レガシーな会計技術スタックを一新するために仏Pennylaneが約65.7億円を調達

フランスのスタートアップ企業Pennylane(ペニーレイン)は、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)、Partech(パーテック)などの既存投資家から5700万ドル(約65億7800万円)のシリーズBラウンドを調達した。このスタートアップは、フランスで、そしてヨーロッパで、レガシーな会計ソリューションに取って代わりたいと考えている。

会計士であれば、CegidやSageのようなツールに馴染みがあるかもしれない。基本的に、Pennylaneはこれらのツールを全面的に見直し、会計事務所の技術スタックを現代化したいと考えている。

Pennylaneは、貴重な情報を保持しているサードパーティサービスと直接接続する。例えば、Pennylaneのインターフェースで銀行の明細を取得したり、Dropboxから領収書をインポートしたり、Stripeから請求情報を取得したりすることができるのだ。

また、オンラインプラットフォームであるため、会計事務所が共同でPennylaneを使用することも可能だ。クライアントもこのプラットフォームにアクセスし、領収書の一元管理、請求書の作成、一部のタスクの自動化などを行うことができる。表計算ソフトや写真の添付で情報をやり取りする代わりに、クライアントと会計事務所の双方がプラットフォーム上で直接やり取りできる。

現在、300の会計事務所がPennylaneを利用している。その中には、数人のクライアントと一緒に使い始めた事務所もあれば、完全に新しいツールに切り替えた事務所もある。興味深いことに、Pennylaneのクライアントは、このプラットフォームをもっと使いたいと思っており、つまり、彼らが新しいクライアントを連れてきているのである。

「9カ月前、90%のクライアントが直接私たちにコンタクトを取り、そのうち10%が会計事務所経由でクライアントになっていました。9カ月後、その傾向は変わりました。私たちのクライアントの81%が会計事務所からなのです」と共同創業者兼CEOのArthur Waller(アーサー・ウォーラー)氏は教えてくれた。

同社は収益の数字を共有したがらなかったが、ウォーラー氏は、この夏以降、毎月20%ずつ成長していることを教えてくれた。2020年以降、Pennylaneは9600万ドル(約110億8300万円)を調達している。

一歩後ろに下がって眺めてみると、Pennylaneには大きな市場機会が待っているということがわかる。英国や米国など、より成熟した市場では、企業はQuickBooksやXeroなどのSaaS型ソリューションを利用してきた。しかし、会計業界は断片的で、各国が独自のソフトウェアソリューションを使用している。フランスのように、会計のための決定的なSaaSソリューションが存在しない国もある。

「フランスには、約1万2000の会計事務所があります。現在では300の会計事務所と取引しています。4、5年後には150万社の中小企業と取引することが目標です」とウォーラー氏はいう。

この先、地理的な拡大だけでなく、製品チャンスもある。Pennylaneは、財務管理に関連するあらゆるものの中心的なハブとなる可能性があるのだ。

例えば、Swan(スワン)と共同で社用カードのベータテストを開始し、決済の円滑化を図っている。社用カードから発生する交換手数料を、会計事務所とレベニューシェアするようなイメージだ。同社は、フランス市場にだけでもまだやるべきことがたくさんあるため、今回の資金調達で、製品のイテレーションができるようになると考えている。

同社は、年内に従業員500人を計画している。同社は、技術と製品がこのスタートアップにとって最も重要な分野であると考えており、ほとんどの採用はこれらのカテゴリーで行われる予定である。基本的に、Pennylaneは、新しく始める会計士が何も考えなくてもよいような製品を作りたいと考えているのだ。

画像クレジット:Pennylane

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

freee会計が法人・個人事業主向けEコマース「Amazonビジネス」の購買明細APIと公式連携を開始

freee会計が法人・個人事業主向けEコマース「Amazonビジネス」の購買明細APIと公式連携を開始

freeeは1月24日、「freee会計」において、日本の法人・個人事業主向けEコマース「Amazonビジネス」が提供する購買明細APIと公式に連携を開始したことを発表した。これにより、セキュアかつ正確で安定した同期、注文した商品単位での明細連携が可能となる。

freee会計の従来連携手段(スクレイピング連携)では、1回の注文で複数品目を購入した場合、勘定科目や消費税率を商品ごとに設定できず、注文がまとめて明細に表示されていた。このため、自動同期した明細を注文商品ごとにわけて勘定項目を設定するという手作業が必要だった。

今回のAPI連携では、商品ごとに明細が作成されるため、勘定科目や税率の設定が簡単になり、「自動で経理機能」の活用によって自動化・業務効率化を実現できるようになった。また、Amazonビジネス上でユーザーが設定したグループ単位での同期が行えるため、部門や取引先単位での購入履歴取り込みが可能となっている。

APIの連携は、freee会計の口座機能より行える(「Amazonビジネス – 購入履歴を取り込む」参照)。ただし利用には条件があり、「日本のAmazonビジネスを利用中の方」と「今回初めてAmazonビジネスとfreeee会計の連携を行う方」の両方を満たす必要がある。

従来の方法で連携した方が新たに連携を行ってしまうと、明細の作成単位の変更に伴い、決裁書上の勘定項目が同じものであると判定されず手作業による修正が必要となる。そのため、現時点では今回のAPI連携への切り替えは推奨していないとのこと。そうした場合の移行方法は、別途ヘルプページにて案内する。

会計分野特化のAIソリューションを手がけるファーストアカウンティングが4億円のシリーズC調達

会計分野特化のAIソリューションを手がけるファーストアカウンティングが4億円のシリーズC調達

ファーストアカウンティングは1月19日、シリーズCラウンドとして、第三者割当増資により約4億円の資金調達を実施したと発表した。資金調達累計額は約14億円となった。調達した資金は、エンジニアの採用にあてる。引受先は以下の通りとなっている。

・BEENEXT2 Pte. Ltd.
・ALL STAR SAAS FUND Pte. Ltd.
・マイナビ
・Scrum Ventures Fund III L.P.
・KDDI 新規事業育成3号投資事業有限責任組合
・ライドオン・エースタート2号投資事業有限責任組合
・DEEPCORE TOKYO1号投資事業有限責任組合
・エースタート

ファーストアカウンティングは、買掛金(請求書支払)業務といった経理業務の効率化ソリューション「Robota」と、Robotaシリーズの機能を組み込んだAIソリューションとして「Remota」を提供。Robotaは、深層学習を通じて経理特有の証憑書類の形式をあらかじめ学習したAIと、AIが読み取った値を自動でチェックするロジックチェック機能を備えたクラウドサービスとなっている。

また同社は、デジタル庁および会計ベンダーの業界団体「電子インボイス推進協議会」が進めている「Peppol」(ペポル。Pan European Public Procurement Online)に貢献すべく、Peppolアクセスポイントの提供に向けて取り組んでいるという。Peppolは、国際的非営利組織Open Peppolが管理する電子インボイスの標準仕様だ。

Peppolにより請求書の根本的な電子化を進め、受取る請求書のみならず、大手のエンタープライズの販売管理システムにおける請求書の送付の電子化や、AIによる売掛金の消込を実現するとしている。そのため、エンジニアの採用を積極的に行う方針という。

またより強固な開発体制を構築することで、「買掛金業務を圧倒的に効率化する先進的な機能の開発」「安定的なサービス運用のためのインフラの整備やSRE体制の構築」「QA体制を強化し品質の高いプロダクトの提供」を実現し、Remotaに関して使い勝手を向上させるとしている。

トーマツが会社・勘定科目単位で不正を検知するAIモデルを開発、今後2年間で監査先100社以上のリスク評価手続に活用

トーマツが会社・勘定科目単位で不正を検知するAI・機械学習モデルを開発、今後2年間で監査先100社以上のリスク評価手続に活用

デロイト トーマツ グループの有限責任監査法人トーマツは1月7日、過去の不適切な財務データをAIに学習させることで、会社、勘定科目単位で不正を検知する不正検知モデルを開発し、2022年1月から本格導入を開始すると発表した。また、これまで活用してきた仕訳分析モデル異常検知モデル(2017年8月特許取得済)と組み合わせて、不正リスク評価から、対応手続の立案まで網羅的にAI・アナリティクスを活用するアプローチを確立した。不正検知モデルの開発などAIの活用を通じて、AI・データドリブンによる監査の高度化を目指す。

2015年以降、不適切会計が明らかになった企業の数は増加しており、コロナ禍による業績不振も勘案すると、今後もこの傾向は続くと考えられるという。不正の発生は、企業に大きな損失をもたらすものであり、いかに不正リスクを抑えるかが急務の課題と指摘している。

従来監査人は、監査先の財務データに対し、異常とみなす基準値や予算との比較、前期からの趨勢把握などによって、監査で重点的にフォローするグループ会社や勘定科目を選別していた。一方、今回同社が開発した不正検知モデルでは、上場企業の過去の不正の傾向をAI・機械学習モデルに学習させているため、監査人は監査先から財務データを入手し、不正検知モデルにデータを投入することで、予測モデルによる不正スコアの計算のもと、不正リスクが高い会社、勘定科目および財務指標を識別する。これにより、監査人は不正リスクの分析を効率的に行うとともに、従来識別しえなかった不正パターンの識別が行えるという。不正検知モデルで検知された不正の兆候に基づいて監査人が監査先企業との議論をより深化させることで、企業のガバナンス向上に貢献するとしている。

トーマツでは、不正検知モデルを一部活用した監査に着手しており、すでに10社超の上場会社の監査において、主に子会社のリスク評価手続に活用している。さらに、今後2年間で100社以上の監査先のリスク評価手続に活用することを目指しているという。また、不正検知モデルの更なる性能向上に向けて、監査先の同意を得た場合には当該監査先の財務情報をモデルの学習に用いることでモデルの精度を向上させることや、市況データのバリエーションを増やすことで、特に海外子会社に対するリスク評価の精度向上を予定している。

今回開発した不正検知モデルでは、予測性能に優れる勾配ブースティング技術を採用し、2005年以降に公表された有価証券報告書および訂正報告書に含まれる財務諸表と為替レート、物価指数などの市況データをAIに学習させて、複数の財務指標から不正企業と正常企業との相違性を見出し、その結果を不正企業との近似度として0~1の間でスコアリングする。

また、どの指標がスコアに影響しているのか、会社別の各指標の時系列推移や、指標値の算定に使用した勘定科目の実数値を詳細に確認できるため、AIが算出したスコアがなぜ高いのかを説明することが可能という。あわせて、不正リスクが高いと評価された企業と類似した不正シナリオを持つ過去の不正企業を参照できる仕組みも構築している。

これにより、これまで活用してきた仕訳分析モデルや異常検知モデルと組み合わせて、より広範な観点から不正の兆候を把握するリスク評価から、不正リスクの高い仕訳や取引に対して個別・詳細に分析を行い、リスク対応手続の立案まで網羅的にAI・アナリティクスを活用するアプローチを確立した。トーマツが会社・勘定科目単位で不正を検知するAIモデルを開発、今後2年間で監査先100社以上のリスク評価手続に活用

財務データのフローを自動化するフィンテック「LiveFlow」がYCやKlarna創業者からシードで約4億円調達

CTOのエバン・オブライエン氏、CEOのラッセ・カルカー氏、COOのアニータ・コイミュール氏(画像クレジット:LiveFlow)

フィンテックのスタートアップ「LiveFlow(ライブフロー)」は、Moonfire Venturesがリードし、Y Combinator(YC、Yコンビネータ)、Seedcamp、WndrCoが出資したシードラウンドで、350万ドル(約4億円)を調達した。また今ラウンドには、Klarna(クラーナ)の共同創業者であるVictor Jacobsson(ビクター・ヤコブソン)氏、元Google(グーグル)の製品担当VPであるBradley Horowitz(ブラッドリー・ホロウィッツ)氏、元Airbnb国際展開担当VPのOliver Jung(オリバー・ユング)氏、Peakonの創業者兼CEOのPhillip Chambers(フィリップ・チェンバース)氏などが参加した。

LiveFlowは、会計サービス、銀行、決済プラットフォームからのリアルタイムデータをカスタムレポートに同期させることで、ワークフローの自動化、企業アカウントの統合、全社的なコラボレーションを可能にする。

CEOのLasse Kalkar(ラッセ・カルカー)氏、Anita Koimur(アニータ・コイミュール)COO(元Revolut)、Evan O’Brien(エバン・オブライエン)CTO(元Web Summit)によって約1年前に設立されたLiveFlowは、Ascent CFO、CFO Minded、TinyCFOなどの会計事務所や、Y Combinator発のスタートアップ企業など、ほとんどの顧客を米国内に抱えている。

LiveFlowの共同設立者兼CEOであるカルカー氏はこう語る。「以前、勤めていた会社では、財務報告書を手作業でまとめることにフラストレーションを感じていました。LiveFlowのアイデアはそこから生まれたのです」。

Moonfire Venturesの創設者兼マネージングパートナーのMattias Ljungman(マティアス・リュングマン)氏は次のように述べている。「LiveFlowは、レポート作成プロセスを自動化・合理化することで重要なサービスを提供し、企業がビジネスをよりよく管理するために必要な可視性とリアルタイムの情報を提供します」。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

95%の精度で請求書を処理する「会計自動化」プラットフォームのVic.aiが55億円調達

企業会計を「自動化」することができるとうたうAIベースのプラットフォームを構築したスタートアップVic.aiがシリーズBラウンドで5000万ドル(約55億円)を調達した。本ラウンドはICONIQ Growthがリードし、既存投資家のGGV Capital、Cowboy Ventures、Costanoa Venturesも参加。Vic.aiの累計調達額は6300万ドル(約69億円)になった。

Vic.aiの顧客にはHSB(スウェーデン最大の不動産管理会社)、Intercom Inc、HireQuest Inc、そして会計事務所のKPMG、PwC、BDO、Armanino LLPが含まれる。これまでにVic.aiのプラットフォームは5億3500万件の請求書を95%の精度で処理した、と同社は話す。

会計プロセスでさらにオートメーション化を進めるために過去のデータと既存のプロセスから学習することでこの自動化を実現しており、時間を節約するとともにミスや重複も減らしているとVic.aiは説明する。

同社のCEOであるAlexander Hagerup(アレクサンダー・ハーゲルップ)氏は次のように話す。「2021年です。そろそろ財務と会計のチームがAIテクノロジーを利用すべきときです。会計業務は単調で繰り返しが多いものですが、そうした悩みはもうなくなります。我々のAIプラットフォームが財務と会計のチームのために自律性とインテリジェンスを提供します」。

ICONIQ Growthの創業パートナーであるWill Griffith(ウィル・グリフィス)氏は、Vic.aiのチームは「他の非常に優れた創業者らと同じ情熱、プロダクト中心・顧客第一の精神を持っています」と述べた。

画像クレジット:Vic.ai

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

電子商取引の記帳を自動化する会計プラットフォームのSynderが2.2億円調達

Synderのマイケル・アストレイコ氏とイリヤ・カイゼル氏(画像クレジット:Synder)

Synder(シンダー)の共同創業者であるMichael Astreiko(マイケル・アストレイコ)氏とIlya Kisel(イリヤ・カイゼル)氏は、Y Combinatorでの活動を終えると同時に、シードラウンドでTMT Investmentsから200万ドル(約2億2000万円)を調達すると発表した。

このラウンドは、アクセラレータープログラムに参加する前に獲得したものだが、ベラルーシを拠点とする2人は、このマイルストーンを公にするのを待ちたいと考えていた。今回の資金調達は、次の成長と拡大に向け、より多くの顧客を獲得し、知名度を上げ、販売につなげることを目的としている。

同社は、電子商取引ビジネスのための簡易な会計プラットフォームを自称している。もともとは2016年にCloudBusinessとして創業し、中小企業向けの会計の自動化と企業財務の管理のために開発を行っていた。

アストレイコ氏とカイゼル氏は2018年にSynderを立ち上げた。その1年後には、会社の時間をすべて、企業がオムニチャネル販売に移行する簡単な方法の開発に費やした。アストレイコ氏がTechCrunchに語ったように、オムニチャネル販売は、異なる決済システムの高い手数料や複雑さのせいで「大きな苦痛」となり得る。

「市場には多くのソリューションがありますが、会計や商取引に対応しながら経営するには、やはり特別な知識が必要です」とカイゼル氏は話す。「私たちにとって、シンプルであるということは、数回のクリックで連結された在庫、利益、負債にアクセスできるのであれば、それだけの価値があるということです。小規模な企業では、競争のためにそうした情報を共有していないことがありますが、機能的で簡単なものであれば、間違いなく共有するでしょう」。

Synderは、Amazon(アマゾン)、Shopify(ショッピファイ)、eBay(イーベイ)、Etsy(エッツィ)などの販売チャネルを1つのプラットフォームに接続し、ユーザーがワンクリック操作で管理できるようにして企業の重い負担を軽減する。また、さまざまな決済方法をそのまま利用できるように、会計処理の流れを支援する方法も生み出した、とカイゼル氏は語る。

同社はすでに4000社の顧客と取引をしており、今後は事業拡大を急ぐが、会社の成長には適切な人材が必要だとアストレイコ氏はいう。

TMT InvestmentsのパートナーであるIgor Shoifot(イゴール・ショイフォット)氏は、SynderがYCを卒業した後、Synderの役員に加わる予定だという。同氏は、この会社がやっていることのシンプルさを気に入っている。

「最良のソリューションは、経済的で簡潔かつエレガントなものであることが多く、10分で使い始めることができます」ショイフォット氏は付け加えた。「こんなに簡単で、何かをダウンロードしたりインストールしたりする必要のない、似たようなソリューションを提供しているところは本当にありませんでした。また、成長に力を入れている点や、キャッシュバーンがなく、収益を上げている点も気に入っています」。

Synderのビジネスモデルは、サブスクリプション型のSaaSモデルで、無料トライアルから始まり、ユーザーは企業の規模に合わせてプラットフォーム内の追加サービスを購入することができる。

15人以上の従業員が欧州に散らばっており、米国ではマーケティングとセールスの分野で採用を始めたばかりだ。

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

機械学習で中小企業の会計経理を自動化するDocytが拡張シードで1.5億円調達

会計は、多くの人が興奮するような話題ではない。たぶん、当の会計士にとってさえも。でも、会社を経営している人なら、それから逃れることはできない。サンタクララのDocytは、財務データの収集や領収書のデジタル化、分類、そしておそらく最も重要な会計調整(帳尻合わせ)などのルーチンを機械学習で処理し、中小企業(と彼らの会計事務所)の人生をやや楽にしてくれる。

同社は米国時間2月25日、First Rays Venture Partnersがリードする拡張シードラウンドで150万ドル(約1億6000万円)を調達したことを発表した。これには、Morado Venturesと一群のエンジェル投資家たちが参加した。Docytは「ドケット」と発音し、以前Morado VenturesやAME Cloud Ventures、Westwave Capital、Xplorer Capital、Tuesdayおよびエンジェル投資家から220万ドル(約2億3000万円)のシード資金を調達している。新たな資金は、顧客をさらに増やすことに使われる計画だ。

 

中小企業の会計処理といえばQuickBooksがデファクトスタンダードだが、Docytは彼らと競合するのだろうか。共同創業者でCTOのSugam Pandey(スガム・パンディ)氏によると、DocytはむしろQuickBooksなどのパートナーになるものだ。

画像クレジット: Docyt

「Docytは、会計や経理を難題だと感じている中小企業のオーナーのためのプロダクトで、彼らは経営においてはベテランの名人であっても、会計の専門知識はありません。また、会社がやや大きくなって中規模になってくると、QuickBooksを卒業してNetSuiteやSageのような高度な会計経理システムを使いたくなるものです。Docytはそんな企業のためにQuickBooksの寿命を延ばすことができるため、経営者はシステムを変えずに済みます」とパンディ氏はいう。

創業当時のDocytは、モバイル向けの安全な文書共有プラットフォームだった。同社のDNAには、その頃の名残が残っており、財務文書を銀行の取引勘定と調整する作業を得意とする。他のシステムは主に取引データを重視するが、Docytは多様な文書を重視する。例えばメールによる領収書をDocytのサービスに送ると、それがクレジットカードや銀行の勘定通知に自動的に入れられる。そのような処理に、同社はPlaidを利用している。

画像クレジット: Docyt

新しい取引があると、その情報を手入力して訓練しなければならないシステムが多いが、Docytはその多くを自動的に行い、データをQuickBooksと同期できる。

First Rays Venture Partnersの創業時からのゼネラルパートナーであるAmit Sridharan(アミット・スリダラン)氏は「Docytは、会計という仕事の全スタックにAIを適用した初めての企業です。DocytのAIを利用するデータ抽出や自動分類、自動調整などのソフトウェアは、他に類がありません。しかもエンタープライズ級の強力なソリューションでありながら、費用的にも中小企業が十分利用できます」という。

関連記事:会計分野のマーケットプレイスAgerasが260億円のバリュエーションで77億円獲得

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Docyt会計機械学習

画像クレジット:Docyt

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

会計分野のマーケットプレイスAgerasが260億円のバリュエーションで77億円獲得

バーティカルマーケットプレイスは引き続きデジタルエコノミーの重要な要だ。それは特定の商品やサービスを提供する人々がまさにそれを購入しようとしている人々とつながるよう集中管理された空間だ。その地位はパンデミック経済でさらに重要性を増しており、需要が高まっているようだ。そのトレンドに合わせ、デンマークのスタートアップであるAgeras Group(アギラスグループ)は米国時間2月22日、会計ソフトウェアの機能と中小企業が会計士を見つけるための市場の両方を提供するという2つの目的を持つプラットフォームを構築・拡大するための成長資金調達ラウンドを発表した。

コペンハーゲンに拠点を置く同社は、唯一の投資家であるLugard Road Capitalからの7300万ドル(約77億円)のラウンドをクローズした。

Agerasはバリュエーションを開示していないが、デンマークのメディアであるBorsenのレポートでは、15億デンマーククローネ(約260億円)と報じている。TechCrunchはAgerasの広報担当者に金額について問い合わせた。詳細が判明次第、この投稿を更新する。

またTechCrunchは過去の資金調達額についても質問した。2012年創業の同社は最初の5年間、資金調達を行わなかった。PitchBookは今回のラウンド以前の金額として約22万ドル(約2310万円)しか開示していない。既存投資家には、2017年に同社の過半数の株式を取得したInvestcorp、そして最近ではRabo Bankが含まれる。

新しい投資は会社の順調な成長に続くかたちとなり、それを活かす計画だ。  Agerasは現在、デンマーク、米国、スウェーデン、ノルウェー、オランダ、ドイツでユーザーが34万人を超えた。計画ではその資金により、一般的に「成長市場」と呼ばれるもの、つまり新しい国、新しい顧客セグメント、さらにはソフトウェアスタックへのサービスへ、有機的な成長と買収の両方を通じて進出する予定だ。

「Agerasは市場をリードするクラス最高の製品を確立しました。国際的な拡大と自動化されたビジネスツールの需要の高まりに対して最適なポジションに位置しています」と、Martin Hegelund(マーティン・ヘグランド)氏と共同で会社を創業したCEOのRico Andersen(リコ・アンデルセン)氏は述べた。同氏はSlack(スラック)などに投資してきた連続投資家でもある。「この最新の資金調達ラウンドは、Agerasブランドを拡大し、世界中の新しい顧客にソフトウェアを提供するという当社の継続的な取り組みを支えてくれます。今後もAgerasの物語を続けることを楽しみにしています」。

Agerasは現在、かなり典型的な労働市場モデルに従っている。会計サービスを求める中小企業は、会計、記帳、監査の3つの分野で必要としていることを提出し、それに対して3つの連絡先を受け取る。このモデルは、アンデルセン氏とヘグランド氏がよく知るモデルであり、以前「Fa det Gjort」(「仕事を片づけよう」の意味)と呼ばれるホームサービスのプロ向けのオンラインマーケットプレイスを構築した。

これに加え、そしてビジネスモデルをさらに多様化するため、同社は会計ソフトウェアの開発に進出した。最初は自社のMenetoスイートから始め、次にデンマークのBillyとオランダのTellowの2社を買収で追加した。

この投資はオンラインビジネスのマーケットプレイスモデルの永続的な人気をよく表している。Amazon(アマゾン)やAlibaba(アリババ)などによってeコマースで人気が出て、さまざまなサービスに拡がったモデルだ。

労働市場モデルはスタートアップの世界に散見されるモデルだ。Uber(ウーバー)はクルマが必要な人に移動の選択肢を与え、この分野を開拓した。Deliveroo(デリバルー)のようなモデルでは、ユーザーが契約すると料理やその他の商品を届けてもらえる。商売をする人と家や仕事を必要とする人とつなげる方法を提供する多くのプラットフォームがある。

より多くのナレッジワーカーの仕事へと拡大するその進化も特に新しいものではない。Upwork、BarkParoなどは、会計士が見込み客とつながる方法を提供する企業だ。

おそらくもっと注目に値するのは、現在この分野が拡大しつつある姿だ。パンデミックによりビジネス街で人の往来が減り、「オフィス」のかたちが変わった。それは、サービスを提供する人々へ扉を幅広く開いたが、同時に彼らが誰かに見つけてもらうのは難しくなった可能性がある。

マーケットプレイスはその課題を解決する1つの方法であり、その点で、LinkedInが熟練労働者のための独自のマーケットプレイスの構築を目指しているというレポートが出たのは当然のことだ。

ただし、Agerasが競争に直面している分野はそれだけではない。オンライン会計サービスの分野では、Intuitのような確立された企業だけでなく、PennylaneTaxScoutsZeitgold、Stripeが投資するPilotなどの新規参入企業を含む多くのプレイヤーがいる。

Lugard Roal Capitalは米国のヘッジファンドであるLuxor Capital Groupと提携しているベンチャーキャピタルのようだ。デリバリープラットフォームのGlovoinRiverなどにも投資している。一方Investcorpは、セキュリティ会社であるAviraの買収と売却、最近ではインドの物流スタートアップXpressbeesへの出資など、より大きなテック投資戦略の一環としてスタートアップに大きな出資を続けている。

関連記事:セキュリティソフト開発のNortonLifeLockが同業Aviraを約374億円で買収

「信頼できるという評判に裏打ちされたミッションクリティカルなソフトウェア、プロフェッショナルサービス市場に関する洞察、卓越した経営陣、最先端の研究開発の組み合わせにより、Agerasは市場での地位を高め、 高いクオリティーの経常的な収益に基づき会計エコシステムを提供しています」と、InvestcorpのMDでテクノロジー部門の責任者であるGilbert Kamieniecky(ギルバート・カミエニエツキー)氏は声明で述べた。「Agerasが確保した新たな資金は、国際的な拡大を推進し、顧客提供の継続的な革新を支えるのに役立ちます」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Ageras Group会計資金調達

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

会計自動化スタートアップのGeorgesが44億円調達、ブランドも「Indy」に変更

フランスのスタートアップGeorges(またはGeorges.tech)は、3500万ユーロ(約44億円)の資金を新たに調達した。ブランドも新しくなり、今後は「Indy」と呼ばれる。同社は、フリーランサーや中小企業向けの会計自動化アプリケーションを開発してきた。

Singularがこの資金調達ラウンドをリードした。Singularについてご存じではないかもしれないが、GeorgesのキャップテーブルにSingularが載っているのは至極もっともだ。パリを拠点とするベンチャーキャピタルであるAlvenのパートナーだったJeremy Uzan(ジェレミー・ウザン)氏とRaffi Kamber(ラフィ・カンバー)氏は、同VCを離れ自らのファンドを立ち上げた。ウザン氏は以前Alvenに在籍時にIndyに投資した。その後もSingularとともにIndiを追いかけている。

既存の投資家であるAlvenとKeralaも再び投資した。Indyはこれまで、サービスへのアクセスを得るために月額サブスクリプション料金を支払う4万人のクライアントを引きつけることに成功した。

Indiは最初、フリーランサー、自営業者、医師、建築家、弁護士などのために特別に設計した製品から始めた。これを利用すれば会計士を使わなくてもよい。まず、同社のサービスを銀行口座に接続する。次に、Indyがすべての取引をインポートし、できるだけ多くの取引にタグをつけて分類を試みる。

遡って不足しているデータを追加することもできる。取引に領収書や請求書を添付することも可能だ。こうした処理を行えば、年末に付加価値税をどの程度取り戻せるかがわかる。

次にIndyは、データに基づき管理フォームに自動で入力する。そうすると税務の書類をダウンロードしたり、Indyから直接書類を送付できたりする。

プラットフォームを利用すればビジネスの概要を把握することもできる。あなたは自分の会社の収入を把握したり、費用を追跡したりできる。あなた自身が会社からいくらもらい、また個人として費用がいくらかかったかに基づき、個人としていくら儲けたのかを知ることもできる。

時が経つにつれIndyはサービスを拡大し、多様な企業をサポートできるようになった。フリーランサーに加え、EURL(出資者1人で設立できる会社)、SARL(有限会社)、SAS(単純型株式会社)、SASU(1人簡素株式会社)をサポートしている。同社は2020年に売上高を3倍に増やした。

また同社は、フランスでBICステータスの商品を販売する人々を含め、さらに多くの自営業者をサポートするために製品の改善を計画している。Indyは2021年にリヨンで100人を雇用する予定だ。

同社はさらに大きな計画を立てている。潜在的な市場として米国を検討しているのだ。米国には自営業者が多い。興味深いチャンスになると思われる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Indy会計資金調達

画像クレジット:Kelly Sikkema / Unsplash

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(翻訳:Mizoguchi