勝者総取りの労働経済でいいのか?9億円を賭けたPandoの挑戦

今は勝者総取り経済の時代だ。労働市場はますます宝くじ化し、そこではまったく同じスタートラインから出発したはずなのに、ひと握りの「スーパースター」従業員だけが、同僚と比べて格段に高額な報酬を手にしている。

テック業界では、2人のJavaScriptエンジニアが単にそれぞれ別のスタートアップに就職したというだけの理由で、報酬に数十億ドル(数千億円)もの差が生じることがある。この極端な収入格差は、法律や金融といった職業にも伝播し、私のジャーナリスト仲間の間にすら及んできている。

Charlie Olson(チャーリー・オルソン)氏とEric Lax(エリック・ラックス)氏にとって、この力学は本能的に受け入れられないものだった。「自分の未来は100パーセント自分のものです。しかしひとたび職業人生が始まるや、仕事のリスクか報酬かの選択に拘束されるようになります」とオルソン氏はいう。宝くじに当たれば報酬は青天井だ。だがそれ以外の大多数にはセイフティーネットすらない。スーパースターの座を勝ち取るべく全力でレースを戦おうとしても、自分を守ってくれる保険もない。

Pandoの創設者エリック・ラックス氏とチャーリー・オルソン氏(画像クレジット:Pando)

2人の創設者は、スタンフォード大学経済大学院の在学中に出会い、周囲の仲間たちを監察するようになった。そのうち何人かは、数年のうちのビジネス界のスーパースターになるかもしれない。彼らは、いくつものアイデアを検討したが、いつも決まってひとつのアイデアに帰結した。職業人生のためのプール型の保険というアイデアだ。

彼らの考えは、2017年中ごろにサンフランシスコを拠点とするPando(パンド)として実を結んだ。まさにそんな職業人生のための保険プールを、仕事仲間のグループで構築できるプラットフォームだ。「私たちは、グループのメンバーが集まっていっしょにプールを選び、グループを選び、グループの各メンバーが、まだどうなるかわからない将来の収入から一定の割合を仲間のために提供することに同意してもらうというマーケットプレイスを作りました」とオルソン氏は説明する。

つまり、例えばビジネススクールの1人の学生の成績が、他の大勢の同級生と書類上は似ていたとする。統計的に、そのうちの1人が仕事で大成功するが、今のところそれが誰なのかはわからない。そこで彼らがつながって、将来の報酬を共有できるようにするというのがPandoの狙いだ。

支払いのルールは、そのプールのメンバー間で決めるのだが、Pandoはこれを製品化するにあたり新しくガイドラインを設定した。そこには通常、収入という経済的なハードルがあるため、収入が特定の閾値以下の場合は支払う必要はない。収入が閾値を上回ったメンバーは、大きなプールなら収入額の1〜2パーセント前後、小さなプールなら収入額の7〜10パーセント前後の割合で資金提供を行う。プールに集められたお金は、すべてのメンバーに公平に分配される。

Pandoは当初、プロ野球選手のグループでプールを作るという顧客プロファイルに注力していた。新聞紙面を飾る巨額契約金を獲得した選手とは対照的に、野球選手の多くは世間に注目されることもなく、それでもメジャーリーグで一発当てようと希望を抱き、最低の賃金で頑張っている。「無一文で球界を離れるか、大金を手にするかのどちらかです」とオルソン氏はいう。

この場合は、野球チーム内の極端な給与の差を緩和できると同時に、人々の関心を集めることもできる。「人々が手を結んで経済的な協力関係を築くという誘因のもとにグループを作るという考え方は、お互いに成功を願う本当の動機になります」とオルソン氏は話す。Pandoの標準的なプールのサイズは5.7人。野球選手の場合は、プールの対象となるのは各選手がチームから直接受け取る契約金だが、コマーシャル契約料などの副収入は含まれない。

ここまででほぼ理解できたが、1つだけ釈然としない点がある。意欲と才能のある人間に収入の一部を提供するようにPandoはどうやって説得するかだ。結局、メジャーリーグを目指す者は、自分が次のA-Rod(アレックス・ロドリゲス)になるという野望を持っているはずだし、次なるFacebook(フェイスブック)を立ち上げようという者は、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)を目指さないわけがない。

オルソン氏は2つのことを指摘した。1つはデータだ。それは、1つの分野での成果の分布と、収入を確保したいという人間の欲求を緩和させるプールの必要性を示している。2つめの指摘は、将来の家計を自分のたった1つの職業に依存するよりも、利益が出ているポートフォリオを持つことのほうが、いつだって望ましいという点だ。

「Warren Buffett(ウォーレン・バフェット)は自信家ですが、それでも彼が投資した企業のポートフォリオを持っています。ベンチャー投資企業は成功する企業を選ぶ自分たちの目を信じていますが、それでもポートフォリオ戦略にたった1つの投資先しなかいなんてことはありえません」とオルソン氏。「エージェントがあなたを高く評価していたとしても、彼は安定したクライアントを多く抱えていて、最も稼ぐ人から利益を得ています。それでもあなたは、自分の利益を丸ごと独り占めしようと思っているのは、あなただけかも知れません」。そうした根拠と、プールの協調的な感覚が決め手になると彼はいう。

同社は2017年の秋に正式に発足し、Ulu Ventures、Pear VC、Avalon、Nimble Ventures、Stanford StartX Fundから330万ドル(約3億5000万円)のシード投資を受け取っている。そして米国時間6月9日の朝、2019年に850万ドル(約9億1000万円)のシリーズA投資を獲得していたことを発表した。これはCore Innovation CapitalのKathleen Utecht(キャサリン・ユーテクト)氏が主導し、Slow VCと、そのシード投資家たちが参加している。

Pandoのスタッフ(画像クレジット:Pando)

この資金を使い、Pandoは当初のターゲットであるプロスポーツ選手から、ビジネススクールの学生、起業家、ハイリスクで高収入な職種を目指す若者たちにもターゲットの範囲を広げてきた。

まだ初期段階であり、勝者総取りの労働経済への移行は崩しがたいトレンドであるものの、Pandoはこの問題に新しい流れを示している。そしてそれは、思いやりのある革新的なプラットフォームだ。

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画像クレジット:Robert Daly / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

香港で初めてのネットネイティブのペット保険が誕生、飼い主の安心のため新型コロナも対象

香港の保険テクノロジーのスタートアップOneDegreeが今日(米国時間4/23)、最初のプロダクトをローンチした。それは、Pawfect Careと名付けた一連のペット向け医療プランだ。同社は今後、サイバー保険や人間の医療保険なども出す予定で、すべてが完全にオンラインのそれらが出揃うのは今から12か月後だそうだ。

2016年に創業されたOneDegreeは、昨年シリーズAで3000万ドルを調達した。投資家はBitRock Capital、Cyperport Macro Fund、そしてCathay Venturesなどだ。

共同創業者でCEOのAlvin Kwock氏によると、香港では規制が厳しく保険の免許をもらうのが難しいので、Pawfect Careの立ち上げまでに2年を要した。

香港で初めてインターネットを利用する保険に免許が下りたのは、既存の保険企業Sun LifeのBow TieとAsia InsuranceのAvoの2例だ。香港の保険監督機関は、既存企業のデジタル進出には熱心だ。既存企業とは無縁の独立企業としてネット保険の免許が下りたのは、OneDegreeが初めてである。

OneDegreeは来年、サイバー保険と人間の医療保険を徐々に立ち上げるつもりだ。Kwock氏によるとCOVID-19のパンデミックが「パラダイムシフト」を起こした。人が顔と顔を合わせることが、激減したからだ。保険監督機関も今ではネット保険に免許を出すようになったし、いろんなネット製品の登場を許容している。

同社がペット保険から始めることに決めたのは、ペットの医療は高いにもかかわらず、香港では飼い主の3%しか医療保険に入っていないからだ。OneDegreeでは、顧客が保険証書を買って管理するのも、保険金を請求するのも、モバイルアプリからだ。請求の約90%は支払いが2営業日以内に行われるそうだ。

パンデミックへの対応としてPawfect Careのペット保険はCOVID-19関連の医療費もカバーしている。ただしOneDegreeが強調するのは、ペットを検査してウイルス陽性になった例がきわめて少ないことだ。実際にキャリアが見つかった証拠もない。でもペット保険にそれを入れたのは、飼い主を安心させるためだ。

画像クレジット: OneDegree

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

保険料を“わりかん”するP2P保険が日本で開始、中国ではアリババの相互宝が加入者1億人超え

インターネットを通じて保険の契約者同士がリスクをシェアし、誰かにもしものことが起こった際にはみんなでわりかんで支える——。グローバルではすでにいくつもサービス化されている「P2P保険」が、日本でもついに実現するようだ。

インシュアテック(保険テック)スタートアップのjustInCaseは1月28日、P2P型の「わりかん保険」の販売を始めることを明らかにした。同社では以下の8社と協業が決定したことを発表。自社およびパートナー企業にて順次取り扱いを開始するという。

なお数社はjustInCaseが昨年12月に発表した約10億円のシリーズAラウンドにも投資家として参加している。

  • アドバンスクリエイト
  • SBI日本少額短期保険
  • クラウドワークス
  • 新生銀行
  • チューリッヒ少額短期保険
  • ディー・エヌ・エー
  • 日本生命保険
  • LINE Financial

justInCaseが今回提供するわりかん保険は、20〜74歳が加入できる(被保険者)がん保険だ。過去5年以内にがん(悪性新生物、上皮内がん)と診察されたり、がんで入院したり、がんで手術を受けたりしたことがない人が対象。オンライン上で保険に申し込める。

各ユーザーは20〜39歳、40〜54歳、55〜74歳といったように年齢に応じてグループを形成し、誰かががんになった場合には他のメンバーで保険料をわりかんして支払う。

がん診断時の一時金は一律80万円。たとえば契約者数が1万人でがんと診断された人が2人いた場合、保険金の合計金額160万円にjustInCaseが受け取る管理費を加えた金額が保険料となり、残りの9998人でわりかんする。

justInCase代表の畑氏によると保険料に占める管理費の割合は加入者数によって変動するそう。1万人未満が35%、1万人以上2万人未満が30%、2万人以上が25%と多くの人が加入するほど管理費の割合が減る仕組み。先ほどの例の場合は保険金合計額の30%が管理費となり、保険料として1人あたり229円を負担することになる。

「160万円 ÷ 1.3 ÷(1万人 – 2人)= 229円」が保険料として事後請求される

justInCaseのわりかん保険は“あと払い”を採用しているため保険料は毎月変動する。みんなが健康で誰もがんにならなければ保険料はゼロだ。1ヶ月の保険料には上限金額が設定されているため、たまたま同じ時期に複数人ががんと診断されてしまった場合にも、上限額以上の負担を強いられることはない。

これらの仕組みによって既存のがん保険よりも低価格を実現できるのも利点の1つではあるが、畑氏は大きな特徴として「透明性」と「知らない人とも助け合いができる構造」を挙げる。

透明性に関しては収益の源泉(管理費)を毎月クリアにしている点が従来の保険と異なる部分。「保険会社だけがすごく儲かっているのでは?」と不信感を持っている人にとっては、その裏側が透明化されていることで少しは不安が和らぐだろう。

またわりかん保険では、先月がんになった人が何人いて、どういう人に自分たちのお金が使われたかも開示される。原則的に年齢や性別、病気の種類などごく一部の情報のみになる予定だが「保険料が誰かを助けることに使われたことが実感できる」体験が重要だという。この点はクラウドファンディングにも似た側面があるかもしれない。

冒頭でも触れた通り、P2P保険は海外ではすでにいくつもプレイヤーが出てきている状況。特に近年は中国が盛り上がってきていて、アリババ(アント・ファイナンシャル)の「相互宝」はリリース約1年で加入者数が1億人を突破している。

日本においては前例がなかったものの、justInCaseでは昨年7月に「規制のサンドボックス制度」の認定を取得。P2P保険をがん保険の領域から国内展開できるチャンスを得て、今回のリリースにこぎ着けた。

まずはパートナー企業ともタッグを組みながらがん保険の普及を目指すが、ゆくゆくはこのモデルを別の領域へ広げていくことも視野に入れている。

今回協業を発表した企業は金融系の大手企業からネット系ベンチャーまで幅広い。たとえばLINEと「LINE Score」を連携させた保険の仕組みを作ったり、クラウドワークスとフリーランス向けの保険商品を企画したりといったように、各社のサービス特性・事業アセットを踏まえた取り組みや新たな保険商品が生まれる可能性もありそうだ。

リスクをシェアする「P2P保険」本格展開へ、ITで保険業を変えるjustInCaseが約10億円調達

テクノロジーを活用した保険サービスを開発するjustInCase及びjustInCaseTechnologiesは12月9日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額で約10億円を調達したことを明らかにした。

今回はjustInCaseにとってシリーズAラウンドという位置付け。調達した資金を用いて、2020年に開始予定であるP2P型の「わりかん保険」を含む新商品の開発、保険APIなどを活用した他社との取り組み強化などに向けた人材採用やインフラ構築を進めていく計画だ。

なお本ラウンドに参加した投資家は以下の通り。グロービス・キャピタル・パートナーズら3社は2018年6月に発表された前回ラウンドからのフォローオン投資となる。

  • 伊藤忠商事
  • グローバル・ブレイン
  • ディー・エヌ・エー
  • 新生企業投資
  • SBIインベストメント
  • グロービス・キャピタル・パートナーズ(既存投資家)
  • Coral Capital(旧500 Startups Japan / 既存投資家)
  • LINE Ventures(既存投資家)

保険APIで事業拡張、P2P保険のサンドボックス認定も取得

TechCrunch Tokyo 2017卒業生でもあるjustInCaseは、保険数理コンサルティング会社Milliman出身の畑加寿也氏(現CEO)らが2016年に設立したインシュアテック(保険テック)スタートアップ。業界の知見とテクノロジーを組み合わせることで、これまでになかった新たな保険体験を提供しようというのが同社の取り組みだ。

昨年6月に関東財務局から少額短期保険業者として登録を受けた後、7月に開業。それまでテスト的に展開していたスマホ保険をアップデートする形で「ジャストインケース」をローンチしている。

このサービスではスマホの画面割れや故障、水濡れ、盗難紛失を月々356円からの保険料で補償する。アプリから約90秒で保険に加入できる手軽さに加え、独自の「安全スコア」によってスマホを丁寧に扱うほど保険料が安くなる仕組みが特徴。ジャイロセンサーなどから得られたデータを基にユーザーがどれほど丁寧にスマホを扱っているかをスコアとして算出し、スコアが高ければ更新後の保険料を割り引く。

このスマホ保険の展開に加え、今年7月に設立したjustInCaseTechnologiesを通じた事業もスタート。8月からは第一生命の開発したWebアプリ「Snap Insurance」に保険APIを提供し、アプリから1日単位で加入できるケガ保険の販売を始めている(第一生命が保険代理店としてjustInCaseの保険商品を提供)。

また7月にはjustInCaseが以前から構想として掲げていたP2P保険に関しても大きな進展があった。このモデルを取り入れた「わりかん保険」について「規制のサンドボックス制度」の認定を取得し、がん保険の領域にて正式展開できることになったのだ。

P2P保険は友人や同じ保険に関心のあるユーザーがグループを形成し、みんなで保険料を拠出しあうタイプの保険のこと。保険金の請求が行われた場合にはグループ内でプールされた保険料から保険金を支払う。ユーザー同士がリスクをシェアし、もしものことが起きた際には支え合う「シェアリングエコノミーの概念を取り入れた保険」という捉え方もできるだろう。

justInCaseが準備中のわりかん保険は“あと払い”型であることが1つの特徴。毎月、契約者全体の保険金の合計金額を算出し、契約者数で割った金額に管理費を加えたものが各ユーザーのあと払い保険料となる。

たとえば「2019年11月の保険金の合計金額が100万円、契約者数が1万人、管理費が30%」の場合、1人あたりの保険料は100万円÷1万人x1.3 =130円となり、この金額が12月分として事後請求される。ユーザーにとっては既存のがん保険よりも価格が安いことがメリットだ。

なお年齢によってもがんになるリスクは異なるため、ユーザーグループは年齢などの条件を基にサービス上で自動的に作られる仕様を考えているそう。わりかん保険料には上限金額が設定されているため、各ユーザーは一定金額以上を負担する心配はない。

アリババグループの「相互宝」は約1年で加入者1億人超え

日本ではまだ馴染みの薄いP2P保険だが、グローバルではインシュアテックの中でもホットな領域の1つとなっていてプレイヤーも増えてきている。

4月にソフトバンクグループらから3億ドルを調達した「Lemonade」やドイツの「Friendsurance」などが世界的にもよく知られているほか、近年は特に中国でP2P保険のサービスが盛り上がっている状況。アリババグループのアント・フィナンシャルが手がける「相互宝」は2018年10月のローンチ以降急ピッチでユーザーを獲得し、上海証券報の報道によると加入者が先月1億人を超えた。また畑氏の話ではテンセントが出資する「水滴互助」も8000万人以上のユーザー基盤を持つという。

この中には事前にグループ内で保険料をプールしておき、余ったお金をユーザーへキャッシュバックしたり最初に選択した団体へ寄付するタイプのものもあれば、相互宝やわりかん保険のように必要な金額だけを後で徴収するタイプのものもある。その他にも各サービスごとに細かな違いはあれど、畑氏いわくP2P保険に共通するもっとも重要なポイントは「透明性」だ。

「余ったお金を保険会社が全て手にするのではなく、透明性を持った上でユーザーに返還したり寄付をする、もしくは事後的に必要な分だけを徴収する。これまでは透明性の少なさが保険の課題でもあった。ユーザーにとっては何となく難しくて(保険会社が)どれだけ儲かってるのかも見えづらかった部分をクリアにしていくのがP2P保険のポイントだ」(畑氏)

P2P保険サービスはビジネスモデルの構造上、ユーザーと保険会社の利害が一致する点も大きい。従来の保険会社は保険金の支払を抑えるほど自社の利益が増えるため、ユーザーと敵対的な関係性になりがちだった。一方P2P保険の場合は保険料の一部を管理費として受け取る形が基本。特にあと払いタイプの場合は保険金が支払われる際に初めて事業者が収益を得られるため、両者が同じ方向を向きやすい。

以前も紹介した通り、P2P保険の仕組みは開業前から畑氏が熱望していた仕組みだった。当初はスマホ保険にこのモデルを導入することを目指していたが、同様の保険スキームは国内で実例がなくすぐに実装することが難しかったために断念。「保険業法の適用除外規定」に該当する範囲内でユーザー数や期間を限定してテスト的に提供するに止まっていた。

「何とかして絶対に実現したいと思っていた時に相互宝がでてきて、見た瞬間ヤバイなと。毎月1000万人ぐらいずつ加入者が増えるというすごいスピード感と、革新的なスキームに衝撃を受けた。これを日本でやるとしたら自分たちしかいないし、誰よりも先がけてやらなければとの思いでサンドボックスを申請した」(畑氏)

がん保険から国内におけるP2P保険モデルの確立目指す

justInCaseとしては2020年の前半を目処にわりかん保険のリリースを計画している。がん保険でしっかりとP2P保険のモデルを実証できれば、ゆくゆくはこの仕組みを他の保険にも広げていく方針。将来的には「わりかん保険」を1つのカテゴリーとして確立させることも目指す。

「(ユーザーとリスクをシェアする構造上)P2P保険はある程度の人数の母集団が見込めれば、カスタマイズした保険商品を作れる。従来はリスクが高すぎて企画段階で頓挫してものや、高いリスクを正当化するために保険料が非常に高額になり販売が難しかったようなものなども含め、新しいマーケットを開拓するような挑戦をしていきたい」(畑氏)

そういった数年先の展開を見据えた上でも今回のラウンドはとても大きな意味をもつという。同社の事業の広げ方は自分たちでどんどんユニークな保険商品を開発し、それをパートナーとなる各事業会社の協力も得ながらエンドユーザーに届けていくというもの。現時点で公開できる事業連携の話などはないとのことだが、ファミリーマートや保険の窓口など強力なオフラインチャネルを保有する伊藤忠商事を筆頭に各社との連携も視野には入っているだろう。

また資本関係はないものの、第一生命とは保険APIを活用した事業上の取り組みを始めているほか、先日にはライフネット生命保険と業務提携を締結するなど保険会社との連携も進めている。中には少額短期保険という枠組みでは実現できないサービスもあるため、その領域はjustInCaseTechnologiesを通じたAPIの提供や保険料計算アルゴリズムの提供という形で、既存の事業者と一緒にアップデートを図っていくという。

ギグエコノミーの隆盛を受けロンドン発のインシュアテックZegoが45億円を調達

ロンドンを拠点とするスタートアップのZegoが、ギグエコノミー労働者たちのための保険の必要性に気付いたのは数年前のことだ。そして同社は、当時Balderton Capitalが主導するシリーズAで600万ポンド(約8億1000万円)を調達した。その最初の保険商品は、食料配達人たち向けの従量制のスクーターならびに自動車保険だった。

今回同社は、欧州のインシュアテック(保険テック)スタートアップとしては最大規模である4200万ドル(約45億円)のシリーズB調達を、欧州全域をカバーするフィンテック並びにモビリティに特化した専門ファームであるTarget Globalの主導によって行った。同シリーズの支援者の中にはTransferWiseの創業者であるターベ・ヒンリクス(Taavet Hinrikus)氏も入っている。調達された資金は、Zegoのヨーロッパ全域での拡大と、従業員数を75人から150人へと増やすために使われる。

この調達によって同社の調達総額は5100万ドル(約55億2千万円)となり、既存の支援者であるBalderton CapitalならびにDST Globalのトム・スタッフォード(Tom Stafford)氏に、Latitudeが新たに投資家として加わった。この投資は、同社が過去12カ月間で10倍になるという、途方もない成長を遂げたことによって行われたものだ。

Zegoは、配車サービス、相乗りサービス、カーレンタル、そしてスクーターシェアリングといった新しいモビリティサービスの要求に応えるかたちで、従来の保険よりも柔軟な分刻み契約から年間契約に至る、さまざまな種類の保険ポリシーを提供している。保険料は車両から得られる利用実績データに基いて計算される。

これが意味することは、スクーターや車を使う配達人たちや、乗り合いやタクシーサービスの間で人気が高まっているということだ。同社は現在英国の食品配達市場の、3分の1の保険を担っている。その大きな部分はDeliveroo、Just Eat、およびUber Eatsとの提携を通したものだ。

ZegoのCEOで共同創業者であるステン・ザール(Sten Saar)氏は、次のように述べている。「私たちが3年前にZegoをゼロから立ち上げたときには、私たちのミッションは、急速に変化しつつある輸送業界の状況を真に反映した商品を生み出して、保険業界を変革することでした。世界はますます都市化が進み、そのことによって、従来の車両の『所有権』は、共有される『使用権』へと変化しています。これは、何百年もの間存在してきた、硬直した保険モデルが、もはや目的に適さないということを意味しています」。

Target Globalのリード投資家であるベン・カミンスキー(Ben Kaminski)氏は、次のように述べている。「新しいモビリティサービスの成長を受けて、Zegoは保険市場に大きな隙間を見出し、それを埋めるために独自のビジネスモデルを編み出しました。この会社の可能性はほぼ無限です。そして英国内での成功は、今後数年のうちにヨーロッパ全域はもちろん、その先へと反映されていくことでしょう」。

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(翻訳:sako)

労務管理のSmartHRが保険領域に参入、年内に第一弾プロダクト

労務管理クラウド「SmartHR」などを提供するSmartHRは1月23日、新会社SmartHR Insuranceを設立して保険業界にテクノロジーで変革をもたらす「InsurTech(インシュアテック)」の領域に参入すると発表した。

SmartHRはこの背景について、「保険業界は国内41兆円と言われる巨大産業である一方、FinTech領域に比べて、この領域でビジネスを営むスタートアップが少ないのが現状」とコメント。具体的にどのようなサービスを提供するかは明らかになっていないが、2019年内には第一弾となるプロダクトをリリースする予定だという。

SmartHR Insuranceの代表取締役を務めるのは、SmartHR CEOの宮田昇始氏とKyashでVP of Productを務めた経験を持つ重松泰斗氏の2人。同社は「保健領域における非合理の解消に挑戦する」と新たなチャレンジを前に意気込みを見せた。

2015年に開催されたTechCrunch Tokyoスタートアップバトルで最優秀賞を飾ったSmartHR。2018年9月の時点では導入社数が1万6000社を越え、サードパーティストアを軸にした新たな成長戦略を発表していた。今回のInsurTech参入は、去年始まったSmartHRの進化が加速しつつあることを表しているのだろう。

事故や災害の損害査定にAIを活用するスタートアップTractable

[著者:Steve O’Hear]
「私たちの展望と活動の説明に10分間付き合っていただき、嬉しく思います。しかし、これから15分間で、私たちが今、何を得たか、何を達成したか、私たちのAIは何をするのかを解説します」と、Tractableの共同創設者でCEOのAlexandre Dalyacは、数週間前、私がかけたビデオ通話で言った。「もっと短くなりませんか」と私は冗談を返した。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

保険セールス向けSaaSの「hokan」が6000万円調達、保険証券を見える化

保険セールス向けのSaaSサービス「hokan」を開発するhokanは3月13日、500 Startups japanBEENEXTMIDベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は6000万円だ。

「保険証券ってどこにある?」と聞かれたとき、すぐに答えられる人はどれくらいいるのだろうか。保険証券とは、保険契約の内容や給付金の支払い条件などが明記された契約書だ。ただ、これは大切な書類ではあるが頻繁にチェックする類いのものではないので、どこに保管してあるか分からないという人も多いだろう。

hokanのメイン機能は、この保険証券の見える化だ。保険営業員が顧客の保険証券の画像をアップロードすることで、書面をオンラインで確認できるようになるほか、保証内容や解約払戻金の額をグラフで表示する。

保険証券を見える化し、グラフやデータをもとにした営業活動を行えるようにするのがhokanの役割だ。hokanによれば、同社が200人を対象に行ったオンラインアンケート調査で、保険を契約する人の90%は自分の保証内容を正確に把握できておらず、全体の40%は保険証券がどこに保管されているか把握していないことが分かったという。

また、hokan代表取締役の小坂直之氏は、「オンライン化することで、(保険証券を)すべてデータとして扱えるようになる。営業員に対して、同じ補償内容でもより安くなる保険をレコメンドしたり、契約日から1年などの節目で訪問すべき顧客をレコメンドするなどを行う」と今後の目標について語る。将来的には、hokanにCRMなどの営業支援機能を追加することで営業員向けSaaSサービスとしての利便性を強化していくようだ。

また、hokanは年内にも一般消費者向けに「家計簿アプリの保険版」をリリースする予定だ。これは、ユーザー自身が保険の補償内容や、解約払戻金の金額などをスマホで確認するためのアプリだという。ただ、正直このアプリのマネタイズは難しいのかもしれない。

給料は毎月支払われるし、それに合わせて貯金額は増えていく。だから、例えば家計簿アプリの「マネーフォワード」を頻繁に開くというユーザー行動は理解できる。僕も自己満足のために3日に1度くらいはアプリを開いている。でも、その一方で、保険の保障内容や解約払戻金の金額を確認したいと思うのは1年に1度あるかないか。それだけC向けの保険管理アプリを普及させるのは苦労しそうだ。

それに対し小坂氏は、「C向けの保険管理アプリとしてのマネタイズは考えていない」としたうえで、将来的にはこのC向けアプリに保険募集人とメッセージのやり取りができる機能を追加し、保険内容をいつでも確認できるだけでなく、保険に関する相談ができる窓口として同アプリを位置づけていくと話す。

hokanは4月1日に営業員向けサービスのベータ版を公開し、その後7月1日に正式版をリリースする予定だ。価格はまだ未定だが、月額5000円に加えて、保険証券のアップロード数に応じた従量課金方式を採用する予定だという。

代表取締役の小坂氏は元々保険の営業マンだった。その後、複数の保険会社の商品を取り扱う保険代理店を開業した。その経験から、「未だに保険は保険営業員から加入する人も多い。そのため、営業員が活用できるインフラを作っていくことこそが、日本における金融流通の革新に寄与できる」と考え、2017年にhokanを創業した。

写真前列の左より、hokan COOの尾花政篤氏、CEOの小坂直之氏、CTOの横塚出氏。ちなみに、hokanは尾花氏と小坂氏の両者がともに”代表取締役社長”と名乗るちょっと変わった体制だ。

7つの質問に答えるとオススメ保険を教えてくれるロボアドバイザー「Donuts」が5000万円調達

ロボット保険アドバイザー「Donuts(ドーナツ)」を開発するSasuke Financial Labは3月2日、Klab venture PartnersGlobal Catalyst Partners Japanマネックスベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は5000万円だ。また、同社はこれに併せてDonutsの事前登録の開始も発表した。サービスローンチは今年4月を予定している。

Donutsは、ユーザーが7つの質問に答えていくだけで自分に適した保険商品をレコメンドしてくれるWebアプリだ。質問されるのは「お金を遺したい人はいるか」、「貯蓄はいくらか」などの簡単なもので、保険に関する深い知識がなくても自分に適した保険商品にたどり着ける仕組みになっている。

個人的にすごく好感を持てたのが、ロボアドバイザーであるDonutsならではの“正直さ”だ。取材でサービスを見せてもらったとき、少し意地悪をして、7つすべての質問に「(資金を遺したい人は)いない」などのネガティブな答えを返してみた。するとDonutsは、「あなたにオススメする保険はない」と言い切った。

人間の営業員の場合、話している相手に対して「あなたには保険は必要ないのでお帰りください」と言うのは難しい。それには大人の事情もあるから仕方がないことは分かるけれど、ユーザー目線で言えば、必要ないならないと言い切ってもらいたいのが本音だ。

記事執筆時点において、Donutsが提携する保険会社はアフラックの1社のみだ。同社はアフラックに加えて3社の保険会社と提携に向けた準備を進めている最中で、4月に予定されているサービスリリース時点では、これら4社が提供する20〜30の保険商品を取り扱う予定だとしている。

保険はまだまだ対面が主流

日頃からテクノロジーに慣れ親しんだTechCrunch Japan読者の中には、「今の時代、インターネットで選んだ保険に加入するなんて常識」と思う人も多いだろう。だが、どうも世間はそうじゃないらしい。

生命保険文化センターの調査(2015年)によれば、2010年から2015年のあいだに民間保険に加入した調査対象者のなかで、インターネットを含む「通信販売」を加入チャネルとして選んだのは全体の5.6%だったという。この通信販売にはテレビや雑誌なども含まれているから、純粋にインターネットで保険に加入した人だけに限ればわずか2.2%という結果だ。

この結果は、保険販売の現場ではいまだに対面営業が主流だという現状を表していて、Donutsには分が悪い結果のようにも見える。

でも、もう1つ面白い数字がある。同じ調査のなかで、保険の情報収集にテレビやネット、雑誌などの「人を介さないチャネル」を使ったと答えた人は全体の16.2%だったのだ。つまり、インターネットを含む人を介さない方法で情報収集しているにもかかわらず、結果的には対面営業で保険を加入した人はいる。

2つ目のアンケート調査は複数回答が可能なタイプなので単純には計算できないが、それを承知で計算すると、インターネットで調べたものの、結局は対面営業で保険に加入した人が全体の10%ほどはいるのではないかと推測できる。

この中には、やはりネットだけで保険に加入するのは不安だと感じ、結局は対面営業を選んだという人もいるだろう。実際、前回調査と比べると通信販売を選んだ人の割合は3%ほど低下している。形の見えない金融商品だからこそ、できれば人の力を借りたいという人が多いのは十分に理解できる。

しかしその一方で、自分で保険について調べてみたものの、結局どの商品が自分に適しているのかよく分からずにさじを投げてしまったという人もいるはずだ。だから、本当に分かりやすい方法で自分に適した保険を示してくれるWebサービスやアプリがあるとすれば、そこには一定のニーズがあると僕は思う。取り扱う保険商品のラインナップが少ないなど、Donutsにはまだ超えなければいけないハードルはあるけれど、彼らがそんなニーズを掴める可能性は大いにあるだろう。

保険を“シェアする”時代が来るか、justInCaseがP2P型の「スマホ保険」をリリース

テクノロジーを活用した少額保険サービスを提供するjustInCaseは2月7日、既存投資家の500 Startups Japanメルペイ代表取締役の青柳直樹氏を引受先とした資金調達を実施したことを明らかにした。調達金額は3000万円だ。

justInCase代表取締役の畑加寿也氏。写真はTechCrunch Tokyo2017で開かれたスタートアップバトルのもの

TechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルにも出場したjustInCaseは、テクノロジーを活用した少額保険サービスを手がけるスタートアップ。同社代表取締役の畑加寿也氏は保険数理の専門家(アクチュアリー)だ。

スタートアップバトルに出場した当時、justInCaseはサービスリリースに向けて準備をしている最中だった。しかし今回、同社はスマホの画面割れなどの修理費用を保障する「スマホ保険」を、事前登録者限定の“先行サービス”としてテストリリースすると発表した。

スマホ保険の特徴は大きく分けて3つある。1つ目は、何かと面倒くさいイメージがある保険を身近に感じさせるようなUI/UXだ。

スマホ保険に加入するユーザーは、もちろんスマホの所有者。だから、justInCaseはスマホから簡単に申し込めるようなUI/UXの設計にこだわり、最短90秒程度で加入申し込みができるようにした。

2つ目は、「P2P保険」という新しい保険の仕組みだ。これは、友人同士などの限られたメンバーでグループを作り、そのグループメンバーが互いに保険料を拠出しあうというもの。メンバーの1人に保険金支払いの事由が発生した場合には、グループ内にプールされた保険料から保険金が支払われる。つまり、出しあったお金をメンバーでシェアするのだ。

また、保険期間満了時に保険金請求の額が少なく、プールに残高がある場合には、その残高は保険金請求を行わなかったメンバーにキャッシュバックされるという仕組みもある。保険料はスマホの機種などによって変わるものの、月額最低200円から加入可能だ。

AIが算出する“安全スコア”によって更新保険料の割引額が決まることもスマホ保険の特徴の1つだと言える。ユーザーのスマホから取得した端末の“扱いやすさ”や活動状況などのデータを分析することで安全スコアを算出。それをもとに故障リスクを判断し、それが低いと診断されたメンバーには更新時に割引というかたちで還元するという仕組みだ。

P2P型保険がもつメリットは、グループに加入するもの同士の顔が見えることから保険金詐欺やモラルハザードが起こりにくいという点や、キャッシュバックの仕組みにより保険金請求を行なわなかったユーザーは結果的に安い保険料で保障を受けられるという点だ。海外ではすでに先行事例があり、LemonadoFriendsuranceなどがサービスを提供している。

しかし一方で、日本の金融庁はP2Pという保険の仕組みを認可していない。また、現時点のjustInCaseは少額短期保険業者としての登録も完了していない。そのため、同社はプレスリリースのなかで、今回のテストリリースでは「保険業法の適用除外規定」を適用すると説明している。

保険業法では、ある一定の条件を満たすサービスは保険業法の適用範囲外とするという規定が定められている。その条件の1つが、保険を提供する相手方(ユーザー)が1000人以下であるというものだ。

そのため、justInCaseは先行サービスを事前登録者限定の招待制とし、保険を提供するユーザーの人数を1000人未満に制限することでサービスを開始する。また、今回先行サービスとしてリリースされるスマホ保険も、少額短期保険業者の登録が完了した段階でいったん提供中止となる。その後、P2Pの仕組みを排除した“正式版”がリリースされる予定だ。

justInCase代表取締役の畑氏は、これから金融庁と「長丁場で議論を重ねていく」としているが、同社がP2P保険の仕組みを正式なサービスとして提供できるかどうかは、まだ分からない。ただ、通常の保険もP2P型保険も「相互扶助」の精神をもつという点では同じだ。個人的には、このような新しい仕組みが保険業界に新しい風を吹き込んでくれると面白いと思う。

SoftBank、Lemonadeの1.2億ドルのラウンドをリード――不動産損保投資にはGV、Sequoiaも参加

SoftBank Groupはやっと不動産事業でテクノロジーに投資する気になったようだ。

44億ドルをWeWorkに投資したSoftBankだが、この会社は本質的にオフィス・スペースの短期賃貸業務だ。4億5000万ドルを投じた Compassは金持ちのためのZillowだろう。しかし日本の巨大投資会社が今回リード1億2000万ドルの投資ラウンドをリードした対象はLemonadeだ。これは家屋の賃貸者と居住者の双方に保険を提供するスタートアップだ。

既存投資家、Alphabetの投資会社GV、有力ベンチャーキャピタリストのGeneral CatalystとSequoia Capitalも今回のラウンドに参加した。

損保業務というのは非常に難しいビジネスで、データサイエンスのための広汎なデータ、業務を成り立たせる顧客数を必要とする。Lemonadeはスマートフォン時代の新しいテクノロジーと市場の状況を利用してゼロから新らたに損保業務に参入する企業のパイオニアの1つだ。

Lemonadeの保険約款策定業務の大部分はチャットボットを利用したコンピューター処理によって自動化が図られている(AI利用かどうかについては明言できない。なるほど複雑な業務であるが、単に効率的なアルゴリズムかもしれない)。

まずこの点で大幅なコストダウンが図られている。しかしLemonadeはまた保険契約者が損害請求を当って正直に申告することを動機づける興味あるビジネスモデルも採用している。ユーザーはアプリから保険契約を行う際、まずお気に入りのチャリティー団体を選定する。保険請求を行わなかったことによって生じた期末の利益の一部はこチャリティー団体に寄付されるという仕組みだ。

つまりユーザーは保険契約から生じた利益が、どこかの顔のない企業役員のボーナスを増やすのに消えるわけではなく、自分の支持するチャリティーを後押しするために使われると知っていれば、苦労して請求額を水増ししようとしなくなるだろう、というわけだ。

Lemonadeによれば、同社は今回調達した資金を「史上初の消費者の方を向いた保険会社として、こうした業務を世界に拡大するために利用する」ということだ。また2018年には新たな保険商品を開発して顧客に提供していくという。ただしLemonadeが進出を予定していない分野の一つは自動車保険だという。CEOのDaniel Schreiberによれば「確かに巨大な興味ある市場だが、条件が厳しすぎる」とのことだ。

「Lemonadeはすでに9万件の保険契約を持っており、保険の対象の物件の総額は数十億ドルに達する」とSchreiberは述べた。

長年無風だった損保市場にTrōvCoverHippoSwyfftなど、最近多数のスタートアップが参入を試みている。

SoftBank Groupの上級投資専門家、David Thevenonは「ビッグデータとAIをシームレスに結合して新たなユーザー体験を創出することによってLemonadeは損保業界に本当の革命を起こそうとしている」と声明に書いている。

ただしSoftBankの広報担当者は、「投資が完了するまで大部分の質問に対する回答を保留する。また当社の投資専門家は出張中のため現在コメントできない」と述べた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook <A

スマホ時代の“新たなスタイルの保険”を提案、justInCaseが500 Startups Japanから数千万円を調達

保険の仕組みにテクノロジーを活用することで、新たな価値を生み出すInsurTech。「必要な時に必要なだけ加入できる新たな保険サービス」の提供を目指すjustInCaseも、この領域でチャレンジをする1社だ。

同社は11月16日、500 Startups Japanから資金調達を行ったことを明かした。今回の資金調達は500 Startups Japanが公開する投資契約であるJ-KISS型新株予約権方式によるもの。具体的な金額は非公開だが、関係者の話によると数千万円前半だという。

justInCaseは保険数理コンサルティング会社Milliman出身の畑加寿也氏らが、2016年に創業したスタートアップ。手間がかかりがちな従来の保険とは異なり、スマホアプリから必要な時に必要な補償を選べる保険サービスの提供を目指している。また単にスマホから手続きができるというだけでなく、収集したデータをもとにリスクを解析し保険料の最適化にも取り組む。

現在同社は少額短期保険業者の登録に向けて、関東財務局と話を進めている段階。2018年の正式開業を目指していて、本日第一弾となる「スマホ保険」の事前登録の受付を開始した。

スマホ保険は「スマホ故障時の修理代」を負担する保険で、アプリから90秒で申し込みが完結する。月々最低200円台から加入でき、加入者限定でカメラや時計などの1日保険も提供する予定だ。

AIアルゴリズムを利用してユーザの行動パターンなどを解析し、各ユーザーの安全性を算出。スコアによって、更新時保険料の割引額を決定するなど最適な保険料の実現を目指す。また友達と一緒に保険料をプールする仕組みも導入する。

今後は大手保険会社ともパートナーシップを組みながら、既存の大手保険会社にないようなニッチなサービスを提供していくという。

SECがユニコーン、Zenefitsに厳しい措置――「投資家の判断を誤らせた」として元CEOらに罰金100万ドル

アメリカ証券取引委員会(SEC)はシリコンバレーのスタートアップの悪行の取締に乗り出した。まずターゲットとなったのはユニコーン〔10億ドル企業〕のZenefitsと元取締役のParker Conradだ。

BuzzFeedが最初に報じたが、このヒューマン・リソースのスタートアップとConradは総額で100万ドル近い罰金を支払うことでSECと和解し、訴追を受けないこととなった。SECは同社が「州の保険に関する法規に反し、判断を誤らせるような文言および省略により、投資家に実質的な損害を与えた」としていた。

昨年、当時のCEO、Conradが解雇された後、Zenfitsのトップは目まぐるしく入れ替わった。元COOのDavid SacksがConradの空席を埋めたが、その後Jay FulcherにCEOの席を譲った。

これより先、Conradのコンプライアンスに問題が発覚してZenfitsのトラブルが始まった。また保険チームの社員が州の法規で定められた保険販売員の資格を持っていなかったことも判明した。

SECが発表したプレスリリースによると、こういうことだ。

Zenefitsは〔保険業という〕高度に規制された業種にあったにもかかわらず、同社の成長にともなって急増した保険販売員に保険販売のための適切な資格を取得させることを怠った。投資家にその事実を知らせないまま同社はConradが作成したコンピューター・スクリプトを用いて保険の販売を行い、これによりカリフォルニア州法で定められた資格取得を省略し、資格取得準備のための研修時間の節約を図った。【略】 

Zenefitsは多数の中小企業にヒューマン・リソース・サービスを提供しているものの、売上の90%は保険販売からきていた。無資格販売の発見から生じた法律的問題を整理するために2年もかかることとなった。Conradは自分に割り当てられた罰金を支払うことに同意したが、連邦証券取引法に違反したとのSECの見解に同意したわけではない。

SECによれば、Zenefitsは45万ドルを、Conradは35万ドルを不当利得分として返還する。またConradはこれに加えて利子分2万3692.39ドル、罰金16万ドル、あわせて53万3692ドルを支払うという。【略】

SECがシリコンバレーのユニコーン企業にメスを入れたのはこれが最初だが、最後になるわけではなさそうだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ドライバーレス時代のビジネスとは

【編集部注】著者のShahin FarschiLux Capitalのパートナー。

業界が「車単位経済」から「マイル単位経済」に移行するにつれて、都市交通には巨大な機会が生まれつつある。

若いころの私は、ピカピカに磨き上げて、ちょいと自慢気に近所を走り回る車を所有することを夢見ていた、しかし、現在は、急速に価値を失っていくプラスチックと金属の塊に対して、心配ばかりする気持ちで尻込みしている。今私が欲しいのは、快適な移動体験だけだ。

車の所有に対するこうした私の気分を、ミレニアル世代なら共有していることだろう。そしてそうした人の多くが(UberやLyftなどの)配車サービスの便利さを取り入れている。

1兆ドルの自動車産業はその岐路を迎えつつある。車の販売台数が減少し、新規参入者がマージンを奪うにつれて、自動車会社は徐々に押し出されている。

この移行の一環として、業界は「車単位経済」(per-vehicle economics)から「マイル単位経済」(per-mile economics)へと移行しているのだ。歴史的に、これまで自動車産業の評価は、如何に素早く自動車を組み立てて、顧客へ届けて、彼らにお金を貸し付け、そして保守とアップグレードでお金を回収することができるかによって行われてきた。

しかしこれからは、乗客たちを何マイル移動させたのか、そして1マイルあたりどれだけの利益を得ることができたのかで評価されるようになる。

自動車は2017年に、のべ3兆1700億マイル(約5兆1000億キロ)の距離を走行すると言われている。これは5年前と比べて7.8%の増加だ 。この傾向は今後も続くだろう:電気自動車と自動運転の台頭は、環境へのインパクトと労働の必要性を減らすだけでなく、価格も引き下げることになることを意味する。

自動車メーカーは、ビジネスから撤退する心配をする必要はない。進化を生き延びられない会社もいくつかはあるだろう。しかし、未来のマイル単位経済時代では、その多くがキープレイヤーになっていることだろう。Uber、Lyft、またはZoox向けの、ノーブランド車両を生産するものも出てくるだろう。GM、Audi、そしてBMWなどの企業は、そうした配車サービスの巨人たちと競争するために、自社で車両群を編成する可能性もある。

ドライバーレスの未来では、従来の自動車会社たちが、消費者が1マイル移動する毎に得ていた利益は減っていく。残りを奪うのは新興のサービスたちだ。

何十億マイルもの移動に対して投入されるお金の、大きな部分を掴むチャンスのあるビジネスはどれだろうか?いくつかの可能性を考えてみよう:

  • 保険:ロボットタクシー技術はもうそこまで来ている。これまでは、事業者が自律サービスを提供できるようにする法的枠組みは存在していなかった。そのような枠組みは、乗客、事業者、技術ベンダーの債務に限度を設けるのに役立つだろう。これらの債務の限度額が分かっていれば、保険会者はそれぞれのグループごとに保険契約を策定し提供することができる。コンピュータビジョン、AI、およびその他の技術的機能不全のリスクを、保険会社がモデル化しようとする際には、スタートアップたちはそれを積極的に支援する必要がある。自動車販売の低迷が予想されることを考えれば、現存する保険会社たちはこの新興市場を、積極的に追い求めるべきである、いつかはその事業の大半を占めるようになる可能性がある。
  • コンプライアンス:事業者の債務を制限するためには、厳しい安全規制の遵守が必要だ。これらの規制には、遠隔操作(すなわち、自律車両を遠隔監視する人間の)のモニタリングと監査だけでなく、AIに対するシミュレーションの構築と実行も含まれる。
  • 運用:今日、UberとLyftは配車サービスの主要なチャネルを所有している。彼らの所有するドライバーの広大なネットワークと巨額の資金は、業界を専有し競合他社を圧倒することを可能にした。これまでのところ、どちらも自社の自動車を製造してはいない。従来の自動車メーカーたちにも、乗客体験を再考する機会が与えられている。もし彼らが最初の原則から始めるならば、これまでに製造してきたものとはとても異なる自動車をデザインし製造することになるだろう。Zoox(情報開示:私の会社が投資している)のような新興企業は、ドライバーレス輸送の新しい時代のために、洗練された輸送ロボットをデザインし運用しようとしている。
  • 車内サービス:モバイルデバイスのことは一旦忘れよう。「ドライバーレス」は新しいプラットフォームだ。高度にパーソナライズされた豊かな環境を作り出し、乗客に刺激を与え、夢中にさせることができる。音声インターフェイスは、車両内の様々な体験を調整し、単に1度の移動だけではなく、複数の場所で、複数の車両を乗り継ぐ、連続した移動に対するコンシェルジェとして振る舞う。例えば、乗客の興味や嗜好、以前の目的地などを「知っている」ロボットカーが提供するツアーを、想像してみよう。バンコクであなたを案内してくれるドライバーレスツアーガイドは、以前ローマとサンパウロを旅行したあなたの嗜好を「知って」いる。彼らはあなたのソーシャルメディアのプロファイルを利用して、食事、ショッピング、エンターテイメント体験をお勧めしてくるだろう。
  • 自動運転技術:自動運転を可能にする独自の技術を構築した企業は、大きな利益を得ることができる。非自動車産業の企業たちが、機会を見ながら革新的な企業を手に入れようとしている。インテルはMobileEyeに大金を払い、自身を主要な自動車部品サプライヤーとして位置付けた。この購入を通してインテルが手に入れたチャネルにより、チップ、センサー、そしてソフトウェアなどの他の多くの技術を自動車サプライチェーンに供給することが可能となった。

何兆ドルもの価値を持つ新しい機会が、きたる自動運転旅行の時代には豊富に待っている。もし歴史が私に何かを教えてくれるとすれば、この新しいパラダイムは、これまで私たちが全く考えて来なかった新しい生活様式に拍車をかけるものだろうということだ。で、私自身はどうかって?

ギアヘッド(新しいもの好き/クルマ好き)としては、私はロボットによってA地点からB地点へと移動できることを楽しみにしていて、かつレーストラック上では手動によって高性能車を限界まで走らせることに惹かれている。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: DAVID BUTOW/CORBIS/GETTY IMAGES

Teslaが保険もメンテナンスコストも入ったオールインワン価格を検討中

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Teslaは本日決算発表を行いその中で、保険とメンテナンスコストを含むパッケージ価格での自動車販売をアジア市場で開始したと伝えた。今後、他の市場でも同じようにパッケージ価格で自動車を販売する計画であり、そのために外部の保険会社とパートナーシップを締結していくという。ただ、保険は自社で提供することも考えているようだ。

「すでに実施しています」とTeslaのGlobal Investor RelationsのVPを務めるJeff Evansonは、決算発表で説明した。「宣伝してきたことではないですが、このパッケージを提供し始めたアジア市場では、すでに多くのTesla車がTeslaの車にカスタマイズした保険商品とセットで販売しています。この保険商品は、Teslaのオートパイロット安全機能を考慮していて、車のメンテナンスコストもカバーするものです。私たちはコンシューマーに自動車本体、メンテナンス、保険を全て含む単一価格で魅力的な提案をすることを目標としています。そしてそれはもう始まっています」。

「この保険商品が車のリスクに見合わないと判断される場合でも、他の保険会社の商品を排除することはありません」とTeslaのCEOであるElon Muskは続ける。「必要であれば、Teslaで保険を提供することも考えています。ただ、パートナーの保険会社はTesla車が持つリスクに合わせて保険料率を調整するだろうとも考えています」。

Teslaがこのような商品を作る理由の1つは、Tesla車は他社製品より耐用年数における安全性とメンテナンスコスト面で優れていることに自信を持っているからだ。パッケージ価格は他の選択肢と比べると支払い総額に透明性があり、総じて車の購入者にとって有益な取り組みであると言えるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

航空運賃を1ヶ月先まで予測 ― 値下がりに備えて航空運賃を固定できるFLYRが800万ドルを調達

Airplane in the sky and cloud at sunrise

トラベル系スタートアップのFLYRは本日、シリーズAで800万ドルを調達したと発表した。FLYRは業界のオープンデータと独自に集めた航空券の過去価格データに人工知能を適用することで、航空運賃を予測する。

今回の調達ラウンドでリード投資家を務めたのはPeter Thielが所有するファンドだ。また、SECへの提出書類によれば、Thiel Capital代表のPhin Uphamが今回のディールに関わっているようだ。本ラウンドを含めると、FLYRはこれまでに合計で1300万ドルを調達したことになる(前回のシードラウンドでは2社から400万ドルを調達している)。

「ファイアー(fire)」と音韻が似た名前をもつFLYRは、その旗艦プロダクトであるFareKeepで知られる企業だ。同プロダクトを利用すれば、1週間のあいだ航空券の価格を固定することができる。手数料は20ドル以上だ。FareKeepは航空運賃の保険と同じコンセプトをもっている。もしも固定した価格よりも航空運賃が値下がりするようであれば、ユーザーはその低くなった価格で予約を完了するか、もしくは固定した価格と実際の価格の差額を返金してもらうことができる。返金までにかかる日数は約1日程度だ。

FareKeepと同じような機能を提供する航空会社もあるが、TripAdvisorを含むいくつかの予約サイトではFLYRを利用した航空運賃の固定機能をユーザーに提供している。FLYRはクレジットカード会社との提携も視野に入れているようだ。

FLYRの競合はHopperやOptions Awayなどのサービスだ。Hopperは航空券を予約するのに最良のタイミングを教えてくれるサービスで、より直接的な競合となるOptions Awayは、FareKeepと同様に航空運賃を固定するサービスを提供している。

今回取材したCEOのJean TripierとCTOのAlexander Mansによれば、同社は今回調達した資金を利用して新プロダクトの開発を進めていくとのこと。海外出張をする従業員を多く抱える企業向けのサービスなどがその例だ。

「これまでのように1つの商業プロダクトを提供するのではなく、いくつかのソリューションを合わせたサービス・ポートフォリオを構築し、予約プロセスのさまざまな段階で利用できるソリューションを提供していきます」と同社はいう。Mansは加えて、「航空運賃とそれに対する需要を予測するだけでなく、今後私たちは消費者行動の予測にもフォーカスしていきます。それにより、私たちのクライアントが抱えるユーザーに、より良い体験を提供していきます」と語る。

FLYRは近々、航空券の「取り置き」とも呼べるサービスを公開する予定だ。このサービスを利用することで、ユーザーは航空券を分割払いで購入することができる。手数料などは一切かからない。現在、FLYRはアメリカとヨーロッパを結ぶ航空券を多くカバーしている。今回調達した資金はカバーする空路の拡大にも利用される予定。Tripierによれば、特にラテンアメリカの空路を強化していくようだ。

Peter Thielが所有するファンドのほか、本ラウンドには以下の投資家が参加した:JetBlue Technology Ventures、Streamlined Ventures、AXA Strategic Investors、Amadeus、Western Technology Investment、Plug and Play、Chasm Capital Management。

Streamlined Ventures創業者のUllas Naikは、「FLYRの強みは、1ヶ月先までの航空運賃を正確に予測できる能力です。その能力はさまざまなケースに応用することができるため、異なる業種のプレイヤーや顧客に価値を提供することが可能です。究極的には、このようなAI技術は市場全体を大きくしていきます。なぜなら、顧客はこれまで以上に自信をもって航空券を購入することができるからです」。

Naikによれば、FLYRは調達した資金を利用して新プロダクトの開発を進めていくが、それに加えて、世界中のパートナーサイトにある購入ボタンの「真横に」FLYRが提供する予測価格を表示していくようだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

自動車保険も将来はAIになる…Liberty MutualがAPIポータルを開設

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Liberty Mutual Insurance傘下のテクノロジーインキュベーターSolaria Labsが、デベロッパーが同社のAPIにアクセスするためのポータルを作り、そこでは一般公開されているデータと独自の保険情報を併用して、ユーザーにより安全なルートを教えたり、万一の事故時の損害を見積もる。

そのAPIのAIは、事故後の修理費を見積もる。Liberty Mutual InnovationのアシスタントVP Ted Kwartlerがメールにこう書いている: “自動被害見積もりアプリのAIは、匿名化された請求写真で訓練されている”。ユーザーが事故に遭ったら、たとえば折れ曲がったフェンダーの写真を撮ってアプリにアップロードする。するとAIはそれを何千もの写真と比較して、それとよく似たパターンを見つけ、スマホを持って現場にいるユーザーに修理費の見積もりを伝える。

APIはまた、車の盗難、駐車情報、事故などに関する一般公開情報を集めて、ユーザーに安全なルートや駐車スペースを教える。さらに、独自の保険情報により、ユーザーにとってより役に立つ情報を提供する。“保険の専門知識と消費者情報を合わせて、利用できるサービスやデータの整理の仕方などをガイドする”、とKwartlerは述べる。

写真は匿名化されてAIの訓練に利用され、ルートを判断するために使うデータは一般的に公開されている。“Liberty Mutualは同社が集めた、個人を同定できるデータを、法律で定められた機関以外のサードパーティにシェアしない”、とKwartlerは付言している。

このAPIを使ってみたいデベロッパーはSolaria LabsのWebサイトで登録すれば、今後のアップデートも受け取れる。なお、APIの一般供用は数か月後からだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

自動運転車と共有モビリティが保険に与えるインパクト

self-driving-car

【編集部注】著者のSeth Birnbaum氏は、米国最大のオンライン自動車保険市場EverQuoteのCEO兼共同創業者である。

「次の5から10年の間には、わたしたちが過去50年の間に見てきたものよりも大きな変化に出会うことになるでしょう」GMのCEOであるMary Barraはこのように言っていた 。この発言から1年が経ったが、その内容は正しいままだ。車の所有形態が変化しつつあり、自動運転車は次の10年で実用化される。保険業界に影響があるのはどれだろうか:自動運転車(self-driving cars)なのか、共有モビリティ(shared mobility:移動手段の共有)なのか?

自動運転車

Googleの自動運転車のうちの1台が、最近これまでで最も損傷の大きな自動運転者衝突事故の1つに巻き込まれた。これは自動運転車のせいではなく、側方から赤信号で突っ込んできた別の人間の運転する車が、自動運転車の側面に衝突し、エアバッグが動作したというものだ。しかし、このシナリオは車自身がどのように避ければよいかを知らないものだった。

ドライバが運転を引き継ぎブレーキを踏んだが、衝突を回避するには遅すぎた。

自動運転車は、一旦広く受け入れられてしまえば、人間が運転するする車よりも遥かに安全になると思われるが、まだ人間が路上で運転している状況の中で本当により安全でいられるのだろうか?どのように複雑でとらえどころのない「人間要素」を考慮すれば良いのだろうか?

これは私たちに疑問をもたらす:この状況の中に保険が持ち込まれたらどうなるのか?自動運転車が通過する前の6秒の間前方の信号は緑だった、にもかかわらず側面からぶつけられてしまった。

自動運転車産業は今後20年間で飛躍的に成長すると予測されており、保険会社も一緒に泳ぐことを学ぶ必要がある。さもなければ沈んでしまう。

自動車保険は、長期的にだけでなく、近い将来この差し迫った技術に適応しなければならない。。自動運転車は事故を9割減らすことを期待されている一方、米国人の81パーセントは自分で運転するよりも、自動運転車の方が安全だろうと感じている。もしそのように感じているのなら、ドライバー達はその技術に喜んでより多くのお金を支払うだろうか?Volvoは最近、彼らの自動運転技術は、既存の車に1万ドルほどの上乗せが必要になると発表している。

消費者のためらいやその他の法的障壁によって、自動運転車が完全に採用されるまでには、何十年もかかるだろう。その結果、保険会社が計画を練る必要のある、より切迫した移行期間が出現するだろう。その移行期間の間、自動運転車と人間の運転する車が入り混じって路上に存在しているのだ。

自動運転車は、1台の車を複数のドライバーが利用する状況よりも、大きな変化を保険会社に迫るだろう。

自動運転車が一般に普及していくにつれ、大衆がテクノロジーに適応していく過程で「人間要素」が関係する事故が出現するだろう。保険会社は短期的には、こうしたタイプの衝突をカバーする必要がある。おそらくGoogleの自動運転車の事故のようなものを。将来的には、保障しなければならない新しいリスクも出現するだろう。センサーの損傷、衛星の故障、その他の新しいテクノロジーなどだ。

おそらく、保険は無過失保険の形式になるだろう、そこではどちらの側も過失を問われず、それぞれの車のオーナーの保険がそれぞれの車両をカバーすることになる。あるいは、保険は走行距離や使用形態に基づくプレミアムコストの乗った、光熱費のような基本コストになるかもしれない。自動運転車のハッキングあるいは、サイバーセキュリティ上のリスクも考えられる。保険会社はサイバーセキュリティ問題をカバーするのか、あるいは製造者がその責任を負うのか?

 これらの疑問に対する答は、今全て決めることはできないが、保険会社はこのパラダイムシフトに早いうちに対応する必要に迫られることになるだろう。火災、動物、洪水、盗難、地震、破壊行為のための包括的なカバレッジは依然として必要で、そうした保険の種類は、費用の調整を除いて、大きく変更する必要はないだろう。

交通インフラストラクチャは、自動運転車が容易に利用可能になるにつれ変化することが期待される、そしてこれは保険が運用されるやり方にも影響を与えるだろう。現在は、すべての道路がきれいで目に見える道路ラインと共に、平らに舗装されているわけではない。雪やその他の気象条件ではどうだろうか?自動運転車が、完全にラインが引かれ、地図に掲載された道だけではなく、何処でも行けるようになるまでには、あとどれ位かかるのだろう?自動運転車がSAE Level 5に相当する完全自動に達するまでには、まだ長い時間がかかるだろう。しかし、一旦そのレベルに達したならば(そしてもし安全性に関する主張が正しいとするなら)、保険のコストはおそらくドライバと保険会社の両者に対して安くなるだろう。

共有モビリティ

車は95パーセントの時間を駐車状態で過ごしている。そのため、および利便性の理由で、相乗りサービスが近年爆発的に増えている、その結果とても利益率が高く革新的な産業が生まれている。Uberは現在ほぼ630億ドルと評価され、Lyftも最近記録的な成長を見せている。車の共有モビリティはこの先、相乗りサービス(1台の車に乗り合いで複数の人が乗る)を通して成長することが期待されているが、同時にカーシェアリング(1台の車を時間差で複数の運転手が利用する)を通しての成長も期待されている。

複数のドライバが同じ車両へのアクセス行うカーシェアリングは、おそらく今後数年の間に人気が高まるだろう。MavenZipcarのような、ドライバーと空き車両をマッチングするサービスは、成長を続けると思われる。何故なら競争と経済規模が成長していくからだ。顧客のセグメントに焦点をあてた共有モビリティがより多くの場所で提供されるにつれて、より多くの移動ニーズが満たされるようになる。時間が経つにつれて、各家庭での車両所有の必要性は減っていくだろう;この結果、これまで複数の車を持っていた家庭も、1台だけの車で済ませるようになるだろう。最終的に、人びとは全く車を所有しない決定をするようになるかもしれない。

共有モビリティはいつかは自動運転車とオーバーラップする点が出てくると思われるが、一方車の所有権が変化することにより、保険産業に異なる影響を与えるようになるだろう。

共有モビリティは、保険業界にもっと直接的な影響を持つことになる。車は頻繁に使用すると、より早く磨耗し、複数のドライバーが使うことにより、より多くの事故に遭うかもしれない。保険会社は、同一世帯や家族に属しておらず、またいつでも同じ車を運転するとは限らない複数のドライバをカバーするように適応する必要がある。

その結果、保険がカバーする範囲は、使い方に基づく保険(どのような運転をするかによって支払いを決める)を伴わせた運転習慣により焦点を当てたものになるか、運転距離に連動したものに基づくものになるだろう。MetroMileのような企業は既にこのモデルを利用していて、カーシェアリングの成長と共に人気も高まろうとしている。あなたの車が駐車されているいる間にも保険料を払う代わりに、運転した距離に応じて保険料を払うのだ。

遠隔通信デバイスがより正確かつリアルタイムに、誰が車両を運転していて、どれほど安全なドライバーなのかを検知できるようになるにつれ、共有モビリティの世界でインシュアランステックが大きな役割を果すようになるだろう。

自動運転車あるいは共有モビリティ?

共有モビリティが、保険業界にもっと直接的な影響を持つことになる一方で、自動運転車は確実に保険業界全体により大きなインパクトを与える。自動運転車は、1台の車を複数のドライバーが利用する状況よりも、大きな変化を保険会社に迫るだろう。

とはいうものの、この2つはある時点でオーバーラップすることになる。自動運転機能は相乗りサービスの中に組み入れ続けられ、やがて最終的にはカーシェアリング業界でも実現されるだろう。この時点で、2つのセクタは衝突し、保険は新しく登場するリスクに適合を続けることになる。自動運転車と共有モビリティは保険産業に破壊と革新を迫るだろう。あとは時間の問題なのだ。

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(翻訳:Sako)

N26がAllianzの旅行保険付きプレミアムカードを発表

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N26には何が欠けているだろうか?同社はゆっくりではあるが確実に、新しい銀行口座を一から作りあげつつある。そして現在、Visa PremierやMasterCard Goldに付帯する保険商品を作り変えようとしている同社は、N26 Blackカードを発表した。

N26はこれまで保険会社と直接交渉を進めてきており、旧来の銀行が上位クラスのMasterCard(Gold、World Eliteなど)に付帯させているような保険商品をついに提供できるようになったのだ。近日中にN26のユーザーは、今持っているカードをN26 Blackカードにアップグレードできるようになる。なお、機能面では既存のカードとほぼ同じN26 Blackカードには、Allianzの保険がついてくる。

1年契約で料金は月々5.9ユーロ(6.4ドル)に設定されており、普通の銀行が発行しているMasterCardやVISAカードの上位クラスの保険とほぼ同じ補償内容になっている。そのため、海外旅行中に病院へ行かなければならない場合、その費用はAllianzがカバーしてくれる。さらにフライトが4時間以上遅れた場合の費用についても払い戻しが申請できるほか、携帯電話が盗まれたときの補償もついてくる。

保険の全容についてはまだ公開されていないため、スキー保険やレンタカー保険が含まれているかは分からない。しかし上位クラスのカードにはこういった保険がついてくることが期待されるため、N26 Blackカードにも含まれる可能性がある。

N26のサービスの良い点は、必要のない保険に対してお金を払わなくてすむということだ。ユーザーがN26の口座をそこまで頻繁に使っていなければ、無料のN26カードを選ぶことができる。ドイツ、オーストリア、アイルランドの希望者には、11月前半にN26 Blackカードが届けられ、フランス、イタリア、スペインのユーザーはその数週間後にはカードを受け取ることができる。

また、興味深いことにN26は今年の夏に銀行のフルライセンスを取得し、同社は今後数週間の間に、20万人のユーザーを自社の銀行インフラ上へと移管させる予定だ。つまり、ユーザーは新しいカードと口座番号を受け取ることになる。

そのため、ユーザーはこのタイミングで、新しいベーシックなMasterCardかN26 Blackカードから希望のものを選ぶことができる。全てのユーザーが新しいカードを受け取るタイミングで、新たなプランを発表するというのは賢い動きだ。この作戦でN26 Blackカードのコンバージョン率は高まるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

次にフィンテックの舞台となる保険業界で成功をおさめるための秘訣

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【編集部注】執筆者のRichie Heckerは、投資家でTraction & ScaleのCEOを務めるほか、Bloomberg Nationのコミュニティリーダーでもある。

結局のところ、保険とはリスクのビジネスだ。契約者に何も起きなければ保険金の請求額は低くなり、みんな幸せになれる。しかし、保険テクノロジー(もしくはインステック/保険テック)の分野が多くの起業家や投資家の間で人気を博している中、その実情はあまり理解されていない。

数ある業種の中でも、保険業は始めるのがとてつもなく難しい。というのも、規制機関が保険市場に新たなプレイヤーを参入させたがらないのだ。その理由はリスクで、保険業にはリスクを管理するための強固なシステムとバランスシートが欠かせない。しかし、新規参入の難しさゆえに、テクノロジーの観点から言うと保険業界は他の業界に遅れをとっている。これこそ、保険業界でディスラプションが起きようとしている背景だ。

「2016年の上半期だけで保険テクノロジー界に10億ドル以上もの投資が集まっていることや、1000人もの企業幹部の参加を予定しているInsureTech Connectのような業界イベントの盛り上がりから、保険業界にテクノロジーの波がきていることが分かります」とQED Investorsのパートナー兼InsureTech Connectの共同ファウンダーであるCaribou Honigは話す(実はInsureTechのもうひとりの共同ファウンダーは、以前私のポートフォリオ企業に投資している)。

冒頭の通り保険はリスクのビジネスであり、自分たちがケガをしないよう各企業の動きは遅い。保険商品の開発に3〜5年かかることもよくある。3年から5年もだ。スタートアップの世界で言えば、これは永遠に感じられるほど長い。一方で保険のプレミアムは毎年1兆2000億ドルに達している(アメリカでは”プレミアム”とは保険業界の売上を指す)。この数字は大したものだ。一般的にはどんなテクノロジーの開発にも一年以上かかり、さらにその後収集したデータを利用しながら3〜5年かけてアンダーライティングのモデルに磨きをかけなければいけない。しかし、現在収集できるデータの量や種類は昔に比べて豊富で、かつリアルタイムで入手することができる。つまり長い商品開発の期間は、スタートアップにとってのチャンスとなるのだ。

保険とは確率のゲームで、統計モデルに基づいた賭け事だ。

保険業界への参入の鍵は、行動経済学を理解することにある。行動経済学とは、人間の行動そのものや、それが購買活動にどのような影響を与えているかを研究する学問だ。まず、保険は負の支出だと考えられている。契約者が保険料の対価を得るということは、何か悪いことが起きたことを意味する一方、保険料を支払いっぱなしだと損をした気分になり、負けっぱなしな気がする。しかし実はそうではない。

市場規模を考えると、Win-Winな状況を作りだせることは明らかだ。自動車保険を例にとれば、さまざまな保険会社を比較している人たちの中でも、71%以上の人が2015年中に保険会社を変更することはなかった。

「保険業界の現状を表す例としては、Blockbuster(米レンタルビデオチェーン)とNetflixの対決が最適だと思います。既存の保険会社が商品の効率化に没頭しているかたわら、スタートアップは顧客の声に耳をかたむけて、保険業の基本的な構造から変えようとしています。彼らは過去100年間で誰も見たことがないようなやり方で、商品や流通、テクノロジーを根本的に変えつつあります」とBumbleBeeの共同ファウンダー兼CEOのJerry Guptaは話す。なお、Jerryは以前Liberty Mutualのイノベーション・ディレクターを務めており、ライドシェア向け自動車保険の世界を変えようとBumbleBeeを設立した(私はBumbleBeeに投資しており、同社の会長でもある)。

同時に、保険業界にディスラプションを起こし得る要素はいたるところにあり、シェアリングエコノミーやオンデマンドサービス、ビッグデータ、IoTやテクノロジー全般がそれにあたる。では保険テクノロジー企業が成功するにはどうすればいいのだろうか?この問いに対する答えは、自分たちで保険会社を立ち上げるか、サービスプロバイダーに徹するかの大きくふたつに別れる。この記事の中では、前者について議論していきたい。

保険とは確率のゲームで、統計モデルに基づいた賭け事だ。それでは、テクノロジーをどのように使えば勝率を上げて市場で稼ぐことができるのだろうか?

角を丸くする

保険テクノロジーの分野で大きな成功をおさめるには、既存商品の角をとっていくのが1番の方法だ。言い換えれば、いちから新しい商品を開発するのではなく、うまくいっている部分はそのままにして、既存の商品を今の時代にあった形に変化させていくということだ。具体的には、分かりやすい契約書を準備し、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、インセンティブ(顧客にある行動を促す要因)を現在私たちが住む世界に合わせていくことなどが考えられる。

契約書の内容の多くは100年以上前に考え出されたもので、その頃には現代のテクノロジーもなければ、デジタルに繋がったシェアの世界に潜む複雑さも存在しなかった。そのため契約書を作る際には、補償内容をシンプルにして例外を省き、その保険商品を購入することで、加入者にはどんな利点があるのかをハッキリさせなければいけない。それはちょうど鋭い角を丸めるように、やるのは簡単な上、人がケガをするのを防ぐことができる。

契約書を作る際には、補償内容をシンプルにして例外を省き、その保険商品を購入することで、加入者にはどんな利点があるのかをハッキリさせなければいけない。

「保険業界には、わかりやすさを求める消費者のニーズに合わせてサービス内容を変更する責任があります」と大手生命保険会社RGAxでヴァイスプレジデント兼イノベーションスタジオリードを務めるFarron Blancは話す。「アンダーライターが加入希望者の情報を審査する際の基準や、保険相談にかかる費用や支払タイミングについての情報を明らかにするなど、保険業界は消費者の声に応えていかなければならない。その高潔な目的のもとで人々の生活を良くするため、保険業界には変化が求められているんです」

分かりやすい契約書:「保険は複雑で分かりにくい」というイメージを持つ人は多い。そもそも、弁護士の作った契約書に普通の消費者がサインをするというのは、不公平に感じないだろうか。分かりやすく補償内容がハッキリと書いてある契約書をつくるだけでも、保険業界にディスラプションを起こすことができるのだ。

そのためには、簡潔な言葉で何がカバーされていて何がカバーされていないのかを明記し、例外をなくしつつ、現状に合わせた微調整を行わなければいけない。住宅保険であれば、Airbnbの利用も一定の範囲でカバーすべきだし、自動車保険であれば、Uber車としての利用も許されるべきだ。もしもフルタイムでUberドライバーの仕事をする、ということであれば事情は変わってくるが、保険会社は保険内容に余裕をつくって、加入者が何か新しいことに手をだすのを許容しなければいけない。さらに契約書の内容はわかりやすく書いてあるか、そして実際に顧客に起こり得るような出来事をカバーしているかどうかも重要だ。このようなポイントを抑えれば、消費者の間でその保険会社の評判が高まることになるだろう。

ユーザーエクスペリエンスデザイン:ユーザーエクスペリエンスについても、分かりやすさを追求しなければいけない。ほとんどの保険会社は、未だに代理店を通して商品を販売しているが、代理店を利用するにも費用がかかり、結果的には消費者にそのしわ寄せがきている。そこで、保険テクノロジースタートアップは、ユーザーが彼らと直接契約できるようにしなければいけない。モバイルアプリをつくって、契約や保険金請求のプロセスをアプリ上で行えるようにすればいいのだ。そして、もし請求があればビデオチャットを通して、状況を把握することができる。さらに顧客とのコミュニケーションチャンネルは、モバイル、SMS、チャットボットなど、彼らの要望に合わせて用意しておいた方が良い。そして請求の処理が終わったら、顧客が請求時に使ったものと同じチャンネルを通じて、処理完了に関する連絡をする。そうすれば顧客満足度が高まっていくだろう。

同時に、できる限り多くのデータを集めるられるように、ユーザーにインセンティブを与えることも重要だ。モバイルデバイスやIoTデバイスを使うことで、データの収集経路を増やすことができる。さらに集めたデータを利用することで、リアルタイムで顧客の行動を解析でき、インセンティブの調整も可能だ。早い時点からデータ収集のために顧客の教育に注力すれば、最終的には顧客の行動に基いたセグメンテーションという形でその労力が報われることになる。

インセンティブの調整:必要なときに保険を請求できるかどうかというのが、保険商品の品質の要だ。しかし保険は、自動車のこすり傷や、ただ咳が出ているだけのときなど、全ての状況をカバーするためには設計さていない。もともと保険は大災害(=大きな出費)が起きたときのためのものだ。例えば船が海賊に盗まれたら、Lloyd’s of Londonはそれをカバーしてくれる。

保険金の請求プロセスは、請求額の大小に関わらず全ての案件で同じだ。だからこそ、少額の問題については加入者が自分で手数料をかけずに処理し、被害額が大きいときには保険を利用するように仕向けることで、保険会社は出費をかなり抑えることができる。そして減らした出費を顧客に還元すれば良いのだ。

保険業界は今ディスラプションを起こすには最適な市場だ。そして上述のように、保険業界で成功するためには、分かりやすい契約書や簡素化された契約プロセス、使いやすいサービスを準備し、加入者が出費を抑えつつ、本当に必要なときにだけ保険を請求するようにインセンティブを調整することが重要になってくる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter