日本でも販売されているスマートグラスのNrealが1年間で約244.2億円を調達

中国のARスタートアップ「Nreal」(エンリアル)が好調だ。軽量で明るいスマートグラスを作ってARの普及を目指す同社はシリーズC拡張ラウンドで6000万ドル(約73億2600万円)を調達し、この1年間で2億ドル(約244億2000万円)の大型調達を果たした。

今回のラウンドを主導したのはAlibaba(アリババ)だ。Alibabaは投資に関しては最大のライバルであるTencent(テンセント)よりも、これまでずっと実用性を重視しつつTencentほど積極的ではなかった。Alibabaは、その巨大な小売エコシステムを補完するピースになり得るスタートアップの経営権に関わる持分を獲得すると言われている。

しかしNrealに対するAlibabaの投資は純粋に資金面でのことだ。理論的には、両者が戦略的なシナジーを生み出す可能性はある。Alibabaが自社のゲームやビデオのストリーミング部門とNrealの協業に乗り出したり、最近音声コントロール付きヘルメットを着用するようになった膨大な数のフードデリバリーのライダー向けにスマートグラスをNrealに開発してもらうことは容易に想像できる。しかし中国では独占禁止法の取り締まりが厳しくなり、中国のテック大手が不公正な競争を助長すると受け取られかねない投資に注意を払うようになっていることは間違いない。

それに、Magic Leap(マジックリープ)の従業員だったChi Xu(徐驰、カイ・シュイ)氏が創業したNrealには、すでに注目すべきパートナーたちがいる。Nrealの戦略的投資家には、中国の新興EV企業のNio(ニーオ)、TikTok(ティックトック)の中国での最大のライバルであるショートビデオアプリのKuaishou(快手)、Baidu(百度)が支援するビデオストリーミングプラットフォームのiQIYI(爱奇艺)などがある。Qualcomm(クアルコム)は投資はしていないが最先端のSnapdragonプロセッサを供給し、開発者エコシステムの構築に関して緊密に連携している。著名な機関投資家であるSequoia Capital China(セコイアキャピタルチャイナ)、Jack Ma(ジャック・マー)氏のYunfeng Capital(雲鋒基金)、Xiaomi(シャオミ)の創業者Lei Jun(レイ・ジュン)氏のShunwei Capital(順為資本)の他、プライベートエクイティ大手のHillhouse(高瓴資本)、CPE(CPE源峰)、CICC Capital(中金資本)もNrealを支援している。

Nrealは中国を拠点としているが、中国市場をターゲットにするのではなく、消費者の購入意欲を日本や米国など海外の6カ国で最初にテストした。同社はデバイスの販売に関して各国の通信事業者の協力を得ている。例えば米国ではVerizon(ベライゾン)がNrealの複合現実グラスであるNrealLightの販売に協力している。NrealLightは600ドル(約7万3000円、日本ではauオンラインショップで6万9799円)と比較的手頃な価格で、5G対応のAndroidデバイスに接続できる。

Nrealは今回調達した資金で、ついに2022年に中国での事業に乗り出す。また今回の資金は研究開発や、ユーザー獲得に欠かせないコンテンツやアプリのエコシステムの成長にも使われる。

画像クレジット:Nreal

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

テスラ、新型コロナによる都市封鎖で再び上海工場を閉鎖

Tesla(テスラ)は、新型コロナウイルス感染症の新規感染者急増を受け、Gigafactory(ギガファクトリー)上海工場を閉鎖する。閉鎖は今月2回目だ。Volkswagen(フォルクスワーゲン)とGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)は3月28日、上海の事業には影響がないと発表した。

Teslaの24時間稼働工場は、上海がロックダウン(都市封鎖)されるのにともない、3月28日から4日間、生産を停止する。同社は3月中旬にも、新型コロナ感染者増加で同工場を2日間閉鎖した

ギガファクトリー上海は世界最大のEV(電気自動車)工場で、毎日約2000台を生産している。そのほとんどは、中国の消費者とドイツや日本など同社にとって重要な市場向けのModel YとModel 3だ。工場の閉鎖は、世界的なサプライチェーンの逼迫と相まって、同社がこのほど予告したマスタープラン・パート3の妨げとなる可能性がある。このマスタープランでは、CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏が「極限」サイズまで事業拡大する戦略について説明するとツイートしている。

中国の新型コロナ新規感染者の大半は上海で報告されていて、ほとんどのケースが無症状だという。地元政府は3月28日、大規模な検査を行うために2段階のロックダウンを開始した。ギガファクトリーは第1段階のロックダウンの影響を受ける地域にあり、このロックダウンは4月1日まで続く。

Teslaは3月15日、欧州初の工場としてベルリンに50億ドル(約6160億円)を投じた施設を開所した。

同社はまた3月28日に米証券取引委員会に提出した書類で、株主への配当を行うために株式分割を行う意向を発表した。同社は年次株主総会で「株式配当の形で当社普通株式の分割を可能にするために【略】普通株式の発行可能総数を増加させる」提案を行う予定だ。

同社は2020年8月に1株を5分割した。

画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Jaclyn Trop、翻訳:Nariko Mizoguchi

米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも追加

米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも

Sergei Karpukhin / reuters

米連邦通信委員会(FCC)は25日、ロシアの情報セキュリティ企業Kaspersky Lab(カスペルスキー)を「国家安全保障上の脅威」に認定したことを発表しました。FCCによってロシア企業が「米国の国家安全保障に受け入れがたいリスクをもたらす」リストに加えられたのは、これが初めてのことです。

カスペルスキーは、China Mobile(中国移動通信)やChina Telecom(中国電信)とともに、25日付けでリストに追加されています。このほか、中国ZTEやHuaweiもリストに含まれており、全8社の名前が並んでいるかっこうです。

このリストで名指しされた企業の製品については、米国内の企業はFCCが運営するユニバーサルサービス基金(USF)を使って購入することが禁じられます。この基金は低所得者層や農村部、離島など採算が合わない地域でも、都市部と平等に通信サービスを受けられるようにする補助金であり、今回の措置が大手企業に与える影響の範囲は限定的と見られています。

FCCのBrendan Carr委員は「FCCは、我が国の通信ネットワークの安全確保に重要な役割を果たしており、対象リストを最新の状態に保つことは、そのために自由に使える重要な手段である」と表明。さらにカスペルスキーを含めた3社をリストに加えることを「スパイ行為やアメリカの国益を損ねようとする中国やロシアの国家支援団体による脅威から、我々のネットワークを守るのに役立つだろう」と説明しています。

この決定に対してカスペルスキーは、失望したとの声明を発表。「カスペルスキー製品の技術的評価に基づいておらず、政治的な理由によるものだ」との趣旨をコメントしています。

米国内でカスペルスキー製品に規制が課されたのは今回が初めてではなく、2017年末にも米トランプ政権が政府機関全体での使用を全面的に禁止する大統領命令を出しています。それを受けてカスペルスキーは評判を毀損し、営業を妨害されたとして米政府を相手に訴訟を起こしていました

また、今回の件に先立ちドイツの情報セキュリティ当局も、ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、カスペルスキー製品を使うことは「相当程度」のサイバーリスクがあるとして、利用を控えるよう警告していました。日本政府も同じような対応を取るのか、注視していきたいところです。米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも

(Source:FCCBleepingComputer。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

中国のEVシャシーメーカーPIXがスマート車両の自社製造で約14億円調達

中国では過去2年間、機関投資家と企業投資家の両方がドライバーレスの未来に資金を注ぎ込み、自律走行産業が活況を呈している。ロボタクシーサービスの提供やロボバスの運行、配達ボットの展開など、下流で成功している企業は特に投資家に人気があり、数億ドル(数百億円)を調達し巨額の評価額に達している。

現金が豊富になり、有名になる見込みがあるため、上流のサプライヤーもエンドソリューションの構築に着手するようになった。こうした野心的な自動運転ハードウェアサプライヤーの1社が、自動車用スケートボードに特化している中国のPIX Moving(ピックスムービング)だ。この種のシャシーは、バッテリーや駆動ユニットなどの主要コンポーネントを格納し、モジュール式アーキテクチャのためさまざまな種類の自動運転シナリオに適応することができる。Canoo(カヌー)が手がけているものと似ている。

2014年に元建築家のChuan Yu(チュアン・ユ)氏によって設立されたPIXはこのほどプレAラウンドで7200万元(約14億円)を確保し、TechCrunchに語ったところによると調達した資金総額は2000万ドル(約24億円)になった。

同社はハードウェアアクセラレータHAXの第2陣の1社で、ドローンソリューションの構築からスタートした。5年前に自動車分野に進出し、以来、中国、欧州、北米、オーストラリアでひと握りの顧客を獲得した。その中には同社のスケートボードシャシーを採用するAlibaba(アリババ)やBaidu(バイドゥ)、そして守秘義務契約により名前を明かせないが、すぐに使えるロボ車両を購入するドイツのティア1自動車部品メーカーなどが含まれている。

PIXはホワイトラベルのサプライヤーでは満足できなくなり、最近、自社名を冠した自動運転車の提供を開始した。今回の資金調達の一部は、自社ブランドのロボバスやスケートボードのシャシープラットフォームの量産に充て、残りは顧客向けの生産増強、海外展開、採用などに注ぐ。生産能力は2022年中に1200~2500台に達する見込みだ。

PIXは、今回の資金調達における単独出資者の名前を明らかにせず「全国に1万以上の機器を配備している中国の大手衛生ソリューションプロバイダー」とだけ述べた。今回の出資は戦略的シナジーを生み出すことを目的としていて、PIXと出資者は、ゴミ拾いから道路清掃までを意味する「環境オペレーションシナリオ」に対応するサービスロボットを共同開発する予定だ。

PIXの国際事業ディレクターNancy Lee(ナンシー・リー)氏は、ますます混み合う自動運転業界でどのように競争していくかについて、同社が3Dプリンターを使って従来のメーカーよりも低コストかつ短時間でカスタマイズされたシャシーを製造していると述べた。

同社は現在、収益の30〜40%を海外で得ているが、今後2年間でその比率は50%に達すると見込んでいる。中国は自律走行技術の推進者だったかもしれないが、中国の都市の「複雑な」交通事情もドライバーレス車両の大量展開を困難にしているとリー氏は主張した。

PIXは、不思議なことに中国南西部の中心地、貴州省に拠点を置いている。この地域は、Appleのような企業のデータセンターの主要拠点として知られている。また、PIXは北京、上海、深センに研究開発・事業開発チームを抱える。中国以外では、米国でパートタイマー2人が営業と技術サポートに従事しており、ドイツに製造と研究開発を行う子会社を設立中だ。

画像クレジット:PIX’s skateboard chassis

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国版Twitterとして知られる「Weibo」が米国で上場廃止のリスクに直面

米国の規制当局は、会計書類の調査ができない中国企業を上場廃止にする可能性のある法律の適用ペースを速めている。中国のTwitter(ツイッター)に相当するWeibo(ウェイボー、微博)が米証券取引委員会(SEC)の上場廃止監視リストに加えられたことは、Alibaba(アリババ)やBaidu(バイドゥ)といった他の中国インターネット大手も同じ圧力に直面することが遠くないことを意味する。

2020年にトランプ政権は外国企業に対する会計基準の厳格化を目的とした法案を成立させた。この法律は、米国に上場する外国企業、特に中国に拠点を置く企業の帳簿を可視化することを求めるものだが、国家安全保障を脅かす可能性のあるデータの引き渡しを警戒する一部の国では機能していない。

中国は、米国で株式を取引する外国企業を監査するために設立されたSECの公開会社会計監視委員会に全面的に協力していない数少ない国の1つだった。しかし、その消極性は薄れつつあり、中国は最近、Alibaba、JD、Baiduといった米国で上場するハイテク大手の寵児たちに、監査の詳細を準備するよう指示したと、ロイター通信が今週報じている

しかし、報道によるとこれらの監査書類に機密データは含まれないという。

米国で上場している中国のハイテク企業の多くは、超大国間の緊張が高まる中、すでに香港での二次上場を追求してきた。しかし、中国政府の最新の措置は、成長志向の強い多くのインターネット企業にとって望ましい米国市場での投資を維持するために、中国政府が譲歩する意思があることを示すものだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国のEVスタートアップたちが投資ゲームに参戦

中国で繰り広げられている自動車関連スタートアップを対象とした投資ゲームは、既存のベンチャーキャピタル会社だけでなく業界のベテランも参加し、競争が激化している。最近、新規ラウンドを完了したモビリティに特化した2つのファンドには、中国を代表する新参の電気自動車メーカーが参加している。

ベンチャーとグロースステージ向けの新しい投資ビークルのRockets Capital(ロケッツ・キャピタル)は、3月初めに2億ドル(約240億円)の初のファンドのクローズを発表し、電気自動車メーカーのXpengがアンカーインベスターを務めた。他の投資家はIDG Capital、Sequoia China、GGV Capital、5Y Capital、eGardenなど中国の大手機関投資家だ。このファンドは、自動車産業のバリューチェーン、クリーンエネルギー、その他の「フロンティアテクノロジー」分野でのビジネスチャンスを探している。

もう1つの大きなクローズは、Nio Capital(ニオ・キャピタル)の申し込み超過となった4億ドル(約480億円)の2回目の米ドル建てファンド「Eve ONE Fund II」だ。投資家は政府系ファンド、保険会社、多国籍金融機関、ファンド・オブ・ファンズ、ファミリーオフィス、年金基金、財団など世界各国から集まっている。

Nio Capitalは、ファンドの名前にもなっているが、XpengのライバルであるNioの創業者William Li(ウィリアム・リ)氏が立ち上げた会社だが、この投資機関はNio自体とは直接の関係はない。人民元建てファンドを米ドル建てファンドとともに運用し、自動車、テクノロジー、エネルギー分野に特化している。

Rockets Capitalは、EV投資家との関係をより公にしている。独立した投資会社として活動する一方で、Xpengの「業界の専門知識とリソース」を活用し「技術革新のインキュベーション」を行う。明言されているミッションを考えると、Rocketsの将来の投資先にもXpengと取引や提携をする企業があってもおかしくはないだろう。

2016年に設立されたNio Capitalは、投資分野では先行している。中国における同社の注目すべき取引には、Bosch(ボッシュ)が支援するMomenta(モメンタ)トヨタが支援するPony.ai(ポニーエーアイ)という2つの大手ロボタクシー企業、それからTemasek(テマセク)が支援するライダーメーカーInnovusion(イノビュージョン、Nioのサプライヤーの1社でもある)、BPが支援するバッテリー交換のAulton(オールトン)、自動車チップメーカーBlack Sesame(ブラックセサミ)などがある。

過去数年間、Nio Capitalは中国の自動車産業における新進気鋭のプレイヤーたちとともに、自らの周りに要塞を築いてきた。Rockets Capitalとその後援者XpengがどのようにNio Capitalに追いつき、市場を再構築するためにどのような提携を結ぶことができるか、注目だ。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国のドライバーレス配達スタートアップWhale Dynamicが約3億円調達、米国市場を狙う

Nuro(ニューロ)に挑む中国の新進気鋭のスタートアップは米国の配達市場に照準を合わせており、その野望を前進させるためにシード資金を調達した。

Baidu(百度、バイドゥ)のベテラン社員David Chang(デイビッド・チャン)氏が設立した深センの自律配達スタートアップWhale Dynamic(ホエール・ダイナミック)は、約250万ドル(約3億円)のシードラウンドをクローズしたと発表した。中国の大手金融機関出身のベテランが運営する北京の投資会社Qianchuang Capitalがラウンドをリードし、不動産デベロッパーが出資する中国のファンドShangbang Huizhongが参加した。

2018年に設立されたWhale Dynamicは、ハンドルと運転席をなくすことを目的としたNuroのようなドライバーレスの配達バンを開発している。そして、配達ボットがBYD製であるNuroと同様、自動運転車の生産を中国のメーカーと契約しているが、契約が確定していないためメーカー名はまだ明かせない。

Baiduの知能運転グループでプロダクトマネージャーを務めたチャン氏は、Whale DynamicがNuroにわずかに勝るのはコスト面だと指摘する。Nuroは米国で部品を組み立てているが、Whale Dynamicは製造から組み立てまですべて中国で行っているため、価格面で優位に立つことができる。価格は1台約2万ドル(約240万円)だ。

今回の資金投入により、Whale Dynamicは現在30人の従業員からなるチームを拡大し、中国と米国での製品使用例を検討することが可能になる。Huawei(ファーウェイ)出身のエンジニアリングディレクター、Qi Wei(チー・ウェイ)氏をリーダーに、5月に中国のいくつかの都市で最初のプロトタイプ車のテスト走行を実施することを目指している。

中国ではWhale Dynamicは、Meituan(メイトゥアン)やJD.com(JDドットコム)などの小売テック大手との競争に直面しており、これらの企業は2021年、独自の商品専用配達車のテストを開始した。チャン氏は、車輪のついた箱を直接製造するのではなく、乗用車の研究開発とテストを行うという、より時間とコストのかかる方法をとる同社の技術は時の試練に耐えることができると考えている。

乗用車を使っているWhale Dynamicのテスト車両

チャン氏は、最終的には米国を拠点にして、速達サービスやスーパーマーケットをターゲットにしたいと考えている。「中国なら、もっと早く、低コストでテストができます」とチャン氏は中国からスタートした理由を説明する。

中国と米国の規制当局が、国家安全保障上のリスクがあるとしてハイテク企業への監視を強化しているため、2つの国にまたがる企業はより大きな規制に従うか、どちらかの国を選ばなければならなさそうだ。中国のソーシャルメディア大手Sina(新浪)の関連会社が出資するカリフォルニア州の自律型トラック運送会社TuSimple(トゥシンプル)は中国部門の売却を検討している、とロイター通信は報じた。

TuSimpleの車両のほとんどは米国で稼働しており、中国で動いている車両はわずかだ。しかし、米国の規制当局は同社の中国との関わりや中国支社のデータへのアクセスについて懸念を示しており、これがTuSimpleの中国部門を売却する決断につながったと報じられている。

Whale Dynamicではセキュリティ・コンプライアンスを最優先しているとチャン氏は話す。米国市場に参入する際には、AWSやGoogle Cloudといった米国のクラウドサービスを利用し、中国のチームはハードウェアの開発のみを担当する予定だ。LiDARはOster(オスター)とイスラエル拠点で米国にもオフィスを持つInnoviz(イノビズ)、チップはNVIDIA(エヌビディア)、Intel(インテル)と、主要サプライヤーも米国系だ。自社で車両を運用するNuroとは異なり、Whale Dynamicはすぐに使える車両とSaaSのみを提供し、運用部分は顧客に任せる予定であるため、同社が取得できる機密データの量は制限されるはずだ。

画像クレジット:Whale Dynamic’s delivery bot

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

新型コロナの復活と米国の規制で身動きがとれなくなった中国のテクノロジー企業

中国のテクノロジー企業の多くにとって、2022年の展望はあまりよろしくない。過去1年で独占禁止関連やアルゴリズムの利用に対する制限など、サイバースペースには多くの新しい規制が導入され、インターネット企業は大小を問わずビジネスモデルと収益化方法の再編を強いられて、投資家の信頼も失った。

2022年の当初に登場した新たなチャレンジが、早くも投資家の弱気を誘っている。香港に上場している中国企業のインデックスHang Seng China Enterprises Indexは、米国時間3月14日に7.2%下げ、2008年11月以来の最大の下げとなった。Meituan、Alibaba、Tencent、Pinduoduoなどテクノロジー大手の株価は、先週にかけて落ち込んでいる。

投資家のパニックを引き起こしているマクロなリスクの1つは、中国における新型コロナウイルス(COVID-19)の復活だ。ここ数日で1日の感染者数は数千人を記録し、世界のその他の地域に比べるとそれほどでもないが過去2年間では最悪だ。

製造業の大型拠点でDJIやTencent、Huaweiなどテクノロジー大手の本社のある深圳は、1週間の全市ロックダウンに入った。iPhone組み立ての大手Foxconnは、この人口2000万の中国南部の都市における生産を休止した

長春での大発生が、中国の自動車のサプライチェーンを破壊した。中国北東部の吉林省にある同都市は、国有の自動車メーカーFAW Groupの本社があり、それは中国におけるVolkswagenとToyotaの合弁事業のパートナーだ。この都市でVolkswagenとToyotaの両社は、自動車工場の生産を停止した

新型コロナウイルスの新しい波は、Teslaのギガファクトリーのある上海を襲ったが、同市のビジネス活動はまだ健在だ。

業界は在宅勤務への備えができているため、ロックダウンは平気なのかもしれない。しかしそれでも、中国のテクノロジー株の多くが最近1年ぶりで下げたのは、米国の規制と厳しい検査が再来したせいかもしれない。

先週、米国の証券取引委員会(SEC)は、中国企業5社の名を挙げて、米国市場から下ろすと告げた。その行為は、外国の企業は外国政府によってコントロールされていないことを示す監査情報を提示すべきとする、トランプ時代の法律に根拠がある。

中国企業の米国預託証券(American depositary receipts、ADR)は厳しい板挟みに遭っている。ワシントンは米国に上場している外国企業の帳票の開示を求め、中国は監査会社が文書を海外に渡すことを禁じている。これはかなり前から、米国と中国の金融規制当局にとって難問だった。

北京は2021年また、データ企業がアウトバウンドで送ってもよいものをより厳しく制限し、米国で急いでIPOしようとした中国のライドシェア大手Didiを規制で取り締まろうとした

上場を外されるリスクと中国と米国の間の地政学的な緊張が気になる多くの中国企業、すなわちAlibabaやJD.com、NetEaseなどの大手も含む企業は、香港でに二次上場を目指した。SECが先週明らかに、中国の5つのADRを挙名したことは投資家の懸念を再燃させ、さらに多くの中国企業が別の市場の模索とそこへの上場を急ぐだろう。

画像クレジット:masterSergeant/Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テスラが上海ギガファクトリーを2日間閉鎖、新型コロナ感染者急増で

中国のオミクロン感染者数が増加し、政府が現地での規制を強化する中、電気自動車メーカーのTesla(テスラ)は上海ギガファクトリーを2日間閉鎖する。

ロイター通信によると、Teslaは米国時間3月16日、従業員とサプライヤーに工場閉鎖を知らせる通知を送付した。

Teslaは、16日と17日に生産を停止する理由を明らかにしていない。しかし、世界二大自動車メーカーのトヨタとVolkswagen(フォルクスワーゲン)も今週、新型コロナウイルス感染者が中国で増加し、政府がその急増を抑制するために追加の規制を行ったため、現地での操業を一時停止している。Teslaの生産停止はそうした中でのものだ。

また、サプライチェーンの制約が操業停止につながっている可能性もある。

24時間稼働する工場はTeslaのグローバルな事業、そして収益にとって重要な役割を担っている。Teslaの工場の中で生産台数が最も多い上海ギガファクトリーは、かなりのModel 3およびModel Yを欧州に輸出している。同工場は1日あたり約2000台を生産しているため、2日間の操業停止でも同社の生産台数は激減し、納品がさらに遅れる可能性がある。

中国では新型コロナが再び急増し、2022年1~3月の感染者数は2021年の総数を上回った。1日あたりの新規感染者数は、2020年3月にパンデミックが発生して以来の水準に達しようとしている。

パンデミックを通じて、中国政府は感染を封じ込めるために集団検査と隔離を実施してきた。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Jaclyn Trop、翻訳:Nariko Mizoguchi

インドのPaytm、同社決済銀行が中国企業とデータ共有しているという報道は「完全な虚偽」と発表

インドのPaytm(ペイティーエム)は、同社の運営する決済銀行「Payments Bank(ペイメンツ・バンク)」のデータが中国企業に流出したと主張する報道は「完全な虚偽であり、センセーショナルに煽り立てているだけ」と述べた。このインドの大手フィンテック企業は、現地時間3月14日に同社の株が14.7%も急落して1株8.6ドル(約1020円)になった後、投資家の懸念を静めるために説明を急いでいる。

Bloomberg(ブルームバーグ)は米国時間3月14日午後、Paytm Payments Bankの株式を間接的に所有する中国ベースの企業とデータ共有を許可していることがインドの規則に違反しているため、Paytmのデジタルバンクは新規顧客の追加を禁じられたと報じた。

この報道に対し、Paytmの広報担当者は、Paytm Payments Bankは「国産銀行であり、データの局在に関するRBI(インド準備銀行)の指示に完全に準拠している」と述べている。

この広報担当者は「当行のデータはすべて国内に存在します。我々はデジタル・インディア政策の真の信奉者であり、国内の金融包摂を推進することに引き続き尽力していきます」と続けた。

Paytmの創業者で最高経営責任者のVijay Shekhar Sharma(ビジャイ・シェカル・シャルマ)氏はさらに、国営放送でこの報道を断固として否定し、Paytm Payments Bankに対する中央銀行の通知には「いかなるデータアクセスやサーバー、いかなるデータアクセス手段、またインド国外にサーバーがあるということにも、言及している点はまったくない」と、述べた。

インドの中央銀行であるインド準備銀行は、現地時間3月11日、ある種の「重要な監督上の懸念」を理由に、Paytm Payments Bankに新規顧客の受け入れを禁じたが、その概要は明らかにしていない。

「同行はIT監査法人を任命し、ITシステムの包括的なシステム監査を実施するようにも指示されている。新規顧客の受け入れは、IT監査法人の報告書を確認した後、RBIが認める特定の許可に従うことが条件となる」とRBIは付け加えた

3億人以上のユーザーを抱え、複数の事業を展開するPaytmは、RBIの措置が「Paytmの事業全体に重大な影響を与える」とは考えていないと述べている。

Paytmの株価は、月曜日に14.7%も暴落した後、わずかに回復した。記事公開時のPaytmの時価総額は57億2000万ドル(約6766億円)と、2019年後半の資金調達時の160億ドル(約1兆8925億円)から減少している。かつてインドで最も価値が高かったスタートアップは2021年、同国最大のIPOで25億ドル(約2960億円)を調達した

Paytmを最も鋭く批判してきたアナリストたちのいる証券会社Macquarie Capital(マッコーリー・キャピタル)は、今回の事態がPaytmに大きなビジネス上の影響を与える可能性は低いものの、同社が5月に資格を得る小規模金融銀行への「格上げ」の可能性は低くなるだろうと述べている。

画像クレジット:Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中国で初めて新型コロナ迅速抗原検査キットが一般向けにネット販売

中国は、新型コロナウイルス感染者数がここ数日で2年ぶりの高水準に達したことを受け、一般の人が迅速抗原検査キットを利用できるようにする。JD.com(JDドットコム)やMeituan(メイトゥアン、美団)などのオンラインマーケットプレイスは現在、深センに拠点を置く遺伝子大手BGIなど政府公認のメーカーによる家庭用検査キットの予約注文を受け付けている。また、全国のドラッグストアでも販売される予定だ。

過去2年間、中国は「ゼロコロナ」封じ込め政策を掲げて感染者数を抑えてきたが、より感染力の強いオミクロン変異種によってこの戦略はますます試されている。中国はこれまで、感染者の特定を分子・核酸検査の一種であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査のみに頼ってきた。これは、市販の代替検査として迅速抗原検査を採用している欧米諸国とは異なる。

PCR検査は抗原検査よりも正確だと広く認識されているが、医療従事者が検体を採取し、検査機関に送って結果を得る必要がある。それに比べ、抗原検査は自宅で実施でき、1時間以内に結果が出る。

中国の医薬品規制当局は現地時間3月12日、新型コロナ抗原検査の製品5種を承認した。これは、中国の国家衛生委員会が、公的検査の選択肢として抗原検査を追加したと発表してわずか1日後のことだ。

自己検査キットの導入は、中国がゼロコロナ戦略をすぐに緩和するというシグナルにはならない。保健当局は、迅速検査は新型コロナ感染の早期発見を支援することを目的としており、PCR検査は症例確認の基準として残っていると述べている。

家庭用検査キットはせいぜい、過剰なPCR検査体制にかかるプレッシャーを軽減するのに役立つ程度だ。中国の地方当局は通常、都市で数件の局所的な感染例が発生すると、大がかりなPCR検査を命じる。人口密度の高い地域では往々にして、住民は検査を受けるために何時間も並ばなければならない。PCR検査の結果は、携帯電話で国の「健康コード」にデジタルで同期され、それがないと集合住宅、レストラン、オフィスビル、公共交通機関から締め出されることになる。

中国がこの自己検査キットの使用をどのように規制するかはまだわからない。例えば、住民が自宅で陽性結果を確認した場合、自発的な地元当局への通知を政府はどのように保証するのだろうか?少なくとも、政府の予備的な指示では、自宅での検査は「関連行政部門」によって監視されることになっている。

画像クレジット:Diptendu Dutta / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

「アニメとコミックとゲーム」好きのためのバーチャルソーシャルアプリ「MEW」が米国でコミックファンを魅了

MEWの北京のオフィス。社員たちはアニメとコミックとゲーム(ACG)のファン

Raven Gao(レイヴン・ガオ)氏は、メタバースの波に乗るために「MEW」というバーチャルのソーシャルプラットフォームをつくったのではなかった。彼はTencentにいた人と一緒に、2019年半ばにMEWを作り始めたが、それは彼自身のような、人付き合いがヘタで内向的な者のための、バーチャルな安息所を作りたかったからだ。

MEWのインターフェースを初めて見た人は、戸惑うかもしれない。しかしこのアプリ独特の言葉遣いやグラフィクスは、「アニメと漫画とゲーム(ACG)」好きたちのサブカルチャーに明確にアピールするものだ、とガオ氏はいう。キュートなアニメ風の画像と柔らかい色遣いがアプリを飾り、コマンドボタンの言葉はACGファンにとっておなじみの用語だ。たとえば「signup」(ユーザー登録をする)ではなくて「create your traveling file(あなたの旅のファイルを作る)」となっている。ユーザーは、他のユーザーが管理しているDiscordに似たデザインの「本拠地」と呼ばれる関心別のハブで対話をする。MEWという名称は「Members of the Excellent World(すばらしい世界の仲間たち)」の略だが、ファンタジー好きたちの仲間意識が溢れている。

MEWの最初のバージョンは2020年の半ばにローンチされ、その広がりは今でも大きくはない。毎日のアクティブユーザーは数万人だが、滞在時間は平均100分間と長い。ゲームや映画やアニメなど、自分の関心のハブに住み着くことになるが、自己改善やフットボールなど、作品の固有名詞ではなく普遍的な話題もある。

シリコンバレーのMakers Fundが2020年初めにガオ氏に関心を示したが、当時中国の投資家たちの多くは、この創業者のことをTencentのような大手がすでに支配する業界で新たなソーシャルネットワークを作ろうとしている「変人」だと考えていた。2021年にはメタバースが米国でも中国でもブームになり、MEWの親会社であるTrophにも、突然自国の投資家たちが殺到した。

Trophは2021年末に、中国の5Y CapitalとZoo Capitalから資金を調達し、資金の調達総額が1000万ドル(約11億7000万円)ほどになったが、同社はこれまで資金の額を発表していない。

MEWアプリのスクリーンショット

現在、バーチャルな世界とメタバースを作るというスタートアップが氾濫している。しかしながら、それらの一部はリアル世界を模倣する、バターを使ったソーシャルプラットフォームであるにすぎない。そして、それら以外は少しソーシャルな部分があるゲームにすぎないとガオ氏はいう。

対照的にMEWでは、自分のオンラインにおける分身を誠実、正直かつ快適に生きることが求められる。

共同創業者のQiang Li(チャン・リ)氏は、中国のPC時代に最も人気のあったソーシャルネットワークであるTencentのQQに5年間在籍し、メッセンジャーのiPad版のフロントエンドチームを率いていた。現在でもQQは、ゲーム化された機能を多く持ち、中国の若者の間で大きな人気を誇っている。

MEWはまだマネタイズを始めていないが、ガオ氏は、広告やサブスクリプションや寄付といった従来のソーシャルネットワークにおける一般的な収益化のではない方法をとりたいと考えている。ユーザーを巻き込み、収入を共有するような方法が彼の狙いだ。

「ユーザーが私たちのプロダクトに貢献できて、報酬をシェアできる方式を探求したい」とガオ氏いう。

そのようなインセンティブの仕組みとして、当然ブロックチェーンがその候補として思い浮かぶが、ガオ氏によると、短期的にはコインの発行やブロックチェーンの採用はしないという。

Trophの2022年における目標は米国進出で、中国と同じく、ゲームやアニメのファンの心を捉えたいとのこと。現在、中国に約30名のスタッフがいるが、米国のスタッフは現地で精力的に雇いたいという。

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中国が支援するサイバー攻撃グループAPT41、「少なくとも」米国6州のネットワークに侵入

サイバーセキュリティ大手Mandiant(マンディアント)によると、金銭的動機に基づく活動と並行してスパイ活動を行うことで知られる、活発な中国のハッキンググループ「APT41」が、米国の複数の州政府のネットワークに侵入した。

このグループは、2020年にAPT41のメンバー5人が米国で起訴されたことにもめげず、少なくとも米国6州のネットワークを標的にして数カ月にわたる活動を行い、侵入に成功した。これらの州にはMandiantから通知が送られたが、州名は明かされなかった。

2021年5月から2022年2月にかけてこのハッキンググループは、脆弱なインターネット向けウェブアプリケーションを利用して、州ネットワークへの最初の足がかりを得た。これには、18の州が動物の健康管理に使用しているUSAHerdsというソフトウェアアプリケーションのゼロデイ脆弱性や、ユビキタスJavaロギングライブラリであるApache Log4jの、現在有名になっているいわゆるLog4Shellの脆弱性の悪用が含まれていた。

Mandiantによると、APT41は2021年12月にApache Foundationがこの脆弱性について公に警鐘を鳴らしてから数時間でLog4Shellを悪用し始め、2州の政府ネットワークや保険・通信業界の他のターゲットが侵害されるに至った。ネットワークへの足がかりを得たAPT41は「大規模」なクレデンシャル収集を行った。

今回の調査ではまた、APT41が使用するさまざまな新しい技術、回避方法、能力も明らかにされた。ある事例では、APT41が独自ウェブアプリケーションのSQLインジェクションの脆弱性を利用してネットワークにアクセスした後(この活動はMandiantによって阻止された)、2週間後に再び戻ってきて、まったく新しいゼロデイ・エクスプロイトでネットワークを再び侵害した。また、このグループは、マルウェアを被害者の環境に合わせ、特定のフォーラムの投稿で暗号化されたデータを頻繁に更新し、マルウェアが攻撃者のコマンド&コントロールサーバから指示を受けることができるようにしていた。

Mandiantは、ハッカーが個人を特定できる情報を流出させた証拠を確認したと述べたが、これは一般的にスパイ活動によくあることで、活動の目的は依然として不明だ。

Mandiantの主席脅威アナリストであるGeoff Ackerman(ジェフ・アッカーマン)氏は、ウクライナ侵攻を受けて世界がロシアのサイバー脅威の可能性に注目している一方で、今回の調査は、世界中の他の主要な脅威要因が通常通り活動を継続していることを思い出させるものだ、と述べた。

「特に、最も活発な脅威組織の1つであるAPT41の活動が今日まで続いているという我々の調査を踏まえると、他のサイバー活動を見過ごすことはできません」とアッカーマン氏は話した。「APT41はまさに持続的な脅威であり、直近の活動は、米国の州レベルのシステムがロシアだけでなく、中国などの国家支援ハッカーから容赦なく圧力を受けていることを改めて認識させるものです」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタが支援するロボタクシースタートアップ「Pony.ai」の評価額が約9775億円に急上昇

中国と米国を拠点とするPony.aiは米国時間3月7日、シリーズDの1回目のクローズ後に評価額が85億ドル(約9775億円)に急上昇したと発表した。自律走行車両が大量に投入されるにはまだ数年かかるこの分野を投資家が追いかけ続けていることの表れだ。

2016年に創業しトヨタが支援するPonyは、中国と米国の両方でテストと運用をしている一連のロボタクシースタートアップの1つで、同様の他のスタートアップにはWeRide、Deeproute、AutoXなどがある。Ponyの前回の評価額は2020年11月の53億ドル(約6095億円)だった。

Ponyがこの1年で直面した困難の数々を考えると、今回の評価額は驚きだ。同社ではトラック部門とロボタクシー部門を統合する経営判断が不評で、その後自律走行トラック部門の主要メンバー数人が退社し、ライバル企業数社のメンバーとなった。米国の同社トラック部門はその後解散したが、中国でのトラック事業は成長を続けている。

12月には衝突事故を受けてカリフォルニア州がPonyの無人運転テストの許可を一時停止した。

テック企業に対する中国当局の監視が厳しさを増す中、PonyはJPMorgan Chaseの幹部だった人物を最高財務責任者として迎えた直後に米国での上場計画をせざるを得なかったと報じられた

ロボタクシーの開発は費用がかかることで知られるが、Ponyは資金は潤沢だと述べている。一般に、自律走行車両スタートアップにとってはトラック事業はロボタクシーに比べると早く収益化できる手段とも見られている。同社はシリーズD-1の後に10億ドル(約1150円)近い「バランスシートの流動性」を有していると述べた。

同社は今回の調達金額を明らかにしていないが、ラウンド全体が完了したら詳しく発表するとしている。

グローバルで1000人以上の従業員を抱えるPonyは、自律走行車両を中国の主要4都市(北京、上海、広州、深セン)、そしてカリフォルニア州のフリーモントとアーバインでテストしている。同社のロボタクシーはBaidu(百度)の自律走行車両とともに、北京郊外の実験区域で乗客への課金を開始する許可も受けた。

資金の用途についてPonyの共同創業者でCEOのJames Peng(ジェームズ・ペン)氏は発表の中で次のように述べた。「我々の技術開発とバランスシートの強みの両方がそろうことで、2022年の採用を大幅に拡大し、新しい自律走行車両のテストと運用の拠点をグローバルで多数開設し、戦略的パートナーシップを進展して、車両を急速に展開します」。

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

ByteDance傘下のVRスタートアップ「Pico」がQualcommとの関係を強化

中国のVRスタートアップで2021年8月にTikTokの親会社であるByteDanceに買収されたPicoが、エクステンデッド・リアリティ(XR)分野への取り組みをさらに推進するためにQualcomm(クアルコム)と大型提携を結んだ。

PicoのXRプロダクトには今後QualcommのSnapdragon Spacesが活用される。Snapdragon SpacesはXR対応アプリを作る開発者向けにQualcommが提供しているプラットフォームだ。Snapdragon Spacesプラットフォームは、利用者をVRヘッドセットの中でデジタルの世界に没入させるのではなく、開発者がARグラスのエクスペリエンスを構築して既存のスマートフォンで利用できるようにし、ARをユーザーにとっての「2つめの画面」にすることを狙っている。

PicoとQualcommがこれまで近い関係であったことを考えれば、この提携はうなずける。すでにPicoの最新VRヘッドセットであるNeo 3はSnapdragon XR2チップセットを採用している。

QualcommのCEOであるCristiano Amon(クリスティアーノ・アモン)氏はバルセロナで開催されている毎年恒例の大規模モバイル関連展示会のMWCで「これはすばらしいチャンスです。おそらく今後10年間で(XRは)スマートフォンと同等の規模にまで成長し、特にARグラスはすべてのスマートフォンを拡張するものとなるでしょう」と述べた

ByteDanceのCEOであるRubo Liang(梁汝波)氏はリモートのビデオで「人々のエコシステムを作るハードウェア、ソフトウェア、テクノロジーのロードマップに関して協業できることをたいへん喜んでいます」と述べた

Picoは中国ではVRブランドをリードしているが、Oculusのユーザーへのリーチやクリエイターエコシステムの規模には遠く及ばない。Steamの調査によると、2022年1月にグローバルで使われているVRヘッドセットのシェアはPicoの主要2製品を合わせてもわずか0.3%だ。この市場ではOculus Quest 2とRift Sの2つで60%を占めている。

業界関係者は、資金力のあるByteDanceが親会社であることがPicoのシェア獲得に役立つかどうかに注目している。さしあたり中国では、Picoは中国版TikTokと呼ばれるDouyinに大量の広告を出している。

Qualcommとの提携によってPicoのコンテンツのエコシステムが成長し、開発者の目が中国のXR市場に向くかもしれない。中国では急速に5Gが展開されていることから、XR市場が大きく成長すると予測されている。Qualcommによれば、Snapdragon Spacesは「OpenXRランタイム対応スマートフォンに接続するARグラスに最適化された、顔に装着する初のARプラットフォーム」であるという。Snapdragon SpacesにはUnityやEpic GamesのUnrealなど主力3Dエンジンをサポートする使いやすい開発者向けキットも用意されている。

画像クレジット:Pico

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

中国大手ソーシャルメディアが「不適切」なウクライナ関連コンテンツを削除

中国政府は、ロシアのウクライナに対する軍事行動を「侵攻」と呼ぶことやロシア政府を非難することを拒否する立場を固持しているが、人々はソーシャルメディアでこの戦争に関するそれぞれの思いを表現している。

ここ数日、ウクライナ関連のトピックがWeibo(ウェイボ)のトップトレンディングハッシュタグに入ってきている。中国インターネットにおける公開討論の傾向を示す指標だ。同時に中国のソーシャルメディア巨人は、ウクライナに関連する「不適切」あるいは「誤解を招く」情報を、ウクライナに対するロシアの攻撃が開始された数日後から取り締まり始めた。

中国版Twitter(ツイッター)のWeiboは、4000件以上の「戦争を誘発、戦争を茶化す、あるいは俗悪なコンテンツを拡散した」と見なされる投稿を削除したと週末の発表で語った。中国版TikTok(ティックトック)のDouyin(ドウイン)は「俗悪性、戦争を矮小化するコンテンツ、先導的情報、あるいは敵対的コメント」を含む動画3500本以上を削除した。

Weiboでは「ウクライナの美しい女性たち」に中国へ来るよう呼びかける投稿が数十件見られた。中には、ウクライナでの戦争に志願すれば「単位を取得できる」という偽情報をでっち上げたユーザーもいる、とWeChatの警告文に書かれている。Douyinには「ウクライナ」とタイプすると同アプリで「爆発エフェクト」が起きるとユーザーをだますクリック稼ぎ記事が数百件投稿された。

他のユーザーは、こうした無意味なコンテンツに惑わされず、ウクライナ戦争への思いの共感を訴えている。

「平和は容易には訪れません。私たちは命を尊重しその価値を重んじる必要があります」とWeChatは声明で語った。「私たちはすべてのオンラインユーザーに向けて、重大な国際問題に対する客観的で理性的な態度を保ち、議論に参加するときには分別をわきまえ、みんなが一体となって汚れのない明るいサイバー環境を維持していくよう呼びかけます」。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ロシア宇宙機関ロスコスモスCEO、対ロシア制裁がISS運用に深刻な影響及ぼすと脅迫的ツイート―地上への落下示唆

ロシア宇宙機関ロスコスモスCEO、対ロシア制裁がISS運用に深刻な影響及ぼすと脅迫的ツイート―地上への落下示唆

3DSculptor via Getty Images

ロシアの宇宙機関Roscosmosを率いるドミトリー・ロゴージン氏は、米国政府がロシアに対する制裁を厳しくするとの報道を受けてTwitterで激しくそれを非難、バイデン米大統領が木曜日に、制裁が「ロシアの宇宙計画を含む航空宇宙産業を衰退させる」と発言したことに対して、ロシアの宇宙産業に打撃を与えるようなことがあれば、ISSが米国、欧州、インド、中国に落下することになるかもしれないと述べています。

ロゴージン氏は「バイデン大統領は理解していないかもしれないから、ISSの軌道修正や某国のビジネスマンが軌道上にまき散らしているスベースデブリとの接近を回避するのにはロシアのプログレス補給船のエンジンで行われていると誰か説明してやってくれ」「もし我々との協力関係を損なえば、誰がISSを制御不能にして米国や欧州に落下させるのか、インドや中国に500tもある構造物を落とすのか。ISSはロシア上空を飛ばないからリスクを負うのはお前たちだけだ」とツイートを連投しました。

まるで某SFアニメにある”コロニー落とし”を地で行くようなことをするのかとも思える発言ではあるものの、これがまったくの絵空事かといえばそうでもありません。ISSは低軌道に浮かんではいるものの、地球の重力にゆっくりと引き寄せられており、定期的に軌道を押し上げる必要があります。現状ではその押し上げ操作が、ISSにドッキングしたプログレス補給船のエンジンを使って行われているため、ISSはその巨体を軌道にとどめるためにロシアに頼らざるを得ないのが実際のところです。

このことに対して、SNSではSpaceXのドラゴン宇宙船やノースロップ・グラマンのシグナス補給船を利用してプログレスと同じことができないかとの意見が出ています。現在、ISSにはシグナス補給船がドッキングしており、4月にはこれを使った軌道修正のためのテストも計画されています。ただ、そうしたオプションはあくまでオプション以上の、長期的な解決策としての機能を持つものではありません。

ただ、ロシアもロシアで、ISSでの活動はNASAに大きく依存しています。NASAはISSの電力供給を一手に引き受けており、軌道上の位置制御もNASAの協力の上で成り立っています。つまり、ISSにおいてはロシアも米国も、互いに互いの力を必要としているわけです。

もちろんどちらかが一方的にISSを放棄してしまえばそれを維持することはできなくなりますが、いまのところはバイデン大統領が発表したロシアへの制裁措置も、米露の宇宙での協力関係を崩すことがないように組まれており「RoscosmosとNASAの現場はISSの安全な運用のために各国のパートナーとともに協力を継続している」とNASA広報は述べています。

さらに、もし今後もISSに関する計画が予定どおり行われるならば、やはり米露は協力関係を維持し続ける必要があります。3月18日にはソユーズ宇宙船が3人のロシア人飛行士を乗せてISSへと向かう予定であり、現在ISSに滞在するロシア人飛行士2名、NASA飛行士4名、ESAのドイツ人飛行士1名に合流します。そして、3月30日にはNASA飛行士1名とロシア飛行士2名が地上に帰還します。

ちなみに、ISSはすでに2030年での退役を見据えた時期に入っており、最近ではISSをいかにして安全に大気圏に降下させるかという計画の概要も発表されていました。ただ、その計画はプログレス補給船の推進力を利用することを念頭に作られており、仮に一方的にロシアがISSを放棄してしまった場合は、NASAはシグナスを利用する方向に計画を練り直すことになりそうです。

バイデン大統領は、今後米露関係の「完全な断絶」もあり得ると発言しており、そうなったときはロゴージン氏もISSに関ししかるべき対応を打ち出してくると考えられます。今後しばらくはウクライナで起きていることの一方で、軌道の上にいる人たちのことも頭の片隅に覚えておく必要がありそうです。

蛇足。ロゴージン氏は米国の制裁において金融資産凍結対象とされるロシアの重要人物リストに個人として名前が掲載されているとのことです。

(Source:Via the VergeEngadget日本版より転載)

【コラム】米国はシリコンバレーの力を活用して国防のイノベーションを推進すべきだ

米国防総省(DoD)をはじめとする米国政府機関および議会超党派合意は、中国が外交、インフォメーションとインテリジェンス、軍事力および経済力の戦略的活用によって、将来の世界秩序を再定義しようとしていることを認識している。

中国が宣言している目標と目的を踏まえれば、我々はこの評価が今後数十年間継続する可能性を予測すべきだ。

あらゆる公平な観察者にとって、中国の積極的な政府全体による支配、とりわけ軍事領域における支配への取り組みに対する米国の対応は、断片的かつ無効である。対応(要求、取得、予算)のために用意されたシステム(および人員)は、ライフサイクルコストと30年間におよぶDOTMLPF(教義、組織、訓練、物資、指導者育成、人事、施設)プロセス管理に最適化して設計されている。

しかし、戦略的競争に勝つためにはその正反対が必要だ。スピード、緊急性、スケール、短期ライフサイクル、およびアトリビュータブル(帰属可能)なシステムだ。既存のDoDシステムは、現在DoD関連の先端技術(AI / ML、自律、バイオテック、量子、宇宙利用、半導体、等々)のほとんどを支えている民間テクノロジー・エコシステムを効果的に利用するようには作られていない。

DoDの上級軍人および文民のリーダーの多くはこれを理解し、善意のイノベーションイニシアチブを設立してきた。しかし、こうしたイニシアチブへの長期的な資金提供とその効果は、先見性ある指導者個人の支援に依存することがほとんどあり、重要な指導者の在任期間が終わると危機に晒される。

その結果、この国のシステムも組織も人数も予算も、中国をはじめとする潜在的ライバルの挑戦を受けるためのスケーリングができない。我々の敵対者は、この国の伝統的システムが対応できるよりも速く革新している。

多くの人々が、既存のDoDシステムの刷新について記してきた。計画、プログラミング、予算、実行(PPBE)プロセスの修正、DoDアクセラレータおよびDefense Innovation Unit(国防イノベーション・ユニット)の規模拡大、既存の取得権限の活用などだ。

どれも良い考えだが、肝心の問題を見逃している、それは「DoDが民間産業と本格的に関わっていない」ことだ。米国民間セクターの並外れた潜在能力を活かし、その圧倒的に優れたリソースを持ち込むことでより効果的に前進することが、この戦略的競争に勝利するための鍵だ。

シリコンバレーはゲームに戻る準備ができている

第2次世界対戦後の最初の20年間、シリコンバレーは事実上「defense valley(防衛バレー)」だった。DoDと諜報機関のためにチップとシステムを作っていた。シリコンバレーにおけるイノベーションは、戦後スタンフォード大学への海軍研究事務所からの資金提供に始まり、さまざまな機関からの最先端の無線・電子システム開発の発注がそれに続いた。

生まれたての半導体企業にとって最初の大型契約は、大陸間弾道弾ミサイル、Minuteman II(ミニットマン2)の誘導システム、次いでアポロ宇宙船だった。冷戦期、Lockheed(ロッキード)はシリコンバレー最大の雇用主であり、3世代にわたる潜水艦発射弾道ミサイル、人工衛星、およびその他の兵器システムを製造した。シリコンバレーのリソースを結集させた我々の能力が、米国にとって決定的に重要で、最終的にソビエト連邦との冷戦に勝利をもたらしたことは間違いない。

今世紀の戦略的競争に勝つためには、同様のリソースと人材を確保する必要がある。今日、シリコンバレーはDoDを圧倒するテクノロジーエコシステムの中心に位置し、スピードと緊急性をもって動き、インセンティブが与えられれば、資金と人員を壮大なスケールで結集させ、一連の問題を解決することができる。

しかしDoDは、これを「大規模かつスピーディー」に活用すべきリソースであることをなかなか認めない。そして、完全に認めていないために、もしこのリソースを集結できれば何が可能になるのかを考えていない。

そして想像したことがないために、年間3000億ドル(34兆円)以上のベンチャー資金(対してDoDの研究、開発、試験、評価[RDT&R]プログラムは1120億ドル[約13兆円]、調達は1320億ドル[約15兆円])をこの国の安全保障を支える可能性のある軍民両用活動を支える分野に注ぎ込ませるために、どのようなインセンティブ(たとえば大規模な優遇税制など)を与えればよいのか考えたこともない。

「ハンマーにはあらゆるものが釘にみえる」ということわざは、主権と国際法への脅威のような問題の答をうまく説明している。ほとんどの思考は、既存の兵器システム(艦船、空母、原子力潜水艦)の追加 / 改良に限定されていて、代替的な軍事概念や南シナ海やバルト海やカリニングラードにおける戦争の阻止あるいは勝利に貢献した即時展開可能な兵器ではない。

どうやら、新しいベンダーによる小型、低価格、アトリビュータブル、自律型、致死的、大量、分散、短期ライフサイクルのプロジェクトを中心に作られた新しいシステムとコンセプトに関する会話は、ほぼ禁止されているようだ。しかし、これらこそが集まってくるソリューションとイノベーションエコシステムだ。SpaceX(スペースエックス)のような会社50社が、21世紀のDoDを作るのに協力するところを想像して欲しい。

米国の選りすぐりを戦略的競争に参加させよ

米国の民間セクター、特にシリコンバレーに焦点を合わせ、比類なきイノベーションと並外れた潜在投資力とともにその力を爆発させることで、中国に対する米国の能力低下を逆転させ、さまざまな主要テクノロジー分野で優位性を保つことができる。

それだけではない。我々はもっと積極的かつ意識的に、この国の世界に名だたる高等教育機構、すなわち米国主要大学に集まった才気あふれる革新的かつ創造的な学生たちと教員陣の膨大な未開発の可能性を活用しなくてはならない。

この国はかつてこれに成功したことがある。スタンフォードをはじめとする米国主要研究大学のほとんどは、冷戦期の軍事イノベーションエコシステムに不可欠な存在だった。しかし、シリコンバレーが独特だったのは、スタンフォード大学の工学部が、教授や大学院生に軍事エレクトロニクス企業を立ち上げるよう積極的に働きかけたことだった。最高の人材を集め、テクノロジーを商品化することでソビエト連邦とのレースに勝つための手助けをした。

この歴史的事例に触発され、我々は最近Stanford Gordian Knot Center for National Security Innovation(スタンフォード・ゴーディアン・ノット国家安全イノベーション・センター)を設立し、シリコンバレーのテクノロジー、人材、資産、スピード、そして困難な問題に立ち向かう情熱を駆使して米国がこの戦略的競争の新時代を勝ち抜く力になろうとしている。

我々はさらに、シリコンバレーや他のイノベーションエコシステムを横断してリソースを統合する取り組みを進めていかなければならない。トップクラスの大学では、国家安全保障イノベーションの教育を本格化する必要がある。国家安全保障イノベーターの養成、洞察力、融合、ポリシーアウトリーチの提供、最も困難な問題の解決の触媒になりうる実用最小限の製品の継続的創出などだ。

この国のすべてのリソースと至高の人的財産を活用しないリスクはあまりにも大きい。

編集部注:Steve Blank(スティーブ・ブランク)氏は、スタンフォード大学Gordian Knot Center for National Security Innovationの創立メンバーで、同大学の非常勤教授およびコロンビア大学のイノベーション担当上級フェロー。

Joe Felter(ジョー・フェルター)氏はGordian Knot Center for National Security Innovationのセンター・ディレクター、創立メンバーで、スタンフォー大学のCenter for International Security and Cooperation、Hoover Institution、およびStanford Technology Ventures Programの講師、研究職。

Raj Shah(ラジ・シャー)氏はGordian Knot Center for National Security Innovationの創立メンバー、テクノロジー企業家・投資家、スタンフォード大学非常勤教授、ペンタゴン防衛イノベーション・ユニット実験の元マネージング・パートナー。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Steve Blank、Joe Felter、Raj Shah、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国当局がフードデリバリー会社に手数料の引き下げを指導

2016年から2020年の間に、中国でオンラインで食事を注文した人の数は4億人に倍増した。このブームの背景には、同国のフードデリバリー競合各社が、顧客や企業に対して気前よく補助金を配ったということもある。Meituan(メイトゥアン、美団)とEle.me(ウーラマ、餓了麼)の2社が市場を支配するようになると、彼らは加盟店の手数料を引き上げ始めた。しかし、新たな規制の変更は、彼らの利益モデルを阻害しようとしている。

中国当局のグループは現地時間2月18日、飲食業の運営コストを下げるために、フードデリバリープラットフォームはレストランに請求するサービス料をさらに引き下げるべきだという発表を行った。このニュースを受け、Meituanの株価は金曜日に15%以上下落し、250億ドル(約2兆9000億円)以上の市場価値が失われた。MeituanのライバルであるEle.meを運営するAlibaba(アリババ)の株価は約4%下落した。

この提案は、中国の国家計画機関である国家発展改革委員会が「苦境にあるサービス産業の回復を支援する」ことを目的とした指導だ。この新規制は、長期的にはインターネットの巨人たちの利益を先細りさせる可能性が高い。Meituanの2021年7月から9月期の収益において、手数料が占める割合は60%にも達している。同社は、ホテルなど他の業種からも手数料を徴収しているが、フードデリバリーは依然として最大の収益源だ。また、フードデリバリーは、Alibabaが2018年にEle.meを買収した後、同社の主要事業の1つにもなっているが、この巨大企業にとって最大の収益エンジンは、依然として電子商取引である。

中国のフードデリバリープラットフォーム各社は、収益性を低下させる可能性がある別の変化に関しても、対処を迫られている。2020年に注目を浴びた記事では、中国の何百万人ものフードデリバリー労働者を危険にさらす高ストレス環境が明るみに出た。効率を最適化するアルゴリズムは、人間の能力や道路の事故などを十分に考慮していないため、配達員はしばしば仕事を遂行するために信号を無視して走っている。

中国当局は、フードデリバリープラットフォームに対し、従業員の安全性を向上させるよう命じた。MeituanとAlibabaは、配達員のライダーに音声コマンド機能を備えたコネクテッドヘルメットの提供を開始し、配達員がスクーターで道路を駆け抜ける際に、携帯電話をチェックする必要がないようにした。配達時間の制限も緩和した。MeituanとEle.meの課題は、労働者の福利厚生と事業の収益性をいかに両立させるかということだ。

Meituanはすでに手作業への依存度を減らすことに取り組んでいる。最近ではフードデリバリー用のドローンを公開し、中国のいくつかの都市で小規模な試験を行っている。とはいえ、この飛行体はまだ製品化の初期段階であり、中国では低空飛行のドローンに対する規制がまだ具体化していない。また、ドローンによるフードデリバリーの経済的な実現性も未知数だ。

しかし、少なくとも自動化は、Meituanのような労働集約型のオンデマンドサービスを提供する企業にとって、より安全でコストを削減する未来を実際に試すための1つの方法である。

画像クレジット:Meituan Dianping

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(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中国の旅行最大手Trip.comがハイブリッドオフィスを採用

世界中で数多くのテック企業が過去2年間の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)期間中、リモートワークあるいは何らかのハイブリッドモデルに切り替えた。しかし中国では、ほとんどのテック企業が2020年夏以降オフィスに戻っている。国のゼロ・コロナ政策による感染者数減少のおかげだ。こうした通常生活の中、ある中国企業がリモートワークを続ける決断をした。

3月1日から、中国最大の航空券・ホテル予約プラットフォームTrip.com(トリップ・ドット・コム)は、従業員が許可を得れば週2日まで在宅勤務することを可能にすると2月15日に発表した。1999年に設立され、2019年にCtrip(シートリップ)からTrip.comにブランド変更した同社は、2021年6カ月間実施したリモートワークの試行に参加した従業員1600名の75%に「健康の改善」が見られたことを受け、今回の行動に至った。実験には技術、プロダクト、ビジネス、マーケティング各部門の中核スタッフおよび約400名の管理職が参加した、と広報担当者がTechCrunchに語っている。

参加者の93%が、自分の時間を「より有効に」使えたと感じ、社員の離脱率は、期間中約3分の1に減った。60%近くが、ハイブリッドワークを「強く」支持する、と試行終了後に答えた。

同社従業員は3月以降、自宅、喫茶店などあらゆる場所で働く申請ができる。各部門のマネージャーは、チームの目標、各個人の状況に基づいてリモートワークを認めるかどうかを判断する、と広報担当者はいう。またマネージャーは、自己判断で取り決めを調整することができる。

ハイブリッド方式はまずTrip.comの中国国内の事業所に適用され、海外の支店は「現地の状況と新型コロナ防衛措置に応じて」このモデルを適用する予定だ。

Trip.comは、NASDAQおよび香港証券取引所に上場しており、過去数年に海外競合他社を次々と買収して国際的に拡大している。2016年に17億400万ドルでスコットランドのSkyscanner(スカイスキャナー)を買収した。2019年には、インドのMakeMyTrip(メイクマイトリップ)の持ち株を半数近くへと増やした。そして2020年にはオランダの旅行会社グループ、Travix(トラビックス)を金額非公開で買収した。

2020年12月時点のTrip.comおよび関連会社の従業員数は約3万3400名で、うち約3万名が中国国内だ。

Trip.comの共同ファウンダー・会長のJames Liang(ジェームズ・リャン)氏は中国社会問題のコメンテーターとして頻繁に登場している。この柔軟な勤務体系を考えた際、コンピューター・サイエンティストで経済学者でもあるリャン氏は、中国の人口統計学上の課題も念頭に置いていたに違いない。

リャン氏は声明で、ハイブリッド勤務は「企業、従業員、地域社会すべてにとってのマルチ・ウインです。効率を犠牲にすることなく従業員の満足度を高めるだけでなく、交通渋滞を緩和し、環境保護にも役立ちます。住宅価格の高騰と地域格差を軽減し、家族や女性のキャリア育成と出産率の向上にも貢献します」と語った。

Trip.comによるハイブリッド・オフィス採用は、中国テック業界の過重労働カルチャーに対する懸念と批判が高まる中で生まれた。同社は、リモートワークが生産性を犠牲にしないことを示している。2021年の実験参加者の71.9%が、ハイブリッドワークは業績に影響を与えなかったと報告した。

関連記事:Bilibiliコンテンツモデレーター過労死疑惑で中国テック業界の長時間労働文化の議論が再燃

「ハイブリッドワークモデルが将来中国の主要企業全体に広まることを願っています。それは社会と経済に有益で広範囲にわたる影響を与えるでしょう」とリャン氏は語った。

画像クレジット:Olivier Douliery / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nob Takahashi / facebook