酵素ベースの独自技術でプラスチック汚染の終結を目指す豪Samsara Eco

世界中で使用されるプラスチックの量は、2040年までに倍増すると予想されている。そのほとんどが廃棄される際には埋立地に送られ、リサイクルされるのはわずか13%に過ぎない。CIEL(国際環境法センター)によると、プラスチックの生産と焼却は、2050年まで毎年2.8ギガトンの二酸化炭素を発生させる可能性があるという。

世界的なプラスチック汚染をなくすために、オーストラリアの環境技術スタートアップ企業であるSamsara Eco(サムサラ・エコ)は、プラスチック(ポリマー)を分解して、その分子構成要素(モノマー)に分解する酵素ベースの技術を開発した。この技術を活用すれば、再び(何度も)新品のプラスチックに作り直したり、より価値のある商品にアップサイクルすることが可能になるとSamsara Ecoの創業者でCEOのPaul Riley(ポール・ライリー)氏は語る。

Samsaraの技術によって、プラスチックはもはや化石燃料や植物(どちらも環境に大きな影響を与える)から作られる必要はなくなり、埋立地や海に行き着くこともなくなると、ライリー氏はいう。

「この研究の動機となったのは、環境、特に炭素排出とプラスチック廃棄物に関する懸念と、我々の酵素工学に対する愛着です。これを製造技術に適用することで、地球規模の問題を解決し、システムを変え、真の循環経済を生み出すことができます」と、ライリー氏はインタビューで語っている。

今回、600万ドル(約7億3000万円)の資金を調達したSamsaraは、2022年末に最初のリサイクル工場を建設し、2023年に本格的な生産を開始する予定だ。

同社の投資家には、Clean Energy Finance Corporation(クリーン・エナジー・ファイナンス・コーポレーション)や、シドニーに拠点を置くスーパーマーケット大手Woolworths(ウールワース)のベンチャーキャピタルファンドで以前から出資していたW23、そしてMain Sequence(メイン・シーケンス)が含まれる。

「このプロセスでプラスチック1トンをリサイクルするごとに、推定3トンの二酸化炭素排出量が削減されることになります」と、ライリー氏は語っている。

酵素を使ってプラスチックを分解する企業は他にも世界中にあるが、Samsaraは異なるプロセスと酵素を使っていると主張する。ライリー氏の説明によると、他のほとんどの酵素プロセスは12時間以上かかるのに対し、同社は1時間でプラスチックの完全な解重合を行うことができるという。

「現在のリサイクルの方法は、単純に非効率的で、私たちが現在直面しているプラスチック汚染の危機に対応するには不十分です」と、ライリー氏は声明で述べている。「新しいプラスチックを作るために化石燃料を採掘したり、実際にリサイクルされるのは9%だけという現在のリサイクル方法に頼るのではなく、私たちはすでに存在するプラスチックを、無限にリサイクルすることができるのです」。

他の代替リサイクルソリューションとは異なり、Samsaraのプロセスは室温で行われ、真にカーボンニュートラルで、持続可能な方法で運用されていると、ライリー氏は同社の声明で述べている。

ライリー氏がTechCrunchに語ったところによると、Samsaraはさらなる資金調達も視野に入れており、年間2万トンの廃棄プラスチックをリサイクルする最初の商業規模の生産を行うために、2022年後半にはオーストラリアや海外の投資家から約5000万ドル(約6億1000万円)の資金を調達することを目指しているという。

Samsaraの潜在的な顧客は、小売業者、FMCG(Fast-Moving Consumer、日用消費財)ブランド、リサイクル業者など、基本的にプラスチックに関わるすべての人であると、ライリー氏は述べている。

同社はWoolworthsグループと提携しており、Samsaraが最初にリサイクルする5000トンの再生プラスチックを、Woolworthsは自社ブランド商品のパッケージに使用すると約束し、2022年末までにその在庫を確保することを目指している。さらにSamsaraは、Tennis Australia(テニス・オーストラリア)とも提携し、全豪オープンで使用されたペットボトル5000本をリサイクルすることになっている。

2021年に設立されたこのスタートアップ企業は、科学者やエンジニア、そしてキャンベラにあるオーストラリア国立大学の研究者を中心に、13人のチームで構成されている。

「私たちの長期的なビジョンは、当社の技術力を拡張して、ポリエステルやナイロンでできた衣服のような他の石油由来のプラスチック製品を無限にリサイクルし、二度と化石燃料を使用して新しいプラスチックを作らないようにすることです」とライリー氏は語る。

画像クレジット:Samsara Eco

原文へ

(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォードとボルボがカリフォルニア州でEV用バッテリーの無償リサイクルプログラムに参加

Tesla(テスラ)の元CTOであるJB Straubel(J・B・ストラウベル)氏が創業したスタートアップRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)は、カリフォルニア州で電気自動車のバッテリーリサイクルプログラムを開始する。Ford(フォード)とVolvo(ボルボ)が設立パートナーとなる。EVの材料調達に圧力が高まっていることが背景にある。

基本的な計画は、Redwood Materialsがカリフォルニアのディーラーや解体業者と協力し、ハイブリッド車や電気自動車の使用済みバッテリーパックを回収するというものだ。ストラウベル氏によると、このプログラムはバッテリーを持ち込む側にとっては無料だ。バッテリーを回収し、適切に梱包して、ネバダ州北部にあるRedwood Materialsのリサイクル施設に輸送する費用は、パートナー企業であるVolvoとFordとともに、Redwood Materialsが負担する。同社は、車種に関係なく、カリフォルニア州内のすべてのリチウムイオン電池とニッケル水素電池を受け入れる予定だ。

「今は混乱していて、人々にとってすばらしい、つまり明白で明確な解決策がないのです」とストラウベル氏はいう。「これは、私たちが変えたいことの本当に重要な部分です。最初はアメリカの誰もが、そしてゆくゆくは世界の誰もが、非常に簡単にバッテリーをリサイクルし、材料がかなり高い割合で回収されるようにしたいのです」。

同社は、スクラップ回収業者やディーラーがバッテリーの回収を組織化するために利用できるポータルを立ち上げた

このパイロットプログラムはまだ初期段階にあり、いくつかの部分は明確に定義されていない。

「強調したいのは、私たちはこのすべてにおいて学習中であり、これはちょっとした西部劇だということです」とストラウベル氏は話す。「少し複雑であることが、これまで実現しなかった理由の一部かもしれないと考えています」。

Redwood Materialsは、循環型サプライチェーンの構築を目指し、2017年に創業した。同社は、携帯電話のバッテリーやノートパソコン、電動工具、パワーバンク、スクーター、電動自転車などの家電製品だけでなく、バッテリーセル製造時に出るスクラップもリサイクルしている。そして、これらの廃棄物を加工し、通常は採掘されるコバルト、ニッケル、リチウムなどの材料を抽出し、それらを再びパナソニックやAmazon(アマゾン)、Ford、テネシー州のAESC Envisionなどの顧客に供給している。

目的は、クローズドループシステムを構築することで、最終的に電池のコストを削減し、採掘の必要性を相殺することにある。

現在市販されている電気自動車には、リチウムイオン電池が搭載されている。電池には2つの電極がある。一方がアノード(負極)で、もう一方がカソード(正極)だ。真ん中に電解液があり、充放電の際に電極間でイオンを移動させる運び屋として働く。アノードは通常、黒鉛でコーティングされた銅箔でできている。

自動車メーカーが電気自動車の生産を拡大し、やがて内燃機関を搭載した自動車やトラックに取って代わるようになると、電池とその材料の需要が急増すると見込まれる。自動車の電動化に取り組む主要自動車メーカーのほぼすべてが、バッテリーセルメーカーやその他のサプライヤーと提携を結び、サプライチェーンの強化に努めている。

2022年初め、既存のパートナーであるパナソニックは、Redwood Materialsとの関係拡大の一環として、Teslaとともに運営するギガファクトリーで製造するバッテリーセルに、2022年末までにリサイクル材をもっと使うと発表した。

Redwood Materialsは、バッテリーセルのアノード側の重要な構成要素であるリサイクル材から製造された銅箔のパナソニックへの供給を始める。Redwood Materialsは2022年前半に銅箔の生産を開始する。銅箔はパナソニックに送られ、年末までにセルの生産に使用される予定だ。

画像クレジット:Screenshot/Redwood Materials

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

米Novoloop、プラスチック廃棄物から高価値の化学製品を生み出すリサイクル方法を開発

ポリエチレン(私たちがよく知っている一般的なプラスチック)を「バージン」プラスチック(石油化学から直接作られたプラスチックのこと)に対抗できる高価値のプラスチックにアップサイクリングすることは、極めて困難な問題だ。それが非常に難しかったため、何十億トンものプラスチックがリサイクルされず、地球や海を汚染している。しかし、米国に拠点を置く新しいスタートアップ企業のNovoloop(ノヴォループ)は、その答えを出したと主張する。

同社の創業者であるJeanny Yao(ジェニー・ヤオ)氏とMiranda Wang(ミランダ・ワン)氏の2人の女性科学者は、5年以上にわたってこの問題に取り組んできた。

米国時間2月15日、Novoloopは1100万ドル(約12億7000万円)のシリーズA資金を調達したことを発表。このラウンドはEnvisioning Partners(エンヴィジョニング・パートナーズ)が主導し、Valo Ventures(ヴァロ・ベンチャーズ)とBemis Associates(ビーマス・アソシエイツ)に加え、SOSV、Mistletoe(ミスルトー)、TIME Ventures(タイム・ベンチャーズ)を含む以前の投資家も参加した。Novoloopは、高機能アウターウェアに見られるシームテープなど、アパレル向けボンディングソリューションを製造しているBemis Associatesと新たに提携を結んだことも発表した。

Novoloopは、プラスチック廃棄物を高性能の化学製品や材料に変えることを目指しており、ATOD(Accelerated Thermal Oxidative Decomposition、熱酸化分解促進)と呼ばれる独自のプロセス技術を開発した。ATODは、ポリエチレン(現在最も広く使用されているプラスチック)を、高価値の製品に合成可能な化学的構成要素に分解するという。

その最初の製品は靴、アパレル、スポーツ用品、自動車、電子機器などに使用される熱可塑性ポリウレタン(TPU)のOistreになる。この製品のカーボンフットプリントは、従来のTPUに比べて最大で46%も小さいと、Novoloopは主張している。

Novoloopの共同設立者でCEOを務めるミランダ・ワン氏は、声明の中で次のように述べている。「プラスチックがすぐにはなくなることはないでしょう。そのため、生産されるものと再利用されるものとの間のギャップを埋めるためのイノベーションが必要です。何年もかけて技術開発を行ってきた私たちは、この必要性の高い技術を商業化するために、すばらしい投資家やパートナーから支援を得られたことを発表でき、大変うれしく思います」。

「我々が今回の投資ラウンドを主導することになったのは、Novoloopがプロダクトマーケットフィットを見つけたからです」と、Envisioning PartnersのパートナーであるJune Cha(ジューン・チャ)氏は述べている。「Novoloopは、Oistreが初期段階でも市場で幅広い用途に使えることを証明しました」。

ワン氏は電話で筆者に次のように語った。「ポリエチレンプラスチックは、包装材として最も一般的に使用されているものですが、化学的に変化させたり、分解して有用なものに変えることが非常に困難です。私たちは、このポリエチレンを酸化させるために、根本的に新しい化学的アプローチを採用することで、これを解決しました」。

「他の誰もが、廃プラスチックであるポリエチレンを化石燃料の原料にしています。しかし、私たちのアプローチは、直接ポリエチレンの廃棄物を採取し、ワンステップで変換するというものです。(中略)ですから、石油やガスに戻す場合に発生する多くのステップや化学反応を根本的に回避することができます」と、ワン氏は語る。

Novoloopの競合企業には、BASF(ビーエーエスエフ)、Covestro(コベストロ)、Lubrizol(ルーブリゾール)、Huntsman(ハンツマン)などがある。これらは化石燃料からバージン材のTPUを製造している企業だ。現在、TPUの約99%はバージン材である。言い換えれば、これは崩壊の準備を整えた巨大な産業なのだ。

画像クレジット:Novoloop / Novoloop founders

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

手持ちのモノを売り支払いに充てられる決済プラットフォームTwigが約40.3億円調達、「グリーン」を謳うがそのサステナビリティにはほころびが見える

Z世代と若いミレニアル世代の消費者をターゲットとし、電子マネーアカウントで衣類や電子機器を売って即座に換金できるロンドン本拠のフィンテックTwig(トゥイグ)が3500万ドル(約40億3000万円)のシリーズAラウンドをクローズした。

今回のラウンドを率いたのは、フィンテック投資専門のFasanara Capital(ファサナラキャピタル)で、Twigによると、LVMH、Valentino(バレンチーノ)、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の現幹部や旧幹部など、他にも数多くの匿名の戦略投資家たちが参加したという。

Twigは2020年創業の新興スタートアップで2021年7月に英国でサービスを開始したばかりだが、英国内で急速に成長しており(Twigのアプリのダウンロード回数は月間10万回を超えており、iOSのApp Storeでファイナンス関連アプリの第6位にランキングされた)、すでに海外進出に向けて準備を開始している。

Twigは、シリーズAで獲得した資金で、米国(2022年第1四半期)およびEU(第2四半期。まずはイタリア、フランス、ドイツを予定)に進出すると目されている。また、Web3とデジタル収集品の流行に注目して製品の機能拡張も予定している。

現時点では、Twigのアカウントは英国内でのみ使用できる。創業者兼CEOのGeri Cupi(ゲリー・クピ)氏によると、現段階で約25万人のユーザーを確保しているという。

同氏によると、典型的なユーザーは大学を卒業したばかりの22歳の働く女性だ。こうした女性は、おそらくワードローブに着れなくなった衣類が山のようにあり、いつでも売りたいと考えているからだ。

Twigでは、他の金融機関のアカウントに送金すると1ユーロの手数料を請求されるが、Twigアカウント同士の送金では手数料はかからないため、口コミで広がり成長したことが初期段階での急成長を加速させたようだ。

また「your bank of things(モノの銀行)」というマーケティングスローガンを掲げているものの、Twigは実際には銀行ではないことも指摘しておく必要がある。Twigのアカウントは「電子マネーアカウント」だ。このため適用される規制に関して銀行とは大きな違いがある(例えばTwigのアカウントは英国の預金保証制度の対象にはならない)。

正式な銀行ではないため、Twigは新市場でいち早く成長することができる。銀行業務ライセンスを取得する必要がある場合に比べて、提供サービスに適用される規制が軽減されるからだ。クピ氏によると、現時点では性急に正式な銀行になるつもりはないという。

数十年前、インターネットおよびオープンバンキングを背景とするフィンテックブームなど存在しない時代の昔ながらの銀行は、バッグ、文房具、音楽などの無料のおまけをつけることで学校を出たばかりの新社会人に営業して口座を作ってもらっていた。最近のフィンテックスタートアップは、最も魅力的な機能セットを競って提供することで若い年齢層の顧客を捕まえようとしている。

ただし、お金を口座に入れてもらうことが依然として主たる目的であることは間違いない。

とは言え、TwigはB Corp認証を取得申請中だ。B Corp認証は社会的目的と環境への配慮、透明性、説明責任を重視していると認められる企業に与えられる。クピ氏によると、同社は、申請の最終段階にあり、現時点では保留状態だが、第一四半期には完全な認証を受けられる見込みであるといい、ユーザーにブランド品を捨てる代わりに売るよう勧めることでサステナビリティと経済循環性を実現していることを強くPRしている。

Twigのウェブサイトでも、環境への影響を抑えるためにカーボンオフセットの取り組みを行っており、その他のイニシアチブにも参加していることが掲載されている。

要するに、人類が気候災害を回避するには、世界レベルでのCO2排出量、つまりは全体的な消費の削減が必要となる。そこで疑問視されるのが「サステナビリティ」を再販売というコンセプトに無理矢理結びつける主張の信憑性だ。再販売には、すぐに査定してもらって現金が手に入るため、逆に消費量が増すリスクがあるからだ。

現在所有しているモノを売って現金が手に入るなら、一度購入したアイテムを手放さずに長く使う場合に比べて、消費者はお金をどんどん使って新しいモノを買うよう仕向けられる可能性がある。別の言い方をすれば、消費を削減してCO2排出量を削減するつもりなら、循環経済とモノの寿命をセットで考える必要があるということだ。再販売に必要な面倒な手続きが削減されることで消費者がモノを買わなくなるかどうかはわからない。逆にもっとモノを買うようになる可能性もある。

これがTwigの謳うサステナビリティにほころびが見える点の1つだ。

この難題をクピ氏にぶつけたところ、同氏は次のような議論(いくらか循環論法的ではあるが)を展開して巧妙に解決して見せた。「中古品の流動性を高めるというTwigの目的はサステナビリティの向上と消費量削減の推進を実現します。というのは、より多くの中古品が買えるようになるからです。その結果新しいモノに対する需要が減り、より多くのアイテムがこの(より活発な)中古品経済を介して循環するようになる。

「基本的に、当社のビジネスは、消費者が自分が持っている古いアイテムをお金に変えられるようにすることで、その古いアイテムに新しい命を与えるというものです。これによって、少なくとも中古市場の供給が増大します」と同氏はいう。「中古市場の需要はずっと増え続けています。当社が中古市場の供給側だけでやっていけるのは、現在、中古市場には供給の追加を求める大きなニーズがあるからです。消費者が手持ちの中古品を売ってお金を得たとしても、そのお金で別のモノを購入するとは限りません」。

「これは当社のユーザーの行動からわかることですが、Twigに送られてくる資金のうち約42%は新しい経験、つまり旅行や経験主導の活動に使われています。ですから、流動性が向上したからといって、必ずしもモノの消費が増大して環境に悪影響を与えるとは限りません。それがこれまでのユーザーの行動から分かっていることです」。

クピ氏はTwigのビジネスを非常にシンプルな次の宣伝文句に集約させている。「当社は資産をトークン化します」。

「Twigでは、例えばGucci Marmont(グッチ・マーモント)のハンドバッグをプラットフォーム上にアップロードします。そして、アップロードされた資産をトークン化して、その価格を提示します」と同氏は説明する。

「当社の目標はこの仕組を外部でも使えるようにすることです。そこで役に立つのが、ブロックチェーンです。当社は資産の流動性を向上させて、消費者が物理的なモノを売って仮想的なモノを入手し、その仮想的なモノを使って物理的なモノや体験を購入するという行為を簡単に行えるようにします」。

「基本的に、ユーザーが簡単に取引できるようにすることが目的です」。

クピ氏にはブロックチェーンと循環経済に関するバックグラウンドがある。例えば、2018年には、デニムのアップサイクルビジネスをLevi’s Albania(リーバイス・アルバニア)に売却している

Twigのホワイトペーパーによると、よく売れる物理的なモノとしては、Nike(ナイキ)、Gucci(グッチ)Chanel(シャネル)、Hermes(エルメス)、その他の高級品メーカーのブランド品などがあるという。このペーパーには「所有の未来の再定義」と「 循環型ライフスタイルで生活を送るためのパワーをZ世代に付与」という内容が記載されている。

クピ氏によると、Appleの電子機器も中古市場で高値がついているという。同氏は、購入対象中古品に、不要になった衣類だけでなく電子機器も追加したところ、それまで女性が9割以上だったTwigの利用者構成が、女性7割男性3割くらいに変化したと指摘する。

Twigは中古品の再販売に関する手続きを代行する。具体的には、中古品を即座に査定して、Twigがその中古品の購入を承諾するとすぐに現金が手に入るので何でも好きなものを買える(Twigでは極めて詳細な購入対象品リストを用意している)。

Twigまでの配送料は無料なので、Twigのサービスを利用することで、Vinted(ヴィンテッド)Depop(ディポップ)といった中古品マーケットプレイスにアイテムを自分で直接販売する場合に発生する面倒な手続きやリスクは基本的に排除される(ただし、自分で直接販売した場合よりも売値は低くなる)。

Twigの倉庫に到着したアイテムが品質チェックに引っかかると、ユーザーは返送料を請求される(そして、おそらく即金で支払われた代金も全額Twigに返金される)。アイテムが売れなかった場合は、アップサイクルとリサイクルが適切に行われているかどうかが確認され、どちらの方法でも対処できない場合は、慈善団体に寄付される。環境に悪いため、ごみ廃棄場送りにはしない。

クピ氏によると、Twigは現在成長重視フェーズであるため、再販ビジネスで大きな利益を出すことは考えていないという。

提示する買取価格は、動的に変化するさまざまな要因によって変わる。前述のホワイトペーパーによると、Twigは「市場ベースの価格設定アルゴリズム」を使用して、中古市場の100万点を超える商品を分析し「ブランド、アイテムのカテゴリー、市場セグメントに応じた適切な再販価格を提示している」という。

その前提の中核をなすのは、消費者にとっての総所有コストという概念を再販価値の変化に織り込むという考え方だ。これは購入パターンをシフトさせるパワーを秘めている可能性がある(例えば消費者は、環境的なダメージを与える低再販価値のファストファッションではなく、高級ファッションを選択してその価値を長期間に渡って楽しむ選択をするようになるかもしれない)。

Twigは銀行のような機能(Twigの口座を作るとTwigVisaデビットカードが発行され、国内および国際送金を行うことができる)と本業の中古品再販サービスを組み合わせたものというが、ターゲットであるZ世代と若いミレニアル世代向けの宣伝文句だ。こうした世代の若者たちは中古品市場の倹約性とサステナビリティの両方にますます強い関心を寄せている。

Twigがターゲットとする年齢層を見れば、同社のマーケティングが循環経済による環境への配慮に重きを置いている理由がわかる(「Twigは循環経済を簡単に実現し、サステナビリティの高いライフスタイルを選択できるようにします」とグラフィックを多用したレトロ風のウェブサイトは謳っている)。

特にZ世代はサステナビリティ世代と呼ばれ、この世代の若い消費者は「モノを所有することよりも使うことを優先する」とTwigのホワイトペーパーに書かれている。

こうしてみると、銀行の機能を、文字どおり経済的価値を保存する場所ではなく、再販価値の交換所および仲介者として捉え直すことが非常におもしろく見えてくる。消費者は、あらゆるモノを擬似通貨に変えて、所有したいモノややりたいことの支払いに充てることができる(ハイテクによるバーター取引の再発明と言ってもよいだろう)。

しかし、Twigのビジネスにブロックチェーンが深く組み込まれていることを考えると、同社の主張するサステナビリティには別のほころびが見えてくる。

Twigのテクノロジーは最初からブロックチェーンを基盤として構築されているが、同社のウェブサイトのユーザー対面型の説明からそのことに気づくのは難しい。TwigのシリーズAで公開されたプランでは、Z世代向けの環境配慮型マーケティングがまったくうまくいかない危険がある。というのは、PRでは、Twigを「世界初のWeb3対応グリーン・ペイメント・インフラストラクチャー」と称し、その立ち上げに、最近のWeb3ハイプをうまく利用しようとしているからだ。

この来たるべき機能により、ユーザーは、実世界の資産を「トークン化」して「数秒で取引可能にできる」と、リリースノートには書かれており、さらに次のように続く。「Twigを使用すると、デジタルアイテムと物理アイテムをマネタイズして新しい方法で取引できます。このアプローチにより、ユーザーはチェックアウトページで手持ちのアイテムを売って、暗号資産を購入したり、衣類や電子機器を売ってNFTを購入したりできます」。

暗号資産とNFTの取引が「グリーン」に行われることが本当に希望のあることなのかどうかはよく考えてみる必要がある。

結局、暗号資産に使われるエネルギーコストそれ自体、地球に壊滅的な悪影響を与える要因のように見えなくもない。

例えばケンブリッジ大学が2021年行った研究は、1つの暗号資産(ビットコインなど)だけで、アルゼンチン全体の年間エネルギー消費量を超えていることを示している。

2021年3月に実施された別の研究によると、ビットコインはノルウェーと同じ量のエネルギーを消費したとし、ビットコインのCO2排出量はまもなくロンドンの大都市圏全体で生成される排出量に匹敵するようになると予測している。

要するに、ブロックチェーンベースの暗号資産(もちろんトランザクションを承認するためにプルーフ・オブ・ワークを必要とするもの)の悪名高い非効率性は、サステナブルとは程遠いものに思えるということだ。

しかもブロックチェーンはもっとひどいエネルギーの浪費に関わっている。すなわち、NFT(代替不可能なトークン)の台頭である。NFTでは、ブロックチェーンの上にデジタル収集品を取引するレイヤーを追加することで、エネルギー集約的なトランザクションが必要となり、そうしたトランザクションが促進される。

(ファッションやステータスシンボルとしての)NFTをめぐる現在の騒動と そうしたデジタル資産の小売取引、およびエネルギーを燃やして収集品ピクセルをシフトさせることで非常に手っ取り早くお金を作り出すことができるという提案によって、このエネルギーの焚き火にさらなる燃料が注入されている。

2021年、あるデジタルアーティストの分析によって、1つの平均的なNFTは、EUに住んでいる1人の人間の1カ月分の電力消費量に相当するCO2を排出することが示された。以前と同様、ユーザーにトークン化とモノ(または、デジタル収集品)の取引で忙しくするように促す機能を、どのような形であれ「グリーン」に稼働させる方法を思いつくのは難しい。

しかし、クピ氏はこの反論にもひるまない。

第一に、Twigが基盤としているブロックチェーンインフラストラクチャーは他のブロックチェーンよりもエネルギー効率が高いと同氏はいう。

「ブロックチェーン自体はテクノロジーとして環境に悪いわけではありません。ブロックチェーンにはさまざまな応用事例があります」と同氏はいう。「当社の基盤となっているHyperledger Sawtooth(ハイパーレッヂャーソートゥース)というブロックチェーンは、他のソリューションに比べてエネルギー消費量が極めて小さいという特長があります」。

「つまり、当社はエネルギーを大量に消費するソリューションの使用を最小限に抑えたいと考えています」。

また、Twigは内部のエネルギー消費量を計算して、環境への影響を数量化しており、対抗策としてカーボンオフセットの取り組みも行っているという。

さらには、大気圏からCO2を排除するプロジェクトも支援している。

ただし、個々のプロジェクトがどの程度実行可能で信頼できるものかは、まったく別の問題だ。

Twigは自社のエネルギー消費を最小化し、CO2排出量をオフセットしようとしているかもしれないが、それより大きな環境への影響が、二次使用つまり、TwigのユーザーとサプライヤーがTwigを利用した結果として発生する消費、エネルギー使用、CO2排出量によって起こる可能性がある。

こうした関連のある間接的な影響(サステナビリティレポートの用語でScope 3排出量と呼ばれる)を計算することは、企業の直接的なエネルギー使用を内部的に監査するよりもはるかに難しい。とはいえ、Scope 3排出量は企業のCO2排出量の大きな部分を占める傾向があることも確かだ。このため、そうした間接的な取引、排出量、影響をなきものとして片付けてしまうことはできない。

Twigは、カーボンオフセットによって商品の配送にともなうCO2排出量を相殺するなど、明確な姿勢でScope 3排出量対策に取り組んでいる。また、B Corp認証を取得しようという野心も称賛に値する。

しかし、Twigによって拡大も縮小もするかもしれない消費者需要やトレンドに基づいて、最終的に発生するエネルギーコストを予測するのは非常に難しい。

ユーザーに暗号資産を購入し、NFT取引を始めるよう促すことによってエネルギーコストが発生することは間違いない。そして、たとえTwigが中古品の流動性を高めることで、消費者が新品を購入する需要が低下し、新製品の実質生産量を削減することができるとしても、このような大量のエネルギー消費にともなうコストによって環境へのプラスの影響が相殺されてしまう危険がある。

とはいえ、支払いに使用できるものがこのように根本的に見直されると(あらゆるモノで支払いができる。トークン化された価値の世界では、理論上、消費者は実際のお金を使う必要がない)、消費活動の大きなシフトにつながり、循環経済に実際に目立った変化をもたらすことができる。その結果、数十年に渡る資本主義を特徴づける使い捨て消費の悪循環から抜け出すことができる。

別の言い方をすれば、(認証をサポートすることで偽物に対抗できる)ブロックチェーンベースのトークン化と(分散台帳インフラストラクチャによって完全な所有履歴を把握することで実現される)安定度の高い査定のおかげで、モノの再販時の価値をもっと確実に予測できるなら、消費者は、持っているモノを丁寧に扱う気持ちになるかもしれない。モノの寿命が維持されれば高い売値がつくからだ。そうなれば、世界の産業はそもそも現在の半分だけモノを作れば足りるようになり、資源の枯渇によって地球が機能不全に陥る重圧から解放される。

これには確かに一理ある。

あらゆるモノを売って極めて簡単に支払いができるようにすることでお金の価値が重要視されなくなることは、価値、所有、富に対する考え方を修正するために必要な最初の一歩になるかもしれない。

クピ氏は次のように説明する。「現金を使う代わりに、自宅にある不要になったモノを使ってNFTを買うことができます。例えば使わなくなった古いiPhone(アイフォーン)を売ってNFTや暗号資産を買ったり、体験を買うことができます。ニューヨークまでの旅行費用に充てたり、次回の職業教育コースの支払いに充てたりできます。つまり、Twigの目的は、市場の流動性を高めることです。人々が使わなくなった資産を売ることでその資産に新たな第二の命を与えることなのです」。

「当社の信念は、財布にも地球にもやさしい結果をもたらすことです」。

Twigのビジョンは自身を支払いプラットフォームに変えることです。ユーザーや顧客の代わりに物理的なモノを支払い代金に変えるプラットフォームです。

「現時点では、Twigは単なるB2Cプラットフォームに過ぎませんが、ゆくゆくはB2B2Cプラットフォームにしたいと考えています。将来的には、さまざまなプロバイダーの決済ゲートウェイとして接続する予定です」とクピ氏はいい「いくつかの大手小売業者」とTwigのインフラストラクチャへの接続を許可する契約を結んでいると話した(小売業者の名前は明かしていない)。

「当社がやろうとしているのは、要するに、富の定義の再発明です」とクピ氏は付け加え、お金の概念が大きく様変わりしていると説明する。「自分が所有しているものがすべてお金として扱えるとなると、富の見方も変わってきます」。

「富とは、従来の定義では、家や車など、大きな資産の価値です。しかし、たとえばワードローブの価値は通常資産の一部とはみなされません。我々はこれを変えたいのです。すべてのモノに即時の流動性があれば、モノを現金とみなすことができます。現金だろうとGGマーモントのハンドバッグだろうと違いはないのです。ポンドで何かを買いたい場合、現金でもハンドバッグでも使えるのです」。

Twigが普及すれば、決済の未来は今よりずっとビジュアルで物質的なものになる可能性があります。例えばeコマース決済ウインドウに鋳造しておいたNFTをドラッグアンドドロップして中古のiPhoneを購入する。

あるいは、限定版のナイキのシューズを売って、ずっと楽しみにしていた都市滞在型の春休みを取る。

ダイヤモンドで覆われたすばらしい宝石を売って高級不動産を買うといった具合だ。

若い消費者たちはコモディティ化された価値交換可能なモノの世界をすでに違和感なく受け入れているようだが、年配の消費者たちはどうだろう。クピ氏は、ブーマー世代やX世代が大枚をはたいて買ったモノを手放して支払いに充てるという新しいやり方に納得できると考えているのだろうか。

サイン入りの初版本や貴重なビニールのレコードが将来の決済方法の一部に取り込まれることになるだろうか。

「正直、その答えは私にもわかりません」とクピ氏はいう。「現時点では、Twigに対するZ世代の反応は極めて良好です。また、英国のミレニアル世代、我々がターゲットとしている20代の若者たちの反応も上々です。英国外の市場に進出した際には状況は変わるかもしれません」。

画像クレジット:Twig

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

不必要なプラスチックを排除したより環境に優しい食料品配送を目指すZero Grocery

Zero Grocery(ゼロ・グロッサリー)は、食料品を2時間以内に、地球を傷つけない方法で届けることを使命としている。

プラスチックを使わない食料品、家庭用品、パーソナルケア用品の配送を行うこのスタートアップ企業は、2年前、廃棄物の削減に焦点を当てたビジネスに対するベンチャーキャピタルの関心について取り上げた企業の1つだ。当時、2019年に起業した創業者兼CEOのZuleyka Strasner(ズレイカ・ストラスナー)氏は、470万ドル(約5億3900万円)の資金を調達したばかりだった。

米国時間2月3日、同社はSway Ventures(スウェイ・ベンチャーズ)が主導する新たなシード資金としてさらに1180万ドル(約13億5500万円)を調達し、Zero Groceryがこれまでに1650万ドル(約18億9400万円)を調達したことを発表した。これは、同社が環境に優しい無料配達を2時間以内に提供する持続可能なオンライン食料品店を立ち上げたことにともなうものだ。

ストラスナー氏はTechCrunchにメールで、前回の資金注入以来、Zero Groceryは「信じられないような旅をしてきました」と、語った。同社はチームの規模を倍増し、ロサンゼルスやベイエリア市場など、サービスを提供する市場の数も倍増させた。

さらに、顧客数も2倍以上に増え、平均注文額と継続率も伸びた。その結果、顧客生涯価値の向上につながり、2021年にはペットボトル3万5000本分、食料品のビニール袋6万枚分が埋立地に捨てられるのを防いだという。

「2022年1月からは、サービスを全面的に刷新し、手数料や会員登録なしで当日2時間以内の配達を実現し、顧客獲得が完全に軌道に乗りました」と、ストラスナー氏は付け加えた。「2022年に成長に投資したドルの回収率は、2021年の平均の3倍になっています」。

画像クレジット:Zero Grocery

資金調達の面ではすばやい成功を収めたが、同社の焦点はより全体的で持続可能なモデルであるとストラスナー氏はいう。これは、コンセプトをすばやく実証し、その後、規模を拡大することで、より少ない労力でより多くのことを可能にするというアプローチによるものだ。

新資本は、Zero Groceryがより多くの地域でサービスを提供するために、新しいハブを開設できるよう、地理的拡大に充てられる予定だ。さらに、規模を拡大するために、新規顧客の獲得にも投資する。会社が大きくなればなるほど、運営上の効率は上がり、ベンダーとの関係も強化され、持続可能な社会の実現に貢献できるとストラスナー氏は言った。

ストラスナー氏は、同社の成功の多くは、市場機会に起因すると考えている。2020年、2021年は、デリバリーサービスが大きく伸びた。実際、それ以前は、米国の食料品販売に占めるデリバリーの割合は10%弱だった。その時、世界的なパンデミックによってニーズが急増したが、その多くは満たされていなかったとストラスナーはいう。

「速く、便利で、手頃な価格で、高品質で、持続可能な、ゲームチェンジャー的なサービスは、より多くの次元でお客様に価値を提供し、同時に複数のニーズを満たします」と、彼女は付け加えた。「このことは、競合他社から多くの顧客を獲得することに容易につながりました」。

オンライン食料品専門店Mercatus(メルカタス)によると、需要により、2022年の食料品売上高1兆1240億ドル(約129兆円840億円)のうちオンライン比率は11.1%に成長し、2026年には1兆2500億ドル(約143兆円5887億円)の20.5%となる見込みと予測されている。

現在、プラスチックはわずか9%しかリサイクルされておらず、その多くが埋め立て地や海へと流れている。つまり、プラスチックのゴミを減らすために個人が行う小さな変化でも、積み重なれば環境に大きなプラスの影響を与えることができる、とストラスナー氏はいう。

「このパンデミックを通して、人々がどのような生活を送りたいか、そして今日の決断が明日にどのように影響するかをより意識するようになったことが大きな特徴です」と彼女は付け加えた。「つまり、オーガニックで、クリーンで、環境にやさしい製品を求めているということであり、Zero Groceryはそれを提供することができるのです」。

画像クレジット:Zero Grocery / Zuleyka Strasner, Zero Grocery founder and CEO

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Yuta Kaminishi)

パナソニック、テスラ・ギガファクトリーのバッテリーセル生産にRedwoodの再生材を使用へ

Tesla(テスラ)と共同で運営するギガファクトリーで製造されるパナソニックのバッテリーセルは、スタートアップRedwood Materialsとの提携拡大により、2022年末までにリサイクル素材をより多く使用することになる。

米国時間1月4日、パナソニックはCES 2022の会場でRedwood Materialsは、バッテリーセルのアノード側の重要な部材であるリサイクル素材から作った銅箔の供給を開始すると語った。Redwoodは銅箔の生産を2022年の前半に開始し、パナソニックはそれを2022年の終わりごろセルの製造に使用する。

この発表は、より多くのリサイクル素材を使っていくという、パナソニックの方針表明であり、採掘された銅鉱から作る新たな原料への依存を減少させ、さらにRedwoodの事業成長にも寄与する。

現在、市販されている電気自動車には、リチウムイオンバッテリーが搭載されている。バッテリーには2つの電極があり、一方はアノードと呼ばれる負極(マイナス)と、カソードと呼ばれる正極(プラス)だ。両極の間には電解液があり、充放電の際に電極間でイオンを移動させる運び屋として働いている。負極は通常、グラファイトでコーティングされた銅箔でできている。

自動車メーカーが電気自動車の生産を増やし、究極的には内燃機関のクルマやトラックを置き換えていくにともない、バッテリーとその素材に対する需要は急上昇していく。全車種のEV化に本気で取り組んでいる大手自動車メーカーのほとんどすべてが、そのサプライチェーンを確保するために、バッテリーセルメーカーやその他のサプライヤーとのパートナーシップに依存している。

Redwood Materialsは、2017年に当時TeslaのCTOだったJ.B.Straubel(J.B.ストラウベル)氏が創業し、循環型サプライチェーンの構築を目指している。同社は、携帯電話のバッテリーやノートパソコン、電動工具、パワーバンク、スクーター、電動自転車などの家電製品だけでなく、バッテリーセル製造時のスクラップも再利用している。そして、これらの廃棄物を加工して、通常は採掘されるコバルトやニッケル、リチウムなどの材料を抽出し、それらを再びパナソニックなどの顧客に供給する(アマゾンやテネシー州のAESC Envisionとの連携も公表している)。

最終的にはバッテリーのコスト削減と採掘の必要性を相殺するクローズドループシステムを構築することが目的だ。

Redwoodが2022年初めに発表したギガファクトリーの近くに100エーカーの土地を購入したことは、このパナソニックとの提携拡大を示唆するものだった。

Panasonic Energy of North Americaの社長であるAllan Swan氏は「バッテリーの国内循環型サプライチェーンの確立に向けた我々の取り組みは、EVがより持続可能な世界を形成するための機会を最大限に実現するための重要なステップです」と発表している。

Redwoodは2021年9月に、重要なバッテリー材料を米国内で生産する計画を発表している。同社は20億ドル(約2320億円)の工場を建設し、2025年までに年間100ギガワット時(電気自動車100万台分)の正極材と負極材を生産する予定だ。

画像クレジット:Redwood Materials

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【レビュー】2022 Polestar 2、Android OSと交換可能なバッテリー&パーツがEVに磨きをかける

2020年、Polestar(ポールスター)が発売した最初の電気自動車は、デュアルモーターの全輪駆動構成、インセンティブ前の価格が約5万ドル(約570万円)という単一の仕様だった。しかし同社は2022年、新たなバリエーションを増やすという。

新たにPolestarが発売するのは、シングルモーターの2輪駆動バージョンのセダンだ。デュアルモーターのPolestar 2の特徴を多く備えながらも、より手頃な価格でより環境に優しい、電気自動車への切り替えを検討している人にとっては魅力的なオプションとなっている。今回、試乗であれこれとチェックさせてもらってきた。

シングルモーターVSデュアルモーター

画像クレジット:Kirsten Korosec

シングルモーターの「2022 Polestar 2」の航続距離は270マイル(約435km)とされており、パワーはやや劣りオプションもやや少ないが、ドライブを快適にしてくれるあらゆるテクノロジーが搭載されている。

デュアルモーターのように2つのモーターで4輪を駆動するのではなく、231馬力のパワーと243ポンドフィートのトルクをすべて前輪に配分するのがシングルモーターバージョンだ。2022 Polestar 2シングルモーターには、前輪と後輪の間の床下に78kWhのバッテリーパックが搭載されており、同社によると使用可能容量は75kWh。Polestar 2デュアルモーターにも同じバッテリーパックが搭載されている。Polestarは充電の高速化やバッテリーの設定を微調整して効率を上げるための無線アップデートをすべての車両において取り組んでいる。

The 2022 Polestar 2シングルモーターセダンには、オプションで機械式ヒートポンプ(Plus Packで4000ドル、約45万円増)が追加でき、より厳しい気候でも充電量を維持できるようになっている。同社によると特定の気候条件の下では、ヒートポンプが外気から熱を集め、航続距離を最大10%延長することができるという。Polestarの試算によると、2022 Polestar 2シングルモーターは、ヒートポンプを活用すればさらに27マイル(約43km)の航続距離を得ることができるということになる。

今回のモデルではフル装備のLaunch Editionが廃止され、Polestar 2シングルモーターがその代替となっている。Launch Editionではガラス製だったルーフを金属製に変更し、環境に配慮した内装を採用して装備を簡素化しているが「パック」と呼ばれる複数のオプションも用意している。

ヒートポンプ、ガラス製パノラミックルーフ、Harman Kardon(ハーマン・カードン)製プレミアムオーディオ、ワイヤレス携帯電話充電器などがセットになった「Plus Pack」を選ぶことも可能だ。筆者が試乗したPolestar 2のプロトタイプにはこのパックが搭載されていた。また、アダプティブ・クルーズ・コントロールやLEDエクステリア・ライティングなどを含むPilot Pack(3200ドル、約36万円増)を選ぶこともできる。残念ながら、筆者が運転した車両にはアップグレードされたADASシステムが搭載されていなかったため、同社がいうレベル2の運転支援機能を試すことはできなかった。

ネイティブAndroid OSとOTAアップデート

画像クレジット:Kirsten Korosec

Polestar 2は、Google(グーグル)のAndroid Automotive OSを初めて採用した車でもある。Volvo(ボルボ)も、Volvo XC40 Rechargeのような一部車両にAndroid Automotive OSを展開しているが、Polestarはブランド全体でこのプラットフォームを採用している。

Android Automotive OSはLinux上で動作するオープンソースのOSで、Polestarをはじめとする自動車のインフォテインメントシステムの基盤OSとして使用されている。その結果「Googleアシスタント」や「Googleマップ」「Google Playストア」などのGoogleのサービスが車にあらかじめ組み込まれているわけだ。Android OSは、スマートフォンの機能や操作感を車のセンターディスプレイに映し出すことができる、OSの上にある副次的なインターフェースであるAndroid Autoとは異なるものである。

関連記事:グーグルが自動車用Androidアプリの開発にライブラリの提供などで便宜強化

2022 Polestar 2では「Hey Google」というフレーズを使うことで、エアコンや道案内の操作など、車内のほぼすべての機能をボイスコントロールで利用することが可能だ。Googleのインフラはかなり一般に浸透しているため、誰でも非常に直感的に操作することができるだろう。

足もとが熱いことをシステムに伝えると、GoogleのOSがフットウェルの温度を下げてくれる。サンタバーバラで一番おいしいタコス屋を見つけたければ、筆者がやったようにGoogleに検索してもらい、そこまでナビゲートしてもらえば良い。運転中にタッチスクリーンに触れたことはほとんどなく、必要なことはGoogleにお願いするだけでほぼすべてのことができてしまった。

自然言語認識はGoogleが長年にわたって取り組んできたもので、その性能はますます向上している。このシステムを使っているとき、筆者は何度かリクエストを失敗したり、写真を撮るために地元のビーチに立ち寄ろうとしてぎこちないリクエストをしてしまったりしたことがあったのだが、システムは動揺することなく筆者の言葉を解きほぐし、要求した通りのことをやり遂げてくれた。

筆者が乗ったPolestar 2シングルモーターには、充電ステーションがAndroid OS上のGoogleマッププラットフォームに統合されていたのだが、ここには注意点がある。

Googleにルート上の充電スタンドを検索してもらうと、ブランドごとにフィルタリングをすることができる。しかし充電器が利用可能、または稼働中かどうかは教えてくれない。PolestarはChargePoint(チャージポイント)と提携して充電サービスを提供しているため、センタースクリーンにインストールされたChargePoint Appを使って選択した充電器の詳細を知ることができるが、画面をタップ操作する必要があるため最寄りの充電器に向かう前に一度車を止めることになるだろう。筆者の場合は、ハリウッドのパシフィックデザイン・センターからサンタバーバラまでの往復200マイル(約322km)の旅において、充電のために停車する必要はなかった。

同社によると、DC急速充電器であれば約30分で80%の充電が可能とのこと。Polestarのテクニカルオペレーション・スペシャリストであるGlenn Parker(グレン・パーカー)氏によると、これまでは80%充電するのに40分かかっていたためいくらか短縮されている。また、すべてのオーナーにアップデートを展開していく中で、今後も無線によるアップデートを継続することで、ポートフォリオ全体の効率と航続距離を向上させていくとパーカー氏は話している。

利用可能な充電器を探すのは面倒だが、Google MapsがPolestar 2の技術基盤に統合されたことで、新しい場所に移動したり、途中で寄りたい場所を追加したりするたびに推定航続距離が表示されるのは実に良い。筆者の日帰りドライブではロサンゼルスに戻るタイミングが悪く、ウェストサイドの渋滞に45分間も引っかかってしまったため、航続距離が20%ほど落ちてしまったのだが、最終的にはシステムが当初想定していた航続距離よりも数マイル多い状態で各目的地に到着したのはうれしい驚きだった。

路上にて

2022 Polestar 2デュアルモーターの試乗(ビデオクレジット:Kirsten Korosec)

Polestar 2シングルモーターは、静かかつ快適で、速い。同社によると0-60mphを7秒で達成できるとのことで、これは大したことではないように思えるが、特に低回転域のトルクがすぐに発揮されるため、加速車線から高速道路に合流するには十分な速度である。

筆者が試乗したプロトタイプでは、ステアリングフィールやワンペダルブレーキなど、いくつかの運転機能を調整することができ、車線逸脱警報などの運転支援システムのオン / オフを切り替えることもできた。残念ながら、前述のとおり筆者の試乗車には同社がPilot Packで提供している先進運転支援システムが搭載されていなかったため、それを試すことはできなかった。

電気自動車の楽しさの1つに、ブレーキモード(Bモード)、つまりワンペダルドライブがある。これはアクセルを離したときに、走っている車輪から得られる回生量を調整するものである。

Polestar 2では、ゆっくりと停止することができ、インフォテインメント画面で「Creep」モードの設定を切り替えると、アクセルペダルを踏まなくても車両がゆっくりと動きだす。筆者はほとんどの電気自動車を最もアグレッシブなブレーキ設定で運転しているが、これはロサンゼルスの交通事情においては最も効率的で楽しいモードだからである。Polestar 2の最高設定に多くの人は驚くかもしれないが、数分で慣れ、誰でも直感的に使えるようになる。ただし、筆者は回生ブレーキモードと組み合わせたときに不自然さを感じたので「Creep」機能はオフにした。

また運転中9割は「Firm」と呼ばれる最もアグレッシブなステアリング設定を使用した。基本的には選択した設定に応じてステアリングの比率が変わるシステムで「Firm」は最もダイレクト感のあるレスポンスを提供し、よりソフトな設定だとゆったりとしたレスポンスとなる。

修理、再調整、リサイクルの権利

同社は環境に配慮した製品づくりと素材選びにこだわりを持っており、自動車に搭載するバッテリーのライフサイクル全体に対して積極的に取り組んでいる。パーカー氏によると、同社はバッテリーに使用するコバルトの採掘をブロックチェーンで追跡しており、自動車の製造に使用する他の要素の追跡にもこのシステムの使用を検討しているという。

これに加え、同社はバッテリーとオーナーのライフサイクルについても比較的包括的に考えている。

Polestar 2シングルモーターのスタックパックは、部品が故障しても個別に交換することができ、パーカー氏によると1つの部品が故障した場合、同社がその材料を再び回収して閉ループシステムを形成するという。「再製造や、戻ってきた部品の再利用の方法を検討しています」と同氏。また同社では、修理方法の説明や、オーナーが直接購入できる部品カタログへのアクセスも提供している。

Polestar 2シングルモーターの価格は4万5900ドル(約520万円)からで、2022年1月から販売が開始される予定である(デスティネーションフィーおよび税金は含まれていない)。7500ドル(約85万円)の連邦税優遇措置と一部の州での優遇措置により、3万5000ドル(約400万円)程度まで下げることが可能だ(これにも税金とデスティネーションフィーは含まれていない)。

画像クレジット:Abigail Bassett

原文へ

(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

レストランやフードデリバリーの容器再利用を進めるDispatch Goodsが4.2億円を調達

プラスチック容器は、リサイクル品の受け入れを停止した国が増えているため、世界中の埋め立て地や海に捨てられている。これはとても深刻な問題だ。平均的な米国人は、毎年110ポンド(約50kg)の使い捨てプラスチックを使用・廃棄しているが、米国でリサイクルされているプラスチックはわずか8%だ。

レストランやフードデリバリーサービス、食料品店でもらうクラムシェル型のプラスチック容器はすべてリサイクル可能だと思うかもしれないが、現実としてはすべてのリサイクルセンターでそれらを受け入れられるわけではない。

Dispatch Goodsの再利用可能な容器のコレクション(画像クレジット:Maude Ballinger)

Dispatch Goodsの共同創業者でCEOのLindsey Hoell(リンジー・ホーエル)氏は、プラスチック容器やフリーザーパック、パッケージを回収するという重労働を引き受けるインフラを構築するために、2019年に同社を立ち上げた。容器類ははすべて同社の施設に運び込まれ、洗浄・消毒され、再利用のために再び販売される。レストランやフードデリバリーの顧客も、容器に記載されている番号をテキストで送信して、Dispatch Goodsによる回収を予約したり、容器を返却箱に入れたりすることができる。

会社を設立する前、ホーエル氏は医療関係の仕事をしていたが、カリフォルニアに移住してサーファーになることを夢見ていた。同氏は結局、カリフォルニアに移住し、そこでプラスチック危機を知ることになった。共同創業者のMaia Tekle(マイア・テクル)氏とは、Dispatch Goodsの立ち上げ時にSustainable Ocean Alliance(持続可能な海洋連合)を通じて出会った。当時、テクル氏はCaviarで西海岸のパートナーシップを担当していた。

ホーエル氏はTechCrunchに次のように語った。「リサイクルは人々に良いことをしているように思わせますが、もっと深く掘り下げてみると、流通市場での需要がなければ、必ずしも良いことをしているとは言えません。容器はダウンサイクルしかできませんが、容器を回収して処理する良いインフラがありません」。

Dispatch Goodsはそのインフラの構築に着手し、現在では週に1万〜1万5000個の食品パッケージを回収・処理している。また、DoorDashやImperfect Foodsなどの50社以上の顧客や、Bomberaをはじめとするベイエリアの50のレストランと提携している。ホーエル氏によると、Bomberaは夏にDispatch Goodsを利用し始めてから4000個の容器を交換した。

2021年に合計で約25万個の使い捨てプラスチックを交換したDispatch Goodsは12月6日、370万ドル(約4億2000万円)のシード資金調達を発表した。このラウンドはCongruent Venturesがリードし、Bread and Butter Ventures、Precursor Ventures、Incite Ventures、MCJ、Berkeley SkyDeckが参加した。今回のラウンドによりDispatch Goodsの資金調達総額は470万ドル(約5億3000万円)弱となった、とホーエル氏はTechCrunchに語った。

ホーエル氏とテクル氏は、トラックやフォークリフトの運転を学ぶほどの実践的な創業者だが、2020年9月に700ドル(約8万円)だった月間売上高が5月には2万ドル(約226万円)にまで成長したことを受けて、Dispatch Goodsは後押しを必要としていた。

2人は、チームを成長させ、サンフランシスコのマイクロハブを含む現在の施設を、その地域外で起きている成長やボルチモアの新施設に対応できるようにするために資本を探し求めた。

「このユースケースは以前には存在しなかったので、再利用のための施設をどのようなものにするか戦略化するまでの間、これを最大限活用します」とホーエル氏は話す。「私たちは今、戦略を構築している最中です」。

新たな資金は、地理的拡大、レストランとの提携拡大、新しいパッケージングの可能性の追求などに投資する予定だ。また、現在スタッフは9人だが、年内に3人加える。

Dispatch Goodsは、主にレストランとの提携を進めているが、先月、一般消費者を対象としたパイロットプログラムを開始した。一般消費者からの関心は寄せられたが、最終的な参入障壁を低くするために、企業への販売に徹するとホーエル氏は話す。

ホーエル氏は、成長の指標については具体的に説明しなかったが、収集したアイテムの数と立ち寄った回数を記録していると述べた。事業開始当初は、1回の立ち寄りで約4点のアイテムを回収していたが、現在では平均12点を回収し、立ち寄り回数も3回から9回程度に増加している。

一方、ホーエル氏とテクル氏は、Congruent Venturesの副社長であるChristina O’Conor(クリスティーナ・オコナー)氏を新しい役員会メンバーの1人として迎え入れることを楽しみにしている。

オコナー氏は「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)運動は急速に拡大しており、持続可能な未来のためには、循環型パッケージングは避けて通れないものだと考えています」と声明で述べた。「リンジーとマイアは、再利用のために設計されたインフラを支える新しいシステムを構築するための熱意、戦略的洞察力、そして情熱を持っていることを証明しました」。

Dispatch Goodsのアドバイザリーチームには、DuContra Venturesの共同創業者で俳優のAdrian Grenier(エイドリアン・グレニアー)氏というスターパワーもある。グレニアー氏は、Dispatch Goodsの活動について「ずっと気になっていました」と語った。実際、同氏はプラスチック容器に反感を持っており、テイクアウトを極力避け、自分で再利用可能な容器を持ち込んだりさえする。

「私たちは、世界を再構築することがいかに困難であるかを知っています。テクノロジーが与えてくれたオンデマンドのライフスタイルに誰もが興奮していますが、どれほどの犠牲を払っているのでしょうか。Dispatch Goodsは、企業の利便性を高め、ビジネスモデルにおけるこの種の転換を可能にする機会を提供します」と同氏は述べた。

画像クレジット:Maude Ballinger / Dispatch Goods co-founders Maia Tekle and Lindsey Hoell

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

LAオートショー2021の高揚感としらけムード

LAオートショーは、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下で初めて戻ってきた室内自動車ショーだ。ニュースに乏しく、いつも以上にベーパーウェアが多い中、それでも、いくつかのクルマやテクノロジーや企業が、イベントに先立って行われた2日間のプレスデーで目立っていた。

以下に、2021年のロサンゼルスで良くも悪くもTechCrunchの目に止まったクルマとテーマを紹介する。

グリーン&クリーンへと変わるストーリー

画像クレジット:Kirsten Korosec

米国時間11月17日正午前に行われた少数の主要なニュースカンファレンスでは、持続可能性と気候変動が中心テーマだった。そこには企業の偽善的環境配慮と実際の行動が入り混じっていた。

Hyundai(ヒョンデ)とKia(キア)は、環境の認識がいかに大切かを訴える短編動画を流したあと、全電動コンセプトカーとプラグインハイブリッド車を披露した。Fisker(フィスカー)は海洋保護について話した。長年グリーン化に取り組み、国立公園から動物保護まであらゆる活動の支援に多額の資金を投入してきたSubaru(スバル)も、環境保護の支援を継続していくことを強調した。

これは過去においても珍しくなかったことだが、自動車業界全体が二酸化炭素排出量低下に重い腰を上げ、持続可能な生産と調達に革新を起こし、有効な寿命を終えた部品や車両リサイクルと再利用の方法を探求していることは銘記しておくべきだろう。人類の気候変動への影響を減せる時間はあと10年しかないという恐怖の警告は、ショーで行われた複数のプレス会見で言及されていた。

ハリウッドモード

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年特に目立った発表の1つが、Fisker Ocean(フィスカー・オーシャン)の量産間近なバージョンだ。全電動SUVが備える17.1インチ巨大スクリーンは、180度回転可能で、同社が「ハリウッドモード」と呼ぶ横位置のランドスケープモードから縦位置のポートレートモードへ回転できる。

横位置モードでは、Oceanが駐車あるいは充電中に、ゲームをプレイしたりビデオを見たりできる。Fiskerは、このスクリーン回転技術の特許を取得していると述べた。

画像クレジット:Kirsten Korosec

電化、電化、電化

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のLAオートショー全体のテーマは、(驚くに当たらないが)あらゆるものの電化だ。展示場にはICE(内燃エンジン)駆動の車両が数多く見られたものの、バッテリー電力の世界にいくつもビッグニュースがやってきた。

Nissan(日産)の全電動SUV、Ariya(アリヤ)、Toyota(トヨタ)bz4xと双子車Subaru Solterra(ソルテラ)から、TechCrunchのお気に入りである全電動Porsche(ポルシェ)Sport Turismo(スポーツ・ツーリズモ)セダンの最新モデルとマジックルーフ付きワゴンまで話題は尽きない。

健康被害からあなたを守るテクノロジー

画像クレジット:Kirsten Korosec

現行パンデミックが3年目を迎える中、自動車メーカーは利用者を病気から守る方法を考え始めている。HyundaiがLAオートショーで披露した SUVコンセプトカーSEVEN は、垂直空気循環、抗菌性の銅、紫外線殺菌装置などの機能を提供している。

電動化レストモッドがやってくる

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のLAオートショーで目についたトレンドの1つが、何台かの古い車体に電動パワートレインを積んだレストモッド(レジストレーション&モディフィケーション)モデルだ。内燃エンジンのような直感的体験を与えることはないかもしれないが、クラシックカーの新しい楽しみ方を提供するものだ。

自動車製造のスタートアップ、Cobera(コベラ)が展示していたC300は、懐かしいShelby Cobraとよく似た外観だ。しかし、ボンネットの中にはV8エンジンに代わってC300を時速0〜62マイル(0〜約99.8km)まで2.7秒で加速すると同社がいう全電動パワートレインが入っている。Cobera C300は、ハンガリーの乗用車とキャンピングカーの製造に特化した会社Composite-Projects(コンポジット・プロジェクト)が設計・製造した。車両のスイッチを入れると、合成されたサウンドが出て、昔のV8に少しだけ似た音が聞こえる。

Electra Meccanica(エレクトラ・メカニカ)は、LAオートショーで三輪自動車Solo(ソロ)(詳しくは下で解説)も発表している会社だが、もう1台、Porsche 356 Speedsterに似た電動車、eRoadsterを披露した。エアコンディショニング、パワーウィンドウ&ロック、最新インフォテイメントシステムなどを備える。

画像クレジット:Kirsten Korosec

新たなパワートレインを搭載したレストモッドを披露したのは比較的無名で小さなメーカーだけではない。Ford(フォード)は11月初旬のSEMAショーに登場した電動化したF-100を持ちこんだ。1978 F-100 Ford Eluminator(フォード・エルミネーター)はFordの電動モーター、E-crate(イークレート)を備えたレストモッド機能で、ユーザーはこれを購入して自分の車両に取りつけられる。

F-100は前輪と後輪に1台ずつモーターを備え、最高出力480馬力、最大トルク634lb-ft(860Nm)を誇る。室内には新型インフォテイメントシステムのスクリーンとデジタル・ダッシュボードがある。

画像クレジット:Kirsten Korosec

三輪車

画像クレジット:Kirsten Korosec

例年、会場には少なくとも数台の三輪自動車が登場するが、2021年はいつもより多かった。Biliti Electric(ビリティ・エレクトリック)が持ってきた電動&ソーラー駆動トゥクトゥクは、Amazon(アマゾン)やWalmart(ウォルマート)が世界の人口密集都市のラストワンマイル配達に使える、と同社は言っている。

同社のGMW Taskmanは、すでにヨーロッパ、アジアの各所で使われていて、これまでに1200万個の荷物を配達し、延べ2000万マイル(3200万km)を走ったとファンダーが言っていた。

画像クレジット:Kirsten Korosec

Electra Meccanica のもう1台、Soloは同社が2016年のこのショーでも披露したsharyou

で、プレスデーにテスト乗車を提供していた。同社によるとSoloは1回の充電で最長100マイル(約161 km)走行可能で、最大出力82馬力、最大トルク140lb-ft(約190N-m)、最高速度は80mph(約128 km/h)。定員1名で荷物スペースを備え、近距離の移動や都市圏での通勤のために作られている。Soloの価格は1万8500ドル(約211万円)で、アリゾナ州メサで製造されている。

Sondors(ソンダーズ)の三輪電気自動車は、3人乗りで航行可能距離は約100マイル(約160km)と同社はいう。このクルマは、100万ドル(約1億1400万円)以上を集めて成功したクラウドファンディングの後に開発されたもので、33 kWhのバッテリーパックを備え、最大出力170馬力、最大トルク323 lb-ft(約438N-m)を発揮する。

Imperium (インペリウム)も三輪電気自動車、Sagitta(サギッタ)を披露した。ショーに登場した三輪乗用車の中では最大で、4人まで乗ることができるスペースをもつ。Sagittaは車両のスペックを発表していないが、2022年中頃から予約を開始すると同社は述べた。

バービー

画像クレジット:Abigail Bassett

ことしのLAオートはには、バービーまで登場した。Mattel(マテル)はBarbie Exra(バービー・エクストラ)カーの実物大バージョンを公開した。2021年式Fiat(フィアット)500のシャシーに載せたファイバーグラスのボディーはキラキラの白い塗装で飾られ、ウィング式ドアと後部にはペット用プールもある。

ソーラーパワー

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のショーには、興味深いソーラー充電オプションを備えたクルマがいくつかあった。中国のエネルギー会社、SPI参加のPhoenix Motor Inc.(フェニックス・モーター)が発表したピックアップトラック、EF1-Tの収納可能なソーラーピックアップベッカバーは、最大25〜35マイル(約40〜56km)の走行距離を追加できると同社はいう。EF1-TおよびバンバージョンのEF1-Vは、いずれも巨大な車両で、明らかにまだプロトタイプであり、機能や利用形態について顧客の意見を聞いているところだと会社は述べた。

大きな虫のような外観のEF1-Tは、1回の充電で380〜450マイル(約612〜724 km)走行可能で、2025年の発売に向けて予約を受け付けているという。ずいぶんと遠い話だ。

原文へ

(文:Abigail Bassett、翻訳:Nob Takahashi / facebook

東京都八王子市と町田市においてAI配車システムを用いた紙おむつの効率的回収事業が開始

白井グループは11月18日、凸版印刷が受託した東京都モデル事業「家庭用紙おむつの効果的回収と完結型リサイクル事業」に参画し、八王子市と町田市において紙おむつリサイクルの低炭素型回収コースをAI配車システムを用いて最適化すると発表した。

現在、家庭から廃棄される紙おむつは可燃ごみとして回収されている。これに対して同事業では、紙おむつの素材であるパルプとプラスチックを再生原料にリサイクルするため、従来の可燃ごみとは別の車両で回収し、再生工場まで運搬するという。八王子市と町田市は、同事業において紙おむつ回収のモデル地区をそれぞれ設定し、従来の可燃ごみと紙おむつを両市の委託企業が回収する。

白井グループは、両市において、紙おむつのみを選択的に回収した場合の最短ルートを、2014年から実用しているAI配車システムで計算。これらの結果を総合して、両市をまたぐ広域回収のシミュレーションを行うとともに、両市が各々全域に適用した場合の必要車両台数を試算する。

なお、白井グループのAI配車システムは、これまで約2000の排出事業者が回収依頼する可燃ごみ、不燃ごみ・資源物を、排出曜日ごとに異なる約150コースをAI配車システムで計算し、2014年から手作業に比べ10%以上の削減効果を出しているという。廃棄物ビジネスの革新を目指す白井グループが八王子市と町田市においてAI配車システムを用いた紙おむつの効率的回収事業を開始

一般に、全国の自治体では、リサイクル推進のため廃棄物を種類ごとに分別排出する取り組みが進められている。この実効性を高る方法としては「一括回収後に再度分別する」「種類ごとに車両を配車」の2つがあり、それぞれ実態としてはさらなる経済性の向上が重要になっているという。今回の取り組みのような「種類ごとに車両を配車」の分別回収ケースでは、最も経済的なコースで回収することで、追加の車両や重複ルートを省くことが可能となる。またこのため、移動に伴う二酸化炭素排出量を削減できるとしている。

白井グループは、1933年創業で家庭系廃棄物(東京都23区委託)と事業系廃棄物の両事業をカバーする数少ない企業。「都市の静脈インフラを再構築する」ことをミッションとして掲げ、ITやAIなどを積極的に活用し廃棄物ビジネスの革新を目指しているそうだ。具体的には、廃棄物処理を受け付ける情報プラットフォーム事業や、配車台数を削減するAI配車システムなどを事業化しており、今回は、社会として廃棄物量を削減するためのサーキュラーエコノミー事業にあたるという。

また廃棄物処理依頼の電子化、RFIDとブロックチェーンを用いたトレーサビリティ検証を進めており、それらの成果を統合して、2022年度からは静脈物流のさらなるDX化を加速するとしている。

PETボトルを常温で分解し原料を高純度で回収する方式を産総研が開発、原料化温度を従来の200度以上から常温まで低下

産業技術総合研究所(産総研)は11月8日、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を常温で効率的に分解し、再利用を可能にする技術の開発を発表した。環境負荷やエネルギーコストが大幅に削減され、ペットボトルから新しい高品質なペットボトルを再生産する道が拓かれる。

PETボトルの再生方法には、熱で溶かして再成形する「マテリアルリサイクル」と、化学的に低分子化合物に分解して新たに製品化する「ケミカルリサイクル」とがある。マテリアルリサイクルは、回収されたPETボトルを分別して熱で溶解するが、不純物が混じり込むことが多く、溶解前の製品と同品質にすることが難しい。また、ケミカルリサイクルでは、一般に大量の薬剤や高温処理が必要であったため、コストも高く環境負荷も大きい。

PETボトルからまたPETボトルを作る「ボトルtoボトル」を実現するには、高純度な原料を高効率で回収できなければならない。それが可能なのはケミカルリサイクルだ。ケミカルリサイクルでは、PET樹脂はテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとに分解される。しかし、この2つの原料は分解時と同じ条件で再び結合してPET樹脂に戻ってしまう。そのため、この2つを反応させないための工夫が必要となる。その反応を止めるには、大量の反応剤を投入する方法と、200度という高熱をかけてエチレングリコールを取り除く方法とがあるが、どちらも非効率だ。

今回、産総研が開発した方式はケミカルリサイクルだが、大量の薬剤も高温処理も必要としない。市販の飲料用PETボトルをフレーク状に粉砕した試料に、メタノール、炭酸ジメチル、アルカリ触媒であるリチウムメトキシドを適切な比率で混合し3時間ほど室温に置くことで90%以上が分解できるというものだ。反応温度を50度にすると、すべてのPETが分解した。この方法では、テレフタル酸ジメチルは簡単な精製によって99%以上が分離できる。また、エチレングリコールは炭酸ジメチルに捕捉され、高い割合で回収ができる。PETボトルを常温で分解し原料を高純度で回収する方式を産総研が開発、原料化温度を従来の200度以上から常温まで低下

分離したテレフタル酸ジメチルはPET樹脂に加工でき、テレフタル酸ジメチルはリチウムイオン電池の電解液などに再利用できる。リチウムメトキシドは反応後は不溶物として沈殿するため、簡単に分離、回収ができる。

今後は、このリサイクル方法の社会実装を目指し、触媒の改良、反応のスケールアップ、PET含有製品への適用可能性を検討するとしている。

【コラム】気候変動の解決に向けたスタートアップの取り組み、私がNestを設立した理由

持続可能な変革を起こす最良の方法は、正しい行動が容易な行動でもある機会を作り出すことだ。今度の気候変動国際会議COP26は、それを可能にするためのさまざまな解決策を、新たな才能が採用し展開することを動機づけるまたとない機会だ。

一瞬の判断や習慣的行動になると、平均的消費者は常に便利な方の道を選ぶ。たとえそれが「正しくないこと」であっても。テクノロジーにユーザー体験への深い共感が組み合わさると、そこに消費者と出会う機会が生まれる。そこでは問題を解決する最低限の利便性を満たすだけではなく、より多くの人にとってよりよい方法で実現するソリューションを提供できる。

これまでに私は、テクノロジー関係でもそれ以外でも、企業がこの原則を見失うところを何度も目にしてきた。

長年制度化されている事例を挙げてみよう。リサイクルだ。リサイクルが無駄を減らし、その結果、気候変動を緩和するための鍵であることは誰もが知っている。私たちが今のペースでゴミを出し続けられないことは明らかだ。リサイクルは地球上の廃棄物負荷を軽減しようとする試みの1つだ。リサイクルのコンセプトは単純、古いものを新しい方法で再利用することだ。しかし、平均的消費者が青い分別箱(ガラス・金属・プラスチック用)と黒い分別箱(紙資源)の前で瞬時の判断を求められたとき、その品目の厳密な再利用性を調べるために必要な手順を踏むよりも、黒い箱に放り込む方がずっと簡単だ。

一方、我々Nest(ネスト)では、平均的世帯がサーモスタットを1日中同じ温度に設定していると莫大なエネルギーを無駄することを知っている。また我々は、忙しい人たち(あらゆる人は忙しい!)にとって一番やりたくないのが、サーモスタットの設定を天候パターンや時刻、エネルギー消費の急激な変化に基づいて忘れずに設定することなのも知っている

サーモスタットをオフにしなさい、なぜなら地球に優しいから、と人に勧める方法が1つ。もう1つの方法は、彼らのために自動的にサーモスタットをオフにしてあげることだ。当社が温度調節を最先端と感じられるようなオートメーションやエネルギー利用データ、アプリによる制御、デザインなどを導入した時、自分たちは持続的な変化をもたらすに違いない製品を作っていることを実感した。NestのLearning Thermostat(学習型サーモスタット)は、平均して世帯当たり暖房で10~12%、冷房で15%のエネルギーを節約している(詳しいデータはこちら)。

Nestは、たしかに家庭の省エネルギーをクールなものにした。しかしそれで終わりではない。個人だけでなく地球にとっての費用と便益を意識するよう顧客を教育している。Nestは、平均的消費者がより簡単で便利に正しい行動をとれるようにしている。

Nestよりもっと大きい話をしよう。

今はテクノロジーにとって大きな問題を解決するための重要な転機だ。その中でも最大かつ最も時期に迫られているのが気候変動だ。我々には、誰もが、そう、誰もが、地球を救う行動に参加するために過去数十年間に成し遂げた進歩を利用する機会がある。健康でいることに加えて、良いことを実際に成し遂げるテクノロジーを生み出し、支援し、推進していく必要がある。

私は投資家の1人として、この原則を受け入れているテック企業と無視しているテック企業の両方を毎日見てきた。数年前、私はSpan(スパン)のファウンダー、 Arch Rao(アーチ・ラオ)氏に会い、面倒な仕事を簡単にし、その過程で変化を起こす彼のアイデアに衝撃を受けた。現在、自宅の電力をまかなうことはかなり難しい。もちろん、ソーラーパネルや地下にバッテリーを設置することはできるが、家主にとってそれがどれほど省エネに貢献しているかを知るのは容易ではない。Spanは住宅内のあらゆる回路をスマートフォンアプリから遠隔制御できる電気制御パネルだ。Spanは、家庭の電力というあまり魅力的ではない分野にユーザー中心のデザインを持ち込んだ。

ここで疑問が生じる。もし人間中心のデザインとテクノロジーとすばらしいUX(ユーザー体験)と徹底したプロダクト思考をもっと他の分野(それがどんなに「退屈」でも)にも適用できたなら、どんなソリューションを構築できるだろう? どんな大きな問題を私たちは解決できるのだろうか?

我々はソーラーと再利用についてすばらしい進歩を遂げてきたが、まだ十分ではない。あらゆる産業を横断するソリューションに向かって計画を立てリソースを投入する必要がある。この問題提起はテック業界から始まるかもしれないが、投資家や非営利団体や政策立案者からの支援が必要だ。さらには、今月英国グラスゴーで開かれるCOP26に集結するリーダーたちがロードマップとインセンティブを策定する必要がある。気候変動の解決に特効薬は存在せず、1人の人間や1つのアイデアや会社が解決することもできない。我々全員が、そして我々全員のアイデアが必要だ。

端的に言って、人は正しい行動を起こす気持ちを持っている、ただしそれがより便利である限り。実行にあたり、我々は人間の特性を課題として受け入れる必要がある。利便性の試練に耐えうるテクノロジーは、結局持続する変革を推進する時の試練にも耐えるだろう。どうすれば、正しいことを正しくないことよりも簡単にできるようになるだろうか。それを解き明かし、同じことをするよう人に教えていけば、世界を救う足固めができるはずだ。

編集部注:本稿の執筆者Matt Rogers(マット・ロジャース)氏はNestのファウンダーとして、初の機械学習型サーモスタットを開発。以前はAppleのエンジニアとして10世代のiPhoneおよび初代iPadの開発に貢献した。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

原文へ

(文:Matt Rogers、翻訳:Nob Takahashi / facebook

風力発電機や航空機に使われる炭素繊維複合材の廃棄物をリサイクルして新製品の材料にするFairmat

Fairmat(フェアマット)は、ハイテクな複合素材のリサイクルプロセスを改善しようとしているフランスの新しいスタートアップ企業だ。同社は、廃棄物から新しい種類の材料を生産し、生産企業に販売したいと考えている。

Fairmatは先日、860万ユーロ(約11億2000万円)の資金調達を行ったばかりだ。Singular(シンギュラー)が主導したこの投資ラウンドには、さまざまなビジネス・エンジェルも参加している。

「私たちは、このような製品寿命を終えた素材を処理するための拡張性があるソリューションに取り組んでいます」と、Fairmatの創業者であるBenjamin Saada(ベンジャミン・サーダ)氏は筆者に語った。同氏は以前、Expliseat(エクスプリシート)を共同設立した人物だ。

この企業は、ハイテク素材がなくなることはないと考えている。例えば、風力発電機や航空機には、驚異的な特性を持つ炭素繊維複合材が非常に有効だ。しかし、すべてにハイテク素材を使う必要はない。

だから我々は、新しい物を作る際に、プラスティックや木材、さまざまな金属合金など、より安価な素材に大きく頼ることになる。しかし、Fairmatは、風力発電機や航空機に使われる炭素繊維複合材の代わりになるものを提供したいと考えているわけではない。

同社は、日常生活の中で使われるプラスティックや木材、さまざまな金属合金などの素材を、置き換えたいと考えている。すでに使用された炭素繊維複合材を、軽量かつ堅牢な新しい素材に変えようとしているのだ。

「今日、炭素繊維複合材の廃棄物は、基本的に焼却されるか埋め立てられます」とサーダ氏はいう。Fairmatのやり方なら、複合素材を機械的なプロセスによってリサイクルすることが可能だ。しかも、それほど手間がかかるわけではないという。例えば、炭素繊維複合材の廃棄物を加熱する必要もない。また、このスタートアップ企業は、素材の物理的特性をテストするために、機械学習を利用している。

Fairmatは、同社でリサイクルした素材を製造業の顧客に販売し、それを再利用して企業が新しい製品づくりができるようにすることを計画している。一例を上げると、Fairmatの素材を使ってカーゴバイク(運搬用自転車)の荷台を作ることなどが考えられる。木材や金属よりも軽量であり、バージン素材を使用するのと比べるとカーボンフットプリントにも優れている。

次の段階として、Fairmatは従業員を15人から30人に増やすことを計画している。同社は現在、炭素繊維複合材の廃棄物を扱うサプライヤーや、潜在的な顧客との提携を進めており、2022年の第2四半期には、同社の素材を大規模に販売できるようになる見込みだという。

Fairmatはその後も、さまざまな特性を持つ他の種類の素材を、次々と開発していくつもりだ。順調にいけば、数年後には、同社の素材が使われているイスやノートパソコン、自動車などを、知らずに購入しているかもしれない。

画像クレジット:Rabih Shasha / Unsplash

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォードがEV普及に向け、バッテリー原料リサイクル企業のRedwood Materialsと提携

Ford Motor(フォード・モーター)は、バッテリー原料リサイクル企業のRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)と提携し、今後大量に投入される電気自動車のためのクローズドループ・システムを構築することにした。この提携では、生産過程で発生する廃棄物や寿命を終えた電気自動車のリサイクルに加え、フォードの電気自動車に使用されるバッテリーの原材料の供給も行うことになる。

2020年発売された「Mustang Mach E(マスタング マックE)」や、間もなく発売されるピックアップトラック「F-150 Lightning(F-150ライトニング)」をはじめ、フォードがそのラインナップに電気自動車を増やしていく中で、今回の提携は結ばれたものだ。電気自動車用のバッテリーやその原料を確保するために、自動車業界は電池メーカーとの提携を進めており、レッドウッド・マテリアルズのような企業に目を向けている。

関連記事
フォードの新型EV「Mustang Mach-E」に初試乗、第一印象はガッカリ
フォードが15万件超の予約が入ったF-150 Lightning生産能力拡大のため約270億円追加投資

フォードだけでも膨大な量のバッテリー供給が必要になる。同社が2030年までに全世界で投入を計画している電気自動車は、合計で少なくとも240ギガワット時以上のバッテリー容量を必要とするという。これはおおよそ工場10カ所分の容量に相当する。フォードは以前、北米だけで140ギガワット時が必要になり、残りは欧州や中国を含む他の地域に割り当てられる分だと述べていた。

フォードの北米地域担当最高執行責任者を務めるLisa Drake(リサ・ドレイク)氏は「寿命を終えた我々の製品においてクローズドループを構築し、その資源をサプライチェーンに再投入することが可能になれば、コスト削減につながります」と、プレス説明会の中で語った。「当然ながら、バッテリーを製造する際に現在使用している多くの原料の輸入依存度を下げることにもつながります。そして、それによって原材料の採掘も減らすことができます。これは今後、私たちがこの分野の規模を拡大していく上で、非常に重要なことです」。

これらすべてが、EVをより安価に、より持続可能なものにすると、ドレイク氏はいう。

レッドウッド・マテリアルズは、バッテリーセルの製造過程で発生する廃棄物や、携帯電話のバッテリー、ノートパソコン、電動工具、モバイルバッテリー、スクーター、電動自転車などの家電製品をリサイクルしている企業だ。Tesla(テスラ)の元CTOであるJB Straubel,(JB・ストラウベル)氏が設立し、率いているこの会社は、ニッケル、コバルト、リチウム、銅などの元素を平均して95%以上回収できるという。

レッドウッドは、これらの廃棄物を処理して、通常は採掘で得られるコバルト、ニッケル、リチウムなどの素材を抽出し、それらを顧客に供給する。現在、その顧客の中には、テスラと共同でネバダ州のGigafactory(ギガファクトリー)を運営しているPanasonic(パナソニック)や、テネシー州にあるEnvision AESC(エンビジョンAESC)のバッテリー工場などが含まれる。レッドウッドはAmazon(アマゾン)とも提携しており、電気自動車などのリチウムイオン電池や事業所から出る電気電子機器廃棄物をリサイクルしている。レッドウッドが初めてパートナーシップを組んだ自動車業界の企業は、2021年3月に提携した電気商用車メーカーのProterra(プロテラ)だった

関連記事:リサイクルのRedwood MaterialsがProterraと提携しEV用バッテリーの原材料を持続可能なかたちで供給

「事前に計画を立て、生産能力や適切な地域で適切な時期に生産することを戦略的に考えないと、現在の世界的な半導体不足に少々似た状況に陥るリスクがあります」と、ストラウベル氏はプレス説明会で語った。

米国時間9月22日に発表されたこのパートナーシップでは、レッドウッド・マテリアルズはまず、フォードと協力して、同自動車会社のバッテリー生産ネットワーク内でリサイクルを設定し、回収された原材料をメーカーに戻してバッテリーに使用する。フォードは具体的な内容を明らかにしていないが、それはおそらく、バッテリーセルのサプライヤーであるSKとの協力を意味していると思われる。

フォードとSKは2021年5月、BlueOvalSK(ブルーオーバルSK)という合弁会社を設立し、2020年代中期から年間約60ギガワット時の駆動用バッテリーセルとアレイモジュールを生産することで合意した。

関連記事:フォードと韓国SK Innovationが米国でのEVバッテリー量産に向け合弁会社BlueOvalSKを発表

レッドウッド・マテリアルズとフォードのパートナーシップの最終的な目標は、製造廃棄物のリサイクルとフォードへの原料供給から、寿命を終えた車両のリサイクルオプションの構築まで、バッテリーのライフサイクル全体に関わることだ。この最後の部分が複雑になるのは、これらのEVがフォードの所有ではなくなるからだ。多くのEVは、廃車になるまでに複数の所有者を経ることになる。

今回の提携が発表される数カ月前に、レッドウッド・マテリアルズは7億7500万ドル(約858億円)以上の資金を調達しているが、その中にはフォードからの5000万ドル(約55億円)が含まれていることが後に明らかになった(同社は当初「7億ドル以上の資金を調達した」と発表していた)。

また、9月に入ってから同社は、事業をバッテリーのリサイクルだけでなく、重要なバッテリー材料の生産にも拡大する計画を明らかにし、そのために米国に100万平方フィートの新工場を建設するとしている。同社はリチウムイオン電池の構成材料となる正極活物質と負極用銅箔を生産したいと考えている。

現在、同社が建設地を探しているこの工場は、おそらく正極材の生産に特化することになるだろう。レッドウッドは、この工場の正極材生産能力を、2025年までに電気自動車100万台分に相当する100ギガワット時まで引き上げるつもりであるという。

関連記事:テスラ共同創業者が設立したバッテリーリサイクルRedwood Materialsが事業拡大、バッテリーの材料も生産

画像クレジット:Ford

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

循環経済を重視してCO2排出量の削減を目指すBMW Neue Klasseのラインナップ

BMW Groupは、米国時間9月2日、走行車両の全世界の二酸化炭素排出量を2030年までに、2019年レベルから50%、車両の全ライフサイクルの二酸化炭素排出量を2019年レベルから40%削減するという目標に向けて尽力する意向を発表した。これらの目標は、持続可能性の高い車両ライフサイクルを達成する循環経済の原則を重視する計画も含め、同社のNeue Klasse(新しいクラス)と呼ばれる新ラインナップ(2025年までに発売予定)で明らかになる。

3月に発表されたBMWの「新しいクラス」と呼ばれる計画は、同社が1962年から1977年までに生産したセダンとクーペのラインナップ、つまりBMWのスポーツカーメーカーとしての地位を確固たるものにしたラインナップを根本的に見直すものだ。同社によると、この新しいラインナップの目玉は「一新されたITおよびソフトウェアアーキテクチャ、新世代の高性能電気ドライブトレインとバッテリー、車両の全ライフサイクルに渡って持続可能性を達成するまったく新しいアプローチ」だという。

「Neue Klasseは、CO2削減の取り組み姿勢を一段と明確にし、世界の平均気温上昇を1.5度に抑える目標を達成するための明確な進路に沿って進むという当社の決意を表明するものです」とBMW AGの取締役会長 Oliver Zipse(オリバー・ジプス)氏は今回の発表で述べた。「CO2削減の取り組みは法人の活動を判断する大きな要因となっています。地球温暖化対策では、自動車メーカー各社の自社製車両の全ライフサイクルにおけるCO2排出ガスの削減量が決め手となります。当社がCO2排出量の大幅な削減について透明性が高くかつ野心的な目標を設定している理由もそこにあります。実際の削減量はScience Based Targets(科学的根拠に基づく目標)イニシアチブによって評価され、効果的で測定可能な貢献度として示されます」。

BMWによると、同グループのCO2総排出量の70%は、車両の利用段階で発生したものだという。これは、BMWの販売車両の大半が未だにガソリン車であるという事実からすると納得がいく。2021年上半期のBMWの総販売台数に占める電気自動車またはプラグインハイブリッド車の割合は11.44%であった(2021年上半期収益報告書による)。同社は、2021年末までに、ハイブリッド車を含め100万台のプラグイン(コンセント充電型)車両を販売するという目標を表明している。第2四半期終了時点で、約85万台を売り上げているが、車両利用段階でのCO2排出量を半分にするという目標を達成するには、CO2排出量が低いかゼロの車両の販売量を大幅に増やす必要がある。同社にはすでにi3コンパクトEVシリーズを販売しており、2021年後半には、i4セダンとiX SUVという2つのロングレンジ(長航続距離)モデルが発売され、2022年にはさらに別のモデルも投入される予定だ。GMやボルボと違い、BMWはガソリン車を廃止する計画をまだ発表しておらず、最初から電気自動車として設計されたラインナップの販売も開始していない。

今回の発表は、BMWが、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)など、ドイツの他の自動車メーカーとともに、1990以来、排出ガスカルテルに関与していたことを認めた2カ月後に行われた。これらのメーカーは、EUの排出ガス規制で法的に必要とされる基準を超えて有害なガス排出量を削減できるテクノロジーを持ちながら、共謀してそれを隠ぺいしていた。EUは4億4200万ドル(約486億円)の制裁金を課したが、BMWの第2四半期の収益が60億ドル(約6599億円)近くになることを考えると、軽いお仕置き程度に過ぎない。

関連記事:EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで

また、2021年8月に発表されたEUの「Fit for 55」エネルギーおよび気候パッケージでは、世界全体のCO2ガス排出量の目標削減量が、2030年までに40%から55%に上方修正された。これは、自動車メーカーが電気自動車への移行ペースを早める必要があることを意味し、BMWもその点は認識している。欧州委員会では他にも、CO2ガス排出量を2030年までに60%削減し、2035年までには100%カットするという提案事項も検討されているという。これは、その頃までには、ガソリン車を販売することがほぼ不可能になることを意味する。

BMWによるとNeue Klasseによって、電気自動車が市場に出る勢いがさらに加速されるという。同社は、今後10年で、完全電気自動車1000万台を販売することを目標にしている。具体的には、 BMW Group全体の販売台数の少なくとも半分を完全電気自動車にし、Miniブランドは2030年以降、完全電気自動車のみを販売することになる。BMWは、循環経済重視の一環として、Neue Klasse計画による再生材料の利用率向上と、再生材料市場を確立するためのより良い枠組みの促進も目指している。同社によると、再生材料の利用率を現在の30%から50%に高めることが目標だというが、具体的な時期までは明言していない。

BMWによると、例えばiXのバッテリー再生ニッケルの使用率はすでに50%に達しており、バッテリーの筐体での再生アルミニウムの使用率も最大30%になるという。目標はこれらの数字を上げていくことだという。また、BMWは、BASFおよびALBAグループとの提携プロジェクトで自動車の再生プラスチックの使用量を試験的に増やす試みも行っている。

BMWが称する総合リサイクリングシステムの一環として「ALBA Groupは BMW Group製の寿命末期車両を解析して、車両間でのプラスチックの再利用が可能かどうかを確認している」という。「第2段階として、BASFは分類前の廃棄物をケミカルリサイクル処理して熱分解油を取得できないかどうか調べています。こうして得られた熱分解油はプラスチック製の新製品に利用できます。将来的には、例えばドアの内張りパネルやその他の部品を廃棄車の計器パネルを利用して製造できる可能性があります」。

リサイクリングプロセスを簡素化するため、BMWは、車両の初期段階設計の考え方も取り入れている。材料は、製品寿命が終わったときに容易に分解 / 再利用できるように組み立てる必要がある。BMWでは、再利用可能な材料に戻すことができるように車内インテリアを単一の素材で製造することが多くなっているという。

「例えば車内の配線システムは、車両内のケーブルハーネスで鉄と銅を混在させないようにして、容易に取り外しできるようにする必要があります」と同社は述べている。「鉄と銅が混在していると、再生鉄での鉄の必須特性が失われるため、自動車業界の高い安全性要件を満たすことができなくなるからです」。

また、循環経済では、高品質の車両を使用する必要がある。そうすることで、パーツを容易にリサイクルまたは修理できるため、結果として全材料数が削減されるからだ。

今回の発表で、BMWは車両のライフサイクルについて透明性を高めることを約束している。同社は、他のほとんどの大手自動車メーカーと同様、ライフ・サイクル・アセスメント(生産から回収再利用までの過程で環境に対する影響度を評価する手法)を公開しているが、業界の標準があるわけではない。このため、異種の車両を比較することが難しい場合がある。車両の全ライフサイクルを把握することは、CO2排出量の削減目標を達成するのにますます重要になっている。バッテリーと車両を製造するために必要なすべての材料を取得するためにサプライチェーンおよび製造段階で発生する排出ガスについての調査結果がようやく明らかになってきているが、この調査により、EV化の動きがライフサイクル全体のCO2排出量を却って増やす可能性があることが明らかになるかもしれない。

「内包二酸化炭素の数値化は大変難しく、特にEVでは非常に複雑で不確実です」とManhattan InstituteのシニアフェローMark Mills(マーク・ミルズ)氏は最近のTechCrunchの記事に書いている。「EVは走行中には何も排出しないが、生涯総炭素排出量の約80%は、バッテリーを製造する際のエネルギーおよび自動車を動かすための電力を発電する際のエネルギーから発生している。残りは、車の非燃料部品の製造によるものである。従来型の自動車の場合は、生涯総炭素排出量の約80%が走行中に燃焼した燃料から直接発生する二酸化炭素で、残りは自動車の製造とガソリンの生産にかかる内包二酸化炭素から発生する」。

関連記事:【コラム】材料、電池、製造の炭素排出量を積み上げたEVの本当のカーボンコスト

画像クレジット:BMW Group

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

テスラ共同創業者が設立したバッテリーリサイクルRedwood Materialsが事業拡大、バッテリーの材料も生産

元Tesla(テスラ)共同創業者のJB Straubel(JB・ストラウベル)氏がバッテリーの循環サプライチェーンを作ることを目的に興した会社Redwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)が事業を拡大する。主にリサイクル会社として知られてきたが、同社は米国で重要なバッテリー材料を生産することでサプライチェーンを単純化する計画だ。

そのために同社は現在、10億ドル(約1100億円)かけて新設する広さ100万平方フィート(9万3000平方メートル)の工場のための場所を探しているとBloombergは報じた。工場はリチウムイオンバッテリーの重要な構成要素である陰極箔と陽極箔の生産に特化する。年間生産量は2025年までに最大100ギガワットアワーとなる見込みで、これは電気自動車100万台に使うのに十分な量だ。

しかしそれですべてではない。2030年までに同社は年間のバッテリー材料生産を500ギガワットアワーに増やす計画で、これは電気自動車500万台を走らせるボリュームだ。

こうした数字は驚くほど野心的なものだ。Redwoodがそれをやってのけることができるなら、大半がアジアにある世界最大の材料企業と互角に張り合えることになる。カソードサプライチェーンを米国に集積し、一定割合でリサイクル材料を使用すれば、バッテリーパック生産にともなう二酸化炭素排出を41%抑制するかもしれない、とBloombergNEFは推計した。

画像クレジット:Redwood Materials

Redwoodはリサイクル事業の拡大を計画しているが、リサイクルだけで生産に関するこの数字は達成できない。同社はリサイクルされたバッテリーと、持続可能な方法で採掘された材料からカソードとアノードを生産する、と声明文で述べた。差し当たり、同社はこの新たな冒険のパートナーに関しては沈黙したままだが、今後、提携と事業拡大についての発表があるだろう。

今回のニュースは、何カ月もの間、積極的に拠点拡大に取り組んできた同社の最新の大胆な動きだ。2021年夏の初めにRedwoodは、ネバダ州カーソン・シティの広さ15万平方フィート(約1万4000平方メートル)のリサイクル施設の規模を3倍に拡大する、と述べた。同社はまた、ネバダ州スパークスに立地するTeslaとPanasonic(パナソニック)のギガファクトリーに近い100エーカー(約40万平方メートル)の土地を購入した。このニュースのすぐ前には、シリーズCラウンドで7億ドル(約770億円)をBill Gates(ビル・ゲイツ)氏のBreakthrough Energy Ventures、AmazonのClimate Pledge Fund、 Baillie Gifford、Goldman Sachs Asset Managementといった主要投資家から調達した。この資金調達によりRedwoodのバリュエーションは37億ドル(約4060億円)になった。

関連記事:バッテリーリサイクルRedwood Materialsが拡大の一環としてテスラギガファクトリーの近くに拠点設置

画像クレジット:Redwood Materials

同社はTesla、Amazon、電動バスメーカーのProterra、電動自転車メーカーのSpecialized Bicycle Componentsとリサイクル取引を結んでいる。Redwoodはリチウムや銅、ニッケル、コバルトなどの重要な材料の95〜98%をリサイクルバッテリーから回収することができる、と話している。

関連記事:リサイクルのRedwood MaterialsがProterraと提携しEV用バッテリーの原材料を持続可能なかたちで供給

画像クレジット:Redwood Materials

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

月額料金で新品または再生品のSIMフリー端末をリースするスマホサブスサービスの英Raylo

英国を拠点とし、スマホサブスクリプションサービスを展開するスタートアップ企業Raylo(レイロ―)は、Octopus Ventures(オクトパスベンチャーズ)が主導するシリーズAラウンドで1150万ドル(約12億7000万円)を調達した。

今回の資金調達は、2020年の債務による資金調達に続くもので、2019年の創業以来、Rayloが調達した金額は株式発行と債務による調達を合計して4000万ドル(約44億円)になる。同社には、Macquarie Group(マッコーリーグループ)、Carphone Warehouse(カーフォンウェアハウス)のGuy Johnson(ガイ・ジョンソン)氏、Funding Circle(ファンディングサークル)の共同設立者なども投資を行っている。

調達した資金は「消費者がスマートフォンを所有するのではなく、月額料金を支払って新品または再生品のSIMフリーデバイスをリースする」サブスクリプションサービスの強化のために使用される。

Rayloによると、顧客数と売上高は前年同期比で10倍の伸びを示しており、今回の調達で、従業員の倍増やさらなる技術開発など、英国における成長の加速を計画しているという。将来的にはグローバルに展開することも示唆しているが、現時点では英国を軸に着実に成長したいという考えだ。

Rayloを通じた最新スマートフォンの購入では、契約終了時のハードウェアの所有権移転をともなわないので、ユーザーは希望小売価格よりも安い価格でスマートフォンを利用することができる。

環境への配慮はさることながら、数年前から10万円を超えているiPhoneの最上位機種のようなプレミアムスマホの価格を考えると、希望小売価格よりも安い価格というのはますます重要なポイントになるかもしれない。

さらに、スマートフォンに大金を支払える消費者はそれほど多くはないという事実もある。リースや返却という手段は、そのようなユーザーに高額なハイエンドモデルを利用する方法を提供する。

関連記事:スマートフォンに10万円超を払うのは米国消費者の10%以下

一般的なRayloのサービスでは、ユーザーは12カ月または24カ月の契約期間終了後にデバイスを返却し、返却されたデバイスは2~3回リサイクルされて他のユーザーに利用される。

Rayloによれば、返却されたデバイスは同社のパートナーによってリサイクルされる。通信事業者による販売では、消費者は使用しなくなった古いデバイスを引き出しにしまい、デバイスが持つ潜在的な有用性を無駄にしてしまうのに対し、Rayloのサービスでは、デバイスを長く使うことで持続可能性を促進する循環型モデルを構築できるとしている。

使わなくなったデバイスを家族に譲ったり、売却や下取りに出したりする人も少なくないが、Rayloによれば、英国では約1億2500万台のスマートフォンが使われずに「冬眠」しているという。スマホユーザーの多くが、スマートフォンの第二の人生を気にしていないということだ。

Rayloは、1台の定額制リースを6~7年間で3人のユーザーに利用してもらえると考えている。これが実現すれば、英国でのスマートフォンの平均寿命(2.31年)は約2倍になる。

できるだけ長期間利用できるように、Rayloのすべてのスマートフォンにはケースと液晶保護フィルムが無料で提供される。

ユーザーは、リースされたスマートフォンを傷つけたり、高額な修理代や返却できなくなったりした際の料金をカバーできるように、保険に加入するかどうかを検討する必要がある。Rayloは、独自のデバイス保険をオプションとして販売しており、保険に加入すると月額料金は少し高くなる。

Rayloのサービスは通信事業者のサブスクリプションプランと競合するが、同社はリース方式の方が安いと主張する。契約終了の際、消費者はデバイスの所有権を持たない(すなわち、他の場所で売ったり下取りしてもらったりできる権利が付与されない)ので、当然といえば当然である。

契約終了時にデバイスを返却したくない(あるいは返却できない)場合、ユーザーはノンリターン(返却不可)料金を支払うが、この料金はスマートフォンの種類やリース期間によって異なる。例えばSmsungの「Galaxy S21 Ultra 5G」や「iPhone 12 Pro Max」(いずれも512GBモデル)を12カ月間使用した場合など、プレミアムモデルのノンリターン料金は600ポンド(約9万円)以上になることもある。

一方、契約終了後もアップグレードせずに同じデバイスを使い続けたい場合は、通常の月額料金を最長36カ月まで継続して支払うことが可能で、ノンリターン料金は1ポンド(約150円)になる。

Rayloのリースデバイスにはすべて24カ月間の保証が付いており、ユーザーによる破損や事故に起因しない故障については無償で修理を行い、修理ができない場合は代替機を提供するとしている。

今回のシリーズAラウンドについて、Octopus Venturesのアーリーステージフィンテック投資家であるTosin Agbabiaka(トーシン・アグバビアカ)氏は、声明の中で次のように述べる。「サブスクリプションエコノミーによって、商品やサービスへのアクセスは急速に変化しています。しかし、個人にとって最も価値のあるデバイスであるスマートフォンに関しては、消費者は所有権一体型のサービスの利用を余儀なくされています。ほとんどの人が買っては捨て、買っては捨てのサイクルに陥っていて、経済的にも環境的にも大きな負担となっています」。

「Rayloは、多くの消費者にプレミアムスマホを低価格のサブスクリプション料金で提供し、最新技術を利用できるようにすることでこの問題を解決します。一度使用された機器を再利用する同社のサービスは、この市場において消費者に支持される持続可能な選択肢となります。この市場には大きなチャンスがあります。私たちは、(Rayloの共同設立者の)Karl Gilbert(カール・ギルバート)氏、Richard Fulton(リチャード・フルトン)氏、Jinden Badesha(ジンデン・バデシャ)氏の3人には、スマートフォンの提供方法を進化させるビジョンと深い専門知識があると信じています」。

近年、ヨーロッパでは、多くの再生電子機器ビジネスが投資家の注目を集めており、欧州委員会でも「修理する権利」法の制定が検討されている。

この分野で最近行われた資金調達には、フランスの再生品市場スタートアップ「Back Market(バックマーケット)」の3億3500万ドル(約369億円)、ベルリンを拠点とする「Grover(グローバー)」の電子機器サブスクリプション事業に対する7,100万ドル(約79億円)、フィンランドを拠点とし、中古iPhoneの再生・販売を行う「Swappie(スワッピー)」の4,060万ドル(約45億円)などが挙げられる。

関連記事
欧州の法律家が携帯電話やノートパソコンを「修理する権利」を提案
パソコンやスマホ、スクーターなどの電子機器サブスク事業成長に向けて独Groverが約79億円調達
本体を買わなくても新モデルが手に入るモジュール式スマホFairphone+3

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

トヨタ、BMW、ブリヂストンの迷い、環境に配慮したモビリティは必要だがそのコストは誰が払う?

国連が採択したSDGsや、ESG投資に注目が集まる中、自動車業界にも環境への配慮が求められるようになってきた。フロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」においても、今後のモビリティを考える上で「循環型経済」がテーマとして挙げられている。同サミットでは、トヨタ・ダイハツ・エンジニアリング&マニュファクチャリング上級副社長兼一般財団法人トヨタ・モビリティ基金アジア・パシフィック地区担当プログラムディレクターのPras Ganesh(プラス・ガネシュ)氏、BMW Groupサーキュラーイニシアチブ担当役員のIrene Feige(アイリーン・フェージュ)氏、ブリヂストンGサステナビリティ推進部門長の稲継明宏氏、フロスト&サリバンヴァイスプレジデントのVijayendra Rao(ヴィジャンドラ・ラオ)氏が対談。フロスト&サリバンでアジア太平洋地区モビリティ部門担当アソシエイト・パートナーを務めるVivek Vaidya(ヴィヴェック・ヴァイジャ)氏をモデレーターとなり、循環型経済の重要性や実現可能性について語った。

本記事はフロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる

循環型経済は何から手をつけるべきか

対談はヴァイジャ氏の「循環型経済にはどんな意味があるか?」という問いから始まった。

ガネシュ氏は「循環型経済は、トヨタで30年以上テーマとなっています。二酸化炭素の削減には部分的なアプローチではなく、より大きな視点での全体的なアプローチが必要です」という。さらに同氏は、トヨタが持続可能な社会の実現に貢献するための新たなチャレンジ「トヨタ環境チャレンジ2050」を2015年に発表したことに触れ「循環型経済はトヨタにとっては新しいものではありません」と強調した。

では、循環型経済を実現するにあたり、何から着手すべきなのか。

稲継氏は「循環型経済はブリヂストンにとって、ビジネス機会だと捉えています。そこで重要になるのが資源の効率化です。当社のパートナーと協力し、必要なエコシステムを構築する必要があります」と話す。

一方、ガネシュ氏は車両寿命とリサイクルに注目すべきだと考える。車両寿命は地域ごとに差があり、アジアの車両寿命は10〜20年だという。同氏は「現状、使わなくなったクルマをリサイクルに出すよりも、売り払った方が所有者にとって得なことが多い。それでは循環が進まないので、政府のサポートを得ながら、リサイクルを促進したり、リサイクルしやすいように車体を分解しやすいデザインにしていくことが重要です」という。

フェージュ氏は、使用する材料を減少させるためのエコシステムの見直しの必要性を重要視している。同氏は「着手しやすいのは、金属の再利用です。もちろん、再利用品であれ、新品であれ、質が高くなければいけないのは大前提ですが、今後のクルマの生産では金属を再利用し、新品の金属を使用する際には、それを正当化するような仕組みが必要です」と語る。

リサイクルの壁

ヴァイジャ氏の次の質問は「循環型経済を考えた時、EV(電気自動車)はどういう意味を持つのか?」だった。

フェージュ氏は「持続可能性はEVによってもたらされます」と断言。車体やバッテリーの分解・再利用を視野に入れ、サプライチェーン全体を見直さなければいけないと見ている。

ガネシュ氏もリサイクルの重要性を認め「バッテリーのリサイクルモデルができ上がれば、クルマの価格を下げることに繋がります」と話す。しかし、同氏はリサイクルには壁もあると考える。例えば、アジアではほこりや湿度の関係で、バッテリーの再利用に限界がある。さらに、リサイクルに関わるテクノロジーはまだ発展途上で、変化が多い。生産からリサイクルまでのプロセスを最初から考えなければいけないという。

稲継氏は「ブリヂストンにとっては、クルマに関わるリサイクルというと、タイヤのリサイルを意味します。そしてタイヤリサイクルはビジネスだと捉えています。リサイクルとは、資源の循環ですので、やはりパートナーとの協力関係の構築と、エコシステムの見直しが鍵ですね」という。

循環型経済へのマイルストーン

ここまでで循環型経済に向けた課題が見えてきた。しかし、実現までのマイルストーンはどう設定していけば良いのか。

ガネシュ氏は先述の「トヨタ環境チャレンジ2050」を挙げ、トヨタは循環型経済の実現目標を2050年に定めていることに言及した。同時に、実現のために考えなければいけないことは多いとも語る。

同氏は「実現には戦略が不可欠です。例えば、カーボンニュートラルはどれくらいの規模でやるのか?トヨタだけでやるのか?政府と組むのか?何か他の組織と協力するのか?など考えなければいけません。トヨタには26カ国 / 地域に50の海外製造事業体があります。それぞれの国にはそれぞれの状況があります。つまり、カーボンニュートラルは一度やっておしまいではなく、それぞれの国でそれぞれの段階で進めなければいけません」と話す。

一方フェージュ氏は「カーボンニュートラルはBMWのゴールです」という。マイルストーンとしては、使用する金属の見直しや、市場の金属供給の精査がまず必要だという。

では、日本のモビリティにおけるカーボンニュートラルのマイルストーンはどうなのだろうか。

ガネシュ氏は、日本政府のサポートが強いことを指摘する。天然資源にそれほど恵まれていない日本では、循環型経済は喫緊の課題であるため、政府の支援も受けやすいという。

稲継氏は「日本の政府とコラボレーションするということは、規制のあり方を考えることでもあり、重要なことです」とガネシュ氏を補足した。

誰がコストを払うべきか

循環経済を実現するには、リサイクル技術の開発や、これまでと異なるプロセスを組み込むことでコストが発生する。ヴァイジャ氏は「こうしたコストや、コストによる自動車価格への影響はどうするべきなのでしょうか」と他の参加者に質問した。

稲継氏は「エコシステム全体でコストを分かち合う必要があると思います」と回答。

フェージュ氏は「素材の再利用で全体プロセスにかかるコストは下げられると思います。新品の素材でも再利用の素材でも、同じ質を担保することが課題となります」と答えた。

ガネシュ氏は「循環型経済のために自動車の価格が変動したら、その変動分を調整しないといけません。では誰が調整するのか?政府でしょうか?顧客でしょうか?自動車メーカーでしょうか?」と問題を提起。さらに、循環型経済は素材の再利用でコストが下がる可能性もあると指摘し「循環型経済で増加したコスト」と「循環型経済で下げられたコスト」のバランスがしばらく変化し続けるだろうと予測する。

さらに、同氏は発展途上国での循環型経済実現はより難しいであろうとも考える。そういった地域では、ロジスティクス用の車両を農業用に作り替えるなどして、1台のクルマに対し1回目の使い方、2回目の使い方、といったふうに複数回の用途を考えることが着手しやすいと指摘した。

「ただし、顧客がこういった車の使い方を望んでいるのか?お金を払いたいのか?というのも考えないといけません」とガネシュ氏は最後に付け加えた。

関連記事
コネクテッドカーのビジネスモデル予測、日産、富士通らのキーマンはどう考える?
コロナ禍でモビリティも変化、いま押さえておくべき5つのトレンドとは?

カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタBMWブリヂストン循環型経済二酸化炭素リサイクル電気自動車

レアメタル溶媒抽出技術エマルションフローで都市鉱山リサイクルを目指すエマルションフローテクノロジーズが資金調達

「都市鉱山」レアメタルのリサイクル技術「エマルションフロー」活用した事業化を目指すエマルションフローテクノロジーズが8000万円調達

日本原子力開発機構(原子力機構)発のレアメタルリサイクルベンチャー「エマルションフローテクノロジーズ」(EFT)は7月14日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による8000万円の資金調達を発表した。引受先は、リアルテックホールディングスが運営するリアルテックファンド。エマルションフローとは、原子力機構で開発されたレアメタルのリサイクル関連技術のこと。EFTは、この技術を事業化するため、6社目となる原子力機構発ベンチャー企業に認定された。

「都市鉱山」レアメタルのリサイクル技術「エマルションフロー」活用した事業化を目指すエマルションフローテクノロジーズが8000万円調達

いわゆる「都市鉱山」に眠るレアメタルの回収は大きな社会的課題となっているが、レアメタルのリサイクルには溶媒抽出という水と油を混合させて行う技術が用いられている。現在使われているミキサーセトラーという方式は、混ぜて、静かに置いて、分離するという3工程を必要とするもので、大型装置で時間をかけて行わなければならず、排水に油が混入するなど環境負荷の問題もある。

それに対して新しいエマルションフローは「送液のみ」のみの1工程で済む。この方式により、生産性は10倍(1/10にダウンサイジング)、ランニングコストは1/5、精製純度は99.99%以上となり、分離困難だった元素(レアアースなど)の精製、作業環境の改善、油と水の分離能力の向上による排水のクリーン化が実現した。原子力機構の研究室で偶然発見された「水と油が細かくよく混ざりながらもきれいに分離する」という現象にヒントを得て、この革新的な溶媒抽出法であるエマルションフローが開発されたとのことだ。

「都市鉱山」レアメタルのリサイクル技術「エマルションフロー」活用した事業化を目指すエマルションフローテクノロジーズが8000万円調達

EFTのレアメタルリサイクル事業では、エマルションフロー技術を用いることで、リチウムイオン電池などに含まれるレアメタルを低コストで高純度に回収する技術を確立し、「都市鉱山」から回収したレアメタルをハイテク産業に直接再利用できる「水平リサイクル」の実現を目指すという。

今回の資金調達でEFTは、第5世代のエマルションフロー装置のスケールアップ、レアメタルリサイクル事業とトータルサポート事業の推進を行う。

「都市鉱山」レアメタルのリサイクル技術「エマルションフロー」活用した事業化を目指すエマルションフローテクノロジーズが8000万円調達

関連記事
バッテリーリサイクルRedwood Materialsが拡大の一環としてテスラギガファクトリーの近くに拠点設置
デュポンとVCはリチウム採掘が電動化が進む未来に向けての超重要な投資先だと考える
バイデン大統領が半導体・EVバッテリーなど4品目のサプライチェーン見直しを要求する大統領令に署名
アマゾンとパナソニックが注目するバッテリーリサイクルスタートアップRedwood Materials

カテゴリー:EnviroTech
タグ:エマルションフローテクノロジーズ(企業)カーボンニュートラル(用語)都市鉱山(用語)リサイクル(用語)レアメタル / 希少金属(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

バッテリーリサイクルRedwood Materialsが拡大の一環としてテスラギガファクトリーの近くに拠点設置

Tesla(テスラ)の元CTOであるJB Straubel(JB・ストラウベル)氏が創業した、バッテリーリサイクルのスタートアップのRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)が、Panasonic(パナソニック)がテスラと共同で運営するネバダ州スパークスのギガファクトリーの近くに、100エーカー(約40万平方メートル)の土地を購入した。これは電気自動車の普及を促進し、国内のバッテリーリサイクルとサプライチェーンの取り組みを強化しようとするバイデン政権の方針に沿った拡大計画の一環だ。

米国時間6月15日、同社はネバダ州カーソンシティにある既存の15万平方フィート(約1万4000平方メートル)の施設もまた、約4倍の広さになると発表した。Redwoodは、カーソン市のリサイクル施設にさらに40万平方フィート(約3万7000平方メートル)を追加し、年末までに稼働させる予定だ。

また、成長計画の一環として、Redwoodは数百人の従業員を雇用する。Amazon(アマゾン)の支援を受けている同社では、現在130名の従業員が働いており、今後2年間で500名以上の雇用増を見込んでいる。

Redwoodは、米国サプライチェーンの強化に触れたバイデン政権の発足100日レビューと、リチウムベースのバッテリーの国内サプライチェーンを改善する計画を記した米国エネルギー省の文書の発表を受けて、今回の事業拡大を発表した。

米国エネルギー省のJennifer M. Granholm(ジェニファー・M・グランホルム)長官は米国時間6月15日に声明を発表し「米国は、23兆ドル(約2530兆円)規模の世界的なクリーンエネルギー経済の恩恵を最大限に享受するために、国内のサプライチェーンと製造業界を再建する明確なチャンスを前にしています」と述べている。そして「このような民間企業の投資は、私たちが減速してはいけないということを示すものです。このAmerican Jobs Plan(アメリカン・ジョブズ・プラン)は、自動車用バッテリーや蓄電設備のような技術の革新と需要を呼び起こし、すべての人にクリーンエネルギー関連の雇用を創出することで、米国企業に大きなチャンスをもたらすでしょう」と語る。

2017年に創業したRedwood Materialsは、循環型のサプライチェーンを作ろうとしている。同社はB2B戦略をとっていて、バッテリウーセルを製造する際に出るスクラップや、携帯電話のバッテリー、ノートパソコン、電動工具、 モバイルバッテリー、スクーター、電動バイクなどの家電製品をリサイクルしている。そのためにRedwoodは、家電メーカーやパナソニックなどの電池セルメーカーからスクラップを回収している。そして、これらの廃棄物を処理して、通常は自然から採掘されるコバルト、ニッケル、リチウムなどの素材を抽出し、パナソニックなどの顧客に再供給している。最終的には、バッテリーのコストを削減し、採掘の必要性を相対的に減らすクローズドループシステムの構築を目指しているのだ。

Redwood Materialsは多くの顧客を抱えているが、パナソニック、アマゾン、テネシー州のAESC Envision(AESEエンビジョン)と仕事をしていることだけを公にしている。

同社によるとニッケル、コバルト、リチウム、銅などの元素を電池から約95〜98%回収しているという。現在、年間3ギガワット時相当のスクラップを受け取っているが、これは自動車約4万5000台分に相当するという。

関連記事:アマゾンとパナソニックが注目するバッテリーリサイクルスタートアップRedwood Materials

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Redwood Materialsバッテリー工場リサイクルTesla

画像クレジット:Redwood Materials

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:sako)