のユーザーがアプリのダウンロードを止めたわけではないのはもちろんだ。対前年比の伸び率が低下したに過ぎない。 成熟市場には依然巨大なダウンロード数があり、2019年には米国だけで123億回、日本で25億回、韓国で20億回のダウンロードが記録されている。App Annieのダウンロード回数には再インストール、同一アプリのアップデートは含まれていない。

2019年のアプリストアのユーザーの支出総額は1200億ドルで2016年の 2.1倍。やはり支出の過半数はゲームに対するものだった(72%)。トレンドとしてはサブスクリプションの普及が注目された。ゲーム以外のアプリでの昨年のサブスクリプションは支出総額の28%を占めたが、これは2016年の18%と比較して大きなアップだった。

実際、サブスクリプションは多数の非ゲームアプリの主要な収入源となっている。たとえば米国における iOSアプリのトップ250タイトルの売上の97%はサブスクリプションによるものだった。また94%のタイトルがサブスクリプションを利用していた。AndroidアプリのPlayストアでは売上の91%がサブスクリプションで、トップ250タイトルの79%がサブスクリプションを利用していた。

なかでもデートアプリのTinderやビデオ番組のストリーミングのNetflix、Tencent Videoなどでは2019の消費者支出の伸びはサブスクリプションによることが数字ではっきり示された。

ゲーム、サブスクリプションともに消費者の支出では、米国、日本、韓国、英国などの成熟市場が大きな割合を占めている。ただし市場規模からいえば、中国が世界の支出の40%と圧倒的だ。

2019年のトレンドとしては、各種のIoT(モノのインターネット)やスマートデバイス向けモバイルアプリが目立つようになった。IoTコントロールアプリのトップ20のダウンロードは1億600万ダウンロードだった。また1996年以降に生まれたいわゆるZ世代の1アプリ、1カ月の使用時間は3.8時間にもなっている(ゲーム以外のトップ25アプリの平均)。モバイル広告の売上は2019年実績が1900億ドルだったが、2020年には2400億ドルに達するものと予測されている。

ゲームアプリの売上は非常に大きいのでレポートでも詳しく扱われている。モバイルゲームに対するユーザーの支出はMac/Windowsゲームの2.4倍、ゲーム専用機ゲームの2.9倍だった。2019年のモバイルゲームの売上は他のプラットフォームのゲームの総額より25%も大きかった。App Annieは今年は1000億ドルの大台に乗るものと予測している。

パズルやアーケードを筆頭とするカジュアルゲームはダウンロード回数では2019年のトップだった。シューティングや ロールプレイングなどの本格的ゲームはダウンロード回数の18%を占めるだけだったが、ゲーム時間では55%を占めてジャンルのトップだった。Androidのアクション系ではシューティングゲームのPUBG Mobileが利用時間のNo. 1で、パズルのAnipop がカジュアルゲームのトップとなった。

本格的なゲームの売上はゲーム売上の76%を占め、カジュアルゲーム(18%)、 オンラインカジノ(6%)を大きく引き離した。

2019年では2017年に比べて500万ドル以上の売上を得たゲームの数が17%増えている。売上1億ドル以上のタイトル数は同期間に59%も増えている。一方、従来型のゲームとはタイプが違うタイトル向けにiOSゲームではApple Arcadeが開設されている。ただしこのストアの売上は外部からはまったくモニターできない。このストアはApp Annieの将来に問題を引き起こすかもしれない。

App Annieはこのほか、フィンテック、ソーシャルなどのバーティカルも調査している。フィンテックアプリのユーザーベースの伸びは伝統的なバンキングアプリの伸びを上回っている。ショッピングアプリのダウンロードは対前年比で20%増加して54億回となっている。ストリーミングでは2019年のコンテンツ視聴セッション数は2017年に比べて50%増加した。またモバイルの総利用時間のトータルのうちの50%はソーシャルネットワークなどのコミュニケーションアプリが占めた。

2019年に世界で210%の急成長を達成したショートビデオサービスのTikTokは特に注意深く検討されている。ただし全利用時間の8割は中国内のユーザーによるものだった。

2019年にモバイルアプリに強い影響を受けたビジネスは、ライドシェア、フードデリバリー、デート、コンテンツストリーミング、ヘルスケアとフィットネスだった。

同社が注目した点には、オンライン通販を専門とするショッピングアプリが物理店舗の企業のショッピングアプリに比べて1ユーザー1カ月あたりで3.2倍も利用されていることだ。App Annieのレポートにはこのほかさらに詳しい分析が載っている。

App Annieではまたアクティブユーザー数、ダウンロード数、売上をキーにした2019年トップアプリのリストを作っている。 ゲーム以外のアプリのエンゲージメントでは依然、Facebookグループのアプリが上位を独占している。世界のアクティブユーザー数ではトップがWhatsApp、以下Facebook本体、Facebook Messengerが続き、4位がWeChat、5位が再びFbグループのInstagramという結果だった。

ただし消費者の支出となると2019年ではTinderがトップ、Netflix、Tencent Video、QIYI、YouTubeなどエンタテインメント系アプリが続いている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

App Annieが2019年のモバイルアプリやゲームのiOS/Android総合トップ10を発表

App Annie(アップ・アニー)が発表した今年の年間レポートによれば、世界のモバイルユーザーは2019年末までにApp StoreとGoogle Play から合計1200億回のダウンロードを行うことになるという。

これは2018年から5%のアップで、再インストールやアップデートのダウンロードは含まない新規ダウンロードだけの回数。ダウンロード回数の新記録という、注目すべき数字だ。2019年の両ストアの売上合計は900億ドル(約9兆8650億円)に近づいており、対前年比で15%のアップだ。このレポートには今年のダウンロード回数、売上などのトップ10もリストアップされている。

世界で最もダウンロード回数が多かったアプリ(ゲームを除く)の顔ぶれは今年も比較的安定していた。シンガポールに本拠を置くショートビデオのLikeeが唯一の新顔だった。ここではTikTokが4位となり、FacebookグループのInstagramだけでなくSnapchat、Netflix、Spotifyも上回った。ただし今年もダウンロード回数トータルではFacebookグループが圧倒しており、Messengerが1位、Facebook本体が2位、WhatsAppが3位だった。

ゲームのダウンロード回数はアプリよりはるかに入れ替わりが多く、トップ10のうち7タイトルが今年の新顔だった。カジュアルカーレースのFun Race 3D、人気シューティングゲームのモバイル版であるCall of Duty: Mobileがこの乱戦に割り込んだのが目立つ。

アプリ売上ではゲームが圧倒的な割合を占めるが、今年のトレンドはサブスクリプションの伸びだった。ゲーム以外のジャンルでの売上の成長は写真とビデオ、エンタテインメント分野が中心となり、App Annieではこのトレンドは2020年に継続するものと予測している。今年大人気となったDisney+のサブスクリプションの売上も来年はリスト入りしてくるかもしれない。この分野ではHBO Max、NBCUのPeacock、ジェフリー・カッツッェンバーグのQuibiといったメジャーなサービスの開始も予定されている。

App Annieが報じたとおり、すでに多くのアプリがサブスクリプション・モデルを採用している。2019年9月を終期とする年度で、ゲーム以外の売上トップ100のアプリの95%はアプリ内課金によるサブスクリプションだった。アプリ、ゲームのパブリッシャーがサブスクリプションを採用するトレンドは今後も継続し、消費者の支出を押し上げるだろうと同社は予測している。

昨年はNetflixが首位だったが、今年はデートアプリのTinderがNetflixを押しのけて1位となった。昨年は「ゲーム・オブ・スローンズ」のおかげで好調だったHBO NOWが今年はトップ10入りを果たせなかった。かわりにLINEマンガが滑りこんだ。Tencent VideoとiQIYIは昨年と同順位だったが、YouTubeは7位から5位に上昇し、逆にPandoraは5位から6位に順位を落とした。

App Annieでは今年は「ブレークアウト」という新しいジャンルを作り、今年人気が出たアプリ、ゲームをリストアップした。これはダウンロード数、売上の各分野で対前年比伸び率が最大だったタイトルだ。ダウンロード回数では7位だったYY IncのLikeeが今年のブレークアウト・アプリのトップとなっている。2位も同じYY IncのNoizz、4位も同社のアプリでインドで人気が出たソーシャルゲームのプラットフォームのHagoだった。ブレークアウトの3位はByteDanceのHeloとなっている。Good Job Gamesのタイトルが1位から3位まで独占しているのが目を引く。

売上のブレークアウトにはYouTube、iQIYI、DAZN、Tencent Videoなどが入っている。顔ぶれは他のトップ10に近い。ゲーム分野ではハイパーカジュアル系タイトルがトップ10のうち7つを占めた。話題のリリース、任天堂のマリオカートツアーとActivisionのCall of Duty: Mobileもランクインしたが、やはり消費者の支出はハイパーカジュアルのようだ。

【Japan編集部追記】App Annieには日本におけるiOSアプリ、ゲームについてのリストも公表している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

インディーズ農場経営ゲームのStardew ValleyがiOSとAndroidに登場

ある男性が空き時間に1人で開発した、ヒットインディーズ農場経営ゲームのStardew Valleyが、モバイルに登場する。Harvest Moonの精神を引き継ぐこの愛らしいゲームに、私はこれまでに何十時間という時間を費やした。そしてこの先何回かの飛行機移動時に、何をして過ごすかがこれではっきりした。

ご存じない方のために説明すると、Stardew Valleyとは、プレイヤーが素敵な小さな町の近くの農場を相続し、その農場を再生するゲームだ。ご近所さんたちと友人になり(ロマンスもあり)、釣りをし、洞窟の中で戦い、新玉ねぎや西洋ワサビを収穫し、鉱物を掘り出し…まあ、やることは沢山ある。驚いたことに、これは完全に1人の人間、Eric Baroneによって制作された。彼は、コード作成、ピクセルアートの作成、作曲などの、文字通りすべてを自分で学んだ。そしてもちろん、その開発には長い時間がかかっている(GQが最近、興味深いプロフィールを書いている)。

幸運なことにそれは大ヒットとなった。Baroneにとってそれは大きな驚きであり、間違いなく喜びでもあり、またそうなって然るべきものだった。

もともとはPC用にリリースされたStardew Valleyはそれ以来(Barone以外のチームの助けを借りて)主要なコンソールへと拡張され、今やiOSへ登場しようとしている ―― しかも機能を削らない完全版として。Baroneはブログ記事の中でそのように念押ししている。このゲームは大規模なものだが、モバイルへの移植で省略されたものはない。

「これは完全版です、縮小版ではありません、そして他のバージョンとほぼ同様にプレイすることができます」と彼は書いている。「主な違いは、iOS上でのタッチスクリーンを使ったゲームプレイのために、再構築された部分(新しいUI、メニューそしてコントロール)です」。

2016年の初めにゲームがリリースされて以来、Baroneはゲームに多くの機能を追加してきた、そしてモバイル版はバージョン1.3までのアップデートを含んだものになる。つまり多くの追加エリアと機能は含まれているものの、最も最近追加されたマルチプレイヤーオプションは含まれていない。とはいえそれらは計画されているので、共同農場で楽しみたいときにはもう少し待たなければならない。残念ながら拡張機能(mod)はサポートされない。

モバイル版への移植では珍しいことだが、PC版で行っているゲームの状態を、iTunesを通してiOSへ転送することができる。もう一度初めからやり直す必要はないのだ。まあやり直しも楽しいのだが、これまでにゲームに費やした時間を思うと、全てをやり直すことには少々気後れするかもしれない。

Stardew Valleyに関してはいくらお勧めしても足りない位だ。操作性はそれが提供するリラックスしたゲームプレイには十分すぎるものだ(戦闘は本当に楽だ)。10月24日からApp Storeで8ドルで販売される(Androidバージョンもすぐに登場するはずだ)、これはオリジナルの価格の15ドルの半分である。これは驚くほど寛大な値付けだと言わざるを得ない。買って間違いない。信じて欲しい。

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(翻訳:sako)

ノスタルジアの限界と任天堂――コンテンツの魅力以外に必要なもの

世界の人々は新たなリンクの冒険を待ち望んでいるのだろうか?まだみんな青い甲羅を投げたがっているのか?そしてレインボーコースをもう1周しようと思っているのか?はたまた、全員ゲットし直そうとするだろうか?もしもあなたが任天堂の経営陣であれば、かつては消費者に崇拝されていたブランドがノスタルジアの限界にぶち当たり、何かとても大きなものが崩れようとしていると気づき始めている頃だろう。

幸いなことに任天堂は次のステップを踏み出す準備ができているようだが、もしもそれが上手くいかなければどうなるのだろうか?

予め伝えておくと、私は熱心な任天堂ファンだ。熱狂的なファンとまでは言わないが、任天堂にはディズニーやDCコミックス、マーベル・コミックと同じくらい文化的な価値があると思っているし、子どもたちにマリオやゼルダについて教えるのは、チェスの遊び方を教えるくらい大事なことだと思っている。任天堂はジェネレーションXの幼少時代を形成したブランドであるばかりか、どの家庭の親も任天堂のフラッグシップゲームであれば、家族全員が間違いないく楽しめると知っている。親は懐かしさから任天堂のゲームをプレイし、子どもは一風変わったディテールや色褪せないゲームの仕組みに魅了されるのだ。これこそ任天堂のゲームを、LEGOやRiskと同じくらい一般家庭に普及させた彼らの魅力だ。

しかし私がもっとも心配しているのは、任天堂キャラクターの新しい冒険を、次の世代の子どもたちが目にしなくなるかもしれないということだ。ARやVRは、私たちが知っているおもちゃや遊び部屋の概念を打ち崩そうとしており、FacebookやHTCはそこで一山当てようとしている。親の立場からしても、Wii Uを起動して引っかき傷のついたディスクをセットするよりも、何世代か前のiPadの前に子どもを座らせる方がずっと楽だ。

任天堂は今いる場所から前進していく中で、いくつかの攻撃を避けていかなければならない。ハードウェアに縛られている同社も、汎用性の高いタブレットやスマートフォンの方が、SwitchやWiiよりもよっぽど人気があるということは理解している。そこで彼らはニンテンドークラシックミニで往年のファンの心をつかもうともしたが、専用ハードウェアというのは消費者が継続的にお金をつぎこむには割高だということを思い知らされた。彼らがiOSやAndroid向けにも人気コンテンツをつくれるということも明らかになったが、4.99ドルでゲームを販売する競合企業がいるオープンな世界で、59.99ドルのゲームを売りさばくことなどできるのだろうか?

昔からのゲームにとっては受難の時期だ。数は少なくとも声の大きい保守層は、任天堂が昔ながらのラン&ガンゲームに少しでも変更を加えると騒ぎ出し、任天堂の手の届かないところでは、次々と新しいフランチャイズが誕生している。そして何より、ハードウェアの出荷という予測しづらい要素のせいで、何百万人もの潜在的なSwitchユーザーが同ハードの購入を諦めており、個人的にはこの状況が休暇シーズンに入っても続くと考えている。

私は不安と喜びを同時に感じながらSwitchをプレイしている。まだワクワクするようなゲームはそれほど出ていない。さらに私はNES(日本で言うファミコン)以来ゼルダシリーズからは離れてしまっており、日本のRPGスタイルのゲームにも過去10年の間ほとんど興味を持ったことがない。Wii Uの成功の立役者である『スプラトゥーン』はSwitchにぴったりのゲームだと思うが、まだSwitch版は発売されていない。似たような機能のもっと安いハードウェアが存在する中、ゲーム用のハードウェアに299ドルを支払って、さらにひとつひとつのゲームのために59ドルを追加で払うというのも納得がいかない。私は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が嫌いだと言っているわけではなく、任天堂はこのようなゲームをもっとたくさんスピーディーにリリースしなければいけないと考えているのだ。

そもそも任天堂は、フルスタックのゲーム会社という珍しい存在で、ゲームの全てを自分たちでコントロールしている。なぜ彼らはソフトウェアやキャラクター、そしてゲーム体験を自分たちのものにできるのだろうか?もちろんそれは、任天堂がつくる素晴らしいハードウェアのおかげだ。Switchはそれ以前のハードウェア同様、頑丈で簡単に操作でき、任天堂がつくるゲームのスタイルにも合っている。しかし、それだけでいいのだろうか?Wii UやXbox、PS4、iPad、パソコン、そして家庭にあるそれ以外の全てのデバイスが、かつてはNESが独占していた子どもの興味をひくために競い合う中、不満顔の親はさらに300ドルものお金をSwitchに使うだろうか?

ゲーム専用ハードから汎用デバイスへの移行で1番苦しむのは任天堂だ。むしろこの移行が起きていないということは、パワーで劣るiOS・Androidデバイス向けに本格的なコンテンツを制作・販売することの難しさを物語っている。人気ゲームにつきまとう経済的な動きも関係しているだろう。ひとたびモバイルデバイス向けのオープンなゲームの制作が一般化すれば、私はこの状況が変わると考えており、興味深いことに現在Switch自体がソフト会社の論理を擁護しようとしているのだ。というのも、消費者にSwitchが使われている限り、ソフト会社も自分たちのプロダクトを60ドルで販売することができる。

クリエイティビティと楽しさへの任天堂のひたむきさが、同社を業界のリーダー的存在にまで引き上げた様子を上手く表現した面白い話がある。1986年に任天堂とタッグを組んでいたSRDのプログラマーは、横だけでなく縦スクロールを取り入れた新しいゲームの仕組みを考案し、デモ版を制作した。詳しい話はこちらの記事を参照してほしいが、結局そのデモは単体のゲームとして発売されることはなく、その代わりに任天堂はマルチスクロール式の『夢工場ドキドキパニック』をリリースした。この作品は日本で大ヒットし、それを受けて(当時のアメリカでは外国製のゲームが日の目を見ることはなかった)任天堂は同ゲームをマリオプラットフォームに移管することを決めた。

任天堂のゲームプロデューサー宮本茂氏は当時、「楽しければ何でもありです」と語っていた。その後同社は『夢工場ドキドキパニック』のキャラクターをマリオシリーズのものに置き換え、『Super Mario Bros. 2』としてリリースする(日本版注:これは日本版の『スーパーマリオブラザーズ2』とは別物で、日本国外で先にリリースされた『Super Mario Bros. 2』は、後に『スーパーマリオUSA』として日本に逆輸入された)。1000万本も売れた同ゲームは、NESソフトの中では異彩を放つかなり複雑なゲームのひとつで、マリオシリーズのストーリーの大部分を固めた作品でもある。

しかし今では全てが”楽しく”なった。『スーパーマリオ ラン』も『Pokémon GO』も楽しいし、『Civilization Revolution』や『Words with Friends』をタブレット上でプレイするのも楽しい。プレイヤーの心を奪うような、ちょっと変わったゲームもさまざまなプラットフォームで楽しめるようになった。”楽しさ”で溢れる世界の中、任天堂のような企業はどのようなポジションにつくのだろうか?

ゼルダやマリオやサトシ、そして任天堂ファミリー全員がこれからもずっと私たちと一緒に時を過ごそうとしているが、それ以外のデジタルワールドのキャラクターによって彼らの存在感が薄れていく中、コンテンツの魅力やノスタルジアだけでプレイヤーを虜にし続けるのは段々と難しくなっていくだろう。家族全員が楽しめるような魅力的なゲームを任天堂がつくれるのは分かっている。ただ結局のところ、今後も全てのプレイヤーが家で座ってゲームを楽しみたいと思うかどうかが問題なのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Glu MobileがPlain Vanilla Corpを750万ドルのバリュエーションで買収

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Kim Kardashian、Hollywood and Nicki Minaj、The Empireなど、著名人をテーマにしたゲームを開発するGlu MobileがアイスランドのPlain Vanilla Corpを買収したことがSECへの提出書類により明らかになった。Plain Vanillaはソーシャル・トリビアゲームのQuizUpを開発する企業だ。

この買収の内情に詳しい情報源によれば、買収時のPlain Vanillaの評価額は免除されたGlu Mobileへの債務額を含め750万ドルだったという。

Plain Vanillaに出資した投資家にとって、この買収は悲しいニュースだったことは間違いない。言ってみれば、Plain VanillaはGlu Mobileに「盗まれた」ようなものだったのだ。

アイスランドを拠点とするPlain Vanillaは、2013年にSequoiaやTencentなどからシリーズBで2200万ドルを調達している。Crunchbaseによれば、同社の合計調達金額は4000万ドルであり、獲得したユーザー数は数千万人にものぼる。

ソーシャル性とモバイルゲームの要素を組み合わせたQuizUpは、友人やマッチした対戦相手とテーマに沿ったトリビアクイズを楽しむというゲームだ。

また、QuizUpではユーザー自身がトリビアクイズを作成することもできる。教育者やトリビアファン、そして自社製品をクリエイティブに宣伝したいという企業をターゲットに設けられた機能だ。

昨年、Plain Vanillaは企業の社員教育にQuizUpを利用できるソフトウェアをローンチしている。それに加え、同社は放送局のNBCと共同で、視聴者とのインタラクティブな要素にQuizUpを利用した全10エピソードのテレビ番組を製作すると発表していた。

もちろん、このようなプロダクトの開発と維持にはコストがかかる。今年1月、Plain Vanillaは公開企業のGlu Mobileに約束手形を発行して資金援助を受けていた。資金の返済ができない場合、Glu MobileはPlain Vanilla本体およびQuizUp関連の資産を買収できるというオプション付きの約束手形だ。

そして今年8月、NBCとの共同テレビ番組がキャンセルされたと報じられ、十分な資金もなく、新しい出資者も見つけられないPlain VanillaとQuizUpがGlu Mobileによって買収される可能性が濃厚になった。

Plain Vanilla CEOのThor Fridrikssonは今回の件について多くを語っていない。彼は一言、「Gluが私の子供を可愛がってくれることを願っています」と語ったのみだ。

QuizUpへの出資に加わった投資家からのコメントは、まだ入手できていない。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Tencentが決算を発表:当期純利益は15億ドル

Tencent Holdings Ltd.'s new headquarters stand under construction in Shenzhen, China, on Monday, Aug. 22, 2016. The new headquarters for Tencent is a $599 million project aimed at creating a campus-like atmosphere for the urban setting. Scheduled for completion next year, the Shenzhen skyscraper could become one of the largest labs for new internet services and connected devices. Photographer: Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images

アジアのテック系企業のなかで最も企業価値の高いTencentが決算を発表し、同社が順調に利益を拡大していることが明らかとなった。メッセージング・アプリのWeChatとモバイルゲーム事業がこの好業績の牽引役だ。

2016年Q3における同社の当期純利益は昨年比43%増の106億人民元(15億ドル)で、収益は同52%増の404億人民元(60億ドル)だった。Wall Street Journalによれば、S&O Capital IQに掲載されていたアナリストの事前予想は当期純利益が109億人民元、収益は393億人民元であり、その予想と概ね一致していると言える。

今年はTencentの創業18周年の年だ。先日、同社はその記念として従業員に合計で2億2000万ドル分の株式を分け与えている。しかし、Tencentの名を世界に轟かせるきっかけとなったのは、つい2年前にローンチしたばかりで、中国では「Weixin」と呼ばれるメッセージング・アプリのWeChatだ。

現在、WeChatのMAUは8億4600万人だ。この数字は前年に比べて30%増加しており、前四半期の8億600万人と比べても順調に成長を続けていると言えるだろう。Tencentが抱えるビジネスのなかでも急速に成長中なのが広告ビジネスであり、それを牽引しているのがWeChatなのだ。

同社のオンライン広告収益の合計は、2015年Q2比で51%増の75億人民元(約11億ドル)だ。なかでも、同社が「パフォーマンス・マーケティング」と呼ぶ分野の収益は同83%増の44億人民元となっている。Tencentによれば、WeChatのタイムラインに表示される広告、同社のモバイル・ニュースアプリ、WeChatのオフィシャル・アカウントとして登録されたブランドからの収益がこの成長の原動力となっているという。

その一方で、今でもTencent最大の事業として君臨するのがモバイル・ゲーム事業だ。今年6月に「Clash Of Clans」の開発元であるSuperCellを買収したことからも分かるように、モバイル・ゲームはTencentが集中的に投資を続けている分野でもある。

2016年3QにおけるTencentのモバイル・ゲーム事業の収益は前年同期比87%増の99億人民元(約15億ドル)だった。一方で、モバイルとPCを合わせたゲーム事業全体の収益は182億人民元(約27億ドル)である。依然としてPCゲーム部門の存在感は大きいが、その成長率は前年比でわずか10%に留まっている。

今年初め、同社はWeChatと統合されたモバイル・ペイメントサービスのWePayに関する数字を初めて公開し、WePayを通して送金された金額の合計が500億ドルに達したと発表している。送金データの詳細については明らかにしなかったものの、WePayとそのクラウド・サービスによって、Tencentがもつその他のビジネスの収益が四半期ベースで348%増加したとコメントしている。金額にすると四半期ベースで50億人民元の引き上げ効果だ。

Tencentの会長兼CEOであるPony Maは決算発表資料のなかで、「私たちのモバイル・ゲーム事業とソーシャル事業の前年比成長率は業界平均を上回っており、健全なマージンを生み出し続けています。その一方で、私たちのエコシステムのインフラストラクチャーとなるようなサービス、つまりオンライン・ペイメントやクラウド・サービスなどのサービスも、急速にユーザーから受け入れられ、利用され始めています」と語っている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

FacebookがMessenger上で遊べる「Instant Game」をテスト中

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Facecookは、Facebook Messenger用の”Instant Game”プラットフォームのローンチを予定しており、今後ユーザーはMessengerアプリ上で友だちとカジュアルゲームで遊べるようになる。TechCrunahは、キャンディークラッシュの開発元であるKing.comが、”Shuffle Cats Mini”と呼ばれるInstant Gameのひとつのテストをニュージーランドで既に開始していることを突き止めた。どうやらBig Vikingなど他のディベロッパーも、Instant Gameのローンチに向けて準備を進めているようだ。

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King.comのInstant Game “Shuffle Cats Mini”のFacebookページ

これまでFacebookは、AppleのiOSやGoogleのAndroidによって、ネイティブモバイルゲームの世界からは締め出されてしまっていた。しかし、Messengerをモバイルアプリのポータルとして利用してそこにゲームを盛り込むことで、Facebookは新たなプラットフォームをつくり出し、Messengerアプリにユーザーを引き付けることができるかもしれない。これが実現すれば、ユーザーはInstant Gameで遊ぶためにMessengerを利用し、友人との対戦もMessenger経由で行うことになる上、もしかしたらFacebookはゲーム内課金の売上の一部を手数料としてとることができるかもしれない。なお、Facebookは本件に関するコメントを発表していない。

本日のThe Informationの報道によれば、Facebookはユーザー同士が順番にプレイでき、必ずしも同時にゲームを開いている必要のないような非同期型ゲームのためのプラットフォームを開発している。Instant Gameは、チェスやバスケットボールサッカーといったFacebookが今年に入ってからMessenger向けに自社開発したミニゲームを、サードパーティも開発に参加できるように発展させたようなものだ。Facebookは開発キットか開発ツールを今月後半にもリリースするらしいが、ディベロッパーがゲーム内課金できるかについてはまだ分かっていない。

最初のInstant Game

The Informationはさらに、開発元となるスタジオの名前は明らかにしていないものの、Facebookが既にInstant Gmaeのテストをひそかにはじめたと報じている。TechCrunchでは、カジュアルゲームの大手King.comがShuffle Cats Miniと呼ばれるゲームのFacebookページ(注:既に同ページは閉鎖済み)を既に公開しているのを発見し、その説明には「Kingが開発した、カード投げがプレイできる洗練されたInstant Game」と記載されている。

Facebookページ上では、ニュージーランドなどいくつかの地域のユーザーをターゲットとしてゲームが宣伝されているが、アメリカで携帯電話から読み込もうとするとエラーメッセージが表示される。どうやらShuffle Cats Miniは一部がウェブ上で読み込まれるようになっており、小さな射的場で標的に向かってカードを投げるゲームであることが分かっている。しかし、ゲームをクリアしたり、友だちとスコアを共有して競い合うような遊び方はできないようで、これはMessengerのバスケットボールやサッカーゲームの仕組みと同じだ。

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Shuffle Cats Miniは限られた地域でしかプレイできないが、この画像からゲームの様子を確認できる。

もう少し調べてみたところ、先週始めのVentureBeatの情報を発見し、そこにはBig Vinkingというスタートアップが、「HTML5でできたどこでも遊べるゲーム」を開発するために2100万ドル以上を調達したと書かれている。

そこで私がBig Viking CEOのAlbert Laiに、同社のプランについて尋ねたところ、彼は「HTML5のテクノロジーを使えば、ボットが搭載されたメッセンジャープラットフォームを含み、基本的にどんな環境にも私たちのゲームを組み込むことができます。つまり、ユーザーはどんなメッセンジャープラットフォーム上でも、私たちのゲームで遊ぶことができるんです。これによって流通システムの力関係が大きく変わり、メッセンジャーさえあれば私たちは即座にゲームを配信できるようになります」と答えた。

しかし、私がBig VikingのゲームがFacebookのInstant Gameとしてリリースされるのか聞いたところ、急に彼は口を閉ざし「Facebook関連の業務についてはお話できません」としか答えなかった。これを見ると、Facebookは緘口令を敷いているようだ。

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メッセージアプリのKik上では、チャットボットを通じてGalatronVSが配信されており、ここからFacebook Messenger上でInstant Gameがどのような動作をするかについてのヒントが得られるかもしれない。

Big Vikingのウェブサイト上では、メッセージ機能付きの、宇宙を舞台にした縦スクロールシューティングゲームGalatron VSのお試し版が公開されている。ゲーム内では、コンピューターが操作するキャラクターからメッセージ機能を通じて、スコア目標1万ポイントといったチャレンジ内容が送られてくるようになっている。

このゲームは既にメッセージアプリKik上のゲームストアで配信されている。プレイヤーは、まずボットとのチャットを通じて”Galatron宇宙学校”に招かれ、ちょっとしたやりとりの後に、HTML5のゲームへのリンクが含まれたメッセージを受け取る。トーナメントモードでは、プレイヤーの機体のそばに他のプレイヤーの”ゴースト”が表示されるようになっており、これはInstant Gameの非同期型というアイディアに合致する。例えば、友だちがFacebook Messenger上でGalatron VSをプレイした後に対戦を挑んできた場合、プレイヤーは友だちの機体のゴーストを自分がプレイしているときに確認することができる。

Galatronのグラフィックはシャープで操作性もよく、特にHTML5ゲームとしては良くできている。そしてこのゲームから、HTML5の技術が、モバイルウェブがネイティブモバイルゲームと戦えるくらいの水準にようやく達しようとしていることが分かる。

Facebook Gamesの再来

昔々2009年頃に、FacebookはZyngaやEAなどのディベロッパーと組んで、デスクトップサイト用のゲームプラットフォームを開発し、このプラットフォームは大反響を呼んだ。しかし、Facebookはユーザーのモバイルプラットフォームへの移行についていくことができなかった。その結果、iOSとAndroidがモバイル・ソーシャルゲームの主要プラットフォームとなり、Facebookはゲーム内課金に対する30%の手数料の徴収も取りやめた。

さらに2011年にFacebookは、Project Spartanというコードネームが付けられたHTML5ゲーミングプラットフォームの開発に着手した。しかし、当時はHTML5がまだそこまで普及しておらず、ディベロッパーはパフォーマンスリミットをどのように越えればいいかというのを分かっていなかった。ゲームスタジオも、iOSやAndroidのネイティブゲームに対抗できるようなゲームをHTML5で作ることができず、結局この計画は失敗に終わってしまった。

Project Spartan

Facebookが2011年に着手した、Project Spartanと呼ばれるHTML5ゲーミングプラットフォームの計画は失敗に終わり、同プラットフォームは閉鎖されてしまった。

Facebookのデスクトップ時代が終りを迎えた2012年の第4クォーターに、同社は10億6000万人のユーザーから、ゲームを中心に2億5600万ドルの収益を上げていた。その後Facebookのユーザー数は17億9000万人に増加したが、ユーザーからの収益は1億9600万ドルに落ち込んだ。

しかし現在Facebookは再度ゲームに挑戦しようとしており、今週にはFacebook Gameroomが正式に発表された。これはデスクトップPC向けのゲーミングプラットフォームで、Steamのカジュアルゲーム版のようなものだ。そのかたわら、Facebookはモバイルの分野でも攻勢に出ようとしている。

いつでも遊べてライトユーザーが操作しやすく、しかもソーシャル

Instant Gameは、Facebookの何年にも及ぶ土台作りの集大成だ。同社が2015年4月に、ユーティリティアプリやさまざまなコンテンツのためのMessengerプラットフォームをローンチした後、Doodle Drawというちゃんとしたゲームが登場したが、このゲームがユーザーの人気を集めることはなかった。そして今年の4月には、ボット用のプラットフォームもリリースされた。どちらのプラットフォームも、Uberを利用した配車や写真編集から、ニュースの購読や買い物まで、ユーザーがMessenger上でチャット以外のことができるようにするためにデザインされていた。

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今年Facebookが公開した、自社開発のMessengerゲームのプロトタイプは大人気だった。

ゲーム機能は、当然Facebookのソーシャルグラフを利用することになり、さらには今後Messengerの可能性を広げていくかもしれない。複雑なものも多いネイティブモバイルゲームに比べ、Shuffle Cats MiniやGalatron VSのようなHTML5で出来た簡単なゲームが優れているのは、ゲームの経験があまりない人でもほとんど操作説明なしで、空いた時間にすぐプレイできるというところだ。このおかげでHTML5のカジュアルゲームは、どこでも遊べて、一般ユーザー層もとっつきやすく、結果としてバイラルに普及する可能性を持っている。

反対に、ひとりでプレイしているとすぐに飽きてしまうということが、カジュアルゲームの欠点として挙げられるが、その対策として、FacebookのInstant Gameは友だちと一緒に遊べるようになっている。ひとりで延々とカードを投げたり、小さな宇宙船で敵を撃ち落としたりしたいと思う人はそんなにいないかもしれないが、仲の良い友だちが出した新しいハイスコアを破るためなら、ユーザーは何度もFacebook Messengerに戻ってくるかもしれない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

任天堂が人気キャラクターと組み合わせるべき5つのモバイルゲームモデル

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任天堂のPokémon Goが大ヒットしたが、Miitomoは空振りだった。同社は明らかにモバイル界への参入に興味を持っているが、残りの任天堂キャラクターを有効活用するためにはモバイルアプリ界の勝ち組についていかなければならない。この記事ではその方法について考えてみたい。

Pokémon GoはもともとGoogleで生まれたAR MMOのIngressを機能的なモデルとしていたが、同じモデルはマリオやゼルダ、どうぶつの森シリーズのキャラクターには適用できない。投資家は、Pokémon Goを任天堂がモバイルの可能性を開く準備ができたというサインだと見ているが、ワンパターンなアプローチをとるのが一番だという考えに陥いると、誤った動きをとってしまうだろう。その代わりに、マリオやその他のキャラクターを有効利用するための方法を以下の例から探ることが出来る。

1. マリオ:Chameleon Run

スーパーマリオブラザーズはプラットフォームゲーム人気の立役者だが、物理ボタンや十字キー、ジョイスティックを複雑に組合せた操作がときに必要となるゲームを作る上で、問題となる要素がスマートフォンには存在する。

もちろんiOS、Androidの両OS向けにたくさんのプラットフォームゲームが存在するが、大きな成功を収めているものは、単にオリジナルバージョンの操作法をバーチャルなオンスクリーンボタンに反映したような使いづらい設定を超越している。最近で一番良い例となるのがChameleon Runで、動きの早いプラットフォームゲームをワンタッチ(もしくはやりたい動きに応じて、タッチの組合せや長押しなど)で楽しむことが出来る。

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任天堂はこれまで、コンソールのパワーや操作性が進化するのに合わせて、マリオシリーズのコアとなる仕組みを変化させることができた。Chameleon Runのようにキャラクターが自動で前方に進み、プレイヤーはジャンプ操作だけ行うという仕組みをそのままコピーする必要はないが、任天堂はモバイル専用のプラットフォームゲームにユーザーが期待するものがどのように変化しているかということに、このような成功例をガイドにしつつ目を向けるべきだ。

2. ゼルダの伝説: Crashlands

長きにわたって、任天堂のキャラクターの中でマリオと肩を並べ、シリアスな雰囲気を持った存在とされるのが、ゼルダの伝説シリーズの主人公であり妖精のような姿をしたリンクだ。ゼルダ姫のために次々と巻き起こるリンクの冒険には、新たなプレイヤーが簡単に理解できるくらいシンプルでありつつ、長年のプレイヤーの想像力をかき立てるほど豊かな世界観や物語が存在する。

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任天堂は、これまで成功を収めた企業から何かしらの手がかりを得ることができれば、ゼルダの豊かな世界観を持ち込みつつもアクションRPGのジャンルに入るようなゲームを生み出すことができる。インディーゲームの開発を行うButterscotch Shenanigansの生み出したCrashlandsは、そのDNAのどこか奥深くに、ゼルダの伝説シリーズの痕跡を感じる気がする。

Crashlandsは、強力で中毒性がありながらも、遊び方を簡単に学ぶことができるクラフティングシステムを本当に上手く使っている。実は、来年の発売が予定されているコンソール向けの新たなゼルダの伝説シリーズで、任天堂はCrashlandsと似たようなアイテムの使い方を導入しようとしているようだ。

3. カービー: キャンディークラッシュ

私は、これでもかというくらいBejeweledで遊んでいた。あまりにハマりすぎていて、もはや常軌を逸したレベルに感じられた程だ。そうしている間に、メガヒットとなったキャンディークラッシュのような最近のマッチパズルゲームの動向についていけていなかった。ところで、任天堂のプラットフォームゲーム界で活躍するもう1人のキャラクターであるカービーは、周りにあるものを全て吸い込んでしまうという特徴からマッチパズルゲームとの相性が良い。キャラクター数の多さや、見覚えのあるアイテムなど、実際のゲームづくりに際してインスピレーションとなるものも揃っている。

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読者の中には、実は任天堂はかなり昔にマッチパズルゲームを作っていると指摘する人が間違いなくいるだろう。テトリスの影響を受け、1990年に発表されたドクターマリオだ。しかし、このジャンルはそれ以降大きな発展を遂げており、カービーを利用することで、近くにあるものを吸い込んでパワーアップしたり、ゲーム内のアイテムを使うことで一時的にパワーアップしたりと、もっとたくさんの機能を加えることができるだろう。

4. 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ:Marvel オールスターバトル

ヒットした格闘ゲームをモバイルプラットフォーム向けに変換するにあたり、ほぼ完璧な例がひとつ存在するとすれば、それはKabamのMarvel オールスターバトルだろう。さらに、マーベル・コミックのスーパーヒーローシリーズ内の、読者に愛されている既存キャラクターを利用しているというのも参考になるポイントだ。

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繰り返しになるが、もともとの素早い操作やコンボをキャラクター作成やシンプルな戦闘システムに置き換える必要があるため、モバイル版の製作は、単純な移植というよりも新たなバージョンを再度製作するということに近い。ただ、このようなゲームでプレイヤーが繰り返し遊ぶようになるためのコアとなる仕組みは、最初は使うことができないキャラクターのロックを解除したり、自分の仲間に加えたりすることにある。そのためこのモデルは、任天堂シリーズの人気キャラクター全員を登場させ、ブランドをまたぐことで生まれる魅力を備えた大乱闘スマッシュブラザーズにはなおピッタリだ。

任天堂はこのジャンルでもやれることがたくさんある。Amiiboと組み合わせれば、プレイヤーが現実世界のコレクター商品を購入することで、ゲーム内のキャラクターを獲得したりアップグレードしたりといったことができるようになる。

5. どうぶつの森: IngressまたはMinecraft: Pocket Edition

どうぶつの森は、任天堂のキャラクターシリーズの中では知名度の低いもののひとつだが、特に若いプレイヤーには未だファンが多い。このゲームは、プライヤーがお互いの町を訪れるなどソーシャルな面を持っている。ちなみに、町はそれぞれのプレイヤーの手によってある程度までつくられ、その後、陽気で愉快なノンプレイヤーキャラクターがそこに住むことになる。

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このモデルでは、もしかしたら任天堂が再度ARを採用するのにも意味があるかもしれない。どうぶつの森では、プレイヤーをお互いの家に訪問させる仕組みが上手く築かれており、それが現実世界でのプレイヤー同士の集まりに発展するのは容易に想像できる。そして、どうぶつの森のプレイヤーは、ゲーム内で自分の家の周りに何かを作ったり、カスタマイズしたりすることができるため、ユーザー自身が作ったコンテンツ(Minecraftの縮小版のイメージ)を盛り込むこともできるだろう。

さらにどうぶつの森ではアイテムの収集にも重きがおかれており、Ingressモデルの恩恵を受けることができる別の理由だと考えている。釣りや昆虫採集といったアクティビティには、簡単に現実の位置情報を紐付けることができ、Pokémon Goの中に登場するPokéStopsのワンパターンさとは違った側面を見せることができるだろう。

他社のコピーするのではなくパートナーを信頼する

私は、任天堂が他社のゲームの仕組みをコピーして、自分たちのキャラクターをあてがうことを提案しているわけではない。Pokémon GoでのNianticとの協業からも分かる通り、任天堂は、モバイル界で自分たちよりも優れた技術を持つ企業に製品デザインにおけるリードを取らせる、という賢明な判断を行うことができる。同時に、単純なライセンス契約を避け、任天堂の既存ゲームのアピールポイントを保持するためにどうすればいいかということを考えながら、ゲームの仕組みを変えていくことが重要だ。

任天堂がもっと多くのヒット作をモバイル向けに作るのは簡単ではないが、そこに正しいパートナーと、スマートフォンゲームの特徴についての正しい理解が備われば、私たちは、もっと多くの昔のお気に入り作品が生まれ変わって登場するのを期待することができるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Pokémon GoはARゲームというより新たなポケモンシリーズに過ぎない

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Twitterの情報によれば、大方みんなPokémon Goで遊んでいるようだ。電気や水といったインフラも主要な社員がピカチュウを捕まえに持ち場を離れてすぐに止まってしまうだろう。

しかし、AR(拡張現実)革命が来るというアポカリプスならぬポケポカリプスの予言に物知り顔でうなずく前に、一歩下がってPokémon Goの成功の要因と、その隠れた危険性について分析してみるのが良さそうだ。

1. ポケモン

Pokémon Goは、これまでに一番売れたビデオゲームのひとつであるポケモンのフランチャイズの上に成り立っている。ポケモンシリーズの販売数は現在までに2億7900万本を超え、メインシリーズ(ポケモン不思議のダンジョンなどのスピンオフを除く)だけでも2億本を超えている。

これまでの販売数という観点からリーダー的存在にあるマリオ(ポケモンの15年前に誕生した)とは違い、ポケモンはメディア資産(映画やテレビ)やトレーディングカードゲームとしても大成功を収めた。さらに私は、1980年代から2000年代前半に生まれた人たちにとって、ポケモンの感情的な重要性に匹敵するようなものはビデオゲームの歴史上ないとさえ思う。

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他のゲームやメディアのブランドももちろん大きな可能性を持っているが、ポケモンはPokémon GoのようなARを利用したゲームの仕組みにピタリとハマるユニークな存在だ。そもそもポケモン自体が、世界中を旅してポケットに収まるデバイスを使いながら偶然ある場所でみつけたものを集めるという仕組みになっている。1999年にNINTENDO64用ソフトとして発売されたスピンアウト作品のポケモンスナップでさえ、(レールの上を)移動しながら野生のポケモンの姿を信頼できるカメラで収めるという内容になっているのだ。

Jenn Frank氏のPaste Magazineに掲載された記事には、彼女と彼女の夫がPokémon GoをほぼライブアクションRPGのようにプレイする様子が書かれており、ポケモンの仕組みとARの相性の良さが純粋に表現されている。そして、その仕組みはこれまで発売されたポケモンシリーズの要となっており、ゲームの表面上にも現れていた。つまり、ポケモンファンはすぐにゲームの基本的なコンセプトを理解でき、現実の世界でポケモントレーナーを演じることを長年夢見てきたのだ。私もその例外ではないかった。

2. Ingress

Niantic Labが開発した最初のゲームであるIngressは、ARを利用したSF系のMMOで、もともとNianticがGoogleの社内スタートアップだった時代に作られた。2012年にAndroid向けのクローズドベータとして配布されて以降、今日まで続いている。実は、Ingress自体がPokémon Goの下地となっており、Ingressのプレイヤーがマッピングした位置情報を基に、Pokémon Go内のジムやポケモンセンターの場所が決められているのだ。

Ingressにはとても熱心なコアファン層が存在するものの、大ヒット作とはまだなっておらず、Pokémon Goの関連数値を見ると、発表から4年経ったIngressの存在が既に小さく見えてしまうことだろう。Ingressの推定プレイヤー数はソースによってかなりの差があり、正式な形で解明するための材料もあまりなかったため、一番多い推定数の700万人超よりも一番少ない推定数である約35万人の方に近い可能性が高いと思われる。

ここでのポイントは、IngressがPokémon Goとよく似た仕組みを持った直接の比較対象となるARゲームであり、4年も前に先手を打っていたが、Ingressではオリジナルのキャラクターが使われているということだ。

Ingress allowed you to create missions, which is what resulted in many of the locations used in Pokémon Go.

Ingressでは自分でミッションを作成することができ、ここからPokémon Goでも使われている位置情報が生まれた。

他にも世界的に有名なキャラクターを使っていない類似ゲームは存在する。昔はロケーションベースゲームの成功例の筆頭であったShadow Citiesは、2013年10月にその幕を閉じた。ゾンビによる世界の終末を描いたロケーションベースMMOのPlease Stay Clamのサービスは現在も続いているものの、アクティブユーザーの数は少ないようだ(その代わりに開発者たちは、レトロなスペースシミュレーションゲームのHalcyon 6へ力を注ぐことになったようだ)。

ところで、Ingressは失敗作ではないということも理解してほしい。NianticがIngressのコアファン層と成し遂げたことは注目に値するし、ゲームの世界観を完全に再現したPokémon Goのローンチで発揮された彼らの能力からもそれが証明されている。しかし、どの側面からみてもIngressはポケモンではないというのも事実だ。実際、私の友人に簡単な調査をしたところ、Ingressというゲームを聞いたこともないという人が大半でも、ポケモンの認知度は100%であった。

3. 欠点はポケモンと違いどこにも逃げていかない

Pokémon Goを楽しむ人がたくさんいる一方で、ゲームを楽しむにあたって乗り越えなければならない潜在的なマイナス面もたくさん存在する。小さな例として、プレイヤーはゲームを進展させるために、実際にある場所から他の場所へと移動するというハードルを越える必要がある。熱狂的なポケモンファンにとっては問題とならないだろうが、中にはそのハードルさえ越えられない人もいるかもしれない。

私はある消費者ブランドの商品に不健康なほどハマっているので、ギャラドスを捕まえるチャンスのためなら3ブロックは歩くだろう。しかし同時に、ノスタルジックなモンスターが歩いた先で私の事を待っていないとしたら、わざわざ周り道をするようなことはないだろう。前述のロケーションベースMMOのひとつに運営として関わっている私の友人は以前、ユーザー行動について彼らが学んだ一番重要なことは、人は世界中を動き回ることなくある一か所でゲームをしたがっているということだと言っていた。

もうひとつの小さな欠点がバッテリー消費量だ。以前のPokémon Goに関する短い記事の中で、私のGalaxy S7のバッテリー残量が5分間で3%も減ったと伝えていた。こちらが、The Daily Dotの編集者Mike Wehner氏が公開した、Pokémon Goのインストールから数日間経った後のバッテリーの使用状況だ。

そして、ゲームに集中するあまり実際にケガをしてしまう可能性もある。過去にIngressが関連した実際の死亡事故も発生している。既にたくさんの人がソーシャルメディア上でPokémon Goプレイ中のケガについて報告しており、運転中に写真を投稿している人もたくさんいる(さらに運転中だということさえ投稿してしまうのだから狂っている)。確かに、中にはクリック数を稼ぐために大げさに言っている記事や投稿もあるが、その裏には本当にケガをする可能性が潜んでいる。ほとんどの人がゲームでケガまでしたくないだろう。もちろんそこに狙っているポケモンがいない限り。

Pokémon Goで遊ぶことが、ある特定の人たち地域にとってのリスクとなる理由は他にもある(またその逆もありえるが)。そして、これまでに挙げられている危険性のほとんどが可能性の域を出ない(そして皮肉にも誇張されている)一方、その全てをプレイヤーが想定しているわけでもない。さらにPokémon Goの人気は、その後に続こうとしている他のモバイルARゲームのための問題解決にはつながらない。

AR技術は、とてつもない可能性や本当の意味での変革を起こす力を秘めている。Pokémon Goとは全く違うが、MicrosoftのHoloLensがその好例で、今後数年の間にもっと磨きをかけてハードウェアの改良を重ねることでHoloLensがどんなものになるのかというのを考えただけでよろめきそうになる。しかし、Pokémon Goが実装しているような、スマートフォンだけを使ったAR技術が現在重大な分岐点に立っているというのは、ほぼ確実に言いすぎだ。

それではこれからポケモンを捕まえに行ってきます。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter