仮想通貨Libraは順調に開発進む、規制対応には言及せず

「5カ月が過ぎ順調に成長している」、とLibra Association(リブラ協会)は自身の暗号通貨の技術基盤について報告したが、Libraへの規制当局の厳しい反発を完全に無視した。

ウォレット、ツール、ブロックエクスプローラーが計40個作られ、1700回のGitHubコミットが行われ、ブロックチェーンのテストネットでは過去2カ月間に5万1000回の疑似トランザクションが実行された。トランザクションを処理するためのLibraノードは、Coinbase、Uber、BisonTrails、Ilad、Xapo、Anchorage、およびFacebookのCalibraが稼働させている。さらに6ノードが整備されつつあり、技術チームを持たないメンバー8社が準備をしており、計21のメンバーがノードの稼働に取り組んでいる。

しかし、このLibraバックエンドに関する最新情報は、当初スタート時点に予定していた来年までに100のメンバーおよびノードを揃えるという目標を達成する計画について何も説明していない。そしてこの発表は、仮にLibraが技術面の準備を2020年まで完了できたとしても米国を始めとする世界の規制当局が開始を許すとは限らないという事実をまったく無視している。

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Facebookは、Libraに対する抵抗が高まる中、同社自身もフィンテックに参入するという保険をかけた。今週同社はFacebook Payをスタートし、Facebook、Messenger、WhatsApp、およびInstagramで友達や店や慈善団体に支払うための共通決済方法を米国で提供した。

Facebook Payは、同プラットフォーム上での買い物を推進し、取引に関する情報を取得するとともに、素早い決済方法に後押しされる売上を求めて売り手がもっと広告を出すことを期待している。それはFacebookがLibraに対して、金融の大衆化以上に一番に求めていたことだ。

先月行われたFacebook CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏の議会証言は、7月にLibraの役員であるDavid Marcus(デヴィッド・マーカス)氏が議会に登場したときほど議論を引き起こさなかった。それでも一部の議員らは、Libraがマネーロンダリングに利用されたりユーザーの資産を危険に晒す可能性に加えて、反トラスト捜査が進行中のFacebookがさらに力を得ることを懸念している。

Libra Core Summitでの技術メンバーによる一連の発表は、プロジェクトが不正行為、セキュリティー、権力の分散化への対策に集中していることを示すよい機会だった。しかし、Libra Associationは、Facebook主体の開発チームが最も得意とする「コードを書く」ことの説明に終始するという安易な道を選び、ポリシーの変更には言及しなかった。TechCrunchはLibra Associationおよび一部のメンバーに対して質問を提示したが、約束されていた答えは本稿公開までに届かなかった。

アップデート:規制問題に対する認識が欠けていることへの本誌記事や批判に対して、Libraの広報担当者が以下の声明を提供した。

本日のLibra Core SummitはLibra CoreおよびMove言語の協力開発計画に向けての第一歩だった。同サミットは協力メンバーの教育が目的であり、Libraコードを動かし、Libraウォレットを作り、LibraネットワークのスケーリングとLibraウォレット間の相互運用を実現させることもそのひとつだ。Libraプロジェクトには連携して動く部分がたくさんある。Libra Assosicationの執行幹部チームは、世界中の規制当局に耳を傾け、関係を深め、協力するための重要な取り組みを続けていく。

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「ノードを実装する技術チームを持たない組織に対して、Libra AssociationはLibra Coreの機能が完成する2020年のスタートを支援するための戦略に取り組んでいる」と協会のMichael Engle(マイケル・イングル)氏は書いた。「Libra Associationはメインネットに100のノードを展開する計画であり、これにはオンプレミス(社内設置)とクラウドホストによる基盤が両方含まれる」。Libraは批判に耳を貸すつもりがなさそうに私は感じる。

きちんとした文書を用意し、CLAs(貢献者ライセンス同意書)を準備してGitHubへの貢献を容易にし、バグ懸賞プログラムと技術ロードマップを揃えたのはスタートと言える。しかし、協会が議会の質問に明確に答えるまで当局はLibraの承認を拒否する可能性が高い。ザッカーバーグ氏は承認されない限りサービスを公開しない、と語っている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebookの「リブラ」が大方針転換で現地通貨と連動か

Facebookは、同社のデジタル通貨プロジェクトを、さまざまな通貨を組み合わせた「通貨バスケット」と結びついた人工的通貨とする計画を変更する可能性があることを表明した。

ロイターによると、Facebookのリブラプロジェクト責任者、David Marcus(デイヴィド・マーカス)氏は銀行幹部グループに対して、同社の主要なゴールは優れた決済システムを作ることであり、当社提案したプロジェクトのしくみと異なる方法の採用も辞さないと語った。

当初、Facebookとパートナー企業らは、リブラ・アソシエーションが設定した主要通貨を組み合わせた「バスケット」と結びついた仮想通貨を作る計画だった。

各国の中央銀行はこれを、当局の規制を回避する危険な計画の一環だと考え、Facebookが構築した暗号通貨と決済技術の運用に対する監視を強化するまでプロジェクトを待機させている。

当局の調査の結果、暗号通貨の運用方法を決めるリブラ・アソシエーションの主要なパートナーの一部にさまざまな問題が見つかった。

先月、 リブラ・アソシエーションの設立メンバーのうち7社が脱退し、そこにはPayPal、Mastercard、Visa、Ebay、Stripeらが含まれていた。その7社はリブラにとって重要な戦略的価値をもっていた。Stripe、Mastercard、Visa、およびEbayは、新しい通貨の爆発的スケーリングに必要となる膨大な数の決済処理業者や小売店舗を抱えている。
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ここへ来てマーカス氏は人工的通貨の制定を断念し、リブラを運用する地域の現地通貨と結びつけられたステーブルコインを考えている。

「別のやり方もある」とリブラ・アソシエーション幹部の発言をロイターが引用した。「人工的通貨単位を作る代わりに、ドル・ステーブルコイン、ユーロ・ステーブルコイン、ポンド・ステーブルコインという具合にいくつものステーブルコインを作ることもできる。

こうした事象はすべて、Facebookが発表した暗号通貨リブラの発行日付に影響を与える。マーカス氏はロイターに、今でも6月発行が目標だが、リブラ・アソシエーションは、規制当局が指摘した問題を修正し、承認が得られるまでプロジェクトを進めないつもりだ。

ただし、その承認を得ることも難しくなりつつある。世界中の通貨政策が、ステーブルコインに対しても懐疑の目を向け始めているからだ。

ロイターによると、G-20参加国の財務担当者らは「ステーブルコイン・プロジェクトが『運営を開始』するためには、マネーロンダリング、違法金融、消費者保護などの問題を精査する必要がある」と語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebookが仮想通貨「リブラ」のバグ懸賞プログラムをHackerOneと準備中

仮想通貨Libra(リブラ)のプロジェクトを進めているFacebookとそのパートナーらは、Libraのブロックチェーン上に作られたアプリケーションのバグ検証プログラムをHackerOneと協力して実施することを発表した。

この発表は、規制当局がLibraの合法性と世界金融システムに与える脅威を評価する間、プロジェクトを中止するよう同社に要求している中で行われた。

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中止要求にもひるむことなく、Facebookとプロジェクトのパートナーたちは、世界金融システムを全面改造することの責任をいかに真剣に捉えているかを示す証拠として、バグ懸賞プログラムを実施しようとしている。

プロジェクトでは、テスト用ネットワーク上で開発されたコードの欠陥を見つけたセキュリティー専門家に賞金最大1万ドルを提供する。

「我々はこのバグ懸賞プログラムを今、Libraのブロックチェーンが公開されるよりずっと早く開始する。世界中の人々がLibraを日々の財務ニーズに使えることがわれわれの願いなので、システム基盤は安全かつ信頼できる必要がある、とLibra Associationのポリシー・コミュニケーション責任者であるDante Disparte(ダンテ・ディスパート)氏が声明で語った。「Libraのブロックチェーンはまだテストネットワーク上にあり、初期段階のバージョンであって最終版とは大きく異なることに留意されたい。われわれは今後時間をかけて適切なシステムを運用することに責任を持って取り組んでいく所存であり、規制面の課題が解決し当局の承認を得られるまでLibraブロックチェーンを公開するつもりはない」。

しかし、承認を得ることはおろか、商用レベルにも達していないテスト段階のシステム向けにバグ懸賞プログラムを実施することは、時期尚早である可能性もある。何人かのプロジェクト関係者がLibraはまだ公開されていないことを強調した。

「Libraの正式公開に向けて、これはLibra Associationがセキュリティーに積極的に取り組んでいることを示す重要なステップだ」とブロックチェーン基盤サービス・プロバイダーで、Libra AssociationのパートナーでもあるBison Trailsの最高技術責任者、Aaron Henshaw(アーロン・ヘンショウ)氏が語った。

今回の行動を過剰な警戒と見る向きもある。あるいは、開始することすら保証されていないシステムのセキュリティーに対する大衆や当局の不安を鎮めるためのスタンドプレイだと指摘する向きもある。

Libra Associationの広報担当者は、Libraのテスト用ネットワークで現在いくつのプロジェクトが動作しているかについても語っていない。

FacebookとLibra Associationのパートナーたちは、バグ懸賞プログラムより、自分たちのプロジェクトが政府や世界金融システムに与えかねないバグの心配をしたほうがいいかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook