Alipayが韓国のKakao Payに2億ドルを出資 ― 韓国のEコマース、モバイルペイメント市場に攻勢をかける

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AlibabaグループのAnt Financialが新たなM&Aを発表した。同社は、韓国のKakaoが展開するフィンテックプロジェクトに2億ドルを出資する。Kakaoは韓国でメッセージング業界で独占的な地位を確立しており、企業価値は50億ドルにものぼる。

AlipayやAlibabaのデジタルバンキング事業を運営するAnt Financialは、近日ローンチ予定のKakao Payに出資することを決めた。このディールにより、Ant FinancialはKakao Payを通して同社の金融サービスを韓国でも展開する。また、オンラインのペイメントサービスだけでなく、オフラインの金融サービスにもビジネスを拡大する構えだ。

Kakao Talkのユーザーは合計で4800万人。韓国では、95%のスマートフォンにKakao Talkがインストールされていると言われている。以前からKakao Talkにはモバイルペイメント機能は備わっていた。しかし先月、Kakaoの取締役会は同社の金融サービス部門の子会社化を決定。Kakao Payが誕生することとなった。Kakao Talkでは、店頭での支払機能、P2P送金機能、各種料金の支払機能、Webバンキング機能などが利用できる。また、今後はローンの借り入れ機能なども追加する予定だ。

Kakao Payが提供する各種機能は、これまでにAnt Financialが中国で提供し、成功してきた分野だ。そのため、このパートナーシップは両社に大きな戦略的価値を与えるものだと言えるだろう。Kakaoの成長を加速させることはもちろん、Alibabaにも大きなメリットがあるのだ。このパートナーシップにより、Alibabaは韓国のEコマース市場に攻勢をかけることが可能になるだけでなく、韓国を訪れる中国人観光客がAlipayを使いやすくなるというメリットもある。

Ant Financialは現在、30億ドルのデットファンディング・ラウンドを実施している最中だ。同社はこの資金を利用して他社への出資や買収を積極的に行っていくと話しているが、すでにその戦略は動き出している。Ant FinancialはアメリカのMoneyGramを8億8000万ドルで買収しただけでなく、最近ではタイのAscend Money、フィリピンのMynt、インドのPaytm、シンガポールのM-Daqなどに資本参加している。今回のKakao Payへの出資も含め、これらの動きはすべて戦略的な理由にもとづいたものだ。今後も同様の動きが見られることだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

P2P送金のVerseがシリーズAで830万ドルを調達、ヨーロッパでのビジネス展開を加速

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既に多くのライバルがひしめき合っているP2P送金サービス界で、また新たな企業がシリーズAで830万ドルの資金を調達したと本日発表した。サンフランシスコとバルセロナに拠点を置くVerseは、ヨーロッパのVenmoになるべく、その動きを加速させている。そのVenmoはと言えば、未だアメリカ国外にモバイルソーシャルペイメントサービスを拡大しようとする動きを見せていない。

VerseのシリーズAでは、Greycroftがリードインベスターとなり、その他にもSpark CapitaleVenturesBoost VCがラウンドに参加した。また、以前同社はシードラウンドで、DFJ Dragonやアメリカ・ヨーロッパのエンジェル投資家から180万ドルを調達していた。

今回調達した資金は、製品開発チームの強化を含む増員や、Verseの成長を加速させるために使われることになると、共同ファウンダーのAlex Loperaは話す。

「私たちは決済サービスにおけるWhatsAppのような存在になろうとしています」と彼はTechCrunchの取材中に話していた。「何かの支払をするときや、友人に借りているお金を返そうとしたとき、インターネットバンキングはいまいちだし、うまく支払ができない時もあるから使いたくないと、とてもイライラします」

「その点、Verseだと簡単かつスムーズに送金を行えます。送金したい額を入力して、携帯電話の連絡先のリストから送金先を選んだ後に送金ボタンを押せば、もうお金は相手のもとに届いていることになります」

彼の話は、巷に溢れるモバイルソーシャルペイメントサービスの宣伝文句として、とても馴染みがある。しかもこの状況はアメリカだけでなく、ヨーロッパでもほんの数例を挙げれば、フランスのLydiaドイツのCookiesアメリカ発のCircleMoneyBeamの形で送金サービスを提供しているN26などが存在する。

しかし、私のTechCrunchの同僚であるRomain Dilletが簡潔に表現しているように、「ソーシャルペイメントはプロダクトではなく、一機能だ」。彼の発言は、上記のようなスタートアップの中で、どの企業がいち早くスケールしてヨーロッパ市場を独占するか、という競争が巻き起こっていると言い換えることもできる。そして競争が一段落した後に、勝者はその他の銀行サービスを利用してP2P送金をマネタイズすることができるのだ。中には本格的な銀行としてビジネスを展開する企業もでてくるだろう(その例として、N26は今年の夏に銀行のライセンスを取得している)。

LoperaはVerseのこれまでの成長について、競合他社との強みの違いがもたらしたものだと話す。同社は現在ヨーロッパの16ヶ国でオペレーションを行っており、ライバルと比較してより多くのユーザーにサービスを提供することができる。ほかの競争が激しい分野と同じく、ソーシャルペイメント業界でもヨーロッパの一国だけを考えるのではなく、もっと広い視点が必要なのだ。

実はVerseは当初サンフランシスコで登記され、地元のアクセラレータープログラムを経た後に、ほとんどのメンバーをバルセロナへと移し、今年の2月にアプリをソフトローンチした。Loperaによれば、Verseは現在AndroidとiOSを合わせて約55万人のユーザーを抱えており、現時点ではマーケティングにあまりお金をかけず、口コミの力に頼っている。

また、Verseのユーザー間でやりとりされる送金額の平均は25〜30ユーロだとLoperaは話す。

Verseは、複数のマーケットをカバーしながらも特定の銀行とはパートナーシップを結んでおらず、ユーザーのお金を各国の銀行口座におき、銀行口座を持っていない市場については、SEPA(単一ユーロ決済地域)を使ってユーロで決済している。そのため、Loperaはもちろんブレグジットが起きないことを願っている。

「私たちは、どの企業もまだヨーロッパ市場全体には入り込めていないと考えています」と彼は付け加える。「確かに一国の中でサービスをローンチしている企業は存在します。しかし、ヨーロッパの主要国全てでビジネスを展開し、国をまたいで問題なく機能するようなアプリを提供している企業はまだ見たことがありません」

「この分野に興味を持っている人の数は多く、競争も激しいですが、決済業界には変革が必要なところがたくさんあるため、私たちはとても大きなチャンスがあると感じています。ヨーロッパ中のミレニアル世代のソーシャルペイメントを掌握する勝者と呼べるような企業はまだ存在しません。そして、それこそ私たちが目指しているものなのです」

WhatsAppのような大手メッセージサービス企業が、P2P送金に参入して既存プレイヤーから顧客を奪ってしまうという心配はないのだろうか?例えば、WhatsAppの親会社であるFacebookは、アメリカ国内で既にMessenger内でのP2P送金サービスを提供している

これに関しLoperaは、「WhatsAppがVerseのようなサービスをリリースするにはとても時間がかかるでしょう。通話機能を追加するのにさえ、あれだけ時間がかかりましたからね…」と反論する。

しかし、P2P送金サービスを提供する規模の小さな企業が、将来的に大手メッセージサービス企業の買収先候補となる可能性は否定できない。

Verseは、P2P送金のほとんどのケースに関して手数料をとっていないが、送金が異なるヨーロッパ通貨間で行われる場合(ユーロとポンドなど)は、「通貨と国によって」1.5〜2%の手数料をとっている。

なお、Verseのメインとなる台帳システムにはブロックチェーン技術が用いられているが、送金時には使われていない(ビットコインウォレットとしてサービスをスタートさせたCircleなど、競合企業では送金にもブロックチェーン技術が使われている)。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter