睡眠中の脳卒中も早期に警告、治療開始までの時間を短縮するZeitのウェアラブルデバイス

脳卒中のリスクがある人は、進行中の脳卒中の兆候に常に注意を払っているが、寝ているときに注意を払うことは誰にもできない。つまり、何千人もの人が「目覚めたときの脳卒中」に見舞われ、数時間後にようやく判明するということだ。Zeit Medicalが開発した脳モニタリングウェアラブルは、脳卒中の兆候を早期に発見して病院に搬送することで、脳卒中によるダメージを軽減し、命を救うことができる。

数十年前までは、脳卒中の患者を助けるためにできることはほとんどなかった。しかし、90年代には有効な薬が使われるようになり、その少し後には外科手術も行われるようになったのだが、それらはいずれも脳卒中発症後数時間以内に処置する必要がある。

Orestis Vardoulis(オレスティス・ヴァルドゥリス)氏とUrs Naber(ウルス・ネーバー)氏は、脳卒中に関する911コールから被害者が必要な治療を受けるまでの時間を短縮するために、多くのリソースが使われているのを知り、Zeit(ドイツ語で「時間」の意)を立ち上げた。同社は、Y CombinatorのSummer 2021グループに参加している。

「以前は何もできなかったが、突然、いかに早く病院に行けるかが重要になってきた」とネーバー氏は語る。「脳卒中になると、すぐに脳が死滅し始めるため、時間が最も重要だ。911番通報から搬送までにかかる時間、そして病院の扉を開けてから治療にあたるまでの時間を短縮しようと多くの人が力を注いできたが、誰も911番通報の前に起こる時間には対応していない。だから、イノベーションが必要な分野だと思った」。

本人が気づかないうちに脳卒中を発見できれば、救急車が呼ばれるよりもずっと前に、本人や周囲の人に警告して病院に搬送することができる。しかし、これを実現するためには、手術室での作業が必要となる。

EEG信号の特性が変化した場合、このアルゴリズムによってすばやく検出することができる(画像クレジット:Zeit)

手術を行う外科医や看護師は、患者のバイタルを注意深く観察し、脳波から脳梗塞の兆候を見極めることができる。

「脳波には特定のパターンがあり、彼らはそれらを目で捉えられるように訓練されている。私たちは、最も優秀な神経学者から、彼らがこのデータをどのように視覚的に処理するかを学び、それを自動的に検出するツールを作った」とヴァルドゥリス氏はいう。「この臨床経験は本当に役に立った。というのも、彼らが信号内の特徴を定義付けするのを助けてくれたおかげで、何が重要で何が重要でないかを決定するプロセスの進行を加速させることができたからだ」。

チームは、脳からの関係する信号をモニターするコンパクトなEEGを内蔵した、柔らかいウェアラブルヘッドバンドを作った。このデータがスマートフォンのアプリに送られ、前述のパターンで訓練された機械学習モデルによって分析され、何かが検出されると、ユーザーと事前に指定した介護者にアラームが送られる。また、自動的に911に通報するように設定することもできる。

「私たちが分析したデータの大部分は手術室から出てきたものだ」とヴァルドゥリス氏は語る。このデータをすぐに整合性チェック用データと照合することができる。「その結果、手術室で発生した事象を偽陽性ゼロで確実に捉えることができるアルゴリズムがあることがわかった」。

この結果は、複雑な変数が少ない家庭でも活用できるはずだとのこと。それを実験するために、すでに一度脳卒中にかかったことのある、ハイリスクと言われる人たちのグループと協力して進めている。脳卒中やそれに関連する症状(臨床的にはさまざまなカテゴリーに分類される)が発生した直後の数カ月間は、2回目が多発する危険な時期だ。

画像クレジット:Zeit

「現在、ヘッドバンドと携帯電話をセットにした研究用キットを、研究に参加している人たちに届けている。ユーザーは毎晩それを装着している」とヴァルドゥリス氏はいう。「我々は、2023年のどこかのタイミングで商業化できるような道筋を準備しているところだ。この認可を得るために必要な臨床証明を明確にするため、現在FDAと協力して動いている」。

脳卒中のリハビリテーションを行うBrainQと同様に、彼らのものも「画期的なデバイス」の分類に位置づけられており、試験や認証を迅速に進めることができる。

「まずは米国での販売を開始するが、世界的にもニーズがあると考えている」とネーバー氏はいう。「高齢化がさらに進み、障害者介護のサポート体制がさらに整っていない国もある」。このデバイスは、これまで定期的に病院に通わなければならなかった多くの人々にとって、在宅介護や障害者介護のリスクとコストを大幅に低減することができる。

現在の計画では、データと協力してくれるパートナーを集め続け、大規模な研究を準備することになっている。この研究は、このデバイスを直販から、費用払い戻しの適用(保険適用など)の対象にするために必要なものだ。また、現在は脳卒中に焦点を当てているが、このメソッドは他の神経疾患の検査にも応用できるはずだ。

「将来的には、脳卒中のリスクがある人全員にこのデバイスが支給されるようになることを期待している」とヴァルドゥリス氏は述べている。「私たちは、このデバイスが脳卒中の治療において現在欠けているパズルのピースであると考えている」と述べている。

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画像クレジット:Zeit

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Akihito Mizukoshi)

医療現場のバラバラな書類からデータ構造を解明するMendelが約19.7億円調達

医療業界には膨大なデータが存在するが、データが非構造化されていたり、バラバラな場所に存在していたりするため、多くの場合その価値を理解することは難しい。

情報の内容を取り込み、整理するためのAIプラットフォームを構築しているスタートアップ企業Mendel(メンデル)は2021年6月上旬、その成長を継続し「臨床データ市場」を構築するための1800万ドル(約19億7100万円)の資金調達を発表した。またこの資金は、カリフォルニア州サンノゼとエジプトのカイロにある2つのオフィスで、技術面やサポート面での人材を増やすためにも使用される予定だ。

今回のシリーズAラウンドには、DCMを筆頭に、OliveTree(オリーブツリー)、Zola Global(ゾラグローバル)、MTVLPの他、以前からのサポーターであるLaunch Capital(ローンチキャピタル)、SOSV、Bootstrap Labs(ブートストラップラブズ)、UCSF Health Hub(UCSFヘルスハブ)の会長であるMark Goldstein(マーク・ゴールドスタイン)も参加している。

メンデルによると、研究機関や製薬会社の間では、患者の長期的な治療や経過をより良く理解するために、より優れたデータを収集することへの関心が高まっている。特により広範なユーザーにおいてのデータ収集に関心が高まっており、これは現在人の観察や試験の実施が困難だからという理由だけではなく、AIを使用して大きなデータセットを活用することで、より良い洞察を得ることができると考えられているからだ。今回の資金調達はこうした見解に基づくものだ。

これは例えば、具体的な病気の症状や病理の特定だけでなく、具体的な治療コースに対する反復的でより典型的な反応を積極的に特定する上で重要となる。

メンデルについては、2017年に、定期的に実施されているさまざまな臨床試験とがん患者をよりよくマッチングさせるための200万ドル(約2億1900万円)のシードラウンドを同社が受けた際の記事を書いた。この際のアイデアは、特定の臨床試験は特定のタイプのがんや患者のタイプに対応しているため、新しいアプローチを試したいと思っている人には、適しているアプローチとそうでないものがあるというものだった。

しかし結局のところ、マッチングアルゴリズムを機能させるために必要なデータに問題があったということが、メンデルのCEOであり創業者のKarim Galil(カリム・ガリル)博士によって明らかになった。

彼はインタビューでこう述べた。「トライアルビジネスを立ち上げようとする中で、もっと基本的な問題が解決されていないことに気づいたのです。それは、患者さんの医療記録を読んで理解することでした。それができなければ、臨床試験のマッチングはできません」。

「そこで当スタートアップは、少なくとも3年間は研究開発屋になって、その問題を解決してからトライアルを行うことにしました」と彼は続けた。

今日、非構造化情報を解析してより良い洞察を得ようとしているAI企業は数多くあるが、メンデルは、個別の業種や専門分野に特化したAI知識ベースを構築しているハイテク企業の代表格と言える(例として、GoogleのDeepMind(ディープマインド)も医療分野でのデータ活用を検討している主要なAIプレイヤーだが、別の業種なら法律や経済業界に注力しているEigenが挙げられる)。

自然言語を「読む」ことの問題は、医療の世界ではこれが想像以上にニュアンスに左右されるということだ。ガリル氏は、英語の「I’m going to leave you」というフレーズになぞらえて、これが例えば部屋を出て行くという意味と、人間関係から抜け出すという意味があると説明する。真の答えは ─ 人間である私たちは、真実でさえわかりにくいことがあるとわかっているが─ 文脈の中でしか見つからない。

ガリル氏は、医師とその観察記録も同様であると述べる。「行間には多くのことが隠されていて、問題は人(や状況)によって異なることもあります」。

この分野に取り組めば、利益を得られることがわかっている。

メンデルは、臨床環境とAIアルゴリズムの構築の両方において豊富な経験を持つチームによって構築されたコンピュータビジョンと自然言語処理を組み合わせて使用しており、現在、臨床データの抽出を自動化するツール、OCR、記録を共有する際に個人を特定できる情報を自動的に再編集・削除できる特別なツール、臨床データを検索するための検索エンジン、そして例の臨床試験と人とのより良いマッチングを可能にするためのエンジンを提供している。顧客は、製薬会社やライフサイエンス企業、リアルワールドデータとリアルワールドエビデンス(RWDとRWE)のプロバイダー、研究グループなどだ。

またメンデルは、今回の資金調達と同時に、多くの医療機関で利用されているオンラインファックスソリューション「eFax」との提携を発表し、医療の世界にはまだやるべきことがたくさんあることを強調している。

私の子どもたち(10代)は「Fax」が何であるかさえ知らないかもしれないが、ヘルスケアや医療の世界では、Faxは人と人との間で文書や情報をやり取りするための最も一般的な手段の1つであり、現在では業界の90%がFaxを使用している。メンデルとのパートナーシップにより、これらのeFaxが「読まれ」、デジタル化され、より広範なプラットフォームに取り込まれ、そのデータをより有用な方法で活用できるようになるだろう。

メンデルの役員であり、DCMのパートナーでもあるKyle Lui(カイル・ルイ)氏は、声明の中でこう述べている。「世界のヘルスケア業界がAIを活用することには大きな可能性があります。メンデルは、医療機関がAIを使用して臨床データを自動で意味がわかるものにするための、ユニークでシームレスなソリューションを生み出しました。私たちは、次の成長段階に向けて引き続きチームと協力していくことを楽しみにしています」。

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医療機関用災害対策システム「Smart:DR」を手がけるSmart119が災害時の病院初期対応アプリを公開

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Mendel資金調達医療人工知能コンピュータービジョン自然言語処理

画像クレジット:National Cancer Institute / Unsplash

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

医療機関用災害対策システム「Smart:DR」を手がけるSmart119が災害時の病院初期対応アプリを公開

医療機関用災害対策システム「Smart:DR」を手がけるSmart119が災害時の病院初期対応アプリを公開

テクノロジーによる緊急医療の改善に取り組む千葉大学発の医療スタートアップSmart119(スマートイチイチキュウ)は、医療機関用災害対策システム「Smart:DR」(スマートディーアール)をスマートフォンやタブレットに対応させた「Smart:DRアプリ」を開発。7月15日、Android版iOS版を公開した。

Smart:DRは、災害やテロの発生時に「スタッフの安否確認」「集合要請」をスムーズに行い、医療機関や企業が被害を最小限に抑え、BCP(業務継続計画)策定による事業継続や復旧、傷病者の救命を支援するシステム。Smart119によると、同システムを導入した医療機関からの要望に応え、アプリ版を開発したという。

アプリ版では、受信したメッセージをより明瞭に把握できるほか、災害発生地点の表示や、健康状態の報告も従来より容易になっているそうだ。また、新型コロナウイルスのワクチン接種状況や副反応発生の有無などの情報収集も可能で、院内クラスター発生抑止や職員の健康管理に貢献するとしている。

主な特徴は次のとおり。

Smart:DRの特徴

  • スタッフへの緊急連絡、安否確認
  • 緊急時の集合状況をリアルタイムに把握でき、最適な人員配置を支援
  • 医学的見地に基づいた健康管理情報を自動集計
  • 返信は、ワンクリックで完了でき、ログイン不要
  • 掲示板機能を有し、平時においても活用できる

アプリ版を使うことで「医療従事者が通常時からSmart:DRを積極的に活用し、緊急時に、スムーズに危機管理体制へ参加」することが期待されるとSmart119は話している。

2018年5月設立のSmart119は、「安心できる未来医療を創造する」を目指し、現役救急医が設立した千葉大学医学部発のスタートアップ企業。Smart:DRをはじめ、音声認識とAIを活用した救急医療支援システム「Smart119」、緊急時医師集合要請システム「ACES」の開発・運用も行っている。また千葉県千葉市において、日本医療研究開発機構(AMED)の救急医療に関する研究開発事業を実施した。

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iPS細胞で犬をはじめ動物再生医療に取り組む、日本大学・慶應義塾大学発「Vetanic」が総額1.5億円を調達

iPS細胞で犬をはじめ動物再生医療に取り組む、日本大学・慶應義塾大学発「Vetanic」が総額1.5億円を調達

iPS細胞で動物再生医療を推進するバイオテック領域スタートアップVetanic(ベタニック)は7月15日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による総額1億5000万円の資金調達を発表した。引受先は、慶應イノベーション・イニシアティブが運営するKII2 号投資事業有限責任組合、QBキャピタルおよびNCBベンチャーキャピタルが共同で運営するQB第ニ号投資事業有限責任組合。

同社によると、ヒトで実用化が進む再生医療は、獣医療においても普及が望まれているものの、現在は設備要件を満たした少数の動物病院において実施されているのみで、品質のバラツキや治療開始までのリードタイム、また高額な治療費など、普及に向けた課題が存在するという。

そんな中Vetanicは、日本大学と慶應義塾大学との共同研究により、「世界で唯一の臨床応用に適したイヌiPS細胞の作製」に成功した(iPS細胞作製方法は両大学の共同出願として、PCT特許出願中)。これは「病原性となり得るウイルスを利用しない、免疫反応を惹起してしまう異種の動物成分を用いずに安定的・高効率で誘導できることから、安全性が高く高品質な真の『臨床グレード』と呼べるiPS細胞」とのこと。また、この独自のイヌiPS細胞を起原として、イヌの間葉系幹細胞(MSC)の誘導に成功した。同社はこのMSCを用いた再生医療の実用化を目指し、研究開発を推進するとしている。

iPS細胞で犬をはじめ動物再生医療に取り組む、日本大学・慶應義塾大学発「Vetanic」が総額1.5億円を調達

Vetanicの技術で構築した臨床グレードのイヌiPS細胞

間葉系幹細胞(MSC)とは、体にもともと備わっている幹細胞の一種で、増殖能が高く、神経、脂肪、骨、血管などに分化できる細胞。Vetanicの技術は、脂肪組織由来のMSCとは異なり、ドナー動物に依存しないため倫理的で、動物の身体的負担がなく、治療開始までのリードタイムも短縮できるなど、これまでの再生医療の課題の数々を克服している。

今後は、イヌiPS細胞由来間葉系幹細胞の開発を加速させ、「MSC以外の各種再生医療等製品の開発にも順次着手する」という。

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新型コロナワクチンの「打ち手不足」問題解消を支援、一般的な3Dプリンターで作れる筋肉注射練習モデルが開発・公開

新型コロナワクチンの「打ち手不足」問題解消を支援、一般的な3Dプリンターで作れる筋肉注射練習モデルが開発・公開

掲載写真は手技確認時のイメージのため、手袋の着用は省略している

慶應義塾大学SFC研究所は7月12日、同大学看護医療学部 宮川祥子准教授らが、3Dプリンターで作れる製筋肉注射練習モデルを開発し、その設計データ・作り方・使い方に関する説明書を特設サイトで公開したと発表した。ライセンスは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-SA 3.0)。

新型コロナワクチンの「打ち手不足」問題への対応として、職場を離れている看護師、いわゆる「潜在看護師」の活用が求められているが、長期間現場を離れている看護師がなんの準備もなくいきなりワクチン接種業務に就くのは難しく、協力を得にくいという課題がある。そこで、科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」が支援し、慶應義塾大学を中核拠点とする「感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点」が、上腕三角筋への筋肉注射の練習ができるモデルを生み出した。

今回の開発の中心となった宮川准教授は、かねてより「FabNurse(ファブナース)プロジェクト」を推進し、看護、介護分野にターゲットを絞った3Dプリンターを用いた「ケアのものづくり」による課題解決を研究してきた人物だ。

このモデルは、すでに臨床経験のある(初学者ではない)看護師が上腕への筋肉注射を練習するものとしており、以下の特徴がある。

  • 一般的に販売されている3Dプリンターで出力が可能
  • 肩峰に触れることができ、注射の部位(肩峰から三横指下)を確認することが可能
  • 実際に針を刺して、液を注入することが可能
  • 3Dの設計データは無償で使用することができ、改変可能
  • 作成方法・使用方法に関する説明書が添付されている

このデータは無料で公開されているが、CC BY-SA 3.0ライセンスに基づき製造販売も可能とのこと。ただし、「販売する場合は、新型コロナウイルス対策への貢献という趣旨に鑑み、適正な価格での販売をお願いします」と宮川准教授は話している。

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外科医の技をVRで磨くOsso VRが手術室チーム訓練をマルチプレイヤーゲーム化するため約30億円調達

パンデミックの際、VRは究極のオフィス代替テレプレゼンスマシンにはならなかった。そうしようとする努力が不足していたわけではない。しかし、VRを使った従業員トレーニングに力を入れているスタートアップの一部は、2020年、さまざまな業界の専門家がリモート環境から組織的な知識にアクセスする必要に迫られたことで、新たな評価を得た。

サンフランシスコを拠点とし、医療トレーニングに特化した仮想現実のスタートアップであるOsso VRは、パンデミックの間、Johnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、Stryker、Smith & Nephewなどの医療機器の大企業各社とのパートナーシップを強化したことで、投資家の注目を集めた。Osso VRがTechCrunchに語ったところによると、最近同社は、GSR Venturesが主導し、SignalFire、Kaiser Permanente Ventures、Anorak Venturesなどが参加したシリーズBで、2700万ドル(約30億円)の資金を調達したという。

創業者兼CEOのJustin Barad(ジャスティン・バラッド)博士はTechCrunchに、パンデミックによって顧客が同社のプラットフォームに新たな需要を見出したことで「非常に強いレベルの緊急性が生まれた」と語った。

Osso VRは、VRをベースにしたソリューションで、現代の外科手術のあり方を変えようとしている。このソリューションにより外科医は、腕を伸ばせるだけのスペースがあればどこにいても、新しい医療機器を3D空間で操作し、デジタルの解剖用死体に対して何度も手術を「行う」ことができる。Ossoの取り組みは、特に医療機器企業の顧客にとって有益なものだ。顧客はこのプラットフォームを利用して自社のソリューションに精通することができ、外科医はそれらを移植する経験を積める。

Ossoの大きな目標の1つは、ビデオゲームのマルチプレイヤー機能を仮想手術室に導入することだ。これにより、外科医と医療助手がリアルタイムで協力し合い、自分の担当する部分を把握するだけでなく、手術全体の中でどのように位置づけられるかを把握できるようになる。

「(手術は)オーケストラのようなもので、それぞれが異なる役割を担っているのと同時に、お互いにコミュニケーションをとる必要があります」とバラッド博士はいう。

バラッド博士は、これはVRの空間的な広がりを必要とするプロセスであり、それに加えて指導は常にテキストやビデオによって補完されると語った。

同氏は、スタートアップの目標を「明確に良いもの」と呼んでいる。そのおかげか、同社のチームは約100人の従業員を抱えるまでに成長し、その中には世界最大の医療イラストレーターチームも含まれている。このチームのおかげで、プラットフォームのコンテンツは、10の専門分野にわたる100以上のモジュールにまで拡大した。

近年、VR関連企業は、消費者や企業への普及がこの技術に対する初期の野心に比べて遅れているため、投資家の注目を集めるのに苦労している。その代わりに投資家は、ゲームやコンピュータビジョンなど、頭に装着する特殊なハードウェアを必要としない隣接技術への投資に注目している。Osso VRのプラットフォームは、Facebook(フェイスブック)のOculus for Businessプログラムを通して提供されるOculus Quest 2ヘッドセットで動作する。

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カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:Osso VR医療手術資金調達トレーニングVROculus Quest

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

5GとVR・AR技術、3Dプリンティング技術を活用し東京の指導医が大阪の若手歯科医による歯科手術を遠隔支援

5GとVR・AR技術、3Dプリンティング技術を活用し東京の指導医が大阪の若手歯科医による歯科手術を遠隔支援Holoeyesは、Dental Predictionとソフトバンクの協力のもと「5GネットワークにおけるXR歯科手術支援の有効性の検証」に関する実証実験を7月12日から実施します。

5GとXR技術、3Dプリンティング技術を活用した実験で、東京にいる指導医が大阪にいる若手歯科医に、VR・AR映像を通して診断・治療の指導と手術を支援をするといった内容です。

具体的には、歯が欠損した場合に行うインプラント手術の症例を扱います。インプラント手術は、知識的にも技術的にも比較的難易度の高い処置です。5GとXR技術、3Dプリンティング技術を活用して、物理的な場所の制約を受けずに若手歯科医への知識や技術の伝授ができるかを検証します。

5GとVR・AR技術、3Dプリンティング技術を活用し東京の指導医が大阪の若手歯科医による歯科手術を遠隔支援

3Dモデル/3Dプリンティング模型

実験では患者のデータを基に作成した頭蓋骨の3Dモデルを使い手術に必要な3次元の動きをVR空間で共有します。診断と検討の後、指導医は3DモデルをAR空間で操作しながら、同じ患者の顎骨の3Dプリンティング模型を使って指導します。

若手歯科医はAR映像を見ながら模型にドリルで穴を開けるなどの実習を行うことで、インプラント手術の一連の流れを体験できます。最終的には、指導医が東京からAR映像を通して支援しながら、若手歯科医が大阪市内の歯科クリニックで実際の患者の手術を行います。

なお、遠隔指導および遠隔手術支援に当たっては、現役の歯科医であるDental Prediction代表の宇野澤氏が、診断を行う上で重要なポイントや解剖に関する手順を解説します。

各種デバイスに対応したHoloeyesの医療用画像表示サービス「Holoeyes XR」と、オンライン遠隔共有カンファレンスサービス「Holoeyes VS」を活用し、ソフトバンクの5GネットワークでVR・AR映像を送受信することで、指導や手術支援を行います。

以降リリースより転載です。

実証実験の概要

  1. 名称:5GネットワークにおけるXR歯科手術支援の有効性の検証
  2. 実施期間(予定):2021年7月12日~9月
  3. 実施場所:東京会場:ソフトバンク本社(東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝 オフィスタワー)、大阪会場:5G X LAB OSAKA(大阪市住之江区南港北2-1-10 ATCビルITM棟 6階「ソフト産業プラザTEQS」内)

実施の流れ

  • ステップ1(7月12日実施予定):過去に手術を受けた患者のデータを基に作成した3Dモデルで症例検討と解剖手順の確認を行った後、同じ患者の3Dプリンティング模型を使って、若手歯科医が手術の一連の流れを体験します。複数の若手歯科医へ同時に遠隔指導することで、その有用性を検証します。
  • ステップ2(8月実施予定):これから手術を受ける患者のデータを基に作成した3Dモデルで症例検討と解剖手順の確認を行った後、同じ患者の3Dプリンティング模型を使って、若手歯科医が手術の一連の流れを体験します。今後予定している手術を、複数の若手歯科医が同時に疑似体験できることを検証します。
  • ステップ3(9月実施予定):東京の指導医が遠隔支援しながら、若手歯科医が大阪市内の歯科クリニックで実際の患者(ステップ2の患者)の手術を実施します。若手歯科医が、指導医の遠隔支援の下で安全かつ確実に手術ができることを検証します。

(Source:ソフトバンクEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)XR / xR(用語)遠隔医療(用語)拡張現実 / AR(用語)仮想現実 / VR(用語)歯 / 歯科(用語)3D / 3Dモデル(用語)3Dプリント / 3Dプリンター(用語)ソフトバンク / SoftBank(企業)Dental Prediction(企業)5G(用語)HoloEyes(企業)日本(国・地域)

赤外線レーザーを応用し採血なしで血糖値を測定可能な非侵襲センサーを開発するライトタッチテクノロジーが1.2億円調達

赤外線レーザーを応用し採血なしで血糖値を測定できる非侵襲血糖値センサーを手がけるライトタッチテクノロジーが1.2億円調達

赤外線レーザーを応用した採血のいらない非侵襲血糖値センサーの開発を行うライトタッチテクノロジー(LTT)は7月5日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額1億2000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、テックアクセルベンチャーズ、GA投資組合、フューチャーベンチャーキャピタルの各社が運営するファンド。2017年の創業以来の資金調達総額は補助金などを含めて約3億円となった。

LTTは、採血による血糖値測定における糖尿病患者の苦痛・ストレスの緩和、感染症リスクの低減、ならびに糖尿病予備軍や健常者の血糖値管理よる糖尿病予防を目標として、赤外線レーザーを応用した採血のいらない非侵襲血糖値センサーを開発している。調達した資金により、量産化に向けた試作器の開発を行い、臨床試験、薬事承認に向けた展開を加速させる。

赤外線レーザーを応用し採血なしで血糖値を測定できる非侵襲血糖値センサーを手がけるライトタッチテクノロジーが1.2億円調達

糖尿病患者は、1日4~5回、指などを針で穿刺する採血型自己血糖値センサー(SMBG: Self-Monitoring of Blood Glucose)を用いて血糖値を測定しなければならず、痛みや精神的ストレス、さらに感染症の危険を伴うなどの多くの問題を抱えている。LTTは、最先端レーザー技術により、従来光源と比較して、約10億倍の明るさの高輝度赤外線レーザーの開発に成功し、非侵襲血糖測定技術を確立した。採血なしに約5秒で血糖値を測定できるため、糖尿病患者や健常者による気軽な血糖値管理に活用することで、糖尿病人口の増加抑制、年々増加する医療費や介護費の削減とともに、健康寿命の延伸を目指すとしている。

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NASAが宇宙空間でゲノム編集技術「CRISPR」実施に成功、微重力下でのDNA損傷修復メカニズム研究

ASAが宇宙空間でのゲノム編集技術「CRISPR」実施に成功、微重力下におけるDNA損傷の修復メカニズムを研究する方法を開発

Sebastian Kraves and NASA

NASAの宇宙飛行士クリスティーナ・コック氏は、CRISPR-Cas9と呼ばれる遺伝子編集を宇宙空間で行うことに初めて成功しました。

この実験では、ISS内で培養した酵母の細胞のDNAに、二本鎖切断と呼ばれる特に有害なDNA損傷を生じさせ、放射線などによる非特異的な損傷では得られない、微重力状態におけるより詳細なDNA修復メカニズムを観察しました。コック飛行士は2020年2月に地上へ帰還しており、実験もそれ以前に完了していたものの、その結果が出るのについ最近までかかったとのこと。

重力のない、またはほとんどない場所での長期間の生活は、様々な場面で生命活動に変化をもたらす可能性があります。とくに地磁気による保護のない宇宙空間では飛行士は常に宇宙線(地球外の宇宙空間からの放射線で、生物へ大きな影響をもたらす重粒子線を多く含む)に晒されることになり、それによるDNAへの影響は避けられません。

そのため、この実験を足がかりに宇宙空間でのDNA修復にまつわるさらに多くの実験研究への道が開かれ、十分な知見が蓄積されれば、将来の有人火星探査やさらに深宇宙への有人探査が現実的なものになるかもしれません。

今回の研究は、宇宙でCRISPR-Cas9によるゲノム編集に成功した初めての例であり、生きた細胞に外部からの遺伝物質を取り込ませる形質転換に成功した初めての例でもあります。そして将来の研究で、電離放射線によって引き起こされる複雑なDNA損傷をよりよく模倣してさらに研究を重ねられるようになることが期待されます。人類が火星やその先へと向かうのに、CRISPR-Cas9が重要な役割を担うことになるかもしれません。

(Source:EurekAlertEngadget日本版より転載)

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着用者の新型コロナ感染を検出できるセンサー搭載マスクをMITとハーバード大の研究者らが発表

着用者の新型コロナ感染を検出できるマスクのプロトタイプをMITとハーバード大が発表

MIT

マサチューセッツ工科大(MIT)とハーバード大学の研究者らは6月28日(現地時間)、約90分以内に着用者の新型コロナウイルス感染有無を診断できるフェイスマスクのプロトタイプを発表しました。マスクには使い捨てのセンサーが取り付けられており、このセンサーは他のマスクにも装着が可能。また、新型コロナウイルス以外の検出にも応用可能です。

このセンサーは、もともとエボラ出血熱やジカ熱などのウイルスを検出するために研究されていたもの。ペーパー診断用に開発した、凍結乾燥させた細胞機構をベースにしています。ようするに、有機材料で作られたバイオセンサーです。タンパク質やRNAなどの生体分子が凍結乾燥(フリーズドライ)の状態で含まれており、これが水分によって活性化されると、標的となるウイルスの分子と相互作用を起こし、色の変化などでウイルスの有無を検出できる仕組みです。

当初はウイルスに晒される機会の多い医療従事者向けに開発していたもの。白衣に取り付けることでウイルス暴露を検出できるウェアラブルセンサーとして、2020年初頭にはすでに完成していたとのこと。その後すぐに新型コロナのパンデミックが発生し、これを検出するためのマスクの開発に着手したとしています。

マスクの内側に装着することで、呼気中の唾液に含まれるウイルスを検出可能。なお、プライバシーに配慮し、色の変化は内側でのみ確認できるようになっています。

ハーバード大学の研究員Peter Nguyen氏は、ゴールドスタンダード(精度が高く信頼性があり広く容認されている手法)である高感度PCR検査と同程度の感度で、COVID-19の迅速な分析に使われる抗原検査と同じくらいの速さで検出できるとしています。

また、新型コロナウイルス以外にも、インフルエンザやエボラ出血熱、ジカ熱など、他の病原体を検出するセンサーも取り付けられるほか、もとの用途通り、衣服に装着しての利用もできるとのことです。

まだ試作品の段階ではありますが、承認プロセスなどを経て製品化を考えている外部グループからも関心を寄せられているとのことなので、意外と早く世に出てくるかもしれません。

(Source:MIT NewsEngadget日本版より転載)

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MICINが外科手術患者の手術前から退院までの期間・周術期をケアするアプリ「MedBridge」を開発

MICINが外科手術患者の手術前から退院までの期間・周術期をケアするアプリ「MedBridge」を開発

オンライン診療やデジタルセラピューティクスなどの技術開発と提供を行うヘルステック企業MICIN(マイシン)は6月21日、外科手術を受ける患者の周術期ケアを行うアプリ「MedBridge」(メドブリッジ)の開発を発表した。また、心臓血管外科手術を受ける患者の周術期ケアアプリ「MedBridge heart care」(ハートケア)を7月から地域限定で提供開始すると明らかにした。

周術期とは、手術前から退院までの期間をいう。しかし外科手術の分野では、開胸しない低侵襲化などの技術進歩により手術患者の入院日数が短縮され、早期退院した患者による自宅でのセルフケアが重要になっているという(侵襲は、身体的負担といった意味の医学用語)。また、「術前からセルフケアを行い術後に備えること」や、退院後の生活習慣を適切に保つことが日常生活への復帰を早めるといわれている。そこで、「周術期ケアに取り組むことは、術式の進歩と並行して大切」との考えから、MICINはこのアプリの開発に着手した。MICINが外科手術患者の手術前から退院までの期間・周術期をケアするアプリ「MedBridge」を開発またMedBridge heart careについては、MedBridgeのローンチに先駆け7月から地域限定で提供を開始する。MedBridge heart careは、患者が使用するモバイルアプリと、医療機関が使用するウェブシステムで構成される。患者には次のような利点がある。

  • アプリから周術期に必要な情報を入手し学習できる
  • 自身の医療や健康に関する情報を一元管理するPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)を自宅で記録することで、体調管理の習慣が身に付く
  • PHRをつけておくことで、退院後の診察時に回復の経過を医師に伝えやすくなる
  • PHRを家族と共有するこで、家族・周囲の方が安心して見守りを行える
  • 患者の在宅時の情報について主治医とも共有を行え、診療の効率化と質の向上が期待できる

MICINでは、アプリ開発に先立ち、2020年6月から東京ベイ・浦安市川医療センター、オムロン ヘルスケアとの協力で実証実験を行ってきた。MedBridge heart careは、ビジネスモデルの検証などを行った後に全国展開する予定。

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カテゴリー:ヘルステック
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Qidni Labsの「水を使わない」携帯型透析装置、埋め込み可能な人工腎臓実現への小さな一歩

この1年、カナダにいる3頭の羊は、自分の腎臓を袖につけていた。もっと正確にいうと、フワフワの毛で覆われた背中にジャケットを着ているのだ。

この3頭の羊は、水を使わない携帯型血液浄化システムを追求しているスタートアップ企業Qidni Labs(キドニー・ラボ)が実施している継続的な動物実験の一環だ。2014年にニューヨーク州バッファローで設立されたQidni Labsは、これまでに150万ドル(約1億6500万円)の資金を調達しており、現在は新たな投資ラウンドに向けて企業精査を行っている。同社が開発したウェアラブル腎疾患治療機器の空気除去システムは、2019年のKidneyX Summitで賞を獲得したこともある。

羊が身につけているジャケットは、Qidni Labsの携帯型血液透析装置「Qidni/D」の試作品だ。そのアイデアは、従来の血液透析装置よりも大幅に小型化し、使用する液体の量を少なくすることで、患者がより動き回りやすくなるというものだ。

「このデバイスと技術は、患者が動き回ることができる血液浄化技術への橋渡しになると我々は考えていますが、これがそのまま最初の製品になるとは思っていません」と、Qidni Labsの創業者でCEOを務めるMorteza Ahmadi(モルテザ・アフマディ)氏は語っている。

CDC(米国疾病管理予防センター)によると、米国では7人に1人が何らかの慢性腎臓病を患っていると言われている。時間の経過とともに腎不全が進行する可能性があり、その時点で透析や移植を受けることが推奨される。その基準となるのが、体重減少、息切れ、不整脈などの症状だ。

透析には大きく分けて、血液透析と腹膜透析の2種類がある。血液透析は、体外に導き出した多量の血液を、特殊なフィルターと透析液という液体に通してまた体内に戻す方法。腹膜透析は、体内に透析液を注入して血液中の老廃物を吸収させ、それを排出する。Qidni/Dは、羊サイズのジャケットに収まる大きさの血液透析装置で、独自のカートリッジとゲルをベースにしたシステムを使うことで、透析を行うために必要な液体の量を削減している(TechCrunchはこの装置の画像を確認している)。初期の動物実験(結果はまだ査読付きジャーナルで出版されていない)では、このデバイスは、従来の透析と同等の適切な値まで、羊の血液中の尿素のレベルを下げることができた。TechCrunchでは、この研究のデータをZoomで確認している。

この羊たちは機能する腎臓を持たず、4時間から8時間半ほどこの機器に繋がれていた。アフマディ氏によれば、これまでのデータから、羊の血液をきれいにするには4時間の治療で十分だと考えられるという。

今回の研究は小規模な動物実験であり、大きな結論を導くことはできない。例えば、この研究では能動的な対照群を設けておらず、羊の血液から除去された尿素と電解質の量を、他の透析研究で公表されている基準と比較している。

この技術を市場に投入できると判断するには、今回の研究だけでは十分ではないものの、Qidni Labsの携帯型透析装置の設計が、さらなる試験に耐えうるものであることを示していると、社内では考えている。

「今回の研究では、データに基づいて私たちは毎日の透析を置き換えることができたと言えるでしょう」と、アフマディ氏はいう。

チームは年内に、さらに羊を使った研究で技術の改良を続けていき、2022年には人による臨床試験を開始することを目指している。臨床試験で安全性と有効性が実証されれば、2023年後半にFDA(米国食品医薬品局)の承認を申請するというのが全体的な目標だ。

腎臓の治療は、負担の大きい治療である透析が主流となっている。多くの場合、腎臓移植によってその負担を軽減することができるにもかかわらずだ。

現時点では、腎臓移植を受ける人よりも、透析を受ける末期腎不全患者の方がはるかに多い。CDCの推計によると、米国には約78万6000人の末期腎不全患者がいるが、そのうち71%が透析を受けており、29%が腎臓移植を受けている。

人工透析事業では、特に業界の約70%を支配する2大企業であるFresenius(フレゼニウス)とDaVita(ダヴィタ)が複雑な歴史から業績不振に陥っており、そのリスクとコストは物議を醸している

腎臓治療の状況は、メディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険制度)でカバーされているという点でも注目を集めているが、依然として費用が高額であることに変わりはない。透析と移植は、メディケアの予算の約7%を占めている。このように状況が複雑であるため、いくつかのスタートアップ企業が埋込み式人工腎臓のような代替手段を追求している。

Qidni Labsの現在の製品は、機能しなくなった腎臓の代わりに患者の体内に永久に埋め込まれるという意味での人工腎臓ではない。そうではなく、より移動やすく人工透析を行うためのものだ。Qidni/Dと呼ばれる血液浄化装置が、当面の間はQidni Labsの主力製品となる。

とはいえ、Qidni/Dには、アフマディ氏が期待するように「破壊的」な効果をもたらす可能性のある、いくつかのユニークな要素がある。それは、サイズが小さいことと、必要な水の量が少ないことだ。

CDCによると、平均的な患者は1週間の透析治療の間に、約300〜600リットルの水を必要とする。この水の一部は、血液中の毒素を排出するための透析液に使用される。アフマディ氏によると、Qidni/Dでは1回の治療で使用する水はわずかコップ1杯分で、そのほとんどが透析液に含まれるという。

「私たちが知る限り、水を使わない技術が、大型の動物モデルで血液浄化に長期にわたり有用であることが確認されたのは、おそらく世界でも初めてのことだと思います」と、アフマディ氏は語る。

透析から液体を取り除くことができれば、現状では非常に大変なプロセスを効率化できる可能性がある。それによって、自宅での透析が可能になり(水の安全性に関する要求が緩和される)、感染症のリスクが軽減される(透析中に水による感染症が発生することがある)ことを、アフマディ氏は期待している。

それはまた、埋め込み可能な腎臓の実現に向けた小さな一歩でもある。埋め込み可能な腎臓は、大量の液体を必要としないのが理想だからだ。とはいえ、現在Qidni Labsが重点を置いているのは、あくまでも移動可能な透析だ。同社がこれから行う資金調達ラウンドでは、小規模な臨床試験を行い、カートリッジ式の技術を人体で試すことに注力する予定だ。

「今度の投資ラウンドでは250万ドル(約2億7600万円)を調達し、この技術を少人数の患者でテストしたいと考えています。テストでは患者を既存の既存の透析装置に接続し、透析液の代わりに当社独自のカートリッジを使用します」と、アフマディ氏は述べている。

患者にとって究極の命題は透析を必要としないソリューションではあるとはいえ、Qidni Labsの取り組みは最終的により臓器に近い機能を持つ透析装置を実現するための一歩となるだろう。

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(文:Emma Betuel、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

HACARUSと東京大学がアルツハイマー病やパーキンソン病の治療法開発を目指すAI創薬研究を開始

HACARUS(ハカルス)と東京大学大学院薬学系研究科は6月16日、アルツハイマー病やパーキンソン病の治療法開発を目指す、AI創薬の共同研究を開始すると発表した。今回の共同研究では、両疾患の病因となるタンパク質の凝集・散開するメカニズムの解明をHACARUSのAIを活用した画像解析技術を用いて試み、治療法開発を目指す。

アルツハイマー病、パーキンソン病ともに、脳内でのタンパク質凝集が病因となることがわかっている。人間にはタンパク質を分解する能力(オートファジー)が備わっているものの、アルツハイマー病・パーキンソン病は、この能力の機能不全であることも解明されてきているという。

研究課題としては、アルツハイマー病では、病因となるタンパク質の生産を抑制する阻害剤がいくつか見つかっているものの、毒性の問題があり治療への活用に至っていないこと、またパーキンソン病では対症療法が「L-ドパ」という薬を使ったドパミン補充が中心であることを挙げられている。ともに根本的な治療法が発見されておらず、新たな予防・診断・治療法の開発が必要としている。

東京大学大学院薬学系研究科は、「医薬品」という難度が高く、かつ高い完成度が要求される「生命の物質科学」と、国民生活に直結した「生命の社会科学」を探求し、2つの科学の最終目標である「人間の健康」を最重要課題としていることが最大の特徴の部局。同機能病態学教室の富田泰輔教授は、アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患の病態生化学に関する研究を行っている。

HACARUSは、スパースモデリング技術をAIに応用したデジタルソリューションを提供しており、少ないデータ量で高精度なAIを活用できることから産業分野だけでなく、希少疾患への応用など医療分野でも数多くの課題解決に貢献している。

富田教授によると、様々な神経変性疾患において、細胞内外の異常タンパク質の蓄積や細胞内輸送の異常などが発症プロセスにおいて重要であることが明らかとなっており、これらを定量的に解析し、様々な薬剤の影響を見積もる必要が出てきているという。ただ従来は、細胞や組織を染色後画像データの解析を人為的に行っていたため、HACARUSと共同でそのプロセスを自動化し、機械学習を用いてノンバイアスに解析する手法を開発することで詳細に解析できるのではないかとしている。

またHACARUSは、スパースモデリング技術を用いた画像診断およびR&Dプロセスの自動化に取り組んできており、その2つの強みを掛け合わせて、CNS(中枢神経系)分野において富田教授と共同研究に取り組むとしている。

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「のど」撮影画像の解析で診断、アイリスがインフルエンザを判定可能な感染症診断AI搭載医療機器を日本初承認申請

医療機器の研究開発・製造、機械学習の技術開発を手がけるアイリスは6月16日、咽頭(のど)画像の解析を基にインフルエンザ判定を行うAIアルゴリズムを開発し、咽頭カメラを含むAI搭載システムを「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)に基づき、厚生労働大臣宛て医療機器製造販売承認申請をしたと発表した。

今回申請した機器では、AIプログラムのみならず、AI解析に適した咽頭画像を撮影するための咽頭撮影専用カメラも自社で設計・開発。これにより既存の内視鏡などを用いずに口腔内・咽頭を鮮明に撮影することを実現した。

今回申請の機器では、専用カメラで撮影した患者の咽頭写真を基に、体温などのデータと組み合わせて人工知能(AI)がインフルエンザの「陽性」「陰性」を短時間で判定する。患者にとっては侵襲性の低い検査法となり、また医療機関での診療プロセスを工夫することで医療者が患者由来の唾液飛沫を浴びる場面を減らしながら効率よく診察できることを目指している。この仕組みには、日本人医師の宮本医師が発見したインフルエンザ濾胞(ろほう)の知見も活かされているという。

アイリスによると、前向き試験としてAI医療機器の有効性検証治験が実施し承認申請を行う日本初の事例となり、承認後は、全国の医療機関での導入や医療現場での活用が可能となる。ちなみに米国FDA(アメリカ食品医薬品局、医療機器の認可を行う機関)認可の130のAI医療機器においても、4製品のみとしている。

既存のインフルエンザ検査法は、発症早期では診断精度が十分に発揮されず、現場で実践した際の精度が6割程度との研究報告があるという。また、検査時に綿棒を鼻腔内に挿入する行為は、患者の痛みを伴うと同時に、検査時の医療者に対する飛沫感染リスクが懸念されているそうだ。

アイリスはこれら課題を解決すべく、2017年11月の創業時から研究・開発に取り組んできた。これまでに6名の医師を含む9名の医療従事者や厚生労働省・経済産業省出身者、医療AI領域に特化したデータサイエンティスト、大手医療機器メーカー出身者など多数の専門職が揃い、医療現場、技術(ハードウェア・ソフトウェア・AI)、規制を深く理解したうえでAI医療機器をスピーディに開発する体制を構築している。

2018・2019年度には、自社開発の咽頭カメラを用いて、臨床研究法における特定臨床研究として大規模な前向き研究を実施。のべ100医療機関・1万人以上の患者に協力してもらい、50万枚以上の咽頭画像を収集し、独自の咽頭画像データベースを構築した。また、同データベースの活用によりインフルエンザ判定AIプログラムを開発。これをもって2020年に治験を実施し、機器の有効性・安全性などの検証を行ったという。

アイリスは今後、機器の製造販売承認取得後に向けた販売体制の構築を進める。さらに、世界でも研究報告の前例がない、咽頭画像からインフルエンザ判定が可能なAIアルゴリズムとして、日本から世界への展開を目指す。同時に、咽頭画像を活用することでインフルエンザ以外の感染症や感染症領域以外の疾病判定が可能となるよう、大学病院、クリニック、学会などと引き続き連携の上、次なる医療機器の開発をより加速する。

アイリスは医師の技術や医療の知見を集約させ、デジタル化することで、医療技術を共有・共創できるような医療の姿を目指して、これからも研究開発を続ける。

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前年比100%の成長を遂げたスウェーデンの遠隔医療サービス「Kry」、パンデミックで地位向上

スウェーデンのデジタルヘルススタートアップKry(クリー)は、臨床医と患者をつなげて遠隔診療を行う遠隔医療サービス(およびソフトウェアツール)を提供している。同社は、パンデミックが西欧を襲う直前の2020年1月に、シリーズCで1億4000万ユーロ(約184億6000万円)を調達した。

2021年4月末に発表されたシリーズDには、前回に続き応募者が殺到し、資金調達額は3億1200万ドル(2億6200万ユーロまたは約339億2400万円)。資金は、西欧地域での事業拡大を加速させるために使われる。

2015年に創業したスタートアップであるKryの今回のラウンドには、新旧入りまじった投資家たちが参加した。シリーズDはCPP Investments(カナダ年金制度投資委員会)とFidelity Management & Research LLC(フィデリティ・マネジメント&リサーチLLC)が主導し、The Ontario Teachers’ Pension Plan(オンタリオ州教職員年金基金)やヨーロッパを拠点とするベンチャー・キャピタルのIndex Ventures(インデックス・ベンチャーズ)、Accel(アクセル)、Creandum(クリアンダム)、Project A(プロジェクトA)などの既存投資家が参加している。

新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行し、ソーシャルディスタンシングが必要になったことから、遠隔医療分野の地位が明らかに向上した。そのため、遠隔診察を可能にするデジタルヘルスツールの導入が患者と臨床医の両方で加速している。Kryは2020年、医師によるオンライン診察を可能にする無料サービスの提供にすばやく取りかかった。当時、医療を支援しなければならないという大きな責任を痛感していた、と同社は語っている。

公衆衛生上の危機的状況の中で、Kryの俊敏性は明らかに功を奏し、2020年のKryの前年比成長率は100%になった。つまり1年前に約160万件だったデジタルドクターの予約数が、現在は300万件を超えているということだ。また6000人もの臨床医が同社の遠隔医療プラットフォームとソフトウェアツールを利用している(登録されている患者数は公表されていない)。

しかし共同設立者兼CEOのJohannes Schildt(ヨハネス・シルト)氏によると、医療の需要に関しては、ある意味では穏やかな12カ月だったようだ。

パンデミックの影響で、新型コロナウイルス感染症の検査(Kryが一部の市場で提供しているサービス)など、新型コロナウイルス感染症に関連する特定の需要が高まっていることは確かだ。しかし同氏がいうには、国家的なロックダウンや新型コロナウイルス感染症への懸念から、医療に対する通常の需要がいくらか抑制された。そのため、新型コロナウイルス感染症による公衆衛生上の危機の渦中に、Kryが100%の成長率を達成したのは、医療の提供がデジタル化されていく中での次なる展開を占う出来事にすぎない、と同氏は確信している。

「世界的なパンデミックに関して、言うまでもなく当社は正しい道を進んできました。振り返ってみると、メガトレンドは明らかにパンデミックよりずっと前から存在していましたが、パンデミックがそのトレンドを加速させました。そして当社の活動を支えるという点で、そのトレンドが当社と業界に貢献しました。現在、医療システムの前進に遠隔治療とデジタル医療が重要な役割を果たすという考えは、世界中にしっかりと定着しています」とシルト氏はTechCrunchに語った。

「この1年間で需要が増加したことは明らかです。しかし医療提供をより広い視点から見てみると、欧州のほとんどの国で、医療サービスの利用率が実質的に過去最低になっています。なぜなら、厳しい制限がかけられたことで、多くの人々が病気にならないからです。かなり不思議な力が働いています。一般的な医療サービスの使用状況は、実質的に過去最低になっていますが、遠隔治療は増加傾向にあり、当社は以前よりも多くの業務を行っています。これはすばらしいことです。当社は多くの優秀な臨床医を雇用し、臨床医がデジタルに移行するのを助ける多くの優れたツールを提供しています」。

Kryの無料版の臨床医向けツールは、同社の「地位を大きく向上させた」とシルト氏はいう。パンデミックによってデジタルヘルスツールの導入が加速し、サービスの提供に大きな変化が起こっていることに、シルト氏はとてもワクワクしている。

「私にとって最大のポイントは、今や遠隔治療がしっかり確立され、定着しているということです。ただし成熟度のレベルは、欧州市場の間で差があります。2020年のKryのシリーズCラウンドのときでさえ、遠隔治療は当たり前のものではなかったかもしれません。もちろん当社にとっては、ずっと当たり前のものなのですが。どんな場合にもはっきり分かっていた点は、遠隔治療は未来への道であり、必要不可欠だということです。医療提供の多くをデジタル化する必要があります。そして当社がやるべきことは、着実に前進することだけです」。

(現在のパンデミックによるロックダウンが原因の需要の抑制はさておき)医療資源の需要が高まるなか、デジタルへの移行は(必然的に)制限されている医療資源の活用を拡大するために必要なものだとシルト氏は主張する。どんなときにも、Kryが医療提供における非効率性を解決することに注力してきた理由はここにある。

Kryは、公的医療制度で働く臨床医を支援するツールを提供するなど、さまざまな方法で非効率性を解決しようとしている(シルト氏によると、例えば、税金で賄われているNHSを通して大部分の医療が提供されている英国市場では、全GP[一般開業医]の60%以上がKryのツールを使用している)。さらに(いくつかの市場では)遠隔治療と外来診療所のネットワークを組み合わせた総合的な医療サービスを提供しており、利用者が臨床医の診察を直接受ける必要がある場合には、外来診療所に行くことができる。また、欧州の民間医療機関とも提携している。

要するにKryは、医療提供をサポートする方法にはこだわらない。この考えは技術面にも及んでいる。つまりビデオ診療は、感染症、皮膚疾患、胃の疾患、心理的障害など幅広い疾患に対する遠隔診療を提供する遠隔治療事業の一環にすぎない(いうまでもなく、すべての疾患を遠隔治療できるわけではないが、一次診療レベルの診察の多くは、医師と患者が直接面会する必要はない)。

今回の新たな資金調達によって投資が拡大されるKryの製品ロードマップでは、Internet Cognitive Based Therapy(ICBT:インターネットベースの認知行動療法)やメンタルヘルスの自己評価ツールなどの患者向けアプリを拡張して、デジタル指向の強い治療を提供することにも取り組んでいる。シルト氏によると、同社は、慢性疾患をサポートするためのデジタルヘルスケアツールにも投資する予定だ。このために、(実績のある既存の治療法をデジタル化するか、新しいアプローチを提案するかして)より多くのデジタル治療法を開発したり、買収や戦略的パートナーシップを通じて能力を拡大したりしている。

過去5年以上にわたり、不眠症不安神経症などの疾患、理学療法士の施術を直接受ける必要のある筋骨格疾患や慢性疾患のための、実績のある治療プログラムをデジタル化するスタートアップが増加している。Kryがプラットフォームを拡大するために連携するパートナーの選択肢は確かに豊富にある。しかし同社は、ICBTプログラムを自社開発しているため、デジタル治療分野そのものに取り組むことに不安はない。

「医療の大きな変化と移行の第4ラウンドに入ったことから、臨床医が高品質の医療を極めて効率的に提供するための優れたツールに投資し続けること、そして患者側の経験を深めることは、当社にとって非常に大きな意味があります。そうすることにより、より多くの人々の支援を続けることができるからです」とシルト氏はいう。

「当社は、ビデオやメッセージのやり取りを通して多くのことを行っていますが、それはほんの一部にすぎません。当社は現在、メンタルヘルス管理計画に多くの投資を行い、ICBT治療計画を進めています。また慢性疾患の治療への関与も深めています。当社に、臨床医がデジタル的にも物理的にも高品質な治療を大規模に提供するための優れたツールが存在するのは、当社のプラットフォームがデジタル面と物理面の両方を支えているからです。また2021年は、ときには同社が自力で、ときにはパートナーの力を借りて行っているデジタルでの医療提供と、物理的な医療提供を結び付けるために尽力しています。ビデオ自体はパズルの1ピースに過ぎません。当社が常に大切にしてきたことは、最終消費者の視点、患者の視点から医療を見ることでした」と同氏は語っている。

同氏は次のように続ける。「私自身も患者なので、当社が行っている多くのことは、一部の分野で構築されているシステムの非効率さ加減に対して私が感じたフラストレーションが動力源になっています。世の中には優れた臨床医が数多くいますが、患者目線の医療が足りていません。そして欧州市場の多くで、アクセスに関する明確な問題が発生しています。このような問題が、常に当社の出発ポイントでした。どうすれば、患者にとってより良い方法でこの問題を確実に解決できるのでしょうか。その解決策として、患者のための強力なツールとフロントエンドの両方を構築する必要があることは明らかです。そうすれば患者は簡単に治療を受けることができ、自分の健康を積極的に管理できるようになります。また臨床医が操作、作業できる優れたツールの構築も必要です。当社はそれにも力を入れています」。

「当社が抱えている臨床医だけでなく、提携している臨床医も含め、多くの臨床医が当社のツールを使用してデジタル医療を提供しています。そして当社はパートナーシップの下で、多くのことを行っています。当社が欧州のプロバイダーであることを考えれば、最終消費者が実際に治療を受けられるようにするには、政府や民間保険会社とのパートナーシップも必要です」。

デジタル医療提供分野の別のスタートアップたちは、AIを活用したトリアージや診断用チャットボットを使った医療へのアクセスを「デモクラタイズ」する(多くの人に普及させる)という大きな目標について話している。人間の医師が行っている仕事の少なくとも一部をこれらのツールで置き換えることができるという考えがあるからだ。そのスタートアップたちの先頭に立ち、大きな存在感を示しているのは、おそらくBabylon Health(バビロン・ヘルス)である。

それとは対照的に、Kryは、同社のツールに機械学習テクノロジーが高い頻度で取り入れられているにもかかわらず、AIを派手に宣伝することを避けてきた、とシルト氏は述べている。同社は診断チャットボットも提供していない。方針にこのような違いが出るのは、重視する問題が異なるからだ。Kryは医療提供における非効率性を問題視している。シルト氏は、医師による意思決定は、この分野におけるサービスが抱える問題の中では優先順位が低いと主張している。

「当社はいうまでもなく、製造しているすべてのプロダクトにAIや機械学習ツールだと考えられるものを使用しています。個人的には、テクノロジーを使ってどの問題を解決するかよりも、テクノロジーそのものについて声高に叫んでいる企業を見ると、少しイライラします」とシルト氏は話す。「意思決定支援の面では、当社には他社と同じようなチャットボットシステムはありません。もちろん、チャットボットは本当に簡単に構築できます。しかし私が常に重要だと考えているのは、『何のために問題を解決するか』を自問することです。答えは『患者のため』です。正直に言って、チャットボットはあまり役に立たないと思います」。

「多くの場合、特に一次医療には2つのケースがあります。1つ目は、尿路感染症にかかっており、以前にもかかったことがあるため、患者はなぜ助けが必要なのかをすでに知っているというケースです。目の感染症も同じです。また湿疹が出て、それが湿疹だと確信していれば、誰かに診てもらったり助けを得たりする必要があります。自分の症状に不安があり、それが何なのかよくわからないケースもあります。そして患者は安心感を得たいと考えます。それが深刻なものかどうかに関わらず、チャットボットがそのような安心感を与えてくれる段階にあるとは思えません。やはり患者は人間と話がしたいでしょう。ですからチャットボットの用途は限られていると思います」。

「そして意思決定については、臨床医が適切な意思決定を行えるようにするなど、当社は臨床医のための意思決定支援を行っています。しかし臨床医が得意とするものが1つあるとすれば、それは実のところ意思決定です。そして医療における非効率性について調べると、意思決定プロセスは非効率的ではありませんでした。マッチングが非効率的なのです」。

シルト氏は「大きな非効率性」がもたらすものとして、スウェーデンの医療システムが翻訳者に費やしている金額(約63億7500万円)を挙げているが、この金額は多言語を話す臨床医と患者を適切にマッチングすることで簡単に削減できる。

「ほとんどの医師はバイリンガルですが、患者と同じ時間に活動しているわけではありません。そのためマッチング面では多くの非効率が生じます。当社が時間を費やしているのが、たとえばこの非効率なのです。どうすれば非効率に対応できるか。当社に助けを求めている患者が最終的に適切な治療を受けられるようにするにはどうすればいいか。あなたの母国語を話す臨床医がいれば、互いに理解しあうことができるのか。看護師が十分に対応できるものか。心理学者が直接対応すべきものか、などを考える必要があります」。

「すべてのテクノロジーにおいて常に重要なのは、実際の問題を解決するためにテクノロジーをどのように使用するかであって、テクノロジーそのものはあまり重要ではありません」とシルト氏は付け加えた。

欧州における医療提供に影響を与える可能性のあるもう1つの「非効率性」は、患者が一次医療にアクセスしにくくすることで、コストを削減しようとする(民間の医療機関の場合は、保険会社の利益を最大化しようとする)問題のある動機によるものだ。請求プロセスを複雑にしたり、サービスにアクセスするための情報やサポートを必要最低限しか提供しない(あるいは予約を制限する)ことで、患者は特定の症状に関わる専門医を見つけ出し、その専門医に診てもらうための時間枠を確保するという、面倒な作業をしなければならない。

できるだけ多くの病気を回避するために、できるだけ多くの人々の健康維持に取り組むべき分野で、こうした動きがあるのは非常に残念である。こうした取り組みにより、患者自身にとっても良い結果がもたらされることは明白だからだ。実際に病気の人々を治療するための費用(医療費および社会的費用)を考えた場合、2型糖尿病から腰痛まで幅広い慢性疾患は、治療にかなりの費用がかかる。しかし適切に介入すれば完全に予防できる可能性がある。

患者にとっても医療コストにとっても、あらゆる点で優れた予防医療への移行が切望されているが、シルト氏は、それを促進するための重要な役割をデジタル医療ツールが果たすと考えている。

「本当に頭にきます」とシルト氏は言い、続けてこう述べた。「医療の提供にはコストがかかるという理由から、医療システムは人々が簡単に医療にアクセスできないような構造になっていることがあります。これは非常にばかげたことであり、一般的な医療システムでコストが増加している原因にもなっています。まさにその通りです。なぜなら臨床医と患者が最初に接する一次診療にアクセスできないからです。その結果、二次診療に影響が及んでいるのです」。

「欧州市場のすべてのデータから、そのような問題が見えてきます。一次診療で治療を受けるべき人々が救急処置室で治療を受けています。一次診療へのアクセス方法がないために、一次診療を受けることができなかったのです。一次診療の受診の仕方がわからず、待ち時間が長く、何の助けも得られないまま、さまざまなレベルにトリアージされます。そして最終的に尿路感染症の患者が救急処置室に来ることになるのです。医療システムが患者を寄せつけなければ、莫大なコストがかかります。それは正しいやり方ではありません。システム全体をより予防的で積極的なものにする必要があります。当社は、今後10年間にそのための重要な役割を果たすことができると考えています。その鍵を握るのがアクセスです」。

「患者が当社に支援を求め、当社は患者に適切なレベルの治療を提供する。当社は医療をこのようなシンプルなものにしたいと考えています」。

欧州で医療を提供するには、取り組むべき課題がまだ数多くあるため、Kryはサービスを地理的に拡大することを急いでいない。主な市場は、スウェーデン、ノルウェイ、フランス、ドイツ、イギリスであり、同社はこれらの国々で(必ずしも全国的にではないが)医療サービスを運営している。留意すべきは、同社が30の地域でビデオ診療サービスを提供していることだ。

米国でのローンチの計画はあるかと尋ねられたシルト氏は「現在当社は欧州に非常に注目しています」と答えた。「欧州以外に進出することは決してない、とは言いません。しかし今は欧州にかなりの力を注いでおり、その市場を熟知していますし、欧州の制度の中でどのように行動すべきかを知っています」。

「欧州と米国では医療費の支払いに関する制度が大きく異なっています。また欧州では最上のものが注目されます。そして欧州は巨大な市場です。欧州すべての市場で、医療はGDPの10%を占めているので、大きなビジネスを築くために、欧州の外に出る必要はないのです。当分の間は、欧州に注力し続けることが重要だと考えています」。

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タグ:遠隔医療Kry資金調達新型コロナウイルスメンタルヘルス機械学習医療費医療スウェーデン

画像クレジット:Kry

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

慶應発スタートアップOUIのiPhone装着型眼科診察機器「Smart Eye Camera」がEUで医療機器登録

慶應発スタートアップOUIのiPhone装着型眼科診察機器「Smart Eye Camera」がEUで医療機器登録

慶應義塾大学医学部発のスタートアップ企業OUI(ウイ)は6月11日、iPhoneに取り付けて眼科診察を可能にするアタッチメント型医療機器「Smart Eye Camera」(SEC)が欧州連合地域(EU)で医療機器登録を行い、EU指令・規則における必須要求事項に適合したことを示すCEマークの表示(CEマーキング。Conformité Européenne)が可能となったと発表した。

慶應発スタートアップOUIのiPhone装着型眼科診察機器「Smart Eye Camera」がEUで医療機器登録

SECは、すでに日本国内での医療機器として登録済み。眼科医の駐在がない離島におけるドクター to ドクターでの遠隔相談や、医療機関を訪問できない患者さんに対しての訪問診療で使用されているそうだ。また、アジア・アフリカ地域をはじめとする世界10カ国以上で、現地の眼科医・NGO・医療機関・国際機関と協力して、様々なパイロット実証を行っている。国際的な認知度の高いCEマーキングにより、欧州市場のみならず、これら地域においてもSECに対する認知度・信頼度がさらに高まることが期待できるという。

OUIは、今後も国内外の多様なパートナーと連携しながら、SECを国内外に広めることで2025年までに世界の失明を50%減らすことを目指す。

OUIは、「医療を成長させる」を理念に、慶應義塾大学医学部の眼科医が2016年7月に立ち上げたスタートアップ企業。眼科の診察を可能にするiPhoneアタッチメント型医療機器SECをゼロから開発し、約1年半で完成させた。iPhoneのカメラと光源を利用した眼科診療機器は本邦初としており、動物実験の結果およびヒトの眼を使用した臨床研究の結果にて、既存の細隙灯顕微鏡と同等の性能があることが証明されているという(Evaluation of Nuclear Cataract with Smartphone-Attachable Slit-Lamp DeviceSmart Eye Camera: A Validation Study for Evaluating the Tear Film Breakup Time in Human Subjects Translational Vision Science & Technology April 2021, Vol.10, 28.など)。

世界の失明原因第1位は白内障とされており、白内障は適切な時期に治療をすれば失明に至らない可能性が高いにもかかわらず、発展途上国においては白内障による失明が社会問題となっている。SECは、iPhoneに取り付けて使用する小型な医療機器であるため、電気のない地域や被災地など場所を選ばず眼科診察を可能にするとしている。

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タグ:iPhone(製品・サービス)医療(用語)OUI(企業)慶應義塾大学(組織)日本(国・地域)

NASA技術開発コンペ「血管組織チャレンジ」で肝臓組織を3Dプリントしたウェイクフォレスト大チームが優勝

NASA技術開発コンペ「血管組織チャレンジ」で肝臓組織を3Dプリントしたウェイクフォレスト大チームが優勝

eranicle via Getty Images

米ノースカロライナ州のウェイクフォレスト大学に属するWinstonおよびWFIRMと称する2チームが、NASAが開催していた技術開発コンペ「Vascular Tissue Challenge(血管組織チャレンジ)」で1位と2位を獲得しました。

このコンペは2016年に開始され、実験室環境において心臓、肺、肝臓、腎臓などの臓器を、血管組織を含み、ある程度の太さと代謝機能を持つように作成することを目標としています。賞金は50万ドルが用意され、上位の3チームに分配されます。

ウェイクフォレスト大の2チームは、いずれもわずかに異なる技術を用いて、実験室で血管を含む肝臓組織の3Dプリントに成功しました。これら組織は30日間生存し機能するように作られ、わずかに優秀とされたチームWinstonが賞金を30万ドル、WFIRMは10万ドルを獲得しています。

NASA技術開発コンペ「血管組織チャレンジ」で肝臓組織を3Dプリントしたウェイクフォレスト大チームが優勝

Wake Forest Institute for Regenerative Medicine

この受賞により2チームは今後、国際宇宙ステーション(ISS)で、それぞれが作り出した画期的な組織モデルに関する試験を実施する機会を得ました。

宇宙空間での実験は、この技術コンペが地上だけでなく、将来宇宙空間で長い時間を過ごすことになるであろう宇宙飛行士らの医療に活用するために行われているから。今回総勢11チームの研究を評価・審査したArun Sharma博士は「これは非常に重要な課題です」「そして、その可能性は無限大です」と述べました。

Center for the Advancement of Science in Space(先端宇宙科学センター)の暫定チーフサイエンティストで、米ISS国立研究所のマネージャーであるマイケル・ロバーツ氏は、この技術が今後10年以内に実用化される可能性があると述べています。そして「これが我々の未来です。15〜20年後にはすべての臓器を作り出すことができるかもしれません」とこれらの技術への期待を語りました。

NASAは、月や火星への旅行を含む将来の宇宙ミッションの準備のために、今後もチャレンジコンテストを活用していきたいと考えています。

(Source:PR NewswireNASAEngadget日本版より転載)

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スマホでペット保険金を請求できる「アニポス」が約1.1億円を調達、開発運営体制を強化

スマホでペット保険金を請求できる「アニポス」が約1.1億円を調達、開発運営体制を強化

ペット保険金統合プラットフォーム「アニポス」(Android版iOS版)を開発・運営するアニポスは6月9日、プレシリーズAラウンドにおいて、株式発行による資金調達を発表した。割当先は、マネックスベンチャーズ、DGベンチャーズ、山口キャピタル、広島ベンチャーキャピタル、グロービス、エンジェル投資家。

調達した資金は、同社サービス認知やサービス導入ニーズの高まりに対応し、保険運営会社・飼い主の求めるもの以上のサービスレベルを最短で提供することを目的に、機能開発・サービス開発、サービス改善の加速に投資する。

アニポスは、「全ての人がより良い適切な動物医療を享受し、動物と幸せに暮らせる世界を創る。」をビジョンに掲げ、ペット保険のDXを推進しているインシュアテック・カンパニー。獣医師でもある代表取締役CEOの大川拓洋氏が2019年3月に設立した。

ペット保険金を簡単に請求できるスマホアプリ「Anipos」(アニポス)と、同アプリからシームレスに繋がるペット保険事業者の保険金支払い業務効率化サービスとして、「ANIPOS OCR」「ANIPOS Cloud」を展開している。

また同社は、アニポスアプリでのアップロード明細書件数に応じて、アニポスの資金から公益社団法人アニマルドネーションを通じて、動物保護団体への寄付(明細書で寄付)を毎月実施している。

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Apple Watchで心疾患発見を目指す、慶應医学部 木村雄弘先生に訊く(WWDC 2021)

Apple Watchで心疾患発見を目指す、慶應医学部 木村雄弘先生に訊く(WWDC 2021)

アップルの開発者イベントWWDC 2021は、日本時間6月8日午前2時から始まります。世界開発者会議WWDCといえば、 iOS / macOS / watchOS等の新機能に加え、これから登場するデバイスやサービスの可能性をいち早く開発者に紹介する場です。

「アップル史上もっともパーソナルな製品」として2015年に登場した Apple Watch も、世代を重ねるごとに心電計や血中酸素濃度計、睡眠計測など新たな機能を導入し、フィットネスやヘルスケアの分野で新たなアプリやサービスの可能性を開いてきました。

WWDC 2021を前に、そうしたアップルのテクノロジーで社会を変える取り組みとして、一般のApple Watchユーザーを対象にした心疾患の臨床研究アプリ Apple Watch Heart Study をリリースした慶應義塾大学医学部の循環器内科特任講師 木村雄弘先生にお話をうかがいました。

ウェアラブルで心疾患の早期発見を目指す

まずは臨床研究 Apple Watch Heart Study と同名のアプリについて。慶應義塾大学医学部が2021年2月から開始した Apple Watch Heart Study は、Apple Watch の睡眠計測・心電図記録・心拍計と、着用者が手動で回答する質問表を組み合わせて「心電図はいつ計測するのがもっとも有効なのか?」を解明するための研究。

Apple Watch は日本国内では2021年1月末に心電図アプリが解禁されましたが、常時着用するウォッチでも心電図は常時計測できないため、ユーザーが手動でアプリを起動して30秒間指を当てる必要があります。

しかし木村先生によると、たまたま心電図をとったときに異常が見つかることは稀。心筋梗塞などの予防には、異常が出ているときの心電図が手がかりとして役立ちますが、診療に役立つタイミングで都合よく取得できるとは限りません。

「調子が良いときに測っても良いと出るのは当たり前。一度計測して結果が良かったからといって、必ずしも病気がないって話にはならないんですね。いかに異常があるときを捉えるか? が非常に大事で、その心電図一枚で治療の方針が変わることもあります」(木村)。

Apple Watchで心疾患発見を目指す、慶應医学部 木村雄弘先生に訊く(WWDC 2021)

Apple Watch

Apple Watch Heart Study ではこの問題に対して、Watchの心拍計と睡眠検出、毎朝の質問票、自覚症状があった場合に手動入力する動悸記録を組み合わせて、ライフスタイルや生活パターンとの関連性を見つけ出し、将来の心疾患予防や診断に役立てることを狙います。

対象は一般のApple Watchユーザーすべて(20歳以上、日本語が理解できること。心電図記録は22歳以上)。具体的には、アプリをインストールして説明の確認と同意を済ませたら、あとは毎晩就寝時にApple Watchを着けること、毎朝質問票に答えること、もし脈が飛んだ、胸が痛い等の症状があったら手動で選択肢を選んで入力することで参加できます。今回の取り組みで収集するのは7日分のデータ。

一般のApple Watchユーザーを対象とした研究とは別に、慶応義塾大学病院で心房細動患者を対象にした研究も実施しています。そちらでは臨床の現場で使われる医療機器での計測と、Apple Watchを使ったデータとを比較し、機械学習で不整脈が発生しやすい条件を推定するアルゴリズムを構築します。一般のApple Watchユーザーを対象とした研究は、この患者グループの研究で得られたアルゴリズムが一般にどれほど適用できるのかの答え合わせともいえます。

あくまで臨床研究へ協力するためのアプリなので、参加しても個人の診療に役立ったり、健康改善につながるわけではありません。ただし記録へのモチベーション維持のために、毎日の計測結果には睡眠中・日中の心拍数などを元にシンプルなロジックで生成された「コメント」がつくため、睡眠中の心拍傾向を見て飲酒・寝不足などを見直す契機にはなるかもしれません。

医療のDXとWWDCへの期待

Apple Watch Heart Study の実務責任者である木村先生と、アプリを開発した株式会社アツラエの担当者お二方にお話をうかがいました。

Apple Watchを使った臨床研究に取り組んだきっかけは?

・個人的に、Apple Watchは心拍計が使える初代モデルから利用していた。健康のためを意識しなくても、時計として着けているだけで心拍や運動など役立つデータを常時記録できることが大事。

・一度の検査だけではなかなか分からない。「病院で良い検査結果を出そうと思うと、たとえば一週間酒を止めたとか、そういうことができてしまうんですよ」。家庭で実際にどういう生活をしているかを医療に反映させるためには、常時計測できるApple Watchを使う必要がある。

・特に心電図アプリケーションについては、医療機器ではないApple Watchである程度信頼できるデータが取得できる、本当に革命的なことが起きた。一回測って終わりではなく、継続して有意義に使ってもらうにはどうするか、が今回の研究に至る経緯。

心疾患は高齢者に多いと思いますが、Apple Watchを着けている高齢者は多くありませんね

「高齢者こそApple Watchだ!と思います」。慶應で臨床研究をする際は、意図的に高齢の方にお願いすることもある。たしかに操作から覚えてもらう必要はあり、利用者と医療従事者の双方にもっとデジタルリテラシーが必要になるが、自分の健康状態を意識するきっかけにもなる。高齢者こそ使ったほうが良いんだよ、ということを啓発していきたい。

高齢者といえば、Watchを使った「見守り」のアプリケーションについてはどうでしょうか

・ICT技術的には非常に簡単。医療者としても、電子カルテにプラスアルファのヘルスケアデータとして管理できれば非常に有用。

・ただ簡単にできたとしても、異常があったときに誰が対応するのか、具体的にどこまでの緊急性をもって対応するのか? など、リソースの配分やマネジメントをどうするかのルールが統一できていない。体制づくりが必要。

(注:Apple Watchを使った見守りサービスを独自に提供している企業はあります)

セコムがApple Watchで見守りサービスなどを開発。今年秋より順次提供

アプリ作成について。実際のアプリ開発を担当したアツラエとはどんなふうに仕事を進めたんでしょうか。苦労した点があれば教えてください

・ユーザーからすれば、医学研究って堅苦しいとか、たくさん質問票が出てきて面倒くさい! といった点が問題になる。打破するにはユーザーインターフェース、UXできれいなデザイン性を持たせることが重要。それができるデベロッパーを探していて辿り着いたのがアツラエ。研究参加にあたっての同意など、必須のステップをユーザーフレンドリーに構築していただけた。苦労としては、オンラインの打ち合わせを中心に進めざるを得なかったこと。(木村)

・アツラエは前身の会社に遡れば2008年から、クライアント向けのiOSアプリ開発をお手伝いしてきた。iOS / iPadOSと使いやすいデザインには自負もあった。苦労したのは、このコロナ禍でなかなか先生にもお会いできずオンライン打ち合わせで進めたこと。

・UI、UXの開発については、木村先生が求めるものに対してどこまで省略できるのか、遊びをもたせるか、を汲み取るのが重要だが、対面ならば表情や口調も大きな手がかりになる。オンラインでは、本当に喜んでくれているのだろうか? ユーザーに役立つものができているのだろうか? を探り探りで進める必要があった(アツラエ有海)。

・技術的には、開発時点で国内での心電図アプリケーションがまだ解禁されておらず、テストに苦労した(アツラエ早川)。

(日本国内での心電図アプリケーション解禁は1月22日、Apple Watch Heart Studyアプリ配信はわずか一週間後の2月1日)

今回の臨床研究で得られた成果は、今後具体的にどのような形で活かされるのか。「心臓病予防アプリ」への課題は

「最終的な結果はただ研究で終わらせることなく、医療のDXとして提供できるような形を考えています」(木村)。一つ大きな壁は、医学的なアドバイスや計測結果を出すとして、どこまで言えるのか、(認可的な意味で)医療機器の扱いになるか否か。診断を与えることではなく、日々の生活を見守り、自分の変化に気づかせることがおそらく一番重要。長い時間をかけて医療機器を作るんだ! ではなくても、ヘルスケアに貢献できるソリューションは色々ある。

・必ずしも医療機器の精度でないとしても、個々のユーザーに対していま測ったほうがいいのかな、いま病院にいったほうがいいかなという気づきを与えること。知らないうちに見守られていて、変化を教えてくれるものが増えていけば、早期発見や健康寿命に貢献していくことになる。今回の研究も、ソリューションはとしてはそうしたところを目指したい。

Apple Watch Series 6からは、医療機器としての数字ではないものの「血中酸素ウェルネス」でSpO2も取得できるようになりました。今後さらにこんなデータが取れればと期待しているものは

・色々とうわさはあり、今度のWWDCでもジェスチャ検出など新しいものが出てくるようだが、大事なのは同じ機械で計測し続けること。

・計測したデータに医療機器と同じ精度があるかどうかまで立ち戻らなくても、同じ機器で計測し続けた変化量は、その個人にとっては評価できるものになる。もちろん、これが欲しいあれが欲しいという期待はあるが、いずれにしても個人に紐付けられたデータであれば非常に貴重なものになると考えている。

次のWWDCへの期待をお願いします

「WWDCには毎年驚かされていて、素人ながら分かる範囲の開発者向け動画はすべて見るようにしています」。毎年大幅に変わるが、今回のアプリでも睡眠計測やウィジェットなど、新しい機能をできるだけ使うようにお願いした。うわさの血糖値やジェスチャは大変興味深いと思っている。(木村)

・アクセシビリティ・デイで発表済みのジェスチャ操作はどうなるのか、自分たちのアプリに組み込めるか? は注目。日本国内のアプリはアクセシビリティが行き届いていないことが多く、いちデベロッパーとして注目していきたい。過去でいえば、watchOS 2でガラリと変わったこと、6でできることが一気に増えたのが印象深い。Apple Watchのアプリ開発は今後もっと注目されてくるのではないかと思っている(アツラエ早川)。

・プランニングの観点から。毎年WWDCの時期には、クライアントから自社のアプリにこの新機能は使えるんじゃないか、どう変わるのかと問い合わせや提案が増える。応えるためにいち早くプロトタイピングをしたり、社内でディスカッションするのが恒例行事 (アツラエ有海)。

WWDC 2021 のキーノートは日本時間で6月8日午前2時から。Engadgetでも速報体制でお伝えします。

病院がアプリを処方する時代。iOS活用で進む未来の医療
Apple Watch Heart Study

Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ヘルステック
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がん免疫細胞療法に向け細胞医薬品の開発に取り組む九州大学発スタートアップ「ガイアバイオメディシン」が1億円調達

がん免疫細胞療法に向け細胞医薬品の新規開発に取り組む九州大学発スタートアップ「ガイアバイオメディシン」が1億円調達

大阪大学ベンチャーキャピタル(OUVC)を無限責任組合員とするOUVC2号投資事業有限責任組合(OUVC2号ファンド)は6月4日、ガイアバイオメディシン(GAIA BioMedicine)に対し、1億円の投資を実行したと発表した。大阪大学以外の国立大学の研究成果を活用したスタートアップ企業に対する投資が可能になったOUVC2号ファンドでの初の他大学案件という。

ガイアバイオメディシンでは、調達した資金により、非小細胞肺がん患者を対象とした第I相臨床試験を完了させるとともに、2ndパイプラインの治験に向けた準備も進める。OUVCは、同社事業について、有効な治療薬が存在しない創薬の開発につながるものであり、医学的・社会的な意義が大きいと判断し、投資を実行したとしている。

2015年10月設立のガイアバイオメディシンは、九州大学大学院薬学研究院・米満吉和教授の研究成果を活用し、新規細胞医薬品の開発に取り組む九州大学発のスタートアップ企業。

細胞医薬品とは、近年注目されている新たな創薬モダリティ(手法)にあたる、細胞そのものを人に投与して治療効果を得る薬剤を指し、もともと人に備わるT細胞やナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫細胞をベースにがん細胞への攻撃力を増強させた細胞が利用される。ガイアバイオメディシンでは、NK細胞と形質上類似するNK様細胞(GAIA-102)を開発し、患者本人の細胞ではなく健康なドナーから採取した細胞「他家細胞」を用いることによりスケーラブルな医療を可能とする新たながん免疫細胞療法の開発に取り組んでいるという。

GAIA-102は、死亡数の最も高い肺がんの中でも8割を占める「非小細胞肺がん」への高い有効性が見込まれており、T細胞を遺伝子改変したCAR-Tなど他の細胞医薬品に比べて固形がんに対し有望な免疫細胞療法となることが期待されるという。また、他の細胞医薬品と異なり、極めてシンプルな製造・投薬プロセスが可能となることから、商業利用の点でも優れた競争優位性を有するとしている。

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カテゴリー:バイオテック
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