京都大学、摂氏350度で動作する省電力型の集積回路を開発―高温動作集積回路の実用化に道

京都大学、摂氏350度で動作する省電力型の集積回路を開発―高温動作集積回路の実用化に道

京都大学は3月25日、京都大学大学院工学研究科の金子光顕助教、木本恒暢教授らによる研究グループが、独自構造のトランジスターを搭載したSiC(シリコンカーバイド)半導体を開発し、シリコン(Si)半導体では不可能な摂氏350度という高温での基本動作の実証に成功したと発表した。

現在広く使われているシリコンベースの半導体は、動作可能温度の上限が摂氏250度とされている。しかし、地下資源採掘や宇宙開発の現場では、それより高い温度での動作を求められる。シリコンよりも高温での動作が可能なSiC半導体の研究は進められているが、集積回路の基本要素であるトランジスターの高温での信頼性や電力消費量が大きな課題となっていた。

集積回路で一般的に使われているトランジスターはMOSFET(金属酸化膜半導体電解効果トランジスター)と呼ばれるタイプのもので、添加する不純物によってn型とp型と2種類に分かれる。この2つ組み合わせた相補型という集積回路が、待機電力をほぼ0にできるため広く普及した。SiC上にもMOSFETを作ることはできるが、酸化膜とSiCとの間の接合界面に欠陥が多く発生(Siの場合の100倍以上)するために高温での安定動作ができなくなる。これとは別に、JFET(接合型電界効果トランジスター)というトランジスターも作れる。こちらは界面欠陥がないため高温動作が可能なのだが、相補型回路の構成が不可能で、省電力とはならない。300度以上の高温環境では供給電力も限られることが予想され、低消費電力化が課題となっている。

研究グループが新しく開発したのは、JFETで相補型回路を作る方法だ。これまでJFETは、同一基板上にn型とp型の両方を同時に作ることが技術的に難しかったのだが、研究グループは、イオン注入という工業界では広く使われている方法でそれを可能にした。また、集積回路として重要となるゲート端子に電圧をかけていないときに電流を通さないノーマリーオフの特性を持たせることも、従来のJFETでは難しかったのだが、構造の工夫により実現した。これにより、「室温から350℃までのSiC論理ゲート動作実証に世界で初めて成功」した。京都大学、摂氏350度で動作する省電力型の集積回路を開発―高温動作集積回路の実用化に道

これは、「高温エレクトロニクスの創生を期待されながら遅々として進まない高温動作集積回路の実用化」だと研究グループは話す。今後は、微細化による小型化、高速化、高機能化がJFETでも可能かどうか、研究を進めてゆくとしている。

インテル、2.2兆円投じてドイツに半導体工場を建設

Intel(インテル)は今後10年間で欧州に最大800億ユーロ(約10兆3600億円)を投資する一環として、ドイツに半導体工場を建設する計画を明らかにした。ザクセン・アンハルト州の州都マグデブルクに建設する施設の初期費用は170億ユーロ(約2兆2020億円)だ。

「メガサイト」と呼ばれるこの施設は、実際には2つの工場で構成される。欧州委員会の承認が得られればIntelは直ちに企画を開始し、2023年前半には建設が開始される。同社が「シリコン・ジャンクション」と呼ぶこの工場での生産開始は2027年が見込まれている。このため、この工場がすぐに世界的なチップ不足を補う助けになることはない。

同社によると、この2つの工場では同社最高級のオングストローム世代のトランジスタ技術を使ったチップが製造される。工場建設期間中に建設従事者7000人の雇用、3000人の常用雇用、そしてパートナーやサプライヤー全体でさらに数千人の雇用を創出する見込みだ。

この他にも、Intelはアイルランドのレイクスリップにある工場の拡張に120億ユーロ(約1兆5550億円)を投資する予定だ。製造スペースが2倍になり、ファウンドリーサービスも拡大される。同社はまた、イタリアに最大45億ユーロ(5830億円)を投じて組立・梱包施設を建設することについても協議している。

Intelは、フランスのプラトー・ド・サクレー近郊に欧州の研究開発拠点を建設する計画だ。それにより、1000人の雇用を創出し、そのうち450人は2024年末までに募集が始まる。同社は、欧州の主要ファウンドリ設計センターもフランスに設置することを目指している。さらに、ポーランドとスペインにも投資を行う予定だ。

この計画は「欧州におけるIntelの生産能力の大幅な拡大により、グローバルの半導体サプライチェーンのバランスをとることを中心に据えている」と同社は話す。欧州連合は2月、将来のチップ不足を防ぎ、アジアで製造される部品への依存度を下げることを目的とした490億ドル(約5兆7970億円)の取り組みを発表した。

「EU半導体法は、民間企業と政府が協力して半導体分野における欧州の地位を飛躍的に向上させる力を与えます。この幅広い取り組みにより、欧州の研究開発のイノベーションが促進され、世界中の顧客とパートナーに利益をもたらす最先端の製造業がこの地域にもたらされます」とIntelのCEO、Pat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)は述べた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のKris HoltはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Intel

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(文:Kris Holt、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがM1シリーズ最上位版「M1 Ultra」を発表

Apple(アップル)は米国時間3月8日、同社の「Peek Performance」イベントにおいて、新しいM1チップ「M1 Ultra」の発売を発表した。このチップは、これまでM1、M1 Pro、M1 MaxがあったM1ファミリーの最終バージョンであるとAppleは述べている。

Ultraは2つのM1 Maxダイをベースに、既存のM1 Maxチップに存在する、しかし休止状態だったらしい接続を使用する。この相互接続により、2つのチップ間で2.5TB/sの帯域幅が実現されている。Appleはこれを(同社らしいネーミングで)「Ultra Fusion」と呼んでいる。

M1 Maxを2つ組み合わせたチップなのだから、Ultra版ではCPUとGPUのコアが2倍になっているのは当然のことだ。つまり、高性能コア16個と高効率コア4個の計20CPUコアと64GPUコアを搭載している。このチップは最大で128GBのユニファイドメモリに対応する。また、機械学習(ML)ワークロードのための32コアのNeural Engine(ニューラルエンジン)も搭載している。これらすべてを合わせると、1140億個のトランジスタになる。

Appleによれば、これらすべてによってUltraはM1の8倍速くなり、一方でこのチップは、CPUとGPUの両方において、ワットあたりのCPU性能で10コアのデスクトップチップをも凌駕しているとのこと。ただしAppleは、M1 Ultraをどのデスクトップチップと比較しているのかは明言しなかった。

Appleは2020年11月に初代M1チップを発売し、同社の製品ポートフォリオ全体でIntelのチップから脱却する第一歩を踏み出した。

2020年の発売当時、8コアのM1はMac mini、Macbook Air、MacBook Proに搭載されてデビューした。その後Appleは、最大10コアのCPU、32コアのGPU、(16GBが上限だった初代M1と異なり)64GBのユニファイドメモリをサポートする、大幅にパワフルなM1 ProおよびM1 Maxチップを発表した。これらのチップは、14インチと16インチのMacBook Proでデビューした。

M1 Ultraは、新しいMac Studioでデビューする予定だ。

もしAppleが今後もこの命名スキームを踏襲するなら、私たちは後のイベントでM2 ProsとMaxチップを紹介するのを見ることができるかもしれない。

Read more about the Apple March 2022 event on TechCrunch

画像クレジット:Apple

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Den Nakano)

ロシアのスマホ市場でシェア1位のサムスンが同国向け製品出荷を停止、家電や半導体も

Samsung Electronics(サムスン電子)は現地時間3月5日「現在の地政学的情勢のため」ロシアへの全製品の出荷を停止していることを明らかにした。

同社は「次のステップを決定するため、この複雑な状況を積極的にモニターし続ける」と述べている。

Samsungは、ロシアでのサービスを停止する予定があるかどうかについてのコメントを避けた。事情に詳しい関係者がBloomberg(ブルームバーグ)に語ったところによると、輸出停止対象はスマートフォンや半導体、家電などを含む全製品だという。

制裁に参加したMSCやMaersk(マースク)などの世界的な海運会社がロシアの港での全運航を停止することを決定し、ロシアへの航路やフライトが停止している。韓国の海運会社であるHMM(旧称:現代商船)も先週、サンクトペテルブルクへの貨物サービスを停止し、Samsung、LG、Hyundai(現代)などの韓国企業がロシアに製品を送ることができなくなった。

4日、ウクライナの副首相兼デジタル相のMykhailo Fedorov(ミハイロ・フェドロフ)氏は、サムスンのJong-Hee Han(ハン・ジョンヒ、韓宗熙)副会長宛てに送った手紙で、ロシアでのサービスや製品の供給を一時的に停止するよう促した。

フェドロフ氏は、4日にツイートした手紙の中で「歴史の一部となり、このような異常事態に協力して頂きたいのです」と述べている。「そうした行動がロシアの若者や活動的な人々を動かし、不名誉な軍事侵略を主体的に阻止することにつながると信じています。私たちは貴社の支援を必要としています。2022年、住宅地、幼稚園、病院を狙う戦車、多連装ロケットランチャー、ミサイルに対して、近代的な技術はおそらく最良の応酬となるでしょう。ウクライナとともに立ち、何百万人もの罪のない命を救ってください!」。

サムスンは声明でこう述べている。「私たちの思いは、影響を受けたすべてのみなさまとともにあります。全従業員とその家族の安全を確保することを最優先に考えています。当社は、難民のための援助を含む、この地域の人道的努力を積極的に支援する予定です」。

同社は、100万ドル(約1億1500万円)相当の家電製品を含む600万ドル(約6億9200万円)を現地の人道支援活動に寄付する他、従業員からの自発的な寄付も行っている。

ロシアにおけるスマートフォン市場は、Statcounterのデータによると、2021年にはSamsungが約26.6%のシェアを獲得してトップに立ち、23%を占めるApple(アップル)と19.9%のXiaomi(シャオミ、小米科技)がそれに続いている。

このニュースは、ウクライナ侵攻を受け、多くのテック企業がロシアでのサービス運営を停止する決定を下した数日後に発表された。

Apple(アップル)は先週、ロシアでの製品販売を停止したことを発表した。Microsoft(マイクロソフト)も、ロシアでの新規販売製品・サービスをすべて停止したと発表している。

画像クレジット:Karlis Dambrans / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Den Nakano)

半導体製造大手の台湾TSMC、インテル、AMDがロシアへの半導体販売を停止―ウクライナ侵攻をめぐる制裁として実施

半導体製造大手の台湾TSMC、インテル、AMDがロシアへの半導体販売を停止―ウクライナ侵攻をめぐる制裁として実施

Eason Lam / Reuters

ウクライナ侵攻をめぐる米バイデン政権の制裁実施を受けて、半導体製造大手のTSMCとインテルおよびAMDの3社がロシアへの販売を停止したと報じられています。

すでにApple PayやGoogle Payといった米国拠点のデジタルウォレットは、現地の主要銀行口座と紐付けられているものに関しては機能を停止しています。今回の措置は、米国の対ロシア制裁が半導体メーカー、とりわけTSMCにまで広げられたかっこうです。

米The Washington Postによると、TSMCはロシアへの直接販売と、ロシアに製品を供給しているサードパーティへの販売を両方とも停止したとのことです。TSMCが制裁条件を完全に遵守するために調査している間、販売を止めたとの匿名情報筋の話も伝えられています。

またTSMC公式にも「発表された新しい輸出管理規則を遵守することに全力で取り組んでいる」との声明が出されています。

TSMCはiPhone用のAシリーズチップやiPad/Mac用のMシリーズチップ製造で知られています。その一方でロシアで設計され、ロシア軍や治安機関で使われている ELBRUSブランドのチップも製造しているため、その販売停止はとても重要といえます。

TSMCのほか、インテルやAMDなどもロシアに半導体の販売を停止しているとのことです。SIA(米国半導体協会/インテルやAMDも参加)はWashington Post紙に「ウクライナで展開されている深く憂慮すべき出来事を受けて」すべての会員が規則を「完全に遵守することを約束する」と述べています。

またSIA会長のジョン・ニューファー氏は「ロシアへの新ルール(輸出管理規則)の影響は大きいかもしれない」ものの「ロシアは半導体の重要な直接消費者ではなく、世界のチップ購入の0.1%未満にすぎない」とも指摘しています。半導体製造メーカーにとっては大した痛手にならない一方で、ロシア軍の動きや兵站を制約するものとして、しっかりと守られることになりそうです。

(Source:The Washington Post。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

Lenovo、新ThinkPadにQualcommのSnapdragonプラットフォームを採用

長い間ハイエンドモバイルプロセッサの世界をリードしてきたQualcomm(クアルコム)が、あなたに売りたいノートPCを手に入れた。2021年末に毎年恒例のSnapdragonサミットで発表したSnapdragon 8cx Gen 3シリーズで、同社はノートPCの部品の世界へ進出する。

名前からわかるように、Snapdragon 8cx Gen 3はノートPCに使用されるQualcomm製品としては第3世代だ。現在、Apple(アップル)はARMベースのチップを自社開発し、かなりのパフォーマンスを実現している。QualcommもモバイルのパフォーマンスをWindows 11 ProベースのノートPCに活かして、同じことを実現したいと考えている。

画像クレジット:Lenovo

QualcommのプラットフォームでMicrosoft(マイクロソフト)のSurfaceデバイスが開発されるという噂がある中、Lenovo(レノボ)はMWCでThinkPad X13sを発表した。このプラットフォームの利点はぱっと見ただけで明らかだ。ノートPCのフォームファクタでARMアーキテクチャに移行するという長年の約束が守られている。つまり、超軽量薄型で5G内蔵、バッテリー駆動時間が長く、Qualcommの数世代にわたるセキュリティの進歩をベースにしている。

Lenovoは最初のパートナーとしては理想的だ。まず、ThinkPadブランドは仕事用のノートPCとして多くの人に浸透している。また、Lenovoは新しい道を探ることにおいては最も熱心なノートPCメーカーかもしれない。

仕様を見てみよう。13インチで重量は2.35ポンド(約1.06kg)と、MacBook Airの2020年モデルよりも200gほど軽い。厚さは0.53インチ(約1.3cm)で、MacBook Airの0.41~1.61cmの範囲に収まっている。バッテリー持続時間は驚異的で、動画再生時に28時間とされている。ある経営幹部はイベントに先立って実施されたブリーフィングで、1泊の出張でニューヨークに持っていってまったく充電しなかったと述べた。これは確かに信憑性があるようだ。

Qualcommのメリットとして、コンピュータビジョンのプロセッサによりログイン認証が向上した点も挙げられる。筐体は90%リサイクルのマグネシウムで、これまでと同様にポインティングスティックもある。

ThinkPad X13sは5月出荷開始予定で、価格は1099ドル(約12万7000円)から。

画像クレジット:Lenovo

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

【コラム】米国はシリコンバレーの力を活用して国防のイノベーションを推進すべきだ

米国防総省(DoD)をはじめとする米国政府機関および議会超党派合意は、中国が外交、インフォメーションとインテリジェンス、軍事力および経済力の戦略的活用によって、将来の世界秩序を再定義しようとしていることを認識している。

中国が宣言している目標と目的を踏まえれば、我々はこの評価が今後数十年間継続する可能性を予測すべきだ。

あらゆる公平な観察者にとって、中国の積極的な政府全体による支配、とりわけ軍事領域における支配への取り組みに対する米国の対応は、断片的かつ無効である。対応(要求、取得、予算)のために用意されたシステム(および人員)は、ライフサイクルコストと30年間におよぶDOTMLPF(教義、組織、訓練、物資、指導者育成、人事、施設)プロセス管理に最適化して設計されている。

しかし、戦略的競争に勝つためにはその正反対が必要だ。スピード、緊急性、スケール、短期ライフサイクル、およびアトリビュータブル(帰属可能)なシステムだ。既存のDoDシステムは、現在DoD関連の先端技術(AI / ML、自律、バイオテック、量子、宇宙利用、半導体、等々)のほとんどを支えている民間テクノロジー・エコシステムを効果的に利用するようには作られていない。

DoDの上級軍人および文民のリーダーの多くはこれを理解し、善意のイノベーションイニシアチブを設立してきた。しかし、こうしたイニシアチブへの長期的な資金提供とその効果は、先見性ある指導者個人の支援に依存することがほとんどあり、重要な指導者の在任期間が終わると危機に晒される。

その結果、この国のシステムも組織も人数も予算も、中国をはじめとする潜在的ライバルの挑戦を受けるためのスケーリングができない。我々の敵対者は、この国の伝統的システムが対応できるよりも速く革新している。

多くの人々が、既存のDoDシステムの刷新について記してきた。計画、プログラミング、予算、実行(PPBE)プロセスの修正、DoDアクセラレータおよびDefense Innovation Unit(国防イノベーション・ユニット)の規模拡大、既存の取得権限の活用などだ。

どれも良い考えだが、肝心の問題を見逃している、それは「DoDが民間産業と本格的に関わっていない」ことだ。米国民間セクターの並外れた潜在能力を活かし、その圧倒的に優れたリソースを持ち込むことでより効果的に前進することが、この戦略的競争に勝利するための鍵だ。

シリコンバレーはゲームに戻る準備ができている

第2次世界対戦後の最初の20年間、シリコンバレーは事実上「defense valley(防衛バレー)」だった。DoDと諜報機関のためにチップとシステムを作っていた。シリコンバレーにおけるイノベーションは、戦後スタンフォード大学への海軍研究事務所からの資金提供に始まり、さまざまな機関からの最先端の無線・電子システム開発の発注がそれに続いた。

生まれたての半導体企業にとって最初の大型契約は、大陸間弾道弾ミサイル、Minuteman II(ミニットマン2)の誘導システム、次いでアポロ宇宙船だった。冷戦期、Lockheed(ロッキード)はシリコンバレー最大の雇用主であり、3世代にわたる潜水艦発射弾道ミサイル、人工衛星、およびその他の兵器システムを製造した。シリコンバレーのリソースを結集させた我々の能力が、米国にとって決定的に重要で、最終的にソビエト連邦との冷戦に勝利をもたらしたことは間違いない。

今世紀の戦略的競争に勝つためには、同様のリソースと人材を確保する必要がある。今日、シリコンバレーはDoDを圧倒するテクノロジーエコシステムの中心に位置し、スピードと緊急性をもって動き、インセンティブが与えられれば、資金と人員を壮大なスケールで結集させ、一連の問題を解決することができる。

しかしDoDは、これを「大規模かつスピーディー」に活用すべきリソースであることをなかなか認めない。そして、完全に認めていないために、もしこのリソースを集結できれば何が可能になるのかを考えていない。

そして想像したことがないために、年間3000億ドル(34兆円)以上のベンチャー資金(対してDoDの研究、開発、試験、評価[RDT&R]プログラムは1120億ドル[約13兆円]、調達は1320億ドル[約15兆円])をこの国の安全保障を支える可能性のある軍民両用活動を支える分野に注ぎ込ませるために、どのようなインセンティブ(たとえば大規模な優遇税制など)を与えればよいのか考えたこともない。

「ハンマーにはあらゆるものが釘にみえる」ということわざは、主権と国際法への脅威のような問題の答をうまく説明している。ほとんどの思考は、既存の兵器システム(艦船、空母、原子力潜水艦)の追加 / 改良に限定されていて、代替的な軍事概念や南シナ海やバルト海やカリニングラードにおける戦争の阻止あるいは勝利に貢献した即時展開可能な兵器ではない。

どうやら、新しいベンダーによる小型、低価格、アトリビュータブル、自律型、致死的、大量、分散、短期ライフサイクルのプロジェクトを中心に作られた新しいシステムとコンセプトに関する会話は、ほぼ禁止されているようだ。しかし、これらこそが集まってくるソリューションとイノベーションエコシステムだ。SpaceX(スペースエックス)のような会社50社が、21世紀のDoDを作るのに協力するところを想像して欲しい。

米国の選りすぐりを戦略的競争に参加させよ

米国の民間セクター、特にシリコンバレーに焦点を合わせ、比類なきイノベーションと並外れた潜在投資力とともにその力を爆発させることで、中国に対する米国の能力低下を逆転させ、さまざまな主要テクノロジー分野で優位性を保つことができる。

それだけではない。我々はもっと積極的かつ意識的に、この国の世界に名だたる高等教育機構、すなわち米国主要大学に集まった才気あふれる革新的かつ創造的な学生たちと教員陣の膨大な未開発の可能性を活用しなくてはならない。

この国はかつてこれに成功したことがある。スタンフォードをはじめとする米国主要研究大学のほとんどは、冷戦期の軍事イノベーションエコシステムに不可欠な存在だった。しかし、シリコンバレーが独特だったのは、スタンフォード大学の工学部が、教授や大学院生に軍事エレクトロニクス企業を立ち上げるよう積極的に働きかけたことだった。最高の人材を集め、テクノロジーを商品化することでソビエト連邦とのレースに勝つための手助けをした。

この歴史的事例に触発され、我々は最近Stanford Gordian Knot Center for National Security Innovation(スタンフォード・ゴーディアン・ノット国家安全イノベーション・センター)を設立し、シリコンバレーのテクノロジー、人材、資産、スピード、そして困難な問題に立ち向かう情熱を駆使して米国がこの戦略的競争の新時代を勝ち抜く力になろうとしている。

我々はさらに、シリコンバレーや他のイノベーションエコシステムを横断してリソースを統合する取り組みを進めていかなければならない。トップクラスの大学では、国家安全保障イノベーションの教育を本格化する必要がある。国家安全保障イノベーターの養成、洞察力、融合、ポリシーアウトリーチの提供、最も困難な問題の解決の触媒になりうる実用最小限の製品の継続的創出などだ。

この国のすべてのリソースと至高の人的財産を活用しないリスクはあまりにも大きい。

編集部注:Steve Blank(スティーブ・ブランク)氏は、スタンフォード大学Gordian Knot Center for National Security Innovationの創立メンバーで、同大学の非常勤教授およびコロンビア大学のイノベーション担当上級フェロー。

Joe Felter(ジョー・フェルター)氏はGordian Knot Center for National Security Innovationのセンター・ディレクター、創立メンバーで、スタンフォー大学のCenter for International Security and Cooperation、Hoover Institution、およびStanford Technology Ventures Programの講師、研究職。

Raj Shah(ラジ・シャー)氏はGordian Knot Center for National Security Innovationの創立メンバー、テクノロジー企業家・投資家、スタンフォード大学非常勤教授、ペンタゴン防衛イノベーション・ユニット実験の元マネージング・パートナー。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Steve Blank、Joe Felter、Raj Shah、翻訳:Nob Takahashi / facebook

チップ不足対策でBoschが約340億円を追加投資、半導体の生産拡大へ

Bosch(ボッシュ)は、現在進行中のチップ不足に対応するため、以前から表明していた半導体生産への投資を拡大する。同社は2021年、2022年に4億7300万ドル(約545億円)を投資すると発表したが、さらに2億9600万ドル(約340億円)を新たな製造設備に投資する。

2021年の資本のほとんどは、ドレスデンにある同社の新しい300ミリウェハー製造施設に充てられ、12月に生産を開始したシュトゥットガルト近郊のロイトリンゲンには約5700万ドル(約65億円)が振り向けられた。今回の新たな資金はほぼロイトリンゲンに充てられ、2025年までに新しい生産スペースと計4万4000平方メートルの近代的なクリーンルームを建設する予定だ。この動きは、自動車市場と家電市場の両方で半導体とMEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)センサーの需要が拡大していることに対応するものだ。

Boschの取締役会メンバーでMobility Solutions事業部門会長のMarkus Heyn(マルクス・ハイン)氏は「Boschはすでに自動車用チップのトップメーカーです。そして、この地位をさらに強固なものにしていくつもりです」と述べた。

(クリーンルームは、空気中に浮遊する粒子、温度、照明、騒音、気圧などの環境要因を厳密に制御できるよう特別に建設される密閉された場所だ。Boschの半導体は、他の多くの半導体と同様、炭化ケイ素でできているため、製造プロセスには絶対的な清澄性が求められる。シリコンは砂の中に含まれており、製造に使用する前に精製する必要がある。この工程は非常に精密で、ほんのわずかな塵でもまずいタイミングでチップに付着すると、完全にダメになってしまう)

Boschの取締役会会長Stefan Hartung(シュテファン・ハートゥング)博士は「当社はロイトリンゲンにおける半導体の製造能力を計画的に拡大しています」と声明で述べた。「新たな投資は、当社の競争力を強化するだけでなく、顧客にも利益をもたらし、半導体のサプライチェーンにおける危機を克服する一助となるでしょう」。

ロイトリンゲンのウエハー工場では、6インチと8インチのウエハーを生産する予定だ。6インチウエハーは現在、8インチや12インチほど使われていないが、このプロセスにより、LEDやセンサーなどの半導体製品の生産コストを削減することができる。2019年から特に8インチのウエハーが不足しており、これらは主にセンサーやMCU、無線通信チップといったものに使われている。ロイトリンゲンの拡張は、自動車や消費者部門でのMEMs(微小電子機械システム)や、炭化ケイ素のパワー半導体の需要増に応えるものだとBoschは話す。

同社のドレスデン工場では、CPU、ロジックIC、メモリーなどの高性能製品の製造に使用される12インチシリコンチップをより多く生産する予定だ。

「コネクティビティと組み合わせたAI手法により、製造における継続的なデータ駆動型の改善を実現し、それによってより良いチップを生産しています」とハイン氏は述べた。「これには、欠陥の自動分類を可能にするソフトウェアの開発が含まれます。また、BoschはAIを利用してマテリアルフローを強化しています。高度な自動化により、ロイトリンゲンのこの最先端の製造環境は、工場の未来とそこで働く人々の雇用を守ることになるでしょう」。

Boschはまた、既存の電力供給施設を拡張し、追加のメディア供給システム用の建物を建設する計画だ。新しい生産エリアは2025年の操業開始が見込まれている。

画像クレジット:Robert Bosch GmbH

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

インテル、タワーセミコンダクターを約6250億円で買収、カスタムファウンドリ戦略を構築へ

Intel(インテル)のCEO、Pat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏は、2021年3月に同社のファウンドリ戦略を発表した際、これをIDM(Integrated Device Manufacturing、垂直統合型デバイスメーカー)2.0と名づけた。当時、同社はその第1弾として、200億ドル(約2兆3140億円)を投じてアリゾナ州に2つの新工場を建設することを発表した。また、他の半導体メーカーにファウンドリサービスを提供するプロバイダーになる計画も明らかにした。

その計画に沿って、同社は米国時間2月15日、カスタムファウンドリサービスを提供するTower Semiconductor(タワーセミコンダクター)を54億ドル(約6250億円)で買収すると発表した。

ゲルシンガー氏は、この動きが同社のビジョンに完璧に合致すると見ている。「Towerの専門技術ポートフォリオ、地理的リーチ、深い顧客関係、サービス第一の運営は、Intelのファウンドリサービスを拡大し、ファウンドリの世界的主要プロバイダーになるという当社の目標を前進させるのに役立ちます」と、同氏は声明で述べた。

IDM2.0は、半導体製造に対する3つのアプローチからなる。Intelのグローバルな工場ネットワーク、サードパーティの生産能力の活用、そしてIntelファウンドリサービスの構築だ。これにより、Intelは単に自社ブランドのチップを製造するだけではなく、カスタムチップに対するニーズの高まりに応えることができるようになる。

Moor Insight & Strategiesの創業者で主席アナリストのPatrick Moorhead(パトリック・ムアヘッド)氏は、このカスタムチップこそが今回の取引の鍵だと話す。「Intelの買収は、これまで製造できなかったタイプのシリコンを製造できるようになることを意味します。具体的にはRF、センサー、シリコンフォトニクス、電源管理チップなどです」と述べた。

半導体産業を追跡するSemiAnalysisのチーフアナリスト、Dylan Patel(ディラン・パテル)氏も、Tower買収はIntelにとって賢い行動だと同意する。「Towerの買収は、Intelのファウンドリサービスにおいて、プロセスノードの種類によって必要とされるギャップを埋めるものです。買収により、複数の外部顧客とのインターフェースとなる特殊技術を成功裏に運営して利益を上げてきたチームを取り込みます」とパテル氏は語った。

また、Intelはこれまで、社内のニーズに合わせてカスタマイズしたフローをほとんど使っていたと同氏は付け加えた。Towerは、より標準化されたフローを提供する方法をもたらす。「Intelは業界標準のフローを採用しようとしているため、製品設計キット(PDK)機能は、彼らが多くの支援を必要とする分野です。Towerの特殊なニッチ技術における能力は、柔軟で拡張性のあるPDKを作成して提供する能力を大いに高めます」と同氏は述べた。

想像に難くないが、TowerのCEO、Russell Ellwanger(ラッセル・エルワンガー)氏は、2社の合併が大きな力になると考えている。「Intelと一緒に、我々は新しい有意義な成長機会を推進し、一連の技術ソリューションとノード、大幅に拡大したグローバルの製造拠点を通じて、顧客にさらに大きな価値を提供します」と、エルワンガー氏は声明で述べた。

両社の取締役会は買収を承認しているが、通常の規制当局による承認手続きとTowerの株主の審査を経る必要がある。プロセス完了には約12カ月かかる見通しだ。

画像クレジット:Smith Collection/Gado / Contributor / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

EUが半導体生産強化に約56兆円投じる「欧州半導体法」を加盟国に提案、2030年までに世界半導体市場シェア20%が目標

EUが半導体生産強化に約56兆円投じる「欧州半導体法」を各国に提案、2030年までに世界半導体市場シェア20%が目標

Thierry Monasse via Getty Images

EUが、半導体不足を解消するために430億ユーロ(約56兆円)を投じて、欧州における半導体生産を強化するEuropean Chips Act(欧州半導体法)制定をEU各国に提案しました。これは半導体研究や製造といった分野で欧州の強みを生かしつつ、生産面でアジアに強く依存している状況を軽減するための方策です。

ただし、この計画はEU加盟国と欧州議会の承認が必要であり、国および民間企業からの投資によって将来的に今日のようなチップのサプライチェーンの混乱が発生しにくくすることが期待されます。EUは2030年までに世界の半導体市場において20%のシェアを握ることを目標とするとのこと。

また「短期的にはサプライチェーンの途絶を予測、回避ができるよう市場の動きを監視し、供給不足のへの耐性を高め、中期的には欧州がこの分野で業界のリーダーになる」と、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長はしました。

この動きは、ジョー・バイデン大統領が米国での半導体生産量を増やすために、520億ドルを投じて半導体部門への投資を推進したことに続くものであり、とある専門家は、EUの半導体法はパンデミックが世界経済をいかに再構築しつつあるかを浮き彫りにしていると述べています。

パンデミックの影響はいまも特に中国に現れており、世界最大の貨物港である寧波・舟山港がある浙江省では、当局が数万人の住民を隔離して港を閉鎖。多くの船舶が航路変更を余儀なくされたと伝えられています。

物流業界は台風や火災の発生といった、自然災害でもこれまでによくある類のものなら対処方法も用意していたものの、パンデミックの長期におよぶ影響はとても予測できるものではありませんでした。新型コロナの影響により地政学面の変化や、ナショナリズムの台頭、気候変動も絡み合い、政府の対応のしかただけでなく民間企業もビジネスのあり方を見直さざるをえなくなっています。

欧米でそれぞれ半導体に関する法案が成立すれば、こんどは欧州、米国、アジアそれぞれで半導体製造企業の呼び込み合戦が展開されるようになるかもしれません。それでも、この計画は最終的に世界の半導体生産を押し上げ、医療機器、電気自動車、PCパーツ、ゲーム機などの入手性を改善することになるはずです。

(Source:European Commission。Via The GuardianEngadget日本版より転載)

欧州の半導体法案、スタートアップやスケールアップ企業を対象に最大約2640億円の資金援助へ

欧州連合(EU)の欧州委員会は現地時間2月8日、半導体法案を公表した。2021年秋に予告されていたたこの計画は、半導体生産における地域主権とサプライチェーンの回復力を強化するためのもので、研究開発などの分野を含むEU域内の半導体生産に的を絞った支援パッケージや、この分野の最先端技術に取り組むスタートアップや大企業への資金提供が盛り込まれている。

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法案には、EUの厳しい国家補助規則の緩和も含まれており、加盟国は斬新な「この手のものは初」の半導体工場に財政支援を提供することができるようになる。

法案の包括的目標は、あらゆる種の機械や装置を動かすために現在必要とされているハイテクな半導体に、EUが継続してアクセスできるようにすることだ。

「半導体は、世界の技術競争の中心にあります。もちろん、現代経済の根幹をなすものでもあります」とEU委員長のUrsula von der Leyen(ウルスラ・フォン・デア・ライエン)氏は、法案に関する声明で述べた。EUのパンデミック後の経済回復の遅れは世界的な半導体不足と関連しており、需要が供給を上回っていることが原因だ。

欧州委員会は、世界の半導体生産に占めるEUの割合を、2030年までに現在の9%から2倍以上の20%に引き上げたいと考えている。

欧州委員会は、半導体法が「研究から生産まで」の活発な半導体分野の基礎を築くことを期待していると述べた。一方で、欧州は単独ではやっていけないことも認識しており、同法案は米国や日本など他の半導体生産国との連携を強化することによって、グローバルなサプライチェーンへのアクセスにおける回復力を高めることにも取り組む。それゆえ、フォン・デア・ライエン氏は「バランスの取れた相互依存関係」と語っている(ただし、半導体生産に対する国家支援は、貿易摩擦のリスクをともなうかもしれない)。

資金援助に関しては、EUはすでに、より広範な政策目標(デジタル化、グリーン転換、欧州の研究開発)を支援するために430億ユーロ(約5兆6710億円)超の公的および民間資金を動員しているが、欧州委員会は同法における「Chips for Europe Initiative」のもと、半導体能力支援として110億ユーロ(約1兆4510億円)を「直接提供」する予定だと述べた。これは「2030年まで研究、設計、製造能力における技術リーダーシップ」の資金調達に使われるという。

また、半導体関連のスタートアップのイノベーションのために、欧州のスタートアップの研究開発資金や投資家誘致のための費用を支援する専用の「半導体ファンド」という形で、特別な資金が確保される。

欧州委員会によると、半導体専門の株式投資機関(InvestEUプログラムのもと)も、市場拡大を目指す大企業や中小企業を支援する。

半導体分野のスタートアップや大企業に対する半導体法「支援株式」は20億ユーロ(約2640億円)に達する見込みとのことだ。

投資と生産能力の強化を促すことにより、欧州における半導体供給の安定性を確保するために計画されている枠組みは、高機能ノードやエネルギー効率の高い半導体といった分野での技術革新と投資の促進も目指している。この分野で欧州委員会はスタートアップのイノベーションを促すことも期待している。

半導体法案には、半導体の供給を監視し、需要を推定し、不足を予見するための欧州委員会と加盟国の間の調整メカニズムも含まれている。そして、EUの執行部は加盟国に対し、同法の成立を待つのではなく、調整のための取り組みを直ちに開始するよう促している。

EUの共同立法機関である欧州議会と理事会が、EU法として採択される前に詳細について意見を述べて合意する必要があるため、法案が採択される時期についてはまだ示されていない。

欧州委員会のデジタル戦略担当副委員長Margrethe Vestager(マルグレーテ・ベスタガー)氏は声明で次のようにコメントした。「半導体はグリーンかつデジタルな移行に必要なものであり、欧州の産業の競争力にもつながります。半導体の安全な供給を確保するためには、一国や一企業に依存すべきではありません。欧州がグローバル・バリュー・チェーンの主要な役者としてより強くなるために、研究、イノベーション、設計、生産設備において我々はもっと協力しなければなりません。それは、我々の国際的なパートナーにも利益をもたらすでしょう。将来の供給問題を回避するためにパートナーと協業します」。

また、EUの域内市場担当委員であるThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏は別の声明で「我々の目標は高いものです。2030年までに世界市場シェアを現在の2倍の20%に拡大し、最も洗練されエネルギー効率の高い半導体を欧州で生産するというものです。EU半導体法により、我々は卓越した研究を強化し、研究室から製造工場への移行を支援します」。

「我々は多額の公的資金を動員していて、それはすでに相当額の民間投資を引き寄せています。また、サプライチェーン全体を保護し、現在の半導体不足のように、将来的に経済が打撃を受けるのを避けるために、あらゆる手段を講じています。未来のリード市場に投資し、グローバルなサプライチェーンのバランスを整えることで、欧州の産業が競争力を維持し、質の高い雇用を創出し、増大する世界的需要に対応できるようにします」。

どのような種類の半導体工場が国家補助規則の適用除外となるかなど、法案の詳細については、欧州委員会のQ&Aを参照して欲しい。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

米議会下院、対中競争力維持に向け半導体不足対策に約6兆円織り込んだ法案を可決―上院との妥協案を模索へ

米議会下院が対中競争力維持に向け半導体不足対策に約6兆円織り込んだ法案を可決、上院との妥協案を模索へ

Lim Huey Teng / Reuters

米議会下院は2022年度アメリカ競争法を可決しました。この法案には世界的な不足が続く自動車やコンピューター向けの半導体不足を脱するため、また中国に対する半導体製造面での優位性を維持するため520億ドルにのぼる補助金を計上し、さらに研究開発のために3000億ドルという巨額の予算を設定しています。

ナンシー・ペロシ下院議長は「サプライチェーンの面で米国の自給自足を実現し他国への依存をなくすことが法案の目的」だと述べました。最終的に法案が成立すれば、技術的・産業的優位に立ちつつある中国に米国が対抗するための包括的な試みになるはずです。

下院での可決により、この法案は上院との間で妥協案を模索する交渉に入ることになっています。ただ、このままでは予算が最終的に承認されるかどうかはわかりません。下院は民主党がやや優勢だったため法案が通ったものの、共和党はたとえばこの法案でに織り込まれた、発展途上国を支援するためにパリ協定で設立された緑の気候基金(Green Climate Fund)への拠出金80億ドルをはじめとして気候変動への対処に余分な条項が多すぎると主張しています。またこの法案では中国の責任を追及するのに不十分とも述べています。

交渉は早くて数週間、時間がかかれば数か月になると予想され、ジーナ・ライモンド商務長官は「数日の遅れが寄り大きな遅れになり、それは国内国家安全保障上のリスクを増加させるだろう」として交渉の迅速な決着を求めました。またバイデン大統領もこの法案が「重要なものである」と述べ「米国には待っている余裕はない」ています。大統領が法案に署名して法律として成立させるには、上下院の摺り合わせによって両院を通過しなければなりません。

今回の法案に対する投票は、北京冬季オリンピックの開会式の数時間後、議会で中国でのオリンピック開催を決めた国際オリンピック委員会に対する批判が出ているなか行われました。人権団体は以前から中国の人権に対する姿勢を批判していますが、中国はその主張を否定しています。

また今回の可決に対する自動車業界の反応としては、たとえばフォードの最高政策責任者兼法務顧問のスティーブン・クローリー氏はこの法案が成立すれば「フォードが世界的な半導体不足による生産の制約を緩和し、製造ラインの稼働を維持し、顧客が求めるエキサイティングな機能を備えたコネクテッドカーや電気自動車を提供するために役立つ」とコメント、フォード、GM、ステランティスを代表する米自動車政策協議会も上下院の「意見の相違を迅速に解決」することを議会に求めました。

一方、IT産業ではインテルが先月、オハイオ州に200億ドルを投じて半導体製造工場を建設すると発表しており、その際にこの法案から業界に追加支援があれば、今後10年間で新工場に1000億ドル規模の投資を行う可能性があるとしていました。またこの法案では、ほかにアップルや台湾TSMCのアリゾナ工場など、半導体製造施設の新設(すでに着工したものを含む)のために390億ドル(約4兆5000億円)の補助金を盛り込んでいます。

(Source:New York Times。Coverage:Automotive NewsEngadget日本版より転載)

半導体産業は台湾にとって「切り札」にも「アキレス腱」にもなる

TechCrunch Global Affairs Projectは、テックセクターと世界の政治がますます関係を深めていっている様子を調査した。

2021年10月上旬の4日間にわたって、約150機の中国軍用機が台湾の領空を侵犯し、台湾と米国からの批判を招いた。このように台湾海峡で緊張が高まる中、台湾の祭英文総統は米国軍は台湾兵士と台湾国内で軍事演習を行っていると発表した。これに対し中国の外務省は、台湾の独立を支援すれば軍事衝突をもたらすだけだと警告した。10月末、米国国務長官Antony Blinken(アントニー・J・ブリンケン)氏が中国外相Wang Yi(王毅)と会見して、台湾地域での現状変更の動きを控えるよう要請したまさにその日に、さらに8機の中国軍用機(うち6機はJ-16戦闘機)が台湾の領空を侵犯した。

1979年、米国は、中華民国(台湾)が中国本土、つまり中華人民共和国の一部であることを承認した。このときから中台関係の変遷が始まり、現在の状態に至る。中国は長期にわたって台湾併合を望んでおり(中国は台湾をならずもの国家と考えている)、軍事侵攻によって強制併合する可能性を決して除外していないが、米国が台湾を軍事的に防衛するかどうかについて戦略的にあいまいな態度をとってきたため、台湾併合を阻止されてきた形になっている。そして近年、台湾が半導体産業で重要な役割を果たすようになってきたため、状況はさらに複雑化の度を増している。

世界の半導体産業における台湾の重要性

台北本拠の調査会社TrendForce(トレンドフォース)によると、台湾の半導体受託製造業者は、2020年時点で、世界のファウンドリ市場の63%のシェアを獲得しているという。詳細を見ると、世界最大の受託チップ製造業者Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)だけで世界のファウンドリ市場の54%のシェアを確保している。さらに最近のデータによると、Fab 14B P7で停電が発生し製造がストップしたにもかかわらず、TSMCは依然として、2021年の第2四半期で世界のファウンドリ市場の約53%を占めている。

台湾のファウンドリ(TSMCを含む)はほとんどのチップを製造しているが、それに加えて、携帯電話から戦闘機まで、すべてのハイテク機器に内蔵されている世界最先端のチップも製造している。実際、TSMCは世界の最先端チップの92%を製造しており、台湾の半導体業界は間違いなく世界で最も重要視されている。

そして、当然、米国と中国の両国も台湾製の半導体に依存している。日経の記事によると、TSMCは、F-35ジェット戦闘機に使用されているコンピューターチップ、Xilinx(ザイリンクス)などの米国兵器サプライヤ向けの高性能チップ、DoD(国防総省)承認の軍用チップなども製造している。米軍が台湾製のチップにどの程度依存しているのかは不明だが、米国政府がTSMCに対して米国軍用チップの製造工場を米国本土に移転するよう圧力をかけていることからも台湾製チップの重要さの程度が窺える。

米国の各種産業も台湾製半導体に依存している。iPhone 12、MacBook Air、MacBook Proといった各種製品で使用されているAppleの5ナノプロセッサチップを提供しているのはTSMC一社のみだと考えられている。iPhone 13やiPad miniなどのAppleの最新ガジェット内蔵のA15 BionicチップもTSMC製だ。TSMCの顧客はもちろんAppleだけではない。Qualcomm(クアルコム)、NVIDIA(エヌビディア)、AMD、Intel(インテル)といった米国の大手企業もTSMCの顧客だ。

中国も外国製チップに依存しており、2020年現在、約3000億ドル(約34兆円)相当を輸入している。当然、台湾は最大の輸入元だ。中国は外国製チップへの依存度を縮小すべく努力を重ねているが、その需要を国内のみで賄えるようになるのはまだまだ先の話だ。中国の最先端半導体メーカーSemiconductor Manufacturing International Corporation(SMIC)の製造プロセスは、TSMCより数世代遅れている。SMICは現在7ナノ製造プロセスのテスト段階に入ったところだが、TSMCはすでに3ナノ製造プロセスまで進んでいる。

このため、中国の企業は台湾製チップに頼らざるを得ない。例えば中国の先進テック企業Huawei(ファーウェイ)は、2020年現在、TSMCの2番目の大手顧客であり、5ナノと7ナノのプロセッサの大半をTSMCに依存している考えられている。具体的な数字を挙げると、ファーウェイはTSMCの2021年の総収益の12%を占めている。

軍事衝突という形をとらない戦い

2022年前半に起こったことを見るだけで、半導体業界がいかに脆弱かが分かる。比較的落ち着いていた時期でも、停電の影響もあって、TSMCは世界シェアを1.6%失い、継続中の半導体不足に拍車をかけることになった。地政学的な要因による半導体生産量の低下ははるかに大きなものになるだろう。

最悪のシナリオはいうまでもなく、台湾海峡での軍事衝突だ。軍事衝突が起これば、半導体チップのサプライチェーンは完全に分断されてしまう。だが、他にも考えられるシナリオはある。台湾はよく分かっているが、中国に大量にチップを輸出することで、台湾の経済成長は促進されるものの、中国の技術発展も支援していることになる。台湾が、例えば米国との自由貿易協定に署名するなどして、中国への輸出依存度を減らすべく具体的な対策を講じるなら、中国への半導体チップの輸出を打ち切ってしまう可能性がある。

これは中国にとっては耐えられないシナリオだ。考えてみて欲しい。TSMCがトランプ政権の厳しい対中禁輸措置に応えてファーウェイからの新規注文を拒絶して以来、ファーウェイは5ナノ製造プロセスを使用したハイエンドのKirin 9000チップセットの製造を停止せざるを得なくなった。こうしてハイエンドチップが不足すると、ファーウェイはまもなく、5G対応のスマートフォンの製造を継続できなくなるだろう、とある社員はいう

台湾製のチップがまったく入ってこなくなると、中国のテック産業全体の継続的な成長に疑問が生じることになる。そうなると、中国は激怒するだけでなく、国内の安定も脅かされるため、中国政府に台湾武力侵攻の強い動機を与えることになるだろう。

逆に、米国に台湾製チップが入ってこなくなるシナリオも考えられる。「平和的な併合」のシナリオ(武力侵攻なしで台湾が中国に統合されるシナリオ)が実現すれば、台湾のファウンドリは中国政府の支配下に入ることになり、米国にとって戦略的な問題が生じる。中国政府はファウンドリに対してチップの輸出を禁止したり、輸出量を制限するよう要請できる。そうなると、米国は、米軍の最先端の軍事機器のモバイル化に必要なチップが手に入らなくなる。

TSMCが米国企業に対するチップの輸出を停止または制限すると、米国企業は現在のファーウェイのような状況に陥る可能性が高い(中国では「使用できるチップがない」という意味の「无芯可用」という新しいフレーズが登場している)。米国が台湾に侵攻して中国と台湾を再分割する可能性は低いものの、報復として制裁措置を課すなどの対抗手段を検討するかもしれない。そうなれば米中間の緊張がさらに高まることになる。

いうまでもなく、こうしたシナリオが現実化すればグローバルなサプライチェーンは分断され、全世界に深刻な状況を招くことになる。

台湾の半導体産業は国を守る盾か、それともアキレス腱か

台湾は間違いなく、半導体業界における支配的な地位と、それが米国と中国に対する影響力を与えている現在の状況を享受しているが、米中両国は現状に大いに不満を抱いており、両国とも自国に有利な状況になるようさまざまな手段を講じている。たとえば米国は、米国内にチップ製造工場を建設するようTSMCに要請している。一方中国は、TSMCから100人以上のベテラン技術者やマネージャーを引き抜いて、最先端のチップ製造を自国で行うという目標に向けて取り組みを強化している。

これは台湾の将来にとって決して好ましいことではない。台湾が海外での半導体生産量を増やすと、台湾に対する国際的な注目は弱まるかもしれない。が、同時に米国が台湾を軍事的に保護する動機も弱まってしまう。サプライチェーンが広域に分散するほど、中国が台湾を軍事力で併合するための主要な障害が軽減されることにもなる。台湾にとってこれは、難しいが、存続に関わる問題だ。

こうした不確実な要因はあるものの、台湾の地位は少なくとも短期的には安泰のようだ。米中両国の競争相手の製造プロセスはまだ数年は遅れている状態であるし、彼らが追いついてきたとしても、工場は稼働するまでに数年の計画と投資が必要になることはよく知られている。現状に何らかの変化がない限り、米中両国とも、少なくとも短期的には、台湾製チップなしでやっていけるとは考えられない。今確実に言えることは、米中両国は、対台湾戦略において、従来にも増して台湾の半導体産業の役割を考慮する必要があるということだ。

編集部注:本稿の執筆者Ciel Qi(シエル・チー)氏は、Rhodium Groupの中国プラクティスのリサーチアシスタントで、ジョージタウン大学のセキュリティ研究プログラム(テクノロジーとセキュリティ専攻)の修士課程に在籍している。また、ハーバード大学神学部で宗教、倫理、政治学の修士号を取得している。

画像クレジット:Evgeny Gromov / Getty Image

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(文:Ciel Qi、翻訳:Dragonfly)

2021年のスマートフォン出荷台数は2017年以来初めて増加

2020年になる前に、世界のスマートフォンの出荷台数はすでに縮小し始めていたが、2年間のパンデミックと、その結果としてのサプライチェーンとチップの制約で数字はさらに悪化していた。しかしCounterpoint ResearchIDCのレポートによると、2021年に市場はやっと2017年以来初めての成長を経験している。

Counterpointは全体の前年比成長率を4%とし、IDCはやや楽観的な5.7%としている。しかし両社とも、第4四半期は6%または3.2%の減少としている。半導体の不足が続いたため減少は予想されていたが、小さなメーカーは特に影響が大きく、Apple(アップル)やSamsung(サムスン)などのようにサプライチェーンの工夫ができない分、第4四半期の減少も大きかった。

両調査会社とも、2022年の伸び率ではSamusungがトップで、どちらも6%となっている。Appleが2位だ。また最近のCanalysのレポートでは、Appleが1位になっている。3社の調査レポートの傾向に大きな違いはない。Apple自身も、その優秀だった決算報告でこの傾向を確認したが、そこではiPhoneの成功が特に大きく寄与していた。

画像クレジット:Counterpoint Research

AppleのiPhone部門は前年比で9%増の716億3000万ドル(約8兆2529億円)だった。Tim Cook(ティム・クック)CEOは、サプライチェーンの制約は引き続き同社のハードルであり、需要に供給が追いつかない市場も一部にあった。しかし問題は収まりつつあり、前進できると決算報告で述べている。このような問題は、最終的には、そうでなければより強固に回復したであろう市場を指し示している。

IDCリサーチディレクターのNabila Popal(ナビラ・ポパル)氏は「2021年は、供給の制約がなければ、劇的に高い成長率になっていたという事実が、2021年の健全な5.7%の成長率をさらにポジティブなものにしています」とリリースで述べている。「私にとっては、ほぼすべての地域で大きな潜在需要があるというメッセージになります。消費者需要の弱体化をめぐる課題がある中国でさえ、第4四半期の市場は予想をはるかに上回り、正確には5%上回ったが、それでも前年同期比では減少しています」。

画像クレジット:IDC

中国は引き続きサプライチェーンの制約により強い打撃を受けているが、2位と3位のスマートフォン市場は2021年に成長を遂げた。

「米国の成長は、Apple初の5G対応iPhone 12シリーズの需要が2021年の第1四半期まで伸び続けていたことが大きな要因です。この需要は年間を通じて継続し、ブラックフライデーやホリデーシーズンのプロモーションのおかげで第4四半期は好調に終わりました。インドでも中・上位機種の買い替え率の上昇、入手性の向上、魅力的な融資オプションにより、好調な1年となりました」とCounterpointのアナリストであるHarmeet Singh Walia(ハーミート・シン・ワリア)氏は述べている。

10年近くにわたる力強い成長の後、アップグレードサイクルの遅れ、高価格、市場の飽和により、パンデミックの前にスマートフォンの需要の減少は拡大していた。新型コロナウイルスは、消費者の消費意欲を減退させ、その減速にさらに拍車をかけた。これらの問題は、サプライチェーンの問題によってさらに悪化してしまった。しかし、需要の高まりと5Gのようなものが再び消費者の関心を呼び起こしているが、全体の出荷量はまだパンデミック以前のレベルを下回っている。

画像クレジット:Fajrul Islam/Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

米国は半導体不足の解消からほど遠いとライモンド米商務省長官が警告

米商務省は米国時間1月25日、半導体市場の供給不足がどの程度広がっているかを把握するために150社を対象に行った調査の結果を発表した。自動車産業と医療産業は、この供給不足の影響を大きく受けている。

この調査結果を受けて行われた記者会見においてGina Raimondo(ジーナ・ライモンド)商務長官は、問題を厳しい言葉で表現し「半導体の供給問題に関しては、まだ脱却したとは言えない」と指摘。さらに「この問題は2022年後半まで、いや、もっと長く続きそうだ」と述べた。

ライモンド氏は、現在下院が起草しているU.S. Innovation and Competition Act(USICA)に、米国内での半導体生産増強のための520億ドル(約5兆9236億円)の資金が含まれていることを挙げ、議会の通過を強く要請した。

調査では、2019年から2021年にかけて需要が17%増加したことを指摘しており、この数字は今後さらに増加することが予想される。さらに、予期せぬ事態に直面した場合、破滅的な結果をもたらす可能性がある薄利多売についても述べている。

チップの在庫の中央値は、2019年の40日から5日未満に減少している。この在庫は、主要産業ではさらに少なくなってしまう。つまり、新型コロナウイルスの流行や自然災害、政情不安によって海外の半導体施設がわずか数週間でも混乱すれば、米国内の製造施設が閉鎖される可能性があり、米国の労働者とその家族が危険にさらされることになる。

ほとんどの製造施設は現在90%以上の生産能力で稼働しており、上工場を増やさなければこれ以上生産量を増やすことは不可能だという。特にIntelは、オハイオ州の2工場への大規模な投資を発表しているが、最初の工場が稼働するのは2025年だ。おそらく、現在行われている措置の多くは、将来の供給不足を回避することを目的としているのだろう。

「2021年初頭からの進展にもかかわらず、半導体不足は続いている。「半導体のサプライチェーンが複雑であることが一因だ。生産者は常に需要を明確に把握しているわけではなく、チップ消費者は必要なチップがどこで生産されているのかを常に把握しているわけではない。こうした障壁が、ソリューションの開発を難しくしている」と商務省の調査報告では述べられている。

画像クレジット:Joshua Roberts/Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

NVIDIA、Arm買収を断念か、ソフトバンクによる上場計画の噂も

Bloombergの情報筋によると、NVIDIAは400億ドル(約4兆5560億円)でのArm(アーム)買収について、規制当局の承認取得がほとんど進んでおらず、内々に買収を断念する準備を進めているという。一方、Armの現オーナーであるソフトバンクは、買収の代替案としてArmを上場させる計画を進めているようだ、とこの件に詳しい別の関係者は述べている。

NVIDIAは2020年9月にこの買収を発表し、CEOのJensen Huang(ジェンスン・フアン)氏は「AIの時代に向けてすばらしい位置にいる企業が誕生する」と宣言した。Armの設計は、Apple(アップル)、Qualcomm(クアルコム)、Microsoft(マイクロソフト)、Samsung(サムスン)、Intel(インテル)、Amazon(アマゾン)といった企業によってほぼ全世界でスマートフォンなどのモバイル機器にライセンス使用されている。

買収発表後すぐに反発が始まった。Armが拠点を置く英国は2021年1月に買収に関する反トラスト調査を、11月にはセキュリティ調査も開始した。米国では、データセンターや自動車製造などの産業における競争を「阻害」するとの懸念から、FTC(連邦取引委員会)が買収を阻止すべくこのほど提訴した。また、他の規制当局が買収を阻止しなければ、中国が買収を阻止すると報じられている、とBloombergの情報筋は話す。

我々は、最新の規制当局への提出書類で詳細に述べられている見解、すなわちこの取引はArmを加速させ、競争とイノベーションを促進する機会を提供するとの見解を引き続き持っている。

Intel、Amazon、Microsoftといった企業が、規制当局にこの取引を中止させるのに十分な情報を与えたと、情報筋は話している。これら企業は以前、NVIDIA自身がArmの顧客であるため、Armの独立性を保つことができないと主張した。つまり、Armのライセンス取得者のサプライヤーと競合社の両方になる可能性もある。

このような厳しい逆風にもかかわらず、両社は依然として買収を進める姿勢にある。NVIDIAの広報担当者Bob Sherbin(ボブ・シェルビン)氏はBloombergに対し「我々は、この取引がArmを加速させ、競争とイノベーションを促進する機会を提供するという見解を引き続き持っています」と述べた。ソフトバンクの広報担当者は「当社はこの取引が承認されることを変わらず望んでいます」と声明で付け加えた。

後者のコメントにもかかわらず、ソフトバンクの一部の派閥は、特に半導体業界がこれほど熱狂していることから、買収の代替案としてArmのIPOを推進していると伝えられている。また、NVIDIAの株価が買収発表後2倍近くに上昇し、実質的な買収価格が上昇していることから、買収を継続したいとの考えも一部にはあるようだ。

最初の契約は2022年9月13日に失効するが、承認に時間がかかる場合は自動更新される。NVIDIAは、この取引は約18カ月で完了すると予想していたが、今となってはこの期限は非現実的のようだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のSteve DentはEngadgetの共同編集者。

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(文:Steve Dent、翻訳:Nariko Mizoguchi

世界的チップ不足の中、インテルは2.3兆円でオハイオ州に2つの半導体工場を建設

Intel(インテル)は米国時間1月21日、オハイオ州コロンバス郊外に2つのチップ製造施設を建設する計画を明らかにした。この計画はまだ初期段階だが、現在も続く世界的なチップ不足に対処するため、あるいは少なくとも将来起こりうる問題に対処するために、最終的に200億ドル(約2兆2750億円)を投じて工場を建設する。

同社は、最初の工場について、すぐさま計画に着手し、年内に建設を開始するという大まかなスケジュールを描いている。工場は2025年に稼働し、40年ぶりの新製造拠点となる予定だ。計画通りに進めば、このプロジェクトの敷地は1000エーカー(約4平方キロメートル)となる見込みで、最大で8つのチップ工場を建設できるほどの広さだ。

CEOのPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏はニュースリリースで「本日の投資は、米国が半導体製造のリーダーシップを回復するための取り組みをIntelが主導する、もう1つの重要な方法となります。Intelの取り組みは、より強靭なサプライチェーンの構築に役立ち、今後何年にもわたって高度な半導体への確実なアクセスを保証するものです。Intelは、世界の半導体産業を強化するために、最先端の機能と能力を米国に戻そうとしているのです」と述べた。

同社の発表によると、建設段階では7000人の雇用を創出し、稼働後は3000人を常時雇用する。バイデン政権下のホワイトハウスは、1月20日に発表した声明の中で、今回のニュースを「アメリカ経済の強さを示すもう1つのサイン」として宣伝している

オハイオ州リッキング郡に建設される2つの最先端Intelプロセッサー工場の初期計画を示す予想図。2022年1月21日に発表されたこの200億ドルのプロジェクトは、広さ約1000エーカーで、単一の民間投資としてはオハイオ州史上最大となる。2022年後半に着工し、2025年末に製造を開始する予定(画像クレジット:Intel)

ホワイトハウスはまた、機会に乗じて、新型コロナウイルス感染症によって世界的にサプライチェーンが逼迫する中で、国内の研究開発と製造の加速を目指す政策をアピールした。サプライチェーン逼迫は一部の人には政権の敗北として映っている。

「この進展を加速させるため、大統領は議会に対し、半導体を含む重要なサプライチェーンのための米国のR&Dおよび製造を強化する法案を可決するよう促しています」と政権は書いている。「上院は6月に米国イノベーション・競争法(USICA)を可決し、政権は上下両院と協力してこの法案を完成させているところです。この法案にはCHIPS for America Actへの全資金拠出が含まれており、民間部門の投資をさらに促進し、米国の技術面でのリーダーシップを継続させるために520億ドル(約5兆9110億円)を拠出します」。

両党はまた、米国でチップを製造することのセキュリティ上の利点を宣伝した。これは間違いなく、前政権の主要ターゲットとなったHuawei(ファーウェイ)などのメーカーに対する監視の強化にちなんだものだ。Intelは「オハイオ州の拠点はまた、米政府特有のセキュリティとインフラのニーズに対応する最先端のプロセス技術も提供します」と述べている。

今回のニュースは、IntelがSamsung(サムスン)などの企業との競争激化に対処する一方で、Apple(アップル)などの企業がファーストパーティーの設計を優先してIntel製チップの採用を取りやめることを選択した中でのものでもある。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国のAIチップデザイン企業Moffett AIがシリーズAラウンドで「数十億円」を調達

中国では半導体技術の独立性を高めることが求められており、それにともない投資家たちはさまざまな種類のチップスタートアップを追い求めている。深圳のファブレスチップデザイン企業であるMoffett AIは、新たにシリーズAの出資を受けた。同社は正確な金額を公表せず「数千万ドル(数十億円)」とだけ述べている。

このラウンドは、CoStone CapitalGreater Bay Area Homeland Development Fundが主導した。後者のファンドは、中国が香港、マカオ、深圳、および広東省南部のいくつかの都市を統合する壮大なプロジェクトであるGBA(大湾区)経済圏のスタートアップを支援するために設立された金融ビークルだ。

シリーズAラウンドに参加した他の投資家には、Co-PowerGrand China Capital、深圳市政府が「次のHuawei(ファーウェイ)、Tencent(テンセント)、DJIを探し出す」ために設立した戦略的ファンドであるShenzhen Angel Fund of Funds(FOF)が含まれる。2020年3月に実施されたMoffettの前回のラウンドは、1億元(約1600万ドル、約18億円)でクローズされた。

自律走行車からビデオストリーミングのレコメンデーションまで、人工知能は私たちのデジタルライフに欠かせないものとなっている。AI機能の需要が急増しているため、コンピューティングパフォーマンスに負担がかかり、MoffettやFoxconnが出資するKneron(クネロン)のようなAIアクセラレーションを提供する企業が切望されるようになっている。

Moffettは、ニューラルネットワークモデルから冗長情報を取り除き、最終的に処理の高速化につなげるプロセスである「スパース化」と呼ばれる技術を用いて、同社のAIチップを差別化することを約束している。同スタートアップは新たな資金を、同社のスパース技術を利用するパートナーやクライアントの「エコシステム」の拡大と、TSMCが製造する最初のチップ「Antoum」の量産に充てる予定だ。

同社は、このチップのスパース率は32倍で、その処理能力は「国際的なフラグシップ製品」の5~10倍になると主張している。

Moffettは深圳に本社を置き、北京、上海、そして2018年に設立されたシリコンバレーのオフィスにも研究開発チームを置いている。このスタートアップは、カーネギーメロン大学のAI研究者や、Intel(インテル)、Qualcomm(クアルコム)、Marvel(マーベル)、Oracle(オラクル)などに所属していた半導体のベテランたちによって運営されている。

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画像クレジット:Moffett AI

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

半導体不足にもかかわらず2021年の全世界でのPC販売台数は大幅増

2021年のパソコンの販売台数は、半導体不足によって全世界的に減少したと想定するのは容易だが、そんな月並みの考えは間違っているかもしれない。実は市場調査企業Canalysの調査報告によると、2021年のPCの出荷台数は前年比で15%伸び、2019年に比べると27%増加した。売れた総台数は3億4100万台というすごい量だ。

その調査報告によると、第4四半期は前年比1%増と微々たる伸びだが、しかしそれでも、2012年以降で最良の年だった。

CanalysのシニアアナリストIshan Dutt(イシャン・ダット)氏によると、半導体の供給不足にもかかわらずPCはすばらしい年を経験し、PCは私たちの仕事とレジャーの両方にしっかりと根を張った。そして世界の先進地域では、家庭に複数のPCがあることが標準的な姿になりつつあるという。

「供給の制約という暗雲が常に立ちこめている市場で、好調だった2020年を超える成果を達成したことは、過去12カ月のPCの需要がいかに大きなものであったかを示している。長期的に見た場合、2021年で最も重要な展開は、PCの普及率と使用率の大きな増加だ」。

2021年のPC市場におけるビッグ3は、Lenovo、HPそしてDellで、Appleは4位だった。下表にあるように、2021年は各社とも好成績だったが、前年比伸び率が最大だったのは28.3%を達成したApple(アップル)、次位が販売台数では5位のAcerの21.8%だった。

マーケットシェアでは、勝者は24.1%のLenovoと21.7%のHPとなる。3位のDellが17.4%、次いで4位のAppleは8.5%だった。

画像クレジット:Canalys

半導体不足は2022年も続くと予想され、また教育市場の飽和も囁かれているが、Canalysの予測では2022年もPCの売れ行きに関しては良い年だ。それどころか、CanalysのアナリストRushabh Doshi(ルシャブ・ドーシ)氏によると、供給問題がなければ2021年の市場はもっと大きかっただろうという。

「不足の一面には需要が大きかったということにもある。供給状況が良ければ間違いなくPC業界は、もっと強力に成長して大きくなっていただろう」とドーシ氏はいう。

彼は、今後も市場は拡大し続けると見ている。「自由な視点で見ると、より高性能で高速なPCに対する需要は、職場だけでなく家庭でもかつてないほど高まっています。過去2年間でPCの重要性が強化されたことで、成長は今後も続くと考えています」とドーシ氏は述べた。

画像クレジット:Irina Cheremisinova/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】クルマの「機能過多」が半導体不足を助長している

自動車業界における半導体不足への最善の対策は、もっとチップを作ることではないとしたらどうだろう? 代わりに「機能過多(feature bloat)」と呼ばれる現象を何とかすることを考えてはどうだろうか。激化する販売競争に押されて、新車にできる限り多くのテクノロジーを詰め込む傾向のことだ。

調査によると、消費者が欲している(そして期待している)のは、次の新車が眼を見張るような機能で埋め尽くされていることのようで、それが機能膨張の要因だ。先週終わったCES 2022では、これからのクルマがどうなっていくかを垣間見ることができた。Bosch(ボッシュ)は自動車用ソフトウェアは2030年まで2桁成長が続くと予測していると語った。Panasonic(パナソニック)は視線追跡付き拡張現実ヘッドアップ・ディスプレイと、出力1000ワット、スピーカー25基を要するELS Studio 3Dオーディオ・システムを披露した。BMW(ビー・エム・ダブリュー)は車の外装色と社内のデジタルアートをユーザーが変えられる未来技術を紹介し、後部座席の31インチシアター・スクリーンにはAmazon Fire TV(アマゾン・ファイアーティービー)が内蔵されていた。

そしてこれらは、CES 2022で披露されたカー・テックのごく一部にすぎない。

しかし、もしそのテクノロジーが信頼できないとしたら(実際いくつかはそのことが証明されている)、消費者の勝利とはいえない。一方、現実の市場では、現場の購入者をある災難が待ち受けている。いちばん欲しい機能のいくつかは、価格が高いだけでなく入手が困難であることだ。

「半導体不足ではありません、起きているのはソフトウェアの肥大化です」と、多くの自動車メーカーにグラフィカル(GUI)のデザインとツールを供給しているAltia(アルティア)のCEO・共同ファウンダー、Mike Juran(マイク・ジュラン)氏は言った。

たとえばChevrolet Volt(シボレー・ボルト)を見てみよう。このプラグインハイブリッド車の2011年モデルが登場した時、1000万行のコードが使われていた。現在の中・高級車に入っているコードは1億行前後だとAltiaのエンジニアリング担当副社長、Michael Hill(マイケル・ヒル)氏は言う。

「これは10年か15年前のジェット戦闘機で見るレベルです」とヒル氏はTechCrunchに語った。「そして、バグのないソフトウェアは存在しません」

消費者にとって悪い知らせがある:機能過多は不可避であり悪化していく。

「今日の車は、消費者が必ずしも望んだり要求したりしていない機能を背負い込んでいます」とConsumer Reports(コンシューマー・レポート)誌の自動車テスト担当シニア・ディレクター、Jake Fisher(ジェイク・フィッシャー)氏がTechCrunchに話した。

フィッシャー氏によると、同誌の2021 Auto Reliability Report(2021年自動車信頼性レポート)は、ハイエンドの電動SUV(スポーツ用多目的車)は最も信頼性の低い車だと評価している。

「そしてそれは、パワートレインに問題があるからではありません」とフィッシャー氏は言う。「問題はそうではなく、自動車メーカーがEVのアーリーアダプターにあらん限りのテクノロジーを載せた車を売ろうとしていることです。商品を差別化し、高い価格を正当化しようとしています。その結果生まれているのが、非常に信頼性の低い車です」

効率の悪さとコーディングの問題によって起きるバグのあるソフトウェアを生み出しているのは、自動車開発サイクルのシフト、もっと正確に言えば、加速だとAltiaのマーケティング担当副社長、Jason Williamson(ジェイソン・ウィリアムソン)氏は言う。

「みんな毎年新しいスマートフォンが出てくることに慣れているので、自動車メーカーは消費者家電に追いつこうと必死です」とウィリアムソン氏は言った。「全く新しい車を2年以内に開発するよう圧力をかけています。そしてそれは、必ずしも自動車アプリケーション用にカスタム製作された部品ではなく、ノートパソコン用に作られたかもしれない構成部品が使われていることを意味しています」

テクノロジーで消費者を誘惑しているのは高価なEVだけではない。多くの中・高級製品ラインで起きている。

「ソフトウェア過多というより機能過多です」とGuidehouse Insights(ガイドハウス・インサイツ)のEモビィリティー担当主任研究アナリスト、Sam Abuelsamid(サム・アブエルサミド)氏は言った。「ソフトウェアはあらゆる機能を働かせるためにあるだけです。それより、30種類に調整可能で5種類のマーサージ・オプションのついたシートが本当に必要ですか? あるいは、シーケンシャル・テールランプやマルチゾーン完全自動エアコンやコンサートホールとスタジオ設定のあるオーディオシステムも。ライバルの一歩先を行こうとする果てしない欲求がこれを助長しています」

自動車メーカーの十字架

あらゆるテクノロジーは良いテクノロージー、という考えの自動車メーカーは、扱いにくいが最終的にはより賢いアプローチを避ける。

「いちばん難しいのは、あるべき機能セットを見極めてそれを追究することです」とLucid Group(ルーシッド・グループ)のデジタル担当上級副社長、Mike Bell(マイク・ベル)氏は言った。「『よくわからないから、何でもかんでも載せよう』と言うほうが簡単しもしれません。しかし賢いアプローチは、顧客が本当にやりたいことを知り、どうすれば最高の体験を与えられるかを見つけ出すことです。何かをするための方法が7つもあるなどいけません」

ベル氏はApple(アップル)で17年近く過ごし、自ら率いるLucidの技術チームの何人かもそこで勧誘した。問題の原因の1つは、テック企業の規範とは異なり、自動車メーカーはソフトウェア業務の大部分を外部調達していることだと彼は言った。「外注してよい体験を期待することはできません」と彼は言った。「Lucidでは、どこかで買ってくるのではなく、自分たちでソフトウェアを作り、自分たちで統合しています」

自動車メーカーも新しいテクノロージーの重要性を認識し始めている。

「車を発売することは、もはやハードウェアだけの問題ではなく、ソフトウェアも重要になっています」とPolestar(ポールスター)CEOのThomas Ingenlath(トーマス・インゲンラス)氏は言った。同氏はインタビューで、ソフトウェアの無線アップデート(OTA)ができるかどうかで「消費者満足度に大きな違いがでます。問題が起きた時に迅速に対応ができます」と付け加えた。

大きな期待

大きな要素の1つが消費者の期待だ。自動車購入者がさまざまな機能を必要としていないのは事実だが、表面的にはそれを欲しがっているように見える。データ・ドリブンの自動車購入アプリ、CoPilot(コパイロット)が11月に行った調査によると、自動車メーカーは人々の要求に答えているだけだという。現在のリース利用者の65.7%が、次の乗用車やトラックに今よりも良い機能を期待していて、56%以上が、現在の車に払っているのと同じかそれ以下しか払うつもりがない。

同様に、9月に1000人以上の自動車オーナーを対象に行ったCarMax(カーマックス)の調査では、50%近くが「今の車にもっとテック機能があればよかった」と思っていると答えた。

20代と30代という自動車メーカーにとって期待度の高い世代は、ほとんどがテック機能を購入検討する上で「極めて重要」だと答えた。全体では、15.9%がテック機能を極めて重要と考え、3.7%が非常に重要、31.8%が「ある程度重要」と回答した。「全く重要でない」と答えたのはわずか3.9%だった。

半導体不足の現状を踏まえると、テックへの期待が満たされている可能性は低い。

CoPilotのCEO・ファウンダー、Pat Ryan(パット・ライアン)氏は、消費者は3つの分野で困難必須の成り行きにあるという。「第一に、車を手に入れるまでに3~6か月かかり、みんなそのことに慣れていません」とライアン氏は言った。「二番目の問題は、新車には下取りに出そうとしている車よりも少ない機能しかないかもしれないことです」

高級サウンドシステム、ワイヤレス充電、暖房付きシートさえも半導体不足のために入手できないかもしれない。そして、おそらく表示価格の95%を払っていた人たちは、表示価格で買うことになるかもしれない。

それでもハイテク・カーへの欲求がなくなることはない。Edmunds(エドモンド)のInsights(インサイツ)担当エグゼクティブ・ディレクター、Jessica Caldwell(ジェシカ・コールドウェル)氏は、自動車メーカーは自社の乗用車やトラックを走る多目的オフィス兼住居空間だと宣伝していて、購入者は喜んでいる、とTechCrunchに語った。

「消費者は増え続ける機能と快適性を楽しんでいます。なによりも重要なのはそういう高度に満ち足りたクルマにお金を払う意思が彼らにあることです」と彼女は言った。「半導体不足によってオプションや機能を増やしたモデルを作ることが困難になりましたが、消費者の関心は続いています。そして、そこに消費者の欲求がある限り、自動車メーカーは自分たちの利益と市場シェアのために、答える方法を見つけるでしょう」

画像クレジット:Getty Images

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(文:Jim Motavalli、翻訳:Nob Takahashi / facebook