The.comがローコードでコラボレーション可能なウェブサイトビルダーを発表、テンプレートではなくカスタマイズ可能な「ブロック」を使用

The.comという覚えやすい名前のスタートアップ企業が、ウェブサイト構築を刷新すると同時に、ウェブクリエイターが自分の作品の功績を認められるようにする取り組みを行っている。440万ドル(約5億1000万円)のシード資金を携えてひっそりと登場した同社は、業界標準であるテンプレートベースのアプローチを捨てた「ローコードのウェブサイト構築プラットフォーム」と呼ばれるものを開発した。The.comのサイトビルダーは、テンプレートの代わりにコミュニティが作成したコンポーネントを使用している。コンポーネントは、サイトにドロップして他のユーザーと共有できる。サイト作成者は、サイト構築の過程で互いに協力し合い、直接チャットすることも可能だ。

同社は、NFXが主導し、Sound Ventures、VSC Ventures、Village Global、Harry Stebbingsが参加する440万ドルのシード資金をクローズした。

The.comのアイデアは、共同創業者であり兄弟でもあるJeff McKinnon(ジェフ・マッキノン)Clarke McKinnon(クラーク・マッキノン)から生まれた。この創業者らは、The.comを設立する前の2012年から2019年まで、ボルダーで自らウェブ開発会社を経営し、ウェブサイトの開発とデザインに携わってきた経歴の持ち主だ。この間、彼らは従来のウェブ開発で生じるフラストレーションを身をもって体験したと、クラークは語る。

「私たちは、誰かが私たちのニーズをすべて解決してくれる完璧なプラットフォームを作ってくれるのを待っていました。でも、そんなことは起きなかった」とクラークはTechCrunchに語った。「だから、自分たちで作り始めたんです」。

共同創業者、ジェフ&クラーク・マッキノン氏(画像クレジット:The.com)

当初、彼らのプラットフォームは社内ツールとなる予定だったが、現在の顧客が関心を持ち、兄弟にこの製品をもっと広く利用できるようにしてビジネスにすることを勧めた。そこで兄弟は、2019年5月に代理店事業を停止し、現在のThe.comに取り組み始めた。

クラークの説明によると、従来のウェブ開発や古いプラットフォームには速度とセキュリティの問題がある。しかし顧客からより細かいカスタマイズを求められると、ハードコーディングが必要になり、更新のための継続的な作業が必要になるという葛藤も常にある。さらに現在のウェブ構築プラットフォームの多くは、すでにサイトデザイナーである人たちを対象にしている。しかしクラークら共同設立者たちは、自分たちの経験から、ウェブサイトに貢献する人の中にはデザイナーではない人が大勢いることを理解していた。

「誰もが同じ土俵に立てるウェブサイト構築プラットフォームが必要だっただけなのです」とクラークはいう。

The.comでは「サイトを作成」ボタンを押すだけで簡単に新しいウェブサイトを立ち上げることができ、すぐにサイトのインフラを導入できる。ユーザーは他の人を共同制作者として招待でき、ボタンをクリックするとサイトの編集を開始できる。一から作ったり、テンプレートを選んだりするのではなく、クリエイターは使いたいパーツやコンポーネントを個別に選べる。つまり、The.comの1人のクリエイターからナビゲーションを、そして別のクリエイターからはフッターを、そしてヒーロー画像、ヘッダー、バナー、ボディ要素など、さまざまな要素をコミュニティのメンバーから選ぶことができる。要素を選ぶと、画面上に紙吹雪が舞い上がり、元のコンポーネントの制作者に称賛としてクレジットが与えられる。The.comは、今後クリエイターに金銭的な報酬を与える方法を展開する予定だ。

画像クレジット:The.com

クラークは「目標は、要素を使ってサイト構築している人たちが、要素を最大限に活用できるようにすることです」という。再利用可能な要素を作る動機について「私たちが代理店だった頃、すばらしいサイトをたくさん作りましたが、それらは一度使われただけで、それっきりでした。お客様にあまり気に入らないと言われたもの、合わなかったものなど、実際のサイトには登場しなかったものがたくさんあります。そのようなものから繰り返し収入を得ることができれば最高だと思います」と語った。

サイトビルダー自体もおもしろいデザインになっている。作成するウェブサイトの前面に、フローティングウィンドウが表示される。だが他のWYSIWYGデザイナーより少し高度な作りになっており、サイトのページ、ブロック、シート(基本的には自由形式のデータベース)を管理するセクションがある。個々のウェブサイト要素を追加した後、ウェブサイトのコードを書いたり編集したりするのと同じように、フォント、色、画像、テキストなどを変更して細かくカスタマイズすることができる。また、生のJavaScriptを追加したり、一から新しい要素を作成することによっても変更を加えることができる。

サイト上での作業が進むにつれて、変更した内容は画面上にライブで反映されるため、実際の見た目を確認するために「プレビュー」をクリックする必要はない。また、カスタマイズした要素は、必要に応じてコミュニティのマーケットプレイスで再度共有することもできる。

画像クレジット:The.com

The.comはこのマーケットプレイスで、クリエイターが自分の作品に対して直接報酬を得るという、クリエイターエコノミーのトレンドを利用している。創業者たちの考えでは、自分のツールを使ったサイトのカスタマイズを勧める「ウェブサイトのインフルエンサー」になるトップクリエイターもいるかもしれないということだ。

クラークは「マーケットプレイスでは、品質、優れたデザイン、印象的な構築があれば、クリエイターはどんどん人気になっていくでしょう」と指摘する。「これから人々は、自分の仕事への評判を期待するようになります」。要素が繰り返し利用されると、The.comは、コミュニティやウェブサイトを含め、元のクリエイターが称賛を得られるようにする予定だ。

The.comによると、現在のコミュニティ規模は、顧客数で数千人、日々のアクティブユーザー数で数百人であるという。

The.comのウェブサイトビルダーでもう1つ注目すべきなのは、共同作業の要素である。The.comの顧客の多くは、個人ユーザーではなく、代理店や中小企業だ。つまり、複数の人が一緒にサイトを更新することができるようになる。現在は、それぞれの人が編集しているパーツの横にプロフィールアイコンが表示されるが、将来的には、ユーザーが並んで編集できるようになる。また、チャット機能も内蔵しているので、他のサイト協力者と構築について直接話すこともできる。

画像クレジット:The.com

ひっそりと登場したこのスタートアップ企業は、最初の料金プランも発表している。まずは試してみたいという人のためのベーシックプランは無料。他の階層は、機能セット、サポートの必要性、サイズに応じて、月額36ドル(約4160円)、199ドル(約2万2990円)、1499ドル(約17万31080円)となっている。The.comの顧客は、中小企業やスタートアップ企業から大企業に至るまで幅広い。高性能なサイトでは、Shopifyの上にThe.comをヘッドレスオプションとして使用し、ウェブサイトの速度を上げ、直帰率を減少させているものもあるとのことだ。

The.comは、表向きはサンフランシスコに本社があるが、11人のフルタイム従業員から成る分散型チームを抱え、合計15人のチームで事業に取り組んでいる。今回発表されたシード資金を使ってエンジニアとコミュニティ分野で雇用し、さらなる製品開発に取り組む予定だ。

The.comという憧れのURLを獲得したことについては、創業者たちによると、彼らの親友がこの取引の力になってくれたらしい。

クラークは、このメンターが誰であるかは明かさなかったが「家族・友人割引です。この人は長い間ドメインの世界に関わっていて、たくさんのいいものにアクセスができたので、私たちは幸運でした」と述べた。

NFXのジェネラルパートナーのJames Currier(ジェームス・カリアー)は「The.comのプラットフォームには、Web1.0や2.0のウェブサイト構築システムとは異なり、ネットワーク効果とコンポーザビリティがあります」と語る。「クリエーターにオーナーシップが与えられ、クリエーターは新しいプリミティブを使ってウェブを再構築できるようになります。私たちは、このようなカテゴリー革命を待ち望んでいたのです。もしあなたがまだWordPressを使ってウェブサイトを作成しているなら、The.comに乗り換えたくなるでしょう」。

画像クレジット:The.com

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

「もっと早く知りたかった」、Gesundが医療アルゴリズム検証データを提供するために2.3億円を調達

医療アルゴリズムを開発することと、それが本当に機能することを証明することは、まったく別の話だ。そのためには、入手しにくいある重要なものが必要だ。医療データである。現在、とあるスタートアップ企業が、そのようなデータを、検証研究を容易にするツールとともに提供する準備を整えている。

今週、2021年に創業されたGesund(ゲズンド)が、500 Globalが主導する200万ドル(約2億3000万円)のシードラウンドでステルスから浮上した。CEOで創業者のEnes Hosgor(エネス・ホスゴー)氏はTechCrunchに対して、同社はすでに多くの実績を残していて、実行可能なプラットフォーム、30社の見込み顧客との取引、今四半期の売上見込みなどを見込んでいると語る。

基本的にGesundは、医療アルゴリズムを開発するAI企業や、自身のモデルをテストするアカデミアのためのCRO(Contract Research Organization、医薬品開発業務受託機関)なのだ。一般のCROが医薬品や医療機器企業向けの臨床試験をデザインするのと同じように、Gesundのプラットフォームは、AI企業が自社の製品をテストするためのデータをキュレーションし、その比較をスムーズに行うためのITインフラを構築する。

ホスゴー氏は「私たちは、自分たちを機械学習運用企業だと考えています」という。「私たち自身はアルゴリズムを手がけません」。

医療アルゴリズムは、学習させるデータがあってこそ役に立つが、多様で有用なデータセットの入手は困難であることが知られている。例えば、2020年にJAMAで発表された研究では、放射線科、眼科、皮膚科、病理科、消化器科などの分野にわたる深層学習アルゴリズムを説明した74の科学論文を分析し、これらの研究で使われたデータの71%がニューヨーク州、カリフォルニア州、マサチューセッツ州からもたらされたものだということを報告している。

実際、米国の34の州は、これらのアルゴリズムの学習に使用したデータを提供しておらず、より広い母集団に対する一般化の可能性が疑問視されている。

また、この問題は医療機関の種類を越えて存在している。大規模かつ権威ある大学病院で収集されたデータを使ってアルゴリズムを学習させることは可能だ。しかし、それを地域の小さな病院に導入しようと思っても、そうしたまったく異なる環境ではうまくいく保証はない。

BMJに発表された152件の研究のメタレビューによれば、アルゴリズムを訓練するために使用されるデータセットは、一般的に、必要とされるものよりも小さいという。当然ながら、アルゴリズムの成功例もあるものの、これは業界全体の問題なのだ。

テクノロジーだけでこれらの問題を解決することはできない。そもそも、そこにないデータを分類したり、提供したりすることはできないのだ。ヨーロッパ人以外の祖先を持つ人々の遺伝子研究が、非常に不足していることを考えてみて欲しい。しかしGesundは、既存のデータへのアクセスを容易にし、データ共有の新たな道を開くパートナーシップを構築するという、テクノロジーを役立てられる可能性のある問題に焦点を絞っている。

Gesundの検証プラットフォームの画面

Gesundのデータパイプラインは「各臨床施設と締結している、データ共有契約」に基づいているとホスゴー氏はいう。現在、Gesundはシカゴ大学医療センター、マサチューセッツ総合病院、ベルリンのシャリテ大学で収集された画像データにフォーカスしている(同社は今後、放射線医学以外の分野にも拡大する計画だ)。

機械学習アプリケーションで使用するためのデータの集約と配信は、Nightingale Open Science Project(ナイチンゲール・オープンソースプロジェクト)のような、研究者に臨床データセットを無料で提供する他の企業によっても行われている(物議を醸しているGoogleの「Project Nightingale」[プロジェクト・ナイチンゲール]とは提携していない)。だが、データそのものも重要な要素だが、実はホスゴー氏が秘密兵器と見ているのは、同社のテクノロジー・スタックなのだ。

「誰もがクラウドでML(機械学習)をやっています。ですが、一般的な医療機関はクラウドを持っていないので、すべてが失われてしまうのです」とホスゴー氏はいう。「そこで私たちは、病院のファイアウォール内に設置できる技術スタックを構築しました。これは機械学習にはつきもののサードパーティのマネージドサービスには一切依存していません」。

そこを起点として、プラットフォームには「ローコード」のインターフェイスが搭載されている。つまり、医師や医療機関は、基本的に必要なデータセットをドラッグ&ドロップし、そのデータに対して自身のアルゴリズムをテストすることができるのだ。

ホスゴー氏は「創業して約6カ月ですが、すでに本格的に走っています。私たちは開発した最初の製品は、クラウドリソースにアクセスできない高度なコンプライアンス環境において、モデルの所有者がデータに対して自身のアルゴリズムを実行し、正確なメトリクスをその場で生成できるようにするものです。それが私たちの強みなのです」と説明する。

現時点では、GesundはNightingaleと同様に、一部のサービスを無料で提供している。同社のCommunity Edition(コミュニティエディション)では、手持ちのアルゴリズムがある研究者たちが、自分たちのアルゴリズムを無料でテストできる(ただし、自分たちのデータセットをアップロードする必要がある)。

一方、同社の「プレミアム」版の費用を払うのは、AI企業だ。これによって、お金を払っている顧客は、独自のデータセットにアクセスできるようになるとホスゴー氏はいう。そして、必要なデータにはお金を払うという実績もある。現在、Gesundは30の潜在顧客との交渉中だとしていて、今期中に収益を上げる予定だという。

「私たちは2021年11月にシカゴで開催されたRSNAに出席しましたが、話を聞いたあらゆるAI企業から『ああ、もっと早く知りたかったです』という発言を聴きました」。

現在Gesundが調達した資金は今回の200万ドル(約2億3000万円)のプレシードラウンドだけだが、ホスゴー氏は2022年中に再び資金調達を行えることを期待している。近い将来、同社は研究開発に注力しつつ、米国および欧州における臨床提携を拡大する予定だ。

画像クレジット:Gesund

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(文:Emma Betuel、翻訳:sako)

自動接客ツールanybotを開発・運営するエボラニが3.4億円調達、ノーコード・ローコードのミニアプリの構築基盤化を加速

自動接客ツールanybotを開発・運営するエボラニが3.4億円調達、ノーコード・ローコードのミニアプリの構築基盤化を加速

接客用のチャットボットやミニアプリなどを構築できる「anybot」(エニーボット)を開発・運営するエボラニ(Evolany)は2月21日、合計3億4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リード投資家のネットスターズ、またAMD1号ファンド(プレミアグループ)、D4V1号投資事業有限責任組合、個人投資家や銀行。

ネットスターズ、プレミアグループ、既存株主LINE社などとともに、小売やサービス業を中心に、anybotのノーコード・ローコードのミニアプリの構築基盤を進化させ、従来より「早く・安く・ストレスのない」ソリューションを企業に届けることで、LINEミニアプリの普及および日本のDX化推進に貢献するとしている。また、世界に受け入れられるようなサービス提供へのチャレンジをスタートさせたいという。

anybotは、チャットボットやミニアプリ、電話自動応答のIVRといった接客ツールを、ノーコード・ローコードで実現できる構築基盤。すべてのデータを自動的にCRM(顧客関係管理)に保存しセグメント化を行うため、導入企業は、ユーザーとの間でLINE・メール・Messenger・Instagramなどにまたがったやり取りを実現できる。また、様々なステップ配信やセグメント配信も自動で行える。接客に必要な各種予約機能、会員証・ECや決済、クーポンといったキャンペーン機能も備えており、企業の集客からリピート率・ロイヤリティ向上、業務効率化などの課題解決を支援する。

エボラニは「最も役に立つ・感動する接客体験を。」をミッションに掲げ、2018年3月に設立。「町の店長に届けられる自動化社会へ。」をモットーとし、流通・サービス業の現場における集客および活性化の課題を解決するためプロダクトの改善を行ってきた。多様な業種の約3500社にサービスを提供しているという。

製品ピボットのタイミング、2つの決算報告の話

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさんこんにちは。米国は(米国時間)2月21日はお休み(大統領の日、ワシントン誕生日)なので、長い週末だ。おそらく読者がこれを読んでいるときには、私は(願わくば)ソファで3匹の犬と一緒に昼寝をしていることだろう。

しかし!まず最初に!やるべきことはたくさんあるが、先週の初めに行われたあるスタートアップのピボットと、そう、お金についても少しお話しよう。

Jukesのピボット

eスポーツの世界は、かなり細分化されている。さまざまなゲーム、フォーラム、トーナメントシリーズ、プラットフォーム、チャットアプリ、ウェブサイトの上に構築されているので、お気に入りのゲームでさえ、一体何が起こっているのかを理解するのには大変な労力を必要とする。そこでJuked.gg(ジュークド)は、2020年になってeスポーツに関するニュースをひとまとめに管理するハブの構築に着手した。

初期の同社はある程度の成功を収め、私達も記事にしたように、2021年初頭には100万ドル超え(1億円強)の調達ラウンドを実施した。しかし、共同創業者のBen Goldhaber(ベン・ゴールドへーバー)氏によれば、同氏がグラフで「右肩上がり」と表現したような急速な成長時期もあったものの、2021年にはアクティブユーザー数が頭打ちになった。

何が起きたのだろう?「FishStix」というゲーマータグも持つゴールドへーバー氏によれば、Jukedはeスポーツファンの上位1%にはリーチできていたものの、それ以上広がることはできなかったのだという。そこで、この新しい会社はスマートなやり方として、ユーザーに自社のサービスの感想を尋ねた。それらの会話を通して、ユーザーが、コミュニティの「毒性」、スパム、感情的な会話などのeスポーツ特有の問題を提起してくれたのだとゴールドへーバー氏は語っている。

そこでJukedは、少し軸足を変えて、ユーザーが事実上求めていたソーシャルネットワークを構築することにした。すなわちeスポーツファンにとって「毒性」が少なくもっと安心できる場所である。

この製品は、約750人のユーザーによるクローズド・アルファ版としてのテストを経た後、米国時間2月12日に一般公開された。

AppAnnie(現在はData.aiとなっているようだ)の情報によると、このサービスは今週米国のiOSユーザーの間で、ソーシャル・ネットワーキングのカテゴリー限定ではあるがチャート入りを果たした。2、3カ月後にまた、ダウンロードがどのように進んだかを確認してみたいと思う。

このサービスがどのようにして大規模にコミュニティの「毒性」対策を行うのかなどへの大きな疑問は残る(サインアップのためには、かなり強い条件に同意しなければならなかった)。Jukedは将来的にはAIをアシスタントに使った人間によるモデレーションを行うことを意図しており、ユーザーには電話番号の登録を求めている。すべて良いアイデアではあるが、同社は大規模な検証は行っていない。

私はeスポーツのファンなので、Jukedが取り組んできたことは理解している。しかし、私は必ずしも市場に新しいソーシャルネットワークを求めているわけではない。このスタートアップの市場での戦略が、どのようにしてより多くのポイントを獲得できるかを見いくことにしたい(そしておそらく資金調達だ。エクイティクラウドファンディングのラウンドから1年経っているので、同社が今後の四半期でもっと多くの資金を調達しようとしたとしても、驚くようなことではない)。

2つの決算報告

今週は、ハイテク企業の決算報告が相次いで行われた。いつものように市場に目を向け、スタートアップ企業の今後を占うヒントを探してきた。

私たちの仕事のほとんどはここにまとめてある。今日のテクノロジー企業にとって今後の業績予想がいかに重要であるかを掘り下げている。投資家にとっては、将来の見通しに比べて、過去の実績は全然重要ではないようだ。そのため、Amplitude(アンプリテュード)が公開市場の投資家から非難を受けたことには、注意をひかれた。同じような批判を受けた会社はMeta(メタ)も含めて他にもあったので、私たちが最近上場したAmplitudeを非難しているのだとは思わないで欲しい(同社は2021年直接上場を行っている)。

しかし、Appian(アピアン)の業績発表は、また別の側面を見せた。ローコードオートメーション企業のAppianは、他のハイテク企業よりも静かに公開市場に登場してきた。それは決して悪い話ではない。同社のCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏は、先週の決算説明会で私にそう語った。

それはなぜか?それはイノベーションとは何かというカルキンス氏の定義に帰結するが、イノベーションとは単に何かを作ることではない。TechCrunchに語ったところによると、彼の会社は長らくエンジニアリング主導の組織であったが、それだけではクールなものを作るのには不十分だという。新しい機能を市場に出して売り、使ってもらわなければ、実際にはイノベーションを起こしていないのだ。イノベーションとは、製品ではなく体験であるとカルキンス氏はいう。イノベーションの最終的な成果は、新しい機能に対する顧客からの証言であると彼は付け加えた。すなわち誰かが新しいものは本当に良いものだという言葉を残したときだ。そのためには、人々が試せるように、その存在を知らしめる必要があるのだ。

私は彼の視点が好きだ。これは、ブロックチェーンの世界におけるいわゆるイノベーションの多くが、本当のイノベーションではなく仮説の集合を生み出しているとしか思えない理由を説明するのに役立つ。確かに、現在市場に出ている難解なWeb3製品の中には、実際に影響力を持つものもあるだろうが、ほとんどのものは、役に立つツールというよりは単にコーディングのトリックだ。

終わる前にもう少しだけ。米国の企業が感じている人材不足は、単に雇用コストを上昇させるだけではなく、Appianのような企業の後押しもしている。同社は、従業員がやりたがらないので、さらに多くの仕事の自動化をしたいという企業からの要望を受けている。そして、不幸な社員たちは追い出されるというわけだ。

こうして、Appianの成長は少し前から加速している。また、決算発表では株価は下落せず、上昇した。話を元に戻すと、これは現在、企業が時価総額を拡大するためにクリアしなければならないハードルだ。数四半期前とは比較にならないほど厳しい市場となっている。そのため、個人的にはIPOの線はまだしばらくは使えないと考えている。

ではまた。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ローコードでサードパーティサービスを統合するプラットフォームDigibeeがシリーズAで約28.7億円調達

ローコード統合プラットフォームDigibeeは、今、すべての同類のプラットフォームが行っていると思われること、つまり資金調達を行う。米国時間2月3日、同社はSoftBank Latin America Fundが主導するシリーズAラウンドで2500万ドル(約28億7000万円)を調達したことを発表した。このラウンドには、ブラジルのKineaG2D Investmentsも参加している。

2017年に登場したDigibeeは、企業がコードを一切触ることなく、統合ワークフローを簡単に構築・展開できるようにするものだ。同じことを喜んでやってくれるプラットフォームは他にもたくさんあるが、Digibeeが他と異なるのは、統合を構築するだけでなく、その統合を再利用可能なビジネスロジックにすることにも重点を置いているサービスである点だ。1年前、同社は「Capsule(カプセル)」と呼ばれる組織全体で共有できる共通の統合機能のパックを発表した。

画像クレジット:Digibee

現在の顧客には、Accentureやブラジルの証券取引所B3、小売チェーンのCarrefourなどがいる。

「私たちは、グローバル企業のデジタル化の旅を支援しています。これにより、企業は経済的に高額な初期費用なしに成長・拡大することができ、人材はビジネスの推進に専念できるようになります。私たち自身は、米国と世界各地に拠点を設け、世界で最も革新的な企業を顧客にしていきたい」と、Digibeeの共同設立者兼CEOであるRodrigo Bernardinelli(ロドリゴ・ベルナーディネッリ)氏は語る。

同社によると、今回の資金調達は、米国での市場開拓戦略の支援に使う予定だという。

「私たちのプロダクトは、競合他社よりもはるかに優れたシステム統合の課題を解決しており、多国籍の顧客は私たちにグローバルな事業展開を求めています。そのためには、各ターゲット市場で優秀な人材を採用する必要がありました」と、ベルナーディネッリ氏はいう。

また、同社は事実上すべての機能において、従業員数を急速に増やす計画であることも明かした。

SoftBank Latin America Fundのアーリーステージ投資担当マネージングパートナーであるRodrigo Baer(ロドリゴ・ベア)氏は、次のように語る。「Digibeeへの投資に、とてもエキサイトしています。同社は、統合の費用という問題に挑戦しています。それは、ソフトウェア経費の50%以上を占めることもあります。それでも、企業は統合化によって、自他複数のシステムを接続してデジタルトランスフォーメーションを実現できます。Digibeeの営業力はワールドクラスのものなので、そのソリューションを市場化していく能力があります。これにより彼らのプロダクトは、グローバルなプレイヤーに育ちます」。

画像クレジット:Ed Peeters/EyeEm/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

膨大な量のデータのクラウド移行をローコードで実現するProphecyが約28.4億円調達

米国時間1月20日、データエンジニアリングのローコードプラットフォームであるProphecy.ioが、Insight PartnersがリードするシリーズAのラウンドで2500万ドル(約28億4000万円)を調達したと発表した。既存投資家であるSignalFireとBerkeley Skydeck、および新たな投資家Dig Venturesもこのラウンドに参加し、同社の総調達額は3100万ドル(約35億3000万円)になった。

Prophecyのユーザーエクスペリエンスの核は、データエンジニアやアナリストがワークフローを構築するためのビジュアルインターフェースとコードエディターをシームレスに切り替えることができるローコード環境だ。このインターフェースによって、Apache Sparkのコードをすばやく作成し、そのコードをAirflowサービスを通じて容易に実行することできる。

このコードとビジュアルインターフェースを切り替えていく方法で、一方が行った変更がすぐにもう一方に反映するようになり、また必要に応じてビジュアルインターフェースをカスタムの要素で拡張することもできるため、マーケットで優位に立てるとチームは願っている。まだレガシーなツールを使っている企業が非常に多いため、Prophecyは企業が既存のETLワークフローをモダナイズできるためのトランスパイラーを提供している。

Prophecyの共同創業者Raj Bains(ラジ・ベインズ)氏は、次のように述べている。「誰もが、データは新たなオイルだと、もう10年ぐらい言い続けています。しかし、実際に大企業へ行ってみると、データ管理は混乱しています。そんなところへ私たちが出ていって『直しましょう』というのです」。Prophecyと提携したDatabricksやSnowflakeはデータを利用するための処理エンジンを構築しているが、企業はクラウドへの移行を同時に進めているため、重い作業を行うための多くのツールをまだ必要としていると同氏はいう。

ベインズ氏によると、これらの企業は、オンプレミスで動いている何万ものデータパイプラインが下層にあることが多いという。そこでProphecyのツーリングによりこれらのパイプラインをモダナイズして、クラウド(できればProphecyのプラットフォーム)に移した方がすっきりする場合が多い。

つまり「そのために作ったコンパイラーは、極めて高度なツールです。それは、彼らの古いデータパイプラインを読み、クラウドとクラウド技術のための新しいデータパイプラインを自動的に書き出します。私たちは大企業の膨大な量のデータエンジニアリングの残骸に取り付いて、それらの全体をクラウドへ移行させる。現在、クラウドを志向している大企業は多いのですが、成功する移行方法はわかっていません。そこで、私たちはクラウドへの移行を支援し、まったく異なるエコシステムであるクラウドの世界で彼らが成功できるようにするのです」。

Prophecyは設立から間もないが、すでに多くのFortune 500や50の企業がデータのインフラの構築と管理のために同社サービスを利用している。

Insight PartnerのマネージングディレクターGeorge Mathew(ジョージ・マシュー)氏によると、同社に関心を持った理由は、ベインズ氏がHortonworksやNVIDIA、Microsoftなどに在籍していたからなどさまざまだという。

「ラジ(・ベインズ)とProphecyのチームは、昨日までの古いシステム、特にそのデータ部分をよく知っている。だからそれを、クラウドネイティブな世界のどこへどうやって移せば、その巨大な移行が成功するかもわかっています。しかも、ノーコード / ローコードでそれができるのです」とマシュー氏はいう。同氏によると、現在はデータウェアハウスやレイクに積み上がった膨大な量のデータを抱えている企業が増えているたタイミング的にも良いという。数年前までは、それほどでもなかった。

ベインズ氏が掲げる2022年の目標は、プロダクトをもっと磨いて顧客がパイロットではなくプロダクションで成功できるようにすることだ。そのため、当然ながらこの度の資金は同社の市場化努力、特にフルスタックのデータエンジニアリングプラットフォームの構築に投じられる。

画像クレジット:Artur Debat/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アプリ統合プラットフォームJitterbitがローコードサービスのPrimeAppsを買収

APIトランスフォーメーションカンパニーのJitterbit(ジタービット)は、トルコのローコードアプリケーション開発サービストルコPrimeApps(プライムアプス)を買収したことを米国時間1月12日に発表した。Jitterbitは自社のAPIプラットフォームをPrimeAppsと組み合わせることで、非技術者がビジネスアプリを簡単に作れるエンド・ツー・エンド・プラットフォームを提供する。ビジネスアプリには、ほぼまちがいなく、複数のデータソースの統合が関与している。この新しいプラットフォームは2022年4月に提供開始される予定だ。

両社は、本件の金額面の詳細を公表していない。JitterbitのCEOであるGeorge Gallegos(ジョージ・ガレゴス)氏は「数十億ドル(数千億円)の取引と比べてお買い得で」と信じているとだけ語った。

Jitterbitはちょっとした買収まつりの状態にある。2021年11月には中南米をターゲットにしているエンタープライズ向けiPaaS(サービスとしての統合プラットフォーム)プロバイダー、Wevo(ウィボ)を買収、5月にはこれもiPaaSサービスでオンプレミスあるいはクラウドベースのeコマースとCRMシステムの間でデータ統合を可能にするeBridgeを買収した。こうした動きを可能にした理由の一部は、未公開株式投資会社Audax(オーダックス)が2020年に行った同社への投資だ。

Jitterbitは最近、自社プラットフォーム上にノーコードあるいはローコードサービスを載せることにチャンスを見出した。ガレゴス氏によると、会社は設立当初からビジネスプロセスの自動化に焦点を合わせてきた。多くの場合、この種の統合や新しいワークフローから生まれるユーザー体験は、デベロッパーが作らなくてはならない。「これが繰り返し起きていることに気づきました。それを自分で開発するか誰かを探すかを考えていた時にPrimeAppsを見つけ、それはすばらしく最適な組み合わせでした」とガレゴス氏は言った。「これは当社の現行顧客がエンド・ツー・エンド・ソリューションを1つだけもてばよいようにするという私たちの能力を加速するための鍵です」。

PrimeAppsは、Serdar Turan(サーダー・トゥーラン)氏が2015年に設立して以来、外部資金調達を一切行っていない。同社の従業員25名は全員Jitterbitに移る。「以前から世界に進出する機会を常に伺っていました。しかし、簡単ではなく、現実は厳しいものでした」とトゥーラン氏はいう。「Jitterbitの訪問を受けた時、彼らはすでにこの分野でかなり大きく、私たちに欠けていたものを見事に補っていました。私はチャンスだと感じ、力を合わせて成長を目指すことにしました」。

PrimeAppsブランドはこの契約の一環で消滅し、サービスはJitterbitに完全に統合され、顧客も時間をかけて移行される、とトゥーラン氏は言った。

Jitterbitのガレゴス氏によると、同社はMuleSoft(ミュールソフト)やBoomi(ブーミ)などとiPaaSビジネス分野で競合している。そして、これらの会社はJitterbitが今回PrimeAppsとの統合によって実現したエンド・ツー・エンド・ソリューションの類を提供していないため、今後彼らが似たような動きをしてもおかしくない。

「ローコード開発の未来は現実になりつつあります。Jitterbitと一緒になることで、私たちはこの革命を進める先駆者となり、それによって仕事の進め方は大きく変わります」とトゥーラン氏は語る。「Jitterbitの高度なiPaaSとAPI管理ソリューションを得ることで、当社のプラットフォームは、顧客の一番近くにいる一般人デベロッパーに、多数のITエンジニアの力を借りることなく迅速にビジネス課題を解決する新たなデジタル体験を作り出す力を与えます」。

画像クレジット:blackred / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nob Takahashi / facebook

AWS、ローコードのアプリ開発ツール「Amplify Studio」を発表

2021年のre:InventカンファレンスでAWSは米国時間12月2日、Figmaに接続されるノーコード / ローコードサービスで、これによりデベロッパーはクラウドに接続されたアプリケーションを迅速に開発することができるAmplify Studio発表した。Amplify Studioは既存のAWS Amplifyサービスの拡張で、ウェブアプリケーションやモバイルアプリを作れるという基本機能は同じだが、Amplify Studioはドラッグ&ドロップのインターフェースなので使いやすい。

AWSは、Studioを人気のあるユーザーインターフェースデザインツールFigmaに接続するという、おもしろいことをしている。これによりデザイナーはインターフェースをFigmaで作り、そのあとデベロッパーがそれを自分のバックエンドデータに接続してStudioの中でアプリケーションのロジックを作る。そのためAWSが自分のツールを作る必要がなく、Amplify StudioがFigmaのデザインをReact UIのコンポーネントのコードに翻訳する。

画像クレジット:AWS

AWSのRene Brandel(ルネ・ブランデル)氏は、声明で「Studioの新しい『UI Library』(プレビュー)で、FigmaとAmplify Studioのコンポーネントを同期できます。またAmplifyには便利なFigmaファイルがあるため、仕事の開始が早い。AmplifyのFigmaファイルには、UIのプリミティブと既成のコンポーネントの両方があります。さらにStudioは、Figmaで作られた新しいコンポーネントも同期できます」。

画像クレジット:AWS

AmazonのWerner Vogels(ワーナー・ヴォゲルス)CTOによると、同社はこれを今でもデベロッパーファーストのサービスと見なしており、特にフロントエンドのエンジニアが対象だ。つまり、まだあちこちにコードを少し書かなければならないということだが、それによりデベロッパーは自分のアプリケーションを既存のDevOpsのパイプラインにエクスポートすることが容易にできる。

Amplify Studioでは、必要なら一部の既成コンポーネントを、AWS Cloud Development Kitを使って、デベロッパーがAmplify Studioの中でオーバライドしてもよい。AWSによると、これのおかげでデベロッパーは、ニーズや成長に応じてアプリケーションをスケールできないといった壁にぶつかることがない。

画像クレジット:AWS

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ローコード / ノーコードアプリの安全性確保を支援するZenityが約5.8億円調達

基幹業務のアプリケーションの構築にローコード / ノーコードのツールを採用する企業が増えており、そのエコシステム内にツールのセキュリティにフォーカスした新たなサービスが登場しているのも当然かもしれない。テルアビブのZenityはそんな企業の1つで、同社は現地時間11月23日、ステルスを抜けて500万ドル(約5億8000万円)のシードラウンドを発表している。そのラウンドはVertex VenturesとUpWestがリードし、GoogleのCISOだったGerhard Eschelbeck(ゲルハルト・エッシェルベック)氏や、SuccessFactorsのCIOだったTom Fisher(トム・フィッシャー)氏といった多くのエンジェル投資家が参加している。

Zenityによると、従業員たちが自分でアプリケーションを作るようになり、RPA(ロボットによる業務自動化)などのツールを採用するようになると、新たなアプリが、ハッキング行為やランサムウェアなどに対して、これまでなかったようなドアを開いてしまうこともある。

Zenityの共同創業者でCEOのBen Kliger(ベン・クリガー)氏は、このような状況について「企業は現在、大々的にローコード / ノーコードを採用していますが、そのリスクやリスクに対して自分たちが共有すべき責任について理解していません。弊社はCIOやCISOたちをサポートし、彼らがローコード / ノーコードアプリケーションをシームレスに統括できるようにし、不意のデータ漏洩や事業への妨害、コンプライアンスのリスク、悪質な侵害などを防ぐ」と述べている。

Zenityのプラットフォームは、企業にその組織内のローコード / ノーコードアプリケーションのカタログを作らせ、問題の可能性を減らし、彼らの組織のための自動的に施行できるガバナンスのポリシーをセットアップする。同社によると、従来的なセキュリティサービスの方法はローコード / ノーコードのアプリケーションに適用できないにもかかわらず、そんなツールへのニーズだけが独り歩きで増えている。しかもそれを使っているデベロッパーにセキュリティの経験や知識がない。中にはソフトウェア開発の経験知識のないデベロッパーもローコード / ノーコードの世界にはいるだろうという。

画像クレジット:Zenity

同社はCEOのクリガー氏とCTOのMichael Bargury(マイケル・バーガリー)氏が創業した。2人とも、それまではAzureに在籍し、Microsoftのクラウドセキュリティチームで仕事をしていた。

Zenityのアドバイザーで元OracleとQualcommのCIO、そしてeBayのCTOでもあるTom Fisher(トム・フィッシャー)氏は次のように述べている。「ビジネスを邪魔せずローコード / ノーコードのソリューションにありがちなリスクとセキュリティの脅威を減らすことが難題です。Zenityには、ガバナンスとセキュリティツールの完璧な組み合わせと、ビジネスに対するプロのアプローチが備わっているため、企業のデベロッパーは安心してともにセキュリティを構築できます」。

画像クレジット:Zenity

[原文]

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

DXを推進する日清食品がアプリを内製、ノーコード・ローコードで営業担当が25時間で完成

日本マイクロソフトが10月11日から14日にかけて開催中の「Microsoft Japan Digital Days 2021」では、生産性や想像力を高め、組織の競争力に貢献するソリューションや、その導入事例について学べるプログラムが提供されている。

Day 2の10月13日13時5分に行われたセッション「外注から内製化へ。製造業が取るべき次なる一手!日清食品グループが実現した『低コスト』『高スピード』のアプリケーション開発の世界」では、IT企業ではない日清食品がDX推進の一環として行ったアプリ内製化について語られた。その様子をレポートする。

登壇者は日清食品ホールディングスのCIO成田敏博氏と情報企画部係長武田弘晃氏だ。

老舗食品製造企業がアプリ内製化に取り組むようになった背景

日清食品ホールディングスCIO成田敏博氏

日清食品は1948年に設立された70年を超える老舗の食品製造企業だ。売上収益は約5000億円、営業利益が約550円という企業規模である。

2030年に向けた成長戦略テーマ「既存事業のキャッシュ創出力強化」「EARTH FOOD CHALLENGING 2030」「新規事業の推進」を達成するのに欠かせないのが「フードテックイノベーション」であるとしており、デジタルのみならずビジネスの変革も含むためNBX(日清ビジネストランスフォーメーション)としてDXに取り組んでいる。

取り組みを大きく2つの柱に分けており、その柱の1つ「効率化による労働生産性の向上」内に「ツールの最大活用」がある。

同社では、従業員にSurface Proを支給しており、ほとんどの業務がSurface Pro、つまりノートPCで行われているが、工場内作業中、取引先への移動中などではモバイル端末のほうが操作しやすい。腰を落ち着けて作業できる環境であっても、スキマ時間にノートPCを取り出し、起動し、テザリングをし、検索するといった動作は時間や手間がかかる。

そのため、ツール開発に「モバイルファースト」を掲げ、できるだけモバイルで業務を行えるようにすることを目指した。

しかし、製造業のためエンジニアを多数抱えることは現実的ではない。かといって外注では社内のニーズに迅速に対応できない。

そこで、2021年に入ってから内製化のため「ノーコード・ローコード」でのアプリ開発を検討。Power Appsを活用したアプリ開発に取り組むことになったのだ。

25時間で開発した営業活動を助ける商品検索アプリ

日清食品ホールディングス情報企画部係長武田弘晃氏

どの企業でもそうだが、日清食品グループでも営業担当者は商談など外回りが多い。移動中やスキマ時間に、得意先から質問されるであろう商品について調べるには、ノートPCよりモバイル端末に優位性がある。

とはいえ、商品データベースにアクセスするには、支給されているノートPCからしか行えず、開くのが難しい場合は社内の営業事務担当者に当該製品の検索を依頼していたという。場合によっては、検索してもらったものが正しいかを確認後、取引先へメールしてもらうということも行っていた。

これでは、営業事務担当者は、その都度、行っていたかもしれない作業の手を止めて、依頼に応えなければならないし、外回りをしている営業担当者にもストレスがかかってしまう。

そこで、すでにMicrosoft Listsに格納している商品データベースをスマホで検索できるような商品検索アプをMicrosoft Power Appsで開発することにした。

アプリの開発に要した時間は、開発のためのトレーニング、フィードバックを受けての修正の時間も含めてわずか25時間。内訳は、ハンズオントレーニングが2時間、大枠の作成に10時間、日清らしいデザインや使い勝手の追加に7時間、営業戦略部門へβ版の説明を行うのに1時間、そしてフィードバックを受けて行った機能の追加開発に5時間だ。

同アプリの特徴としては、商品検索時に品目コードでも略号でも商品名でも検索できること、入力文字列も全角半角、大文字小文字、ひらがな・カタカナを問わず直感的に利用できること、フィルターやソートはコンボボックスではなくワンタップで検索できるボタン形式を採用していること、ヘルプのキャラクターに同社のキャラクター「ひよこちゃん」を使っていることなどがある。

また、閲覧履歴を設けて移動中に調べた商品情報にすばやくアクセス可能にした他、手元にある商品のバーコードをスマホカメラで読み取って、当該商品の情報もクイックに得られるようにした。

フィードバックによって追加された機能は、商品情報を得意先へメール送信するというもの。おかげで、社内にいる営業事務担当者へ都度連絡する必要がなくなったという。

Power Appsを選んだ理由として武田氏が挙げた理由は3つ。1つ目はすでに同社内で使ってたMicrosoft 365製品群との相性が良いこと、2つ目はその契約範囲内で使えたため追加コストがかからなかったこと、最後は短期間でユーザーが望む機能拡張が行われていることだ。

これまでは、Microsoftパートナー企業に開発を依頼していたという武田氏。しかし「それでは社内ナレッジが蓄積できず、いつまでたっても自社開発が行えない」と考えた。それでは、社内のニーズに迅速に応えるというNBX取り組みの趣旨に反してしまう。

そこで、MicrosoftパートナーであるAvanade(アバナード)に、アプリ開発のハンズオントレーニングや開発に必要な情報のQ&Aといったサポートを依頼。その甲斐あって、25時間という短時間でのアプリ開発に成功した。

アプリβ版を営業戦略部門へ公開した際の反応は「早く使いたい」「いつから使えるの?」といったポジティブなもの。「ユーザーが、使ってハッピーになれるUI / UXであると確信した」という。

完成版のリリースには、事前告知として全国の営業担当者向けにデモを行い、ついでリリース時にイントラネットとオンライン社内報などを使って告知を行った。その結果、使い勝手の良さもあいまってリリースから短期間で浸透し、多くの人が利用するようになった。

成功の要因は開発環境にPower Appsを選んだこととユーザーファーストの思想

Microsoft 365とのシームレス連携を考えてPower Appsを選んだ日清食品グループだが、メリットが多かったという。それはUIの作成が容易だったこと、標準機能が充実していること、ローコードであることだ。

Power Appsを選んだこと以外に、プロジェクトの成功要因として、武田氏は3つのものを挙げた。

1つ目はユーザーファーストに基づいた開発を行ったこと、2つ目ははUI / UXにこだわったこと、最後はAvanadeのサポート力の高さだ。

「ソリューションファーストだったら、ユーザーがハッピーになるソリューションを開発できなかったはず。また、日清らしい親しみやすさや直感的な操作感へのこだわりをもって開発したため、ユーザーが使いたいと思うようなものを作ることができた。そしてこれらは、アプリ開発において不慣れだった自分たちの質問や相談にクイックに応じてくれたAvanadeの高い技術力なしにはなし得なかった」(武田氏)

外部にツール開発の依頼を出していれば得られなかったナレッジは、部内で共有した。それにより、Power Appsができることを把握し、アプリのメンテナンスも行えるようになり、ユーザーのニーズにアプリ開発で応えられるかもしれないという選択肢を持つことができ、同社のモバイルファーストをさらに推進することが期待される。

日清食品グループでは「ハッピー」「クリエイティブ」「ユニーク」「グローバル」という4つの思考をバリューとして捉えている。

アプリ開発の内製化は、ユーザーが抱く課題を解決するものになるため、またノートPCでは作業しづらい環境でもモバイルで業務ができるため、さらに使いたくなるUIであるため、ユーザーにハッピーをもたらすものとなる。

「製造、販売、倉庫といったそれぞれの現場で業務をしやすくするため、またBCP対策としても有効なモバイルファーストを今後も推進していくことで、日清食品グループのDX化をさらに推進していきたい」と武田氏は述べて、セッションを終了した。

データ+AI企業Databricksがローコード・ノーコード機能拡張のため8080 Labsを買収

Databricks(データブリックス)は米国時間10月6日、ドイツのスタートアップである8080 Labsを買収したと発表した。8080 Labsは、Pythonベースのデータ分析・操作ツールPandasの人気GUIである「bamboolib」を開発している。bamboolibは、データサイエンティストがコードを書くことなく、迅速かつ容易にデータを探索し、変換することを可能にする。8080 Labsは、bamboolibの無料コミュニティ版と、企業向けの機能を追加した有料プロ版を提供していた。Databricksは、これらのUIにフォーカスした機能を自社のLakehouse Platformに統合し、ローコード・ノーコード機能を拡張していく予定だ。

今回の買収は、8月に16億ドル(約1783億円)のシリーズH資金調達ラウンドを終了して以来、Databricksにとって初めての買収となる。当時、DatabricksのAli Ghodsi(アリ・ゴディシ)CEOは、この分野で資本力のある競合他社に対抗するために資金調達を行ったと話していた。競争の激しい分野で急成長している企業にありがちなことだが、そのためには、エンジニアリング人材とソフトウェア機能の両方を手に入れるための買収が必要になる。

ゴディシ氏は本日の発表でこう述べている。「2020年のRedashの買収と合わせて、ローコード・ノーコードのソリューションを好むより多くのユーザーに当社のユーザーベースを拡大していきます。Databricksにシンプルな機能を導入することは、専門知識の有無にかかわらず、より多くの人が大規模なデータセットを簡単に分析・探索できるようにするための重要なステップです」。

Databricksにとって今回の買収は、専門知識を持たないシチズンデータサイエンティストに同社のプラットフォームを提供することに新たな重点を置くことを意味する。「データとAIがあらゆる規模の企業にとって戦略的な優先事項になるにつれ、組織内の誰もがデータに基づいて質問したり行動を起こしたりする権限を持つことが重要になっています」と同社は声明の中で述べている。Databricksは、同社の自動機械学習ツールと組み合わせることで、より幅広いユーザーがデータから価値を引き出すことができるようになると主張している。また、プロの開発者にとっても、同社のUIツールでデータ変換を構築し、よりカスタムな実装が必要になったときにPythonコードをエクスポートすることで、負担が軽減されるとしている。

8080 Labsの共同設立者であるTobias Krabel(トビアス・クラベル)氏はこう述べた。「我々は、複雑なデータタスクをシンプルにし、データサイエンスと機械学習のパワーをあらゆるスキルセットのデータチームが利用できるようにするために8080 Labsを設立しました。オープンソースをルーツとし、レイクハウスというカテゴリーでデータ環境を再構築するという素晴らしいビジョンを持つDatabricksには無限の可能性があると考えており、チームの一員としてその旅に加われることをこの上なく嬉しく思っています」。

8080 Labsは4人のビジネスエンジェルからエンジェル資金を調達していたが、詳細は公表していない。

画像クレジット:Artur Debat / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

ローコードの後に来るものは?そして、何故公開をする必要があるのか?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

第2四半期の業績報告シーズンは順調に進んでいる。つまり、Exchangeのスタッフたちが、重要なトレンドやメモをお届けするために、多くの公開企業のCEOたちにせっせと電話をかけているということだ。ということで、今回はAppian(アピアン)、Paycom(ペイコム)、BigCommerce(ビッグコマース)を取り上げる。

その後、BNPL(後払い)の世界スタートアップの競争への最近の報告を強化してくれる、新鮮な素材を覗き見する。持ち帰りバッグの用意はよろしいだろうか?お土産をどっさりお渡しできますように!

まずAppianから始めよう。私がこの会社を知ったのは、多くの企業が同社のローコード技術を使用してアプリケーションを構築していた、パンデミックの最中だった。当時のAppianの評価額は現在の約半分ほどだった(同社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

それ以降、同社はクラウドへの注力を継続し、プロフェッショナルサービスの売上よりも利益率の高いSaaSによる売上を優先している。似たような変革を実行しているのは同社だけではない。しかし、今回の記事のために、2020年の多くを費やして掘り下げた基本的なローコードの後に何が起こるかについて話してみたい。

Appianは、第2四半期の業績報告に関連して、プロセスマイニング会社のLana Labs(ラナ・ラボ)を買収することを発表した。プロセスマイニングとは何かって?聞いてくれてありがとう。プロセスマイニングとは、自動化でき企業内のプロセスを見つけるためのソフトウェア技術だ。会社のためにRPAサービスを導入するのは結構なことだが、もし何を自動化できるかわかっていない場合には、完全な価値を得ることは難しいかもしれない。

これがAppianの場合とても重要なものになる。なぜなら同社はいまや、企業が同じ屋根の下でアプリケーションを作成するのに役立つ、プロセスマイニング、RPA、およびローコードツールを持つようになったからだ。実際には、これらのパーツは、自動化するものを特定するプロセスマイニングと連携して機能する。そこで特定されたワークフローは、RPAやその他の形式の自動化(AI、人間)の中に取り込まれ、企業が効率的な順序で業務を遂行できるようにする。

AppianのCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏に、ワークフローとアプリケーションの違いについて尋ねてみた。彼はそれらはほとんど同じものであるという。これにより、ローコードの世界をもう少し理解することができる。企業が本当に必要とするアプリケーションの数はいくつなのかと、私はいつも疑問に思ってきた。だが企業が自動化する必要のあるワークフローの数に関する同様の質問には、違う感覚を受ける。もっともっとたくさんの可能性があるように感じるのだ。つまり、より大きな市場の可能性があるということだ。

ローコードについての私の考えを改めたい。このダイナミクスが、単により多くのアプリケーションを作れるというだけではなく、企業が業務をデジタル化し、決まりきったタスクを自動化するのにより役立つというのなら、このソフトウェア手法を私はもっと自信をもって推せる。

次にBigCommerceの話題へ移ろう。このオープンSaaS方式のeコマースプラットフォームはここ数四半期好調で、Shopify(ショッピファイ)のグローバルな知名度が高まっているにもかかわらず、収益の伸びが順調に加速している。株式公開から1周年を迎えたばかりなので、CEOのBrent Bellm(ブレント・ベルム)氏に数分間、この1年で学んだことについて話を聞き、公開には価値があったか否かを尋ねた(会社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

もちろん、と彼は答えた。彼は私が紹介したくなるような、企業上場における2つの効用を説明した。ベルム氏は、会社の最近の業績に貢献したさまざまな要素から主となる要因を分離することは不可能だとはいうものの、それら2つはBigCommerceのより速い成長に貢献している。

ともあれ、株式公開する理由は以下のとおりだ。

  • 信頼性:オープンファイナンスの公開企業であることは、市場での信頼を育むことができる。スタートアップにはやや頻繁に死にやすいという厄介な習性がある。公開企業はそれよりははるかに死ににくい。つまり、顧客が会社を信頼する可能性が高く、おそらく取引を確保する可能性が高まることを意味する。さらに、BigCommerceが公開されたことで、パートナーたちはBigCommerceに対する信頼を深めており、ベルム氏によれば、そのことがより多くのパートナーシップと成長を促しているという。
  • 注目度の向上:私は株式公開にまつわるこの側面を理解していたつもりだったが、ベルム氏が私の視野を広げてくれた。もちろん、株式公開はブランディングイベントの1つだ。しかし、私は話はそこで終わりだと思っていた。だがベルム氏は、公開したことによって、たとえば彼の会社が何かをしたときにアナリストコミュニティが注意を払うようになると説明した。そのために、BigCommerceは、スタートアップのときよりも、公開会社となったときのほうが世間の注目を集めるのが容易になる。良い意味で、自社を取り巻く市場ノイズが強調されるということだ。

ベルム氏はThe Exchangeに対して、株式公開は彼の会社にとって「圧倒的に良いこと」だったと語る。ユニコーン諸君、聞いたかね?

次はPaycom(ペイコム)の話だ。このインタビューで主に話題に出たのは、人材に関する2つの話題だ。まず最初の話題、Paycomは、他のすべての企業と同様に、競争力のある技術人材市場を扱っている。しかし同社は、従来のテクノロジーハブから遠く離れているにもかかわらず、特に必要とする人材の不足に直面している。Paycomはオクラホマ州を拠点としている(会社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

しかし、現在の人材市場とその全般的な逼迫は、別の意味でPaycomに影響を与えている。このHRテクノロジー企業は、一般企業が人材を確保してその後維持し続けるのに役立つソフトウェアを販売しているからだ。同社のCEOであるChad Richison(チャド・リチソン)氏によれば、企業は採用後の必要な手続きを終えたあと、人材を手放さないことに重点を置くことで恩恵を受けているという。

2つ目の話題は、労働市場はベンチャーキャピタル市場ととても似てきたことがわかったということだ。リチソン氏は、現在は誰かを面接したら2、3日で採用するか否かを決断しなければならないのだという。以前はもっと時間に余裕があったが、現在の状況は、VCが数週間や数カ月ではなく数日で小切手を切る決断をすることを余儀なくされているのに似ている。

暑い(熱い)夏になりそうだ。

BNPL(後払い)市場を狙うスタートアップ

Splitit(スプリティット)のCEOであるBrad Paterson(ブラッド・パターソン)氏によれば、BNPL市場を狙うスタートアップにとって希望はまだ残されているという。Splititを使えば、顧客は現在のクレジットカードを使用して分割払いを行うことができる。つまり、これは従来のクレジットとBNPLの組み合わせなのだ(SplitItのCrunchbaseページはこちら)。

パターソン氏はBNPLスタートアップの現在の市場についてのコメントを話してくれた。Square(スクエア)とAfterpay(アフターペイ)の取引について多くのことを話した後、私はなぜ中小企業が、彼らの市場に参入してくる巨大企業の猛攻を凌いで、生き残ることができるのかについて彼の意見を聞きたくなった。

パターソン氏は電子メールの中で「平均購入価格、分割払いプランの長さ、業界の統合サービスなど」と説明した豊富な要因が、この世界での生き延びる余地を守っているのだと説明した。そして、BNPLソリューションは「小規模な購入から始めて拡大できる」ため、この分野にはスタートアップが入り込める余地があるのだという。

おそらくより良い質問は、消費者の信用と習慣を構築するために、あとどれほどの手間が必要なのかということだろう。それは、BNPLツール自体よりもはるかに広い問題空間のように思える。

スタートアップの競争

スタートアップの競争に関する少し前の仕事に戻ろう。Hustle FundElizabeth Yin(エリザベス・イン)氏が、共有したくなる一覧を送ってきた。スタートアップにとって市場で主導的役割を果たすことの重要性について話し合っていたときに、私たちは主に、若い企業がさまざまな関係者を結びつけようと試みているマーケットプレイス空間のことを話題にした。

たとえば配車の世界では、それは運転手と乗客だ。フードデリバリーではさらに複雑で、配達者、消費者、食品を生産する事業所が関わる。どのような話かは想像できるだろう。イン氏は、下位の市場シェアに満足していることは「一般的に非常に難しい」ことだという。彼女は続けた:

市場の価値は、通常需要と供給の両方が拡大するにつれて増加します。例えばAirbnbでは宿泊施設と顧客の数の増加が起きていますし、Uberでは運転手と乗客の両方が増えています。などなど。実際、多くの場合には、それが唯一の価値なのです。

したがって、市場で3位または4位である場合、顧客の維持は大きな潜在的課題です。なぜならより大きなネットワークを持っている1位または2位の競争相手に、現在の顧客が逃げていかないようにするにはどうすれば良いかを自問しなければならないからです。これが、マーケットプレイスが統合されていく傾向がある理由なのです。

初期からの投資家にとっては、1位または2位への売却によってうまく決着できる可能性があるものの、1位または2位に投資した場合に比べると、結果は1〜2桁低いものになってしまう可能性があります。このため、好調なスタートを切ったマーケットプレイスがすでにいくつかある場合には、アーリーステージの投資家たちは新しいプレイヤーに投資することを躊躇する傾向があるのです。

イン氏はまた、私たちの質問に答えて、スタートアップによるマーケットプレイスの競争は、一般的に少数の主要なプレイヤーがいる市場を生み出し、市場シェアが低いことで小規模な参入者が追い出されてしまうことで、他の競合他社は死に追いやられるという。彼女は資本の影響に関して興味深い視点を追加した:

一般的には、そう、投資家もこの現象に関与しているのです。いくつかの企業が立ち上がると、投資家はそれらの最初のリーダーにより注力する傾向があり、かつ他の人たちは競合他社への投資を敬遠する傾向があります。そして、お金がその分野に溢れたら、顧客獲得コストが問題になるのです。顧客獲得コスト(CAC)がトップ企業によって引き上げられてしまうのです(これは、フードデリバリー企業の台頭とともに見られた現象です)。これが、マーケットプレイス企業を簡単に立ち上げることができない理由なのです。顧客を獲得する余裕を持てないのです。

これは、ある意味で、スタートアップの世界におけるキングメイキングについての質問に対する答だ。ベンチャーキャピタルは、多くの場合誰が勝つかをあらかじめ決めてはいないものの、資本の影響は実際にマーケットプレイスの世界で結果を歪める可能性がある。さて、最初のVision Fund(ビジョンファンド)が、どのように資本を振り分けたかを話し始める前にこの話題はやめておくことにしよう!

ではまた、ワクチン接種が無事に終わりますように。

ではまた。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:The TechCrunch Exchangeローコード新規上場マーケットプレイスBNPL

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

マイクロソフトはGPT-3を使い自然言語でコードを書けるようにする

2021年のMicrosoft Build開発者会議には例年ほどの大きな驚きはなかったが、開発者がおそらく注目するであろう発表が1つある。Microsoftは同社のノーコード / ローコードサービスであるPower AppsでOpenAIの強力なGPT-3自然言語モデルを使って、話し言葉を最近発表されたPower Fx言語のコードに翻訳する。

しかし我を忘れてはいけない。自然言語だけを使って次のTikTokを開発しようということではないのだ。MicrosoftがやっているのはPower Appsのようなツールでローコードになっている部分の一部をなくすことであり、AIを使って基本的にノーコードのエクスペリエンスにしようともしている。現時点で主眼となっているのはPower Appsの数式で、これはもともとローコードのサービスではあるが、高度なアプリを開発しようと思ったら遅かれ早かれ何らかの数式を書かなくてはならない。

Microsoftのローコードアプリケーションプラットフォーム担当CVPであるCharles Lamanna(チャールズ・ラマンナ)氏は「このような高度なAIモデルを使うことで、まさに私たちがノーコードと呼んでいるものになり、Microsoftのローコードツールはさらに多くの人たちに使われるようになります」と述べた。

実際には、シチズンプログラマーが「find products where the name starts with ‘kids’」(「kids」で始まる名前の製品を見つける)のように書くと、Power Appsが「Filter(‘BC Orders’ Left(‘Product Name’,4)=”Kids”)」とレンダリングする。

MicrosoftはOpenAIに投資しているので、MicrosoftがこのエクスペリエンスにOpenAIのモデルを利用することに決めたのは当然だ。

関連記事:Microsoftがイーロン・マスクらのOpenAIに1000億円超を投資、Azueクラウドの人工知能化を目指す

画像クレジット:Microsoft

これによってプログラミングが簡単になるが、そうはいってもユーザーは自分が開発しているアプリケーションのロジックを理解する必要があるとMicrosoft自身が強調していることは重要なポイントだ。同社は今回の発表の中で「この機能によって自分が実装しているコードを理解する必要性がなくなるわけではありませんが、プログラミング言語のPower Fxを学んでいる人を支援し、必要な結果を得るための正しい数式を選ぶ助けとなります。高度なアプリ開発へのアクセスが劇的に広がり、ローコードツールの使い方をこれまで以上に短期間でトレーニングできます」と説明している。

ExcelやPowerBI、Googleスプレッドシートなどで利用できる自然言語クエリ機能を使うのと、まったく違うというわけではない。これらも結局のところ、自然言語を数式に翻訳している。おそらくGPT-3はもう少し高度でもっと複雑なクエリを理解できるだろうが、自然言語を数式に翻訳するという点ではそれほど新しくはない。

長期的にはこのようなツールがもっと賢くなって複雑なプログラミングタスクを処理できるようになると見られる。しかし複雑なプログラミングができるようになることは、翻訳の問題よりもずっと高いステップアップだ。概して、クエリが複雑になるほどプログラムをしっかり理解することが必要だ。数式はたいてい自己完結型のステートメントだが「本物の」コードを生成できるようなモデルではもっと多くのコンテクストを処理しなくてはならない。

この新機能は、2021年6月末までに北米のユーザーに対して英語版のパブリックプレビューが公開される。


関連記事:マイクロソフトのブラウザ「Edge」は起動が速くなりタブがスリープする機能も搭載する

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タグ:MicrosoftMicrosoft BuildMicrosoft Build 2021ノーコードローコードPower Apps自然言語処理OpenAI

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

ノーコードビジネスインテリジェンスサービスのy42が3.2億円のシードラウンドを実施

ベルリンを拠点とするy42(旧称Datos Intelligence)が、現地時間3月22日、La Famiglia VCが主導する290万ドル(約3億2000万円)のシード資金調達を行ったことを発表した。y42はデータウェアハウスを中心としたビジネスインテリジェンスサービスを提供しており、企業がエンタープライズレベルのデータに、表計算ソフトのような手軽さでアクセスできるようすると約束する企業だ。同時に、Foodspring(フードスプリング)、Personio(パーソニオ)、Petlab(ペタラブ)の共同創業者たちも出資している。

2020年に創業されたこのサービスは、100種類以上のデータソースを統合しており、Airtable(エアテーブル)からShopify(ショッピファイ)、Zendesk(ゼンデスク)といった標準的なB2B SaaSツールや、Google(グーグル)のBigQuery(ビッグクエリー)などのデータベースサービスを網羅している。ユーザーは、こうしたデータを変換して視覚化し、データパイプラインを編成し、そのデータに基づいて自動化されたワークフローを起動することができる(売上が下がったときにSlackで通知を送ったり、独自の基準に基づいて顧客にメールを送ったりするといった用途を想像して欲しい)。

類似のスタートアップ企業と同じように、y42は従来分析のために使用されていたデータウェアハウスのコンセプトを拡張し、企業によるそうしたデータの活用を支援する。このサービスの中核は多くのオープンソースで構成されており、例えば同社はGitLabs(ギットラブ)のデータパイプライン構築用プラットフォームMeltano(メルタノ)の開発に貢献している。

y42の創業者でCEOのフン・ダン氏

y42の創業者でCEOのHung Dang(フン・ダン)氏は「私たちは、最高のオープンソースソフトウェアを採用しています。本当に達成したいのは、本当にわかりやすくて、誰もが効率的にデータを扱うことができるツールを作ることなのです」と語る。「私たちは非常にUXにこだわっていますし、自分たちをノーコード / ローコードのBIツールと表現していますが、私たちのサービスはエンタープライズレベルのデータスタックのパワーとGoogle Sheetsのシンプルさを兼ね備えています」。

ベトナム出身のダン氏は、y42以前に、10カ国以上で事業を展開する大手イベント会社を共同創業し、数百万ドル(数億円)規模の売上を達成した(ただし、利益率は非常に低いものだった)が、同時にビジネス分析に的を絞った自身の研究を進めていた。その結果、B2Bデータ分析に特化した2社目の会社を創業することになったのだ。

画像クレジット:y42

彼によれば、イベント会社を創業した際にも、常に製品やデータを重視していたという。「お客様の声を収集し、業務データと統合するためにデータパイプラインを構築していましたが、当時は本当に苦労していました」と彼はいう。「Tableau(タブロー)やAlteryx(アルテリックス)などのツールを使っていたのですが、それらを組み合わせるのはとても難しく、しかもとても高価でした。そこで、その欲求不満から、かなり使える社内ツールを開発し、2016年にはそれを使って、実際の会社を起業することにしたのです」。

彼はその後、その会社をドイツの大手上場企業に売却した。この取引の詳細についてはNDAによって彼から聞き出すことはできなかったが、彼がy42を設立する前にはEventim(イベンティム)に在籍していたという事実から、なんらかの想像は可能だろう。

こうした彼の経歴を考えれば、y42がデータエンジニアの生活を便利にすると同時に、ビジネスアナリストにプラットフォームのパワーを提供することに重点を置いているのは当然のことかも知れない。ダン氏は、y42が新規顧客を獲得した際には、通常コンサルティングを提供しているが、それは顧客が素早いスタートを切ることができるようにするためだという。製品の持つノーコード / ローコードの性質によって、ほとんどのアナリストたちはすぐに使い始めることができる。また、より複雑なクエリの場合には、グラフィカルなインターフェースからy42のローコードレベルに降りて、サービスが提供するSQLの方言でクエリを書くこともできる。

このサービス自体はGoogle Cloud(グーグル・クラウド)上で動作しており、25人のチームが顧客のために1日あたり約5万件のジョブを管理している。現在同社の顧客には、LifeMD(ライフMD)、Petlab(ペットラブ)、Everdrop(エバードロップ)などがいる。

今回の資金調達を行うまでは、ダン氏は自己資金とエンジェル投資家からのある程度の資金で会社を運営していた。しかし、スタートアップ企業と伝統的な企業を結びつけることに特に重点を置いているLa Famiglia VCが、自社をy42にふさわしいと判断した。

LaFamiglia VCのゼネラルパートナーであるJudith Dada(ジュディス・ダダ)氏は「最初に製品デモを見たとき、その優れた分析能力に加えて、y42プラットフォーム上で多くの製品開発が行われていることに驚かされました」と語る。「ますます多くのデータを扱わなければならなくなった結果、組織内のデータサイロが増え、混沌と不正確なデータにつながっています。y42は、データの専門家であるかそうでない人かを問わず、強力な真の単一情報源を提供してくれるのです。昔データサイエンティストやアナリストだった身としては、その頃y42の機能があればよかったのにと思っています」。

ダン氏は、もっと資金を集めることもできたが、この時点ではチームの出資比率をあまり下げたくないと考えたのだと語る。「小さなラウンドですが、このラウンドによって正しい体制を整えざるを得ません。2021年末に予定しているシリーズAでは、10倍の次元の話を進めています」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:y42ノーコードローコードドイツ資金調達

画像クレジット:Jonathan Kitchen / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

マイクロソフトがExcelの数式からヒントを得たオープンソースの新ローコード言語「Power Fx」発表

米国時間3月2日、Microsoft(マイクロソフト)が、Excel(エクセル)の数式からヒントを得た新しいローコード言語、Power Fx(パワーFx)を発表した。Power Fxは、Microsoft自身のローコード環境であるPower Platform(パワー・プラットフォーム)上でカスタムロジックを書くための標準手段となる。一方同社はこの言語をオープンソース化して、他者も同様に実装を行うことで、この種のユースケースのためのデファクトスタンダードになることも期待している。

Power Platform自体はプロの開発者よりもビジネスユーザーをターゲットにしているため、始めるに際してビジネスユーザー層のExcelの既存の知識とExcelの数式への親和度を活用することは、賢いやり方のように思える。

「私たちはこの15年ほどの間に、長いプログラミング言語の歴史と、真に興味深い出来事を目の当たりにしてきました。それは、プログラミング言語が無償となり、オープンソースとなり、コミュニティ主導型になったということです」と私に語ったのは、MicrosoftのPower Platformエンジニアリング担当CVPであるCharles Lamanna(チャールズ・ラマンナ)氏だ。彼はまた、C#(シーシャープ)やTypeScript(タイプスクリプト)、あるいはGoogle(グーグル)のGo(ゴー)のような内部言語でさえも、そうしたものの良い例となっていることを指摘した。

「それは現在進行形のトレンドなのです。そして興味深い点は、それらはすべてプロの開発者やコーダーのためのものだということです。振り返って、ローコード / ノーコード空間を眺めてみた場合にも、プログラミング言語が存在しています。例えばExcelのプログラミング言語のようなものがありますし、すべてのローコード / ノーコードプラットフォームもそれぞれ独自のプログラミング言語を持っています。しかし、それはオープンではありませんし、ポータブルでもなく、それぞれのコミュニティに閉じたものです」とラマンナ氏は説明する。

Microsoftによると、今回発表された言語はVijay Mital(ビジャイ・ミタル)氏、Robin Abraham(ロビン・アブラハム)氏、Shon Katzenberger(ショーン・カッツェンバーガー)氏、Darryl Rubin(ダリル・ルービン)氏らが率いるチームによって開発されたのだという。チームはExcel以外にも,Pascal(パスカル)、Mathematica(マセマティカ),1980年代に開発された関数型プログラミング言語であるMiranda(ミランダ)などの言語やツールからもインスピレーションを得ている。

Microsoftは、Power Fxを自身のローコードプラットフォームのすべてに導入する計画だが、コミュニティに焦点を当てていることから、Power Automate(パワー・オートメイト)やPower Virtual Agents(パワー・バーチャル・エージェント)などへの搭載がまず行われる予定だ。

しかし、チームは明らかにこの言語を他の場所でも採用して欲しいと考えている。ローコード開発者は、Power Apps Studio(パワー・アップス・スタジオ) のような製品の数式入力中にポップアップで表示されるのを目にすることになるだろう。しかし、より高度なユーザーは、Visual Studio Code(ビジュアル・スタジオ・コード)に移動して、より複雑なアプリケーションを構築するために使用することもできるようになる。

開発チームが指摘しているように、彼らは言語をただExcelのものに似せるだけではではなく、Excelのような振る舞いをさせることにも力を入れてきた、プログラム専門家ならREPLのようなものと言えば理解できるだろう。つまり数式は宣言的に書かれ、開発者がコードを更新すると同時に再計算が行われる。

最近のローコード / ノーコードツールの多くは、ユーザーがより洗練されたコードでアプリを拡張したり、ツールにコードベース全体をエクスポートさせたりするための脱出口を提供している。なぜなら結局のところ、こうしたツールたちには限界があるからだ。そうしたツールたちはデフォルトで幅広いシナリオをサポートするようになってはいるものの、どの企業も独自のやり方を持っているため、すべてのユースケースをカバーすることはできない。

「私たちは、おそらく開発者の大多数──私は『開発者』という言葉をPower Platformを使うコーダーとしてのビジネスユーザーを指しています──が、最後は何らかのかたちでこうした数式を書くことになると想像しています。基本的な想定として、Power Platformを使い始めた最初の日には、数式は書きませんよね?【略】そこで使われるのはマクロレコーダーだったりテンプレートです。Power Appsも同じです。純粋にビジュアルで、ドラッグ&ドロップを使い、数式は1つも書きません。でもPower Platformのすばらしい点は、これを使っていると2週目には、少しだけ洗練されたものを学んでいくことになるのです。そして少しずつ洗練された機能を使い始めることになります。そして、知らず知らずのうちに、さまざまな能力を身につけたPower Platformやローコード開発者のプロたちが手に入ることになるのです」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftローコードオープンソースMicrosoft Ignite 2021

画像クレジット:Stephen D Harper / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)