シンガポールのXR企業Refractが約6.8億円調達、ゲーム指向の全身モーションキャプチャソリューション「AXIS」開発を強化

シンガポールを拠点とするXR(エクステンデッドリアリティ / クロスリアリティ)スタートアップのRefract(リフラクト)は米国時間1月25日、Sea Limited(シー・リミテッド)がリードするシリーズAラウンドで約850万シンガポールドル(約6億8300万円)の資金を調達したことを発表した。他にも海外のファミリーオフィスや個人投資家が参加している。

今回の資金は、ウェアラブルで、ゲーム指向の全身モーションキャプチャソリューションである「AXIS(アクシス)」の研究開発の強化に充てられる。同社はまた、2022年後半のAXISの商用化に向けてチームを拡大し、急速に成長するゲーマー、テクノロジーアダプター、コンテンツクリエイター、フィットネス愛好家の市場の要求に対応していく計画である。このシリーズAラウンドで、Refractの調達総額は900万ドル(約10億2500万円)となった。

2018年、Refractの共同創業者であるChong Geng Ng(チョン・ゲング・ウン)氏、Michael Chng(マイケル・チャン)氏、Eugene Koh(ユージーン・コー)氏の3氏は、ゲーミング関連のプロジェクトに取り組む中で、次の課題に直面した。ゲーミングと身体活動のギャップをいかに埋めるか?RefractのCEOであるチャン氏がTechCrunchに語ったところによると、同氏らはそのソリューションを、プレイヤーが自分の体をゲームのコントローラーとして使うということに見出した。3人の共同創業者は、ゲーミングや他の業界のアプリケーションにおける最先端の技術イノベーションについて関連する文書や記事を精査した後、その市場にギャップがあることを認識し、Refractを設立した。

「Refractの目標は、ARおよびXRゲームのキープレイヤーになることです。今回の資金調達により、このプロセスを加速することができます」とチャン氏は語っている。

画像クレジット:AXIS

この資金調達は、Kickstarter(キックスターター)でAXISのクラウドファンディングキャンペーンを成功させ、Deep Dive Studios(ディープ・ダイブ・スタジオ)の買収によってXRゲームパブリッシング部門を立ち上げた直後に発表された。

AXISは、Perception Neuron(パーセプション・ニューロン)やRokoko(ロココ)、Xsens(エックスセンス)のような全身モーショントラッキングシステムとは異なり、リアルタイムのゲーミングやエンターテインメント用途に適している。またAXISでは、ユーザーはゲーミング用に7から10ノードまで、またはより高精度なモーショントラッキング用に業界標準の17ノードまでを柔軟に使用できる。AXISにはベースステーションは必要ないが、ユーザーのコンピューター接続にWi-Fiが必要となる。

「AXISは完全に無接続かつワイヤレスで、外部のベースステーションやセットアップを必要としません。すべてがボディ上にあり、独自のインサイドアウトトラッキング機能を備えています。これはHTC Vive(エイチティーシー・バイブ)の類に見られる、システムのオクルージョンやスペース要件といった一般的な問題に対処するものです」とチャン氏はTechCrunchに語った。

Refractは、ウェアラブルのAXISに代表される同社のテクノロジーとゲームを通じて、没入型でエンゲージメントの高いXRやVRの体験を、成長を続ける29億人のゲーマーに継続的に提供していくことを見据えている。

Deep Dive Studiosによって、Refractはさらに没入的なタイトルを制作できるようになる。現在開発中の格闘ゲーム「FreeStriker(フリーストライカー)」のような、AXISのすべての顧客に無料で提供されるオファリングのリストを補完していく。

Refractのソフトウェアスイートは、OpenVR(オープンブイアール)、OpenXR(オープンエックスアール)、Unity(ユニティ)、Unreal Engine(アンリアル・エンジン)などのプラットフォーム、既存のVRシステムやアプリケーションと互換性があり、ゲーム開発者やコンテンツクリエイターのアクセシビリティを高めている。チャン氏によると、AXISはOculus Quest 2(オキュラスクエスト2)などの人気VRヘッドセットとも連携できるという。

Refractは、このセクターにおけるさらなる垂直統合と水平統合を進めている。

Refractはすでに、バーチャルスポーツプログラムの一環として、World Tekwondo(ワールドテコンドー)のような組織との戦略的関係を確保している。同連盟と協働し、近い将来、バーチャルテコンドーをメダル競技にすることを目指していく。World Tekwondoは、このスポーツをゲーム化し、新しい領域を創出することで、より幅広い、技術に精通したオーディエンスにリーチするというオポチュニティを見出した。そしてこのパートナーシップが生まれた、とチャン氏はTechCrunchに語っている。またRefractは、トルコのイスタンブールで開催予定の2022年Global Esports Games(グローバル・eスポーツ・ゲームズ)でAXISをフィーチャーすることも計画している。

画像クレジット:Refract

「AXISは、高忠実度モーショントラッキングテクノロジーとキャプチャテクノロジーをより幅広いオーディエンスに提供する上で、大きな前進を果たします。この分野でイノベーションを起こし、より没入感のあるゲーミング体験を提供します」とRefractのエグゼクティブディレクターであるチョン・ゲング・ウン氏は語っている。「私たちの投資は、Seaや他の投資家たちが私たちのビジョンと創造性を強く信じていること、そしてXRゲーミング市場の未開拓である大きなポテンシャルを反映するものです」。

「Refractのようなシンガポールの会社が、XRやVRの革新的なテクノロジーの開発を推進しているのを見るのは、とてもエキサイティングなことです」と、Seaのデジタルエンターテインメント部門であるGarena(ガレナ)で戦略的パートナーシップ担当バイスプレジデントを務めるJason Ng(ジェイソン・ウン)氏は述べている。「彼らの成長とシンガポールにおけるイノベーションエコシステム全体の発展をサポートできることを、私たちは大変うれしく思っています」。

「Seaや他の投資家たちは、Refractの才能と、AXISの持つ巨大なポテンシャルを認識してくれました。AXISのKickstarterキャンペーンにおける成功は、このビジョンを共有するゲーマーたちの献身的なコミュニティの存在を証明しています。2022年にAXISとFreeStrikerを彼らに提供できることを心待ちにしています」とチャン氏は語った。

画像クレジット:Refract

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(文:Kate Park、翻訳:Dragonfly)

コロナ禍・破産申請を乗り越え、VR体験スタジオSandbox VRが約42億円調達、グローバル展開進める

集英社がXR事業開発課を新設し「集英社 XR」開始、NianticとLightship ARDKでパートナーシップも

新型コロナの影響をまともに受け、ロケーションベースのバーチャルリアリティ(LBVR)スタートアップ各社にとって過去1年は厳しい環境だったが、Sandbox VRはカムバックを果たしただけでなく、さらにグローバルに事業を拡大する計画だ。

Sandbox VRは、フルボディモーションキャプチャとVR技術を組み合わせることで、没入感のあるソーシャルエクスペリエンスを目指している。プレイヤーは別世界に足を踏み入れ、友達と一緒にどこにでも行くことができる。

サンフランシスコと香港に本社を置く同社は、Alibaba(アリババ)やCraft(クラフト)とともに、変曲点にあるスタートアップに資金を提供するグロースファンドを通じて、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)が主導するシリーズBラウンドで3700万ドル(約42億2000万円)を調達したと発表した。

今回の資金調達により、累計資金調達額は約1億1900万ドル(約135億7500万円)となる。同社は7月にオースティン、ラスベガス、上海の3カ所に新店舗をオープンしたばかりだ。

Sandbox VRは、今回の資金調達をもとに、2022年にパラマス(ニュージャージー州)、ロンドン、トロントなど世界各地に新たなロケーションを10店舗オープンする他、法人向けに2店舗、フランチャイズロケーション2店舗を開設する予定だという。

また、社内のスタジオを拡張してコンテンツリリースの頻度を増やし、ソフトウェア開発キット(SDK)を開発してSandboxプラットフォームをサードパーティ開発に開放すると、共同創業者兼CEOのSteve Zhao(スティーブ・ザオ)氏はTechCrunchに語った。また、プレイヤーにとって重荷となるVRハードウェアのバックパックを取り除くためのワイヤレス技術を構築する予定であるとも。

Sandbox VRは、ヘッドマウント型VRヘッドセット、バックパックコンピュータ、モーションキャプチャーセンサー、ハプティックベストなどのハードウェアをプレイヤーが着用する。

画像クレジット:Sandbox VR

ザオ氏はこう語っている。「今後、さらに多くの店舗を展開していくために、社内のスタジオを強化するとともに、SDK(ソフトウェア開発キット)を構築して、まもなくパブリッシングを(サードパーティに)開放する予定です」。

Sandbox VRは、他の競合他社がライセンスゲームで運営しているのとは異なり、独自のゲームと技術を開発しているとザオ氏は指摘する。同社は5つのVRゲーム「Curse of Davy Jones」「Amber Sky 2088」「Star Trek Discovery:Away Mission」「Deadwood Mansion」「Unbound Fighting League(UFL)」を提供している。

パンデミックが発生したのは、同社が予定していたシリーズBの資金調達を2020年初頭に締め切る直前だったとザオ氏は語る。従業員の約80%が退職しなければならず、新型コロナの危機の中で破産申請を余儀なくされたと彼は付け加えた。Sandbox VRは、コロナ禍を経てこれまで以上に強くなっている。2021年の4月にグローバルオフィスを再開した後、その収益は2021年の初めに比べて20倍になった。

a16zのジェネラルパートナーであり、Sandbox VRの取締役でもあるAndrew Chen(アンドリュー・チェン)氏はこう述べている。「パンデミックの最中にスティーブ(・ザオ)と彼のチームが示した気概と強固な意志は賞賛に値するものであり、それが今日、最強の、最も技術的に進んだロケーションベースVRサービスであると当社が信じるものにつながっています」。

ザオ氏によれば、同社は10月時点で全世界で35名の社員を抱えている。Sandbox VRは現在、米国、カナダ、アジアで12のロケーションを運営している。

Verified Market Researchのレポートによると、ロケーションベースVRの世界市場は、2021年から2028年にかけて32.9%のCAGRを示しており、2028年には263億ドル(約3兆3億円)に達すると予測されている。

Sandbox VRは、人々がSFで見るような、可能な限り没入感のある体験をどうやって作り出すかというアイデアから始まった。VRはあくまでも1つのコンポーネントであり、同社のビジネスをVR分野に限定するつもりはないとザオ氏は語る。

テクノロジーを利用して人的交流を拡大することを使命とするSandbox VRは、この先メタバース分野に参入する野心を持っているが、そこに至るまでにはあと3~5年ほどかかると同氏はいう。

「VR業界でイノベーションを続けていくうちに、いずれは物理的な空間のバーチャル化に向かっていくでしょう。いつの日か、プレイヤーが永続的なバーチャルアバターを具現化できるポータルに気軽に足を踏み入れるような感じになるでしょうね」とザオ氏は語った。

画像クレジット:Sandbox VR / Sandbox VR

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)