元Googleのエンジニアによる自動運転ロボットがマイアミで料理配達業務を開始

自動運転とロボット工学のスタートアップ企業Cartken(カートケン)は、駐車場やコミュニティセンターを運営するスタートアップ企業のREEF Technology(リーフ・テクノロジー)と提携し、マイアミのダウンタウンの街路に自動運転の配達ロボットを導入すると発表した。

今回の発表により、Cartkenは正式にステルスモードから脱却した。Googleで日の目を見なかったBookbot(ブックボット)の開発に携わっていたエンジニア達が2019年に設立したこの会社は、自動運転とAIを搭載したロボットや、それを使った配送業務などに関して、市場で通用する技術の開発に取り組んでいたが、これまで事業内容は伏せられていた。Cartkenの歩道用自動運転ロボットが大規模に展開されるのは、これが初めてのこととなる。

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このCartkenが開発したREEFブランドの電動ロボットは、数カ月のテスト期間を経た後、現在はマイアミのダウンタウンにおける半径3/4マイル(約1.2キロメートル)の地域に住む人々に、デリバリー専用キッチンから料理のオーダーを届けている。スパゲッティなど温かい料理の熱を逃がさないように断熱された荷室を備えたこのロボットは、あらかじめ設定された物流拠点に配置されており、料理の準備が完了すると指示を受けて配達に向かう。

「私たちは、いかにマイアミが未来に向けて先行しているかを示したいと思っています」と、REEFの最高技術責任者であるMatt Lindenberger(マット・リンデンバーガー)氏は、TechCrunchに語った。「これは技術の可能性を示す絶好のチャンスです。当社がマイアミで大きな存在感を示していることに加え、新型コロナウイルス感染流行の沈静化にともなう路上の混雑が相まって、この技術がどのように機能するかを示すことができる非常に良い環境が整っています」。

リンデンバーガー氏によると、マイアミはスタート地点として最適な場所だが、これはほんの始まりに過ぎず、REEFの他のラストマイルデリバリー事業にも、Cartkenのロボットは利用できる可能性があるという。現在、マイアミで稼働しているのは2台のレストラン料理配達ロボットだけだが、今後は同地区の内外で採用を拡げ、フォートローダーデールや、さらにはダラス、アトランタ、ロサンゼルス、最終的にはニューヨークなど、同社が事業を展開する他の大都市にも拡大する計画だという。

街中にロボットが存在することが、いわゆる「フォース・マルチプライヤー」の役割を果たし、サービスの質を維持しながら、コスト面の効率に優れた方法で、規模を拡大していけることを、リンデンバーガー氏は期待している。

「ポストコロナの世界では現在、配達が爆発的に増加しており、今後もそれが続くと予想されます。そのため、このような非接触・ゼロエミッションの自動化技術は、非常に重要です」と、リンデンバーガー氏は述べている。

Cartkenのロボットは、機械学習とルールベースのプログラミングを組み合わせ、起こりうるあらゆる状況に対応するという。それは単に、安全に停止して助けを求めるということも含まれると、CartkenのCEOであるChristian Bersch(クリスチャン・バーシュ)氏はTechCrunchに語った。REEFでは、必要に応じてロボットを遠隔操作するために管理者を現場に配置しているが、これは2017年にフロリダ州で自動運転の配送ロボットの運用を認めた法律に盛り込まれている注意事項である。

「結局のところ、この技術は自動運転車と非常によく似ています」と、バーシュ氏はいう。「ロボットは環境を見て、歩行者や街灯のような障害物を回避する計画を立てます。もし未知の状況が発生したら、ロボットは急に止まることができるので、安全にその状況からロボットを助け出すことが可能です。しかし、重要なのは、誰かが急にロボットの前に飛び出したような事態が発生した場合、遠隔操作では不可能なほど一瞬で反応できるレベルの自律性をロボットに持たせることです」。

REEFは地図上でロボットの活動エリアを特定し、Cartkenはロボットが必要とする特定の状況を考慮ながら、都市に合わせて設定を調整する。これにより、ロボットは配達先の住所を指定されると、人間の配達員と同じように動き、業務を遂行することができる。このロボットにはLTE回線が搭載されており、常に位置情報を更新しているので、REEFは配達部隊のマネジメント機能に組み込むことができる。

将来的には、Postmates(ポストメイツ)、UberEats(ウーバーイーツ)、DoorDash(ドアダッシュ)、GrubHub(グラブハブ)など、REEFが提携している主要なフードデリバリープラットフォームでも、ロボットによる配達を顧客が選択できるようにしたいと、リンデンバーガー氏は語る。顧客はロボットが到着するとテキストメッセージを受信し、家の外に出てロボットと会うことができる……ようになる予定だが、現在はまだこの技術は完成していない。

現状では、ロボットは道路までしか行くことができないため、人間の配達員が料理を受け取って、直接ドアまで運ぶというサービスを、多くの顧客が希望する。

また、集合住宅に住んでいる場合は、ロボットが建物の中に入って注文主の部屋まで辿り着くことは難しい。まだ多くの顧客が直接ロボットと対面できる準備は整っていない。

「これは暫定的なステップです。しかし、我々にとって、他に制限を設けることなく、技術を迅速に現実に移すための道筋でした」と、リンデンバーガー氏は語る。「どんな新しい技術でもそうですが、段階を踏んで進めていくことが大事です。今、私たちが踏み出して成功させた非常に重要なステップは、一定の半径内にロボットを派遣し、そこにちゃんと到着できると分かることです。これは開発の過程において、それだけでも非常に大きなステップであり、最終段階に向けてどのような課題があるかを知ることができます。そうすれば、私たちはCartkenと協力し、最後の課題の解決に向けた取り組みを始めることができます。このような自動化が可能になっただけでも、大きな一歩です」。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Cartkenマイアミロボット配達フードデリバリー自動運転 / 自律運転

画像クレジット:REEF Technologies

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)