台湾Gogoroが電動バイク用交換式全固体電池パックのプロトタイプ発表、容量はリチウムイオン式の1.47倍

台湾Gogoroが電動バイク用交換式全固体電池パックのプロトタイプ発表、容量はリチウムイオン式の1.47倍

Gogoro

電動スクーターの開発販売とバッテリー交換ステーションの運営している台湾のGogoroが、世界初となる電動二輪用交換式全固体電池を発表しました。現在はまだプロトタイプの段階ですが、Gogoroは「将来的に商用製品に発展させることを楽しみにしている」と述べています。

電気自動車などで使用される大容量の充電式バッテリーは、その容量の大きさからリチウムイオン電池が主流になっていますが、可燃性電解液を使用するため熱や変形などによって発火のリスクが高い問題があります。一方全固体電池は電解液ではなく固体の電解質を使用して電極間を接続するため、先に挙げたリスクが小さく、小型軽量化、高エネルギー密度化できると期待される次世代の充電池です。

Gogoroが同じ台湾のProLogium Technologyとの提携により開発したという全固体電池式(プロトタイプ)は内部にリチウムセラミックを使用したもので、Gogoroの電動スクーター用交換バッテリーパックと互換性を持たせて設計されています。そしてその容量は従来のリチウムイオン式の1.7kWhに対して2.5kWhとされ、1.47倍の容量アップを果たしています。

Gogoroは台湾だけでもすでに1万か所以上のバッテリー交換ステーションを設置しており、45万人を超える人々がサービスを利用しているとのこと。台湾の電動二輪車の95%がGogoroのバッテリー交換システムを使用しており、全体のバッテリー交換回数は累計2億6000万回を超えているとのこと。

まだ試作段階ではあるものの、台湾でこれほどに浸透したシステムで利用可能になれば、より大容量かつ安全、航続距離も伸びるであろう全固体式へのシフトはあっという間に進むものと考えられます。

またバイク向けで実用化・普及すれば、バイクよりも航続距離延長と軽量化の需要が高い電気自動車向け全固体電池の実用化にもGogoroとProLogium Technologyの技術が大きく寄与する可能性もあるかもしれません。

電気自動車向け全固体電池の実用化にはまだ数年の期間が必要と言われており、世界各国の自動車メーカーやベンチャー企業などが材料や内部構造を工夫して最適解となるもの生み出すべく開発競争を繰り広げています。

(Source:GogoroEngadget日本版より転載)

フォードやBMWが支援するSolid Powerが上場、全固体電池開発の競争激化

Ford(フォード)やBMWが支援する全固体電池開発企業のSolid Power(ソリッドパワー)が、米国時間12月9日に上場した。取引開始直後に株価は急上昇している。

Solid Powerは、電気自動車関連分野では数少ない、特別買収目的会社(SPAC)との合併により上場した企業だ。同社は6月にSPACのDecarbonization Plus Acquisition Corp III(ディカーボナイゼーション・プラス・アクイジション・コーポ III)との合併を発表。合併後の市場評価額は12億ドル(約1360億円)とされていた

この合併では、株主投票前償還が著しく少なかったため、最終的にSolid Powerに約5億4290万ドル(約615億円)の現金がもたらされた。これは事前に推定されていた6億ドル(約680億円)に非常に近い金額だ。この現金には、1億9500万ドル(約221億円)のPIPE(上場企業の私募増資)と3億4790万ドル(約394億円)の信託現金が含まれる。

この資金は、世界初の電気自動車用全固体電池の実用化を目指す同社にとって必要なものになる。全固体電池とは、液体ではなく固体の電解質を用いることからその名がついたもので、次のブレークスルーとなる電池技術として注目を集めている。開発者によると、可燃性の電解液を使用しないために、従来の電池にともなう火災のリスクを最小限に抑えることができ、さらにエネルギー密度(すなわち電池の重量や体積あたりの航続距離)にも優れているという。

Solid Powerは現在、コロラド州にある工場を拡張し、2022年初頭に商用品質の100アンペア電池セルを試験的に生産する準備を進めているところだ。この電池セルは、同社に出資しているフォードやBMWの自動車でテストに使われることになっている。Solid Powerは今回の上場で得た資金を、2026年と予想される車両への搭載までの運営資金に充てる計画だ。

関連記事:固体バッテリー開発のSolid Powerが生産能力拡大、2022年にフォードとBMWに試験用バッテリーを納入

同社の長期的なビジネスプランは、業界大手のLG Chem(LG化学)やSK Innovation(SKイノベーション)のような大規模な電池メーカーになることではない。最終的な目標は、メーカーや製造業者にセルのライセンスを供与することである。「長期的に考えれば、当社は素材メーカーです」と、同社CEOのDoug Campbell(ダグ・キャンベル)氏は、先日のTechCrunchによる取材に語っていた。「私たちは、固体電解質材料の業界リーダーになりたいと考えています」。

Solid Powerは、SPACを通じて株式公開した唯一の全固体電池開発企業でもなければ、大手自動車メーカーから投資を受けている唯一の企業でもない。

実際、ライバルのQuantumScape(クァンタムスケープ)はVolkswagen(フォルクスワーゲン)の支援を受けており、Stellantis(ステランティス)とMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は新規参入のFactorial Energy(ファクトリアル・エナジー)に資金を提供するなど、大手自動車メーカーは全固体電池の開発競争に出馬する馬を選んでいるようだ。

QuantumScapeも、2020年11月にSPAC合併による上場を完了させた。他のモビリティ系SPACと同様、株価は変動が激しく、12月には114ドル(約1万3000円)まで上昇した後、20~25ドル(約2270〜2830円)程度で落ち着いている。Solid Powerの株価が同じような激しい変動にさらされるかどうかはまだわからない。同社の株は「SLDP」というティッカーシンボルで取引されている。

画像クレジット:Solid Power

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

日産が今後5年間でEV開発に2兆円を投資へ、2030年度までに23車種の新型電動車投入

日産自動車は「Nissan Ambition 2030(日産アンビション2030)」と名づけた長期ビジョンの一環として、今後5年間で2兆円を投資し、新型電動車やバッテリー技術を開発することを発表した。同社は2030年度までに合計15車種の新型BEVを発売し、その時点で電動車が車両ラインナップの半分を占めることを目指す。

同社は、今後8年間で合計23車種の電動車を開発し、そのうち20台は今後5年間で開発すると発表した。2030年には、欧州で75%、日本で55%、米国と中国で40%の電動車販売比率(EVとe-Power PHEV / ハイブリッド車)に達することを目標にしている。

それ以外の部分は、内燃機関(ICE)車だと思われる。注目すべきなのは、2021年初頭、日産は「2030年代初頭までに発売するすべての新型車を電動化する」と発表していた点だ。おそらく、ICE車がまだ販売されている場合は、レガシーモデルということになるだろう。

日産は他にも、2028年までに全固体電池(ASSB)を搭載したEVを発売し、早ければ2024年に横浜にパイロット工場を設置すると発表した。この技術は、充電時間の短縮などのメリットを約束するものだが、まだ期待通りに市場に登場していない。また、バッテリーパックのコストを2028年までに1kWhあたり75ドル(約8500円)に引き下げ、さらに先には65ドル(約7400円)に引き下げることを目指している。Bloombergによると、これは2020年のEVバッテリーの価格の約半分に相当する。日産は、2030年までにグローバルな電池生産能力を130GWhへと引き上げる予定だという。

日産は、運転支援技術「プロパイロット」を、2026年までに250万台以上の日産車およびインフィニティ車に拡大する計画であるとも述べている。また、次世代LiDARシステムを「2030年度までにほぼすべての新型車に搭載する」としている。

画像クレジット:Nissan

「Ambition 2030」の一環として、日産は4つの新しいコンセプトカー「Chill-Out」「Surf-Out」「Hang-Out」「Max-Out」を発表した。他のコンセプトカーと同様に、これらは自動運転やインテリアの機能、そして奇抜なデザインなど、日産の未来のテクノロジーを体験するためのものだ。しかし、日産が実車として公開しているのは「Chill-Out」の画像のみで、他の3車種はレンダリング画像だ。

Chill-Out(トップ画像・上)は小型のクロスオーバーで、日産が以前に確認したように、次世代リーフがハッチからクロスオーバースタイルのボディに移行することを示す初期のプレビューかもしれない。アリアのCMF-EVプラットフォームとe-4orce電動駆動4輪制御システムを採用しており、2025年までに登場する予定だ。

画像クレジット:Nissan

一方、Surf-Outは小型の電動シングルキャブピックアップトラックで、そこそこの大きさの荷台と取り外し可能なキャノピーを備えている。デュアルモーターAWDと多様な出力を備え、オフロード性能、ユーティリティー性、広いカーゴスペースを提供する。

画像クレジット:Nissan

そしてHang-Outは「移動中の新しい過ごし方を提供する」ことをコンセプトにした、小型のキャンピングカー・SUVのようなモデルだ。完全にフラットなフロアと可動式のシアターシートを備え、最近のEVコンセプトにも見られる「移動空間でありながらリビングルームのような快適さ」を提供する。また、e-4orceや先進のプロパイロット機能も搭載している。

画像クレジット:Nissan

そして最後に、Max-Outは「最高の安定性と快適さ」を提供するオープンスポーツカーだ。ボディロールを抑えることで「ダイナミックなコーナリングとステアリングレスポンス」を実現し、ハンドリングと乗員の快適性を最適化している。また、 軽量・低重心で、先進のe-4orceも搭載しているとのこと。

日産の新計画は、カルロス・ゴーン前CEOの逮捕とその後の逃亡など、社内問題に取り組んできた中で生まれたものだ。同社は短期的には、2020年に発表された「NISSAN NEXT」計画の一環として、3000億円規模の固定費削減と生産能力の20%削減を計画している。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Nissan

原文へ

(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)