リモート従業員が選ぶデスクや機器に毎月の予算を割り当て備品管理するのを支援するFleex

Fleexはフランスのスタートアップで、もともと公式にはFlexlabという社名だった。この会社は、デスク、外付けモニター、PC周辺機器、快適なオフィスチェアなどを買うお金を従業員により簡単に与えられるようにすることを目指している。つまり、Fleexはリモートワークでの仕事がはかどる状況をつくる手助けをしたいと考えている。

もしあなたが大企業で働いていて、自宅で仕事ができるのであれば、パンデミックの間に仕事がしやすくなるように、外付けモニターやオフィスチェアをリクエストできる旨のメールが雇用主から送られてきた可能性は高いだろう。そして小さな会社に勤めている場合、おそらく雇用主によりけりだったのではないだろうか。

いずれにせよ、企業のIT・ファシリティ部門によっては、スタッフの自宅に散在している膨大なデバイスや家具の在庫に対応しなければならないところも出てきた。ポリシーや発注ポータルの設定、在庫管理なども、非常に難しくなることがある。

Fleexは基本的に、そのような状況を手助けしたいと考えている。同社のサービスを使い、雇用主は従業員のために毎月の予算を割り当てることができる。そして従業員は、その予算をいくつかのカテゴリーの製品やサービスに使うことができる。

Fleexはサプライヤーと直接連携して製品カタログを作成しており、今のところ、IT製品と家具からスタートしている。

Fleexは注文後、あなたのために備品を購入し、あなたの家に品物を送り、製品の完全なライフサイクルをサポートする。従業員が退職する際には、機器をFleexに送り返さなければならない。

これを読んで分かるように、Fleexは一般的なソフトウェアのスタートアップとは異なるビジネスモデルを持っている。企業はデスク、椅子、モニター、プリンターなどを購入するために資金を割り当てなければならない。そして従業員が効率的に予算を使うのか、それともFleexの口座にお金が残っているのかを見いだす必要がある。

購入された製品が使用できなくなるまでにどれほど持ちこたえるのかも、見極める必要がある。言い換えれば、Fleexの背後にあるユニットエコノミクスを把握するには、少し時間がかかりそうだ。

同社はまだスタートしたばかりで、いくつかの企業と協力してサービスを試している。これまでのところ、Swile、Back Market、そしてShineがFleexを利用している。これらの企業は従業員一人当たり平均55ユーロ(約7000円)の予算を毎月配分しているという。

Fleexは200万ドル(170万ユーロ、約2億2000万円)のシードラウンドを調達しており、SaaS企業に焦点を当てたヨーロッパのスタートアップスタジオであるeFoundersに参加している。

Image Credits: Fleex

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:ヨーロッパ 家具

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

TikTokがコンテンツ管理改善のため欧州に安全諮問委員会を設置

TikTok(ティックトック)は子どもの安全や、若年層のメンタルヘルスと過激主義などを専門とする外部専門家が参加するSafety Advisory Council(安全諮問委員会)を欧州に設置する。そうした分野でのコンテンツモデレーションに役立てるのが狙いだ。

米国時間3月2日に発表されたこの動きは、イタリアのデータ保護当局による2021年1月の介入を受けてのものだ。イタリアでは、TikTokでの失神チャレンジに参加した少女が窒息死したと現地メディアに報じられた事件を受けて、現地当局がTikTokに年齢を確認できていないユーザーをブロックするよう命じた。

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TikTokはまたEU消費者保護当局によって取りまとめられた一連の苦情の対象にもなっていた。当局は2021年2月、子どもの安全に関する懸念を含め、EUの消費者保護とプライバシーの規則に関する数多くの違反を詳細に記した2つのレポートを発表している。

「当社は常に既存の機能と規則をレビューし、安全を最優先とするための大胆な新しい対策を考え出そうとしています」とTikTokは説明し、欧州でプラットフォームの安全性を改善する必要性を肯定的にとらえている。

「諮問委員会には欧州中の研究機関や市民社会のリーダーに参加してもらいます。各委員は当社が直面している課題についてそれぞれ異なる、新鮮な見方を示し、当社のコンテンツモデレーション規則と実行についてアドバイスする際にその特定分野の専門性を提供します。今日当社が抱えている課題を解決する前向きな規則を定めるのをサポートするだけでなく、将来TikTokや当社のコミュニティに影響する新たな問題を特定するのにも力を貸してくれます」。

そうしたアドバイザー機関をTikTokが立ち上げるのは今回が初めてではない。同社は1年前、選挙誤情報の拡散と広範なセキュリティの問題をについて米国の議員から厳しい調査を受けることになった後、米国安全諮問委員会を発表した。セキュリティの問題には、中国企業が所有するTikTokアプリが中国政府の命令で検閲を行っているという告発も含まれた。

しかしTikTokの欧州コンテンツモデレーション諮問組織への最初の被任命者の一覧は、同社の欧州でのフォーカスが子どもの安全と若年層のメンタルヘルス、過激主義、ヘイトスピーチに向けられていることを示しており、これは欧州の議員や当局、市民社会からこれまで最も厳しい目が向けられている主要分野であることを反映している。

TikTokは欧州の諮問委員会に9人を指名した(リストはここ)。さしあたっては、いじめ対策、若年層のメンタルヘルス、デジタルペアレンティング、オンラインでの子どもの性的搾取・虐待、過激主義と脱急進化、偏見と差別、ヘイトクライムの対策の外部専門家に参加してもらう。委員会のメンバーは今後さらに増やす、とTikTokは話している(「将来当社をサポートしてもらうために、より多くの国や異なる専門性を持つメンバー」を加えるとしている)。

TikTokはまた、EUでサービスを展開しているプラットフォーム向けに準備中の汎EU規則にも注意を向けている。

EUの議員たちは最近、デジタルサービスプロバイダーが推進して収益を上げているコンテンツに説明責任を持たせることを目的とする法案を提出した。現在は草案で、EUの共同立法過程を経ることになるDigital Services Act(デジタルサービス法)は、さまざまなプラットフォームが明らかに違法なコンテンツ(ヘイトスピーチや子どもの性的搾取など)を削除するのにどのように対応しなければならないかを定める。

EUのデジタルサービス法は若年層のメンタルヘルス問題など、多岐にわたる害に対応するプラットフォームのための特定の規則を定めることを回避した。それとは対照的に、英国はソーシャルメディアを規制するための計画でそうした問題に対処することを提案している(Online Safety bill、オンライン安全性法)。しかし、計画された法制化はさまざまな方法でデジタルサービスをめぐる説明責任を推進するという意図だ。

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例えば法案には、TikTokが含まれるであろう大手プラットフォームに外部研究者がそのサービスの社会的影響を研究できるようデータを提供することを求める、というものが含まれている。耳目を集める(独立した)研究が、注目を引いているサービスのメンタルヘルス影響を調べることになるというのは想像に難くない。なので、プラットフォームのデータは、例えばユーザーに安全な環境を提供できていないなど、サービス事業者にとってマイナスのPR材料と変わり得る。

監視体制が導入される前に、プラットフォームは先回りして良い位置に付けられるよう、欧州の市民社会への接触を高めるためのインセンティブを増やしている。

【更新】TikTokへの最近の消費者・データ保護苦情を取りまとめた欧州の消費者協会であるBEUC(欧州消費者機構)にTikTokの諮問機関についてのコメントを求めたところ、審議官Ursula Pachl(アルスラ・パクル)氏の名前で次のような声明が送られてきた。「どのようにユーザーを、特に子どもをこれまで以上に保護するのか、専門家からアドバイスを受けるようTikTokに促すことしかできません。第一に取り組むべきTikTokの懸念は、同社が欧州と国内の法令に則るためにあらゆる方策を取るようにすべき、ということです」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TikTokヨーロッパモデレーション

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

EUが安全な旅行を支援する新型コロナワクチン接種・検査状況を表示する「デジタルパス」を準備中

欧州委員会は、新型コロナウイルス時代に国境を超える旅行を促進することを目的とする「デジタルグリーンパス」というデジタル認証に関する立法計画を2021年3月下旬に示すと明らかにした。

欧州委員会委員長のUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)氏は2021年3月1日、計画されているデジタルツールはワクチン接種の証明を提供することが目的だと述べた。しかしそれだけではない。「デジタルグリーンパス」は、たとえばまだワクチンを受けられない人のためのコロナテスト結果や「新型コロナからの回復」に関する情報も表示する。

「データ保護、セキュリティ、プライバシーを尊重します」とフォン・デア・ライエン氏はいくつかのツイートで付け加えた。

「デジタルグリーンパスは欧州人の生活を楽にします」とも述べた。「目的は、徐々に欧州人が仕事や旅行のためにEU内外を安全に移動できるようにすることです」。

ロイターによると、欧州委員会は2021年3月17日に立法計画の詳細を発表する。

EUの首脳は、加盟国同士が独自に2カ国間取り決めを行うなど単一マーケットの細分化を回避するために汎EUシステムの設置に熱心だ。あるいはサードパーティの商業システムが足がかりを得るのを回避するためだ(2021年初め、数多くのテック企業がワクチン接種ステータスのための「ユニバーサル」な基準を設けるために取り組んでいると発表した)。

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欧州委員会は、ワクチンへのアクセスがまだかなり限られていることに基づく人々の自由の制限が醜い差別の材料となるとして、デジタルパスを「ワクチンパスポート」と呼ぶのを注意深く避けている。

と同時にEUの首脳は明らかに、経済的に外国人旅行客に大きく頼っているギリシャやスペインのような加盟国をサポートしなければならない重圧を感じている。2021年1月にEU幹部はワクチン書類提示の相互承認のための共通のアプローチが「最も重要」だと述べた。

ワクチンの接種と新型コロナテスト結果を表示するための汎EUデジタル認証はソリューションとなる。ただし、デジタルパスの使用を義務化することにはならないようだ。

欧州委員会は、筆者がコメントを求めて連絡をとった際、そして3月1日の報道機関との会見でデジタルパスの計画についての詳細を求められた際にさらなる情報の開示を却下した。

別の疑問は、計画しているデジタル認証システムがどれほど早く立ち上げられて運用されるかだ。数カ月後には夏のバケーションの到来が見込まれ、欧州委員会は迅速に進めなければならないというプレッシャーを受けることになる。と同時に、ロイターによると、欧州委員会はシステムがEU外でも機能するよう国際組織と協業したいと考えている。

Apple(アップル)は2021年2月、ワクチンパスに関するiOSレビューのプロセスを厳格化していると述べた。デベロッパーはそうしたアプリを提出する前に、公衆衛生当局や当局とつながっている企業に認証された組織と協業する必要がある、としている。Appleは「こうしたアプリが機密データを責任を持って扱い、信頼できる機能性を提供することを確かなものにするために」変更を加えた、とBBCは報じた。

2020年、多くの欧州のプライバシー専門家が、別の新型コロナ関連デジタルツールのための分散型プライバシー保護基準を考案するために結集した。このツールは、新型コロナにさらされたリスクを予測するBlutooth駆動の接触追跡アプリだ。AppleやGoogleが接触追跡のための分散型アプリのみをサポートすることを選んだにもかかわらず、(フランスのように)一部のEU加盟国は一元化されたシステムを選んだ。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:ヨーロッパワクチン新型コロナウイルス

画像クレジット:ADEK MICA/AFP / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

EUの主管プライバシー規制当局が行動監視に基づくターゲティング広告の禁止を求める

欧州連合の主管データ保護監督機関は、インターネットユーザーのデジタル活動の追跡に基づくターゲティング広告の禁止を、他の重要な目標の中でもとりわけ事業者の説明責任を強化することを目的としたデジタルサービス法の抜本改革に盛り込むよう勧告した。

欧州データ保護監督官(EDPS)のWojciech Wiewiorówski(ヴォイチェフ・ヴィエビオロフスキ)氏は、EUの議員からの協議要請を受け、欧州委員会のデジタルサービス法(DSA)を参照して、行動監視に基づくターゲティング広告の禁止を求める決断を下した。

DSAの法案は、デジタル市場法(DMA)の案と共に12月に提出された。これにより、EUの(しばしば長期化する)共同立法プロセスが始まり、最終案が承認される前に、欧州議会と欧州連合理事会での修正案の議論と交渉が行われることになる。これは、数十年にもわたって行われてきたEU全体でのデジタル規則の大改革において、その最終形に影響を与えるためにすべてを賭けたせめぎ合いが始まることを意味する。

ターゲティング広告の禁止を求める欧州の主管データ保護監督機関による介入は、消費者の利益の保護を目的とした法案を骨抜きにしようとする試みに対する強力な先制攻撃だ。

欧州委員会の提案ではそれほど深く踏み込んでいなかったが、大手テクノロジー企業のロビイストは確かに反対に向けて力を注いでいたので、EDPSがここで強硬な措置を講じたことの意義は大きいと考えられる。

EDPSのヴィエビオロフスキ氏は、DSAに関する意見書において、欧州委員会が提案したリスク軽減措置を補完するために「追加のセーフガード」が必要であると述べ、「オンラインプラットフォームにおけるある種の行為は、個人の権利だけでなく、社会全体に対するリスクを増大させている」と主張している。

EDPSが特に懸念している分野は、オンライン広告、レコメンドシステム、コンテンツモデレーションだ。

ヴィエビオロフスキ氏は、「オンラインのターゲティング広告には数多くのリスクが関係するため、EDPSは、透明性からさらに踏み込む厳格な規則を検討するよう、共同立法者に強く求める」とし、「そのような措置には、広く浸透しているトラッキングに基づくターゲティング広告の禁止に向けた段階的な廃止、ターゲティングに利用できるデータカテゴリーに関する制限、およびターゲティング広告を可能または容易にするために広告主や第三者に開示しうるデータカテゴリーに関する制限が含まれるべきである」と述べている。

これは、欧州議会が昨年の10月、EUの議員に対して段階的禁止の検討を提案した際により厳格な規制を求めたことに続き、大衆の行動監視に基づくターゲティング広告をピンポイントで狙った直近の攻勢となる。

しかし、ここでも、EDPSは実際に同様のことを求めながら、さらにもう少し踏み込んでいる(FacebookのNick Clegg(ニック・クレッグ)氏は苦虫をかみつぶす思いだろう)。

最近、長年アドテックの利権を得てきた一人であり、欧州の大手出版社Axel Springer(アクセル・シュプリンガー)のCEOであるMathias Döpfner(マティアス・デップナー)氏は、米国の主導によるデータマイニング技術プラットフォームが市民を「資本主義的独占のマリオネット」に変えているとの(保護貿易主義的な)非難を公然と行い、地域のプライバシー規則を強化して、プラットフォームで個人データを保存することや商業利益を目的として利用することを一切禁止するようEUの議員に求めている。

同氏は2021年1月、Business Insider(ビジネス・インサイダー)に「自発的な同意を名目にしてデータ保護を弱体化させようとする目論見は、すべて排除されなければならない。データ使用の許可は、そもそも行えるようにすべきではない。機密性の高い個人情報は、市場を支配するプラットフォーム(いわゆるゲートキーパー)や国家が自由に利用できるものではない」と書いている。

Apple(アップル)のCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏も2021年1月、(本来ならば)ブリュッセルで開催される予定だったカンファレンスのバーチャルセッションに登壇し、基幹法令である一般データ保護規則(GDPR)の施行を強化するよう欧州に要請した。

クック氏は演説で、アドテックの「データ企業集団」が、大衆操作で利益を得ようとして偽情報の拡散を促進し、社会の大惨事を引き起こそうとしていると警告した。同氏は、欧米両岸の議員に向けて、「ユーザーの個人情報に対する権利を主張する人に、何が許され何が許されないのか、普遍的かつ人道的な意思を示す」よう強く促した。つまり、アドテックにおけるプライバシー保護の改革を求めているのは、欧州の企業(と機関)だけではないということだ。

Appleは、アプリがiPhone内のデータを簡単に利用できないよう、トラッキングの許可をユーザーから取得しなければならないような仕組みにして、トラッキングをより厳格に制限することを検討している。当然、この動きは、「関連」広告を提供するために大衆監視を利用しているアドテック業界の反発を招いている。

そのため、アドテック業界は、同意のない監視を規制するプラットフォームレベルの動きを阻止するために、「独占禁止法違反」を訴えて競争規制当局を動かす戦術に頼ってきた。この点で注目に値することとして、市場で最も力のあるプラットフォームを仲介するための規則の追加を提案している、DMAに関するEDPSの意見書では、競争、消費者保護、データ保護法の3つは「オンラインプラットフォーム経済の観点では表裏一体の政策分野」であり、「ある分野が別の分野に取って代わったり、ある分野と別の分野が矛盾したりする関係ではなく、お互いに補完し合う関係であるべきだ」と述べ、これら3つの重要なつながりを改めて強調している。

ヴィエビオロフスキ氏はDSAの意見書でレコメンドシステムにも狙いを定めており、各地域のデータ保護規則(設計と初期設定によってプライバシーを保護することが法律で規定されているものと仮定する)を確実に遵守するために、レコメンドシステムは初期設定でプロファイリングに基づかないものとすべきであると述べている。

ここでも同氏は、「透明性とユーザーによる管理をさらに促進する」ことを目的に、欧州委員会の立法案を強化するための追加措置を求めている。

EDPSの主張によると、レコメンドシステムのようなシステムは「大きな影響力」があるため、このような措置がどうしても必要である。

コンテンツレコメンデーションエンジンがインターネットユーザーを憎悪に満ちた過激主義的な視点に誘導するのに一役買っているのではないかという点は、長い間、議論の的となってきた。例えば2017年には、英国の国会議員らがこの話題について数社のテクノロジー企業を厳しく追及した。その議員らの懸念は、ユーザーのエンゲージメントを高めることでプラットフォームの利益を最大化するように設計されたAI駆動ツールには過激化を自動的に促進する危険性があり、そのアルゴリズムが生み出す憎悪に満ちた視点は、のめり込んだ個人を害するだけでなく、疑心暗鬼の目が社会の結束をむしばむことによって市民全員に波及する有害な連鎖反応を引き起こすというものだ。

しかし数年経過した今も、このようなアルゴリズムによるレコメンドシステムがどのように機能しているのかについては、ほとんど情報が得られていない。これらのAIを運用して利益を得ている民間企業が、その仕組みを独占的な企業秘密として保護しているためだ。

欧州委員会のDSA案は、説明責任の妨げとなるこの種の機密性に狙いを定め、透明性確保の義務化を求めている。草案で提案された義務には、プラットフォームへの要件として、ターゲティング広告に使用される「意味のある」基準を提供すること、レコメンドアルゴリズムの「主なパラメータ」を説明すること、ユーザーコントロール(「プロファイリングを拒否する」というオプションを少なくとも1つ含む)を前面に表示することが含まれている。

しかし、EDPSは、個人情報の搾取から個人を保護するため(そして、取得した個人情報を基に人々を操作する産業が生み出す有害な副産物から社会全体を保護するため)、EUの議員がさらに踏み込むことを望んでいる。

コンテンツモデレーションについて、ヴィエビオロフスキ氏の意見書では、これが「法の支配に従って行われるべきである」と強調している。一方、欧州委員会の草案では、法の解釈をプラットフォームに委ねた方がよいとしている。

同氏は、この分野における最近のCJEU(欧州連合司法裁判所)の判決を暗黙の了解のようにして、「地域独自にすでに行われている個人の行動監視を考慮すると、特にオンラインプラットフォームの観点では、『違法コンテンツ』に対抗するために、その検出、識別、対処を行う自動化された手段の使用をいつ合法化するのか、DSAは明確にすべきだ」と書いている。

「プロバイダーが、DSAによって明示的に特定されたシステムリスクに対処するため、そのような手段が厳密に必要であることを示すことができない限り、コンテンツモデレーションを目的としたプロファイリングは禁止されるべきだ」と同氏は付け加えている。

また、EDPSは、非常に大規模なプラットフォームや(DMAによって)「ゲートキーパー」として指定されたプラットフォームに対して最低限の相互運用性要件を提案しており、欧州レベルでの技術標準の開発を促進するようEUの議員らに求めている。

同氏はDMAについても、「関係者の基本的な権利と自由の保護を強化し、現行のデータ保護規則との整合性を保つ」ことを求め、修正案が「GDPRを効果的に補完する」ものとなることを強く要請している。

EDPSの具体的な提言には、ゲートキーパープラットフォームにおける同意の管理方法をユーザーにとってより簡単でアクセスしやすいものとしなければならないことをDMAで明示すること、草案で想定されているデータポータビリティの範囲を明確化すること、集約したユーザーデータへのアクセスを他の企業に提供することをゲートキーパーに要求する条項を書き換えることが含まれており、これも「GDPRとの完全な整合性」を確保することを念頭に置いている。

EDPSの意見書では「効果的な匿名化」の必要性についての問題も提起しており、「ゲートキーパーのオンライン検索エンジンにおいて、有料無料を問わずエンドユーザーが生成した検索に関連するクエリー、クリック、閲覧のデータを共有する際の再識別テスト」を求めている。

停滞を脱するePrivacy改革

ヴィエビオロフスキ氏の提言はやがて始まるプラットフォーム規制を方向付けるものであったが、この提言が行われたのは、欧州連合理事会が既存のePrivacy規則をめぐるEUの改革への交渉姿勢について、予定からかなり遅れてようやく合意に達した日と同じ日だった。

欧州委員会は、この進展を発表するプレスリリースで、電子通信サービスの利用におけるプライバシーと機密性の保護に関する規則の改訂について、加盟各国が交渉権限に関する合意に達したと述べている。

「これらの『ePrivacy』規則の改訂版では、サービスプロバイダーによる電子通信データの処理や、エンドユーザーのデバイスに保存されたデータへのアクセスが許可されるケースを決めることになる」とした上で、「本日の合意により、EU理事会の議長国であるポルトガル(2021年1月現在)は、最終案について欧州議会との協議を開始できるようになる」と続けている。

ePrivacy指令の改革は、利害の対立のために何年にもわたって停滞しており、2018年にはすべての取り組みが無事片付くだろうという(先任の)欧州委員会の期待はすっかり外れてしまった(当初のePrivacy改革案は2017年1月に発表されたが、4年後、欧州連合理事会が主張するところの授権に落ち着いた)。

GDPRが初めて可決されたという事実は、アドテックと電気通信事業の両方の分野で、データに飢えたePrivacyのロビイストたちの利害関係を激化させたように見える(後者は、メッセージングやVoIPのサービスを提供するライバルのインターネット大手が長年利用してきた膨大なユーザーデータの宝庫を狙って、通信データに関する既存の規制障壁を取り除くことに強い関心を持っている)。

ePrivacyを利用してGDPRに組み込まれた消費者保護を無効にしようとする協調的な取り組みが行われており、そうした動きには、機密性の高い個人データの保護を骨抜きにする試みも含まれている。そのため、欧州議会との交渉が始まると、醜い利権闘争の舞台の幕が上がることになる。

メタデータとクッキーの利用許可の規則もePrivacyと密接に結びついているため、この件に関してもさまざまな利権が絡む難題を解決する必要がある。

デジタル権利擁護団体のAccess Now(アクセスナウ)は、ePrivacy改革の経過を要約して、欧州連合理事会が「極めて」的外れだと非難している。

アクセスナウのシニアポリシーアナリストであるEstelle Massé(エステル・マッセ)氏は声明の中で、「この改革はEUでのプライバシー権を強化するもののはずだ。[しかし]、各国がさまざまなケチを付けたため、改正案が穴だらけになってしまった。今日採択された法案は、議会の法案や欧州委員会の以前の見解と比べて見劣りがする。行動監視の手段に関する言及がいくつか追加されている間に、プライバシー保護のための前向きな条文が削除されてしまった」と述べた。

アクセスナウは、サービスプロバイダーがオンラインユーザーのプライバシーを初期設定で保護するための要件を元に戻すことや、クッキー以外のオンライントラッキングに対する明確な規則を確立することを、他の優先ポリシーの中でも特に強く推し進めていくと述べている。

一方、欧州連合理事会は、「追跡しない」という非常に弱体化された(そして、おそらく役に立たない)方策を支持しているように見える。欧州委員会によると、これは、ユーザーが「ブラウザーの設定で1つまたは複数のプロバイダーをホワイトリストに登録し、特定の種類のクッキー」の使用に同意できるようにすべきであると提案するものだ。

欧州連合理事会はプレスリリースで、「ソフトウェアプロバイダーは、ユーザーがブラウザーでホワイトリストを簡単に設定したり、修正したり、いつでも同意を取り消したりできるようにすることが奨励される」と付け加えている。

抵抗勢力が欧州連合理事会内部に潜んでいることは明らかだ。(それに対して欧州議会は以前、ePrivacyのための「法的拘束力があり、強制力のある」追跡禁止メカニズムを明確に承認している。つまり、ここでも衝突が予想される)。

暗号化もまた、ePrivacy論争の種となる可能性が高い。

セキュリティとプライバシーの研究者であるLukasz Olejnik(ルーカス・オレイニク)博士が2017年半ばに述べたように、欧州議会は通信データの機密性を保護する手段としてエンドツーエンドの暗号化を強く支持している。また、加盟各国は強力な暗号化を弱めるような義務をサービスプロバイダーに課すべきではないとも述べている。

ここで注目すべきなのは、欧州連合理事会はエンドツーエンドの暗号化について、少なくとも公的立場のPR版では、あまり多くを語っていないということだ(「原則として、電子通信データは機密扱いとなる。エンドユーザー以外の者によるデータの盗聴、監視、処理などの干渉は、ePrivacy規則で許可されている場合を除いて禁止される」という記載はあるが、まったく安心できない)。

暗号化されたデータへの「合法的な」アクセスを支持する欧州連合理事会レベルでの最近の取り組みを考えると、確かに憂慮すべき不作為にも見える。デジタル権と人権の擁護団体は抗議活動を起こすと予想される。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:プライバシー 広告業界 EU

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

新型コロナに対抗する投資家たち、ルーマニアの投資家へインタビュー(後編)

記録的な資金調達額と3つのユニコーンの出現で、2021年に向けルーマニアの見通しは極めて明るいと地元の投資家たちは考えている。TechCrunchは最近、8人のルーマニアの投資家に話を聞き、同国が技術系人材プール、ブロードバンドアクセス、安い生活費などによって、業界を超えたリモート優先型グローバル企業の時代に向けて着々と準備を整えていることを認識した。

長い実績のあるルーマニアのコンファレンスHow To Webが発表した最新レポートによると、2020年のルーマニアの活況を示す例として、58のスタートアップが合計3039万ユーロ(約38億5700万円)の資金を調達したという事実がある。この数字はまた、投資総額が前年比6%増、投資件数が同51%増という伸びを見せたことを示している。そして、この伸びの原動力となったのは、初めて資金調達を行う企業の急増だった。

主要産業は、サイバーセキュリティ、企業向けソフトウェア、フィンテックなどであり、ある投資家によれば、多くは「該当分野に関する深い専門知識を持つ超マニアックなチーム」だという。また、別の投資会社は、「当社はルーマニア人の創業者たちに注目している」と語る。しかし、近年は海外移住者が急増しているため、「彼らは世界中どこにでも居を構え起業できる」。

後編では、以下の投資家へのインタビューと回答を掲載する(前編はこちらから)。

Dan Mihaescu(ダン・ミハエスキュ)氏、GapMinder Ventures(ギャップマインダー・ベンチャーズ)創業パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

フィンテックのML / オートメーション / AIによって実現されたB2Bプラットフォーム、SaaSエンタープライズソフトウェア、サイバーセキュリティ、ヘルスケアIT、少量コード開発環境、対話型テクノロジー、ロジスティクスオートメーション

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

最新の投資は、2021年1月12日に発表したDruidAI(ドゥルイドエーアイ)ですね。当社が250万ドル(約2億6300万円)のラウンドをリードしました。

2020年のその他のエキサイティングな新規または追加投資案件は、TypingDNA(タイピングディーエヌエー)、Fintech OS(フィンテック・オーエス)、DeepStash(ディープスタッシュ)、Soleadify(ソリーディファイ)、Machinations(マシネーションズ)、Innoship(イノシップ)、Frisbo)(フリスボ)、Cartloop(カートループ)、XVision(エックスビジョン)です。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

  • ステージ:シードまたはシリーズA
  • テクノロジー:MLまたはAIによって支援されたオートメーションまたは会話形テクノロジー
  • チーム:国際的拡大の実績が豊富
  • 製品:国際的拡張可能なB2B(主としてB2Bプラットフォームが対象)

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

中東欧で生まれた米国型B2Cモデルは、最初は小規模なローカル市場に限定されますが、その後極めて活発な環境へと進化していきます。具体例として、ルーマニアの共有型経済企業があります。ユニットエコノミクスは、VC投資家としては単純に魅力に欠けていました。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

70%以上

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

当社が繁栄し続けると考えているモデル:オートメーション / 対話形式テクノロジー(ML / AIを使用)によって実現されたB2Bプラットフォームは、国際化という点でB2Cモデルよりも高い可能性を秘めています。

上記でいくつか言及した高い可能性を持ついくつかの分野。

GapMinderのポートフォリオに含まれるエキサイティングな企業:FintechOS、TypingDNA、DeepStash、DruidAI、Soleadify、Machinations、Innoship、Frisbo、Cartloop、SmartDreamers(スマートドリーマーズ)、XVisionなど

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ルーマニア(ブカレスト、クルージュ、ティミショアラ、ブラショブ、オラデア、ヤシなどの都市)は、チャンスに溢れた市場です。優れたチーム、国際的な視点を持つスタートアップが生まれており、オートメーション向けの優れた環境があり、機械学習対応プロジェクトも動いています。
投資環境エコシステムは、プレシードラウンドからシリーズAまで、成熟度を増していますが、まだ過密状態にはなっていません。

全体として、米国およびルーマニア以外の欧州諸国のシリーズBおよび後期シリーズAの投資家にとって可能性のある環境だと思います。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

ハブには、教育プール、新製品をテストするための潜在的な顧客(B2Bまたは洗練度の高いB2C)、スタートアップの初期段階で重要なプレシードラウンドに参加する可能性のある投資家が集中しています。

より高度なスタートアップの場合は、ハイパーグロースが重要になります。そのために必要な、成長して国際化に対応する能力が、特定のハブの存在によって強化されます。言い換えると、ハブでは投資環境に必要なさまざまな複雑な要素がまとめて提供されています。ですから、ルーマニアでは、ハブの役割が弱まることはないと思います。

欧州や米国では、メインのハブが過密状態になっている、あるいは、チームにとって経費が高すぎる、といった点が議論されることがありますが、フェーズの進んだスタートアップがビジネスを拡大するチャンスを提供しているという意味で、ハブの存在は重要です。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

国内外のユーザーの行動がロボットを必要とする方向へと移行しており、結果として次のようなニーズが高まると思います。

  • 人間のような感覚を持ち(自然言語を含め)会話的なやり取りができるツール
  • リモートの共同作業が可能でコーディング量が少ない開発ツール
  • 一刻も早くデジタルでのやり取りへの移行が求められる企業(小規模から大規模まで)が抱える全般的なニーズ

2020年には多くの消費者と企業が最優先事項に注力せざるを得なかったため、「あったら良い程度の」サービスや製品は二の次になっています。VCは、一部の一見面白そうなまがい物テックはいうまでもなく、ハイテク企業とテック対応企業をより明確に区別するようになりました。この変化によって多くの分野が影響を受けており、この傾向は定着すると思います。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

先ほど説明した当社の戦略は、緊急度を増している企業のデジタル化の動きによって恩恵を受けている企業に注目したものです。2020年の当社のポートフォリオ企業の大半が2~3倍の成長を実現しています。

当社のポートフォリオ企業に対するアドバイスは以下に示すシンプルなものです。

  1. 資金がすべてだ。最低18カ月間のランウェイを確保すること。資金調達の機会があれば、真剣に検討すること。
  2. 顧客は最も重要なパートナー。顧客の声を聴くこと。
  3. チームは最も重要な資産。常に密接な連絡を取り、大胆な決断を行ったときにも面倒を見ること。
  4. すばやく行動すること。

もちろん上記以外にも、各チームと具体的に話し合いました。率直に言えば、2020年末にはあらゆる状況が回復しましたが、2020年前半は、当社ポートフォリオの創業者たちも厳しい状況に置かれました。一部の業界では意思決定の凍結に関して疑念が起こり、国際市場の実現で出張が必要になるときは常にストレスにさらされ、大企業内でもチーム間の連携が必要になりました。振り返ってみると、これは正常な状態だったと思います。厳しい状況でも優れた能力を実証してくれた、こうしたすばらしいチームとスタートアップを支援できることを嬉しく思います。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい。2020年の下半期、とりわけ第4四半期にはすでに回復の兆しを感じていました。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

この6週間で新型コロナウイルスのワクチン接種が本格的に始まったことは、個人、社会、そして純粋にビジネス的な視点からも、間違いないく、非常に重要でポジティブな兆候です。GapMinderのチームは楽観的に構えています。

Alexandru Popescu(アレクサンドル・ポペスキュ)氏、Cleverage Venture Capital(クレバレッジ・インベストメント・キャピタル)マネージングパートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

ヘルステック

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Oncochain

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

チーム、アイデア、トラクション

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

50%

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

Sanopass(サノパス)、Oncochain(オンコチェーン)(この2社は当社ポートフォリオに含まれる)。フィンテック分野、特にFintech OS(フィンテック・オーエス)のTeodeor Blidarus(テオドア・ブリダルス)氏、Sergiu Negut(セルギウ・ネグー)氏。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

極めてダイナミックだが初期段階

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

そうは思いません。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

遠隔医療 – チャンスがある、歯科医療 – 対応に苦慮している

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

新型コロナウイルスによる影響はありません。最大の懸念事項は、チームの成熟度と新しいアイデアを迅速に吸収するマーケットの能力です。投資先には、「ノウハウを見つけてできる限り早く成長するよう努力するように」とアドバイスします。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

明らかな「回復の兆し」が見えます。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

当社投資先の1社の評価額がわずか数カ月後に急騰したこと

Theodor Genoiu(セオドア・ジェノイウ)氏、Roca X(ロケックス)アソシエイト

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

教育テック、エネルギー、ディープテック

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

eコマースマーケットプレイス、一部のサービス領域、モビリティ

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

当社の運用資産の40%をルーマニアに分配することを目指しています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

見通しがポジティブな業界 – エデュテック、メディテック、フィンテック、ロジスティクス
エキサイティングな企業 – Fintech OS(フィンテック・オーエス)、Medicai(メディケイ)、Kinderpedia(キンダーペディア)、iFactor(アイファクター)など
見通しがネガティブな業界 – マーケットプレイス、ディープテック、ゲーミング(人材ではなく資金調達面で)、広告

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

大規模な技術系人材プールはあるものの、真の企業家教育、経験、メンタリティーを必要としている成長中のエコシステムです。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

どちらともいえません。より確立されたエコシステムでは、主要都市以外の場所から創業者が押し寄せてくるかもしれませんし、リモートワークが始まったことがスタートアップにとって大きな追い風になるでしょう。ただし、有能な技術系の人材を雇用するのはますます難しくなるでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社の投資戦略は変わりません。当社のポートフォリオに含まれる創業者たちによくある懸念事項は、新しい創業者パートナーを惹き付けること、一部のターゲット市場で将来を予測できないこと、特定の分野で人材を雇用するのが難しいことです。ケースバイケースですからすべてのスタートアップに対する全般的なアドバイスというものはありません。方針を転換するようアドバイスすることもありますし、大規模な顧客ベースに対してコンバージョン率を上げる努力をするように促すこともあります。あるいは、別の場所で起業するように助言することもあります。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい、そう思います。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

新しいテクノロジーを採用するオープンな姿勢と、教育などのよく知られた保守的な業界で新しい試みが行われていることです。

Matei Dumitrescu(マテイ・ドミトリスク)氏、Impact Capital(インパクト・キャピタル)創業パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

インパクト、ヘルスケア、エネルギー

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Factor(アイファクター)、Ringhel(リンゲル)、Sanopass(サノパス)

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。

はい、インパクトスタートアップを見てみたいと思います。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

インパクト、イノベーション、スケーラビリティ

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

マーケティングコミュニケーション、eコミュニケーション、マーケットプレイス

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

ほぼ100%、グローバルな視野を持つ地元のスタートアップに投資しています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

テック企業とeヘルスケアです。Medicaiとその創業者Mircea Popa(ミルセア・ポパ)氏には大きな可能性があると思います。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ブカレストは好景気でマーケットは拡大しています。VCも成長しており、新しいイニシアチブの数も急増しています。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

そうは思いませんが、リモートワークは可能だと思います。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

当社はe教育とeヘルスケアの分野に投資する機会がありました。ただし、共有型経済は問題に直面していました。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社のスタートアップはすでに敏捷性が高く、リモートワークに対応しており、デジタルチャネルを介してデジタル製品またはサービスを販売していました。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい、そう思います。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

そのような瞬間はありませんでした。

TC:TechCrunchの読者のみなさんに何か伝えたいことはありますか。

当社はインパクト投資を行っています。インパクトは価値をもたらすからです。人々は価値に対して代価を支払っているのです。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュールーマニアヨーロッパ

画像クレジット:frankpeters / Getty Images under a license.

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

新型コロナに対抗する投資家たち、ルーマニアの投資家へインタビュー(前編)

記録的な資金調達額と3つのユニコーンの出現で、2021年に向けルーマニアの見通しは極めて明るいと地元の投資家たちは考えている。TechCrunchは最近、8人のルーマニアの投資家に話を聞き、同国が技術系人材プール、ブロードバンドアクセス、安い生活費などによって、業界を超えたリモート優先型グローバル企業の時代に向けて着々と準備を整えていることを認識した。

長い実績のあるルーマニアのコンファレンスHow To Webが発表した最新レポートによると、2020年のルーマニアの活況を示す例として、58のスタートアップが合計3039万ユーロ(約38億5700万円)の資金を調達したという事実がある。この数字はまた、投資総額が前年比6%増、投資件数が同51%増という伸びを見せたことを示している。そして、この伸びの原動力となったのは、初めて資金調達を行う企業の急増だった。

主要産業は、サイバーセキュリティ、企業向けソフトウェア、フィンテックなどであり、ある投資家によれば、多くは「該当分野に関する深い専門知識を持つ超マニアックなチーム」だという。また、別の投資会社は、「当社はルーマニア人の創業者たちに注目している」と語る。しかし、近年は海外移住者が急増しているため、「彼らは世界中どこにでも居を構え起業できる」。

前編では、以下の投資家へのインタビューと回答を掲載する。

Cristian Negrutiu(クリスチャン・ネグルチウ)氏、Sparking Capital(スパーキング・キャピタル)創業パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

ルーマニアのエコシステムは初期段階にあると考えていますので、当社のファンドは業界を選びません。個人的には、サプライチェーン、モビリティ、不動産テック、循環 / 共有型経済などの業界に興味があります。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

一番最近では、デジタルフィットネス業界のスタートアップに投資しました。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。

サプライチェーン関連のソリューションを提供するスタートアップが増えてほしいと思いますね。この業界はパラダイム・シフトが必要だと確信していますから。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

(1)どの市場が対象か、(2)製品は優れているか、(3)チームは優秀か、(4)当社との相性はどうか、といったことを検討します。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

マーケティング分野とファイナンス分野は参入が難しいと思いますし、競争するには従来とはまったく異なる何かが必要だと思います。製品とサービスに関しては、マーケットプレイスは、競争力をつけるために進化する必要があります。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

当社はルーマニアへの投資に集中しています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ルーマニアのエコシステムはまだ初期段階ですが、急速に成長しています。また、将来の見通しも明るいと思います。当社の投資先も含め、ルーマニアのユニコーン企業が今後増えると確信しています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

先ほどお答えしたとおり、ルーマニアの投資環境はまだ初期段階ですが、チャンスに溢れており、急速に成長しています。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

ルーマニアではそうはならないと思います。エコシステムは、まだブカレスト、クルージュ、ヤシなどの限られた都市とそれらの都市内のハブを基盤としています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

従来のHoReCa(ホテル / レストラン / カフェ)ビジネスと全体のトレンドはさておき、コロナ禍の影響はあまり受けていないと思います。実際、不動産テックなどの特定の業界でデジタル化を促進するスタートアップはすべて、コロナ禍の中で成長しています。

TC:御社の投資戦略は新型コロナウイルス感染症の影響をどの程度受けましたか。

当社はできるかぎり通常どおりに行動し、安定したビジネスフローを維持しようと努めています。創業者には、自社のチームと顧客のケアに注力し、現金の扱いには気をつけるように、とアドバイスしています。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい。先ほどお話ししたとおりです。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

常に前向きに考え、必要以上にパンデミックを恐れないようにしています。パンデミックはいずれ収束します。

Cristian Munteanu(クリスチャン・ムンテアヌ)氏、Early Game Ventures(アーリー・ゲーム・ベンチャーズ)、マネージングパートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

当社の投資対象の地理的範囲が限定されていることを考えると(当社の投資範囲はルーマニア国内のみ)、包括的なアプローチで、多くの業界とトレンドを投資対象として検討する必要があります。一例として、当社は今、広く採用されるようになったテクノロジーを特定分野に適用しているスタートアップに注目しています。たとえばコンピュータビジョンを特定の作物に適用するアグリテックや店舗内の顧客の行動に適用するマーテック、(ウェアラブルデバイスを介して収集した)生体情報を個人ではなくグループの相互作用に適用するアイデア、超軽量ブロックチェーン台帳をインテリジェントビルに適用するアイデア、などです。また、別の投資観点から見た場合、「イノベーションのインフラ」とでもいうべき分野にも注目しています。たとえばAPIを構築するスタートアップなどがこれに該当します。ルーマニアでは、API化がまだ十分に進んでいない状態ですから。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

当社は最近、ソフトウェアライセンスの管理方法を効率化する法人向けのサービスを構築しているスタートアップとの条件規定書に署名しました。このスタートアップは超マニアックな人材と、その分野の深い専門知識を備えており、顧客に多大な価値をもたらしています。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。

ゲーム内決済の簡略化(決済とゲーミングの交差部分に構築)を実現するスタートアップ、灌漑サービス(アグリテック)に取り組むスタートアップ、エネルギー分野のNASDAQを構築するようなスタートアップが登場するのを期待しています。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

優れた能力と勇気の両方を兼ね備えた創業者を探しています。そのような人たちは大きな問題にも敢然と立ち向かい、解決策を見出す可能性を秘めています。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

駐車スペースを探すアプリを構築するスタートアップ、誰も必要としないマーケットプレイス、マーケティング用の市販テクノロジー、CRMとERPなどは、多過ぎて飽和状態ですね。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

当社はルーマニア国内のみに投資しており、地元のエコシステムに100%傾注しています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ルーマニアは自然に恵まれているため、アグリテックには大きなチャンスがあると思います。ただ、この分野はまだ十分なサービスが提供されていません。他にも、サイバーセキュリティ、エンタープライズソフトウェア、フィンテックは本当によく見かけます。当社のポートフォリオに含まれる20のスタートアップの中では、サイバーセキュリティのスキルでマネージドサービスプロバイダーを実現しているCODA、合成培地テクノロジー用のハブを構築するHumans、相互に対話する農業機器を製造するMechine、陳列棚からデータを収集して分析するTokinomo(店舗内マーケティング)、3クリックで誰でも簡単にサーバーをセットアップできる次世代クラウドテックを構築しているBunnyShellなどがあります。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ルーマニアのスタートアップエコシステムはまだ揺籃期であり、国内初のVCファンドがEuropean Investment Fund(欧州投資基金)の支援を受けて3年前に設立されたばかりです。それでも、ルーマニア国内に3社のユニコーンが出現しており、他にも多数の有望なスタートアップがあります。豊富な技術系人材プール、広く普及したブロードバンドアクセス、安いビジネス運営費と生活費などの好条件が揃っているため、ルーマニアは目が話せない市場となっています。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

大都市の創業者たちは大都市に残ると思います。スタートアップを立ち上げて運営するのは、リモートのビーチでラップトップを開いてコードを書くのとはわけが違いますから。製品が市場に適合しているかどうかを懸命に調査する際、創業者は、商談、パートナー訪問、契約書の署名、イベント出席、同業者との会合、調査の実施、プロトタイプの作成など、Zoomでは充分に実行できないことを山ほど実行する必要あります。ルーマニアのテック業界とスタートアップ群は、他国同様、パンデミックで大打撃を受けました。そしてやはり他国同様、生き残り、適応して、2020年3月以前の通常の運営にほぼ戻っています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

残念ながら、都市のモバイルアプリはパンデミックによる制約に苦しんでいます。レストラン、ホテル、従来型イベントに関連するビジネスもすべて大きな影響を受けています。当社はこれらの分野のスタートアップに投資して、パンデミックによる最悪の時期を乗り切れるよう、あらゆる支援を行っています。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

2020年、当社のファンドは、前年比で投資件数は20%減、総投資額で40%減となりました。ですから新型コロナウイルスの影響は甚大です。ですが、ファンドのパフォーマンスで見ると、2020年は良い年だったといえます。当社のポートフォリオの中にも、外部の投資家が参加した新しい投資ラウンドで資金を調達し、評価額の上昇と高い利益率を達成した企業があります。2020年の上半期は被害対策とポートフォリオ企業の支援に終始しましたが、年末に向けて状況の変化が見られ、第4四半期には新しい投資活動も(2019の同四半期を上回るペースで)活発に行われました。VCの支援を受けたスタートアップの場合は、厳しい情勢の中でも資金を調達できる投資家がいるため、必要に応じて支援や追加資金の恩恵を受けることができました。ただし、その他のスタートアップにとっては、はるかに難しい状況だったようです。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

パンデミックが始まったとき最初に気づいたことはおそらく、生産性がピークに達したという事実です。自宅待機が強制された数カ月の間、プロトタイプの制作に取り組んでいた初期段階のスタートアップは作業時間が増え、加速度的に成長しました。人材の定着率も高く、社員は集中して、会社を成功させようという前向きな姿勢と団結する意識があったように思います。実際、スーパーマーケットでTokinomoのロボットが人間の宣伝担当者を置き換えるなど、一部のスタートアップは即座に売上増を記録しました。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

2020年で最も記憶に残っているのは、友人とギリシャの島々をめぐるヨットセーリングを楽しんだことです。あれで充電できて、年末まで仕事をする活力が得られました。そのあとの嬉しい出来事は、12月に、シリーズA投資で当社のファンドのパフォーマンスが向上したことです。

Andrei Pitis(アンドレイ・ピティス)氏、Simple Capital(シンプル・キャピタル)、創業パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

先進的な知的財産を創造している、ルーマニア人や東欧の創業者が起業したスタートアップに投資するとき

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Uniapply.com

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

創業者に強い熱意と当該分野の深い理解があり、革新的な知的財産を用いてグローバルにディスラプト(創造的破壊)を起こそうとしているかどうかを見ます。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

あまりに多くの人達が、これといった差別化要因もなくプラットフォームを立ち上げるのがどれほど難しいことが理解していないように思います。他のデジタルマーケティングプラットフォームを介して顧客を獲得するのは、そうしたプラットフォームを立ち上げるための、商慣行を逸脱した優位性でもないかぎり、大きな費用がかかります。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

当社はルーマニアの創業者を中心に投資していますが、ルーマニアの創業者も今や世界中どこにでも居を構え、そこで起業できます。ですからルーマニア人創業者によって起業された米国拠点の企業にも多数投資しています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ルーマニアは、サイバーセキュリティ、エンタープライズ向けソフトウェア、およびAIベースのエンジンで勝ち残るのに大変良い位置にいると思います。当社のポートフォリオに含まれるpentest-tools.com(ペンテスト・ドットコム)、deepstash.com(ディープスタッシュ・ドットコム)、uniapply.com(ユニアプライ・ドットコム)には本当にワクワクします。また当社のポートフォリオには含まれていませんが、Fintech OS(フィンテック・オーエス)やTypingDNA(タイピングディーエヌエー)にも期待が持てます。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ブカレストは、グローバル展開へのチャンスに恵まれた、繁栄しているエコシステムです。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

実際、ルーマニアの比較的小さな都市出身の創業者が急増しています。当社は、ルーマニア全体でビジネスを展開しているInnovation Labsプレアクセラレータの創業パートナーでもあり、創業者になることに興味を持つ学生がルーマニア全体で増えていることを実感しています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

モビリティソリューションは影響を受けています。地域の企業はLime(ライム)のような大手企業に敗北しています。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

パンデミックのせいで多くの投資が延期されましたが、年末に向けてこれらの投資ラウンドを完了させました。創業者にとって最大の懸念は、スタートアップとして技術系の人材を惹き付ける力が低下していることです。問題は、技術系の人材は今や世界中どこでも仕事が見つかるため、給与が高騰している点です。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい、そう思います。そうした企業の中には、自宅待機で時間的余裕のできた人たちから生まれた需要の恩恵を受けている企業もあります。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

ワクチンが導入され、ルーマニア国内でワクチンの接種が進んだことですね。極めて迅速な対応でもありませんが、どうしようもなく遅い対応でもありませんでした。ワクチン接種の予約用オンラインプラットフォームも稼働しており、皆が使っています。

Bogdan Axinia(ボグダン・アクシニア)氏、eMAG Ventures(eMAGベンチャーズ)マネージングパートナー

通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

パンデミックによって思いがけず伸びた健康分野と福祉分野は、間もなく変革と成長の時期に入ると思います。すぐに使えるソフトウェアとハードウェアの開発が急速に進んでおり、顧客と規制当局のオープン化も並行して進められています。

最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

食品配達サービスです。この分野はまだ黎明期ですが、食品、半調理済み食品、日用品、食料雑貨など、消費者向けサービスとビジネスの成長という点で大きな可能性を秘めています。

特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。

B2CおよびB2B2Cのフィンテック分野は比較的多数のスタートアップが起業していますが、まだ成長の余地があります。

御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

ブカレストとルーマニア国内全般に言えることですが、科学技術分野の人材プールという点で大きな可能性がありますし、地域およびグローバルに展開していく拠点としてすばらしい場所だと思います。

他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

投資先としてはすばらしい都市だと思います。インフラ(インターネットの費用と速度、ハブの数)も整備されており、人材プールも豊富で、投資案件数も過去3年間増え続けています。

パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

大都市以外でも起業は増えると思いますが、他の地域から創業者が押し寄せてくるということはないと思います。それは、エコシステムとしては良いことだと思います。

御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

旅行業界は変化への対応に苦慮すると同時に、新しいスタートアップにとって大きな可能性を秘めています。パンデミックの反動で旅行需要が高まる時期があるでしょうが、そのときは従来とは異なるものが求められるでしょう。同時に出張旅行も従来と同じというわけにはいかなくなり、新しい習慣と行動が生まれることになるでしょう。

新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

成長のチャンスはあると考えていますし、投資案件に割り当てる投資額も増えています。スタートアップ各社には調達額を増やして早く成長するようにアドバイスしています。

この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

世界中でワクチン接種が開始され、結果が出始めていることです。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

フォードが2030年までに欧州向け全車両を電動化

Ford(フォード)は米国時間2月17日、2030年までに欧州市場において電気自動車のみの販売を目指す新戦略を発表した。そのために10億ドル(約1060億円)を投じてドイツのケルンにある工場を改修し、Volkswagen(フォルクスワーゲン)のプラットフォームを使用して電気自動車を生産する予定だ。更新された工場における最初の生産車は、2023年までに出荷される予定となっている。

ヨーロッパフォードのStuart Rowley(スチュアート・ローリー)社長は同日、オンライン記者会見で発表した。

この新しい戦略では、ガソリン車から電気自動車への段階的な移行を目指す。Fordは2024年までに欧州で生産するすべての商用車を電動化するとしている。その2年後には、全ラインナップを電気自動車またはプラグインハイブリッドカーに転換する計画だ。なお同社によれば、2030年以降も欧州ではガソリン車の商用車を販売するとしている。Fordは現在、欧州での販売台数の3分の2を電気自動車が占めると見ている。

Fordの発表は、2035年までに電気自動車を中心に生産するとしたGM(ゼネラルモーターズ)による同様の公約に続くもので、同社は2035年までにほぼEVのみを生産すると述べている。FordもGMも、GMがほとんど撤退した欧州市場では小さなプレイヤーであり、Fordの市場シェアはわずか5%に過ぎない。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Ford電気自動車ヨーロッパ

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(文:Matt Burns、翻訳:塚本直樹 / Twitter

Joompayがヨーロッパ全域で割り勘払いができるアプリをリリース、Transferwiseなどに対抗

VenmoやTransferWiseに似たiOSとAndroidアプリのスタートアップであるJoompayは、ルクセンブルクの電子マネー機関(EMI)の認可を取得してヨーロッパでサービスを開始した。このアプリを使うと誰とでもすぐに無料でお金のやり取りができる。ピア・ツー・ピア決済はRevolut、N26、Monese、Monzoなど競合の多い厳しい市場で、Joompayはここに参入することになる。Joompayを始めたのは、eコマースマーケットプレイスのJoomの創業者たちだ。

ユーザーは相手のメールアドレスか電話番号がわかれば送金できる。あるいは、個人情報を一切明かさないカスタムのペイタグを使うこともできる。共同で支払いをしたり、オンラインで買い物をしたり、別の国にいる人に送金したりするのに使える。ユーザーは専用の決済ページを作って自分のJoompay URLを共有し、顧客から集金したりPayPalのように寄付を受けつけたりすることもできる。

JoompayのCEOで共同創業者のYuri Alekseev(ユーリ・アレクセーエフ)氏は発表の中で「ヨーロッパ全域にわたるものとしては初となる最高クラスのピア・ツー・ピア決済ソリューション体験を提供するアプリを開発しています。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大で現金以外での決済の人気が高まり、我々にとってはさらに発展する絶好のチャンスとなっています」と述べた。

2020年12月にJoompayはVISAカードスキームのプリンシパルメンバーになり、ヨーロッパ全域で新規のJoompayカードを発行できるようになった。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Joompayヨーロッパ

画像クレジット:JoomPay

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

アテネのベンチャーキャピタル集まれ:TechCrunchヨーロッパVC大調査の結果レポートに載ろう

TechCrunchは、ヨーロッパのベンチャーキャピタル投資家を調査する大がかりなプロジェクトを実施する。

本誌のギリシャ、アテネのVC調査では、この国がどんな状態にあり、新型コロナパンデミック下の投資家にどんな変化がもたらされたかを調べる。

本誌はギリシャのスタートアップ発展状況や、テック分野全体が新型コロナウイルス(COVID-19)にどのような影響を受けたか、この先をどう考えているかを知りたいと考えている。

この調査は投資家のみが対象で、VC投資家による出資だけを調べる。1社から2人以上のパートナーが回答するのも歓迎だ。

質問は、簡潔な回答しか必要としていないが、多く書いてくれるほどありがたい。

アンケートにはこちらで回答できる

もちろん、参加してくれた投資家の名前は報告書に掲載され、会社やプロフィールへのリンクも載る予定だ。

我々が知りたいのはどんなことか?質問には以下のような内容が含まれている。最も刺激を受けたトレンドは何か?誰かに作ってほしいスタートアップは何か?見過ごされているチャンスはどこにあるか?次の投資先はどんな分野か?地元のエコシステムはどんな具合か?そして、新型コロナはあなたの投資戦略にどう影響したのか?

この調査は、ファウンダーが適切な投資家を探すのに役立てるために本誌が行っている大規模調査の一環だ。

たとえばロンドンの調査結果はこちら

ギリシャにはいないけれども参加したい人へ。それだも構わない。ヨーロッパVCの投資家は誰でも回答可能で、いずれ本誌があなたの国にも呼びかけることになるだろう。データは将来の分野別の調査でも利用する。

本調査は地中海連合のほぼすべての国を対象としているので、回答フォームで国と都市を見つけて参加してほしい(あくまでもベンチャーキャピタル投資家に限りる)。

ご協力に感謝する。質問があれば mike@techcrunch.com まで。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:ヨーロッパ

画像クレジット:Wikimedia Commons

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

提携銀行3400行、ユーザー数2億5000万人を抱えるまでに成長したスウェーデンのオープンバンキング企業Tinkが約107億円を調達

オープンバンキングプラットフォームは、これまで同じ場所で提供されていなかったサービスをAPIによって連携させたもので、ここ数年で台頭してきたトレンドの1つになっている。そして本日、欧州でこの分野をけん引する企業が、事業拡大のための資金調達ラウンドを完了した。

Tink(ティンク)は、APIで統合させた多くの銀行や金融サービスにユーザーが新しいチャネルを使ってアクセスできるようにする、スウェーデン、ストックホルム発のスタートアップだ。同社はこの度、8500万ユーロ(約107億円)を調達し、資金調達後の評価額は6億8000万ユーロ(約857億円)となった。今回の資金は、欧州での銀行ネットワークと決済サービスの拡大に充てられる予定だ。ティンクはすでに3400の銀行と提携しており、そのユーザー数は約2億5000万人に達している。提携先にはPayPal(ペイパル)、NatWest(ナットウエスト)、ABN AMRO(ABNアムロ)、BNP Paribas(BNPパリバ)、Nordea(ノルデア)、SEBなどがあり、その中には戦略的投資家も含まれている。一方、ティンクには同社のAPIを使用する開発者が約8000人いる。

今回のラウンドは、新たに加わった投資家であるEurazeo Growth(ユーラゼオ・グロース)とDawn Capital(ドーン・キャピタル)が共同でリードして実施された。他にも、PayPal Ventures(ペイパル・ベンチャー)、HMI Capital(HMIキャピタル)、Heartcore(ハートコア)、ABN AMRO Ventures(ABNアムロ・ベンチャー)、Poste Italiane(ポステ・イタリアーネ)、BNPパリバのベンチャー部門Opera Tech Ventures(オペラテック・ベンチャー)が参加している。

2020年1月に9000万ユーロ(約113億円)のラウンドを発表してから1年もたたないうちに行われた今回の資金調達は、言ってみれば、前回のラウンドの延長線上にある。ちなみに前回ラウンド時の同社の評価額は4億1500万ユーロ(約524億円)だった。同社の銀行ネットワークはその後も着実に成長を続け、今年1月の時点で提携銀行数は2500に達していた。同社はこれで累計1億7500万ユーロ(約220億円)を調達したことになる。

世界中がパンデミックに襲われたここ1年の間に、より多くのサービスがオンライン化されクラウドに移行された。そのおかげで、人々も企業も、銀行取引や販売・ショッピングなど対面では行えなくなった活動を今でも続けることができている。サービスのオンライン化やクラウド化は、金融サービスの世界で間違いなく大きな役割を果たしており、銀行や、銀行と競合する企業、その技術パートナーは、柔軟性の高いデジタルチャネルへの需要が急増していることを実感している。

ティンクの共同創設者兼CEOのDaniel Kjellén(ダニエル・ケレン)氏は次のように語る。「2020年は、困難な状況にも関わらずティンクが大きく成長できた1年だった。今年はオープンバンキングによる決済取引が急増した。2021年には特に英国でオープンバンキングが拡大し、欧州全体へと広がっていくと予想している。今回の追加資金調達により、オープンバンキング技術を基盤とした新しいデータ製品を顧客に提供しながら、決済指図サービスの開発を欧州全域でさらに促進していきたい」。

オープンバンキングに資本を投入しようとしているのはティンクだけではない。今週初めに、突然姿を現した別のスタートアップUnit(ユニット)が1860万ドル(約19億円)を調達した。同社は、銀行機能や銀行を、これまで銀行が存在しなかった環境に統合させるという野望を抱いている。その他にもPlaid(プレイド)やRapyd(ラピッド)などの企業が、金融サービスを連携させ、他のプラットフォームやアプリに統合させることに取り組んでいる。

プレイドは現在、53億ドル(約5477億円)でVisa(ビザ)に買収される手続きの最中なのだが、この買収取引が現在、独占禁止法違反の疑いで調査されている。ラピッドは引き続きVCの支援を受けており、前回の評価額は13億ドル(約1344億円)だった。こうしたサービスの普及と成長は、プレイドによって市場が独占されるわけではないことを示す強固な論拠になるかもしれない。しかし1つの決済サービス大手がプレイドを所有すれば、市場の進化の仕方は間違いなく変わるだろう。

ユーラゼオ・グロース代表取締役のZoé Fabian(ゾーエ・ファビアン)氏は次のように述べている。「オープンバンキングの動きは加速し続けており、2021年には、実績があり信頼できるパートナーとともにオンラインサービスを顧客に提供したいフィンテックと大企業とがさらに広く提携するようになるだろう。8年前の創業以来、ティンクは欧州において業界をけん引するオープンバンキングプラットフォームとなってきた。当社の投資は、ティンクとオープンバンキングに対する当社と業界の信頼の証しであり、当社はティンクの取り組みを引き続きサポートすることを楽しみにしている」。

ティンクのビジネスは、既存の銀行サービスへの容易な統合を実現し、統合後に行われる取引から手数料を得られる決済指図テクノロジーをベースとしている。同社によると、現在5つの市場で毎月約100万件の決済取引を処理しているという。

同社は取引高や収益に関する具体的な数字を公表してはいないが、既存顧客の中に、スウェーデンで400万人のユーザーを擁するデジタルメールボックスプロバイダーKivra(キブラ)が含まれていることに言及している。また、今年前半の時点で、500万人以上の顧客を擁する決済フィンテックLydia(リディア)もティンクの顧客に含まれていた。ティンクのサービスは、スウェーデン、英国、フランス、スペイン、ドイツ、イタリア、ポルトガル、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、ベルギー、オーストリア、オランダで提供されており、2021年にはさらに10の市場に拡大する予定だ。

同社は、今回調達した資金で提携ネットワークとフットプリントの拡大に注力すると同時に、無機的成長も積極的に進めている。同社は今年、事業拡大を目的として3社を買収した。このことは、すべての企業が現在の市場で成長するためのスケールや資産を有するわけではないため、今後もさらに統合が進む可能性が高いことを示している。ちなみにティンクが今年、信用リスク商品の拡大を目的として買収したのは、スウェーデンの信用決定ソリューション企業Instantor(インスタントア)、アカウントアグリゲーションプロバイダーEurobits(ユーロビット)、英国のアグレゲーションプラットフォームOpenWrks(オープンワークス)の3社である。

ドーン・キャピタルのジェネラルパートナーであるJosh Bell(ジョシュ・ベル)氏は次のように述べている。「ティンクは欧州を代表するオープンバンキングプラットフォームとして登場し、急速に金融テクノロジーインフラストラクチャの重要な戦略的要素になりつつある。今年は、プラットフォーム全体でオープンバンキングの製品とサービスが数多く採用、導入され、ティンクのネットワーク全体での活動が急激に加速した。我々は、今回の資金調達ラウンドをサポートできたことを嬉しく思っている。来年、ティンクのチームと協力して、すでにかなりの大きさになっている銀行ネットワークの幅と深さを拡張し、口座間の決済指図ソリューションの展開を加速させ、急成長する顧客ベースに卓越した価値を引き続き提供していけることをとても楽しみにしている」。

関連記事:中小企業向けの組み込み融資業者Liberisがさらに97.9億円を負債で調達

カテゴリー:フィンテック
タグ:ヨーロッパ 資金調達

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(翻訳:Dragonfly)

Lydiaはヨーロッパの金融スーパーアプリ構築のためにさらに8600万ドルを調達

フランスのフィンテックスタートアップのLydiaはシリーズBラウンドを延長した。全ての主要な既存株主も参加の元、Accelが延長を主導。Lydiaは2020年1月に最初の4500万ドル(約47億円)を調達したが、この投資はTencentが主導した。今回さらに8600万ドル(約89億円)を調達したことで、LydiaはシリーズBラウンドの一環として合計1億3100万ドル(約140億円)を調達したことになる。

Lydiaはこのラウンドの評価については述べなかったが、共同設立者兼CEOが筆者にヒントをくれた。「当社の企業価値はこの2つのBラウンドの間に著しく増加しました」と彼は語った。

興味深いのは、Amit Jhawar(アミット・ジャワール)氏がこのAccelの投資を進めたことだ。 彼は7月にベンチャーパートナーとしてAccelに入社し、Lydiaの取締役会に加わる予定だ。

ジャワール氏は2011年に決済代行会社のBraintreeにCOO兼CFOとして入社。間もなく、Braintreeはピアツーピア決済アプリのVenmoを買収した。「買収当時のVenmoは僅か15人。2012年にモバイルアプリをリリースしたばかりでした」とジャワール氏は電話インタビューで語った。

後にPayPalがBraintreeとVenmoを買収。ジャワール氏は2020年初頭まで残り、Venmoをアメリカで5200万人が利用する巨大なフィンテックコンシューマー向けアプリへと拡大させた。ジャワール氏はピアツーピア決済は長期的な消費者との関係の始まりだと考えている。

「消費者のアカウントに残高があれば、再度使用してもらえるので、P2Pとしては成功なのはご存知の通りです」と彼は述べた。

2014年頃に初めて本誌でLydiaを取り上げた時、筆者は同社のことをフランスのVenmoと呼んでいた。当時、彼らは60万ユーロ(約7600万円)しか調達していなかった。ジャワール氏はその見解に同意しているようだ。その後、Lydiaは大きく成長し、様々な面でピアツーピア決済を超えて拡大した。

Lydiaを使用すれば数秒で他のユーザーに送金できる。口座番号を銀行アプリに入力する必要はない。送金する側が相手の電話番号を知っていれば、相手は支払いを受け取ることができる。

アカウント内に残高があれば、Visaデビットカードを使用して直接支払うこともできる。Lydiaでバーチャルカードを作り、Apple PayやGoogle Payで利用することも可能であり、プラスチックカードの発行依頼をすることもできる。

LydiaではアプリでIBANを取得することで口座振り込みもサポート。また、マネーポットを作成し、他のユーザーへのリンクの送信、Lydiaで銀行口座の確認、病院や慈善団体への寄付クレジットラインの取得等が可能だ

他の全てを凌駕する目玉機能がある。銀行口座は硬固ではあるが画一的な傾向があり、人々のお金の使い方に対応できていない。「現在、銀行ではメインの口座を当座預金と呼んでいます。それは設計上時代遅れなものになっています」とCEOのCyril Chiche(シリル・チチェ)氏は述べている。

Lydiaは多くの様々な方法で使用できる柔軟なサブアカウントを作成した。第2サブアカウントを作成して、請求書の支払いのためにお金をいくらか取っておくことができる。第3サブアカウントを作成して、一緒に旅行する数人の友人達とシェアすることも可能だ。

アカウントのグリッド上を指でスワイプすることで、口座から口座へと資金を移動することができる。複数のコントリビューターを持つことができ、デビットカードに関連付けられているアカウントを変更できるため、お金の流れがより自然になる。まるで金融アプリではなく、メッセージングアプリを使っているみたいだ。

そして、Lydiaはフランスでは順調に事業を進めている。現在、同社には400万人を超えるユーザーがいる。過去1年間で取引きは倍増し、利用が加速している。

「PayPalを別にすれば、Lydiaにはヨーロッパ最大のP2Pネットワークがあり、モバイルファーストかつ顧客中心のソリューションで、ヨーロッパ全体で成長する可能性があります。これにより消費者金融商品の需要や支払いを受けるための業者の関心が高まるでしょう」とジャワール氏はメールで述べた。

そして、2020年はLydiaにとって忙しい年となった。同社は金融サービス向けのスーパーアプリとして優位に立つために完全に再設計したアプリを発表したばかりだ。全てのインタラクションとメインタブが変更されている。

Lydiaはまた、無料プランよりも上限が高く設定されたプランおよび、最も料金の高いプラン向けの保険パッケージを提供するプランの、2つの新しいプレミアムプランの提供を再開した。これらのプランは現在アプリが提供している内容により合致しており、企業の最終収益に貢献するはずだ。「次のステップはLydiaの収益性を高めることであり、それは当社にとって常に重要な位置を占めてきました」と最近のインタビューでチチェ氏は述べている。

Lydiaは密かに、カードの新しいインフラストラクチャへの移行、アカウントアグリゲーションに対する残高通知機能の追加、単一ユーロ決済圏内での銀行口座への即時振込みなど、多くの主要機能もアップグレードした。

2021年に、同社はさらなる金融商品の新たな基盤を足掛かりにして事業を進めて行く計画だ。「クレジット、貯蓄、投資など、ありとあらゆる商品を試してみるつもりです」とチチェ氏は述べた。

同社はまた、より多くの国々へと緩やかに拡大している。だが、受け入れ率を上げるため、現地のカードとIBANを使用することでその地域に根差していると感じられる商品の提供を望んでいる。Lydiaはそれをポルトガルから始めている。

関連記事:クレジットカード決済のSquareがスペインのP2P決済アプリVerseを買収

カテゴリー:フィンテック
タグ:P2P ヨーロッパ 資金調達

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(翻訳:Dragonfly)

ディズニーが新たな動画配信ブランドStarを国際的に拡大すると発表

開始から1年あまりで既に8600万人以上の加入者を獲得しているオンデマンド・ストリーミング・サービス「Disney+」が、より多くの国際市場に進出する準備を整えた。

米国時間12月10日に開催された年次投資家向け説明会で、このアメリカの大手エンターテイメント企業は、ABC、FX、20世紀スタジオのコンテンツを提供する新しいストリーミングブランド「Star」を発表した。

ヨーロッパ(未訳記事)、カナダ、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなど一部の市場で、Starは2021年2月20日から、Disney+アプリ内の新しいハブとして、顧客に公開される予定だという。同年内にさらに多くの市場に拡大していくということだが、具体的な地域名は明らかにされなかった。

ただしStarは顧客にさらなる金銭的負担を強いることになるだろう。ディズニーによると、Disney+の月額利用料金は、ヨーロッパでは6.99ユーロ(約880円)から8.99ユーロ(約1130円)に引き上げられるとのこと。同社によると、Disney+の加入者がStarにアクセスできる他の市場でも、同様の調整(値上げ)が行われるという。

画像クレジット:Disney

中南米では、Starは独立したストリーミングサービスとして「Star+」というブランド名で提供される。サービスは2021年6月に開始され、一般的なエンターテイメント映画やテレビ番組のほか、サッカーやテニスなどのスポーツ中継も(ESPNのおかげで)見られる予定だ。

今回の発表によると、ディズニーが所有する別のストリーミングサービスで、約3900万人の加入者を集めているHuluに関しては、国際的に展開する意思はないように思われた。

ディズニーはまた、現在インドとインドネシアで提供しているオンデマンド・ストリーミング・サービス(未訳記事)「Disney+ Hotstar」をより多くの市場に拡大する計画があることをほのめかしたが、それらがどの市場であるかは明らかにしなかった。同社によると、Disney+ HotstarはDisney+の加入者数の約30%を占めているというので、ざっと計算すると約2600万人ということになる。同社は先月、9月末時点でDisney+ Hotstarの加入者数は約1800万人と発表していた。

Hotstarは、今年初めにディズニーがインドでサービスをリブランドする以前、数百万人の加入者を抱えていた。このストリーミング・サービスは、Hotstarを運営するStar Indiaの親会社である21世紀フォックスをディズニーが買収したことにより、ディズニーの傘下に入った(Star+とは別の「Star Plus」は、Star Indiaがインドで運営する数十のテレビチャンネルだが、こちらも現在はディズニーの傘下だ)。

ディズニーは、既存の地域特性や業界の提携を利用して国際市場に進出するという同様の戦略を、これまでに他の市場でも採ってきた。例えば、フランスではCanalと、スペインではMoviestarと提携してサービスを提供している。

Disney+ Hotstarの利用料は、インドでは年間20ドル(約2080円)。ディズニーは、9月に終了した四半期に、インドでユーザー1人あたり2.17ドル(約226円)の平均収益を上げたと先月発表している。これに対し米国では、同時期にDisney+の加入者からユーザー1人あたり5.3ドル(約551円)の平均収益を上げている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Disney、動画配信、インド、インドネシア、ヨーロッパ

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(翻訳:TechCrunch Japan)

「Googleに葬られる前に制裁措置を」135の企業や組織がEUの独占禁止法トップに訴える

旅行、宿泊、雇用などの業界でサービスを提供する135のスタートアップとハイテク企業の連合が、Google(グーグル)に対して独占禁止法違反の制裁を課すよう欧州委員会を促す書簡を提出し、制裁を迅速に実施しなければ存続が危ぶまれる企業もでてくると警告した。

同連合はまた、欧州委員会は今すぐ行動を起こす必要があり、そうでなければ、12月初めに草案がまとめられることになっているデジタル規制の順調な改革が台無しになるリスクがあると主張している

この書簡には、Booking.com(ブッキングドットコム)、Expedia(エクスペディア)、Kayak(カヤック)、OpenTable(オープンテーブル)、Tripadvisor(トリップアドバイザー)、Yelp(イェルプ)などの老舗インターネット企業をはじめ、冒頭で挙げた3つの業界のいずれかに属する数多くの(ほとんどの場合)小規模な欧州スタートアップが署名している。

それ以外の30の共同署名者には、メディア・出版などの関連分野、他の分野の業界団体や組織が名を連ねており、合計165の団体が、グーグルに対して迅速に独占禁止法違反の制裁を課すよう求めている。

TechCrunchが問い合わせたところ、欧州委員会の広報担当者はグーグルを批判する連合からの書簡を受け取ったことを認め、「時期が来れば」返答すると述べた。

「実力で勝負していない」

この点は以前から指摘されており、旅行業界ではすでに何年も前から苦情の声が上がっている、と欧州委員会は述べている。企業連合(米国に拠点を置く企業を含む)は拡大しており、グーグルの活動を制限するよう、団結してEU独占禁止法の担当者に圧力をかけている。例えば、TechCrunchは最近、旅行関連スタートアップの苦情について報じたが、雇用関連企業も同様の苦情を訴えるようになっている。

先に書簡を受け取ったReuters(ロイター)によると、この企業連合による訴えは、EU競争当局に対する共同の訴えとしてはこれまでで最大規模であるという。

TechCrunchも同書簡の内容を確認することができた。この企業連合は、グーグルがGoogle Shopping(グーグル・ショッピング)をめぐる2017年のEU競争法の執行決定に違反している、と主張している。この執行決定は、巨大IT企業であるグーグルが自社を優先しライバルを不当にはじき出すことを禁じている。

同連合は、グーグルがインターネット検索における支配的な立場を不当に利用して、同社が事業を展開する分野で市場シェアを獲得していると主張している。具体的には、グーグルが一部の検索結果を上部に表示する機能(「OneBoxes(ワンボックス)」と呼ばれる)について、それがインターネットユーザーに対して同社のサービスを強調し、同時にライバル企業のサービスからユーザーを遠ざけていると指摘する。

欧州委員会は、今後の立法案でこのような自社優先機能を制限することを検討している。この案は「ゲートキーパー」としての主要なインターネットプラットフォームへの適用が考えられており、グーグルはおそらくこれに分類されるだろう。

今のところ、このような事前規制は存在しない。しかし連合は、自分たちの企業にとって手遅れになる前に、欧州委員会はすぐに既存の独占禁止法の権限を行使して、市場におけるグーグルの不正行為を止める必要がある、と主張している。

「ほぼグーグルの独壇場である一般検索サービスに、自社に特化した検索サービスを技術的に統合したことは、明らかに支配的立場の濫用である 」と、彼らはVestager(ベステアー)氏への書簡で主張している。

書簡では次のように述べられている。「これまでのサービスとは異なり、グーグルは他者、つまり我々を犠牲にして、こうした市場での競争に関連するデータやコンテンツを蓄積してきた。グーグルは、市場での地位を実力で戦って獲得したのではない。 それどころか、グループ化された特定の検索結果をさまざまな形式で表示して自社サービスを一般的な検索結果ページ内で優先的に扱うことで、グーグルは不当な利益を得ている、というのが世界的なコンセンサスだ」。

グーグルがライバルを犠牲にして自社のサービスを不当に推し進めていることに関する同様の苦情は、2020年10月に提起された米国司法省の反トラスト法訴訟にも見られる。これは間違いなく、欧州でグーグルへの苦情を申し出た企業がその取り組みを強化するための後押しとなる。

2017年、欧州委員会はグーグルがインターネット検索の支配的企業であると判定した。 このことは、EU法の下では、グーグル・ショッピング訴訟で特定された侵害行為と同種の行為を、その市場シェアに関係なく、他のビジネス分野でも行わない責任があることを意味する。

独占禁止法担当者のMargretheVestager(マルグレーテ・ベステアー)氏は、欧州委員会で競争政策の担当者として在任した1期目(現在は2期目)に大手テック企業と対決したことで高い評価を得たが、現在はEUのデジタル戦略を構想するEVP(エグゼクティブバイスプレジデント)としての役割も兼ねている

しかし、彼女の監視下で、グーグルはグーグル・ショッピング検索(2017年)、Android(アンドロイド)モバイルOS(2018年)、AdSense(アドセンス)検索広告仲介事業(2019年)をめぐる独占禁止法の執行に直面してきている一方、独占禁止法違反を申し立てた側は、巨大IT企業グーグルの支配を取り除き、特定の市場や他の場所に競争を回復する上で、規制措置は何の役割も果たしていないと述べている。

企業連合は2020年11月12日付の書簡の中で、「2017年6月27日の欧州委員会のグーグル検索(ショッピング)判決は、グーグルが同社の支配的一般検索サービスの検索結果ページ内で自社サービスを売り込むことは許されないという先例を示した(と思われていた)。しかし、現時点では、この判決はグーグルが重要な何かを変えることにはつながっていない」と主張している。

欧州委員会は、同グーグルショッピング判決により、競合他社がグーグルに掲載した商品の「ショッピング」タブでの表示率が大幅に増加した(73.5%増)と主張し、「ショッピング」タブでクリックされたグーグルの商品とライバル企業の商品の割合はほぼ同等であることも指摘している。ただし、グーグルがショッピング検索での(一部の)市場シェア喪失を、他の分野(旅行や雇用など)のシェアを拡大することで補っているのであれば、バランスのとれた効果的な独占禁止法上の改善措置とはならない。

また、興味深いことに、今回の書簡にはFoundem(ファウンデム)のCEO、つまりグーグル・ショッピング訴訟におけるショッピング比較エンジンの不服申立人の署名も含まれている。

欧州委員会の広報担当者は本日発表した声明の中で、「我々は、規制措置の有効性を評価する観点から、引き続き慎重に市場を監視していく」と語り、「グーグル・ショッピングは、同社が提供する専門検索サービスの1つにすぎない。 2017年6月に下した判決により、グーグルの求人やローカル検索など、他の専門検索サービスについても検討できるフレームワークが整っており、これに関する予備調査はまだ進行中だ」と続けた。

欧州委員会が今後予定している「デジタルサービス法」と「デジタル市場法」の一括政策について、企業連合は、グーグルによる不正行為を抑制するための措置が現在十分に取られていないことが原因で、これらの今後の規制によって不正行為を是正することが不可能になるおそれがあると示唆している。

「懸案の競争調査において、欧州委員会がグーグルの現在の行為を『公平な扱い』として受け入れる場合、これは、今後の自己優先に対する法的禁止措置の意味を事前に定義するリスク、故にその価値を下げるリスクを生む。競争抑制的な拡大の進行を防ぐために必要な対策が今すぐに講じられないというだけで、競争とイノベーションは阻害され続けるだろう」と企業連合は警鐘を鳴らす。

さらに彼らは、立法化があまりに遅すぎて独占禁止法の是正措置として役に立たないと主張している。その間、他の企業は、グーグルの存在によって生き残れなくなるリスクを抱えたままビジネスを続けることになる。

「デジタルゲートキーパーに的を絞った規制は長期的には有効かもしれないが、欧州委員会はまず、既存の手立てを使ってグーグル・ショッピングの判例を強化し、グーグルの一般的な検索結果ページ内での平等な扱いを確保すべきだ」と彼らは主張し、「支配的一般検索エンジン」を規制するための欧州委員会のプランはおおむね歓迎するが、スピードが最も重要であることを強調したい、と付け加えた。

企業連合は次のように続ける。「我々は、グーグルによって排除されるという差し迫ったリスクに直面している。 我々の多くは、このような規制が実際に施行されるまで耐えられるだけの強みやリソースを持っていないかもしれない。今こそ行動が求められている。何らかの有意義な規制が発効するまで、グーグルが自社の専門検索サービスの競争抑制的な優遇を続けることが許されるならば、我々のサービスは取引量やデータ、そして実力による革新の機会が不足し続けることになるだろう。規制が発効するまで、我々のビジネスは、グーグルの競合サービスに利益を提供しながら、長期的には自社のサービスを陳腐化させるという悪循環に陥り続ける」。

グループのビジネス手法に対する批判への対応を求められたグーグルの広報担当者は、次のような声明を出している。 「ユーザーがグーグルに期待しているのは、最適で高品質な、信頼できる検索結果を提供することであり、特定の企業や商業上のライバルを他の企業よりも優先したり、ヨーロッパの人々にとってより多くの選択肢と競争を生み出す有用な新サービスの提供をやめたりすることは期待していません」。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Google 独占禁止法 ヨーロッパ

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(翻訳:Dragonfly)

ヨーロッパが暗号化のバックドアを必要としている?

11月初頭にリリースされたプレスレポートによると、テロを気がかりにしているヨーロッパの議員らがエンドツーエンド暗号化の禁止を急いでいるという。実際はこれよりももう少し違ったニュアンスが含まれているので、実状を書いた我々の分析を読んでいただきたい。

ヨーロッパは、E2E暗号化を禁止するのだろうか?

答えは、ノーだ。

昨日のオーストリアプレスの同国における最近のテロ攻撃に関する見出しでは、エンドツーエンド暗号化の禁止を提案しているようにも見受けられた。実際、暗号化を規制するかどうか、そしてその方法といった暗号化の議題に関しては数年前から加盟国間で議論されている。

レポートは欧州連合理事会(CoEU)の11月6日の決議草案に基づいており、草案によると導入のためにさらなる修正が加えられた最終書類が11月19日に理事会に提出される見込みだ。

CoEUの意思決定機関は、加盟国政府の代表者で構成されており、議員連合の政治的方向性を決定する責任を有している。しかし、立法案を作成するのは欧州委員会であり、これは「EU法案ではない」ことは確かだ。

サイバーセキュリティ戦略に関与している委員会の内部関係者の1人は、この決議を内容がまったくない「政治的ジェスチャー」だと表現している。

CoEUの決議草案の内容とは?

この草案は「強力な暗号化の開発、実装そして使用」に対するEUの完全なサポートを主張することから始まっている。E2EEの禁止も意図しているのであれば、これは非常に理解が難しい主張だ。

次に、重要な市民のインフラストラクチャーを保護するために使用されているのと同じ技術に、犯罪者が簡単にアクセスできるという事実が生み出す公安への「課題」が書かれている。犯罪者がE2EEを使用すれば、彼らの通信に「合法的」にアクセスすることは「非常に困難」または「実質的に不可能」になると伝えている。

当然これはセキュリティ界では珍しくない議論で、ファイブアイズによるより優れた監視力の強化によって定期的に焚きつけられており、通信技術の発達により技術業界に関連して繰り返し議論されている。ただし、CoEUは、暗号化されたデータへのアクセスが実際に不可能であるとは一言も言っていない。

その代わりに決議は、正当な法の手続きとEUの権利そして自由(特に私生活を尊重する権利、および通信、個人データの保護に対する権利)を完全に尊重する一方で、有能な安全保障および刑事司法当局の権限を維持できるようにする方法についての議論に移っている。

本文書は、競合する利益の間で「より良い」均衡を作る必要があると示唆しており、「暗号化を介したセキュリティと暗号化の意に反したセキュリティの原理は完全に守らなければならない」としている。

「政府、業界、リサーチそして学界が戦略的にこの均衡を協力して作り出す」と言うのが具体的な決断だ。

決議草案では、暗号化をバックドアにする必要性を呼びかけているのか?

こちらも答えは、ノーだ。

閣僚評議会は、「監督当局は、サイバーセキュリティを維持しながら、合法的かつ的を絞った方法でデータにアクセスでき、基本的な権利とデータ保護管理を完全に尊重しなければならない。暗号化されたデータにアクセスする技術的なソリューションは、合法性、透明性、必要性および均整性に準拠する必要がある」と具体的に記載している。

つまり「安全保証の強化」を実施していることをアピールするための全体的な政治的動きを超えて、的を絞ったアクセスの改善とともに、そういった的を絞ったデータへのアクセスが、通信のプライバシーなどの基本的な権利を保証するEUの主要原則を尊重することが求められている。

だが、これはE2EEの禁止やバックドアにはならない。

決議案は法的枠組みに関して何と言っているのか?

閣僚評議会は、委員会が既存する関連規制の見直しを適切に行い、すべてが同じ方向に向かっていることを確認し、法執行機関が可能な限り効率的に運営できるようにすることを期待している。

この時点で「潜在的な技術的ソリューション」の言及があるが、強調するポイントは、EU法に準拠する国内の枠組み内での捜査権の使用をサポートする法執行の支援だ。また、さらに「基本的な権利の保護と、暗号化のメリットの維持」を強調している。情報セキュリティは文書で前述されている暗号化の重要なメリットであるため、文字通り詳しく説明せずにセキュリティを維持するよう要求する必要がある。

草案文書のこの部分には、取り消し線がいくつか引いてあるので、文章の変更が行われる可能性が非常に高い。しかし、進行方向の合図として、「ソリューション」の開発に関する通信サービスプロバイダーと共同で作業する場合においては透明性の必要性が強調されている(誰もが言うバックドアは、明らかにバックドアではない)。

草案のもう1つの提案は、関連当局の技術的専門知識や運用上の専門知識を向上させるためのスキルアップ、つまり警察に対するサイバートレーニングを求めている。

最後のセクションでは、CoEUは、EU全体で関連する調整と専門知識を向上するための共同作業は、当局の調査能力を強化するためのキーとなると再び強調している。

また、「新しい技術を視野にいれた革新的アプローチ」の開発に関する議論もあるが、結論では「暗号化されたデータへのアクセスを提供するための規定された技術的ソリューションはあるべきではない」と明確に述べている。つまり、黄金の鍵やただ一つのバックドアはないと言うことだ。

では、心配の必要はないのだろうか?

委員会は、新しいサイバー戦略に取り組んでおり、特定の政策案を政治的に推進する可能性があるため、この問題に圧力を感じる場合があるだろう。しかしおそらく来年までに大きな動きを見せることはないだろう。CoEUはまだ方針を固めておらず、せいぜい何かを策定するための支援を求めるくらいだ。

TechCrunchは、ヨーロッパを拠点とする独立したサイバーセキュリティ研究者兼コンサルタントであるLukasz Olejnik(ルーカス・オレイニク)博士に、決議草案についての考えを聞いた。同氏は、草案にはE2EEに対する反対意見はなく、またそこから法案が流れるという短期的な見通しもないことに同意している。実際、同氏はCoEUは何をすべきか分かっていないようだと述べ、学術界および業界外部の専門家に助けを求めているのではないかと言う。

「第一に、バックドアに関する議論はありません。このメッセージは、暗号化がサイバーセキュリティとプライバシー両方にとって重要であることを明確に示しています」とオレイニク博士は語る。「この文書の議題に関しては、現時点では長期的なプロセスの模索的段階にあり、問題とアイデアが特定された段階です。すぐに何かが起こるということはないでしょう」。

「E2EEの禁止に関してはいまだ具体性はなく、明確に何をすべきか把握していない状態だと言えます。よっておそらく、『高い知識を持つ専門家グループ』を配置するアイデアくらいはあると思います。この文書では、学界の関与について言及していますが、このプロセスは、政策プロセスで使用される場合と使用されない場合がある『推奨事項』を特定するために委員会によってイニシアチブがとられる場合があります。その後、誰がそのグループに参加するかを中心に発展しますが、これはケースによって大きく異なります」。

「例えば、AIグループは、非常に合理的だとみなされてきましたが、偽情報に関する他の専門グループは、実際、研究者や具体的な専門知識ではなく、EUのメディア関係者を対象としていました。これらがどこにつながるかはわかりません」と続けた。

オレイニク博士は、複雑性を考えるとこの場合評議会が独自に立法案を推し進めることができるかどうか疑問を感じるという。同氏はまた「法律制定について話をするのは早すぎます。EUにおける法律制定プロセスは、理解するには非常に複雑です。EU理事会はこのような複雑な事態を自分たちで解決することはできません」と語る。

しかし彼は、CoEUが「暗号化の意に反したセキュリティ」という言葉を作ったことは注目に値する発展だと強調しており、この新しい構想ポリシーの観点からどこにつながるのかが不明確であることを示唆している。よってこれまでと同様、暗号化に関するセキュリティの議論には注意が必要だ。

「特に重要だと思うのは、『暗号化の意に反したセキュリティ』という単語を作ったことです。これは不吉かつ独創的です。しかし、この技術的なポリシー用語での問題は、現在暗号化によって保護されているように、(物理的?)セキュリティを理解するポリシーと技術的なポリシーを意識的にブレンドさせる場合があるということです。これにより、2つは直接的に対峙することになります。副産物がどこにつながるのかは誰にも分かりません。このプロセスは終息にはかなり遠いと思っています」と同氏。

しかし、EU全体に何らかの「合法的傍受メカニズム」を導入する力はなかったのだろうか?

すべてのメカニズムを尊重する必要があるEUの法的原則と権利を考慮すると、そのようなステップには大きな課題があったと考えられる。

CoEUの決議草案はこれを何度も繰り返しており、例えば、通信のプライバシーや合法的原則、透明性、必要性そして均整性などの基本的権利を尊重するセキュリティ活動が必要であると強調されている。

EU加盟国の国内の監視法も、最近になってこの点に関してヨーロッパの最高裁判所で不十分であることが明らかとなった。そのため、裁判所でのセキュリティの行き過ぎに関して異議を申し立てることへの道が明確となった。

つまり、ある種の傍受メカニズムがEU立法プロセスで断行される可能性があるとした場合、十分な政治的意思をもって推進されたとしても激しい法的課題に直面し、裁判所が選ばない可能性があることは間違いない。

セキュリティとプライバシーの「より良い」均衡を模索するという決議草案で提唱された概念についての見解と、それが近年「 例外的なアクセスメカニズム(批評家らはユーザーの信頼を損ない、バックドアとほぼ同等の包括的なセキュリティリスクが発生すると主張)」としてGCHQによって提唱された「ゴーストプロトコル」のようなものを推進するのではないかという考えについて尋ねたところ、オレイニク博士は「現代の技術によりセキュリティはより強力になっているため、暗号化の弱体化は難しい領域であると言えます。最新のセキュリティエコシステムでは、電気通信インフラストラクチャーからの合法的な傍受はまず想像できません。民間企業にとっては信頼の問題でもあります。個々のユーザーはオンラインで今後も自由に社会的活動をし続けることができるのか?これは、答えを導き出すのに数十億ドルはかかる質問です」と述べた。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:ヨーロッパ プライバシー

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(翻訳:Dragonfly)

欧州でeコマースプラットフォームに対し新型コロナ詐欺対応でデータ共有を促す動き

欧州の議員は、消費者を標的にコロナウイルス詐欺を働く不正な業者と戦うためのツールとして、より多くのデータを互いに共有するよう主要なeコマースおよびメディアプラットフォームに圧力をかけている。

パンデミックが西側に広がった後、インターネットプラットフォームはよくわからない、または疑わしい品質の防護具(未訳記事)や疑わしいコロナウイルス関連のオファーの広告で溢れかえっていた。一部の企業がそのような広告を禁止したにもかかわらずだ。

懸念されるのは、消費者がだまされていることだけではない。喧伝されているようなウイルスへの曝露に対する保護効果がない製品を購入した場合や、本当は効かない偽コロナウイルス「治療薬」が販売された場合に生じる実際の危害のリスクだ。

米国時間11月6日の声明の中で、EUの司法委員であるDidier Reynders(ディディエ・レンデルス)氏は「以前の経験から、詐欺師らはパンデミックを欧州の消費者をだますチャンスとみています。また、主要なオンラインプラットフォームと連携することは、消費者を違法行為から保護するために不可欠であることもわかっています。私は本日、プラットフォームが力を合わせ、相互の情報交換に参加し、対応をさらに強化することを奨励しました。現在欧州を襲っている第2波の間、私たちはさらに迅速に動く必要があります」と述べている。

委員会によるとレンデルス氏は11月6日、Amazon(アマゾン)、Alibaba / AliExpress、eBay、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト) / BingRakuten、(TechCrunchの親会社である)Verizon Media / Yahooを含む11のオンラインプラットフォームとパンデミックに関連する新しいトレンドと事業慣行について話し合った。新型コロナ詐欺の新たな波に立ち向かうために、ハイテク企業にもっと多くの対策に取り組むよう促した。

EU加盟国の消費者保護当局は2020年3月、この問題に関して共通の立場をとった。それ以来、委員会と消費者保護施策の執行者の汎EUネットワークは、新型コロナウイルス詐欺によってもたらされる脅威へ協調して対応するべく、11のプラットフォームと定期的に連絡をとっている。

委員会はこの行動が、プラットフォームによる「数億件」の違法なオファーや広告の削除についての報告につながったと主張している。また委員会によると、詳細なデータは開示しなかったものの、プラットフォームが新型コロナ関連広告の(委員会の表現では)「着実な減少」を確認した。

欧州ではeコマースプラットフォームでの販売に関する規制が厳しくなりつつある。

EUの議員は2020年12月、既存の電子商取引規制の改定を提案する一連の法律を発表する。違法なコンテンツや危険な製品などの法的責任の拡大を目指す。

EUのデジタルポリシーを率いる委員会のEVPを務めるMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベスタエアー)氏は先週のスピーチ(未訳記事)で、デジタルサービス法(DSA)は違法なコンテンツや危険な製品に関してプラットフォームの責任を重くすることを求めると述べた。その中には、違法なコンテンツに関する報告手続きやコンテンツに関連する苦情処理の統一が含まれている。

同じく12月に発表される2番目の包括法案であるデジタル市場法は、市場で支配的な地位を保持すると考えられるプラットフォーム傘下のサービスに追加の規制を導入する。これには、デジタル市場での競争を促進するために、ライバルによるデータを利用を可能にするという要件が含まれる可能性がある。

欧州議会の議員らはまた、「know your business customer(顧客確認の原則)」をデジタルサービス法に含めるよう求めている(未訳記事)。

委員会はまた、新型コロナ関連の偽情報を取り締まるため、6月(未訳記事)に新型コロナウイルスの「インフォデミック」と表現した内容についてソーシャルメディアプラットフォームに公開するよう求めた。

委員会は11月6日、新型コロナの偽情報と戦うため、フェイスブック、グーグル、マイクロソフト、Twitter(ツイッター)、TikTokが2020年9月にとった措置について最新情報を提供し、3回目となるモニタリングレポートを公開した。域内市場のコミッショナーであるThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏は、その分野でもさらに多くのことを行う必要があると述べた。

「パンデミックに関連する偽情報のウイルス的な拡散は、市民の健康と安全を危険にさらしています。偽情報と効果的に戦うために、今後数週間でオンラインプラットフォームとより強力に協働することが必要です」と同氏は声明で述べた。

プラットフォームは偽情報に関するEUの(法的拘束力のない)行動規範(未訳記事)に署名している。

違法なヘイトスピーチなどのコンテンツへの取り組みに関してプラットフォームを規制する法的拘束力のある透明性ルールは、DSAパッケージの一部に組み込まれているようにみえる(未訳記事)。だが、公衆衛生危機に関する偽情報などの「有害なコンテンツ」のようなあいまいな問題に対する取り組みが、今後どう展開するかはまだ分からない。

偽情報問題に対処する欧州民主主義行動計画(European Democracy Action Plan)も年末までに予定されている。

11月6日の委員会の最新のモニタリングレポートにある発言の中で、価値・透明性担当VPであるVera Jourová(ベラ・ヨウロバー)氏は次のように述べている。「プラットフォームは透明性を高め説明責任を果たすために取り組みを強化しなければなりません。我々はプラットフォームが正しく行動するためにより良いフレームワークを必要としています」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:eコマース新型コロナウイルスEU

画像クレジット:Aytug Can Sencar/Anadolu Agency / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

「ブラックボックス」化したアルゴリズムの透明化を強制するEUの規制法案にビッグテックが直面

大手インターネット・プラットフォームは、欧州立法府が来月提出予定の法案が通れば、規制当局の監視下でそのアルゴリズムの開示が要請されることになる。

欧州委員会上級副委員長Margrethe Vestager(マルグレーテ・ベスタエアー)氏が10月30日に行ったスピーチ(欧州委員会報告)で、間もなく発表されるデジタルパッケージ法案の重要な柱はアルゴリズムの説明責任だと示唆した。これには、「おすすめ」システムの仕組みの解説と、ユーザーにより多くの権限を与えることをプラットフォームに求める規制案も含まれる。

「私たちが準備を進めている規制案は、あらゆるデジタルサービスに規制当局と協力する義務を課すものです。大手プラットフォームは、規制当局の要請があれば、そのアルゴリズムの仕組みに関する詳しい情報を提出しなければなりません」

Facebook(フェイスブック)などのソーシャルメディア・プラットフォームは、規制当局の要請を受けるより早く広告アーカイブを立ち上げたが、その情報の構成方法について、さらに独立系の研究者のアクセス権またはアクセスできない点(未訳記事)について、第三者の研究者からは苦情が絶えない。

また、広告ターゲティングに関するユーザーのための情報も、拡大を要求する計画がある。これには、コンテンツのモデレーションにおける判断基準を説明する報告義務の強化も伴うと、ベスタエアー氏は言う。さらに同氏は、デジタルサービス法案とデジタルマーケティング法案がどのような形になるか、その概要を先週の初め(未訳記事)に示している。

欧州はビッグテックによるサービスの押しつけと第三者のデータの利用を制限へ(未訳)

欧州立法府は、弱い立場の個人やグループへの差別や偏った虐待的なターゲティングなどのリスクを冒しつつ、彼らがどのようにデータ処理を行い、情報を分類しランク付けしているのか、という疑問から生じた、「ブラックボック」化したアルゴリズムの個人と社会に与える破壊的な影響への懸念に対処しようとしている。

委員会は現在、ビッグテックを対象とした強制力のある透明化ルールを整備しているという。ビッグテックがそのプラットフォームで増幅し収益化しているコンテンツに、もっと大きな責任を持たせることを目指している。その要求と効果的な執行方法は、どちらも慎重な細部の詰めを誤ると台無しになる恐れがあるが、原案作りの期間は1カ月ほどしかない。

「12月に提出予定のデジタルサービス法案の大きな目標のひとつは、これらのプラットフォームがアルゴリズムの仕組みを確実に透明化し、さらに彼らの意志決定に対する説明責任を強めて、民主主義を守ることです」とベスタエアー氏は、30日、非営利研究支援団体主催のイベントに登壇し述べた。

「私たちが取り組んでいる提案は、つまりは、おすすめシステムが表示するコンテンツをどのようにして決めているかをプラットフォームは私たちに明らかにせよということです。そうすることで、彼らが私たちにもたらす、またはもたさない未来の展望を、より簡単に判断できるようになります」

この法案の下では、もっとも強力なインターネット・プラットフォーム(欧州議会は「ゲートキーパー」と呼んでいる)は、「彼らが使用するコンテンツのモデレーション手段、およびそれらの手段の精度と結果」に関して定期的に報告するようになるとベスタエアー氏は言い加えた。

また、広告ターゲティングに関しては、より具体的な情報開示要求も行われる。Facebookなどのプラットフォームがすでに(「特定の広告が表示される理由」などを通じて)提示している今の曖昧な情報公開よりも高度なものだ。

「より高度な情報」が提供されなければならないと彼女は言う。「誰がその広告を出したか、なぜ自分がターゲットになったのか」をプラットフォームからユーザーに伝えるなどだ。全体の目標は、そうしたプラットフォームのユーザーが、「誰が私たちに影響を与えようとしているのかに関する高度な情報と、アルゴリズムが私たちを差別したときに広告を停止できる高度な手段」を確実に得られるようにすることにある。

10月30日、AlgorithmWatch(アルゴリズミックウォッチ)主導により46の市民社会団体の連合は、提出予定の法案に織り込まれる透明化要請を確実に「意味あるもの」(AlgorithmWatch勧告書)にするよう欧州委員会に促し、プラットフォームに説明責任を果たさせるのに必要な手段を監視団体に提供し、ジャーナリスト、学者、市民社会が「権力に対抗し監視できる」ようにする「総合的なデータアクセスの枠組み」を要求した。

同連合の勧告は、支配的な立場のプラットフォームの技術的機能に基づく法的拘束力のある情報開示義務、「データへのアクセスを可能にし、透明化義務を課す明確な法的命令」が出せる単独のEU機関の設置、EUのデータ保護規制に準拠したデータ収集のための規定を要求している。

データマイニングを続ける巨大なプラットフォームと、彼らにトラッキングされプロファイリングされターゲットされる個人の力を均衡させるためのバンランス調整の方法には、この他に、ユーザーが望むときにアルゴリズムによるフィードを完全に遮断できる手段の要求を含ませることも考えられる。データ駆動による区別や操作の可能性から自分自身を切り離すというものだ。しかし、今回提出予定の法案で、EU立法府がそこまで踏み込むかどうかは、まだわからない。

ただひとつ、この件に関してベスタエアー氏は、法案は「ユーザーにもっと大きな力を与え、私たちが何を見るか、何を見ないかの決定権をアルゴリズムに渡さない」ものになると示唆している。

さらにプラットフォームは、ユーザーに「私たちに代わっておすすめシステムが行う選択に影響を与える能力」も与えるという。

それに続き彼女は、コンテンツのモデレーションと削除に関して、デジタルサービスに求められる報告の内容はさらに細かくなると断言した。いつコンテンツを削除したかをユーザーに知らせ、「削除に関する異議申立ができる実効性のある権利」を与えなければならないという。巨大デジタル企業のためのルールブックの再起動には、EU全土からの広い支持があるものの、その一方では、アップロードフィルターを適用したり、論争を呼ぶコンテンツを正当な理由もなく削除することで規制のリスクは小さくできるとプラットフォームに促すような形で、規制当局がインターネットの言論の自由を侵害すべきではないという根強い意見もある。

この法案には、EU加盟国、欧州委員会、欧州議会で選出された代表の支持が必要になる。

欧州議会は、すでに広告ターゲティングのルールの厳格化を投票で決めている。欧州議会議員はまた、アップロードフィルターと、いかなる形においても有害なまたは不法なコンテンツの事前管理を拒否するよう欧州委員会に求めている。コンテンツが合法か不法かの最終判断は、個別の裁判で決めることとしている。

同時に欧州委員会は、人工知能を使ったアプリケーションに的を絞ったルール作りにも取り組んでいる。だがその法案は、来年にならなければ提出されない。

ベスタエアー氏は、2021年初頭に、「信頼のAIエコシステム」の構築を目指して提出される予定だと明言していた。

欧州はデータ再利用の促進と「ハイリスク」なAIの規制を提案(未訳)

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:金井哲夫)

EUで国境を越えた新型コロナ接触追跡アプリの相互運用開始、ドイツ、イタリア、アイルランドのアプリが対象

欧州連合(EU)は、先月、2020年9月に行われたシステムの試験運用を経て、Bluetooth近接通信機能を利用してスマートフォンユーザーの接触リスクを計算する新型コロナウイルス接触追跡アプリの国境を越えた相互運用を最初のグループで開始した。

各国のアプリのうちバックエンドがゲートウェイサービスを通じてつながるのは、ドイツの「Corona-Warn-App」、アイルランドの「COVID tracker」、イタリアの「Immuni」だ。

この意味するところは、アプリのユーザーが他の国に旅行するとき、追加でソフトウェアをダウンロードしなくても、旅行しなかった場合と同じように自国のアプリから接触通知が送られてくるということだ。

合計すると、上記3カ国の新型コロナアプリは約3000万人がダウンロードしており、EUによるとそれはEU内のダウンロードの3分の2に相当する。

画像クレジット:EU Publications Office

他国のアプリも今後数週間でサービスに参加し、相互運用性を得ると予想される。その段階で互換性をもつ国内アプリが少なくとも18個増える。

各国アプリの次のグループは、試験期間を経て来週参加する。チェコの「eRouška」、デンマークの「Smitte|stop」、ラトビアの「Apturi COVID」、スペインの「Radar Covid」だ(ただし「Radar Covid」はまだスペインを完全に網羅していない。カタルーニャ地域は地域の医療システムと統合されていない)。11月には互換性のあるアプリがさらに追加される予定だ(欧州委員会リリース)。

ゲートウェイは現状、分散型アーキテクチャー(基本設計)を備えた公式の新型コロナアプリで動作するように設計されている。つまり、フランスの「StopCovid」アプリなど、集中型アーキテクチャーを使用するアプリは今のところ互換性がない。

一方、英国のアプリ(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド向け)は、技術的に互換性のあるアプリアーキテクチャーを備えているが、プラグインされる可能性は低い。英国は2020年末に貿易圏から外れるからだ(したがって相互運用するには英国・EU間の合意が別途必要になる)。

「EU加盟国の約3分の2が互換性のある追跡・警告アプリを開発しています。接続の準備が整えば、ゲートウェイはすべての加盟国に開かれています。接続は10~11月にかけて徐々に行われますが、各国当局の希望でもっと後の段階でアプリを接続することもできます。『オンボーディングプロトコル』が開発されており、そこに必要な手順が示されています」と欧州委員会はQ&Aで述べている。

EUのアプリのための国境を越えたシステムは、ゲートウェイサーバーを使用することにより機能する。T-SystemsとSAPによって開発・設定されており、ルクセンブルクにある欧州委員会のデータセンターで運用される。このデータセンターが、各国のアプリ間で任意の識別子の受け渡しを行う。

「アプリによって生成された任意のキー以外の情報をゲートウェイが処理することはありません」とEUはプレスリリースで述べている。「情報は匿名化され、暗号化され、最小限に抑えられ、感染を追跡するために必要な期間のみ保存されます。個人を特定したり、デバイスの場所や動きを追跡したりすることはできません」。

欧州の広い地域でパンデミックの第2波(The Guardian記事)を迎える中、各国の新型コロナアプリのパッチワーク全体で国境を越えたシステムを非常に迅速に稼働させるに至ったことはEUにとっての成果だ。もちろん、Bluetoothベースの接触通知が、新型コロナの感染拡大との戦いにおいて有用なのかについてはなお疑問があるにもかかわらずだ。

しかし、EUの委員会は10月19日、そうしたアプリが人間による接触追跡など他の手段を補完するのに役立つ可能性があると示唆した。

EUの健康・食品安全担当のStella Kyriakides(ステラ・キリヤキデス)委員は声明で次のように述べた。「新型コロナの追跡・警告アプリは、テストの強化や人間による接触追跡などの他の手段を効果的に補完できます。感染者数が再び増加している中、感染経路を遮断する上でアプリが重要な役割を果たすことができます。国境を越えて機能すれば、アプリはさらに強力なツールになります。本日稼働を開始するゲートウェイシステムは我々の仕事の重要なステップです。お互いを守るためにアプリの利用を呼びかけたいと思います」。

「移動の自由は単一市場の不可欠な部分です。ゲートウェイは人命救助に役立ちながらこれを促進していきます」と内部市場のコミッショナーであるThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏は付け加えた。

関連記事:欧州が国境を越えた新型コロナ陽性者接触アラートアプリの相互運用性テストを開始

カテゴリー:ヘルステック
タグ:EU新型コロナウイルス

画像クレジット:dowell / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

欧州が国境を越えた新型コロナ陽性者接触アラートアプリの相互運用性テストを開始

欧州委員会は、各国の新型コロナウイルス陽性者接触通知アプリを、国境を越えて相互運用させるために必要なバックエンドインフラのテストを開始ことを明らかにした。

具体的には、チェコ、デンマーク、ドイツ、アイルランド、イタリア、ラトビアの公式アプリのバックエンドサーバーと、新たに設立されたゲートウェイサーバーとの間のテストランを開始した。なおゲートウェイサーバーは、T-SystemsとSAPが開発・構築中で、ルクセンブルグにある欧州委員会のデータセンターで運用される予定(欧州委員会プレスリリース)だ。

このサービスは10月に稼働を開始する予定で、互換性のあるアプリを開発して国民に配布してるEU加盟国は、リストアップされた国のそれぞれの国に旅行する際に、アプリの追跡機能を他国でも利用できるようになる。

相互運用性のガイドラインは、5月に各国の新型コロナウイルスの追跡アプリについて合意したもの(未訳記事)だ。欧州委員会によると、ゲートウェイサービスは最低限のデータのみを交換するという。同委員会は「交換される情報は、匿名化・暗号化され、感染を追跡するために必要な期間だけ保存されます。個人を特定することはできません」と付け加えている。

現時点でゲートウェイサービスと互換性があるのは、分散型の新型コロナウイルス追跡アプリのみだ。また、欧州委員会は、異なるアーキテクチャを持つ追跡アプリに相互運用性を拡張する方法を見つけるために、いくつかの加盟国で行われている作業を支援していると述べているが、それがプライバシーへのリスクなしにどの程度実行可能なものになるかはいまのところ明らかではない。

各国の新型コロナウイルス追跡アプリの相互運用の主な利点は、EU圏の居住者が複数の追跡アプリをインストールする必要がないことだ。ただし、互換性のあるアーキテクチャのアプリを配布している別の国に旅行する場合に限られる。

アプリのアーキテクチャが異なることに加え、EU加盟国の中にはまだ国内アプリ開発・配布していない国もある。つまり当面の間、国境を越えた追跡には限界があり、国外旅行に関連する新型コロナウイルスの感染経路を完全には追跡できないという課題は残る。

画像クレジット:Joao Paulo Burini / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

TikTokのユーザーデータ取り扱いについてフランスの監視当局が調査開始

TikTokに新たな心配のタネができた。TechCrunchは、欧州の監視当局が今流行のソーシャルアプリの調査を開始したことを確認した。欧州の監視当局は2019年にGoogle(グーグル)に対して5700万ドル(約61億円)の罰金を課すなど、これまでテック大企業に最大の打撃を与えている。

フランスのデータ保護監督当局であるCNILの広報担当はTechCrunchに対して、ビデオの削除依頼に関連する苦情を受け、TikTokが2020年5月にユーザーデータをどのように扱ったのか調査を開始したと述べた。ビデオ共有プラットフォームTikTokの調査は最初にPolitico(ポリティコ)が報じた。

EUのデータ保護フレームワーク下では、データ処理に同意した市民は引き続き情報のコピーや削除を依頼したり、ポータブルなフォームでデータを求めることもできるなど、様々な権利を有する。

EUのGDPR(General Data Protection Regulation、一般データ保護規則)での追加の必須要件として、フレームワークに対応する責任を明確にする透明性の確保が義務づけられている。つまり、データを扱う企業はデータ処理の目的について情報を明らかにするなどデータ主体を示す必要があることを意味する。

ここにはデータ処理にかかる法的に有効な同意を得ることも含まれる。

CNILの広報担当は、苦情をきっかけに始まったTikTokの調査は、ユーザーのデータアクセス権利、EU外へのユーザーデータの転送、未成年のデータが十分に保護されることを確かなものにするために同プラットフォームが取っている措置など、ユーザーデータをいかに処理しているのか透明性が求められる要件に関するさまざまな問題へと広がったと述べた。未成年のデータに関しては、TikTokがティーンエイジャーに人気であることを考えれば重要な問題だ。

フランスのデータ保護法では、15才以上にTikTokのようなソーシャルサービスに自らのデータの処理について同意させている(15才以下は親の同意となる)。

元々の苦情に関してCNILの広報担当は、苦情を申し立てた人物が「GDPRに基づいてTikTokに対し権利を行使するよう招待された。人物は以前にそうした権利を行使したことはない」と説明した(Google Translate経由)。

TechCrunchはCNILの調査についてTikTokにコメントを求めている。

疑問もある。フランスの監視当局がTikTok調査に関して結論をみることができるのかどうか、はっきりしない。

CNILの広報担当は電子メールで、TikTokがアイルランドのData Protection Commission(DPC、データ保護委員会)を欧州における主要当局と選定することを模索していると説明した(関連:先週TikTokは欧州に初のデータセンターを設置する計画を発表したが、設置場所はアイルランドだ。このデータセンターがゆくゆくは全EUユーザーのデータを保管する)。

もしTikTokが法的条件を満たせば、GDPRの調査をDPCに移すことができるかもしれない。複雑なクロスボーダーGDPR案件を調べるのは、恐ろしく時間がかかることで知られている。

「(TikTokの)調査は最終的にアイルランドの保護当局が責任を負うことになるかもしれない。他の欧州のデータ保護当局の協力を得ながらこのケースに対応する必要があるだろう」と広報担当は述べた。そしてクリアすべき立証基準があることも強調した。

「アイルランド当局単独の管轄になるために、TikTokはアイルランド拠点がGDPRでの解釈内で『主要な拠点』の状態であることを証明しなければならない」。

欧州のGDPRフレームワークでは、各国のデータ保護当局は企業にグローバル年間売上高の最大4%の罰金を課すことができ、また侵害的なデータ処理の停止を命じることもできる。しかしそうするにはまず調査して、決定を下すプロセスを経る必要がある。複数の国の監視当局が関心を寄せるクロスボーダー案件の場合は、決定に関して意見の一致を確かめるために他の国当局と連絡をとる必要がある。

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

グーグルのFitbit買収はユーザーの健康データを広告に使用しないことへの同意でEUから承認される

Google(グーグル)は、2019年11月にFitbitを21億ドル(約2250億円)で買収するプランを発表した。しかしこの記事を書いている時点では、買収は完了していない。大企業が大企業を買うときは、規制当局の審査も厳しくなるからだ。この種の契約ではEUの規制当局がハードルになることが多いが、今回も同じことがいえるのかもしれない。

ロイターは「近い筋の話」として、グーグルが何らかの譲歩をしなかった場合、同社はEUの独占禁止法違反調査という形の精査に直面する可能性があるとしている。懸念の核心は健康のプライバシーだ。Fitbitなどのウェアラブル企業は、ユーザーの健康に関する情報を大量に収集する。

グーグルは、データと広告に途方もなく投資を行っている企業だ。この買収に批判的な人たちは、Fitbitを買収することで同社はまた新たな鉱脈のようなデータを提供することになると示唆している。そのため今回の買収は、グーグルが広告の販売に健康に関するデータを利用しないという約束にかかっている。

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規定は、買収が最初に発表された際にグーグルが交わした約束に沿ったものだ。同社のハードウェア部門のトップであるRick Osterloh(リック・オスターロー)氏は「プライバシーとセキュリティが最優先される。弊社の製品を使用するユーザーは、自分の情報の安全についてグーグルを信用している。私たちはそれがとても大きな責任であることを理解しており、ユーザーの情報を保護し、ユーザーデータのコントロールをユーザーをコントロールし、ユーザーデータに透明性確保するよう努める」と約束している。

今週の報道に対してグーグルは、この買収が競争を激しいものにすると指摘している。Fitbitのシェアはかなり大きいが、同社がスマートウォッで出遅れたためにApple(アップル)やXiaomi、Huaweiなどがこのカテゴリーを支配している。グーグルは2019年1月にFossilからスマートウォッチの技術を大量に手に入れたが、Wear OSによるグーグルの市場参入努力の成果はほとんど上がっていない。

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広報担当者は、潜在的な規制への懸念を払拭しようと「弊社はあらゆる機会に、Fitbitの健康とウェルネスのデータをグーグルの広告に利用しないというコミットメントを明らかにしてきたし、データの選択権とコントロールをユーザーに提供する責任も明示してきた」という。

EUの規制当局は7月20日に取引を決定する予定であり、グーグルは7月13日までに譲歩を提示しなければならないと報じられている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa