ローコードに注力するOutSystemsが1兆円の評価額で158.8億円を調達

米国時間2月17日、ローコードアプリ開発サービスのOutSystems(アウトシステムズ)が1億5000万ドル(約158億8000万円)の新規資金を調達したと発表した。このラウンドは、Abdiel CapitalとTiger Globalが主導した。注目すべきは、このポルトガルと米国を拠点とするソフトウェア企業にとって、今回のものが最大の資金調達イベントではないことだ。TechCrunchは、OutSystemsが2018年に行った3億6000万ドル(約381億1000万円)のラウンドを取材している。

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OutSystemsは2001年に設立され、TechCrunchが取り上げているほとんどの会社よりも古い企業だが、今でも非公開企業のままだ。そして同社も、多くのスタートアップ企業と同様に、企業の規模を問わず加速するデジタルトランスフォーメーションの追い風を受けているように見える。

今回OutSystemsは、95億ドル(約1兆円)の評価額の下に、1億5000万ドル(約158億8000万円)相当の自社株をで売却することで、約1.6%の自社株を手放した。もし投資家たちが、同社の将来の業績に確信を抱いていないのならば、こんなわずかな株式をこんな値段で買おうとは思わないだろう。

新たな資金はOutSystemsをIPOに向かう軌道に乗せたと思われるが、同社は上場に関する計画を私たちと話すことを拒んだ。それは思ったよりも早く行われるかもしれない。今回のラウンドはPre-IPO投資の匂いがするし、OutSystemsはその新しい資金調達についての説明の中で、TechCrunchに対してそのモデルを「効率的」だと主張した。最悪でも現金消費は適度に行われていることを示唆している。

TechCrunchは同社に対して、新しい資本を、どのように市場展開(Go-to-market、GTM)と製品開発(R&D)に振り分けるつもりなのかと質問した。OutSystemsのCEOであるPaulo Rosado(パウロ・ロサド)氏は、今回の発表の前の時点ですでに、TechCrunchに対するメールの中で、OutSystemsが「R&DとGTMの両方を着実に増強している」、つまり「成長のための投資をしている」と語っていた。同社は引き続き「効率的な方法で拡大することに注力している」とCEOはつけ加えた。

OutSystemsはローコードアプリ開発に取り組んでいる。これはノーコードプロジェクトに焦点を当てたスタートアップやより成熟した非公開企業たちのやり方とは対照的だ。ノーコードツールにはコードは含まれないが、ローコードサービスには、ビジュアルプログラミングインターフェースとともにある程度のコーディング作業がともなう。

2020年後半に行われたロサド氏へのインタビューでは、彼はTechCrunchに対してノーコードとローコードの違いを、複雑さ(過酷な社内ワークフローに取り組む能力)と拡張性(適応できる能力)の違いとして説明した。

OutSystemsの見解では、ローコードの方が、重要な企業アプリを作成するのには単純に適しているのだ。CEOの説明はこのようなものだ。

ローコードの方がノーコードよりも劣っているわけではありません。ほとんどのノーコードツールがそうなのですが、ノーコードがカバーできる範囲がとても狭い場合には、ビジュアルで行えることを超えた変更要求が出た瞬間に、そこでおしまいになってしまいます。そのときお客様へは「私たちにはできません」とお答えするしかありません。

それがローコードでは解決可能になるのです。もちろん、それはコードで実現しなければなりません。先に進んでコードを追加し、そのコードがノーコードで作られた部分に組み込まれるのです。つまり、ローコードとは、コードに飛び込むこともできるノーコードの能力を意味しているのです。

ノーコードファンはおそらく、使っているツールのコード回避能力が向上すれば、ロサド氏が語るような開発におけるコード必須部分は減少すると主張するだろう。とはいえ、最近の資金調達を見る限り、OutSystemsの市場へのアプローチはうまくいっているように見える。

ラウンドの話に戻って、TechCrunchは、競争力と完全性の両方の意味でのOutSystemsの市場での位置をよりよく理解するために、顧客からのプライシング要求における相対的な強みについてCEOに質問を行った。これに対して彼は、OutSystemsの価格モデルは通常見られるSaaSの価格体系とは異なり「プラットフォームの利用率に基づいています」と答えた。私たちはそれに文句をつけることもできるだろう、何しろ同システムの低価格で行える範囲は狭いのだ、だがOutSystemsが従来のSaaSよりも利用率に重点を置いている点は、Salesforceが開拓したものよりもオンデマンドソフトウェアをより強く思い出させる。最近のSaaS市場で見られる変化を考えると、これは心にとどめておく価値のある違いだと思う。

最後に、OutSystems社が新たな資金を得て挑戦しているローコード市場は、どれほど魅力があるのだろうか?同社CEOによれば、彼らの主な競争相手は、他のスタートアップではなく、「経済が停滞すること」だと語る。これはNetflixがHBOではなく「睡眠」と競合しているのと少し似ている。

TechCrunchは、ノーコードとローコードを長期にわたってカバーしてきた。たとえばOutSystemsの2016年に行われた、5500万ドル(約58億2000万円)のラウンドも取り上げている。最近では、それがノーコードであろうとローコードであろうと、企業向けアプリの需要が加速しているように見える。ここ4~6四半期で、低コード市場のスタートアップたちへの一貫して高い需要がTechCrunchの耳には聞こえている

今のこの状況が、OutSystemsの公開に十分なものかを注視して行きたい。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:OutSystemsノーコードローコード資金調達

画像クレジット:skynesher / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

AirtableのCEOは会社の評価額が急上昇してもエグジットに興味がない

パンデミックの真っ只中だが、ローコードのスタートアップであるAirtableにとっては、実に素晴らしい年となった。つい先日、同社は25億8500万ドル(約2730億8000万円)という驚異的な評価額で1億8500万ドル(約195億4000万円)を調達したことを発表した。また、同時に純粋なノーコードの領域からローコード領域へと入り込むための新しい機能を発表した。これによってユーザーは、同社の製品を製品を新しいやり方で拡張できるようになる。

AirtableのCEOで共同創業者であるHowie Liu(ハウ・リュー)氏は、米国時間9月14日開催のTechCrunch Disruptにゲストとして登壇し、インタビューを受けた。

リュー氏は、同社を2013年に立ち上げて以降、ソフトウェア開発を大衆化するというその当初からのビジョンは、しっかりそのままだと語った。「世界中のより多くの人びとが、単なるソフトウェア利用者に止まることなく、ソフトウェア開発者になるべきだと信じています。そして、私たちがこの会社で取り組んできたほとんどすべての時間が、その最終目標に向けての進路を進むために使われてきました」と彼はいう。

しかし、最近何かが変わったようだ。リュー氏は、当初のビジョンが可能にしていたものよりも、より多くのものを必要とする人たちがいることに気がついたのだ。

「つまり、本日資金調達と同時に発表された私たちの最大の変化はノーコード製品、つまりコードを使う必要はないけれど製品をコードを使って拡張することもできない純粋なノーコードソリューションから、ローコードソリューションへと移行するということなのです。それ以外にも多くの拡張機能が提供されます。例えばオートメーションを使えば、技術的な知識がなくても、Airtableの中にロジックを組み込むことができるのです」と彼はいう。

さらに、同社は20万人の顧客を抱え、ユーザー自身が開発したアプリケーションを共有できるマーケットプレイスを開設した。パンデミックが定常化するにつれて、リュー氏は目に入る取引の種類に変化が見られたと語る。これは、かつて彼の会社の主要な収入源だった中小企業たちが、新型コロナウイルス感染症の結果として、より大きな経済的苦痛を被っていることが一因だ。

しかし、彼は大企業顧客がこの空白を埋めるのを見ることとなった。よって新しい拡張機能が、純粋なノーコードソリューションが提供するよりも多少労力を顧客に要求するとしても、こうした利益性の高い顧客たちがそれらを受け入れてくれると考えることは、決して無謀な考えではないだろう。

「私たちのビジネスのエンタープライズサイドでは、例えば今夏は、2019年夏の期間と比べて、企業取引の成約速度が5倍になりました。また恐ろしく熱心な企業との間に、数十万ドル(数千万円)規模の数十件の取引や、数百万ドル(数億円)規模の複数の取引、そして何千件もの新しい有料契約が締結されています」と彼はいう。

この大成功やビジネスの上昇傾向と高い評価額にも関わらず、リュー氏はIPOについて話したいそぶりはみせなかった。彼の見解では、それはまだまだ先のことである。大きく勢いに乗った創業7年目の会社であるにも関わらず、彼は単にそれについては考えていないという。

また彼は、買収されることにもまったく興味がないし、投資家たちもエグジットに向けたいかなる圧力もかけてきていないという。

「私たちが描く長期的な目標とアプローチにコミットし、足並みを揃えてくれる投資家を見つけることこそが、実際の評価額やラウンドのテクニカルな側面よりも、いつでもはるかに大切なことなのです」と彼はいう。

関連記事:Airtableが195億円を調達、新しいローコードおよび自動化機能も発表

カテゴリー:ソフトウェア

タグ:Airtable ノーコード

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(翻訳:sako)

Airtableが195億円を調達、新しいローコードおよび自動化機能も発表

スプレッドシートを中心にしたデータベースとノーコードプラットフォームのAirtable(エアテーブル)は、米国時間9月14日、1億8500万ドル(約195億4000万円)のシリーズDの資金調達を行った。この結果、調達後の評価額は25億8500万ドル(約2730億8000万円)となった。

Thrive Capitalがこのラウンドを主導し、既存の投資家であるBenchmark、Coatue、Caffeinated Capital、CRV、さらに新しい投資家D1 Capitalから追加の資金提供を受けた。これにより、現在20万社がそのサービスを利用していると主張するAirtableは、総額約3億5000万ドル(約369億7000万円)を調達したことになる。現在の顧客に含まれる企業としては、Netflix、HBO、CondéNast Entertainment、TIME、ロサンゼルス市、MITメディアラボ、IBMなどが挙げられる。

さらにAirtableは同時に、最大の機能アップデートもローンチする。これは、現在のノーコード機能を超えて、より多くのローコード機能を、新しい自動化機能(AirtableのためのIFTTTを想像して欲しい)やそのサービスのためのデータ管理ツールとともに、同社の全体的なプラットフォームビジョンの上にもたらす。

Airtableの創業者でCEOのHowie Liu (ハウ・リュー)氏が私に語ったように、2018年にシリーズCラウンド(未訳記事)調達を行って以来、多くの投資家たちが同社にアプローチしてきた。その理由の一部はもちろん、市場がローコード/ノーコード市場の将来的な可能性をはっきりと認識したからだ。

「このスペースは実在し、しかもその規模が極めて大きいという市場の認識が高まっているのだと思います」と彼は私に語った。「私たちは今回の資金を本当に必要としていたわけではありませんが、調達によってプラットフォーム、ビジョンを拡大するための積極的な投資を続けることが可能になりました。それこそ『新型コロナ?どうなるんだろうね?』と心配することなく、積極的に推進できるのです。不確実性はたくさんありますよね?そして、現在でも、来年の見通しについては依然として多くの不確実性があると思っています」。

同社は、カリフォルニアで最初の在宅命令が発令されてから数カ月後に、今回のラウンドを開始した。そしてほとんどの投資家にとって、これは純粋にデジタルなプロセスだった。

リュー氏は、この会社を長期に渡って育てていきたいという気持ちを常に表明していた。特に彼の最後の会社をアーリーステージの段階でSalesforce(セールスフォース)に売却した以降は、ずっとそうだった。それはおそらく、Airtableがより多額の資金を調達し続けていたにも関わらず、彼が創業者として会社に対する自分の持分を高く維持しようとしていることを意味しているのだろう。しかし、法的および構造的な管理よりも、投資家との調整が最も重要であると彼は主張する。

「私の見るところ、より重要なことは投資家たちとの間で、哲学の調整と期待の調整を行うことだと思っています」と彼はいう。「なにしろ私は、会社の将来についての法的権利または構造的な議論が押し寄せてくるような立場にはなりたくないのです。私にとってそれは、物事が行き詰まってどうにもならなくなった段階のようなものに感じられるのです。むしろ私は、テーブルを囲むすべての投資家たちに、法的発言の有無に関わらず、このビジネスで私たちが成し遂げようとすることに対して完全に一致してもらえるような、立場にいたいと思っています」。

新しい資金調達と同様に重要なのは、同社が同時にローンチするさまざまな新機能だ。これらのうち最も重要なのはAirtable Apps(エアテーブル・アプリ)だろう。これまでAirtableユーザーは、事前に準備されたブロックを使用して、地図、ガントチャート、その他の機能をテーブルに追加することができていた。もちろんノーコードサービスだったことは、間違いなくAirtableをユーザーたちが最初に使い始める役には立ったが、どうしても事前に構築された機能だけでは不十分な場合に突き当たってしまい、ユーザーがさらなるカスタムツール(リュー氏はこれをエスケープバルブと呼んでいる)を必要とする場面があった。だがAirtable Appsを使用することで、より洗練されたユーザーはJavaScript(ジャバスクリプト)で追加の機能を開発できるようになる。そして、もしそうすることを選んだ場合には、新しいAirtable Marketplace(エアテーブル・マーケットプレイス)の上で、他のユーザーとそれらの新機能を共有することもできる。

画像クレジット:Airtable

「エスケープバルブが必要な場合と不要な場合がありますが、そうしたエスケープバルブなしでも、これまでAirtableを使用する20万の組織を獲得することができました」と彼はいう。「しかし、Airtable自身で99%の用途で足りるものの、最後の1%で採用、不採用が決まるような場合には、さらに多くのユースケースを切り拓くことができると考えているのです。きっと役立ちます。そして、フルスタックアプリケーションをカスタムビルドアプリケーションとして構築するのではなく、そのエスケープバルブを使って必要なユースケースをAirtable上に1%の労力で作ることができるという点が、大きな違いなのです」。

画像クレジット:Airtable

その他の主要な新機能はAirtable Automations(エアテーブル・オートメーション)だ。これを使うことで、カスタム自動ワークフローを構築してレポートを生成したり、その他の反復的なステップを実行したりすることができる。その多くは、サービスのグラフィカルインターフェイスを介して行うことも、JavaScriptを使用して独自のカスタムフローやインテグレーションを行うこともできる。現時点でにおいてこの機能は無料で利用できるが、頻繁に実行されるようになると、これらの自動化フローのコストが問題になる可能性があることを考慮して、チームは将来的にこの機能に対して課金する方法を検討している。

最後の新機能はAirtable Sync(エアテーブル・シンク)だ。この機能を使うことで、チームは組織全体でより簡単にデータを共有できると同時に、誰が何にアクセスできるかを制御することができる。「目標は、Airtableでソフトウェアを構築した人たちが、そのソフトウェアを相互接続できるようにして、テーブルの異なるインスタンス間で、元となるテーブルの情報を共有できるようにすることです」とリュー氏は説明した。

画像クレジット:Airtable

ノーコード開発ツールのスタートアップ重視のAccelの投資戦略を分析する

この記事は株式市場とベチャーキャピタルのトレンドについてのコラムだ。基本的に私のExtra Crunch記事(有料)の再録だが無料だ。

パンデミックを含め大変動が続いたスタートアップのビジネスシーンの中で、私はノーコードないしほとんどコードを書く必要のない開発スタイルを実現しようとするサービスにもっと注意を払うべきだと主張してきた。投資家、起業家、上場企業幹部らとの最近の会話を簡単にまとめると、「ノーコード/ローコード開発がテクノロジー・マーケット全般に急速に一般化しつつある」ということになる。

その理由は、これも多少乱暴にまとめてしまえばこうだ。マーケティング、セールスなど事業部のニーズと実際に内製、外注を問わずソフトウェアを提供する開発チームとの間のギャップがますます広がりつつあるからだ。これはビジネスシーンにおいて大きな頭痛の種となっている。様々な解決法が探られているが、いずれにせよ金がかかる。

そこでノーコード/ローコード開発環境を提供しようとするスタートアップの出番となる。大企業でもこうしたツールを目指す動きが目立つ。これらはユーザー自身がプログラミングの知識なしにソフトウェアを作成できるようにすることが狙いだ。

私は先週、Accelのパートナー、アルン・マシュー(Arun Mathew)氏と話した。Accelは有力ベンチャーキャピタルで、読者が聞いたことがあるようなありとあらゆる会社に投資している。例えばWebflowは8月にシリーズAで7200万ドルの調達に成功しているが、これもマシュー氏がリードしたラウンドだ(Webflowに興味がある場合、われわれの記事はこちらこちら)(いずれも未訳)。

もちろんこれは一例に過ぎない。重要なのはAccelがノーコードスタートアップ重視の投資戦略を作り上げている点だ。マシュー氏によれば、 Accelはスタートアップといってもすでに相当の規模に成長しており市場ニーズへの適合性も実証されているQualtricsなどに多額の投資をしている。Webflowへの投資もこの戦略に沿ったものだという。

しかしマシュー氏は「Webflowは当初から自社をノーコード開発企業と考えていたわけではない」という。Webflowは「Webサイト構築のために非常にシンプルで使いやすいドラッグ&ドロップのテクノロジーを開発した。次にWeb サイトだけでなくあらゆるソフトウェアを開発できるようテクノロジーを拡張した。つまりノーコード開発というトレンドに極めてタイミングよく乗ったわけだ」と説明する。

これに似た経緯でAccelは「ヨーロッパにおいても初期段階、成長段階双方のノーコード開発企業に対する投資を行っている」という(インドでもさらに数件の投資をしている)。ノーコード開発自体を重要な動きであるとみているのは当然だが、投資家の立場から見ると、初めからノーコードであるという理由に基づいた投資ではなく、たまたま優秀な起業家を発見したために行われたものもあった。「われわれが興味を持っていた分野で優れたファウンダーに出会い、彼らのビジョンに共鳴したからでもある」という。

Accelは「ここ1年ないし1年半にノーコード分野のスタートアップ7、8社に投資した」という。この間にノーコード戦略は次第に練り上げられていった。 「現在Accelは世界に10人以上の専任者を置き、時間をかけて有望なノーコード分野のスタートアップを探している」とマシュー氏は付け加えた。

以上、まとめというにはやや長くなったが、マシュー氏との会話はトレンドに追いつく上で非常に参考になった。当初ノーコードとローコード(これも重要だ)をカバーし始めたときにすでに十分な知識があったわけではないが、その後トレンドにだいぶ追いついた。さらにWebflowのラウンドを取材して以後、ノーコード分野のスタートアップに注意を払うことが重要だという考えがはっきりしてきたわけだ。

画像:Nigel Sussman

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滑川海彦@Facebook

非技術系チームでもアプリの通知を最適化して送れるようにするNotivize

Notivize(ノーティバイズ)という新しいスタートアップは、製品チームにとって、ユーザーのエンゲージメントを高める上で最も重要なツールを直接操作できる方法を提供している。そのツールとは「通知」だ。

同社は、2019年からその製品を一部の顧客に試してもらい、すでに数十万件の通知を送っているという。そして今週、Heroic Ventures(ヒロイック・ベンチャーズ)主導のシード投資50万ドル(約5400万円)を調達したと発表した。

Notivizeの共同創設者Matt Bornski(マット・ボーンスキー)氏は、Applovin(アプラビン)、Wink(ウィンク)などの数々のスタートアップで働いてきた。彼は「スタックの奥底に埋もれた通知の変更にどれだけ時間がかるか、いくらでも語れる」と話している。

ひとつはっきりさせておくが、ボーンスキー氏が言っているのは、予定されたキャンペーンの一環として送られる簡単なマーケティング用メッセージのことではない。ユーザーが実際に応答するような「最も価値のある」通知は、アプリの使用中に発生すると彼は言う。

たとえば、製品を買ってくれた人にSMSメッセージを送るのは、ごく当たり前のことのように思えるが、ボーンスキー氏によれば、そうした通知を実際に作成しようとすれば、通常はエンジニアに新しいコードを書いてもらわなければならないという。

「その昔ながらやり方は、こうです。製品チームは、製品が売れたときに電子メールを送信する、または売れたときにSMSや通知を送る必要があることを仕様書にまとめます。そこへエンジニアチームが加わり、コードを解析して、製品が売れたことを認識する箇所を見極めます」と彼は言う。「私たちが本当にやりたかったのは、そのためのツールキットを『製品チーム』に提供することであり、実現できたと思っています」

そのためNotivizeを利用すれば、製品チームやマーケティングチームのコーディング技術を持たない人でも、「if-then」の条件文を書くことで通知を送信できるようになる。そしてこれは、通知の効果がが最大限になるよう「A/Bテストと、文章、送信のタイミング、チャンネルの最適化も簡便化します」とボーンスキー氏は言う。

彼は、企業がこうしたツールを自社開発することは滅多にないと言う。なぜなら、同社がこのアプリの開発を始めた当時は「市場を試したり、プロダクトマーケットフィットに取り組むためだけに時間と労力を費やすのは合理的ではない」とされていたからだ。しかし後に「深いところから古い物を破り取る」ことの難しさが知られるようになり、企業は、それならNotivizeがすでに作っているものを利用したほうが早いと思うようなった。

またボーンスキー氏は、これは通知のための「配管」を提供するサービスに置き換わろうとはしてないと強調している。事実、NotivizeはSendGrid(センドグリッド)やTwilio(トゥイリオ)と統合して通知を送ることができる。

「通知を送ること自体は『私たちの事業の』コアバリューではありません」と彼は言う。「私たちは、みなさんがお金を払っているもの、送信するものの質を高めているのです」

Notivaizeでは、利用者は月に100件までのメッセージを無料で送信できる。それ以上は、月額14.99ドル(約1620円)からの料金がかかる。

「製品管理とマケティングスタックにおけるローコードとノーコードの確かな潮流は、これからも市場の速度と製品のイノベーションの解放を推し進めます」と、Heroic Venturesの創設者Michael Fertik(マイケル・ファーティック)氏は声明の中で述べている。「いくつかの開発者用プラットフォームに早期の投資をしてきた経験上、Notivizeは、非常に重要ながら複雑な製品ワークフローの管理能力を非技術系チームから引き出す秘策を解明したと明言できます」

OneSignalは無料の通知ツールで7億5000万円を調達(未訳)

画像クレジット:rambo182 / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)