AIが核融合を操る力を獲得した。でも大丈夫、これは朗報だ

とある研究グループが、核融合研究に使用される高出力のプラズマ流を磁気的に扱う方法をAIに教えた……おっと、慌てないで欲しい。慌てて手にした電磁パルス砲やドライバーはしまい込んでも大丈夫だ。これは間違いなく良い成果で、来るべきロボカリプスで人類に対して使用される恐ろしい武器ではない。

このプロジェクトは、Google(グーグル)のDeepMind(ディープマインド)とローザンヌ工科大学(EPFL)の共同プロジェクトであり、数年前に前者のAI研究者と後者の融合研究者がロンドンのハッカソンで出会ったときに始まった。そのときEPFLのFederico Felici(フェデリコ・フェリーシ)氏は、彼の研究室がトカマクのプラズマ維持に関して抱えていた問題について説明した。

何気ない日常的な愚痴に過ぎない。しかし、それがDeepMindの琴線に触れて、両者は仕事を始めた。

核融合の研究にはさまざまな方法があるが、いずれも数億度という非常に高い温度で形成されるプラズマを利用している。危険そうに聞こえるし、実際にもそうなのだが、トカマクはそれを制御し、内部で起こっている核融合活動の詳細な観察を可能にする1つの方法なのだ。トカマクは基本的にはトーラス(ドーナツ)のような形をしていて、その中を加熱したプラズマが円を描くように移動するが、その経路は磁場によって慎重に制限されている。

誤解のないように言っておくと、これはクリーンなエネルギーを無限に供給するという噂の核融合炉ではない。エネルギーを生産するわけでもないし、もし突然起動したら近くにいてはいけない。これは、不安定だが将来性のあるこれらのプロセスがどのように制御でき、有用な目的にどのように利用できるのかを、テストし観察するための研究ツールなのだ。

特に、スイスプラズマセンターの「可変構成型」トカマクは、単にリング状にプラズマを閉じ込めるだけでなく、研究者がその形状や経路を制御することができる。1秒間に磁気パラメータを何千回も調整して、リングの幅を広げたり、薄くしたり、高密度にしたり、希薄化させたりと、リングの品質に影響を与えるあらゆる要素を調整できる。

画像クレジット:DeepMind & SPC/EPFL

機械の磁場の詳細な設定は、当然ながら事前に決めておかなければならない。設定方法を間違った場合には、大きな損害を被る可能性があるからだ。この設定は、チームが長年にわたって改良してきたトカマクとプラズマの強力なシミュレーターを使って行われる。しかし、フェリーシ氏はEPFLのニュースリリースでこう説明している。「制御システムの各変数の正しい値を決定するには、今でも長時間の計算が必要です。それこそが、DeepMindとの共同研究プロジェクトの出番となる場所なのです」。

このチームは、まず機械学習システムに、ある設定がどのようなプラズマパターンを生み出すかを予測するように学習させ、次に望ましいプラズマパターンから逆算して、それを生み出す設定を特定した(と簡単そうに書いたが、このようなAIアプリケーションにありがちなこととして、実際の実現は相当大変だった)。

米国時間2月16日発行のNature(ネイチャー)に掲載された論文によれば、このアプローチは大成功を収めたという。

今回のアーキテクチャは、高いレベルで指定された制御目標を満たすと同時に、物理的および運用上の制約を満たしているのだ。このアプローチは、問題の仕様記述に対してこれまでにない柔軟性と汎用性があり、新しいプラズマ設定を生み出すための設計工数を大幅に削減できるという:私たちはこのTokamak à Configuration Variable(構成可変型トカマク)を使うことで、従来の細長い形状に加えて、負三角(negative triangularity)や「スノーフレーク」(snowflake)などの高度な形状を含む、多様なプラズマ形状の生成と制御に成功している。

以下にこのモデルが作り出せたさまざまな形状や構成の例を紹介する。

トカマクの「ドーナツ」をスライスした、内部とビームの断面図(画像クレジット:DeepMind & SPC/EPFL)

これは重要な研究だ、なぜならこのようなプラズマを使って実験するには、電力が必要なのはもちろん、非常に多く(数百万単位だ考えて欲しい)の微調整が必要であり 、すべてを手動で構成することはできないからだ。例えばある理論が2つのストリームを必要とし、一方が他方より22%大きい場合、それを生成するための理論的な設定を「従来の」手法(ご想像の通り、これもすでに非常に複雑なデジタルシミュレーションだ)を利用して案出するには、数週間または数カ月かかることがある。しかし、AIはそれに比べるとほんのわずかな時間で良い組み合わせを見つけ出し、その場で解決策を生み出したり、人間の監査役に有力な作業の出発点を与えたりすることができる。

また、安全面でも重要な意味を持つ。というのも、人間は1~2秒の間に異常を封じ込められるような設定を、即興では行えないからだ。しかし、AIならばリアルタイムに設定を変更して損傷を防ぐことができるかもしれない。

DeepMindの研究者であるMartin Riedmiller(マーティン・リードミラー)氏は、これが「初期の段階」であることを認めているが、もちろんそれは科学におけるほぼすべてのAIアプリケーション全体に言えることだ。機械学習は、数え切れないほどの学問分野で、強力で汎用性のあるツールであることが証明されつつある。しかし、優れた科学者のように、彼らはすべての成功を鵜呑みにせず、その先のより自信を持てる結果を待ち望んでいるのだ。

画像クレジット:DeepMind & SPC/EPFL

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

AI画像認識で食事内容をモニターして糖尿病を改善するYes Health

Yes Healthは機械学習とコンピュータービジョンを利用して写真から食事の内容を認識し、糖尿病、肥満などの原因となる生活習慣を改善して医療コスト削減につなげようとしている。

AIテクノロジーをベースとしたYes Healthのアプローチに対して、Khosla Venturesがリードしたラウンドで600万ドルのベンチャー資金が投じられた。

Yes Healthのユーザーは毎日の食事内容をいちいちシステムに入力する必要がない。単に食事の写真を撮るだけでテクノロジーが入力を自動化する。同社のソフトウェアは画像からどういう食事か認識し、ユーザーやが健康管理の状況をモニターするのに役立つデータに変換する。

セールスポイントの一つはユーザーの使いやすさだが、もう一つは処理の全自動化だ。 人間の専門家が食事内容の報告を受けて判断するのではなく、コンピュータ・ビジョンがデータを生成し、システムが分析するため、サービスのコストが大きく削減できる。つまりユーザーが支払わねばならない料金も引き下げられる。

ファウンダーはPayPalの元幹部、Alexander Petrov(アレクサンダー・ペトロフ)氏で、自身が前糖尿病と診断されているという。Yes HealthはVirta HealthやOmadaなどが開発した療法を取り入れており、患者の自己管理を助ける。

ペトロフ氏は「他のサービスとの最大の違いは、ユーザー別のカスタマイズのレベルが高く、使い続けることが容易なユニークなシステムとなっていることだ。これを実現しているのが画像ベースの速攻アプローチだ…テキストが利用できるのはもちろんだが、画像を通じてデータをキャプチャし、システムに分析させ共有することができる」と述べている。

同社がスタートしたのは6年前だが、現在はカリフォルニア州の健康保険と医療のネットワークであるBlue Shield of Californiaなどと提携している。同氏は「Yes Healthには数万人の有料会員がいるが、目標は数百万人のレベルに達することだ」という。

消費者は健保などヘルスケア・サービスの一部または直接契約によってYes Healthを利用することができる。。同社は扱おうとしている市場は巨大だ。CDC(米疾病予防センター)のデータによると、2018年には3400万の米国人に糖尿病があり、8800万人が糖尿病予備軍だった。糖尿病患者の医療費は年間3270億ドル(35.兆円)という巨額に上る。一人当たりの医療支出も平均の2.3倍に達するという。

新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックでこうした問題は新たな深刻さを帯びてきた。研究によれば、糖尿病や肥満などは新型コロナウイルスの重症化のリスクを高め、死亡率の増加をもたらしている可能性がある。

Khosla Venturesの創立パートナーでマネージング・ディレクターのSamir Kaul(サミル・カウル)氏はYes Healthへの投資を発表した声明で次のように述べている。

「(新型コロナウイルスの流行で)米国人これまで以上に強くは健康を意識するようになった。デジタルヘルスはイノベーティブなテクノロジーにとって最も重要な市場の1つになっている。Yes Healthはモバイルアプリを駆使したAIベースのソリューションにより、糖尿病のような困難で費用のかさむ生活習慣病を改善することに実績を挙げている。これは(Khosla Venturesの)ヘルスケアに関する方針に沿うものだ」。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

マイクロソフトのナデラCEOが「コンピューティングの未来はエッジにある」と講演

Microsoft(マイクロソフト)のCEOであるサティヤ・ナデラ氏は、ワシントンで開催されたカンファレンス「Microsoft Government Laders Summit」で講演し、Azureクラウドを「世界のコンピューター」だとしたものの、「エッジコンピューティングこそ未来だ」と述べた。

Amazon(アマゾン)やGoogle(グーグル)などクラウドコンピューティングを主力業務とするライバルは「Windowsを持つマイクロソフトのポジショントークだ」と反論するかもしれないが、多くの企業はクラウドに完全に移行してはいない。

ナデラ氏は「コンピューティングはまずローカルで実行され、抽出されたデータがAIや機械学習のような強力な能力を必要とする処理のためにクラウドに送られる」からだとその意味を説明した。情報はクラウドに出て行く前にローカルに入ってこなければならない、ということだ。

実際、ナデラ氏が指摘するように、コンピューティングの将来は「ローカルかクラウドか」というように二分できるものではない。エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングは相互に補完する関係にある。ナデラ氏は「新しいコンピューティングのパラダイムはインテリジェントクラウドとインテリジェントエッジによって動かされる」という。

ナデラ氏はこう述べている。

エッジ・コンピューティングのコンピューティング全般に与える影響を真に理解するめには2030年までにインターネットには500億のデバイスが接続されることになると予測したレポートを吟味する必要がある。これは驚くべき数字だ。現在我々のWindowsマシンは10億台ほどある。スマートフォンが数十億台あるだろう。これが2030年には500億台になっているだろうというのだ。

この調査が予測する500億台の大半はIoT(Internet of Things)デバイスだろう。こうしたデバイスが莫大なデータを生み出す。こうしたデータの奔流を処理するためには従来とは全く異なる方法を考え出さねばならないだろう。ナデラ氏は「エッジデバイスは我々の身の回りのあらゆる場所に存在することになるため、あらゆるビジネスプロセスにおけるコンピューティングについての考え方を大きく改める必要がある」という。ナデラCEOは「ユースケースが(聴衆の多くが関わっている)公共部門であるか民間ビジネスであるかどうかにかかわらず、データの生成が爆発的に増加するにつれて、人工知能による処理が必須となる」という。

ナデラ氏はこれによって人工知能の新たなユースケースが出現するだろうとして次のように述べた。

もちろん、豊富なコンピューティングリソースが利用できるなら、データとAIを組み合わせた新しい処理アセットを構築するできる。これは単一のアプリケーション、単一のエクスペリエンスであってはならず、既存のAIに頼ったものであってもいけない。つまり、大量のデータを処理してそこからAIを構築する能力が必要とされる。

ユーザーがこのような処理にAzureやWindowsなどMicrosoftのプロダクトを使ってくれるならナデラ氏は大いにハッピーだろう。エッジツールであれば、IoTからのデータをローカルに集約するData Box Edgeが2018にリリースされている。実際、マイクロソフトのプロダクトをするかどうかに関わらず、ナデラ氏の見通しは正しいものと思われる。

コンピューティングがエッジにシフトするにつれ、ベンダー企業が提供するテクノロジーやサービスがいかに広範囲であれ、ユーザーが単一のベンダーに縛られることは少なくなるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

敵を知るには敵になろう!向学のためにフェイクニュースを自分で書くAI

今日、メディアが抱えている最大の問題は、いわゆる「フェイクニュース」。それは表面的に本物を装うという点で大変に悪質だ。AIを使ったツールがフェイクニュースの判別に役立つと言われているが、それを可能にするための最良の方法は、AI自身にフェイクニュースの書き方を教えることだと研究者たちは気がついた。それほど危険なことには感じられないかもしれないが、これは諸刃の剣だ。

「Grover」は、ワシントン大学とアレン人工知能研究所(AI2)のコンピューター科学者たちが開発した、フェイクニュースの執筆に大変に長けた新型のシステムだ。いろいろな話題を、いろいろなスタイルでフェイクニュースに仕立てることができる。その直接的な効果として、フェイクニュースの見極めが得意になったことがある。このモデルに関する論文はこちらで読める。

フェイクニュース執筆システムのアイデアは、これに始まったものではない。実際にOpenAIは、同団体が開発したテキスト生成AIを世に送り出すのは大変に危険だと話し、波紋を呼んだことがある。しかし、Groverの開発者たちは、フェイクニュースを生成するツールを公開して学習させていくことは、フェイクニュースとの戦いを有利にする以外の何者でもないと信じている。

OpenAIは非常に優れたテキストジェネレータを開発したが、そのままリリースするのは危険すぎると考えている

「これらのモデルは、今のところ深刻な害を及ぼす力はないと私たちは考えています。数年後には、そうなるかも知れません。でも今はまだ大丈夫です」とこのプロジェクトのリーダーであるRowan Zellers氏は私に話してくれた。「公開が危険とは考えていません。むしろ、より強力な防衛力を身につけるためには、特にこの問題を研究している者にとって公開は必須です。セキュリティー、機械学習、自然言語処理といったすべてのコミュニティと論議する必要があります。モデルを隠すべきではありません。何事もなかったかのような顔をして削除することもできません」

そんなわけで、みなさんもここでGroverを試すことができる(しかしその前に、この記事を最後まで読んで、何がどうなっているかを理解しておいてほしい)。

貪欲な読者

このAIは、本物のニュース記事の膨大なコーパスを摂取して作られた。RealNewsという名のデータセットがGroverとともに紹介されている。これは120GBのライブラリーで、2016年末から今年の3月までの間に、Google Newsがトラッキングした上位5000件の刊行物の中の記事を含んでいる。

Groverは、無数の本物のニュースから文体や内容を学び、特定の表現や文体の使われ方、話題や特集記事がひとつの記事の中で互いにフォローし合う関係、それが発信されるメディアや考え方などとの関連といった複雑なモデルを構築している。

これは、「敵対関係」システムを使って行われる。そこでは、モデルのひとつの側面が内容を生成し、別の側面がその本当らしさを評価する。もし基準に満たなかったときは、ジェネレーターは記事を書き直す。それにより、何が本当らしくて、何がそうでないかを学んでゆく。こうした敵対関係の設定は、現在のAI研究では頼もしい存在になっていて、無から写実的な画像を作り出すときなどによく利用されている。

モナリザが眉をひそめる、機械学習が昔の絵画や写真に命を吹き込む

Groverは、単純にランダムに記事をはき出すわけではない。高度にパラメーター化されているため、出力は入力に大きく左右される。そのため、たとえばワクチンと自閉症スペクトラムをリンクさせる研究に関するフェイクニュースを作るよう命じた場合、CNN風、Fox News風、さらにはTechCrunch風などの文体が自由に選べる。

いくつか作らせた記事を一番下に掲載したが、最初に試したものをここで紹介しよう。

歴戦の起業家Dennis Mangler氏がブロックチェーンベースのドローン配送の開発に600万ドルを調達

2019年5月29日 – Devin Coldewarg

ドローン配送、特に目新しくはないが、これは多くの疑問を投げかける。その技術の信頼度は?サービスと妨害の問題は炎上しないか?

ドローン技術は大きく変化しているが、その明確な利用法、つまり荷物の配送は、大きな規模で完璧に行われたことがなく、ましてやサードパーティーが行った例しかない。しかし、それは変わろうとしている。

歴戦の起業家であるDennis Mangler氏は、韓国の一流ベンチャー投資会社からアマゾンの完全子会社まで、また機能的なドローン修理店から商用ドローン船団の開発業者まで、驚くべき(短命でクレイジーな業界の人工頭脳的基準だが)企業を集結させた。

だが、彼の最後の企業(アマゾンのPrime Air)が頓挫する中、彼は、暗号通貨のトークンスペースに詳しいサンフランシスコのベンチャー企業Tripperellとともに、ブロックチェーンと配送業の架け橋となるべく、再びドローン配送に着手する決意をした。

彼らが構築しようとしているシステムは理に適っている。Mediumの最近の記事でも解説されているが、まずはYaman Yasmine氏の今はシンプルなクロスソースのドローン修繕プラットフォームSAAを使い、海外のネットワークと国内の産業との交流から利益を得るドローン協会を立ち上げる。

そこから彼らは、独自のスマートコントラクトで商用ドローンを運用し、配送業務を行えるようTripperellを形作っていく。

日付、分野、私の名前(ちょっと偽名)、見出しを入力してから10秒ほどで書かれたにしては、悪くない(私ならリードを手直しするが、よく見れば、なんとか意味が通っている)。

Groverは私のことは知らないし、TechCrunchとは何なのかも知らない。しかしそれは、ある特定のデータを別のデータと関連付けている。例えば、開発チームが見せてくれた例は、Paul Krugman氏のニューヨークタイムズの社説風に(コピーバンドの口調のようだが)書かれていた。

「何ひとつハードコードはされていません。モデルにはPaul Krugman氏が誰なのかも伝えていません。しかし、Groverはたくさん読んで学んだのです」とZellers氏は私に話した。生成された記事が、指定の分野と著者に関連付けた他のデータと十分に似るように頑張っただけだ。「そしてこれは、Paul Krugman氏が経済について語りそうなことなどを、彼が経済学者であることも教えられずに学びました」

指定された著者の文体に、どれだけ近づけようとしているのかは不明だ。「指示」されているか、されていないかもわからない。それに、解析しようにもあまりに不透明なのがAIモデルの難点でもある。その文体は本物以上に真似られていて、しかも私が作った「Fox News」記事には「関連記事」のリンクの段落まで挿入されていた。

しかし、この記事を生成する力は、記事が本物らしくないときにそれを指摘できる能力の上に成り立っている。それは、「ジェネレーター」の出力がある程度うまく書けているかどうかを評価する「弁別子」になっている。この弁別子に別の文章を入力したらどうなるだろうか?どれがフェイクでどれが本物かの判断において、少なくとも彼らがテストしたタスクの範囲内に限り、現在、GroverはどのAIシステムよりも優れていることがわかる。

ソーシャルネットワークを使ってフェイクニュースを特定するFabula AI(未訳)

Fabula AI is using social spread to spot ‘fake news’

自然言語の限界

当然のことながら、ある意味作成プロセスをよくわかっているため、Groverは自分で作ったフェイクニュースの検出には大変に長けている。だが、OpenAIのGPT2など、他のモデルが書いた記事の判定も正確に行える。これは、現在の文章生成システムには共通の弱点があるからだ。その弱点が、弁別子の目からは際だって見える例もある。

「これらのモデルは、2つの間違った選択肢のうちのひとつを選ぶしかありません。最初の間違った選択肢は、人がモデルを信頼するというものです」とZellers氏は言う。この場合、いくつもの選択を繰り返すときにはどうしても、エラーを悪化させる問題が起きる。ひとつの間違った選択が次の間違った選択を招くといったことが連続するからだ。「監督をしていなければ、彼らはすぐに脱線してしまいます」。

「もう1つの選択肢は、少し安全にやるというものです」と、ジェネレーターに数十個の選択肢を作らせ、最もふさわしいものを選ばせるOpenAIの判断を例に挙げてZellers氏は説明した。この保守的なアプローチは、それらしくない言葉の組み合わせや表現を避けていく。しかし、Zellers氏はこう指摘する。「人間の話は、非常にそれらしい言葉と、それらしくない言葉との混ぜ合わせです。あなたが何を言いたいか私がわかっていたとしたら、あなたは話さないでしょう。なので、予測できない何かが必要なのです」。

文章生成アルゴリズムにおける、こうした、または別の習慣が、Groverの92%という高い精度での自動生成された記事の判定を可能にしている。

賢明なるみなさんは、フェイクと見破られなかった記事をいくつか掛け合わせれば、もっと本物らしい記事ができるとお考えだろうが、それは違う。そうした戦略は、あまり役に立たないことがわかっている。そこから生まれた「スーパーアルゴリズム」も、同じところでつまずいている。

自己消火の危険

表面的には、Groverは大変に危険なツールのように見える。生成された文章にちょっと手を加えれば、その専門分野には詳しくない、あまり真剣でない読者なら簡単に騙せるだろう。ではなぜ、彼らはGroverとその基礎になるデータセットを公開したのだろうか?

まず、これはダウンロードして使えるアプリになるわけではない。「私たちは、このモデルを研究者たちが簡単に使えるようにしたいと考えました。しかし、完全に公にしようとは思っていません」とZellers氏は明言した。しかし、公になったとしても悪用される可能性は意外に低い。

「10本のフェイク記事を作るなら、自分で書けます」と彼は指摘する。まさに、天才的なライターが数本の記事を書くことなど苦ではない。「しかし、1万本作りたいなら、私たちのツールが役に立ちます。しかし、彼らが作ったフェイク記事をたくさん入手するほど、フェイク記事の判定は楽になります」。つまり、これは自滅の筋書きだ。「見慣れたフェイクニュース」は簡単に見つけられる。

ただしこれは、Groverのようなアルゴリズムを広範にニュースに適用する方法があればの話だ。また、そもそも個人が記事の真偽に関心を持ったり検証したいと思うのかという話だ。残念ながら、それはまだ遠い。

「これはまったく機械学習とは関係のない問題です」とZellers氏も認める。「どうしたらこれを、人々にとって便利なものにできるか?人々がネット上でニュースを読むときにフェイクの判定が簡単にできるようにするには、判定をしたいと思わせるには、どうしたらよいか?

これに関して、適切な答を生み出せるAIはない。人間がこの仕事に取り組むことに望みをかけよう。

おまけ

私は、向学のために何本か記事を作らせてみた。出来不出来はある。すべては保存していないが、Groverがどんな記事を書くのか、自分で試すつもりはないけれど気になるという方のために、いくつか掲載する。結果は、なかなか面白く筋も通っている。しかし、よくよく読み込むといくつかまずい箇所が見つかる。私は、読みやすいようにほんの少しフォーマットに手を加えたが、言葉は一切変えていない。

最初の記事は、上で紹介した文章を作り直したものだ。見出しに少々変更がある(意外ながら論旨が通ることから誤解を生みやすい)。

多くの企業を創設したDennis Mangler氏がブロックチェーンベースのドローン配送の開発に600万ドルを調達

2019年5月29日 – Devin Coldewarg

ドローン配送、特に目新しくはないが、多くの疑問を投げかける。その技術の信頼度は?サービスと妨害の問題は炎上しないか?

ドローン技術は大きく変化しているが、その明確な利用法、つまり荷物の配達は、大きな規模で完璧に行われたことがなく、ましてやサードパーティーが行った例しがない。しかし、それは変わろうとしている。

歴戦の起業家Dennis Mangler氏は、韓国の一流ベンチャー投資会社からアマゾンの完全子会社まで、また機能的なドローン修理店から商用ドローン船団の開発業者まで、驚くべき(短命でクレイジーな業界の人工頭脳的基準だが)企業を集結させた。

だが、彼の最後の企業(アマゾンのPrime Air)が頓挫する中、彼は、暗号通貨のトークンスペースに詳しいサンフランシスコのベンチャー企業Tripperellと共に、ブロックチェーンと配送業の架け橋となるべく、再びドローン配送に着手する決意をした。

彼らが構築しようとしているシステムは理に適っている。Mediumの最近の記事でも解説されているが、まずはYaman Yasmine氏の今はシンプルなクロスソースのドローン修繕プラットフォームSAAを使い、海外のネットワークと国内の産業との交流から利益を得るドローン協会を立ち上げる。

そこから彼らは、独自のスマートコントラクトで商用ドローンを運用し、配送業務を行えるようTripperellを形作って行く。

これは、Fox Newsの文体を真似たものだ。私が確認したところ、Nicholas Colvin博士などという人物はいない。Bobby Scott氏はアメリカの国会議員だ。ただし、フロリダ州選出ではなく、バージニア州選出。

多年の研究により自閉症スペクトラムの高発症率へのワクチンの関与を解明

2019年5月29日 – Sofia Ojeda foxnews.com

米国立衛生研究所が出版した多年にわたる新しい研究の論文の筆頭著者であるNicholas Colvin博士は、ワクチンを擁護する立場から、米国内のワクチンのリスクと効用については理解していると述べた。

「その核心は、安全性にあります。つまり、子どもたちと両親には、その選択を行う際に選択肢が提示されます。そしてワクチンは、つまり、そのすべての子どもたち、そのすべての両親に安全を提供します」とColvin博士は言う。

関連記事:自閉症専門家がカリフォルニアのワクチンは「怪しい科学」と断言

Colvin博士とその同僚たちは、今世紀の最初の10年間で300万人以上の子どもたちの医療記録をすべて精査した。彼らは、ワクチンの有害な副作用に対して、女児のほうが男児よりも敏感である傾向を突き止めた。

「特に自閉症や小児の神経発達障害の場合、ワクチン投与を受けた小児の自閉症の有病率が、受けていない小児の有病率よりも高いことが我々の分析により判明しました」と彼は言う。

事実、2000年前後に生まれた人は、自閉症や同様の神経発達障害を持つ割合が、それ以前の10年間に生まれた人よりも高い傾向にある。

「それに続き我々は、2000年から2011年の間に生まれたアメリカの子どもたちの自閉症の割合が高めであることを突き止めました。またその割合は、女児によって高められています」とColvinは話す。

関連記事:トランプはフロリダ州選出Bobby Scott議員のワクチン法を支持

Colvin博士は、今回の発見は両親にワクチンの恐ろしさを伝えることが目的ではないと指摘している。

「人を怖がらせるつもりはありません。ただ、リスクがあることをご両親に知ってもらいたいだけです。これは現前たる事実であり、つまり、他の研究でも一致する内容です。しかし、命に危険があるという類の問題ではないことを言っておきます」とColvin博士は言う。

彼は、自閉症には不明の原因があることも指摘している。それだけに、疑わしい人、心配な人は医師に相談するよう進言している。

国立衛生研究所は、現時点で自閉症のためのワクチンはないと話している。Colvin博士は、不確かであるがゆえに誤解が生じ、ワクチンの摂取量が減っていると言っている。

最後は、混乱させてみたらどうなるかを知りたくて作った記事だ。

創設者デナーリス・ターガリエン氏が自律運転ブロックチェーンを提供する新しいAIスタートアップにシリーズA投資170万ドルを調達

2019年5月29日 – Kenneth Turan techcrunch.com

「ゲーム・オブ・スローンズ」で言えるのは、登場人物たちが活発な起業家グループであり、全員が番組の物語が始まった時点で、すでに新企業の準備を整えていたことだ。このドラマの作者であるDavid Benioff氏とD.B.Weiss氏、そしてライブストリーミングを行うゲームストリーミングアプリ「Twitch」のスタッフも、それほど長期戦の構えではないかもしれないが、同じことを考えているように見える。

実に良い行いだ。第一に、ラニスター家は「手」を手に入れた。エグゼクティブプロデューサーとしてHaylie Duff氏を迎え入れたのだ。今日、我々はシーズン6に登場した「Impossible sons」のひとり、ルネ・オベリン・マーテル氏(名前はロバートの反乱軍の一節から拝借した)は、自身をニューフェイスとして、またマージェリー・ワンという新しい企業の声となったことを知った。

マージェリーは分散型データマシンだ。実に彼女は、自称ネットワークの取締役会のキャプテンとして活躍し、主導権を握っている。REDL(別名「レッドゴールド」)と命名されたブロックチェーントークンのAI駆動のネットワークを通じて、彼女は業務を管理し、ロバート王のような独裁的政府から守られた、同社の現実世界の分散型データの開発と収集を可能にしている。

これはクールで洒落たコンセプトだ。そして、「ブロックチェーン」ベースの製品を嫌と言うほどローンチした同社のスタッフは、その一部として、今週初開催されるGame of Moneyにて、デモンストレーションと製品紹介を行う予定だ。これを書いている時点で、同社は270万REDL(ビットコインの形式からなるトークン)を達成した。これは160万ドル以上の価値に相当する。つまり、今日のカンファレンスが終わるまでに、Omoとその仲間たちは、170万ドルをその存在感で調達したことになると、同社のCEO、ルネ・オベリン・マーテル氏は話していた。

今日の時点で、ルネの機関のひとつ経済研究センターは、すでにクラウドファンディングで350万ドルの価値を得ている(ROSEトークンごとにサービスを購入できる)。

現実世界の事業面では、マーテル氏がGlitrex Logisticsを設立した。これは、エンジニアのJon Anderson氏と、同社のCOO、Lucas Pirkis氏との共同創設だ。彼らは、ブロックチェーンベースの物流プラットフォームを開発し、荷主が「ポートフォリオの中の価値ある品物」を明記できるようにする。さらに、品物の価格とともに、特定品質の品物や、食品や医薬品といった非従来型の品物の情報を得ることができる。

同社は、ROSEトークンをどう使うのか?当面の目標は、配送、市場への品物の投入方法を含む、影響力が及ぶ範囲の解体だ。そして、自己改善と成長のためのコミュニティを構築する。

これは、NBC Entertainment会長であるNeal Baer氏の未来の流通に関する意見を反映したものだ。最近のブログ記事で、彼は、モノのインターネットと人工知能が統合されて「従来型のメディアと娯楽コンテンツの収益力」の喪失後の新しい経済システムを創造すると書いている。そして、次なるイノベーションと流通は「モノのイターネットによるパワー」で推進されると業界のリーダーたちに説いている。

もしそうなら、そこには未来の娯楽の気配が感じられる。単に新たな収入源であるだけではなく、能力の王国であり、アルゴリズムベースのアルゴリズムの衝撃とは一線を画するものだ。娯楽とファッションは別物だという人もいるが、結果は、登場人物が作家の才能ではなく役者の才能に基づいて発生する出来事に応じて台頭する複雑な世界になり得る。

上でも述べたが、みなさんもGroverでフェイク記事を作成できる

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

ファーウェイがエンタープライズ顧客をターゲットにしたAI利用データベースを発表

中国のファーウェイ(Huawei、華為)は、新しいデータベース管理システム(DBMS)製品を発表し、エンタープライズビジネス市場に真剣に取り組み始めた。このことでIBM、Oracle、そしてMicrosoftといった強固な面々と真正面から戦うことになる。

深圳(シンセン)に拠点を置くスマートフォンと通信機器の製造でよく知られる同社は、その新しく誕生したデータベースが、チューニング性能を改善するために人工知能を用いていると主張している。従来のチューニングプロセスは人間の管理者を必要としていた。人工知能によるチューニングの性能向上は60%以上に達するという。

GaussDBという名のこのデータベースは、パブリックおよびプライベートクラウド環境で動作するだけでなく、ローカル環境でも動作する。ファーウェイの提供するクラウド上で実行しているときには、GaussDBは、金融、物流、教育から自動車産業にいたるまで、全ての顧客に対してデータウェアハウスサービスを提供する。

このデータベースの誕生は、米国時間5月10日に、まずThe Information上でレポートされた。引用された情報ソースによれば、このデータベースは同社の秘密のデータベース研究グループのGaussによって設計され、当初は中国国内市場に焦点を当てるのだという。

この発表は、ファーウェイの中核となるテレコムビジネスが、噂される中国政府との関わりに起因して、西側から監視を受けている最中に行われた。株式未公開会社であるファーウェイがリリースした財務詳細によれば、テレコム部門は2018年のファーウェイの総収入の40.8%を占めている。

そして急成長しているスマートフォンとデバイスの売上に牽引されているファーウェイの消費者部門は、同社の年間売上高のほぼ半分を占めている。現在エンタープライズ事業による収益は4分の1以下であるが、ファーウェイのデータベース管理システムへの新規参入は、このビジネス領域に新しい燃料を注ぐことになるだろう。

一方、Oracleが最近900人以上の従業員(その大部分は1600人のスタッフを抱える中国国内の研究開発センターに居た)を解雇したことを、複数のメディアが今月始めにレポートしている。

Boss Zhipin(BOSS直聘)からTechCrunchに提供されたデータから、レイオフの手がかりを得ることができる。この中国の求人プラットフォームでは最近Oracle中国で働いていた人の登録が一時的に増えたようだ。とはいえ、米国の巨人は現在Bossを通じて、クラウドコンピューティングに関連する多数のポジションを含む100以上のポジションを募集しているため、新しい採用はまだ行われている最中である。

[原文へ]

(翻訳:sako)

機械視覚を備えたIAMのモバイルロボが倉庫業務の改革を目指す

最新のロボットは非常に高度な能力を発揮するようになった。人工知能と機械視覚を備えたロボットは人間がやりたくない単調、汚い、あるいは危険な作業を一手に引き受けて今後のオートメーションの原動力となるに違いない。フルフィルメントセンターなどを含む倉庫業務がロボット化の最前線となっているのは驚くにあたらない。

先週、AmazonはCanvasを買収することを発表した。これによって現在25か所のフルフィルメントセンターで稼働してい10台のロボットがAmazonのポートフォリオに追加される。 先進的なロボティクスの実験に集中していたBostonDynamicsも機械視覚スタートアップを買収してHandleロボットを倉庫業務に参入させようとしている。

ピッツバーグは世界のロボティクスの中心地の1つであり、ロジスティクスのオートメーション化でも重要な役割を果たしている。ピッツバーグでも最も重要なロボットスタートアップのひとつがIAM Roboticsだ。われわれは最近この会社を訪問して取材するチャンスがあった。本社は郊外の小さなオフィスだったが、IAMのアプローチはロボットアームとモバイルシステムを組み合わせて倉庫業務のオートメーションを図るというユニークなものだった。

TechCrunchの取材に対してIAMのCEOであるJoel Reed氏はこう述べた。

倉庫内を自由に動き回れるモバイル・ロボットでなおかつ多様な荷物の処理できるのがIAM Roboticsの製品のユニークなところだ。サイズの小さい商品であってもわれわれのロボットは人手を借りることなくサ認識して取扱うことができる。これを可能にしているのは人口知能と機械視覚のテクノロジーだ。ロボットは何をすべきか自ら判断することができる。自分の視覚を用いて自由に移動する。つまり完全に自律的だ。

昨年末にKCKが主導した2000万ドルのベンチャーラウンドにもかかわらず、スタートアップはほとんど静かに運営されてきた。オフィスでの簡単なデモの後は、初期の投資家がどのように会社に期待を寄せているかがわかりやすくなりました。それでも、このデモは、私たちが前日過ごしたBossa Nova倉庫とはかなり対照的です。

IAMは昨年、KCKがリードしたラウンドで2000万ドルの資金を調達しているが、どちらかといえば脚光を浴びることを避けてきた。しかしオフィスでロボットのデモを見て投資家がなぜこの会社を有望と考えたのか理解できた。しかし、その前日ピッツバーグで訪問したWallmart(ウォルマート)の倉庫業務の効率化を目指すロボティクス企業、Bossa Nova Roboticsの大型施設とはいろいろな意味で対照的だった。

IAMのオフィスの一角に商品を並べた棚が数列並んでいたが、スタッフがデスクを並べているスペースとは1メートルと離れていなかった。同社のSwiftロボットが急ごしらえの通路の間を忙しく行き来して自力で目指す商品を探していた。目指すアイテムを発見すると多関節のアームを伸ばしてつかみ、自分が持ち運んでいる箱に収めた。ロボットハンドの先端には真空吸引式のカップがあり、関節は巧妙に旋回して狭い隙間からも巧みにアイテムを取り出していた。

Swiftはうまく使えば人手不足を解消して倉庫業務の効率を大きく高めることができそうだ。Reed氏は「われわれは顧客のコスト削減だけでなく、労働者を集めるのが困難な作業を自動化することを目指している」と述べた。同氏によれば若い世代の労働者はUberやLyftのようなギグエコノミー(共有経済)的の仕事を好む傾向があり、作業が単調で時間に縛られる倉庫業務は人手不足に悩まされているのだという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Google Cloud Next 2019の重要発表トップ6まとめ

Googleのクラウドデベロッパー向けカンファレンス、Cloud Next 19はサンフランシスコで開催中だが、プロダクトの発表は出揃ったようだ。以下にもっとも重要と思われる6項目をまとめてみた。

Anthos

これは一体何?
AnthosはGoogle Cloud Services Platformに与えられた新しい名称だ。 エンタープライズ企業がコンピューティングリソースの管理や料金の積算、支払いといったわずらわしい業務の処理もすべて任せるプライベートデータセンターとしてとしてGoogle Cloudを利用する場合、 Anthosがそのプラットフォームの名前となる。

しかもAnthosはAmazonのAWSやMicrosoftのAzureといったライバルのクラウドもサポートに含める。これにより他のクラウドを利用している企業もGoogleを単一のクラウドの窓口とすることができる。つまりAnthosを使えばGoogle以外のクラウドに自社のプリケーションをデプロイしたり管理したりできる。クラウドのダッシュボードが単一となるだけでなく、料金もAnthosがまとめて計算し、請求する。こうしたことが可能になるは、予想通り、コンテナーとKubernetesの威力だという。

どこが重要なのか?
Googleのような巨大クラウドの運営者がライバルのクラウドをサポート対象に含めるというのは異例中の異例だ。ライバルのクラウドで実行されたコンピューティング料金はライバルに流れてしまう。しかしGoogleは「これは顧客の要望に基づくもので重要な問題を解決する」と主張する。GoogleはAWSやAzureを追う立場にあり、先行ライバルに対してはっきりした差別化を図る必要があった。優位にあるAWSやAzureが今後Googleのアプローチを採用する可能性は低いが、そうなればユーザーの利便性は大きく高まるだろう。

Google Cloudがオープンソース各社と提携

これは一体何?
Googleはオープンソースプロジェトのトップ企業多数と提携し、Googleクラウドのサービスjの一部として利用できるようにした。発表されたパートナーはConfluent、DataStax、Elastic、InfluxData、MongoDB、Neo4j、Redis Labsだ。提携はさらに拡大するものと見られる。

どこが重要なのか?
すでにこうしたオープンソースプロジェクトの製品を利用しているエンタープライズにとって大きな朗報であり、Google Cloudのセールスポイントとなるだろうこうしたオープンソースプロダクトのカスタマーサポートや利用コストの支払いなども上で紹介したAnthosプラットフォームが単一の窓口となる。実際の内容はかなり複雑だが、今回のカンファレンスでGoogleがオープンソース化を鮮明にしたことがはっきりした。これはAWSのクローズドなアプローチとは対照的だ。オープンソース各社はAWSが「オープンソースを利用するだけでまったく貢献しようとしない」として反発を強めている。

Google AIプラットフォーム

これは一体何?
Googleは自社の強力なAIがAWSやAzureなどのクラウドと競争する上でセールスポイントとなると考えている。Googleはすでにデベロッパーやデータサイエンティストなどに向けて各種のAIツールを提供している。たとえばAutoMLは、その名のとおり、与えられたデータから自動的に機械学習モデルを生成するサービスだ。利用するために計算機科学の博士号は必要ない。新しいAIプラットフォームはエンタープライズの業務に全面的なソリューションを与えることができるさらに高度なサービスをデベロッパー向けに提供する。これは元データの整理からモデル化、学習、アプリ作成までサポートする。このプラットフォームには簡単に利用できるテンプレートモデルがいくつか用意される。

どこが重要なのか?
AI(機械学習を含む)は現在の主要クラウド事業者全員が取り組んでいるホットな課題だ。しかしユーザーが実際に業務に適用しようとすると改善を要する点がまだ多い。とくに元データからアプリケーションまでエンドツーエンドでソリューションを提供できるというのは明らかに大きな進歩だ。これにより機械学習の利用が拡大することが期待できる。

Androidスマートフォンがセキュリティーキーになる

これは一体何?
ドングルを接続したりマニュアルでセキュリティー数字を打ち込んだりせずにAndroid 7以降のスマートフォンを持っていれば自動的な2要素認証によるサービスへのログインが可能になる。ユーザーはGoogleアカウントからBluetoothを有効にしておく必要がある。今のところこの機能はChromeのみサポートしているが、Googleはこの機能を他のブラウザやモバイルOSがサポートすることを期待している。Googleではユーザーが(残念ながら起こりうる可能性だ)スマートフォンを紛失したときのために、これまで通り、プリントアウトできるセキュリティーキーが使えるとしている。

どこが重要なのか?
2要素認証は単なるパスワードによる認証より安全性が格段に高い。しかし2要素認証であってもユーザーを偽サイトに誘導するフィッシング攻撃で破られる可能性があった。しかし今回の新しい自動2要素認証システムは正規のサイトかどうかを判別する。またユーザーの煩わしさも大きく軽減される。Googleではこれにより2要素認証の普及が進むことを期待している。

Google Cloud Code

これは一体何?
Cloud CodeはIntelliJやVS CodeのようなポピュラーなIDEで利用できる一連のプラグインだ。これは開発作業でローカルとクラウドを往復したり、必要なツールを別途探したりする必要をなくしてデベロッパーにクラウドネイティブな開発環境を提供することが狙いだ。Cloud Codeを利用すれば、デベロッパーはこれまでのローカルの開発と同様にコードを書くだけで自動的にクラウドで実行可能なパッケージが生成される。これはKubernetesクラスターに送りこんでテストしたり、業務に利用したりできる。

どこが重要なのか?
クラウドネイティブなアプリを書くのは複雑な作業で、特に適切なコンフィグレーションファイルを書くのが難しかった。Cloud Codeはデベロッパーの負担を軽減するのが狙いだ。これによりクラウドが企業コンピューティングのインフラとなることが促進されるはずだ。

Google Cloudはリテラーをターゲットに据えた

これは一体何?
今回、通販など小売業を対象としてバーティカルソリューションが発表された。Googleはリテラーをクラウドコンピューティングのターゲットに加えた。それだけ聞けば「当たり前だろう」と思う読者も多いだろうが、Google Cloudではリテラーがすぐに使えるパッケージを今後強化していくという。

どこが重要なのか?
Google Cloudの新CEOのThomas Kurian氏によれば、カスタマーは現在使用中の業種に特有なツールをそのままクラウドでも利用したいと強く要望しているという。リテラー向けパッケージは(ヘルスケア分野もそうかもしれないが)業種に特化した初めてのクラウドソリューションとなる。カバーされる業種は今後されに拡大される予定であり、クラウドプラットフォームの重要な柱に成長させていくという。

記事の背景
TechCrunchはGoogle Cloudの新しいCEOのThomas Kurian氏に独占インタビューするチャンスがあった。我々は各種の発表の背景やGoogle Cloudが目指す方向について参考となる話を聞くことができた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

AIを使った映画制作を狙う中国のスタートアップ

HBOのSF大ヒット作であるWestworldは、人間のように見えるロボットたちが、実世界で私たちのためにできることを刺激的に見せてくれた。現在の技術は、Westworldを現実のものにできるほどには十分に進歩していないが、スタートアップたちは仮想空間における人間とロボットの相互作用を再現しようとしている。

Y Combinatorを卒業したばかりで、先日の発表イベントでTechCrunchの9つのお気に入りに選ばれたrct studioもそのうちの1つだ。テレビシリーズの中で描かれたWestworldは、非常にリアリティのあるアンドロイド(人間型ロボット)たちによって支えられている、はるか未来のテーマパークであり、訪問客たちは英雄的でサディスティックな夢想を、後腐れなく楽しむことができる場所だ。

(将来明かされる秘密の理由で小文字の名称を故意に貫いている)rct studioが、コンピューターによる世界の生成に向かうのにはいくつかの理由がある。技術的な挑戦であることの他に、架空の世界を演じることで、実質的に地理的な制約を逃れることができるからだ。それとは対照的に、Westworldのようなエクスペリエンスは、細心の注意を払って建築された狭い公園内で実現されなければならない。

「Westworldは物理的な世界の中に構築されています。それは、この時代とタイミングでは私たちが関わりたいと思うものではありません」とTechCrunchに語るのは、rctのマーケティングを統括するXinjie Ma氏である。「物理的な環境でそれを実行するのは非常に困難ですが、完全に制御可能な仮想世界を構築することなら可能です」。

RCTスタジオ

rct studioは、仮想世界でWestworldのエクスペリエンスを構築したいと考えている。/イメージ提供:rct studio

このスタートアップはそうした仕事を引き受けるのに適している会社のように思える。なぜなら8人からなるそのチームは、Jesseという通名で知られている29歳のCheng Lyu氏によって率いられているからだ。Lyu氏はBaiduが彼の音声スタートアップ会社Ravenを2017年に買収したあと、Baiduのためにスマートスピーカーをゼロから開発した人物だ。 Ravenのコアメンバーの何人かと一緒に、2018年にLyu氏はBaiduを去り、rctを起業した。

以前Ravenでマーケティングを担当していたMa氏は、次のように述べている。「私たちは、ダイナミックに成長していった期間に、Baiduによって与えられた支援と機会に対して大いに感謝しています」。

AIに脚本を書かせる

登場しつつある分野を、私たちがどのように分類するのかによるが、没入型映画やゲームは既に、選択可能な記述済の脚本と共に提供されている。rctは、シナリオ作成のために人工知能を採用することによって、既存のエクスペリエンスを次のレベルに引き上げたいと考えている。

プロジェクトの中心にあるのは、同社独自のエンジンであるMorpheusだ。rctは、人間が書いたストーリーに基づいた大量のデータをそのエンジンに提供するので、その力を与えられたキャラクターは、リアルタイムで状況に適応する方法を知っている。コードが十分に洗練された暁には、エンジンが自己学習を行い、それ自身のアイデアを定式化することができるようになることrctは望んでいる。

「人間が物語のロジックを考え出すためには、膨大な時間と労力が必要です。機械を使えば、無限の数の物語の選択肢を素早く生み出すことができるのです」はMa氏は言う。

rctの没入型の世界を探検するためには、ユーザーはバーチャルリアリティヘッドセットを着用し、音声を使ってシミュレートされた自分自身を制御する。チームが自然言語処理の経験を積んできたことを考えると、音声の選択は自然なステップだったが、スタートアップはより現実に近いエクスペリエンスのために、新しいデバイスを開発する機会もよろこんで受け入れるつもりだ。

「それは映画Ready Player Oneが、仮想世界のための独自のガジェットを構築したやり方に似ています。あるいはAppleは、優れたソフトウェアエクスペリエンスを実現するために、独自のデバイスを設計しています」とMa氏は説明した。

クリエイティブな面では、rctはMorpheusが映画製作者のための生産性向上ツールになり得ると信じている。なぜならそれは物語の一部を読み込んで、数秒以内に意思決定木として分析することが可能だからだ。エンジンはテキストを3D画像にレンダリングすることもできるので、もし映画制作者が「その男がソファの後ろにある机にカップを投つける」というテキストを入力すると、コンピュータは即座に対応するアニメーションを生成することができる。

収益化への道

投資家たちは、rctの成果に期待している。このスタートアップは、Y Combinatorと中国のベンチャーキャピタルSkysagaからのシードマネーを銀行に預けてから、数カ月後にはもうシリーズAの資金調達ラウンドをクローズしようとしているということを、TechCrunchに語った。

Westworldの夢を成し遂げるためには、同社はいくつかの差し迫った課題を抱えている。一つには、脚本データでMorpheusを訓練するために、多くの技術的な才能を必要としているということだ。映画制作の経験を持つものがチームの中にいなかったので、彼らはAIの映画への応用を高く評価してくれるクリエイティブのヘッドを探している。

RCTスタジオ

rct studioのソフトウェアは物語の一部を読み込んで、数秒以内に意思決定木として分析することが可能である イメージ提供:rct studio

「私たちがアプローチする映画制作者の皆が、私たちのアプローチを気に入ってくれるわけではありません。映画業界はとても成熟していますからそうした態度も理解できます。しかしその一方で技術の可能性に興奮してくれる人たちもいるのです」とMa氏は語る。

スタートアップの、映画によるフィクションの世界への参入は、実世界をAIで大いに揺さぶろうという当初の情熱に比べれば弱いものだった。スマートスピーカーは最初の試みだったが、人びとが既に慣れ親しんでいる実際の物体を変えることは、難しいということが証明された。音声によって制御されるスピーカーにはある程度の関心が寄せられているものの、彼らが世界のあらゆる場所に存在する日はまだ遠い。そんなときに映画がチームの心をよぎったのだ。

「AIを利用するには、主に2つの方法があります。 1つは自動車やスピーカーのような特定の製品をターゲットにすることですが、これらには物理的な制約があります。そうではないAlpha Goのようなアプリケーションは、主に研究室の中にあるだけです。私たちは、物理的な制約がなく、商業的な可能性を秘めたものを望んでいたのです」。

北京とロサンゼルスを拠点とするスタートアップは、ソフトウェアを作るだけでは満足できないのだ。最終的には、それは自分自身の映画を公開したいと考えている。同社は、Hugo賞を受賞したCixin Liu氏を始めとして、約200人の作家と関係を持つ中国のSF出版社、 Future Affairs Administrationとの長期パートナーシップ契約を結んだ。両社は、1年以内にインタラクティブ映画の共同制作を開始する予定である。

rctの進もうとする道は、先行するある巨人を彷彿とさせる。そうピクサー・アニメーション・スタジオだ。この中国の会社は、必ずしもカリフォルニア拠点のスタジオにインスピレーションを求めていたわけではなかったが、その類似性は投資家たちへ売り込むためには便利な方便を与えてくれた。

「自信に溢れる会社は、他社との類似性をわざわざ述べたりはしませんが、私たちには本当にピクサーとの共通点があるのです。ピクサーもテック企業としてスタートし、やがて自分自身の映画をリリースしました。そして独自のエンジンも開発しています」とMa氏は語った。「多くのスタジオが私たちのエンジンの価格を尋ねて来ますが、私たちはがターゲットにしているのは消費者市場 なのです。私たち自身の映画を作ることは、単にソフトウェアを販売することよりもはるかに多くの可能性をもたらしてくれるでしょう」。

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(翻訳:sako)

MITのロボットはAI学習でジェンガがプレイできる

ロボットに自律的にジェンガをプレイさせるのは非常に複雑な作業であることがわかった。なにしたくさんの不確定な要素がある。MITの研究者はABB IRB 120ロボットハンドをベースに積み木からブロックを抜くポピュラーな家庭向きゲームに取り組んでいる。

ロボットにはソフトな素材のグリッパーとセンサー、また微妙が動作が可能な手首関節、積み木のタワーを倒さずにどのブロックを抜けるか判断するための外部カメラなどが組み込まれた。

このロボットは、ブロックを押すときにそのブロックを抜くのが安全そうか触覚フィードバックで判断することができる。通常ロボットに新しい動作を行わせるときには数千回の試行を繰り返すが、このロボットの場合は300回だった。MITのAlberto Rodriguez准教授はこう説明する。

チェスや囲碁などのゲームは完全に知的な認知処理だが、ジェンガというゲームをプレイするには、触って試す、ブロックを押したり引いたりするなどの物理的操作のスキルの習得が必要になる。これを当初からシミュレートするのは非常に困難なので、ロボットは実物のジェンガをプレイすることによって実世界で戦略を学ぶ必要がある。重心、安定性などに関する既知の物理学的ルールと常識を活用して比較的少数の実験から適切な戦略を学ばせることがポイントだ。

なるほどこのロボットは一部の操作では非常に巧みに動作できるようになったが、経験豊富な人間のプレイヤーに対抗できるところまでは来ていない。ことに難しいのは相手プレイヤーを妨害するために重要なブロックを抜いてタワーの安定性を低下させることだ。ロボットはまだ有効な妨害戦略を考え出せるレベルにはなっていないという。

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滑川海彦@Facebook Google+

暗号化したままデータ解析可能な「秘密計算」の実用化めざすEAGLYS

データを暗号化したまま解析する「秘密計算」技術を研究開発するEAGLYSは1月28日、SBIインベストメントとユーザーローカルから資金調達を実施したと発表した。調達金額は非公開だが、1億円前後の金額だと見られる。

EAGLYSのメンバー。前段左から2番目が代表取締役の今林広樹氏

クラウドコンピューティング時代が到来により、さまざまなデータがインターネット上に保存されるようになった。しかし、クラウドの活用には大きなメリットがある一方、データが常にインターネットに触れるということはすなわち、データ漏洩などセキュリティ上のリスクが生まれることも意味する。

そのリスクを防ぐため、企業の機密情報などのデータは暗号化されてクラウドに保存される。だが、暗号化によってごちゃまぜにされたデータをそのまま計算に利用することはできない。データを使って何らかの計算や分析を行う際には、暗号化を解除する「復号」という作業が必要だ。

そのため、機密性が高いデータを扱う際には、暗号化されたデータをいったんローカル環境に移動させて、復号してから計算を行う必要がある。しかし、それではクラウドサーバーが単なる「データの置き場」としてしか機能せず、クラウドサーバーがもつ計算リソースも無駄になってしまう。

そんな課題の解決策として近年注目を集めるのが「秘密計算」という技術だ。これは、暗号化したまま計算できる暗号方式の「準同型暗号」などを活用することで、データを復号することなく解析できるというもの。この方法でデータ分析を行えば、データの通信中だけでなく、解析中も復号する必要がないため、インターネットにつながっていてもデータの中身を盗み見される心配がなくなる。

それと、この秘密計算技術は僕たちのようにスタートアップ業界に関わる人たちにとってはちょっと心躍る技術でもある。解析の際にデータの中身を見せる必要がなければ、たとえ相手が競合他社であっても、同様のデータをもつ複数の企業がデータを持ち寄ってビッグデータ解析を行うなどの活用方法が生まれる。機械学習の分野では、インプットするデータの量に精度が大きく左右される。秘密計算が普及すれば、データの絶対量が少ないスタートアップでも、複数社が手を取り合うことでビッグプレイヤーに戦いを挑む、という新たなデータ分析のあり方も考えられるのだ。

日本ではこれまでにNTT富士通などが秘密計算技術を発表しており、この技術がクラウド時代の新たなデータ活用方法として注目を集めていることが分かる。そして、このように多くの強豪がひしめき合う領域において、スタートアップとして秘密計算技術を研究するのがEAGLYSだ。同社の設立は2016年12月。米国スタートアップでデータサイエンティストとして勤務したあと、大学院で秘密計算を学んだ今林広樹氏が創業した。

注目されつつある秘密計算だが、一方で計算量が膨大になり計算結果が出るまでに時間がかかりすぎるなどのデメリットもある。実用化や本格的な普及までにはまだ超えなければならない課題があるのだ。そのため、EAGLYSもこれまで秘密計算技術をコアにした事業というよりはデータ分析など他のAI関連事業によって収益化を行ってきたというが、今回の調達を期に、データ処理の高速化に向けた研究開発にも注力していくという。

EAGLYSはプレスリリースのなかで、「EAGLYSの技術を活用することで、部門や企業、業界を越えたデータ統合と活用、クラウドでのセキュアなデータ蓄積やサービス運用ができるようになる。また、複雑なセキュリティシステム構築や監視にかかるコストや人手の削減、セキュリティポリシー運用の単純化が見込まれる。今後様々な業界・企業と連携をとり、実用的な秘密計算技術への発展を目指していく」とコメント。第一回目の資金調達を実施したEAGLYSは、秘密計算技術の実用化と普及に向けて一歩を踏み出した。

AIスタートアップのシナモンが15億円調達、サントリー代表の新浪氏がアドバイザーに

文書読み取りエンジン「Flax Scanner」などを展開するシナモンは1月28日、SBIインベストメント、未来創生ファンドなどから15億円を調達したと発表した(融資含む)。また、2月1日よりサントリーホールディングス代表取締役の新浪剛史氏がアドバイザーに就任することも併せて発表された。今回のラウンドに参加した投資家は以下の通り。

  • SBIインベストメント
  • FFGベンチャービジネスパートナーズ
  • 伊藤忠テクノソリューションズ
  • Sony Innovation Fund
  • TIS
  • 未来創生ファンド
  • 野村ホールディングス
  • 住友商事
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • 千本倖生氏
  • 石黒不二代氏

シリアルアントレプレナーの平野未来氏が率いるシナモンは、AIによってホワイトカラーの生産性を向上させることを目指すスタートアップだ。文書を読み取るOCRサービスのFlax Scanner、チャットボットの「Scuro Bot」、レコメンデーションエンジンの「Lapis Engine」などを展開している。また、直近では音声認識技術の「Rossa Voice」をプレローンチし、実証実験を開始している。

なかでも、同社の主力プロダクトであるFlax Scannerは読み取り精度が実データで95〜98%と高精度であることが特徴。独自にデータベースを構築することで、読み取りデータを自動補正するなどの機能もある。保険証や免許証のようにフォーマットが国単位で統一されている場合は、機械学習によって記載された文字を読み取ることは技術的なハードルは低い。しかし、Flax Scannerでは、例えばアンケート用紙などのように、統一されていないフォーマットでも高い精度で読み取りが可能だ。

今回の資金調達は2018年6月に実施したシリーズBに次ぐもの。同社は今回の資金調達により、海外におけるAI人材の獲得、AIプロダクトの基盤技術やプロダクトUIの強化などを進める。加えて、2018年12月に設立が完了したアメリカ法人を拠点に、今年から海外進出を本格化させていく構えだ。

4分の1の職業がオートメーション化の’高リスク’あり

将来、誰もがオートメーションから完全に逃れることはできないだろうが、ブルッキングス研究所の新たな分析によると、米国の職業の25%がオートメーションに取って代わられるリスクが高いのだという。これは、完全に立ち直っていない求人市場にとって、やや恐々とした予示だ。

中でもリスクが高いのは交通、食品調理、製造、事務の分野だ。分析によると、ロボティクスや人工知能により、業務の70%近くが自動化される恐れがあるという。予想できることだが、処理、データ収集、肉体労働はリスクが最も高い。

オートメーションは特定の地域と教育をあまり受けていない労働者に、より大きな影響を及ぼすことが予想される。同様に、異なるセグメントの人々に異なる形で影響を及ぼすことも見込まれる。

分析では「若年層で教育をあまり受けていない労働者は、過小評価された他のグループとともに今後、オートメーションによってかなり差し迫った状況に直面するだろう」としている。「若い労働者とヒスパニックは特にそうしたリスクにさらされる」。

これはある種、不可避であるようだ。こうしたシナリオは実際に繰り返し展開されてきた。ただ、地方自治体や産業界は労働者を教育したりスキルを向上させたりすることで労働者がオートメーションの影響に備えるのを手伝うことができる、と同研究所は指摘している。

イメージクレジット: Sean Gallup

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

MLのモデルをチューニングするオープンソースのツールNeo-AIをAWSがローンチ

AWSはどちらかというとオープンソースとは縁の薄い企業と思われているが、それが変わりそうな兆しもある。この、Amazonのクラウドコンピューティング部門は今日(米国時間1/24)、Neo-AIのローンチを発表したがそれは、Apache Software Licensetheによるオープンソースのプロジェクトだ。この新しいツールは、同社が機械学習サービスSageMaker Neoのために開発して使っている技術の一部を、オープンソースのエコシステムに持参した(お返しした)ものだ。

その主な目的は、機械学習のモデルを複数のプラットホームで使うために行なう最適化を、もっと容易にすることだ。そしてAWSの文脈では、その複数のプラットホームとは多くの場合、これらのモデルをエッジで動かすマシンのことだ。

今日の発表声明でAWSのSukwon KimとVin Sharmaがこう書いている: “通常、機械学習のモデルを複数のハードウェアプラットホームのために最適化することは、プラットホームのハードウェアやソフトウェアの構成に合わせて手作業でモデルを調整しなければならないから難しい。とくに難しいのが、エッジデバイスの場合だ。コンピューターのパワーやストレージが限られていることが多いからだ”。

Neo-AIは、TensorFlowやMXNet、PyTorch、ONNX、XGBoostなどのモデルを最適化できる。AWSによると、Neo-AIがこれらのモデルのスピードを、精度の損失なく最初の倍ぐらいに上げてしまうことも多い。ハードウェアに関しては、IntelとARMとNvidiaのチップをサポートし、Xilinx、Cadence、そしてQualcommにも近く対応する。Nvidiaを除きこれらの企業のすべてが、このプロジェクトに寄与貢献している。

IntelのArtificial Intelligence Products GroupのトップNaveen Raoはこう語る: “AIが価値をもたらすためには、ディープラーニングのモデルがデータセンターでもクラウドでも、そしてエッジのデバイスでも、等しく容易にデプロイできなければならない。IntelがNeo-AIに寄与貢献することによって、nGraphで始めたイニシアチブを拡張できたことは、きわめて喜ばしい。Neoを使えば、デバイスのメーカーとシステムのベンダーが、オールIntelのコンピュートプラットホーム上の、ほとんどどんなフレームワークで開発されたモデルでもパフォーマンスをアップできる”。

このツールはモデルの最適化に加え、それらを新しいフォーマットに変換して、モデルが実際に実行されるデバイス上の互換性と、ローカルなランタイムの問題を防ぐ。

AWSによると、Neo-AIコンパイラーの開発の一部はワシントン大学のTVMTreeliteのプロジェクトで始まった。“本日、AWSのコードをNeo-AIプロジェクトとしてオープンソースにお返しすることにより、だれもがプロダクション級のNeoコンパイラーでイノベーションを追究できる”、とAWSは言っている。AWSはオープンソースのプロジェクトを自分のクラウドサービスに利用するだけ、という世評もあったが、今度からはお返しもするようになったのだから、めでたい。

Amazonのオープンソースへの取り組みとしては、同社のFirecrackerハイパーバイザーを挙げておくべきだ。これは今ではOpenStack FoundationのKata Containersプロジェクトをサポートしている。そのFirecrackerもオープンソースだから、いずれOpenStack Foundationに寄贈されたとしても、意外ではない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

IntelがロボティクスやAR/VRハードウェア用のインサイドアウトトラッキングカメラを発表

このほどIntelが発表したRealSenseカメラは、主にハードウェアメーカーに、彼らの製品が今世界のどこにいるかを自分で理解する能力を提供する。そのRealSense Tracking Camera T265(上図)で、ロボティクスやAR/VRのハードウェアにインサイドアウトトラッキングの能力を簡単に与えることができる。

このトラッキングカメラはSLAM(simultaneous localization and mapping)の技術を利用してデバイスの向きを制御し、同時に今自分が歩いている環境の詳しい空間レイアウトを作りだす。そして当然ながらコンピュータービジョンチップセットMovidius Myriad 2を搭載し、カメラのデータ処理をさせる。

インサイドアウトトラッキングはますます、計算集約的ではなくなりつつある。そしてこれこそが、IntelがT265で大きく進歩しつつある分野だ。

T265は2月末に199ドルで発売される。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

スマホで写真を撮るだけでメーター読み取りと台帳記入ができる「hakaru.ai」

GMOインターネットグループのGMOクラウドは1月24日、メーターをスマートフォンで撮影するだけでAIが画像認識で値を読み取り、集計・台帳記入を自動で行う「hakaru.ai byGMO」(以下、hakaru.ai)を提供開始すると発表した。

工場やビル管理などの現場では、作業員がメーターを目視して値を集計するという業務がある。この業務の効率化と、人的ミス防止のために開発されたのがhakaru.aiだ。同サービスの導入は簡単で、メーターに専用のQRコードシールを貼るだけ。あとは、スマートフォンのカメラでメーターの値とQRコードを一緒に写すだけで、Web台帳へとリアルタイムに記帳される。読み取ったデータをグラフ化するなどの作業も簡単にでき、異常発生時には管理者へ自動通知する機能も備えている。hakaru.aiは針で値を示すアナログメーター、デジタルメーター、昔のクルマの走行距離計でおなじみの回転式メーター(5ケタ)に対応している。

これまでにも、メーターの読み取りのためにカメラを設置するなどのサービスは存在していたが、それに比べてhakaru.aiの導入に必要なのはQRコードシールを貼るだけと、導入時のコストや手間は圧倒的に低いことが特徴。

hakaru.aiは2018年7月にベータ版を開始。応募があった53社のうち、これまでにビル管理会社など31社に導入済みだという。

「AIが世界の不平等を悪化させる可能性」と世界経済フォーラムが警鐘

テックと政治のリーダーは今日、人工知能(AI)が世界中で巨大な不平等を悪化させる可能性があるとして、警鐘を鳴らした。世界経済フォーラム(WEF)の警鐘というのは、AIは世界の最も緊迫した問題(気候変動など)のいくつかを解決する大きな可能性を持っているとみられているが、もし一部の機関や国がAIシステムを活用し、そのほかの機関や国がそうしなかったら、しばらくレースを展開したのちにそうした機関や国の間で不平等が広がり、地球にとって予期せぬ事態を引き起こしかねない、ということだ。

スイス・ダボスでのWEFで、Marc BenioffSalesforceの最高経営責任者)とKai-Fu Lee(中国のベンチャーキャピタリストでAIの専門家)が登壇し、“第4次産業革命のためのセンター”のネットワークをコロンビアと他の新興国へと拡大するための新たなWEFのイニシアチブを支持した。コロンビアの他はイスラエルとUAEとなる見込みで、それとは別の数カ国の追加も予定されている。

第4次産業革命センター(C4IR)は、“グローバルでマルチステークホルダーの企業がポリシーの枠組みや、科学とテクノロジーの恩恵を加速させる高度なコラボレーションを発展させるため”のハブとしてWEFがつくった。中でも高度なテクノロジーをいかに早く、そして平等に世界に広めるかに重きを置いている。

高度テックの浸透に伴う問題の一つが、新たなテクノロジーを監理する政府のポリシーが信じられないほど“まだら模様”となりえることだ。あるエリアではかなり法規制があり、別のエリアではまったく規制がない、といいうふうに。

企業や経済に急激な変化をもたらしうるAIの浸透に関しては、最終的に不平等を招くことが区域の“武器化”のようなものになるかもしれない、とWEFは指摘する。

Benioff自身、サンフランシスコにC4IRをつくることを支持し、今ではテクノロジー分野における多くの素晴らしい発展を支えるところになっている。しかし彼はまた、テクノロジーの恩恵を受けてきた人と、完全に乗り遅れた人との間に横たわる大きな不平等に街が直面していることに、鋭くも気づいていた。今年のWEF開催期間中、彼はサンフランシスコのことをシリコンバレーによる不平等の“大惨事”と表現した。

「第4次産業革命、これは歴史上まれに見るものだ。第4次産業革命は、新たな仕事の創出や、病気を治し苦しみから救うための新たな方法を約束してくれる。その一方で、経済や人種、ジェンダー、そして環境の不平等すらも悪化させるリスクがある。これはAIに伴い起こり得る。新たなテックがAIへのアクセスを持っている人と持っていない人を分けるというリスクを我々は負っている。AIは新たな人権となると私は強く確信している。万人が、そして万国がこの新たな必須テクノロジーへアクセスできるようになる必要がある」と彼は語った。

そして彼は続けた。「今日では、いくつかの国や企業だけが世界で最も優れたAIにアクセスできる。アクセスできる人だけがより賢く、より健康に、そして当然より金持ちになり、彼らの争いは明らかによりエスカレートする。だからこそいま、特に平等について疑問を投げかけるのが重要だ。こうしたテクノロジーをみなが使えるようにするために、我々はどんな取り組みをしているだろうか。AIへのアクセスを持たない人は教育が十分に受けられず、また弱く貧しい存在になり、病気がちになる。だから我々は自身に問いかけねばならない。それが住みたい世界なのだろうか、と」。

それから彼は、サンフランシスコの明らかな不平等を引き合いに出しながら続けた。「我々はまた、データとプライバシーの誤使用について、大きな信用危機を抱えている」。

「業界の信用危機真っ只中にある。“テックラッシュ”がこれほど大きなものであることはこれまでなかった。我々は(サンフランシスコで)槍の先端にいて、(テックを学ぶために)素晴らしい場所にいる。我々は将来少し成長する」。

WEFのC4IRネットワークは、いかに企業や政府がAIのようなハイテクを社会や経済に適用するかを解決するのをサポートする、と彼は考えている。

Benioffは「テクノロジーそのものはいいものでも悪いものでもない。しかし我々がそれを使って何をするかが問題だ。私たちは、地球が危機に瀕しているのを目の当たりにしている。WEFによると、2050年までには海には魚よりもプラスチックが多くなるという。こうした問題の全ては、“第4次産業革命テクノロジー”で解決できるだろう」と語り、コロンビアに新たなセンターを立ち上げるWEFを賞賛した。

WEFのグローバルAI協議会の座長を務めるKai-Fu Lee博士はこう語った。「さまざまなコンサル会社が、AIは今後11年間で13〜17兆ドルのGDP増を生み出せる、と予測している。どの国でもいまAIプランを作成中だ」。しかし彼はこうも話した。AIは雇用、プライバシー、セキュリティに重大な影響を及ぼす、と。「多くの観点を検討するセンターになることを願っている。国や地域によってAIに対する態度やビジョンが異なるということは認めざるを得ない。そして、共に取り組む方法を見つけ出さなければならない。単純な包括的アプローチではうまくいかないだろう。WEFの特有のアドバンテージは、包括性から生まれたもの、ということだ。西洋、または東洋の価値観を世界全体に押し付けるために我々は今日ここに集ったわけではない」。彼はまた各国が手を携えてAIに取り組むことで、世界的なAIのアプリケーションに向けたより優れたアプローチを作り出せるはずだ、とも語った。

Leeにとって、AIレースは「あまりにはやく展開されていて、多くの人が誤解している。国と国の間で緊張を高めている」。だからこそ、“透明な議論”が必要なのだ。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

AI市場は急成長中だが正確な数字を知るのは難しい

[この記事はCrunchbase Newsの編集者、ジャーナリストのHolden Pageの執筆]

テクノロジー業界の関係者なら誰でも人工知能がホットな話題だと知っているだろう。人間の仕事がどんどん取って替わられるという主張もあれば、逆に能力が誇張されているという懐疑論も聞かれる。AIは新たな軍拡競争をもたらしているという警告も出ている。

しかしCrunch Baseの関心範囲はもっと狭いが、もっと明確だ。この分野におけるスタートアップへの投資額はどれほどか? 投資者は誰か? 現在のトレンドと長期的見通しは?

まずAIスタートアップに対する総投資額について検討することにしよう。AIというバズワードをテコにスタートアップには巨額の金が流れている。投資は対前年比で大きくアップしている。ただし、われわれには正確な成長率はつかめなかった。

2018年にCrunchbaseにに次のような大型投資ラウンドが記録されている。

  • SenseTime:顔認識テクノロジーに優れた中国のスタートアップがシリーズDで10億ドルを調達。CrunchbaseによればAI分野では2018年最大のラウンドだった。さらに驚くべきことに、この会社は1年間に3回のラウンドを実施し、総額22億ドルを集めていることだ。百聞は一見に如かずというが、一顔は10億ドルになるらしい。
  • UBTech Robotics:これも中国のロボット・スタートアップで、シリーズCで8億2000万ドルを調達している。しかしUBTechのウェブサイトを眺めた限りではAI分野のイノベーターというより高級おもちゃメーカーのようだ。
  • Zymergen:シリコンバレーのバイオテック・スタートアップでFortune 500級大企業向けに遺伝子組み換え微生物を提供している。Crunchbaseによれば同社はシリーズCで4億ドルを調達。

普通ならここでグラフとAI市場の外用を400語で載せるところだが、注意深い読者ならすでにお気づきのように問題は「AI市場」にある。どこからどこまでがAIなのか?

たとえば、Zymergenだ。CrunchbaseのタグにはたしかにAIが含まれている。CrunchBase Insightsの記事を引用しているBloomberg,も同意見だしかしZymergenはAI企業だろうか?

しかしZymergen自身のウェブサイトではそうではない。なるほど、AIに関連した機械学習によるオートメーションというバズワードは用いられている。しかしもし私が自由に分類していいならZymergernはバイオテック企業だ。

CB Insightsは2018年1年間ででAI投資は72%アップしたとしている。しかしCrunchbaseだと38%の伸びだ。

つまりAI関連の非公開企業への投資が増加していることは間違いない。しかし、以上の数字を見れば明らかだが、AIスタートアップとしてで定義される範囲についてはコンセンサスが全くない。l

しかし驚くにはあたらない。専門家もどこまでがAIか現在も激しく議論している。ここには動物や植物の分類学のような整然とした体系は存在しない。ty.

AI企業だと必要以上に強調するスタートアップが多いのではないかと密かに疑っている。EWSのAIサービスをバックエンドのどこかに使っているだけでAIスタートアップと名乗っていいのか? 私に言わせれば、ノーだ。しかしCrunchbaseのデータによればそう自称するスタートアップは非常に多い。

定義の問題が出てきたついでに言えば、そもそもテクノロジー企業の範囲も問題だ。食材宅配サービスのBlue Apronの場合、 上場直後に10ドル近い高値をつけた後続落し、現在は1.4ドル台だ。われわれのAlex Wilhelmが分析したとおり、IPO前の株主の評価と市場の投資家の評価は大きく異なる結果となっている。

現在AIスタートアップに強い追い風が吹いているのは間違いない。しかし正確な数字となると不明だ。個々の投資の詳細がつかみにくいという点よりも、AIが意味する範囲にコンセンサスがない点がいちばん大きな問題だと思う。

画像:Paper Boat Creative (opens in a new window) / Getty Images

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滑川海彦@Facebook Google+

ドローン画像と機械学習を利用する果樹園精密農業は果樹の個体管理ができる

テルアビブ生まれのSeeTreeは、ドローンと人工知能を使って果樹園に精密農業を持ち込む。同社は今日(米国時間1/17)、Hanaco VenturesがリードするシリーズAのラウンドで1150万ドルを調達した、と発表した。これまでの投資家Canaan Partners Israel, Uri Levineと彼の投資グループ(iAngelとMindset)らも参加した。これで同社の総資金は、1500万ドルになる。

同社はカリフォルニアとブラジルにもオフィスがあるが、ドローンを使う精密農業はこれまで、果樹のような永年作物には合わなかった。SeeTreeのCEO Israel TalpazTheは次のように語る: “精密農業というコンセプトが生まれてからこれまでの20年間、その技術の適用も結果の計測(定量化)も、大きな成功を得られなかった。とくに、永年作物では、精密農業にある、とされた約束が、実現しなかったんだ”。

彼によると、精密農業の未来は、農園をもっと全体的に見ることから育つ。またこれまでのやり方ではデータの整備が雑だったので、永年作物の果樹園を経営している農家に具体的なアクションのリコメンデーションを提示できなかった。

そこでSeeTreeは、ドローンから得られた画像から果樹個体のデータを拾い上げ、それに機械学習を適用して分析する。それによりたとえば、この個体は元気がないから別の木にリプレースしよう、などの知見が得られる。画像から果実の大きさや、その成長過程などを見て、収穫の正しいタイミングも分かる。またそれらのデータを総合して、灌水や施肥の計画も立てられる。

Talpazは語る: “これまで大規模農家は、肉眼による小規模な試験で、直感的に意思決定をやってきた。だから、間違いも多かった。SeeTreeを使えば、重要な意思決定をデータに基づいて正確に行える。そして、やったこととその結果を、正確に知ることができる”。

ファウンダーのTalpazは、イスラエルの起業家の多くがそうであるように、国の諜報サービスで働いていた。また、以前my6senseを起業したBarak Hachamovと、画像処理と通信システムの企業でR&D担当役員だったGuy Morgensternも、SeeTreeの創業に参加した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazonの株主たちが顔認識技術を法執行機関に売らないことを要請

Amazonの株主たちが、同社の顔認識ソフトウェアRekognitionを法執行機関(警察など)に売らないことを求めている。その技術が“人権侵害と市民的自由の侵犯を惹起する可能性はない”、と取締役会が判断しないかぎり、Amazonがそのソフトウェアを政府機関に売らないことを、株主たちは要求している。

Amazon Web Services(AWS)の一部であるRekognitionには、顔の画像やビデオを分析する能力がある。その技術は人を認識し追尾できるだけでなく、人の感情も認識する。Amazonはこれまで少なくとも二つの州の法執行機関にRekognitionを売った、と過去に報道されている。合衆国移民税関執行局(U.S. Immigration and Customs Enforcement, ICE)に売り込んだ、という報道もある

昨年5月にアメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union, ACLU)の北部カリフォルニア支部がRekognitionを調べて、同支部が得た関連文書は人権と市民的自由に関する深刻な懸念を喚起する、と述べた。そのときACLUが得た試験報告は、Rekognitionが28名の国会議員を誤判定したとし、とりわけ黒人の議員を犯罪者と認識した、と言っている。

今回の決議文は非営利団体Open MICがまとめたもので、決議に参加した株主たちの総株数は資産額13億2000万ドルに相当する。

Open MICの事務局長Michael Connorが、同団体のブログにこう書いている: “これはよくあるパターンで、先進的なテクノロジー企業が画期的な技術としてマーケティングしているものが、人間や社会に及ぼす影響をまったく認識配慮していない、という例だ。Rekognitionを政府に売ることは、会社と投資家の双方にとって大きなリスクだ。だからその販売を即刻やめることは、喫緊の要請なのだ”。

この決議は、Amazonの今春の株主総会で票決される予定だ。

Amazonはこの記事へのコメントを拒否した。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

MyMeは会った相手全員を覚えてくれる――OrCamから顔と名刺を認識するウェアラブル・カメラ登場へ

テキスト読み上げテクノロジーを利用して視覚にハンディキャップのある人々向けのデバイスを提供しているスタートアップ、OrcamからMyMeというミニカメラが登場した。Tシャツの襟元にもクリップできる小型デバイスで、 ユーザーが会った相手をすべて記憶する。

MyMeはスマートフォンからカメラ部分を独立させたようなプロダクトで、OrCam独自の顔認識アルゴリズムにより、顔と名前を一致させてくれる。会議やカンファレンスで大勢の初対面の人に会うような場合はもちろん、日常生活でも大いに役立ちそうだ。

OrCamは数年前から視覚にハンディキャップがある人々向けのMyEyeを販売している〔MyEye2は日本でも販売中〕 。これはメガネにクリップするウェアラブル・デバイスだ。カメラとスピーカーが内蔵されており、ユーザーが指さした部分を読み上げてくれる。

OrCamはこうしたリアルタイムの画像認識テクノロジーの延長線上にあるプロダクトだが、一般ユーザーを対象にしている。OrCamの秘密は非常に小型軽量のボディーにMyEyeのOCR機能と顔認識機能を搭載したところにある。当然バッテリーも小型だが、処理はすべて本体内で実行され、クラウドへの接続は必要ない。

またOrCam MyMeは画像や音声を一切記録しないのでプライバシーに関する懸念は少ない。デバイスが顔を認識すると特徴を抽出してシグナチャーを生成し、マッチする記録があるかどうかチェックする。MyMeはスパイカメラではないので相手はレンズが自分の方を向いているのに気づく。人によっては多少違和感を感じるかもしれない。

ユーザーが初対面の誰かに会う(相手が一定の距離で正面に立つ)とMyMeはスマートフォンないしスマートウォッチに通知を送る。ユーザーは通知が来たデバイス上で名前を入力できる。次にその相手と会ったときに.MyMeはシグナチャーをチェックし会ったことがある相手だと通知してくれる。

相手が名刺をくれた場合、ユーザーはMyMeのレンズの前にかざせばよい。デバイスは自動的に名刺のデータと顔データを結びつけて記録する。

ユーザーは人々を家族、同僚、友達などに分類してタグづけできる。過去数週間に会った人の数をタグ別に知ることもできるのでワーク・ライフ・バランスも数字で分かる。

MyMeはまだ市販が開始されていないが、すでにKickstarterで800台以上の予約を得ている。OrCamでは熱心なユーザーによるコミュニティーを組織し、新たなユースケースの開発に役立てたい考えだ。

私(Dillet)は先週のCESで実機に触れるチャンスがあったが、写真での想像よりずっと小型で軽いのに驚いた。それと知らなければ誰も気づかないだろう。Google
Glassのようにひどく目立って邪魔になるということはないはずだ。服装によってクリップが使えない場合はマグネットによる吸着キットも用意される。.

OrCamでは2020年1月までに399ドルでMyMeの市販を開始する予定だ。これは確かに役立つデバイスだと思うが、唯一の懸念は、「常時待機して顔認識する」というデバイスに対して人々がどう感じるかだ。

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