酵素ベースの独自技術でプラスチック汚染の終結を目指す豪Samsara Eco

世界中で使用されるプラスチックの量は、2040年までに倍増すると予想されている。そのほとんどが廃棄される際には埋立地に送られ、リサイクルされるのはわずか13%に過ぎない。CIEL(国際環境法センター)によると、プラスチックの生産と焼却は、2050年まで毎年2.8ギガトンの二酸化炭素を発生させる可能性があるという。

世界的なプラスチック汚染をなくすために、オーストラリアの環境技術スタートアップ企業であるSamsara Eco(サムサラ・エコ)は、プラスチック(ポリマー)を分解して、その分子構成要素(モノマー)に分解する酵素ベースの技術を開発した。この技術を活用すれば、再び(何度も)新品のプラスチックに作り直したり、より価値のある商品にアップサイクルすることが可能になるとSamsara Ecoの創業者でCEOのPaul Riley(ポール・ライリー)氏は語る。

Samsaraの技術によって、プラスチックはもはや化石燃料や植物(どちらも環境に大きな影響を与える)から作られる必要はなくなり、埋立地や海に行き着くこともなくなると、ライリー氏はいう。

「この研究の動機となったのは、環境、特に炭素排出とプラスチック廃棄物に関する懸念と、我々の酵素工学に対する愛着です。これを製造技術に適用することで、地球規模の問題を解決し、システムを変え、真の循環経済を生み出すことができます」と、ライリー氏はインタビューで語っている。

今回、600万ドル(約7億3000万円)の資金を調達したSamsaraは、2022年末に最初のリサイクル工場を建設し、2023年に本格的な生産を開始する予定だ。

同社の投資家には、Clean Energy Finance Corporation(クリーン・エナジー・ファイナンス・コーポレーション)や、シドニーに拠点を置くスーパーマーケット大手Woolworths(ウールワース)のベンチャーキャピタルファンドで以前から出資していたW23、そしてMain Sequence(メイン・シーケンス)が含まれる。

「このプロセスでプラスチック1トンをリサイクルするごとに、推定3トンの二酸化炭素排出量が削減されることになります」と、ライリー氏は語っている。

酵素を使ってプラスチックを分解する企業は他にも世界中にあるが、Samsaraは異なるプロセスと酵素を使っていると主張する。ライリー氏の説明によると、他のほとんどの酵素プロセスは12時間以上かかるのに対し、同社は1時間でプラスチックの完全な解重合を行うことができるという。

「現在のリサイクルの方法は、単純に非効率的で、私たちが現在直面しているプラスチック汚染の危機に対応するには不十分です」と、ライリー氏は声明で述べている。「新しいプラスチックを作るために化石燃料を採掘したり、実際にリサイクルされるのは9%だけという現在のリサイクル方法に頼るのではなく、私たちはすでに存在するプラスチックを、無限にリサイクルすることができるのです」。

他の代替リサイクルソリューションとは異なり、Samsaraのプロセスは室温で行われ、真にカーボンニュートラルで、持続可能な方法で運用されていると、ライリー氏は同社の声明で述べている。

ライリー氏がTechCrunchに語ったところによると、Samsaraはさらなる資金調達も視野に入れており、年間2万トンの廃棄プラスチックをリサイクルする最初の商業規模の生産を行うために、2022年後半にはオーストラリアや海外の投資家から約5000万ドル(約6億1000万円)の資金を調達することを目指しているという。

Samsaraの潜在的な顧客は、小売業者、FMCG(Fast-Moving Consumer、日用消費財)ブランド、リサイクル業者など、基本的にプラスチックに関わるすべての人であると、ライリー氏は述べている。

同社はWoolworthsグループと提携しており、Samsaraが最初にリサイクルする5000トンの再生プラスチックを、Woolworthsは自社ブランド商品のパッケージに使用すると約束し、2022年末までにその在庫を確保することを目指している。さらにSamsaraは、Tennis Australia(テニス・オーストラリア)とも提携し、全豪オープンで使用されたペットボトル5000本をリサイクルすることになっている。

2021年に設立されたこのスタートアップ企業は、科学者やエンジニア、そしてキャンベラにあるオーストラリア国立大学の研究者を中心に、13人のチームで構成されている。

「私たちの長期的なビジョンは、当社の技術力を拡張して、ポリエステルやナイロンでできた衣服のような他の石油由来のプラスチック製品を無限にリサイクルし、二度と化石燃料を使用して新しいプラスチックを作らないようにすることです」とライリー氏は語る。

画像クレジット:Samsara Eco

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(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

産業用熱の取り組みで10年後の全世界におけるCO2排出量1%削減を目指すRondo

気候分野を扱う界隈では、二酸化炭素の排出削減につながる製造や発電のあり方について多くの議論がなされている。世界的な炭素排出をゼロにするという目標を掲げ、実際に明確なロードマップを策定している企業に出会うことは非常にまれだが、それを実践しているのがRondo Energy(ロンド・エナジー)である。同社は投資家と顧客に向けて炭素排出の取り組みを発表し、熱心な環境保護活動家らを沸き立たせた他、2200万ドル(約26億円)の資金調達に成功した。

同社の売り込みはかなり直球だ。産業では恐るべき量の熱が消費されており、従来、その多くが天然ガスから生成されている。ところが、ここ10年の間に非常に興味深い変化が生じている。炭素クレジットの拡大と天然ガスの価格上昇を受け、大量の熱を必要とする業界が他のエネルギー源に目を向け始めたのだ。これらの業界には、食品加工、石油生産、セメント製造、水素製造、原料精製などが含まれる。先述した価格の上昇に伴い、主に太陽光や風力などの再生可能エネルギーのコストは急落している。カリフォルニア州の一部ではこの動きが顕著になっており、1日のうち一定の時間帯ではエネルギー生産量が需要を上回り、余剰電力を吸収する送電網の容量が大幅に不足しているほどだ。その結果、ある時間帯では電気代を格安ないしは無料で使えるにもかかわらず、電力が消費されずに余ってしまっているのである。

そこで登場するのがRondo Energyだ。同社は電力ではなく、熱の形でエネルギーを貯蔵する新たな方法を開発した。熱には速さという大きな強みがあり、リチウム電池の充電も圧倒的な速さで可能だ。大まかに説明すると、電力を巨大な抵抗器に送り込み、あり得ないほどの高温になるまで加熱する。あとはその熱を取り込み、電力として使うだけだ。

「レンガをかまどに放り込んで加熱してみてください。熱は長時間持続しますよね」そう話すのは、Rondo EnergyのCEO、John O’Donnell(ジョン・オドネル)氏だ。同社のテクノロジーについて、5歳児でもわかるようにかみ砕いて説明してくれた(テクノロジージャーナリストである筆者は40歳だが、朝のコーヒーをまだ飲んでいなかったので非常に助かった)。オドネル氏によると、実際の貯蔵はさほど複雑ではないものの、テクノロジーの神秘はその「レンガ」の形と、原料を加熱して法人顧客の需要に合わせて熱を抽出するAI主導の制御システムにあるという。

「私たちは、固体のなかに熱を超高温のエネルギーとして貯蔵しています。実のところ、私が使っているコーヒー用の魔法瓶は、ノートパソコンのバッテリーよりも多くのエネルギーを格安で貯蔵できるんです。熱については特別な技術は必要ありません。みなさんが使っているトースターやヘアドライヤーも、私たちと同じテクノロジーで熱を発生させています。貯蔵については、新しい配合の素材を開発しました。その素材のなかで空気を循環させ、過熱状態の熱を抽出していけば、継続して熱を発生させることができるというわけです」とオドネル氏は話す。「その後、その熱を従来型のボイラーを使って蒸気に変えるか、ガラス製造やセメント製造の顧客など、高温の熱を必要とするユーザーに直接届けています。このテクノロジーでは化学バッテリーと比較してほんのわずかなコストしかかからないうえ、どの水素システムと比較しても効率は約2倍、コストは半分です」。

余剰電力を抽出し、世界最大サイズのヘアドライヤーを作って、レンガの山に向けてエネルギーを飛ばす。熱が必要になったら、レンガに空気を送り込む。もちろんこれが全容ではないが、偉大なアイデアの概略は至ってシンプルだ(画像クレジット:Rondo Energy)

長い間、市場に存在した唯一のオプションは水素システムだったため、これとの比較は意義深い。水素システムの場合、電力を取り込んで水素を生成し、エネルギーが再び必要になったら水素を燃やすことができる。ただ、オドネル氏の主張によると、こうしたシステムの効率性は最大でも50%程度だ。一方、Rondo Energyのシステムは98%の効率性を掲げており、バッテリーや水素の貯蔵と比較して数倍シンプルだ。

これが大きな意味を持つのは、業界の熱需要が膨大だからだ。現在、Rondo Energyの拠点であるカリフォルニア州では、電力よりも多くの天然ガスが産業用の熱生成に使われている。エネルギーの価格が変化し、余剰天然資源の熱貯蔵がさらに発展すれば、脱炭素化に大きな影響を与えることができるかもしれない。世界的には温室効果ガスの36%が産業から発生しているため、炭素を削減し、ガソリン駆動の熱から炭素捕捉を行う手間を取り除くことができれば、大きな効果が出るはずだ。

「私たちのイノベーションは、物理的な貯蔵に使う素材と、AIによる監視制御の2点が組み合わさったものです。10年前では不可能だったさまざまなことが、現在は可能になっています。私たちが今実践していることは、5年前なら『ばかげている』と言われるようなことです。電力が今より高額だったころには想像もできなかったイノベーションですね」とオドネル氏は笑って話す。「ですが、私たちが進めている事業が今後産業用熱の大半を担うことになる可能性は大いにあります。10年後には、全世界の排出量が1%削減されるでしょう」。

Rondo EnergyのCEOジョン・オドネル氏(画像クレジット:Rondo Energy)

競合他社には、液体塩に約570℃(1050℉)の熱を貯蔵する技術を持つ企業がいる。Rondo EnergyのCEOは、同社の高温電池と類似の規模で熱貯蔵ができる企業としては、これが最大の競合だという。一方、Rondo Energyでは1200℃(2200℉)の熱を貯蔵できる。産業用熱や製造用熱として応用する際のニーズにはるかに近い数字だ。

同社は、シリーズAでBreakthrough Energy Ventures(ブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズ)Energy Impact Partners(エナジー・インパクト・パートナーズ)から2200万ドル(約26億円)の資金調達に成功した。この資金をもとに、Rondo Energyは製造に着手し、2022年の後半には顧客システムを提供する予定だ。

「私たちは、Rondo Heat Battery(ロンド・ヒートバッテリー)ソリューションが、頑固な排出ギャップを埋めるうえで重要な役割を果たすと確信しています」と、ブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズのCarmichael Roberts(カーマイケル・ロバーツ)氏は話す。「再生可能エネルギーのコストは着実に低下してきていますが、高温の加工熱を必要とする業界では再生可能エネルギーの使用は不可能でした。再生可能な電力を高温の熱エネルギーに効率的に変換する方法がないからです」。

もちろん、Rondo Energyの成功は、時代の流れが同じように続くかどうかによって左右される。核融合電力の供給が突然豊富になれば、産業用のこうした種類のエネルギー貯蔵は核融合電力に置き換えられるだろう。また、他の業界も、余剰の太陽光熱から供給される日中の格安電力に目を付け、電力会社の需要が増加する可能性もある。とはいえ、膨大な量のエネルギーを高速で貯蔵する革新的なテクノロジーが登場したのはしばらくぶりのことだ。地球も、これ以上炭素に対応できなくなっている。今のところは、Rondo Energyがウィンウィンのソリューションを見つけたといえるだろう。高温加工産業には安価な熱を、投資家には短期間のROIを得る絶好のチャンスを、というわけだ。個人的な意見だが、炭素排出量を大幅に削減する可能性をある程度持つソリューションにはすべて、投資の価値があるはずである。

画像クレジット:Rondo Energy

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

Verdagyの新技術がCO2を排出しない水素製造を加速させる

水素製造の先駆者であるVerdagy(ベルダジー、Verdeは「緑」、agyは「エネルギー」を意味する)は、エネルギー分野の戦略的投資家たちから2500万ドル(約29億円)を調達した。この資金は、複雑で環境に優しいとはいえない水素製造プロセスを、空気中に有害物質を排出しない工業的に拡張可能なソリューションに置き換えるために使用される。

工業用水素を製造する最も一般的な方法(米国で製造される水素の90%以上)は、水蒸気メタン改質(SMR)だ。つまり、メタンガス(CH4)に高圧の水蒸気(H2O)を吹き付けると、化学の神様が働いて大量の水素(ナイス!)とCO2を作り出してくれる。気候変動に関する知識があれば、CO2の排出は避けるべきものであることはご存知だろう。Toyota Mirai(トヨタ・ミライ)Honda Clarity(ホンダ・クラリティ)Hyundai Nexo(ヒュンダイ・ネクソ)のようなしゃれたクルマを、テールパイプからCO2の代わりに水を滴らせながら夕日に向かって走らせれば、独善的な気分になるのも無理はない。しかし、問題はある。その水素がどこから来たのかを知らなければ、CO2はクルマのテールパイプから捨てられる代わりに、どこかの大きな工場で排出されていることに気づいていない可能性があるということだ。おっと、それは困った。もちろん、CO2を回収して再利用する方法もあるが、そもそもCO2を出さない方が望ましいはずだ。そう、やはりそう思うだろう。

もう1つの主な水素の製造方法は、水の分子を分解することだ。水、つまり、H2Oは2つの水素と1つの酸素からできている。もし、この2つの原子を説得して、酸素(高校の生物化学では、酸素は良いものと習っただろう)と水素に平和的に別れさせることができれば、すばらしいことではないだろうか?ひと言でいえば、それがベルダジーのやろうとしていることだ。大型の電解槽に太陽光や風力などの再生可能エネルギーを(理想的に)接続すれば、大量の水素を作り出すことができる。水素燃料電池車のドライバーが「ドヤ顔」をするという、前述の生物学的害悪を除けば、副産物は排出されない。よりクリーンな環境にするという名目のもとであれば、筆者はその危険性を許容してもいい。

同社のイノベーションの核心は、アルカリ水電解(AWE)とプロトン交換膜(PEM)の電気分解プロセスの長所を取り入れながら、それぞれの固有の短所を排除することにある。ベルダジーは、高電流密度と広いダイナミックレンジでの動作を可能とする非常に大きな有効面積のセルを活用した、膜ベースの新しいアプローチを生み出した。それは、セルが最大効率の動作レンジを持ち、もしも大量の電気が余った場合(例えば、ソーラーアレイの発電量が産業用途や電力網で吸収できる量を超えてしまった場合など)、電気分解セルに電気を流して大量の水素を生成し、それを使用したり貯蔵したりすることができるというものだ。

アルカリ水電解(AWE)などでは隔膜を使用しており、使用できる電流密度には物理的な限界がある。当社が行っているセルと似たような素材や構造があるかもしれないが、その場合は隔膜によって高い電流密度での動作が制限される。(プロトン交換膜)PEMは、セルが使用できる有効領域が限られている」とベルダジーのCEOである(マーティ・ニーズ)氏は同社が特許出願している技術の概要を説明する。そして「当社のセルは非常に大きく、当社の技術を再現することは非常に困難だ。セルは単一要素構造をしており、陽極と陰極、そして中央に膜がある。セルの内部構造は、特許出願中の独自のものだ。セルが実際にどのように熱を放散し、気体や液体を循環させ、どのようにセル内の循環フローを管理するか、これが他社との違いだ」と同氏は語る。

支援の申し出が殺到し、2500万ドル(約29億円)を調達した今回のラウンドは、TDK Ventures(TDKベンチャー)主導のもと、多くの投資家が参加した。その中には、2021年ベルダジーがスピンアウトしたChemetry(ケメトリー)にも出資していたKhosla Ventures(コースラ・ベンチャー)も含まれる。その他の投資家としては、石油・ガス大手のShell Ventures(シェル・ベンチャー)、エネルギー・気候変動対策投資会社のDoral Energy-Tech Ventures(ドラルエナジー・テックベンチャー)、シンガポール政府系投資会社のTemasek(テマセク)、資材商品大手のBHP(ビー・エイチ・ピー)、石油・ガス・建設・農業大手のMexichem(メキシケム)の前身であるOrbia(オルビア)などがあり、さらに多くの投資家がいるが、そのうちの何社かはTechCrunchへの掲載を控えた。

ベルダジーがスピンアウトを発表してからわずか数カ月で、これほど豪華な戦略的投資家を集めて2500万ドル(約29億円)の資金を調達できたのは、同社が行っていることの重大さとチームの質の高さを物語っている。同社の新CEOであるマーティ・ニーズ氏は、Ballard Power Systems(バラード・パワー・システムズ、PEM燃料電池を製造)の取締役、および家庭用太陽光発電のパイオニアであるSunPower(サンパワー)のCOOを9年間務め、さらにアルミニウムとシリコンのリサイクル会社であるNuvosil(ヌボシル)の創業者であるなど、すばらしい経歴を誇る。

「TDK」は元々、東京電気化学工業株式会社(Tokyo Electric Chemical Industry Co., Ltd.)の日本名の頭文字をとったものだ。TDKベンチャーズの投資ディレクター、Anil Achyuta(アニル・アチュータ)氏は「(ベルダジーのような)電気化学系の企業に投資しないで、何に投資するのか」とジョークを交えて話す。「当社のビジョンは、TDK株式会社の将来の道筋を示す企業に投資することだ。そして、電気分解、特にグリーン水素のための電気分解は、社内で戦略的に推し進めている重要な分野の1つだ。TDKは世界中に110以上の工場を持っており、それぞれの工場を脱炭素化するだけでも、当社のカーボンフットプリントを減らすことができるため、非常にエキサイティングなことだ。これらの大きな石油化学工場施設や工業用化学施設の脱炭素化を考えるということは、世界の未来に投資するということだ」と同氏は語る。

水素燃料電池車に関する筆者のつまらないジョークはさておき、同社は主に、大規模な工業団地の一部として石油精製、肥料製造、食品加工、金属合金の製造など大規模な水素アプリケーションのために、水素を産業用に使用することを重点に置いているという。水素をオンプレミスで(少なくとも短いパイプラインで供給できる距離で)製造することは、これらすべての産業にとってメリットがある。そしてベルダジーは、現在のほとんどのソリューションよりも小さなカーボンフットプリントとはるかに環境に優しいテクノロジーで水素を製造することを約束している。

画像クレジット:Verdagy

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

テスラ取締役のキンバル・マスク氏、同社がビットコインを購入した際の環境影響について「無知だった」と発言

Tesla(テスラ)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏の弟で、同社取締役のKimbal Musk(キンバル・マスク)氏は、イーサリアム会議のステージ上でのTechCrunchとのインタビューで、Teslaが2021年に暗号資産のBitcoinを15億ドル(約1725億円)分購入し、この通貨で同社の車両を購入できるようにする予定だと発表したとき、同社は環境への影響について「非常に無知だった」と述べた。

「Bitcoinに投資したとき、我々ちはとても無知でした。環境への影響も知らず、文字通り何も知らず、良い価値の貯蔵庫で、資産を分散させる良い方法のようだ、といった感じでした。もちろん、我々が環境に何をしているかを伝える100万通の、冗談ではなくおそらく100万通のメッセージを受け取るのにそれほど時間はかかりませんでした」と、キンバル・マスク氏は筆者に語った。「もちろん、Teslaは代替エネルギーの未来を創造する会社です。その決断をしたときには、本当に十分な情報がなかったのです」。

キンバル・マスク氏は、TeslaがBitcoinの購入を「必ずしも後悔していない」一方で、ブロックチェーン業界がより環境に優しいインフラに移行できることを望んでおり、自身の慈善団体Big Greenが、さほどエネルギー集約型ではないブロックチェーン上で動作する暗号資産ネイティブのDAOガバナンス構造を採用したことに言及した。

テスラ取締役のキンバル・マスク氏は、イーサリアム2022カンファレンスにおいて、TechCrunchのルーカス・マトニーとのインタビューで慈善活動の将来について議論した(画像クレジット:Jesse Morgan / ETH Denver)

「私は本当に暗号資産の環境への影響には同意しませんが、暗号資産がしていることが大好きです」とキンバル・マスク氏は壇上で語った。「ですので、我々は、環境に影響を与えることなく行う方法を考えなければなりません。それは、この環境への影響を持つという選択肢ではありません」。

Bitcoinを購入するというTeslaの2021年の決定により、暗号資産に大きな追い風が吹いた。しかしその数カ月後、同社がBitcoinをすぐに売却する予定はないが、車両購入の支払いでBitcoinを受け入れないと発表したことで、事態が逆転したのは有名な話だ。

イーロン・マスク氏は2021年5月のツイートの中で「暗号資産はさまざまな面で良いアイデアであり、将来性があると信じていますが、しかしそのために環境を犠牲にするわけにはいきません」と述べている。「TeslaはBitcoinを一切売却せず、マイニングがより持続可能なエネルギーに移行し次第、取引に使用する予定です」。

Bitcoinのマイニングのネットワークがどれだけ再生可能エネルギーに依存しているかについては、まだデータがかなり不足しているが、ネットワークのエネルギー使用がいかに大きいかは明らかだ。Digiconomistのエネルギートラッカーによる試算では、2021年5月のイーロン・マスク氏のツイート以来、Bitcoinの採掘作業の年換算エネルギーの二酸化炭素排出量はほぼ倍増している。同サイトの推定では、Bitcoinのネットワークは、クウェートが1年間に排出するのと同程度の炭素を大気中に排出している。

キンバル・マスク氏は2004年からTeslaの取締役を務めている。

画像クレジット:Kevin Jones / ETH Denver

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

米Novoloop、プラスチック廃棄物から高価値の化学製品を生み出すリサイクル方法を開発

ポリエチレン(私たちがよく知っている一般的なプラスチック)を「バージン」プラスチック(石油化学から直接作られたプラスチックのこと)に対抗できる高価値のプラスチックにアップサイクリングすることは、極めて困難な問題だ。それが非常に難しかったため、何十億トンものプラスチックがリサイクルされず、地球や海を汚染している。しかし、米国に拠点を置く新しいスタートアップ企業のNovoloop(ノヴォループ)は、その答えを出したと主張する。

同社の創業者であるJeanny Yao(ジェニー・ヤオ)氏とMiranda Wang(ミランダ・ワン)氏の2人の女性科学者は、5年以上にわたってこの問題に取り組んできた。

米国時間2月15日、Novoloopは1100万ドル(約12億7000万円)のシリーズA資金を調達したことを発表。このラウンドはEnvisioning Partners(エンヴィジョニング・パートナーズ)が主導し、Valo Ventures(ヴァロ・ベンチャーズ)とBemis Associates(ビーマス・アソシエイツ)に加え、SOSV、Mistletoe(ミスルトー)、TIME Ventures(タイム・ベンチャーズ)を含む以前の投資家も参加した。Novoloopは、高機能アウターウェアに見られるシームテープなど、アパレル向けボンディングソリューションを製造しているBemis Associatesと新たに提携を結んだことも発表した。

Novoloopは、プラスチック廃棄物を高性能の化学製品や材料に変えることを目指しており、ATOD(Accelerated Thermal Oxidative Decomposition、熱酸化分解促進)と呼ばれる独自のプロセス技術を開発した。ATODは、ポリエチレン(現在最も広く使用されているプラスチック)を、高価値の製品に合成可能な化学的構成要素に分解するという。

その最初の製品は靴、アパレル、スポーツ用品、自動車、電子機器などに使用される熱可塑性ポリウレタン(TPU)のOistreになる。この製品のカーボンフットプリントは、従来のTPUに比べて最大で46%も小さいと、Novoloopは主張している。

Novoloopの共同設立者でCEOを務めるミランダ・ワン氏は、声明の中で次のように述べている。「プラスチックがすぐにはなくなることはないでしょう。そのため、生産されるものと再利用されるものとの間のギャップを埋めるためのイノベーションが必要です。何年もかけて技術開発を行ってきた私たちは、この必要性の高い技術を商業化するために、すばらしい投資家やパートナーから支援を得られたことを発表でき、大変うれしく思います」。

「我々が今回の投資ラウンドを主導することになったのは、Novoloopがプロダクトマーケットフィットを見つけたからです」と、Envisioning PartnersのパートナーであるJune Cha(ジューン・チャ)氏は述べている。「Novoloopは、Oistreが初期段階でも市場で幅広い用途に使えることを証明しました」。

ワン氏は電話で筆者に次のように語った。「ポリエチレンプラスチックは、包装材として最も一般的に使用されているものですが、化学的に変化させたり、分解して有用なものに変えることが非常に困難です。私たちは、このポリエチレンを酸化させるために、根本的に新しい化学的アプローチを採用することで、これを解決しました」。

「他の誰もが、廃プラスチックであるポリエチレンを化石燃料の原料にしています。しかし、私たちのアプローチは、直接ポリエチレンの廃棄物を採取し、ワンステップで変換するというものです。(中略)ですから、石油やガスに戻す場合に発生する多くのステップや化学反応を根本的に回避することができます」と、ワン氏は語る。

Novoloopの競合企業には、BASF(ビーエーエスエフ)、Covestro(コベストロ)、Lubrizol(ルーブリゾール)、Huntsman(ハンツマン)などがある。これらは化石燃料からバージン材のTPUを製造している企業だ。現在、TPUの約99%はバージン材である。言い換えれば、これは崩壊の準備を整えた巨大な産業なのだ。

画像クレジット:Novoloop / Novoloop founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

CO2回収へ一歩、アイスランド独自の火山地質は空気をろ過し二酸化炭素を貯留する技術に理想的な環境だ

私たちが吸っている空気は二酸化炭素問題を抱えている。だが、アイスランドのレイキャビク郊外にある、地熱活動の活発な台地のように広がるHellisheidi(ヘトリスヘイジ)では、新しい技術がそれを修復するための小さくも力強い一歩を踏み出している。

Climeworks(クライムワークス)が建設したOrca(オルカ)というプラントは、CO2を空気中から直接ろ過し、地中に永久に貯留する世界初の施設である。

Orcaの二酸化炭素回収デバイスは巨大なトランジスタラジオのようだ。氷に覆われた山頂から日の光が差し込む珍しい日でさえ激しい風が吹くアイスランドの風景に、これらのデバイスはぴったりとフィットしている。

同プラントは2021年9月に稼動を開始したばかりだが、同社の空気ストレーナー技術は直接空気回収として知られているもので、かなり前から環境保護活動家の間で論点になっていた。二酸化炭素を吸い上げることは、かつては最後の手段と考えられていたのだが、私たちは最後の手段がなくてはならない未来に向かって進んでいるようだ。

「直接空気回収と貯留の組み合わせは、パリ気候目標に準拠することを目指す上で、世界が膨大な規模で必要とするものになる可能性が非常に高いです」とClimeworksのCEOで共同創業者のJan Wurzbacher(ヤン・ヴュルツバッハー)氏は語る。

計算と魔法に基づく二酸化炭素除去

ヴュルツバッハー氏が言及していた「パリ」目標とは、2015年のパリ協定で定められた、気温上昇を摂氏2度(理想は摂氏1.5度)まで抑えるために温室効果ガスの排出量を制限する世界目標のことだ。この目標を達成するためには、2050年までに年間100億トンの二酸化炭素を大気中から除去する必要があると国連は推定している。この数字は、他の手段によって積極的な排出削減が達成されると仮定した場合の最良のシナリオである。十分な削減がなければ、二酸化炭素除去の必要性はさらに高まるだろう。

「それはかなりシンプルな気候計算です」と、ヴュルツバッハー氏はClimeworksが拠点を置くスイスのチューリッヒからのビデオ通話で説明した。「今世紀半ばまでに、他の対策がすべてうまくいくという想定の下で、100億トンのCO2を除去する必要があります。石炭火力発電所などを十分な速さで縮小することは困難であることから、最終的には200億トン削減する必要に迫られるかもしれません」。

直接空気回収技術は、過剰なCO2を除去するための多くの選択肢の1つである。植林などの自然な方法や、煙突などの排出源から直接CO2を回収する技術もある。CO2を発生源で回収するよりも、文字通り薄い空気からCO2を回収する方が困難でコストがかかるが、直接空気回収の利点は、個々の汚染源を見つけ出したり停止したりする必要がないことである。世界中で機能するソリューションだ。

「直接空気回収を行う場合、CO2のある場所に行く必要はありません。空気はどこにでもあるからです」とヴュルツバッハー氏は述べている。

Orcaプラントはコンテナサイズの8つのボックスで構成されており、Climeworksはこれをコレクターと呼んでいる。それぞれの箱の正面には大きなベネチアンブラインドのようなスラットが取り付けられている。背面には12個のファンがあり、ボックスを通して空気を引き込む役割を果たす。コレクター内では、CO2分子は特別に開発されたフィルター材料の表面に衝突し、そこでアミンと呼ばれる分子によって選択的に吸着される。

その接点は魔法のような瞬間だ。残りの空気はコレクターの反対側から出ていくが、二酸化炭素はアミンにしっかりと付着する。その瞬間、CO2は混沌とした大気の乱れから秩序だった人類の支配へと移行し、数千年にわたって制御され続ける可能性を秘めたものとなる。熱を加えると、アミンからCO2が放出され、近くの火山岩に送り込まれて、永続的な炭酸塩鉱物を形成する。

現在、Orcaで大量のCO2を除去するにはトン当たり600〜800ドル(約6万8000〜9万1000円)の費用がかかるが、これはほとんどの潜在的な支払者にとって法外な金額だ。初期の顧客は、Microsoft(マイクロソフト)やStripe(ストライプ)、Swiss Re(スイス・リー)、さらにはバンドColdplay(コールドプレイ、近く行われるワールドツアーからの排出量の一部を相殺するためにClimeworksを採用)など、高い料金を支払うことに前向きな企業や個人となっている。

Climeworksはこのコストを100〜200ドル(約1万1000〜2万3000円)に引き下げることを目指している。US Department of Energy recently(米国エネルギー省)は最近、技術的な二酸化炭素除去のコストをトン当たり100ドル以下にするという同様の目標を設定した。このような低価格帯であれば、直接空気回収は他の野心的な排出削減策と同等になる。

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この魔法の瞬間は、今のところ安くはないかもしれないが、少なくともうまく機能する。

「Orcaはゼロから1に進みました」とコロンビア大学のシニアリサーチフェローであるJulio Friedmann(フリオ・フリードマン)博士は述べている。「現時点で私たちは、必要に応じてOrcaをさらに製造できることを承知しています。コストが削減され、パフォーマンスが向上することなどが予想できますが、現在は1台の装置で年間4000トンのCO2を大気から回収しています」。

コストが高いことに加えて、OrcaはCO2の回収量が非常に少ないことが指摘されている。4000トンという量は、数十年以内に除去しなければならない100億トンに比べれば微々たるものである。現在の排出レベルでは、人類はOrcaの毎年の取り組みを3秒ごとに相殺していることになる。

しかし、大気中から二酸化炭素を除去する他の方法と比較して、この量を考慮することは有用かもしれない。1エーカー(約4000平方m)のセコイア林を育てることも約4000トンのCO2削減につながるが、1年をはるかに超える時間を要する上、限られた場所でしか実現できない。

フリードマン氏は、直接空気回収のエレベーターピッチを同じような言葉で表現している。「それは20万本の木の仕事を、1000倍のスペースにわたって行います」。

Greta Thunberg(グレタ・トゥーンベリ)氏のような活動家は、直接空気回収のような工学的解決策を「ほとんど実在しない技術」として退け、代わりに自然に基づく解決策を推奨しているが、両方の戦略を追求することは可能である。国連の推定が正しければ、余分な二酸化炭素を吸収するための複数の解決策の余地があるだろう。

「私たちがこれを必要とすることになれば、数十億トンものオーダーになるでしょう。私はそうなることを確信しています」とヴュルツバッハー氏は語っている。

小さいほうがいいこともある

Orcaの小さい規模に対する指摘も別の重要なポイントを見落としている。小さい規模で始めることは、独特の学習機会である。

他の技術と同様に、直接空気回収は反復によって改善され、時間の経過とともにより効率的かつ安価になる。ClimeworksのCO2コレクターはモジュール化されている。つまり、より多くのCO2を回収する方法は、コレクター自体を大きくするのではなく、その数を増やすことにある。モジュールプロダクトを使うことで、より大型の特注品に比べて安価かつ容易に繰り返し利用できる。

「当社が現在所有するプラントの何倍にもなる大型プラントや複合設備を建設する頃には、プラントが機能していること、そして私たちがいかに効果的に運用を続けているかを確信しているでしょう」と、Climeworksの技術責任者であるNathalie Casas(ナタリー・カサス)氏は語る。「これがモジュラー型アプローチの優れた点です」。

ヴュルツバッハー氏によると、より大きなプラントをすでに建設中だという。Orcaプラントの10倍の大きさになるため、コンテナサイズのコレクターは8台から80台に増え、年間4万トンのCO2回収することになる。

Orcaほどの規模のプラントを建設する利点は、コレクターの設計を8回繰り返すだけで済むことだ。

「80のコンテナを作ればまったく別のストーリーになります」とヴュルツバッハー氏。

Climeworksの中小規模のアプローチは、直接空気回収技術を商用化している別の大手企業Carbon Engineering(カーボン・エンジニアリング)とは対照的である。同社は50万トンのCO2を回収するプラントをテキサス州に建設中だが、同プラントは今世紀半ばに稼働する予定となっている。

「Climeworksは、一度に砲弾のように急速に進むのではなく、段階を踏みながらスイミングプールに入っていきます」と、二酸化炭素除去に特化した投資コンサルティング会社Carbon Direct(カーボン・ダイレクト)のチーフイノベーションオフィサーColin McCormick(コリン・マコーミック)氏は述べている。

これらのアプローチの一方または双方が、規模とコストの両面で二酸化炭素除去を達成できるかどうかはまだわからない。直接空気回収はまだ初期段階にあるが、持続可能な技術の重要な担い手の一部と類似性がある。太陽光発電(PV)パネルと風力タービンはどちらも数十年前に始まったばかりだが、今では巨大かつ成長中の産業となり、エネルギー移行の先陣を切っている。

ソーラーパネルは、理論的には可能だが商業的には証明されていないものを実現するために、新しい素材を使って作られていることから、ソーラーパネルとの比較は特に適切であろう。

マコーミック氏の説明によると、大気中の二酸化炭素を回収するのに必要なエネルギー量には最低限度があり、それはかなりのものであるが、ClimeworksとCarbon Engineeringはともにその最低値の約10倍のエネルギーを使用しているため、改善の余地は大きいという。

「効率は100%を大幅に下回っていますが、問題ありません」と同氏は続けた。「初期のソーラーパネルは効率が数パーセントでした」。

Climeworksが効率性の向上とコスト削減に向けて模索している方法は数多くある。中でも大きいのは、フィルター材を改良して、より多量のCO2回収と長寿命化を図ることである。同社はまた、モジュールユニットの建設コストを下げるために生産を合理化する方法も検討している。そして、CO2のパイプラインのような比較的固定されたコストがあり、それはプラントが大きくなるにつれて自然に減少していくことになる。

今後の技術的な課題は気が遠くなるほどのものかもしれないが、Climeworksのチームは動じない。実際、ヴュルツバッハー氏は、直接空気回収の現状は1970年代と1980年代の風力や太陽光よりもずっと有利であると考えている。

「太陽光発電や風力発電が始まった頃と比較してみると、それらはコスト削減に関連するより多くの要因に取り組む必要性を抱えていました」とヴュルツバッハー氏。「私たちが対処すべき要因がその10分の1程度であることは、実際のところ朗報と言えます」。

これらのコスト削減を実現するには、研究室やオフィスではなく、実際の環境でのみ可能な学習が必要となる。

「これはソフトウェアのスタートアップではありません」とヴュルツバッハー氏は続ける。「私たちは過酷な環境に鋼鉄とコンクリートを置いています。おそらく90%までしか予測できないような奇妙なことが起こりますが、予測できない残りの10%については学習していきますので、現場で何かを取り出すことは非常に重要です」。

Hellisheidi地熱発電所はレイキャビクの大部分と同様にOrcaにも熱とエネルギーを供給している

なぜアイスランドなのか

Orcaほど雄大なフィールドサイトを見つけるのは難しいだろう。このプラントは、草の茂った平原の端に位置し、くっきりとした白い雪で彩られた岩だらけの黒い山頂のすぐ下にある。しかしClimeworksのチームは、その風景のためにその場所にOrcaを建設することを選んだわけではない。Hellisheidiのサイトには、直接空気回収に不可欠な2つの要素がある。安価な再生可能エネルギーと、CO2を貯留する場所だ。これらの要素はいずれもアイスランド独自の火山地質の産物である。

Orcaはアイスランド最大の地熱エネルギー源の1つであるHellisheidi地熱発電所のすぐ隣に位置している。同発電所は地下1マイル(約1.6km)の深さから熱水を引いており、そこは火山性ホットスポットによって自然に暖められている。地熱プロセスは熱と電気を発生させ、どちらも直接空気回収のための重要なインプットとなる。

この電力を使って空気をコレクターに送り、その熱を利用して、フィルター材から回収されたCO2を放出する。この放出は、沸騰水の温度である摂氏100度前後で発生するものだ。

「まず第一に、地熱はとても優れています。24時間年中無休で熱と電気を供給しますので、私たちの活動に非常に適しています」とヴュルツバッハー氏は語っている。

それからCO2だ。Hellisheidiの下にある岩は多孔質の玄武岩で、100万年も経っておらず、地質学的にはかなり新しい。Carbfix(カーブフィックス)という企業が、この若い岩にCOを注入し、反応させて炭酸塩鉱物を生成する方法を考案した。

Carbfixは、地熱発電所を運営する自治体所有の電力会社Reykjavik Energy(レイキャビク・エナジー)の子会社である。同社は5年以上にわたり、地熱プロセスから排出される少量のCO2を貯留する技術を使用しており、OrcaからのCO2を貯留するインフラはすでに整っていた。

「これがOrcaがアイスランドに存在する大きな理由です」とマコーミック氏は語る。「地熱地帯からの廃熱とゼロカーボン電力を利用しています。すでに掘削済みの注入孔と、CO2を注入するための優れた地質構造を備えているため、この場所には必要なものがすべて揃っています」。

二酸化炭素の貯留は二酸化炭素除去の方程式の重要な構成要素である。多くの方法が存在するが、二酸化炭素はすぐに岩に変わるため、Carbfixの方法は特に有望だ。2年以内、あるいは数カ月以内に鉱化する可能性が高く、数千年にわたって固体状態を保つ。

「CO2はどこにも移動することはありません。基本的に、いったん地下に沈んだ後は、地下に留まり続けることがわかっています」と、Carbfixの研究・イノベーション責任者であるKari Helgason(カリ・ヘルガソン)氏は述べている。

このタイムフレームは、CO2が漏出しないことを確認するための不確定なモニタリングを必要とする、放棄された油井での貯留のような他の方法とは対照的である。

Carbfix方式のもう1つの利点は、コストをほとんど無視できることであり、特に二酸化炭素を回収するための高いコストと比較する場合に顕著である。

「純粋なCO2を受け入れる場合は、かなりコスト効率が高くなります」とヘルガソン氏。「Climeworksで行っていることは、途方もなく低コストです」。

幸いなことに、アイスランドは大部分が玄武岩で構成されているため、貯留のオポチュニティはほぼ無限に存在する。ヘルガソン氏は、玄武岩1立方キロメートルあたり1億トンのCO2を貯留できると見積もっている。

「ストレージ容量は膨大です」と同氏はいう。

この大容量ストレージが存在するのはアイスランドだけではない。Carbfixは、地質学的な二酸化炭素貯留のポテンシャルを持つ世界の地域をマッピングしたオンラインの地図帳を編集した。

HellisheidiとCarbfixはOrcaプラントで完璧な適合を果たしたが、Climeworksは今後のプロジェクトのために他の場所にもオープンである、とヴュルツバッハー氏は言及している。

「アイスランドの天候と風はそれほど完璧とは言えません」と同氏。「同じ気象条件で次の発電所を建設したいかどうか、私たちのコミッショニングチームに尋ねれば、彼らはむしろハワイやその他の火山岩が多い場所へ行くことを望むかもしれません」。

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二酸化炭素回収にはビレッジが必要

ClimeworksとCarbfixのパートナーシップは、二酸化炭素除去を成功させるために必要な共同イノベーションの一例である。同様の関係を活性化する試みとして、米国は複数の企業が協働してCO2を回収・貯留する4つの直接空気回収「ハブ」の建設に35億ドル(約3980億円)を割り当てた。この対策は、最近議会で可決されたインフラ法案の一部である。

「直接空気回収は、多くの異なるグループ間の連携として考えることが非常に重要です」と二酸化炭素除去に焦点を当てたシンクタンクCarbon180(カーボン180)の政策担当副局長Rory Jacobson(ローリー・ジェイコブソン)氏は述べている。

多くの場合、石油・ガス会社は直接空気回収プロジェクトの一部であり、通常は資金援助者の役割を担っている。Carbon Engineeringは、テキサス州でのプロジェクトでOccidental Petroleum(オクシデンタル・ペトロリアム)と提携しており、もう1つの直接空気回収会社Global Thermostat(グローバル・サーモスタット)は、米国での複数の小規模プロジェクトでExxon Mobil(エクソンモービル)と提携している。

二酸化炭素回収のスタートアップにとって、これらの大企業と協力するのは理に適っている。彼らは大きな小切手を振り出すことができ、地質学を深く理解しているからだ。しかし、このようなパートナーシップは二酸化炭素回収が継続的な汚染の煙幕であるという主張にも火をつけた。

「Orcaで真に期待できることは、プロジェクトに化石燃料が関与していない点です」とジェイコブソン氏は話す。

化石燃料産業の支援があろうとなかろうと、政府の気候政策の支援なしには、直接空気回収の規模拡大は限界に直面する可能性が高い。問題は、風力や太陽光で発電された電力のように、大気から二酸化炭素を除去する固有の市場がないことにある。直接空中回収には(これまでClimeworksを支えてきたような)自主的な購入、あるいは政府の奨励策や指針による資金提供が必要である。

「二酸化炭素除去の自主的市場は、私たちに数百万トン、おそらく1千万トン、あるいはそれ以上をもたらすでしょう」とヴュルツバッハー氏。「公共の機関は、数千万トンから数十億トンまで私たちを運んでいく必要があります」。

いくつかのインセンティブはすでに実施されている。米国には現在、二酸化炭素の回収と貯留にトン当たり50ドル(約5700円)を支払う45Qと呼ばれる政策があり、この支払いはBuild Back Better(よりよき再建)法案の下でトン当たり180ドル(約2万円)に拡大される。同法案は最近下院を通過したが、上院では保留されたままになっている。

しかし、政府が高い炭素税を課したり、あるいは産業界に急激な排出量の削減や除去を直ちに強制するような措置を講じるならば、直接空気回収の市場はかなり拡大するだろう。最近グラスゴーで開催された国連気候変動会議では、世界のリーダーたちはそのような大胆な行動を発表しなかった。それは国民の圧力と気候変動の影響の両方が強まるにつれて変わるかもしれない。いずれにしても、すぐには解消されそうにない兆候を示している。

今後、より強力な政策が実現すれば、今日よりもはるかに安価な直接空気回収技術を携えて、Climeworksの準備が整うことになるだろう。価格は依然として高めかもしれないが、何もしない場合の価格はさらに高くなる可能性がある。

Orcaプラントはレイキャビクからクルマで20分ほどのところにある

画像クレジット:Ben Soltoff

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(文:Ben Soltoff、翻訳:Dragonfly)

手持ちのモノを売り支払いに充てられる決済プラットフォームTwigが約40.3億円調達、「グリーン」を謳うがそのサステナビリティにはほころびが見える

Z世代と若いミレニアル世代の消費者をターゲットとし、電子マネーアカウントで衣類や電子機器を売って即座に換金できるロンドン本拠のフィンテックTwig(トゥイグ)が3500万ドル(約40億3000万円)のシリーズAラウンドをクローズした。

今回のラウンドを率いたのは、フィンテック投資専門のFasanara Capital(ファサナラキャピタル)で、Twigによると、LVMH、Valentino(バレンチーノ)、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の現幹部や旧幹部など、他にも数多くの匿名の戦略投資家たちが参加したという。

Twigは2020年創業の新興スタートアップで2021年7月に英国でサービスを開始したばかりだが、英国内で急速に成長しており(Twigのアプリのダウンロード回数は月間10万回を超えており、iOSのApp Storeでファイナンス関連アプリの第6位にランキングされた)、すでに海外進出に向けて準備を開始している。

Twigは、シリーズAで獲得した資金で、米国(2022年第1四半期)およびEU(第2四半期。まずはイタリア、フランス、ドイツを予定)に進出すると目されている。また、Web3とデジタル収集品の流行に注目して製品の機能拡張も予定している。

現時点では、Twigのアカウントは英国内でのみ使用できる。創業者兼CEOのGeri Cupi(ゲリー・クピ)氏によると、現段階で約25万人のユーザーを確保しているという。

同氏によると、典型的なユーザーは大学を卒業したばかりの22歳の働く女性だ。こうした女性は、おそらくワードローブに着れなくなった衣類が山のようにあり、いつでも売りたいと考えているからだ。

Twigでは、他の金融機関のアカウントに送金すると1ユーロの手数料を請求されるが、Twigアカウント同士の送金では手数料はかからないため、口コミで広がり成長したことが初期段階での急成長を加速させたようだ。

また「your bank of things(モノの銀行)」というマーケティングスローガンを掲げているものの、Twigは実際には銀行ではないことも指摘しておく必要がある。Twigのアカウントは「電子マネーアカウント」だ。このため適用される規制に関して銀行とは大きな違いがある(例えばTwigのアカウントは英国の預金保証制度の対象にはならない)。

正式な銀行ではないため、Twigは新市場でいち早く成長することができる。銀行業務ライセンスを取得する必要がある場合に比べて、提供サービスに適用される規制が軽減されるからだ。クピ氏によると、現時点では性急に正式な銀行になるつもりはないという。

数十年前、インターネットおよびオープンバンキングを背景とするフィンテックブームなど存在しない時代の昔ながらの銀行は、バッグ、文房具、音楽などの無料のおまけをつけることで学校を出たばかりの新社会人に営業して口座を作ってもらっていた。最近のフィンテックスタートアップは、最も魅力的な機能セットを競って提供することで若い年齢層の顧客を捕まえようとしている。

ただし、お金を口座に入れてもらうことが依然として主たる目的であることは間違いない。

とは言え、TwigはB Corp認証を取得申請中だ。B Corp認証は社会的目的と環境への配慮、透明性、説明責任を重視していると認められる企業に与えられる。クピ氏によると、同社は、申請の最終段階にあり、現時点では保留状態だが、第一四半期には完全な認証を受けられる見込みであるといい、ユーザーにブランド品を捨てる代わりに売るよう勧めることでサステナビリティと経済循環性を実現していることを強くPRしている。

Twigのウェブサイトでも、環境への影響を抑えるためにカーボンオフセットの取り組みを行っており、その他のイニシアチブにも参加していることが掲載されている。

要するに、人類が気候災害を回避するには、世界レベルでのCO2排出量、つまりは全体的な消費の削減が必要となる。そこで疑問視されるのが「サステナビリティ」を再販売というコンセプトに無理矢理結びつける主張の信憑性だ。再販売には、すぐに査定してもらって現金が手に入るため、逆に消費量が増すリスクがあるからだ。

現在所有しているモノを売って現金が手に入るなら、一度購入したアイテムを手放さずに長く使う場合に比べて、消費者はお金をどんどん使って新しいモノを買うよう仕向けられる可能性がある。別の言い方をすれば、消費を削減してCO2排出量を削減するつもりなら、循環経済とモノの寿命をセットで考える必要があるということだ。再販売に必要な面倒な手続きが削減されることで消費者がモノを買わなくなるかどうかはわからない。逆にもっとモノを買うようになる可能性もある。

これがTwigの謳うサステナビリティにほころびが見える点の1つだ。

この難題をクピ氏にぶつけたところ、同氏は次のような議論(いくらか循環論法的ではあるが)を展開して巧妙に解決して見せた。「中古品の流動性を高めるというTwigの目的はサステナビリティの向上と消費量削減の推進を実現します。というのは、より多くの中古品が買えるようになるからです。その結果新しいモノに対する需要が減り、より多くのアイテムがこの(より活発な)中古品経済を介して循環するようになる。

「基本的に、当社のビジネスは、消費者が自分が持っている古いアイテムをお金に変えられるようにすることで、その古いアイテムに新しい命を与えるというものです。これによって、少なくとも中古市場の供給が増大します」と同氏はいう。「中古市場の需要はずっと増え続けています。当社が中古市場の供給側だけでやっていけるのは、現在、中古市場には供給の追加を求める大きなニーズがあるからです。消費者が手持ちの中古品を売ってお金を得たとしても、そのお金で別のモノを購入するとは限りません」。

「これは当社のユーザーの行動からわかることですが、Twigに送られてくる資金のうち約42%は新しい経験、つまり旅行や経験主導の活動に使われています。ですから、流動性が向上したからといって、必ずしもモノの消費が増大して環境に悪影響を与えるとは限りません。それがこれまでのユーザーの行動から分かっていることです」。

クピ氏はTwigのビジネスを非常にシンプルな次の宣伝文句に集約させている。「当社は資産をトークン化します」。

「Twigでは、例えばGucci Marmont(グッチ・マーモント)のハンドバッグをプラットフォーム上にアップロードします。そして、アップロードされた資産をトークン化して、その価格を提示します」と同氏は説明する。

「当社の目標はこの仕組を外部でも使えるようにすることです。そこで役に立つのが、ブロックチェーンです。当社は資産の流動性を向上させて、消費者が物理的なモノを売って仮想的なモノを入手し、その仮想的なモノを使って物理的なモノや体験を購入するという行為を簡単に行えるようにします」。

「基本的に、ユーザーが簡単に取引できるようにすることが目的です」。

クピ氏にはブロックチェーンと循環経済に関するバックグラウンドがある。例えば、2018年には、デニムのアップサイクルビジネスをLevi’s Albania(リーバイス・アルバニア)に売却している

Twigのホワイトペーパーによると、よく売れる物理的なモノとしては、Nike(ナイキ)、Gucci(グッチ)Chanel(シャネル)、Hermes(エルメス)、その他の高級品メーカーのブランド品などがあるという。このペーパーには「所有の未来の再定義」と「 循環型ライフスタイルで生活を送るためのパワーをZ世代に付与」という内容が記載されている。

クピ氏によると、Appleの電子機器も中古市場で高値がついているという。同氏は、購入対象中古品に、不要になった衣類だけでなく電子機器も追加したところ、それまで女性が9割以上だったTwigの利用者構成が、女性7割男性3割くらいに変化したと指摘する。

Twigは中古品の再販売に関する手続きを代行する。具体的には、中古品を即座に査定して、Twigがその中古品の購入を承諾するとすぐに現金が手に入るので何でも好きなものを買える(Twigでは極めて詳細な購入対象品リストを用意している)。

Twigまでの配送料は無料なので、Twigのサービスを利用することで、Vinted(ヴィンテッド)Depop(ディポップ)といった中古品マーケットプレイスにアイテムを自分で直接販売する場合に発生する面倒な手続きやリスクは基本的に排除される(ただし、自分で直接販売した場合よりも売値は低くなる)。

Twigの倉庫に到着したアイテムが品質チェックに引っかかると、ユーザーは返送料を請求される(そして、おそらく即金で支払われた代金も全額Twigに返金される)。アイテムが売れなかった場合は、アップサイクルとリサイクルが適切に行われているかどうかが確認され、どちらの方法でも対処できない場合は、慈善団体に寄付される。環境に悪いため、ごみ廃棄場送りにはしない。

クピ氏によると、Twigは現在成長重視フェーズであるため、再販ビジネスで大きな利益を出すことは考えていないという。

提示する買取価格は、動的に変化するさまざまな要因によって変わる。前述のホワイトペーパーによると、Twigは「市場ベースの価格設定アルゴリズム」を使用して、中古市場の100万点を超える商品を分析し「ブランド、アイテムのカテゴリー、市場セグメントに応じた適切な再販価格を提示している」という。

その前提の中核をなすのは、消費者にとっての総所有コストという概念を再販価値の変化に織り込むという考え方だ。これは購入パターンをシフトさせるパワーを秘めている可能性がある(例えば消費者は、環境的なダメージを与える低再販価値のファストファッションではなく、高級ファッションを選択してその価値を長期間に渡って楽しむ選択をするようになるかもしれない)。

Twigは銀行のような機能(Twigの口座を作るとTwigVisaデビットカードが発行され、国内および国際送金を行うことができる)と本業の中古品再販サービスを組み合わせたものというが、ターゲットであるZ世代と若いミレニアル世代向けの宣伝文句だ。こうした世代の若者たちは中古品市場の倹約性とサステナビリティの両方にますます強い関心を寄せている。

Twigがターゲットとする年齢層を見れば、同社のマーケティングが循環経済による環境への配慮に重きを置いている理由がわかる(「Twigは循環経済を簡単に実現し、サステナビリティの高いライフスタイルを選択できるようにします」とグラフィックを多用したレトロ風のウェブサイトは謳っている)。

特にZ世代はサステナビリティ世代と呼ばれ、この世代の若い消費者は「モノを所有することよりも使うことを優先する」とTwigのホワイトペーパーに書かれている。

こうしてみると、銀行の機能を、文字どおり経済的価値を保存する場所ではなく、再販価値の交換所および仲介者として捉え直すことが非常におもしろく見えてくる。消費者は、あらゆるモノを擬似通貨に変えて、所有したいモノややりたいことの支払いに充てることができる(ハイテクによるバーター取引の再発明と言ってもよいだろう)。

しかし、Twigのビジネスにブロックチェーンが深く組み込まれていることを考えると、同社の主張するサステナビリティには別のほころびが見えてくる。

Twigのテクノロジーは最初からブロックチェーンを基盤として構築されているが、同社のウェブサイトのユーザー対面型の説明からそのことに気づくのは難しい。TwigのシリーズAで公開されたプランでは、Z世代向けの環境配慮型マーケティングがまったくうまくいかない危険がある。というのは、PRでは、Twigを「世界初のWeb3対応グリーン・ペイメント・インフラストラクチャー」と称し、その立ち上げに、最近のWeb3ハイプをうまく利用しようとしているからだ。

この来たるべき機能により、ユーザーは、実世界の資産を「トークン化」して「数秒で取引可能にできる」と、リリースノートには書かれており、さらに次のように続く。「Twigを使用すると、デジタルアイテムと物理アイテムをマネタイズして新しい方法で取引できます。このアプローチにより、ユーザーはチェックアウトページで手持ちのアイテムを売って、暗号資産を購入したり、衣類や電子機器を売ってNFTを購入したりできます」。

暗号資産とNFTの取引が「グリーン」に行われることが本当に希望のあることなのかどうかはよく考えてみる必要がある。

結局、暗号資産に使われるエネルギーコストそれ自体、地球に壊滅的な悪影響を与える要因のように見えなくもない。

例えばケンブリッジ大学が2021年行った研究は、1つの暗号資産(ビットコインなど)だけで、アルゼンチン全体の年間エネルギー消費量を超えていることを示している。

2021年3月に実施された別の研究によると、ビットコインはノルウェーと同じ量のエネルギーを消費したとし、ビットコインのCO2排出量はまもなくロンドンの大都市圏全体で生成される排出量に匹敵するようになると予測している。

要するに、ブロックチェーンベースの暗号資産(もちろんトランザクションを承認するためにプルーフ・オブ・ワークを必要とするもの)の悪名高い非効率性は、サステナブルとは程遠いものに思えるということだ。

しかもブロックチェーンはもっとひどいエネルギーの浪費に関わっている。すなわち、NFT(代替不可能なトークン)の台頭である。NFTでは、ブロックチェーンの上にデジタル収集品を取引するレイヤーを追加することで、エネルギー集約的なトランザクションが必要となり、そうしたトランザクションが促進される。

(ファッションやステータスシンボルとしての)NFTをめぐる現在の騒動と そうしたデジタル資産の小売取引、およびエネルギーを燃やして収集品ピクセルをシフトさせることで非常に手っ取り早くお金を作り出すことができるという提案によって、このエネルギーの焚き火にさらなる燃料が注入されている。

2021年、あるデジタルアーティストの分析によって、1つの平均的なNFTは、EUに住んでいる1人の人間の1カ月分の電力消費量に相当するCO2を排出することが示された。以前と同様、ユーザーにトークン化とモノ(または、デジタル収集品)の取引で忙しくするように促す機能を、どのような形であれ「グリーン」に稼働させる方法を思いつくのは難しい。

しかし、クピ氏はこの反論にもひるまない。

第一に、Twigが基盤としているブロックチェーンインフラストラクチャーは他のブロックチェーンよりもエネルギー効率が高いと同氏はいう。

「ブロックチェーン自体はテクノロジーとして環境に悪いわけではありません。ブロックチェーンにはさまざまな応用事例があります」と同氏はいう。「当社の基盤となっているHyperledger Sawtooth(ハイパーレッヂャーソートゥース)というブロックチェーンは、他のソリューションに比べてエネルギー消費量が極めて小さいという特長があります」。

「つまり、当社はエネルギーを大量に消費するソリューションの使用を最小限に抑えたいと考えています」。

また、Twigは内部のエネルギー消費量を計算して、環境への影響を数量化しており、対抗策としてカーボンオフセットの取り組みも行っているという。

さらには、大気圏からCO2を排除するプロジェクトも支援している。

ただし、個々のプロジェクトがどの程度実行可能で信頼できるものかは、まったく別の問題だ。

Twigは自社のエネルギー消費を最小化し、CO2排出量をオフセットしようとしているかもしれないが、それより大きな環境への影響が、二次使用つまり、TwigのユーザーとサプライヤーがTwigを利用した結果として発生する消費、エネルギー使用、CO2排出量によって起こる可能性がある。

こうした関連のある間接的な影響(サステナビリティレポートの用語でScope 3排出量と呼ばれる)を計算することは、企業の直接的なエネルギー使用を内部的に監査するよりもはるかに難しい。とはいえ、Scope 3排出量は企業のCO2排出量の大きな部分を占める傾向があることも確かだ。このため、そうした間接的な取引、排出量、影響をなきものとして片付けてしまうことはできない。

Twigは、カーボンオフセットによって商品の配送にともなうCO2排出量を相殺するなど、明確な姿勢でScope 3排出量対策に取り組んでいる。また、B Corp認証を取得しようという野心も称賛に値する。

しかし、Twigによって拡大も縮小もするかもしれない消費者需要やトレンドに基づいて、最終的に発生するエネルギーコストを予測するのは非常に難しい。

ユーザーに暗号資産を購入し、NFT取引を始めるよう促すことによってエネルギーコストが発生することは間違いない。そして、たとえTwigが中古品の流動性を高めることで、消費者が新品を購入する需要が低下し、新製品の実質生産量を削減することができるとしても、このような大量のエネルギー消費にともなうコストによって環境へのプラスの影響が相殺されてしまう危険がある。

とはいえ、支払いに使用できるものがこのように根本的に見直されると(あらゆるモノで支払いができる。トークン化された価値の世界では、理論上、消費者は実際のお金を使う必要がない)、消費活動の大きなシフトにつながり、循環経済に実際に目立った変化をもたらすことができる。その結果、数十年に渡る資本主義を特徴づける使い捨て消費の悪循環から抜け出すことができる。

別の言い方をすれば、(認証をサポートすることで偽物に対抗できる)ブロックチェーンベースのトークン化と(分散台帳インフラストラクチャによって完全な所有履歴を把握することで実現される)安定度の高い査定のおかげで、モノの再販時の価値をもっと確実に予測できるなら、消費者は、持っているモノを丁寧に扱う気持ちになるかもしれない。モノの寿命が維持されれば高い売値がつくからだ。そうなれば、世界の産業はそもそも現在の半分だけモノを作れば足りるようになり、資源の枯渇によって地球が機能不全に陥る重圧から解放される。

これには確かに一理ある。

あらゆるモノを売って極めて簡単に支払いができるようにすることでお金の価値が重要視されなくなることは、価値、所有、富に対する考え方を修正するために必要な最初の一歩になるかもしれない。

クピ氏は次のように説明する。「現金を使う代わりに、自宅にある不要になったモノを使ってNFTを買うことができます。例えば使わなくなった古いiPhone(アイフォーン)を売ってNFTや暗号資産を買ったり、体験を買うことができます。ニューヨークまでの旅行費用に充てたり、次回の職業教育コースの支払いに充てたりできます。つまり、Twigの目的は、市場の流動性を高めることです。人々が使わなくなった資産を売ることでその資産に新たな第二の命を与えることなのです」。

「当社の信念は、財布にも地球にもやさしい結果をもたらすことです」。

Twigのビジョンは自身を支払いプラットフォームに変えることです。ユーザーや顧客の代わりに物理的なモノを支払い代金に変えるプラットフォームです。

「現時点では、Twigは単なるB2Cプラットフォームに過ぎませんが、ゆくゆくはB2B2Cプラットフォームにしたいと考えています。将来的には、さまざまなプロバイダーの決済ゲートウェイとして接続する予定です」とクピ氏はいい「いくつかの大手小売業者」とTwigのインフラストラクチャへの接続を許可する契約を結んでいると話した(小売業者の名前は明かしていない)。

「当社がやろうとしているのは、要するに、富の定義の再発明です」とクピ氏は付け加え、お金の概念が大きく様変わりしていると説明する。「自分が所有しているものがすべてお金として扱えるとなると、富の見方も変わってきます」。

「富とは、従来の定義では、家や車など、大きな資産の価値です。しかし、たとえばワードローブの価値は通常資産の一部とはみなされません。我々はこれを変えたいのです。すべてのモノに即時の流動性があれば、モノを現金とみなすことができます。現金だろうとGGマーモントのハンドバッグだろうと違いはないのです。ポンドで何かを買いたい場合、現金でもハンドバッグでも使えるのです」。

Twigが普及すれば、決済の未来は今よりずっとビジュアルで物質的なものになる可能性があります。例えばeコマース決済ウインドウに鋳造しておいたNFTをドラッグアンドドロップして中古のiPhoneを購入する。

あるいは、限定版のナイキのシューズを売って、ずっと楽しみにしていた都市滞在型の春休みを取る。

ダイヤモンドで覆われたすばらしい宝石を売って高級不動産を買うといった具合だ。

若い消費者たちはコモディティ化された価値交換可能なモノの世界をすでに違和感なく受け入れているようだが、年配の消費者たちはどうだろう。クピ氏は、ブーマー世代やX世代が大枚をはたいて買ったモノを手放して支払いに充てるという新しいやり方に納得できると考えているのだろうか。

サイン入りの初版本や貴重なビニールのレコードが将来の決済方法の一部に取り込まれることになるだろうか。

「正直、その答えは私にもわかりません」とクピ氏はいう。「現時点では、Twigに対するZ世代の反応は極めて良好です。また、英国のミレニアル世代、我々がターゲットとしている20代の若者たちの反応も上々です。英国外の市場に進出した際には状況は変わるかもしれません」。

画像クレジット:Twig

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

CO2排出量可視化・脱炭素化クラウドENERGY X GREENなど手がけるbooost technologiesが12億円調達

CO2排出量可視化・脱炭素化クラウドENERGY X GREENなど手がけるbooost technologiesが12億円調達

クラウド型エネルギーマネジメントシステム「ENERGY X」と、CO2排出量可視化・脱炭素化クラウド「ENERGY X GREEN」を展開するbooost technologiesは2月2日、シリーズAラウンドにおいて、総額12億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、リードインベスターのグロービス・キャピタル・パートナーズ、また東京大学エッジキャピタル(UTEC)、 NTTドコモ・ベンチャーズ。調達した資金は、事業と組織拡大のための採用強化・プロダクト強化に充当される。CO2排出量可視化・脱炭素化クラウドENERGY X GREENなど手がけるbooost technologiesが12億円調達

booost technologiesは、「次世代に誇れる未来を創造し、社会のために役立つテクノロジー集団」であることをビジョンに掲げ、カーボンフリーな未来の実現を目指すクライメートテック(気候テック。Climate Tech)カンパニー。

CO2フリー電力などの調達・供給を可能にするENERGY Xの提供をはじめ、2021年にはエネルギー分野での専門性と知見を活かし、組織の脱炭素化に必要なCO2排出量の「可視化」「計画策定」「予実管理・オフセット」「報告レポート」を行えるENERGY X GREENをリリース。ENERGY X GREENは、リリース当初から上場企業を中心に導入され、脱炭素化を推進する各業界のリーディングカンパニーに利用されているという。

2022年4月よりプライム市場における非財務情報の開示義務化が開始されるにあたって、ENERGY X GREENを導入する企業は順調に増加しているという。その状況を受け、さらなる脱炭素化を加速させるため「ENERGY X GREENのプロダクト強化」「アライアンス・パートナーシップ構築のためのパートナーサクセス体制の強化」「導入先のお客様に対する支援体制の強化」を目指し、今回の資金調達に至った。

プロダクトの強化については、業界ごとに最適化した機能や、排出量可視化後の排出量削減のための機能を特に拡充させ、2030年のSDGsの達成、および2050年の実質的なカーボンニュートラル実現を加速化させることを目標にしたいという。

農業助成金の申請支援を起点に金融サービスの巨人を目指すFarmRaise

左からFarmRaise共同ファウンダーでCEOのジェイス・ハフナー氏、プロダクト責任者のアルバート・アベディ氏、COOのサミ・テラティン氏(COO)

何かから始めなくてはならない。Jayse Hafner(ジェイス・ハフナー)氏とSami Tellatin(サミ・テラティン)氏がスタンフォード大学のMBAで出会い、米国の農業をもっと効率的にすれば国のためになりすごいビジネスにもなるという信念を共有したとき、2人は助成金から始めようと決めた。

バージニア州の牛牧場で育ったハフナー氏は、助成金の申請が、たとえ家族の牧場の持続可能な作業慣習を改善するためであってさえ、複雑で時間のかかる手続きであることを身を持って知っていた。一方、テラティン氏は、大学で生物工学を学び、USDA(米国農務省)で3年間農業経済を研究した。彼女もまた、助成金がもっと簡単に手に入れば農業従事者はもっと良い選択ができるはずだと感じていた。

FarmRaise(ファーム・レイズ)は、現在社員12名のカリフォルニア州サンディエゴを拠点とする設立2年の会社だ。2人がパロアルト拠点のPear VCのアクセラレーター・プログラムで知り合ったもう1人の共同ファウンダーであるAlbert Abedi(アルバート・アベディ)氏と力を合わせて以来、会社は目覚ましい進展を遂げてきた。

ハフナー氏によると、同社のプラットフォームにはすでに1万カ所の農場が登録している。それは口コミとちょっとした検索エンジンのマジック、そしてなによりも、Cargill(カーギル)やCorteva(コーテバ、2018年にDuPont[デュポン]をスピンアウト)などの炭素排出量削減目標をもつ農業の巨人と提携して、低炭素排出農業に関連する助成金申請でFarmRaiseの支援を受けるよう農業従事者に薦めてきたおかげだ。

FarmRaiseのプラットフォームでは、農場の詳細な実態を尋ね、FarmRaiseが彼らに代わってさまざまな助成金プログラムに手早く申請できるようにデータを構成する。そこに投資家が加わったことで、さらに勢いが増している。同社はつい最近、720万ドル(約8億2000円)のシードラウンドをSusa Venturesのリードで完了した。

しかし、多くのスタートアップと同じく、非常に広範囲に渡る金融サービス企業を目指しているFarmRaiseにとって、助成金(国も民間も)は出発点に過ぎない、とハフナー氏はいう。農場が十分なデータを渡せば、FarmRaiseは融資、器具の割引購入、さらには節税対策の支援も行うことができる、と同氏は話した。

これらのサービスの多くは第三者を経由して提供され、FarmRaiseは仲介手数料を受け取る仕組みだと彼女はいう。FarmRaiseは車輪の再発明をするつもりはない。しかし、農場が頼りにできる「フルスタック(複数業務に精通した)」のリソースが存在しない理由などない、と彼女は付け加えた。また、多様なサービスを提供することによって、助成金の申請結果を待つ間(6~12カ月かかるものもある)も利用者を満足させることができる。

自分たちにとって助成金は「くさび」だとハフナー氏はいう。「物語の終わりではありません」。

現在FarmRaiseは、人員を追加し、対象となる助成金を増やして、月額料金と獲得した助成金の10%を請求している現行サービスに顧客が確実に満足することに注力している。

正しく手続きを進めることが重要だ。助成金は大きなチャンスだとハフナー氏は言い、理由の1つとして農務省の助成金が「爆発的に増えている」ことを挙げた。

彼女は、新型コロナウイルスの蔓延によるサプライチェーン崩壊に苦しむ農家を支援するために「数百億ドル(数兆円)」規模の資金を配布したトランプ政権の政策を示した。

バイデン政権もFarmRaiseを勇気づけていると感じるとハフナー氏は付け加えた。「重点的な保護基金拡大が見られ、今後倍増する可能性が高いと見ています」。「持続可能な農業は、農家の利益性を高めるだけでなく、炭素排出量を抑制して気候変動対策に寄与します。そこには本当に限りなくたくさんの恩恵があるのです」。

同社のシードラウンドには、他にCendana Capital、Ulu Ventures、Pear、Better Tomorrow Ventures、Incite Ventures、およびFinancial Ventures Studioが参加した。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nob Takahashi / facebook

畑を走り回るAigenの農業ロボットは二酸化炭素排出量のマイナス化を目指す

そのロボットは今のところ、雑草を抜くことしかできないが、Aigen(アイジェン)は「雑草を抜くロボットを作っているわけではない」と断固主張する。同社のミッションは惑星規模の土壌再生であり、農業をカーボンネガティブにするための道筋を作っているのだという。

そんな主張には説得力があったに違いない。なぜなら、同社はシードラウンドで400万ドル(約4億6000万円)を調達したと発表したばかりだからだ。このラウンドはNEAが主導し、AgFunder(アグファンダー)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)、ReGen Ventures(リジェン・ベンチャーズ)が参加した。

Aigenは太陽電池を搭載した自律型ロボットを開発している。このロボットは、コンピュータビジョンを利用して、敵か味方か、作物か雑草かを見分けながら、畑を走り回ることができる。その最初のバージョンは、1日に最大3エーカー(約1万2000平方メートル)の農地を、ただひたすら歩き回っている。

「私の親戚がミネソタ州で農業を営んでいるのですが、彼らとは以前から話をしてきました。農家は従来の農業のやり方では問題があることを実感しています。化学薬品を進んで使い、土壌の耕起を愛し、何千年にもわたって大気中に炭素を放出してきた農法を愛する保守的な人々でさえ、他の方法に目を向けるべきなのではないかと気づき始めているのです」と、AigenのCEOであるRichard Wurden(リチャード・ウルデン)氏は語る。そんな話を聞いてきた同氏は、農業の炭素排出量をマイナスに逆転させることに、特に情熱を注いでいる。「現在、農業は炭素排出量の約16%を占めています。将来的には、ディーゼルの排出ガス、土壌の圧縮、化学薬品の使用、耕す回数を減らすことで、マイナスにできる可能性があります」。

このスタートアップ企業が根拠としているのは、光合成は全体ではカーボンネガティブであるということだ。植物は空気中のCO2を取り込んで糖(正確には炭水化物)に変える。つまり、実質的には空気中の二酸化炭素を大地に戻しているのだ。Aigenは、テクノロジーと農業のやり方を変えれば、カーボンニュートラル、あるいはネガティブな状態にすることも可能だと主張している。この草取りロボットは、会社が進むべき道の第一歩にすぎない。今、本当に価値がある物を作り、プラットフォームを拡大して、将来的にはより多くのミッションを遂行できるようにするというのが、同社創業者たちの主張だ。

「私たちは画像によるデータ収集を行っています。このロボットには複数のカメラが搭載されており、あらかじめ学習させたAIを使って植物やさまざまな物体を識別しています。見ているものが何だかわかったら、ロボットの下に備わる2本のアームを使って、植物を取り除くか、増殖させるかを判断します」と、同社COOのKenny Lee(ケニー・リー)氏は説明し、その小型軽量ロボットの価値をアピールする。「重機は土壌を圧縮するため、根が下ではなく横に伸びてしまいます。これが問題なのです。なぜなら、これでは植物が取り込んだ炭素を地中深くに送ることができないからです。トラクターや大型の農業機械を減らすことができれば、農業の仕組みを変えられます」。

Aigenの小さな太陽電池ロボットは、クルージングしながら自分の仕事をこなしている(画像クレジット:Aigen)

「Aigenの技術は、クラス最高のAIとロボット工学を活用し、人類最大の問題にエレガントなソリューションを提供します」と、NEAのパートナーであるAndrew Schoen(アンドリュー・ショーン)氏は述べている。「彼らの製品は、惑星規模で相当な量の大気中の炭素を封じ込める自然の強大な力を解放させるものです」。

同社は、今回の資金調達の評価額を公表していない。

画像クレジット:Aigen

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceXの元エンジニアがクリーンな自律走行型の電気鉄道車両を開発中

SpaceX(スペースエックス)の元エンジニア3人が設立したParallel Systems(パラレル・システムズ)は、バッテリーで駆動する型鉄道車両を開発する会社だ。同社は米国時間1月19日に4955万ドル(約56億円)のシリーズAでステルスモードから脱却した。360万ドル(約4億円)のシードラウンドを含め、これまでに5315万ドル(約60億円)を調達した同社は、既存の鉄道インフラを活用した、より効率的で脱炭素の貨物ネットワークの構築に取り組んでいる。

共同創業者でCEOのMatt Soule(マット・ソウル)氏によると、今回の資金はParallel Systemの第2世代車両の開発と、同社の車両を実際の運用に組み込む方法を考案するための高度なテストプログラムの立ち上げに充てられる予定だ。

同社は、Anthos Capitalがリードし、Congruent Ventures、Riot Ventures、Embark Venturesなどが参加した今回のラウンドで得た資金を、約60人のエンジニアの雇用に充てるつもりだ。そうしたエンジニアの多くはソフトウェアを担当するとソウル氏は話す。

同社の鉄道車両アーキテクチャは、貨物の二酸化炭素排出、トラック輸送のサプライチェーン上の制約、鉄道貨物の限界といったいくつかの問題の解決を目指している。米国では、鉄道網が全貨物輸送の28%を占めているが、そのほとんどはバルク輸送であり、すなわち石炭や木材などの天然資源を輸送する大型列車だ。鉄道貨物輸送のごく一部はインターモーダル輸送と呼ばれ、基本的に船やトラックなどさまざまな輸送手段間で鋼鉄コンテナを移動させる。

「鉄道は、インターモーダル輸送に関しては成長するチャンスが多く、当社はこの分野に重点を置いています。というのも、競争とイノベーションの余地があると考えている分野だからです」とソウル氏はTechCrunchに語った。

Parallelが特許出願中の車両構造は、標準的な輸送用コンテナを1段または2段積みにして輸送することができる個別動力の鉄道車両を含む。この鉄道車両は合流して「小隊」を組んだり、途中で複数の目的地に分かれたりすることができる。つまり、サービスを経済的なものにするために大量の貨物を積載する必要はない。しかし、米国でほとんどの貨物輸送を担っているトラックよりもはるかに多くの重量を運ぶことができる、とソウル氏は話す。

「貨物列車のユニットエコノミクス(ユニット単位での経済性)がトラックと競争できるようになるには、非常に長い列車が必要で、機関車と乗務員のコストをその長い列車1本で償却することになります」とソウル氏は語る。「問題は、その長い列車をどこに停めたらいいのかということであり、答えは『あまりない』です」。

貨物輸送を長い列車に頼るということは、eコマース分野の需要増に対して頻繁に処理するのは難しい、ということだ。なぜなら、そうした長い列車は常に都市部や港にアクセスできるとは限らない。その物理的な大きさに対応するために、特別に作られた大きなターミナルが必要なのです、とソウル氏は指摘した。

「当社のユニットエコノミクスは、それほど大きな列車には依存しません」とソウル氏はいう。「荷揚げと荷積みのために1日中待機するのではなく、小隊で動くことができます。1〜2時間で出発し、他の小隊のためにスペースを空けることができます。そのため、港湾や内陸部の港湾シャトルシステムを構築することで、海に面した港から内陸部の港にコンテナを移動させることができます。内陸部の港はトラックにとってアクセスしやすい場所であり、倉庫保管場所にも近いのです」。

自律性に関して言えば、鉄道の閉じたネットワークは、レールへのアクセスが制限され、交通が集中制御されているため、自律走行技術を安全かつ早期に商業化するための理想的な運用設計領域だとParallelは見ている。ただ、同社の長期的なビジョンは有望と思われるものの、同社はまだ全国ネットワークでのテストを行っていないことに注意が必要だ。同社は、全国ネットワークから隔離されたロサンゼルスの小さな鉄道でプロトタイプ車両をテストしてきた。

米国の鉄道はオーナー制で私有化されていて、これによりParallelが車両や車両を動かす自律システムを大規模にテストすることは難しい。同社は、民間の鉄道会社を顧客に据えており、鉄道会社が日常的にサービスを運営するためのツールを販売またはリースする一方、技術の提供や統合という点でサポートする役割を提供したいと考えている。従来型鉄道のパートナーを得るまでは、同社の技術が実際の運用に対応できるかどうかを確認することはできない。

Parallelが手がけている技術の市場投入は数年先になるかもしれない、とソウル氏は話すが、世界中の荷主はより速い輸送だけでなく、よりクリーンな輸送も求めており、この分野の市場を手に入れるチャンスはある。

同社の小隊技術は、自律走行型鉄道車両が互いに押し合って荷重を分散させるのが特徴で、この技術によりParallelの車両がセミトラックと比較してわずか25%のエネルギーしか使わないようになると同社は予測している。

「貨物の脱炭素化を加速させること。これが当社の取り組みの根本的な狙いです。しかし、我々が目にしている問題は、鉄道の事業規模がサービスを提供できる市場に限定されていることです」とソウル氏は話す。「なので我々は、エネルギー効率を高めると同時に、運用面や経済面の障壁を取り払おうとしているのです。さらに、パワートレインを電動化することで、脱炭素化の効果をさらに加速させることができます。というのも送電網そのものはクリーンではないからです。当社が開発しているものとディーゼルトラックの比較において、米国の送電網の平均的なCO2含有量を見ると、当社の技術を使えば、現在のディーゼルトラックより貨物輸送1マイル(約1.6km)あたりにかかるCO2を90%削減することができます」。

画像クレジット:Parallel Systems

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】ヒートアイランド現象による影響を軽減するため、今、世界はAIを活用すべきだ

人類がこのまま何もしなければ、地球の温暖化はあとわずか数十年の間に少なくとも過去3400万年間前例のないレベルにまで達し、氷河が溶け、洪水がかつてないほど発生し、都市の熱波が我々に悲惨な影響を与えることになる。

米海洋大気庁によると、2021年には米国だけでもすでに18件の気候関連の異常災害が発生しており、それぞれに10億ドル(約1149億円)を超える損害が発生しているという。

世界中で起きた自然災害を結果や頻度の観点から見ると、洪水や地震は人や経済により大きな影響を与えるのものの、熱波よりも発生頻度は低い。熱波は一般的に都市ヒートアイランド現象(UHI)の形で発生し、ヒートポケットとも呼ばれているが、これは都市中心部の気温が周辺部より高くなる現象である。

都市部が急速に温暖化する中、世界各地のさらに多くの人々がヒートアイランド現象による致命的な被害を受けており、都市公衆衛生における格差が浮き彫りになっている。世界保健機関によると、2000年から2016年の間に熱波に影響を受けた人の数は1億2500万人急増し、1998年から2017年の間に16万6000人以上の命が奪われているという。

米国の市当局は現在、住民の中でも特に弱い立場にいる人々の生活レベルや状況が猛暑によって低下することを懸念しているが、影響を軽減するために活用できるようなデータは用意されていない。

デザイン主導のデータサイエンス企業で働く私は、組織のための持続可能なソリューションの構築や、ビジネス、社会、社会経済の複雑な問題は、高度な分析、人工知能(AI)技術、インタラクティブなデータ可視化を用いて解決できることを知っている。

とはいうものの、こういった新テクノロジーは、公衆衛生の専門家、企業、地方自治体、コミュニティ、非営利団体、技術パートナーの協力なくしては展開することができない。この分野横断的な介入こそが、テクノロジーを民主化し、都市ヒートアイランド現象の惨状を改善する唯一の方法なのである。それでは前述のプレイヤーは、都市ヒートアイランド現象を軽減するためにどのようにして協力しているのだろうか。

どの国が大きく貢献しているかを把握する

世界中のあらゆる企業、政府、NGOが熱波による問題の解決に取り組んでいる。

しかし、カナダでは1948年から2012年の間に平均1.6℃の上昇と、世界平均の約2倍の温暖化が進んでいるため、AIを使った熱波予測にはどこよりも力を入れている。もともとカナダの都市はテクノロジー主導で技術に精通しているため、世界中の都市はカナダの綿密な分析と革新的なアイデアから学べることが多くあるだろう。例えば、MyHeatは各建物における太陽光発電の潜在性を追跡し、熱波を持続可能なエネルギーの創出に利用している。

ヘルシンキやアムステルダムなどの欧州の都市もこの課題に積極的に取り組んでいる。EUの資金提供を受けているAI4Citiesは、カーボンニュートラルを加速させるAIソリューションを追い求めている欧州の主要都市を集結させるためのプロジェクトである。資金総額は460万ユーロ(約6億円)で、選ばれたサプライヤーに分配される予定だ。

こういったプロジェクトがAIを活用して気候変動問題を解決しようとしているが、二酸化炭素排出量の削減などのニッチな分野に集中して注目されているのが現状だ。気候変動の影響ではなく、原因の軽減に焦点が当てられているのである。

そのため、熱波の影響は依然として未解決のまま手つかずの状態だ。これは、すぐに甚大な被害をもたらす洪水など他の自然災害の方が注目されやすいからでもあるだろう。熱による不快感、エネルギー使用量の増加、停電などの問題を忍ばせたサイレントキラーとも言える熱波。最大の課題は、熱波に立ち向かうためのテクノロジーが自治体やNPOにオープンにされていないということだろう。

AIを用いたソリューションを活用

回復力のある都市を構築し、気候リスクを軽減することを目的とした非営利団体Evergreenとの協働を通じて、私たちはカナダの都市ネットワークを紹介された。調査と研究を重ねた結果、洪水や地震に対しては多くのデジタルインフラやデータ駆動の政策が存在しているが、熱波に対してはまったくと言っていいほどソリューションがないことが判明した。

依然として未解決の問題が多い熱波だが、拡張性の高いツールであるAIが都市に情報を提供し、それにより根拠に基づいた意思決定を行うことができたらどれだけ効果的だろうか。

Evergreenは地理空間解析、AI、ビッグデータを、MicrosoftのAI for Earthによる助成金で作成したデータ可視化ツールとともに使用して、あらゆる都市における都市ヒートアイランド現象を調査したさまざまなデータセットを統合・解析している。これにより自治体は、不浸透性の表面を持つエリアや植生の少ない問題地域をピンポイントで特定し、日よけの屋根や水飲み場、緑の屋根を設置することでヒートアイランドの影響を緩和することができるのである。

Microsoft Azure Stack上に構築された、AIを活用した解析・可視化ツールはさまざまな機能を備えている。マップ(地形図)を活用すれば地上30メートルブロックごとの地表温度を取得することができ、建物の数や高さ、アルベド値など、都市スプロールのパラメータを変更して将来の都市スプロールのシナリオを生成できるシナリオモデリングビューもある。

温室効果ガスをトラッキングできるこの多目的ツールは、すでにカナダ国内の気候変動に対する自治体の取り組みに良い影響を及ぼしている。今後は世界中の温室効果ガスや二酸化炭素の排出をめぐる政策転換にもプラスの影響を与えていくことだろう。

Sustainable Environment and Ecological Development Society(SEEDS)はMicrosoft Indiaと共同で、インドにおける熱波リスクを予測して費用対効果の高い介入策を提供するAIモデルの第2弾を発表した。熱波が発生した場合に、政府が市内のどの地域に対して特に支援や注意が必要かを知ることができるというものだ。SEEDSはグラウンドトゥルースデータを使用し、AIモデルは熱センサーなどのデバイスを使用して地上で検証した結果を生成する。

AIはスケーラブルな上、世界各地のどんな地域にでもすばやく採用できるため、各自治体は熱波対策への経済的な方法として積極的に活用すべきある。また、AIはデータソースを抽出するツールにパッケージ化できるため、部門や主要なステークホルダー間で知識を簡単に共有することができ、意思決定者にとっても状況が把握しやすい。

現実的なソリューションを提供し、ストーリーテリングモードで生き生きと伝えることができる一般向けアプリを作ることにより、AIがもたらすインパクトを地域社会に伝えたいというのがEvergreenのアイデアである。例えば、緑の屋根によって気温が下がるということをアプリで紹介すれば、ユーザーはデータ情報を分かりやすいストーリーとして見ることができ、彼らが取り組んでいる問題を取り巻く複雑な仕組みを理解することができるようになる。

信頼のスピードでAIの民主化とスケールアップを図る

AIや機械学習(ML)プロジェクトで複数のデータソースを扱うには、分野横断的なソリューションが欠かせない。テクノロジー関係者、企業、他の非営利団体、政府、コミュニティ、都市計画者、不動産開発業者、市長室などをつなぐパイプ役として、非営利団体やコミュニティビルダーが関与することが極めて重要である。

テクノロジーパートナーが突然AIソリューションを持って都市にやってきて、市の職員がそれにすんなり賛同してくれるというシナリオはまずない。さまざまな分野が関わり合い、ビジネスケースを作成し、すべての関係者が会話に参加しなければならないのである。

同様に、革新的なテクノロジー使うことになるステークホルダーも「ここにはヒートポケットがあるので緑の屋根を設置してください」と言われただけでは、自動的にそのツールを採用することはないだろう。

MicrosoftのAI for Earthの取り組みと連携して開発された、地理空間的ソリューションの良い例がある。ある都市の全人口をマッピングし、40メートルグリッドで100平方メートルのブロック内にリリースポイントを設け、病気を媒介する危険な蚊を退治するために遺伝子を組み換えた蚊を放つというソリューションが発案された。

これは、デング熱や黄熱病に苦しむ地域社会に解決策をもたらすことができるという、AIを活用したスケーラブルなソリューションなのだが、もし誰かが突然自分の家に来て、遺伝子組み換えの蚊を氾濫させると言ったら、ほとんどの人はノーと答えるのではないだろうか。地域が蚊で溢れかえるという発想に対しても抵抗がある上、進化するAIに対する世界的な抵抗感も反対理由の1つである。AIが進化することで個人情報の利用が拡大し、プライバシーの侵害が懸念されるからである。

成功するプロジェクトのほとんどが、コミュニティを教育した上で実行されるというのはこれが理由である。エネルギーを節約して環境にやさしいAI技術を採用することで気温を下げるというポジティブなメッセージを広めるには、地域社会とのパートナーシップが重要な鍵を握っている。

例えばカナダでは各都市が独自の気候チームと気象モデルを備えており、都市部の要所要所にセンサーを設置している。大規模なデータ会社やテクノロジー会社がこういった気象データを入手するのは難しく、都市が進んで共有する必要がある。高解像度・高品質の衛星画像で雲量を調べるのも同様だ。人口データや社会経済的な考慮事項については、データプロバイダーから情報を得る必要がある。

そのためプロジェクトには「信頼のスピード」感が不可欠だ。信頼性が確立されていれば、都市は現実的でスケーラブルなソリューションを提供できるテクノロジー企業にデータポイントを共有する傾向が強くなる。信頼関係がなければ、企業はNASAやCopernicusから入手可能な、一般的なオープンソースデータに頼らざるを得なくなる。

では、企業のプレイヤーやCEOにとってこのことは何を意味するのだろうか。都市向けのAIソリューションは自治体の気候チームやコミュニティを対象としているが、石油やガス会社はどうだろう。この業界の企業は都市の排出量の多くに貢献しているため、二酸化炭素排出量を報告するという大きな圧力がかかっている。

この分野へのAIソリューションでは、製油所や貨物が排出する二酸化炭素量をリアルタイムで追跡できるコマンドセンターが必要だ。製品ごと、従業員ごとの二酸化炭素排出量を減らすようCEOらは義務づけられているが、AIソリューションを導入することで環境への影響に対する説明責任を果たすと同時に、熱波の問題の一端を担っていると認識していることを示すことができるだろう。

熱波に注目が集まるようになったのは、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によりオフィスで働くことよりも自宅で生活することの方が多くなったためというのもある。一般設備や快適なオフィスから離れた場所で、より顕著に不快感を感じるようになったからだ。

社会変革コミュニティのリーダーたちは企業、NGO、政府、テクノロジーパートナー、コミュニティリーダー間のコラボレーションを促進することにより、気候変動や熱波によるこうした悲惨な影響を逆転させることができるのである。もしかすると、事態が手遅れになる前に、AIとMLから生まれる潜在的なソリューションを実際に展開させることができるかもしれないのだ。

画像クレジット:instamatics / Getty Images

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(文:Shravan Kumar Alavilli、翻訳:Dragonfly)

IBMが排出量データ分析Enviziを買収、企業のサステナビリティ活動を支援

IBM(アイビーエム)は米国時間1月11日朝、オーストラリアのスタートアップEnvizi(エンビジ)を買収し、サプライチェーンの上下で環境への影響を測定するためのESG(環境、持続可能性、ガバナンス)製品パッケージに追加すると発表した。

両社は買収条件を公開しなかったが、IBMはEnvizi買収によって、顧客の環境面でのサステナビリティの取り組みを測定、管理、最適化するためのプラットフォームを手に入れた。つまり、2016年にWatson Healthを構築していたときと同じように、環境問題でデータ中心のアプローチをとっている。Watson Healthについては、同社が現在売却しようとしている、と報じられている。

企業は知見を推進するためのデータを必要としており、それがEnviziによって自社にもたらされるものだとIBM AIアプリケーションのゼネラルマネージャーであるKareem Yusuf(カリーム・ユースフ)氏は話す。

「Enviziのソフトウェアは、企業が事業活動全般にわたって排出データを分析・理解するための信頼できる唯一のソースを提供し、企業がより持続可能な事業とサプライチェーンを構築するのを支援するためのIBMの成長中のAI技術という武器を劇的に加速させます」とユースフ氏は声明で述べた。

EnviziのCEOで共同創業者のDavid Solsky(デイビッド・ソルスキー)氏は、今回の買収をIBMのグローバルプレゼンスを活用することで会社を拡大する方法と見ている。これは、はるかに大きな会社に飲み込まれる会社の典型的な主張だ。「今日という日は、1つの時代の終わりでもなければ、新しい時代の始まりでもありません。むしろ、前例のない速度で規模を拡大し、顧客がサステナビリティへのコミットメントに向けて前進するのをグローバルに支援することを可能にする構造への移行です」と、ソルスキー氏は買収を発表したブログ投稿に書いている。

IBMはEnviziを、IBM Environmental Intelligence Suite、IBM Maximo資産管理ソリューション、IBM Sterlingサプライチェーンソリューションを含む既存の製品パッケージに追加するAI駆動型ソフトウェアと見なしている。後者は、サプライチェーンに沿ったソーシングとトレーサビリティのためにIBMブロックチェーンを使用しており、安全性やトレーサビリティを向上させる可能性がある。

注目すべきは、同社がAIを活用したソリューションを追求し続けているにもかかわらず、今回は6年前のヘルスケア構想のように、ESGの取り組みにWatsonという名称を付けなかったことだ。おそらくIBMは、Watsonブランドが輝きを失ったと判断し、社内のすべてのAI駆動型ソリューションにその名称を付けることから脱却したのだろう。

同社は、2030年までに温室効果ガスの排出量を正味ゼロにすることを目指しているため、同じソフトウェアツールを社内で使用して、自社のサステナビリティの取り組みを推進するとしている。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

cove.toolは炭素排出の少ない建築物の設計を支援するSaaS企業、ロバート・ダウニー・Jr.のFootPrint Coalitionも支援

建築物をより持続可能なものにするためのテクノロジーは数多く存在するが、その機能を設計に組み込むことは、いうほど簡単ではない。

cove.tool(コーブ・ツール)は、設計段階から確実に建築物を持続可能にすることを目指すスタートアップ企業だ。2021年には同社のソフトウェアによって、設計・建設の専門家がTesla(テスラ)の5倍の炭素を削減できるようになったと主張している。アトランタを拠点とする同社は、Coatue(コーチュー)が主導するシリーズBラウンドで3000万ドル(約34億円)を調達した。

今回のラウンドには、Robert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・ジュニア)氏のFootPrint Coalition(フットプリント・コーリション)が、既存投資家のMucker Capital(マッカー・キャピタル)、Urban Us(アーバン・アス)、Knoll Ventures(ノル・ベンチャーズ)とともに参加した。

CEO兼共同創業者のSandeep Ahuja(サンディープ・アフジャ)氏によると、今回のラウンドはプリエンプティブラウンドで、同社の調達総額は3650万ドル(約41億5000万円)に達したという。評価額について同氏は明らかにしなかったものの、2020年11月に570万ドル(約6億5000万円)を調達した時から「10倍」になったと述べている。

B2B(企業間取引)のSaaS(サービスとしてのソフトウェア)企業であるcove.toolは、建築家や建設業者がプロジェクトの詳細や土地を入力すると、採光、空調システム、太陽光発電、材料などの最適化方法を提案してくれる機能を備えている。cove.toolは機械学習を活用し、建築家、エンジニア、建設業者が、建築コストを削減しながら建築物のパフォーマンスを幅広く測定する方法を提供する。

「当社が存在する理由は、建築環境における二酸化炭素の排出量を削減するためです。なぜなら、二酸化炭素排出量の約40%は建築によるものだからです」と、アフジャ氏はTechCrunchに語った。「cove.toolの全体的な目標は、材料の選択と建築のシミュレーションのプロセスをよりシンプルにして、低炭素であるだけでなく、コスト的にも最適な代替材料を選べるようにすることです」。

cove.toolは、2017年8月にソフトウェアのベータ版の提供を開始した。現在では、倉庫からデータセンター、オフィスビルに至るまで、2万5000件以上のプロジェクトがcove.toolのソフトウェアを使って建設されている。同社のソフトウェアには、建設業者、建築家、エンジニア、建築製品メーカーなど、30カ国で1万5000人以上のユーザーがいる。その中には、HDR、AECOM(エイコム)、Skanska(スカンスカ)、Stora Enso(ストラ・エンソ)といった企業が含まれる。

「cove.toolは、合理的な自動分析を行うことで、建設業者、建築家、エンジニア、建築製品メーカーがデータに基づいた設計を行えるように支援し、気候変動との戦いの中で建築物を持続可能かつ効率的なものにしています」と、アフジャ氏は述べている。

驚くべきことに、cove.toolは2021年、2850万トンの炭素をオフセットしたという。これは、4億5000万本の木を10年間にわたって植え、育てることに相当する。同社は新たな資本を活用し、製品群の拡大や、現在60名のチームの増員、建築・エンジニアリング・建設業界へ炭素削減分析の提供などを計画している。

アフジャ氏によると、同社の主な競合相手は、同様の作業を手作業で行っているコンサルタントだという。

「当社の差別化要因は、データへのアクセスを民主化し、かつては2〜4週間かかっていたことを30分でできるようにしたことです」と、同氏は付け加えた。

この会社はまだ利益を出していないものの、アフジャ氏によれば事業規模の拡大をやめれば利益を出せる可能性があるという。

「今後数カ月のうちに、当社の製品群をさらに拡大し、AECエコシステム全体の統合を提供することで、パフォーマンスデータをさらに利用しやすくしていきます。当社では、炭素問題はデータ問題であると考えています」と、アフジャ氏はTechCrunchに語った。「APIフレームワークを使用することによって、建築物のデータを分析する作業を大幅に簡素化し、そのデータを建築・設計プロセスの多くの専門家と共有することができ、最終的にはシームレスな協業を可能にして、プロジェクトの成果を向上させることができます」。

同社では、米国、カナダ、英国、オーストラリア、EUでの販売・マーケティング活動を強化していくことも計画している。

FootPrint Coalitionの創設者であるロバート・ダウニー・Jr氏は、建築物の建設と運営が世界の温室効果ガス排出量の40%を占めると指摘する。

「エネルギー効率、設計、材料選択の透明性を組み合わせることで、cove.toolはこの大きな問題に取り組んでいます」と、同氏はメールに書いている。「これは、機械学習と理念的なリーダーシップを用いて、文字通りより良い未来を築く、スケーラブルなビジネスの最高の例です」。

Coatue社のパートナーであるDavid Cahn(デイビッド・チャン)氏によれば、持続可能な建設は現代の最も重要な環境課題の1つであると、同氏の会社は考えているという。

「cove.toolのソフトウェアによるアプローチは、建築をより簡単かつクリーンにする可能性を持っています」と、チャン氏はメールで述べている。

画像クレジット:Cove.tool

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

CO2排出量も抑えた自律走行ポッドとEVによる貨物輸送サービスのスウェーデンEinrideが米国進出

スウェーデンの運送テクノロジー企業Einride(アインライド)が米国での事業展開を開始すると発表した。同社は正式に、GE Appliances (GEアプライアンス)、ブリヂストン、Oatly(オートリー)などのパートナーと協力して、同社の輸送ソリューション(自律「ポッド」、電気トラック「Saga」オペレーティングシステムなど)のテストを開始する。

Einrideはまた、米国の道路事情と規制に対応した同社ポッドの米国版を導入することも発表した。さらには、造船所からのコンテナ輸送など、広範な運搬ニーズに対応するよう設計されたモジュール車両である平台型ポッドの導入も発表した。

Einrideは欧州で最大の電気トラック保有台数を誇る運送会社だ。運転席がなく、安全管理者用のスペースもない同社の自律走行ポッドも電気自動車だ。Kodiak Robotics(コディアクロボティクス)TuSimple(ツーシンプル)Waymo(ウェイモ)など、自律輸送分野の他の大手企業は、必ずしも電気自動車のみによるアプローチを追求していない。

「世界のCO2排出量の7~8%は陸上重量貨物輸送によるものです」とEinrideのCEO兼創業者のRobert Falck(ロバート・フラック)氏はいう。「Einrideを起業したのは、陸上貨物輸送の最適化と自律化をディーゼル車ベースで進めることで、却ってCO2排出量が増えるのではないかと心配したからです。ディーゼル車のほうがずっと安価に最適化と自律化を実現できますから」。

Einrideは、GEアプライアンスとの提携により、7台の自律走行電気トラックを配備し、ケンタッキー州ルーイビルにあるGEAの約3平方kmのキャンパス、およびテネシー州、ジョージア州にあるその他のロケーションを走行させる予定だ。これにより、GEAは今後5年以内にCO2排出量を870トン削減する予定だ。EinrideはGEAとの提携を今後数年で急速に拡大して電気トラックの配備台数を増やしていくという。

ブリヂストンとの提携はどちらかというと技術寄りの提携で、持続可能モビリティソリューションを共同開発し、クラス8の電気自律運転車両の実現を目指す。

「ブリヂストンとの協力により、Einrideは、ブリヂストンのスマートセンシングタイヤから安全性と効率性に関する新たなデータを収集できるようになります。ブリヂストン側も同社の先進のモビリティテクノロジーをEinrideに搭載されているオンボード車両プラットフォームに組み込むことができます」とEinrideの広報担当者はいう。「当社はブリヂストンとのサブスクリプション契約の下で、同社の米国輸送物流ネットワーク向けに、接続された電気トラックとデジタルサービスを提供することで、2025年までにブリヂストンの陸上輸送ニーズの大半を電化することを目指しています」。

オーツミルク企業であるOatly(オートリー)は、すでに欧州でEinrideと提携しており、その提携関係を米国にも拡大しようとしている。Einrideは米国への進出について詳細を明らかにしていないが、フラック氏によると、2020年からオートリーの欧州の輸送のデジタル化と電化を進めたのと同じような形で事業展開していくつもりだという。Einrideは欧州で、オートリーに電気トラックとSagaプラットフォームを提供することで、電化を迅速に推進し、特定経路におけるCO2排出量を87%削減したという。米国でも同様にしてオートリーの電化を進めていくことになるだろう。

Einrideの米国進出と同時に、Sagaプラットフォームのアップデートも実施される。Saga(ノルウェー語で「すべてを知っている」という意味)は、Einrideの電気トラックおよびポッド全体で稼働するIoTシステムだ。同社はこのシステムによって経路を最適化し、大規模電気トラック集団を稼働している。Einrideは、Sagaを、重量輸送産業に変革をもたらし、企業の保有車両の電化を推進する普遍的なオペレーティングシステムしたいと考えている。

「現在のトラック輸送産業は極度に分断化されていおり、連係が進んでいません」とフラック氏はいう。「電動化を進めるのは簡単ではありません。電動化の範囲とか実際の導入度といったことが目的ではないのです。当社のSagaプラットフォームとオペレーティングシステムを使えば、既存のテクノロジーを利用して、競争の激しいビジネスケースにおける米国の陸上貨物輸送システムの最大40%を電動化できます。どちらかというと、ハードウェアを改善するというよりも、新しい考え方を導入するといったほうが近いと思います」。

Einrideのポッドは安全管理責任者が同乗しないため、レベル4の自律性の達成方法について新しい考え方を取り入れている(米国自動車技術者協会によると、レベル4とは、車両が、特定の条件の下で人間の介入なしに運転のあらゆる側面を処理できることを意味する)。

Einrideの全システムは、安全管理ドライバーが存在しないため、異なる方法で構築する必要がある、とフラック氏はいう。他の運送会社は前の座席に人間のオペレーターを同乗させて距離を稼いでいるが、Einrideはフラック氏が「よちよち歩き式アプローチ」と呼ぶ方式を採用している。この方式では、ハイハイ、ゆっくり歩きという具合に車両に運転を教えていき、徐々に機能を高めていく。

「当社は従来のレベル4から開始し、自律運転とリモート運転機能を組み合わせてアプリケーションの使い勝手を向上させました。その結果、柔軟性、および自律運転、人間のアジリティ、意思決定の利点の両方を獲得できました」とフラック氏はいう。

Einrideは2019年から欧州で公道での自動運転システムの試験走行を開始しているが、米国での試験開始日はまだ決まっていない。

「車両に安全管理ドライバーを同乗させず、ドライバーの席もないため、規制を通過するには異なるアプローチを取る必要があります」とフラック氏はいう。「規制は国や州によって異なりますが、基本的には、アプリケーション自体の安全性が保証されているかどうかという問題です。当社も創業以来、ドライバーを同乗させずにすべてのアプリケーションで安全性を確認できるようにするというアプローチを取ってきました」。

リモートトラックドライバー、すなわち「ポッドオペレーター」は、Einrideのポッドを監視し、状況によっては運転を引き受ける。フラック氏によると、Einrideではレベル5の自律性(基本的に自動運転車のほうが人より運転能力も思考能力も優れているとするレベル)を信用しておらず、アジリティと意思決定能力を高められるように、いつでも人間がシステムに介入できるようにすることを目指しているという。

「マシンはまだ人のために働いています」とフラック氏はいう。「業界はレベル5の自律性を備えたAIを15年以上追求してきましたが、まだそのレベルには程遠い状態です。運送業界においては、自律運転の利点が活かされる場面も数多くありますが、人が介入することによる利点もあります。例えば別のゲートに戻ったり、周辺のドライバーとやり取りしたい場合などです。人間の意思決定を介入させられるのは大きな利点であり、ビジネスへの影響も最小限で済みます」。

Einrideは、トラック業界での経験があり、トラック運転免許を持っている最初のポッドオペレーターを採用した。詳細は、2021年後半のイベントで明らかにするという。

Einrideは米国に進出するだけでなく、ニューヨークに正式に米国本社を設立する予定で、一部の経営幹部がニューヨークを本拠に活動することになる。また、オースティン、サンフランシスコ、東南アジアにも支社を設置する予定だ。米国での工場建設予定は今のところはない。

画像クレジット:Einride

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

北極圏にデータセンターを構えて実質無料で冷却、Neu.roはゼロエミッションの機械学習モデル構築ソリューションを発表

企業が機械学習を活用してビジネスをより効率的に運営しようとする動きはますます活発になっているが、機械学習モデルの構築、テスト、稼働には膨大なエネルギーを必要とすることも事実だ。アーリーステージのスタートアップ企業でフルスタックのMLOps(エムエルオプス、機械学習運用基盤)ソリューションを手がけるNeu.ro(ニューロ)は、より環境負荷の少ないグリーンなアプローチに取り組んでいる。

同社は米国時間11月22日、フィンランドのクラウドインフラストラクチャパートナーであるatNorth(アトノース)とともに、ゼロエミッションのAIクラウドソリューションを発表した。

同社によると、atNorthはティア3に適合するISO 27001認定のデータセンターを提供し、そこでNVIDIA(エヌビディア)A100を搭載したDGXおよびHGXシステムを稼働させるという。80MWの電力容量を持つこのデータセンターは、すべて地熱と水力エネルギーで稼働している。さらに、北極圏に位置しているため、実質的に無料で冷却することができ、Neu.roのソリューションを使用して機械学習モデルを構築する顧客に、エネルギー効率の高いソリューションを提供できる。

Neu.roの共同設立者であるMax Prasolov(マックス・プラソロフ)氏によると、この問題を調査した結果、コンピューティングとテレコミュニケーションが世界の総エネルギー消費量の約9%を占めており、この数字は今後10年間で倍増する可能性があることがわかったという。プラソロフ氏らは機械学習モデルの構築がその中でも重要な役割を果たすと考え、自社の二酸化炭素排出量を削減するために、atNorthと提携することを決めた。

「当社ではすべてのオペレーションとすべての実験を、ゼロエミッションのクラウドに移行することに決めました。目標は、クレジットを購入して使用量を埋め合わせることができるカーボンニュートラルではありません。問題は、どうやってゼロエミッションを達成するかです。私たちは、顧客のために機械学習モデルをトレーニングする際に、非常に多くのエネルギーとコンピューティングパワーを費やしていることに気づきました。それこそが、間違いなく、我々が排出している最大のカーボンフットプリントであることを理解したのです」と、プラソロフ氏は述べている。

その一方で、同社はソフトウェアソリューションを通じて、より効率的な方法でモデルを構築する方法を考え出した。これによって必要なエネルギー量を削減し、さらに持続可能なソリューションを提供することが可能になる。

製品自体については、同社は柔軟性のあるクラウドネイティブなサービスを提供しており、そこでツールの一部を提供するものの、企業が自分たちにとって最適と考える方法で補う余地を十分に残している。

「当社のアプローチは、データの取り込みから、モニタリング、説明可能性、パイプラインエンジンなど、構築が必要なツールをすべて1つずつ構築するのではなく、相互運用性を重視しています。まだ構築されていないものを構築し、すでに存在するKubernetes(クバネティス)によるツールのユニバースに接続します」と、同社の共同設立者である Arthur McCallum(アーサー・マッカラム)氏は説明する。

このスタートアップ企業は現在、商用のソリューションを提供しているが、オープンソース版のスタックにも取り組んでおり、まもなく、おそらく年内にはリリースされる見込みだ。同社の目標は、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)というビッグ3以外の小規模なクラウドベンダーに、クラウドベースのAIソリューションを提供することである。これには世界各地の地域的なベンダーも含まれるだろう。

Neu.roは2019年に創業し、2020年にソリューションの最初のバージョンを公開した。これまでにシード資金として230万ドル(約2億6500万円)を調達しているという。

画像クレジット:a-image / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

LAオートショー2021の高揚感としらけムード

LAオートショーは、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下で初めて戻ってきた室内自動車ショーだ。ニュースに乏しく、いつも以上にベーパーウェアが多い中、それでも、いくつかのクルマやテクノロジーや企業が、イベントに先立って行われた2日間のプレスデーで目立っていた。

以下に、2021年のロサンゼルスで良くも悪くもTechCrunchの目に止まったクルマとテーマを紹介する。

グリーン&クリーンへと変わるストーリー

画像クレジット:Kirsten Korosec

米国時間11月17日正午前に行われた少数の主要なニュースカンファレンスでは、持続可能性と気候変動が中心テーマだった。そこには企業の偽善的環境配慮と実際の行動が入り混じっていた。

Hyundai(ヒョンデ)とKia(キア)は、環境の認識がいかに大切かを訴える短編動画を流したあと、全電動コンセプトカーとプラグインハイブリッド車を披露した。Fisker(フィスカー)は海洋保護について話した。長年グリーン化に取り組み、国立公園から動物保護まであらゆる活動の支援に多額の資金を投入してきたSubaru(スバル)も、環境保護の支援を継続していくことを強調した。

これは過去においても珍しくなかったことだが、自動車業界全体が二酸化炭素排出量低下に重い腰を上げ、持続可能な生産と調達に革新を起こし、有効な寿命を終えた部品や車両リサイクルと再利用の方法を探求していることは銘記しておくべきだろう。人類の気候変動への影響を減せる時間はあと10年しかないという恐怖の警告は、ショーで行われた複数のプレス会見で言及されていた。

ハリウッドモード

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年特に目立った発表の1つが、Fisker Ocean(フィスカー・オーシャン)の量産間近なバージョンだ。全電動SUVが備える17.1インチ巨大スクリーンは、180度回転可能で、同社が「ハリウッドモード」と呼ぶ横位置のランドスケープモードから縦位置のポートレートモードへ回転できる。

横位置モードでは、Oceanが駐車あるいは充電中に、ゲームをプレイしたりビデオを見たりできる。Fiskerは、このスクリーン回転技術の特許を取得していると述べた。

画像クレジット:Kirsten Korosec

電化、電化、電化

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のLAオートショー全体のテーマは、(驚くに当たらないが)あらゆるものの電化だ。展示場にはICE(内燃エンジン)駆動の車両が数多く見られたものの、バッテリー電力の世界にいくつもビッグニュースがやってきた。

Nissan(日産)の全電動SUV、Ariya(アリヤ)、Toyota(トヨタ)bz4xと双子車Subaru Solterra(ソルテラ)から、TechCrunchのお気に入りである全電動Porsche(ポルシェ)Sport Turismo(スポーツ・ツーリズモ)セダンの最新モデルとマジックルーフ付きワゴンまで話題は尽きない。

健康被害からあなたを守るテクノロジー

画像クレジット:Kirsten Korosec

現行パンデミックが3年目を迎える中、自動車メーカーは利用者を病気から守る方法を考え始めている。HyundaiがLAオートショーで披露した SUVコンセプトカーSEVEN は、垂直空気循環、抗菌性の銅、紫外線殺菌装置などの機能を提供している。

電動化レストモッドがやってくる

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のLAオートショーで目についたトレンドの1つが、何台かの古い車体に電動パワートレインを積んだレストモッド(レジストレーション&モディフィケーション)モデルだ。内燃エンジンのような直感的体験を与えることはないかもしれないが、クラシックカーの新しい楽しみ方を提供するものだ。

自動車製造のスタートアップ、Cobera(コベラ)が展示していたC300は、懐かしいShelby Cobraとよく似た外観だ。しかし、ボンネットの中にはV8エンジンに代わってC300を時速0〜62マイル(0〜約99.8km)まで2.7秒で加速すると同社がいう全電動パワートレインが入っている。Cobera C300は、ハンガリーの乗用車とキャンピングカーの製造に特化した会社Composite-Projects(コンポジット・プロジェクト)が設計・製造した。車両のスイッチを入れると、合成されたサウンドが出て、昔のV8に少しだけ似た音が聞こえる。

Electra Meccanica(エレクトラ・メカニカ)は、LAオートショーで三輪自動車Solo(ソロ)(詳しくは下で解説)も発表している会社だが、もう1台、Porsche 356 Speedsterに似た電動車、eRoadsterを披露した。エアコンディショニング、パワーウィンドウ&ロック、最新インフォテイメントシステムなどを備える。

画像クレジット:Kirsten Korosec

新たなパワートレインを搭載したレストモッドを披露したのは比較的無名で小さなメーカーだけではない。Ford(フォード)は11月初旬のSEMAショーに登場した電動化したF-100を持ちこんだ。1978 F-100 Ford Eluminator(フォード・エルミネーター)はFordの電動モーター、E-crate(イークレート)を備えたレストモッド機能で、ユーザーはこれを購入して自分の車両に取りつけられる。

F-100は前輪と後輪に1台ずつモーターを備え、最高出力480馬力、最大トルク634lb-ft(860Nm)を誇る。室内には新型インフォテイメントシステムのスクリーンとデジタル・ダッシュボードがある。

画像クレジット:Kirsten Korosec

三輪車

画像クレジット:Kirsten Korosec

例年、会場には少なくとも数台の三輪自動車が登場するが、2021年はいつもより多かった。Biliti Electric(ビリティ・エレクトリック)が持ってきた電動&ソーラー駆動トゥクトゥクは、Amazon(アマゾン)やWalmart(ウォルマート)が世界の人口密集都市のラストワンマイル配達に使える、と同社は言っている。

同社のGMW Taskmanは、すでにヨーロッパ、アジアの各所で使われていて、これまでに1200万個の荷物を配達し、延べ2000万マイル(3200万km)を走ったとファンダーが言っていた。

画像クレジット:Kirsten Korosec

Electra Meccanica のもう1台、Soloは同社が2016年のこのショーでも披露したsharyou

で、プレスデーにテスト乗車を提供していた。同社によるとSoloは1回の充電で最長100マイル(約161 km)走行可能で、最大出力82馬力、最大トルク140lb-ft(約190N-m)、最高速度は80mph(約128 km/h)。定員1名で荷物スペースを備え、近距離の移動や都市圏での通勤のために作られている。Soloの価格は1万8500ドル(約211万円)で、アリゾナ州メサで製造されている。

Sondors(ソンダーズ)の三輪電気自動車は、3人乗りで航行可能距離は約100マイル(約160km)と同社はいう。このクルマは、100万ドル(約1億1400万円)以上を集めて成功したクラウドファンディングの後に開発されたもので、33 kWhのバッテリーパックを備え、最大出力170馬力、最大トルク323 lb-ft(約438N-m)を発揮する。

Imperium (インペリウム)も三輪電気自動車、Sagitta(サギッタ)を披露した。ショーに登場した三輪乗用車の中では最大で、4人まで乗ることができるスペースをもつ。Sagittaは車両のスペックを発表していないが、2022年中頃から予約を開始すると同社は述べた。

バービー

画像クレジット:Abigail Bassett

ことしのLAオートはには、バービーまで登場した。Mattel(マテル)はBarbie Exra(バービー・エクストラ)カーの実物大バージョンを公開した。2021年式Fiat(フィアット)500のシャシーに載せたファイバーグラスのボディーはキラキラの白い塗装で飾られ、ウィング式ドアと後部にはペット用プールもある。

ソーラーパワー

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のショーには、興味深いソーラー充電オプションを備えたクルマがいくつかあった。中国のエネルギー会社、SPI参加のPhoenix Motor Inc.(フェニックス・モーター)が発表したピックアップトラック、EF1-Tの収納可能なソーラーピックアップベッカバーは、最大25〜35マイル(約40〜56km)の走行距離を追加できると同社はいう。EF1-TおよびバンバージョンのEF1-Vは、いずれも巨大な車両で、明らかにまだプロトタイプであり、機能や利用形態について顧客の意見を聞いているところだと会社は述べた。

大きな虫のような外観のEF1-Tは、1回の充電で380〜450マイル(約612〜724 km)走行可能で、2025年の発売に向けて予約を受け付けているという。ずいぶんと遠い話だ。

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Nob Takahashi / facebook

カーボンオフセットのサブスクを行うEcologiがクラウドファンディングで資金調達

人々は音楽に定額料金を支払っているのだから、カーボンオフセットにも定額料金を支払い、気候危機に対する良心の呵責を和らげようとする人だっているはずだ。そう考えた英国のEcologi(エコロジ)というスタートアップ企業は、サブスクリプション会員から集めた資金を使って、アフリカやラテンアメリカなどの地域で10日ごとに100万本の木を植えたり、インドネシアの泥炭地を保護する活動などを行っている。そうすることによって会員のカーボンフットプリントを減らし、カーボンオフセットを購入することで会員の排出した二酸化炭素を相殺するというわけだ。

Ecologiは2021年4月、プレマネー評価額1650万ポンド(約25億2000万円)でシード投資ラウンドをクローズし、リードインベスターであるGeneral Catalyst(ジェネラル・キャタリスト)とEntrée Capital(アントレ・キャピタル)から、405万ポンド(約6億2000万円)の資金を調達した。

3万5000人の個人および企業が利用しているこのサブスクリプションサービスでは、会員は毎月少なくとも12本の木を植えて「自分の森を育てる」ことができ、さらに幅広い炭素削減プロジェクトに資金を提供することで、自分のカーボンフットプリントをオフセットすることができる。

2019年の設立以来、これまでブートストラップで運営してきた同社は、領収書、証明書、取締役会議事録、財務諸表などもすべて公開台帳に載せている。

現在は、英国の投資クラウドファンディングプラットフォームであるCrowdcube(クラウドキューブ)では、目標額の200万ポンド(約3億500万円)を上回る資金を集めており、プレマネー評価額は7500万ポンド(約115億円)に達している。この資金は、製品の開発、チームの拡大、米国およびEUでの事業拡大に充てられる予定だ。また、同社は現在、B-Corp(ビーコープ)認証を待っているところだという。

2022年初頭には、企業向けのリアルタイムカーボンフットプリントソフトウェア「Ecologi Zero(エコロジ・ゼロ)」の発売を予定している。

これによって同社は、Normative(ノーマティブ)、Spherics(スフェリックス)、Plan A(プランA)といった他のカーボンフットプリントSaaSスタートアップと競合することになる。

Ecologiは、9カ月間で650%以上の成長を遂げ、2020年1年間で炭素削減による効果を330%増加させたと主張している。2021年1月におけるARR(年間経常収益)は300万ポンド(約4億6000万円)だったが、2021年は850万ポンド(約13億円)のARRで終える見込みだという。

同社はこれまでに合計で2500万本以上の木を植え、120万トンのCO2を相殺したと主張する。これらの木の大部分は、マダガスカル、モザンビーク、ニカラグア、米国、オーストラリア、英国、ケニアで植えられた。さらにインドネシアの泥炭地保護、トルコにおける埋立てガスからのエネルギー生産、インドにおける廃棄籾殻からのエネルギー生産などのプロジェクトを支援している。

共同設立者でCEOのElliot Coad(エリオット・コード)氏は次のように述べている。「コミュニティ・オーナーシップは我々の活動の中心であり、過去2年間の成長の原動力となってきました。だから、当社の熱心な定額会員のみなさまに、Ecologiの株式を所有する機会を提供することは、当然のことだと考えました。そこで私たちは、2021年4月にGeneral Catalystから出資を受けて以来、この3カ月間はベンチャーキャピタルからの出資を断り、コミュニティベースのクラウドファンディングを採用したのです」。

画像クレジット:Ecologi / Ecologi co-founder Elliot Coad

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

CO2排出量算出・可視化クラウドのゼロボードが三菱UFJ銀行と協業、金融機関向けCO2データインフラ機能拡充など目指す

CO2排出量算出・可視化クラウドサービス「zeroboard」を開発・提供するゼロボードは11月5日、カーボンニュートラルの実現に向け、三菱UFJ銀行との協業について基本合意したことを発表した。三菱UFJ銀行の持つネットワークや総合金融グループとしての知見と、ゼロボードのクラウドサービスや辰炭素経営に関するノウハウをかけ合わせ、企業の脱炭素経営を後押しするソリューションを提供する。

具体的には、以下のような取り組みを進める。

  • 三菱UFJ銀行の顧客企業へzeroboardの提供
  • zeroboardのCO2排出量データ・サプライチェーンデータに基づく三菱UFJ銀行による金融ソリューションの開発・検討
  • 金融機関含めその他事業者までも含めたオープンかつインクルーシブ(包括的)なパートナシップの発展およびソリューションプラットフォームの共同開発・提供
  • アジアを中心としたグローバル製造業サプライチェーンのCO2排出量可視化・削減支援
  • CO2排出量以外の社会インパクト評価手法・可視化手段、ソリューション提供分野での初期検討

zeroboardは、企業活動により排出されたCO2量を算出したうえで、温室効果ガス(GreenHouse Gas)の排出量の算定と報告に関する国際基準「GHGプロトコル」における対象範囲区分(Scope1~3)を可視化できるクラウドサービス。Scope1は「自社の事業活動における直接的なCO2排出」、Scope2が「他社から供給された電気、熱・蒸気の使用により発生する間接的なCO2排出」。またScope3は「上記以外の事業活動に関わるサプライチェーンのCO2排出」を示す。

zeroboardでは、「サプライチェーンでの排出量や商品ごとのCO2排出量の算出」「CO2排出量の削減管理やコスト対効果のシミュレーション機能」「TCFDなどの国際的な開示形式に加え、国内既存環境法令にも対応するアウトプット」「専門的な知識を必要としないユーザーフレンドリーな操作性」などの機能を備えているという。

透明性が高く持続可能なサプライチェーンを作るためにPortcastが約3.5億円調達

Portcastの創業者であるシャ・リンシャオ博士とニディ・グプタ氏(画像クレジット:Portcast)

多くの製造業者や運送業者にとって、物流管理は未だに手作業ばかりのプロセスである。電話やオンライン照会での出荷追跡に、エクセルのスプレッドシートへのデータ入力。自社を「次世代の物流運営システム」と称するPortcast(ポートキャスト)は、無数の情報源からデータを集め、リアルタイムで出荷物を追跡するだけでなく大きな天候の変化、潮流やパンデック関連の問題など何がその進行に影響を与えるか予測することにより、プロセスを効率化する。

同社は2021年9月上旬、Imperial Venture Fund(インペリアル・ベンチャー・ファンド)を通じたNewtown Partners(ニュートン・パートナーズ)率いるプレシリーズA 資金調達で320万ドル(約3億5000万円)を集めたと発表した。参加したのはWavemaker Partners(ウェーブメーカー・パートナーズ)、TMV、Innoport(イノポート)、SGInnovate(SGイノベート)。シンガポールに拠点を置くPortcastは、アジアとヨーロッパの顧客にサービスを提供し、調達資金の一部はさらなる市場への拡大に充てる。

共同創設者のNidhi Gupta(ニディ・グプタ)とLingxiao Xia(シャ・リンシャオ)博士は、シンガポールのEntrepreneur First(アントレプレナー・ファースト)で出会った。Portcastを立ち上げる前、最高経営責任者  のグプタ氏はDHLのアジア全域でリーダー職に就いてきた。その間に、彼女は物流部門の「非効率は実際にはこの分野において何かを作り出す機会である」ことに気づいた。機械学習の博士号を持ち、製品開発とクラウドコンピューティングの背景を有するシャ博士は「すばらしく補完的に合っていた」ことから、現在Portcastの最高技術責任者を務めている。

Portcastは、外洋貨物船を使用した世界の取引額の90%以上、航空貨物の35%を追跡し、3万本の通商路への需要を予測できるという。情報源は船の場所、進行速度と方向、向かっている港、風速、波高を示す衛星データなどの地理空間データなどがある。また、Portcastは経済様式(例えば、Brexit(ブレグジット)の英国中の港への影響、世界中のワクチン接種の開始により航空機や船の定員がどれくらい変わるか)、台風など気象事項、スエズ運河が航路をふさいだ時のような混乱にも目を向ける。

他には大規模な船会社や運送業者を含む顧客の独占的な取引データなどのデータ源がある。

「私達の挑戦は、いかにこのすべてのデータに同じ言語をしゃべらせるかです」。グプタ氏はTechCrunchに話した。「このデータはさまざまな頻度、詳細度で入ってくるため、いかにそれを組み合わせて機械がそれを理解、解釈し始めるようにするか」。

Portcastの主な解決策は、現在リアルタイムで輸送コンテナを追跡するIntelligent Container Visibility(インテリジェント・コンテナ・ビジビリティ)と、予約形態を追跡するForecasting and Demand Management(フォーキャスティング・アンド・デマンド・マネジメント)の2つである。Portcastはコンテナの追跡にIoTを利用しない。1つ1つに装置を取り付けると桁違いの費用がかかるからである。しかしハイブリッドな解決策のためにIoTプロバイダと連携している。例えば、追跡装置を1つのコンテナに設置し、その後そのデータを使用して残りの出荷物の管理に役立てているのである。

このスタートアップ企業の目標は、企業が運営効率を向上させるのに役立つ予測を行い、手作業のプロセスへの依存を減らすことである。「毎週何百個もの貨物が到着する物流業者がいます。そこでは毎日手作業でそれを確認しているのです。情報はエクセルシートに入力され、それに基づいて下流業務の計画を立てます」。と、グプタ氏はいう。

しかし新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは「緊急のデジタル化ニーズ」を生み出し「それはサプライチェーンを費用関数から時間通りに製品を入手することの中核へと形を変えました。そのため私達はいくつかの大規模な製造業者や運送業者と連携しています」。と、彼女は付け加えた。例えば、ヨーロッパのある食品および飲料会社は台北に輸送したが、通常は輸送に70日かかる。しかし到着まで3カ月以上もかかった。Portcastはさまざまな港や船を渡り歩く積荷を追跡し、顧客が遅延の原因を理解するのを助けた。

「中断が起きそうな時を予測するだけでなく、ピンポイントで、台風や積み替えが発生しそうだからX日遅れると伝えます。そうすればトラックや倉庫チームに何台のコンテナが到着するか知らせられるため力になれるのです」。と、グプタ氏はいう。「これにより港費、コンテナの延滞料金、手作業でさまざまな会社のウェブサイトを確認しサプライチェーンに何が起こったかを見つけ出そうとするのに要する時間を削減することができます」。

Portcastがサプライチェーンの可視性を正したい他の物流テックスタートアップ企業より勝る点は、船が通常複数の港を通り、熱帯暴風雨や台風などの気象事象を頻繁に回避しなければならないアジア太平洋地域で発売したことにある。シンガポールとマレーシア間(例えば)の航海を短くするためにPortcastが開発した技術は、アジアとヨーロッパ、またはアジアと米国などを結ぶ大陸間航路にも適用される。

「当社の技術は世界規模で、この市場の他のプレイヤーとの競争力を持ちます」。とグプタ氏は語った。「他に当社を差別化しているのは、製造業者とだけでなく、船会社、物流会社、貨物航空会社とも提携し、それによりネットワーク効果を作り出している点です。海上運送と航空運送で起きていることは非常に強い相乗効果があり、それを基に私達はその業界の型を理解することができ、当社のプラットフォームに移ってくる他社のためのレバレッジを生んでいる。

Portcastには予測型AIから処方型AIを含むよう移行する計画がある。現在、このプラットフォームは企業に遅延の原因を伝えることができているが、処方型AIは自動提案を行うこともできる。例えば、顧客にどの港が速いか、中断を回避するのに役立つ他の船や輸送方法、どうやって対応量を最適化するかを伝えることができる。

また、同社は年末までにOrder Visiblity(オーダー・ビジビリティ)を発売することも計画している。これは特定の品目を入れたコンテナを追跡する機能である。疲弊したサプライチェーンにより多くのさまざまな製品の消費者価格は上昇している。企業が特定のSKUをリアルタイムで追跡できるようにすることで、Portcastは物がもっと早く届くのを助けるだけでなく、各輸送で排出されるCO2量も可視化させることができる。

「カーボンオフセットやカーボントレードは、自分が実際にいくら支出しているか可視化できる場合にのみ生じます。そこに私達は関与することができます」とグプタ氏はいう。「例えば、早く到着すれば、船会社が船を減速させバンカー重油のような燃料費用を節約する機会となり、膨大な費用節約となるだけでなく、CO2排出量も削減することになります」。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Dragonfly)