「高齢者に役立つテクノロジーはすべての人の役に立つ」とスタートアップはCESで示す

2022年のCESではエイジテックのスタートアップが可能性の広さを示した。テクノロジーが高齢者の生活をもっと快適にする助けになるなら、他の多くの人々の助けにもなるだろう。移動のサポート、健康状態をモニタリングするプラットフォーム、長期的な資金計画などが役に立つのは高齢者に限ったことではない。

米国時間1月5日、筆者はAARP Innovation Labsのバーチャルプレゼンに登場したスタートアップの記事を公開した。このプレゼンではファイナンスのリテラシーに関するプラットフォームから更年期対策プロダクトを開発するD2Cのスタートアップまで、さまざまなテーマが取り上げられた。

TechCrunchでは他にも、開閉式のトレイシステム、棚、オプションの冷蔵庫を備えたLabrador Systemsのロボットカート「Retriever」を紹介した。最大25ポンド(約11.3kg)を運搬できるRetrieverは移動に制限のある人の助けとなり、家庭で洗濯物や食事などを運ぶことができる。このカートはAlexaの音声コントロールにも対応している(同社はAmazon Alexa Fundの支援を受けている)。

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Sengledは心拍数や体温、睡眠の記録などをレーダーでセンシングして健康状態を把握できるスマート電球を発表した。スマートモニタは新しいアイデアではないが、Sengledの電球は極めて控えめだ。TechCrunchのハードウェア担当編集者であるBrian Heater(ブライアン・ヒーター)は「転倒検知など、高齢者介護に役立つ可能性のあるアプリケーションを搭載している」と記している。

関連記事:この電球はユーザーの健康状態をモニターする

テック大手が家庭用ヘルスモニタリングに参入する傾向も続いている。LGは、2021年と2022年の同社の全スマートテレビにリモートヘルスプラットフォーム「Independa」のアプリをインストールすると発表した。これにより、ユーザーはLGのテレビで遠隔治療の予約を取り、薬剤給付のプランを利用できる。

医療機器スタートアップのEargoは、最新の補聴器「Eargo 6」を発表した。新機能として自動で設定を調整する専用アルゴリズムの「Sound Adjust」を搭載し、ユーザーは騒がしい環境で手動で切り替えをして会話を聴きやすくする必要がなくなる。また、Eargoのアプリで選択できる環境設定の「マスクモード」も追加され、マスクをつけている人の話がこれまでよりクリアに聞こえるようになる。

Sensorscallは、Apple WatchやFitbitなどのヘルストラッキングデバイスと統合されたリモートモニタリングアプリ「CareAlert」のアップデートを公開した。家族や介護者は新しい健康状態ダッシュボードを通じて、毎日のルーティン、睡眠パターン、衛生の状況、キッチンの使用に関する傾向を見ることができる。CareAlertを開発したのは、自立して生活する(つまり住み慣れた家で生活し、その多くは家族と離れている)高齢者だ。

BOCCO emoロボット

BOCCO emoは介護施設での見守り用に作られた最新のロボットだ。開発したのはクッション型ロボットのQooboを作ったユカイ工学で、テーブルに置ける小型のBocco emoは医療用のIoTデバイスと接続して患者のバイタルを監視し、状態を看護師に通知する。患者が助けを必要とする場合は、看護師が到着するまでBOCCO emoが患者に話しかける。患者の状態を家族に知らせることもできる。BOCCO emoはすでに日本で試験運用を実施し、現在は日本国内の病院で使われている。この小さなロボットは「emo言語」を使う。ユカイ工学はこれについて、ユーザーの話と感情を理解し、それに応じて「効果音、顔の表情、ジェスチャー」で反応するものと説明している。

IoTセンサーを活用して自立した生活を支援するスタートアップには、Nodeus SolutionsのKoKoonがある。これはモバイルアプリに接続された小さなIoTセンサーのネットワークで、介護者や家族を対象としている。アルゴリズムが個人の習慣を学習し、行動に変化があれば介護者に知らせる。

IoTセンサー、AI技術、モバイルアプリを組み合わせたスタートアップとしては他にCaregiver Smart SolutionsUnaideSmart Macadamがある。

画像クレジット:Marko Geber / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

介護領域のデジタル化を目指す、みーつけあが累計2.4億円調達

みーつけあは10月6日、累計2.4億円の資金調達を発表した。第三者割り当て増資よる調達で引受先は、ジェネシア・ベンチャーズ、グリーベンチャーズ、日本スタートアップ支援協会、Persol Innovation Fundと複数名のエンジェル投資家。また既存株主として、East Ventures, ジェネシア・ベンチャーズ、YJキャピタル、 メルカリファンド、中川綾太郎氏、佐藤裕介氏が名を連ねている。

高齢化が進む日本では介護の必要性が高まっているが、現状では市区町村役場などから紙の申請や冊子、地域の口コミなどで情報が共有されているのが現状だ。同社によると、こういった状況のため、望んでいる介護にたどり着くのが難しいと感じている高齢者も多いとのこと。介護利用者数は増加し続ける一方で、介護ヘルパーの不足やミスマッチなどによって、適切な介護を受けられない高齢者もいる。

米国出身のみーつけあ代表の洞 汐音氏は、大学時代に前身となるBayCareを設立し、訪問介護事業所を運営しながら介護業界のDXを推進してきた人物。当時は、ヘルパーと利用者の直接マッチングで効率化を目指すプラットフォームを開発していたそうだ。

その後、代表自ら介護資格を取得し、より現場を理解するために訪問介護に携わることになった。事業所運営とヘルパー業を進めるうえで、介護保険制度がある日本介護のDXに不可欠なのはヘルパーと利用者だけではなく、介護に関わるすべての人々にリーチすべきであると決意し、2019年にみーつけあを創業した。

同社の主な事業は、介護相談と事業所・施設の紹介、マッチングサービスの「みーつけあWorkers」。そのほか、介護情報を集約したサイトを運営している。介護相談と事業所・施設の紹介については、介護資格者が常駐し、LINEやメール、電話などで介護に関わる相談を現在は無料で受け付けているとのこと。

2020年4月に開始したみーつけあWorkersは、現在150以上の法人、300以上の事業所が申し込んでおり、すでに1000名以上のヘルパーから紹介の申し込みを受けたそうだ。また、ベネフィット・ワンとも業務提携し、企業の福利厚生として介護相談や施設紹介のサービスを受けられる取り組みを開始している。

とはいえ、150法人、300事業者ではまだまだ規模が小さく、今回調達した資金は提携する事業所を開拓するマーケティング費用に投下するとのこと。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:介護、資金調達

要介護者ごとに適したリハビリプランを自動提案、介護事業所向けSaaS「リハプラン」が1億円を調達

介護事業所向けのリハビリ特化型SaaS「リハプラン」を開発するRehab for JAPANは8月10日、2017年2月から2018年7月にかけて実施したシードラウンドとシリーズAにおいて約1億円を調達したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先となったのはIF Lifetime Ventures、キャピタル・メディカベンチャーズが運用するファンドなどだ。

リハプランはデイサービスに勤務する機能訓練指導員のリハビリを支援するサービス。身体状況や生活状況など要介護者ごとの基本情報を入力し目標を設定すれば、個々に合った訓練メニューをデータベースから自動で提案する。

短期・長期目標をテンプレートから選択することことでスムーズに目標設定ができるほか、1800種類以上、600セットの運動プログラムに対応。運動の結果をグラフ化する機能も備える。また社内に配置するリハビリ専門スタッフのカスタマーサポートも組み合わせることで、専門職が不在のデイサービスでも利用できる環境を整えた。

高齢化が進む日本の介護市場ではリハビリのニーズが高まっている。特にデイサービスを中心とした介護事業所では、要介護者の日常生活を支えるだけなく個々の目標や目的に沿ったリハビリを行い、生活機能の維持・向上をサポートする役割が求められるようになる。

一方で実際の介護現場では、その要望に十分に応えるだけのマンパワーと専門性の両立に苦戦しているのが現状なのだそう。そのような背景もあって「職種を超えたリハビリ介護」をコンセプトに、介護事業所のリハビリを支援するリハプランを開発したという。

同サービスは2018年2月に正式版をリリース。7月時点で導入事業所数は100件を突破し、関わる要介護者の利用者人数も約5000人ほどに拡大している。Rehab for JAPANでは今回の調達資金をもとに組織体制を強化し、リハビリに関連する介護施設1万件への導入を目指す。

高齢者の徘徊、転倒、転落、不正な食事や睡眠等々の健康状態がすべてリモートで分かるリストバンドAifloo

センサーとAIを結びつけて高齢者のための‘スマートリストバンド’(腕輪)を提供するスウェーデンのAiflooが、510万ユーロの資金を獲得した。

このシリーズAのラウンドをリードしたのはEQT Venturesで、同社のアナリティクスパートナーのHenrik Landgrenは、“大量のデータと現代的なAI”を組み合わせて、高齢者の長寿と自立的生活をヘルプしていく点を、Aiflooの将来性すなわち投資価値として挙げている。

2015年にFelix EtzlerとMichael CollarosおよびAnders Widgrenが創ったAiflooは、高齢者の生活の質を良くするためのeヘルスシステムを作り、家族や介護者にも安心を与える、と自社を説明している。

ハードウェアはたくさんのセンサーを搭載したリストバンドで、AIが着用者の行動をモニタし、問題があれば介護者に通報する。とくに重視される問題は、徘徊や転落転倒、食事習慣の変化、そして睡眠行動の変化だ。

Etzlerはこう説明する: “Aiflooはまったく新しいeヘルスシステムであり、個人のビヘイビアを継続的に知ることができ、異状を検出する。それにより高齢者の強健な生活を助け、家族や友だちに安心感を与え、介護の専門家が提供するケアを拡張する”。

そしてその基本的なコンセプトは、“人間のビヘイビアの検出を当人に意識感知されない形でデジタル化する”ことにある。そのためにAiflooのリストバンドは、複合機能ではなく単機能のウェアラブルとし、長い電池寿命を確保する。そしてAIによるリアルタイム分析のようなコンピューターの重労働は、すべてクラウド側で行う。

“リアルタイムの状況把握だけでなく、長期的な傾向の記録と分析も行い、また、本人が通報不能の状態でも緊急状態の検出と通報をする。その後は、介護者が適切なタイミングで適切なケアを、テクノロジーの助力がなくても提供できることを期待したい”。

Etzlerによると、これまでの高齢者ケアは人間が手作業でやるべきことが多すぎて、もはや時代遅れである。またいくつかの専用システムや介護用機器類は、高価で、個人の特殊性に合わせてカスタマイズできず、しかも複雑だ、とEtzlerは指摘する。

“一方、これまでのウェアラブルは若くて健康な人向けだったり、糖尿病のような特定の医療状況に対応していた。私たちが作ったものは、個人化されており、丈夫で使いやすく、複雑な問題に対する長期的なソリューションだ。それを、装着者の負担にならないウェアラブルおよびサービスとして実装したのだ”。

スカンジナビア地域で有数のヘルスケア企業であるAlerisが、早くもAiflooを採用した。今後は、在宅介護の企業にも売っていきたい、とEtzlerは言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

高齢者のお友だちロボットを作るIntuition RoboticsがToyota Research Instituteから$14Mを調達、早くもメリットあり

高齢者ケアのためのアシスタントロボットElliQを作っているIntuition Roboticsが、サンフランシスコにオフィスを開いた。スタッフの増員と製品テストの充実を図りたい同社は、新たに1400万ドルを調達した。今回は、Toyota Research Institute(TRI)からだ。

ElliQを同社は“活動的な老後のためのお友だち(active aging companion)”と呼び、それはタブレットと併用する対話的ロボットで、高齢者が簡単にすぐ使えることを目指している。このロボットは高齢者が自分以外のものに積極的に関心を持ち、日常生活が活動的で、外部世界とのつながりを維持できることを目指している。そのために家族や親戚や介護者とビデオチャットができ、コンパニオンとして活動の提案ができ、また薬の服用を思い出させたりする。

最近ベイエリアのユーザーによるテストを始めたばかりだが、チームの増員も目指している。そのためには資金がもっと必要だし、またハードウェアのエキスパートも見つけたい。なんといっても、ハードウェアは難しいからね。

Toyota Research Instituteが投資をすれば、その二つが手に入る。Intuition RoboticsのCEO Dor Skulerによれば、同社にアプローチしてきたToyotaは、すぐにそれらしさの片鱗を見せた。ElliQのプロトタイプを見て、モーターの交換を提案したのだ。さすが、ハードウェアのエキスパートである。

“製品開発の現段階では、ヘルプが必要だから、その道に詳しくて専門家もいる投資家にアプローチされたことは、とっても嬉しかった”、とSkulerは語る。

同社のこの前の資金調達は600万ドルで、iRobotのRoombaやTerra Venture Partners, Bloomberg Beta, Maniv Mobilityなどが投資家だった。クラウドファンディングのプラットホームOurCrowdからも、資金を調達している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

スマート義肢の‘スマート’機能を靴下状のウェアラブルにして超低コストを実現

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義肢の未来が足早にやってくる。3Dプリント、新しい素材、そしてセンサーの内蔵が、古き日のそっけない木とプラスチックに代わりつつある。でも未来はどれも、平等には行き渡らない。そこで、高価な新しい義肢に手が届かない人たちのために、オーストリアの研究者たちが、センサーを取り付けた衣料品で無脳な義肢をスマート化(有脳化)する方法を提案している。

リンツの応用科学大学が開発したそのproCoverと呼ばれる製品は、ACMのUIST(User Interface Software and Technology)カンファレンスで紹介され、最優秀論文の一つに選ばれた。

その論文の序文には、こうある: “感覚をエミュレートできる義肢の開発は、昨今ますます多くの研究者たちが、関心を持ちつつある。しかしながら、この分野における優れたイノベーションの多くが、多くの人びとにとって手の届かないままでありがちである。われわれのビジョンは、既存の義肢に後付けできる、センサーを装備した安価なウェアラブルにより、この落差を填めることである”。

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彼らのソリューションは、義肢のユーザーの多くが、ふつうの手足のようにソックスやグラブを着用することから発想されている。だったら、そのソックスをスマートな素材で作ればよいではないか。そこから、彼らのproCoverは誕生した。伝導性素材の層が圧電抵抗の層をサンドイッチすれば、脚や足首全体をカバーする感圧性のグリッドが作られる。

それを、ユーザーが必要とするときに振動モーターのリングに接続する。脚のある部分が圧力を受けると、その部分のモーターが、それぞれ異なる周波数で振動する。別のバージョンとして、義肢の膝(ひざ)を曲げたときの角度を伝えるものもある。

それは多方向的な柔軟性があり、圧力や位置をローコストで感知できる。フィードバックの機構も非侵襲性(体内に入らない)なので、手術は不要だ。

プロトタイプの初期の実ユーザー実装テストでは、デバイスは構想どおりに機能し、有用性に富むフィードバックが得られたが、ユーザーの実態に応じてのカスタマイズの必要性が明らかとなった。センサーなどの配置位置や、フィードバックの強度などは、カスタマイズが容易だ。またフィードバックを、振動ではなく圧力の増加で表す方法も考えられる。

チームの次の課題は、ソックスの構造をもっと単純化することだ。そして義手のユーザーのためのグラブも、作らなければならない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

老人介護のHonorが契約社員を正社員にして株式も付与、そのわけは?

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Andreessen Horowitzが投資している在宅老人介護サービスHonorは、ベビーブーム世代の高齢化を支えるビジネスだ。同社は今、契約社員を正社員にしようとしている。

介護のワーカーを同社はCarePro(s)と呼んでいるが、彼らは正社員になるだけでなく、ストックオプションの権利も付与される。つまり、同社の株を持てる。

CEOのSeth Sternbergはこう語る: “本当は、うちの会社に二種類の人間がいてほしくない。誰もが高齢者を助ける仕事をしているのだし、誰もが成功しなければHonorの成功もない。会社の現実は、ユーザから見た視野の中にある。そしてユーザに提供しているうちのプロダクトは、CareProなのだ”。

とくにUberの成功以来、ソフトウェアをより効率的に使ってサービスワーカーを配置するテクノロジ企業の明確な特徴は、労働者の構造が二層構造であることだ。

ひとつの層は、プラットホームを作るエンジニアや役員、プロダクトマネージャなどだ。もうひとつの層には、大量の契約社員がいる。最初の層の人たちには会社の株式が支給されるが、それは会社の業績次第で無だったり大金だったりする。第二の層の人たちは、個々の契約単位あるいは時間で給与が支払われ、社員福祉や社員特典、失業保険などはない。

この構造は、未来の労働者の保護や福祉はいかにあるべきか、という、まだ結論のない議論を喚(よ)んだ。未来のというのは、フリーランスや契約ベースの労働者がますます増える未来、という意味だ。

もっと面倒なのは、これらのテク企業においても、フルタイムの正社員に比べて契約社員たちは社会経済的な多様性が激しい、という現実だ。Honorの場合は、90%が女性で、その半数以上が非白人、彼らの1/3に要扶養年齢の子どもがいる。そして4人に一人以上が移民だ。私の知るかぎり、契約社員の人種構成や社会経済データを公表しているオンデマンドテク企業は一社もない。

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集団訴訟によってYC出身のクリーニング企業Homejoyが廃業に追い込まれて以来、ShypやLuxeなど数社のテク企業が契約社員労働者を常勤社員にした。労働者の誤分類に対する訴訟は、高くつくことがある。Fedexは昨年の夏、2億2800万ドルの和解金を支払った。

Sternbergによると、彼の決定は全然、これらの圧力の影響によるものではない。今は、決定後の離職者が最初に想像したより少ないので、ほっとしているそうだ。

“うまくいかないよ、と言う人が多かった。CareProたちの60%以上はよそへ移る、と予想していた。でも、蓋を開けてみたら実質ゼロだった。これからは、CareProたちを教育訓練したいし、成長させたいし、昇進の道も開きたい”。

いろんなオンデマンド企業の中でHonorの事業がユニークなのは、このタイプの仕事は本当は代替不可能であることだ。あなたを運ぶUberのドライバーが毎回換わるように、介護労働者をほかの人と簡単に換えることはできない。介護労働者は家族との長いつき合いになることが多く、介護受益者当人の体の状態をチェックしたり、特殊なケアや、食事の世話などが必要だったりするから、専門的な教育訓練が必要になる。

“契約社員に対しては、教育訓練は不可能だ”、とSternbergは語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

超音波で直腸の動きを検知、排泄タイミング予測デバイスでTriple Wが資金調達

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排泄タイミングのお知らせがスマホに表示されるIoTデバイスを提供しようという日本人チームによるスタートアップ、Triple W(トリプル・ダブリュー)は、この4月末にニッセイ・キャピタルやアイスタイルキャピタルから資金調達をしたことをTechCrunch Japanに明らかにした。金額は非公開だがハードウェアスタートアップのシード投資としては大きめのようだ。

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さて、排尿や排便といった排泄タイミングを予測できるということで、それが一体なんのビジネスになるのかと思う人もいるだろう。米国サンフランシスコのバークレーを拠点に起業した中西敦士CEOによれば、以下の需要があるという。

  • 脊椎損傷患者:脊椎損傷のために便意を感じられない 10万人(日本)
  • 介護事業:高齢者の排泄介助は介護の柱の1つ。急に排泄を要求されても介護士は困る 600万人(日本)
  • 過敏性腸症候群:便が出るかどうかの判断にストレスを感じる 1200万人(日本)
  • 更年期女性:軟失禁 排尿のタイミングに困る 800万人(日本)
  • 育児:乳幼児のオムツ替えのタイミング
  • 女性:女性の48%が便秘に悩んでいる 4000万人(日本)

このように多くの人が排泄関連で困っている。これら需要に対し排泄予知ウェアラブルD Freeは、お腹に貼付けるタイプのデバイスから腸に照射した超音波をセンサーで検知し、そのデータを機械学習することで排泄タイミングを予測するデバイスを開発している。

超音波を使ったコンシューマー向けデバイスは、主にkHz帯が中心に使われているが、より詳細な部位を検知できるMHz帯のデバイスは少なく、今回のデバイスでは医療向けと同様のMHz帯を使用している。センサー情報はクラウド上で機械学習し、排泄タイミングを予測するというが、予測のためのロジックはまだ開発途上のようだ。白鳥病院外科 部長 山川 俊紀氏(日本大腸肛門病学会)がアドバイザーとなっている。市場規模としては、介護等でのオムツの市場規模1700億円、排泄関連の薬の市場規模1000億円があり、これらに匹敵する規模であるという。

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デバイスの価格としては、4月24日からREADYFOR(レディーフォー)(クラウドファンディング)で2万4000円で募集開始するという。

デバイス開発で難しかった点は、直腸の膨らみを超音波センサーでひろえるかを確かめるときや、デバイスをどうやってお腹に装着するか、という点という。なぜデバイスをお腹に貼るのかというと、最も正確に膀胱・直腸の変化を捉えることができるからだそうだ。ただし、パンツ一体型やクリップ型、超音波振動子以外は万歩計のようにズボンに引っ掛けるタイプなど、利用シーンによって使い分けることも考案中という。またお腹に貼るのは、デバイス背面にジェルパッドを貼り付けることで腹部に貼れるようにしたそうだ。腹部とデバイスの間に空気が入らないようにするためでもある。

中西氏は、米国University of BerkeleyビジネススクールMBT(Management and Business Track)コースに留学中、バークレイ市内で引越しをしたときに荷物を抱えたまま便意を催し大変困った経験からこのサービスを考えたという。MBTコースでは4カ月間、Draper Nexusというベンチャーキャピタルでインターンを行った。このときDraper Nexusの Mitch Kitamura氏とスタートアップのディスカッションをしたときにこのサービスについて話したという。このようないきさつのため米国と日本にオフィスがある。

日本支社代表の小林氏は中西氏とは大学同期で、かねてからスタートアップの際にはいっしょにやりたいという話をしていて立ち上げ後にジョインした。他にもオリンパス工業でもともと内視鏡関連のエンジニアだった人物、ソフトエンジニア兼PM、マーケティング担当など6名が在籍する。

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どうしてIoTのようなものづくりに敢えて挑戦するのか中西氏にきいてみた。彼は以前、青年海外協力隊に参加して、フィリピンでマニラ麻の販売量を増やすためマニラ麻を使ったジーンズをつくったことがあるそうだ。そのときに、ものづくりを通じて人助けができることに喜びを感じたという。今回のデバイスの筐体は3Dプリンタでプロトタイプを作ってあるそうだ。

サービスの今後の展開としては、総合健康管理ツールを目指すようだ。排泄の情報は、その人の食事、運動、メンタルの指標となり得る。これを病気の早期発見や、生命保険のフェアバリューとして使うことができるという。

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D Freeが、これから実際の市場で普及するのかどうかといったことは未知数だ。ただ、一般に思われている以上に排泄にまつわる悩みを抱える人は多いし、これは場合によっては人間の尊厳にかかわる深刻な問題だ。米国で流行っているものをコピーして日本にもってくるということはしたくなかったという中西氏だが、あまり前例を聞いたことがない排泄検知ウェアラブルというジャンルで日本のチームでどこまでこの問題を解決できるのか注目だ。

Hiroki Takeuchi / POYNTER CEO Ph.D)