IKEAがスウェーデンの家庭にクリーンエネルギーを販売へ

IKEA(イケア)はスマートライトを売るだけではない。対象となる国で間もなくそうしたライトに供給する電気も販売するようになる。Strömmaサブスクサービスを通じてクリーンエネルギーをスウェーデンの家庭に販売する計画を同社が明らかにした、とElectrekが報じている。顧客は料金を払うと認証された太陽光あるいは風力発電の電気が供給され、使用量はモバイルアプリで追跡できる。

家具大手のIKEAはクリーンエネルギーの販売を他国でも展開するとは言っていないが「すべてのIngka Groupマーケット」で2025年までに人々が再生可能エネルギーを使ったり発電したりできるようになることを望んでいた。

IKEAがエコフレンドリーな取り組みを行うのはこれが初めてではない。非LEDライトの販売を止め、間もなく再充電できないタイプのアルカリ電池の販売もやめる。さらにはスウェーデンの都市を持続可能なコミュニティに変えることも計画している。間違いなくこうした取り組みは同社のイメージ向上につながる。クリーンエネルギーソースとしてサービスを提供することで同チェーンの環境負荷についての懸念も解決できる。

かなり大きな動きだが、他の大手家具メーカーが今後追随したとしても驚きではない。単に、二酸化炭素排出を減らすことができる気持ちの良い努力というものではなく、余剰クリーンエネルギーの販売はコストを回収し、利益を押し上げるかもしれない。

編集部注:この投稿はEngadgetに掲載された。著者Jon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

関連記事
靴箱サイズのモジュール式エネルギー貯蔵ブロックを開発するMGA Thermalが6.5億円調達
中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定
テスラが高まるニッケル需要に備え鉱山大手BHPと供給契約を締結

カテゴリー:EnviroTech
タグ:IKEAスウェーデン電力再生可能エネルギー

画像クレジット:

原文へ

(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

靴箱サイズのモジュール式エネルギー貯蔵ブロックを開発するMGA Thermalが6.5億円調達

MGA Thermalの共同創業者であるエリッヒ・キジ氏とアレクサンダー・ポスト氏

MGA Thermal(MGAサーマル)は、靴箱サイズの蓄熱ブロックで、電力会社の化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を支援したいと考えている。同社によると、1000個のブロックを積み重ねると小型車ほどの大きさになり、27世帯の電力24時間分を蓄えられるという。これがあれば、太陽光発電や風力発電に適さない天候のときでも、電力会社は大量のエネルギーを蓄え、送電する準備が整えられる。また、ブロックがモジュール化されているため、石炭火力発電所などのインフラをグリッドスケールのエネルギー貯蔵へ転換することも容易になる。

MGA Thermalは現地時間8月2日、800万豪ドル(約6億4800万円)を調達したとを発表した。累計の資金調達額は900万豪ドル(約7億2900万円)となった。今回の資金調達を主導したのは、豪州の国立科学機関が設立したベンチャー企業のMain Sequenceで、最近2億5000万豪ドル(約203億円)のファンドを新たに立ち上げた。また、Alberts Impact Capital、ニュージーランドのClimate Venture Capital Fund、The Melt、CP Venturesの他、Chris Sang(クリス・サング)氏、Emlyn Scott(エムリン・スコット)氏、Glenn Butcher(グレン・ブッチャー)氏などのエンジェル投資家も参加した。

Erich Kisi(エリッヒ・キジ)氏とAlexander Post(アレクサンダー・ポスト)氏はニューカッスル大学で約10年間、混和性ギャップ合金(MGA)技術の研究開発に携わった後、豪州のニューカッスルを拠点とするMGA Thermalを2019年4月に創業した。MGA技術を平易に説明するよう求められたキジ氏は「おいしい」例え話をした。

MGA Thermalのブロックは「基本的には、熱すると溶ける金属粒子を不活性のマトリックス材に埋め込んだものです。ブロックは、電子レンジで加熱されたチョコチップ入りのマフィンのようなものだと思ってください。マフィンは、加熱したときに全体の形を保持するケーキ部分と溶けるチョコチップで構成されています」とTechCrunchに話した。

「チョコチップを溶かすエネルギーは蓄積され、マフィンを噛んだときに口の中をやけどさせることができるほどです。融解エネルギーは、単に何かを加熱するよりも強力であり、融解温度付近に集中しているため、エネルギーを一貫して放出することができます」。

MGA Thermal社のモジュール式エネルギー貯蔵ブロック(画像クレジット:MGA Thermal)

MGA Thermalのブロックに蓄えられたエネルギーにより水を加熱すれば、蒸気タービンや発電機を動かすことができる。ブロックはこのシナリオにおいて、水を汲み上げたり沸騰させたりするための内部チューブを備えていたり、熱交換器と連動する設計となっている。キジ氏によると、MGA Thermalのブロックを使えば、長い日照時間や強風のときに通常ならスイッチを切ってしまう再生可能エネルギーによる発電を、老朽化した火力発電所とともに継続することができるという。

他の熱エネルギーソリューションとしては、ブロック状や顆粒状の安価な固体材料を断熱容器の中で高温に加熱する方法がある。だが、こうした材料の多くは、熱エネルギーの移動が苦手で、温度制限があるとキジ氏はいう。つまり、熱エネルギーは放出されると温度が下がり、効果が薄れてしまうのだ。

熱エネルギーを貯蔵する別の方法としては、再生可能エネルギー源で加熱された溶融塩をホットタンクに貯蔵する方法がある。高温の塩は熱交換器に送られて蒸気となり、低温の塩は冷たいタンクに戻される。

「このシステムは、集光型太陽熱発電では広く使われていますが、それ以外の場所ではほとんど使われていませんでした」とキジ氏は語る。「その理由の多くは、ポンプやヒーターを配管するために巨額のインフラコストが必要になるため、また、塩の凍結防止に大量の電力を浪費するためです」。

MGA Thermalはニューサウスウェールズ州に製造工場を建設中であり、商業レベルのブロック生産を目指している。また、今後1年間でチームを倍に拡大し、毎月数十万個のブロックを生産できるようにする。また現在、スイスのE2S Power ASGや米国のPeregrine Turbine Technologiesなどの提携先と協力して、豪州、欧州、北米での技術展開を進めている。例えば、E2S Power AGは、MGA Thermalの技術を利用し、欧州で運転を終了したか、稼働中の石炭火力発電所を再利用する予定だ。

MGA Thermalの技術は、発電所の改造、オフグリッドストレージの構築、遠隔地のコミュニティや商業スペースへの電力供給など多くの産業用途があるが、消費者の化石燃料の消費を抑えることもできる。例えば、MGAのブロックは、各家庭の屋根にある太陽光パネルや小型風力発電機が発電した余剰エネルギーの貯蔵に使える。そのエネルギーは暖房に利用することができる。

「世界では30億人もの人々が燃料を燃やして家を暖めていると言われています」とキジ氏は話す。「特に寒冷地では、それが大量の二酸化炭素発生の原因となっています」。

Main SequenceのパートナーであるMartin Duursma(マーチン・デュールズマ)氏は声明で「私たちの新しいファンドが特に力を入れているのは、科学的な発見を実際に使える確かな技術に変え、気候変動の影響を逆転させる支援を行うことです。エリッヒ・キジ氏とアレクサンダー・ポスト氏の印象深い研究経歴、彼らの専門家チームと革新的技術が、グリッドスケールのエネルギー貯蔵への道を開き、世界中で再生可能エネルギーの未来の可能性を広げると考えています」。

関連記事
中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定
テスラが高まるニッケル需要に備え鉱山大手BHPと供給契約を締結
パナソニックが世界で初めて純水素型燃料電池を活用したRE100化ソリューションの実証実験を開始

カテゴリー:EnviroTech
タグ:MGA Thermal資金調達再生可能エネルギー電力エネルギー

画像クレジット:MGA Thermal

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定

中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定

Thorium pellets. Pallava Bagla/Corbis via Getty Images

中国政府の科学者は、世界初をうたう、冷却のための水を必要としない実験用原子炉の計画を発表しました。来月にも原子炉は完成し、9月から最初の実験が開始される予定です。中国はこの実験炉での実験がうまくいくならば、早ければ2030年に最初の商業用原子炉を建設する予定。そしてその後は水が必要ない利点を活かして砂漠や平原地域にこの原子炉を置き、さらには「一帯一路」構想に参加する国にも最大30基を建設する予定だとしました。

中国人民政治協商会議(CPPCC)の常任委員、王守軍氏は、CPPCCのウェブサイトに掲載された報告書で「原子力での『進出』はすでに国家戦略であり、原子力の輸出は輸出貿易の最適化と、国内のハイエンドな製造能力を解放するのに役立つ」と述べています。

この構想の原子炉が大量の水を必要としないのは、燃料にウランではなく液体トリウムを使う溶融塩原子炉だからです。この原子炉ではトリウムを液体のフッ化物塩に溶かし込み、600℃以上の温度で原子炉に送り込みます。原子炉の中で高エネルギーの中性子が衝突することでトリウムがウラン233に変化し、核分裂の連鎖反応を開始します。こうしてトリウムと溶融塩の混合物が加熱され、それを2つめの炉室に贈ることで大きなエネルギーを抽出、発電に利用します。

溶融塩は空気に触れれば冷えて固まります。そのため、万が一漏洩があったとしても、核反応は自然におさまり、トリウムが外界に漏れ出ることもほとんどないとのこと。またトリウムはウランに比べて核兵器への転用が難しく、また安価で入手しやすいという点もメリットとされます。

この溶融塩原子炉の試作機を開発した上海応用物理研究所によれば、計画は中国が2060年までにカーボンニュートラルを実現するという目標の一環とのこと。2019年の米調査会社の報告によると、世界の炭素排出量の27%が中国が占めています。これは他の先進国全体を合計しても届かない数値であり、世界からの厳しい目が中国に向けられています。

溶融塩原子炉のアイデアは新しいものではなく、1946年に米空軍の前進組織が超音速ジェット機を開発するときに考えられました。しかし、その後の開発においては溶融塩のあまりの温度に配管が耐えられなかったり、トリウムの反応がウランに比べて弱いことから、結局ウランを添加しないと核分裂反応が持続させられないといった技術的なハードルを解決できず、研究は中止されました。

ちなみに、米国では6月に資産家のビル・ゲイツ氏とウォーレン・バフェット氏が出資する企業が「ナトリウム高速原子炉(SFR)」という新しい原子力発電方式の実証炉をワイオミング州の石炭火力発電所に建設することを発表しています。こちらは仕組み的には日本がかつて研究開発していた高速増殖炉「もんじゅ」の方式を発展させた方式のものとされます。

原子力発電というと、われわれ日本人はどうしても福島の原発事故や、広島・長崎の原爆投下を思い出し、放射能流出が心配になりがちです。化石燃料を使った発電から再エネへの積極的な転換を目指す大きな流れもあるなか、米中という大国が従来より安全とはいえ新たな原子力を開発し、これを推進するなら、その先の世界がどうなっていくのかは気になるところです。

(Source:LIve ScienceEngadget日本版より転載)

関連記事
さくらインターネットが石狩データセンターの主要電力をLNG発電に変更、年間CO2排出量の約24%にあたる約4800トン削減
【コラム】核廃棄物のリサイクルはエネルギー革新の最重要手段だ
EUがゲイツ氏のBreakthrough Energyと提携、クリーンテックの開発・浸透加速へ
パナソニックが世界で初めて純水素型燃料電池を活用したRE100化ソリューションの実証実験を開始
「電気の顔の見える化」目指すみんな電力が11.5億円のシリーズC調達、総調達額約41.5億円に
スタートアップにはバイデン大統領のインフラ計画を支持する110兆円分の理由がある
アップルが世界中の製造パートナー110社以上が製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギーに変更と発表
3兆6420億円の新エネルギー政策を含む2020年末の米国景気刺激法案
倫理感のある技術者の消滅と再生
ビル・ゲイツ、エネルギーを語る―「福島以後もやはり原子力はキロワット時あたり死傷率で石炭より安全」

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:インフラ / インフラストラクチャー(用語)Warren Buffett / ウォーレン・バフェット(人物)エネルギー / エネルギー産業(用語)カーボンニュートラル(用語)環境問題(用語)原子力 / 核(用語)再生可能エネルギー(用語)持続可能性 / サステナビリティ(用語)中国人民政治協商会議 / CPPCC(組織)電力 / 電力網(用語)炭素 / 二酸化炭素(用語)Bill Gates / ビル・ゲイツ(人物)倫理(用語)中国(国・地域)

テスラが高まるニッケル需要に備え鉱山大手BHPと供給契約を締結

Tesla(テスラ)は、鉱業資源の巨人BHPからのニッケル供給を確保した。今後10年で需要の急増が見込まれている原材料の直接提供元を確保しようとする同社の最新行動だ。

BHPのNickel Westディビジョンは、オーストラリア西部の同社鉱山から非公表の量のニッケルを提供する。両社はバッテリーサプライチェーンの持続可能性の向上、および再生可能エネルギーと組み合わせたエネルギーストレージを使ってそれぞれの事業運用における炭素排出量削減方法でも協力する。

ニッケルはリチウムイオン電池の主要な鉱物であり、Teslaの次世代バッテリー化学の主役だ。リチウムイオン電池の多くがニッケル、マンガン、コバルトから成るカソードを使っているのに対して、Teslaは異なる戦術を取っている。TeslaのBattery Day 2020カンファレンスでElon Musk(イーロン・マスク)氏は、一部のモデル向けに、ニッケルが多くコバルトを使わないカソードに投資すると語り、エネルギー密度を高くするためであることを理由に挙げた。

Teslaは、次の10年にバッテリー生産を増強する意向に迷いがない。2022年までに100ギガワット時、2030年までには年間3テラワット時相当のバッテリーを生産する計画だ。

関連記事:テスラは材料科学の革新でバッテリーコストのさらなる低下を目指す、シリコンやニッケルを再研究

それに向けて同社は、ニッケル生産最大手との購入契約締結にすばやく動いている。2021年Teslaは、フランス領ニューカレドニアのニッケル製造企業との提携を発表した。そのわずか数カ月後、TeslaのRobyn Denholm(ロビン・デンホルム)会長は、同社がオーストラリアからだけで年間約10億ドルのバッテリー用鉱物を購入するつもりであることを認めた。

マスク氏は、鉱山会社にもっとニッケルを生産するよう再三要請してきた。7月の投資家向け電話会見で同氏は生産者に対して「Teslaはニッケルを効率よく、かつ環境を重視した方法で採掘する会社と長期の大型契約を結びます」と語った。Battery Dayカンファレンスでも同氏は同じ立場を繰り返した。「スケーリングするためには当社のニッケル総入手量が制約を受けないようにする必要があります」と彼は言った。「実際私は世界最大の鉱山会社のCEOに『もっとたくさんニッケルを作ってください、非常に重要なのです』と言ったほどです」。

しかし、環境に優しいニッケル供給源を見つけるのは容易ではない。現在の回収、精錬技術特有の問題も関係しているし、採掘会社が直接管理可能な問題もある。例えば世界最大の金属生産国であるインドネシアのニッケル採鉱事業は、石炭への依存と廃棄物処理技術に関して非難の的になっている。

BHPは同社の活動は世界最大級に持続可能だと謳っており、Teslaがパートナーとしてこの会社を選んだことはその事実を裏付けるものと見ることができる。同社は2021年2月に、あるニッケル精錬所の使用電力の50%が太陽エネルギー由来であると述べている。

現在、世界のニッケル供給の大部分が鉄鋼産業によって消費されている。現在のEVとエネルギー貯蔵分野のニッケル需要は比較的少ないが、International Energy Agency(国際エネルギー機関)は2020年の81トンから2040年には3352トンへと、今後20年間に4000%以上増加すると予測している。

歴史的にNickel Westは、BHPの鉄鉱、銅、および石油事業と比べて全事業のごくわずかな部分でしかない。BHPは2015年前後にNickel Westを数度に渡って売却しようとしたが、EVとエネルギーストレージ分野の需要の高まりから方針転換したようだ。

業界アナリストのBenchmark Minerals(ベンチマーク・ミネラルズ)は、Teslaとの契約は年間1万8000トンのニッケルに相当する価値があると推測した。

関連記事
イーロン・マスク氏がテスラはビットコインが環境に優しくなれば受け入れを再開する「可能性が高い」と発言
テスラのスーパーチャージャー充電ネットワークを2021年後半に他社EVにも開放とマスクCEO
テスラがオーナーを使い安全ではない自動運転ソフトのテストを行っているとコンシューマーレポートが懸念

カテゴリー:モビリティ
タグ:TeslaニッケルBHPバッテリー再生可能エネルギー持続可能性リチウムイオン電池

画像クレジット:Tesla

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

希少生物が戻り農作物も育つ日本初の「植生回復」も実現する太陽光発電所の生態系リデザイン事業開始

1922年に創業、間もなく100年目を迎える再生エネルギー事業のETSホールディングスと、京都大学発のベンチャーであるサンリット・シードリングスは、国内初となる太陽光発電所の敷地における生態系リデザイン事業を開始、6月16日にその発表会を行った。

経済産業省資源エネルギー庁は2050年カーボンニュートラルを目指すにあたり、省エネルギー、再生可能エネルギー、脱炭素への取り組みを掲げており、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー導入拡大は必要不可欠なものとされている。

今回のETSホールディングスとサンリット・シードリングスによる事業は、その太陽光発電所を増やして再生エネルギーによる発電量を支えるだけでなく、そのために「緑の砂漠」と化した土地を希少生物の生息地に転換させ、さらに発電所敷地内で農作物栽培を行うことによる収益性の向上、地表を覆うことでの土砂流出を抑えることなどを目指すというものだ。

再生可能エネルギー増加と森林保全を両立

太陽光発電所の建設では、山林や農地、大規模未使用地などの土地が利用されるが、以前より樹林地の伐採や土地の造成などによる地形や地質、動植物や生態系への影響が指摘されている。特に30年後、50年後、100年後に稼働終了となる太陽光発電所跡地の扱い、生態系を維持した状態での原状回復、理想的な自然への回帰方法については、事業者および開発の許認可権を持つ自治体にもノウハウが備わっておらず、適切な対応に着手できていないという。そのため本事業では、太陽光発電所の設計から、稼働が終了した土地を、理想的な姿で自然に戻すための生態系・土壌作りまでフォローしていく。

分担としては、ETSホールディングスが太陽光発電所設備の設計・施工・管理運営を、サンリット・シードリングスが太陽光発電所周辺の土壌解析、太陽光発電の発電効率を維持した状態での生態系の管理方法やデザイン、評価を行う。これにより、太陽光発電を行いながら、発電所敷地内での生物多様性の保全や希少動植物の育成などに寄与する未来の生態系構築を目指す。

生物多様性のある理想状態からバックキャスト

理想の生態系については、土地ごとの理想状態からバックキャストし、微生物や菌の管理を設計。土壌設計、防災などの観点からも、土地関連の指標化とその改善を目指す。人間視点からの利便性なのか、生来の生態系視点からの保全性なのか「理想」は主体によって揺らぐこともある。サンリット・シードリングス創業者で、京都大学で准教授を務める東樹宏和氏は「草木が生い茂り日照環境が偏っている、一部の生物が極度に繁殖している、それにより土砂災害が起こりやすくなっているなど、誰にとってもよくない状態にある山林からまず着手したい」と語る。また同社代表取締役CEOの小野曜氏も「最適状況については自治体などと意思疎通しながら設計を進めたい」という。

自治体にはすでに山林管理義務が課せられるようになっているというが、ただ伐採するだけではコストがかさむばかりで、対応に悩むところもあるという。そのため発電による収益化含め、まずは困っている自治体と小規模な発電所設立をする形で連携していく。あわせて、すでに土壌にいる菌を調べDNA解析し、菌株コレクション化していった後、地域由来の菌をベースに木の根を強化して、土砂災害を防いで防災につなげる狙いもある。既存の発電所改善にも取り組んでいくが、今後は提携事業者や自治体を増やして対象先拡大を検討している。

関連記事
有機太陽電池をプリント、周囲の光をエネルギーに変えるDracula Technologiesの技術
ガジェット用フレキシブル太陽電池のExegerが41.7億円を調達、搭載ヘルメットとワイヤレスヘッドフォンが発売予定
ソーラールーフタイルで家を仮想電力会社にするSunRoofが約5.9億円調達

カテゴリー:EnviroTech
タグ:太陽光発電ETSホールディングスサンリット・シードリングス再生可能エネルギー日本

パナソニックが世界で初めて純水素型燃料電池を活用したRE100化ソリューションの実証実験を開始

パナソニックは5月24日、純水素型燃料電池と太陽電池を組み合わせた自家発電によるRE100化ソリューションの実証に取り組むと発表した。工場の稼働電力のための自家発電燃料として水素を本格的に採り入れた実証実験としては、世界初の試みとなる。

RE100(Renewable Energy 100%)とは、事業活動の自然エネルギー100%化を推進する国際イニシアティブ。これに加盟するパナソニックは、滋賀県草津市で家庭用燃料電池エネファームを生産する同社工場に、500kWの純水素型燃料電池、約570kWの太陽電池を組み合わせた自家発電設備と、余剰電力を蓄える約1.1MWh(メガワット時)のリチウムイオン蓄電池を備えた大規模な実証施設を設置し、同工場の製造部門の全使用電力をこれでまかなうことにしている。また、これら3つの電池を連携させた最適な電力需給に関する技術開発と検証も行う。

一般に、RE100の実現方法には自家発電と外部調達の2つがあるが、外部調達の主力となるグリーン電力の購入も環境価格証明書の活用も価格が不安定などの短所がある。また自家発電の主力である太陽光発電も、事業に必要な電力を生み出すためには広大な敷地を必要とすることや、天候に左右されるという短所がある。そこでパナソニックは、3つの電池を組み合わせることで、工場の屋上などの限られたスペースでも、高効率で安定的に電力を供給できる方式を考案した。蓄電池を含めることで、需要に応じた適切なパワーマネージメントが可能になり、工場の非稼働日にも発電量を無駄にしないで済む。

この実証でパナソニックは、純水素型燃料電池の運用を含めたエネルギーマネージメントに関するノウハウの蓄積と実績構築、そして事業活動に必要な再生可能電力を自家発電でまかなう「RE100ソリューション」の事業化を目指す。

今回使用する水素は、再生可能エネルギー由来のグリーン水素ではないものの、ゆくゆくは環境価値証書の活用を含む再生可能エネルギーにて生成された水素を使用し、RE100に対応してゆく予定だ。

関連記事
トヨタ自動車とENEOSが協力し実験都市「Woven City」における水素エネルギーの利活用ついて検討開始
ボルボとダイムラートラックが長距離トラック向け水素燃料電池生産で提携、合弁会社Cellcentric設立
部品サプライヤーBoschが環境規制が強まる中、合成燃料と水素燃料電池に活路を見いだす
日本初、アーティストの発電所から再エネ電気が買える「アーティスト電力」をみんな電力が始動
アップルが世界中の製造パートナー110社以上が製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギーに変更と発表
新技術で天然ガスから水素を生産するC-Zeroがビル・ゲイツ氏の気候テック基金から資金を調達
日立が設備・サービスごとの再生可能エネルギー使用状況をスマートメーターとブロックチェーンで見える化
パナソニックがTesla Gigafactoryの生産ラインを刷新、密度5%増、コバルト使用量減の新型バッテリーを製造へ

カテゴリー:EnviroTech
タグ:SDGs(用語)カーボンニュートラル(用語)環境問題(用語)再生可能エネルギー(用語)水素(用語)燃料電池(用語)Panasonic / パナソニック(企業)日本(国・地域)

地球の電力需要を満たす大きな可能性を持つ地熱テクノロジーでリーダーを目指す「Fervo」

地表の下に蓄えられた地熱を再利用可能エネルギーの生成に使う方法は、環境問題専門家や石油、ガス技術者らの注目を引きつけている未来に向けた新たなビジョンだ。

それは、この技術が温室効果ガスを発生る炭化水素に依存しない発電方法であるからだけでなく、石油とガス産業が長年にわたって磨き続けてきたのと同じ技能と専門技術を使うからだ。

少なくともそれが、石油工学のコンプリーション・エンジニアだったTim Latimer(ティム・ラティマー)氏がこの業界に興味をもち、 Fervo Energy(ファーボ・エナジー)を立ち上げた理由だ。テキサス州ヒューストン拠点の地熱技術開発会社は、あのBill Gates(ビル・ゲイツ)のBreakthrough Energy Ventures(非常に忙しいファンドである)とeBay(イーベイ)の幹部であるJeff Skoll(ジェフ・スコール)氏のCapricorn Investment Groupから資金提供を受けている。

新たに2800万ドル(約30億6000万円)のキャッシュを手にしたFervoが計画、遂行しているプロジェクトの数々は「今後数年のうちに数百メガワットの電力を生み出す」とラティマー氏はいう。

ラティマー氏が発電の環境への影響を初めて肌で感じたのは、テキサス州ウェイコ郊外の小さな町で、米国で作られた最後の石炭による発電所であるSandy Creek石炭発電所の近くで少年時代を過ごしたときだった。

多くのテキサス・キッズと同じく、ラティマー氏は石油一家の出身で、彼が石油・ガス産業で最初の職を得たとき、世界が再生可能エネルギーへと切り替わり、石油産業が友達や家族ともども、取り残される運命になる可能性があることを知らなかった。

それが、Fervoを立ち上げた理由の1つだった、と起業家は語った。

「私にとって、石油・ガス産業で仕事を始めて以来一番大切にしてきたことは、エネルギー転換が起きる中で、化石燃料側にいる人達が将来クリーンエネルギーの仕事に就けるようにすることです」とラティマー氏は言った。「私は石油価格の暴落によって失業したり苦労を強いられている人たちを雇い、私たちの発電所で働いてもらうためのスタートを切ることができました」。

Fervo EnergyのCEOであるティム・ラティマー氏。同社の作業現場で保護帽を被っている同氏(画像クレジット:Fervo Energy)

バイデン政権がエネルギー転換政策の一環として、炭化水素業界の労働者のために職を探すことについて話している今、彼らはまさしくそのとおりのことをやっている。

そして地熱発電は以前ほど地理的制約を受けないため、世界には豊富な資源があり、すでに地質学的作業に依存している地域では高賃金職の可能性もある、とラティマー氏はいう(2020年10月にVoxはこの技術がもたらす歴史と可能性に関する優れた概観を出版した)。

「世界人口の大きなパーセンテージが、実は良質な地熱資源の近くに住んでいます」とラティマー氏はいう。「現在25か国に地熱発電所が設置・運用されており、他に地熱発電が生まれつつあるところが25か国あります」。

実際地熱発電は、米国西部およびアフリカの一部で長い歴史をもっている。自然に間欠泉が湧き、水蒸気噴流が地球から出ていることは、良い地熱資源の明白な指標だ。

「Fervoのテクノロジーは、大規模な展開が期待される新たなタイプの地熱資源の扉を開きます。Fervoの地熱システムは水平掘削、分散型光ファイバーセンシング、先進コンピューターモデリングなどの斬新な技術を使って、反復可能で費用効率の高い地熱電力の提供を可能にします」とラティマー氏がメールに書いた。「Fervoのテクノロジーは、有機ランキンサイクル発電システムの最新技術を組み合わせることで、柔軟な24時間運転カーボンフリー電力を供給します」。

当初、スタンフォード大学TomKat Centerの助成金とローレンス・バークレー国立研究所サイクロトロン・ロード・プロジェクトでActivate.orgから受けた奨学金によって設立されたFervoは、エネルギー省の地熱技術部門とARPA-E(エネルギー省高等研究計画局)から資金を調達するまでになり、Schlumberger(シュルンベルジェ)、ライス大学、バークレー研究所などと提携して業務を遂行している。

この新旧技術の融合は、同社が新たなプロジェクトを開発する可能性を地理的に膨大な地域へと拡大するものだ。

地熱を使って再生可能発電開発ビジネスを推進しようとしている会社は他にもある。エネルギーメジャーのBP Ventures、Chevron Technology Ventures、Temasek、BDC Capital、EversourceおよびVickers Venture Partnersらの支援を受けているEavornなどのスタートアップや、GreenFire EnergySage Geosystemsなどが参入している。

地熱プロジェクトの需要は止まるところを知らず、地熱開発のコスト問題を解決できるスタートアップには巨大な市場が開かれている。Latimer氏によると、2016~2019年には主要な地熱の契約はわずか1件だったが、2020年には業界内で新たに締結された大型電力購入契約が10件あった。

いずれのプロジェクトにとっても、コストは未だに課題だ。地熱発電契約における価格はメガワット当たり65~75ドル(約7100〜8200円)の範囲だとラティマー氏はいう。比較して、ソーラー発電はメガワット当たり35~55ドル(約3800〜6000円)だ。2020年のThe Vergeの報告による。

しかしラティマー氏は、地熱発電の安定性と予測可能性は、無停電電力供給の確保が必要な公共機関や企業にとってコスト差異を許容できるものだという。テキサス州ヒューストン住民として2021年の厳冬で5日間電気のない生活を強いられたラティマー氏にとって、これは身近な体験のある問題だ。

事実、常時利用可能なクリーン電力を供給する地熱の能力は、驚くほど魅力的な選択肢になりうる。エネルギー省の最近の研究によると、地熱は米国電力需要の最大16%を満たす可能性があり、別の推計によると地熱は完全脱炭素電力グリッドの20%近くに寄与する。

「私たちは長年の地熱エネルギー信奉者ですが、業界でイノベーションを起こす理想のテクノロジーとチームが見つかるのを待っていました」とCapricorn Investment GroupのIon Yadigarouglu(イオン・ヤディガロウグル)氏が声明で語った。「Fervoaはその技術力と彼らが先端研究組織と築いたパートナーシップによって、地熱の新たな波における明確なリーダーになるでしょう」。

Fervo Energyの掘削現場(画像クレジット:Fervo Energy)

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Fervo Energy再生可能エネルギー電力地熱

画像クレジット:Universal Images Group / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook

テスラはすべての家庭を分散型発電所にしようとしている

Tesla(テスラ)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、同社の製品だけを使ってすべての家庭を分散型発電所にし、エネルギーの生成、保存そして電力の電気会社への売り戻しさえできるようにしたい、と考えている。

同社はもう何年も前から太陽光発電や蓄電製品を販売しているが、太陽光発電と蓄電製品を組み合わせて販売するという新たな方針と米国時間4月26日のマスク氏の発言を電力会社にアピールすることで、Teslaによるこれらの事業の拡大戦略を明らかにしている。

マスク氏は投資家向けて「これはテスラにとっても、電力会社にとっても繁栄する未来だ。それができなければ、電力会社は顧客への奉仕に失敗するだろう」と述べた。その際、彼は2020年夏にカリフォルニア州で計画された停電や、最近、テキサス州で起きた停電を例に挙げ、電力網の信頼性に対する懸念が高まっていることを証拠として示している。

先週、同社はウェブサイトを変更し、顧客が太陽光発電と電力貯蔵製品である「Powerwall」のみを購入するのではなく、代わりにシステムとしての購入を勧めた。その変更を発表するツイートでマスク氏は「太陽光発電はPowerwallにのみ供給される。Powerwallは電力会社のメーターと家のメインブレーカーパネルの間にのみ接続され、設置が非常にシンプルなものとなり、停電時に家全体をシームレスにバックアップすることができる」と述べている。

マスク氏の主張は、電力会社自身が再生可能エネルギーとストレージを使って脱炭素しようと思ったら、今よりももっと多くの送電線と発電所と変電所が必要になるというものだ。それに対してテスラの製品を使う分散居住地区システムならもっと良い方法を提供できる、と彼は考えている。マスク氏の主張は、マサチューセッツ工科大学(MIT)の最近の研究にも裏づけられている。MITの研究では、米国は送電容量を2倍以上増やすことでゼロ・カーボン・グリッドに到達できるとしており、プリンストン大学の研究では、ネット・ゼロ・エミッションを達成するには2050年までに送電システムを3倍にする必要があるという。

マスク氏は、現在のCalifornia Independent System OperatorやElectric Reliability Council of Texasといった独立した事業者により集中的に管理・運営されているものとは根本的に異なる電力網システムを思い描いている。これは官僚主義とロジスティクスな課題が多いビジョンだ。電力会社と規制当局は、住宅の屋根に設置されたソーラーパネルなど、いわゆる「分散型エネルギー資源」が大量に流入した場合に、どのように対処するかを解決する必要があるが、これは電力会社の長年のビジネスモデルとは相反するものだ。

さらに重要なのは、再生可能エネルギーとストレージの組み合わせでエネルギーグリッドの脱炭素化が可能かどうか、議論の余地があることだ。

多くの専門家は、自然エネルギーの土地利用の問題、貯蔵の必要性、断続性の問題などから、自然エネルギーが国の主要な電力供給源となることは夢物語だと考えている。しかし、マスク氏は以前から自然エネルギーと蓄電のモデルに強気で、2020年7月には「物理学的には電気輸送、定置用蓄電池、エネルギー生成には太陽光や風力が有利だ」とツイートしている。

関連記事
テスラが大規模なエネルギー貯蔵プロジェクト施設をテキサスに建設と報道
テスラの第1四半期売上高は74%増の1.1兆円、EV生産台数も大幅増

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Tesla再生可能エネルギーイーロン・マスク電力

画像クレジット:Tesla

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テスラ車オーナー向けアプリ「TezLab」を使えば充電する電力の「クリーン度」がわかる

Tesla(テスラ)の電気自動車オーナーは、自分のクルマに供給されているエネルギーの種類を正確に把握することが可能になった。テスラ車のためのFitbit(フィットビット)のような無料アプリ「TezLab(テスラボ)」に、エネルギーミックス(化石燃料による発電と再生可能エネルギーの種類と正確な割合)を表示する新機能が加わったのだ。これを使えば、米国内のSuperchargers(スーパーチャージャー)やサードパーティの充電ネットワークから供給される電気が、どのように発電されたものなのか、その種類と割合を知ることができる。

「私たちはエネルギーに関連するデータの出所を追跡しているため、ツーソンやブルックリン(あるいはどんな場所でも)で充電した時、その電気がどこから供給されているのか、そのエネルギーミックスはどうなっているのか、知ることができます」と、TezLabのCEOで共同設立者であるBen Schippers(ベン・シッパーズ)氏は最近のインタビューで説明している。「その結果、自宅で充電しているか、スーパーチャージャーで充電しているか、またその充電量に応じて、どれだけの炭素が大気中に排出されているかを知ることができるのです」。

Tomorrow(トゥモロー)のプロジェクトであるElectricityMap(エレクトトリシティマップ)がエネルギーデータを提供し、TezLabはそれを消費者向けアプリに組み込んだ。このアプリはダウンロードすると、テスラのオーナーがいつ、どこで充電しているかを認識することができる。そして新たにアプリに追加されたエネルギーミックス機能が、その電気のクリーン度や汚染度などの全体的な情報を、オーナーに提供する。

例えば、ラスベガスにあるテスラのLinq High Roller Supercharger(リンク・ハイ・ローラー・スーパーチャージャー)は、V3スーパーチャージャーで、1台当たり最大250kWのピーク充電レートに対応している。また、テスラのソーラーパネルとPowerpack(パワーパック)エネルギー貯蔵システムを使用し、充電器を作動させるのに必要な電力を生成・貯蔵していることで注目を浴びている充電施設だ。

TezLabのデータによると、この充電器で供給される電気のエネルギーミックスは、太陽光による発電が1.7%。再生可能エネルギーの主なものはフーバーダムによる水力発電で65.6%。残りの約33%が天然ガスによる発電だ。

カリフォルニア州ホーソーンにあるテスラのスーパーチャージャーは、いち早くソーラーパネルを設置したが、そのエネルギーミックスは、太陽光0.2%、原子力5.5%、天然ガス13.3%、石炭27%、風力49.9%となっている。

ワシントン州のセントレア、レブンワース、モーゼスレイク、シアトルなどの「最もクリーンな」スーパーチャージャーのトップ10は、水力発電のおかげでこの目標を達成できた。太陽エネルギーを最も多く利用しているスーパーチャージャーは、いずれもカリフォルニア州の同じ電力網に位置しており、バーストウ、オックスナード、カバゾン、サンディエゴ、モハーベ、イニョカーン、サンマテオ、シーサイド、サンタアナにあるスーパーチャージャーでは、太陽光が22.7%、風力が15%となっている。残りのエネルギー構成は、蓄電池0.2%、バイオマス2.9%、地熱5.6%、水力6.3%、原子力6.6%、天然ガス40%だ。

TezLabを作り出したHappyFunCorp(ハッピーファンコープ)は、モバイル、ウェブ、ウェアラブル、モノのインターネットデバイス用のアプリケーションを構築しているソフトウェアエンジニアリング会社で、その顧客には、Amazon(アマゾン)やFacebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)をはじめ、数多くのスタートアップ企業が含まれる。同社共同設立者のシッパーズ氏(現会長)とWilliam Schenk(ウィリアム・シェンク)氏をはじめとするHFCのエンジニアたちは、テスラの主にソフトウェア主導型のアプローチに惹かれた。特にテスラのAPIのオープン性から生まれるチャンスに興味を持ったという。テスラのAPIは、技術的にはプライベートなものだが、エンドポイントは部外者でもアクセスできる。リバースエンジニアリングすると、サードパーティのアプリがAPIと直接通信することが可能になる。

関連記事:TezLabアプリはテスラ車のためのFitbitだ

2018年に配布が始まった当時、TezLabはオーナーが電力消費率や総走行距離を記録したり、ドアの施錠・解錠や冷暖房など、車両の特定の機能を制御できる機能を備えていた。その後、テスラのオーナーがスーパーチャージャー・ステーションを評価できる機能など、主にコミュニティの構築に焦点を当てた機能がさらに追加された。

これらのデータはすべて匿名で集約されている。TezLabはそのデータを販売するつもりはないという。同社はこれらのデータから得られた見解をウェブサイトに掲載しており、例えば、モデル別の所有者の内訳、平均走行距離、平均充電時間などを知ることができる。

TezLabは他の電気自動車の発売に合わせて、Ford Mustang Mach-E(フォード・マスタング・マックE)などをアプリに追加している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:TezLabTeslaエネルギー再生可能エネルギー温室効果ガス電気自動車炭素アプリ

画像クレジット:Tesla

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

日本初、アーティストの発電所から再エネ電気が買える「アーティスト電力」をみんな電力が始動

日本初、アーティストの発電所から再エネ電気が買える「アーティスト電力」をみんな電気が始動

みんな電力は4月15日、アーティストが再生可能エネルギーによる発電に参加でき、さらにアーティストの発電所で作った電気を購入できる「アーティスト電力」を開始した。ブロックチェーンを活用した同社独自のP2P電力トラッキングシステム「ENECTION2.0」を用いており、アーティストの発電所を指定して電気を購入できる取り組みは日本初(同社調べ)。

第1弾は、「アーティスト電力」発案者であり、同社の押しかけ課長・作家でクリエイターのいとうせいこう氏の太陽光発電所(いとうせいこう発電所)の電気契約を先着100名限定で受け付ける。

「アーティスト電力」の3つの特徴

  • アーティストの発電所で作った電気をみんなで購入できる
  • 電気を利用することで、コロナ禍のアーティストや音楽関係者を応援できる
  • 契約者限定ライブの開催

またみんな電力は、第1弾のいとうせいこう発電所を皮切りに、第2弾以降も順次検討しているという。これまで電気を消費する側だったアーティストが電気の生産者となる「アーティスト電力」を通じて、アーティストとファンが一緒に楽しみながら脱炭素アクションができる仕組みを広げるとともに、電気を自由に選ぶことができる楽しさを伝えるとしている。

いとうせいこう氏は、「いまは中央集権ではなく自律分散の時代であり、太陽光パネルを分割してみんなで持ち合うことでエネルギーも分散化できる」というアイデアを提案。「電気を面白く選ぶ体験を広めたい」と考える同社が共感し、ENECTION2.0を活用しこれからの電気のカタチを提案するプロジェクトを始動させたという。

同氏は、「電気料金の中にエンターテイメント代が入っていて、アーティストの支援にもつながる。そうやって、みんなで楽しく再生可能エネルギーの社会に変えていっちゃおうと。そしたらバタバタバタと僕らは新しい社会をつくれてしまっているかもしれないと思います」とコメントしている。

アーティストの発電所で作った電気をみんなで購入

アーティスト電力では、ENECTION2.0を通じ、発電量と需要量を30分ごとにマッチングを行う。これにより、アーティストの発電所で作った再エネ電力を購入できるという。

ブロックチェーンを活用してアーティストが作った電気をみんなで分け合うことになり、契約者専用のマイページで電力使用量におけるマッチング率を確認できる。第1弾として、いとうせいこう氏の太陽光発電所(福島県二本松市)の電力を先着100名限定で購入できる。

福島県にあるいとうせいこう発電所

福島県にあるいとうせいこう発電所

マイページでは、マッチングした電力量を確認できる

マイページでは、マッチングした電力量を確認できる

またこの電力供給においては、いとうせいこう発電所の総発電量の一部が提供され、残りの電力は太陽光、風力などの再エネ・FIT電気などを組み合わせて再エネ100%の電気を供給する。インバランス(電力の需要量・供給量の差分)発生時など再エネ比率が100%にならない場合があるものの、その際も証書によりCO2排出係数ゼロは維持される。

なおFIT電気とは、太陽光、風力などの再エネ電源を用いて発電され、固定価格買取制度によって電気事業者に買い取られた電気を指す。同社の調達費用の一部は、再生可能エネルギー発電促進賦課金によりまかなわれている。

電気を購入することで、コロナ禍のアーティストや音楽関係者を応援

アーティスト電力では、毎月の電気料金の一部をアーティストや音楽関係者に届けることができ、好きなアーティストを簡単かつ継続的に応援可能。1円単位で電気料金の支払先がわかる「超明細」にて、毎月の電気料金のうち、アーティストや音楽関係者にお届けする金額も確認できる。

日本初、アーティストの発電所から再エネ電気が買える「アーティスト電力」をみんな電気が始動

「アーティスト電力」契約者の「超明細」画面

「アーティスト電力」契約者の「超明細」画面

契約者限定ライブの開催

アーティスト電力に申し込んだ方のみを対象に、アーティストによるオンラインライブを開催。アーカイブ視聴もでき、電力をきっかけとしたアーティストとファンの接点を生み出すとしている。

関連記事
アップルが世界中の製造パートナー110社以上が製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギーに変更と発表
電気の生産者や空気の「顔の見える化」で社会をアップデートする「みんな電力」が15億円を調達
マイクロソフトが2030年までに事業展開地域で利用する以上の水を生態系に戻すことを宣言
グーグルが2030年までにカーボンフリーエネルギーのみを利用する目標を設定
アップルは製品とサプライチェーンを含む事業全体を2030年までにカーボンニュートラルにすると発表
みんな電力がブロックチェーン電力取引とトレーサビリティで特許取得、現在はStellarを採用
Amazon、2030年までに出荷の50%をカーボンニュートラルにすると宣言
野菜のように、顔の見える生産者から電気を買う「みんな電力」が11.8億円調達

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:再生可能エネルギー(用語)ブロックチェーン(用語)みんな電力(企業)日本(国・地域)

バナジウムイオン電池開発の韓国Standard Energyがソフトバンクから約9.7億円調達

バナジウムイオン電池を開発しているStandard Energyは、SoftBank Ventures Asia(ソフトバンク ・ベンチャー・アジア、SBVA)の出資により890万ドル(約9億7000万円)のシリーズCを調達したと発表した。韓国を拠点とする同社は、リチウムイオン電池と比較して発火の危険性が少ないことや、バナジウムの調達が容易であることなどを利点として挙げている。特に後者は、電気自動車メーカーがリチウムイオン電池の不足に直面していることから、重要なセールスポイントとなる。

しかし、Standard EnergyのCEOであるBu Gi Kim(キム・ブギ)氏は「リチウムイオン電池の代替ではなく、お互いに補完し合う関係にある」と述べている。バナジウムイオン電池は、高エネルギー、高性能、安全性を備えているが、リチウムイオン電池ほどコンパクトではない。

リチウムイオン電池はEVやスマートフォンなどのコンシューマデバイスのような、移動が必要なハードウエアには今後も使用されるだろうが、バナジウムイオン電池は、風力・太陽光発電所やEVの超高速充電ステーションなど「定置型」の顧客に適している(キム氏によると、Standard Energyは近々、ソウルの超高速充電ステーションに同社の電池を出荷する予定だという)。

韓国科学技術院(Korea Advanced Institute of Science and Technology、KAIST)とマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちによって2013年に設立されたStandard Energyは、これまでに総額2250万ドル(約24億5000万円)を調達している。同社の主な潜在顧客の1つはエネルギー貯蔵システム(ESS)分野で、同社によるとESSS市場は、今後5年間で現在の80億ドル(約8714億円)から350億ドル(約3兆8123億円)への成長が見込まれているという。

「リチウムイオンの不安定な電池性能のために、多くの再生可能エネルギープロジェクトが各地でスローダウン、あるいは中断されています。VIB(バナジウムイオン電池)は、リチウムイオンのようにコンパクトにすることはできません。しかし、再生可能エネルギー発電所を含むESSプロジェクトやソリューションでは、当社の製品をシステムに組み込むスペースが十分にあります」とキム氏はいう。

Standard Energyは実験室、認証された電池性能試験場、実際の運用を含めて、すでに合計100万時間以上の電池試験を行っている。キム氏は、この性能データによりバナジウムイオン電池の採用を検討する顧客を説得できる、と同社は確信していると述べた。

SoftBank Ventures AsiaのシニアパートナーであるDaniel Kang(ダニエル・カン)氏は、プレスリリースの中でこう述べた。「既存のESS市場は、急速に拡大する需要と、製品の安全性や効率性の問題により、インバランス状態にありました。Standard Energyは、革新的な素材と大規模な製造能力をともなう設計技術により、世界のESS市場に新たな基準をもたらすと期待されています」。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Standard Energyバナジウムイオン電池バッテリー韓国ソフトバンクグループ資金調達再生可能エネルギー

画像クレジット:Standard Energy

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Aya Nakazato)

アップルが世界中の製造パートナー110社以上が製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギーに変更と発表

アップルが世界中の製造パートナー110社以上が製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギーに変更と発表

Apple

アップルは31日、世界中の製造パートナー110社以上がアップル製品の製造に用いる電力を100%、再生可能エネルギーに振り替えていくことを発表しました。この計画により約8GW(ギガワット)分がクリーンエネルギーにより調達可能になったあかつきには、CO2換算で年間1500万トン分の温室効果ガスの削減に寄与し、道路から毎年340万台以上の自動車を排除するのに匹敵する効果を上げられると謳われています。

昨年7月、アップルは2030年までにサプライチェーンの100%カーボンニュートラル達成を約束すると発表していました。あの発表以降、再生可能エネルギーへの移行を決めたサプライヤー(製造パートナー)の数を著しく増やしたとのことです。

すでにアップル本体の事業所は全世界における企業活動でカーボンニュートラルを達成しており、2030年を期限とする新たな目標は、アップルが販売する全デバイスについて気候変動への影響をネットゼロ(クリーンエネルギーへの移行等により相殺して実質ゼロ)にする取り組みであると述べられています。

そして最近も、アップルはグリーンボンドを通じて調達した資金47億ドルの投資先の内訳を発表し、この資金を世界中の環境プロジェクトの支援に投じることを明らかにしています。グリーンボンドとは、地球温暖化対策や再生可能エネルギーなど環境改善効果のあるプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券のこと。こちらは米国内やデンマーク等に陸上風力発電やソーラープロジェクト拠点を建設し、道路から約2万台の自動車を排除することに匹敵するとされていました。

アップルが世界中の製造パートナー110社以上が製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギーに変更と発表

Apple

またアップルは、サプライヤー各社が再生可能エネルギー目標を達成するのを支援するため、新たなツールを継続的に開発しているとのことです。欧州ではDSMエンジニアリングマテリアルズの風力購入契約がオランダ国内の電力グリッドに新しいクリーンエネルギーをもたらし、モロッコではSTマイクロエレクトロニクスが国内に設置したソーラーカーポートが地域のエネルギー生成を支援しているなど。

そしてアップルが提唱するSupplier Clean Energy Programも広がりを見せており、中国でも過去半年間に15社が参加したと報告されています。

次々と対策を打ち出すなかで、アップルが次の目標と設定しているのが新たなエネルギー貯蔵プロジェクトです。風力および太陽光発電は世界の多くの場所で利用できるもっとコスト効果の高い電力源ながら「発電の中断」が普及する上で大きな壁となっています。そのため日中に生成された余剰エネルギーを貯蔵しておき、電力が最も必要な時間に活用できるバッテリープロジェクト「California Flats」への取り組みにも言及されています。

アップルが世界中の製造パートナー110社以上が製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギーに変更と発表

Apple

総合的にはアップルは純利益を増加させながら、カーボンフットプリント(商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通じて排出される温室効果ガスの量)を一貫して削減しており、2030年の目標に向けて着々と進んでいるとのこと。もしも世界中の企業が利益の追求と地球温暖化対策を両立できるようになれば、人間と自然との共生が実現する日が近づきそうです。

(Source:AppleEngadget日本版より転載)

関連記事
牛に海藻サプリを与えるとメタンガス排出が82%減少、豪連邦科学産業研究機構とカリフォルニア大学が報告
日立が設備・サービスごとの再生可能エネルギー使用状況をスマートメーターとブロックチェーンで見える化
電気の生産者や空気の「顔の見える化」で社会をアップデートする「みんな電力」が15億円を調達
マイクロソフトが2030年までに事業展開地域で利用する以上の水を生態系に戻すことを宣言
グーグルが2030年までにカーボンフリーエネルギーのみを利用する目標を設定
アップルは製品とサプライチェーンを含む事業全体を2030年までにカーボンニュートラルにすると発表
Amazon、2030年までに出荷の50%をカーボンニュートラルにすると宣言

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Apple / アップル(企業)カーボンニュートラル(用語)再生可能エネルギー(用語)

BMWと米電気会社がEV充電スマート化のパイロット事業を拡充

BMW Group(ビーエムダブリューグループ)とカリフォルニアの公益事業会社Pacific Gas & Electric(パシフィックガス&エレクトリック)は、電気自動車(EV)が送電網の再生可能エネルギーの統合をいかにサポートできるかをテストして学習するためのパイロット事業を次の段階に進める。

第3段階に入るChargeForwardプログラムは、BMWのEVあるいはプラグインハイブリッドEVに乗っているPG&E顧客向けに展開されている。電気需要が低く再生可能エネルギーの供給が豊富なときに「スマートに充電できる」よう、約3000人のドライバーが任意でサインアップできる。ドライバーはプログラムに参加することで、サインアップ時の150ドル(約1万6000円)と年250ドル(約2万7000円)のインセンティブをもらえる。

このプログラムは、電気会社と自動車メーカーの間で展開されるこれまでで最も長期の提携の1つだ。第1段階と第2段階の参加者はそれぞれ100人と400人で、最新の第3段階では規模をかなり拡大している。内燃機関エンジン販売の漸減に備えている2つの産業にとってこれは賢明な同盟だ。電気会社にとって、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが徐々に増えている送電網に対する顧客需要の大幅増のプランニングを意味する。

画像クレジット:BMW

「誰かが土曜日の午前9時に家でクルマにプラグをつなぎ、その日の午後4時にクルマで出発すると仮定しましょう」とChargeForwardを監督しているBMWのエネルギーサービスマネジャーAdam Langton(アダム・ラングトン)氏は話し、次のように続けた。「ChargeForwardのソフトウェアシステムは車両と通信し、車両のバッテリーが半分以上充電されていて、フル充電するのに2時間必要だと判断します。そしてシステムはその人の家の電気料金のレート、再生可能エネルギーの可用性、周辺の送電網の混雑を評価します。その日、送電網の混雑はなく、太陽光エネルギーが午後に豊富になるとします。するとChargeForwardシステムは車両に午後1時に充電を開始して、午後3時までに充電を完了するよう指示します。そして出発前にバッテリーはフル充電されます」。

電力需要は、太陽光エネルギーのリソースがオフラインになるちょうどのとき、人々が仕事から帰宅する夜の早い時間にピークを迎える「ダックカーブ」型になる傾向がある。そして人々は夜の間にEVを充電しがちだ。この需要に対応するために天然ガスのような化石燃料のリソースが増える。

その結果はどうなるか?温室効果ガスが出る。MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者らがEnvironmental Science and Technologyに発表した研究では、カリフォルニアの夜間のEV充電は、日中の充電より74%多く温室効果ガスを排出していることが示された(送電網によって違いはある。風が強い中西部やテキサス州では、風は夜強く吹く傾向にあるために夜間のEV充電は最も理に適っている)。

ChargePointプログラムは日中利用できるたっぷりとある再生可能リソースのメリットを生かし、その過程での温室効果ガス排出を削減するのが狙いだ。参加する顧客はBMWのChargeForwardモバイルアプリで充電の好みと出発時間を入力する。BMWはまた、顧客のロケーションに基づく再生可能エネルギーの可用性など、送電網についてリアルタイムの情報を受け取る。この情報を理想的な充電時間帯の算出に使い、結果を自動的に車両に送る。顧客はアプリを通じていつでも充電シフトのオプトアウトができる。

カリフォルニア州は野心的なクリーンエネルギー目標を追求していることで知られている。そこには、2045年までに100%再生可能で二酸化炭素排出ゼロの電気を達成するという画期的な目標を法律に成文化するというものが含まれる。また、2030年までにEVを500万台にするという目標も掲げている。同州では交通が最大の温室効果ガス排出源であることを考えれば、そうした目標の設定は驚きではない。

BMWとPG&Eは、EVが送電網に電気を供給できるようにする車両から送電網へのテクノロジーを開発するためにラボで協業もする。そうした双方向の給電機能では、非常事態の場合や、分散する小型発電所が送電網のバランスを終日とれるようにするのに、EVが大きなバックアップ発電機として使われるようになるかもしれない。

ChargeForwardプログラムの第3段階は2021年4月中旬に始まり、2023年3月まで続く。

カテゴリー:モビリティ
タグ:BMW電気自動車再生可能エネルギー

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

すでにある技術を利用して、「お金になる方法」で気候変動の危機に対処しよう

著者紹介:本稿を執筆したBertrand Piccard氏は、Solar Impulse Foundationの創始者であり、 ソーラー駆動の飛行機で歴史上初の世界一周飛行を成し遂げた人物だ。

ーーー

5年前、私は航空史上初となる太陽光エネルギーのみを動力とした世界一周飛行を終えて、Solar Impulse 2をアブダビに着陸させた。

エネルギーとテクノロジーの歴史的なマイルストーンでもあった。 Solar Impulseは実験用飛行機で、重量は自家用車と同程度であり1万7248個の太陽電池を使用していた。それは空飛ぶ実験室のようなもので、創成期のテクノロジーが満載で、再生可能エネルギーを作り出し、保管し、必要なときに最も効率のよいやり方で使用できた。

再びテクノロジーを利用するときが来た。私たちの誰もが影響を受ける気候変動の危機に対処するためだ。気候変動に関するアクションにとって最も重要な10年間、そして地球温暖化を1.5℃に制限するおそらく最後のチャンスを、私たちは迎えている。クリーンな技術が唯一の受け入れ可能な規範であることを、ここで確実にしておく必要がある。こうしたテクノロジーはすでに存在するし、今この重大な時期に、収益を上げるやり方で実装することができる。

ここで説明する4つのイノベーションは私たちの太陽光発電飛行機が生み出したもので、市場は今すぐこれらを利用し始めればよい。手遅れにならずに済むようにだ。

操縦室の断熱から住宅の断熱へ

建築セクターは世界中で最も大きなエネルギー消費者のひとつだ。冷暖房を二酸化炭素排出量の多い燃料に依存していることに次いで、断熱性能の低さとそれにまつわるエネルギー損失が主な理由に挙げられる。

Solar Impulseのコックピットの内側の断熱は、飛行機が非常に高い高度を飛行するために決定的に重要だった。オフィシャルパートナーのCovestroが超軽量の断熱素材を開発してくれた。コックピットの断熱性能は当時の標準よりも10%も向上した。断熱フォームの孔の大きさを40%小さく、マイクロメーターでなければ計測できないほどのサイズにまでしたからだ。密度は40kg/立法メートルと非常に低く、おかげでコックピットは超軽量になった。

この他にも多くのテクノロジーが存在する。市場のあらゆる参加者が自ら進んで、極めて効率の高い建物断熱を標準的な作業手順に組み込むことを、ここで確実にしておく必要がある。

電気航空機の推進からクリーン・モビリティの推進へ

Solar Impulseは最初にして最高の電気航空機だった。4 万3000キロメートルを一度も燃料不足を起こさず飛行した。4つの電気モーターの効率は記録的な97%、標準的な熱エンジンの27%という残念な数字に比べはるかに高い。これはつまり、使用したエネルギーのわずか3%しか失われなかったのに比べ、燃焼による推進では73%が失われたということだ。現在、電気自動車の売り上げが上昇している。国際エネルギー機関によれば、Solar Impulseが2016年に着陸したとき、路上を走行する電気自動車の数はおよそ120万台だった。この数字は現在では500万台を越えている。

しかしながら、このような加速で十分とはまったく言えない。電源ソケットが給油ポンプに取って代わるには今もってほど遠い。運輸セクターは依然として世界中のエネルギーに関連する二酸化炭素排出の4分の1を占めている。電化をもっと迅速に引き起こして、排気管からの二酸化炭素の排量を削減しなければならない。それには、政府が明確な税制上のインセンティブを与え、ディーゼル車とガソリンエンジンを禁止し、大規模なインフラストラクチャー投資を行うことで、電気自動車の採用を押し上げる必要がある。2021年は私たちがゼロエミッション車へと向かう一方通行に入り、熱エンジンを行き止まりに追いやる年であるべきだ。

航空機マイクログリッドはオフグリッドコミュニティにも使える

何日間か昼も夜もなく飛行し、理論上の無限の飛行能力に達すると、Solar Impulseは日中に集めて貯蔵しておき夜間のエンジン駆動に使用していたエネルギーに依存していた。

Si2で小規模ながら利用可能になったものが、将来にわたって有効な、完全に再生可能エネルギーだけの発電システムへの道を開くはずだ。それまでの間は、Si2で使われたようなマイクログリッドが地方のコミュニティのオフグリッドシステムに役立てたり、あるいはエネルギーアイランドによってディーゼルなどの二酸化炭素を多く排出する燃料を今日からでも廃止できたりする。

大規模には、スマートグリッドを模索している。すべての「愚かなグリッド」がスマートグリッドに置き換えられたら、たとえば街は、エネルギーの生産、保管、配送、消費を管理できるようになり、エネルギー需要のビークを下げることで、二酸化炭素の排出量は劇的に減少するだろう。

空中と陸上のエネルギー効率

Solar Impulseの理念は、エネルギーを増産しようとせず、エネルギーを削減することだった。だからこそ、比較的少量の太陽光エネルギーを収集しただけで昼夜の飛行に十分だったのだ。したがって、航空機のあらゆるパラメーター、たとえば翼長、空力、スピード、飛行プロファイルとエネルギーシステムなどは、エネルギー損失を最小化するように設計されていた。

残念ながら、今日のエネルギー使用の大半にある非効率を見ても、このアプローチは未だに際立っている。国際エネルギー機関(IEA)は2000年から2017年にかけてエネルギー効率が推定13%向上したことを明らかにしたが、これは十分とは言えない。投資家を勇気づけるには、政治家の勇気ある行動が必要だ。そのための最も優れた方法のひとつは、エネルギー効率の厳格な基準を導入することだ。

たとえば、カリフォルニア州は建物とコンシューマーエレクトロニクスや家電製品などの機器について、エネルギー効率の基準を定めており、これによって消費者は公共料金の支払額を100ドル(約1万500円)以上節約したと推定されている。環境にも家計にもやさしい対策だ。

Si2は未来だったが、今こそ現在を定義する

こうしたさまざまなイノベーションを使用して制作した当時は、Solar Impulseは先駆的で未来的だった。今、これらは現在を定義するものであって、これらを規範としなければならない。上述のテクノロジーに続く何百ものクリーン技術ソリューションが存在し、お金を生む方法で環境を保護している。そのような技術の多くが「Solar Impulse 高エネルギー効率ソリューションラベル」を保有している。

Si2テクノロジーと同じように、こうした技術がメインストリーム市場に参入することを、ここで確実にしておかなければならない。その規模拡大が迅速であるほど、パリ協定の目標達成と持続可能な経済成長の実現に向けて、より迅速に経済を軌道修正できるだろう。

関連記事:再生型農業は気候変動と戦う頼もしい仲間

カテゴリー:EnviroTech
タグ:再生可能エネルギー 環境問題 コラム

[原文へ]

(文:Bertrand Piccard、翻訳:Dragonfly)

再生可能エネルギーSwell EnergyのNY新規プロジェクトは調達した490億円の用途を示す

2020年12月、Swell Energy3つの州における分散型電力プロジェクトの開発を支援するために、4億5000万ドル(約490億円)を調達すると発表した。そして今、ベンチャーにより支援された同社とニューヨーク市の電力会社ConEdとの契約が発表されたことで、これらのプロジェクトがどのようなものになるのか、業界関係者の目に触れることになった。

関連記事:住宅用再生エネルギー推進のSwell Energyが分散型電力プロジェクト建設に向け470億円調達

ロサンゼルスに本社を置くSwell EnergyはConEdと共同で、クイーンズの住宅所有者を対象に太陽光発電とエネルギー貯蔵を組み合わせた新しいプログラムを展開する予定だ。

これはConEdの顧客を対象に、太陽光発電を利用した家庭用バッテリーを設置するプロジェクトだ。

ニューヨーク州は2040年までに州全体の電力網をゼロエミッションにすることを目標に、2030年までに3GWのエネルギー貯蔵設備を導入することを目指している。

ConEdプロジェクトでは、ニューヨーク市はクイーンズの顧客がエネルギーグリッドのリソースから独立して利用できるバックアップ電力を利用できることを望んでおり、これはエネルギー貯蔵設備を持たない顧客の電力を確保することになる。

プロジェクトに参加する住宅所有者は、システムのコストを下げるためのインセンティブを受けることができる。システムは当初はフォレストパーク、グレンデール、ハンターズポイント、ロングアイランドシティ、マスペス、ミドル・ビレッジ、リッジウッド、サニーサイド、クイーンズの近隣地域の一部住民を対象としている。

Swellの広報担当者によると、ニューヨークのバーチャルパワープラントは同社の他の取り組みとは異なり、ネットワークの過負荷時に顧客の電力需要を減らすために、グリッド上の特定の配電回路に空き容量を提供するという。

バーチャルパワープラントの導入により、ConEdは新たな送配電インフラを構築する必要がなくなり、ネットワークの信頼性を確保することができる。Swellの広報担当者によると、これは需要の問題に対する「ノンワイヤーソリューション」と呼ばれるものだという。

対照的に、Swellのハワイでのプロジェクトはシステムレベルの容量と周波数調整を提供し、Southern California Edisonとのカリフォルニアでのプログラムは、ベースロード時のエネルギー管理と操業地域の全体的な負荷増加のための需要応答能力を提供する。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Swell Energy再生可能エネルギー太陽光発電エネルギー貯蔵電力網

画像クレジット:Don Emmert / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ShellのGamechanger Acceleratorがエネルギー移行のためのアクセラレーターとして3社を選定

米国時間3月11日、欧州の大手石油・ガス企業であるShell(シェル)は、化石燃料からの脱却を目指して技術開発を行う企業を支援するために同社が運営する、Shell GameChanger Accelerator(シェル・ゲームチェンジャー・アクセラレーター、GCxN)への新たな参加企業群を発表した。

この先この3社は、製品化の支援を行ってくれるShellの技術リソースを、利用することができるようになる。

ShellのGCxNプログラムマネージャーのHaibin Xu(ハイビン・シュー)氏は「GCxNの第4期生たちは、炭素を大量に排出していた従来のプロセスを、電気化学技術で代替できることを証明してくれるでしょう。再生可能エネルギーのコストが下がり続ける中で、業界を超えた取り組みやパートナーシップによって、これらの技術適用を、コスト効率よく拡大し、実用上の影響を与えることが可能であることが証明されるでしょう」と語る。

Shellのアクセレレーターは、このプログラムに選ばれたスタートアップ企業に対して、最大25万ドル(約2700万円)の非希釈的な資金を提供する。プログラム参加者は、インキュベーター、アクセラレーター、大学などのネットワークパートナーからの推薦を受け、ShellとNREL(米エネルギー省国立再生可能エネルギー研究所)による審査を経て決定される。

声明によれば、過去3回のプログラムの卒業生たちは、5200万ドル(約56億7000万円)を調達し、グリーン経済に51種類の新しい仕事をもたらしたとのことだ。

また、このアクセラレーターに参加した新会社たちはどれも、炭素集約型で持続可能な手法への移行が難しい分野の中で、炭素排出量を削減する方法を生み出すことに注力している。

さて前置きはこれ位にして、今回Shellが支援するスタートアップ企業たちを紹介しよう。

  • Air Company(エアーカンパニー):ブルックリンを拠点に、二酸化炭素をアルコール、蒸留酒、香料、殺菌剤、そして消費者向け企業用の製品に変えるビジネスを行っている。最終的には合成燃料事業への参入も狙っている
  • Ionomr Innovations(アイオナモー・イノベーションズ):グリーン水素製造、水素燃料電池、炭素回収技術には、イオン交換膜やポリマーが必要だが、バンクーバーにあるこの会社は、そうした部品をより安く、より環境に優しいものにすることを狙っている
  • Versogen(バーソジェン):Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領の出身地であるデラウェア州から参加した同社は、以前はW7 energy(W7エナジー)という名前だった。燃料電池のコストを下げるための高性能な水酸化物交換膜を製造している

NRELのGCxNプログラムマネージャーであるKatie Richardson(ケイティ・リチャードソン)は次のように語る。「私たちの現代生活のほとんどすべての側面が、特定の材料や燃料に依存していますが、それは多大な影響をもたらしています。例えば、米国の製造業は、今後10年以内に米国最大の温室効果ガス排出源になることが予想されています。今回選ばれたGCxNスタートアップ企業たちが再構築しているのは、基本的な商品やサービスの二酸化炭素排出量を削減するために必要な構成要素なのです」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Shell再生可能エネルギー

画像クレジット:Tim Boyle / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:sako)

石油の巨人シェブロンが地熱プロジェクトのスタートアップを支援

米国を拠点とする石油大手のChevron(シェブロン)は、Baseload Capitalというスウェーデンの低温地熱および熱発電プロジェクト開発業者に投資した。地熱発電への投資を加速している。

石油会社は新しい事業分野を探し出すプレッシャーにさらされている。世界が再生可能エネルギーへ大規模にシフトしつつあるためだ。地球の気温を上昇させる温室効果ガスの排出が引き起こす気候関連の災害増加を前にして、再生可能エネルギーはあらゆる産業に電力を供給している。

Chevronの投資に加わったのは、億万長者が投資するクリーンエネルギー投資会社のBreakthrough Energy Venturesと、Gullspang Invest ABというスウェーデンの投資グループだ。

Baseloadへの投資は、Chevronが地熱技術開発業者Eavorに対して行った別のコミットメントと、Breakthrough Energy Venturesが最近行ったGoogleの関連会社であるDandelion Energy(Googleの親会社のムーンショット技術開発ビジネスユニットからのスピンアウトで「X」と呼ばれる)への投資に間を置かずして続くものだ。

DandelionとEavorは石油およびガス業界の知識を活用して、ベースロードエネルギーから家庭の冷暖房に至る地熱資源の利用に取り組むスタートアップのうねりのほんの2つの例にすぎない。

他には、Fervo EnergyGreenFire EnergySage Geosystemsなどの企業があり、いずれも熱を発電に利用している。

Chevronがプレスリリースで述べたように、熱の力は手頃な再生可能エネルギーの形態だ。地熱資源または廃熱のいずれかから利用できる。

BaseloadとEavorへはCTV(Chevron Technology Ventures)のCore Ventureファンドから投資した。このファンドは、Chevronのコアビジネスにおいてオペレーションの強化、デジタル化、低炭素オペレーションなどの分野で効率を高めるテクノロジーを備えた企業を見つけ出す。

2社は共同で技術テストのためのパイロットプロジェクトを計画している。プロジェクト開発にあたっては日本、台湾、アイスランド、米国での現在のBaseloadのオペレーションを念頭に置いている。

取引の金銭的条件は明らかにされていない。

「8月に、主要市場における展開を加速してくれる戦略的投資家を探していると発表しました」と、Baseloadの最高経営責任者であるAlexander Helling(アレクサンダー・ヘリング)氏は述べた。「これ以上良い投資家を求めることはできなかったでしょう。Chevronは株主グループを補完し、掘削、エンジニアリング、探査などの専門知識を与えてくれます。こうした資産が、熱の力を利用する能力を高め、私たちのやり方を強化してくれるものと思われます」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Chevron地熱発電再生可能エネルギー投資

画像クレジット:Universal Images Group / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

再生エネに頼る送電網の安定化に取り組むMaltaが約53億円調達

エネルギー供給網が化石燃料から主に再生可能エネルギーによるゼロエミッションソースの使用へと移行するにつれ、太陽光や風力で断続的に生み出されるかなりの量のエネルギーを貯蔵して使用するという能力が必要とされている。

だからこそ、新たに5000万ドル(約53億円)を調達したばかりのエネルギー貯蔵テクノロジーデベロッパーMalta(マルタ)のような企業のテクノロジーがかなりの注目と投資を惹きつけている。

Maltaは、Google(グーグル)の親会社Alphabet(アルファベット)の特別プロジェクトからスピンアウトし、需要ピーク時(先週のテキサス州の電力供給網に影響を及ぼしたような状態だ)にエネルギーを放出する長期エネルギー貯蔵を提供する新しい方法において、いくつかのかなり古いテクノロジーの組み合わせに頼っている。

Maltaの最新の資金調達ラウンドはスイスの天然ガス、メタノール、農業の複合企業Proman(プロマン)がリードし、既存投資家からは再生エネルギーや持続可能なスタートアップに次々と投資しているBreakthrough Energy Ventures、産業用フィルターと熱交換器メーカーのAlfa Lavalが参加した。Facebookの共同創業者でAsanaの共同創業者兼CEOのDustin Moskovitz(ダスティン・モスコヴィッツ)氏も本ラウンドに加わっている。

熱交換はMaltaのアプローチの中心にある。これはノーベル賞を受賞したスタンフォード大学の物理学教授Robert Laughlin(ロバート・ラフリン)氏の研究に基づいている。2017年の論文で、ラフリン氏はエネルギーを貯蔵するのに極低温記憶装置と過熱溶融塩を送る熱ヒートポンプを使ったシステムを提案した。

初期デザインを元に、AlphabetのムーンショットファクトリーであるXのエンジアたちはラフリン氏が提案したデザインの修正バージョンの開発を開始した。

その修正デザインが、2018年にXからスピンオフしたMaltaが現在取り組んでいるものだ。

再生可能エネルギープロジェクトデベロッパーRye Developmentで以前働いていたMaltaのCEOであるRamya Swaminathan(ラミャ・スワミナサン)氏は現在のMaltaのシステムが約60%の効率でエネルギーを貯蔵・放出できると述べた。それはあまりいい数字ではない。しかしスワミナサン氏は再生エネルギーのコストの減少は、価格がコスト曲線まで下がり続ける中で効率がさほど重要ではないことを意味する、と話した。「実際には、我々は電気代がゼロに近づくシステムに向かっています」とスワミナサン氏は述べた。事実、一部の送電網が風力や太陽光で発電された電気が過剰になったときにマイナスの価格モデルを展開しているように、Maltaのテックはより魅力的なものになっていると述べた。

再生可能エネルギーの構築によって引き起こされるさまざまな発電問題を解決すべく長期貯蔵の開発を行っている企業はMaltaはだけではない。エネルギー貯蔵のジレンマに取り組んでいる複数の企業のリストをFortuneが記事化している(実際、筆者が書きたかったものだ)。

そこには、Energy VaultとAdvanced Rail Energy Storage North Americaが含まれる。両社とも長期貯蔵に機械的エネルギーの使用を試みている。Energy Vaultの場合、重さ1トンの巨大なセメントブロックを持ち上げるのに再生可能エネルギーを使っている。貯蔵されたエネルギーを電力として放出するためにブロックを落とす。ARES North Americaは似たようなコンセプトを用いているが、巨大なブロックの代わりにエネルギーを貯蔵・放出するのに電車を使っている。

マサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とするMaltaの事業所の近くに、Maltaのエネルギー貯蔵システムと競合しそうなものに取り組んでいるForm Energyという会社がある。この会社はTesla、破綻した巨大バッテリーテックデベロッパーのAquion、A123 Systems(リチウムイオンバッテリー革命の祖)などの企業で働いていたエネルギー貯蔵のスーパースターによって設立された。

Maltaのシステムは10時間以上にわたって100メガワットを放電できる。スワミナサン氏によると、これはリチウムイオンバッテリーと競合するような価格での1ギガワットアワーの生産に相当する。

同社は現在、初の商業規模プラントに取り組んでいて、2024年から2025年の委託を想定している。

一方、競合他社はかなり巨大な貯蔵プロジェクトからすでに電気を供給している。Energy Vaultによると、同社は供給網に約35メガワットアワーを放電できるスイスの全国公共送電網にデモンストレーションユニットをつなげた。

Promanのような企業はMaltaを好んでいる。というのも、同社の化学・天然ガスの顧客に提供できるからだ。

「長期で低コストのエネルギー貯蔵ソリューションに対する急激なグローバル需要があります。Maltaの拡張性と技術的に堅牢なソリューションを発展させていくことを同社を楽しみにしています」とPromanのCEOであるDavid Cassidy(デビッド・キャシディ)氏は声明で述べた。「投資とともに、Promanは商業規模のプラントにMaltaと取り組み始める際に補完的なデザイン、エンジニアリング、建設の専門性をMaltaに提供します」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Malta再生可能エネルギー資金調達電力網

画像クレジット:Jose A. Bernat Bacete/Moment / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

脱炭素で注目が集まるエネルギー貯蔵スタートアップをVolta Energy Technologiesが支援

エネルギーおよびエネルギー貯蔵素材の最大手数社の支援で、エネルギー系企業への投資とアドバイザリーサービスを提供するVolta Energy Technologies(ボルタ・エナジー・テクノロジーズ)は、1億5000万ドル(約158億5000万円)を目標とした投資ファンドをおよそ9000万ドル(約95億円)でクローズしたことが、同グループの計画に詳しい人たちの話でわかった。

このベンチャー投資ビークルは、これでEquinor(エクイノール)、Albermarle(アルベマール)、Epsilon(イプシロン)、Hanon Systems(ハンソン・システムズ)の4社からすでに約束されている1億8000万ドル(約190億1000万円)のコミットメントを補うこととなった。しかもそれは、これまでになくエネルギー貯蔵技術への関心が高まった時期とうまく重なった。

内燃機関と炭化水素燃料からの移行が本格的に始まると、各企業は、大量の電気自動車(EV)と、いまだ開発段階にある再生可能エネルギーの大量貯蔵に欠かせないコスト削減とバッテリー技術の性能向上を、こぞって追求するようになった。

「資本市場は、脱炭素に巨大な投資機会を見込んでいました」と話すのは、Voltaの創設者で最高責任者のJeff Chamberlain(ジェフ・チェンバレン)氏。

同社は、2012年、オバマ政権下の米エネルギー省トップとチェンバレン氏が話し合いを始めたときに出たアイデアから誕生した。それは、チェンバレン氏がアルゴンヌ国立研究所在籍中に米国政府のバッテリー研究コンソーシアムに参加し、米国屈指の研究所となるJCESR(エネルギー貯蔵研究共同センター)の開設を率いた際の経験が、Volta Energyへと進化した。そこでチェンバレン氏は、民間セクターの投資パートナーに向けて、国立研究所の最先端の研究を活用して民間企業が最高のテクノロジーを生み出すと売り込んだ。

チェンバレン氏によれば、官民双方の研究機関からのVoltaへの支援は強力なかたちで続いたという。トランプ政権下においてさえ、Voltaの主導力はますます力を増し、化学、電気、石油ガス、そして産業熱利用の各業界の大手企業から1億8000万ドルという長期投資につながるファンドへの出資を引き出すことができたと、同氏は話す。

同社の計画に詳しい人たちの話では、1億5000万ドルを目標とし、2億2500万ドル(約237億7000万円)を上限とするこの新規投資ファンドは、現在の投資ビークルを補い、バッテリー業界に大きな資金の流れを作ることで同社の火力をさらに高めるという。

チェンバレン氏は制限があることを理由に、この投資の具体的な内容や条件の説明は避けたが、同社にはバッテリーとエネルギー貯蔵に関連する技術に投資すること、そして「電気自動車の普及と太陽光発電や風力発電の普及を可能にする」と語った。

最初のクリーンテックブームの際に、Voltaの頭脳を支える人たちは、大量の善意の資金がお粗末なアイデアに注ぎ込まれ、商業的成功を見ることなく消えていった様子を目の当たりにしたとチェンバレン氏はいう。Voltaは、エネルギー貯蔵分野で研究者たちが取り組んでいる本物の投資機会に関する教育を投資家たちに施し、そうした企業に資金を投入することを目的に創設された。

「投資家たちがゴミ焼却炉に資金を投げ込んでいると、私たちは感じていました。それが脱炭素へ悪影響を及ぼしかねないとも気づいていました」とチェンバレン氏。「私たちの全体的な目的は、膨大な個人資産の投資先をを各人に指南し、燃え続けるゴミ焼却炉への資金投入を止めさせることにありました」。

このミッションは、バッテリー市場にさらに多くの資金が流入するようになって、さらに重要性を増してきたとチェンバレン氏はいう。

EV業界でのNikola(ニコラ)のPOに端を発したSPAC騒動は、QuantumScape(クアンタムスケープ)のバッテリー関連SPACへ繋がり、その他もろもろのEV関連のOPを招き、やがてはあらゆる方面で、EV充電およびバッテリー関連企業への投資額が吊り上げられた。

チェンバレン氏はVoltaのミッションを、バッテリーと電力管理のサプライチェーン全般にわたる市場への参入を待つ、もっとも優れた新生の技術に資金提供し、生産を確実に軌道にのせ、伸び続ける需要を満たす準備の手助けをすることだと考えている。

「エネルギー貯蔵エコシステムと、その底流にある技術的な課題を深く理解していない投資家は、明らかに不利な立場にあります」と、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の元幹部であり、Voltaの初期の投資家でもあるRandy Rochman(ランディー・ロックマン)氏は声明の中で述べている。「Voltaの知識がなければエネルギー貯蔵の世界では何も起こり得ないと、私は非常に明確に理解しました。エネルギー貯蔵への投資機会を特定し落とし穴を避ける上で、彼らに勝るチームはありません」。

Voltaからの新しい資金は、すでにいくつもの新しいエネルギー貯蔵法と実現技術の支援に向けられている。そこには以下の企業が含まれる。急速充電が求められる場所に適応する、プルシアンブルーを応用した高出力で火災の危険性がないナトリウムイオンバッテリーを開発するNatron(ネイトロン)、使われていない電灯線を利用して電力を分配することで、再生可能電力の統合を最適化し、電力網でのエネルギー貯蔵を可能にするハードウェアを開発するSmart Wires(スマート・ワイヤーズ)、移動体と電力網の両方に使える全固体リチウムバッテリーを製造するIonic Materials(アイオニック・マテリアルズ)。同社のプラットフォーム技術も、5Gモバイルや充電可能なアルカリ電池といった他の成長市場にも革新をもたらす可能性がある。

関連記事:EVが制度面で追い風を受ける中、バッテリー会社が最新のSPACターゲットに

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Volta Energy Technologiesエネルギー貯蔵再生可能エネルギー資金調達電気自動車

画像クレジット:NeedPix under a Public domain license.

原文へ](文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

悪天候や停電が示す米国の電力網最大の問題は再生可能エネルギーではなくインフラそのものにある

米国が、地球規模の気候変動による非常に現実的な影響を無視することは、ますます難しくなっている。そして否定論者の努力にもかかわらず、米国を席巻する停電は再生可能エネルギーが普及しているせいではない。それは米国のエネルギーインフラが原因だ。

地球温暖化が引き起こす厳しい気象条件は、現在、米国の最大の都市のいくつかで大規模な停電の原因となっている。米国の電力網(パワーグリッド)が異常気象によるストレスに耐えられないという事実が、エネルギーインフラをより回復力のあるものにするため大規模に更新する投資計画が必要であることを示している。

こうした問題は現在、テキサス州の2900万人の住民にとって痛々しいほど明白だ。彼らは現在、米国中を襲う極寒の気象が引き起こした計画停電に直面している。

テキサス州の電気信頼性評議会(ERCOT)は声明で、「緊急事態に入り、今日の午前1時25分に計画停電を開始した」と述べた。テキサス州のグリッドは10.5ギガワットの負荷を削減した。これは、ピーク時に200万世帯へ電力を供給するのに十分な量だ。

同評議会は声明で「異常気象により、燃料の種類を問わず多くの発電ユニットがオフラインになり利用不能になった」と述べた。

プリンストン大学のJesse Jenkins(ジェシー・ジェンキンス)教授によると、問題の一部はテキサス州のグリッドに電力の多くを供給する天然ガス発電機にある。同氏はプリンストン大学機械航空宇宙工学科とアンドリンガーエネルギー環境センターのジョイント・アポイントメント教員だ。

ジェンキンス氏はツイッターで市場参加者からの情報を引用し、天然ガスが電力ではなく熱を供給するために転用されているため、約26ギガワットの火力発電がオフラインになっていると述べた。同氏によると、氷結のためにオフラインになっている風力発電は約4ギガワットのみだ。

現在の停電は再生可能エネルギーとは何の関係もない。すべては凍結と暖房需要の急増により、寒冷な気候が天然ガス発電を遅らせたことに関係している。

ジョージア工科大学の土木環境工学の助教授であり、公共政策の助教授であるEmily Grubert(エミリー・グルーバート)博士が指摘したように、問題は再生可能電力に関連する問題というよりも、システム全体の問題だ。

「はっきりさせておきたい。今日グリッドに障害が発生するなら、それは既存の(主に化石ベースの)システムもこうした状況に対応できないことを示しています」とグルーバート氏はツイッターで述べている。「これらは恐ろしい気候変動の影響により生まれた状況であり、グリッドに非常に困難な課題をもたらします。既存のシステムでは簡単に処理できない状況が続く可能性があります。どの電力システムでも、適応するために大規模な改善を行う必要があります」。

再生可能エネルギーとエネルギーストレージが問題の解決策を提供し、より弾力性のあるグリッドに貢献する可能性がある。住宅用エネルギー開発業者のSwell Energyは2020年末に4億5000万ドル(約470億円)の資金を調達し、3つの州にまたがるいくつかのプロジェクトの開発を開始した。これらのプロジェクトでは、電力需要の増加の時代にあって、分散型の住宅用太陽光発電とバッテリーストレージを組み合わせる。

関連記事:住宅用再生エネルギー推進のSwell Energyが分散型電力プロジェクト建設に向け470億円調達

Swell EnergyのCEOであるSuleman Khan(スールマン・カーン)氏は発表時、「電力会社は分散型エネルギー資源が貴重な『グリッドエッジ』資産だとしてますます注目しています」と述べた。「個々の家庭や企業を仮想発電所としてネットワーク化することで、Swellは顧客の所有コストを削減し、電力会社が電力網全体の需要を管理できるよう支援します」。

Evolve EnergyGriddyといった他の企業は、電力を卸売りの料率で請求することで消費者のコスト管理を支援しようとしている。こうした企業は、卸電力の料金が低い場合にのみ経済的になる。Bloomberg EnergyのレポーターであるJavier Bias(ハビエル・バイアス)氏によると、現在電力需要が急増しているため、ERCOTのエネルギー価格はメガワットあたり5000ドル(約52万5000円)を超え、多くのノードで9000ドル(約94万5000円)の上限に達した。

今日のテキサス州と2021年1月のカリフォルニア州での停電は、米国の現在のグリッドを根本的に改善する必要があることを示している。カリフォルニア州のような厳しく規制された市場であろうとテキサス州のような自由市場であろうと、現在の政策では天候が大混乱を引き起こし人々の命を危険にさらすことを阻止できない。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:再生可能エネルギーコラム

画像クレジット:Orjan F. Ellingvag/Corbis via Getty Images) / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi