労働者が「フレキシブルな仕事」に何を求めているのか、WorkWhileは新たな見解を示す

WorkWhile(ワークワイル)の共同設立者であるJarah Euston(ジャラ・ユーストン)氏は、労働者を柔軟で信頼できる仕事に結びつけるという使命感を持っており、そう考えるのは彼女1人だけではない。しかし、彼女が際立っているのは、彼女が今日の労働市場の多くは誤った考え方の上に成り立っていると考えていることだ。

「私は、労働者が求めるのは無限の柔軟性だという考えには賛成できません」と、彼女はTechCrunchのインタビューで語っている。「それはおそらく、時給制の仕事で家賃を払おうとしたことがない人たちによるもので、請求書を支払うだけの十分な収入がある見通しや保証をするものではありません」と語る。

彼女はさらに「労働者は柔軟なスケジュールを必要としていますが、無限の柔軟性を求めているわけではありません【略】誰かがUberのドライバーになり、30分運転して、3時間ビーチに座って、さらに10分運転したいといった考えは、市場が自ら語った偽りなのです」と述べた。

労働者が何を得て、どのくらいの頻度でそれを得ることができるのかを理解するのに役立つプラットフォームがないことが、ユーストン氏が共同創業者のAmol Jain(アモル・ジャイン)氏とともにWorkWhileを立ち上げることに興味を持たせるきっかけとなった。2019年に設立されたWorkWhileは、時間給労働者を空いているシフトにつなげるだけでなく、翌日払い、遠隔地からのヘルスサービスへのアクセス、給与の透明性といった特典を提供する。

WorkWhileは、本拠地であるサンフランシスコ・ベイエリアをはじめ、ロサンゼルス、アトランタ、マイアミ、北ニュージャージー、アトランタ、シアトル、ヒューストン、ニューヨーク・メトロなど13の市場でサービスを運営している。ユーストン氏のビジョンに沿ったこの成長は、投資家の大きな関心を集めている。

このスタートアップは本日(米国時間2月23日)、Reach Capital(リーチ・キャピタル)が主導し、Khosla Ventures(コスラ・ベンチャーズ)、F7 Ventures(F7ベンチャーズ)などの既存投資家、Chamaeleon(カメレオン)、Position Ventures(ポジション・ベンチャーズ)、Gaingels(ガインガル)などの新規投資家が参加して、1300万ドル(約14億8900万円)のシリーズAを最近調達したと発表している。

最終的にWorkWhileが目指すのは、シフトだけでなく、常駐サポートやサービスも含めて(週の働き方にかかわらず)、より離れづらい労働者を持つマーケットプレイスを構築することだ。Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏が設立したRunner(ランナー)は、最近、同じようなアプローチで立ち上がった。パートタイムのオンデマンド労働者をW-2社員として雇用し、より安定した仕事を提供し、その後、テック関連のオペレーションでの仕事へとつなげるという方法だ。Bluecrew(ブルークルー)も同様のサービスを提供しているが、バーテンダー、イベント管理、警備、データ入力、カスタマーサポートなどの仕事を紹介する前に人材を雇用している。

安定した柔軟な仕事への関心が高まっているのは、大型辞職の反動もあるだろうが、フリーランス経済が成熟し、非定型の仕事を求める労働者でもサポートを求めるようになったことを示す、さらなるサインでもある。WorkWhileによると、Advance Auto Parts(アドバンス・オート・パーツ)、Ollie’s Bargain Outlet(オーリーズ・バーゲン・アウトレット)、Good Eggs(グッド・エッグズ)、Thistle(シスル)、Edible Arrangements(エディブル・アレンジメンツ)、Dandelion Chocolate(ダンデライオン・チョコレート)、Bassett Furniture(バセット・ファニチャー)といった企業でシフトが埋まっているとのことだ。

画像クレジット:WorkWhile

ユーストン氏によると、WorkWhileのプラットフォームで働く人の80%が週に30時間以上働きたいと考えており、60%が週に40時間以上働きたいと考えているという。「WorkWhileでは、『ギグ』という言葉は使わないようにしています。ギグプラットフォームと見られたくありません」とユーストン氏はいう。「安定した給料を得るための最高の場所として見てもらいたいのです」と語る。

労働者に優しいという売り文句に加え、WorkWhileは労働者にサービスの利用料を一切課さない。その代わり、WorkWhileを利用する企業には、労働者に支払われる料金に応じたパーセント型の手数料を請求することで利益を得ている。もちろん、雇用主にとっては、より信頼性が高く、離職率の低い労働力が期待できる。

ユーストン氏によると、同社は「人々が仕事についてどう感じるか」を示すデータポイントを見つけ、それを基にプロフィールを作成することが重要であるという。例えば、WorkWhileに入社した社員は、まずオリエンテーションを受け、その後、行動テストを受けることになる。

「難しくはありませんが、まさに指示に従っていくテストです」と彼女はいう。「1年に何回病欠の電話をしたかや、他の人は1年に何回病欠の電話をすると思うかといった、職場を取り巻く意識について確認しているのです」と語る。WorkWhileの現在の欠勤率はわずか5%で、予定されている労働者がシフトに参加するかどうかを予測する精度は76%だ。

このような方法でデータポイントを追跡することの課題は、歴史的に見過ごされてきた人々や社会経済的に低いバックグランドを持つ人々に不釣り合いに重くのしかかることである。結局のところ、このスタートアップは、主にパートタイムでフレキシブルな仕事を探している人向けではない。それは市場のすべての層を取り除いてしまいかねない。もう1つ興味深いデータがある。WorkWhileのプラットフォームで働く時間給労働者の約28%が暗号資産を所有しているということだ。

ユーストン氏によると、アプリでは「あえて意図的に」人口統計学的な質問をせず、前述の理由から予測モデリングの要因に年齢を含めないようにしているとのことだ。WorkWhileは、任意の労働者調査に基づいて、ユーザーの80%がPOC(有色な肌を持つ人々)であると認識しているという。

「私たちのモデルの哲学は、人々が働くことを妨げるのではなく、むしろリスクを管理することです。例えば、誰かがシフトに現れる可能性が50%未満であると予測した場合、顧客の要求が満たされるように予備の労働者を送ったほうがよいでしょう」と彼女は付け加えた。「我々のモデルが間違っていて、労働者がシフトに現れた場合は、そのバックアップの労働者には支払いは行われますが、顧客には請求されません」と語る。

同社は、誰もが働こうとすることを制限していないと主張しているが、より高い評価を受けた人に新しいシフトの最初の機会を優先して提供している。「将来的に、現場への移動が困難かもしれないと私たちが予測する人たちへのサポートを充実させることも視野に入れています。[…]もし私たちが、あなたが車を持っていないとわかった場合、相乗りオプションを提示することを検討することができます」と彼女は言った。

画像クレジット:WorkWhile

画像クレジット:SunnyGraph / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

スタテンアイランドFCのAmazonワーカーの組合投票は2022年3月の予定

計画どおりいけば、来月、2022年3月下旬にAmazonのスタテンアイランドFC(フルフィルメントセンター)の労働者が待望の組合投票を行なう。対面式の選挙は、アラバマ州ベッセマーにある同社の倉庫で行われている郵便による再投票の集大成と同じ3月25日から30日に予定されている。

元ニューヨーク市ニューヨーク区のJFK8倉庫の従業員で、現在はAmazon労働組合(Amazon Labor Union)の議長であるChristian Smalls(クリスチャン・スモールズ)氏が認めるのは、Amazonがこの投票に関して全国労働関係委員会(National Labor Relations Board、NLRB)と合意に達したことだ。同社はその経過をテキストメッセージで社員に確認し、1カ月以上前から「ノー」と投票することを勧めていた。

それは、今後確実にこのリテール大手の強力な反組合運動となるものの始まりだ。Amazonは2021年4月の投票に向けて攻撃的な戦術をとった。そして結局は、社内メールボックスや「ノーに投票しよう」の看板などが小売卸百貨店組合の異議不服を買うに十分となり、今回の再投票に至った。スタテンアイランドの投票は、JKF8の従業員独自の長期的活動の成果だ。

時間を無駄にするな‼

その巨大な倉庫では2020年に事態が過熱し、ニューヨーク市における新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの最初の波が高まっている間、エッセンシャルワーカーの労働条件に従業員たちが抗議した。当時アシスタントマネージャーだったスモールズ氏は、ストライキを率いた日に解雇された。同社は彼のことを、新型コロナウイルス感染症の安全規約に違反したと非難した。噂によると同社は、その直後にスモールズ反対キャンペーンを開始した。

10月にAmazon労働組合は、すでに同社のスタテンアイランドのすべての倉庫を含む投票を推していたが、署名が得られず撤回した。代わりに、今回の最新の投票は同区の最大のFCであるJFK8に集中する。12月にはシカゴのFCのワーカーたちが、倉庫の労働条件に対する反発の盛り上がりの一環として独自のストライキを主催した。

実質的に、この国の2つの異なる場所で大規模な投票が行われるようになったことが象徴的に示すものから、確かにAmazonは逃げられなかった。同社は長年組合の結成に抵抗し、長年の否定的な報道にもひるまず、FCの労働者は公正に扱われていると主張していた。2つの投票までの数週間は大量の激論が続くだろうが、特に激しいのは、リアルで行われるニューヨークの投票だろう。

TechCrunchはAmazonとAmazon労働組合とNLRBにコメントを求めている。

画像クレジット:ANGELA WEISS/AFP/Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Bilibiliコンテンツモデレーター過労死疑惑で中国テック業界の長時間労働文化の議論が再燃

中国で先週、オンラインコンテンツのモデレーターが急死したことで、インターネット時代に生まれた職業の労苦に焦点が当たっている。

中国の動画配信サイト「Bilibili(ビリビリ、哔哩哔哩)」でコンテンツを監視していた25歳の男性が、春節(旧正月)中の2月5日に突然亡くなった。この件に詳しい人物から情報を得たというWeibo(ウェイボー、微博)ユーザーの投稿によると、春節の連休中、午前9時から午後9時までの12時間シフトで働いた後のことだったとされている。

この投稿は数時間のうちに何万回も閲覧され、中国のテック業界に蔓延する長時間労働文化に対して、ネット上で新たな抗議の波を引き起こした。

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2009年のサービス開始以来、Bilibiliはサブカルチャーのためのニッチな安息地から、2021年9月時点で月間アクティブユーザー数(MAU)2億7千万人を誇る人気動画共有サイトへと変貌を遂げた。

コミュニティが拡大しているということは、それだけ審査すべき動画が増えているということでもある。中国の広大なネット検閲体制の背後には、WeChat(ウィーチャット、微信)、TikTok(ティックトック)、Weiboなどのコンテンツプラットフォームに雇用されている大勢のモデレーターが存在する。これらのモデレーターは、しばしばコンピュータの前で長時間作業し「違法・有害な」ユーザーの投稿にフラグを立てて削除する。その過酷な労働条件から、インターネット時代の「生産ライン」とも呼ばれている。また、工場での仕事と同様に、一日中コンテンツをパージする作業は、労働者の健康を損なうことにつながる。

過労死疑惑に対してBilibiliは、従業員が亡くなる前の1週間、彼は1日8時間、週5日という標準的な労働時間で働いており、同社は法律に基づいて休日出勤した彼の給与を3倍にしていたと主張している。

「彼が担当していたコンテンツセキュリティモデレーションの仕事は、24時間体制の特別な業務です。他の公共サービスと同様に、コンテンツセキュリティは旧正月であっても止めることはできません」と同社は声明で述べた。

もちろん、このような説明では激昂した世論を鎮めることはできない。「悲劇を繰り返さない」ために、Bilibiliは、コンテンツ監査チームの健康状態を「積極的に改善する」と述べている。そのために、2022年中に1000人のモデレーターを追加して「平均的な仕事量を減らす」とともに、同部門のスタッフに「強化された健康チェック」を導入する予定だという。

Bilibili従業員の死について最初に投稿したWeiboユーザーは、動画配信大手である同社の弁護士から手紙を受け取ったと投稿している。スクリーンネームを「Wang Luobei」とするこのユーザーは、Weiboで500万人近いフォロワーを抱えている。Bilibiliは、この弁護士の手紙についてのTechCrunchの問い合わせには応じていない。

画像クレジット:Gao Yuwen / VCG / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

倉庫のフォークリフトをロボットで自動化するVecnaが74.5億円調達

倉庫の自動化を急ぐ中で、フォークリフトの存在を無視することはできない。重い荷物を持ち上げるためにはもちろん重機が必要だが、こうしたシステムは事故に巻き込まれることで有名で、米国だけでも毎年数万件のフォークリフト事故が報告されている。

マサチューセッツ州に本社を置くVecna Robotics(ベクナ・ロボティクス)は、パレット移動などのフォークリフト中心の倉庫作業に自動化を導入しようとしている企業の1つだ。パンデミックが米国で流行する直前の2020年1月に実施したシリーズBですでに5000万ドル(約57億2000万円)を調達し、結果資金調達額は6000万ドル(約68億7000万円)を超えていた。この数字は今回のシリーズCで倍以上となった。

(ということで、もちろん)Tiger Global Managementが6500万ドル(約74億5000万円)のラウンドをリードし、既存の投資家であるBlackhorn Ventures、Highland Capital Partners、Tectonic Ventures、Drive Capital、Fontinalis Partnersに加え、新たにLineage Logistics、Proficio Capital Partners、Impulseなどが参加した。

同社は前回のラウンドの資金で、CEOのCraig Malloy(クレイグ・マロイ)氏やCMOのJosh Kivenko(ジョシュ・キベンコ)氏を含むかなりの数の人材を採用していた。この新たな資金が何に使われるのかについて、キベンコ氏は次のように語っている。

世界中で50億台以上のパレットが500万台以上のフォークリフトと500万人近くの手動オペレーターによって動かされているので、自動化された資材ハンドリングには成長の余地が十分にあるのです。今回のような著名で支援的な投資家グループが主導するこの投資を使うことで、工場や倉庫のような資材ハンドリング環境におけるスループット向上への飽くなき要求に応えるために、ロードマップを加速しより迅速に市場にソリューションを提供することが可能になります。

Vecnaによれば、今回の資金はソフトウェアおよびハードウェアの研究開発、注文の確実な処理、事業の拡大に使用されるという。同社が、新型コロナウイルスのパンデミックと広がる人材不足のために、投資家から関心が高まっているロボット企業の1つであることは間違いない。

画像クレジット:Vecna Robotics

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(文:Brian Heater 、翻訳:sako)

時間給労働者向けのオールインワンの労働力管理ツールを提供するNowstaが新たな資本を獲得

Nowsta(ノースタ)は、ハイブリッド化が進む労働環境において、雇用主が時間給労働者とより密接に関わることを支援するアプローチでベンチャーキャピタルを魅了した。

同社は米国時間1月19日、GreatPoint Ventures(グレートポイント・ベンチャーズ)が主導するシリーズBで4100万ドル(約46億8500万円)の資金調達を発表し、これまでの資金調達額は5900万ドル(約67億4200万円)に達した。今回の資金調達には、GreatPointの他、VMG Catalyst(VMGキャタリスト)、Rally Ventures(ラリー・ベンチャーズ)、Tribe Capital(トライブ・キャピタル)、既存投資家のGreen Visor Capital(グリーン・バイザー・キャピタル)、Compound Ventures(コンパウンド・ベンチャーズ)、Clocktower Technology Ventures(クロックタワー・テクノロジー・ベンチャーズ)が参加している。

CEOのNick Lillios(ニック・リリオス)氏は2015年にNowstaを設立し、その後1年半をかけて、ニューヨークのフードサービス業者との自身の仕事経験から生まれたこの技術を構築した。時間給労働者の運用の複雑さが同社の技術の着想の源であり、時間給労働の変化についていけない現在の労働力管理ソリューションに対する答えであった、と彼はいう。

Nowstaのウェブとモバイルアプリは、自動スケジュール管理、タイムトラッキング、給与計算、コミュニケーションなどの労働力管理ツールをオールインワンのリソースに統合したもので、信頼できる第三者人材派遣業者が調達した熟練労働者と雇用主をつなぐオンデマンド型労働マーケットプレイスも含まれている。また、ウォレット機能もあり、ユーザーはシフトごとに支払いを受け、将来の稼ぎを確認することができる。

「どの雇用主も臨時労働力を活用し、その隙間を埋めるために1099型労働者(米国における個人事業主)を使おうとしている」とリリオス氏はTechCrunchに語っている。「我々の市場は、必要としている雇用者と従業員をマッチングし、彼らがどのように訓練され、審査されたかを見ることができるので、雇用者は迅速な決定を下すことができます」。

同社は2019年4月に810万ドル(約9億2500万円)のシリーズAを調達し、マーケットプレイスを作るための後押しとなった。世界的なパンデミックが発生したとき、Nowstaは従業員を一時解雇しなければならない顧客と協働を開始し、このリソースによって同社は顧客が従業員を他の仕事に移行させる手助けをすることができたのだ。

リリオス氏は、時間給の仕事が元に戻るとは思っていない。むしろ、より多くの従業員が柔軟性を求め、より多くの雇用主が適応するためのツールやリソースにアクセスできるようになるため、過去2年間に見られたシフトは永続的に続くだろう。

かつてテクノロジーに乏しかったこの市場には、現在、このように十分なサービスを受けていない人々に注目するスタートアップがひしめいている。直近では、従業員の能力を引き出すアプリで3200万ドル(約36億5500万円)のシリーズB資金を調達したAskNicely(アスクナイスリー)について報じた。

その他にも、フロントワーカーが組織で使われているさまざまなITサービスを利用したり、お互いに交流したりするためのアプリ、Blink(ブリンク)などがある。シフトワーカーと雇用主をマッチングするマーケットプレイスのShiftsmart(シフトスマート)は9500万ドル(約108億円)を調達し、メッセージングアプリのWhen I Work(ウェン・アイ・ワーク)は2億ドル(約228億円)という巨額のラウンドに至った。一方、Fountain(ファウンテン)は8500万ドル(約97億1000万円)、Seasoned(シーズンド)は1870万ドル(約21億3600万円)を調達し、レストラン従業員のためのツールを開発した。2022年の初めには、Homebase(ホームベース)が7100万ドル(約81億1100万円)を調達し、ホームサービスのプロに焦点を当てたWorkiz(ワークイズ)が1300万ドル(約14億8500万円)を調達した。

現在、Nowstaの技術は、スポーツスタジアム、ホテル、フードサービス業者、倉庫など600の雇用主で、毎月30万人以上の労働者を管理している。パンデミックの間、より多くのスタジアムやホテルがオンラインに戻り、約1000人の従業員を雇用する必要があったため、Nowstaは最初に数百人の労働者を調達することができた。リリオス氏は「ビジネスに革命を起こし、フレックスワークの新しいモデルを切り開いた」と述べている。

今回の資金調達により、新たに米国内の25の市場に事業を拡大し、年末までに68人の人員を倍増(2021年は25人)し、製品開発や営業・マーケティングに投資することが可能となる。2021年に収益を大きく伸ばした後、リリオス氏は、それを繰り返すことは考えていないものの、2022年の収益は少なくとも3倍から5倍に成長すると予測している。

GreatPoint VenturesのマネージングパートナーであるAshok Krishnamurthi(アショク・クリシュナムルティ)氏は、文書で次のように述べている。「この2年間で、労働市場にパラダイムシフトが起き、時間給やフレックスタイム制がますます普及しています。あらゆる種類の企業が、オンデマンドの労働力に簡単に繋がり、効率的に管理しなければならなくなりました。そのための最も効果的な方法がNowstaであり、ニックとそのチームと提携してこのビジョンの達成を支援できることを、これ以上ないほどうれしく思っています」。

画像クレジット:Marko Novkov/EyeEm / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

アップルがフォックスコンのインド工場を監督下に、食事と寮に対する抗議受け

Apple(アップル)は、Foxconn(フォックスコン)のインド南部の工場の劣悪な食事と宿泊施設の状況について労働者から抗議を受け、同工場を監督下に置いた。両社は、この懸念について認め、改善を約束した。

Appleは監督期間を明言しなかったが、インドのAppleの広報担当者はTechCrunchに「工場を再開する前に、当社の厳しい基準が満たされるようにする」と語った。

タミル・ナードゥ州にあるFoxconnの工場では約1万7000人の従業員が働く。先の地元メディアの報道によると、工場で働き、ホステルの1つに住む数百人の女性が食中毒の治療を受け、100人以上が入院したため、12月19日の週に工場で抗議活動が発生した。

州政府も介入し、Foxconnに対し労働者に提供するサービスを見直すよう求めていた。

Appleは、食品の安全性と宿泊施設に関する懸念が提起されたことを受け、独立した監査人を派遣して状況を調べると述べた。

「従業員用の遠隔地の寮と食堂の一部が当社の要件を満たしていないことが判明しました。包括的な是正措置が迅速に実施されるようサプライヤーと協力しています」と広報担当者は話した。

Foxconnは、この問題を調査しており「一部のオフサイトの寮の施設が要求される基準を満たしていない」ことが明らかになったと述べた。広報担当者は次のようにTechCrunchに語った。「従業員が直面した問題を非常に残念に思っており、遠隔地の寮舎で提供する設備とサービスを強化するため、早急に措置を講じています」。

Appleの重要な組み立てパートナーであり、台湾の大手企業であるFoxconnは「必要とされる高い水準を達成・維持できるよう、現地の経営陣と管理システムの再構築に取り組んでいる」と話した。

「操業再開前に必要な改善を行う間、すべての従業員には給与が支払われ続け、従業員が仕事に復帰するためのサポートを提供し続けます」と広報担当者は付け加えた。

近年、インドでの現地生産を拡大しているAppleが、世界第2位のスマートフォン市場である同国でこの種の問題に対処するのは今回が初めてではない。2020年は、劣悪な労働条件と賃金未払いをめぐる労働者の暴動を受け、別の重要な組み立てパートナーであるWistron(ウィストロン)を監督下に置いた

関連記事:アップルがインドのiPhone工場での暴動を受けサプライヤーWistronへの発注を一時停止

画像クレジット:Arun Sankar / AFP / Getty Image

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンの倉庫で働く従業員が、待遇改善を求めてクリスマス前にストライキ

米国時間12月22日、シカゴ近郊にあるAmazon(アマゾン)の2つの施設で働く数十人の倉庫労働者が、1年で最も忙しい時期にクリスマス前のストライキを行い、待遇改善と賃上げを要求した。

「私たちは昇給を見送られ、人員が足りているときでさえ過重労働させられています」。シセロにあるDLN2施設の従業員は、Amazonの従業員団体「Amazonians United(アマゾニアンズ・ユナイテッド)」のシカゴ支部が配信したライブストリームで語った。「約束していたボーナスを受け取っていません。正社員として雇われていたのに、バッジを取り上げられて臨時従業員にされてしまった人もいます。アマゾンはこの場所に安全でない人員を配置し、必要以上に人々を忙しく働かせています」。

午前1時20分から午前11時50分まで働くこれらの労働者は、時給5ドル(約570円)の昇給も要求している。アマゾンがTechCrunchに語ったところによると、ストライキを行った2つの施設、シセロのDLN2とゲージパークのDIL3では、現在の初任給は時給15.80ドル(約1800円)だという。Amazonians Unitedの発言者は、同施設では新型コロナウイルス対策として20分の休憩時間が設けられていたが、これが15分に短縮されたとも述べている。しかし、ウイルス感染流行はまだ終わっておらず、特にオミクロン変異株が広がっている。発言者によると、前日にはシセロの施設で検査を受けた3人の労働者が陽性反応を示したという。

ストライキを起こす前に、労働者たちは自分たちの要求を記載した嘆願書を経営陣に提示したが、それに対する回答が得られなかったため、今回のストライキに至ったと述べている。

発言者は、経営陣からストライキに参加する者は「バッジを置いていったほうがいい」と言われたとも主張している。つまり、もう戻って来られないという意味だ。

民間企業が、ストライキを行った従業員に対して措置を取ることは違法である。しかし、従業員がストライキ後に戻ってみると、スケジュールが空白になっていたり、その日はもう退社したことになっていたりといったことが報告されたため、ストライキ参加者の間では報復を懸念する声が上がっていた。

「当社は、従業員が抗議行動をする権利を尊重し、その法的権利を認識しています。当社では、従業員に一級の給与、他に引けを取らない福利厚生、そして会社とともに成長する機会を提供していることを誇りに思っています」と、アマゾンの広報担当者は、TechCrunchの取材に対して述べている。

アマゾンの担当者は、今回のストライキに参加したことで解雇や停職になった労働者はいないと付け加えた。同社によると、労働者は抗議しても報復は受けないと、繰り返し安心させられたという。

しかし、全米各地でアマゾンの労働者は、同社が労働者の組織化を制圧しようとしていると非難している。2020年、Amazonians Unitedの共同設立者であるJonathan Bailey(ジョナサン・ベイリー)氏は、組織化を行った同氏に報復したことで、アマゾンが労働法に違反していると、全米労働関係委員会(NLRB)に訴えを起こした。ベイリー氏はストライキを組織した後、マネージャーに90分間拘束され、尋問を受けたと述べている。NLRBはこれらの申し立てに価値があると判断し、アマゾンを連邦機関に提訴した。同社は和解し、和解条項の一環として、従業員には団結権があることを、メールや物理的な掲示板で再認識させるよう求められていた。

NBC Newsによると、ベイリー氏の訴えは、2020年2月から2021年3月までの間にNLRBに提出されたアマゾンに対する37件の提訴のうちの1件だったという。しかし、この和解のわずか数カ月後、アマゾンはスタテン島の従業員が休憩室で組合を呼びかける文書を配布するのを、違法に阻止したことが判明した。

アマゾンの社員さえも、同社に対してNLRBに苦情を申し立てている。9月には、新型コロナウイルス感染流行発生時に倉庫労働者を擁護したために解雇された、元シアトル本社勤務のMaren Costa(マレン・コスタ)氏とEmily Cunningham(エミリー・カニンガム)氏の申し立てにアマゾンが和解した。この和解案では、アマゾンはコスタ氏とカニンガム氏に失われた賃金を補償するとともに、従業員がアマゾンの問題について発言する権利を改めて通知することが求められた。

しかし、ここ数週間で、緊張はさらに高まっている。米国時間12月10日、イリノイ州エドワーズビルでは、竜巻によってDLI4の施設が破壊され、アマゾンの従業員6名が死亡した。アマゾンでは長年、倉庫内での携帯電話の携行が禁止されていたが、新型コロナウイルス感染流行の際にはこの方針を緩和した。しかし最近になって、アマゾンはこの方針を復活させており、そのため、米国気象局が避難を呼びかける緊急警報を出しても、アマゾンの従業員の中には、致命的な嵐が近づいていることを知る手段を持たなかった人もいた。

全国の施設で働くアマゾンの従業員が報酬や条件の改善を求めている中、この大手電子商取引企業は1年で最も忙しい時期を迎えている。

「私たちは、すべての人がクリスマスプレゼントを手にし、すべての人が荷物を手にすることができるように懸命に働きます」と、シカゴの倉庫で働く労働者は、FOX 32 Chicago(フォックス32シカゴ)に語った。「しかし、わかるでしょう、私たちはただ公平に扱われたいのです。それだけです」。

画像クレジット:Johannes EISELE / AFP / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

肉体労働を支える、ロボティクススタートアップFJDynamicsが約79億円調達

DJIの元チーフサイエンティストであるWu Di(ウー・ディ)氏が設立したFJDynamicsが、過酷な環境下で働く人々にロボティクステクノロジーを提供するという目標を推進すべく、シリーズBラウンドで7000万ドル(約79億円)を調達した。

同社の農業用ロボットの特徴を尋ねたところ、ウー氏は広報担当者が冷や汗をかきそうな答えを返してきた。「当社のテクノロジーはさほど特別なものではありません」。多大な労力のかかる産業のために、便利かつ安価なロボットを作ることが同社のビジョンだと同氏は話す。

「最先端のAIアルゴリズムを持っていても、業界での経験がないためにその技術が生産ラインや農場で活用できなければ、人々にとって何のメリットもありません」と同氏。

ウー氏がFJDynamicsを始める前に携わっていたテクノロジーは、あらゆる意味で最先端のものだった。ドローン大手のDJIではチーフサイエンティストを務め、そこで同氏は2017年にスウェーデンのフォーマットカメラメーカーであるVictor Hasselblad ABの買収を監督している。中国に戻る前の10年間をスウェーデンで過ごしており、その間にドメインスペシフィック・プロセッサーデザインの博士号を取得。また、ファブレス半導体メーカーのCoresonic ABで副社長、スウェーデンの高級スポーツカーメーカーKoenigsegg ABでディレクターを務めた経歴を持つ。

「これだけの一流技術を目の当たりにした後で、FJDynamicsをハイテク企業と呼ぶのはおこがましい」と語る創業者。色あせたチェックのシャツに細縁の眼鏡という姿で取材に応じてくれた。

私たちが座っていたのは数台のデスクが置かれた仮設のミーティングルームだ。オープンプランのオフィスが可動式の壁で仕切られている。テクノロジーの中心地である深圳にある同社は急速に事業を拡大しており、従業員も1000人に近づいている。

FJDynamicsの 創業者兼CEOのウー・ディ氏

2019年、ウー氏はDJIを離れ、FJDynamicsを創設した。同社は当初より農業用ロボットに焦点を当て、無人の芝刈り機や果樹園の噴霧器、飼料押し出し機などのツールを作っているが、徐々に建設業や製造業など、肉体労働に大きく依存するその他の分野にも進出している。

北京が国内の伝統産業のデジタル化を推進する中、FJDynamicsのような中国企業は投資家から熱い視線を浴びており、FJDynamicsにもTencentや国有自動車メーカーのDongfeng Asset Managementなどの有力な投資家が名を連ねている。DJIは初期の段階で同社に出資していたものの、その後株式を売却している。

関連記事:アグリテック企業FJ DynamicsにTencentが投資

同社は今回のシリーズBラウンドにおける単独投資家名を明かしておらず、中国の大手インターネット企業であるとのみ伝えている。今回の資金調達により、同社は「農業、施設管理、建設、園芸などの分野で、ロボットによる自動化テクノロジーを成長させるとともに、60カ国以上で提供している同社のESG製品の需要拡大をサポートする」ことができると話している。

これまでに多くの技術系の人材が、自分の会社を立ち上げたり他のスタートアッププロジェクトに移籍したりするためにDJIを離れている。ポータブルバッテリーメーカーのEcoFlow、ヘアドライヤーのZuvi、電動歯ブラシブランドのEvoweraなどはその代表的な例である。ウー氏は世界最大のドローン企業であるDJIの名誉あるポジションを去った理由として「高級品」を作ることへの違和感を挙げている。

「ロボティクステクノロジーは、多くの企業によってドローンや自律走行車に活用されていますが、 地球上の大多数の人はその恩恵を受けていません」。

「農業、建設業、園芸業といった分野の労働条件は肉体的に厳しく、このような仕事をしている人はまだ大勢います。ロボティクステクノロジーを使って彼らの労働環境をいかに改善するかということが問題であり、また単にロボットに置き換えるということでは解決しません」と創業者は話している。

買収したスウェーデンの農業会社SveaverkenのロゴがプリントされたFJDynamicsの牛用フィードプッシャー

FJDynamicsの人気製品の1つに自動フィードプッシャーがある。高品質な牛乳を生産するためには1日に約10回の給餌が必要となり、そのためには24時間体制でスタッフを配置する必要がある。例えば500頭の牛を飼っている牧場なら牧草を与える人が交代制で3人ほど必要になるが、貧しい国ではそれほど多くのスタッフを配置することができず、寒い季節でも1日中牛の世話をすることになる。

FJDynamicsは農家の仕事を少しでも楽にしたいと考えている。1台約2万ユーロ(約255万円)のビジョンガイド式フィーダーは、1日に最大500頭の牛に餌を与えることができる。2019年、同社は110年の歴史を持つスウェーデンの農業会社Sveaverkenを買収しており、これがFJDynamicsの飼料押し出しロボットの実用化に貢献した。

「当社のお客様とは、テクノロジーについてお話ししたことがありません。農家の人々は、作物の収穫量を向上させるのに役立つかどうかという点により関心があるのです。農家さんは皆、経済家なんです」。

「テクノロジーを手の届きやすい価格で」というビジョンを掲げているため、利益率は「控えめ」で、そのため経営陣は運用コストに対して慎重だ。

現在、売上の約40%が中国以外の約60カ国で展開されている同社。海外に進出する中国企業の多くは「中国」と名の付くものへの反感を恐れてその出自に対して用心深くなっているのだが、ウー氏はより積極的なアプローチをとっている。

「10年間ヨーロッパに住んでいようと、自分のアイデンティティを変えることはできません。そんなことは重要ではなく、中国人でも米国人でもスウェーデン人でも、顧客の利益となる優れた製品を作り続けていれば、ユーザーは必ずい続けてくれるのです」。

特に企業のグローバル展開においては、データのコンプライアンスが重要な鍵となる。FJDynamicsはハードウェアとソフトウェアを提供し、現地のパートナーがデータを使った「システム」の展開を支援する。中国国外ではMicrosoft Azureが主なクラウドパートナーとなっており、それにより「GDPRなどのデータプライバシー要件を満たしながら、弾力的な展開が可能に」なっているという。

「データを欲しないというのが我々の企業文化です」とウー氏。

高度なプロセッサーを必要とするスマートフォンやドローンとは異なり、FJDynamicsの製品には中国で手に入る比較的シンプルなチップが使用されているため、昨今のサプライチェーンの混乱の影響を受けにくいと創業者は考えている。

現在は最先端のテクノロジーを開発しているわけではないが、自身の知識を伝える方法を模索しているウー氏。農業ロボットを開発する合間に、深圳の南方科技大学で講義を受け持つこともある。

「私は製品(FJDynamics)と教育という2つのことにフォーカスしながら、シンプルな生活を営んでいます。さまざまなことを目にしてきましたが、人はお金で変わることはできず、また幸せになることもできません。シンプルな目標を持つことが重要で、そういったシンプルな目標の達成が人を幸せにしてくれるのです」。

画像クレジット:FJDynamics

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

シフトワーカーと雇用主をマッチングするマーケットプレイスShiftsmartが107億円獲得

先に始まったホリデーショッピングシーズンの結果はいまひとつだったが、雇用主は依然として労働者を切望している。

The Great Resignation(大退職時代)」の影響もあり、労働市場が逼迫していることから、雇用可能な労働者と雇用主と結びつける、テクノロジーを駆使したツールの必要性が高まっている。

ニューヨークを拠点とする労務管理会社Shiftsmart(シフトスマート)は、投資家の関心をひき、シリーズBで9500万ドル(約107億円)を獲得した。同社は、さまざまな業種や仕事の時間給労働者を、空きがあるシフトとマッチングする労働力管理ソフトウェアを提供している。

2015年の創業以来、同社は50カ国以上で50万人以上の労働者のネットワークを築いてきた。労働者は、働く場所、働く量、給料を受け取るまでの期間を柔軟にコントロールでき、雇用者は、人材ニーズをカスタマイズして離職率を下げることができる。

「需要側にはすでにさまざまな要素が存在していましたが、供給側、つまり労働者にこそイノベーションがあると考えました」とShiftsmartの創業者でCEOのAakash Kumar(アーカシュ・クマール)氏はTechCrunchに話した。「私たちは、ソフトウェアを扱いやすくしました。ユーザーは、プロフィールの作成やアプリの起動ができますし、好きなときに作業できます。ギグエコノミーはポイント・ツー・ポイントの物流でした。私たちがこれから進めるのは、自分のスケジュールをコントロールできるようにすることです」。

今回の資金調達により、Shiftsmartの調達総額は1億1700万ドル(約132億円)となった。今回のラウンドは、D1 Capitalがリードし、Imaginary Ventures、Spieker Partners、Oakridge Management Group、S12Fの他、業界の経営幹部層や組織が参加した。

S12FのマネージングパートナーであるJeff Leventhal(ジェフ・レベンタール)氏は、労働者のエンパワーメントと待遇を信奉している。Shiftsmartのアプローチは、労働者の1日の中に柔軟性をもたらすだけでなく、さまざまな企業や役割で働く機会を与えてくれると考えている。

「『午後2時に出社しないとクビ』というようなシフトワークの日々は、もはや時代遅れの概念なのです」と同氏は話す。

「正しく対処するのが難しいことの1つに、ユーザーエクスペリエンスがあります。Shiftsmartは世の中の標準を設定します」と付け加えた。「この会社は独自の方法で正しく始めました。マーケットプレイスを構築し、機能させるのは難しいことですが、同社のテクノロジーは、雇用者と被雇用者の双方に柔軟性をもたらします」。

Shiftsmartの顧客リストには、Circle K、Humana、Deloitte、Airbnb、Small Business Administrationなどが名を連ねる。同社は約3年前にベンチャーキャピタルから資金を調達したが、売上高が毎年2〜3倍のペースで増加したため、新たな資金調達を検討する時期を迎えたとクマール氏は述べた。特に最近では、雇用者が労働力不足に直面していることもある。

「私たちは、雇用主に仕事をシフトレベルまで分解してもらい、市場全体の規模を拡大する手助けをしています」とクマール氏は付け加えた。「週40時間働いて2週間ごとに給料をもらう人を見つけるよりも、週に数回、3時間のシフトに入ってくれる人を見つける方が、はるかに確率は高いでしょう」。

今回の資金調達は、監査と契約、小売、国際物流などの新しい業種への拡大と、ヘルスケアなどの新しい業種への進出に充てられる。また、追加の採用も行う。現在の従業員数は60人で、1年前の約30人から増加した。

人材紹介のために開発されたテクノロジーの多くは、知識労働者を中心としたものだったが、Shiftsmartのように時間給労働者に焦点を当てる企業も、最近では投資家の注目を集めている。

例えば、11月には、シフト登録のためのメッセージングプラットフォームWhen I Workが2億ドル(226億円)という巨額のラウンドを完了した他、レストラン従業員向けツールのFountainSeasonedがそれぞれが8500万ドル(約96億円)と1870万ドル(約21億円)を獲得した。2021年の初めには、Homebaseが7100万ドル(約80億円)を調達し、ホームサービスのプロに特化したWorkizが1300万ドル(約15億円)を調達した。

こうした競合他社や、自社で時間給労働者を管理する企業がある中で、クマール氏は、Shiftsmartの差別化のポイントは、顧客との提携方法だと話す。顧客はShiftsmartの労働力と自社の労働力のいずれに関しても、このプラットフォームを利用することができる。

「今はこのビジネスにとってエキサイティングな時期です。世界的な労働力不足は危機的状況になっています」とクマール氏は付け加えた。「私たちの主な焦点は、需要をに応えるためにオペレーションをいかにスケールアップするか、そして労働者の行動をもっと学び、よりユニークな体験を生み出すことです」。

画像クレジット:picture alliance / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

ますます活躍する時間給労働者のシフト調整などを行うメッセージアプリ「When I Work」が約226億円調達

時間給労働者は全労働人口の約55%を占めているが、仕事の世界のために構築されたテクノロジーに関しては、いわゆる知識労働者がその空間を支配している。米国時間11月1日、前者のニーズに特化して作られたアプリを提供する企業が大規模な資金調達ラウンドを発表した。ビジネスソフトウェアの進化する展望、そして時間給労働者とシフト制労働者がますます活躍していることを示すものだ。

When I Work(ウェン・アイ・ワーク)は、企業に雇用されている時間給労働者のシフトへのサインアップ、同僚とのシフト交換、シフトに入れないときの経営者や他者への通知などを可能にする、広く利用されているメッセージングプラットフォームだ。同社はこのほど2億ドル(約226億円)の資金調達ラウンドを完了した。この資金は事業開発とプロダクトの拡充に充てられる。

今回の資金は単一の投資家であるBain Capital(ベイン・キャピタル)、具体的にはそのTech Opportunities Fund(テック・オポチュニティーズ・ファンド)によるもので、両者は評価額を明らかにしていないが「過半数の成長投資」と説明しており、約4億ドル(約451億円)を示唆している。When I Workの収益性は好調で、2020年の6月から続いている、とCEOのMartin Hartshorne(マーティン・ハートショーン)氏はインタビューで語っている。パンデミック渦中の生活と経済の不確実性の深刻さを考えると注目に値するものだ。11年前に2400万ドル(約25億円)ほどの資金を調達後、同社が確保した堅調な伸びが、今回の資金調達の理由につながった。

「当社は新たなフェーズに入りました」と同氏は述べ、現在の成長率は「35%を超えて」おり、利益を生み出していることを明らかにした。「顧客はプロダクトを気に入り、企業文化は実に優れています。すばらしいものを手に入れて、新しい段階に挑戦する時を迎えました」。

これまでの投資家にはArthur Ventures(アーサー・ベンチャーズ)、Drive Capital(ドライブ・キャピタル)、Greycroft(グレイクロフト)、High Alpha(ハイ・アルファ)などが名を連ねている。

2010年にミネアポリスで創業したWhen I Workが提供するアプリは、小規模ビジネスや有名どころのフランチャイズ(Dunkin’[ダンキン]、Ace Hardware[エース・ハードウェア]、Ben&Jerry’s[ベン&ジェリーズ]、Kenneth Cole[ケネス・コール]など)を中心に、全米の約20万のビジネスで約1000万人の時間給労働者に利用されている。その成長の一部は、特に市場のニーズの変化に起因している。一部の小売業者は事業を閉鎖せざるを得なくなり、完全に閉鎖したところもある一方で、ヘルスケアなどの他のセクターは勢いを増してきた。

2021年の第2四半期に同社が「ワクチン接種オペレーションのスピンアップ」としてシフトベースのシステムを構築し、50社を超える顧客を獲得したことにハートショーン氏は言及した。同社は計画として、米国におけるオポチュニティの強化を継続し、国際的な展開で他の市場への進出を開始することを視野に入れている。

アプリ自体に関しては、主にシフト制や時間給のスタッフとのコミュニケーションを容易にするためのツールの提供において、その存在を認められてきた。こうした人々の勤務時間の特徴として、会議時間に合わせて全員が同時に仕事をしている可能性は低く、仕事中のスケジュールも変動する可能性があり、顧客のトラフィックや従業員自身の状況に応じてシフトする必要のあるスケジュールも存在する、という側面がある。

その名が示すように、When I Workの最も使用されている機能はシフト管理とチームとのコミュニケーションであり、このセグメントの労働者にとって最大かつ最も一般的な生産性の課題に対処している。しかし、時間の経過とともに、同社はオーディエンスとエンゲージメントを活用して他のサービス、例えば給与管理の促進(より特化した給与管理ソフトウェアとの相互接続)、労働レポートやアナリティクスを追加してきている。この部分は、自律的な成長としても、そしておそらく買収という形での成長としても継続していく要素として見込まれている。

仕事の世界に対応するソフトウェアは、この10〜20年の間、いわゆる知識労働者に主に焦点を当ててきた。コンピュータやスマートフォンを装備し、ソフトウェアやアプリに依存する仕事に縛られているこのセグメントは、より多くのソフトウェアツールに自然に適合してきたものの、どちらかといえば時が経つにつれて専門化されるだけであり、特定の業界やユースケースに対応するものとなっている。

しかし、デジタル変革および一般の人々の間のスマートフォン利用の増加は、職場におけるソフトウェア向けのプロダクトやユースケースの幅を広げ、より広い範囲の労働者の利用につながる新たなオポチュニティを数多く提供している。全体として、人々は日々の仕事以外の生活の中でアプリやその他のデジタルプロダクトを使用する方向にシフトしており、そうした人々はまた、自分たちの仕事をより簡単にするためのツールを求めていて、それを受け入れる準備もできている。

When I Workの場合、従業員は自分のスマートフォンにアプリをインストールする。これは、このカテゴリーの労働者の間で個人所有デバイスの持ち込みが知識労働者よりもさらに強い傾向にあることを示している(ログイン方法は他の仕事用アプリと同様で、自分が働いている会社と自分の携帯電話番号やメールの情報に基づいている)。ハートショーン氏によると、成長の大部分は口コミによるもので、以前の仕事で同社のアプリを使ったことがある従業員が、新しい雇用主にその導入を勧めているという。

しかしそのより広範なトレンドを考えると、競合他社が存在することは驚くに値しない。またそこまでの存在にはまだ至っていないものの、同じセグメントの労働者に対応していて、競合相手となるポテンシャルがある企業も存在する。その中には次のような企業が含まれている。2021年初めに7100万ドル(約80億円)を調達したHomebase(ホームベース)、ホームサービスのプロに特化したWorkiz(ワークイズ)、現在は採用およびフルタイム以下の従業員のシフトへの登録を主な目的としているFountain(ファウンテン)とWonolo(ウォノロ)、WorkWhile(ワークホワイル)、現在はフロントラインの労働者のための生産性プラットフォームとして機能しているYoobic(ヨービック)、Squareが2021年初めに買収したCrew(クルー)、現在700万の有料ユーザーを擁するWorkplace(ワークプレイス)、そして9月に上場申請を行ったJustworks(ジャストワークス)。これらの中には同じユーザー層を対象としながらも機能が異なるものもあるという事実は、When I Workのロードマップのようなものを提示しており、それがどのように拡張され得るかも示している。

Bain Capital Tech Opportunities(ベイン・キャピタル・テック・オポチュニティーズ)でマネージングディレクターを務めるPhil Meicler(フィル・メイクラー)氏は、 When I Workのエンゲージメントが、この大きなフィールドで同社のアプリをより魅力あるものにしていると語っている。When I Workは、ユーザーの85%が少なくとも週に1回ログインし、利用するアプリとなっている。

「今日の現代的なワークフォースにおいて、これほどあきらかな生産性向上と強い従業員エンゲージメントをもたらすソリューションは他に類を見ないものです」。時間給労働セクターの労働力不足が最近ますます深刻になっていることを指摘しながら、メイクラー氏は続けた。「それを大規模かつ効率的に行うことは、実行に困難をともないます。成長と収益性の組み合わせは、When I Workに私たちが大きな期待を寄せた理由の中核部分でした」。

同氏はまた、BainはHRスイートの拡大継続を目指して「マーティン(・ハートショーン)氏のビジョンを共有している」と付け加えた。「その目的は、従業員が他に何を使うのか、彼らの生活をより楽にするために私たちはどのように拡張できるのかという、従業員の目を通してプロダクトを構築することに置かれています。そしてWhen I Workにはスケジューリングのすばらしい基盤があります。自律的に、またM&Aを通じて成長していくための独自のオポチュニティを同社は有しています」。

画像クレジット:Dunkin’

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

【コラム】中国の労働文化の未来、労働者と経営者の間で揺れ動く労働規則

2021年8月下旬、中国の最高裁判所(最高人民法院)は、中国で最も悪名高い労働慣行の1つを違法とする判決を下した。

中国には「996」という略語があり、週6日、午前9時から午後9時までの勤務時間を示す。中国で急成長しているテック企業によって広められた「996」は、ストックオプションプランを持つ都会のスマートなスタートアップ企業の従業員がIPO(新規株式公開)や資金調達で億万長者になることを目指し、がむしゃらに働く姿をよく思い起こさせる。しかし「996」については、雇用者と従業員がそれをどのように理解し、適用するか、また規制当局がどのように見ているか、徐々に改善が見られる。


実際、8月26日の最高裁判決と人的資源・社会保障部から発表されたガイドラインは、テック企業とその高学歴で高給取りの従業員に影響を与えるだろう。しかし、この訴訟自体は、デジタル経済の階層のかなり下位に位置する労働者(中国主要37都市の平均を少し下回る月給8000元[約1240ドル、約14万2000円]の物流作業員)を対象としたものだ。

中国の規制当局は、雇用者と被雇用者の双方に対し、両者の関係を定義するルールを変える必要があるというメッセージを送っているようだ。最近の中国における多くの事例からわかるように、中国の指導者は、行動だけでなく、中国社会の中核を成す理念、心理、インセンティブ構造の変化を求めている。しかし、それがどのようなものなのか、具体的にはまだ見えてきていない。

オオカミのようなハングリー精神(文化)

画像クレジット:VCG/VCG / Getty Images

多くの中国企業を特徴づけている過酷な労働文化の結果であろうと、多くの企業が模倣した先駆的な例であろうと、Huawei(ファーウェイ)ほど996の労働文化の精神、メリット、潜在的な弊害をよく表すケーススタディはないだろう。

「オオカミの文化」として知られる、深圳(シンセン)を拠点とする通信業界の巨大企業は、その猛烈ぶりを特徴としている。「オオカミの文化」の意味は、誰に聞くかによって答えは変わる。好意的な解釈をすれば、それはある種の絆であり、チームメンバーを共通の目標に向かって協力し合う「群れ」と例えていると考えられる。しかし人によっては、もっと残酷な意味を持つ場合もある。2017年のファーウェイでの取材では、同社のある元社員は「ファーウェイでは『オオカミ文化』とは『食うか食われるか』という意味だ。社内の全員が互いに激しく競い合えば、外部からの脅威との戦いや競争に強い会社になるという考え方だと思う」と説明してくれた。

従業員がどのように考えているかにかかわらず、ファーウェイの文化の中核にある猛烈ぶりは、同社の成功に寄与してきた。同社の競合企業である欧州のEricsson(エリクソン)やNokia(ノキア)が、融通の利かない官僚主義、または独善的と批判されてきたのとは対照的に、ファーウェイはどんな困難が予想されてもプロジェクトを勝ち取って実現しようとする意欲を示し、世界中の通信ネットワークプロバイダーから支持された。

中国政府からの低金利の融資や自国市場での収益性の高い事業という好条件を生かし、海外事業への資金を得ることができたが、会社の文化を支える極端な熱意には競争原理もあり、他の中国企業が「996」という形でそういった精神を模倣した理由も説明できる。

ファーウェイをはじめとする中国企業は、今では一部の分野で最先端のイノベーターとみなされているが、創業当初は海外の同業者に技術力や知識で遅れをとっており、その克服に奮闘の日々が続いた。しかしその後、独自の技術や高度な技術での優位性はないものの、コストやスピード、そして発展途上国では特に厄介なビジネス上の障害を回避する柔軟性を発揮し、競争力を獲得した。

「中国のテック企業は、製品よりも実行力に価値を見出しているようだ」と、中国とシリコンバレーの両方でスタートアップを立ち上げたドイツ人起業家のSkander Garroum(スカンダー・ガロウム)氏はいう。そして「米国を中心としたテック企業のサクセスストーリーでは、1人の天才がすばらしい製品を生み出し、オープンなインターネットとオープンな経済のおかげで、単に製品の明確な優位性が広まることで規模を拡大していくというものが多い。しかし、中国や発展途上国の市場は、障壁が多く、オープンではないため、製品の良し悪しだけでなく、チームがどれだけうまく機能し、どれだけ一生懸命働いたかが規模の拡大では重要になる」と説明する。

このような話は真実を誇張して伝えられることも多いが、ライバル企業を凌駕しようとする姿勢は、多くの中国企業において誇るべきものとして見られている。ライドシェア企業であるDidi Chuxing(ディディチューシン)は、2010年代半ばの中国市場でのUber(ウーバー)とのシェア争いで名高い勝利を収めたが、そこには多数の要因があった。しかし、多くの関係者に聞いたところ、その答えは、単にローカルレベルでより良い仕事をしただけであり、ウーバーが戦い続ける価値がないと判断するまで、より激しく戦おうとしただけだというものが多い。

多くの企業は、それぞれの労働倫理とハングリー精神に基づき、特別優れた経歴は持たなくても、自分の身分を超えて高みを目指す人材を積極的に採用している。例えばファーウェイは「四線都市」や「五線都市」(6つの階級の内下位の2級)の若くて優秀な「第一桶金(人が大金を稼いだり、中流階級になったりする最初の機会)」を狙う人材を対象に採用活動を行っていることで知られている。

中国が成長し、企業が世界的に地位を高めると、過酷な労働時間ではあるものの、手厚い報酬を得ることができ、多くの中国国民が「第一桶金」の夢を叶えることができた。ファーウェイの従業員持株制度に登録している古くからの従業員の場合、年間の配当金は数十万ドル(数千万円)から数百万ドル(数億円)に上り、多くの場合、給料を上回っていたことが知られている。がむしゃらに働き、その苦労は報われたということだ。

企業による搾取を目的としたシステム

悪名高い過酷な労働文化で知られる中国では、法律上、労働者の権利が非常に保護されているというのは、直感的には意外に感じるだろう。実際、それらの法律はほとんど効力を発揮していない。

厳密にいえば、労働時間が標準的な週5日、40時間を超えた場合には残業代が支払われることになっているが、企業は法的義務を逃れるために、公式、非公式を問わず数多くの方法を利用することが知られている。

ファーウェイの場合は「striver pledge(努力家の誓約)」と呼ばれるものがある。これは、新入社員がおそらく表向きは「自発的」に署名する契約書であり、残業代や有給休暇の権利の行使を差し控えるというものだ。ファーウェイはこのような方法で注目されているが、同様の方法は一般的に行われており、ファーウェイほどの特典や出世の道を提供していない企業では特に多いようだ。

中国の国内企業と外資系企業の両方で働いた経験を持つキャリア豊富なある人事マネージャーは「当社の[ブルーカラーの]従業員の場合、残業代はすべて毎月の給料に含まれると契約で定められている」と説明しつつも「良いことではないが、私の知る限り、中国ではかなり標準的なことだ」と述べる。

労働法を逃れるもう1つの方法は、経営者に圧倒的な力を与える業績評価基準を作ることだ。「中国の企業では、欧米にならい業績管理に『成果物』の概念を取り入れているが、その解釈を極端に拡大することがよくある」と、かつて2つの大規模な中国欧州合弁企業で人事を統括していた女性幹部は語る(なお、この女性幹部も、この記事の多くの取材協力者と同様に、デリケートな政策問題について自由に話せるようにと匿名を希望した)。また「しかし『成果物』は多くの場合、達成できないだろう。従業員の「成果」が満足できるものかどうかは、管理職の判断に委ねられているためだ」とも述べる。この女性幹部は、自分のキャリアを通じてこのような慣行を阻止してきたといい、多国籍企業よりも中国のローカル企業でよく見受けられたと付け加えた。このような社内力学が働いた状況であれば、無数の搾取が行われている可能性があることは想像に難くない。

組合の利用を選んだ人たちは、企業だけでなく、国とも対立することが多い。中国では独立した労働組合は機能上違法であるが、国営の中華全国総工会(ACFTU)は以前から労働争議における労働者への支援に一貫性がないといわれている。

2019年、ファーウェイに13年間勤務した元従業員の李洪元氏が、退職金の交渉中に同社を脅迫したという容疑で251日間拘束された。検察当局は、不正行為を示す十分な証拠は確認できなかったとし、最終的に同氏を釈放したが、同氏の長期拘留のニュースを受け、ネット上ではファーウェイに対する激しい非難の声が上がった。

名目上は社会主義国である中国では、近年、労働問題に対する国民の不満が高まりつつあるようだ。2018年、エリート校である北京大学の警備会社が、中国南部での労働運動家への弾圧に抗議していた同大学のマルクス主義団体による抗議活動を取り締まった。また、GitHub(ギットハブ)に「996.ICU」というリポジトリが作成され、テック企業の過酷な職場環境に苛立っていた従業員らが不満をぶちまけ、非道な態度をとる会社に対して注意を喚起するためのオンラインフォーラムとして人気を博した。中国全土の疲れ切った若者たちの間では、一昔前の世代に見られるプレッシャーや野心を拒否する「躺平(タンピン、寝そべる)」というトレンドが人気を集め、政府は主要新聞でこの動きを激しく非難している

シュレーディンガーの労働時間:明記された法律と暗黙の規範

少子化を食い止めるために家庭に対する抑圧を軽減する必要性が増したことから、当局は中国における労働関係を規定してきた暗黙のルールを変えようとしている。

8月26日の判決を受けて、多くの企業が公式の方針を変更するために迅速に動いた。しかし、多くの企業や業界にとって、それ以上に大きな課題として立ちはだかるのは、文化や期待の問題だ。

TikTok(ティックトック)の親会社であるByteDance(バイトダンス)は、これまで公式に週6日制をとっていたことが知られていたが、この方針に終止符を打った。しかし、これは従業員らにとって必ずしも喜んで受け入れられるものではなかった。というのも、従業員は、勤務日数が減る代わりに、それに相応する給与の削減も受けたからだ。

中国の複数のインターネット企業で働いた経験のあるZhou(周)という名の女性は「私たちの多くは、納得した上でインターネット企業で働いている」とし「一生懸命働かなければならないことはわかっているが、その代わりにもっと多くのお金を稼ぐチャンスもあるはずだ」と説明する。そして「もし違うことを望むのであれば、別の会社で働くことにしていただろう」と、バイトダンスの一部の従業員が労働時間と給与の減少に憤慨するのは理解できるという。

一部の中国の技術系従業員の目には、労働時間に関する政府の厳しい要求に従うよう企業に対する圧力が強まることは、直接的な報酬に反映されない非公式な労働時間が増えるだけではないかと映っている。「知る限りでは、自分や自分のチームには何の変化もない」と、米国に上場している中国の人気インターネット企業の従業員は語る。「週末も働いているし、休日(10月1日の国慶節)にも働く予定だ。公式な休日だからといってビジネスが止まるわけではない」といい、また、時間外労働に対する残業代は「もちろん」ないと付け加える。

「ビジネスが止まるわけではない」という考えがあるからこそ、政府の規制が技術系従業員の労働条件改善に効果があるかどうか、疑問を抱く人もいるのだ。「バイトダンスは正規の労働時間と給与を減らしているが、何も変わらなければ何も問題はない」と、周氏は率直に述べ、そして「みんな仕事を続けたいし、昇進したいと思っている。だから当然、働けるだけ働く…あるいは、もっと給料の高い会社に移るだろう」と語る。

しかし、管理職に昇進すると、最近の政府からの指令を法律の文言と精神の両面から真剣に受け止めようとする傾向が非常に強くなる。「企業はこの問題に取り組んでいることを示さなければならないし、そうしなければ当局から見せしめにされる恐れがある」と、中国欧州合弁企業の人事担当者は語る。「人事部は全社的な監査を行い、従業員の勤務時間を明確に把握すべきだ」とし「最もありそうな対応は、少なくとも短期的にでもより多くの人を雇用し、それぞれが短い時間で働くことだろう」と付け加える。

しかし、多くの人が同意しているのは、中国の全体的な傾向だろう。習近平国家主席が「共同富裕」を唱え、巨大国営企業に通告しているように、中国の高成長時代は終焉を迎えようとしているようだ。しかし、政府がどの程度の変化を求めているのかはまだわからない。中国政府は久しぶりに、国営企業コミュニティに対し、今後は労働者よりも企業を圧倒的に優遇するようなことはないというシグナルを発している。問題は、その優遇措置のバランスをどの程度まで調整するかということだ。

画像クレジット:d3sign / Getty Images

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(文:Elliott Zaagman、翻訳:Dragonfly)

オランダ裁判所がUberドライバーは従業員と判断、Uberは控訴の意向

Uber(ウーバー)がドライバーの雇用ステータスをめぐる欧州での裁判でまたも敗訴した。オランダのアムステルダム裁判所は、Uberドライバーは自営の請負業者ではなく従業員であるとの判断を示した。

アムステルダム裁判所はまた、ドライバーにはオランダの既存の労働協約が適用されるとの見解も示した。この労働協約はタクシードライバーに関係するもので、賃金要件を定め、傷病手当などの福利厚生をカバーしていて、この協約を満たすためにUberがコストの増大に直面することを意味している(一部のケースでは過去にさかのぼってドライバーに給与を払う責任が生じるかもしれない)。

裁判所はUberに費用の5万ユーロ(約650万円)の支払いも命じた。

配車サービス大手のUberは、アムステルダムで4000人のドライバーを同社プラットフォームに抱える。

乗客とタクシーサービス提供者を結びつけるテクノロジープラットフォームにすぎず、ドライバーは「書面上」自営業者だというUberの慣習的な主張をアムステルダム裁判所は却下した。

裁判官は、ドライバーによって提供されるサービスの性質と、ドライバーがどのように働き、稼ぐのかについてUberがアプリとアルゴリズムを通じてコントロールしている点を強調した。

欧州の最高裁判所は2017年に、Uberは輸送サービス事業者であり、地域の運送法を遵守しなければならない、と裁定した。なので、あなたが今回デジャブ感に陥るのはもっともだろう。

関連記事:ヨーロッパのUberに打撃、EUの最上級審が交通サービスだと裁定

オランダでの訴訟は2020年に全国労働組合センターFNVがおこし、6月末に審問が始まった。

9月13日の声明文で、FNVのバイスプレジデント、Zakaria Boufangacha(ザカリア・ボウファンガチャ)氏は次のように述べた。「判決には我々が何年もの間主張してきたことが書かれています。Uberは雇用主であり、ドライバーは従業員です。ですので、Uberはタクシー業界の労働協約に従わなければなりません。また、こうした種の事業運営は不法であり、ゆえに法律が強制されなければならないという国際司法裁判所へのメッセージでもあります」。

Uberには今回の判決に対するコメントを求めている。記事執筆時点で返事はなかったが、ロイターによると、Uberは控訴する意向であり「オランダでドライバーを雇用する計画はない」と述べた。

【更新】Uberは控訴することを認め、広報担当は「控訴によってアプリを使うドライバーへの影響はありません」としている。

Uberの欧州北部事業を担当するゼネラルマネジャーであるMaurits Schönfeld(マウリッツ・ショーンフェルド)氏は次のように述べた。「ドライバーの圧倒的多数が独立事業者であることを望んでいて、今回の判決に失望しています。ドライバーは、働くかどうか、いつ、どこで働くかを選ぶ自由を手放したくはありません。ドライバーの利益のために当社は控訴し、その間、引き続きオランダでのプラットフォーム労働を改善させます」。

Uberは英国で、何年にもわたる雇用分類をめぐる一連の裁判で敗訴してきた。そして2021年2月、最高裁判所で同社の敗訴が確定した。

判決を受け、英国ではドライバーを労働者として待遇するとUberは述べたが、論争は続いている(労働時間の定義などをめぐって)。5月に同社は、英国の労働組合を認めると初めて述べた。

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しかしながら欧州のあちこちでUberは雇用訴訟を続けていて、プラットフォーム労働の規制緩和を求めて欧州連合の議員らにロビー活動を行っている

プラットフォーム労働を改善する方法を見つけたい、とEUは述べている。ただ、汎EU「改革」がどのようなものになるかはまだ判然としていない。

欧州委員会はプラットフォーム労働の代表者に質問してきた。

「ロビー活動に巨額を投じていること、EUレベルでさらに多くのリソースを投入していることは明白で、デジタル労働プラットフォームは明らかに懸念されるものです。Uberももちろん含まれますが、こうした企業はプラットフォーム労働に関する政策への影響を及ぼすためにロビー活動しているグループへの新たな基金の設置で協力しています」とアムステルダム大学でデータ権を研究しているJill Toh(ジル・トー)氏は判決後にTechCrunchに語った。

「Uberはカリフォルニア州でのProp 22キャンペーンで巧みに法律を修正し、欧州では他の企業とともに同じことをしようと企てています。プラットフォーム労働者規則に関係する2つの協議で委員会はテック企業とだけ話していて、労働組合や他のプラットフォーム労働の代表者と会合を持っていません」。

「こうしたことは非常に問題があり、ECの協議がプラットフォーム労働について方向を示す結果になれば特に懸念されるものです。全体としては、勝訴は労働者にとって重要ですが、欧州委員会に及ぼす企業パワーや影響力、こうした判決への公的執行の欠如の問題は残っています」とトー氏は付け加えた。

【更新】欧州委員会の広報担当はTechCrunchに対し、デジタル労働プラットフォームを通じて働いている人のための労働条件をどのように改善するかについての第2ステージの協議はまだ継続中(9月15日まで)だと述べた。

「協議の結果次第で委員会は2021年末までに提案を進める意向です」と広報担当は付け加えた。

「協議第2ステージの目的は、欧州でのデジタル労働プラットフォームの持続可能な成長をサポートしつつ、プラットフォームを通じて働いている人々がどのようにしてまともな労働条件を確保するか、ソーシャルパートナーの意見を集めることです。こうした意味で、ソーシャルパートナーは、雇用ステータス分類の促進や、労働と社会保護の権利へのアクセスといった分野で、EUレベルのイニシアチブとなる可能性のある内容について意見を求められます」。

広報担当者はまた、欧州委員会が加盟国での動きを注視しており、加盟国の分析作業を考慮している、とも付け加えた。画像クレジット:JOSH EDELSON/AFP / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

ギグワーカーを非従業員とするカリフォルニアの条例Prop 22を高裁が憲法違反と判決

UberやLyftなどギグワーカーを軸とする企業に米国時間8月20日の夜遅くショックが訪れた。高等裁判所の判事が、2020年に成立してギグワーカーの雇用ステータスに対する論争の多かったAB-5法を、否定する目的で成立させたカリフォルニア州第22条令(Prop 22)は州の憲法に違反していると裁定した。

関連記事:ギグワーカーの権利を護る法案がカリフォルニア州上院を通過

オークランドやバークリーなどイーストベイの多くをカバーするアラミダ郡の高裁判事Frank Roesch(フランク・ローシュ)氏は「その法(Prop 22)が、将来の議会がギグワーカーの雇用ステータスを定義する力を制限する」と裁定した。この訴訟は2021年1月にService Employees International Union(SEIU)(サービス業被雇用者国際組合)が起こし、同様の訴訟がフォルニア州最高裁で却下されてから下級審へ回されたものだ。

この法廷の決定はほぼ確実に控訴されるであろうし、今後の法的議論が当然あるだろう。

しかしSEIUのカリフォルニア州評議会の議長Bob Schoonover(ボブ・スクーノーバー)氏は、声明で次のように述べている。「ローシュ判事によるProp 22を無効とする本日の裁定は極めて明確である。ギグ業界が金で買った住民投票は憲法違反であり、したがって施行不可能である。2年にわたりドライバーたちは、民主主義は金で買えないと言い続けてきた。そして本日の判決は、彼らが正しかったことを示している」。

高裁の判決は、UberやDoorDashのようにギグワーカーに大きく依存している企業と、労働者を代表する組合や活動家との間の戦いの、勝ちと敗けの長い々々列の最新のひとコマにすぎない。その議論の中心にあるのは、フリーランサーと従業員との法的な区別であり、それぞれのワーカーに対して企業はどの程度の福利厚生の責任を負うか、という点だ。

その区別がビッグビジネスになっている。UberやLyftなどの企業は2020年Prop 22を勝ち取るために、総額で2億ドル(約220億円)あまりを費消した。カリフォルニアの有権者はその条例を、ほぼ59%対41%で通過させたが、それはギグワーカープラットフォームの大勝利と多くの人びとが受け止めている。

しかしこのような戦いはシリコンバレーの本拠地である州だけの現象ではない。2021年初めに英国では、Uberが従業員の位置づけをめぐる法廷闘争で負けて、その数万人のドライバーが労働者と見なされた。そしてその判決により彼らには、それまで保証されなかった多様な福利厚生が提供された。

画像クレジット:ejs9 / Getty Images / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Uberがドライバーへのインセンティブ支払いによる第2四半期の赤字からの業績回復を計画

Uber(ウーバー)は第2四半期に予想を上回る損失を計上した。パンデミックによるドライバー不足を解消するため、4月に2億5000万ドル(約275億円)の大規模な刺激策を実施したことが大きな要因だ。

調整後EBITDAは5億900万ドル(約560億円)の損失だった。一方、Lyft(リフト)は前日、当四半期の調整後EBITDAを2380万ドル(約26億円)の黒字で計上した。Uberの損失は、アプリベースの配車業界が抱えるより大きな問題を指し示している。それは、ドライバー供給の遅延、ドライバーを集めるためのコスト、迫り来る新型コロナウイルスのデルタ変異株という3つの脅威だ。

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「ドライバーたちが道路に戻りたいと思う気持ちは強くなっています」とCEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は、米国時間8月4日の決算会見で述べた。「6月には、活動休止中のドライバーの60%が、1カ月以内に運転を再開するつもりだと回答しました。4月の40%から増加しました。また、90%のドライバーが9月までに運転を再開すると回答しています。さまざまな指標が複数の市場で上昇しながら通常の水準へと回復し、マイアミ、アトランタ、ダラス、ヒューストン、フェニックスでは待ち時間がほぼ正常に戻りました。しかし、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスなどの大都市では需要が供給を上回る状態が続いており、遅い時間帯の価格は快適な水準を超えています」。

コスロシャヒ氏は、Uberがドライバーに対する「ポスト・パンデミック」のインセンティブを縮小したとしても、ここ数カ月で回復してきたドライバーの勢いは続くと予想していると語った。だが問題は、パンデミックはまだ終わっていないということだ。米国でのワクチン完全接種は人口の50%にとどまる。CDC(米疾病予防管理センター)によると、7月の最後の2週間で、感染力の高いデルタ型が米国内の新型コロナ感染者の80〜87%を占めた。多くのコンピュータモデルは、8月中旬〜9月上旬に感染者数がピークに達し、1日あたりの感染者数が45万人に達すると予測している。

ドライバー不足の原因はロックダウンだけではない。ドライバーらは、微々たる報酬で、パンデミック中に命をかけてまで働きたくないと考えている。Uberが損失を出しながらもドライバーを増やそうとしているのは、Uberがギグワーカーの働く権利を脅かす存在として再び注目されているからだ。Uberは、アプリベースの配車やオンデマンド配送を行う企業連合の一員であり、マサチューセッツ州で今週、ドライバーを従業員ではなく独立した契約者であると定義する投票法案を通すための請願書を提出した。2020年のカリフォルニア州での提案22号と同じことが起こっている。

2013年から運転しているジェイというUberのドライバーはTechCrunchに「私は、人を呼び戻すために使われたインセンティブを受け取りました。脳みそがあるドライバーならほとんどが同じことをしたと思います」と語った。「インセンティブがなくなったところで私は運転をやめました。今や運転をすれば持ち出しになってしまうからです。Uberが料率を大幅に引き下げたので、もはやUberで働くことは意味をなしません。Uberの車をつかまえるのが難しい理由はここにあります。途方もなく遠い存在である億万長者たちが、この会社を潰しつつあるのです」。

こうした状況にもかかわらず、コスロシャヒ氏は、同氏はおそらくジェイ氏がいう「遠い存在である億万長者」の1人だと思われるが、Uberが年内に会社としてEBITDA黒字化を達成する見込みだと投資家に請け合った。同社は「働き手の体験」と呼ぶものへの投資が、労働者のつなぎ留めに役立つと期待している。

「アプリの品質向上に力を注ぐことから、ターゲットを絞り個々人にあわせた関係再構築キャンペーン、安全に稼ぐという目的のためにこれまで以上に簡単かつ迅速になったオンボーディングフローの全面的な再設計、ロゼッタストーンを利用した無料の語学学習、ASU(アリゾナ州立大学)を授業料無料で利用できることなどのユニークなプログラムの展開まで、当社が提供する働き手のためのスーパーアプリは、世界中のドライバーや宅配業者に提供できる収益機会の深さと幅広さにおいて独自性があります」とコスロシャヒ氏は話す。

豪州のシドニーなどの都市での最近のロックダウンのように移動手段が打撃を受け続けることになっても、Uberは貨物、Uber Eats、宅配便などの他の事業に頼ることができるとコスロシャヒ氏は語る。同氏によると、乗車数が減るとUber Eatsや宅配便の注文が増える傾向にあるという。

Uberは2020年11月、オンラインフードデリバリーアプリのPostmates(ポストメイツ)を買収した。同社によると、買収により約500万人の利用者が加わり、16万人の宅配業者と2万5000以上の加盟店がPostmatesからUber Eatsに移行した他、ロサンゼルスとニューヨークでUberがカテゴリーリーダーとしての地位を確立するのに役立ったという。

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また、Uberは最近、食料品、コンビニエンス、アルコール類の配達など、新たな分野にも進出しており、6月の米国でのグロスブッキング(予約総額)は2020年12月の水準から約3倍、英国とフランスでは2倍に増加した。

「私たちが持っている差別化要因はオーディエンスとUberプラットフォームです」とコスロシャヒ氏は述べる。「私たちは、Uberブランド、マーケットプレイスマッチング技術、価格設定技術、ルーティングなどを基盤にデリバリー事業を立ち上げた、最も新しいプレイヤーの1社です。【略】私たちは、他の誰よりも大きなデータセットを持ちあわせています。これにより、マッチング、ルーティング、インセンティブ、マーケティングなど、より個々人に合わせたエンジンを構築することができますし、他の誰よりも優れた機能を備えています」。

「Uberはすべての市場にオペレーションチームを配置しているため、市場ごとに適切な在庫を把握することができます」と同氏は語る。

「その結果、顧客獲得コストの削減、ライフタイムバリューの向上、間接費の削減、技術力の向上が可能になります。これらが差別化につながるのです」。

第4四半期までにEBITDAの目標を達成することに加え、コスロシャヒ氏によると、Uberは会社全体のグロスブッキングが220億〜240億ドル(約2兆4200億円〜2兆6400億円)となり、調整後EBITDAは第3四半期の1億ドル(約110億円)の損失から改善すると見込んでいる。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ギグカンパニーが労働者の身分をめぐりマサチューセッツ州でも住民投票を画策

LyftやUber、Doordash、Instacartなど、アプリによるライドシェアやデリバリーのサービスを提供している企業の連合が、住民投票でギグエコノミーの労働者を独立の契約業者と認めるよう、マサチューセッツ州に請願を提出した。これまで同業界は、カリフォルニア州で同様の住民投票を主導して、勝った経験がある。

その連合の正式名であるMassachusetts Coalition for Independent Work(マサチューセッツ州独立労働連合)が今回住民投票を提案したその約1年前には、労働者の権利を擁護する団体とギグエコノミーの企業が対立し、業界側が数百万ドル(数億円)を投じた高価な宣伝活動により、カリフォルニアの有権者は、Proposition 22と呼ばれる同様の住民投票により、業界の主張を認めた

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LyftやUberなどからなるこの連合のメンバーには、地元各地の商工会議所も含まれ、彼らは米国時間8月3日に、2022年11月に行われる州政府選挙に住民投票の可否が含まれることを要求した。投票にかけられる質問は司法の審査を要し、また住民投票が政府選挙に含めること自体も、有権者の十分な数の賛成票を要する。

8月3日に行われたLyftの決算報告で、共同創業者のJohn Zimmer(ジョン・ジマー)氏は次のように述べている。「私たちの第1目標は、マサチューセッツ州で合法的な解決を見出すことです。私たちが一貫して主張してきたことは、圧倒的多数のドライバーが求めていることでもあり、それは私たちのプラットフォームが提供してきた柔軟性のある所得機会、それ加えて福利厚生です。また私たちは住民投票という方法を求めるだけでなく、マサチューセッツ州議会と緊密に協力して、法律に基づく解決も求めていきたい」。

同連合によると、提案されている住民投票の質問は、アプリを用いるライドシェアやデリバリーのワーカーを独立の契約労働者としながらも、健康保険料の給付など、新たな福利厚生を提供するものになっている。

連合の提案の中には、ドライバーやデリバリー労働者の最低賃金をマサチューセッツ州の最低賃金(同種のアプリベースの労働に対し2023年に、チップを除き時給18ドル、約1960円)の120%であったり、週の労働時間が15時間以上のドライバーへの健康保険料給付などがある。これらの計算にチップは含まれず、チップは全額ドライバーのものになる。また車の維持費や燃料費として走行距離1マイルにつき0.26ドル(約28.35円)以上が保証される。

労働運動家たちは、早くも反発している。NAACPニューイングランド支部やマイノリティ近隣社会組合、マサチューセッツ州移民難民連合など、さまざまな団体からなるCoalition to Protect Workers’ Rights(労働者の権利保護連盟)は8月3日に、住民投票方式には労働者を傷つける問題の文言があると反論した。

同団体によると、それらの文言には抜け穴が多いため実質賃金が最低賃金を下回ることが可能であり、また健康保険の内容が極めて貧弱である。さらにまた、反差別主義者に対する保護が取り去られたり、労働者の補償規則が排除されたり、また企業が何億項にものぼる州の失業対策をごまかすこともありうるという。

UberやLyftを軸とするこの幅広い連合は、労働者の独立契約業者化に関して、住民投票や法制化をロビー活動しているが、同時にまた、2020年提出された訴訟にも直面している。その原告であるマサチューセッツ州司法長官Maura Healey(マウラ・ヒーリー)氏は、賃金と労働時間に関する複数の州法に基づき、UberとLyftのドライバーは会社の従業員(被雇用者)である、と主張した。

州の司法長官事務所によると、UberとLyftは、ドライバーを独立の契約業者と認めるために必要な、州法が定める3つの要件を満たしていない。1つは、独立の契約事業者であるためには労働者は会社の指示やコントロールから自由でなければならない。ビジネスの通常のコースから外れたサービスでも実行できる。そして、同様の仕事を自分自身でやっていてもよい。

Uberは2020年以来、カリフォルニア州のProposition 22に似た州法をマサチューセッツ州でも成立させたい、と匂わせていた。UberのCEO、Dara Khosrowshahi氏は2020年の11月の決算報告で、アナリストたちとともに、同社は「Prop22のような法律を強力に推していく」と言明した。その後彼は「米国と世界のすべての政府と協力してこれを実現したい」と付言した。

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タグ:マサチューセッツギグワーカーギグエコノミー労働LyftUberDoordashInstacartProposition 22

画像クレジット:Al Seib/Los Angeles Times/Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】パンデミックによる米国の労働力不足はAIニーズを呼び起こす大きなチャンスとなるのか?

編集部注:著者のChetan Dube(チェタン・ドゥベ)氏は、Amelia(アメリア)の創業者でCEOである。ニューヨーク大学の元助教授で、自動制御、コグニティブ・コンピューティング、デジタル・ワークフォースの将来的な影響に関する専門家でもある。

ーーー

パンデミックが引き起こした米国の文化や社会への地殻変動は、まだまだ終わりそうにない。その中でも特に目立つのは、米国の労働市場が完全に混乱してしまっていることだ。

何百万人もの人びとが失業しているのに、小売業やカスタマーサービス、航空会社などの企業が十分な労働力を確保できていない。Uber(ウーバー)の料金が高騰したり、飛行機がキャンセルされて延々と待たされたりする背景にあるこの不可解なパラドックスは、単に私たちにとって不便というだけではなく、パンデミック後の米国の労働側からの明確なメッセージでもあるのだ。多くの人が、現在の仕事では給料が低く、過小評価され、存在感が希薄になっていて、キャリアを変えたり、ある種の仕事からは完全に足を洗ったりしたいと考えている。

なお、低賃金労働者だけではなく、ホワイトカラーの退職者も過去最高となっていることにも注目する価値がある。パンデミックの際に実施された失業手当の延長が、一部の労働者の様子見を促している可能性もあるが、従業員たちの燃え尽きや仕事への不満も主な原因となっている。

私たちの目の前には賃金問題と従業員の満足度の問題が横たわっていて、議会はこれからの長い夏の間に解決策を見つけなければならない。しかし、その間に企業は何をすればいいのだろうか?

今、企業が必要としているのは、新型コロナウイルスによる救済措置や失業手当が期限切れとなる9月までの一時しのぎの解決策か、もしくはエンジンをただ動かし続けるだけでなく船を前進させるような、より長期的で頑丈な解決策だ。AIの採用は、その両方の鍵となり得る。

「私たちはAIの目覚めの瀬戸際に立ち会っている」と宣言したところで、おそらく2021年目にしたものの中で最も衝撃的な言葉ではないだろう。しかし、ほんの数年前までは、自動化やAIの進歩により、遠い想像からごく個人的な現実へと変化し始めたことが、膨大な数の人々を怯えさせていたのだ。人びとは、ロボットやバーチャルエージェントの登場で、命の綱である仕事を失うのではないかと、本気で心配していた(今でも一部の人は心配している)。

しかし、この「AIが仕事を奪う」というストーリーは、現在私たちが置かれている文化的・経済的な状況に適用されるのだろうか?

誰もその仕事が好きじゃないのに、AIが仕事を奪っていると言えるのだろうか?

この「人手不足」に明るい面があるとすれば、それは現実の世界にある「組み分け帽子」(ハリーポッターに出てくるクラス分けを行う帽子)の役割を果たしているということだ。雇用の問題からお金を取り除いてみると、人々がどのような仕事を好ましいと思っているのか、さらには、何を好ましくないと思っているのかが明らかになってくる。具体的には、製造業、小売業、サービス業が最も厳しい労働力不足の打撃を受けていて、こうした仕事に関連するタスク(反復的な業務、報われない接客業務、肉体労働)が、ますます多くの潜在的な労働力を遠ざけていることが明らかになっているのだ。

製造業におけるAIの導入は、パンデミックの間にサプライチェーンの変動に対応するために加速したが、今や「試験的な苦行」から広い導入へと移行しなければならない。この業界におけるAIの最適なユースケースは、品質検査、一般的なサプライチェーン管理、リスク / 在庫管理など、サプライチェーンの最適化に役立つものたちだ。

最も重要なことは、AIが機器の故障や破損の可能性を予測し、コストを削減し、ダウンタイムをほぼゼロにできることだ。業界のリーダーたちは、AIは事業継続に有用であるだけでなく、既存の従業員を置き換えるのではなく、彼らの仕事や効率性を増強することができると考えている。AIは、リアルタイムのガイダンスやトレーニングを提供して従業員を支援したり、安全上の危険を警告したり、組み立てラインの潜在的な欠陥を検出するなどの作業を引き受けることで反復的でスキルの低い作業から人間の従業員を解放することができる。

製造業において、現在のような人手不足は今に始まったことではない。米国この業界は、長い間認識の問題に直面してきた。主に若い労働者が製造業を「低技術」で「低賃金」だと考えているからだ。AIは、既存の仕事をより魅力的なものにして、収益の向上に直結させると同時に、テーマに沿った人材や専門知識を集める企業に新たな役割を生み出す。

小売業やサービス業では、過酷な接客業務と低賃金が原因となって、多くの従業員が離職している。それでも頑張っている人は、仕事に不満があっても現在受けている福利厚生のために手をこまねいているのだ。自然言語処理と機械学習を活用して人間のように人と対話できる会話型AIが、従業員を多くの単調な顧客体験のやりとりから解放することで、従業員たちはより頭を使い人間的な入力をもとに、販売やサービスブランドを高めることに焦点を当てた役割を担うことができるようになる。

多くの小売業やサービス業の企業が、パンデミックの際に、オンラインでの大量処理に対応するためスクリプト付きのチャットボットを採用した。だがそうしたチャットボットは固定されたディシジョンツリーで動作しているので、文脈を無視した質問をすると顧客サービスプロセス全体が破綻してしまう。高度な会話型AI技術は、人間の脳をモデルにしている。さらに、AIは運用を通して学習することで、より熟練した技術を身につけ、小売店やサービス業の従業員たちを煩雑な作業から解放し、顧客満足度と収益を向上させるようなソリューションを提供する。

職場におけるAIに対する躊躇と誤解が、長い間普及の障壁となってきた。しかし、人手不足に悩む企業は、AIが従業員の生活をより良くより楽にすることができる場所を検討すべきであり、それは収益成長のためにはメリットにしかならない。そしてそれが、おそらくAIが必要とする大きなチャンスなのだ。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:コラム労働アメリカ

画像クレジット:Westend6  / Getty Images

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(文:Chetan Dube、翻訳:sako)

CEOの「企業文化メモ」公開後、Mediumの従業員が大量退職

MediumのCEOEv Williams(エヴァン・ウィリアムズ)氏は2021年4月、厳しい1年を経て同社の企業文化が変化していることを従業員に伝えるメモを記した。

「健康的な文化は、人の最高の部分を引き出します」と同氏は書いている。「そうした環境にある人々は、自分の考えを述べたり、どんな質問にも最適な答えを見つけ出そうと議論したりすることは、心理的に安全であると感じます。同僚が善意を前提に、そして同じ反応が得られることを意識して、疑わしいことを好意的に解釈してくれると認識しているのです」。

その数段落後にウィリアムズ氏は、反対意見や支持されない意見は意思決定において「常に奨励されている」ものの「建設的ではない、疑いを投げかける、悪意を持っている、根拠のない非難をするなど、ポジティブな環境に寄与しない対話を繰り返すことは、チームや職場環境に大きな悪影響を与える」と記した。

そして次のように付け加えている。「これらの行動は許容できるものではありません」。

TechCrunchが入手し、確認した内部メモは、Mediumのスタッフによる労働組合結成の試みが失敗してから約1カ月後に、そしてウィリアムズ氏が自社コンテンツよりもユーザー生成の仕事に重点を置くという編集方針の転換を発表した約1週間後に公開された。

Mediumの編集チームはシフトの一環として退職金の優遇をともなう希望退職を提示され、編集担当VPのSiobhan O’Connor(シボーン・オコナー)氏とGEN Magazineの全スタッフが退職している。

しかし、Mediumの大量流出の原因は、編集方針の転換というより「企業文化メモ」と銘打ったウィリアムズ氏のマニフェストにあると、複数の現従業員、元従業員がTechCrunchに語ってくれた。このメモが公開されて以降、コンテンツの優先順位の変化の影響は受けないと思われる非編集スタッフの数多くがプロダクトマネージャー、数人のデザイナー、数十人のエンジニアを含めて会社を去っている。

退職者たちは、ウィリアムズ氏が多様性に富んだ才能を犠牲にし、会社戦略のさらなるリセットを行おうとしていると主張する。エンジニア、編集スタッフ、プロダクトチーム、そして同社の人事および財務チームの一部が含まれる内部データを見ると、2021年Mediumに入社した241人のうち、約50%がすでに辞めていることがわかる。Mediumは、現在179人の従業員がいると述べてこれらの数字を否定したが、一部の欠員を埋めるために新規雇用を行っている。

Mediumによると、離職者の52%は白人で、同社の従業員の3分の1は非白人とアジア人である。TechCrunchが最初に話を聞いたエンジニアは、同社の離職者の中にはマイノリティが多く含まれていると語っている。また、Mediumに参加したとき、トランスジェンダーのエンジニアが3人いたと付け加えた。彼らも全員去ってしまった。

「愛される独裁者の雰囲気」

2021年2月、編集スタッフを中心としたMediumの従業員が、労働組合を結成する計画を発表した。労働組合化の試みは決議票で過半数に1票足りず最終的には敗北したが、これは中堅幹部が従業員に組合への反対票を投じるよう圧力をかけたためだと一部の従業員は考えている。

組合結成が失敗した翌月の3月に、Mediumは編集方針転換を発表した。同社は編集スタッフに新たなポジションや希望退職優遇措置を提示した。多くの従業員が退職したが、これは組合組織化の失敗や、明確で金銭的な保障のある退職勧奨のような緊迫した局面が続いた後では珍しいことではない。

そして4月にウィリアムズ氏は、会社の目的と運営原則に関する自身の見解をまとめた企業文化メモを投稿した。メモの中で同氏は「成長にはリスクテイキングが必要であり、リスクテイキングは時折失敗をともなう」とし「フィードバックは贈り物であり、厳しいフィードバックでさえも共感と厚情をもって届けることができるし、そうすべきである」としている。CEOはまた、多様性に対する同社のコミットメントと「機会や脅威に適応することが勝つための前提条件である」ことにも言及した。

顕著なことに、Mediumはこれまで数多くの編集戦略の変更を行ってきており、サブスクリプションや自社コンテンツの取り組みに紆余曲折してきた。そして今は、ユーザー生成コンテンツと有料コミッションに傾注している。

「チームの変更、戦略の変更、組織再編は避けられない。1人ひとりの順応性が会社の中核的な強みだ」とメモには書かれている。

メモでは組合結成の動きについて明確には言及していないが「建設的ではない、疑いを投げかける、悪意を持っている、根拠のない非難をするなど、ポジティブな環境に寄与しない対話を繰り返すことは、[しかしながら]チームや職場環境に大きな悪影響を与える」とし、そうした状況をMediumは容認しないと述べている。

TechCrunchが取材した従業員たちは、ウィリアムズ氏のメモは公式な投稿ではなく内部的なものだと考えているものの、これはCoinbaseのCEOであるBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏やBasecampのCEOであるJason Fried(ジェイソン・フリード)氏が出した声明を思い出させる。Mediumのメモは政治を全面的に禁止しているわけではないが、前出のエンジニアは声明の「基調」が「安全ではない職場環境」を生み出していると話す。不満を抱いた従業員らは、Mediumでの問題について語り合うためにサイドSlackを作った。

MediumはTechCrunchへの声明で次のように述べている。「多くの従業員がクラリティ(明瞭性)を評価しており、ディレクターやマネージャーもその形成に関わっています」。

TechCrunchが入手した内部データによると、このメモのあった月の同社の株価は前月比で3倍、1月の指標の30倍だった。

TechCrunchに話をしてくれた2人目のエンジニアは先月同社を去っているが、そのメモは一見したところでは「酷い」ものではないと語っている。

「それは愛される独裁者の雰囲気でした。つまり、記されている言葉はあまりにも曖昧で、他の何にも強要されることはなく、紙面上ではよく見えます」と彼は指摘した。「そのメモを見ただけで、他に何もないとしたら、それはCoinbaseのメモでもなければ、Basecampのメモでもありません」。

しかし、メモのタイミングを考えるとウィリアムズ氏のメッセージの意味は明確だとこのエンジニアはいう。

「(Mediumは)良い雰囲気を強制し、『ミッション』に疑問を持つものはすべてシャットダウンしたいと考えているのです」と彼は語った。

Mediumの究極

同エンジニアは「編集の方向転換を理由に去った人はほとんどいない」と考えている。その代わり、彼はMediumにおける問題の歴史的経緯を説明した。そこにはメモによって明らかに引き起こされたと思える離脱の波が見られた。

例えば2019年7月、Mediumは、トランプ支持者のJoy Villa(ジョイ・ヴィラ)氏のプロフィール付きのシリーズを「私はトランプを支持してきたが、黒人やラテン系であることで訴追されたことは一度もない」という見出しで公開した。

Mediumのラテン系コミュニティは、この見出しの不快感についてリーダーシップに話をしたとき、Slackの公開チャンネルで言及されるまで、編集部の幹部はそれに関して何もしなかったと主張している。ある編集者は、移民手続きを経験した人や、ラテン系アメリカ人コミュニティの一員である人に、部屋に入って自分たちの立場を説明して欲しいと頼んだ。この従業員は、彼らの立場が薄れていくように感じたのだ。ようやく見出しが変更されたのは、従業員たちがSlackの公式チャンネルに自分たちの懸念を投稿してからだった。

「彼らは思いやりがあれば十分だと思っています」とその従業員は話す。「そして、その傾聴は慈悲深く、実際に思いやりに満ちています。それゆえ、それが十分でないとき、彼らは大きなショックを感じてしまうのです」。

TechCrunchが話を聞いた3人目のエンジニアは、テクノロジー以外にも影響力のあるミッション重視の会社を求めて2019年に同社に入社した。彼は2020年夏、Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター、BLM)運動の中で、Mediumに「より深い問題」があることに気づいた。

「私自身がその一部ではないために耳にしたことがなかった、より深刻な問題がありました。それはまるでカーペットに滑り落ちたかのような感覚でした」と彼はいう。例えばトランプ支持者のプロフィールだ。この元従業員は、人事部がその時期にもNワードを発した従業員の報告について無視したことを知ったのだった。Medium側は、これは事実ではないとしている。

「彼らの本当の姿を真に理解するのにメモは必要ありませんでした」と彼は続けた。

The VergeとPlatformerがMediumの乱雑な企業文化と混沌とした編集戦略に関するレポートを公開したが、2番目のエンジニアは、この記事に関係していると思われる複数の従業員が辞任するよう圧力をかけられたと語っている。

「私の見るところでは、会社側は組合を負かすために汚い手を使ったと思います」と最初のエンジニアはいう。「しかし、それは完全な成功ではありませんでした。なぜなら、これらの人々は全員、その決定(組合結成の否決)の後に退職することを決めたからです。それはコストにつながります。残された人たちは、基本的にうなずいて微笑まなければならないと感じているでしょう。Mediumが明らかにしたのは、従業員が完全な自我を職場に持ち込むことを会社は望まないということです」。

同エンジニアによると、Mediumの審判的な文化は、同社のミッション指向の約束ゆえにCoinbaseとは異なるものだという。

「Coinbaseのようないくつかの企業は『政治や社会問題をもたらすことのない人たちが働くことを望んでいる』と表明しているので、Coinbaseに加わるなら、それはあなたが期待していることであり、問題はありません。しかしMediumは、世界と公平さを大切にし、言論の自由と透明性を信じる人々を特に採用したのです」。

このエンジニアはまもなく正式に退職する予定で、すでに複数の面接が決まっている。

「ソフトウェアエンジニアにとって良い求人市場があるのに、自社の従業員を不当に扱う会社で働く必要があるでしょうか?」。

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画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

バイデン政権の労働長官はギグワーカーを従業員待遇にすべきと考えている

米国時間4月29日、バイデン政権の労働長官Marty Walsh(マーティ・ウォルシュ)氏は、ギグエコノミーという白熱している問題に言及して、福利厚生を欠いて働く多くの人びとは企業の従業員扱いになるべきだ、と主張した。

ロイターのインタビューでウォルシュ氏は、労働省はギグエコノミーに注目しており、その労働者の位置づけを変えることがバイデン政権の優先課題になりうると暗示した。

「ギグワーカーを従業員として待遇すべきと思われるケースが多い。現状では、労働者の待遇は場所や項目などによってまちまちであり、一貫性がない。全面的に一貫性があるべきだと私は考える」とウォルシュ氏はいう。

ウォルシュ氏によると、労働省はギグワーカーから利益を得ている企業に対して、それらの企業の非従業員に米国の平均的従業員並の福利厚生を確保するよう促すかもしれない、という。

「企業が売上と利益を得ることは、米国では普通のことであり、何も問題ではない。従業員に平均的な福利厚生を与えてなおかつ利益を得ている企業なら、何もいう必要はない。しかし私たちが一般的に求めるのは、企業の成功が確実に労働者の待遇にも反映することだ」とウォルシュ氏はいう。

ウォルシュ氏のコメントは現在のところ、国の施策によって認められてはいない。しかしそれらは、非従業員の労力を利用しているテクノロジー企業で、今だに大きな波風を惹き起こしている。4月29日のこのニュースで、UberとLyftそれにDoordashの株価は下がった。

そのインタビューでウォルシュ氏は、雇用主からの失業保険や健康保険がないギグワーカーのパンデミック関連の心配についても触れた。連邦政府はパンデミックの間に、ギグワーカーに対する福利厚生を認める2つの大型法案を成立させて、施策の緩みを修復した。しかしそれ以外では、彼らにはほとんどセーフティーネットがない。

労働法の改正はバイデン氏の選挙公約でもあり、大統領になってからは労働者保護の強化と労働者の組織化の支援を強調してきた。バイデン氏の政権移転サイトには、労働者保護の拡張に捧げられた部分があり、従業員を契約労働者扱いする誤りを「伝染病」と呼んでいる。

バイデン氏は米国時間4月28日夜の下院との合同会議で、以前からの労働組合の支持を繰り返し、労働者の組合結成や組合への参加を保護する法律であり組織化する権利の保護法(Protecting the Right to Organize Act)を賞揚した。その法律も拡張され、国の悪政を暴露する者にも適用されるようになる。

「ミドルクラスがこの国を作った。そして、組合がミドルクラスを作った」とバイデン大統領は語っている。

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タグ:ギグワーカーギグエコノミージョー・バイデンUberLyftDoorDash労働

画像クレジット:Jeenah Moon/Bloomberg/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アマゾンの労組結成賛否を問う従業員投票結果を受け米労組会長が「再選挙の可能性が高い」と語る

Amazon(アマゾン)のアラバマ州ベッセマー倉庫で行われた労働組合結成の賛否を問う従業員投票で、米国時間4月9日に明らかになった開票結果がどうであれ、AmazonとRWDSU(小売・卸売・百貨店労組)の戦いに終わりがないことだけは確かだった。圧倒的にAmazon有利となった開票結果を受け、組合はすぐにその結果に異議を唱えた。

RWDSUは、賛成も反対も50%を超える票がなかったことを受け、Stuart Appelbaum(スチュアート・アッペルバウム)会長の声明をいち早くTechCrunchに提供し「我々は、この選挙を腐敗させたAmazonの行動について包括的な調査を要求する」と述べている。

Amazonは、当然のことながら、すぐに勝利宣言を行った。「Amazonスタッフ」とクレジットされたブログ記事の中で、同社は次のように書いている。

アラバマ州のBHM1フルフィルメントセンターの従業員のみなさん、選挙に参加していただきありがとうございました。この数カ月間、さまざまな意見が飛び交っていましたが、最終的にみなさんの総合的な声が聞けたことをうれしく思います。結局、BHM1の従業員のうち、RWDSUの組合に加入する方に投票した人々は16%以下でした。この選挙でAmazonが勝利したのは、私たちが従業員を威嚇したからだと組合側がいうだろうことは容易に想像がつきますが、それは事実ではありません。

会社側は選挙が「終わった」と言っている一方で、RWDSUは、将来的にベッセマー倉庫で労働組合が結成される可能性と、この運動が今後のAmazonにおける組合結成活動にどのような意味を持つことになるかという両面において、まだ希望を持っている。

アッペルバウム会長は、米国時間4月9日早朝に行われた記者会見で、Amazonが労働者に対し、職を失いたくなければ組合に反対票を投じる必要があると伝えていたことを示唆した。

「私たちは、再選挙の可能性が非常に高いと考えています」と、組合長はメディアに対して語った。「Amazonがこれを勝利と考えるならば、考え直した方がいいと思います。せいぜい、ピュロスの勝利に過ぎません。この期間に何が起こったかを見てください。私たちはAmazonの非道な労働環境を、誰もがわかるように暴露したのです」。

アッペルバウム氏の発言の一部は、ノルマの厳しさを懸念して労働者が飲料水用ボトルに排尿していたという数々の報道について言及していると思われる。Amazonは、明らかにJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)CEOの指示で積極的なソーシャルメディア・キャンペーンを展開する中で、当初は上述のような報道を否定していた。しかし、数々の反論的報道を受け、一部のドライバーに該当する可能性があることを認めた。そしてすぐに、だがそれは広範な業界の問題であるとして責任を転嫁した。

「Amazonが勝ったのではなく、社員が組合加入に反対するという選択をしたのです」と、同社は投稿の中で続けている。「従業員はAmazonの心であり、魂です。私たちは常に従業員の声に耳を傾け、彼らのフィードバックを受け、継続的な改善を行うことに懸命に取り組み、安全で包括的な職場で優れた給与と福利厚生を提供するために多額の投資を行ってきました。私たちは完璧ではありませんが、我々のチームと自分たちが提供しているものを誇りに思っています。そしてこれからも日々向上するために努力を続けていきます」。

RWDSUの異議で鍵となりそうなカ所は、Amazonが全米労働関係委員会(National Labor Relations Board)の規定に反して、USPS(米郵便公社)に圧力をかけて設置させたという投票箱だ。アッペルバウム氏は、この投票箱が「監視されているような印象を従業員に与えた」と述べている。

同氏は、RWDSUがすでにAmazonの他の施設で働く従業員と連絡を取り合っていると付け加え「この選挙の前に、すでに他の施設の労働者とも話し合いを始めています」と説明した。

その後、Amazonは投票箱について次のような声明を出した。「我々は最初から、すべての従業員に投票して欲しいと言っており、簡単に投票できるようにするためにさまざまなオプションを提案しました。しかし、RWDSUはあらゆる場面でこれらに対抗し、郵送のみによる選挙を推し進めましたが、それでは投票率が下がることが、NLRB自身のデータからわかっていました。USPSだけがアクセスできる郵便箱を設置することは、従業員が簡単に投票できるようにするための、シンプルで安全な、完全に任意の方法であり、それ以上でも以下でもありません」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Amazon労働組合労働問題

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アマゾンが労働組合結成をめぐる投票で勝利確定、RWDSUは結果に異議

Amazon(アマゾン)のアラバマ州ベッセマー倉庫における労働組合結成に向けた取り組みは、開票2日目に大差で敗北したことがわかった。3215票のうち半数以上が会社を支持する結果となったのだ。この投票が可決された場合、労働組合の役割を果たすことになっていた小売・卸売・百貨店連合(RWDSU)は、この結果にいち早く異議を唱えた。

RWDSUのStuart Appelbaum(スチュアート・アッペルバルム)会長は、TechCrunchに提供された声明の中で次のように述べている。

Amazonは、自社の従業員をガスライティングするためにあらゆる手段を講じてきました。私たちは、Amazonの嘘、ごまかし、違法行為を許すことはできないため、組合投票の際にAmazonが行ったひどい違法行為のすべてを正式に告発します。Amazonは、たとえ違法行為であっても、できる限りのことをしなければ、労働者が組合結成を支持し続けるだろうということを十分にわかっていたのです。

だからこそ、Amazonは、全従業員に虚偽と嘘に満ちた説明を何度も行う必要があり、労働者は会社から組合反対要求を聞かされることになりました。また、だからこそ、Amazonは、インターネットや電波、ソーシャルメディアを利用して、誤った情報の宣伝を流したのです。だからこそ、Amazonは、何十人もの外部の人間や組合潰しの人間を連れてきて、倉庫の床を歩かせたのです。だからこそ、Amazonは、施設内のいたるところに看板を設置し、従業員にテキストメッセージを送り、自宅には電話をかけてきたのです。そして、だからこそ、Amazonは、労働権が認められている州で、組合費が毎月給料から徴収されると嘘をついたのです。Amazonの行為は卑劣なものです。

この最初の敗北は、Amazonの27年の歴史の中で組合結成に向けた最大の取り組みが、大きく後退したことを意味する。これは小売業の巨人とブルーカラーの技術労働者の双方にとって大きな変化をもたらす可能性があったが、今のところ、圧倒的な敗北を喫している。

当然ながらAmazonは、労働者を適切に扱っているため、このような組合活動は必要ないと、長いこと主張してきた。その論拠として、同社は時給15ドル(約1640円)の最低賃金などの基準を挙げているが、これも当初は抵抗していたものの、最終的には議員からの圧力を受けて導入したものだ。

今回は双方にとって厳しい戦いとなった。Bernie Sanders(バーニー・サンダース)氏からMarco Rubio(マルコ・ルビオ)氏まで、多くの議員が党派を超えて組合結成のために力を貸した。後者の保守派のフロリダ州上院議員は、同社の「独自で悪質な企業行動」を指摘した。また、Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領も労働者側に立ち、自らを「史上最も組合びいきの大統領」と称した。

Amazonがこの結果を正当なものと主張することは疑う余地がない。同社は以前の声明で「我々の従業員は賢明で、時給15ドル以上の初任給を得て、初日から健康管理が受けられ、そして安全で包括的な職場という真実を知っています。すべての従業員に投票をお勧めします」と述べていた。

このニュースを受けたブログ記事で、同社は次のように述べている。

この選挙でAmazonが勝ったのは、私たちが従業員を威圧したからだと組合がいうだろうことは容易に想像できますが、それは真実ではありません。当社の従業員は、我々から聞いたメッセージよりも、組合や政策立案者、メディアから反Amazonのメッセージを聞くことの方がはるかに多かったのです。そして、Amazonが勝ったわけではありません。私たちの従業員が、組合への加入に反対するという選択をしたのです。従業員はAmazonの心であり、魂です。私たちは常に従業員の声に耳を傾け、彼らのフィードバックを受け、継続的な改善を行うことに懸命に取り組み、安全で包括的な職場で優れた給与と福利厚生を提供するために多額の投資を行ってきました。私たちは完璧ではありませんが、我々のチームと自分たちが提供しているものを誇りに思っています。そしてこれからも日々向上するために努力を続けていきます。

労働委員会の規約に違反してアマゾンが設置したとされる投票箱に対する疑念も残っており、これについても組合からの異議申し立てが予想される。

「倉庫の敷地内に投票箱を設置するというAmazonの要求をNLRB(米労働関係委員会)が明確に拒否したにもかかわらず、Amazonは自分たちが法律を超えた存在であると感じ、ともかく郵便公社と協力して投票箱を設置した」と、RWDSUは書いている。同社がこのようなことをした理由は、それが労働者を威嚇する明確な手段を提供するからです」。

約6000人の労働者を雇用するAmazonのベッセマー倉庫は、ロックダウンが差し迫る中、同社が必要不可欠な労働者の運用を拡大するため、2020年3月末に開設したものだ。この件に関する報道では、厳しい就業基準を満たすために従業員が飲料水用ボトルに放尿しているという多数の報告をはじめ、同社のブルーカラー労働者の扱いをめぐるさまざまな長年の不満が表面化している。

Amazonは当初、ソーシャルメディア上でこれらの主張を否定していたが、後に謝罪の意を表したものの、業界全体の問題に責任を転嫁するような姿勢を示した。また、同社は子会社のストリーミング・プラットフォームであるTwitch(ツイッチ)で、反組合的な広告を流していたが、Twitchは「掲載を許可すべきではなかった」との声明を出し、広告を取り下げたこともある。

開票された3215票は、アラバマ州の倉庫で働く労働者の半数以上を占める。Amazonがその半数以上を獲得したにもかかわらず、集計は継続される。労組結成の挑戦は数週間にわたり続く可能性がある。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Amazon労働組合労働問題

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)