Visaタッチ決済対応スマートリング「EVERING」の第2弾先行予約が7月1日12時開始

EVERINGは6月28日、Visaのタッチ決済対応スマートリング「EVERING」(エブリング)の第2弾先行予約(数量限定)を7日1日12時から公式ページで開始すると発表した。直販価格は1万9800円(税込、送料別)で、2021年夏頃を目途に発送予定。なお、一般販売は9月を予定している。

EVERINGは、一般的な指輪のように指に装着するプリペイド方式採用ウェアラブルデバイスだ。利用前にクレジットカードを登録しておき、お金をチャージした上で利用する。Visaのタッチ決済対応店舗であれば、財布やスマートフォンを取り出さずに、非接触での買い物を行える。決済時には、スマートフォンのアプリを立ち上げたり、ロックを解除したりといった動作は必要ない。

EVERINGに1回でチャージ可能な限度額は3万円で、1カ月の限度額は12万円。EVERINGの決済機能の有効期限は4年間となっており、1つのリングで100万円まで利⽤可能。有効期限内に利⽤限度額に達したユーザーには、EVERINGを新たに送付する。

リング内部にはNFC(TYPE-A)対応のICチップが埋め込まれており、またリングがリーダーからの電波に反応する仕組みのため、充電は不要。本体素材にはジルコニアセラミックを採用し、低刺激かつ高耐久、さらに防水機能(5気圧)を実現している。本体カラーはブラックで、17種類のサイズが用意されている。

またスマートフォンアプリを使うことで、ワンタップでチャージや機能停止、再開が可能。盗難や紛失の際のいたずらによる被害を最小限に抑えられる。

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米国でFacebook MessengerにQRコードによる個人間送金機能追加

2021年4月にFacebookはアプリ内でVenmoのようにQRコードで個人間送金をするテストを米国で実施していることを認めた。米国時間6月10日、同社はこの機能を米国の全ユーザーに公開し、Facebookの友達でない相手ともFacebook Payを通じて送金や請求ができると発表した。

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QRコードはVenmoなどの決済アプリと同じように動作する。

この機能は、Messengerで画面左上のプロフィールアイコンをタップして設定を表示すると、その中の「Facebook Pay」セクションにある。ここに自分専用のQRコードが表示される。一般的なQRコードと同様のものだが、中央に自分のプロフィールアイコンがある。

その下に、自分のFacebook Pay URLが「https://m.me/pay/UserName」の形式で表示される。請求をするときに、これをコピーして他のユーザーに送ることもできる。

Facebookは、このコードは米国のMessengerユーザー同士なら誰でも利用でき、他の決済アプリは不要で連絡先の入力やアップロードもせずに使い始められると説明している。

Messengerで送金と受け取りができるのは18歳以上で、決済機能を利用するためにVisaかMasterCardのデビットカード、PayPalのアカウント、対応するプリペイドカードか政府発行カードのいずれかが必要だ。また、アプリ内で優先して使用する通貨を米ドルに設定する必要がある。

セットアップが完了すると、デフォルトの支払い方法を選んだり、オプションでPINコードを設定して決済を保護したりできる。

QRコードは、Facebookアプリ上部にあるカルーセルの「Facebook Pay」セクションからも利用可能だ。

Facebook Payは2019年11月に、個人間送金だけでなく寄付やストリーミング収益化のFacebookスター、eコマースなど同社のアプリ全般にわたって利用できる決済システムとして初めて登場した。QRコードの利用はVenmoなどに追随するかたちだが、今回発表されたサービスは必ずしも決済アプリのライバルになるものではない。Facebookは対応する決済方法の1つとしてPayPalと連携しているからだ。

決済機能はFacebookのデジタルウォレットであるNoviとはつながっていないが、将来的には変更されるかもしれない。

画像クレジット:Facebook

個人間送金機能は、メインのチャットのスレッドに戻らなくても写真やビデオに簡単に返信できるクイックリプライバーなど、Messengerのいくつかのアップデートとともに紹介された。チャットの新しいテーマとして、女優のOlivia Rodrigo(オリビア・ロドリゴ)のファン向けのテーマ、世界海洋デーにちなんだテーマ、新作映画「ワイルド・スピード / ジェットブレイク」のプロモーション用テーマも追加された。

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画像クレジット:Facebook

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

ブラジルのモバイル決済アプリ「PicPay」が米国証券取引委員会に登録届出書を提出

ブラジルのモバイル決済アプリ「PicPay(ピクペイ)」は米国時間4月21日、時価総額最大1億ドル(約108億円)となるIPOを行うためのForm F-1を、米国証券取引委員会(SEC)に提出した。同社はティッカーシンボル「PICS」で、NASDAQに上場する予定だ。

PicPayは、主に金融サービスプラットフォームとして運営されており、そのサービス内容にはクレジットカード、Apple Pay(アップル・ペイ)に似たデジタルウォレット、Venmo(ベンモ)型のP2P決済要素、eコマース、ソーシャルネットワーキング機能が含まれる。

PicPayのCEOであるJosé Antonio Batista(ホセ・アントニオ・バティスタ)氏は声明の中で「私たちは、人々や企業の交流、取引、コミュニケーションの方法を、インテリジェントでコネクテッド、かつシンプルな体験で変革したいと考えています」と述べている。

PicPayは現在、サンパウロに拠点を置きブラジル全土で事業を展開しているが、当初は2012年にリオの北に位置する沿岸都市ビトリアで設立された。同社は2015年に、巨大食肉加工企業のJBS SAを所有するブラジルの億万長者、Wesley Batista(ウェスレイ・バティスタ)氏とJoesley Batista(ジョエスレイ・バティスタ)氏兄弟の投資持株会社であるJ&F Investimentos SAグループに買収された。

PicPayの登記簿謄本によると、J&Fは「Operation Car Wash(洗車場作戦)」と呼ばれるブラジル史上最大の汚職スキャンダルに関与しており、2017年にブラジル連邦検察当局と司法取引を行っている。2020年12月には15億ドル(約1600億円)の罰金を支払い、さらに4億4260万ドル(約477億7000万円)をブラジルの社会計画に拠出することに合意した。とはいえ、J&Fは依然として同国の強力なコングロマリットであり、PicPayの強力な支援者として位置づけられている。

2020年はPicPayにとって爆発的な成長を遂げた年となり、同社のアクティブユーザー数は2840万人から2021年3月時点で3600万人にまで増加した。PicPayからTechCrunchに提供された2020年の財務報告書によると、同社の収益も2019年の1550万ドル(約16億7000万円)から2020年には7100万ドル(約76億5000万円)へと飛躍的に伸びている。しかし、同社はまだ利益を出しておらず、2020年にはその成長を後押しするために、1億4600万ドル(約157億2000万円)を投じている。

「当社のエコシステムにおける顧客ベースとユーザーエンゲージメントの成長は、当社のビジネスモデルの規模拡大性を示すものであり、顧客にとってさらなる価値を生み出す大きな好機の現れであると、私たちは考えています」と、声明でバティスタ氏は続けている。

フィンテックは現在、ブラジルで最も注目を集める分野の1つだ。同国では伝統的に4つの大手銀行が支配しているが、これらの銀行はテクノロジーへの対応が遅れ、非常に高い手数料を徴収している。そのため、この分野には大いに改善の余地があるからだ。

PicPayのIPOは、Banco Bradesco BBI(バンコ・ブラデスコBBI)、Banco BTG Pactual(バンコBTGパクチュアル)、Santander Investment Securities Inc.(サンタンデール・インベストメント・セキュリティズ・インク)、Barclays Capital Inc.(バークレイズ・キャピタル・インク)が主導している。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:ブラジルPicPayモバイル決済新規上場

画像クレジット:PicPay

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブックが米国でQRコードによる個人間送金を「テスト」中と認める

Facebook(フェイスブック)は、米国のユーザーが互いに送金したり支払いをリクエストしやすくするために、Facebook Payで使用できる新しいQRコード機能と支払いリンクをテストしていることを認めた。Venmo(ベンモ)のQRコードなどと同様のQRコード機能は、ユーザーがスマートフォンのカメラで友人のコードをスキャンすることで送金や支払いリクエストができるようになり、共有可能な支払いリンクは、Facebookの外で支払いアドレスを公開することを可能にする。

最初に報じた米メディアMacRumors(マックルーマーズ)によると、ユーザーによってはFacebook Pay画面上部のカルーセルに新しい「スキャン(Scan)」ボタンが表示されているとのこと。このボタンをタップすると、相手のQRコードを読み取り送金することができるツールが立ち上がる。また、QRコードを表示する画面では「https://m.me/pay/UserName」という形式でパーソナライズされた支払いURLが新しく出ており、支払いやリクエストを送信する際にリンクを相手に送ることも可能だ。

FB Pay QRコードのスクリーンショット(プライバシーのためぼかしあり)

Facebookの広報担当者はこの機能の開始を認めたが、これは現在米国で行われている「テスト」であると説明している。

「Messenger(メッセンジャー)での支払いをより簡単にするために、人々がお金を送ったりリクエストしたりする際に使えるQRコードや支払いリンク機能のテストを開始しました」と広報担当者は述べている。

現在、Messengerを通じて支払いを行えるのは米国のユーザーのみであるとも同社は付け加えた。

Messengerでの送金・受け取りを希望するユーザーは、18歳以上で、決済機能を利用するためには、VisaまたはMastercardのデビットカードPayPalアカウント、またはサポートされているプリペイドカードや政府発行のカードのいずれかを持っていなければならない。また、アプリ内で希望通貨を米ドルに設定する必要がある。

Facebookは2019年11月に、同社のアプリにまたがって拡張できる単一の決済システムを確立する方法として、Facebook Payサービスを初めて開始した。しかしFacebookは現在、対応する決済手段の1つとしてPayPalと提携しているため、現状の同サービスは必ずしもPayPalなどの他のアプリのライバルにはなっていない。

現在、Facebook PayはFacebookマーケットプレイス、Facebookショップ、Buy on Instagramなど、コマース、寄付、そしてチップに重点を置いたFacebookの数多くのエリアでの決済に加え、ゲームクリエイターを支援するためのスターの購入、ライブイベントのチケット購入、慈善団体への寄付など、さまざまな活動に利用されている。また、ユーザーは組み込まれたボタンを使ってMessenger上の友人にお金を送ることもできる。

現時点ではこの決済機能は、Facebookの暗号資産ウォレットである「Novi」とは別個のものだが、いずれはこの2つがより統合されていくことが想像される。

Facebookは、新しいQRコードやリンクが表示されるユーザーの数や割合、テストの開始時期や終了時期など、テストの詳細に関してはコメントを差し控えた。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebookモバイル決済QRコード決済Facebook PayVenmoアメリカ

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

新型コロナで非接触モバイル決済が浸透、米国の小売店頭での使用は2020年の29%増

新型コロナウイルスパンデミックによってテクノロジーのトレンドが強まったが、その中でも2020年は非接触モバイル決済の使用増が顕著だった。分析会社eMarketerの最新レポートによると、米国では店舗でのモバイル決済使用が2020年29%増えた。パンデミックにより人々は店頭におけるより安全な決済方法として、現金やクレジットカードからモバイル決済へと移行したからだ。

14歳以上の米国の消費者9230万人が2020年、近接ベースのモバイル決済を6カ月の間に少なくとも1回は使った。2021年はその人数が1億120万人に増えるとeMarketerは予想している。そしてモバイル決済を使用する消費者は今後も順調に増え、2025年までにスマホユーザーの半分を超えるとしている。

画像クレジット:eMarketer

2020年、モバイル決済はZ世代とミレニアル世代を含む若い消費者の間で最も浸透した。2021年から2025年にかけて、年間新規モバイルウォレットユーザー650万人のうちZ世代は400万人超を占めると予想される。一方、モバイルウォレットユーザー10人のうち4人が引き続きミレニアル世代だと見込まれる。

いくつかの業界レポートがすでにモバイルウォレット産業全般へのパンデミックの影響を指摘した。金融・投資会社Finariaが2021年3月初めに出したレポートでは、モバイルウォレット産業は2021年に前年から24%成長し、2兆4000億ドル(約264兆3684億円)に達すると予想している。アジアマーケット、特に中国がモバイル決済の浸透に貢献してきた一方、米国は小売店舗におけるモバイル決済テクノロジーの展開が遅かったために苦戦していたと指摘した。しかし現在、米国のモバイル決済額は4651億ドル(約51兆2349億円)と世界で2番目の規模に成長し、2023年には6980億ドル(約76兆9115億円)に達する見込みだ。

パンデミックにより、遅れをとっていた小売業者はようやくモバイル決済を導入することになった。全米小売業協会が2020年に発表した中間調査では、小売での非接触決済が69%増え、小売業者の67%がモバイル決済やコンタクトレスカードなど何かしら非接触の決済を受け入れていることが明らかになった。

画像クレジット:eMarketer

業界の変化の結果として、モバイルウォレット使用が増えただけでなく、ユーザー1人あたりの平均年間使用額も増えているとeMarketerは指摘する。2020年に1973.70ドル(約21万7400円)だったのが2021年には23.6%増の2439.68ドル(約26万8800円)に成長し、2023年までに3000ドル(約33万500円)を超えると予想する。

米国では引き続きApple Payが最も使用されているモバイル決済で、2021年のユーザー数は4390万人だ。そして2020年から2025年にかけて1440万人増えると予想されている。StarbucksがApple Payに続き、ユーザー数は3120万人だ。そして同期間にユーザー1020万人を獲得すると見込まれるGoogle Payが続く。一方、Samsung Payのユーザー数は伸び悩んでいて同期間に200万人しか増えないと予想されている。

画像クレジット:eMarketer

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画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

アフリカの通信会社Airtel Africaがモバイルマネー事業拡大のためにMastercardから110.6億円調達

2週間前、TPGのRise Fundはアフリカの通信会社Airtel Africaのモバイルマネー事業であるAirtel Mobile Commerce BV(AMC BV)に2億ドル(約221億3000万円)を投資した。契約完了後、Bharti Airtelの子会社であるAirtel Africaは、追加の少数株(発行株式の25%)を別の投資家に売ることを検討していると語った。

現地時間4月1日、同社は新たな出資者として国際的決済プロバイダーのMastercard(マスターカード)を発表した。この契約でAirtel Africaは、同社のモバイルマネー事業のためにさらに1億ドル(約110億6000万円)を受け取る。AMC BVはアフリカ大陸最大級の金融サービスを運営し、ユーザーにモバイルウォレット、国際送金、融資、バーチャルクレジットカードなどのサービスを提供している。企業評価額は26億5000万ドル(約2931億6000万円)だ。

2つの会社には以前からつながりがある。2019年、両社はAirtel Africaの14か国に渡る1億人の登録ユーザーが、Mastercardの国際ネットワークを利用できる契約を締結した(この提携でMastercardとAirtel Africaの間に金銭授受はなかった)。

この日Airtel AfricaとMastercadは、商業契約を延長し新たな商業フレームワークとして、さまざまな地域でカード発行、決済ゲートウェイ、決済プロセス、マーチャント向け受領送金ソリューションなどの分野の提携関係を深める契約を結んだことを発表している。

AMC BVの26億5000万ドルという売掛買掛金ゼロ状態の企業価値は前回から変わっていない。これは、TPGのRise FundとMastercardは契約完了時に、それぞれ7.55%および3.775%の株式を取得することを意味している。Mastercardの場合、 支払いは2回に分けて行われ、最初に7500万ドル(約83億円、4カ月以内に完結)、2回目に5000万ドル(約55億3000万円)投資する。

モバイルマネー事業の少数株をRise FundとMastercardおよびその他の出資者候補に売却することで、Airtel Africaはモバイルマネー事業を収益化し、4年以内の上場を目指すために必要な資金を調達できると信じている。

TPGのRise FundとMastercardからの出資に加えて、Airtel Africaは一部の資産の売却も行う。先週同社は、マダガスカルとマラウィの通信塔1424基を1億1900万ドル(約131億7000万円)でHelios Towersに売った。HeliosとAirtel Africaは、チャドおよびガボンの通信塔の売買でも合意しているが、詳細は明らかにされていない。

一連の行動は、同社の戦略的資産収益化と投資機会、そして最終的な債務削減に向けられている。

「本日、当社のモバイルマネー事業の出資者としてMastercardを迎えることを謹んでご報告いたします。2週間前に発表したThe Rise Fundの出資に続くものです」とAirtel AfricaのCEOであるRaghunath Mandava(ラグナート・マンダヴァ)氏は語った。

「これは、モバイルマネー事業の少数株主を増やして4年以内に上場を目指すという当社の戦略の一環です。現在のMastercardとの戦略的関係を大きく強化することで、当社が事業を運営する国々の金融状況を改善する重要な機会をフルに活用することができます」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Airtel AfricaMastercard資金調達アフリカモバイル決済Airtel

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国政府が決済事業の規制案を発表、AntとTencentによる寡占を抑制

中国の決済業界における最近の一連の出来事は、Ant Group(アントグループ)とTencent(テンセント)による複占が揺らいでいる可能性を示唆している。

Ant Groupの急な新規株式公開の中止と、中国政府が同社の事業に修正を指示したことに続き、中国当局は先週、繁栄を続けるデジタル決済業界の寡占を抑制する計画を示す新たなメッセージを送った。

ノンバンク決済を規制するために、中国人民銀行(PBOC)が先週発表した一連の草案によると、1社でノンバンク決済市場の3分の1を占める場合、または2社の合計で半分を占める場合、国務院に属する反独占委員会から規制上の警告を受けるという。

一方、ノンバンク決済事業者1社でデジタル決済市場の半分以上を占める場合または2社で3分の2を超える場合は、独占状態にあるかどうか調査される。

2つの規則の違いは微妙であり、前者はノンバンク決済、後者はデジタル決済に焦点を当てている。

さらに当局が企業の市場シェアをどのように測定するのか、たとえば総取引額なのか、総取引量なのか、それともそれ以外の基準で判断するのかについては、規則では特定されていない。

市場調査会社のiResearch(アイリサーチ)によると、Ant GroupのAlipay(アリペイ)は2020年第1四半期に中国の第三者決済取引の半分以上を処理しており、Tencentは同期間に40%近くを処理していたという。

中国は決済大手への監視を強めており、一方で金融市場を国際的なプレイヤーに開放してもいる。2020年12月には、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)が中国の合弁事業の完全所有権を取得した。そして2020年1月、PayPal(ペイパル)は現地の決済パートナーであるGoPay(国付宝)の残りの株式を買い取り、中国で1つの決済事業を100%支配する初の外資系企業となった

業界の専門家は、PayPalが中国内の決済大手を追うことはないだろうが、代わりにクロスボーダー決済の機会を探る可能性があると、TechCrunchに語った。つまり、Antのベテランチームによって設立されたXTransferなどの地元企業がいる市場だ。

AntとTencentは、他の中国インターネット企業との競争にも直面している。食品配達プラットフォームのMeituan(美団)や電子商取引プラットフォームのPinduoduo(拼多多)やJD.com(京東商城)、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)まで、様々な企業が独自の電子ウォレットを導入しているが、いずれもAntのAlipay(アリペイ)やTencent傘下のWeChat Pay(ウィーチャットペイ)に差し迫った脅威を与えるものではない。

PBOCの包括的な提案では、決済処理業者が顧客データをどのように扱うかについても定義している。ノンバンク決済サービスは、一定のユーザー情報や取引履歴を保存し、データチェックについて関係当局と協力することになっている。また、企業はユーザーの同意を得て、顧客のデータがどのように収集され、どのように使用されるかを明確にすることも求められている。これは不正なデータ収集を取り締まる中国の広範な取り組みを反映した規則だ。

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タグ:モバイル決済AlibabaAnt GroupTencentWeChat Pay中国独占禁止法

画像クレジット:Alipay via Weibo

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(翻訳:TechCrunch Japan)

新興市場向けデジタルバンクのUmbaが2億円超の調達、アフリカ全土に事業拡大へ

アフリカを最初の市場として目指している、新興市場向けのデジタルバンクUmbaは、Stripeの元発行責任者であるLachy Groom(ランシー・グルーム)氏、Ludlow Ventures、Frontline Ventures、Act Venture Capitalなどの新規投資家からシードラウンドで200万ドル(約2億660万円)の資金を調達した。

現在ケニアとナイジェリアで事業を展開している同社は、従来のアフリカの銀行に代わるデジタル金融サービスを提供している。Umbaのモバイルアプリでは、無料の当座預金口座、無料の端末間即時送金、貸付、預金、BillPay、キャッシュバックを顧客に提供する。これはアフリカ諸国の伝統的な銀行に見られる一般的な高コストのハードルの高さとは対照を成す。

現在はケニアとナイジェリアで利用可能であり、両国の人口を合わせると2億5000万人を超える。

Umbaと競合するのは、Kudao、Carbon、Eversend、そして「チップ入りカードまたは現金」支払い方式だ。

UmbaのCEOであるTiernan Kennedy(ティアナン・ケネディ)氏は次のように述べている。「当初から、私たちは複数の市場、通貨、支払いインフラに対応できるようにプラットフォームを構築しました。後からシステムをアップグレードすることは難しくなるため、この柔軟性は非常に重要な考慮すべき事項です。例えば、ナイジェリアでは銀行やデビットカードの普及率が高いため、Umbaはこれらの支払い方法に深く統合されていますが、ケニアと東アフリカではモバイルマネーが主流であるため、当社のプラットフォームもこれらのサービスと密接に統合されています」。

Ludlow VenturesのパートナーであるBrett deMarrais(ブレット・デ・マライアス)氏は次のように述べている。「Umbaは我々がアフリカ市場に投資した最初の企業であり、参加することに興奮しました。Umbaのチームは、顧客のために銀行業務のコストを削減し、アクセスを民主化する優れたサービスを提供しています。物理的な銀行支店のインフラから離れる動きはすでに進行中で、今年に入って加速しています。アフリカ市場が成熟しつつあり、非常に興味深い段階に入っていることは明らかです」。

このニュースの直前、今年10月にはStripeが2億ドル(約206.6億円)でナイジェリアの決済サービススタートアップであるPaystackを買収した。7月にはDPO Groupが2億8800万ドル(約297.5億円)で、8月にはSendwaveが5億ドル(516.6億円)で買収されるなど、アフリカのデジタル決済・送金サービス業界はベンチャーラウンドや買収で記録的な更新が続く盛況を呈している。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

インド・モバイル決済市場を徹底解説:優勢のグーグル、成長鈍化のソフトバンク、規制に苦しむフェイスブック

インドでは、Google(グーグル)と、Walmart(ウォルマート)傘下のPhonePe(フォンペ)がモバイル決済市場トップの座を狙ってしのぎを削っている。一方で、Facebook(フェイスブック)はWhatsApp Pay(ワッツアップペイ)の展開にあたって規制の迷路から抜け出せずにいる。

「今年5月、Google Pay(グーグルペイ)アプリで取引したユーザーは7500万人を超え、PhonePeの6000万人を上回った」と両社の業績に詳しい関係者はTechCrunchに語った。さらに、TechCrunchが調べた内部データによると、SoftBank(ソフトバンク)が出資しているPaytm(ペイティーエム)のアプリで取引する1日あたりのユーザー数は1000万人を超えている。

加盟店の数では今でもPaytmに後れをとっているグーグルだが、ここ数か月、世界でも最も厳しいロックダウンが実施されているインドで他社が勢いを失う中、総合的には優位を保ってきた。

しかし先月、Reuters(ロイター)は、グーグルがその市場優位性を乱用して自社のモバイル決済アプリのシェアをインドで不当に拡大しているとして、インド当局が独占禁止法違反の疑いで捜査していると報じた

Paytmはかつてインド最大手のモバイル決済業者だったが、ここ2年ほどはユーザーベースの維持に苦戦している。詳しい情報筋によると、昨年1月にはPaytmの取引ユーザーは約6000万人いたという。

インドの生え抜き企業であるPaytmの広報担当者はTechCrunchの取材に対し、5月の月間アクティブユーザー数は5000万人を超えたと答えた。また、この記事が公開された後にも、同担当者は「Paytmのアプリでは毎月5000万人を超えるユーザーが取引を行っている」と話した。しかし、The Informationが2020年1月に発表したレポートによると、2019年12月のPaytmの取引ユーザー数は4000万人に満たなかった。

データセットでは、月に最低1回でもアプリで決済すると取引ユーザーとみなされる。これは誰もが使いたがる測定基準だが、さまざまな企業が業績を発表する際により広く採用しているMAU(月間アクティブユーザー)やDAU(1日あたりのアクティブユーザー)などの測定基準とは異なる。MAUとしてカウントされた人の中には、そのアプリで一度も決済していない人も一定数含まれている。

Paytmがここ数年思うように成長できず苦しんでいる理由の一因として、インド中央銀行がユーザーと銀行の間に入るモバイルウォレット会社に対して、ユーザーのKnow Your Customer(顧客確認)を義務づけていることが挙げられる。関係者によると、この指示が多方面で混乱を引き起こしているらしい。Paytmは30億ドル(約3835億円)以上もの資金調達に成功したのにも関わらず、こうした難題に悩まされているのである。

Paytmの広報担当者はある声明の中で、「モバイルウォレットに関していえば、PaytmこそがKYCを実行するためのインフラを整え、顧客と対面して1億回を超えるKYCを実行してきた企業であることを忘れてほしくない」と語った。

Paytmは長い間、Uber(ウーバー)や食品配達スタートアップのSwiggy(スウィギー)などの人気サービスとの統合から利益をあげてきたが、ここ数か月は、このような統合機能のためにPaytmを利用した取引ユーザー数は月間1000万人未満となっている。

Paytmの2人の幹部が、取材時によくある「報復の可能性があるため匿名で」という条件で、「PaytmはUnified Payments Interface(統合決済インターフェース、UPI)を採用するという考えに反対していた」と話してくれた。UPIはインドの銀行連合によって約2年前に開発・導入された決済システムだ。このシステムを使うと、異なる銀行の口座間で直接送金できるため、モバイルウォレットは不要になる。

PaytmによるUPI採用が遅れたため、UPIを早期に採用したグーグルとPhonePeに、市場シェア獲得のチャンスが訪れた。

Paytmは、グーグルとPhonePeより1年遅れてUPIを採用し、PaytmはUPIエコシステムへの参加を拒否していた、という世間の見方を覆した。

「当社は数百万人の生活に変革を起こすイノベーションと技術を育んできた。金融テクノロジーの重要さもよく理解している。だからこそ、常にUPIを擁護し支持してきた。PaytmでのUPIの採用が同業者よりも遅れたのは、UPIベースのサービス開始の承認を得るのに想定よりも少し時間がかかったからだ」と広報担当者はいう。

2017年2月4日土曜日、インドのベンガルールの道路沿いにあるアクセサリ店に掲げられている、One97 Communications Ltd.提供のPaytmオンライン決済が利用可能であることを示す看板。画像クレジット:Dhiraj Singh/Bloomberg via Getty Images

この競争に姿を見せていないのがフェイスブックだ。ユーザー数ではインド市場が世界最大だと考えている同社は、Credit Suisse(クレディ・スイス)の試算では2023年までに1兆ドル(約109兆円)に達すると予測されているインドのモバイル決済市場にWhatsAppを使って参入しようと、早くも2017年に銀行と交渉を始めた。WhatsAppはインドで最も人気のあるスマートフォンアプリで、ユーザー数は4億人を超える

翌年、WhatsApp Pay(ワッツアップペイ)で100万人のユーザーにサービスを開始したが、その後、規制との戦いから抜け出せなくなり、残りのFacebookユーザーに決済サービスを拡張できないでいる。フェイスブックCEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は「WhatsApp Payは昨年末までにインド全国に導入予定だったが、まだすべての承認を得ることができずにいる。また新たな課題も出現していると話している。フェイスブックは今年4月、インド最大手の通信会社Reliance Jio Platforms(リライアンス・ジオ・プラットフォームズ)に57億ドル(約6246億円)を投資したが、この件についてはコメントを拒否している。

PhonePeが生まれたのは、WhatsAppがインドのモバイル決済市場に注目するわずか1年前のことだったが、以来、複数のサードパーティサービスを追加して確実に成長を遂げてきた。こうしたサービスには、大手食品雑貨配達サービスのSwiggyやGrofers(グロファーズ)、ライドシェア大手のOla(オラ)、チケット購入ホテル予約サービスのIxigo(イクシゴ)やOyo Hotels(オヨホテルズ)など、いわゆるスーパーアプリ戦略を採用している企業が含まれる。昨年11月のPhonePeのアクティブユーザー数は約6300万人で、そのうち4500万人がアプリを使って取引した。

TechCrunchがPhonePeの経営者Karthik Raghupathy(カーシク・ラグパティ)氏に、同社の取引ユーザー数について確認したところ、上述の数字で間違いないという回答があった。

同氏は、PhonePeの成長に寄与した3つの要因について、「ここ数年でスマートフォンとモバイルデータの利用が急速に拡大したこと、インドのモバイル決済会社が仮想モバイルウォレットモデル一本に絞っていたときにUPIをいち早く採用したこと、オープンなエコシステムアプローチを採用したことだ」とインタビューで答えた。

「早くから当社の消費者ベースをすべての加盟店に開放した。目的は、映画や旅行のオンラインチケット販売といった分野に参入することではなく、そうしたサービスの入り口を仕切っている市場リーダーたちと提携することだった」とラグパティ氏は語っている。

また同氏は、「さらに、完全にオープンで相互運用可能なQRコードで市場に参入した。つまり、加盟店や企業が1つのQRコードで、当社のアプリだけでなくすべてのアプリによる決済を受け付けられるようにした。それまでは、近所の商店に行くと、さまざまな決済アプリに対応するため複数のQRコードが用意されていた。この数年で、当社のアプローチが業界標準になった」と述べ、PhonePeは他のモバイルウォレットや決済方法に対しても同様にオープンであると付け加えた。

成長を遂げ、オープンなアプローチを採用しているPhonePeだが、最近の四半期決算では投資家の信頼を勝ち取るのに苦戦している。インドのモバイル決済企業には明確なビジネスモデルが欠けている点が、投資家の不安をあおっているのである。

PhonePeの経営陣は昨年、資金調達について話し合った。成功していれば、PhonePeの企業価値評価は80億ドル(約8767億円)となるはずだったが、交渉は決裂した。また、事情に詳しい3人の情報筋によると、報道されていないが「今年前半も同様の話し合いがあり30億ドル(約3287億円)の企業価値評価を得られるはずだったが、これも決裂した」とのことだ。ラグパティ氏とPhonePeの広報担当者に、同社の資金調達計画についてコメントを求めたが返答は得られなかった。

現時点では、ウォルマートはPhonePeへの融資を継続することに同意している。PhonePeは2018年、ウォルマートによるFlipkart(フリップカート)の買収によりウォルマートの傘下となった。

インドではUPIが市場に浸透したため、銀行は、モバイル決済業者にとって数少ない収益源の1つである販促インセンティブの支払いを廃止してしまった。

昨年末にベンガルールで開催されたイベントで、Google PayおよびNext Billion User Initiatives(ネクスト・ビリオン・ユーザー・イニシアティブズ)の責任者およびビジネスチーフであるSajith Sivanandan(サジット・シヴァナンダン)氏は、現在のインドでの国内規則では、Google Payはクリアなビジネスモデルなしで運営することを余儀なくされている、と語った。

新型コロナ渦の影響はモバイル決済企業にも

新型コロナウィルスのパンデミック発生をうけて、インド政府が3月末から全国的なロックダンを実施したたため、その後数週間のモバイル決済取引は、予想どおり著しく減少した。しかし、Paytmはまだ回復できずにもがいている一方で、PhonePeとGoogle Payは、一部規制が緩和されたこともあり完全に通常の状態に復帰している。

TechCrunchは、UPIの監視機関であるNPCIがまとめたデータを入手した。このデータによると、5月のPaytmのUPI取引数は約1億2000万件で、4月の1億2700万件、3月の1億8600万件を下回った(Paytmはモバイルウォレットサービスも続けており、その利用分も取引総数にカウントされている)。

UPI決済のみに対応しているGoogle Payの5月の取引件数は5億4000万件で、4月の4億3400万件、3月の5億1500万件に比べて増加している。PhonePeの取引件数は、3月の4億5400万件から4月の3億6800万件へと減少しているが、これで底を打って、5月は4億6000万件と回復している。これについてNPCIの広報担当者にコメントを求めたが回答は得られなかった。

PhonePeとGoogle Payは先月、2社合計で、インドのすべてのUPI取引の約83%に達したと発表した。UPI自体のユーザー数は1億1700万人を超えている。

競合会社の幹部たちは、かつてはインドのモバイル決済市場の最大手だったPaytmを敗者として片付けるのは間違っていると指摘する。

Paytmはマーケティング費用を切り詰め、ここ数四半期で積極的に加盟店へのサービス拡充を行っている。今年前半に、同社はさまざまなガジェットを発表した。たとえば、電卓とUSB充電器付きの決済用QRコード表示スタンド、音声確認機能で取引を行えるスピーカー、在庫管理を簡単にできるデバイスなどだ。

「加盟店にはこのようなデバイスをサブスクリプションサービスとして提供している」と、Paytmの共同創業者でCEOのVijay Shekhar Sharma(ヴィジェイ・シェカール・シャルマ)氏は今年初めにTechCrunchが行ったインタビューで語った。Paytmは映画や旅行のチケット販売、レンタル、ゲーム、eコマースなど、複数のビジネスにも参入しており、ここ数年でデジタル決済銀行も設立した。

「Paytmは誰もが知っている。インドでは、Paytmはデジタル決済の代名詞として使われており、インド国外では、インドのAlipay(アリペイ)だと思われている」と競合会社の幹部は語った。

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(翻訳:Dragonfly)