コントレアが動画によるインフォームド・コンセント支援クラウドMediOSに麻酔科向けサービスを追加、麻酔説明を半自動化

動画を活用したインフォームド・コンセント支援クラウド「MediOS」(メディオス)を提供するContrea(コントレア)は2月18日、新たな疾患領域に対する展開として麻酔科向けサービスのリリースを発表した。内容としては、MediOSおよび麻酔科向け動画コンテンツとなっており、2月18日から提供を開始する。2024年4月、働き方改革に関する法律により医師の時間外労働に上限が設けられ、医療業界では医療現場の効率化が急務となっている。MediOSは、患者の理解度向上と医師の働き方改革を両立させるとしている。

日本病院会によると、安全な手術には麻酔科医による麻酔管理が重要だが、全診療科の中で麻酔医が最も不足しているという(「2019年度 勤務医不足と医師の働き方に関するアンケート調査 報告書」)。そうした不足をカバーするため、大学病院では40%、一般病院では60%もの施設が外部に麻酔科医の派遣を定期的に要請している(麻酔学会「麻酔科医のマンパワーに関する調査」)。

これは手術件数が急増し需要が拡大していることや、麻酔業務以外に集中治療・救急医療・ペインクリニックなど担当範囲が拡大している点が理由として挙げられる。そうした業務量の拡大に加えて、術前の麻酔説明に多くの時間が取られることも麻酔業務を多忙にする要因となっている。

ただ、現場における麻酔説明は多くの時間がかかるものの、その内容は麻酔の概要や合併症といった定型的な内容が多くを占めているという。そこでMediOSの麻酔説明動画コンテンツでは、入院までの準備や各種麻酔方法と合併症、術後の覚醒、PCAポンプの使い方など約50分の内容を用意。またこれら動画は、京都府立医科大学の佐和貞治先生と柴﨑雅志先生、京都大学の松村由美先生・加藤果林先生による監修の元で制作したそうだ。

この麻酔科向けのサービスにより、麻酔科医の不足という課題を解決し、患者理解度や質問を事前に取得するクラークの役目を担うことまでできるという。システムは動画の準備から管理、患者への動画共有、視聴データ解析まで一気通貫で運用可能。定型的な部分を効率化することで、麻酔科医は患者個別性の高い説明やハイリスクな患者への事前準備、手術の麻酔管理など本質的な業務に集中でき、手術の安全性向上にもつながるとしている。

MediOSとは、インフォームド・コンセント(医療従事者が患者に診療目的・内容を説明し患者の同意を得ること)における定型的な内容をアニメーション動画にし、事前に患者が説明を受ける機会を提供するサービス。大学病院をはじめ200~700床の病院で導入されており、医師の説明時間が患者1人あたり33%短縮されたそうだ。また患者側の平均理解度が5段階中4.6を取得といった効果も得ているという。

医師向け臨床支援アプリを提供する「HOKUTO」を提供するHOKUTOが8.25億円のシリーズA調達

医師向けの臨床支援アプリ「HOKUTO」(Android版iOS版)を開発・運営するHOKUTOは2月8日、シリーズAラウンドとして第三者割当増資による総額8億2500万円の資金調達を2021年12月に実施したと発表した。シリーズAでの累計調達額は11億2500万円となった。

引受先は、以下の通り。

新規株主

・グローバル・ブレイン8号投資事業有限責任組合
・Genesia Venture Fund 2号投資事業有限責任組合
・GMO GFF投資事業有限責任組合 無限責任組合員
・グリーベンチャーズ1号投資事業有限責任組合
・ほか個人投資家など

既存株主

・Genesia Venture Fund 2号投資事業有限責任組合
・イーストベンチャーズ2号投資事業有限責任組合
・ほか個人投資家など

調達した資金は、事業推進とプロダクト開発、そして今後の事業展開において重要な人材採用にあて、組織基盤の強化を図る。

HOKUTOは、2019年11月より提供されている臨床現場に立つ医師を支援するためのモバイルアプリ。アプリの医師会員数は直近1年間で約7倍に増加し、2021年11月時点で3万人を突破したという。同アプリを利用することで、最新の医学情報にアクセス可能。エビデンスに基づいた医療の実践に必要な「医学情報のインプット」「想起」「リサーチ」という一連の行動を一貫してサポートすることで、医師の負担を軽減し、患者に向き合う時間を増やすことを目的としているそうだ。医師のアウトカム(治療や予防による臨床上の成果)向上に貢献することも目指すとした。

また同社は、アプリで取得した医師のデータベースを基盤に、製薬プロモーション市場を非対面・デジタル化する医薬品デジタルプロモーション事業も展開している。

医師を退屈なデータ入力から解放、AI駆動の転写プラットフォームDeepScribeが約34億円調達

AIを活用した医療用転写プラットフォームのDeepScribe(ディープスクライブ)は、Index VenturesのNina Achadjian(ニーナ・アチャドジアン)氏がリードし、Scale.aiのCEOのAlex Wang(アレックス・ワン)氏、FigmaのCEOのDylan Field(ディラン・フィールド)氏、既存投資家のBee Partners、Stage 2 Capital、1984 Venturesが参加したシリーズAラウンドで3000万ドル(約34億円)を調達した。DeepScribeの今回の資金調達は、2021年5月に発表された520万ドル(約6億円)のシードラウンドに続くものだ。DeepScribeは、医師を退屈なデータ入力から解放し、患者にフォーカスできるようにすることを目的に、Akilesh Bapu(アキレッシュ・バプ)氏、Matthew Ko(マシュー・コー)氏、Kairui Zeng(カイリュー・ゼン)氏によって2017年に設立された。

2019年、DeepScribeは患者と医師の自然な会話を要約するアンビエント音声AI技術を発表した。DeepScribeのアイデアは、バプ氏とコー氏の体験が発端だ。バプ氏の父親はがん専門医で、文書作成が父親のワークライフバランスに与える負担を目の当たりにした。一方、コー氏は、乳がんと診断された母親のケアを管理していたとき、診療記録の負担が患者のケアに対する認識にどのような影響を及ぼしているかを目の当たりにした。

母親が受けていたケアに不満を感じたコー氏は、バプ氏とその父親に助けを求めた。そして、診察記録の重要性を理解し始めた2人は、近年の人工知能や自然言語処理の飛躍的な進歩が、この状況を改善するために活用されていないことに気づいた。そこで、この問題を解決するプラットフォームを構築すること決意した。

「この分野の製品を調査した後、75%以上の医療従事者がこの分野の文書作成ツールを使っているのに、それでもなぜ彼らが半日近くをメモ書きに費やしているのか疑問に思いました」と、コー氏は電子メールでTechCrunchに述べた。「製品をテストした後、私たちの結論は、この分野の既存の製品では医師が会話を要約する必要があるために問題を解決していない、というものでした。音声テキスト化ソリューションは、あなたがが話した内容を正確にコンピュータの画面上のテキストに変換することしかできませんでした。医師が求めていたのは、患者との自然な会話を理解し、要約することができるアンビエントAIでした。この洞察をもとに、私たちは世界初のアンビエントAIスクライブ、つまり現在のDeepScribeの構築に着手しました」。

医師がアプリケーションを起動すると、DeepScribeは会話を録音し、要約して、医師が選択した医療記録システムに統合する。アプリは、聞きながら患者の診察を録音し、診察記録を準備する。その後DeepScribeは、電子カルテ (EHR) のフィールドにメモを直接アップロードし、医師は適切なEHRフィールドに完全に準備されたメモを確認し、署名することができる。

このアプリケーションはおしゃべりに対応していて、会話には医学的に関連する情報のみが含まれる。また、医師の会話スタイル、好みの言い回し、文章の好みなどを聞き、学習することで、AIスクライブは継続的に賢くなるという。

過去1年半の間に全米で医師400人超がDeepScribeを利用し、50万件以上の患者・医師間の会話を処理してきた。DeepScribeによると、同社のプラットフォームを活用することで医師は1日平均3時間を節約でき、コストは人間による記録の約6分の1だ。これまでに、同社は医師の文書作成にかかる時間、250万分以上を節約した。信頼性に関しては、20日間の使用後、医師はメモ1枚につき平均1回以下の修正しか行わなかった、とDeepScribeは話す。

DeepScribeは、今回の資金調達によりDeepScribeの成長が加速し、今後も医療文書作成ワークフローとヘルスケア全体の改善と変革に取り組んでいくと話す。自社の技術を複数の大規模医療システムに展開し、エンジニアリングチームを成長させ、自社のAIをより多くの医師の手に渡すことを目指している。

「当社のロードマップには多くのものがありますが、最もワクワクさせるのは、純粋な要約以外の可能性です」とコー氏は話す。「音声が未来の医療の構成要素になると信じていて、お馴染みのケアの診断と治療を変換する能力を持っています。サービスの提供を通じて収集したデータを活用し、医師に効率化を提供するにとどまらず、患者の転帰を改善したいと考えています」。

画像クレジット:DeepScribe

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

Magic Leapがヘルスケア関連企業に新型ARヘッドセットへの早期アクセスを提供、2022年半ばの発売に先駆け

Magic Leap(マジックリープ)は、2022年後半に予定されている企業向けのリリースに先駆けて、ヘルスケアスタートアップ4社に第2世代ARヘッドセットへの早期アクセスを提供した。この早期アクセスプログラム企業の1つであるSentiARは、医師が患者の手術中に心臓の3Dモデルを見ることができるソフトウェアを提供している。また、Brainlabは、同社のMixed Reality ViewerソフトウェアをMagic Leap 2で利用できるようにしたいと考えている。

Magic Leapが最新のウェアラブルをデジタルヘルスケアのスタートアップに最初に提供しているのは驚くことではない。2021年4月の時点で、Peggy Johnson(ペギー・ジョンソン)CEOのはそう示唆していた。「拡張現実(AR)は、少なくとも短期的には、他のどの業界よりもヘルスケアを変革する可能性があります」と同氏は当時述べ、発売時には企業顧客に焦点を当てるとしていた。

Magic Leapは、シリコンバレーで最も注目されているスタートアップの1つとして登場して以来、苦境を強いられてきたことで有名だ。2019年には、2300ドル(約26万円)のヘッドセット「Magic Leap One Creator Edition」が発売されてから半年間で6千台しか売れなかったことが報じられた。その後、3億5000万ドル(約401億2000万円)の投資によって新たな命を吹き込まれるまでの数カ月間、従業員の解雇を繰り返していた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Igor Bonifacic(イゴール・ボニファシッチ)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Bram Van Oost / EyeEm / Getty Images

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Aya Nakazato)

フランス、ドイツ、イタリアの30万人もの医師や医療従事者に使用されている仏Doctolibのツール群

フランスのスタートアップ企業であるDoctolib(ドクトリブ)が、(仮想)記者会見を開き、いくつかの指標を発表して最近の製品ローンチを振り返り、今後の投資についてヒントを示した。Doctolibは、医師のための予約プラットフォームとして始まり、医師や医療従事者一般のための他のサービスにも拡大している。

医療従事者は、SaaSとして提供されるDoctolibのツールを月額利用料を支払って利用し、それを患者に使用する。その事業は順調で、現在、開業医、歯科医、薬局、心理士など、30万人の医療従事者が毎月Doctolibへの支払いを行っている。サブスクリプションは月額129ユーロ(約1万7000円)から開始するが、このことによりスタートアップは毎月数千万ユーロ(数十億円)の収益を上げている。

プラットフォームがフランス国内で臨界点に達したことによって、2021年は同社にとって極めて重要な年となった。例えばフランスで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防接種を受けようと思ったときには、多くの人がDoctolibのサイトを訪れて、最寄りの予防接種センターや薬局、空き枠のある医師を探している。ワクチン接種施設は他のプラットフォームを使って情報を提供することも可能だが、実際にはほとんどの施設がDoctolibを使って予約を処理している。

Doctolibは現在、フランス、ドイツ、イタリアで展開している。現在もフランスは同社の主要市場だ。これまでに6000万人がDoctolibを利用していて、その多くが予約のためにサービスを利用している。2022年には、さらに10万人の医療従事者と協働することになると、同社は予測している。

製品群の開発

非常に多くの医師と商業的な関係を築いたことで、Doctolibは新しい製品をリリースしたり、一連のサービスを構築することができる。多くの点で、DoctolibはSalesforce(セールスフォース)の戦略を踏襲している。他の商品の踏み台として機能する、非常に集客性の高いメイン商品を持っているという点だ。

数年前には、遠隔医療機能を付加したリモートアポイントメント機能をローンチした。もう少し利用料金を支払うことを選択した医師は、ビデオ通話を行ったり、Doctolibの支払いシステムをリモートアポイントメントに使ったりすることができるようになる。

2021年、DoctolibはDoctolib Médecin(ドクトリブ・メディサン)を発表した。これは管理業務を行うバックオフィスツールだ。例えば患者ごとに書類を一元管理したり、患者の履歴を見たり、メモを取ったり、請求書を発行したりすることが可能になる。

Doctolibのフランス担当責任者のArthur Thirion(アーサー・ティリオン)氏はこう語る「私たちはこれに3年前から取り組んでいます。既存のものと比較して、ゼロから始めようと考えました。現在は、2000人強の医師に使われています」。

もちろん、医師としての仕事を管理してくれる製品はこれが初めてではない。しかし、これはDoctolibの他のエコシステムとうまく統合されている。

同様に、Doctolibは、Doctolib Team(ドクトリブ・チーム)という新しいサービスで、プラットフォームのネットワーク効果を高めたいと考えている。今回同社は、新たな収益源を作るのではなく、Doctolibを必須のものにしたいと考えている。

Doctolib Teamは、専門家を見つけてチャットができるインスタントメッセージングサービスだ。また、患者に関する書類を安全に送ることもできる。

すでにDoctolibを使用している医療関係者にとって、ありがたい機能と言えるだろう。まだDoctolibを使用していない医療従事者の場合は、無料のDoctolib Teamアカウントを作成して使い始めることができる、おそらく将来的にはDoctolibの他の製品をサブスクライブすることもあるだろう。

画像クレジット:Doctolib

高レベル監視下での運用

Doctolibは、機密性の高い医療データを扱うため、一般的なスタートアップ企業とは異なる。これまで、同社のデータ管理やデザインの決定について多くの報道がなされてきた。

そして同社は、他のスタートアップ企業と同じようには行動できないことをよく理解している。例えばこのスタートアップはユニコーンの状態になったものの、それ以降は資金調達の詳細を公開しなくなった。みんなの健康を増進しようとするときには、あまりお金の話はしたくないものだ。

共同創業者でCEOのStanislas Niox-Chateau(スタニスラス・ニオックス=シャトー)氏はいう「過去数年間、資金調達に関する発信をやめていました。毎四半期、毎年度、投資家のみなさまは我々の長期プロジェクトに基づいて、投資したり、再投資したりなさいます」。

現在Doctolibは、ミッション駆動の会社になりたいと考えている。ミッション駆動とは、一定のルールを遵守した場合に得られる特別なステータスだ。そして、スタニスラス・ニオックス=シャトー氏は、自らの会社を社会を改善する会社として位置づけるために、複数の論点を見出している。

例えばDoctolibのビジネスモデルは非常に明確で、医療従事者からのサブスクリプションのみで成り立っているという。同社は患者データを収益化していない。

同氏によれば、このプラットフォームは広く利用されていて、デジタルデバイドも引き起こしていないという。例えば多くのユーザーは大都市に住んでいないし、高齢者でも簡単に使えるようになっているという。

しかし、だからといって、同社は立ち止まるつもりはない。2022年には野心的な拡張計画が控えている。Doctolibは、2300人の従業員から3000人の従業員へとチームを拡大する予定だ。そして、フランス時間1月10日以降、全従業員がDoctolibの株主になる。全員が少なくとも2万ユーロ(約261万3000円)相当の株式交付を受ける。

2022年には、フランス、ドイツ、イタリアにおける製品の改良とプラットフォームの拡大のために、3億ユーロ(約392億円)の投資を計画しているが、これは主に新規雇用と新オフィスに使われる。2022年には新しい市場の立ち上げは予定されていないが、それはもっと先になるのだろう。

画像クレジット:Doctolib

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)