教科書に代わる教材を提供するNewselaが全米2/3の公立校で採用、ユニコーンステータスに達す

K-12(幼稚園から高3まで)の教材を作っているSaaSのNewselaにはこれまで、TCVやKleiner Perkins、Reach Capital、Owl Venturesなどが投資している。同社は今日、シリーズDのラウンドで1億ドルを調達したことを発表した。このラウンドをリードしたのは新たな投資家であるFranklin Templetonで、Newselaの評価額を10億ドルの大台に乗せた。今回の調達額は、Newselaのこれまでの調達額の合計よりも多い。

NewselaのCEO、Matthew Gross氏は、「評価額が10億ドルになっても何も変わらない」、と言っている。それでも同社は、QuizletやApplyBoard、CourseHeroなどと並んで、この分野でユニコーンに到達した企業の一つになる。それには、リモート教育の人気の持続と増大が貢献しているだろう。

Newselaが作ったのは、いろんなサードパーティコンテンツをつなぎ合わせるプラットホームだ。それらはドキュメントの原典だけでなく、雑誌National Geographicの記事なども入る。Gross氏によると、それらは「教育を目的としていない素材であり、しかし面白くて勉強になることは目的としている」コンテンツだ。そしてNewselaの仕事は、教室で教科書をコンテンツで置き換え、同時に教師には新鮮で個人化された素材を提供して彼らを助けることだ。

Gross氏の説明によると、「教科書は教室で死んでいるが、校区の予算の中ではまだ立派に生きている」。そこで同社のミッションは、同社のプロダクトの普及を促進して、できるだけ多くの予算を生きた教室のために使ってもらうことだ。普及活動には、「教科書のほかにこんないいもの、面白いものがあるよ」、と先生たちを説得することも含まれる。リモート学習で児童生徒の参加性が弱くなってるだけに、コンテンツの分析と評価が同社のますます重要な仕事になっている。

同社が提供する有料プロダクトは、児童生徒一人あたり6ドルから14ドルぐらいだが、教科書は全部合わせると一人あたり20ドルから40ドルの年額になる。

ほかのエドテック企業と同じくNewselaも、パンデミック以降はプロダクトを無料で提供しており、それにより新たなユーザーが増えた。

その登録ユーザー数は、パンデミックの前と比べて115%増、売上は81%増えた。売上の額は明かさないが、利益は出ているという。Gross氏の推計では、2021年の終わりには、Newselaの利用ライセンスを持つ児童生徒数は1100万人になる。

Newselaの推計では、米国の公立学校の2/3がこのプラットホームを使っている。パンデミックで、教材の選択に関わる校区教育委員会の柔軟性が増したことも、利用者増加に貢献している。

関連記事: 13 investors say lifelong learning is taking edtech mainstream(未訳、有料記事)

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

画像クレジット: doyata/Getty Images

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

フィットネスサブスクのClassPassが約310億円を調達しユニコーンに

ClassPass(クラスパス)は米国時間1月8日、2億8500万ドル(約310億円)のシリーズEラウンド資金調達のクローズを発表した。このラウンドはL CattertonとApax Digitalがリードし、既存投資家のTemasekも参加した。この調達でClassPassのバリュエーションは10億ドル(約1090億円)になる。

TechCrunchはこのラウンドが進行していることを聞いていたが、本日その内容を、確認できた。

ClassPassは、ユーザーが気軽に運動できるようにすることを目的に、2013年にサービスを開始した。小さなフィットネススタジオと提携し、ユーザーはスマホで一覧を検索してクラスを予約できる。サービス開始以来、ClassPassは経済性を高めようといくつかのビジネスモデルを試した。

2017年に同社は仮想通貨を使ったクレジットシステムを導入すると発表した。クラスの人気度データと組み合わせることでさまざなま価格を導入できるようになった。1カ月に3ないし5、10のクラスを受けるのに月額料金を払う代わりに、ユーザーはバーチャルのClassPass通貨を使ってそれぞれのクラスの需要に応じた額を払ってクラスを申し込む。

現在採用している収益モデルをもとに、ClassPassはこれまで成長に注力してきた。同社は現在28カ国で展開しているが、海外マーケットでの成長が最優先事項だった。小さなスタジオやジム、ウェルネスサービスを含む3万超のパートナーと提携している。

成長するために次に注力したのが、サービスだ。ClassPassは法人が従業員のClassPass利用を助成する法人向けプログラムを導入した。このプログラムでは各従業員が使用するかどうかに基づいて雇用者が助成するというもので、これは他の法人向けサービスと異なっているとCEOのFritz Lanman(フリッツ・ランマン)氏は話す。

これまでのところ、Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)やGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)、Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)など1000あまりの企業(雇用主)がClassPassのプラットフォームを活用している。

最後に、ClassPassはウェルネス事業者を取り込みながら提供するサービスを拡大している。共同創業者のPayal Kadakia (パヤル・カダキア)氏は、会社を興す当初からユーザーが新たな体験を見つけて楽しむことができるポータルとしてのClassPassを描いてきた。この考えはフィットネスを超えたものであり、ClassPassの次のターゲットはウェルネスだ。

カダキア氏は、ClassPassで瞑想クラスに申し込むユーザーの大半は初挑戦の人だと述べた。ちなみに、同クラスは、同社が提供するクラスで最も人気のウェルネスだ。

カダキア氏の声明文は以下のとおりだ。

これまでに1億時間を超えるエクササイズが予約されるなど、顧客やパートナーにもたらしたインパクトが我々のモチベーションになっている。今回の資金調達は大きなマイルストーンであり、人々がアクティブでいられるよう、そして時間を有意義に過ごせるようにサポートするという我々の使命を果たすべく今後も邁進する。

ClassPassはいくつかのビジネスモデルを試すなど、2013年からの道のりは平坦ではなかった。しかしランマン氏は、許容性がClassPassの強みだと信じている。

ClassPassのサービスが立ち上がった当初は、会員は定額で好きなだけクラスを受けることができた。その後価格を見直し、1カ月に受けられるクラスの数に上限が設けられた。こうした経緯を踏まえて仮想通貨と変動的価格の立ち上げに至っていて、これはうまくいっているようだ。

「変化は吉となりえる」とランマン氏は話した。「私はこれまでにいくつかのビジネスモデルを試したことを恥ずかしいとは思っていない。今よりも小規模のときにビジネスモデルを試していなかったら、このクレジットシステムにたどり着いていなかったかもしれない」。

そして彼は「パーフェクトなモデルがない事業もあり、永遠に模索することもある。ビジネスモデルの模索・実行というプロセスには多くのメリットもある」と続けた。

今回のラウンドで、ClassPassの累計資金調達額は5億5000万ドル(約600億円)となった。今後はマーケットの拡大と法人向け事業の成長を図る計画だ。

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(翻訳:Mizoguchi

中国初の自動運転ユニコーン企業Momentaは利益よりもデータを追う

Cao Xudong(曹旭東) は、ジーンズと彼のスタートアップ企業の名前である「Momenta」と書かれた黒いTシャツ姿で路肩に現れた。

昨年、企業価値10億ドル(約109億ドル)を記録し、中国初の自動運転系「ユニコーン」企業となったこの会社を立ち上げる以前から、彼は誰もが羨む生活を送っていたのだだが、自動運転は次なる大きな波だと自分に言い聞かせてきた。

曹は、完全な自動運転車で一発当てようと考えているわけではない。それは20年後の話だと彼は言う。むしろ彼は、半自動運転ソフトウエアを販売し、次世代の自動運転技術に投資するという、地に2本の足を着けたアプローチを取っている。

曹(中国語読みでツァオ)は、中国における人工知能研究者の第一世代のための「士官学校」と噂されるMicrosoftの基礎研究機関Research Asiaで働く機会を得たとき、まだ機械工学の博士課程にいた。彼は4年間以上Microsoftで辛抱した末、退職し、より現実的な仕事に手を付けた。スタートアップだ。

「その当時、学術的なAI研究はかなり成熟していました」と、現在33歳の曹は、Microsoftを去る決意をしたときを振り返り、TechCrunchのインタビューで語った。「しかし、AIを応用しようという業界の動きは始まったばかりでした。2012年から2015年までの学会での波よりも、業界で起きる波の方が大きくて強力なものになると私は信じていました」。

2015年、曹は、政府に納入している顔認証技術などによる高収益のお陰で今や世界で最も価値の高いAIスタートアップとなったSenseTimeに入社した。17カ月の在籍期間中、曹は研究部門をスタッフ0人からスタートして100人態勢の強力なチームに育て上げた。

間もなく曹は、またしても新たな冒険に惹かれるようになった。彼は、結果はあまり気にせず、「何かをやること」に重きを置いているという。その傾向は、名門精華大学の在籍中にすでに現れていた。彼はアウトドアクラブの部員だった。特別にハイキングが好きだったわけではないが、冒険のチャンスに恵まれ、彼と同様に粘り強く大胆不敵な仲間たちが大変に魅力的だったからだと彼は話している。

車ではなくコンピューターを作る

曹は、カメラやレーダーなど、自動運転車でよく目にする装置を取り付けた車に私を案内してくれた。トランクには、目に見えないコンピューターコードがインストールされている。我々は車に乗り込んだ。ドライバーは、Momentaが作成した高解像度のマップからルートを選択した。そして、ハイウェイに近づくなり、自動的に自動運転モードに切り替わった。複数のセンサーが、リアルタイムで周囲のデータをマップに送り始める。それをもとに、コンピューターは走行中の判断を下す。

試験車両にセンサーを取り付けるMomentaのスタッフ(写真:Momenta)

Momentaは車もハードウエアも作らないと、曹は念を押した。その代わりに、頭脳、つまり深層学習能力を作って自動車に自動運転機能を与えるのだという。これは事実上、いわゆるTire2のサプライヤーだ。IntelMobileyeと同じように、自動車部品を製造するTire1サプライヤーに製品を販売している。また、自動車を設計し、サプライイヤーに部品を注文して最終的な製品を製造するOEMとも、直接取り引きをしている。どちらの場合でも、Momentaはクライアントと協力しながら最終的なソフトウエアの仕様を決めている。

こうしたアセットライトなアプローチによって、最先端の運転技術が開発できるとMomentaは信じている。自動車や部品のメーカーにソフトウェアを販売することで、収益を得るだけでなく、たとえば、いつどのように人間が介入すべきかに関する大量のデータを収集でき、低コストでAIをトレーニングできる。

クライアントの企業名は公表しなかったが、中国内外の一流自動車メーカーとTire1のサプライヤーが含まれているとのことだ。数は多くない。なぜなら自動車業界での「パートナーシップ」は、深い資源集約的な協力を必要とするため、少ないほうが有利だと考えられているからだ。我々の認識では、後援者にDaimler AGが含まれている。またMomentaは、このメルセデス・ベンツの親会社が中国で投資した初めてのスタートアップでもある。しかし、Daimlerがクライアントかどうかは、曹は明かさなかった。

「1万台の自動運転車を動かしてデータを集めるとしましょう。その費用は、年間で軽く10億ドルに達します。10万台なら100億ドルです。巨大ハイテク企業であっても怖じ気づく額です」と曹は言う。「意味のあるデータの海を手に入れたければ、大量市場向けの製品を作ることです」。

自動車をコントロールする半自動運転ソリューションHighway Pilotは、Momentaの最初の大量市場向けソフトウェアだ。今後、さらに多くの製品が投入されるが、それには、完全自動駐車ソリューションや、都市部向けの自動運転ロボットタクシー・パッケージなどが含まれる。

長期的には、非効率的な中国の440億ドル(約48000億円)規模の物流市場に取り組みたいと同社は語っている。AlibabaJD.comが開発した倉庫向けのロボットのことはよく知られているが、全体的に中国の物流の効率は、まだ低水準にある。2018年、物流コストは中国のGDPの15%近くを占めていることが発表された。同じ年、世界銀行が発表した、世界の物流業界の効率を示した物流パフォーマンス指標ランキングでは、中国は26位だった。

MomentaのCEO曹旭東(写真:Momenta)

控えめなCEOである曹が語調を強めたのは、同社の地に2本の足を付けた戦略について説明したときだった。その2つセットのアプローチは「閉じた輪」を形成する。これは、同社の競争力について語るときに繰り返し登場した言葉だ。現在と未来の中間を拾うのではなく、Waymoがレベル4(基本的な状況下で人間の介入なしに自動運転できる車の区分)で行ったように、またはTeslaが半自動運転で行ったように、Momentaはその両方に取り組む。それには、収益がロボットタクシーのための研究費となり、現実のシナリオから収集されるセンサーのデータが研究室のモデルに投入されるHighway Pilotのような、利益を生むビジネスが利用される。そして、その研究室で得られた結果は、公道を走る車に供給する技術をパワーアップする。

人間かマシンか

昼間の公道での40分の試乗の間、我々が乗った車は、自動的に車線変更をし、合流し、乱暴なドライバーから距離を取るなどしていたが、ある一瞬だけ、ドライバーが操作を加えた。試乗の終わりごろ、ハイウェイの出口ランプの中央に停車していた危険な車を避けるために、ドライバーがレバーを引いて車線変更を行っている。Momentaはこれを、「インタラクティブな車線変更」と呼んでいる。同社は、これは自動運転システムの一部であり、厳格な定義によれば、人間の「介入」ではないと力説していた。

「人間による運転の介入は、これからも長きにわたって支配的な存在でいるでしょう。あと20年ほどは」と曹は指摘する。車は車内カメラでドライバーの動作を細かく把握しているため、この設定は安全性を一段階高くするとのことだ。

「たとえば、ドライバーが携帯電話に目を落としたとします。すると(Momentaの)システムは運転に集中するよう警告を発します」と彼は言う。

試乗中の撮影は許されなかったが、Momentaが公開している下の動画でハイウェイでの様子を少しだけ確認できる。

人間は、我々が思っている以上に、すでに自動化の範囲に組み込まれている。曹は、他の多くのAI研究者と同じく、最終的にはロボットがハンドルを握るようになると考えている。Alphabetが所有するWaymoは、すでに数カ月前からアリゾナでロボットタクシーを走らせている。Drive.aiのような比較的小規模なスタートアップですら、テキサスで同様のサービスを行っている。

業界にはさまざまな誇大宣伝や流行があるが、同乗者の安全、規制の概要、その他数多くの高速移動技術の問題など、厄介な疑問は残されたままだ。去年、自動運転車による死亡事故を起こしたUberでは、将来の計画が先送りされ、人々の批判を浴びることになった。上海に拠点を置くベンチャー投資会社は、先日、私にこう話した。「人類はまだ自動運転の準備ができていないのだと思う」

業界の最大の問題は、技術的なものではなく、社会的なものだと彼は言った。「自動運転は、社会の法体系、文化、倫理、正義に難題を投げかけている」。

曹も、この論争のことはよく知っている。未来の自動車を形作る企業であるMomentaは、「安全に対する大きな責任を負っている」と彼は認識している。そのため彼は、すべての幹部に、自動運転車で一定の距離を走り、システムに欠点がないかを確認するよう求めている。そうすれば、お客さんが遭遇する前に、社内の人間が欠点に遭遇する確率が上がる。

「この方針があれば、管理職はシステムの安全性を真剣に考えるようになります」と曹は主張した。

中国の蘇州に建つMomentaの新本社ビル(写真:Momenta)

信頼性を確保し、説明責任を明確にできるソフトウェアをデザインするために、Momentaは「システム研究開発のアーキテクト」を任命している。この人物は、基本的に、ブラックボックス化された自動運転アルゴリズムの解析の責任を負う。深層学習モデルは「説明可能」でなければならないと曹は言う。それは、何か不具合が起きたときに原因を突き止める重要な鍵となるからだ。故障箇所はセンサーなのか、コンピューターなのか、ナビゲーションアプリなのか?

さらに曹は、研究開発に多額の資金を投入してはいるが、利益を生もうと焦ってはいないと話している。ただし、ソフトウェア販売の利益が「大きい」ことも認めている。またこのスタートアップは、多額の資金に恵まれている。曹の経歴が投資を惹きつけているところが大きい。同じように、共同創設者であるRen Shaoqing(任少卿)とXia Yan(夏炎)もMicrosoft Researchの出身だ。

昨年10月の時点でMometaは、Daimler、Cathay Capital、GGV Capital、Kai-Fu LeeのSinovation Ventures、Lei JunのShunwei Capital、Blue Lake Capital、NIO Capital、それに蘇州政府を含めた著名な投資企業から少なくとも2億ドル(約217億円)を調達している。蘇州には、高速鉄道の駅のすぐ隣にMomentaの新本社ビルが建つ予定だ。

蘇州を高速鉄道が通過するとき、乗客はその車窓からMomentaの特徴的な新社屋を眺めることができる。数年もすれば、この中国東部の歴史ある街の新たなランドマークになるだろう。

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(翻訳:金井哲夫)

「ユニコーン」の価値が薄れた今、本当に「稀」なのは何か?

米国時間5月22日、ユニコーンがいくつか生まれた。聞いていたとしても、たぶん名前はもう忘れているに違いない(答えはMarqetaIvalua)。

責めているのではないのでご心配なく。これは最近の市場にユニコーンが多すぎて(2019年中に100を超える)、追いかけるのが困難だからだ。

実際、あまりにも多くの会社が該当するので、われわは「ユニコーン」の定義を当初よりも厳しくするようになった。現在は「アンダーコーン」と「デカコーン」に分けられている。これにミノタウロスと馬とケンタコーンが加わったら、みんなうんざりするだろう。

アシモフの言葉を借りれば、ショックが連続すると衝撃は減る。そしてユニコーンという単語の意味も薄れてきた。以前私が冗談で言ったように、いまやユニコーンの意味はほとんど「ミドルエイジのスタートアップ」だ。われわれが再定義した「スタートアップ」は、時価総額数十億ドルの会社も該当するが、あれは間違いだったかもしれない。

今日の超巨大調達ラウンドの時代には、ユニコーンをでっち上げることが不可能ではない。実際みんなやっている。

では、どうすればいいのか?

今や「ユニコーン」は、時価総額を表す記述子にすぎない。もはや稀なものを暗示する意味は持っていない。つまり我々に必要なのは、「ユニコーン」を再定義して希少度を高くするか、まったく新しいコンセプトを作ることだ。「ユニコーン」の意味を変えるにしても、新しい用語を発明するにしても、並外れた会社をふつうに良くできた会社と区別するための指標が必要だ。

利益。

ZoomはIPO前から黒字で爆発的に成長していた。TransferWise利益を上げて成長中であることを最近知った。時価総額10億ドルの成長中で黒字の会社をほかに知っているだろうか?私は知らない。つまりそれは「希少」だという意味だ。

TechCrunchのKate Clarkと私はポッドキャストのEquityでこれについて話し合い、おおむね合意に達した(Kateのツイートはこちら)。本当の希少価値を生むのは「利益」だ。時価総額が高いだけではない。後者を実現するための資金はいくらでも出回っている。しかし、前者を手にするには?それこそが伝説であり容易には見つからない。

ユニコーンのように。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

10億ドルを調達できるユニコーン企業がなぜ多様性と包括性を持てないのか

2000年代の初めごろ、Hasbroは」「マイリトルポニー」というオモチャのシリーズを復活させた。ポニービルに暮らすカラフルな生き物たちの中でも、私の一番のお気に入りはユニコーンのポニーだった。ユニコーンのポニーは魔法の生き物で、気まぐれで、珍しい存在だ。私はその珍しい部分に自分を重ねていた。

そのとき私は13歳。数学と科学とコンピューター科学の特別強化プログラムに選抜されたばかりだった。このプログラムには100人の生徒が参加していたが、黒人の女の子は私ともう一人だけだった。しかし、私はラッキーだった。「現世」のポニーたちがユニコーンを受け入れたように、白人とアジア人のクラスメイトも、私に温かく接してくれた。

この先、ハイテク業界で働くようになっても、このままであってほしいと私は願った。

ハイテク業界に多様性がないのは、私が13歳のころから変わっていない。それでも、多様性と包括性をもっと強化すると約束するハイテク企業は増えている。

ではなぜ、その約束がポニービルにつながらないのだろう?

さようならポニービル、現実よこんにちは

6年間、数学と科学とコンピューター科学の特訓コースで徹底的に学んできた私は、MITに進学する準備をほとんど整えていた。多変数微積分は? 大丈夫。学校で自分が一等賞でなくても落ち込まない? 大丈夫。クラスメイトから差別を受ける心配は? それはわからない。

こんなことがあった。大学4年生のとき、新しい医療機器を開発するという活動で、私はその他21人の学生と一緒に行動した。そこではチームメイトの評価が自分の成績に影響を与えるため、ちょっと心配だった。黒人女性に対する偏見で評価が低くなってしまうことを、私は恐れていたのだ。私は、知的だが威圧的でない、自信に満ちているが攻撃的でない、親しみやすいが鬱陶しくない自分でいなければならないと、常にプレッシャーを感じていた。

大半は好意的な評価をもらったが、一人ならず二人のチームメイトから「もっと穏やかに」と言われてしまった。私は他の黒人のクラスメイトの話を聞くまで、孤立した気分になり、気落ちしていた。彼らはチームミーティングから外され、もっともつまらない作業を押しつけられていたそうだ。

こんなことがMITで起ころうとは。多様性と包括性を誇るイノベーションの中心地で。人は差別するものだ。学校は差別を容認している。人々は自分に対する差別を許容することを学ぶ。わかりやすい悪循環だ。学校も企業も、これに対抗するようには作られていない。MITを卒業してからの3年間、「少数派」として扱われることにう私はうんざりしていた。今こそユニコーンを探すときだ。

ユニコーン(名詞) uni·corn | ˈyü-nə-ˌkȯrn

体は白い馬に似て、優美な長いたてがみと尾を持ち、額の中心から螺旋模様の長い角が生えた姿で描かれることが多い空想上の動物。多様性と包括性のあるハイテク企業。

虹の道を辿って

ユニコーン探しは楽ではなかった。Googleで検索すると10億ドル以上の評価額のスタートアップ企業がたくさん出てくる。だが、多様性と包括性のある企業はほとんどない。

ニューヨークの業務用IoTスタートアップであるTembooに惹かれたのは、そのためだ。

  • 有色人種の女性がトップにいるハイテク企業である。
  • エンジニアリングチームには男性と女性が同数在籍している。
  • プログラミングの取っつきやすさと民主化に重点を置いた製品を作っている。
  • 従業員は、さまざまな文化的背景を持つ多様な人々である。
  • とりわけ感心したのは、最初の面接に訪れたとき、強くハグしてくれたこと。そこはニューヨークだ。やたらにハグをする習慣はない。

私が会ったすべての人には、それぞれ独特な背景や興味があった。私が面接を受けたすべての企業のなかで、前の会社で黒人従業員のリソースグループを率いる役職を選んだのはなぜかと聞いてくれたのは、Tembooだけだった。その会社の物理的環境も、他のハイテク企業とは違っていた。マンハッタンのトライベッカ地区の中心地に、独立したオフィスが置かれていたのだ。

この会社に入ろうと決めたとき、私は希望に満ちていた。ここなら、本来の私を尊重して正当に評価してくれるだろうと。

マイリトルポニー・ニューヨーク編

勤め始めてから数カ月間は過去の教訓を活かして、同僚に受け入れられるバージョンの自分で過ごさなければいけないと自分に言い聞かせていた。しかし時間が経つと、TambooではありのままのSarahで十分なんだと感じるようになった。

私の縮れ髪は三つ編みにもアフロにもできるけど、ヘアースタイルは自分の知性の評価には関係がない。業務用IoTのカンファレンスに参加したときなどは、多様性の欠如を大っぴらに批判し、同意の喝采を得た。

たしかに、何度か不当に非難されたと感じたことはある。マイナーなリアリティ番組カボチャ味の食品を溺愛する意味がわからないと。

私はユニコーンを見つけた。そしてそれに満足している。今は、ハイテク産業で働くすべての人に、自分のユニコーンを見つけて欲しいと思っている。そこで、他の人たちにバトンを渡す方法を探る準備を開始した。

男だけのニューヨークビルで立ち往生

ハイテク企業が、多様性と包括性を高めようと従っている方針は、どこもたいてい同じだ。

  1. 人材プールを多様化する。
  2. 従業員のリソースグループのコミュニティを作る。
  3. 業績評価を多様性と包括性の目標に結びつける。
  4. 多様性の欠如を注意する。

中規模のハイテク企業の例を紹介しよう。そこは従業員のリソースグループを改善するための準備をしていた。私はそこに講演者として招かれ、前の会社で黒人従業員のリソースグループを統括していたときの教訓を話した。

たとえば、私のチームは「マイクロアグレッション(自覚なき差別)認知週間」を設けた。これには手応えがあった。翌週の幹部会議で、一人のシニアマネージャーが同僚を呼び止め、彼の話に自覚のない差別的な発言がなかったかを尋ねていた。

しかし私たちは、業績に多様性と包括性を結びつけるという目標を、その会社の求人担当者たちに持たせることはできなかった。彼らは重い責任を負いたがらなかったのだ。それどころか私たちに、多様な才能を惹きつける、もっと別のアイデアはないかと聞いてきた。

もう一人の講演者は、彼女が50歳のときに職場でカミングアウトした経験を話していた。Fortune 500に選ばれた企業の上級管理職として18年間勤めた後、彼女は小さなハイテク企業に転職した。職場の雰囲気はまったく違っていた。そこでは人の性的指向をからかうのは無作法とされ、会社ぐるみでニューヨーク市のプライドパレードに特別な車を作って参加したりもしていた。30年間のキャリアで、彼女はようやく、ありのままの自分で安心して働けるようになったという。

講演会は励ましの言葉で幕を閉じたが、問題は残ったままだ。その会社のある従業員は、差別を避けるためにイギリス風のミドルネームで通していると私に話してくれた。彼は、多様性と包括性の推進責任者だ。

角を生やす方法

ステレオタイプ化、ハラスメント、自覚なき差別といった不当な行為が、ハイテク企業から人材が離れる第一の原因になっている。女性、社会的少数者、LGBTQの従業員が差別の攻撃に耐えてる(Kapor Centerの調査による)。

多様性と包括性のあるハイテク企業は、離職率も低く財務実績もいい。マッキンゼーは、企業の多様性を高めようとする姿勢と財務実績との関係を、20142017に調査しているが、性的多様性でトップ4分の1に入る企業は、下から4分の1の企業と比較して、平均を15〜21%上回る収益性を示す傾向があった。民族と文化の多様性のある企業は、収益性が平均よりも33〜35%高い傾向がある。

多様性と包括性のある企業を作るには、まず個人から手を付けることだ。管理職から新人社員に至るまで、全員が継続的に見直しを行い、先入観を捨てて新しい概念を学ぶ必要がある。

個人的な偏見を見直す。差別的な習慣を捨てる。自分とは異なる人を尊重する方法を学ぶ。

企業は、それを許さないという姿勢を示すことで、職場の差別を減らすことができる。Tembooの文化と行動は素晴らしいお手本だ。ユニコーンは魔法の生き物だが、多様性と包括性のあるハイテク企業は現実に存在する。そこでは、従業員たちに「普通」の考え方を再定義するよう求めている。

【編集部注】著者のSarah McMillian氏は、Tembooのセールス主査。母校のMIT、Complex誌、The Roots誌から多様と包括のリーダーとして認められている。またハイテク企業に多様性と包括性をもたせるためのアドバイスも行っている。

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(翻訳:金井哲夫)

AirbnbやPinterest、他社買収が活発な米国のユニコーン企業

(編集部注:筆者Jason RowleyCrunchbase Newsのベンチャーキャピタルとテクノロジーを専門とする記者だ)

10億ドル企業にするには、良い発想や最適のタイミング以上のものが必要だ。才能、専門性、運用の有効性、そして幸運。これらが全てが成功しているテックスタートアップの要件だ。今日最も成功している(少なくとも最も企業価値の大きな)テックユニコーンの多くがそれらなしに成功は成し得なかった。

企業の合併・買収(M&A)は、急速に事業拡大している企業価値の大きなテクノロジー企業にとっては主要な成長ベクトルとなり得る。これは20173月に初めて我々のCrunchbase Newsに最初の記事を投稿したとき以来、我々が随時取り上げてきたトピックだ。それから約2年たち、我々は最初の記事に立ち戻りたい。というのも、事態はかなり速く動いているからだ。そして最近では新たなユニコーン企業が続出している。これらのうちのどれが最もM&Aマーケットで最近活発なのだろうか。

最も買収の動きが活発な米国ユニコーン

これまでに多くの買収を行なっている米国のユニコーン企業を紹介する前に、まず最初に「ユニコーンって何?」という質問に答えよう。この言葉は通常、企業価値10億ドル以上となったベンチャーが支援するテック企業に使われる。Crunchbaseではこうした企業をUnicorns hubで追跡している。2011年後半にCowboy VenturesAileen LeeVCのセッティングで初めてこの言葉を使い、オリジナルの定義ではユニコーンは最初のテックバブル後の2003年以降に設立された企業であることが明確に示されている。我々がここで使うユニコーンの定義もこれに倣う。

下のチャートでは、まだ株式を公開していない、または(まだ)買収されていない米国拠点のユニコーンが行なった、明らかになっている買収件数を示している。これはCrunchbaseデータのスナップに基づいているもので、この記事を読者が読む頃には数やランキングは変わっている可能性があることはご承知願いたい。読みやすさや適当なサイズを維持するために7件以上の買収を行なった企業のみを扱っている。

想像がつくかと思うが、このランキングは2年前に我々がまとめたものとはいくぶん異なっている。20173月時点でランキング入りしていたいくつかの企業は株式を公開したり、買収されたりしている。

どの企業がユニコーン卒業?

我々の前回の分析時には23社を買収していたDropboxはその数週間後に株式を公開し、その後さらに2社を買収した(20191月下旬にHelloSign23000万ドルで201711月には額は非公開ながらVerstを買収した)。20189月に株式公開したSurveyMonkeyは、IPOを通じてエグジットする前に、明らかになっているだけでも6社を買収した。

トップランクに残っている企業は?

どの企業がまだトップランクに残っているだろうか。宿泊マーケットプレイス大手のAirbnbは、それまで4位だったのがDropboxが公開企業になって空いたトップの座に収まった。Airbnb20173月以来、6社を買収した。直近のものはデンマークのイベントスペース・会議室の貸し借りマーケットプレイスを提供するGaest.comだ。まだ手続き中であるこの案件は20191月に発表された。

WordPressの母体企業Automatticは依然2位のままだ。Automatticは我々が最後にユニコーンのM&Aをまとめてからさらに1社買収している。デジタル出版プラットフォームのAtavistだ。そのほか、オープンソースソフトウェアのコンテナ型仮想化のDocker、写真共有と検索サイトのPinterest、企業向けソーシャルメディア管理会社のSprinklr、ベンチャーが支援するメディア企業Vox Mediaもトップランクに残っている。

新手は?

ランキングではまた注目すべき新登場の企業もあった。ここでは最も注目すべき3社にフォーカスしよう。The We CompanyCoinbase、そしてLyftだ。(またStripeUnity Technologiesにも言及しておこう。どちらも初めてリスト入りした)。

The We CompanyWeWorkの親会社だ)は過去2年間で10社を買収した。今月初めThe We Companyはスペース活用とWi-Fi指紋採取を使ったビジターの追跡を行うEuclidを買収した。他の買収案件にはMeetup201711月のCrunchbase Newsに詳細がある)があり、買収額は2億ドルとされている。また2017年後半にはコーディングとデザイントレーニングプログラムのFlatiron School買収した。この買収でFlatiron SchoolはいくつかのThe We Companyの商業スペースを永久利用できるようになった。

最も有力な一般消費者向け暗号通貨企業という立場を強固なものにするために、Coinbaseはこの頃M&Aに積極的だ。最近同社は、イタリア拠点のブロックチェーン分析とインテリジェンスプラットフォームの企業Neutrinoを買収する計画を発表した。我々が伝えたように、Coinbaseはコンプライアンスを高めるためにこの買収を行うようだ。1月、同社はデータ分析企業Blockspringを買収した(買収額は非公開)。また、他の買収で最も注目を集めたのが20184月に行なったEarn.comの案件だ。Coinbaseはこの買収に12000万ドルを払った。

そして最後にLyftだ。この会社は専ら米国にフォーカスしてライドシェアと交通サービスを展開している。同社は2012年に設立されて以来、わかっているだけで10件の買収を行なっていて、最も直近のM&A案件は都市部でバイクシェアを展開するMotivateであり、20186月に買収した。Lyftの最大のライバル、Uberはこの記事執筆時点で6件の買収を行なっている。Uberは、LyftMotivate買収の数カ月前にJUMP Bikes2億ドルで買収した。ここでもまたライバル関係にあるLyftUberで構造上の類似点がみられる。激しい競争が、資金調達でも2社を競わせていて、M&A戦略でも同様だ。

最後に

長期的な事業の成功は、往々にしてニワトリが先か、たまごが先か的な話になる。買収したスタートアップのおかげで企業が成功するのだろうか。それとも、企業が成功していて事業を拡大する余地があるから買収するのだろうか。それは多くの場合、どちらも正しい。

非公開企業の部門を占有するユニコーン企業(買収案件の数で上位でなかったら買収金額で上位なのは確かだ)は、成長という名のもとに今後も資金を調達し続ける。成長は、マーケットでの地位を確立し拡大するという従来の方法でやってくる。あるいは、急速な事業拡大、そして表面上は投資家へのリターンの最大化という名のもとに、M&Aでは新たなマーケットに参画するルートや、さらに立場を固めるための方策を手に入れることができる。これら企業が最終的にエグジットするとき、そうした戦略が功を奏したかどうかが明らかになる。

イメージクレジット: CattallinaShutterstock

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ユニコーンはもう珍しいものではない

Kleiner Perkinsの前パートナーでシードステージベンチャーキャピタル会社Cowboy Venturesの創業者Aileen Leeが2013年にまさにこのサイトで“ユニコーン”という言葉を作りだしたとき、このタイトルを持つ企業はわずか39社だった。

彼女はそれらの企業を“数少ない幸運/特殊な企業”と呼んだ。彼女の定義:2003年以降に設立された米国のソフトウェアスタートアップで、企業価値が10億ドル以上のもの。彼女がその投稿を書いた時、彼女の計算では毎年たったの4社がそうした企業価値を達成するはずだった。しかし5年後、PitchBookの最新の調査によると、スタートアップがユニコーンになる率は353.1%上昇している。

今日、米国だけで145社もの“アクティブユニコーン”が存在し、合計の企業価値は5559億ドルだ。

なぜなのか。理由はいくつかある。具体的には、企業がより長く非公開企業にとどまっていることが挙げられる。非公開から抜け出し、別のクラブー公開クラブに移行する企業は少なく、これによりユニコーンの数は増大し続けている。加えて、マーケットに資金が、正確にいえば801億ドルもあり、レイトステージの企業はフォームS-1であらゆる情報を公開する代わりに、ソフトバンクが提供する“ミニIPO”を選択している。

ユニコーンが生まれるスピードが緩やかになる気配はない。最新のデータでは米国のユニコーンがそのステータスを得るまでに平均6年かかっているのに対し、わずか3年前は平均7.5年だった。平均年数よりも随分早くユニコーンになっている企業もいくつかある。BrexLime、そしてBirdは記録的な早さで最近10億ドル超になった企業だ。

企業価値の増大はまた、これまでになく内容が充実している。レイトステージの企業価値の平均は前年比50.7%増えている。一方、アーリーステージ、シードステージの平均価値はそれぞれ28%増と12%増だった。2018年のベンチャーキャピタル投資がドットコムブーム以来の活況を呈していることは言うに及ばないだろう。

要するに、その企業がどれくらい大きいか、あるいはどれくらい早く10億ドルを達成したかにかかわらず、スタートアップの企業価値は問題であるべきではない。しかしこれらはスタートアップエコシステムの人がスタートアップの成功度を測り、価値があるかどうかを決める物差しとなるー少なくとも投資家かがいくら出すかを決定するのにかかわってくる。

ユニコーンという言葉、そしてコンセプト全てを廃止したいと思っても、10億ドル企業の増加は無視できないものとなっている。

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2018年の米VC投資が1000億ドル超え

企業価値10億ドル超の新ユニコーン企業の続出、数え切れないほどの1億ドル規模のベンチャーファイナンス、そして巨大ファンドの爆発的な増加ー2018年の米国企業ベンチャーキャピタルが過去最多になることはまったく驚きではない。

今年はあと2.5カ月を残しているが、PitchBookの第3四半期ベンチャーモニターからのデータによると、9月30日時点で、6583件のVCディールがあり米国企業はすでに841億ドルを調達したーこれは2017年通年の額を上回る。

昨年は9000件超のディールがあり、820億ドルを調達した。この数字はこの業界ではかなりの出来だった。多くの人が感じたのは、この傾向が今年も続くのだろうかということだ。ところが、どうだ。VC投資は過去10年の最高額を更新し、スローダウンする気配はまったくない。

なぜ上昇しているのだろうか。資金調達する企業の数は少なくなっているが、ラウンドの規模が膨張している。たとえば、ユニコーンは2018年のキャピタルの25%を占める。SlackStripeLyftなどを含むそうした企業は今年これまでに192億ドル調達していてーこれは最高額だー2017年の174億ドルから増えている。2018年第3四半期だけでユニコーン企業のディールは39件、額にして79億6000万ドルだった。

以下、米国ベンチャーエコシステムについてのPitchBookのレポートから興味深い点をいくつか挙げる。

・2018年、おおよそ280億ドルがアーリーステージのスタートアップに投資された。前四半期の平均的なディール規模は25%大きい700万ドルだった。

・10のファンドが今年5億ドル以上を調達し、そのほかLightspeed Venture PartnersIndex Venturesを含む5つのファンドが10億ドル以上をクローズした。

・西海岸拠点のスタートアップが第3四半期ディールバリューの54.7%を占めた。しかし他のエリアのスタートアップが伸びている。ニューイングランド(12%)、中部大西洋(20%)、五大湖(5%)。

・米国の医薬品・バイオテックへの投資が、今年すでにこれまでで最高の140億ドルに達している。

・コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の動きが活発化している。今年、CVCは米国のスタートアップに393億ドル投資した。これは2013年の152億ドルの倍以上の額だ。

・買い占めによるVCから支援を受けた企業がこれまでになく増えている。

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(翻訳:Mizoguchi)

成長を続けるスタートアップたちが、第2拠点を検討しているのはこれらの都市だ

【編集部注】著者のJoanna GlasnerCrunchBaseの記者である。

過去9ヶ月というもの、米国の市長たちは、大々的に第2拠点を探すAmazon.comのご機嫌をとるために、お互いの足を引っ張り合ってきた。

とはいえ、似たようなストーリーがもっと静かにスタートアップの世界では進行しているのだ。最も評価額の高いベンチャー企業の多くが、高コストの本社を飛び出して、より小さな都市に第2拠点を設置しようとしている。

彼らはどこに向かうのだろうか?中でもナッシュビルはかなり人気のある土地だ。フェニックスも同様である。ポートランドとローリーにも動きがみられる。また多くの企業では、多数のリモートワークの提供も行われている、これは特筆すべきスキルを持ちながらも移住をしたくない候補者を探すためだ。

これらは米国のユニコーンによる地理的雇用実績に対して、Crunchbase Newsが行った分析から得られた知見の一部だ。そうした企業の多くが、サンフランシスコのベイエリア、ボストン、そしてニューヨークのような高コストの場所に拠点を置いていたので、私たちはそれらがより小さくコストの安い都市にオフィスを設置しようとするパターンがあるのかどうかに注目した(調査法の詳細については、後にある調査方法のセクションを参照して欲しい)。

ホットスポットのいくつかを見てみよう。

テネシー州ナッシュビル

驚きの発見の1つが、スタートアップの第2拠点探しの中で、ナッシュビルが突出していたことだ。

少なくとも4つのユニコーンがナッシュビルのオフィスを拡大し、さらに3つがテネシーの他の都市やその周辺で事業を拡大しているのだ。テネシーを愛するスタートアップのいくつかを以下に示す:

私たちがユニコーンたちによるナッシュビルの人気を、驚くべきものとして表現した理由は、この都市がハイテクスタートアップやベンチャーキャピタルの主要な拠点として知られていなかったからだ。ともあれ、第2拠点として現実的で望ましい場所となるための、多くの属性があるということなのだ。

ナッシュビルの魅力には、その高い生活の質、人口と経済の成長、穏やかな気候、そして多くのライブミュージックなどが含まれる。ナッシュビルの不動産市場は過去数年間高騰しているものの、それでも住宅価格と生活費はまだシリコンバレーやニューヨークよりはるかに低いものである。そして労働者のための追加の特典がある:テネシー州には給与所得税がないのだ。

フェニックス

フェニックスは、特に西海岸の企業が、大人数を必要とする顧客サービスやその他の業務のために、低コストのハブを求める際に、スタートアップたちによって選ばれる、また別の人気の選択肢である。

下の表では、砂漠の都市に大人数を集める5つのユニコーンが示されている。

手頃な価格、容易な拡張性、大きな雇用可能人口は、フェニックスの魅力を構成する大きな要素のように見える。住居費や生活費は、大きな沿岸部の都市よりもずっと安い。そして、拡張できる余地が十分にある。

新しいオフィス開設について書かれたある記事は、低い転職率もフェニックスエリアの魅力的な属性として挙げているが、確かに興味深い指摘である。サンフランシスコやニューヨークのようなスタートアップの拠点では、転職は日常茶飯事である、特に必要とされるスキルセットを持つ人びとにその傾向は顕著だ。成長する企業たちは、おそらく在職期間を数ヶ月単位ではなく数年単位で考えるような人たちを探したいと思っているだろう。

これらだけが候補地ではない

ナッシュビルとフェニックスだけが、第2拠点を構えようとするユニコーンたちのホットスポットというわけではない。他の多くの都市でも、スタートアップの活動が拡大している。

ノースカロライナ州を見てみよう。そのリサーチトライアングル地域には、多くのSTEM(科学・技術・工学・数学)関連の卒業生が居ることで知られている。よって他の地域に本社を置くハイテク企業が、さらにここに拠点を置きたい気になっても不思議ではない。そのような企業の1つがサイバーセキュリティのユニコーンであるTaniumである、同社はこの地域で多くの技術的な求人を行っている。もう1つは、ソフトウェアコンテナ化技術の開発を行うDockerだ。同社はノースカロライナ州ローリーで求人を行っている。

オーランドのメトロエリアは、最近50億ドルの評価額をつけた、手数料無料の株式ならびに暗号通貨取引プラットフォームであるRobinhoodのおかげで、注目を集めた。シリコンバレーに本拠を置く同社は、オーランド郊外のレイク・メアリーで、HRとコンプライアンスの仕事を含む、かなりの数の求人を行っている。

一方、ポートランドは、また別の暗号通貨関連ユニコーンであり、デジタル通貨取引プラットフォームを提供するCoinbaseを引き寄せたばかりだ。サンフランシスコに本社を置く同社は最近、このオレゴン州の都市にオフィスを開設し、現在は採用を行っている最中だ。

画面のある場所ならばどこでも

しかし、急速に成長する多くのスタートアップでは、職を得るために特定の場所にいる必要はない。多くのユニコーンは、ローカルに埋めることが難しい特殊な技術的な役割を含む、リモートポジションを沢山用意している。

開発者たちがプロジェクトをリモートで共同作業できるようにするツールを開発しているGitHubは、それ自身が作っているものを応用することに対して、特に優れた仕事をしている。このサンフランシスコを拠点とする企業は、多くのエンジニアリング職をリモートワーカーに対して開いており、また同社の他の部門もある程度リモート職を提供している。

その他の、ある程度のリモート職を募集している企業には、シリコンバレーに拠点を置くサイバーセキュリティプロバイダーであるCrowdStrike、エンタープライズソフトウェア開発を行うApttus、そしてDockerなどが含まれている。

すべての企業が行っているわけではない

もちろん、すべてのユニコーンが大規模な第2拠点オフィスを開こうとしているわけではない。多くは、従業員を本拠地の近くに抱えることを好み、従業員たちをシックな職場環境や贅沢な特典で魅了しようとしている。他の企業の中には、拡大する際には戦略的に高コストの場所を選ぼうとするものもいる。

それでも、こうした第2拠点現象は、少数の地域があまりにもベンチャーキャピタルパイを奪っているという苦情に対する、部分的な解決を提供するものかもしれない。いまだにユニコーンたちは少数の都市にひしめいてはいるものの、少なくとも彼らは翼を広げて、他の場所でも多くの雇用を提供しようとしている。

調査方法

この分析のために、私たちは北米の他の都市に第2拠点オフィスを持つ、米国のユニコーンを調査した。私たちは、米国を拠点とする125社のリストから始めて、そのウェブサイトに掲載された求人情報をその場所に着目して調査した。

地元のマーケットに対応するための求人情報は除外した。たとえば、シカゴの顧客に販売するために、シカゴ在住の営業担当者を探しているサンフランシスコの会社は数えなかった。その代わりに、コアオペレーションを扱うチームメンバーの募集、たとえばエンジニアリング、財務、そして全社的なカスタマーサポートなどに着目した。北米以外の第2拠点オフィスも除外している。

さらに私たちは、特により低コストの地域に拡大しようとしている企業を探した。それでも多くの場合には、ニューヨークやシリコンバレーなどの他の高コストの場所に、戦略的にスタッフを追加する企業が見られた。

最後のメモはテキサス州オースティンに対するものだ。私たちは他の場所を拠点としているユニコーンたちのいくつかが、オースティンで求人を行っていることを知った。とはいえ、上記のセクションではオースチンは取り上げなかった。なぜならオースチンはシリコンバレーよりも低コストではあるものの、それ自身は既に、大規模で成熟したテクノロジーとスタートアップハブとしての特徴を持っているからだ。

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(翻訳:sako)

画像クレジット: Li-Anne DIas

ユニコーン企業に出会う確率がアメリカで1番高い地域はどこなのか?

【編集部注】執筆者のJason Rowleyはベンチャーキャピタリスト兼Crunchbase Newsのテクノロジー記者。

起業家がよく口にする「スタートアップを始めるのに最適な街はどこか?」という問いは、いつの時代も耳にする、なかなか答えが出ない問題だ。期待をもたせないために先に伝えておくと、この問いに正解はない。テックエコシステムではよくあるように、この問いにはいくつもの要因が絡み合っている。しかし、ひとつだけ言えることがあるとすれば、ネットワークは重要だということだ。

街のネットワーク

ネットワーク理論の中には、「同類性」と呼ばれるコンセプトが存在する。これは、性質の似た個体同士の方が、そうでない個体に比べて繋がり合いやすいということを意味している。つまり「類は友を呼ぶ」ということだ。それでは、もしある起業家がユニコーンクラブ(評価額が10億ドルを超える非上場独立企業の集まり)に入りたい、もしくは資金的な安定を求めている場合、その人はどの都市に拠点を置けばいいのだろうか?

この問いであれば、ちょっと捻りを加えて答えることができる。

活発なスタートアップエコシステムが存在し、ユニコーン企業もしくは調達額が5000万ドルを超える企業の数が多い大都市を見つけるというのはあまりに簡単だし、そこまで意義があるとも言えない(ネタバレ:全てに関してサンフランシスコのベイエリアが1番だ)。

そこで、アメリカでもっともユニコーン企業や資本が潤沢な企業の割合が高い地域について考えてみたい。つまり、ユニコーン企業や調達額の多い企業を、その地域で設立された企業の総数で割った数を以下で確認していく。

スタートアップを始めるのに”最適な”街探し

この調査にあたっては、Crunchbaseに掲載されている、アメリカ中の2003年以降に設立された3万3500社のデータを分析した(Aileen Leeの定義によれば、2003年がユニコーン時代の始まりとされている)。

このデータセットからは、設立前に資金調達を行ったとされる企業は取り除かれている(これは分析結果にノイズをもたらすエラーとした)。というのも、私たちが分析しようとしているのは、ソフトウェアを中心とするプロダクトやサービスを提供している”普通”の企業だからだ。同様に、資本集約的な事業(エネルギー、石油精製・採掘、製薬、医療機器等の生命科学事業)を営む企業も調査対象から外している。

そこから全体のデータを分析し、2003年以降に各地で設立された企業のうち、基準を満たすものをピックアップしていった。もちろん、設立年や拠点情報が掲載されていないために、対象データから漏れてしまった企業も存在するだろう。しかし分析対象となった企業の総数を考えると、これは誤差の範囲におさまる程度だ。

ユニコーンの生息地

ユニコーン企業に関しては、Crunchbase Unicorn Leaderboardを参照し、評価額が10億ドル以上の非上場企業、もしくは既にエグジットを果たした企業を対象とした。その結果、アメリカには現在144社のユニコーン企業が存在することがわかった。以下がユニコーン企業の数がもっとも多い5地域だ。

  • サンフランシスコ・ベイエリア:83社
  • ニューヨーク:22社
  • ロサンゼルス:8社
  • ボストンとシカゴ(同位):5社
  • ソルトレイクシティ:4社

ここまでは予想通りの結果だ。しかし、ユニコーン企業の数を2003年以降に設立された企業の総数で割ることで、ユニコーン企業の密集した地域が導き出せる。

「ユニコーン企業はどこにいるか?」という問いにこんな風に回答を導きだしたことで、規模の小さなスタートアップエコシステムの存在が浮き彫りになるという、意外ながらも面白い結果となった。

多額の資本が集まる成熟したスタートアップエコシステム

ユニコーン企業の分布を見て面白いと感じる人もいるかもしれないが、そこから得られる情報には限りがある。10億ドル以上の評価額がついた企業を144社見つけられたものの、そのほとんどは一箇所に集中しており、それ以外に特段分析すべきようなところもない。

それでは少し視野を広げて、次は”資本が潤沢な”企業の割合が高い地域を見ていきたい。下の地図に、2003年以降に設立された企業のうち、資本が潤沢な企業の割合が高い地域をプロットした。しかし、まずは対象企業の基準について説明しよう。

ここでは累計調達額が5000万ドル以上の企業を”資本が潤沢な”企業と考えた。個々の企業レベルで言えば、ほとんどが設立から数年が経ち、少なくとも資金調達ラウンドを2回経験した企業で、彼らはIPOやM&A、または自己資金での生き残りに向けて比較的順調に進んでいっていると言える。

エコシステムレベルで言えば、調達金額の多い企業がたくさんいるということは、多額の資金を現地企業に投じようと考える投資家がその地域にたくさんいるということを示唆している。あるいは、もしもその地域に投資家があまりいなかったとしても、現地企業には外から資金を調達するだけの力があるということがわかる。

そこからさらに分析結果に磨きをかけるため、2003年以降に設立された企業の数に下限を設定した。というのも、もしある地域で過去14年間に設立されたスタートアップの数が5社しかなく、そのうちの1社が5000万ドルの資金調達に成功したとする。厳密に言えば、その地域で設立された企業の20%が潤沢な資本を持つ企業ということになるが、母数が少なすぎるためこのデータは参考にならない。4匹の小魚しかいないプールの中でクジラを見つけても、私たちの目的からはズレてしまう。

そのため、ここでは2003年以降に少なくとも20社以上を輩出した地域を対象とした。こうすることで、ベイエリア外のたまたま10億ドル企業が誕生した地域ではなく、スタートアップエコシステムとしてある程度持続性を持った地域に目を向けることができるのだ。

こちらのインタラクティブマップからとった下のスクリーンショットには、各地域のスタートアップの総数に占める、資本が潤沢な企業の割合が示されている。リンク先の地図では、青い点の上にポインタをかざすと5000万ドル以上を調達した企業の数が表示されるようになっている。

すると、街としての規模は小さくとも、資本が潤沢な企業の割合が比較的高い地域が散見する。アイダホ州のボイシ(Boise)ヴァージニア州のアレクサンドリア(Alexandria)フロリダ州の”スペースコースト”エリアノースカロライナ州のシャーロット(Charlotte)は、全てベイエリアやボストンといった巨大スタートアップハブよりも資本が潤沢な企業の割合が高い。ニューヨークやシカゴ、ソルトレイクシティなど、ひとつ前の指標で上位につけていた地域は逆にランクダウンしている。

まとめ

スタートアップを始めるのに最適な地域というのは存在しない。サンフランシスコやニューヨーク、ボストンといった主要地域は、これまでに誕生したプロダクトや企業という点では確かに活気に溢れているし、素晴らしい地域だと言える。その一方で、生活費は高く、次の10億ドル企業をつくるのは自分だと息巻いている起業家も当然たくさんいる。

対照的に、シャーロットやソルトレイクシティ、ヒューストンといった比較的規模の小さな地域は、主要地域に比べれば生活費も安く、ベイエリアやニューヨークに比べて”打率”も高い。しかし、企業数の多くない規模の小さな地域という事実に変わりはなく、巨大企業の存在は単なる偶然であることも多々ある。

誤解のないように伝えておくと、ユニコーン企業と資本が潤沢な企業の数だけで、スタートアップの拠点を決めるというのは賢明とは言えない。そういった企業は、豊かで勢いのあるエコシステムがあるからこそ生まれるのであって、その逆ではない。規模が大きく活気で溢れ、資金調達やコネクション作りがしやすいエコシステムを選ぶか、それとも自分たちがそのようなエコシステムを作っていくのかというのは起業家自身の選択なのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Q&AサービスのQuoraがユニコーンに——8500万の調達で評価額18億ドル

主観的な人々の知見を集めたQ&Aサイト「Quora」はユニコーンになった。8年間、丁寧に質問と回答の知的なコミュニティーを構築していた彼らは、シリーズDで8500万ドルを調達したと発表した。Collaborative FundとY CombinatorのContinuity Fundが共同でリード投資家を務めている。QuoraはTechCrunchに対し「前回の資金調達から評価額はおよそ2倍になった」と話す。2014年に8000万ドル調達した時の評価額は9億ドルだったので、現在の評価額はおよそ18億ドルとなる計算だ。

評価額を急激に押し上げた2つの大きな要因は、ユーザーグロースと開始した広告テストの結果が良かったからだという。Quoraには現在1億9000万人の月間ユーザーがいる。昨年から1億人増やすことができた。これは、あらゆる分野で専門的な意見を得られるサービスとなるポテンシャルがあることを示している。このスケールは広告主とっても魅力だ。Quoraの読者は、ある事柄に対して興味関心があることを表明している。何か回答を探している人は、それに関連する商品の購入にも関心があるだろう。

Quoraの共同ファウンダーでCEO Adam D’Angelo

「広告プロダクトは結構良い結果が出ています」と共同ファウンダーでCEOのAdam D’Angeloは言う。Quoraの広告は会社名と詳細をユーザーが回答する質問のすぐ下に表示する。この広告フォーマットはまだクローズドベータでしか提供していないが、 D’Angeloは「今のところ、その結果は良いもので、今回の調達ラウンドの投資家にとってこの数字は重要なことでした」と話す。

D’Angeloはここまで8年間、企業が利用できる広告プロダクトは用意しておらず、Quoraはゆっくりとビジネスを進めてきたと話す「私たちはマネタイズより、ユーザーとミッションを重視してきました」。Quoraの持つ大きなアイディアとD’AngeloのFacebook初のCTOを務めた経験、そして彼らの目指す市場には強い競合がいないことで、Quoraはサービス開発に時間をかけることができた。

ユニクオーン(ユニコーン+クオーラ)

Sam AltmanとYC ContinuityCollaborative Fund、既存投資家のTiger Global、Matrix Partners、Facebookの共同ファウンダーDustin Moskovitzもこの調達ラウンドに参加した。彼らはQuoraが長く続くビジネスになると信じている。Wikipediaは客観的な二次情報を集めているが、Quoraは主観的な一次情報を集めている。人々はいつも答えを求めていて、Quoraではそれに対する最適の答えが見つかる。常に新しいコンテンツが生成されるこの場所は、今後広告収益を大量に生むことになるかもしれない。

Quoraは、Yahoo Ansers Nowといったコンテンツの信頼性が乏しいものの、長らくQ&Aサイトを運営しているところと競合することになるだろう。また、今後人工知能が発達した場合、Quoraから主観的な知見を集める別の方法が台頭するようになるかもしれない。しかし、VentureBeatによると、今回調達した金額でQuoraの累計調達額は 2億2600万ドルとなり、Quoraはこの長い戦いを続けることができる。

「今回調達した資金の主な用途は国際化戦略です」とD’Angeloは話す。最終的に「ユーザーがコンテンツを他の言語に翻訳したりできるようにしたいと考えています。まだその仕組みは作っていませんが」と言う。現段階では各言語専用とアプリを制作していく。Quoraのスペイン語版は昨年ローンチし、スペイン語の質問と回答を集めている。フランス語はベータ版があり、ここ数ヶ月内にドイツ語とイタリア語を制作するという。「次の1年か2年で全ての言語にアプリを作成したい」とD’Angeloは話している。

これまで静かにサービス展開を行ってきた会社がユニコーンになったことについてどう思うかと尋ねた時、D’Angeloは「何も変わらないと思います。私たちはミッションに専念してきました。最も大事なことはより多くの知見が共有されることにあります」と話した。とても彼らしい回答だ。

ただ、Quoraのステータスが高まることでQuoraの存在感も高まり、次のユーザーグロースの波を呼び寄せるきっかけとなるかもしれない。人々がGoogleに「最良の旅行ハックを教えて」と聞くのではなく「最良の旅行ハックを教えて、Quora」と尋ねるようになるかもしれない。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website