Waymoが無人ロボタクシーサービスをサンフランシスコの従業員に提供

Alphabet(アルファベット)の自動運転部門のWaymo(ウェイモ)は米国時間3月30日、サンフランシスコの従業員に完全自律走行車による乗車の提供を開始したと発表した。

Waymoは、プレシディオからキャンドルスティックポイントの最奥部まで広がる「サンフランシスコの初期サービス領域」内で、乗客だけが乗り込む運行を開始し、そこから徐々に拡大していく予定だ。

このニュースの約1カ月前には、同社はカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)から許可を取得後、人間のオペレーターを乗せたロボタクシーの乗車でベイエリアの住民に課金し始めると発表した。また、8月にはWaymoのTrusted Testerプログラムが始まった。このプログラムでは、サンフランシスコの人々が登録して、やはり人間のオペレーターを乗せたWaymo Driver搭載の全電動自動車ジャガーIペースを無料で呼び出すことができるようになった。

サンフランシスコは、Waymoとその最大のライバルであるGM(ゼネラルモーターズ)の自動運転子会社Cruise(クルーズ)との間で、ある種の戦場と化している。Cruiseは2022年2月上旬、自社の完全自律走行の配車サービスの一般提供を開始したが、乗車料金を徴収するためには、まだCPUCの許可を得る必要がある。Waymoは、最終的にドライバーレス乗車で課金するための許可をすでに申請しているかどうかについては明らかにしなかった。

ただし、アリゾナ州フェニックスでは、CruiseはWalmart(ウォルマート)と共同で自律走行配送の試験運用を行っている。最近その試験運用は拡大されたものの、Waymoはロボタクシーの優位性を確立している。同社は2016年からフェニックスでテストを行っており、2020年にはそこで完全自律走行の公共配車サービスを導入した。サービスを通じて毎週数百回の乗車を提供している。

Waymoは2022年3月30日、フェニックスでのルーツを深め、Waymo Driverが最近自律走行距離50万マイル(約80万キロメートル)を達成したイーストバレーからダウンタウンに拡大することも明らかにした。これまでと同様、同社は自律走行スペシャリストを運転席に乗せての乗車をまず自社従業員に提供し、その後、同社のTrusted Testerプログラムを通じて一般の人々にもサービスを開放する予定だ。

Waymoの共同CEOであるDmitri Dolgov(ドミトリ・ドルゴフ)氏は声明で「安全で堅牢、かつ汎用性のある自律走行ドライバー、すなわちWaymo Driverを構築し、その能力と性能を地域や製品ラインの間でうまく移行させることに我々は注力しています」と述べた。「これまでの経験から、第5世代Driverをサンフランシスコですばやく、そして自信を持って展開することができたのと同じように、サンフランシスコとフェニックスのイーストバレーでの経験の組み合わせは、何百万マイルの実走行に基づき、何十億マイルのシミュレーション走行によって後押しされ、すでにフェニックスのダウンタウンでの当社の進歩を導き、完全自律配車サービスの将来の拡張のための準備となっています」。

Waymoは、現時点ではサンフランシスコとフェニックスでの保有車両数は共有しないと述べた。

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ベトナムのVinFastがノースカロライナ州にEV工場を約2445億円で建設

ベトナムの自動車メーカーでVingroup傘下のVinFastは米国時間3月29日、ノースカロライナに最初の米国工場を建設すると発表した。同社は以前から、米国への投資と進出の計画を表明していた。

この新進自動車企業によると、同社は1976エーカー(約8平方キロメートル)のノースカロライナ工場の第一期工事に約20億ドル(約2445億円)を投じ、今後の工期に対しても投資を続ける。第一期の竣工予定は2024年7月で、年産15万台の生産能力を実現する。

VinFastの計画では、同工場で乗用車2車種と電動バス、電動車用バッテリーを生産し、またサプライヤーのための付属品なども生産する。

VinFastがノースカロライナ州と交わした合意書によると、VinFastの7人乗り全電動SUV、 VinFast VF 9と、5人乗り全電動ミッドサイズSUV、VinFast VF 8にはブロックチェーンの技術が含まれ、オーダーを記録したりオーナーを確認したりするが、それらの製造を米国工場で行う。VF 9とVF 8の価格はそれぞれ、1月に同社がCESでシェアしたところによると、米国で5万6000ドル(約680万円)と4万1000ドル(約500万円)からとなる。

VinFastは2017年のローンチ以来、急速に成長した。同社はベトナム初の国産車メーカーとなり、2019年にはガソリン車を発売した。その後VinFastは、2022年後期にはEVだけを生産すると約束している。

同社は米国市場を主なターゲットの1つと位置づけている。つまり既存自動車メーカーのGMやFordやTeslaだけでなく、新参のEV企業であるRivianやFiskerとも競合するという意欲的な取り組みだ。

11月のロサンゼルスAuto ShowではVinFastは2台の電動クロスオーバー車を披露し、2022年の終わりに米国で発売すると述べた。そのとき同社は、2億ドル(約244億円)ほどを投じてロサンゼルスに米国本社、そして60以上の販売店と複数のサービスセンター、および移動式サービスサイトを年内に開設すると発表した。

Vingroupの副会長でVinFastのグローバルCEOであるLe Thi Thu Thuy(レ・ティ・トゥ・トゥイ)氏は声明で次のように述べている。「市場内に製造工場があることは、VinFastに先取的なサプライチェーン管理を可能にし、価格安定と短期納車を維持し、VinFastのEVを消費者にとってアクセスしやすくして、当地の環境改善目標の実現にも寄与します」。

ベトナムにおいて2021年末にEVを発売したVinFastは、2022年、グローバルで4万2000台の販売を狙っている。Vingroupは最近ベトナムのハティンにバッテリー工場の建設を開始し、今年後半には年間生産能力5ギガワットで稼働を開始する予定だ。また1月の発表によると、同社は1月に、ドイツでの工場建設も検討していると発表している。

画像クレジット:VinFast

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ロータスの新型EV「Eletre」に搭載された技術に同社の自動運転への野望が見える

Lotus(ロータス)は米国時間3月29日、バッテリー駆動の「ハイパー」SUV「Eletre」(エレトレ)を発表した。これは、ロータスが今後4年間に発売を予定している3種類のEV(電気自動車)のうちの最初の1台だ。

どのようなものなのか?Eletreは(ハンガリー語で)「活気づく」という意味で、Lotus初の実用車であり、今後予想されるバッテリー駆動の高級SUVの需要増に対応するための重要なモデルだ。車両のデザインや豪華な内装は特筆すべきものだ。しかし、ロータスの未来を最もよく垣間見ることができるのは、必要に応じて飛び出す4つのLiDAR(ライダー)センサーを含む、いくつかの技術だ。

まずは基本的なことを。Geely Automotive(ギーリー・オートモーティブ、吉利汽車)とマレーシアのコングロマリットEtika Automotive(エチカ・オートモーティブ)が所有するLotusは、このEVに、パワーとトルク、そこそこのバッテリー走行距離を詰め込んでいる。

Eletreは、800ボルトの電気アーキテクチャを採用し、バッテリーを劣化させることなく急速充電を可能にした。各車軸に1つずつ搭載された2つの電気モーターは、最低でも600馬力を発生し、SUVを3秒以内に0〜60mph(時速0〜97キロ)まで加速することができるLotusによると、100キロワット時以上の蓄電能力を持つバッテリーパックは、フル充電でEletreが373マイル(約600キロメートル)走行する(欧州のWLTP燃費基準)ことを可能にするという。また350キロワットの充電器を使えば、20分で248マイル(約399キロメートル)分を充電することができる。

Eletreには4種のドライブモードが提供される。そのうちの1つであるオフロードモードでは、ステアリング、ダンパー設定、パワートレイン、アクセルペダルの反応が調整される。その他、オプションの23インチホイール、アクティブライドハイト、アクティブ後軸ステアリング、アクティブアンチロールバー、ブレーキによるトルクベクタリングなどのハードウェアや機能を追加することが可能だ。

この車両は、2022年後半に中国の武漢にあるロータスの新工場で生産が開始される予定だ。

画像クレジット:Lotus

Lotus Cars(ロータスカーズ)のマネージングディレクターのMatt Windle(マット・ウィンドル)氏は、Lotus初のSUVかつEVであるこの新型車について「私たちの歴史の中に重要な位置を占め、ビジネスを変革したい私たちの変わらない願望を明確に示すもの」だという。

もちろん、この歴史の中の重要な位置を、将来の大きな利益につなげることが目的だ。

LotusはEletreの価格情報を公開しなかったので、競合相手を特定することは難しい。価格次第では、Tesla(テスラ)Model Xや、Lamborghini(ランボルギーニ)からAston Martin(アストン・マーティン)に至る、高級ブランドのトップセラーとして認識される高級SUVと競合する可能性がある。

潜在的な競争相手は増え続けている。Maserati(マセラティ)は先週、中型SUV Levante(レヴァンテ)のバッテリー版と、新型コンパクトクロスオーバーGrecale(グレカーレ)の2種の完全電気SUVを発売する計画を発表した。Ferrari(フェラーリ)初のSUV、30万ドル(約3654万円)のPurosangue(プロサングエ)は2022年後半に登場予定だ。

Lotusの場合、先進運転支援システムの改善や機能追加を行うために、無線を使ったソフトウェアアップデートを行うことのできるセンサーやその他のハードウェアを搭載し、Eletreの「将来の拡張性」を保証している点が特徴だ。

一般に、自動運転車を安全に運用するための鍵として考えられている光検出・測距センサーLiDARは、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Volvo(ボルボ)、そして今回のLotusといった自動車メーカーで採用され始めている。こうした自動車メーカーは、LiDARを完全な自動運転機能ではなく、特定条件下の限定的な自動運転機能のための余裕を提供するために必要なセンサーとみなしている。少なくとも、今はまだそうだ。

画像クレジット:Lotus

LotusがEletreに搭載するLiDARは、このような使い方を想定しているようだ。Lotusは4つのLiDARセンサーを使用する予定で、必要なときに「展開」または「飛び出し」が行われるようになっている。Lotusによれば、LiDARセンサーは必要ないときは隠れていて「必要に応じてフロントガラスの上部、リアガラスの上部、フロントホイールアーチから現れるだけ」とされている。

このLiDARセンサーシステムによって、最終的にはスマートフォンのアプリで駐車場への入出庫ができるようになる予定だ。しかし、Lotus Technology (ロータステクノロジー)の副社長で、ドイツのLotus Tech Innovation Center(ロータステックイノベーションセンター)のマネージングディレクターであるMaximilian Szwaj(マクシミリアン・シュワイ)氏のコメントは、同社が駐車場以外のことも考えていることを示している。

彼は声明の中で「LiDARセンサーやカメラなどのADAS(先進的運転手支援システム)技術は、より自動的な時代に向けて新車に搭載されることが多くなるでしょう」と、現在のための技術はもちろん、未来のための技術も搭載していると述べている。

また、現在の米国の規制では禁止されているカメラを使ったミラーシステムも搭載される予定だ。3種類のカメラは、1つ目はバックミラー用、2つ目は駐車を助けるために上方から360度の視界を作り出すためのもの、そして3つ目は先進運転支援システムに使用される。Lotusは、カメラがLiDARシステムと連動して「自動運転機能」を実現すると述べている。

Lotusは、この「自動運転機能」が駐車以上の野望を意味するのか否かについて、これ以上の詳しい説明をしていない。Lotusが説明するハードウェアは最先端技術ではあるが、効率的で安全な自動運転機能をクルマに搭載するには、計算能力とソフトウェア、そして直感的なユーザーエクスペリエンスを備えたシステムを含め、克服すべき多くの課題がある。

しかし、4つのLiDARセンサーと3つのカメラは、同社の目標が限定的または条件付きの自動運転機能にも及んでいることを示唆している。

画像クレジット:Lotus

その他のイノベーションとしては、同社が多孔性 (ポロシティ、porosity)と呼ぶものがある。これは空力特性、航続距離、効率を改善するために、上下、周囲だけでなく、車体の中に気流を通過させるものだ。Lotusは、ハイパーカーEvija(エヴァイヤ)やEmira(エミーラ)をデザインする際、多孔性に注力した。

今回Eletreに搭載されたことで、このデザインイノベーションは今後も続くと思われる。ロアーグリル、フロントフェンダー、テールランプ付近などに、このエアーチャンネルがわかりやすく配置されている。

特にグリルは興味深いもので、三角形の花びらが連結したネットワークを形成し、クルマが動いていないときや走行中の抵抗を減らす必要があるときは閉じられる。Lotusによれば、電気モーター、バッテリーパック、フロントブレーキの冷却が必要なときに、ラジエーターに空気を送り込むためにグリルが開き、Eletreが「呼吸」できるようにするのだという。

編集部注:Eletreは日本の公式輸入代理店のウェブページなどでは「エレトレ」と表記されているが、Lotus公式を含む現地/海外メディアのビデオなどでは「エレクトラ」と発音されている。

画像クレジット:Lotus

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(文:Jaclyn Trop、Kirsten Korosec、翻訳:sako)

起亜自動車が「EV9」の市販化を発表、2023年に欧州で発売

Kia(起亜自動車)が、2021年のロサンゼルスオートショーで公開したコンセプトカー「Concept EV9(コンセプトEV)」を市販化する日はそう遠くないだろうと思っていた人の推測は正しかった。起亜は、この電気自動車SUVの市販バージョンを、2023年に欧州で発売すると発表した。北米やその他の地域での販売については言及されていないものの、SUVなのだから、米国やカナダの道路を流しているEV9を目にするのも時間の問題かもしれない。

EV9がコンセプトから量産モデルに移行する際にどこが変わるのかということについて、起亜は言及しなかった。しかし、我々はボディの大胆な切込みや、巨大なホイール、格納式ルーフレール、そしてラウンジのような座席モードなど、エキゾチックな機能の多くがカットされると予想する。とはいえ、27インチの超ワイドディスプレイや、ボンネット備わるソーラーパネルさえ、市販モデルに受け継がれたとしても、我々は驚かないだろう。

量産モデルのEV9でも、謳い文句通りのスペックが維持されるかもしれない。コンセプトカーでは、一度の充電で走行可能な距離は最大300マイル(約483km)で、350kWの超急速充電に対応し、バッテリー残量の10%から80%まで10分で充電可能ということが約束されていた。起亜は最近、高速道路でドライバーに代わってEV9を走らせることができる自動運転技術「Automode(オートモード)」についても詳述している。

価格など、まだ明かされていない重要な情報も多いが、EV9は、少なくともいくつかの分野では、起亜にとってこれまでで最も重要な完全電気自動車の1台になる可能性がある。現在のところ、同社が販売している電気自動車「EV6」は好評を博しているものの、一部の市場(特に北米)はクロスオーバーやSUVに大きく偏っている。EV9は、起亜がTesla(テスラ)の「Model Y(モデルY)」や、Volkswagen(フォルクスワーゲン)の「ID.4」のような競合に挑むための助けとなるかもしれない。いうまでもなく「Niro EV(ニロEV)」では興奮しない買い手を引き寄せるためにも貢献するだろう。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のJon Fingas(ジョン・フィンガス)氏はEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Kia

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(文:Jon Fingas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Coreshellのナノ層コーティング技術は、電気自動車の電池に容量アップと耐熱性向上をもたらす

5年前、Jonathan Tan(ジョナサン・タン)氏とRoger Basu(ロジャー・バス)氏は、自分たちが専門とする薄膜技術を生かし、最も速く、最も大きなインパクトが与えられる業界を模索していた。そして彼らが選んだのは、電池、特に電池の劣化や寿命に関する分野だった。

当時は(そして今も)この業界には投資も研究も不足しており、電池の画期的な発明に成功したと主張する企業もなかった。しかし、2人は、他の誰もが右へ行くところを、自分たちは左に行ったと主張する。

2017年にカリフォルニアでCoreshell(コアシェル)というスタートアップを共同設立したタン氏とバス氏は、ゼロから新しい電池を開発しようとする、既に多数の企業が取り組んでいる費用も時間もかかる事業には手を出さなかったという。

代わり彼らは、電池セルメーカーの既存の生産システムに追加できるナノ層コーティング技術に力を注いだ。このコーティングによって、電池の使用可能容量は30%以上増加し、耐熱性が200%向上するため、コスト削減と安全性の向上が可能になると、Coreshellの創業者たちは述べている。この技術は、家電や電気自動車など、異なる化学組成や用途の電池に適用することも可能だ。

「私たちは、電池の『Intel Inside(インテル・インサイド)』になりたいのです」と、CoreshellのCEOであるTan氏はTechCrunchに語った。「私たちはこのコーティング技術を、電池内部の最も困難な表面、つまり、電解液と接する陽極の表面と陰極の表面に直接適用したいと考えています」。

Coreshellはその斬新なアプローチで、複数の投資家や電池メーカー、さらには象徴的なデューンバギーを作った会社として知られるMeyers Manx(メイヤーズ・マンクス)からも支持を得ている。また、Tesla(テスラ)の共同創業者であるMarc Tarpenning(マーク・ターペニング
)氏、National Renewable Energy Laboratory(国立再生可能エネルギー研究所 )研究で知られるコロラド大学教授のChunmei Ban(チュンメイ・バン)氏、企業のIPO支援でキャリアを積んできたJudith O’Brien(ジュディス・オブレイン)氏など、多くの専門家から助言を受けている。

2人は当初、会社を自己資本のみで運営していたが、2020年にAlchemist Accelerator(アルケミスト・アクセラレーター)を通じて、いくらかのシードマネーを調達した。

以降、CoreshellはBASFとの協業を開始して、先進的な正極材料のためにいくつかの異なるコーティングの開発に取り組んでいる。また、タン氏によれば、名前を挙げることはできないが、他のバッテリーセルメーカーと実証実験も行っているという。同社は最近、Trousdale Ventures(トゥルースデール・ベンチャーズ)、Industry Ventures(インダストリー・ベンチャーズ)、Helios Capital Venturesが(ヘリオス・キャピタル・ベンチャーズ)主導するシリーズAラウンドで、1200万ドル(約14億7000万円)の資金を調達している。このラウンドには、既存投資家のEntrada Ventures(エントラーダ・ベンチャーズ)、Foothill Ventures(フットヒル・ベンチャーズ)、Asymmetry Ventures(アシンメトリー・ベンチャーズ)も参加した。Coreshellが現在までに調達した資金の総額は1900万ドル(約23億2500万円)となった。

CoreshellとTrousdale Ventures、特にマネージング・パートナーのPhillip Sarofim(フィリップ・サロフィム)氏との関係は、Meyers Manxとのパートナーシップにもつながった。Meyers Manxの電動ビーチバギーのプロトタイプが、Coreshellの技術が「入っている」最初の車となる。

Meyers Manxの会長でもあるサロフィム氏は、今回の提携が「冒険と楽しさを世界にもたらし続けながら、現代の消費者の期待に応えるためにさらに性能を引き上げる」というMeyers Manxの使命に合致すると述べている。

Meyers Manxによる性能実証に加えて、他の電池セルメーカーや自動車メーカーとの協業も行うことで、Coreshellはセルレベル、デバイスレベルの両方において全能力を披露でき、自動車への適用も加速させることができると、化学エンジニアから技術事業開発担当者に転身したタン氏は語っている。

同社はまた、New Era Converting Machinery(ニュー・エラ・コンバーティング・マシーナリー)と共同で、その薄膜コーティング技術がどうやってロールtoロール加工に使用できるかを実証する取り組みも行っている。これが成功すれば、Coreshellは自動車メーカーや電池メーカーに自社の技術を採用するよう説得することができるだろう。

「もちろん、最初はもっと小規模なところから始めますが、しかしその能力を見せるだけでも、『私たちの技術をうまく組み込めば、バッテリーの劣化を解決し、容量を増やすという性能を強化しながら、製造コストを下げられますよ』と示すことができるようになるための重要なステップです」と、タン氏は語る。

ターペニング氏が注目したのは、この進歩だ。

「半年に一度は、バッテリーの容量とか価格の低減などに関する何らかの大きな革新が発表されているような気がします。しかし、それがなかなか実現していません」と、ターペニング氏は語る。「その理由の1つは、研究室で機能するこれらの技術の多くが、うまく量産できないか、まったく量産できないか、あるいは生産プロセスに大きな変更を加える必要があるためです」。

Coreshellは、電池セルメーカーの既存の生産運用に追加できることが、ターペニング氏にアピールした。

「既存の工場で実際に導入しながら、どのようにスケールアップするかを検討することができます。それが私にとって大きな意味がありました」と、同氏は語る。「わお、それはいいぞ、まるで鶏と卵の問題を解決したような凄いことだって、私は思いました」。

画像クレジット:Coreshell
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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東京理科大学、太陽光発電とEVの走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムの実車実験に成功

東京理科大学、太陽光発電とEVの走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムの実車実験に成功

東京理科大学は3月24日、太陽光発電と電気自動車(EV)の走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムを開発し、世界で初めて実車を用いた実験を成功させたと発表した。EVの普及と太陽光発電の大量導入を後押しする技術に発展することが期待されるという。

2020年、EVの停車中のワイヤレス充電の国際規格(SAE J2954)が制定され、走行中ワイヤレス給電(DWPT。Dynamic wireless Power Transfer)はその次の技術として期待されている。現在のEVは、大量のバッテリーを搭載しているために価格が高く、充電に時間がかかることが普及の足かせになっているが、DWPTが実現すれば、バッテリーは小さくて済み、走行距離を飛躍的に延ばすことが可能となる。すでに、DWPTが経済的に成り立つという試算が出されていて、高速道路だけでなく一般道にも導入が可能だとされている。しかし、太陽光発電とDWPTを組み合わせる技術的な研究は、世界的にもまだ進んでいない。

そこで、東京理科大学理工学部電気電子情報工学科の居村岳広准教授を中心とする研究グループは、太陽光発電とDWPTを組み合わせる際に必要となる回路と制御方法を開発し、実際に実験用道路に給電装置を埋め込んだ実車実験を行った。研究グループは、カーボンニュートラルの実現を目指す観点から電力網に接続しないオフグリッドでの太陽光発電を用いたシステムと、オングリッドのシステムの両面から研究を行っているが、今回実車実験を行ったのは、オフグリッドを想定したシステムだ。

コイルと太陽光発電と実車

コイルと太陽光発電と実車

オフグリッドのシステムは、道路脇に設置した太陽光パネルによる直流電力送電路「DCバス」に接続することが想定されている。オングリッドならば常に一定の電力を供給できるのだが、オフグリッドの場合、発電状況やEVの走行台数の変化によってシステムにかかる電圧が変動する。そこで、太陽光発電の出力を最大化する最大電力点追従制御(MPPT。Maximum Power Point Tracking)とDWPTのそれぞれに想定される負荷変動の周期のずれを吸収する電気二重層キャパシター(EDLC。Electrical Double Layer Capacitor)を、発電部分と給電部分との間に挟んだ。さらに、ワイヤレス給電のために直流電圧を高周波の交流に変換するインバーターの出力電圧波形を位相シフト制御して電圧調整を行った。これにより、発電電圧を最大に保ちながら、供給電力を一定に保つことができた。

東京理科大学、太陽光発電とEVの走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムの実車実験に成功―世界初の実車を用いたシステム開発

コイルと回路

研究グループは、屋内の基礎実験でこのシステムの動作が検証できたところで、キャンパス内にDWPT実験用道路を作り、実際のEVの床下に受電回路を取り付けて走行試験を行った。その結果、車のボディーやアスファルトの影響が心配されていたが、大きな影響はなく、屋内基礎実験と同様に動作が可能であることが示された。これにより、電気二重層キャパシターとインバーター出力の位相シフト制御を使うことで、オングリッドの場合と同じように供給電力を一定に保てることがわかった。

日本では、2050年には300GW(ギガワット)の太陽光発電施設の導入を目指している。そうなると、昼間の電力量は需要を上回り、余剰電力が生まれるようになる。DWPTは、停車中充電に比べて電力吸収量が10倍以上と多いため、太陽光発電の大量導入時の余剰電力消費先として親和性が高く、余剰電力の負荷平準化に貢献できる可能性もあるという。

今回は動作原理の実証のため電力は抑えて行ったが、今後は、埋設したコイルの大電力伝送実験、雨水や海水の有無による影響の評価などを通して、社会実装に向けた研究を進めるとしている。

レンタカーを顧客の元まで届けるKyteが保有車両を1万台まで増やすことを計画中

レンタカーを顧客の元まで届けるビジネスを起こしたスタートアップ企業のKyte(カイト)は、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)とAres Global Management(アレス・グローバル・マネジメント)から2億ドル(約244億円)の資産担保金融を調達した。この資金は事業拡大に向けて新たな車両の購入費に充てられる。

Kyteは現在、米国内の13の市場で事業を行っており、今週にはオレゴン州ポートランドで営業開始を予定している。同社は今後1年間で保有車両を約1万台まで増やす計画だという。現在のところ、Kyteの保有車両に、電気自動車や先進運転支援システム(ADAS)を搭載した車両が(もしあったとしても)占める割合はそれほど高くないものの、同社は将来的に、顧客にこのような車両を優先的に提供したいと考えている。

「私たちにとって核となる原動力は、常にユーザーエクスペリエンスです」と、Kyteの共同創業者であるLudwig Schoenack(ラディック・シェーナック)氏は、TechCrunchにメールで語った。「ADAS機能そして最終的には完全な自動運転は、私たちが道路を移動する方法に大規模な変化をもたらすでしょう。【略】そして、センサーや認識技術を搭載したクルマは、たまにしか乗らない人にとって自分で所有するには高価になり過ぎるため、郊外へ出掛ける移動手段としては、Kyteが一番の選択肢となるでしょう。そういうクルマは、自分で所有する代わりにレンタカー会社が導入するようになると、私たちは確信しています。それが、Kyteが目指している未来です」。

2021年10月、Kyteは3000万ドル(約36億5000万円)のシリーズA資金を調達した際に、同社の長期的な目標は、遠隔操作や自動運転システムでクルマを配送できるプラットフォームを構築することだと述べていた。だが、それにはまず、今のビジネスモデルを拡大する必要があるだろう。同社は現在、ユーザーにクルマを届け、使用後に引き取る作業を「Kyte Surfers(カイト・サーファーズ)」と呼ばれる提携ドライバーに頼っており、その間の移動にはしばしばマイクロモビリティを使っている。クールな新技術に手を出す前に、ユニットエコノミクスを高め、ユースケースを証明する必要がある。

Kyteは以前、2022年に遠隔操作によってレンタカー車両を配送するテストを開始するとTechCrunchに語っていたが、このオンデマンドレンタカーのスタートアップ企業が、まだ統合する遠隔操作システムのプロバイダーを決めていないため、この目標は遠退いたようだ。

シェーナック氏によると、Kyteは複数のプロバイダーと「話し合い中」とのことだが、現在のところ、いずれの会社も公道で大量展開が可能なソリューションを持っていないとのこと。

同社には、テスト運用を行うために、なぜ「大量展開が可能なソリューション」が必要なのかと尋ねたのだが、現時点で説明は得られなかった。

また、近い将来、どのメーカーからクルマを調達したいのかという質問や、新たに導入する車両に自動運転機能を搭載したものや電気自動車があるのかという質問に対しても、同社は明確に答えなかった。

同社のウェブサイトを見ると、Nissan Versa(日産ヴァーサ)、Toyota Corolla(トヨタ・カローラ)、Hyundai Tuscons(ヒョンデ・ツーソン)が、各市場に導入されていることがわかる。料金は借りる曜日や時間によって異なる。例えば、日産ヴァーサは平日の1日レンタルで保険、配送、税金別で62ドル(約7600円)だが、週末に借りると72ドル(約8800円)に跳ね上がる。期待通り、長期間借りれば1日あたりの料金は下がる。

画像クレジット:Kyte

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「Polestar 2」のシングルモーター仕様が米国で販売開始、約560万円から

スウェーデンの高性能電気自動車ブランドであるPolestar(ポールスター)は、2021年発売されたデュアルモーター仕様のEV「Polestar 2」続き、一度の充電で270マイル(約435km)の距離を走行可能なシングルモーター仕様の同モデルを米国で販売開始すると発表した。

この「Polestar 2 Long range Single motor(ポールスター2 ロングレンジ・シングルモーター)」の車両価格は、4万5900ドル(約560万円)からとなっているが、連邦政府と州の補助金を考慮すると実質3万3400ドル(約406万円)となる。デュアルモーターで4輪駆動の兄弟車よりも4000ドル(約49万円)安く、航続距離も19マイル(約31km)長い。車軸に取り付けられた電気モーターの数以外(シングルモーターは前のみとなる)、両車は機能的には同じものだ。

「Polestar 2のすべてのモデルは、Googleインフォテインメント・システム、プレミアムでサステイナブルな素材、そして比類のない前衛的なデザインを備え、最先端テクノロジーにおけるブランドの優位性を発散させています」と、Polestar USAのGregor Hembrough(グレガー・ヘンブロー)社長は、プレスリリースで述べている。

4000ドルでさまざまな快適装備が追加される「Plus」パックと、安全および運転支援機能がグレードアップする3200ドルの「Pilot」パックは、どちらのパワートレインを選んでもオプションで付けることができる。

地元の石油化学コングロマリットに一矢報いたい人は、公式サイトまたは全米の主要都市にある同社の実店舗でPolestar 2の試乗を予約することができる。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のAndrew Tarantola(アンドリュー・タラントラ)氏はEngadgetのシニアエディター。

画像クレジット:Polestar

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(文:Andrew Tarantola、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中国のEVシャシーメーカーPIXがスマート車両の自社製造で約14億円調達

中国では過去2年間、機関投資家と企業投資家の両方がドライバーレスの未来に資金を注ぎ込み、自律走行産業が活況を呈している。ロボタクシーサービスの提供やロボバスの運行、配達ボットの展開など、下流で成功している企業は特に投資家に人気があり、数億ドル(数百億円)を調達し巨額の評価額に達している。

現金が豊富になり、有名になる見込みがあるため、上流のサプライヤーもエンドソリューションの構築に着手するようになった。こうした野心的な自動運転ハードウェアサプライヤーの1社が、自動車用スケートボードに特化している中国のPIX Moving(ピックスムービング)だ。この種のシャシーは、バッテリーや駆動ユニットなどの主要コンポーネントを格納し、モジュール式アーキテクチャのためさまざまな種類の自動運転シナリオに適応することができる。Canoo(カヌー)が手がけているものと似ている。

2014年に元建築家のChuan Yu(チュアン・ユ)氏によって設立されたPIXはこのほどプレAラウンドで7200万元(約14億円)を確保し、TechCrunchに語ったところによると調達した資金総額は2000万ドル(約24億円)になった。

同社はハードウェアアクセラレータHAXの第2陣の1社で、ドローンソリューションの構築からスタートした。5年前に自動車分野に進出し、以来、中国、欧州、北米、オーストラリアでひと握りの顧客を獲得した。その中には同社のスケートボードシャシーを採用するAlibaba(アリババ)やBaidu(バイドゥ)、そして守秘義務契約により名前を明かせないが、すぐに使えるロボ車両を購入するドイツのティア1自動車部品メーカーなどが含まれている。

PIXはホワイトラベルのサプライヤーでは満足できなくなり、最近、自社名を冠した自動運転車の提供を開始した。今回の資金調達の一部は、自社ブランドのロボバスやスケートボードのシャシープラットフォームの量産に充て、残りは顧客向けの生産増強、海外展開、採用などに注ぐ。生産能力は2022年中に1200~2500台に達する見込みだ。

PIXは、今回の資金調達における単独出資者の名前を明らかにせず「全国に1万以上の機器を配備している中国の大手衛生ソリューションプロバイダー」とだけ述べた。今回の出資は戦略的シナジーを生み出すことを目的としていて、PIXと出資者は、ゴミ拾いから道路清掃までを意味する「環境オペレーションシナリオ」に対応するサービスロボットを共同開発する予定だ。

PIXの国際事業ディレクターNancy Lee(ナンシー・リー)氏は、ますます混み合う自動運転業界でどのように競争していくかについて、同社が3Dプリンターを使って従来のメーカーよりも低コストかつ短時間でカスタマイズされたシャシーを製造していると述べた。

同社は現在、収益の30〜40%を海外で得ているが、今後2年間でその比率は50%に達すると見込んでいる。中国は自律走行技術の推進者だったかもしれないが、中国の都市の「複雑な」交通事情もドライバーレス車両の大量展開を困難にしているとリー氏は主張した。

PIXは、不思議なことに中国南西部の中心地、貴州省に拠点を置いている。この地域は、Appleのような企業のデータセンターの主要拠点として知られている。また、PIXは北京、上海、深センに研究開発・事業開発チームを抱える。中国以外では、米国でパートタイマー2人が営業と技術サポートに従事しており、ドイツに製造と研究開発を行う子会社を設立中だ。

画像クレジット:PIX’s skateboard chassis

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

ヒョンデの新型ハイブリッド車に装備されたソーラールーフにはどれほど価値があるか?

Hyundai(ヒョンデ、現代自動車)の新型ハイブリッド車「Sonata(ソナタ)」のルーフには、太陽電池が組み込まれている。1日中太陽に照らしておくと、航続距離が3〜4マイル(約4.8〜6.4km)ほど延びる。しかし、私が所有している電気自動車は、駐車して座っているだけで、航続距離が1日に3〜4マイル以上減る。運転していないときにTesla(テスラ)が何をしているかはわからない。何もしていないのに電力が消費しているところをみると、ひそかにクルマに自意識が芽生え、感情が生まれていて、Elon Musk(イーロン・マスク)への愛を俳句に詠んでいるのではないかとしか思えない。

「ソナタ・ハイブリッドのソーラーパネルは、正確には204Wの容量を持っています。つまり、日当たりの良い場所で太陽に照らされたパネルは200Whの電力を生み出します」と、ヒョンデはウェブサイトに書いている。200Wはゼロではないが、電気自動車の文脈では、200Wはそれほど印象的な数字ではない。50アンペアブレーカーの家庭用急速充電器は9.6kWで充電できる。ソナタの屋根で焼かれる哀れな小さな太陽電池より約50倍も速いのだ。

ヒョンデは「1日5.8時間充電することで、1年間に走行可能な距離が1300km増える」と主張している。計算してみると、1日あたり2.5マイル(約4km)の航続距離がプラスされるだけでラッキーだということがわかる。もしあなたが健常者で、通勤距離が2.5マイル以下なら、歩いた方が環境にも健康にも、そして全体的な交通インフラの平常性にも良いと主張することができそうだ。しかし、1日に2.5マイル以下しか走らない人はたくさんいる。そして、たとえ天候の影響で航続距離が大幅に伸びなかったとしても、駐車していたクルマのバッテリーが、数日間放置した後も同じかあるいは少し増えているなら、それは決して悪いことではないだろう。

平均的なドライバーの年間走行距離が1万マイル(約1万6000km)の世界では、無料で走行可能な距離が1300km増えたら、それは約8%の燃費向上を意味する。どんな世界でも、8%の値引きを提示されたら買ってしまいそうなものだ。ハイパーマイリング(省燃費追求)の本からも引用すれば、それがすべて現実の数字になるのだ。

ソーラールーフの追加費用と複雑さが、長い目で見て本当にお金の節約(あるいは環境の保護)になるかどうかはわからない。しかし、私はここに原則的な問題があると思う。どのクルマにも、トランク、ルーフ、ボンネットなど「役に立つ」ことに使われていない数平方メートル分の不動産がある。もし、それが全体のエネルギー消費量を8〜10%減らすことができるのであれば、バッテリーの蓄電能力を持つすべてのクルマ(EV、ハイブリッド車など)の分を掛け算すれば、すぐにプラスになるだろう。ソーラールーフ機能は、2022年型ヒョンデ・ソナタ・ハイブリッドの最上級仕様である「Limited(リミテッド)」グレードに標準装備されており、その車両価格は3万5500ドル(約430万円)からとなっている。

ヒョンデやその他の企業をグリーンウォッシングと非難することは超簡単だ。そしておそらく、これは車両の寿命を考えると最終的には正味のマイナスとなるギミックであることが判明するだろう。しかし、ここで1つ言いたいことがある。私は排ガス試験で不正を行う「クリーン」なはずのディーゼルよりも、ほとんど何もしない屋根の上に設置されたソーラーパネルで走るクルマの方を運転したいと思う。

画像クレジット:Hyundai under a license.

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Birdがニューヨークで電動車いす用アタッチメントをテスト

共有型マイクロモビリティ企業であるBird(バード)は、障がい者がアクセスできるモビリティを増やすために、車いす用バッテリー駆動アタッチメントの試験的導入を限定的に開始する。

この新しい「adaptive program(アダプティブ・プログラム)」は、この夏に拡張されるニューヨーク市ブロンクスのeスクーター試験走行の一部となる。試験地域の個人はこのプログラムに申し込むことができ、参加資格があれば、Birdのチームが直接アタッチメントを届け、セットアップと使用方法を教える。

「セットアップは、Birdの技術者により30分から1時間かかります。最初に取り付けた後は、デバイスは数秒で車いすにラッチオン / オフするはずです」と、Birdの広報担当者はいう。

このプログラムは、Birdが、障がい者がアクセシブルなクルマを探して予約し、支払うことができるようにしたScootaround(スクータアラウンド)というオンデマンドのアクセシブルモビリティプログラムを拡大した数カ月後に登場した。

競合のLime(ライム)は、Lime Able(ライム・エイブル)という同様のアクセシビリティプログラムを行っており、Limeが障がい者や標準的なスクーターでは自信がない人に、3輪スクーターや座席付きスクーターなどの適応型車両を宅配(24時間レンタル)している。

Birdによると、同社の車いす用アタッチメントは、350ワットのモーター、軽量で取り外し可能なリチウムイオンバッテリー、前進と後退の別々のスロットルを備えており、利用者が時速12マイルまで進むことができる。同社は、このアタッチメントが、ライダーの傾斜地の移動や市街地の長距離移動をより容易にするという。

「Birdのadaptive programは、すでに私がより速く移動し、より多くのことを達成するのに役立っています」と、最初のプログラム参加者の1人であるブロンクス在住のEduardo Hernandez(エドゥアルド・ヘルナンデス)氏は声明の中で述べている。「新しいスピードは最高です。スーパーマーケットやその他の用事が非常に楽になりましたし、通常であれば非常に疲れる上り坂でも、信じられないほど役に立っています」。

多くの車いすは保険で賄われているため、このようなアタッチメントが保証を無効にするか、保険の規定に反するかどうかは不明で、Birdはこの件に関する説明に回答しなかった。しかし、Birdは、同社がニューヨーク市交通局、ニューヨーク市長室障がい者課、地元のニューヨーク市障がい者支援団体と協力して、参加者を探していることを明らかにした。

このサービスは現在、ブロンクス区の参加者に無料で提供されている。

画像クレジット:Bird

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Yuta Kaminishi)

韓国LG Energyが約1700億円を投資し米国でのバッテリー生産を拡大

Tesla(テスラ)、Lucid Motors(ルシッドモーターズ)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Proterra(プロテラ)に電気自動車用バッテリーを供給する韓国のLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)が、米国時間3月11日、14億ドル(約1697億円)を投じてアリゾナ州クイーンクリークに円筒形バッテリーの工場を建設することを発表した。

このことは、LG Energyが米国での存在感を高めていることを改めて明確にした。1月には、21億ドル(約2546億円)を投じてゼネラルモーターズと共同で、米国3番目のEV用バッテリー工場を建設する計画だと発表した。また2021年には、Stellantis(ステランティス)がLGとバッテリーセルとモジュールを北米で生産する契約を締結している。

今回のLGのアリゾナでの出資は、北米市場において、瞬発力を必要とする電動工具やEV・電動自転車などのモビリティ機械などに対する、円筒型セルや円筒型電池の応用需要が高まっている時期に行われる。需要が高まる理由は、LGの広報担当者によると、この種のバッテリーが比較的小さくエネルギー密度が高いからだという。

11ギガワット時規模の工場建設は、2022年第2四半期に開始され、2024年には量産が開始される予定だ。

LG Energyによると、同工場はEVメーカーに供給される円筒形バッテリーの、北米で初めての製造工場となる。ロイターの報道によると、Tesla、Lucid、ProterraなどのEVメーカーがその潜在的な顧客となる可能性があるという。LGは、契約手続きは進行中だと語ったが、アリゾナ工場がどの企業に供給するのかは明言を避けた。

LG Energyは、米国での生産能力の追加を検討しているという。1月には、LG Energyは新規株式公開により100億ドル(約1兆2145億円)以上を調達した

バッテリー製品をTeslaにも供給している日本のパナソニックは、オクラホマ州かカンザス州に工場建設用地を探していると、2月にNHKが報じている。また、トヨタは米国にバッテリー工場を建設し、2025年の生産開始を目指している。

米国でバッテリーを開発する海外バッテリー企業の流入は、ジョー・バイデン大統領が国家的なバッテリーサプライチェーンの確立のために数十億ドル(数千億円)の資金を確保するインフラ法案の産物なのかもしれない。

LGは、このようなサプライチェーン構築のために米国から提供される資金の受給資格があるかどうかの問い合わせには、締切までには回答しなかった。

関連記事:GMがシボレー・ボルトのリコール損失約1100億円をLG Chemに請求すると表明

画像クレジット:LG Energy Solution

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(文:Kate Park、翻訳:sako)

フォードはCiscoと提携して電気自動車をビデオ会議の空間に

Ford(フォード)のEVピックアップトラック「F-150ライトニング」には最近、双方向充電機能が搭載され、万一のときに家庭用バックアップ電源として使えるようになった。今度は会議ソフトウェア「Webex」のメーカーであるCisco(シスコ)との新たな提携で、EVをオフィスのバックアップにしようとしている。

FordのJim Farley(ジム・ファーリー)CEOは米国時間3月22日「我々は全力で、スタートアップのスピードと限りないイノベーションをもたらす、お互いに独立しつつ補完するビジネスを構築しています」と発表した。同社がここ数カ月で発表した計画としては、EVとICE(内燃機関)事業の分離、2023年末までに年間60万台のEV生産、今後数年間でヨーロッパ市場に7種類の新型EV投入がある。

Fordがアメリカ人ドライバーの心をつかむには、2020年3月以来インターネットで最も頻繁に使われている用途であるオンライン会議を電気自動車に装備する以上に良い方法はないだろう。Fordの電気自動車プログラム担当バイスプレジデントであるDarren Palmer(ダレン・パーマー)氏は報道発表で「我々は人と人とがつながる方法を検討しています。人々が自動車を高品質のオフィスとして活用しコラボレーションをしない理由は見当たりません」と述べた。

そのためにFordとCiscoは提携して「SYNC4A(Fordのインフォテインメントシステム)のブラウザエクスペリエンスを開放」し、現在はHTML5セントリックのOS上でネイティブに動作するWebexアプリを開発中だ。パーマー氏は「Fordは電気自動車の次世代エクスペリエンスに向けてWebex by Ciscoで連携することに期待しています。Webexはセキュアで没入できるコラボレーションのエクスペリエンスを提供すると我々は考えています」と述べた。

家からビデオ会議に参加しているときに猫がウェブカメラの前に飛び出してくるのは、まあまあかわいいかもしれない。子どもが後部座席で誰が触ったとか触っていないとか大声で騒いでいるのは、あまりかわいくはない。このように大音量で妨害されることを防ぐために、将来のFordのEVにはWebexの「Optimize for My Voice(自分の声に最適化)」機能が搭載される。これは車内にいて会議に参加していない人はすべて自動でミュートする機能だ。ドライバーが注意散漫にならないように「Webexなどのコラボレーション機能は車が止まっているときだけ動作し、運転中はオーディオのみにします」とパーマー氏は述べた。両社はアプリの最終的なリリースのスケジュールを明らかにしていない。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のAndrew Tarantola(アンドリュー・タラントラ)氏はEngadgetのシニアエディター。

画像クレジット:Ford

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(文:Andrew Tarantola、翻訳:Kaori Koyama)

BYDとLucidがNVIDIAの自動運転プラットフォームを採用する最新のEVメーカーに

NVIDIA(エヌビディア)は、同社のDrive Hyperion(ドライブ・ハイペリオン)プラットフォームを採用する自動車企業に、新たに2社の電気自動車メーカーが加わったことを発表した。Drive Hyperionは、自家用乗用車からロボットタクシー、自律走行トラックまで、あらゆるクルマの自動運転機能を強化するコンピューターおよびセンサーツールキットである。

その2社とは、中国のBYD(バイド、比亜迪汽車)と米国のLucid Group(ルシード・グループ)だ。両社は、インテリジェントパーキングや先進運転支援システム(ADAS)など、ソフトウェア定義機能を自社の電気自動車に提供しているが、米国時間3月22日に開催されたNVIDIAの「GTC 2022」AI開発者会議で、NVIDIAのハードウェア、ソフトウェア、コンピュートソリューションに依存する自動車メーカーの仲間入りを果たすことを発表した。他にもJiDU(ジドゥ)、Polestar(ポールスター)、Li Auto(リーオート、理想汽車)、Nio(ニオ、上海蔚来汽車)、Xpeng(シャオペン、小鵬汽車)、Volvo(ボルボ)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Jaguar Land Rover(ジャガーランドローバー)などが、NVIDIAのテクノロジーを採用している。

自動車メーカーは、運転をアクションではなくスポーツ観戦に近づけるような機能を約束することで、潜在顧客となる人々の注目を得ようと競い合っている。問題は、多くの企業が「ソフトウェア定義」のアプローチで実現すると豪語しているものの、実際には低レベルの自律走行を実現するためのリソースさえ、自社で持っていないことだ。

なぜなら、クルマに自律走行機能を組み込むためには、機械学習アルゴリズムを訓練するための何百万キロメートルもの走行データ、センサーからデータを取り込んでリアルタイムに判断できる高度なソフトウェア、そしてそのすべてを動かすのに必要な計算能力を持つコンピューターが必要だからだ。このような技術は、一般的な自動車メーカーの手に負えないため、自動車会社がIntel(インテル)やQualcomm(クアルコム)、そしてNVIDIAなどの企業に、現在の自動車市場に対応するために必要なツールの開発と統合を依頼することが増えているのだ。

その結果、少なくともNVIDIAにとっては、今後6年間で110億ドル(約1兆3300億円)を超える自動車関連企業とのパイプラインができた。わずか1年前の80億ドル(約9700億円)からそれだけ増加したと、NVIDIAの自動車担当バイスプレジデントのDanny Shapiro(ダニー・シャピロ)氏は述べている。DeepRoute.ai(ディープルートAI、元戎啓行)やWeRide(ウィーライド)など、自動運転関連のスタートアップ企業も、NVIDIAのDrive Hyperionエコシステムに参加することを発表しており、NVIDIAのリーチはさらに拡大している。

BYDは、現在提供されている「DRIVE Hyperion 8」アーキテクチャを使って、次世代の「新エネルギー車」を2023年初頭から製造開始すると、3月22日に開催されたNVIDIAのカンファレンスで発表した。BYDによれば、同社は自動運転とインテリジェントなコックピット機能のための中央演算とAIエンジンとして、NVIDIAの「Drive Orin(ドライブ・オーリン)」車載用システムオンチップ(SoC)のみを使用するという。Orinは1秒間に最大254兆回の演算を可能とし、自動運転車で同時に実行される大量のアプリケーションとディープニューラルネットワークを処理できるように設計されている。BYDは、Hyperion 8が提供するソフトウェアやセンサー類を使用するかどうかなど、さらなる詳細についてはまだ明らかにしていない。

Lucid Groupは同じカンファレンスで、同社の先進運転支援システムである「DreamDrive Pro(ドリームドライブ・プロ)」がNVIDIAのDRIVEプラットフォーム上で構築されていることを明らかにした。現在路上を走っているすべての電気自動車セダン「Lucid Air(ルシード・エア)」には、LucidのADASに統合されたNVIDIAのSoCが搭載されているが、この自動車メーカーは現在も自社製のソフトウェアスタックを使用しており、自動運転とインテリジェント・コックピット機能のために、14台のカメラと1基のLiDAR、5基のレーダー、12個の超音波センサーからなるセンサー群に頼っている。Lucidは、将来の製品についてNVIDIAとさらに協業することを計画しているが、現時点では詳細を公表していない。

NVIDIAのハードウェアとアーキテクチャでシステムを構築することで、これらの自動車メーカーは、NVIDIAが将来的に性能を向上させた際には、Over-the-Air(無線経由)ソフトウェアアップデートで車載機能を強化することが可能になると、NVIDIAは述べている。

「Lucid Airにプログラマブルで高性能なコンピュート・アーキテクチャを採用することで、この自動車メーカーはNVIDIA DRIVEのスケーラビリティを活用でき、モデル数の増加にともなって常に最新のAI技術を取り込むことができます」と、NVIDIAは声明で述べている。

次世代のNVIDIA DRIVE:Hyperion 9

2021年11月、NVIDIAの秋のGTCイベントで、創業者兼CEOのJensen Huang(ジェンスン フアン)氏は、2024年型の車両向けにHyperion 8の提供を開始すると発表した。そして3月22日、フアン氏は2026年に出荷を開始する車両向けとなる新世代アーキテクチャ「Hyperion 9」を発表した。

Hyperion 9はセンサー群の一部として、14台のカメラ、9基のレーダー、3基のLiDAR、20個の超音波センサーを備えるという。先代の12台のカメラ、9基のレーダー、1基のLiDAR、12個の超音波センサーからさらに増えていることがわかる。

「クルマの周りで起こっているすべてのことについて、実に多様で冗長性のある視点を得ることができます」と、シャピロ氏はTechCrunchによるインタビューで語っている。「また、これにはAtlan(アトラン)が採用されます。我々のロードマップではOrinの後継として求められているため、Atlanは追加されたセンサーから入ってくるすべてのデータを処理できる、より高性能なSoCになるでしょう」。

画像クレジット:NVIDIA

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Auroroa、トヨタ・シエナの自律走行型タクシーのテストを公開

自律走行車技術企業のAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は、将来のライドヘイル事業に向けて、カスタム設計の自動運転Toyota Siennas(トヨタ・シエナ)の小規模なテストを始める。Auroraの広報担当者によると、同社はテキサス州ダラス・フォースワース地域の高速道路や郊外の道路で、高速ルートを中心に車両テストを行う予定だ。

ハイブリッド電気自動車のトヨタ車には、同社が物資運搬用にテストしているAuroraのクラス8トラックと同じソフトウェアとハードウェアが搭載される予定だ。Waymo(ウェイモ)と同様に、Auroraは、同社が「重要な競争優位性」、つまりトラック輸送と旅客モビリティという2つの重要な市場に共通するコア技術の「移植可能性」を持っていることを証明したいのだ。

このテストの公開は、Auroraがピッツバーグ、ダラス、ベイエリアでテストを行った同じ車の初期開発プロトタイプを発表した6カ月後、またAurora Driver(オーロラドライバー)をロボットタクシー業務用に設計したドライバーレス車両と統合するためにトヨタと提携する意図を最初に表明してから1年後に行われた。

Auroraは以前、2024年後半までに、既存のライドヘイリングアプリ、特にUber(ウーバー)を通じて利用できるドライバーサービス製品であるライドヘイリング「Aurora Connnect(オーロラ・コネクト)」を発売する目標を掲げた。

2020年、AuroraはUberの自動運転部門を買収し、それ以来、同社との関係を維持している。例えば、Auroraの自動運転トラックは、両社がより密接に統合される多段階商用パイロット版の一環として、テキサス州でUber Freight(ウーバー・フレイト)の顧客のために、商品を運搬している。

「私たちは現在、Uberの詳細な市場データを活用して、トヨタとUberと提携してAurora Connectを広く展開するための商業化計画を加速させています」と、Auroraの広報担当者はTechCrunchに語った。「ライドヘイリング市場に参入するために、私たちは、既存のライドヘイリングネットワーク向けにAurora Connectを設計しました。これは、自律走行車と人間のドライバーのハイブリッドモデルを作り、ネットワークが増大する需要に対応し、ライダーにシームレスな経験を提供するのに役立つでしょう」。

Aurora Connectが市場に出れば、ライダーがトリップをリクエストすると、ルートによってAurora駆動の車か人間のドライバーが迎えに来ることになる。

Auroraが商業化への道を切り開いているように見える一方、ロボタクシー業界では他の企業がすでに道路空間を開拓している。例えば、Motional(モーショナル)は、最近ラスベガスでオンデマンドおよびトランジット技術サービスのVia(ヴィア)と無料のロボタクシーサービスを開始し、2023年には同市でLyft(リフト)と商業サービスを開始する準備を進めている。そしてもちろん、Cruise(クルーズ)とWaymoもあり、それぞれサンフランシスコとフェニックスで、自社ブランドのロボタクシーサービスを開始している。

ここ数カ月、Auroraはテキサスの高速道路で、FedEx(フェデックス)などの大企業とともに自律走行型トラックのテストを行っている。最近SPACになったスタートアップは、テキサスはまた、AuroroaがAuroroa Connectを導入する最初の州になるとしている。

「テキサス州には、当社の顧客や将来の顧客の多くが操業している、全米に商品を移動させるために重要な米国の主要な州間道路や路線があります」と、広報担当者は述べた。「テキサスはまた、空港への移動のような、Aurora Connectを開始する際に優先されるルートを開発し、テストする能力を与えてくれます」。

「Sienna Autono-MaaS(S-AM)」プラットフォームで作られた自動運転トヨタ車は、時速70マイル(時速約113km)まで出すことができ、高速道路での安全運転のために同社独自のFirstLight LiDAR(ファーストライト・ライダー)に依存している。

Auroraのテスト車両には、2人の車両オペレーターがいる。1人は運転席でAurora Driverの行動を監督し、もう1人は助手席でエンジニアリングチームに送信するメモを取る。Auroraによると、AuroraのAVスタックを搭載したSiennasは、すでにテキサス州で、路肩での停車時や低速車を回避する場合も含む、Uターン、高速合流、車線変更などをこなしている。

Aurora Driverは、さまざまな形の工事、渋滞、悪天候にも対応している。

現時点では、車両は10台未満と思われる小規模なものだが、Auroraは、今後数カ月のうちに車両を追加し、より多くのシナリオとルートを扱い、密集した都市部に移動してテストを拡大する予定であるという。

画像クレジット:Aurora Innovation

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Yuta Kaminishi)

埼玉工業大学が世界で初めて水陸両用船の無人運転技術を開発、八ッ場あがつま湖で実証実験

八ッ場ダム無人運航船の入水シーン

八ッ場ダム無人運航船の入水シーン

埼玉工業大学は3月22日、群馬県八ッ場あがつま湖にて、群馬県長野原町が所有する水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」を使った自動航行の実証実験(3月14日実施)に参加したと発表した。陸上から入水し、障害物を避けながら水上を航行、再び上陸する一連の自動運航を成功させた。水陸両用船の無人航行の実証は世界初となる。

無人運航の実証実験を行った水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」(全長11.83m、総トン数11トン)

無人運航の実証実験を行った水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」(全長11.83m、総トン数11トン)

埼玉工業大学は、ITbookテクノロジーとの共同研究により、自動運転・自動運航が可能な水陸両用バスのためのソフトウェアとシステムを設計・開発。同実証実験は、長野原町所有の水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」にその成果である自律航行システムを搭載して行われた。航行距離は約2km、所要時間は約30分だった。

入出水と水上航行での経路追従のための位置推定には、高精度GNSS(全球測位衛星システム)とジャイロを利用。自動運転には、自動運転システム用のオープンソースソフトウェア「Autoware」を使用し、そのモデル予測制御に船舶モデルを導入。水上と陸上の高精度な経路追従を実現した。障害物の自動検知と回避は、LiDAR、カメラ、ソナーとAutowareの深層学習アルゴリズムを組み合わせて行っている。車用と船用の制御装置を同時制御することで「船舶と車両の自動切り替えもスムーズに行えるシステム」を開発したとのことだ。

無人運航船の運転席

無人運航船の運転席

自動運転バスの研究を行っている埼玉工業大学は、すでに2台の自動運転バスを開発し、公道での営業運行を行っている。ITbookテクノロジーとの共同研究では、その経験を活かして水上の自動運航技術の開発に取り組んできた。2年間の共同研究の成果として、「離着水、離着桟における位置推定および自動運転技術」「水上障害物検知および回避のための技術」「ローカル5Gなどを用いた遠隔操作技術」をすでに構築している。

今回の実証実験は、日本財団が推進し、無人運航船の国際標準化の先導などを目指す無人運航船プロジェクト「METURI2040」の一環として行われた。このプロジェクトでは、国内で5つのコンソーシアムがそれぞれの取り組みを行っているが、これはその1つ「水陸両用無人運転技術の開発〜八ッ場スマートモビリティ〜」によるもの。現在は主に観光目的で利用されている水陸両用船だが、自動運航を実用化することで、将来的には災害時に役立つ技術転用や、「離島へのシームレスな物流インフラ」の構築を目指している。

画像クレジット:
日本財団

マセラティが同社初の電気自動車「グレカーレ」を発表、発売は2023年

イタリアの高級車ブランドであるMaserati(マセラティ)は、同社初となるオール電動車のプロトタイプを、現地時間3月22日に発表した。この「Grecale(グレカーレ)」と呼ばれる中型クロスオーバー車は、2030年までに完全に電気自動車へ移行するという同社の計画の第一歩となる。

グレカーレは、ガソリンエンジン車と電気自動車の両方が発売される。エンジン車は2022年後半に発売、そしてマセラティの新しい電気自動車ラインナップであることを表す「Folgore(フォルゴーレ、イタリア語で『雷光』という意味)」の名称が与えられたバッテリー駆動EVの方は、2023年に市場に投入される予定だ。

この二本立ての戦略により、マセラティは強力な内燃機関に対するこれまでの高い評価を維持し続けることが可能になる。グレカーレの最上級仕様「Trofeo(トロフェオ)」は、マセラティのスーパースポーツカー「MC20」用エンジンをベースにした最高出力530馬力のV6ツインターボ・ガソリンエンジンを搭載する。なお、そのMC20にも近々バッテリー駆動の電気自動車バージョンが追加されることになっている。

グレカーレ・フォルゴーレは、マセラティが全電気自動車ブランドとなることを目指すロードマップの中間地点として、2025年までに発売を計画している6車種のEVの中で最初のモデルである。

マセラティのフォルゴーレ・ラインナップは、2023年にまずグレカーレのEVバージョンがデビューし、続いて2ドアクーペ「Granturismo(グラントゥーリズモ)」とコンバーティブル「Grancabrio(グランカブリオ)」の電気自動車が登場する。そして2025年までにMC20のEVバージョンが加わり(コンバーティブルも追加される予定)、さらに次世代型にモデルチェンジする4ドアセダン「Quattroporte(クアトロポルテ)」とSUV「Levante(レヴァンテ)」も電気自動車となる予定だ。

地中海の風にちなんで名づけられたグレカーレは、この自動車メーカーにとって2台目のユーティリティビークルとなる。2017年にデビューした大型SUVのレヴァンテは、同ブランドの売上の60%を占めている。グレカーレは、高級SUVと電気自動車の両方に対する消費者の需要の高まりに応えられるため、同ブランドのトップセラーになることが期待されている。

マセラティは、グレカーレ・フォルゴーレの価格や推定航続距離の数値を公表していない。だが、この新型車に関するいくつかの特徴を明らかにした。車内には12.3インチのタッチスクリーンと8.8インチのディスプレイを装備し、14または21スピーカーのSonus faber(ソナス・ファベール)製サウンド・システムが(グレードによって)搭載されるとのこと。また、同社によれば「セグメントトップレベル」のキャビンスペースとカーゴスペースを備えているという。

先に、マセラティのDavide Grasso(ダビデ・グラッソ)CEOは、電気モーターの音のチューニングに1年半以上を費やしていると語った。

「マセラティ・サウンドは、常にブランドと製品を定義する非常に重要な要素です」と、グラッソ氏は語り「要求されるものが多いプロセスですが、実際に私はその成果にとても興奮しています」と続けた。

マセラティの親会社で、Fiat-Chrysler(フィアット・クライスラー)とPSA Group(PSAグループ)の合弁会社であるStellantis(ステランティス)は、2030年までに世界で500万台のEVを販売するという目標を掲げている。このイタリアの自動車メーカーがバッテリー技術に注力するのはそのためだ。ステランティスは、米国で販売する車両の半分をEVに移行させ、欧州では完全な電気自動車メーカーになるという目標を達成するために、75車種を超えるバッテリー電気自動車の販売を計画している。

画像クレジット:Stellantis

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(文:Jaclyn Trop、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米証券取引委員会「誰かがイーロン・マスク氏のツイートを監視しなくてはならない」

米国時間3月22日、証券規制当局は、自分たちにはTesla(テスラ)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏を彼のツイートに関して召喚する権限があると発言し、連邦裁判所に対しこの会社幹部に好き勝手なツイートをさせないよう要請した。

マスク氏は、2018年にTeslaに関する特定のパブリックコミュニケーション、すなわち株価や株主価値に影響を与えるような乱暴なツイートについて事前承認を得るようマスク氏に求めた米国証券取引委員会(SEC)の行為を、「ハラスメント」「不当な行為」と呼んでいる。

当時マスク氏はSECの要求に従うことに同意したが、2021年同氏がTwitter(ツイッター)で自身のフォロワーに対してTeslaの持ち株の10%を売るべきかどうか質問し、その結果Tesla株が急落したことを受け、再び砲火を浴びた。その後マスク氏は160億ドル(約1兆9379億円)相当の株を売却した。そしてその直後の2021年11月にSECは、マスク氏が以前の合意に従っているかどうかを確認するために召喚状を発行している。

SECの調査に対し、マスク氏は2018年の同意判決を終了あるいは修正しようと試み、11月のTwitterでの問いかけに関する記録を要求する召喚状を破棄しようとした。

「2018年、SECによる処置を示談にするために、マスク氏は、Teslaに関連する公開発言の事前承認を必須にするTeslaの義務に従うことに同意しました」とSECのMelissa Armstrong(メリッサ・アームストロング)委員がニューヨーク市連邦裁判所に提出した書類に書いた。「マスク氏は、Teslaの義務が思っていたより不便であるとわかったから、あるいはTeslaの情報開示に関する制御と手続きが実際に維持、遵守されているかどうかをSECに調査されたくない、というだけの理由で修正最終決定を破棄することはできません」。

SECとの対立は2018年8月に遡る。当時マスク氏はTeslaを非公開化するための「資金を確保した」とツイートしたが、実際には買い戻しは行われず「数多くの不測の事態を招いた」とSECは説明している。規制当局は、Teslaの発言は詐欺的であり「虚偽で誤解を招く」ものであったと指摘した。マスク氏は潜在的財政パートナーとの契約条件や価格の交渉を一切しておらず、彼のツイートはTeslaの株価を6%以上急騰させ、著しい市場崩壊を招いたと規制当局は語った。

示談の結果、Teslaとマスク氏はそれぞれ2000万ドル(約24億円)の民事制裁金を支払い、マスク氏はTeslaの会長を辞任した。

その後マスク氏は、政府を批判し憲法修正第1項の下で言論の自由を行使した彼を罰したとしてSECを非難し、2018年から現在までのSECによる「数多くの要求」に対する不満を述べた。

「しかし主張された要求に関するマスク氏自身の歴史は信憑性に欠けるとともに、Teslaとマスク氏による新たな不法行為の可能性についても適切な審理が必要であります。これには、SECの2018年の要請行動を生じさせた行為も含まれます」とアームストロング氏は法廷提出書類で述べている。

それに加えて、同委員は、2018年の最終決定を修正してもマスク氏はTesla関連ツイートに対する監視から逃れられない、なぜなら同社の役員として「マスク氏は今もTeslaの開示に関する制御と手続きの対象だからです」と語った。

「マスク氏とTeslaがマスク氏のTwitterアカウントを使って投資家に情報を開示する限り、SECはTeslaの開示統制と手続きに関連する事項を合法的に捜査することが可能であり、マスク氏のTeslaに関するツイート、およびTeslaによる制御と手続きに関する公開発言の正確性もこれに含まれます」とアームストロング氏は語った。

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画像クレジット:Yichuan Cao/NurPhoto / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

キャデラックが同ブランド初のEV「LYRIQ」の生産を開始

Cadillac(キャデラック)は米国時間3月21日、同社初の電気自動車で6万ドル(約720万円)のクロスオーバー車「LYRIQ(リリック)」の生産を開始した。米国では5月19日に受注が始まる。

General Motors(ゼネラルモーターズ)の高級ブランドであるキャデラックは、2030年までに展開を予定しているバッテリー電気自動車ラインナップの最初のモデルとして、このSUVに大きな期待を寄せている。このクルマに対する需要の大きさから、キャデラックは予定していた2022年の生産台数を3200台から2万5000台に増やし、量産モデルの公開を9カ月早めることにした。

これはGMにとって心強い兆候だ。同社は今後3年間に全世界で30車種の新型EVを投入するために350億ドル(約4兆2000億円)を投資すると発表しており、その中から20億ドル(約2400億円)を、テネシー州スプリングヒルの製造施設(同社の北米最大の製造施設)に投じて、LYRIQやその他のEVを製造する準備を進めている。

この投資は、Tesla(テスラ)やVolkswage(フォルクスワーゲン)などの巨大なライバルに対抗するためのGMの全体戦略の一部だ。フォルクスワーゲングループは電動化を含む将来に向けた技術に1000億ドル(約12兆円)を投資すると発表している。しかし、半導体や電池のサプライチェーンの停滞が、世界的なEV生産の妨げになっている。

GMが今後投入するモデルは、LYRIQをはじめとする同社のEVを支える「Ultium(アルティアム)」バッテリープラットフォームがベースになる。このモジュラーアーキテクチャーは、19種類の仕様が異なるバッテリーと駆動方式の車両を製造でき、GMのバッテリーエレクトリック事業の拡大とコスト削減に貢献することになる。

スプリングヒル工場では、LYRIQの他「キャデラック XT5」および「XT6」「GMC Acadia(GMC アカディア)」など、内燃エンジンを搭載するSUVも生産している。GMのMark Reuss(マーク・ロイス)社長は21日、オンラインで行われたメディアへの説明会で、この工場の組立ラインにEVを増やすと述べたが、この工場がいつ、EVのみを生産するようになるのかについては、コメントを避けた。

「私たちには、どちらの道も進むことができる柔軟性があります」と、ロイス社長は語った。「私たちは完璧なところにいます。内燃機関も製造できるし、EVも製造できます。そして市場に追従することができます」。

画像クレジット:GM

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(文:Jaclyn Trop、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NVIDIAが自動運転業界向けマッピング製品を発表

NVIDIA(エヌビディア)は、2024年までに北米、ヨーロッパ、アジアの30万マイル以上の道路をカバーするグランドトゥルースマッピングを自律走行車業界に提供する新しいマッピングプラットフォームを立ち上げたと、創業者でCEOのJensen Huang(ジェン・スン・フアン)氏が米国時間3月22日の同社のGTCイベントで述べた。

「Drive Map(ドライブ・マップ)」と名づけられたこのプラットフォームは、高度な自律走行を可能にすることを目的としている。Drive Mapは、NVIDIAの既存顧客だけのものではなく、AV業界向けの同社の既存のソリューションを補強するものだ。

同イベントでは、さまざまなスマートドライビングや高度な運転支援機能を提供するために、Mercedes(メルセデス)、Volvo(ボルボ)、JiDu、そして3月22日の時点では、BYDとLucid Motors(ルーシッド・モーターズ)によって使用されているNVIDIAのセンサーおよびコンピュート自動運転ツールキットであるDrive Hyperion(ドライブ・ハイペリオン)の次世代版を発表した

TuSimple(ツー・シンプル)、WeRide(ウィーライド)、Zoox(ズークス)、DeepRoute.aiなどのAV企業もHyperionの顧客である。

Drive Mapは、NVIDIAが2021年買収した高精細マッピングのスタートアップDeepMap(ディープマップ)の成果を表している。このツールは、DeepMapの正確な測量地図と、NVIDIAのHyperionアーキテクチャを使用するすべての車両からクラウドソースされた匿名の地図データを組み合わせることで、センチメートルレベルの精度を提供する。このマッピングツールはカメラ、ライダー、レーダーの3つのローカライゼーションレイヤーを備えており、自律走行に必要な冗長性を提供する。

NVIDIAの顧客から引き出されたすべてのデータは、車両の走行中に常にクラウドにアップロードされている。そして、仮想コラボレーションとリアルタイムの物理的に正確なシミュレーションのために構築されたNVIDIAのオープンプラットフォーム、Omniverseに集約されており、車両が適切な定位を達成できるように地図を更新するために使用される。この過程で、NVIDIAはより迅速にマッピングの範囲を拡張することができる。

さらに、Omniverseは詳細なマップを構築するために、自動コンテンツ生成ツールを使用し、それを自律走行車のエンド・ツー・エンド・シミュレーション・プラットフォームであるNVIDIA Drive Simで使用できる走行可能なシミュレーション環境に変換している。

画像クレジット:NVIDIA

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Yuta Kaminishi)