グーグル、ウクライナでGoogleマップのリアルタイム交通状況ツールを無効に

Alphabet(アルファベット)は米国時間2月28日、取材に対し、ウクライナでGoogleマップのライブ交通状況ツールの一部を無効にしたことを明らかにした。Reuters(ロイター)が報じたこのニュースは、同国がロシア軍からの攻撃に直面している中で、同社が地元当局と協議した後に発表された。該当する機能に関して、広範なグローバルアクセスは無効になるものの、現地ドライバーのためのローカルターンバイターンナビゲーションは有効になっているとのこと。

人気の高い同社のマッピング技術は、ウクライナ侵攻の当初から意外な役割を担ってきた。カリフォルニア州のある研究施設では、ロシアの「特別軍事作戦」が公式に宣言される数時間前に、Googleマップの交通データと衛星画像を組み合わせて交通渋滞を発見し、ウクライナ国境に向かうロシア軍の接近を察知することができたという。

研究者のJeffrey Lewis(ジェフリー・ルイス)博士は、The Washington Post(ワシントン・ポスト)にこう語っている。「昔なら、現場で起きていることを教えてくれる記者に頼ったところですが、今日ではGoogleマップを開くと、キエフから逃げる人々を見ることができてしまいます」。

Alphabetの動きは、ロシア軍がウクライナ軍の動きを追跡するために、同様に情報を悪用する可能性があるという懸念からきているようだ。この件に関してAlphabetは、いつスイッチをオフにしたのか、他の世界的な紛争で同様の行動をとったことがあるのか、など具体的なことは何も述べていない。

現地では、ウクライナの人々はこの問題に対して、もっとはるかにオールドスクールなアプローチを取っている。同国の道路局であるUkravtodor(ウクライナ道路公団)は、ロシア軍を混乱させるため、道路標識を撤去し始めた

Ukravtodorは26日にソーシャルメディアに「やつらの地獄直行を手伝おう」と書き込んだ。「Ukravtodorは、すべての道路組織、領域共同体、地方自治体に、近くの道路標識の撤去を直ちに開始するよう呼びかけています」。

GoogleはTechCrunchの取材に対し、先週始まった侵攻に関しては直接のコメントを控えた

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(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

自治体にオンデマンド輸送のテックを提供するカナダのRideCoがソフトウェアの拡張へ約18億円調達

自治体にオンデマンド輸送のテックを提供しているカナダのRideCo(ライドコー)は、2000万カナダドル(約18億円)のシリーズAラウンドをクローズした。RideCoの共同創業者でCEOのPrem Gururajan(プレム・グルラジャン)氏によると、新たに調達したこの資金は製品のさらなる開発に充てられ、エンジニアリングチーム、顧客サービス、営業とマーケティングチームの大幅拡大にも使われる。

Via(ビア)を最大の競合相手とするRideCoは、ソフトウェア・アズ・ア・サービスのビジネスモデルを展開している。自前の車両と、Remix買収で獲得した輸送プラニングのテックを提供しているViaとは異なり、RideCoは輸送機関や運行オペレーターに基本的なソフトウェアとアプリを提供し、そうした機関やオペレーターがRideCoの最大の顧客である自治体にオンデマンドの輸送オプションを提供できるようにする。RideCoはまた、従業員の送迎をダイナミックに行う方法を探している企業にもサービスを提供している。

このソフトウェアは、バスやその他の車両のためにダイナミックルートを作成し、需要に応じて次のピックアップ場所とドロップ場所に向かわせる。サンアントニオ、ロサンゼルス、そして直近ではラスベガスといった都市が、こうした機能を利用して、ファーストマイルとラストマイルの輸送へのアクセス問題に取り組んでいる。これは、いまだに固定ルート輸送システムが中心となっているほとんどの都市に共通する問題だ。

「例えば、サンアントニオでは、人口密度が高いため交通の便が良い地域がある一方で、人口密度が低い地域も多く、そうしたところではファーストマイルとラストマイルへのアクセスに問題があります。そうした場合、固定ルート輸送はうまく機能しません」とグルラジャン氏はTechCrunchに語った。

ダイナミックシャトルやバスは、人々が乗車をオーダーする場所や降ろして欲しい場所に実際に行くことでそうした問題を解決し、都市にこれまでよりもモビリティを生み出すことができる。

「当社のサービスを利用している自治体では、ライトレールや高速バスレーンがあり、バスが満員になるような需要がある高頻度コリドーにつながる中・低密度地域でダイナミックトランジットを利用することができます」。

乗客はアプリで車両を確認でき、事前予約やリアルタイムでの乗車予約、あるいは出勤日の毎日午前9時といった定期的な乗車予約も可能だ。

Eclipse VenturesがリードしたRideCoのシリーズAは、創業以来7年間で初の機関投資家からの資金調達だ。グルラジャン氏によると、これはいくつかの要因のためで、まずRideCoは最初の数年間、中核となるテクノロジーの構築と、特定のユースケースを解決するためのベータ版顧客とのテストに注力していた。

RideCoは、製品を市場に投入する準備ができたとき、まだ製品と市場の適合性がないことに気がついた。

「市場に出てみると、この製品に興味を持つ顧客はいましたが、全体として市場はまだ準備ができていませんでした」と同氏は話した。「アプリ主導の交通機関であるものにはまだ不安があったようですが、2018年末ごろからすべてが変わり始めました。サンアントニオのような大都市との契約がいくつかあり、それらはコスト削減と住民のモビリティ向上の観点で大成功を収めました」。

それ以来、RideCoはカルガリーやヒューストンのような大都市からオンタリオ州コブールのような小さな町まで、米国とカナダのあちこちの都市に進出している。パンデミックで交通機関が、乗客の需要パターンの変化に柔軟に対応することや、近代的ですぐに反応するネットワークへの要望に応える新しい方法を考え始めたことも、RideCoの成長を加速させたとグルラジャン氏はいう。

この1年間で、RideCoの顧客数は2倍になったが、同社はその成長の基盤を明らかにしていない。

主要な競合相手であるViaが、オンデマンド輸送のプロバイダーというよりも、総合的な輸送技術プロバイダーとして提供するサービスを多様化させている中で、RideCoはオンデマンド輸送の提供を強化している。技術の類似性から2021年に互いに特許侵害訴訟を起こしたこの2社は同じ年に設立されたが、ViaはRideCoよりもはるかに多くの市場シェアを獲得している。

RideCoは、黎明期にあるこの業界で、まだシェアを切り開くことができるかもしれない。米国とカナダの交通機関の約16%がすでにオンデマンド交通を提供しており、この数値は他の共有モビリティの形態とともに増え続けると予想される。RideCoは、現在の勢いを維持する必要がある。

画像クレジット:RideCo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

クラウド録画サービスSafieが渋谷区のスマートシティ化を目指す「データ利活用事業」に採択、宮下公園で実証実験

クラウド録画サービスSafieが渋谷区のスマートシティ化を目指す「データ利活用事業」に採択、宮下公園で実証実験

カメラとインターネットをつなぎ、いつでもどこでも映像を確認できるクラウド録画サービス「Safie」(セーフィー)を運営するセーフィーは、東京都渋谷区がスマートシティ化のための提案を募集する「データ利活用促進にむけた技術実証・実装支援事業」に採択されたと発表。東京都・宮下公園において、公共空間利用の分析のための実証実験を同日より実施している。

Safieは、単に映像を録画するだけでなく、防犯や遠隔からの状況確認、異常検知・予測、映像解析による業務効率化といった用途に利用されている。セーフィーはこの機能を活かし、渋谷区に「クラウドカメラと映像解析AIを活用した利用者データの解析事業」を提案し、採択された。具体的には、公共空間の利用傾向や利用者の属性を把握することで、より便利で快適な公共空間の整備に役立てるというものだ。

実証実験は、渋谷区「Miyashita Park」の宮下公園内において2月8日から2月24日まで実施される。セーフィーは、同社のカメラ「Safie Go」4台を宮下公園の「パークセンター前エリア」「中央階段前エリア」「カフェ前エリア」の3カ所に設置し、利用者数や利用者の属性推定データ(性別/年代:子供・大人・年配者)を取得し分析する。このデータを、「より便利で快適な公共空間整備」の参考にするということだ。

AI解析には、セーフィーの「Safie AI People Count」と、フューチャースタンダードが提供するAI交通量調査サービス「SCORER Traffic Counter」が使われる。個人が特定される映像データは、上記解析以外には利用せず、利用状況を測定した後保存期限(3月31日)までに削除し、統計情報のみを保持するとのこと。

都市のスマートシティ化が進む中、セーフィーは「生活者の第3の目として1歩先の未来を見据えた意思決定の機会を実現し、多様化するニーズに応えてまいります」と話している。

輸送ネットワークをサイバー攻撃から守るShift5が57.7億円を調達

普段はあまり意識することはないかもしれないが、移動に使う電車や飛行機などの交通機関の背後には、電子機器やデバイス、データなどの広大なネットワークが張り巡らされており、そのおかげで電車は線路を走り、飛行機は空を飛ぶことができる。

たとえば米国時間2月8日に、5000万ドル(約57億7000万円)のシリーズB資金調達を発表したShift5(シフトファイブ)のような企業が、今日の交通ネットワークに不可欠なシステムを守ろうとしているのだ。Shift5によると、この分野は十分な支援を受けてはいないものの、急速に成長しているという。

輸送ネットワークは、列車や航空機、さらには戦車などの軍事機器の運行に不可欠な車載部品などの運用技術(OT)システムに依存しているが、かつては他と隔離されていたこれらのシステムがインターネットと接点を持つネットワークに徐々に加えられるケースが増えているため、サイバー攻撃を受けやすくなっている。

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OTネットワークへの攻撃は稀だが、OTシステムの障害は、数百万ドル(数億円)の損失やダウンタイムにつながり、また、事態が悪化した場合には安全上のリスクも生じる。米国政府のサイバーセキュリティ機関であるCISAは、重要インフラに対する脅威が高まっていると警告している。

しかし、OTシステムはその用途に応じて固有のものであることが多く、例えば戦車から部品を取り外してセキュリティの脆弱性をテストすることは現実的ではなく、また戦車を容易に入手することもできない。

Shift5はこの問題を解決するために、交通機関の企業やリーダーたちのOTネットワークに監視機能を提供し、全体的な攻撃対象を減らそうとしている。この監視機能は、脅威を検知し、インターネットベースの攻撃からシステムを守ることを目的としている。

その努力が実を結んでいるようだ。今回の資金調達は、前回の2000万ドル(約23億1000万円)のシリーズA資金調達からわずか数カ月後に行われた。2021年数百万ドル(数億円)規模の取引を行い、従業員数を倍増させたこともそれを後押ししたのだ。今回のシリーズBラウンドはInsight Partnersが主導し、シニアアドバイザーのNick Sinai(ニック・シナイ)氏がShift5の取締役に就任した。

Shift5は、今回のラウンドで調達した資金を、需要に対応するための人材への投資や、製品開発の強化に充てるとしている。

Shift5の社長であるJoe Lea(ジョー・リー)氏は「このいたちごっこは重要なインフラにも影響が及んでいて、防御側はその守備範囲を運用技術にまで広げなければなりません。この1年で証明されたことは、鉄道、航空、国防の各分野の主要な防御者たちが、先見性のあるリスクを認識し、コストを強いられる損害を未然に防ぐために動いているということです」と語っている。

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画像クレジット:Shift5

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(文:Zack Whittaker、翻訳:sako)

マイクロモビリティ2022:さらに洗練され、成熟し、テクノロジーを満載に

2021年は、コンセプト、ソリューションそして生き方としての「マイクロモビリティ」が定着し始めた年だった。

シェア式マイクロモビリティの増加と新型コロナ禍中の公共交通機関は、人びとに小型電気車両を自分で購入する可能性を考えさせることになった。その結果、2021年は電動自転車の年となり、7月までの12カ月間で売上高は240%増加した。この新しい習慣によって、都市は10年前なら本当に信じられなかったインフラストラクチャ計画を採用することとなった(パリを見て欲しい!)。

2021年は、人びと、特に都市の人びとが、電気自動車の登場よりも間違いなく大きいマイクロモビリティの炭素排出量削減への影響について、オープンに話し始めた年でもある。

2021年、シェア式マイクロモビリティ企業たちは、このような電動スクーターや電動自転車に向かい始めた考え方の変化を受け、市場での支配的な地位を利用して、その運用効率を高め、ハードウェアをより適切なものにしようとしてきた。

では以上のような背景を踏まえて、2022年のマイクロモビリティ分野の今後の展望を見ていこう。

みんなの電動自転車

特に米国などの国々では、新しい電動自転車の購入に対して最大900ドル(約10万3000円)の補助金が出されていることから、電動自転車のトレンドは2022年も続くと予想されている。しかし、このブームは個人消費者にとどまるものではない。Segway(セグウェイ)のグローバル・ビジネス開発担当副社長のTony Ho(トニー・ホー)氏によれば、マイクロモビリティ企業からの電動自転車の需要も大きく伸びているという。Segwayは、Lime(ライム)やBird(バード)といったシェア式マイクロモビリティの巨人たちに、電動キックボードや電動自転車を供給していることで知られている。

「Limeは当初、シェア自転車の会社でしたが、キックボードを始めるまではうまく行っていませんでした。キックボードの方が安価で、導入しやすいという理由もあります」とホー氏はTechCrunchに語っている。「今では、電動自転車の人気が高まっているようで、構成比が平準化し始めているようです。それに伴いシェア向け電動自転車の注文が多くなっています。また都市にとっても、もともとシェア自転車プログラムを持っていたわけですから、問題ありません」。

新しいVCマネーは枯渇する

BirdやHelbiz(ヘルビズ)のような大手企業が上場し、Limeも2022年の上場を約束しており、業界は全体として数社の大手企業に集約されてきた。そのため、VCの資金や新規参入者が増えるのではなく、現在の市場が成熟していくことが予想される。

ホー氏は「BirdとLimeのブームの後、投資家たちは、Coco(ココ)の歩道ロボット配達員のような、別のものに移ったと思います」という。「このビジネスに参入するにはまだかなりの資金が必要ですし、個人的には、小規模な事業者にとっては、特に都市部ではライセンス料を払い保険に加入する必要があるため、より困難だと思います。実はもう、小さなスタートアップ向けのゲームではないのです。最後の波を生き延びた者が、おそらくここに留まることになるのでしょう」。

残っている企業は、コストを下げ、より効率的で持続可能なものにして、市の規制に準拠するために全力を尽くしている。

だが……ライドシェア企業が再び登場するかもしれない。

ホー氏は「私たちが得ている注文と引き合いは、多くの企業が戦いに戻ってきていることを示しています。ですから、人びとがパンデミックから抜け出す来年には、マイクロモビリティが優先課題になるでしょう」という。「ライドシェア企業のような大手企業を含め、いくつかの企業が戻ってきています」。

2020年の夏は、パンデミックによるロックダウンの影響でマイクロモビリティは不調だった。たとえばUber(ウーバー)はマイクロモビリティのJump(ジャンプ)をLimeに売却し、その後両社の統合が進んだ。2020年5月には、Lyftも手を付けていた電動キックボードプログラムの多くを終了したが、もしホー氏の観察が正しければ、UberとLyftはすべての市場シェアを失う前に、ゲームに復帰しようとするかもしれない。

より多くAIが利用され、よりスマートな自動車の登場が期待される

都市は、キックボードが歩道に乗り入れたり、駐車したりするのをとても嫌がる。あまりに嫌がられるので、多くの企業が技術革新を行い、非常にスマートなスクーターを生み出している。Spin(スピン)、Helbiz、Voi(ボイ)などの企業は、カメラを使ったシステムをすでにテストしており、ライダーが歩道を走っていたり、歩行者にぶつかりそうになっているのを検知し、リアルタイムで走行を停止する機能まで備えている。Superpedestrian(スーパーペデストリアン)やBirdのように、高精度な位置情報を利用したアプローチを利用して、同様の高度なライダーアシスタンスシステムを実現しているところもある。企業がコストを抑える方法を見つけ、世界中の都市がこの楽しさを奪うテクノロジーの匂いを嗅ぎつけるようになれば、このトレンドはますます一般的になるだろう。

マイクロモビリティのADAS(先進運転支援システム)は、シェア市場を超えて広がっていくだろう。すでにStreetlogic(ストリートロジック)やTerranet(テラネット)などが、一般消費者市場で電動自転車ライダーがより安全に走行できるようにするために、潜在的な危険性を検知して衝突警告を出す機能持つコンピュータービジョンベースのシステムの製造に取り組んでいる。こうしたシステムは、自動車での移動を電動自転車での移動に置き換えたいと考えている一般的な人びとに、安心感と安全性を提供する。

「マイクロモビリティ」という言葉を生み出した業界アナリストHorace Dediu(ホレス・デディウ)氏は、マイクロモビリティの車両にセンサーを追加することが、企業にとってデータの収益化への道を開くことにもなるという。

デディウ氏は、TechCrunchの取材に対し「今後は、より多くのセンシングが行われるようになるでしょう。それは基本的にドライブレコーダーで行われ、多くのイメージングが行われることになるでしょう」と語った。「これが自動車の世界にやってくることは明らかですが、自動車の世界で起こることはすべてマイクロの世界でも起こりますし、多大な投資をしなくても1億台の車両に展開できるので、より早く起こることが多いのです」。

マイクロモビリティの車両の前後にカメラを設置することで、現在のドライブレコーダーのように全周囲を撮影することができます」とデディウ氏はいう。もしこれらのシステムがすでに歩道や歩行者専用道路を検知できているなら、路面状況を検知して、道路のメンテナンス問題に関する共有データベースを通じて都市行政側に知らせることができるだろう。あるいは、マイクロモビリティ企業がその情報をGoogleのような地図会社に売って、世界をもう少し良く映像化できるようにするかもしれない。

ユーザーからの動きを計測するトルクセンサなど、現在のマイクロモビリティができる他の機能を考えると、企業はウェアラブルデバイスに連携する「Peloton(ペロトン、オンラインフィットネス)のようなサービス」を提供できる可能性があるとデディウ氏は予測している。

マイクロモビリティとメタバース

「Meta(メタ)つまりFacebook(フェイスブック)や、Microsoft(マイクロソフト)やApple(アップル)は、頭に何かを装着している人とどうやって対話するかを探究するために、何十億ドル(何千億円)もの投資をしてきました」とデディウ氏は述べている。「私は、この2つの考えを単純に組み合わせて、どうせヘルメットをかぶるなら、スマートなヘルメットにしたらどうだろう?と言いたいのです。そして、せっかくスマートヘルメットをかぶるのであれば、そうしたくなるような刺激的でおもしろいものにしたいですよね?」。

街を移動する際に現実を拡張してくれるスマートバイザー付きのヘルメットは、ライダーが周囲の環境をより意識して安全を高められる可能性があるだけではなく、さまざまな体験を解放して人びとが外に出て動きたくなるようにすることができると、デディウ氏はいう。

「マイクロモビリティとメタバースは、お互いのために作られているのです」と彼はいう。「それは『見上げること』です。一方、車の体験の拡張は、下を向いて孤立していくことに他なりません。では、上を見るのと下を見るのとどちらがいいでしょうか?」。

注意:この組み合わせは2022年には起こらないかもしれないが、デディウ氏は今後数年の間に何らかの形で起こることを確信している。

新しく、より頑丈なフォームファクター

毎日キックボードや電動自転車、電動バイクに乗って仕事に向かう上で唯一の問題は、雨が降ったらどうなるかということだ。戦略アドバイザーでエンジェル投資家でもあり、ディウ氏と「Micromobility Podcast」(マイクロモビリティポッドキャスト)を共同ホストとして提供しているOliver Bruce(オリバー・ブルース)氏は、この問題を解決し、さまざまなユースケースに対応するために、消費者市場とシェア市場の両方で、新しい、よりヘビーデューティーで、閉じた屋根のある形状が登場する可能性があると述べている。

ブルース氏は、最近Tilting Motor Works(ティルティングモーターワークス)を買収したArcimoto(アーキモト)やNimbus(ニンバス)のような企業が、傾斜電気三輪車(方向転換の際に車体が傾く三輪車)の開発に取り組んでおり、2022年には市場に投入される予定だと語っている。

ブルース氏は、TechCrunchの取材に対し「COP26で話し合った気候変動に関する目標を真剣に達成するためには、新しい電気自動車が登場し、急速に普及する必要があります」と語った。「しかし、現在の状況で電気自動車を普及させようとすると、本当に大変なことになります。私たちにはその余裕がないのです」。

交通システムに組み込まれたマイクロモビリティ

ブルース氏は「2022年には、公共交通機関の一部にマイクロモビリティが組み込まれるようになり始めると思っています」という。「例えば地下鉄を降りて電動自転車に乗るようにすれば、お互いにメリットのある移動となります」。

ブルース氏によると、これは、世界中の都市(主にヨーロッパ)で私たちが目にしている、より多くの自転車専用道路を建設するインフラ事業の副次的影響の一部になるという。しかし、それはマイクロモビリティ企業が車両1マイルあたりのサービスコストを大幅に削減することにもつながる。

「マイクロモビリティ事業者が輸送機関に大量に移動距離を販売することで、その経済性はますます大きなものとなっていきます。そうした輸送機関は、地下鉄カードやアプリを使ってキックボードのロックを解除することができるのです。世界の都市の中には、これを公共交通機関に組み込むところも出てくるでしょう」。

マップとの連携強化

「おそらく2022年から先は、ソフトウェアの年になるかもしれません」とデディウ氏はいう。

今日、GoogleマップやMoovit(ムービット)のような移動計画や地図アプリは、ユーザーに提供する目的地までの複数の方法の中に、マイクロモビリティのオプションを統合し始めていている。このような統合により、マップが検索エンジンの役割を果たし、移動手段の上位ヒットを数秒で確認できるようになるはずだ。

「現在は、AからBに行きたいと指定すれば3つか4つの選択肢が出てきます、しかしそこに乗車に対する入札結果は提示されません」とデディウ氏はいう。「わたしはそこに15件の入札結果を見たいと思っています。乗車依頼をするたびにオークションが開催されるようになって、Google検索の結果のよう表示されて欲しいですね。こんな当たり前の話にもかかわらず、2022年を目の前にしてまだ実現されていないことにショックを受けています」。

「でもその主たる原因は仲介するプラットフォームがないからです。適切なAPIが欠けているのが原因なので、もしそれが実現すれば、シェアオペレーターがGoogleマップ上で入札する機会が爆発的に増えるはずです。そうなればマイクロモビリティから莫大な収益が発生するでしょう。こうして、マイクロモビリティの収益化は、発見を通して行われるようになるのです」。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

サイクリストの安全性のために自動運転車が守るべき基準を同技術のArgoが発表

自動運転車技術を提供するArgo AI(アルゴAI)が、権利擁護団体のLeague of American Cyclists(LAB)と共同で、自動運転車がどのようにサイクリストを識別し対応すべきかについて示すガイドラインを作成した。自動運転業界がテスト段階から商業化へと移行し、今後数年でより一般的になろうとしている今、他のAV企業が模範とできるような基準を設定しようというのが目的である。

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世界保健機関(WHO)の推計によると、毎年4万1000人のサイクリストが道路交通関連の事故で死亡している。自動運転車により大幅に減ると期待されている衝突事故だが、優れたコーディングがなければそれが叶うことはない。自動運転車は、発生し得る物体や状況を分類および特定する膨大なデータベースから学習する仕組みだが、Argoのガイドラインでは自転車、自転車用インフラ、自転車法に特に留意してモデルをトレーニングすることを重視している。

Argo AIの社長兼共同創業者であるPeter Rander(ピーター・ランダー)氏は声明の中で次のように話している。「コミュニティメンバーとの信頼関係を構築し、一貫した安全な行動によってサイクリストに安心感を与えられる自動運転システムを開発するための、当社の献身的な取り組みの一環としてこのガイドラインを作成しました。他の自動運転車開発者にもこのガイドラインを採用してもらい、リスクの高い道路利用者とのさらなる信頼関係を築いていきたいと考えています」。

現在、米国およびドイツの一部で自動運転テスト車両を運行しているArgoは、LABのコミュニティと連携して一般的なサイクリストの行動や車との関わり合い方ついての聞き取りを実施。ArgoとLABは、自動運転システムがサイクリストを検知し、サイクリストの行動を予測し、安定した運転を行うための6つの技術ガイドラインを策定した。

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サイクリストは明確な対象クラスであるべき

サイクリストを個別のジャンルとして扱い、分類すれば、自動運転システムが学習すべき多様な自転車画像が収集できる。システムはさまざまな位置、方向、視点、速度の自転車画像を使って学習する必要がある。またこれにより自転車やライダーの形や大きさの違いも把握できるようになるとArgoは伝えている。

「スクーターや歩行者とは異なり、自転車の動きには自転車ならではの特徴があるため、自動運転システム(SDS)が自転車を正確に検出し、知覚システム内のコアオブジェクトとして自転車を指定する必要があります」と同社はいう。

サイクリストの典型的な動きを読む

自転車は予測不可能な動きをするものである。車線を超えたり、自転車をひいて歩いたり、道路上の障害物を避けるためにちょこちょこ動き回ったり、一時停止の標識で止まったり、歩道から道路に飛び出したりと、その動きはさまざまだ。優れた自動運転システムは、彼らの意図を予測するだけでなく、それに応じた対応を準備しておく必要があるのである。

「SDSには、サイクリストのあらゆる動きを把握した、サイクリストに特化した行動予測モデルを活用する必要があります。自動運転車がサイクリストに遭遇した場合、サイクリストが進路に選択するであろう複数の軌道を生成し、SDSがサイクリストの行動をより適切に予測して対応できるようにするのです」。

自転車インフラと地域の法律を地図上に表示

自動運転システムでは、周囲の環境を把握するために高精細な3Dマップを利用することが多い。Argoはその環境の一部として、自転車インフラや自転車に関する地域や州の法律が表示されるべきだと考えている。これにより、自転車レーンを塞いでいる停車中の車を避けるために車線に入ってきたり、赤信号を無視したりする自転車の動きを自動運転システムが予測し、自転車レーンから安全な距離を保つことができるというわけだ。

サイクリストから見たシステムの動きは一貫性があり理解しやすく、安全性が高くなければならない

サイクリストがAVの意図を明確に理解できるように、自動運転技術はごく自然な動きをするべきである。追い越しや合流、曲がる準備をする場合に、片側の車線を走行しながら車両の位置を調整したり、方向指示器を使用したりするというのがその例である。

また自転車の近くを走行する場合は「現地の制限速度に応じた保守的で適切な速度を守り、現地の法律と同等以上の幅を保ち、その幅と速度を維持できる場合にのみ自転車を追い越すべき」とArgoは伝えている。

また、自動運転システムは自転車が転倒した場合に備え、車を止めたりそらしたりできるよう自転車と一定距離を保つべきである。

不確実な状況に備え、積極的に減速する

自動運転システムは自転車の意図、方向、速度の不確実性をよく理解する必要があるとArgoは考えている。例えば、車両と反対方向に走行している自転車が同じ車線を走っている場合なら、車両が減速するように訓練すべきだと同社は提案している。

実際、自動運転システムは、不確実な状況のほとんどのケースで車両の速度を下げ、可能であれば車両とサイクリストの間に距離を置くべきだ。特に自転車を対象としていない場合でも、不確実な場合に速度を落とすというのはAV開発の世界ではすでにかなり標準的なことになっている。

サイクリングシナリオのテストを継続

自動運転の安全性を向上させるには、テストを継続的に続けるというのが一番の近道だ。自動運転技術の開発者は、自転車に特化したバーチャルテストとフィジカルテストの両方を継続すべきだとArgoとLABは提案している。

「バーチャルテストプログラムは、シミュレーション、リシミュレーション、プレイフォワードという3つの主要なテスト手法で構成され、自律走行車とサイクリストの関わり合い方を常に徹底的にテストする必要があります。これらのシナリオは、車両とサイクリストの行動の変化に加え、社会的背景、道路構造、視界の変化なども考慮する必要があります」。

通常、クローズドコースや公道で行われるフィジカルテストとは、開発者がシミュレーションを検証し、システムがバーチャルと同じように現実世界で動作することを確認するためのものである。Argoは、開発者がAVをテストする際には可能性の高いシナリオだけでなく「エッジケース」と呼ばれる稀な状況も想定すべきだと考えている。多くの都市の複数の公道でテストを行い、多様な都市環境からシステムを学習させることで、レアケースとコモンケースの両方を生成することができるのである。

安全性を極め、世間に受け入れられるために

より多くのAVが道路を走る日を迎えるためには、社会から受け入れられるという大きなハードルを越える必要があるが、現時点で自動運転車両の安全性に納得している人はさほど多くない。実際、市場調査会社Morning Consult(モーニング・コンサルト)の調査によると、約半数の人がAVの安全性は人間が運転する車に比べてやや劣る、あるいはかなり劣ると答えている。

自動車をすべての道路利用者にとって安全なものにするというのは、単なる前半戦に過ぎない。Argo AIのような企業は、人々が自分たちの車を安全だと信じてくれるように説得しなければならないのである。そのためには、業界全体で安全対策を標準化することが1つの方法なのかもしれない。

画像クレジット: Jared Wickerham/For Argo AI

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

【コラム】米国のスマート道路への投資は好景気への道を開くだろう

米国の交通システムが直面している課題は数多く、年々悪化している。米国の道路への需要が高まるにつれて、安全性、効率性、持続可能性の問題も増大している。

歴史的な1兆ドル(約114兆円)規模のInfrastructure Investment and Jobs Act(インフラ投資・雇用法)は、数十年間で最大かつ広範囲に及ぶインフラパッケージの1つであり、この国の投資ニーズに対する巨額の頭金となって、すべての州で数千もの重要なプロジェクトの鍵を握ることになる。しかし、公的資金だけでは、特に5年間に配分される場合、人口や都市、そして道路を毎日走る車両の新たなニーズに対応するには不十分である。

例えば、老朽化し荒廃した高速道路、橋、道路の補修に1000億ドル(約11兆円)が割り当てられている。残念なことに、米国は長年にわたり道路の財源を不足させてきたため、公共道路の43%が劣悪あるいは並以下の状態に置かれており、その結果、道路補修の必要額として4350億ドル(約49兆円)の未処理分が生じている。道路の修理に特化した公的資金をもってしても、私たちは依然として必要とされるレベルに達していない。

交通インフラ産業は歴史的にリスク回避の傾向があり、公共交通機関の資金の利用可能性によって制限されてきた。しかし、今日に至るまで私たちすべてが依存してきている初期のテクノロジーネットワークの歴史的な例がいくつかあり、それらは国民経済に劇的なインパクトをもたらしている。これらのプロジェクトは、公共投資によって促進され、地元の公共事業機関による地域での実施を必要とし、大部分は民間組織によって提供され、維持されてきた。

初期の自動車を支えるために舗装道路が導入されたのは、100年と少し前のことである。州間高速道路網は、Dwight D. Eisenhower(ドワイト・D・アイゼンハワー)大統領が1956年のFederal Aid Highway Act(連邦補助高速道路法)に署名して以来「史上最大の公共事業」として知られている。毎日の移動、商業、文化の手段となっている。

この記事をコンピューターやタブレット、スマートフォンの画面で読むには、全国的な電力網やケーブル、携帯電話ネットワークの恩恵が欠かせない。私たちがより多くの生活をテクノロジーに依存し、信頼し、そして放棄するようになるにつれ、交通機関の研究者やスマートインフラのプロバイダーの多くが、安全性、効率性、持続可能性を向上させる創造的な新しい方法を取り入れている。

米国には国を横断する400万マイル(約644万キロメートル)余りの公道が存在する。スマート道路は、次世代の車両、人、都市のインフラを変革するための、わかりやすくアクセスしやすいソリューションである。古いテクノロジーを改良するために新しいテクノロジーを発明するという頻度は非常に高くなっている。道路をネットワーク化することは、テクノロジーを可能にするソリューションの1つである。

道路をデータと通信のプラットフォームに変えることで、オンライン小売業者がインターネットのトラフィックから得るのと同じレベルで、実店舗が車両向けのインサイトを捕捉するために使用できるような匿名性の高いデータが収集されるようになる。オンライン小売業者には、顧客の人口統計、ショッピングおよび購買習慣、市場動向、そしてトラフィックパターンについての情報がもたらされている。インターネットのインフラとサービスにより、トラフィックデータが自動的かつ受動的に収集されるのである。

これに対し、実店舗は基本的に顧客ベースについて何も把握していない。起業家は数百万ドル(数億円)を現地経済に投資するが、その前に何カ月もかけて場所を見つけて調整し、在庫を確保し、人員を配置する。こうした一連の作業を経て、1つの取引が成立する。道路から収集された匿名データは、事業主がオペレーションを改善し、従来の小売業者がオンライン小売業者との競争力を維持するのに役立つだろう。

このようなスマートインフラサービスを活用すれば、道路はその新しいケイパビリティからのキャッシュフローに依存することで、自己資金を得ることができる。携帯電話やインターネットのインフラ市場が概ね自立しているのと同様の構図である。これは、一部の公道において持続可能な財源と自己資金調達が実現可能になることを意味しており、都市は限られた予算を道路から他のコミュニティのニーズに振り向けることができる。

ブロードバンドアクセスのための650億ドル(約7兆4200億円)のインフラ計画は、農村地域や低所得世帯、部族コミュニティのためのインターネットサービスを改善することを目的としている。この計画には、電気自動車の充電ステーションに75億ドル(約8560億円)が割り当てられており、気候変動を抑え、石油への依存度を減らすために電気自動車の普及を加速させることを目指している。

スマート道路が、5GワイヤレスアクセスやワイヤレスEV充電など、当初からソフトウェアアップグレードが可能なように設計されたケイパビリティのメニューを提供するなら、わが国の道路網は進化するテクノロジーに歩調を合わせることができるだろう。道路はすでに農村地域に整備されているので、新たに基地局を建設する必要はない。ワイヤレスEV充電機能を道路に組み込むことで、ガソリンスタンドのように充電ステーションを設置する必要はなくなる。実際、EVの所有者やドライバーは、道路を離れて充電に接続しなくても済むようになる。

こうした道路を介して提供される商用サービスの利用料金、すなわちネットワーク事業者が支払う通信サービス、自動車所有者が支払うEV充電やナビゲーション、あるいはそれらを利用する事業者が支払うデータサービスなどの利用料金を評価することで、スマート道路はこれらの新たなケイパビリティから得られるキャッシュフローに基づいて、自らの費用を支払うことが可能になる。

スマート道路導入の主な課題は、公金ではリスクをとることはできないし、とるべきではないというマインドセットにパブリックオーナーが陥っていることである。歴史的に公的資金はリスク資本であり、そしてこれらのオポチュニティにおける最初の資金でもある。私たちはこのリスクフリーのマインドセットからパブリックオーナーを脱却させ、公共機関がインフラを通じて経済発展を可能にすることはできないし、そうすべきではないという考えに立ち向かう必要がある。

大規模な経済開発を可能にするインフラ整備のオポチュニティに公共投資を投入することにより、私たちは100年前に舗装道路を、60年前に州間道路を建設した。したがって、それはすでに検証されているアプローチであり、米国人が毎日使用している顕著な実証ポイントもいくつか存在している。これらは新しい方法ではない。私たちが何度も行ってきた古いやり方であり、社会の新たなニーズに応じてアップデートされる形でパッケージ化されているものだ。

もう1つの課題は、いかに長期にわたる公共事業を市場活動と比較するかである。公共機関が道路工事許可証を発行するのに18カ月かかるが、ソフトウェアとハードウェアの世代全体が通り過ぎるのを見ることはできても、1つのショベルも地面を打つことはない。公共事業の速度が遅いということは、私たちがはるかに先を見なければならないことを意味する。短期的な目標はプロジェクトが設計段階を終える前になくなってしまうため、焦点を合わせることができない。公共事業の範囲、規模、速度(またはその欠如)は、私たちが非常に長い計画対象期間を設定しなければならないことを意味する。

わが国の道路への投資は、繁栄する経済を成長させる鍵であり、国の将来にとって不可欠である。各都市は現在、都市化への対応、交通流量の合理化、汚染の削減、安全性の向上という重圧に直面している。

スマート道路のテクノロジーは、都市計画者や政府がこれらの課題に正面から対処することに貢献する。交通管理から歩行者や車両の安全性、環境モニタリングに至るまで、モノのインターネット(IoT)は道路をよりインテリジェントに、効率的に、そして適切に管理できるようにする。

インフラ投資・雇用法は、わが国のインフラの現状に取り組むための第一歩である。この投資がどのように使われるかが変化をもたらす。もしそれが単に近年のやり方であるというだけの理由で、老朽化したプロセスに一時しのぎの解決策を適用するために配布されるならば、そのお金は急速に使い果たされ、意味のある改善もないまますぐに忘れられてしまうだろう。

だが、この投資を革新的なインフラプロジェクトの頭金として使ったとしたらどうだろう。その場合私たちには、より強固な未来に向かって前進し、新しいテクノロジーを容易かつ迅速に統合できる、一貫性のある有意義なアップグレードの適切なケイデンスを構築するオポチュニティが用意されている。

編集部注:本稿の執筆者はTim Sylvester(ティム・シルベスター)氏は建設業界で20年の経験を持つ電気・コンピュータエンジニアで、Integrated Roadwaysの創設者兼CEO。

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(文:Tim Sylvester、翻訳:Dragonfly)

【コラム】都市のモビリティを改革する可能性を秘めたコンピュータービジョンソフトウェア

本稿の著者Harris Lummis(ハリス・ルミス)氏はAutomotusの協同ダウンダーでCTO。

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2019年10月、ニューヨーク・タイムズは、ニューヨーク市内では毎日150万個の荷物が配達されていると報じた。顧客にとっては便利で、世界のAmazon(アマゾン)にとっては利益になるが、これほど多くの箱を倉庫から顧客に届けることは、都市にとってかなりの外部不経済を生み出す。

タイムズは「利便性の追求は、ニューヨークをはじめとする世界中の都市部の交通渋滞、道路の安全性、汚染に大きな影響を与えている」と報じた。

この記事が発表されて以降、新型コロナウイルスの世界的流行により電子商取引は興隆を極めており、専門家はこの上昇傾向がすぐに弱まることはないと考える。戦略的な介入がなければ、私たちの都市はますます深刻な交通問題、安全問題、汚染物質の排出に直面することになるだろう。

都市部の道路には、何十年もの間、同じような問題がつきまとっている。しかし、テクノロジーがようやく追いついてきて、密集した都市の道路における混雑、汚染、駐車違反の取り締まりなどの課題に対処する新しい手段を提供できるようになってきた。

常にそうなのであるが、効果的な解決策は、まず問題を引き起こしている詳細な状況を理解することから始まる。今回のケースでは、問題に対処する方法は、街灯カメラを使って路上駐車や道路交通を観察することで、問題点を簡単に把握することである。

公共の場を監視するためにカメラを設置すると、すぐに熱狂的なプライバシー擁護派(私もその1人だ)の怒りを買うかもしれない。だからこそ、私の会社と同類の企業は、プライバシー・バイ・デザインのアプローチで製品開発を行っている。当社の技術は、映像をリアルタイムで処理し、顔やナンバープレートを認識できない程度までぼかしてから、社内や公的機関に画像データを提供することで、監視目的での悪用に対する懸念を払拭する。

これらのカメラの目的は、監視することではなく、実際の都市の道路から得られる具体的なデータを活用して、重要な洞察をもたらし、路上の駐車スペースにおける自動化を促進することだ。Automotusのコンピュータービジョンソフトウェアは、すでにこのモデルを使って、前述のような路上に氾濫する商用車の管理手段を都市に提供している。

この技術は、駐車場の回転率を最適化したり、インセンティブを与えたりするためにも利用できる。ある調査によると、ニューヨーク市のドライバーは、駐車スペースを探すために年間平均107時間を費やしている。ドライバー1人当たりの無駄な時間、燃料、排出ガスのコストは2243ドル(約24万円)に上り、ニューヨーク市全体では43億ドル(約4400億円)にもなる。このような無駄な動きは、米国国内だけでなく、世界中で起こっている。駐車スペースの需要に関する包括的なデータを収集することで、都市は、駐車スペースの供給と車両の実際の使用が適切に合致するような駐車政策を策定することができる。

ロヨラ・メリーマウント大学のキャンパスで実施したAutomotusの実験では、データを利用して駐車ポリシーを調整したところ、駐車場を探すドライバーによる交通量が20%以上減少した。データを利用して駐車スペースを最適化することで、駐車場の利用効率が上がり、駐車場を探す時間が短縮され、交通渋滞の解消につながる。また、駐車スペースの空き状況をリアルタイムに把握できれば、アプリやAPIを介してドライバーに空き駐車場を案内することも可能だ。

当社は、路上の駐車スペースにおけるあらゆる形態の活動に関する正確な最新情報を提供することで、都市プランナーがその都市の駐車スペースの時間的・空間的パターンを完全に理解できるようにしている。これによりプランナーは、その都市の特性に合わせた駐車スペース政策について、十分な情報を得た上で決定することができる。

おかげで「ここでどれくらいのタクシーからの降車が起きているか?」「火曜日の朝、どこの配送トラックが二重駐車(路肩に止めてあるクルマの横にさらに止めること)をしているのか?」といった質問に簡単に解答できるようになった。漠然とした試行錯誤的手法で政策を策定する時代は終わったのだ。乗客用駐車場、配送車専用ゾーン、タクシーエリアの位置、駐車料金の最適な設定、違反時の適切な罰則などについて、豊富な情報を基にした的確で影響力のある判断が可能になる。

この技術は、配送業者にとってもメリットがある。駐車スペースの空き状況をリアルタイムで把握し、予測することができれば、ルートの効率が向上し、コスト削減につながる。配送業者は罰金を払って路上駐車するのではなく、駐車スペースでの利用時間に応じて駐車料金を払えばよい(米国では税金控除の対象となる)。

オハイオ州コロンバスで行われた調査では、指定搬入ゾーンを設けることで二重駐車の違反が50%減少し、商用車が路上の駐車スペースに停車する時間が28%短縮された。FedExやAmazonのような企業にとっては、配送の効率が飛躍的に向上することでコスト削減につながり、その結果、駐車スペースの利用に適正な料金を支払い、浮いた資金を消費者に還元することができる。

現在は、いくつかのトレンドが相互に関連しあっており、新しい技術を道路や路上の駐車スペースに適用するには、特に好都合な時期だと言える。新型コロナの流行前、多くの都市は、人々が相乗りを利用するようになったことで、駐車場からの収入の減少に直面していた。現在、米国の何千もの自治体が、新型コロナの影響で大幅な予算不足に陥ることが予想されている。また、世界経済フォーラムの報告書によると、2030年までに都心部では商業用配送車両の数が36%増加すると予測されている。当社の調査によると、駐車違反の50%以上が商用車による違反であり、取締りを受けていないことが分かっている。

コロンバス市が2016年の米国政府の「Smart City Challenge」で優勝したのは偶然ではない。バラク・オバマ前大統領が2015年に「スマートシティ」構想の一環として1億6000万ドル(約176億4500万円)以上を拠出した際、プログラムの主要な目標の1つとして渋滞と汚染の削減が掲げられた。これらの目標を達成するためには、駐車場や路上の駐車スペースの管理を改善することが重要だ。ドナルド・トランプ前大統領は、大規模なインフラ計画を掲げて選挙戦に臨んだが、この分野での彼の公約の実現は不十分なものだった。米国政府の支援がないにも関わらず、サンタモニカなどの都市では、ダウンタウンの中心部にゼロエミッションの配送ゾーンを実験的に設置するなど、有望な取り組みが行われている。

ジョー・バイデン大統領は、米国が気候変動対策と都市交通の近代化の両方にとって必要なインフラを構築する計画の概要を発表した。この計画には、電気自動車用の公共充電ステーションを50万台分用意すること、ドライバー、歩行者、自転車などが安全に道路を共有できるように都市を変革すること、重要なクリーンエネルギーソリューションに投資することなどが含まれている。

路上の駐車スペースの管理技術は、米国政府や地方自治体が都市の汚染を減らし、生活の質を向上させるために活用できる選択肢の1つだ。次期政権が、都市のモビリティの課題を解決するためのこの斬新なアプローチを支持してくれれば、米国のインフラは単に近代化されるだけでなく、未来への準備が整うことになる。

私個人としては、この改革が実現することを願っている。私たちの国の健康、安全、そして繁栄の共有は、これにかかっているのだ。

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タグ:コラムコンピュータービジョン交通Automotus駐車スマートシティ

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(文:Harris Lummis、翻訳:Dragonfly)

配送サービスの急増で混雑する道路の路肩スペース管理を請け負うスタートアップAutomotusに投資家も注目

荷物の積み下ろしをする商用車やギグ・エコノミー・ワーカーの配達業務によって、道路の路肩スペースはますます狭くなっている。この問題は、新型コロナウイルスの影響でオンデマンドの配送サービスが増えたことで、さらに深刻化している。

この需要と供給の問題を解決するため、近年はCoord(コード)やcurbflow(カーブフロー)などのスタートアップ企業が続々と登場している。3年前に創業したAutomotus(オートモータス)もその1つだ。同社はサンタモニカ、ピッツバーグ、ワシントン州ベルビュー、イタリアのトリノなどの都市で事業を展開し始めており、ロサンゼルスでもプロジェクトが進行中だ。

投資家もそれに注目している。都市の路肩を監視・管理するためのビデオ解析技術を開発したこの会社は、2021年2月にQuake Capital(クウェーク・キャピタル)、Techstars Ventures(テックスターズ・ベンチャーズ)、Passport(パスポート)に買収されたNuPark(ニューパーク)の共同創業者でCEOのKevin Uhlenhaker(ケビン・ウーレンヘイカー)氏、Baron Davis(バロン・デイビス)氏らが主導するシードラウンドで、120万ドル(約1億3000万円)を調達したと発表した。同社CEOのJordan Justus(ジョーダン・ジャスタス)氏は、総調達額が230万ドル(約2億5000万円)になったと、TechCrunchに語った。新たな投資家には、Ben Bear(ベン・ベア)氏、Derrick Ko(デリック・コー)氏、マイクロモビリティ企業Spin(スピン)のZaizhuang Cheng(ツァイツァン・チェン)氏などがいる。

このスタートアップはまだ小さく、フルタイムの従業員はわずか11人。しかし、ジャスタス氏は新たに調達した資金を、新しい市場への進出や従業員の増員に充てると述べている。

Automotusは、コンピュータビジョン技術を用いて、ゼロエミッション車や商業配送車専用に指定されている駐車スペースの映像を記録する。同社のソフトウェアは、リアルタイムで路肩の使用状況を分析したり、違反駐車している車両があれば取締担当者に通報するなど、さまざまな機能を備えている。都市の職員はウェブアプリケーションを使ってこれらの分析結果にアクセスできる。その一方で、事業者の商用車は、オープンAPIやモバイルアプリを利用して、駐車可能なスペースの情報を得ることができるという。

画像クレジット:Automotus

例えば、新たに発表されたサンタモニカ市とLos Angels Cleantech Incubator(ロサンゼルス・クリーンテック・インキュベーター)によるパイロットプロジェクトでは、同市の1平方マイル(約2.59平方キロメートル)のゼロエミッション配送区域を監視する。Automotusは、配送効率、安全性、混雑、排出量について、ゾーンの影響を評価するための匿名データを提供し、ゼロエミッション配送区域のドライバー全員がリアルタイムで駐車可能なスペースの空き状況データを利用できるようにする。

2017年末に設立され、Techstarsの卒業生でもあるこのスタートアップは、主にそのエンフォースメント機能の収入分配で収益を上げている。つまり、商用車が特定の区域に駐車する際に自動的に請求される支払いの一部や、駐車違反の罰金の一部を得ているわけだ。分析機能は、都市が政策を設定したり送迎ゾーンを指定する際には役立つかもしれないが、ジャスタス氏のいう「最大の機会」はエンフォースメント機能から提供される。

ロサンゼルスのLoyola Marymount University(ロヨラ・メリーマウント大学)は、Automotusの技術を使って、駐車場の取締りを完全に自動化した。Automotusによると、これによって取締りの効率と収益は500%以上向上し、さらに駐車場の回転率が24%向上、交通量は20%減少したという。

「商用車のオペレーターにとって、エンフォースメントの要素は非常に重要です。なぜなら、路肩の駐車可能なスペースが効率的にうまく管理されていればこそ、彼らの本来の目的である商業での利用が可能になるからです」と、ジャスタス氏は語っている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Automotus交通資金調達

画像クレジット:Automotus

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)