SpaceXがFalcon 9ブースターの4回目の回収、フェアリングも再飛行と回収に成功

 SpaceXのStarlinkのミニ通信衛星衛星の大量打ち上げは計画どおり、60基を軌道に乗せることに成功した。今朝Falcon 9によって打ち上げられた60基は今年5月に打ち上げられた60基に続くものだ。前回までの打ち上げがテストだったのに対して、今回からは宇宙インターネット網を構成するStarlink衛星群の第一陣だ。

打ち上げは米国フロリダ州ケープカナベラルで実施され、Falcon 9の第1段ブースターは単なる「再」利用どころか、すでに3回打ち上げに用いられており、今回無事に地上回収に成功したことで4回目の宇宙飛行となった。これはSpaceX自身にとっても再利用回数の新記録だ。ブースターロケットについてSpaceXでは「最大10回の宇宙飛行に耐えるよう設計されている」と述べている。

今回SpaceXはペイロードを大気との摩擦から保護するフェアリングの回収にも成功した。これは大西洋を航行する回収専用船「Of Course I Still Love You」の船上に張り渡されたネットによってキャッチされた。SpaceXがファエリングの再飛行、再回収を試みたのはこれが最初だ(もちろん他の宇宙企業も試みていない)。前回のフェアリング回収は大型のFalcon Heavyによって中東上空をカバーする Arabsat-6Aを打ち上げた4月のミッションで実施された。 SaceXのCEOであるイーロン・マスク氏によれば、フェアリングの回収は1回ごと600万ドル(約6億5400億円)の節約となるという。

SpaceXでは当初からフェアリングの回収を図っていたが、最初の打ち上げでは海の状況やその他の理由で成功しなかった。

SpaceXは最終的に1万2000基程度の衛星によってStarlinkを構成する計画だ。この衛星コンステレーションは地球上のあらゆる場所でインターネットへのアクセスを可能にする。衛星群は軌道上を周回しながら次々に中継機能を別の衛星にスイッチしていく。これは地球の自転に同期する少数の大型静止衛星によって通信を行うのとはまったく異なるアプローチだ。赤道上空に静止する衛星によるカバー範囲は衛星の経度によって限定されるほか、高緯度地方では接続が困難になる。

今年、イーロン・マスク氏はStalinkを利用した最初のツイートを行っている。SpaceXでは今後6回の打ち上げによって米国とカナダのユーザーがStarlinkを利用できるにようにする計画だ。その後24回の打ち上げでサービスは全世界に拡大される。

【Japan編集部追記】打ち上げ、回収のライブビデオを含む記事はこちら

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceX Falcon 9の打ち上げライブビデオ、ブースターは4度目の宇宙飛行へ

米国時間11月11日の朝、SpaceXは米国フロリダ州ケープカナベラル宇宙基地からビッグな打ち上げを行う。 Falcon 9にはイーロン・マスク氏が推進する衛星通信網であるStarlinkを構成するミニ衛星60基が搭載されている。

今回のStarlink衛星は実験ではなく、実用衛星の第1陣だ。SpaceXではこの通信網を広く一般ユーザーに開放し、世界のどこにいても高速インターネット接続が得られるようにする計画だ。

SpaceXは過去に2回の打ち上げで合計62基のStarlink衛星を軌道に乗せている。2018年にカリフォルニアのバンデンハーグ空軍基地からスペイン政府の地球観測衛星のPazを打ち上げる際に、Starlink衛星も2基搭載した。その後、今年5月には地上の通信システムのテストのために60基を打ち上げた。このときは衛星を操縦して意図のとおりに大気圏に再突入させて廃棄する実験も目的だった。60基のうち57基は現在も軌道を周回中だ。

今回さらに60基を打ち上げるミッションでは通信能力の拡大を実証すると同時に、Starlink衛星のdemisability、つまり衛星の運用寿命が尽きたときにロケットを燃焼させて大気圏に再突入させ、軌道上に宇宙ゴミとなって残らないようにする能力が100%作動することを確認するのも大きな目的だ。Starlinkのように大量のミニ衛星で地球をカバーする通信システムの場合、この能力は実用化に向けての必須の機能だ。【略】

Starlink網建設の重要な第一歩となるペイロードに加えて、Fakcon 9自身もも重要なミッションが貸せられている。SpaceXではFalcon 9の1段目となるブースターの再利用に力を入れているが、今回利用されるブースターはすでに過去3回飛行している。さらにペイロードを大気との摩擦から保護するフェアリングは今年のFalcon HeavyのArabsat-6A打ち上げの際に用いられている。SpaceXではブースターを地上回収すると同時に、大西洋上の専用船によってファエリングの回収も図る。発射と回収の模様は上のライブ中継で見ることができる。

【Japan編集部追記】このビデオは録画となっており、打ち上げシーンは19時57分でエンジンスタート、21時18分でマックスQ(最大空気抵抗)、22時42分でブースター切り離し。ブースターのグリッドフィン展開、ペイロードのフェアリング切り離しなどが続く。28時24分でブースター着陸、4度目の飛行成功。再利用に関しては別記事に解説がある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXがFalcon Heavyのフェアリングを専用船でキャッチ

 SpaceXが衛星打ち上げロケットの再利用をまた一歩前進させた。6月25日のFalcon Heavyの打ち上げで宇宙から落下してきたロケットのフェアリングを専用船、Ms. Treeに装備された巨大な回収ネットで洋上キャッチすることに成功した。

ペイロードを大気との摩擦から守るノーズコーンは非常に高価な部品だが、通常は洋上に落下したまま失われてしまう(まれに海から拾い上げるのに成功することもあった)。

SpaceXはノーズコーンのフェアリングが大気中を落下し、回収船のネットにキャッチされるまでのビデオを公開した。SpaceX がフェアリングや回収船にセットしたオンボードカメラの映像でMs Treeのネットにフェアリングが無事タッチダウンする瞬間を見ることができる。下にエンベッドされたビデオを見れば、フェアリングがくぐってきた試練が実感できる。フェアリングは大気中を落下するときに高熱と激しい衝撃にされている。

STP-2打ち上げミッションの際、フェアリングに取り付けられたカメラからの映像。フェアリングは摩擦で高音となり、大気の分子が明るい空色に輝いて見える。

一方、フェアリングがパラシュートで操縦されながらMs. Treeにキャッチされる瞬間の映像はあまり劇的なものではない。夜間のことでもあり、ネットがわずかに変形するのが分かるだけだ。

SpaceXのCEOであるイーロン・マスク氏によれば回収の目的は、「600万ドルを海に捨てない」ことだ。SpaceXはすでに「飛行済み」のブースターを安全に着地させ、再利用することによってFalcon の打ち上げコストを6200万ドルから5000万ドルに削減することに成功している。Falcon Heavyの場合も、再利用なしなら1億5000万ドルの打ち上げコストが再利用ありの場合は9000万ドルになるという。ここでさらに600万ドルの部品を安定して回収、再利用できれば収益性の改善に貢献するのは明らかだ。

ただしフェアリングの回収が実際に収益性の改善に役立つかどうかは今後の問題だ。今後、SpaceXは回収された部品が再利用できる状態に整備可能だと実証しなければならない。また今回は回収に成功したが、今後も専用船が安定して部品をネットで受け止めることができるのかどうかも注目だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook