サムスン、廃棄漁網由来のスマホで持続可能性への取り組みを強化

韓国のエレクトロニクスの巨人、Samsung(サムスン)は、ここ数年サステナビリティ(持続可能性)を派手に宣伝し、同社のエコシステムに影響をあたえている。「コーポレートシチズンシップ」などのスローガンや、環境に優しいサプライチェーンや材料、製造の強い推進など、今まで以上にグリーンな世界を強調している。Galaxy for the Planet(地球のためのGalaxy)プロジェクトの一環として、アップサイクルプログラムプラスチック包装の廃止など数多くの取り組みに続いて同社が繰り出す最新の妙技は、捨てられた漁網の再利用による環境保護だ。

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米国時間2月9日のGalaxy新機種発表を前に、同社は新しい材料が製品ラインナップのどこに居場所を見つけるかを垣間見せた。強調したのは、プラスチックの使い捨てをやめることによる効率向上と、再利用材料(特に、消費財再利用材料)や再生紙などの環境に優しい材料の使用をさらに強化することだった。

実際に意味のある影響を与えることを確かめるべく、同社は毎年64万トン廃棄されている漁網に注目した。少なくともこの一部を収集し、再利用することで少しでも海洋をきれいにする取り組みを、会社は誓約した。その結果、捨てられた漁網に絡みつかれていた海洋生物にとって、水辺の環境は少しでも改善されるだろう。

廃棄された網を海に残さないことがどの程度の環境的効果を生むのかは不明だが、マスコミに取り上げられる効果は多少なりともあるだろう(画像クレジット:Samsung)

Samsungは2021年の報告書でこれまでに数多くの善行をなし、一部のパッケージをデザイン変更したことでプラスチック使用を20%削減し、製品に省エネ機構を加え、500万トン近くの「電子廃棄物」を収集し、製造工程廃棄物の95%の再利用を確保していることを主張している。同社は、米国、ヨーロッパ、および中国で100%再生可能エネルギーも実現している。さらに、Carbon Trust Standard(カーボントラスト標準)による、二酸化炭素、水、および非リサイクル材への依存削減などの認証取得も進めている。

海洋プラスチック汚染に対し、環境および「全Galaxyユーザーの生活」に良い影響を与える方法で取り組むことを誓約する、と同社はいう。ということは、Galaxy以外の携帯電話を持っている人の生活は過去とまったく変わらないということか、それは、どうもありがとう。

冗談はさておき、そして岩礁から漁網などのごみを片付けるために数日間潜水服で過ごしたことのある1人として、これはエレクトロニクス巨人による前向きな行動だと私は思う。果たしてこれが、目に見える影響を環境にあたえるかどうかはまだわからない。Samsungは、年間64万トンの漁網のうちどれだけを海洋から取り除こうとしているのかを明らかにしていないが、コミュニケーションと測定が続いていることには希望がもてる。Samsungや他の大手メーカーが互いにグリーン化を競い合い、気候変動に対する理想的な解決策ができるまでに地球を焼け焦げにしないための役割を果たして続けてくれること願うばかりだ。

Samsungの努力に拍手を送る。そして、もしみんなが携帯電話を1年半ではなく3年毎に買い換えるようにすれば、もっと目に見える影響があるはずだ。

画像クレジット:Samsung

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

シェルが設立したスタートアップファンド「EEGF」、太陽光発電を提供しアフリカでクリーンエネルギーを促進

FinDev Canadaは、サハラ以南アフリカにおける初期および成長段階のエネルギー関連スタートアップに投資するファンドEnergy Entrepreneurs Growth Fund(EEGF)に1300万ドル(約14億8500万円)を出資した。資金の一部は、同地域のオフグリッド世帯や企業のクリーンエネルギーへのアクセス向上に役立てられる。

1億2000万ドル(約137億円)のEEGFは、2019年にShell Foundation(シェル財団)と英国のUKaid、そしてオランダのEntrepreneurial Development Bank FMOが共同で設立したファンドで、エネルギー分野の企業に対し、デット(触媒 / メザニン)または株式の形で融資を行っている。EEGFは、インパクト投資マネージャーであるTriple Jumpと、気候変動対策ベンチャーを支援する企業であるPersistentが運営している。

FinDev Canadaは、サハラ以南アフリカ、ラテンアメリカ、カリブ海地域の低所得者や十分な支援が行き届いていない層の経済的エンパワーメントを促進するインパクト金融ファシリティである2X Canadaを通して資金調達に参加した。

FinDev CanadaのVP兼最高投資責任者であるPaulo Martelli(パウロ・マルテリ)氏は、今回の資金提供は、新型コロナウイルスによる減速の後、クリーンエネルギー産業のイノベーションを加速するのに役立つと声明で述べている。

「パンデミックの影響で、健康危機以前から遅れていたアフリカの電化推進が遅れています。EEGFのこの分野への投資能力を高めることで、FinDev Canadaとその2X Canadaファシリティは、アフリカの家庭や企業においてクリーンで信頼できるエネルギーへのアクセスを拡大し、包括的で持続可能な成長と何百万人もの人々の生活の向上に貢献するエネルギー企業を支援します」と同氏は述べた。

このファンドの投資先は少なくとも半数が、アフリカの女性消費者や起業家のエネルギーニーズに明確に対応している企業、および企業や家庭に再生可能エネルギーのソリューションを提供している企業だ。サハラ以南アフリカは、電気を利用できない世界人口の75%を占めると言われており、そのギャップを埋めていく過程で再生可能エネルギーによるソリューションを採用できる可能性がある。

Shell FoundationのオペレーションディレクターであるGareth Zahir-Bill(ガレス・ザヒル・ビル)氏はこう述べている。「エネルギー貧困を緩和し、気候変動を軽減する、公正かつ包摂的なエネルギーシフトには、世界のエネルギーアクセス目標を達成するために頼りにされている起業家の資金ニーズを理解する必要があります」。

「FinDev Canadaによるファンドへの投資は、起業家への柔軟な融資ソリューションの提供を拡大し、アフリカの何百万人もの人々にとってクリーンで信頼できるエネルギーへのアクセスを加速するのに役立ちます」とも。

EEGFは2021年、時間をかけて支払うことが可能な太陽光発電ソリューションを提供するBaobab+とYellow、企業向けにモバイルソーラーファームの設計・設置を行うRedaviaに投資した。

ガーナ、ケニア、タンザニアに顧客を持つRedaviaは、このファンドから370万ドル(約4億2000万円)のメザニン投資を受けた。同社は、アフリカ大陸で85MWp以上の太陽光発電の設置を目標としている。2021年9月までに「90台近いソーラーユニットを設置し、7MWpのソーラー容量を確保した」とのこと。

マラウイとウガンダで事業を展開し、一般家庭や中小企業が分割払いでソーラーシステムを購入できるYellowは400万ドル(約4億5700万円)、一方Baobab+は230万ドル(約2億6300万円)を獲得した。Baobab+は、マリ、セネガル、マダガスカル、コートジボワールで事業を展開しており、ナイジェリアとコンゴ民主共和国の市場への参入を計画している。

画像クレジット:Pramote Polyamate / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】マイニング業界の転換で訪れる、暗号資産のグリーンな夜明け

気候変動は現代における主要な問題だ。政策立案者から個人まで、誰もが持続可能性とグリーンな行動が社会に浸透するために自らの役割を全うする責任を持っている。

事実、米国から中国まで世界中の政府が気候変動に積極的に取り組んでおり、最近行われた2021年国連気候変動会議、COP26は、 パリ協定の目標に向けた気候変動対策の推進力となっている。

企業もまた大きな責任を負うべく前進を続けており、今や多くの投資家が、財務実績だけでは成功の指標に足り得ないと考え始めている。ESG(環境・社会・ガバナンス)指標、即ち負の外部性(negative externalities)が、社会に役立つ事業活動の真の価値を決めるためにいっそう考慮されるようになった。

その中で、金融インフラを再活性化させるプロセスがますます注目を集めている。Bitcoin(ビットコイン)をはじめとするデジタル資産は、ESG基準をどの程度満たしているのだろうか?この疑問は暗号資産の利用がいっそう幅広い層に行き渡るにつれ、これまでになく重要になってきている。米国では複数のBitcoin先物ETF(上場投資信託)が取引されおり、機関投資家の関与も最高水準に達し、 Standard Chartered(スタンダードチャータード)、 State Street(ステート・ストリート)、Citibank(シティバンク)をはじめとする多くの世界最大級の金融機関が、静かにこの分野で準備を進めている。

規制の明確化も世界でさまざまな人々の参加を可能にし、それぞれのデジタル資産戦略を加速させている。EUの広範囲にわたるMarket in Crypto-assets(暗号資産市場、MiCA)規制フレームワークは、欧州議会で法制化手続きが進められている。一方米国でも、Gary Gensler(ゲイリー・ジェンスラー)氏率いる証券取引委員会が、ステーブルコインと分散型金融(DeFi)のためのフレームワークを明確化する意志を表明している。

デジタル資産が真に主流となり、全世界の投資家のポートフォリオで地位を固めるためには、各国政府と企業が従うべきものと同じ厳格なESG基準の対象にならなくてはいけない。業界が徐々にこの要件を受け入れ、高まる受け入れに呼応して環境自主規制のプロセスを強化していることは特筆すべきだろう。

Bitcoin Mining Council(ビットコイン・マイニング協議会)などの組織は、報告基準を高めることで業界の透明性向上に取り組んでいる。多くの暗号資産ネイティブ組織も、Crypto Climate Accord(暗号資産気候協定)に参加して、暗号資産関連活動にともなう電力消費の2030年までの排出量実質ゼロを誓約している。

しかし、こうしたあらゆる活動にとって、おそらくデジタル資産のエネルギー効率化における唯一最大の貢献は、業界の制御がまったく届かないところで決定されている。2021年5月、中国国務院は暗号資産のマイニングおよび取引を全面的に禁止した。かつて全世界Bitcoinマイニングハッシュレートの44%を占めていた暗号マイニング(採掘)の世界拠点でのこの決定は、採掘者の他の司法権の下への大量脱出を呼び起こした。

これはBitcoinマイニング業界のエネルギー効率化にとって極めて大きな意味をもつ動きだ。電力の石炭依存が高い中国経済を離れ、再生可能なエネルギー形態の多い他の地域へ移動することを意味しているからだ。

北米はこの動きの大きな受益者であり、マイニングハッシュレートの米国シェアは、 4月の17%から8月は35%へと上昇した。カナダのマイニングハッシュレート、9.5%を加えて、今や北米は世界供給の50%近くを占め、全世界マイニングハッシュレートを支配している。

米国のエネルギー生産は全州に分散しているが、この転換はBitcoinマイニングの持続可能性にとって朗報だ。米国は再生可能エネルギーが豊富であることに加えて、大規模なマイニング会社は薄利な業界で競争しており、主要な変動コストはエネルギーであることから、インセンティブは最安値のエネルギー源に移行することであり、その大部分が再生可能エネルギーだという事実がある。

たとえばニューヨーク州はBitcoinハッシュレートで最大級のシェアをもつ州の1つであり、Foundry USAのデータによると、州内エネルギー生成の3分の1が再生可能資源によるものだ。同じくBitcoinマイニングハッシュレートで高いシェアをもつテキサス州も再生可能エネルギー生産の割合を高めており、2019年には電力の20%が風力によるものだった。

さらに、Bitcoinマイニング業界には、電力網にまだつながっていない孤立した再生可能エネルギー源を使用することにインセンティブを与えるという独自の仕組みがある。再生可能エネルギー生成の収益化手段となることで、Bitcoinマイニングが再生可能エネルギー構築をいっそう加速する可能性を秘めている。

こうした再生可能エネルギー源への転換は、反対派に対して、Bitcoinを含むデジタル資産業界全体が持続可能性の精神と一致しながら成功できることを示し始めている。ただしそのような変遷はただちに起きるものではなく、大規模のマイニング事業が新たな地域で再構築するためには長い時間がかかるだろう。

つまるところ、暗号資産の提供する価値がそのエネルギー消費に見合っていることを世に知らしめられるかどうかは、デジタル資産サービスプロバイダーにかかっている。2021年だけでも、デジタル資産の炭素排出量削減は大きな進展を見せており、今後も暗号資産が持続可能性の旅を続けていけば、企業や機関投資家の参入も後に続くだろう。

編集部注:本稿の執筆者Seamus Donoghue(シーマス・ドノヒュー)氏は METACO(メタコ)の戦略的アライアンス担当副社長。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Seamus Donoghue、翻訳:Nob Takahashi / facebook

数分の1のコストで何日分も電気を蓄えられるというForm Energyのバッテリー、秘密主義な同社CEOがその理由と歩みを語る

現在の数分の1のコストで何日分も電気を蓄えることができる充電池を開発していると語るForm Energy(フォーム・エナジー)は、2017年にひと握りの創業者によって設立されて以来、優良な支援者から3億6000万ドル(約410億9600億円)以上の資金を得ているにもかかわらず、秘密主義に走りすぎていると非難されてきた。

その創業者の1人であるForm EnergyのCEOであるMateo Jaramillo(マテオ・ジャラミロ)氏は、テスラのエネルギー貯蔵グループの創設を主導した人物だ。先に開催されたイベントでジャラミロ氏は、元TechCrunchの記者で現在はCNBCの特派員であるLora Kolodny(ローラ・コロドニー)に、同社が一種の社外秘を貫いてきた理由について話した。ジャラミロ氏はフォーム・エナジーの運営方法について説明した他、テスラでElon Musk(イーロン・マスク)の下で働いた7年以上の期間を振り返り、なかなか厳しい時間であったことを語った。

インタビューの全編は以下から視聴できる。以下は、そのインタビューからの抜粋となる。

なぜ今、再生可能エネルギーの波が押し寄せ、フォーム・エナジーは別としても多くの企業が注目され、投資資金を集めているのか。

現在、世界で最も安価に入手できる電力源は再生可能資源であり、つまり地域にもよりますが、太陽光や風力です。しかし最も安い電気料金を探しているのであれば、現在では再生可能エネルギーになるでしょう。もちろん、再生可能エネルギーは天候によって左右され、天候はある程度しか予測できず、しかも断続的に変化します。つまり完全に再生可能な脱炭素の送電網を実現するためには、関連するすべてのタイムスケールにおいて断続的なエネルギー源を蓄えることができなければならないのです。

そう、太陽は毎晩沈み、毎朝戻ってくるため、その間を繋がなくてはなりません。また、季節や長い期間の気象パターンに関連したギャップについても考える必要があります。再生可能エネルギーは過去15年から20年の間に非常に大きな進歩を遂げたため、現在の普及レベルでは、電力系統の最後の30%から40%について、再生可能エネルギーや発電機を使ってどのように信頼性とコストを提供するかを真剣に考えなければなりません。

画像クレジット:Dani Padgett

ジャラミロ氏は、フォーム・エナジーが採用している鉄空気の技術が、50年近く前に連邦政府機関によって調査されたが(一度も商業化されなかった)、突然エネルギー貯蔵の方法としての意味を持つようになった理由についても言及している。

まず、最も普及している技術は揚水発電です。現在、世界にあるエネルギー貯蔵技術の中では圧倒的に揚水発電が多いのです。ですがその上を行く技術は、もちろんリチウムイオンです。このイベントにいる全員が5つのリチウムイオン電池を持っていると思います。それだけリチウムイオン電池が普及しているということです。

しかし、再生可能エネルギーの普及が進むと、リチウムイオンの能力とは異なるものが必要になってきます。風力、水力、太陽光などの再生可能エネルギーを100%使用するだけでなく、数時間を超える電力供給の中断についても考えなくてはなりません。そのためには、リチウムイオンよりもはるかに安価である必要があります。

(一方)鉄は非常に豊富な金属物質です。地球上で最も多く採掘されている金属です。人間は鉄についてよく知っています。鉄をいじくり回して、鉄にちなんだ名前が付いた時代もありました。そして多くのことがわかりました。そして現在も、もちろん鉄鋼生産の主原料として使用しています。鉄はまた、非常に安価です。どの大陸にも豊富にあり、世界最大級の規模を誇る産業でもあります。そして、これは新しい化学ではないというのはその通りです。フォーム・エナジーは鉄空気を化学的に発明したわけではありません。私たちがやったことは、2つの国立研究所が最初に研究したともいえる化学物質を、50年先の未来に引っ張り出し、現代の技術と方法論、電気化学、腐食、金属工学に関する現代の知識を適用して、40~50年前に存在していた性能を今日において可能なところまで引き上げたのです。つまり、将来のリチウムイオンの10分の1のコストのデバイスに取り組んでいるのです。(つまり)深い脱炭素化、高度な再生可能性、安価で信頼性の高い電力網を実現することができるということです。

「鉄空気電池」とはどういう意味でしょうか。簡単に言えば、電気化学的に鉄を錆びさせ、錆びていない状態に戻すということです。それが私たちのやっていることです。非常に可逆的なプロセスですが、非常に優れたやり方で行わなくてはなりません。

さらにジャラミロ氏は、同社がシステムの効率性について秘密にしてきた理由についても言及した(「秘密にしてきたのだとしたら、それは私たちのやっていることが不必要に誇張されるのを避けようとしてきたからです」)。

彼は、技術がどのように機能するかについてより正確に話してくれた。現在、鉄鋼業界で年間1億トンもの大量生産が行われているブルーベリーサイズの「高純度の」鉄ペレットをフォーム・エナジーがどのように活用しているのかが気になる方は、10分前後の部分をご覧いただきたい。

さらにコロドニーは、テスラで学んだことのうち、フォーム・エナジーで再現しようとしていること、そして自動車メーカーでのキャリアから学んだことのうち、再現したくないことを尋ねた。

私はテスラに約7年半いました。2009年に入社して、2016年末に退社しました。テスラはレッスンの工場です。クルマを作っているともいえますが、実際にやっていることは人々にレッスンを提供することです。その弧の中にいるのはすばらしい場所でした。私が入社したときの社員数は数百人でしたが、私が退社するときには3万人、4万人といった規模になっていました。

私が退職したのは、当時、テスラのエネルギー事業であるPowerwall(パワーウォール)とPowerpack(パワーパック)をすでに立ち上げていたからです。私は結婚しています。妻と私の間には3人の子どもがいます。結婚生活を続けたいですし、子どもたちの人生の一部でありたいと思っています。イーロンと一緒に働いた7年半は、私にとっては十分でした。また、私は意図的にイーロンと良い関係のまま退社したいと思っていましたし、物事は良い方向に向かっていましたので、私にとってはそれで良かったのです。

画像クレジット:Dani Padgett

私は後悔なく退社しましたが、多くのことを学びました。それは一緒に仕事をする人たち、そしてその人たちの質ほど重要なものはないということです。彼らは、取り組んでいる仕事のミッションに対して、可能な限り情熱的にコミットしていなくてはなりません。

もう1つの教訓は、時には人をその人自身から守らなければならないということです。それは転倒する可能性があるからです。美徳も行き過ぎれば悪徳になります。だからこそ、会社にコミットし、ミッションに熱心に取り組んでいる人に求めることには限界があり、限界を置くべきということを認識することが大切です。フォーム・エナジーでは、現在約200名の社員が働いていますが、全員が非常に情熱的で、献身的で、使命感を持っているという文化を作り、かつ家庭などを維持できていることを願います。この2つは相反するものではありません。

画像クレジット:Dani Padgett

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

独Sono Motorsが上場、ソーラー電気自動車Sionを2023年までに市場へ投入

Sono Motors(ソノ・モーターズ)は、すべての電気自動車に太陽光発電で電力を供給したいと考えている。そのアイデアは9年前にミュンヘンの地下室で、起業家精神に富んだ18歳の若者2人が、化石燃料への社会の依存に対するソリューションを思いつくまま打ち出し始めたことに端を発する。Sono Motorsの共同創業者であるJona Christians(ジョナ・クリスチャン)氏とLaurin Hahn(ローリン・ハーン)氏は、自動車にはあまり乗り気ではなかったものの、輸送機関がどれほど化石燃料の燃焼に貢献しているかを認識しており、そこから始めるのが良いと考えた。

「私たちはあらゆる車両に太陽光発電を統合するというビジョンを思いつき、それには何が必要かと考えました」とハーン氏はTechCrunchに語った。

彼らは、再生可能エネルギーが輸送時の排出ガス問題の解決に役立つことを証明するために、ソーラー電気自動車の試作品の製造に着手し、2015年までに実用モデルを完成させた。翌年、クリスチャン氏とハーン氏はクリエイティブディレクターのNavina Pernsteiner(ナヴィナ・ペルンシュタイナー)氏を招き、共同で事業を立ち上げ、Sono Motorsを会社とブランドとして確立した。

米国時間2021年11月17日、Sono Motorsの親会社であるSono Group(ソノ・グループ)が上場した。IPO価格が15ドル(約1730円)に設定された後、NASDAQで20.06ドル(約2314円)で取引を開始したが、取引終了前に38.74(約4469円)ドルの高値をつけた。

Sono Motorsの市場への道は2つある。同社は、同社初のソーラー電気自動車であるSion(サイオン)の1万6000台の先行予約を平均3000ドル(約34万6000円)の頭金で確保した。5ドアの小型でファミリー向けのハッチバックは2万8700ドル(約331万円)で、2023年前半までに消費者に届ける予定だ。Sonoはさらに、複数の企業と協力して同社のソーラー技術を他の車両に統合しようとしている。2021年の初めに、同社は自社のソーラーボディパネル技術を他社にライセンス供与することを発表し、電動自動運転シャトルバス会社EasyMile(イージーマイル)を最初の顧客に選んだ。

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Sion

Sionの航続距離は190マイル(約306km)で、中国のBYD(比亜迪)が供給する54kwHのリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを使用する。この電池は環境と倫理に大きなインパクトを及ぼす金属であるマンガン、ニッケル、コバルトを使用していないため、よりサステナブルだと考えられている。Sionは壁のボックスを介して充電できるが、Sonoによると、太陽が輝いているときはいつでもバッテリーにエネルギーを供給するため、毎日の通勤のほとんどをまかなうことができるという。

「例えばドイツでは、通勤圏の平均は1日10マイル(約16km)です」とクリスチャン氏はTechCrunchに語ってくれた。「当社独自の技術により、太陽光発電だけで週平均112(約70マイル)走行できます。これは毎日の通勤の大半をカバーしているので、それほど頻繁に充電する必要がありません。同じサイズのバッテリーを搭載しながらも太陽光を統合していない他の電気自動車と比べて、航続距離は4倍になります。だからこそ、この技術はEVを大衆化する大きなポテンシャルを秘めていると考えています」。

同社によると、アルミニウム製フレームは248個以上のセルを統合したソーラーパネルで覆われており、車には双方向充電機能が搭載されている。これにより、消費者はバッテリーに蓄えられたエネルギーを使って、壁のボックスを介して自宅や他の電子機器に電力を供給できるようになる。この機能は、相乗りやカーシェアリングと併せて、デジタルキーとしても機能するSonoアプリによって実現される予定だ。

このクルマの予約注文のほとんどは、発売が予定されている欧州からのものだ。受注の90%はドイツまたは「ドイツ語圏」からで、残りの10%は製造拠点となるオランダ、スペイン、フランス、イタリア、スウェーデンなどからの受注だ。Sonoは旧Saabの工場で生産するため、National Electric Vehicle Sweden(ナショナル・エレクトリック・ビークル・スウェーデン、NEVS)と提携した。クリスチャン氏の話では、この工場は年間4万3000台の生産能力を有し、7年間で約26万台が生産される予定になっている。

「ワンベース」車両プラットフォーム

他の多くの自動車メーカー(GM、Arrival)と同様、Sonoも「ワンベース」の車両プラットフォームを開発中で、その上に将来のモデルを構築したいと考えている。Sionを皮切りに、同社はクロスオーバー乗用車やラストワンマイル配送用の貨物バンの製造も検討している。

「パワートレイン、シャーシ、サーマルユニット、一部の電子機器などのモジュラーシステムをSionで使用予定」とSonoは米証券取引委員会(SEC)への提出書類に記載している。「これらのモジュラーシステムは、改造なしに、または軽微な改造のみで他の車種にも使用することができる」。

太陽光技術の統合とライセンス

Sonoの太陽光技術は、他の車両への統合と、バス、トラック、ラストマイル車両などのさまざまな車両アーキテクチャのライセンス供与の両方を可能にするように設計されている。同社によると、すでに試作サンプルを顧客に発送しており、戦略的ユースケースの検証に向けて10件を上回る予備的合意書や商事契約書を締結済みだという。

「特に輸送および物流業界は、総所有コストに非常に重点を置いており、太陽光発電の統合でランニングコストを大幅に削減できる」とSECへの提出書類には書かれている。「当社の専有技術を保護するために、いくつかの特許を取得している。さらに、これらの特許、多数の異なるポリマー材料のテスト、そしてパワーエレクトロニクス、特にMCUなどの完全な太陽電池集積化用の複数の関連コンポーネントの使用により、関連する競合他社であると考えられる企業に先駆けて、最大4年間の高度な開発を進めている」。

このMCUとはSonoの「maximum power point tracker central unit(最大電力ポイント追跡中央ユニット」のことで、同社によると、太陽電池がエクステリアのさまざまな場所に設置されていることに起因する不均一な日光暴露の問題を解決する。

Sonoはまた、2030年に販売される車両の半数以上がソーラー改良に適しており、そのうちの3分の1がソーラー統合に適していると考えている。近年、太陽光発電の価格が低下し、太陽電池の効率が向上しており、EVの航続距離にインパクトを与える可能性がある。

「また、電気自動車の販売台数が急増していること、そして充電ステーションの伸びが比較的鈍化していることが、電気自動車の大規模導入のボトルネックになっている」と同社は提出書類に書いている。「今後数年のうちにも、個人が充電できないような場所に住んでいる人たちは、適切な充電オプションを見つけられるかどうかが不透明であることから、電気自動車を購入することに消極的になると私たちは考えている」。

Sono Motorsは納品できるだろうか?

生産をNEVSにアウトソーシングすることは、車を効率的かつスケーラブルに生産するためのSonoの戦略における、同社が称する「重要な差別化要因」の1つである。差別化には次のようなものが含まれている。他の企業はB2C販売のみであるが(同社は)従来型の店舗を排除している、アルミ製のスペースフレームを採用しているためスチールプレス加工が不要、ソーラーパネルであるため塗装作業が不要。しかし、NEVSは頼りにするには慎重を要する。この会社は中国企業のEvergrande(恒大集団)が所有しているが、同社は880億ドル(約10兆円)の負債を抱えており、世界的な金融危機の脅威にさらされている

「NEVSは2019年から当社の生産パートナーを務め、それ以来緊密な交流を続けており、現在もその状態が続いています」とクリスチャン氏。「Sionの生産は現在のところリストラの影響を受けていません。2022年のプレシリーズ生産と2023年前半に予定されているSionシリーズ生産の設備準備は計画通りに進んでいます」。

Sono Motorsは念のため、いくつかのバックアップ計画を立てている。プランAではNEVSでSionの製造を継続する予定だが、他の欧州の委託製造業者のキャパシティを利用するなど、代替シナリオと選択肢を模索しているとクリスチャン氏は話す。

それでも、NEVSは新しいオーナーを探しており、最終的にはSonoにとっては問題ないかもしれない。しかしこのスタートアップは生産を遅らせる余裕はないだろう。2018年、Sonoは2019年までに顧客に出荷する予定だった予約注文が7000件あったが、これらの注文は2021年まで延期された。Sonoがすぐに納品とスケーリングを開始しなければ、単なる評判の問題以上の問題に直面することになる。

予約注文1件当たり3000ドルで、Sonoは約4800万ドル(約55億円)を銀行に保有している。しかし、それだけではSionを生産することはできず、Sonoはすでに現金獲得を切望している。SECに提出された書類によると、同社の上半期の損失は約2900万ドル(約33億円)で、純損失は累積赤字1億2300万ドル(約142億円)となった。同社は「少なくとも当社がSionの資材輸送を開始し、当社のソーラー技術の収益化を含む事業規模を大幅に拡大するまでは、予測可能な将来においても引き続き損失を発生させ、外部からの資金調達に依存することになる」と述べている。

幸いなことに、今回のIPOは同社にとって、Sionを製品化するための良い緩衝材となった。同社は上場により1億5000万ドル(約173億円)を調達した。この資金は、一連のコンポーネントから作られる次のプロトタイプ世代に焦点を当てたSionの開発にも使われる予定だ。

画像クレジット:Sono Motors

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

トヨタが米国初のバッテリー工場をノースカロライナに建設

自動車メーカーの多くが自社のバッテリー生産工場でサプライチェーンの主導権を握ろうとしている中、トヨタ自動車は米国初のバッテリー工場をノースカロライナ州に建設する。同社と同州政府幹部が米国時間12月6日、明らかにした。

トヨタは、トヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング・ノースカロライナ(TBMNC)という名称のこの工場に12億9000万ドル(約1460億円)を投資し、2025年に生産を開始する予定だ。この投資は、2030年までに米国で自動車用バッテリーに34億ドル(約3860億円)を投資するという広範な約束の一部だ。

稼働開始時にはTBMNCには4本の生産ラインが設置され、各ラインが電気自動車やハイブリッド車約20万台分のバッテリーを生産できるようになる。トヨタは、生産ラインを少なくとも6本に拡張し、年間120万台分のバッテリーを生産することを目指している。新工場では約1750人の新規雇用を創出し、バッテリーの生産には100%再生可能エネルギーを使用すると同社は述べている。

このニュースは、米議会が電気自動車に対する消費者税控除の見直しを検討している中でのものだ。現在、電気自動車の販売台数が20万台以下のOEMに対しては約7500ドル(約85万円)の控除が適用されている。民主党のグループは、電気自動車のバッテリーが米国内で製造されたものであれば追加で500ドル(約5万7000円)を、また組合員のいる米国内工場で生産された電気自動車についてはさらに4500ドル(約51万円)を加算することを提案している。

トヨタは、この税控除の改正に真っ向から反対しており、議員に宛てた手紙の中で「露骨に偏っている」と指摘している。この法案は、Ford(フォード)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Stellantis(ステランティス)の大手3社と全米自動車労組に支持されている。

トヨタは、バッテリー生産工場の設置を発表した最新の主要自動車メーカー企業だ。こうした動きは、原材料や主要バッテリー部品のサプライチェーンが逼迫する可能性を考慮した取り組みの一環だ。Rebecca Bellan(レベッカ・ベラン)がTechCrunch+に書いたように、GMがLG Chem(LG 化学)との合弁会社Ultium(アルティウム)を設立したり、Ford MotorがSK Innovation(SKイノベーション)と契約したりするなど、バッテリーサプライヤーとの提携や合弁事業は、OEMが供給をコントロールする必要性を認識していることを示している。

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

AWS、エネルギー業界対象の「AWS Energy Competency Program」を発表、持続可能なエネルギーの未来への移行をナビゲート

Amazon(アマゾン)は米国時間11月30日、エネルギー業界に向けた専門的なソリューションを開発するAWSパートナーを正式に認定する新しいプログラムを発表した。この新しいAWS Energy Competency Program(AWSエナジーコンピテンシープログラム)は、より持続可能なエネルギーの未来への移行をナビゲートしながら、世界中のエネルギー生産者が最新の技術を用いてAWSを搭載したソリューションを構築・実装することを助けることができる技術的専門知識と顧客の成功をすでに実証している専門パートナーを特定するものだ。

現在、多くのAWSパートナーがエネルギー業界と連携し、石油・ガス資産の探査段階から集荷・加工・輸送・管理・保守に至るまでの運用管理や、再生可能・持続可能な分野での運用管理など、AWSテクノロジーの活用を支援している。これらの業界では現在、クラウドコンピューティング、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、機械学習(ML)などのソリューションの導入が加速しているとAmazonはいう。

新しいAWSエネルギーコンピテンシープログラムは、持続可能な再生可能エネルギー資産を含むポートフォリオの開発を支援できるパートナーを含め、世界のエネルギー生産者との連携に関して、特定の専門知識を持つAWSパートナーを業界がよりよく識別できるようにする。

このプログラムは、エネルギー生産者向けの新しいプログラムの開発を支援するためにAWSと協力した32のグローバルパートナーを含んでいる。このグループには、特化したソリューション分野、業界の垂直構造、またはワークロードを支援できるパートナーが含まれている。パートナーは、エネルギー業界特有のベストプラクティスに関連した厳格な技術検証を受けなければならないため、これは現在、AWSパートナーが達成できる最も厳しい指定の1つであると、Amazonは指摘している。

画像クレジット:Amazon

パートナーの1つであるSlalom(スラロム)は、北米のエネルギー企業であるTC Energy(TCエナジー)の4万4000kmにおよぶ天然ガスパイプラインの管理を支援している。TC EnergyはSlalomと協力して、顧客がガスのスケジューリングを最適化できるよう機械学習を利用したビジネスインテリジェンスアプリケーションを開発した。別のパートナーであるAIビデオ分析プロバイダーのUnleash Live(アンリーシュ・ライブ)は、風力発電所、ソーラーパーク、水力発電、天然ガスプロジェクトなどを運営するインダストリアル・エンジニアリング・ソリューション・プロバイダーのWorsley(ウォーズリー)を支援した。Worsleyは、Unleash Liveを利用して、ドローンとコンピュータビジョンを活用して検査を行っている。

その他のパートナーは上流、中流、下流、新エネルギー、基幹業務アプリケーション、ヘルス、安全、環境、データアナリティクスなどのソリューションの提供を支援できるとAmazonは述べている。現在、プログラムへの参加に関心のあるAWSパートナーは、AWS Service Partners(AWSサービスパートナー)とAWS Software Partners(AWSソフトウェアパートナー)の両方の検証チェックリストを見ることができる。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

商用核融合エネルギーの実現に向けてHelion Energyが約2410億円を確保

クリーンエネルギー企業のHelion Energy(ヘリオン・エナジー)は、核融合によるゼロカーボン電力が豊富にある新時代の創造にコミットしている。同社は米国時間11月5日、5億ドル(約570億円)のシリーズEを完了し、さらに17億ドル(約1936億円)のコミットメントを特定のマイルストーンに結びつけたことを発表した。

このラウンドは、OpenAI(オープンAI)のCEOでY Combinator(Yコンビネーター)の元プレジデントSam Altman(サム・アルトマン)氏がリードした。既存の投資家としては、Facebook(フェイスブック)の共同創業者Dustin Moskovitz(ダスティン・モスコビッツ)氏、Peter Thiel(ピーター・ティール)氏のMithril Capital(ミスリル・キャピタル)、そして著名なサステナブルテック投資家であるCapricorn Investment Group(カプリコーン・インベストメント・グループ)などが名を連ねる。今回の資金調達には、Helionが主要な業績目標を達成するために必要な追加の17億ドルが含まれている。ラウンドリーダーのアルトマン氏は、2015年から投資家兼取締役会長として同社に関わってきた。

約60年前に制御された熱核融合反応が初めて達成されて以来、核融合エネルギーはクリーンエネルギー愛好家の熱い夢であり続けてきた。このテクノロジーは、ごくわずかなリスクで、稼働中の放射能量がはるかに少なく、放射性廃棄物が非常に微量であるという、現行世代の核分裂発電機に対するあらゆる利点を約束している。ただ、1つ難点がある。核融合プロセスはこれまでのところ、その反応を制御し続けるために消費するエネルギーよりも多くのエネルギーを生成することは難しいのが現状である。

Helionは企業として、科学実験としての核融合ではなく、より重要な問題に焦点を当ててきた。このテクノロジーは、商業規模で、そして工業規模で、電力を生成できるだろうかという問いである。

「熱やエネルギー、あるいはその他のことを論じている核融合領域のプロジェクトもありますが、Helionは発電に焦点を当てています。私たちは低コストで迅速にそれを取り出すことはできるのでしょうか。核融合による産業規模の電力を実現することは可能なのでしょうか」とHelionの共同創業者でCEOのDavid Kirtley(デビッド・カートリー)氏は問いかけるように話す。「私たちは輸送用コンテナほどの大きさで、産業規模の電力を供給できるシステムを構築しています。例えば、およそ50メガワットの電力です」。

重水素とヘリウム3は加熱後、磁石で加速され、圧縮されて誘導電流として捕捉される(アニメーションはHelion Energy提供)

2021年6月、Helionは民間の核融合企業として初めて、核融合プラズマを摂氏1億度まで加熱することを確認した結果を発表した。これは、核融合から商用電力への道を歩む上で重要なマイルストーンだ。その後すぐにHelionは、同社が「Polaris(ポラリス)」と呼ぶ第7世代の核融合発電機の製造プロセスの開始に向け、工場の建設に着手したことを明らかにした。

TechCrunchは、2014年の同社の150万ドル(約1億7000万円)というラウンドを知って驚いたことを記憶している。そのとき同社は、3年以内に核融合のネット発電を立ち上げ、稼働させることができると語っていた。それから7年が経過し、Helionはいくつかの問題に直面しながらも、その過程で焦点も見出したようだ。

「エネルギーの科学的マイルストーンにフォーカスするのではなく、より具体的に電力へ焦点を当てるために、方向性を少し変えることにしました。電力、そして電力の抽出という側面で、いくつかのテクノロジーを証明する必要があったのです。また、そうした技術的マイルストーンに到達するために必要な資金も必要でした」とカートリー氏は振り返る。「残念ながらそれには期待していたよりも少し時間がかかりました」。

人々にエネルギーを与えようと待機するHelionチーム(画像クレジット:Helion Energy)

投資ラウンドの一環として、サム・アルトマン氏は取締役会長からHelionの執行会長にステップアップし、同社の商業的方向性へのインプットを含む、より高度な活動を行うことになる。

「最初の資金調達ラウンドはMithril Capitalが主導し、Y Combinatorもその一部を占めていました。そこで私たちはサム(・アルトマン氏)に紹介されました。同氏はそれ以来、私たちの資金調達に関わってくれています。同氏は物理学を真に理解しているアンバサダーで、これは実にすばらしいことです。私たちは同氏が投資をリードすることに興味を持ってくれたことを本当にうれしく思っています。整合性が異なり、テクノロジーについてあまり深く理解していない外部の投資家を連れてくる必要はなかったのです」とカートリー氏は説明する。「同氏は成功を見て、その意味するところを理解してくれました。私たちは同氏を投資家としてだけではなく、より積極的な関与者として迎えることを楽しみにしています。これは私たちがタイムラインを加速できることを意味します。資金調達もその一部であり、テクノロジーもその一部です。最終的に私たちは培ってきたものを世界に送り出す必要があり、サムはそれを支援してくれるでしょう」。

「これまで目にした中で最も有望な核融合へのアプローチを行うHelionに投資できることをうれしく思います」とアルトマン氏は語る。「他の核融合の取り組みに費やされたものに比べてごくわずかな資金、そしてスタートアップの文化を持つこのチームには、ネット電力への明確な道筋があります。Helionが成功すれば、気候災害を回避し、人々の生活の質を向上させることができるでしょう」。

HelionのCEOは、最初の顧客はデータセンターになるのではないかと推測している。そこには他の潜在顧客に対するいくつかの優位性が存在する。データセンターは電力を大量に消費しており、多くの場合、バックアップ発電機を受け入れるための電力インフラストラクチャがすでに整備されている。また、人口密集地から少し離れている傾向がある。

「こうした施設はディーゼル発電機の予備電源を備えており、数メガワットの電力を供給します。これは、電力網の問題に対処するのに必要な時間だけデータセンターを稼働し続けるようにするものです」とカートリー氏は語りながらも、同社は単に予備のディーゼル発電機を置き換えるだけではなく、もっと野心的であることを示唆している。低コストで電力の可用性が高いということは、同社がデータセンター全体にデフォルト電源として電力供給を開始できることを意味する。「50メガワット規模であり、電力コストをキロワット時あたり1セントまで削減できることに大きな期待を寄せています。データセンターの動作を完全に変えることができ、気候変動への対応を本格的に始めることができます。私たちの焦点は、低コストでカーボンフリーの電力を作ることに置かれています」。

発電方法に物理的な制限があるため、同社の現世代の技術はTesla Powerwall(テスラ・パワーウォール)やソーラーパネルに取って代わることはできないだろう。発電機のサイズは輸送用コンテナとほぼ同じである。しかし、50メガワットの発電機は約4万世帯に電力を供給することができ、その電力量で、このテクノロジーは分散型電力網に非常に興味深いオポチュニティをもたらす可能性がある。

Helionの発電ソリューションにおける興味深いイノベーションの1つは、発電の中間段階として水と蒸気を使用しないことだ。

「キャリアの最初の頃、私は核融合の方法に注目し続けていました。そして、プラズマを含めて、すべてが電気的である美しいエネルギーがあるのだ、と確信しながら、それから何ができるだろうか、水を沸かして、古くて低効率な資本集約的プロセスを使うのだろうか、という思いがめぐりました」とカートリー氏は説明する。同社は水を使うのではなく、誘導エネルギーを使うことにした。「この時代を完全に乗り切ることができるだろうか、ガソリンエンジンを使わない代わりに最初からいきなり電気自動車を走らせるようなことができるだろうか。こうした問いへの取り組みに私たちは力を注いできました」。

同社は、2024年までに核融合炉の稼働に必要な量よりも多くの電力を発電できるようにすることを目指しており、現時点での目標は商業規模での発電であるとCEOは指摘している。

「当社の2024年のデータは、現時点では科学上の重要な証明ではありません。目標は、商業的に設置された発電を追求することにあります。巨大な市場が存在しており、これを一刻も早く世界に広めたいと考えています」とカートリー氏は最後に語っている。

「できる限り早く電力に到達するように注力することで、気候変動と二酸化炭素を排出しない発電について話す自然な会話の一部として、核融合を期待できるようになるでしょう。私たちはこの資金を確保できたことに大きな興奮を覚えています。そして調達してきた総合資金により、私たちはそこにたどり着くことができるはずです」。

画像クレジット:Helion Energy

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

UPDATER(旧みんな電力)が総額37.2億円のシリーズC調達、独自トレーサビリティシステムの高速化などに投資

日本初、アーティストの発電所から再エネ電気が買える「アーティスト電力」をみんな電気が始動

再生可能エネルギー事業「みんな電力」などを手がけるUPDATER(2021年10月1日にみんな電力より社名変更)は10月29日、第三者割当増資などにより新たに総額10.7億円の資金調達を実施したと発表した。

これにより、プレシリーズCラウンド15億円、シリーズCラウンド ファーストクローズ11.5億円とあわせ、シリーズCラウンド総額37.2億円の資金調達を完了した。また今回の資金調達により、累計資金調達額は約52.2億円となった。

引受先および借入先は、以下の通り。
・TBSイノベーション・パートナーズ2号投資事業組合(TBSホールディングスCVCのTBSイノベーション・パートナーズ)
・TIS
・ヒューリック
・プロトベンチャーズ2号投資事業有限責任組合(プロトコーポレーションCVCのプロトベンチャーズ)
・SuMi TRUSTイノベーションファンド(三井住友信託銀行とSBIインベストメントが共同設立したプライベートファンド)
・みずほ成長支援第4号投資事業有限責任組合(みずほキャピタル)
・W ventures
・進和テック
・日本政策金融公庫

調達した資金および事業パートナーとの連携により、主に以下の分野に注力する。
・ブロックチェーン(Stellar)技術を活用した、同社独自のトレーサビリティシステム「ENECTION2020」の書き込み機能の高速化・低コスト化・各事業への最適化
・ウェルビーイングを実現するエアテック事業「みんなエアー」のサービス開発
・SDGsの達成をはじめとした社会課題解決のための新規事業創出
・人材採用の強化

MITの研究室から生まれたVia Separations、ろ過技術で製造業の脱炭素に貢献

Via Separations(ヴィア・セパレーションズ)は、MITの材料科学エンジニアのカップルが立ち上げたスタートアップ企業だ。彼らは製造プロセスに必要なエネルギー量を削減する方法を考え出し、結果として炭素排出量、エネルギー使用量、コストを削減することに成功した。米国時間10月21日、同社はシリーズB投資ラウンドを実施し、3800万ドル(約43億円)を調達したことを発表した。

今回のラウンドは、二酸化炭素の排出量を削減するための投資に注力しているNGP ETPが主導し、2040 Foundation(2040ファウンデーション)の他、既存投資家のThe Engine(ジ・エンジン)、Safar Partners(サファー・パートナーズ)、Prime Impact Fund(プライム・インパクト・ファンド)、Embark Ventures(エンバーク・ベンチャーズ)、Massachusetts Clean Energy Center(マサチューセッツ・クリーン・エナジー・センター)が参加した。

CEO兼共同設立者のShreya Dave(シュレヤ・デイヴ)氏によれば、この会社は製造工程で炭素を削減することによって、消費者がより環境に配慮した商品を購入できるようにするための手助けをしたいのだという。

「基本的に私たちのビジョンは、サプライチェーンのインフラを脱炭素化できれば、消費者が欲しいものと地球に良いことをする方法のどちらかを選択しなければならない、ということがなくなるというものです」と、同氏は筆者に語った。

Viaのソリューションは、製造工程の途中で輸送用コンテナに設置され、生産される製品のろ過システムとして機能する。デイヴ氏は、ろ過プロセスの仕組みを、パスタの鍋に例えて説明した。「熱を加えて水を沸騰させた鍋の中に入れるのではなく、ストレーナー(こし器)を通すのです。圧力をかけてパスタストレーナーのようなフィルターを通過させるわけです」。

それにはいくつかの利点があるとデイヴ氏はいう。まず、熱の代わりに電気を使うので、必要なエネルギー量が減る。熱を使うプロセスに比べて、90%ものエネルギーを削減できるという。さらに、このプロセスでは電気を使用するため、再生可能エネルギーから電気を得ることができれば、プロセスの電化とエネルギー効率の向上の両方が実現できる。

複雑なソリューションを構築している初期のスタートアップ企業として、Viaは当面、50億ドル(約5700億円)規模のパルプ製紙業界に集中することに決めたが、この技術は、石油化学、食品・飲料、医薬品など、他の業界にも広く応用できる可能性がある。

同社はこれまでに3件のパイロットプロジェクトを進めているが、最終的にはこのソリューションをサービスとして提供することを目標としている。これを導入する顧客企業は、資本コスト全体を削減することができ、メンテナンスの負担を顧客自身ではなくViaに押し付けることができる。また、同社ではソフトウェアによるモニタリングソリューションも構築しており、製品を監視することで、顧客が最大限の効果を得られるように支援し、メンテナンスの問題を早期に発見できるようにしている。

Viaは2017年にMITからスピンアウトした。現在の社員数は23名で、年内に30名に達することを目標としている。デイヴ氏は、多様性のある創業チームとして、共同創業者でCTOのBrent Keller(ブレント・ケラー)氏とともに、多様性のある社員の集団を作りたいと語っている。

「採用するすべての職種に多様な候補者がいるというのが私の哲学です。しかし、リソースに制約があるという現実もあります。ですから、私たちは最も広い視野が得られるように、リソースを配分するよう努めています」と、デイヴ氏はいう。それは、経験よりも可能性を重視した採用を意味するということかもしれない。彼女によれば、同社では採用時に厳格なアンチバイアス教育も実施しているという。

このスタートアップのアイデアは、デイヴ氏とケラー氏がMITの大学院生時代に、現在同社の主任研究員を務めているJeffrey Grossman(ジェフリー・グロスマン)教授のもとで行っていた研究がルーツになっている。

「共同設立者と私は水のろ過膜の研究をしており、水から塩を取り除くプロセスを、より安く、より良く、より速くする方法を検討していました。その結果、私たちが発明したものは、水にはあまり応用できないものの、水以外のものを原料とする化学品製造には大きな可能性があることがわかりました」と、デイヴ氏は述べている。

会社を立ち上げたとき、彼らは最終的に、温室効果ガスの観点からより影響力の大きい工業製品の製造に焦点を移すことにした。これは創業者たちが特に重要視している点である。

画像クレジット:Via Separations

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

千葉大学が2050年の脱炭素を目指す全国自治体に向けて「カーボンニュートラルシミュレーター」を無料公開

千葉大学が2050年の脱炭素を目指す全国自治体に向けて市町村ごとの「カーボンニュートラルシミュレーター」を無料公開

千葉大学は、日本の基礎自治体が2050年までの脱炭素計画を立てやすくするサポートツールとして、「カーボンニュートラルシミュレーター」を公開した。現在の人口、世帯数、就業者数の推移から2050年の状況を予測し、脱炭素実現には電気自動車やネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH。net Zero Energy House)などの比率、再生可能エネルギーの導入をどう調整すればよいかを教えてくれる。千葉大学大学院社会科学研究院 倉阪秀史教授を中心とする研究チームの開発によるもの。誰にでも使えるようExcelファイルで作られていて、無料でダウンロードが可能

全国1741の市区町村の自治体コードを入力すると、その自治体の現状から推測した、何もしなかった場合の2050年の二酸化炭素排出量が示される。また、現在の人口の推移から推測した2050年の人口も示される。そこに、2050年の自動車の削減率、ZEH、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB。エネルギーを消費するより生み出すほうが多い建物)、電気自動車や再生可能エネルギーの導入率などを加味すると、2050年時点での全体の削減量がわかる。人口を含めたこれらの要素を調整することで、達成までの計画が立てられるというものだ。

また、2050年までの「総投資額」、「総省エネ額」(節約分)、「再生可能エネルギー販売額」、「差し引き金額」が表示されるので、脱炭素に必要な予算もわかる。

開発者の倉阪教授は、2050年の脱酸素宣言を行った214の自治体について、同じ条件を入力してその達成状況を調べたところ、35.5%にあたる76自治体が脱炭素を達成できたという。ただし、達成率には地域によって差があり、北海道や東北など広大な土地のある地域では再生可能エネルギーが豊富なため達成率が高い傾向にあった。また、人口が多い都会のある自治体は、どこも達成できなかった。そのため脱炭素達成には、豊かな再生可能エネルギー源を持つ地方と都会との連携が必要になると倉阪教授は話している。

Google Cloudがクラウド使用による二酸化炭素排出量を表示する機能を提供へ

Google Cloudは米国時間10月12日、ユーザーにカスタムの二酸化炭素排出量レポートを提供する新しい(そして無料の)機能を発表した。このレポートでは、クラウドの利用によって発生する二酸化炭素の排出量を詳しく説明する。

Google Cloudは以前から、2030年までに二酸化炭素をまったく排出しないエネルギーで稼働させたいと述べてきた。すでにエネルギー使用を再生可能エネルギーの購入とマッチングさせている。しかし、Google Cloudに限らず、今日では実質的にほぼすべての企業が、二酸化炭素排出量の目標を達成する方法を検討している。クラウドコンピューティングの役割を定量化することは非常に困難だが、ここでは企業が社内外でクラウドを利用する際の環境への影響を簡単に報告できるようにすることを目指している。

画像クレジット:Google

「顧客は、このデータを報告だけでなく、内部監査や二酸化炭素削減の取り組みに活用することができます。HSBC、L’Oreal、Atosなどの顧客と協力して構築した二酸化炭素排出量レポートは、顧客が気候変動に関する目標を達成できるよう、新たなレベルの透明性を提供します」と、CTOオフィスでGoogle Cloudの持続可能性のためのデータおよびテクノロジー戦略をリードするJenn Bennett(ジェン・ベネット)氏は話す。「顧客は、プロジェクトごと、製品ごと、地域ごとのクラウドの二酸化炭素排出量を長期的に監視することができ、ITチームやデベロッパーに二酸化炭素排出量の削減に役立つ指標を提供することができます。デジタルインフラの排出量は、実際には環境フットプリントの一部に過ぎませんが、各社が掲げる二酸化炭素削減目標に対する進捗状況を測定するためには、二酸化炭素排出量の計算が必要です」と語る。

画像クレジット:Google

ベネット氏が指摘したように、企業が正確な報告を行うことができれば、自然な流れとして、気候変動への影響を軽減するための提案を行うことが次のステップになる。具体的には、Google Cloudの「Unattended Project Recommender」に二酸化炭素推定値を追加したり「Active Assist Recommender」に持続可能性への影響のカテゴリーを追加したりすることになる。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

GMの米国工場は再生可能エネルギー100%への切り替えを5年前倒しで実施へ

ゼネラルモーターズ(GM)は2021年初め、2035年までに生産する車両、そして2030年までに生産方法の面でグリーン化を進める計画を発表した。このたび同社は「方法」という部分にいち早く取り組み、予定より5年早く2025年までに米国内の施設で再生可能エネルギーを100%使用することを述べている

この目標を達成するために、GMは、エネルギー効率を高め、施設に自然エネルギーを調達すると述べている。また、再生可能エネルギーを中長期的に貯蔵する技術を開発し「再生可能エネルギーの導入を支援するマイクログリッドを構築する」としている。

GMのサステナビリティ最高責任者であるKristen Siemen(クリステン・シーメン)氏は、次のように述べた。「当社は、気候変動対策が優先事項であり、すべての企業が脱炭素化をさらに迅速に進める必要があることを理解しています。それを実現するために、米国では(計画より)5年早く再生可能エネルギー100%を達成することを目指しています」。

また同社は、PJM Interconnectionという会社と協力して、その時々の送電網の炭素出力に基づいてエネルギー使用量を追跡する計画についても詳しく説明している。「GMは、供給されている電力のほとんどが化石燃料で構成されている場合、蓄えられている再生可能エネルギーの活用や消費電力の削減について、情報に基づいた判断を下すことができます」とも述べている。

生産する車両については、GMは2025年までに全世界でフルEVを30車種投入するする予定で、さらに「2035年までに新しい小型車(自動車、SUV、ピックアップ)のテールパイプ排出ガスをゼロにする」ことを計画している。この言い回しは水素自動車を含む可能性を示唆しているが、今のところGMは主にEVに焦点を当てているようだ。

しかし、GMの汚染削減計画は、政治的な風向きに左右され推移してきた部分もある。同社は、カリフォルニア州をはじめとする各州が独自に公害防止やゼロエミッションの要件を設定することを禁止するというトランプ政権の計画を支持したいくつかの自動車メーカーの1つだった。これにより、自動車メーカー各社は、前政権が要求していた年間5%の燃費向上を大幅に下回る、年間1.5%の燃費向上で許される。GMは、Joe Biden(ジョー・バイデン)氏が大統領に選出された直後に、この訴訟から撤退した。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Veanne Cao

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

アル・ゴアが英国のグリーンエネルギー技術スタートアップOctopus Energy Groupに約660億円を出資

Al Gore(アル・ゴア)元副大統領は、自身のGeneration Investment Management(ジェネレーション・インベストメント・マネジメント)を通じ、英国のエネルギー関連企業であるOctopus Energy Group(オクトパス・エナジー・グループ)に6億ドル(約660億円)の出資を行い、約13%の株式を取得した。この投資により、Octopusの評価額は約46億ドル(約5100億円)に達した。

Octopusは、再生可能エネルギー源からのエネルギーを競合他社よりもはるかに効率的にネットワーク上で迂回させることができると主張する「Kraken(クラーケン)」技術プラットフォームによって、エネルギー業界で有名になった。Octopusは現在、12カ国で1700万のエネルギー口座をこの方法で管理している。

Generationは、持続可能なビジネスを支援することを目的とした360億ドル(約3兆9970億円)規模のファンドマネジメント企業だ。Octopusは、Generationからの戦略的投資により、テキサス州を足掛かりに展開している米国市場へのさらなる参入を目指している。

今回のGenerationからの出資は、東京ガス、Origin Energy(オリジン・エネルギー)からの株式投資、スマートグリッド技術を専門とするUpside Energy(アップサイド・エネルギー)の買収に続くものだ。Octopusの小売事業は現在、英国、米国、ドイツ、スペイン、ニュージーランドで展開しており、Good Energy(グッド・エナジー)、Hanwha Corporation(ハンファ・コーポレーション)、Origin Energy(オリジン・エナジー)、Power(パワー)そしてE.ONとライセンス契約を結んでいる。

関連記事:AI活用エネルギースタートアップの英Octopusが東京ガスから208億円の投資を受けて評価額2000億円超え

また、Octopusは、ユーザーが電気自動車を充電する際にOctopus Energyの個人アカウントに充電できるよう、欧州に10万カ所の充電ポイントを持つ電気自動車のローミングネットワーク「Electric Juice(エレクトリック・ジュース)」を立ち上げている。また、Teslaと提携し、英国とドイツで「Tesla Power(テスラ・パワー)」を展開している。

Octopus Energyの創業者兼CEOであるGreg Jackson(グレッグ・ジャクソン)氏は、次のように述べた。「現在、英国のエネルギー市場は厳しい状況にありますが、化石燃料への依存をなくすためには、再生可能エネルギーや技術への投資が必要であることが浮き彫りになりました。そのため、世界をより良く変える持続可能な企業を支援するために設立されたGeneration Investment Managementとの契約を発表できることを嬉しく思います」。

「私たちは週に2回、300回のストレステストを行っています。テック企業である当社にとって、それは単なるアルゴリズムです。ライバル企業は、スプレッドシートを使ってやっています」。

Generation Investment Managementを代表して、長期株式戦略のパートナーであるTom Hodges(トム・ホッジス)氏は「Octopus Energyは、システムや気候変動に前向きな企業を支援するために長期的な投資を行うというGenerationのミッションに非常に適しています。世界は、パリ協定の目標を達成するために不可欠な、前例のないエネルギー転換の初期段階にあります。これは、環境と消費者にとってより良い方法で行うことができます」という。

Zoom経由のインタビューでジャクソン氏は、現在の世界的なエネルギー危機には2つの部分があると話してくれた。「1つは、エネルギーの卸売価格の危機です。世界のガス価格は去年だけで3倍、4倍になっています。そして、ガスの価格が高いだけでなく、電力の多くがガスからきているため、電力価格も上昇しています。これは、企業がどれだけ思惑売りと空買いをしてきたかを如実に表していると思います。つまり、現在、破綻している企業は、1年契約を販売していたのだが、6カ月分のエネルギーしか購入しておらず、残りはうまくいくよう祈っていただけの大企業なのです」。

Octopusは、「常に100%の防止策を行ってきました。私たちにとって、エネルギー小売は事業の1つに過ぎません。そして、グループ内には13の事業があります。私たちが常に目指してきたのは、優れたサービスを提供することと、リスク管理の行き届いたバックエンドを提供することでした。私たちは週に2回、ヘッジポジションに対して300回のストレステストを行っています。テック企業である当社にとって、それは単なるアルゴリズムです。ライバル企業は、それをしていないか、スプレッドシートでやっていて、うまくいっていません」。

「現実には、この危機は完全に化石燃料の危機です。もし、再生可能エネルギーを主要な供給源とし、ガスをバックアップとして使用していたら、このような状況にはなっていなかったでしょう」とジャクソン氏は付け加えた。

Octopusは、風力、太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーのオーナーオペレーターで、35億ポンド(約5200億円)の発電資産を持ち、今後10年間でそれを10倍にする計画だという。

このGeneration案件は、3億ドル(約330億円)の即時投資と、2022年6月までに3億ドル(約330億円)の追加投資で構成されており、さらに一定の資金調達条件を満たす必要がある。

Octopusは、気候変動との戦いを政府レベルで行うため、ロンドンに独立した研究施設Centre for Net Zeroを設立し、さらに熱の脱炭素化に関する研究開発・トレーニングセンターに1000万ポンド(約15億円)を投資した。

画像クレジット:Octopus Energy Founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Yuta Kaminishi)

ホンダが「空飛ぶハイブリッドカー」「アバターロボ」「月面循環エネルギーシステム」「再使用型小型ロケット」など挑戦

ホンダが「空飛ぶハイブリッドカー」「アバターロボ」「月面循環エネルギーシステム」「再使用型小型ロケット」など新領域に挑戦

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ホンダが「新しい事業領域に関する説明会」を開催し、都市間や都市内移動用の「Honda eVTOL(電動垂直離着陸機)」や、時間や空間の制約に縛られず、バーチャルな能力拡張を実現する「Hondaアバターロボット」の開発に取り組んでいくと発表しました。また、月面で使用することを想定した燃料電池式発電システムの開発も行うとしています。

ホンダはeVTOLにはEVやPHEVで培ったリチウムイオン電池に加えガスタービン式ハイブリッドパワーユニットを搭載し、電池だけでは足りない航続距離を確保します。もちろんこの計画はまだごく初期の段階なので、実機が登場するには10年ほどの歳月がかかると予想されます。ホンダは2030年代に試作機、開発機を制作し、2040年代の商業化を目指しています。

次世代の交通であるeVTOL分野には、スタートアップから既存自動車メーカーまで多くの企業が参入しています。たとえばNASAと提携するJobyは実物大のモックアップに近い試作機をすでにテスト的に飛行させています。また、VTOLではないもののスロバキアのKlein Visionは今年、空陸両用車「AirCar」の35分間の有人飛行を成功させています。ただ、まだ乗客を乗せての商業飛行を行うには機体の安全性や信頼性、搭乗可能人数、航続距離、そして既存の法規制といったさまざまなハードルがあり、それらをひとつひとつ解決潰していかねばなりません。先行する企業に遅れての参入はホンダにとってハンデかもしれませんが、ホンダにはすでに小型ジェット機の開発実績・技術があり、それをeVTOLにも応用できると考えられます。

一方「Hondaアバターロボット」については多指ハンドと独自のAIサポート遠隔操縦機能を組み合わせたものになり、利用者はわざわざ遠隔地に出向くことなく、VRヘッドセットとグローブを通じてアバターロボットの視覚と触覚を借りて作業ができるようになるとのこと。たとえば、多指ハンドを通じて人が使う道具を使いこなし、AIサポートによって複雑な作業も直感的な操作で正確に行えることを目指すとしています。

このロボットはASIMOをベースに改良を加えたものになるとしており、2024年第1四半期末までに技術実証実験を行う計画。そのための第一歩としてはASIMOの手をもっと小さくしつつ、物を掴む力を向上させるための開発を行うとのこと。

さらにもうひとつ、ホンダは宇宙開発にもその守備範囲を拡げようとしています。「燃焼・誘導制御技術、燃料電池技術、ロボティクス技術といったHondaならではのコア技術」を活かし、月面で利用可能な循環型再生可能エネルギーシステムの構築を検討しています。

このシステムでは、太陽光など再生可能エネルギーとして得た電力を使って、液体の水を電気分解し、水素と酸素を生成します。これを燃料電池で使用して発電すると同時に月面の居住施設に酸素とロケットの燃料にもなる水素を供給します。

ホンダが「空飛ぶハイブリッドカー」「アバターロボ」「月面循環エネルギーシステム」「再使用型小型ロケット」など新領域に挑戦

©JAXA/Honda

ほかにも、ホンダは若手技術者の発案をきっかけとした小型ロケットの開発にも取り組むことを明らかにしました。これは地球低軌道への小型人工衛星の打上げを目標とするとのことです。JAXA/Honda

(Source:HondaEngadget日本版より転載)

NTTドコモが電力事業に参入、再生可能エネルギーを積極活用の「ドコモでんき」を2022年3月開始

NTTドコモが電力事業に参入、太陽光・風力・地熱などの再生可能エネルギーを積極活用の「ドコモでんき」を2022年3月開始予定

NTTドコモが電力事業に参入します。2022年3月より新電力サービス「ドコモでんき」の提供を開始します。

「ドコモでんき」のサービス開始時点では、太陽光・風力・地熱などの再生可能エネルギーを積極活用した「ドコモでんき Green」、およびdポイントとの連携などにより割安に利用できる「ドコモでんき Basic」の2プランを提供します。NTTドコモが電力事業に参入、太陽光・風力・地熱などの再生可能エネルギーを積極活用の「ドコモでんき」を2022年3月開始予定

申込みはドコモショップおよび専用のウェブサイトで受け付けます。なお、サービスの詳細は2021年末までに公表予定。具体的な料金体系や、ドコモ契約とのセット割の有無は現時点では明かされていません。

また、同サービスはNTTアノードエナジーが小売電気事業者として電力の供給を担い、ドコモが取次事業者としてサービスを提供します。

NTTドコモは2030年までのカーボンニュートラル達成を目標にしていて、「ドコモでんき」の提供開始によって、社会全体のカーボンニュートラルにも貢献したいとコメントしています。

(Source:NTTドコモEngadget日本版より転載)

【コラム】レーザー主導の核融合は安全で安価なクリーンエネルギーへの道を開く

核融合発電を実現するという探求が最近飛躍的な前進を見せている。ローレンス・リバモア国立研究所にある国立点火施設(NIF)は、前例のない高い核融合収率の実験結果を発表した。単一のレーザーショットが1.3メガジュールの核融合収率エネルギーを放出する反応を開始させ、核燃焼の伝搬の痕跡を示した。

このマイルストーンに到達したことは、核融合が実際に発電の達成にいかに近づいているかを物語っている。この最新の研究結果は、進捗の急速なペース、特にレーザーが驚異的なスピードで進化していることを実証するものだ。

実際、レーザーは第二次世界大戦以降で最も影響力の強い技術的発明の1つである。機械加工、精密手術、消費者向け電子機器など、実に多様な用途で広く使用されているレーザーは、日常生活に欠かせないものとなっている。しかし、レーザーが正のエネルギー利得で制御された核融合を可能にするという、物理学のエキサイティングかつまったく新しい章の到来を告げていることはほとんど知られていない。

60年におよぶ技術革新の後、現在レーザーはクリーンで高密度、かつ効率的な燃料を開発する喫緊のプロセスをアシストしている。この燃料は、大規模な脱炭素化エネルギー生産を通して世界のエネルギー危機を解決するために必要とされている。レーザーパルスで達成できるピークパワーは、10年ごとに1000倍もの増加を示している。

物理学者たちは最近、1500テラワットの電力を生み出す核融合実験を行った。短時間で、全世界がその瞬間に消費するエネルギーの4〜5倍のエネルギーを生み出した。言い換えれば、私たちはすでに莫大な量の電力を生産できるのである。ただし、点火用レーザーを駆動するのに消費されるエネルギーをオフセットする、大量のエネルギーを生成する必要もある。

レーザーを超えて、ターゲット側でもかなりの進歩が起きている。最近のナノ構造ターゲットの使用は、より効率的なレーザーエネルギーの吸収と燃料点火を実現している。これが可能になったのは数年前のことだが、ここでも技術革新は急勾配を呈しており、年々大きな進展を遂げている。

このような進捗を目の前にして、商業的な核融合の実現を阻んでいるものは何なのかと不思議に思われるかもしれない。

2つの重大な課題が残存している。第1に、これらの要素を統合し、物理的および技術経済的な要件をすべて満たす統合プロセスを構築する必要がある。第2に、そのためには民間および公的機関からの持続可能なレベルの投資が必要である。概して、核融合の分野は痛ましいほどに資金が不足している。核融合の可能性を考えると、特に他のエネルギー技術との比較において、これは衝撃的である。

クリーンエネルギーへの投資は2020年に5000億ドル(約55兆円)を超える金額に達したものの、核融合研究開発への投資はそのほんの一部にすぎない。すでにこの分野で活躍している優秀な科学者は数え切れないほど存在するし、この分野への参入を希望している熱心な学生も大勢いる。もちろん、優れた政府の研究所もある。総じて、研究者と学生は制御核融合の力と可能性を信じている。私たちは、このビジョンを実現するために、彼らの仕事に対する財政的支援を確保すべきであろう。

私たちが今必要としているのは、目の前の機会の有効性を十分に発揮させる公共および民間投資の拡大である。このような投資にはより長い時間軸が存在するかもしれないが、最終的なインパクトは平行していない。今後10年間のうちに正味エネルギーの増加が手の届くところまでくると筆者は考えている。初期のプロトタイプに基づいた商用化は、非常に短期間で行われるだろう。

しかし、そうしたタイムラインは、資金および資源の利用可能性に大きく依存している。風力、太陽光などの代替エネルギー源にかなりの投資が行われているが、核融合を世界のエネルギー方程式の中に位置づけなければならない。これは、臨界的なブレークスルーの瞬間に向かう中で、特に顕著な真実である。

レーザー駆動の核融合が完成され商業化されることで、核融合が既存の理想的でないエネルギー源の多くに取って代わり、最適なエネルギー源となるポテンシャルが生まれる。核融合が正しく行われれば、クリーンで安全かつ安価なエネルギーが均等に供給されるのである。核融合発電所が最終的には、現在なお支配的な従来型発電所や関連する大規模エネルギーインフラのほとんどに置き換わると筆者は確信している。石炭やガスは不要となるであろう。

高収率と低コストをもたらす核融合プロセスの継続的な最適化により、現在の価格をはるかに下回るエネルギー生産が約束される。極限的には、これは無限のエネルギー源に相当する。無限のエネルギーが存在するなら、無限の可能性をも手に入れることができる。これで何が実現するだろうか?過去150年にわたって大気中に放出してきた二酸化炭素を取り除くことで、気候変動が逆転することは確かであると筆者は予見している。

核融合技術によって強化された未来では、水を脱塩するためにエネルギーを使うこともでき、乾燥地帯や砂漠地帯に多大なインパクトをもたらす無制限な水資源を作り出すことができる。総合的に見て、核融合は、破壊的で汚染されたエネルギー源や関連インフラに依存することなく、持続可能でクリーンな社会を維持し、より良い社会を可能にするものである。

SLAC国立加速器研究所、ローレンス・リバモア国立研究所および国立点火施設での長年にわたる献身的な研究を通じて、筆者は、最初の慣性閉じ込め核融合実験に立ち合い、その統制を担うという光栄に浴した。すばらしいものの種が植えられ、根付いていくのを目にした。人類のエンパワーメントと進歩に向けてレーザー技術の成果が収穫されることに、かつてないほどの興奮を覚えている。

同僚の科学者や学生たちが、核融合をタンジビリティの領域からリアリティの領域へと移行させることに取り組んでいるが、これにはある程度の信頼と支援が求められてくる。世界的な舞台において大いに必要とされ、より歓迎されるエネルギー代替品を提供することに対して、今日の小規模な投資は多大なインパクトを及ぼしかねない。

筆者は楽観主義と科学の側に賭けている。そして他の人々もそうする勇気を持ってくれることを願っている。

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画像クレジット:MickeyCZ / Getty Images

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(文:Siegfried Glenzer、翻訳:Dragonfly)

Salesforceがバリューチェーン全体での温室効果ガス実質ゼロを達成

Salesforce(セールスフォース)はこれまで頻繁に、責任ある資本主義を説き、勧めてきた。そして同社は米国時間9月21日、年次開催の顧客向けイベントDreamforceでグローバル気候変動に対する取り組みでの顕著な成果を発表した。100%再生可能エネルギーで全バリューチェーンでのネットゼロ(温室効果ガス実質ゼロ)エネルギー使用を成し遂げ、それが可能でないときはカーボン相殺を購入している、と同社は述べた。

と同時に、同社は組織の気候変動の取り組みを管理するために組織に販売しているプロダクトSustainability Cloudのアップデートも発表した。このプロダクトでは組織は責任を果たしながらも資本主義者でいられる。米国時間9月20日のDreamforce Pressイベントに登壇した同社の最高影響責任者で企業関係担当EVPであるSuzanne DiBianca(スザンヌ・ディビアンカ)氏は、ポジティブなクライメートアクションを取る大企業の例となっていることを誇りに思っていると話す。

「今日ネットゼロ企業であるという当社のクライメートアクションの約束についてとても興奮しています。これは2030年でも2040年でもなく、未来のことでもありません。取り組みを加速させなければならないことは承知していて、スコープ1、2、3の全バリューチェーンを含め、当社は現在ネットゼロです。これを達成した企業は極めて少数です」とディビアンカ氏は述べた。

持続可能性に関する多くの専門用語があり、TechCrunchはより深く理解するためにSustainability CloudのGMであるAri Alexander(アリ・アレクサンダー)氏に話を聞いた。持続可能性のコミュニティは、スコープ1、スコープ2、スコープ3として知られる3つの主要エリアでの企業のカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を測定する、とアレクサンダー氏は説明した。「スコープ1とスコープ2はあなたが所有するもの、動かすもの、コントロールするもの、そして事業を展開するためにどのエネルギーを調達するかです」と同氏は述べた。

スコープ3は業界用語で「バリューチェーンの上流と下流」と言及され、あなたの会社が関わるものすべてだ。「企業が責任を負っているエミッションの圧倒的大部分は実際には企業の直接的な業務のものではなく、商品やサービスを調達する上流のものです。あるいは他の産業ではそのプロダクトや寿命を迎えた製品を使用する下流のものです」と説明した。あなたが新しいスマホを入手するときに下取りに出すスマホに起こることが、下流の例として挙げられる。

なので、Salesforceがバリューチェーンの上流と下流もネットゼロだというとき、そこには同社がコントロールするものすべて、そして同社が事業を展開する上で関わる全企業が含まれる。Salesforceのコントロール外のところで多くの変数があるため、パートナーやベンダーが同社が定める基準を遵守していることを確認できなければ「高品質なカーボンオフセット」と呼ぶものを購入する、とアレクサンダー氏は話す。

「また、すぐに対応できないところでも、完全にネットゼロでいられるよう、その不足分を埋め合わせるために当社は高品質なカーボンオフセットを購入します。その一方で、当社はサプライチェーンにわたって絶対的なゼロへと削減するという真に重要な取り組みを今後も続けます」と述べた。

加えて同社は他企業に販売するために開発した商業ツールSustainability Cloudのアップデートを発表した。これはSalesforceが自社で使っているのと同じツールとテクノロジーだ。

「持続可能性は、あるといいものから、実際に事業変革そのものの核心へと変わりつつあります。我々が生きているこの時代の趨勢の1つであり、毎年指数関数的に成長しています。そしてそれが意味するものは、企業は気候危機に対応するためにかなりのリソースを動かしており、持続可能性を事業運営の中心に据えつつあるということです」とアレクサンダー氏は述べた。

同時に、同社はより持続可能な組織になるためのSalesforce Climate Action Planという独自の計画に基づく取り組みの詳細も公開した。この計画はオンラインで無料で閲覧できる。

同社はまた、植林の目標を2021年3000万本に増やす。植林の取り組みには他の企業も参加しており、10年で1億本を植林して育成・保全することを目標に掲げ、早く達成できるよう強力に推進している。

Dreamforceプレスイベントに登場したSalesforceの社長兼COOのBret Taylor(ブレット・テイラー)氏は、気候危機はあらゆる人に影響を及ぼしていて、Salesforceが他の組織のお手本になるよう取り組みつつ、自社の行いで意義ある影響を及ぼすことができると確信している、と述べた。

「我々は事業が変化のための最善のプラットフォームであると考えていることを認識するために、またあらゆる組織が信頼される企業になり、気候変動のような危機を解決するよう、刺激を与えるビジョンを描くためにDreamforceにいます」とテイラー氏は話した。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

ニッケル水素電池で定置型エネルギー貯蔵に革命を起こすEnerVenueが109億円調達、クリーンエネルギーを加速

再生可能エネルギーは、1日のある時間帯に発電が過剰になり、ある時間帯には足りなくなる傾向にある。これを普及させるために、電力網は大量のバッテリーが必要になる。リチウムイオンは家電製品や電気自動車には十分だが、バッテリーのスタートアップEnerVenue(エナベニュー)は、定置型エネルギー貯蔵に革命を起こす画期的技術を開発したという。

ニッケル水素バッテリーのテクノロジー自体は新しくない。実際、航空宇宙分野では人工衛星から国際宇宙ステーション、ハッブル望遠鏡にいたるまで、数十年前からさまざまなものの電力源として用いられている。しかしニッケル水素は、地球規模で利用するには高価すぎた。しかし、スタンフォード大学教授(そして現在EnerVenueのチェアマン)のYi Cui(イ・クイ)氏は最適な材料を組み合わせる方法を見つけることでコストを大幅に引き下げようとしている。

ニッケル水素にはリチウムイオンをしのぐ重要な利点がいくつかある、とEnerVenueはいう。まず超高温にも超低温も耐えられる(空調や温度管理システムが必要ない)、メンテナンスがほとんど必要ない、そしてはるかに寿命が長い。

このテクノロジーが石油・ガス業界の巨人2社の目に留まり、エネルギーインフラストラクチャー企業のSchlumberger(シュルンベルジェ)と石油最大手Saudi Aramco(サウジアラムコ)のVC部門はスタンフォード大学とともに、EnerVenueのシリーズAラウンドに計1億ドル(約110億円)を出資した。EnverVenuがシード資金1200万ドル(約13億1000万円)を調達してから1年後のことだ。同社はこの資金をニッケル水素バッテリー製造の規模拡大に使用する予定で、米国のGigafactory(ギガファクトリー)はその1つだ。またSchlumbergerとは国際市場における製造・販売契約の交渉に入っている。

「私はEnerVenueと出会う前に3年半、リチウムイオンと競争できるバッテリーストレージ技術を探していました」とCEOのJorg Heineでmann(ヨーグ・ハイネマン)氏が最近のインタビューでTenCrunchに話した。「私はほとんど諦めかけていました」。そしてクイ氏に会った。彼は研究成果を駆使して、キロワット時当たり2万ドル(約220万円)のコストを100ドル(約1万1000円)にまで下げる見通しを立てた。それは既存のエネルギー貯蔵と肩を並べる驚愕の価格低下だった。

EnerVue CEOのヨーグ・ハイネマン氏(画像クレジット:EnerVenue ))

ニッケル水素バッテリーはバッテリーと燃料電池のハイブリッドの一種だと思って欲しい。圧力容器の中で水素を発生させて充電し、放電すると水素は水に再吸収される、とハイネマン氏は説明した。宇宙にあるこのバッテリーとEnerVenueが地球上で開発しているものとの大きな違いは材料にある。軌道上のニッケル水素バッテリーはプラチナ電極を使っていて、ハイネマン氏によるとコストの最大70%を占めている。従来技術はセラミックのセパレーターも使っていてこれもコスト高の要因だ。EnerVenueの重要なイノベーションは、低コストで地球に豊富に存在する材料を新たに見つけることだ(ただし具体的な材料は公表していない)。

ハイネマン氏は、社内の上級チームが別の技術革新に取り組んでいて、さらにコストダウンを進めてキロワット時当たり3ドル(約330円)以下を目指していることもほのめかした。

利点はそれだけではない。EnerVenueのバッテリーは、充電速度と放電速度を顧客のニーズに合わせて変えることができる。10分の充電または放電から10~20時間の充電・放電サイクルまで可能だが、同社は約2時間の充電と4~8時間の放電に最適化している。EnerVenueのバッテリーは性能を落とすことなく3万回の充電サイクルが可能なように作られている。

「再生可能エネルギーが益々安くなることで、1日の多くの時間、たとえば1~4時間、何かの充電に使える無料に近い電力を得られる時間帯が生まれます。そしてその電力は電力網のニーズによって速くあるいはゆっくりと送り出される必要があります」という。「そして私たちのバッテリーはまさにそれをやります」。

このラウンドが石油・ガス業界で大きな位置を占める2社によって出資されたことは注目に値する。「私が思うに、現在石油・ガス業界の100%近くが再生可能エネルギーへの大がかりな転換に取り組んでいます」とハイネマン氏は付け加えた。「彼らはみんな、エネルギーミックスがシフトしていく未来を見据えています。私たちは今世紀半ばに75%再生可能を目指していますが、多くの人はそれがもっと早く訪れると考えていて、それは石油・ガス業界が実施した研究に基づいています。みんなそれをわかって新しい台本が必要だと知っているのです」

画像クレジット:EnerVenue

ニッケル水素がもうすぐあなたのiPhoneに搭載されることを期待してはいけない。このテクノロジーは大きく重い。できる限りスケールダウンしても、ニッケル水素バッテリーは2リットルの水筒くらいのサイズなので、当分はリチウムイオンが主役を続けるだろう。

定置型エネルギー貯蔵は別の未来を迎えるかもしれない。EverVenueは現在、米国に工場を建設するための、場所とパートナー選びの交渉が「レイトステージ」に入っている。毎年最大1ギガワット時のバッテリーを生産し、最終的にさらに規模拡大することを目標にしている。ハイネマン氏は、メガワット当たりの設備投資はリチウムイオンのわずか20%になると推計している。SchlumbergerはEverVenueとの提携の下で、独自にバッテリーを生産してヨーロッパと中東に販売する計画だ。

「これは今使えるテクノロジーです」とハイネマン氏は言った。「私たちは技術革新を待っていません、未来に何かを証明するために必要な科学プロジェクトはありません。うまくいくことはわかっています」。

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画像クレジット:EnerVenue

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

再生可能エネルギーを使い、海水から二酸化炭素とセメントの原料を取り出すHeimdalの技術

大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、それに比例して海中の二酸化炭素濃度も上昇し、野生生物に悪影響を与えたり生態系を変化させてしまったりする。再生可能エネルギーを利用して二酸化炭素を大規模に回収し、その過程でコンクリート用の石灰石をはじめとするカーボンネガティブな工業材料を生産しようとしているスタートアップ企業がHeimdalである。同社はアーリーステージの段階でかなりの資金を集めているようだ。

コンクリートと聞いて首を傾げた読者は、次の点を考えてみたら良いだろう。コンクリートの製造は、温室効果ガス排出量全体の8%を占めると言われており、また海水にはコンクリートの原料となる鉱物が豊富に含まれているのだ。おそらく関連業界や分野に身を置いていなければこの関連性に気づくことはないだろう。しかしHeimdalの創業者であるErik Millar(エリック・ミラー)氏とMarcus Lima(マーカス・リマ)氏は、オックスフォード大学でそれぞれの修士課程に在籍していた時からこの関連性を認識していたのである。「気づいてからすぐに実行に移しました」とミラー氏はいう。

気候変動が人類の存続にかかわる脅威であると確信を持つ2人は、世界中で起きているさまざまな影響に対する恒久的な解決策がないことに失望感を感じていた。炭素捕捉は回収してもまた利用されて排出されるという循環型のプロセスになっていることが多いとミラー氏は指摘する。新しい炭素を生産するよりはましなものの、生態系から永久に炭素を取り除く方法は他にないのだろうか。

2人の創業者は、電気と二酸化炭素を多く含む海水だけで、ガスを永久に封じ込めることのできる有用な素材を製造する新しいプロセスを構想した。しかし当然、そんなことが簡単にできるのなら誰もがすでにやっているはずだろう。

画像クレジット:Heimdal

「これを経済的に実現するための炭素市場は、まだ形成されたばかりです」とミラー氏は話す。太陽光発電や風力発電の巨大な設備が、数十年来の電力経済を覆したことでエネルギーコストは大幅に低下している。炭素クレジット(この市場についてはここでは触れないことにするが、これが成功要因であるのには間違いない)と安価な電力市場には新たなビジネスモデルが生まれており、Heimdalもその1つと言えるだろう。

実験室規模(1000ガロンのタンクではなくテラリウム規模)ですでに実証されているHeimdalのプロセスは、簡単にいうと以下のとおりである。まず、海水をアルカリ化してpHを上げ、ガス状の水素、塩素、水酸化物の吸着剤を分離させる。これを別の海水と混ぜると、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムのミネラルが析出し、水中の二酸化炭素の飽和度が下がり、海に戻したときに大気中からより多くの二酸化炭素を吸収できるようになる(小規模なプロトタイプ施設の画像を見せてもらったが、特許申請中のため写真の掲載は拒否された)。

画像クレジット:Heimdal

海水と電気から水素や塩素ガス、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウムなどを生成し、その過程で大量の溶存二酸化炭素を封じ込めるという仕組みである。

1キロトンの海水に対して1トンの二酸化炭素と2トンの炭酸塩が分離されるが、それぞれに産業用の用途がある。MgCO3やNa2CO3はガラス製造などさまざまなものに使われるが、最も大きな影響を与える可能性があるのはCaCO3、つまり石灰石である。

石灰石はセメント製造プロセスの主要構成要素として常に大きな需要がある。しかし、現在の石灰石の供給方法は、大気中の膨大な炭素源となっているのも事実である。世界中の産業界が炭素削減戦略に投資しており、単に金銭的なオフセットが一般的ではあるものの、今後は実際にカーボンネガティブなプロセスが望まれるようになるだろう。

さらにHeimdalは海水淡水化プラントとの連携を見据えている。海水淡水化プラントは、淡水は不足していても海水とエネルギーが豊富にある、例えば米国カリフォルニア州やテキサス州などの沿岸部をはじめ、特に中東・北アフリカ地域のように砂漠と海が接する場所など、世界各地で見られるものである。

海水淡水化では、真水とそれに比例してより塩分を多く含んだ塩水が生成されるが、それを単純に海に戻すと地域の生態系のバランスが崩れてしまうため、一般的には塩水を処理する必要がある。しかし、例えばプラントと海の間にミネラルを集める工程があったとしたらどうだろうか。Heimdalは水1トンあたりのミネラルをさらに得ることができ、淡水化プラントでは塩分を含んだ副産物を効果的に処理することができるという考えである。

元RedditのCEOで、現在はTerraformationのCEOを務め、Heimdalに個人的に投資しているYishan Wong(イーシャン・ウォン)氏は次のように述べている。「Heimdalが海水淡水化の排水を利用してカーボンニュートラルなセメントを生産できるようになれば、2つの問題を同時に解決することになります。カーボンニュートラルなセメントのスケーラブルな供給源を作り、海水淡水化のブライン廃液を経済的に有用な製品に変換するという仕組みを、ともにスケールアップすることができれば、あらゆるレベルで革新的なものになるでしょう」。

Terraformationは太陽光による海水淡水化を推進しており、Heimdalはその方程式にまさにぴったりである。両者は現在、正式なパートナーシップを締結するために取り組んでおり、間もなく発表される予定だ。一方、カーボンネガティブな石灰石は、脱炭素化をはかるセメントメーカーが1グラムも逃すまいと買いあさることだろう。

ウォン氏は、Heimdalのビジネスにおいて、タンクやポンプなどを購入するための初期費用以外の主なコストは、太陽エネルギーにかかる費用だと指摘している。このコストは何年も前から下降傾向にあり、また定期的に巨額の投資が行われているため、今後もコストは下がると考えて良い。また、二酸化炭素を1トン回収したときの利益は、すでに約75%が500〜600ドル(約5万5000〜6万6000円)の収入となっているが、規模と効率が上がればさらに大きくなる可能性がある。

ミラー氏によると、同社の石灰石の価格は政府のインセンティブや補助金を含めると、すでに業界標準と同等の価格になっているという。エネルギーコストが下がり、規模が大きくなれば、この比率はより魅力的なものになっていくだろう。また、同社の製品が天然の石灰石と見分けがつかないというのも魅力の1つである。「コンクリート業者が手を加えなければいけないことは何もありません。採掘業者から炭酸カルシウムを購入するのではなく、当社の合成炭酸カルシウムを購入するだけのことです」と同氏は説明する。

全体的に見れば、これは有望な投資といえそうだ。Heimdalはまだ公に公開されていないが(Y Combinatorの2021年夏のDemo Dayで公開される予定)、640万ドル(約7億円)のシードラウンドを獲得している。参加した投資家は、Liquid2 Ventures、Apollo Projects、Soma Capital、Marc Benioff、Broom Ventures、Metaplanet、Cathexis Ventures、そして前述したウォン氏である。

Heimdalはすでに複数の大手セメントメーカーやガラスメーカーとLOIを締結しており、米国の海水淡水化プラントでパイロット設備を計画している。数十トン規模の試験品をパートナーに提供した後、2023年に商業生産を開始する予定だ。

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画像クレジット:Heimdal

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)