「ルトロン」の技術を活用したAI自動動画作成ツール「VIDEO BRAIN」提供開始、運営は総額15億円を調達

動画メディア「LeTRONC(ルトロン)」や動画広告サービスなどを運営するオープンエイトが、AIによる自動動画生成機能「LeTRONC AI(ルトロンAI)」を発表したのは2017年10月のこと。同社で内々に活用されてきたこの機能がついに8月28日、「VIDEO BRAIN(ビデオブレイン)」の名で、一般企業向けにクラウドサービスとして提供開始された。

オープンエイトが運営するルトロンは、観光スポットやレストラン、イベントといったおでかけ情報や、美容、ファッションなど、女性向けの動画を配信するメディアだ。2016年5月のウェブ版公開を皮切りに、SNS、アプリなど複数チャンネルで配信される分散型メディアとして、オリジナルコンテンツを展開。アプリは100万ダウンロード超、SNSファン数はのべ約700万となり、提供する動画コンテンツは約8000本を数える。

ルトロンでは、AIを活用してユーザーの視聴履歴などを分析し、ユーザーごとの趣味嗜好に合った動画コンテンツを自動生成している。そのテキストマイニングや画像解析、自動編集など動画に関する技術を応用して、提供するのがVIDEO BRAINだ。

VIDEO BRAINで動画を作るのに、特別な知識は要らない。PowerPointでプレゼン資料を作ったことがある人なら誰でも、いや、もしかしたらそれよりもずっと簡単に、動画が作れるかもしれない。

写真・動画やテキストなどの素材を画面から入力していくと、AIエンジンがデータを分析し、100種類以上ある動画フォーマットから、おすすめを提案してくれる。動画や画像の長さ・大きさは編集が可能。入力したテキストからテロップとして配分される文言なども微調整することができ、最短3分で動画を書き出すことができる。

テキストと画像の入稿から、編集、プレビューと動画の書き出しまで、VIDEO BRAINを操作するところを見せてもらったのだが、「すごい」と思わず声が出たのは、画像に合わせてテロップテキストの配分が自動で終わったところ。動画を説明する文章として、5000文字ぐらい入力ができるそうなのだが、それらが各画像の内容に沿って、何となくいい感じに割り振られるのだ。

もちろん、自動の割り当てで気に入らないところは、自分で手を加えることもできる。テロップの修正以外も、画像サイズやシーンの入れ替え、秒数の調整などを「パワポ」レベルの操作でできるので、本当に動画制作の経験は必要ない。

TechCrunchに掲載されているものでも短めの記事なら、動画や画像素材を取り込んで、ちょっとした動画コンテンツが簡単に出来上がりそうだ。実際、クローズドでサービスを導入しているメディア企業で、ニュース記事を動画化しているケースもあるということだった。

オープンエイト代表取締役社長 兼 CEOの高松雄康氏によれば、クローズドで先行導入している企業は大手を中心に約10社。外部向けコンテンツや広告動画だけでなく、CSR活動や、飲食業でのオペレーションマニュアルといった従業員教育にも使われているそうだ。

高松氏は「広告など、動画の活用は広がってきたが、まだまだ予算が小さく、体制がないために取り組めないという企業は多い。また、社内向けマニュアルなど、そもそも大がかりな編集が不要で、必ずしも外部へ制作を依頼するほどではない場合もある。そういうケースでも、小さな予算で簡単に動画ができて、効果が試せる、という状況をVIDEO BRAINで提供したい」とサービス開始の背景について説明。「いろいろ試してもらって、動画を利用しようという企業の裾野を広げたい」と語った。

利用料金は月額15万円(契約期間1年間)。今後、素材のより適切なマッチングができるよう、さらにデータの学習・AIエンジンの改良を行っていくという。また高松氏によると「今秋には英語・中国語への対応を、年内には音声データへの対応も予定している」とのことだった。

オープンエイトでは、VIDEO BRAINの開発と推進を目的として、WiL未来創生ファンドを引受先とする約15億円の第三者割当増資を実施したことも明らかにしている。また動画事業のアドバイザーに江端浩人氏を迎え、VIDEO BRAINの機能強化や販売促進、海外展開を推進するという。

AIが動画を自動生成してリコメンド――おでかけ動画メディア「ルトロン」が進化した

スマートフォン向けの動画広告サービス「VIDEO TAP」や動画メディアの「ルトロン」などを運営するオープンエイト。同社が2017年7月に15億円を調達したことは、以前TechCrunch Japanでも紹介した。

そのオープンエイトは10月17日、ルトロンのスマートフォンアプリ(iOS/Android)をリリースし、アプリによる動画コンテンツの配信を開始すると発表した。それに加えて、年内にはAIによる動画生成&リコメンド機能もリリースするという。

ルトロンは、各地の観光スポットやレストランなどの魅力を伝える動画メディア。ターゲットとなるユーザーは20代後半〜40代の女性だ。動画というリッチなメディアを通して、ユーザーは“行ってみたい場所、やってみたいこと”を発見することができる。

現在、ルトロンのFacebookページのフォロワーは110万人以上。前回取材した7月時点では73万人ということだったから、この3ヶ月で約40万人のフォロワーを獲得したことになる。

また、同社は2017年9月より月間1000本の動画配信体制を実施しており、累計の動画コンテンツ数は4000本に達した。

下にルトロンの動画コンテンツ例を載せておくので、気になる読者はチェックしてみてほしい。

そういえば、前回の取材時にオープンエイト代表取締役の高松雄康氏はルトロンについてこう話していた。

「ルトロンは、ユーザーの心を動かしてラーメンを食べたいという気持ちを喚起するメディアだ。そして、僕たちが重視するのはエンゲージメント。再生回数が多くても、ユーザーの心を動かさない動画を作っても意味がない」(高松氏)

その言葉の通り、他の動画メディアと比べてルトロンのエンゲージメント率(Facebookフォロワー数に対するエンゲージメント数の割合)は高い傾向にあるようだ。オープンエイトのプレスリリースによれば、他社のエンゲージメント率が0.4〜8%のレンジ内であるのに対し、ルトロンは16.2%と主張している。

今回ルトロンのスマホアプリがリリースされたことで、エンゲージメント率のさらなる向上やより広いユーザーへのリーチが期待できるかもしれない。

AIによる動画コンテンツ自動生成機能も

実は、オープンエイトはアプリリリースと同時に、AIによる動画コンテンツの自動生成機能もあわせて発表している。

「LeTRONC AI」と名付けられた同機能ではまず、ルトロンが保持する動画コンテンツを各シーンごとに分解する。次に、そこに映る「パンケーキ」や「カフェ」などをAIが認識し、それを言語化することで各シーンごとのキーワードを生成するという。

例えば、シーンAに「渋谷区、パンケーキ」というキーワードが付与されたとすると、それと同じキーワードをもつシーンB、シーンCと組み合わせて新しい動画コンテンツを生成することができる。

オープンエイトがこのタイミングでルトロンをアプリ化したのも、このAI機能を十分に活用するためだ。

オープンエイトが2017年度中に発表予定としている同機能は、アプリを通して得たユーザーの趣味嗜好をもとに、AIが自動で動画コンテンツを生成してリコメンドするというもの。

例えば、ユーザーがアプリで「渋谷区のおでかけスポット」を頻繁に検索していて、かつパンケーキの動画を長く観ていれば、それに合わせて生成した「渋谷区のパンケーキ特集」動画をユーザーに配信するといったことが可能になるだろう。

オープンエイトは今後、このAI動画開発技術をルトロン内で使用するだけでなく、他社向けの動画広告ソリューションとして展開していくとしている。

平均DAU4万人のおでかけ動画メディア「ルトロン」が15億円調達――体制強化で月間1000本製作へ

スマートフォン向けの動画広告サービス「VIDEO TAP」や動画メディアの「ルトロン」などを運営するオープンエイトは7月10日、ジャフコグロービス・キャピタル・パートナーズから総額15億円の資金調達を実施したと発表した。

また、同社は2015年10月にTBSなどから8億円を調達している

オープンエイトが手がける事業は2つ。広告事業とメディア事業だ。

女性向けの動画広告サービスの「VIDEO TAP」やネイティブアド・サービスの「NATIVE TAP」などを運営するオープンエイトの広告事業では、@cosmeウーマンエキサイトなどの女性系メディアをネットワーク化。全ユーザーの94%が20〜40代の女性で、月間のべユニークユーザーは1億人以上だ。

VIDEO TAPは2015年4月のリリースだが、オープンエイト代表の高松雄康氏によれば、広告事業はすでに損益分岐を超えており、「投資回収フェーズに入っている」という。

オープンエイトは、この事業を通して改めて動画広告のエンゲージメント率の高さを知る。そこで同社は、コンテンツを自社で作って「ユーザーの心を動かしたい」という想いから、2016年6月におでかけ動画メディアの「ルトロン」をリリースした。

「ルトロン」は各地の観光スポットやレストランなどの魅力を伝える動画メディア。ユーザーは動画というリッチなメディアを通して”やってみたいこと、行ってみたい場所”を発見することができる。ルトロンにはこれまでに3000本以上の動画が掲載され、月に200本以上のコンテンツが自社製作されている。現在、Facebookページの”いいね!”数は73万以上で、デイリーアクティブユーザー数は平均4〜3万人程度だという。

下の動画はルトロンのコンテンツ例だ。

 

「@cosme、食べログ、クックパットなど、有力なWebサービスは目的志向が強いサービスだと思っている。例えば、食べログを開くときは、ユーザーがすでに”ラーメンを食べたい”などの目的を持っているとき。それに対してルトロンは、ユーザーの心を動かしてラーメンを食べたいという気持ちを喚起するメディアだ。そして、僕たちが重視するのはエンゲージメント。再生回数が多くても、ユーザーの心を動かさない動画を作っても意味がない」(高松氏)

オープンエイトは前回8億円を調達しているが、同社はそのうちの約2億円を費やしてコンテンツ製作の体制を整えた。「おでかけ領域で動画メディアをやっている競合はいなかった。ロケ取材をベースにコンテンツを作るのはお金がかかり、体力の少ないスタートアップが手がけるのは難しかったからだ」と高松氏は話す。

自身もスタートアップであるオープンエイトは、できるだけコストをかけずにコンテンツを製作するためにプロセスのシステム化を追求する。コンテンツの種類ごとに内容をフォーマット化したり、撮影に関する細かいマニュアルを用意して、誰が撮影しても同じ画角で撮影できるような体制を整えたりした。

また、合計で16人のルトロン事業メンバーを”企画チーム”と”編集・撮影チーム”に完全に分離。企画チームはそのほとんどの時間をブレストに費やし、一方の編集チームは、福岡から北海道まで全国に散らばる外部カメラマン(約30人)が撮影した動画の編集や撮影に集中できるようにした。

さらなる体制強化で月間1000本製作

オープンエイト代表の高松雄康氏

オープンエイトは今回調達した資金を利用して、ルトロンのコンテンツ製作体制をさらに強化する。編集チームを現在の8人からほぼ倍の14人に増やし、8月から月間1000本のペースでコンテンツを製作するという。また、同社は同じく8月にルトロンのアプリをローンチする予定で、それにあわせてWebプロモーションを開始する。

高松氏によれば、オープンエイトはAI開発にも着手しているという。

「ロケ先のレストランなどが1年後に廃業する確立は大体4〜5%程度。つまり、残りの95%を取材した動画はストックされたデータとして蓄積されていく。ルトロンでタレントを起用しない理由も、肖像権などの関係で過去に取材した動画が使えなくなるのを防ぐためだ。開発中のAIは、そのような過去のコンテンツを再編集してもう一度ユーザーに届ける役割を担う」と高松氏は話す。

例えば、クロワッサンというキーワードをもとに、”クロワッサンが美味しい店TOP3”などのコンテンツを配信したり、アプリリリース後にユーザーデータを集めたあとは、各ユーザーごとに最適な情報を自動で配信したりするなどの機能を展開していく。前者のAIによるコンテンツの再配信は今年秋ごろから、そして、ユーザーデータをもとにしたリコメンド機能は来年春ごろから提供していきたいと高松氏は話す。

女性向けメディア「ルトロン」、渋谷区、宮崎市に続き、栃木県と提携——地域の魅力を動画で発信

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スマートフォン向けマーケティング事業、メディア事業を展開するオープンエイトは2月20日、同社が運営する動画メディア「ルトロン(LeTRONC)」にて栃木県と提携。“VERY GOOD LOCAL とちぎ”と題した栃木県ブランドの特設ページを公開し、ルトロンが取材した栃木県の魅力を11の動画コンテンツとして配信する。

ルトロンは2016年5月に公開された、“大人の女性”向けの動画メディアマガジン。30秒と短めの動画と取材記事で、旅行やグルメ、ファッション、フィットネスなどの暮らしの情報を月間180本提供し、自社サイトに加え、FacebookやInstagramなどのSNSと提携メディアへコンテンツを配信している。オープンエイトが2016年2月に買収した制作会社、THE CLIPが開発を行っているという。

栃木県は、JRグループの大型観光キャンペーン「デスティネーションキャンペーン」の2018年の対象地として、県内各地の魅力を発信し、観光誘客を促す取り組みを行っている。その一環として動画での発信を検討していて、今回、コンテンツ制作についてルトロンとの提携が決まった。また、JR東日本の協力により、2月20日からの1週間、山手線や埼京線に設置されているトレインチャンネルで、ルトロン取材のコンテンツが放映される。

ルトロンにとって今回の提携は、2016年11月の渋谷区観光協会の公認メディア任命、2月17日の宮崎市との提携に続いて、地方自治体とともに地域の魅力を動画コンテンツによって発信する取り組みのひとつとなる。もちろんオープンエイトとしてはタイアップによるマネタイズという意図があるが、ルトロンが持つコンテンツ制作の強みによって、地方活性化に貢献していくとしている。

オープンエイト執行役員でルトロンを担当する針北陽平氏は、地方自治体との動画コンテンツへの取り組みについて、こう話す。「動画に魅力を感じる自治体は多いが、“100万回再生達成”など一発の当たりを求めがちだ。でもそういう動画を見ても、ユーザーはその地域へ行きたいとは思わないのが実態。我々は、食や観光地などの魅力が分かって、行ったときのイメージを訴求できるような動画をストックして、1年後でも2年後でも見られるようにすることが大切だと思っている。それに共感してもらえる自治体が増えてきた」(針北氏)

今後の展開について針北氏は「現在提携している自治体については、今の取り組み以降も一緒にやっていって、ストックを増やしたい。また、他の都道府県でも展開を広げて、日本津々浦々の魅力を発信していきたい」と言い、継続的な魅力発信の例として、先行する渋谷区観光協会との取り組みを挙げる。

「渋谷駅前のスクランブル交差点では、2017年年始の年越しカウントダウンを初めて車両通行止めにして、歩行者に開放してイベントとして行った。ルトロンでもそれを取材したのだが、正直コンテンツとしてまとめるのは大変だった。ニューヨークのタイムズスクエアのカウントダウンイベントみたいな、かっこいい、魅力あるイベント紹介にしていくために、定常的に取材を続けていきたい」(針北氏)

渋谷区はデジタルマーケティングの観光情報発信への活用を進めていて、ルトロンはコンテンツ制作分野でこの取り組みに参加していく、と針北氏は話す。渋谷区では、渋谷駅周辺だけではない、いくつもある魅力的なスポットの情報を全域で発信するために、3月までに区内の800カ所にビーコンを設置し、観光協会が2016年12月から提供を始めたスマホアプリ「PLAY! DIVERSITY SHIBUYA」への情報配信を行うという。ルトロンはこのアプリへの動画配信も行っていくそうだ。

「我々はコンテンツで課題解決する、というよりは、ユーザーの需要を喚起したい。コンテンツをSNSや提携メディアにも分散して配信しているのもそれが狙い。いつもFacebookをチェックしている人ならFacebook経由で情報を得たいだろうし、@cosmeが窓口になっている人もいるだろうし。デジタルマーケティングでそこにいるユーザーに届くようにしておいて、コンテンツの力でユーザーを動かす、という考え方だ。このところ、コンテンツの質の問題が挙がっているが、それはコンテンツの持つ力が強くなっているということでもある。もちろん、我々は取材・撮影したオリジナルのコンテンツを掲載していて、そこには自信があるけれども、自治体の公認を得ることで、よりユーザーに響くことになるだろう」(針北氏)