自転車レーンや車道を走行し高速移動が可能なラストマイル配達ロボットのRefraction AIが約4.6億円を調達

米国時間3月8日、ミシガン大学のあるアナーバーを拠点とするRefraction AIがシードラウンドで420万ドル(約4億6000万円)を調達したと発表した。同社を創業したのはミシガン大学の教員でCTOのMatthew Johnson-Roberson(マシュー・ジョンソン – ロバーソン)氏と同大学教員のRam Vasudevan(ラム・バスデバン)氏で、多くの配達ロボットが引き起こすさまざまな問題を解決しようとしている。同社は2019年のTechCrunch Sessions:Mobility stageに登場した

同社が自転車をベースに作った初期プロトタイプのREV-1ロボットは、よくあるように歩道を移動するロボットではなく、自転車レーンや車道を走行する設計になっている。このように他とは異なるアプローチをとることで高速移動が可能となり(最速で時速15マイル、約24km)、歩道を移動する際に歩行者をよけるという厄介な問題が減る(代わりに、狭いレーンを自転車と共有するという新たな問題は発生するが)。

Refraction AIは現在、地元のアナーバーで少数のロボットをテストしている。Pillar VCが主導したシードラウンドの資金はR&D、サービス範囲の拡大、顧客の獲得に使われる予定で、食料品店とレストランの配達を扱う。Pillar VC以外にはeLab Ventures、Osage Venture Partners、Trucks Venture Capital、Alumni Ventures Group、Chad Laurans(チャド・ローランズ)氏、Invest Michiganが投資した。

他との違いとしてもう1つ、LiDARではなくカメラを使っている点が挙げられる。技術的なトレードオフはあるが、価格が安くロボットを短期間に増やせる利点がある。制限はあるものの、米国北中西部の気象条件にも左右されにくい。あなたが悪天候の中を歩きたくないならロボットもおそらく歩きたくないでしょう、と同社は言っている。

同社CEOのLuke Schneider(ルーク・シュナイダー)氏は資金調達に関するリリースの中で「我々のプラットフォームは既存のテクノロジーを革新的に用いて、必要なものを必要なときに必要とする人々のいる場所で提供します。企業が支払うコストを削減し、道路の混雑を緩和し、二酸化炭素排出量を減らしながらこれを実現します」と述べている。

今回調達した資金で地元アナーバー以外にも運用を広げる計画だが、どこでテストをするかは発表されていない。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Refraction AI物流ロボット配達

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

ロボット配達にアーリーステージの資金が続々

過去数十年のイノベーションのほとんどは、ソファから離れずして欲しいものを手に入れる方法に集中していた。

これまでのところ、オンライン注文やオンデマンド配達により、このゴールはほぼ達成できた。カーソルをあて、クリックし、待つ。しかし一つだけ落とし穴がある。配達する人だ。誰か配達する人がいなければ、我々は寝そべってピザを注文することができない。

そこでロボットの登場だ。テック未来派の人は、自動運転の車とAI搭載のロボットが間もなく玄関先までの配達を取って代わるようになるという予測を耳にしているだろう。それらは、テイクアウトを届けたり、荷物を配達したりと、こうした仕事で現在生計を立てている多くの人間をお払い箱にするとみられる。

これが本当に現実のものになるとすれば、ラストマイル配達のロボット化に現在取り組んでいるアーリーステージのスタートアップはまだほんの一握りのため、それは大きなチャンスといえる。下記で、そうしたスタートアップが何者か、現在どんなことをしているのか、誰がバックアップしているのか、どこで展開しているのかみてみよう。

プレイヤー

Crunchbaseデータによると、過去数年の間にシードもしくはアーリーステージの資金調達を実施した、北米に拠点または運営母体を置くロボット配達を手がけている企業は少なくとも8社だ。

これらは、かなりの額を調達したスタートアップから、まだ貧弱なシードステージのところまで幅がある。

AlphabetのWaymoの元エンジニアが創業した自動配達のスタートアップで、シリコンバレー拠点のNuroが最も多く資金調達していて、これまでのその額は9200万ドル。他社は数百万ドルといったところだ。

下のチャートでは、主なプレーヤーをみてみよう。資金調達額が大きい順に並べていて、拠点や主な投資家も表記している。

誰がサポートしているか

スタートアップはロボット配達分野の道を切り開いているかもしれないが、単独で行なっているわけではない。大企業がこの分野で足がかりを維持している一つの方法は、アーリーステージのスタートアップに出資し、パートナー関係を結ぶことだ。大企業は有望なシードの長いリストに名を連ね、ベンチャー投資家もまたこの部門に目をつけている。

大企業投資家のリストには、Starship Technologiesの主要投資家であるドイツのDaimlerが含まれる。一方、中国のTencentはサンフランシスコ拠点のMarbleを支援していて、トヨタAIベンチャーズはBoxbotに投資している。

提携状況を見る限り、食べ物のテイクアウト配達サービスにロボット配達は最も使われるようだ。

ゆっくりとした走行、中くらいサイズ、6輪のロボットを展開するStarshipは特にテイクアウトにかなり食い込んでいる。Skypeの創業者Janus Friis とAhti Heinlaが立ち上げ、サンフランシスコとエストニアに拠点を置くこの会社はカリフォルニアの一部とワシントンD.C.でDoorDashそしてPostmatesと手を組んでいる。またドイツとオランダではドミノ・ピザとも提携している。

もう一つのかわいらしい6輪ロボットのメーカーRobby Technologiesもまたロサンゼルスの一部でPostmatesと提携している。ボックス型のロボットを“あなたのフレンドリーなご近所ロボット”と売り込んでいるMarble昨年、トライアルとしてサンフランシスコでYelpと組んだ。

サンフランシスコのベイエリアが突出

世界征服というビジョンにおいては、グローバルであることが必須である一方で、ロボット配達の能力蓄積はまだローカルレベルだ。

Crunchbaseが追跡しているシードとアーリーステージのスタートアップ8社のうち6社はサンフランシスコのベイエリアを拠点としていて、残りの2社が他地域で展開している。

なぜこうなのだろう。1つには、UberやTesla、Waymoといったローカルの大企業から移ってくる鍵となるエンジニアリングスタッフがいるなど、このエリアに才能が集中していることが挙げられる。加えて、ロボットスタートアップがスケール展開するのに必要になると思われる投資資金が用意されていることもある。

シリコンバレーとサンフランシスコは住宅供給が少なく、またその価格は天文学的な数字になるほど高価なことで知られる。そこでは、雇用主は物を配達する人を探すのに苦労していて、配達人の賃金はデリバリースタッフに取って代わるロボットをデザインするようなプロジェクトで懸命に働いているテック労働者のものにひけをとらない。

この地域には動きの遅い、歩道を走る配達ロボットは不向きだ。サンフランシスコにおいては、びっくりするくらい急勾配の通りや歩道は、人間そして乗り捨てられたスクーターであふれている。市議会はほとんどの場所で配達ロボットを禁止し、許可したエリアに制限することを決めた。

ピザ配達ロボットマネジャーの登場

しかしサンフランシスコが配達ロボットの浸透に慎重な一方で、スタートアップKiwi Campusが事業展開するカリフォルニアのバークリー周辺を含む他のエリアではより好意的に受け入れている。

この過程においては、ロボット監督という面白い新たな仕事が作られている。これはラストマイル配達の雇用の将来にいくらかの光を当てることができるかもしれない。

初期トライアルを行なっているいくつかのスタートアップにとって、ロボットの世話をする仕事には、ロボットの監視や、ロボットが難なく割り当てられた仕事をこなしているか確認する、というものが含まれる。

遠隔からのロボット管理もまたその一つで、今後最も増えることが予想される。たとえば、Starshipはエストニアに置くオペレーターが、遠く離れた国で行われているロボットによる配達を追跡・管理している。

現段階で、配達ロボットのモニターとコントロールという仕事が、従来人が行っていた配達という仕事より給料と雇用条件がいいかどうかはまだわからない。

しかしながら、少なくともモニターとコントロールであれば理論的にはソファに寝そべったままできるはずだ。

イメージクレジット: wk1003mike Shutterstock

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(翻訳:Mizoguchi)